【多重クロス・安価】色々なキャラで人理修復【FGO】

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 00:41:56.34 ID:LTRFFu5t0
出して欲しいサーヴァントを1に提案、アニメ美少女戦士セーラームーンからセーラーマーキュリーを鯖として出して欲しいです

乙でした
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 07:04:22.27 ID:IWAqG63eo
>>102
面の皮が厚すぎるだろ
こいつリンボじゃね?
104 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/20(金) 20:52:50.88 ID:yaa1wIbQ0
少し更新します。
リンボはくそざこなめくじでしたね…。
105 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/20(金) 20:53:38.82 ID:yaa1wIbQ0



「―――七花さん!?」



 ドクターが告げた二体のサーヴァント。


 言葉と同時に動いたのは、やはり鑢七花だった。


 ダンと地面を蹴り、走り出す。


 サーヴァントはお互いの存在を知覚しあえるとのこと。


 七花は既に敵対サーヴァントの位置を把握しているのであろう。


 だから、向かう。


 だから、戦う。


 分かっている。分かっていた。


 今の彼ならば、真っ先にそうするのだという事を。
 


「マズイぞ、マスター。彼は一人で戦うつもりだ!」
「なっ……一体何でそんな危険な事を……!?」



 マシュは困惑しながら、問い掛けてくる。



「……先輩、どういう事なんですか? 七花さんの戦い方は余りに無謀です。何で、彼はあんな―――自分の身を傷付けるような戦いを?」



 それは、おそらく核心に迫る問いであった。


 虚刀流・七代目当主 鑢七花。


 彼の核心に。


 僕は、その答えを知っている。


 知っているが―――、



「ごめん、それは言えないよ……」



 それを口にする事はできない。

106 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/20(金) 20:56:50.12 ID:yaa1wIbQ0


 これは彼の過去だ。


 彼だけが有する、彼だけの過去。


 それが例え虚構(フィクション)に過ぎないとしても、アニメを観てしまえば全て分かってしまう事だとしても。


 此処に彼が実在する以上、簡単に他人が口にしていいものではない。



「マスター、君は……」



 そう、彼等は虚構の存在なのかもしれない。


 万人が知り、万人に知られる、虚構の産物。


 だが、今ここに―――彼等は確かに存在する。


 それは決して虚構などではない。


 件然たる事実だ。


 だからこそ、そう簡単に彼等の歴史を口にする事なんて出来ない。


 彼等には彼等の悲劇があり、喜劇があり、そうして―――僕のもとに来てくれたのだから。



「そう、ですね。すみません、私の問いが軽率でした……」
「いや、良いんだ。七花の行動が危険なのは確かだ。マシュの疑問も当然だよ」



 破滅に自ら足を踏み入れようとする行為。 


 相手が骸骨兵だろうと、サーヴァントだろうと変わらない。


 彼は戦場に足を踏み入れ、危機を一身に受ける。


 その末に待つのは―――おそらく、本来の物語とは違う結末だろう。



「確かに七花の過去は言えない。その結果、皆に沢山迷惑がかかると思う―――」



 あの物語とは違い、この戦いにはサーヴァントと呼ばれる敵対者がいる。


 過去の歴史にて人類史に大きく名を残した偉人・英傑。


 フィクションをも超え得る超人たち。


 例え、完成された『完了形変体刀』であろうと、あの無謀な戦い方を続ければいつかは折れてしまうだろう。
107 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/20(金) 20:57:37.40 ID:yaa1wIbQ0








 だからこそ―――、



「―――でも、だからこそ、七花をフォローしたいんだ」



 支える。


 そうしなくてはいけないと、そうしたいと。


 思うから。


 そして、それが、それこそが、



「―――それが、マスターの役割と思うから」



 マスターの―――『鑢七花』という刀を受け継いだ僕の―――役割なのだろう。







108 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/20(金) 20:58:10.38 ID:yaa1wIbQ0



 僕に、力はない。


 サーヴァントと戦う事も、戦場で彼の横に立つことも、出来ない。


 僕に出来るのは後方で彼を支援することだけだ。


 でも、それだけじゃ、駄目だ。


 必要なんだ。


 戦場で彼の傍に立ってくれる存在が、刀としてでなく戦友として共に戦ってくれる存在が。


 いなければ、ならない。



「マシュ、アムロ、お願いだ。僕に、力を貸してくれ。彼を死なせないために―――」



 頭を下げる僕に、2人は直ぐに返事をしてくれた・




「―――はい! 任せてください、マシュ・キリエライト精一杯がんばります!」


「―――ああ、任せてくれ。そう言ってくれる君になら、全力で力を貸すさ」




 二人は笑っていた。


 こんな頼りないお願いをしたというのに、何故だかとても嬉しそうに。


 優しく微笑んでくれていた。


 彼等が何で嬉しそうなのか分からないけど、僕は恵まれているんだと思う。


 こんなに優しく、頼もしいサーヴァント達と契約が出来た。


 本当に、本当に、ありがたかった。



109 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/20(金) 20:59:00.28 ID:yaa1wIbQ0



 ―――行動は、決まった。


 独断専行する七花のフォロー。


 その為に、僕達も戦場へ向かう。


 燃える市街地を進むにつれ、音が聞こえてくる。


 金属と金属がぶつかり合うような、地面が抉れ飛ぶような、凄まじい戦闘音。


 見つけた。


 そこには二体の影と相対する鑢七花がいた。


 相手は右手を異形とするサーヴァントと、薙刀を擁するサーヴァント。


 数の差が響いてか、その自身を顧みぬ戦い方のせいか、七花は既に傷を追っているようだった。




「―――アムロ―――」


「任せろ! 宝具展開・『連邦の白い悪魔(ガンダム)』―――!!」





 白い悪魔と化したアムロが2人の影と七花の間に割って入る。


 マシュもまた、七花を守るように立ち尽くす。




「……あんたら……」




 まるで自分をフォローするかのような立ち回りに驚いたのか、少し眼を見開いて七花は2人を見る。

110 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/20(金) 21:00:02.91 ID:yaa1wIbQ0

「―――七花!」


 叫ぶ。


 回復魔術を施しながら、七花に魔力を流しながら。


 渾身でもって、叫ぶ。






「君の事は知っている! 君にあった事も、今の君の気持ちも! だから―――止めない! ただ偶然、マスターになっただけの僕にそんな資格はないから―――」





「―――だけど、一緒に戦う! 君が納得いくまで、君が新しい君を見つけられるまで、僕も、僕達も、戦う!!」





「それが、僕の―――マスターとしての、役割だ!!」





「行け、虚刀流七代目当主・鑢七花! いや―――完了形変体刀『虚刀・鑢』!! 彼女の代わりになれはしないけど……それでも、僕が見届ける!」






 今度こそ、本当に目を丸くして、七花は僕を見詰めていた。


 ほんの少し―――僕の錯覚かもしれないけど―――その口元が緩まった気がした。


 それきり、七花はまた僕から視線を逸らし、相対する二つの影を見る。



「一緒に戦わせてもらうぞ、七花」


「私もです、七花さん!」


「……勝手にしろ」



 横に立つ二人のサーヴァント。



 七花は、ぶっきらぼうに言葉を飛ばし、瞳を閉じた。




「虚刀流七代目当主・鑢七花、いや―――完了形変体刀『虚刀・鑢』―――推してまいる」




 地面が砕け、七花の身体が掻き消える。


 同時に二体の影と、白い悪魔が動き出す。


 二度目のサーヴァント戦の幕が、切って落とされた―――。 

111 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/20(金) 21:06:00.32 ID:yaa1wIbQ0
今日のところは以上となります。
また書き溜めができたら、更新していきます。



あと今後の展開を見据えて、主人公の名前を決めたいと思います。

↓5の中から気に入ったものを選択。(一応主人公の性別は男という事でお願いします)
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 21:16:08.45 ID:QfkpnRIh0
数多見ヒロ(あまたみ - )
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 21:17:30.24 ID:lgsUqivSO


ぐだ男でいいじゃん
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 21:19:50.15 ID:MHt2QxlcO
むしろ>>1の考える立花やぐだ男じゃ駄目な展開ってなに?
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 21:22:19.83 ID:cZTum2pB0
笛伊戸轟(ふえいと ごう)
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 21:22:54.76 ID:MHt2QxlcO
乙です


これ以上変な奴が湧いたり居着いたりしたら嫌なのでデフォルトの立香で
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 21:23:24.93 ID:lI4hs6+Io
カルデアに辿り着く経緯がぐだじゃないから募集してんでしょ
安価は下で
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 21:23:41.69 ID:MHt2QxlcO
あ、やべ
まぁいいや、オリロンパみたいな気持ち悪いスレとか見たくないからオリ主やんな
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 21:34:40.46 ID:Ok1XxDxfO
自演で流れ誘導しようとしてミスって開き直るのは草
そもそもぐだがオリ主みたいなもんだろ
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 21:39:29.52 ID:eDK3G6gk0
一応、木村 光夫で
121 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/20(金) 22:00:25.00 ID:yaa1wIbQ0
あー、オリ主がどうとか、そこまで深く考えての安価ではなかったです。
マスター呼びだと味気ないので、適当に名前募集してみようかな的な感じでした。考えが至らず申し訳ありません。

そういう風に捉えてしまうという方もいるようなので、名前はデフォルトで『藤丸立香』にしようと思います。
候補を出して頂いた方も、申し訳ありませんでした。
また書き溜めができたら、更新していきます。
122 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 00:55:37.67 ID:cGOwQels0
更新します。
123 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 00:56:47.31 ID:cGOwQels0
 四つの影がぶつかり合っては離れていく。



 アムロは盾とビームライフルを、七花は両の手を掲げて、それぞれの対峙するサーヴァントと戦闘を繰り広げる。



 比較的有利に戦況を進めているのはアムロだった。



 俊敏に周囲を動き回る相手へ、的確な射撃を繰り出していく。



 相手が接近しようとすれば弾幕を張り、近付けさせず。



 かと思えば、唐突に急接近してビームサーベルを振るう。



 意表を突かれた相手が退こうとすれば、今度は針穴を通す如く狙撃で、その脚を縫い付ける。



 変幻自在の戦闘。



 それはサーヴァントを相手としても変わらずに。



 伝説のエースの力を見せ付けていた。



 対する七花はというと、一言で現すならば膠着状態。



 振るわれる長槍と、振るわれる両腕が、二人の間に数え切れぬ程の火花を散らす。



 鳴り響く金属音。



 生身と刃物とがぶつかり合うでは、断じてない。



 一撃一撃がおおよそ必殺の打ち合いなのだろう。



 まともに喰らえば、数百もの命があろうと足りない筈だ。



 それを互いに紙一重の所で躱し、逸らし、防ぎ合う。



 とはいえ、均衡は完全ではなく、両者共に僅かずつではあるものの傷が増えていく。
124 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 00:58:10.77 ID:cGOwQels0


 僕に出来るのは、回復魔術を繰り返し唱えるだけだった。



 微々たる回復量ではあるけど、殆ど意味のない行為なのかもしれないけど、それでも僕に出来る事は何でもやるつもりだった。



 ―――勝ってくれ。



 その想いと共に、魔力を七花へと流し続ける。



 長く長く―――まるで永劫と続くかと思われた均衡。



 不意に、それが終わる。



 まるで、前触れもなく、相手の戦い方が変化したのだ。



 速度を重視した突きから一転、渾身を籠めた突きへと。



 瞬時に、予兆もなく、戦法が変わる。



 その変化に、七花は対応することが出来なかった。



 七花も両腕を振るうが、速度を重視したそれでは相手の渾身を受け止めきれない。




 防ぎ、いなしきれなかった刃が、七花の肉を裂いた。



 宙を舞う鮮血。



 その細身の体が、この世界に来て初めて傾いだ。




「―――七花!」




 思わず叫んだ時には、既に追撃が振るわれていて。



 七花の身体が、まるで弾丸のような勢いで吹き飛ばされていた。


125 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 01:02:13.35 ID:cGOwQels0



 ―――驚くべきは、相手の技術、なのだろう。



 唐突に変化した戦法。



 ほんの一瞬を境とした緩急。



 経験の差、とでも言えば良いのか。



 相手の方が、七花よりも戦上手であった。 



 七花は、戦いの経験がそう多い方ではない。



 刀集めの旅を続けた一年―――それが、彼の経験値の全てだ。



 例え、その後の『描かれぬ物語』で旅を続けていたとしても、それがあの刀集めの経験を上回るとは思えない。




 凄まじい力を有する七花であるが、経験という点に於いて、彼は未熟と言えた。



 その差が、今この瞬間に現れたのだ。



 

「七花、無事か……!?」
「七花さん……!」




 焦燥が口から漏れた。



 それは、自分を盾で守り続けているマシュもまた同様だった。



 七花は、強い。



 しかし、相手もまたサーヴァントなのだ。



 最悪の考えが、頭を過ぎる―――。




126 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 01:14:09.88 ID:cGOwQels0




「―――キーキー騒ぐなよ。耳に障る」





 が、



 僕の心配をよそに、七花は割と平然とした様子で立ちあがっていた。



 ダメージがない訳ではないだろう。



 今も一滴、また一滴と血が滴となり、地面を濡らしている。




「…………ああ、面倒だ」




 僕を見て、マシュを見て、流れ落ちる己が鮮血を見て、相手を見て。



 七花は、一言だけ呟いた。



 同時に、疾走。



 まるで姿が掻き消えたかのような加速で、サーヴァントへと突撃する。






「宝具解放――――」






 七花に吸い取られる魔力量が、僅かに増大した。



 理解する。



 七花は宝具を使うつもりなのだ。



 その選択を、止めはしない。



 自分は彼を支えると決めた。



 だから、止めない。




 全力でサポートしてみせる―――!
127 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 01:15:08.91 ID:cGOwQels0




(行け、七花――――!!)




 治癒魔術を止め、七花への魔力供給に意識を集中させる。



 彼の宝具がどのようなものなのかは、予想できない。



 彼そのものが一本の刀としてある存在。



 『刀(ぶき)』である筈の彼が使用する『宝具(ぶき)』。




 一体、鑢七花の宝具はとは―――、











「――――――――『刀語』―――――――――」










 ―――その名を聞いた瞬間、全てを察した。


 そうだ。


 彼の宝具とは、彼の逸話とは。


 彼等が辿った軌跡そのもの―――。






「――――『斬刀・「鈍」』!!」




 

128 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 01:17:30.01 ID:cGOwQels0

 


 ―――勝負は、一瞬だった。



 直進する七花へ、神速の突きを見舞った影のサーヴァント。



 七花は己が右腕を掲げただけ。



 たったそれだけで、勝負はついた。



 相手の槍ごとに、相手の身体を。



 七花は、全て両断した。



 まるで七花の身体が『全てを斬り裂く刀』となったかのようだった。


 
 二つに分かれた影が、光となって消滅する。



 あとに残るは、鑢七花ただ一人。



 完成形変体刀とサーヴァントとの一戦は、こうして勝負がついた。


129 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 01:20:19.02 ID:cGOwQels0
一旦終了します。
何だか安価が出せないですね…。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 10:52:54.76 ID:fKloewJNO
131 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 20:21:57.60 ID:cGOwQels0
更新していきます。
132 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 20:27:05.11 ID:cGOwQels0


 七花の戦闘が終わるのと殆ど同時に、アムロもまた敵サーヴァントを倒していた。


 アムロはほぼ無傷。七花の戦闘に集中してしまっていたけど、やっぱりさすがだ。



「二人ともお疲れさま」
「お疲れさまでした。七花さん、アムロさん」
「ああ、何とかなって良かったよ。七花も良くやってくれた」
「……ああ」



 七花の傷は、そう深いものではなかった。


 治癒に専念すれば、直ぐに回復するだろう。


 


「七花はそこに座って! 今すぐ治癒魔術をかけるから!」
「……心配ねぇよ、これくらい」
「これくらいじゃないよ! 冷や冷やする戦い方するんだから、ホントに……」
「ははは、大人しくマスターの指示に従った方が良いな。君を治癒しない限り梃子でも動かないつもりだぞ、マスターは」
「……はぁ、面倒くせえ」





 嫌がる七花に無理矢理治癒魔術を行使する。


 少しばかりの足止めにはなるが、休憩も兼ねてと考えれば、まあ良いだろう。



「私も手伝うわ、藤丸」

「ありがとうございます、所長」




 所長もサーヴァントを撃退した事を買ってくれてか、意義を唱える様子もない。


 それどころか七花の治癒を手伝ってくれた程だ。しかも、自分よりも遥かに手際よく、良質な魔術で、だ。




「すげぇな、あんた」




 見る見るうちに治っていく傷に、さすがの七花も目を丸くしていた。


 自分のサーヴァントが他の魔術師を褒めているところを見ると、マスターとしては悔しいというか、何とも複雑な気持ちになる。




「別に、これくらい普通よ。この新米がへっぽこ過ぎるだけよ」

「そんなもんか」

「そんなもんね。あんたもマスターになったんだから、精進しなさいよ」

「は、はい!」



 ……ここまで言われると、正直立場がない。


 事実だけに言い返せないのが悲しいところだ。
133 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 20:27:50.18 ID:cGOwQels0

 ともかく。



 窮地は何とか乗り越えたらしい。



 マスターとして、七花に言いたい事も伝えられた。



 彼がそれにどう思っているかは分からないけど、先程までよりは距離が縮まったような気がしないでもない。



 何やかんやでこうして大人しく治癒だって、受けてくれている。



 治癒が終わるまではもう少し時間がある。



 折角の機会だし、もう少し七花と親睦を深めたい。



 そうだな―――



1.宝具のことを聞いてみる。


2.サーヴァントになった理由を聞いてみる。


3.その他(自由記載・内容によっては再安価)



↓1


134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 20:36:32.33 ID:pMOE1ca+o
1
135 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 21:30:10.52 ID:cGOwQels0

 宝具のことを聞いてみよう。



「七花、あの宝具のことなんだけど―――」



 と、口を開いたは良いけど……。


 その瞳に真っ直ぐと見透かされ、思わず言葉に詰まった。


 確かにあれは七花と彼女の、大切な物語の末の宝具。


 そう簡単に他人に話したい内容ではないのかもしれない。



「ご、ごめん……あまり話したくないよね」



 謝罪し、口を紡ぐ。


 それきり会話は続かず、気まずい沈黙が流れていく。



「……あの宝具は、俺ととがめの物語が武器となったもんだ」



 だが、不意に。


 七花が口を開いた。


 多分、初めて七花の方から声をかけてくれた。



「あんたは知ってるだろうが、俺達は『完成形変体刀十二本』を集める旅をしていた」





 『完成形変体刀十二本』。



 それは彼の物語に存在する、日本で最も価値のある十二本の刀のことだ。



 四季崎記紀という天才刀鍛冶が創り出したという十二本の刀。



 それらは一本一本に特別な性質を有しており、天下を傾けうる力すらあるとされていた。

136 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 21:44:08.18 ID:cGOwQels0

 鑢七花、そして彼の持ち主たるとがめという名の女性。



 二人は 『完成形変体刀十二本』を集めるために旅を続け、遂には十一本もの刀を収集する事に成功する。



 そして、その末に―――……。




「その中で収集に成功した『十一本の完成形変体刀』―――その『特性』を俺という刀に付与する事ができる」




 例えば、『絶刀「鉋」』であれば『絶対の頑丈さ』を。



 例えば、『斬刀「鈍」』であれば『絶対の切れ味』を。



 『鑢七花』という刀に付与できるということだ。



 


「『特性』の付与は重ね掛けも可能だ。だが、重ね掛けをすればする程、魔力の消費は桁違いに増えていく。まぁ、逆を言えば一つだけなら、そう魔力消費はしないってことだ」





 七花自体が完成された一本の刀。



 その七花へ更に『完成形変体刀』の力を上乗せられるというのなら、それは凄まじい力になるだろう。



 強力な宝具だ。



 何より―――、




 
「これが俺の宝具―――『刀語』だ」





 ―――これ以上なく、七花にぴったりな宝具だと思う。




「……何笑ってんだよ、気色悪い」

「え、笑ってた?」

「ああ、にやにやとな」




 笑っていた自覚は一つもなかった。


 ただ、そうだ。


 すごくうれしい気持ちは心の中にある。
137 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 22:04:30.87 ID:cGOwQels0


 彼ととがめとの旅の結晶。



 それについて、彼自ら話してくれたことが、とてもうれしい。




「ありがとう、七花」

「? 礼を言われる事はしちゃいないぞ」

「それでもだよ。それでも今は礼を言いたいんだ」

「……訳の分かんねえ奴だな、お前」




 一本の刀と、マスターの自分。



 まだまだ壁はあるし、七花の行動も考え方も変わらないと思う。



 それでも、少しずつ共に戦う者として関係が深くなっていけば、それはとてもうれしい事に思える。


138 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 22:05:11.34 ID:cGOwQels0
一旦終了します。
ありがとうございました。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/24(火) 01:21:12.20 ID:wpzs3gkHO

他鯖はまだ出てこないのかな?
140 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/25(水) 23:19:42.99 ID:sjNVCfmm0
特異点Fではサーヴァントの追加召喚はしない予定です。戦力が増えすぎてしまうので…。
少し更新していきます。
141 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/25(水) 23:20:21.49 ID:sjNVCfmm0




「そろそろ出発しましょうか、先輩」



 それから少しばかりの時間が経った。


 七花の治癒も終わり、僕達も身体を休めることができた。


 状態は万全。


 三体ものサーヴァントを撃退した事で精神的にも余裕が生まれてきた。



「そうだね。そろそろ探索を続けようか」



 身支度を整え、歩き始める。


 周囲の様子は変わらぬ様子で、やはり新たな発見は見当たらない。


 早くも行き詰まりを感じたその時だった。



「……マスター、誰かが見ている」

「えっ……!?」




 唐突に、アムロが囁いた。


 表情は険しい。既に気配の主を探っているようだった。



『まさかぁ。こっちではサーヴァントの反応なんて観測されてないよ』

「いや、確かに見ている。影のサーヴァントは意思らしきものが殆どなくて分からなかったが、今は確かに気配を感じる」

「マスター、どうしますか? 再び敵性サーヴァントの可能性がありますが」

「そ、そうだな。ここは―――」




1.気付いていない振りをして、相手をおびき出す


2.先手必勝! 攻撃を仕掛ける


3.対話を試みる。
 

 
↓1


142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/25(水) 23:22:02.65 ID:X4OXu67z0
1
143 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/25(水) 23:44:09.80 ID:sjNVCfmm0


「ひとまず気付かない振りをして様子を見よう。おびき出すんだ」

「了解しました……!」

「了解した」

「七花も。今は動かないでね」

「……分かった」



 方針は固まった。


 とにかく意識しないよう、自然体を装って歩いていく。



『―――アンサズ』



 その時だった。


 不意に声が響く。


 同時に飛んできたのは炎の塊。



「先輩!」
「藤丸!」



 マシュとアムロが、ほぼ同時に前に出る。 


 アムロはガンダムに変身してシールドを。


 マシュは盾を掲げて炎を防ぐ。


144 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/25(水) 23:54:16.14 ID:sjNVCfmm0


「おうおう、やるもんだ」
「あなたは―――」



 飄々とした様子で現れたのは青髪の男だった。


 木製の杖を掲げて、こちらを見据える。



「そう構えるなよ、軽いご挨拶ってやつだ。お前達の力が見たくてな」
「何をふざけたことを……!」
「ふざけちゃいねえさ。あの影のサーヴァントを倒したのはあんた達だろう? おれはアイツ等と敵対していた者だ。
 敵の敵は味方―――とも思ったが、正直有象無象と手を組んだところで、聖杯の泥に取り込まれるのがオチだからな。実力を見ておきたいんだわ」



 口は微笑んでいるものの、その瞳は全く笑っていない。


 まるで獣のように鋭い眼光だった。


 膨れ上がる魔力を感じる。


 事態は呑み込めないが、戦いを避けることは難しいらしい。



「先輩……!」
「ああ、あっちがやる気なら、やるしかない!」
「来な、本気で来ねえと殺しちまうぞ!」




 相手は一人。


 マシュは防御に回ってもらうにして、戦力はアムロと七花の二人。


 ここは―――




藤丸たちはどう戦う?


↓1 自由記載(内容によっては再安価)


145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/26(木) 00:02:55.52 ID:SB2fllfgo
だからある程度提示しろと何度言えば
ここで降伏して命乞いするとか書かれたらどうすんだよ
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/26(木) 00:06:00.31 ID:1Ul1as2DO
アムロが牽制して七花が確実にダメージを積み重ねつつ止めを刺すチャンスを覗う
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/26(木) 00:16:00.67 ID:KdFAuJnzO
>>145
内容によっては再安価って書いてあるじゃん
148 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 00:38:23.63 ID:dNo/JV2O0


「アムロは牽制、七花はその隙に攻撃して!」

「了解だ。行くぞ、七花」

「……ああ」



 ガンダムの姿を取ったアムロがビームライフルを連射する。


 それと同時に七花が駆けだし、接近する。


 正確無比な射撃が男に迫る。


 回避か防御、その隙に七花が攻撃を叩き込む算段だろう。



「―――悪いな」

「何っ……!?」



 射撃は、ほんの僅かな動作で回避された。


 それこそ微塵の隙すら発生しない程の、小さな動作で。



「飛び道具は効かねえんだわ」



 ならば、とでも言うように七花が踏み込んだ。


 装備や先程の攻撃を見るに、相手は魔術師のようだ。


 剣も槍も弓も装備していないのだ。少なくとも三騎士という訳ではないだろう。


 それなら、接近戦は七花に分がある。


 近接の間合いで、七花が両腕を振るった。


149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/26(木) 00:51:49.11 ID:RwBxCCbD0
成る程……正体が分かった
150 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 00:53:15.94 ID:dNo/JV2O0



「っ……!」



 轟音。


 七花の腕は、しかしながら相手を切り裂いていない。




「接近戦はないと見たか? 甘ぇえよ、ガキ」




 相手は、杖で受けていた。


 『槍兵のような構えでもって』、七花の突きを正面から受ける。


 まさか受け止められるとは思っていなかったのだろう。


 七花の眼が見開かれる。



「言ったよな。本気で来ねえと殺す―――ってよ」



 ゾッ、と肌が粟立った。


 殺意。


 先の影のサーヴァントような、狂気のそれじゃない。


 正真正銘の、理性から来る殺意。


 冷や水を浴びせられたように、身体が強張った。



151 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 01:07:44.85 ID:dNo/JV2O0


「ほうら、避けてみな―――!!」



 杖の切っ先から、魔術が迸る。


 炎、雷、氷……五大属性を無視するかのような、多彩な魔術が杖から噴出する。


 大きく後退しながら回避行動に入る七花。


 だが、とても避けきれない。


 遂には炎魔術が七花を燃やし尽くさんと迫る。



「―――『刀語 薄刀・「針」』」



 が、炎が七花に届く事はなかった。


 まるで風に巻かれる一枚の紙ように、七花の身体が熱風に押される。


 薄刀・「針」―――その特性は「薄さ」と「軽さ」。


 羽毛の如く軽さで、炎の勢いに逆らわず、熱風に流されることで回避したのだ。


152 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 01:25:34.79 ID:dNo/JV2O0


「はっ、面白れぇな! なら―――」

「―――させるか!」

「―――っ!」



 追撃の構えを取った瞬間、男にアムロが斬りかかる。


 鋭い踏み込みと共にビームサーベルを一閃。


 男は虚を突かれたものの、槍の構えで迎え撃つ。


 サーベルを避け、返しの突きを放つ。


 が、アムロはそれすらも易々と回避し、再びサーベルを振るった。



「ちぃっ―――!」



 たまらず距離を取る青髪の男。


 アムロは隙なく構えながら、男を見る。


153 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 01:36:48.51 ID:dNo/JV2O0


「近接戦の心得はあるようだが、飽くまで『戦える』といった程度らしいな」

「抜かせ。本来のクラスで召喚されてりゃ、今頃お前は立っちゃいねえよ」

「そうなのかもしれないな。だが―――」



 挑発するような口調の途中、突然アムロの身体が宙に浮いた。


 背中と足裏のバーニアを吹かして、まるで宙返りをするように浮き上がる。


 人間にはできない、モビルスーツだからできる、ノーモーションからの動作。


 その背後から現れたのは―――鑢七花だった。


 七花の突撃を、アムロは自らの姿でギリギリまで隠していた。


 その上でノーモーションで動き、男の不意をついたのだ。



「ちぃっ―――!!」



 男の反応は目に見えて鈍い。


 それでも杖を横薙ぎに振るったのは流石と言えるだろう。


 苦し紛れだが、正確な一振りが七花を迎撃する。

154 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 01:53:28.65 ID:dNo/JV2O0


 だが―――、




(残像―――!)



 七花の姿が掻き消える。


 虚刀流七の構えから繰り出される、前後方向自在の足捌き。


 特殊な歩法により緩急をつけ、男の一撃を避けたのだ。



「虚刀流奥義―――落下狼藉!!」

「ぐっ―――!!」



 空振りを見据えての、踵落し。


 男は何とか身を捩って直撃を避ける。


 だが、完全に躱し切るには至らず。


 衝撃をそのままに受け、後方へ吹き飛ぶ。


155 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 01:59:43.62 ID:dNo/JV2O0


「―――やるじゃねえか。どうやらあんた等の事、見くびってたみたいだな」



 左腕より血を滴らせながら、それでも男は軽口を零した。


 最初は押されたものの、数の差もあってか戦況は有利と言えた。


 冷静に立ち回れば、七花もアムロも決して相手に劣ってはいない。



「……力を見る、というのが目的ならば、もう十分だと思うが」

「そうさな。あんた達二人の力はそれなりに分かった。確かに充分だろう」



 男は降参の意を示すように、両手をあげた。


 安堵の息が漏れる。


 どうやら戦いは終わったようだ。



156 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 02:01:13.49 ID:dNo/JV2O0


「だが―――そこの嬢ちゃんの力はまだ見てねえな」



 直後、その考えが誤りだったと理解する。


 凄まじい魔力が肌を突き刺す。


 これまでのより更に強大で、凶暴な、魔力の奔流。


 これは、まさか―――




「そぅら、防がねえとマスターが死んじまうぞ!!」





 ―――宝具。
 




「焼き尽くせ木々の巨人―――――『 灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!! 」




157 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 02:04:50.60 ID:dNo/JV2O0



 アムロと七花が、動く。


 僕とマシュの前に立ち塞がり、共に防御の構えを取る。


 だが、無理だ。


 例えガンダムの盾だろうと、例え完成形変体刀の肉体であろうと、あれを受け止めるには至らない。


 どうする。どうする。どうする。


 焦燥の中で、だが答えはでず。


 燃え盛る藁の巨人が近付いてくる。


 アムロも、七花も、僕も。


 ただ身を固くして、次に来るであろう衝撃に備えるだけだった。


 そんな中で。


 唯一動いた者がいる。





「―――マシュ―――」




 円と十字架を模った巨大な盾を手に、少女は一歩前に出る。


 そして、





「宝具、展開します――――!!」





 全てを守る盾が、顕現した―――。


158 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 02:05:17.99 ID:dNo/JV2O0
一旦終了します。
ありがとうございました。
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/31(火) 20:04:43.64 ID:pmipv7Tw0


ものすごく期待してる
160 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/11/02(木) 00:29:14.91 ID:AYlM/iMm0
少し更新していきます。
161 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 00:30:11.28 ID:AYlM/iMm0





 私は、ずっと考えていた。


 何のためにここにいるのだろうと。


 何のために、サーヴァントとなったのだろうと。


 既にマスターは二人のサーヴァントを召喚している。


 御伽話の世界からの、凄腕の英霊達。


 二人は私なんかよりもずっと強くて、ずっと逞しくて。


 マスターを危険に晒す事なんて、そもそもなくて。


 私がいる意味なんてないんじゃないかと、ずっと思っていた。


 守ることしか―――いや、宝具も使えず、守ることすら出来ないサーヴァント。


 真名も知らず、己が力を発揮することもできないサーヴァント。


 役立たずの、サーヴァント。


 ずっとずっと、そう思っていた。


 それは今回の戦いでもそう。


 突然現れた青髪の魔術師。


 先程の影のサーヴァントよりも遥かに強い彼を相手にしても、二人は互角以上に戦っていて。


 私はマスターの側で、それを見ているだけだった。


 加勢することも、サポートすることも、できずにただ見ているだけ。


 とても情けなく、不甲斐ない気持ちで一杯だった。

162 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 00:40:31.41 ID:AYlM/iMm0


 この人の―――あの朝に出会い、ただそれだけの関係なのに、死の間際まで共にいてくれた人の―――力となりたかったのに、


 なのに、なのに。








「焼き尽くせ木々の巨人―――――『 灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!! 」






 我に返ると、視界は真紅に染まっていた。


 凄まじい魔力。凄まじい熱量。


 炎を纏う藁の巨人が、ゆっくりと近付いてきている。


 アムロさんと七花さんが私達を庇うように立つが―――無理だ。


 例え二人でも、あれとぶつかってただで済む訳がない。


 いや、後ろにいるマスターだって―――死んでしまう。




(守らないと、使わないと、みんな消える―――。仮初めでもいい、未熟でもいい、今だけでもいい。私が、私がやらないと、みんな無くなってしまう―――)





 前にでる。


 アムロさんよりも、七花さんよりも、前に。


 そう、今は私が、私がやらなくちゃ―――








「宝具、展開します――――!!」




 
 
 藁の巨人が放つ真紅すら染め変えて、白が全てを包み込んだ―――。



163 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 00:47:07.55 ID:AYlM/iMm0




 世界に色が戻っていく。


 直前まであった灼熱は、もうどこにもない。


 自分の身体を見る。


 宝具をくらったというのに、傷の一つもない。


 前に立つアムロも七花も同じだ。


 傷一つなく―――そして、僕と同じ様に驚いた様子で―――立っている。



「―――マシュ」



 そう、全てはマシュが起こした。


 自らの宝具を展開して、男の宝具を正面から受け切ったのだ。



「やった……私、宝具を展開、できた……」



 マシュ自身も信じられないような様子だった。



「驚いたな。まさかこんな力が……」


 アムロが小さく呟いた。


 七花もまた目を丸くしていた。


 彼等ですら死を覚悟したんだと思う。


 そんな必死の状況を打破したのだ。



「すごい……すごいよ、マシュ!」



 駆け寄り、その手を握る。


 あの時と同じ、小さく、でも暖かな手。


 こんな小さな手が、それでも僕達を守ってくれた―――、



「……なんとか一命だけはとりとめると思ったが、まさかマスターともども無傷とはね」



 青髪の魔術師も、驚きを表情に滲ませていた。


 その表情に既に殺意はない。


 攻撃する様子がないという事は、『実力を見る』のは終わったのだろう。

164 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 00:59:35.35 ID:AYlM/iMm0


「……こちらの実力は分かってくれたようだな」
「ああ、十分に分かったよ」
「それは何よりだ。こちらも死ぬ思いをした甲斐があったよ」
「悪かったな。こっちも命がかかってるもんでよ。少しは手ぇ抜いたんだぜ、あれでも」



 アムロの皮肉めいた言い回しもどこ吹く風。


 青髪の男は口笛を吹いて、僕とマシュを見詰める。



「あんたにも謝っておかねえとな。悪かったな、何処ぞのマスターさん」



 ニヤリと笑いながら、男は続けた。
 


「―――喜べよ。あんたのサーヴァント達はどれも一級品だ」



 どこの時代の、どの英霊かは分からない。


 それでも、サーヴァント自身からそういわれると、何故だか自分のことのようにうれしくなる。


 そう、アムロも、七花も、マシュも、皆すごいサーヴァントなんだ。


 例え虚構の世界からの英霊だとしても、例え真名も宝具も分からない英霊だとしても、みんな―――。



165 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 01:01:00.05 ID:AYlM/iMm0



「さて、本題に入らせて貰おうか―――」



 魔術師は語る。


 この冬木という街であった聖杯戦争。


 彼はそれにキャスターとして召喚され、戦っていたという。


 だが、街は一夜の内に姿を変えた。


 人という人が消え、残ったのは7体のサーヴァントと、無尽蔵に湧き出てくる怪物達のみ。


 初めに、聖杯戦争を再開したのはセイバーだったという。


 キャスター以外のサーヴァントはセイバーに敗北し、あのような影のサーヴァントに姿を変えた。

 
 そして、最後に残ったキャスターを倒すべく、活動を始めたとのことだ。




「つまり一人では太刀打ちできないから、力を貸してほしいと」

「まぁ、そういうこったな。この世界で唯一マトモ、そんでもって腕もあるってんなら、手を組まない選択肢はないだろう」

「そうだがな……。もう少しやり方っていうものは無かったのか?」

「細かい事を気にすんな。こんなふざけた状況で出会っちまったんだ。一蓮托生と行こうぜ」




 セイバーは強力なサーヴァントだという。


 キャスターですら勝利は難しいという程に。


 異変の原因がセイバーにあるとするのなら、激突は避けられない。
166 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 01:05:00.55 ID:AYlM/iMm0
 歴史の保障を否定した事象。


 その原因。


 セイバーが何をしたのかは、分からない。


 何をどうすれば、こんな風に世界を創りかえられるのか。


 何をどうすれば、人の歴史を消滅させることができるのか。


 僕の小さな思考じゃ、とても理解しきれない。


 それ程までに強大な力を、セイバーは有しているのかもしれない。


 とても太刀打ちできる相手ではないのかもしれない。


 でも。


 それでも。




「―――戦おう」




 気付けば言葉が出ていた。


 みんなの視線が一斉に向けられる。


 そう、戦わなくてはいけないんだ。


 カルデアの一員として、みんなのマスターとして―――戦う。


167 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 01:15:59.83 ID:AYlM/iMm0



「そうでなくてはな」



 アムロは珍しく笑みを浮かべていた。



「分かった」



 七花は小さく―――だが、力強く頷いた。



「やりましょう、マスター」



 少女は真っ直ぐに僕を見る。


 どこまでも付いていくと、その瞳が語っているような気がした。




「いい心意気じゃねえか。面白いぜ、カルデアのマスターさんよ」



 話は決まった。


 目指すは異変の根源。


 そこに待ち受けるセイバーの元へ。


 僕達は進む事となった。




168 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 01:17:35.48 ID:AYlM/iMm0
今日は以上となります。
また書きダメができたら更新します。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/20(月) 12:12:59.92 ID:doFBB4M40
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