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【ミリマス】七尾百合子「素敵な勘違い」
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1 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 01:42:55.55 ID:IHqxgeJQ0
===1.
まず初めに、どれほど冷静沈着な人だって誤解をすることってありますよね。
人間誰しも理解しているごく当たり前のことだけど、
誰が、いつ、どんな風に物事を勘違いしてしまうかまでは……残念ながら、予測するなんてできないのだ。
さて……その日、私こと七尾百合子はウキウキとした足取りで劇場廊下を歩いていた。
手には昨日読み終わったばかりの話題作、『人の振り見て我が振り直せ』を持っていて――
あっ、この『人の振り見て我が振り直せ』は青春学園小説の傑作『ことわざ部』シリーズの最新刊。
一癖も七癖もあることわざ部員が集まる部活に毎回学園の生徒が悩み事を持ち込んでくる形で
ストーリーが展開するタイプのお話で、笑いあり涙ありバトルあり、時にシリアス時にロマンス、
もう現役学生なら絶対に、一度は読まなきゃ青春時代の半分以上を損してる――っとと! ストップ!!
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1507740175
2 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 01:47:27.55 ID:IHqxgeJQ0
「……あー、ダメダメ百合子。また一人で暴走しかけてた」
廊下で立ち止まり深呼吸。
好きな本のことを考えるとほんのちょっぴり少しだけ、勢いづいちゃうのは悪い癖――
この『ことわざ部』シリーズに出て来る冷静沈着な主人公のように、いつもいつでも平常心でいなくっちゃ。
……今回のお話にしてもそうだ。
一見平和そうなクラス、しかし裏では巧みにカモフラージュされたとある女生徒に対するいじめ問題が深刻化。
いじめられてる被害者の唯一無二の親友が彼女の微妙な変化を怪しみ
『ことわざ部』部室の扉を叩くところからこの物語は動き出し……
コンコンコン。
扉を三回ノックすると、古びた木製扉がギシギシ音を立て開けられた。
「はい?」
そして相談に来た私のことを出迎えたのは、小学生に見間違えちゃいそうなほど背の低い女の子。
童顔って言ったらいいのかな? 結構可愛い顔してる。
3 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 01:50:29.63 ID:IHqxgeJQ0
「すみません、手紙を出した者ですが……」
「ああ、アナタが今回の依頼人? ……なんだか間抜けそうな顔」
けどこの子、見た目の割に口が悪いぞ。
彼女に招き入れられると、私の視線は誇りっぽい部屋の中央にデンと置かれた机へと吸い寄せられていた。
もっと正確に言うならば、机そのものではなくてその上に組み立てられたトランプタワー。
「めっ! ですよ、副部長。その口のきき方はお客さんに対して失礼です」
そしてそのトランプタワーを作っていた、噂の『ことわざ部』の部長……くせっ毛ショートの髪型に、キッチリ着こなしてる制服。
彼女の姿はまるでそう、生徒会委員のようにカッチリした――きゃっ!?
「あ痛っ!」
突然感じた衝撃に、目の前から掻き消えるトランプタワー……だけじゃない。
教室も、木製校舎の木の匂いも、放課後の日差しも私の前から消え去って……うん? でも部長とあの子は消えてない。
「あいたたたぁ……あれ?」
劇場の廊下に尻もちをついた私と同じ体勢で、「ちょっと百合子さんドコ見てるの!」なんてあの口の悪い子が怒ってる。
そんな彼女の隣には、私たち二人に手を差し伸べる瑞希さんがスラッと立っていて。
「お二人とも怪我はないですか? ……よそ見してると危ないぞ」
「瑞希さん、よそ見してたのは桃子じゃなくて――」
「ごめんなさい副部長さん! 私、また物語の中に飛んじゃってて」
「――百合子さんの方だけど……ってゆーか副部長ってなに? 桃子は桃子なんだけど」
4 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 01:53:45.33 ID:IHqxgeJQ0
瑞希さんに支えられながらゆっくりお尻を持ち上げる。
それからスカートの埃をパタパタ掃い、私は床に落としちゃった本を拾い上げた。
「ああ、ごめんね桃子ちゃん。副部長って言うのはこの『ことわざ部』シリーズに出て来る女の子で――」
そうして説明を始めようとしたら、瑞希さんが嬉しそうに両手を頬に添え「なんと、七尾さんもそのシリーズを?」
「えっ? もしかして瑞希さんも?」
「はい。少々ご縁がありまして、全巻うちに揃っています」
「ホントですか! ……嬉しい! こんな近くに読んでる人がいるなんて!」
「見たところ七尾さんがお持ちのそれは最新刊。私も今読み進めている途中でして――」
そのまま読書談義が開かれようとしたところに副部長――じゃない、桃子ちゃんが割って入って来る。
「百合子さん瑞希さんこっち向いて! 桃子のことを無視しないの!」
でもこの台詞が彼女の口から出た瞬間、私と瑞希さんは顔を合わせて頷いてた。
「出ました、副部長の例のアレ」
「自分が蚊帳の外に置かれると、怒って注意を引くんですよね!」
「部で唯一の三年生。なのに時々子供っぽい副部長……萌え」
「そうそうそれですそうなんです! だから普段の口の悪さも許せちゃう♪」
そして私たちの会話は弾みだし……。
その間、桃子ちゃんはずーっと不機嫌そうな顔をして私と瑞希さんの会話を聞いていたんだけど、
別れ際には眉間にしわを寄せながらこう言ったの。
「百合子さん……その、『ことわざ部』シリーズとか言うの」
「うん、この本のシリーズがどうかした?」
「……小学生でも読める本? ……えっと、その、漢字的に」
5 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 01:56:12.72 ID:IHqxgeJQ0
===2.
――とまぁ、そんな嬉しい出来事があったことを私は親友の杏奈ちゃんとの
お喋りトピックに追加して、彼女の待っている楽屋の前までやって来た。
左手には例の『ことわざ部』(そもそもこれは杏奈ちゃんに押し付け――貸してあげようと思って持って来てた物なんです)
右手でドアノブを回しながら、私は楽屋の扉を開け……意図せず目撃してしまったのだ。
この劇場に潜んでいた、陰湿な闇の存在を。
「だからさ、杏奈もわかるよね」
「いつも遊んでるアタシらへの、いわゆる感謝の気持ちをさ」
「……はい。わかり、ます……」
「だったらちゃんと分かるよう、態度で示してくれなくちゃ……ね、歩もそう思うでしょ?」
「へっ? あ、ああ! ……そうだな、なるべく目に見えるような形でな」
……な、なにこれ!? なにこれ!? なんだこれっ!!?
開け掛けていた扉を思わず戻し、数センチだけ作った隙間から部屋の様子を覗き見る。
この瞬間、向こうがこっちに気づかなかったのは不幸中の幸いと言うべきか。
まるでどこかの家政婦がするように、しっかりと二つの目を凝らし、耳を澄ませて集中する。
一体みんななにしてるの? ……ううん、薄々予想はつくけども。
6 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 02:00:21.73 ID:IHqxgeJQ0
「どうするのり子、なんかある?」
「そういう恵美の方はどう?」
「まぁまぁ待てよ二人とも。杏奈が何か言いたそうだぜ」
部屋の中には杏奈ちゃん。それからのり子さんと恵美さん、歩さんの四人が一緒に立っていて。
でもみんな、楽しく会話してるって風じゃない。
なんだか怯えた杏奈ちゃんを囲み、ニヤニヤ笑ってるのり子さんたちの姿って言うのは……
そう、まるでいじめをしているいじめっ子。カツアゲをしている不良そのもので。
「あの……いくら、ですか?」
「はぁ?」
「え、えっと……杏奈、いくら出せば……」
「いくらって……。待って待って杏奈、勘違いしてる」
のり子さんがそう言って、杏奈ちゃんの首に腕を回す。
歩さんが杏奈ちゃんを挟んで反対側に移動する。
それから恵美さんが杏奈ちゃんの、正面に立って彼女としっかり目を合わすと。
「ねぇ杏奈、アタシら四人の関係はマブダチでしょ? マーブーダーチ。……お金なんてさぁ、いらないから」
するとのり子さんが「そうだそうだ」と相槌をうち。
「友情って、お金で成立しないよね。それじゃあまるでアタシたちが、杏奈を食い物にしてるみたいじゃんか」
「え、でも……杏奈、お金しか払えないし……」
「……ん? 待て待て杏奈、ホントにお金を出す気なんじゃ――」
歩さんが喋り出した途端、キュッと身を縮めて強張る杏奈ちゃん。
恵美さんが「いいから歩は黙ってて」と彼女の話を遮って
「アタシらはさ、もっと杏奈と仲良くしたいワケ。例えばそう……こんな風に」
7 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 02:02:42.87 ID:IHqxgeJQ0
次の瞬間、恵美さんが杏奈ちゃんのほっぺを引っ張った。
ふにふにもちもち柔肌が、恵美さんの手入れされた指でつままれたことによりみょんと伸びる。
「あ……!」
「おっと、アタシのことも忘れないでよ」
それからのり子さんまで杏奈ちゃんのサラサラヘアーを鷲掴み……
ぐしゃぐしゃぐしゃって音が聞こえそうな手付きで彼女の頭を撫で始めた!
ほっぺをつままれ、髪を弄られ、
杏奈ちゃんの「んっ……あっ……」なんて苦しそうな声が楽屋の中に響きだす。
「ひゃ……ぐしゃ、ぐしゃ……やら……!」
「ん〜? 何言ってるか分かんないぞー?」
「もっと杏奈は、強めに撫でて欲しいのかな〜?」
なんてこと! 杏奈ちゃんは二人にされるがまま。
さらにそこに、「えっと、アタシも何かしなくちゃな」と歩さんまで加わって――。
「うーん……よっと!」
「きゃあっ!?」
後ろから体を持ち上げられて、杏奈ちゃんが一際高い声を上げた。
それもそのハズ、歩さんの両手は高い高いするためにしっかりと杏奈ちゃんの胸を掴んでいて。
8 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 02:03:51.78 ID:IHqxgeJQ0
「ちょっと歩、なにしてんの!」
「それは流石にやりすぎってば!」
「えぇ? でも可愛がるなら――」
その時彼女が言った言葉を、私は聞き逃さなかった。
……可愛がる、それはいじめっ子がいじめの相手に使う言葉。
さっきから「遊ぶ」とか「感謝」とか「お金」なんてワードが出るたびに、まさかまさかと思ってたけど……。
私の中にあった疑念が、静かに確信へと変わる。
もしかしてだけど杏奈ちゃん、あの三人にいじめられてるっ!?
9 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 02:04:58.98 ID:IHqxgeJQ0
===3.
ショックだった。物凄くショック。
それは確かに、のり子さんたちはインドアな私や杏奈ちゃんとは違ってアウトドア派。
休日なんかは街に出て、ドライブやショッピングやスポーツに、汗を流すようなタイプの人たちだって思ってたけど。
でも、でも! 自分たちよりも弱い人を――この場合は、明るい暗いの暗い方を――
ワケも無くいじめるような人たちじゃないって、弱気を助け強気を挫く、そう言う人たちだって思ってたのに!
なのに……なのに、目の前の現実は残酷だ。
私の親友の杏奈ちゃんは、理由は分からないけどあの三人にいじめられてる。
その現場を、私はこうして見ちゃってる。……全然、私気づかなかった。
だって、だって劇場のみんなは仲間だから。
たまに意見がぶつかることはあっても、みんな仲良しだって思ってたから!
私の目には少なくとも、今までそう映っていたんだから……!
10 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 02:07:02.70 ID:IHqxgeJQ0
それに、許せないのはのり子さんたち三人だけじゃない……私もだ。私、七尾百合子自身もだ!
杏奈ちゃんの唯一無二の親友だって自負しながら、
彼女がいじめられている事実に私は今まで気づかずに、毎日を呑気に過ごしてた。
いつも彼女と二人でいたって言うのに、もしかすると杏奈ちゃんが必死の思いで出していた
些細な変化のSOSサインを見つけることもなく……
ああ、自分が不甲斐ない! 情けない! 消えてしまいたいけど消えちゃったら
杏奈ちゃんを助けられなくなっちゃうから消えたくないっ!
全く私はダメな奴だ。人に言えないほどの悩みを親友が抱えているというその時に、
自分は一体何をして……ああそうだ。私は本を読んでいた。『ことわざ部』シリーズ最新刊、『人の振り見て我が振り直せ』!!
でもここに、学園のトラブルを解決してくれる『ことわざ部』なんて無いんだから。
現実に起きた問題に、立ち向かうのは自分自身の意思だから。
私が……私が、勇気を出さなくちゃ!
あの小説に登場した、女生徒の姿が杏奈ちゃんと被る。
だったら彼女を救い出す、物語を動かした親友は――。
11 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 02:08:38.62 ID:IHqxgeJQ0
「ちょっ、ちょっと待ったぁっ!!」
気づけば、扉を開けて叫んでいた。四人の視線が一斉に集まる。膝がガクガクと震えている。
いつも見ているのり子さんたちが、今は全然知らない人に見える。
「あ、あ……杏奈ちゃんを」
震えるな、声! 伸ばし切れ、背筋!
勇気を奮い立たせるよう、私は『ことわざ部』の本をギュッと胸元で抱きしめて。
「杏奈ちゃんを……はっ、放してあげてください!」
若干上擦ってはいたけれど、思ってたよりも大きな声。
自分自身でビックリする、こんな大きな声が出せたんだって。
きっとボイストレーニングのお陰かな? なんてなんて、この場から逃避しようとするな意識!
今だけはちゃんと前を向け! ……まだ物語の途中なのに、他の物語に逃げ込んじゃったらダメじゃない!
12 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 02:10:33.46 ID:IHqxgeJQ0
「――杏奈を放せ? ……百合子、なんか誤解してない?」
「アタシたちはただ、仲良くお喋りしてるだけだけど――ね? 杏奈」
のり子さんと恵美さんが顔を見合わせ、私に向かってそう答えた。
そしてそんな二人に挟まれて、凄く驚いた顔をしている杏奈ちゃん。
そりゃそうだよね、だって、私に隠してたことだから。
自分がいじめられてることなんて、ホントなら誰にも知られたくないもんね。
「あ、はい……その、そうです」
ああ、かわいそうな杏奈ちゃん。
のり子さんに肩を掴まれて逃げ出そうにも逃げだせない。
正直に話したくても話せない。
おまけに歩さんがそんな三人の顔を順に見て。
「え、なんで百合子? それに、えーっと……みんなこのまま続け――」
次の瞬間、恵美さんが歩さんの肩に腕を回したかと思ったら、
そのまま引っ張るようにして杏奈ちゃんを囲んで円陣を組む。
そして、聞こえそうで聞こえないこしょこしょ話が始まった。
「あ……さん。アドリ……下手」
「興ざ……だよー」
「いや、急にそんな……超能力かって」
詳しい内容までは分からないけど、
でもきっと杏奈ちゃんをイジメて無いって言い訳なんかを考えてるのに違いない!
13 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/10/12(木) 02:11:53.92 ID:IHqxgeJQ0
「んじゃ歩、空気読んでこ?」
「お、おう!」
恵美さんがポンポンと歩さんの肩を叩き、密談の輪がパッと開かれる。
それから、歩さんは両腕を組んで一歩こちらに足を踏み出すと。
「な、なんだぁー、百合子ぉ? 杏奈にー、えっと、用事でも……あるのかよー!」
「あります! その……見てました! 私!」
でもここで、歩さんに負けてちゃ他の二人を相手するなんてどだい無理だから。
私は緊張と一緒にごくりと唾を飲み込むと、まるで感覚の無い足を前に踏み出した。
「さ、三人が杏奈ちゃんに意地悪してるとこ……扉の隙間から、バッチリと」
言って、私はググッと歩さんのことを睨みつける。
今の私は"風の狩人”、その鋭く尖った眼光は、並み居る獣を怯ませる――
そう、よく妄想しているファンタジックな設定を、今こそ現実で使う時!
すると私の圧に押されたのか、「えっ? 百合子、怒ってる?」なんて歩さんが三歩後ろに下がり……
よし勝った! 私は自力で道を開き、そのまま歩みを進めていく。
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