奇想脳路

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/02(月) 18:58:16.24 ID:NFI3w5WjO

一組の男女が旅をする。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1506938296
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/02(月) 19:05:40.89 ID:NFI3w5WjO

絶えず吹く風、巻き上げられた砂は頬を打ち、ゴーグルをこつこつと鳴らす。

目指すは古都キシュエナ

古都キシュエナはラヤタハ山脈を越えた先にあるとされる。

これまで幾人もの人々が目指し、幾人もの人々が命を落とした。

辿り着いた者がいるのかどうか、それを知る者はいない。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/02(月) 19:19:50.23 ID:NFI3w5WjO

ただ、辿り着けなかった者がいるのは事実のようだ。

砂塵で視界は酷く悪いが、そこら中に遺体が転がっているのが分かる。

衣服はズタズタに引き裂かれている。

おそらくは数年か十数年の間、この砂嵐に晒され続けたのだろう。

「風が強くなってきてる。このままだと、私たちまでこうなるわ」

「堪えろ。もうじきラヤタハ山脈だ」

女は顔を顰めながら頷いた。どうやら口に砂が入ったようだ。

この風では、口元を覆う布もあまり役には立たない。

一言二言話すだけで口や鼻に砂が入ってくる。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/02(月) 19:36:45.07 ID:NFI3w5WjO

男は女の手を引き、先へ進む。

途中で何度か柔らかいものを踏んだが、それが何なのかを確認する気にはなれなかった。

視線を落とさぬように意識して、前を見続けて歩く。

女はそれを踏むたびに顔を青くしていたが、前を行く男に倣って、決して視線を落とそうとはしなかった。

「見ろ」

男が指差した先に、うっすらと白い木々が見えた。

「あれが……」

「ああ、もうすぐだ。行くぞ」

男は女を励ますように肩を軽く叩くと、ぐいと手を引いて歩き出した。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/02(月) 19:51:03.07 ID:NFI3w5WjO

「まだ埃っぽいけど、やっと普通に呼吸が出来るわ」

「大丈夫か」

「ええ、気分は最悪だけど、さっきよりはマシよ」

二人は山脈の麓に辿り着くと、散在する瓦礫の山の隙間に身を隠した。

風化は進んでいるが、今に壊れるということはないだろう。

「ねえ、あの白い木が何なのか知ってる?」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 20:10:27.49 ID:NFI3w5WjO

「……いや、知らない」

本当は知っていたが、得意気に語ろうとする女の顔を見ると、知っているとは言えなかった。

「あれはね、空から落ちてきたの。ずっとずっと前よ。その頃は空が青かったんだって」

「誰に聞いたんだ?」

「近所のお爺ちゃん。皆は鬱陶しいって言ってたけど、私は好きだったわ。色々な話を聞かせてくれるから」

男に身を寄せ、ゴーグルを外して膝を抱えると、女は続けた。

「それから、古都の人は外を歩いてるって言ってた。ゴーグルも何も付けずによ? 信じられる?」

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 20:28:41.77 ID:NFI3w5WjO

(夢物語だ)

目をきらきらと輝かせながら語り続ける女を見て、男は気の毒な気持ちになった。

男は、その話が人減らしのための作り話であることを知っているからだ。

古都キシュエナの幻想に取り憑かれた者は、皆、このような顔をする。

地下を出るということが自殺行為であることを知りながら、夢見る人は外へ出る。

「ねえ、聞いてる?」

「ああ、聞いてる。俺も、古都は素晴らしい場所だと聞いたよ」

「一体、どんな所なのかしら。早く行ってみたいわ」

(辿り着けるわけがない。今回も同じだ)

その夢を終わらせるのが、男の仕事だ。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/02(月) 20:30:48.99 ID:NFI3w5WjO
男の名前↓1
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 20:48:43.65 ID:NFI3w5WjO
男の名前はメフトとします
安価なしの方がよいですね
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/02(月) 21:04:53.90 ID:NFI3w5WjO

現在、地下の人口は増加傾向にあり、人減らしが急務となった。

特別な役職にない老人は処理され、若者には夢を見せる。

メフトはある理由から、この女のようにキシュエナを目指す若者を案内する役職にある。

夢見る若者は多いが、その一歩を踏み出す者はごく僅かだ。

そこで必要になるのが協力者だ。

素知らぬ風を装って近づき、話を聞き、その気にさせる。

本来なら警戒を避けるために女性が担当するはずなのだが、担当するはずだった女性が拒否したため、メフトに任された。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 21:05:58.78 ID:6OlCkOp/O
あ、安価出すならとるよ

スレタイに安価ってなかったから気づかなかった
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/02(月) 21:24:24.48 ID:NFI3w5WjO

(馬鹿な女だ)

この職は、犯罪を犯した者にのみ与えられる。恩赦という名の下に。

それ故に、放棄した者は問答無用で処理される。

それを分かっていながら拒否したのは、良心の呵責か、積み重なった罪悪感か。

(……何が恩赦だ)

罪を洗い流すために罪を重ねる。自らが犯した犯罪より、もっと重い罪を犯す。

生きたければ、殺されたくなければ、赦しが出るまで続けなければならない。

だが、赦しなど決して出ないだろうことを、メフトは分かっている。

犯罪者。

死んでもいい命だからこそ、外を案内するなどという危険極まりない仕事を与えられたのだから。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/02(月) 21:32:30.39 ID:NFI3w5WjO
>>11スレタイに入れるべきでした、申し訳ないです……
早速ですが、女性の名前をお願いします。
↓1
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 21:34:58.99 ID:jtUDwE590
フェリア
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 21:42:48.08 ID:NFI3w5WjO
>>14ありがとうございます。
男性の名前は【メフト】
女性は名前は【フェリア】とします。
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