勇者「バッドエンドじゃ終わらせねえ!」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:04:10.65 ID:M7RwPTHco


剣士「海賊たちは、あの洞窟の中だ」


魔法使い「とうとう、追い詰めましたね」


剣士「ああ・・・俺たちの旅も遂に終幕だ」


魔法使い「いろいろありましたね・・・」


剣士「そりゃあそうさ、一年も一緒に旅してたんだ」


剣士「しかし、俺を仇と勘違いして斬りかかってきた君と、旅をすることになるとはなあ」


魔法使い「剣士さんっ!その話はしないって約束だったじゃありませんか!」


剣士「ははは、ごめんごめん」


魔法使い「旅が終わるんですね、少し寂しい気もします・・・」


剣士「・・・」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1507446250
2 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:05:15.84 ID:M7RwPTHco


剣士「おっと、気を抜きすぎたな!ともかく海賊どもを倒すとしよう」


剣士「おしゃべりは、その後でいいだろ」


魔法使い「そうですねっ・・・」


勇者「すきありーっ!」ぽかっ


勇者の攻撃
剣士は昏倒した


剣士「」ちーん


魔法使い「えっ!えっ!だっ誰ですか!?海賊の仲間っ!?」


勇者「問答むよーう!」ぽかっ


勇者の攻撃
魔法使いは気を失った


勇者「あなた方の旅の終わり、バッドエンドは似合いません!」
3 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:05:43.29 ID:M7RwPTHco


------


戦士「あ、こんな所にいたよ」


僧侶「勇者!あんた、また勝手に飛び出して!!」


賢者「ほっほっほ、勇者様は元気がええのう」


賢者「しかし、急に駆けだしたときは何事かと思ったぞ」


僧侶「あっ!なにこのカップル!なんで気を失ってるの!?」


戦士「うわ、すげえタンコブ。痛そう」


僧侶「勇者!?」


勇者「はい、わたしがやりました!」


戦士「・・・また例のあれか」
4 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:07:04.04 ID:M7RwPTHco


勇者「バッドエンドの匂いがしたのです!」


戦士「相変わらず鼻が利くなあ」


勇者「わんわんっ!」


僧侶「どういうことよ!理由を説明しなさい!」


勇者「こうせざるを得ない事情があったのです!」


僧侶「だからそれを言えって言ってんの!」


賢者「お主たちのキャットファイトは、それはそれで魅力的ではあるが」


賢者「二人とも、そこらへんにしておきなさい」


僧侶「でもっ!」


賢者「お客さんじゃよ」


戦士「!」
5 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:07:30.92 ID:M7RwPTHco


海賊A「お前らこんなところで何やってんだ・・・?」


海賊B「へっへっへ、女が三人!しかも上物だ!」


海賊C「売り払う前に、順番で回そうぜ!」


海賊頭領「お前たち!女には傷をつけるな!あとは好きにしろ!」


海賊「「「よーほーっ!」」」


勇者「よーほーっ!!」


戦士「気に入ったのか、そのフレーズ」
6 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:07:58.28 ID:M7RwPTHco


------


賢者「なんじゃ、口ほどにもない連中じゃったのう」


僧侶「ああもう!服に血がついちゃった!」


戦士「ん?あの程度のやつらに、傷を負わされたのか?」


僧侶「返り血よ!か・え・り・ち!」


賢者「ほっほ、儂が洗って差し上げよう僧侶よ」


賢者「さあ、服を脱ぐがよい」


賢者「こう見えて、クリーニングには定評があっての」


賢者「儂の絶技、否、舌技見せて進ぜよう!ほれ、はよう股を開かんか!」


僧侶「こんの糞じじい!!!」
7 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:08:30.15 ID:M7RwPTHco


戦士「爺さん、セクハラしてる暇があったら手伝え」


勇者「そうですよ!そこの冒険者カップルの身ぐるみを剥ぐのを手伝ってください!」


僧侶「な、なにしてるのよっ!あんたたち!!!」


戦士「なにって、身ぐるみ剥いでる」


僧侶「海賊どもなら兎も角、なんでカップルから略奪してるのよ!?」


賢者「お、戦士殿!この魔法使い娘、着痩せするタイプじゃぞ!!」


賢者「おひょひょひょ、役得役得ぅ!」


僧侶「海賊の死体ともども埋めるわよ糞じじい!その娘から離れろ!!」


賢者「・・・ん?すまんのう最近、耳が遠くて」


賢者「なんなら膝枕アンド耳かきで、儂の耳を綺麗にしていただけるとありがたい」
8 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:08:57.94 ID:M7RwPTHco


戦士「そこまでだ爺さん、それ以上は見過ごせねえぜ。娘から離れろ」


賢者「・・・むぅ」


賢者「せっかくのお楽しみが・・・」


僧侶「勇者ぁっ!」


勇者「あ、はい、理由ですね」


勇者「身ぐるみ剥いだら、ぜんぶ説明しますから」


勇者「あ、海賊達は死体ごと持っていくので後で良いですよ」


勇者「ほら急いで急いで、カップルが目を覚ます前に姿を隠しますよ」


戦士「だとよ、さっさと終わらせようぜ」


僧侶「もうっ!納得できなかったらゲンコツだからねっ!」


賢者「///」


僧侶「・・・なんで頬を染めるのよ」
9 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:09:30.90 ID:M7RwPTHco


------


剣士「・・・んあ」


剣士「・・・なんで俺は、こんなところで素っ裸になってるんだ」


剣士「隣には肌着一枚の魔法使い・・・」


剣士「誤解を生みそうな状況だな」


魔法使い「・・・、ん、あ、おはようございます」


剣士「おはよう、魔法使い」


魔法使い「・・・」


魔法使い「!?」


魔法使い「///」


剣士「・・・海賊共に裏をかかれたのかな?」


魔法使い「あ、そ、そうですよね、そうでした、私ったらまた勘違いを・・・」
10 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:10:01.68 ID:M7RwPTHco


魔法使い「・・・」


魔法使い「海賊どもの仕業・・・そう考えるのが妥当ですね」


剣士「お前、持ち合わせある?」


魔法使い「お財布は一緒でしょ・・・」


剣士「剣もない、服もない、貯蓄もない・・・」


魔法使い「仇の海賊どもの姿も見えませんね・・・」


剣士「何にせよ、俺たちが未熟だったってことか」


魔法使い「そのようですね」


剣士「・・・命があるだけ幸いか」


剣士「事情を説明して、近くの村で施しを受けよう」


魔法使い「装備を調えるお金も貯めないと・・・」


剣士「腕も磨かないとな」


魔法使い「・・・ふふっ」


剣士「どうした・・・?」


魔法使い「・・・まだまだ、私たちの旅は続きそうですね///」


剣士「・・・そうだな」
11 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:10:27.68 ID:M7RwPTHco


------


勇者「ね?」


戦士「うん、ハッピーエンドだな」


賢者「紛れもないハッピーエンドじゃ、この後ふたりはめちゃくちゃ・・・」


僧侶「う〜ん・・・まあ、事情は何となく分かったけど・・・」


戦士「納得がいかないようだな」


僧侶「まあねえ・・・」


僧侶「見るに、あの海賊どもが誰かの仇だったんでしょ?」


僧侶「だったら別に、仇をとらせてやってもよかったんじゃない?」


賢者「一理あるのう」


勇者「いえ」


勇者「彼らじゃ力不足でした」
12 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:10:54.08 ID:M7RwPTHco


勇者「奇跡が起こって仇をとったとしても、男の方は間違いなく死んでいたでしょう」


勇者「決着がつき、一瞬の油断、盗賊の頭領が放ったナイフ、女を守る為に身代わりになる男」


勇者「男は、女に愛の言葉をささやき、そして天に召されます」


勇者「女は、彼を救えなかったことを一生後悔しながら生きることになったでしょう」


勇者「バッドエンドです」


勇者「そんな終わりかた、気に食わない」


賢者「えらい具体的じゃのう?」


戦士「勇者は昔から、演劇が好きだったからな」


戦士「想像力が豊かなんだよ」


僧侶「なら、助太刀するとか・・・」


勇者「この物語の主役は彼らです」
13 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:11:23.40 ID:M7RwPTHco


勇者「私たちは観客に過ぎない」


僧侶「彼らを昏倒させて、盗賊ども薙ぎ払っておいて?」


勇者「ラストシーンに納得がいかない観客が」


勇者「舞台に乱入することもあるでしょう?」


賢者「らんにゅう・・・エッチな響きじゃ・・・」


戦士「そうだな」


僧侶「いいのかなあ・・・これで・・・」


勇者「いいんです」


勇者「だって」





勇者「ハッピーエンドなんですから」
14 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:17:41.95 ID:M7RwPTHco


------


------------


街の酒場


戦士「久しぶりの休息だな」


賢者「強行軍もいいところじゃからのう、この年だと辛い辛い」


僧侶「まあまあ、そうグチグチ言わないの」


僧侶「私たちが魔王を倒せば、それだけ早くこの世界に平和が訪れるんだから」


勇者「もぐもぐ」


勇者「できれば、その舞台も観客席で観たいんだけどなあ」


僧侶「またそれ?勇者」


僧侶「私たちの旅は演劇とは違うのよ」


僧侶「現実に人々は苦しんでいるし、気を抜けば待っているのは死よ」
15 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:18:10.46 ID:M7RwPTHco


戦士「まあ、そう言うな僧侶」


戦士「こいつは昔っからこうなんだよ」


戦士「世界は舞台、人々は演者、そんでもって勇者は観客」


戦士「女神さまは何でこいつを勇者なんかに選んだのかねえ」


僧侶「ちょっと!女神さまへの冒涜は許さないわよ!」


賢者「むしろ勇者様への冒涜の気がするがのう・・・」


勇者「・・・ん!」


戦士「どうした?勇者」


勇者「臭いです」




大男「おい!今回はやばすぎる!俺は降りるぞ!」


格闘家「・・・かまわないさ、俺一人で行く」


大男「違う!俺はそんなことを言ってるんじゃねえ!」
16 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:18:38.60 ID:M7RwPTHco


戦士「あっちの席、なんか揉めてるなあ」


賢者「ほっほっほ、この喧噪あっての酒場じゃ」


賢者「若者共のぶつかり合いを肴に一杯楽しもうではないか」


勇者「ぷんぷんします」


僧侶「あ・・・あいつら」


賢者「なんじゃ、知り合いか?昔の男か?図星じゃな僧侶よ」


賢者「今夜、儂が慰めて差し上げようではないか!ほれ胸を貸そう、否!胸を貸すのじゃ!」


僧侶「そんなんじゃないわよ・・・ちょっとごめん」


戦士「行っちまった」


賢者「そっけなくて、ちと寂しいわい」
17 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:19:18.24 ID:M7RwPTHco


大男「いまさらお前が一人で出て行って収まる話じゃねえんだ!」


格闘家「これは、俺のケジメなんだよ」


僧侶「・・・見つけたのね」


格闘家「・・・僧侶か」


大男「僧侶!お前、今まで何処に行ってたんだ」


僧侶「そんなことどうでもいいでしょ、それより」


格闘家「ああ、あいつを見つけたんだ」


僧侶「行くのね?」


格闘家「・・・ああ」


僧侶「・・・私が行くなって言っても?」


格闘家「お前は俺の何なんだよ・・・」


僧侶「そう、あんたの葬式に出るつもりはないわよ」


格闘家「呼んでも来ねえだろ・・・」




戦士「ああ、これは俺でもわかる」


勇者「バッドエンドの匂いです」


賢者「儂は勇者様の匂いを嗅ぎたい」
18 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:19:45.19 ID:M7RwPTHco


------


戦士「で、ここまでついてきたわけだが」


賢者「お!あの格闘家、屋敷の壁をあっさり飛び越えてしまいましたぞ!」


賢者「目的地はこの屋敷で間違いないようじゃの」


勇者「開幕中はお静かに!」


戦士「へいへい」


僧侶「・・・」


戦士「実際、どうするつもりだ勇者?」


賢者「この間と同じ手でいくのは如何かな?」


賢者「推測するに、仇を見つけて一人で戦いに赴くと言ったところ」


賢者「ケースとしては前回のムチムチ魔法使いと同じパターン」


賢者「ならば同じ道を辿ればよい」


勇者「いえ、それは無理です」
19 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:20:11.35 ID:M7RwPTHco


戦士「どうして?」


勇者「あの格闘家相手に不意を突くことはできません」


戦士「やってみなきゃわからんぞ」


勇者「いえ、わかります」


勇者「彼の目と勘」


勇者「異常です」


賢者「ふむ、儂にはそれほどの男には見えんが」


僧侶「・・・流石ね勇者」


僧侶「あの格闘家相手に奇襲は無駄よ」


僧侶「あいつは、背後から弩を打たれたとしても避けられるわ」


賢者「それほどの手練れなら、あっさり仇も討ってしまうんじゃないかのう」


僧侶「相手も同等かそれ以上の化け物よ・・・」
20 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:20:38.17 ID:M7RwPTHco


戦士「・・・最悪、気づかれても4人がかりなら、どうにかなると思うが」


勇者「だめです、舞台への乱入は最後の手段です」


賢者「ふむ、観客の矜持と言ったところじゃな」


勇者「それに同じ手はとりたくないです」


賢者「そりゃまた何故じゃ?」


勇者「前回と同じじゃあ」


勇者「つまらない」


僧侶「・・・呆れた」


僧侶「・・・悪いけど今回は別行動をとらせてもらうわよ」


僧侶「あんたらには付き合いきれない」


戦士「おいおい」
21 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:21:07.41 ID:M7RwPTHco


賢者「まあまあ、落ち着きなされ」


勇者「どうぞご自由に、僧侶さん」


勇者「今回は、あなたも演者の一人のようですし」


僧侶「いい加減にして・・・こんな奴が勇者だなんて」


僧侶「神託さえ無ければ、絞め殺してやりたい気持ちよ・・・」


僧侶「・・・」


僧侶「あとで、合流するから・・・」


戦士「あーあ、行っちゃった」


賢者「ほれ勇者殿、我々も続きましょう」


賢者「出遅れちゃあ、いいところを見逃してしまいますぞ、ぐへへ」


戦士「いちいち言い方がいやらしいんだよなあ」


勇者「そうですね、では抜き足差し足忍び足で」


勇者「よろしくおねがいします」


勇者「にんにん」
22 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:21:34.98 ID:M7RwPTHco


------


格闘家「・・・久しぶりだな、狂戦士」


狂戦士「・・・格闘家か」


格闘家「そろそろ決着をつけようじゃないか」


狂戦士「お仲間も一緒か」


格闘家「!」


僧侶「・・・」


格闘家「・・・何しに来た」


僧侶「あんたが死んだら誰が死体を持って帰るのよ」


格闘家「手は出すなよ」


僧侶「・・・」


狂戦士「準備はよろしいかな諸君」


狂戦士「では、始めよう」
23 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:22:02.78 ID:M7RwPTHco


------


狂戦士「」


格闘家「」


僧侶「・・・」


勇者「終わったようですね」


僧侶「・・・手が出せなかった」


僧侶「少しでも助けになればと思ったけど・・・レベルが違いすぎた」


賢者「正解じゃのう、下手に手を出してれば相手に利するどころか」


賢者「お主が死んでいたかもしれんぞ」


賢者「それほどの戦いじゃった」


僧侶「で、感想はどうよ勇者様?」


僧侶「・・・楽しめた?」
24 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:22:33.15 ID:M7RwPTHco


勇者「バッドエンドは嫌いです」


僧侶「流石のあんたでも、今回は何もできなかったのね・・・」


僧侶「なにが観客よ・・・ただの傍観者じゃない」


勇者「僧侶さん、蘇生魔法は使えますか?」


僧侶「無駄よ・・・蘇生魔法で生き返らせられるのは女神の加護を受けたものだけ」


勇者「使えますか?」


僧侶「使えるわ・・・」


勇者「では、女神を召喚しましょう」


賢者「なんじゃと?」


賢者「そんなこと・・・」


勇者「できます」
25 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:23:40.66 ID:M7RwPTHco


賢者「一体、どうやって・・・?」


勇者「私にもたらされている勇者の力は、女神様の力の一部です」


勇者「この力は、常に女神様とつながっています」


勇者「ですので、あとは綱引きの要領で女神様を現世に引っ張り出します」


賢者「えらい力技じゃのう」


戦士「と言うかお前、勇者の力なんてもん授かっていたのか?」


戦士「まあ、女の身にしては動けるとは思うが・・・その程度のもんだぞ」


勇者「勇者の力は、身体能力を高める類のものではありません」


賢者「そうじゃったのか」


勇者「さあ、説明はこれくらいでいいでしょう」


勇者「今回は、せっかく僧侶さんも役がもらえたんです」


勇者「ハッピーエンドを始めましょう」
26 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:24:07.21 ID:M7RwPTHco


------


女神「なに?もう・・・私を現世に召喚するなんて無理しちゃって」


戦士「あっさり出てきた」


僧侶「あわわ・・・」


勇者「お久しぶりです」


賢者「おおおおおおお、女神さまじゃ!美しい!美しいぞお!」


戦士「泣くな爺さん、うっとうしい」


女神「時間は少ないわよ、早く要件を言ってちょうだい」


勇者「あそこに倒れている格闘家に女神さまの加護を」


女神「あーはいはい、そういうことね」


女神「ではホイっと」


戦士「軽いな・・・」
27 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:24:33.68 ID:M7RwPTHco


女神「はい、完了」


戦士「早いし」


女神「で、捧げものは?」


勇者「・・・」


勇者「右目では、どうでしょうか」


女神「うーん・・・ちょっと少ないけど・・・ま、いいか」


女神「観客であり続けたい貴方にとって目は大事ですものね」


女神「出血大サービス!召喚分と施し分、目ん玉ひとつで手を打ちましょう!」


僧侶「なっ!」


勇者「では、どうぞ」


勇者「ぐ」


女神「はい、ではまたのご利用をお待ちしておりまーす」
28 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:25:00.52 ID:M7RwPTHco


勇者「さようなら」


賢者「あぁ・・・もう行ってしまわれた・・・儂の女神様・・・」


戦士「爺さんのじゃねえよ」


僧侶「あんたっ!何してんのよ!」


僧侶「目がっ!それに血がっ!」


戦士「爺さん、勇者に回復魔法を頼む。血だけでも止めてやってくれ」


賢者「む、相分かった」


賢者「回復魔法キュア」


勇者「・・・ありがとうございます。では僧侶さん」


勇者「蘇生魔法を格闘家さんに」


僧侶「ありがとうだなんて言わないわよ!」


僧侶「だいたい、あんた今後はどうするのよ!」
29 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 16:25:38.71 ID:M7RwPTHco


僧侶「片目で倒せるほど魔王は容易くないわよ!」


勇者「僕の目は、観劇のためのものです。戦うためのものじゃない」


僧侶「屁理屈を!」


僧侶「今後も、人死にを見る度に代償を払って女神様を呼び出すつもり!?」


僧侶「それとも私に同情したって言うの!?」


勇者「観客は往々にして、演者に共感するものですよ」


勇者「それに今回は、どうしようもありませんでした。これは、今回限りの奥の手です」


勇者「だいたい、神の登場で物語を締めくくるのは安直すぎます」


勇者「ハッピーエンドは筋に沿ったものじゃなきゃ」


戦士「機械仕掛けの神ってやつか」


勇者「今回の物語は、残念ながら駄作ですね」




勇者「だが、それでも」






勇者「ハッピーエンドに変わりない」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 17:49:19.41 ID:A6bI/yYq0
勇者女か
31 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 20:29:15.46 ID:M7RwPTHco


------


彼女の鼻は、あらゆる物語からバッドエンドを嗅ぎつける


俺と彼女は幼いころからの付き合いだ
彼女に父親はなく、母親も勤めに出ており
近所で面倒見のいいと評判の、俺の母親に預けられていることが多かったからだ
年の近かった俺と彼女は、兄妹のようにいつも一緒だった


俺の母は、演劇が大好きで
時折、街にやってくる芝居小屋には俺たちを連れ立ち、必ずと言っていいほど足を運んでいた
彼女の演劇好きは、俺の母親ゆずりなのだ
実を言うと、演劇は俺も嫌いではないのだが


今の彼女は、バッドエンドを憎み、ハッピーエンドを好む
誰がどう見ても、立派なハッピーエンド中毒者だ
だが、幼いころからそうであったわけではない
むしろ彼女は、悲しい結末の演劇も好んでみる子供だった
当時、彼女にどういった芝居が好きか尋ねたことがある
「心が、どったんばったん動かされるやつ!」
彼女が求めていたのは、心動かされる物語
たとえその指針がマイナスに振れたとしても
重要なのは心の振れ幅、その絶対値にあったのだ
32 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2017/10/08(日) 20:29:41.82 ID:M7RwPTHco


彼女がバッドエンドを忌避するようになったのは
俺の母親が、流行り病で死んでしまってからだった
俺と彼女は、これまで以上に演劇にのめり込んでいった


彼女は言う
「世の中は、こんなに辛いことに溢れてるんだから芝居ぐらい全部ハッピーエンドでいいのに」


その頃からだ
彼女はバッドエンドに鼻が利くようになった
芝居の中盤辺りになると、バッドエンドの香りがします
そういって、出て行ってしまうのだ
彼女の見立てはたいてい当たっていたが、外れることもしばしばあった
俺が自慢げに、「どんでん返しの大団円だった」と言うと
悔しそうに地団太を踏むのだ、それがたまらなく愉快だった
そうして彼女のヒステリーを一しきり楽しんだ後、二人でもう一度、その芝居を見直しに行った


彼女のハッピーエンド中毒は、徐々に悪化していく
遂には、舞台に上がり込み悪役を蹴り飛ばすようになった頃
彼女は勇者に選ばれた
それ以来だ
彼女は、これまで以上にバッドエンドを嗅ぎつけるようになった
彼女が「バッドエンドだ」と言えば、必ずそうなる、信じられないが必ずだ
かつてのように、見立てが外れることはなくなっていた


彼女は勇者の力を授かったと言っていた
もしかすると、その力がバッドエンドを嗅ぎつける一助となっているのかもしれない
バッドエンドをハッピーエンドに変える
それが勇者の役割であると言わんばかりに
そうであるならば、俺は女神を恨む
女神は彼女から心休まる日々を奪った
常にバッドエンドに怯える彼女を、無理やり舞台に引き上げた、くそったれの女神を


心から
78.04 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)