【艦これ】提督「風邪をひいた日」

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1 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:38:31.78 ID:gLTdpLwFo

提督「頭が痛いし体に力が入らない……ごほっごほっ」

提督「しかし……これしきのことで軍務を滞らせるわけにはいかない……」むくり

――コンコン。

阿武隈「ていとくーっ! おはようございます!」

提督「……ああ、阿武隈。すまない……すぐ行くから」

阿武隈「……? 提督、声がかすんでますけど……入りますよ?」

ガチャ

提督「やあ、阿武隈……おはよう」

阿武隈「おはようございます……って提督! 顔真っ赤じゃないですか!」

提督「なに、気にすることはないさ。それより今すぐ行くから先に行ってくれ」

阿武隈「なに言ってるんですか! そんな高熱で仕事するつもりなんですか!」

提督「いやいや、そんな大げさなものではない、これくらいで休むわけには――」

阿武隈「ダメです」

提督「いやだから大したことは――」

阿武隈「ダメです、まずお医者さんに診てもらってください」

提督「……分かった」

阿武隈「じゃあ着替えたらさっそく医務室に行きましょう! 肩貸してあげますから!」

提督「いやそこまでしてもらわなくても良いんだが……」

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2 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:39:30.05 ID:gLTdpLwFo

――しばらくして。

阿武隈「38.7度……今日はお休みしてください」

電「幸いインフルエンザではないとお医者さんが言ってくれたので、数日安静にしていれば大丈夫なのです」

提督「それなら仕事しても――」

阿武隈「ていとく?」

提督「ごほっ……そうだな、あまり心配かけても悪いし、阿武隈達にうつしても申し訳ないか」

阿武隈「そういうことじゃなくて、もっと自分をいたわってください」

電「大規模作戦の後処理も完了しているので、電達だけでもなんとかなるのです!」

阿武隈「そうですよ! 今の提督の仕事は休むことです! ね、電ちゃん」

電「なのです! 今日は電達に任せて欲しいのです!」

提督「……ありがとう、阿武隈。電」

阿武隈「ふふっ、任せて任せて!」

電「なのです! 阿武隈さんがいれば電達も大丈夫なのです!」

提督「……そうだな、阿武隈がいれば大丈夫だな」

阿武隈「って、二人ともなんでそこまであたしの名前を出すんですか」

電「阿武隈さんだからなのです!」

提督「阿武隈だからだよ」

阿武隈「なんなんですかそれぇ!?」
3 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:40:02.88 ID:gLTdpLwFo

蒼龍「そうそう、私達に任せておけば安心だからさ」

熊野「そうですわね。私達がお互いにサポートしますから、数日くらい提督がいなくても問題ありませんわ」

阿武隈「二人ともいつの間にここに!?」

蒼龍「提督が風邪だと聞いたの。阿武隈の手伝いも兼ねてねっ」

熊野「私はカモミールティーを作ってきましたわ。体を温める効果もありますし、水分補給は大切でしてよ」

提督「……すまない、ありがたく頂くよ」

阿武隈「提督、食欲はありますか?」

提督「……なんとか食べられそうだな」

阿武隈「じゃあ、あたしは消化に良いものを作ってきますね」

提督「……なにからなにまでありがとうな」

阿武隈「気にしないでください。困ったときはお互い様です!」

蒼龍「阿武隈、私の分もよろしくね!」

電「なんで蒼龍さんの分を作る必要があるのです……?」

蒼龍「えー? だって阿武隈のごはんおいしいし」

阿武隈「はいはい、分かりましたよ」

蒼龍「やった! 阿武隈あいしてるぅ!」

熊野「はあ……蒼龍は調子良いですわね」
4 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:40:34.39 ID:gLTdpLwFo

蒼龍「気にしない、気にしない。それで提督。私からは、はいこれ」

提督「……なんだこれ?」

蒼龍「あ、今じゃなくて後で開けてね」

提督「今じゃダメなのか?」

蒼龍「だーめ、後で」

提督「……よく分からんが、分かった」

電「司令官、電はそろそろ執務室に行かないといけないのです」

提督「ああ、すまないな引き留めてしまって」

電「気にしなくても大丈夫なのです! なにかあったらすぐに電を呼んでください、なのです!」

提督「ああ、分かった。電もあまり根を詰めないようにね」

電「ありがとうなのです、それじゃ行ってきます」

蒼龍「電ちゃん、おみやげよろしくねー」

電「なんで執務室からおみやげを持ってこなくちゃいけないのです……?」

熊野「蒼龍、あなたは行かなくて良いんですの?」

蒼龍「んー? 私は提督の看病というお仕事があるし」

赤城「ダメです」

蒼龍「って赤城さん!? どうしてここに!?」
5 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:41:06.18 ID:gLTdpLwFo

赤城「阿武隈さんから提督が風邪をひいたと聞きまして、様子を見に来たんです」

提督「ごほっ……わざわざすまない」

赤城「いえ、お気になさらないでください」

赤城「蒼龍さん。提督が心配な気持ちは分かりますが、騒がしくては提督も休めませんよ」

蒼龍「んー、それもそっか。艦載機の整備とかもしなくちゃなんないし」

熊野「私も、瑞鶴と空母としての訓練があるんでしたわ」

提督「私は心配いらないさ。少し休めばなんとかなる」

蒼龍「そう? やっぱ心配だなあ」

赤城「心配し過ぎも良くありませんよ。周りが沈んだ気持ちでいると、病人にも悪い影響を与えますからね」

蒼龍「分かりました。それじゃあ、提督! お大事にね」

熊野「それでは、私もこれで失礼致しますわ。提督、ご自愛なさってくださいな」

提督「ああ、ありがとう。養生するよ」
6 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:42:02.75 ID:gLTdpLwFo

赤城「すみません、騒がしくしてしまって」

提督「……なに、ちょっとくらい賑やかな位がちょうど良い。むしろ元気を分けてもらったよ」

赤城「ふふっ、そうですか。それは良かったです」

提督「ああ、良かったよ……ごほっ」

赤城「大丈夫ですか?」

提督「なに、これくらい……赤城、君にもうつると良くない、私は大丈夫だから」

赤城「阿武隈さんが来るまでここにいますよ。心配いりません、そう柔な鍛え方はしてませんよ」

提督「……強情だなあ」

赤城「それはお互い様です。提督、私は静かにしてますから少し眠ってはどうですか?」

提督「……いや、起きたばかりですぐには寝られそうにないな。とりあえず阿武隈を待つよ」

赤城「分かりました。それまではここにいますから、なんなりと仰ってください」

提督「ありがとう……そういえば、さっき蒼龍が言ってたこれはなんなんだろう」

赤城「開けてみます?」

提督「そうだな……すまない、頼む」

赤城「では……あら?」

提督「どうした?」
7 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:42:55.32 ID:gLTdpLwFo

赤城「写真……ですね。去年のクリスマスパーティーで阿武隈さんがサンタ姿で、駆逐艦の子達にプレゼントを配ってます」

提督「へえ……電達、良い笑顔してるな」

赤城「ええ、本当に……それで、これは新年の晴れ着姿ですね。阿武隈さんと神通さんのツーショットです」

提督「相変わらず仲良いな、二人とも……いいことだ」

赤城「お次は……これは結構前の親善艦参加観艦式ですね。阿武隈さん、凜々しいですね」

提督「ああ、本当に惚れ惚れするな」

赤城「まあこの後、響ちゃん達にじゃれつかれて阿武隈さんは大慌て。それを見たザラさんは、呆気に取られてましたが」

提督「ははっ……そんなこともあったなあ。ついこの間のことだと思ってたのに、あれから随分経ったなあ」

提督「ザラもここに馴染めたようで良かった」

赤城「……ポーラさんの監督でそれどころではないのでは?」

提督「……いや、それは……」

赤城「ふふっ、冗談です。他の皆さんもフォローしてくださってます。大丈夫ですよ」

提督「……そうだな」
8 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:43:29.14 ID:gLTdpLwFo

赤城「……これはこの前の海水浴のときの写真ですね。阿武隈さんが長良さん、五十鈴さんと一緒に写ってます。相変わらず駆逐の子達に引っ付かれてますね」

提督「阿武隈お姉ちゃんも大変だな」

赤城「でも楽しそうですよ、この子達。阿武隈さんのおかげですね」

提督「……さっきから阿武隈ばかりじゃないか?」

赤城「……それもそうですね。えっと……」

赤城「阿武隈さんが若葉さんとお昼寝しているときの寝顔、これは白露さんと時雨さんに指導してて、次も春雨さんに勉強を教えてて――」

提督「これは熊野や翔鶴達とお茶会……まさか全部の写真に阿武隈がいるのか?」

赤城「ですね――あら?」

提督「ごほっごほっ、どうした?」

赤城「提督、これを」

提督「ん? なになに」

『提督がとっても元気出る差し入れ。 鎮守府の皆にはナイショだよ! そーりゅーより』

提督「……おい」

赤城「元気出ましたか?」

提督「熱が上がった気がする」

赤城「それは大変ですね」
9 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:44:01.68 ID:gLTdpLwFo

――コンコン

阿武隈「てーとく、お待たせしました。入りますね?」

赤城「阿武隈さん、どうぞ入ってください」

阿武隈「赤城さん? あ、入りますね」

ガチャ

阿武隈「お待たせしました! てーとく、雑炊作ってきましたけど……食べられそう?」

提督「すまないな……ああ、大丈夫だ」

赤城「それでは二人とも、私もそろそろ失礼しますね」

提督「赤城、ありがとう」

阿武隈「赤城さん、ありがとうございます」

赤城「いえ、私はなにもしてませんから。提督、お大事にしてください」

提督「ああ、ゆっくり休んで早く治すよ」

赤城「……ちゃんと治してから復帰してくださいね?」

阿武隈「そーですよ提督」

提督「信頼無いなあ」

赤城「いえ、信頼してますよ。阿武隈さんからの信頼には及びませんが」

阿武隈「ふえ!? あ、赤城さん!」

赤城「ふふっ、それではまた後で」
10 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:44:57.80 ID:gLTdpLwFo

阿武隈「それじゃあ提督。お口に合うか分かりませんけど」

提督「大丈夫だ。阿武隈の料理に関しては全面的に信頼してるよ」

阿武隈「それなら良かったです……起きられますか?」

提督「ああ、それぐらい平気だよ」

阿武隈「……やっぱりちょっと辛そうです」

提督「たいしたことないよ、心配いらない」

阿武隈「食べられるだけで後は残して良いですから、栄養つけてくださいね」

提督「ああ、ありがとう……卵とネギが入った雑炊か。おいしそうだな」

阿武隈「体に良くて温まるかなって。ふー……ふー……。はい、あーん」

提督「え?」

阿武隈「ほら、てーとく。お口開けてください。あーん」ニコニコ

提督「あ、あーん……もぐ」

提督(はっ!? 笑顔と癒やしボイスの魔力に負けてつい!)

阿武隈「てーとく、熱くないですか?」

提督「阿武隈が冷ましてくれてるから、ちょうど良いよ」

阿武隈「それなら良かったです。ふー……はい、あーん」

提督「……もぐ」

阿武隈「えへへ、ちゃんと食べられるみたいで良かったです。これならきっと早く治りますね」ニコニコ

提督「ああ、阿武隈がここまでしてくれるんだから、早く治さないとね」

阿武隈「気にしないでください。あたしが勝手にやってることなんですから」

阿武隈「ふーふー……あーん」

提督「……もぐ」

阿武隈「味も提督に合ってるみたいで良かった。あーん」

提督(恥ずかしさと幸せ過ぎて死にそう)
11 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:45:32.81 ID:gLTdpLwFo

提督「ごちそうさま……ありがとう、おいしかったよ」

提督(風邪で弱った体が、援軍の到着で喜んでいるみたいだ。相変わらず体は辛いが、さっきよりずっと良い)

阿武隈「はい、お粗末さまでした」

提督「ありがとう、ここまでしてもらってすまないな」

阿武隈「それは言わない約束でしょ、おとっつぁん」

提督「ワシが病弱なばかりにおまえには……って順番逆だなこれ」

阿武隈「ですねぇ、でも楽しければそれでOKです」

提督「阿武隈も忙しいだろう? 私は大丈夫だから――」

阿武隈「本当に大丈夫?」

提督「ああ、栄養もつけたことだし、少し眠るとするよ」

阿武隈「そうですね……ずっといても提督のお休みの邪魔になりますし。水分も適度に取ってくださいね?」

提督「熊野が水筒置いてってくれたから大丈夫だよ」

阿武隈「分かりました。なにかあったら呼んでくださいね」

提督「ああ、そうさせてもらうよ」

阿武隈「また様子見に来ますから、それじゃ提督。ゆっくり休んでください」

提督「色々とありがとうな」

阿武隈「はい! 提督、またね!」

――ガチャ。
12 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:46:13.17 ID:gLTdpLwFo

提督「ふう……少し寝るとするか」

提督「こんな時間に寝るなんていつ以来だろうな……」

提督「電はもう、秘書艦としてとっくに仕事を始めてるだろうか」

提督「阿武隈はこれから駆逐艦の子達をまとめて訓練か……あの子達をまとめるのは大変そうだ」

提督「蒼龍は……ああ見えて人一倍努力する子だからな。一生懸命訓練に励んでいるだろう」

提督「明石や秋津洲、鎮守府に勤める人達もいつも真剣に務めてくれている……」

提督「私がこうして風邪をひいても安心して休んでいられる……本当に私は恵まれているな……」

提督「親父やお袋……元気にしているだろうか……」

提督「今度……また、あ……といっしょに……」
13 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:47:13.91 ID:gLTdpLwFo

――し……い

――司令。

提督「……ん?」

磯風「司令! 起きろ!」

提督「……どうしたんだ磯風?」

磯風「やっと起きたか。どうしたじゃない。もうすぐ修行の時間だ」

提督「……修行?」

磯風「その通りだ……さあ、行くぞ道場へ!」

提督「道場? なんだそれは?」

磯風「決まっている! 一水戦道場だ!」

提督「一水戦道場!?」

磯風「ああ、そうだ!」

霞「その通りよクズ司令官! ボサッとしていると地獄行きよ!」

提督「地獄行きだと!?」

磯風「いやさすがに地獄行きはないが」

提督「そ、そうか……びっくりした」

磯風「だが、気を抜いていると四国行きだぞ」

提督「なぜ四国」

初霜「えー。こほん」

初霜「いよいよ始まった一水戦道場。別名、水雷戦隊の宴」

提督「なんでいきなりナレーションを始めるんだ!?」
14 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:48:19.70 ID:gLTdpLwFo

初霜「あまたの苦しい修行を乗り越え、漢を上げましょう提督!」

磯風「いよいよだな……心が高ぶってきたぞ」

霞「ようやくね……待ちくたびれたわよ」

初霜「そうね……このときをどれだけ待ち望んでいたことか」

提督「君達心待ちにしてたの!?」

初春「待たせたな」

磯風「あなたは……初春師範!」

初春「うむ。これより修行を始める」

霞「まさか真っ先に初春師範が姿を現すなんて……」

初霜「早くも修行の厳しさが想像できるわ」

提督「え、そうなのか?」

磯風「やはり休日は道場修行に限るな」

初霜「ええ、本当に」

霞「霞は今年に入ってから、休日は毎日ここよ」

提督「どれだけハマってるんだよ!? それにさっきはようやくか、みたいな事を言ってなかったか!?」

初春「第一の修行! 駆逐艦二十人組み手じゃ!」

電「なのです!」

雷「いっきまっすよー!」

子日「子日、張り切っていきまーす!」

響「響だよ。ypaaa(ウラー)!」

若葉「駆逐艦、若葉だ」

暁「暁の出番ね! 見てなさい!」
15 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:48:49.02 ID:gLTdpLwFo

白露「いっちばーん!」

時雨「にーばーん」

村雨「さんばーん!」

夕立「てーとくったら、結構頑張ったっぽい? 夕立さん、褒めて褒めてー!」

提督「逆になってるぅ!? それだと私が変な人みたいじゃないか!?」

春雨「ごーばーん! あ、お姉様に春雨スープ渡すの忘れてました……一度帰らないと」

提督「帰るのか!?」

五月雨「ろくばーん! 春雨、大丈夫です! こんなこともあろうかと既に阿武隈さんに渡しておきました!」

提督「しっかりしてるぅ!?」

海風「白露にいっちばーん! は譲れません!」ドンッ!

海風「……ななばーん!」

提督「律儀な子だ」
16 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:49:21.40 ID:gLTdpLwFo

山風「おとーさん。おかーさんはどこ……?」

提督「そして山風はマイペースな子だなぁ」ナデナデ

山風「んー」

江風「……ぐー」

提督「寝てるのか!? 流石にそれは予想外だ!」

涼風「じゅーばーん! 涼風の本気、見せたげるっ!」

提督「まともで逆に不意を突かれた気分だよ……」

若葉「よし、皆突撃だ!」

暁「突撃するんだから!」

「「「おー!」」」

ドドドドドド――!

提督「って……おいちょっと待て!」

初春「まずは小手調べじゃ。歴戦の熱き駆逐艦二十人に揉まれよ!」

若葉「これが一水戦道場名物の一。なのです駆逐祭りだ」

電「なのです!」

夕立「なのです!」

村雨「なのです!」

時雨「なのですは譲れない」
17 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:49:54.78 ID:gLTdpLwFo

提督「仮に軍人とは言え、駆逐艦二十人の相手が務まるわけないだろ! 一人だって無理だ!」

提督「ここは逃げるしか――」

初霜「ほんと、ツメが甘いのね」ガシッ

提督「なにぃ!? なぜ初霜が私を捕まえるんだ!?」

磯風「いつから磯風達が、修行を受ける側だと錯覚していた?」

霞「霞達も道場で教える側よ」

提督「なん……だと?」

初霜「初春が言っていたでしょう? 二十人だって。初春を抜いて私達を入れたらちょうど二十人よ」

提督「くっ、なんてことだ!」

不知火「ここで二十人しかいないと油断しましたね? 不知火もいます」ひょこ

提督「二十人も二十一人も大して変わらないぞ!? 私が手も足も出ないという意味でね!」
18 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:50:27.93 ID:gLTdpLwFo

――ドドドドド!

初霜「なのです!」

若葉「なのです」

村雨「なのですフェスティバル〜」

春雨「なのですカーニバル〜」

響「なのです」

時雨「なのです」

五月雨「なのですっ」

白露「いっちばーんなのです!」

暁「どう考えても、暁がなのですってことよね!」

子日「無駄無駄無駄っ! なのですっ!」

電「なのですなのですすーぱーなのです!」

霞「あーもうなのですばっかり! なのですあるのみよ! やるわ!」

提督「やめ、やめろ……うわああああああ!」
19 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:51:27.83 ID:gLTdpLwFo

提督「なのです禁止……はっ、ドリームか!? ごほっごほっ……なんていう夢を見ているんだ私は」

提督「ん……なんか重いぞ?」

若葉「ぐー」

響「すー」

山風「むにゃ……」

提督「……なんで駆逐艦の子達が三人も、私のベットに潜り込んでいるんだ」

提督「もしかしてあんな夢を見たのは、この子達に乗っかられたりしたからかもしれないな……」

提督「おーい……みんな起きろ……」ゆさゆさ

響「う……ん?」

若葉「提督……?」

山風「おとーさん……? おはよう……」

提督「なんで三人ともここで寝ているんだ……?」

響「風邪のときは、温めたほうが良いって聞いたからだよ」

若葉「若葉達が湯たんぽになっていたんだ」

提督「風邪がうつるからやめなさい……」

山風「おかーさんに頼もうと思ったけど、忙しそうだったから……」

提督「それはもっとやめなさい、いろいろとまずい」
20 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:52:16.31 ID:gLTdpLwFo

提督「それに三人もいたらベットが狭かっただろう? 大丈夫なのかい?」

響「大丈夫だよ、不死鳥の名は伊達じゃない」

提督「不死鳥関係あるのか……?」

響「温まると思うよ」

若葉「燃えると思うぞ」

山風「おとーさん、燃えちゃやだ」

響「ごめん、私は実は燃えたりしないから」

山風「そうなの……? 響、嘘ついちゃだめ」

響「……ごめんなさい」

提督(おお、山風に響がタジタジになってる。なんか新鮮だ)
21 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:53:12.59 ID:gLTdpLwFo

――コンコン。

鳥海「司令官さん、鳥海です。入っても良いですか?」

響「鳥海さんかい? 良いよ、入っても」

提督「なぜ響が答える……まあ良いけど」

――ガチャ。

鳥海「失礼します……あら? 響さんに若葉さん、山風さん。どうしました?」

若葉「提督の湯たんぽになってたんだ」

鳥海「まあ、それは楽しそうですね。司令官さん、慕われてますね」

提督「……そうかなあ?」

阿武隈「もー、提督のお休みの邪魔しちゃダメでしょ。それに風邪がうつっちゃうかもしれないじゃない」

響「大丈夫だよ。そんな柔な鍛え方してないさ」

若葉「光合成すれば大丈夫」

山風「若葉……葉緑体持ってるの?」

阿武隈「風邪と光合成がどう関係してるんですか」

響「阿武隈さんエネルギーを小まめに補給すれば、風邪なんて吹き飛ぶよ」よじよじ

阿武隈「こーら、あたしによじ登ろうとしないの。休んでいる提督が近くにいるんだから」

山風「じゃあ後で肩車して、おかーさん」

阿武隈「もう、しょうがないですねえ。分かったよ」ナデナデ

山風「んー」

響「じゃあ私も」

若葉「若葉もだ」

阿武隈「えへへ、分かったよ。でもまた後でね」

鳥海「阿武隈さん、すっかりお姉さんですね。ほほえましいです」

阿武隈「そんな大したものじゃないですよ」
22 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:53:58.84 ID:gLTdpLwFo

鳥海「あ、司令官さん。午前中の執務は滞りなく終わりました。電さんからの伝言です」

提督「了解した。わざわざ済まないな」

鳥海「いえ、通り道ですから」

響「はらしょー、このおにぎりは最高だ」もぐもぐ

山風「響、なに食べてるの?」

若葉「それ阿武隈さんが作ったおにぎりじゃないか?」

阿武隈「ってもう。お行儀の悪いことしないの」

響「お腹が空いたからつい……」

阿武隈「ほら、ちゃんと食堂に行って食べないとダメだよ、ねっ?」

響「了解。響、出撃する」

若葉「目標、鎮守府食堂の戦闘糧食」

山風「阿武隈さんの鮭おにぎりー、わーい」

響「それじゃあ司令官、お大事に」

若葉「なにかあったら響に言ってくれ」

山風「自分じゃないんだ……まあ良いけど」

響「なんで私に振るんだい? まあ良いけど」

若葉「別に若葉に言ってくれても良いぞ。 まあ良いけど」

鳥海「若葉さん、そこで『まあ良いけど』はおかしいです」

若葉「そうか……? まあ良いけど」

山風「きりがない……」

響「ほら、もう行こう。司令官をゆっくり休ませてあげないと」

山風「鳥海、おとーさん、おかーさん……またね」

トテトテトテ――
23 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:54:25.50 ID:gLTdpLwFo

鳥海「ふふっ、かわいいですねえ」

阿武隈「そうですよね。振り回されて大変でもありますけど」

鳥海「なにかあれば言ってくださいね。微力ですが、なにか手伝えると思います」

阿武隈「はい、ありがとうございます」

鳥海「それでは、タオルはここに置いておきますね」

阿武隈「あ、はい」

鳥海「それでは司令官さん。お大事にしてください」

提督「ああ、鳥海ありがとう」

鳥海「いえ、なにかあれば言ってくださいね、阿武隈さんに」

阿武隈「鳥海さんまでそのネタ引っ張るの!?」

鳥海「ふふっ、冗談ですよ。私にもなんでも仰ってくださいね。それでは」
24 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:54:54.23 ID:gLTdpLwFo

阿武隈「てーとく、調子はどう?」

提督「……ああ、少し食べて休んだら幾分良くなったよ。まだまだ本調子とはほど遠いけど」

阿武隈「それなら良かったです。提督、結構汗かいてますか?」

提督「……まあ、響達が引っ付いてたみたいだしね。おかげで体が冷えることはなかったよ」

阿武隈「子供は体温高いですからね。ちょっと着替えた方が良いと思ったので、提督の着替え持ってきましたけど」

提督「すまない、ありがとう」

阿武隈「もう、提督。ありがとうだけで十分ですよ。それで、着替えられそうですか?」

提督「ああ、それくらい一人で大丈夫だ」

阿武隈「でも、ずいぶん汗かいてますから、体拭いた方が良いかもしれないですね。あたし蒸しタオル持ってきました」

提督「タオルまで持ってきてくれたのか。何から何までありがとう」

阿武隈「えっと……でも自分じゃ拭きにくいですよね。あたし、拭きますね」

提督「え? いやいやいや、それはいくらなんでも――」

阿武隈「もう、あんまり無理しないでください……その、これは看病なんですから」

提督「いや、だが――」

阿武隈「ほら、遠慮しないでください。ボタン外しますね」

提督「む……なんだが恥ずかしいな」

阿武隈「そ、そういうこと言わないでくださいよぉ。あたしまで意識しちゃうじゃないですか」
25 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:55:40.88 ID:gLTdpLwFo

阿武隈「うわ、やっぱり汗かいてますねえ。これはやっぱり拭いた方が良さそうです」

提督「そ、そうか」

阿武隈「それじゃまず手足から拭いてきますね」

提督「あ、ああ」

阿武隈「よいしょ……提督、冷たくない?」

提督「いや、大丈夫だ。ほどよく温かくて気持ちいいよ……」

阿武隈「えへへ、それなら良かったです。ポンポンっと――はい、腕はこれでOKです」

阿武隈「ズボンめくりますね」

提督「いや足は自分で――」

阿武隈「こう見えて、電ちゃんとか風邪がひいたときに体拭いてあげたりして、慣れてますから。任せて任せてっ」

提督「そういう問題じゃ……」

阿武隈「っと……提督、寒くないですか?」

提督「大丈夫、むしろ暑いかもしれない」

阿武隈「うーん、やっぱりまだ体温高いですね」
26 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:56:07.78 ID:gLTdpLwFo

阿武隈「はい、足も拭き終わりました。次はシャツ脱がしますね。手早く済ませますから。てーとく、バンザーイして」

提督「こ、こうか?」

阿武隈「はい、バンザーイ。わ……てーとく、体ガッチリしてますね」

提督「そうか? そう言ってもらえると嬉しいが……」

阿武隈「って、すみません! 早く体拭かないと! えっと、失礼しますね」

提督「あ、ああ。よろしく頼むよ……」

提督(うう……一生懸命に体を拭いてくれている阿武隈を見ると……嬉しい反面、非常に気恥ずかしい)

阿武隈「てーとく、わきのところも拭きますね」

提督「……ああ。ありがとう」

阿武隈「こういうところは汗かきやすいですからね。はい、それじゃもう片方も」

阿武隈「うん、これでOKです。じゃあ背中拭きますね」

提督「頼む……っ!?」

阿武隈「手、後ろに回しますね」
27 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:56:38.73 ID:gLTdpLwFo

阿武隈「汗凄いですねえ。やっぱり拭かないと体冷やしちゃいそうでしたね」

提督(阿武隈の顔が近い……いいにおいがして、ただでさえぼーっとしている頭がくらくらする……)

阿武隈「よいしょっと……あともうちょっとですからね」

提督(阿武隈の体温と声、背中をふく手つき……心地よくて安心する)

阿武隈「はい終わりましたよ、てーとく」

提督「……」

提督「てーとく? 冷えちゃいました? 乾いたタオルでさっと拭いて、すぐに換えのシャツを――」

提督「阿武隈……」ぎゅっ

阿武隈「ふえ? ……てーとく?」

提督「……!? す、すまないっ、すぐに離すから――」

阿武隈「大丈夫ですよ、てーとく」ぎゅっ

提督「阿武隈……?」

阿武隈「風邪のときは、心細くなりますよね。あたしも経験あるから分かります」

提督「……そう、だな」

阿武隈「はい。てーとくが安心するまで、こうしてますから」

提督「でもなんだか……これじゃあ子供みたいだな」

阿武隈「そうですか? てーとくがこうして甘えてくれるのって、あたし的には嬉しいです」

提督「そうなのか? ……ああ、たしかに阿武隈が甘えてくれると私も嬉しいな」

阿武隈「えへへ、ですからお相子です」

提督「ああ……」
28 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:57:22.22 ID:gLTdpLwFo

阿武隈「でも、まずシャツ着て、ズボンと下着も替えないと体冷やしちゃいますね」

提督「……そう、だな」

阿武隈「それに体起こしたままだと、辛いですもんね。えと……横になったらまた抱きしめてあげますね」

提督「いやさすがにそれは……非常に魅力的な提案だけど」

阿武隈「うーん。たしかに、あたしもずっといるわけにもいかないですもんね……それじゃあ、また後で」

提督「……いや、だから」

提督(頭がぼーっとしてきた。体拭いてもらって、不快感が取れてまた眠気が出てきたかな……)

提督「……それじゃあ、楽しみにしてるよ」

阿武隈「はいっ、では早く着替えましょう! えっと、あたし後ろ向いてますから」

提督「あ、ああ。手早く着替えるよ」

提督(なんというか気恥ずかしいなこれ……しかし、体が重くて上手く動かない)

提督(なんとかズボン脱げたし、つぎは替えの下着を……)
29 : ◆dbGyYYDw8A [saga]:2017/10/06(金) 00:58:11.61 ID:gLTdpLwFo

提督(……そう言えば、阿武隈も忙しいはずだ。いつまでも私についてもらうわけには行かないよな)

提督(体も拭いてもらったんだし、もう外に行ってもらった方が……)ぼー

提督「阿武隈、もう良いよ」

阿武隈「あ、着替え終わりました?」くるっ

提督「いつまでもついてもらうわけにもいかないし、阿武隈は自分の……?」

阿武隈「……え? ふえ? きゃあ!?」くるっ!

阿武隈「てててて、てーとくなんでズボン履いてないんですかぁ!?」

提督「す、すまん阿武隈、つい頭がぼーっとして!」

阿武隈「あ、す、すみません……提督が風邪なのに、つい」

提督「ごほっごほっ……いや、今のは私が全面的に悪い」

阿武隈「そ、それじゃお互い様ということにしましょう、ええ」

提督「そうだな……」

阿武隈「ところで、てーとく、その、えっと……あの……それ、辛いですか?」

提督「いやいやいや、あのですね。これは好きな女性に密着されて起きた致し方ない現象であり、決して邪な考えを抱いていたわけではなく……」

阿武隈「……べ、別に、あたし的にはOKです……よ?」

提督「理解を示されても、それはそれで恥ずかしいんですけどぉ!? ぐっ、ごほっごほっ!」

阿武隈「ふええ!? てーとく、しっかりしてくださいっ!?」
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