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【艦これ】男の提督はどうやら信頼出来ないらしい
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166 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 22:24:18.04 ID:WSkc1uIiO
クソ提督のやつ、何をおどおどしているの? もしかしてまた何か企んでるってわけ?
曙「…………どうも」
私は改めて心に決めた。
絶対にこいつから潮を守ってみせると。
背後に隠れる潮を片手を広げてクソ提督から庇う様に立ち止まる。
……触れているからよく分かる、潮は本当にこいつに怯えている。
もしこのまま彼女が男性に対して恐怖心を抱いたままであったなら、この男は一体どうするつもりなのだろうか。いや、そんなこと考えるまでもないわね。
昨日の会話、思い出すだけで腹わたが煮えくり返りそうになる。
167 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 22:27:01.37 ID:WSkc1uIiO
**********************
加賀「あなたにとっての艦娘とは一体何?」
提督「共に戦う仲間であり、この鎮守府では家族のような存在だと思っている」
加賀「…………」
加賀「次は無いわよ。あなたにとって艦娘とは一体何?」
提督「嬉しいときは一緒に笑って、悲しい時は一緒に泣く。そうして色んな困難を共に乗り越えていく。俺にとっての君達は、そんなかけがえのない存在だ」
*********************
曙「………………」
そう。考えるまでもない。
ーーだってこいつは“嘘つき”なのだから。
168 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 22:29:03.31 ID:WSkc1uIiO
そう思った矢先のことだった。こいつは、とんでもないことをしてきたのだ。
提督「潮、昨日は本当に申し訳ないことをしてしまった。しかし信じてほしい。決してあれはわざとではなかったのだ」
曙「ーーーーっつぅ!?」
予想外の事に私は驚いて思わず一歩退いて、踵を観葉植物の鉢にぶつけてしまった。痛みに “変な声” を上げてしまったが、今はそんなことを気にしている余裕はない。
ーーこいつは、一体何をしているの?
事もあろうに“提督”が、艦娘相手に軍帽を脱いで“最敬礼”をしている。
訳が分からない。だってこいつは悪い奴で、私達をいやらしい目で見て、私欲の為に利用しようとしているはず……それにわざとじゃないって?
ーーまさか。
こいつは嘘を吐くためならプライドすら捨てるというの?
169 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 22:32:07.01 ID:WSkc1uIiO
固まったまま“提督を見下ろす”私の背後で、潮が服の袖をギュッと掴んできた。それに現実に引き戻されたわたしが振り返ると、彼女は小声でこう言ってきた。
潮「曙ちゃんお願い、今はまだ無理……」
曙「……分かった。行きましょう」
ボソリとそう呟いて私達はクソ提督を置いていった。少しだけ、ほんの少しだけ悪い気がしないではなかったけど、こいつが本気で潮に謝罪する気があるのなら、彼女の精神状態を分かっていないはずはない。
それに “わざとじゃない” なんて言葉がよく言えたものね。
ーーだって資料はこの私がちゃんと渡したのだから。
謝罪を許さない……以外の悪態をつかなかっただけマシと思って欲しい。
既に大本営への連絡は取ってある。
私達は横須賀鎮守府を後にした。
170 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 22:34:53.39 ID:WSkc1uIiO
**********************
提督「あー、舌打ちとか生まれて初めてされたかも……」
ーー流石に心が痛いな。
俺が提督になると決めたのは、今から3年程前のことだった。
元々家が途轍もなく裕福だった俺は、何不自由なく暮らしていた。
10年程前からだ。
深海棲艦だのなんだのと世間は騒いでいたが、俺の周りはまるで何事もないかのように時間が流れる。俺自身も無知でその出来事をまるで違う世界で起こっているかのように、楽観視していた。
しかし、ある日俺は知ったのだ。
171 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 22:38:15.15 ID:WSkc1uIiO
その日は丁度俺の20になる誕生日だった。
父親の会社を継ぐ事が当たり前のように決まっており、俺もまたそれを受け入れ、将来は明るかった。
その時海外で仕事をしていた叔父も、俺の誕生日だから帰ってくる。彼はどんなに忙しくてもそうだった。そういう人だったのだ。
……その“予定”だった。
俺は小さい頃から叔父がとても好きだった。
叔父は海外を飛び回っており、会う機会はあまりなかったが、彼は家に帰ってくるたびに俺に土産をくれたり、話をしてくれた。
時に叔父が持ってきたワインを間違えて飲み、目を回しながら昏倒したこともあった。彼の話す、与えてくれる何もかもが、俺には新鮮だったのだ。
その日も、俺は叔父が帰ってくるのがとても楽しみだった。
子供かと思われても仕方ないかもしれないが、どうしても言ってやりたかったのだ、やっと酒が飲める歳になったんだ……と。
172 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 22:40:26.66 ID:WSkc1uIiO
……しかし叔父が帰ることはなかった。
原因は船の沈没。それも“深海棲艦によるもの”だった。それは全くの無警戒。今まで出現したことのない海域でのことだったらしい。
俺は泣いた。
それこそ誕生日なんてめでたくない、その日は俺の人生の中で最も最悪の日であった。
それからだった、俺が約束された将来を蹴ってまで“この仕事”を目指したのは。
しかしそれは別に復讐心からというわけではない。俺はただ純粋に救いたかったのだ。これ以上叔父のような犠牲者が出ないように、人々が安心して暮らせるように。
173 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 22:42:16.89 ID:WSkc1uIiO
そして提督になる条件の内、最も重要視されるのは“妖精”が見えることだった。妖精の協力無くして艦娘を建造することは無理。言わばそれは適正のようなもの。
最初は提督ではなく、大本営で直接働くつもりだったのだが丁度1週間前、俺は妖精が見えることに気がついた。
その時初めて艦娘を見たのだが、あろうことかその装備の上で“小人”が寝そべっていたのだ。俺は思わず指を差し、「あっ」と呟いた。
その後すぐに話が進んでいき、あっという間に俺は横須賀鎮守府の提督として着任することになったのだ。
しかしまだ、俺はこの横須賀鎮守府で妖精を“見たことがない”
174 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 22:44:10.74 ID:WSkc1uIiO
これはまだこの横須賀鎮守府が鎮守府として機能していない、ということが原因だ……多分。
妖精自体の容姿が小さい艦娘の様なので、一応“彼女”達と呼ぶことにするが、彼女達に関しては一体どこから生まれてくるのか、また生態についても全く知られていない。だから一概に何が原因かは分からないのだ。
提督「……分からないことはまだまだあるし、つまづくことも、そうやって耐え切れなくなる時だってあるかもしれない」
ーーだけど、
提督「だけど諦めない。艦娘達なんか身体を張って国民を守ろうとしてくれているんだ。それに比べたら、俺なんて大して危険にも晒されていないし、何より今は俺が司令官なのだ。弱音を吐くわけにはいかない」
俺は訓練場の戸を開けた。
175 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 22:47:33.22 ID:WSkc1uIiO
**********************
静寂が支配する中、ただそこには、ほっしりと一定の周期でもって響いていました。
それは紛れも無い弓術。
弾かれた5本の矢はいずれも的の真ん中を射ています。しかし、彼女にとってこれは不調以外の何物でもありませんでした。
私ーー赤城は彼女に問いました。
赤城「加賀さん、今日は少し乱れていますね……昨日の、いえ提督の事でしょうか?」
3cm。
常時の彼女であれば中白に隣接した矢の距離は1cmを切ります。それが今日はその3倍です。“彼女にとって”これを不調と言わずしてなんというのでしょう。
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/29(金) 22:56:13.56 ID:RSvtRrr9o
>>165
「もし」って言ってるじゃん、何キレて本気に受け取ってんだよ……もしかしてアホ?
ネタにピキピキしてマジレスとかダサすぎだろ
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/29(金) 23:04:17.53 ID:dQSFoVAKO
頭を下げて敬礼で謝るって意味不明なんだけど……
敬礼って謝意を表すものじゃないし、頭を下げても最大45度だから深く下げてるわけでもないし……
178 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 23:07:58.56 ID:WSkc1uIiO
>>177
すいませんマジでミスです。無知でした。
謝罪は70度ですし、最敬礼でもないですね。これは本当に申し訳ございませんでした。
179 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 23:09:46.55 ID:WSkc1uIiO
加賀「ごめんなさい……」
それだけ。彼女は私の問いに半分だけ答えました。ですが、私にはそれで分かりました。
赤城「稽古に私情は挟まないこと。……3本」
加賀「はい!」
心頭滅却。その達人級の業は心の乱れを鋭敏に感じ取り、途端に錆びてその鋭さを失います。
加賀「…………」
加賀さんは1本2本と、見事完璧にど真ん中を射抜いて見せました。
ーーやはり、流石は加賀さんです。
180 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 23:11:01.64 ID:WSkc1uIiO
しかし、続く3本目を射るその瞬間でした。
微かに床の軋む音。
赤城「……誰かいるのって、ーーっ提督!?」
加賀「ーーーーなっ!?」
加賀さんの放った3本目は的を大きく外れ、明後日の方向へと飛んでいきました。
まあ、それは今回限りは仕方ないことにしておきます。何故ならそこには紛れもない、道場へと立礼をしている提督が居たのですから。
181 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 23:12:20.04 ID:WSkc1uIiO
ズカズカと入ってこない辺り、やはり彼は“弁えている”、そう私は思いました。
加賀「何の用? 私を咎めにきたの?」
赤城「いえ、そうではなさそうです。そもそも咎めに来た方が、この様に丁寧に道場へ敬意を払うでしょうか。そうですよね、提督?」
もし本当に加賀さんを罰しに来たのなら、提督自ら出向かれるのではなく十中八九呼び出しでしょう。
提督「ああ、勿論だ。昨日の件は全く関係ない」
182 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 23:13:49.64 ID:WSkc1uIiO
加賀「じゃあ何? こんなところで油を売っていて良いのかしら? 執務は放棄?」
赤城「加賀さん、そんな言い方! 提督は昨日の夜来られたばかりなのですよ? それであの膨大な量の執務作業、少しぐらい休憩を取ってもーー
提督「いや、執務ならもうほぼ終わった」
加賀赤城「「ーーーーっはい?」」
私と加賀さんの声が重なった。
いや、それも当然……
ーーというか今のは私の聞き間違いですよね?
思わず加賀さんの方へ顔を向けると、そこには今全く私と同じ顔をしている彼女が居ました。
183 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 23:15:25.26 ID:WSkc1uIiO
提督「ん? どうした2人とも?」
加賀「いえ、今貴方の口から執務が終わったなどという妄言が聞こえた様に思えたのだけれど、聞き間違いよね?」
提督「いや、終わってはない」
赤城「で、ですよね!」
流石にそれは人間技ではない。提督はまだ秘書艦すら居ないし、居たとしても正午にもいかぬうちに終わるはずは無い。
提督「いやまあ、後は数枚纏めるだけだから10分ぐらいで終わるかな?」
…………。
訪れた沈黙に提督は疑問符を浮かべています。
そして私達は顔を見合わせたまま固まってしまいました。
184 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 23:23:31.75 ID:WSkc1uIiO
言わば着任初日。出撃がないとはいえ少し見かけましたが、あの量は“エグい”と流石に思いました。
それは下手をすれば普通に鎮守府として機能してからより多く、実の事を言えば、私はお昼から提督を手伝いに行こうと思っていました。
提督は若く、初めての執務であの量では、簡単に日を跨いでしまうと思ったからです。
赤城「提督はその、本当に大丈夫なのですね?」
加賀「正直信じられないのだけど……」
提督「???」
駄目です。提督はずっと意味が分からないといったご様子。きっと終わったと勘違いされているのでしょう。これは後で私が確認しておかないと……。
加賀さんの方を見ると、ああ。これはもう呆れている顔ですね。
私はおほんっと咳払いした後、
赤城「……ところで、提督は一体どの様な御用件で?」
提督「ああ、それなんだが」
赤城「ーーーー?」
提督「お前らちょっと俺と勝負しないか?」
185 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/29(金) 23:26:45.53 ID:WSkc1uIiO
今日はこれで終わります。
最敬礼の件、本当に申し訳ございませんでした。自分としては土下座を除く、“最大の謝罪”という意味合いで使っておりました。
駄文でまだまだ未熟ですが、どうかこれからもお付き合い下さい。
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/29(金) 23:46:04.95 ID:tJIcUsuvO
何だ、自称普通系キャラか
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/29(金) 23:51:19.27 ID:aBqgUD9y0
あんま読者に気後れしちゃ駄目よ
応援してる
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/29(金) 23:57:31.32 ID:thIL3BWdO
無自覚俺ツエー系か…
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 00:15:32.23 ID:R6nVcPiwO
初霜の即落ちした時の対応とか、よく考えたらそっち系なのは明白だったな……
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 01:23:49.22 ID:RsofMvMSo
それ系ならそれ系で楽しむから、うん
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/30(土) 01:43:15.31 ID:TioUUjvi0
乙でした
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage ]:2017/09/30(土) 01:44:18.01 ID:/hhaSZmJ0
艦娘に対抗というか釣り合うにはある程度は能力ないとなあ
いいんじゃないの
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 02:36:35.85 ID:xVA4tSRho
またオレ何かやっちゃいました?って言いそう
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 05:01:08.93 ID:xBv91yODO
有能な提督を認められる度量があればまだいいが
無能なくせにプライドの高い子ほど意固地になって頑なに拒絶しそうだよな
誰とは言わんが
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 13:20:05.00 ID:BdDUJhaIo
そんな曙や加賀みたいなヤツ居るわけないやろ
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 13:37:08.45 ID:gh016Y0yO
とりあえず赤城さんを落として心酔させて
さすていしてもらわなきゃ…
面白いから毎日更新しろください
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 14:09:11.96 ID:a6ryctoLo
曙は提督の覗き行為(誤解)を大本営に密告したのかな?
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 17:16:05.72 ID:xRro4WK4O
こういう無自覚超人って、実際にいると自分より出来ない奴を努力が足りないか無能としか思えない危険人物だよな。ワタミのアイツがそうだし。
199 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:12:45.29 ID:El68fOKQ0
************************
「元帥殿、艦娘の外出願いが出ておりますが」
私は憲兵隊一部の部隊の指揮を預からせて頂いている者です。
此度は電話応答から引き継ぎ、元帥殿へと知らせるよう仰せつかっております。
元帥「外出願い? そんなもの、その鎮守府の提督に申せば良かろう?」
「いえそれが……例の横須賀鎮守府でして……」
ーーというか直接的に此処へ掛けてくるなど、“あの鎮守府”以外にあるものか。
200 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:14:04.04 ID:El68fOKQ0
元帥「あー、成る程。しかしおかしいな。あそこには昨日づけで“彼”が着任したはずなのだが……」
「例の“彼”ですか……しかしあそこに残った艦娘は僅か11人。提督への連絡が混む事も無い。もしかして彼は信頼されていないのでは?」
元帥「ふむ……いやまさか彼に限ってそんな事はないだろう」
ーー彼。
軍の上層部に就く事の絶対条件として、有り体に言えば三つの要素、心・技・体が挙げられる。
しかしそんなものは軍学校を卒業すれば大抵身に付いているし、そこからどう精進していくか、どう自分を上司に売り込むか、そこが鍵だ。
201 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:15:39.63 ID:El68fOKQ0
しかしこと提督になる絶対条件においては、ここに『妖精が見える』というものが付いてくる。
私は見たことが無いので分からないが、妖精は自分を見つけてくれる人間に協力してくれるらしい。要は妖精に好かれれば好かれるほどに、仕事は円滑に進む傾向にある。
一説に、『妖精はその艦娘と一心同体である』というのがある。故に艦娘が提督を信頼していれば、その妖精もまた提督を信頼する。
「彼が信頼されていないということは、その妖精と“ケンカ”でもしましたかね?」
私の言葉に、元帥殿が笑う。
元帥「ハッハッハ、まあ妖精とケンカなど後にも先にも“彼しか”出来ないだろうな」
「そうですね……」
202 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:17:10.33 ID:El68fOKQ0
なにせ横須賀鎮守府に新しく着任した彼は、なんと妖精と“話せる”らしいのだ。
こんな人間は聞いたことがない。他の鎮守府の提督は、勿論妖精が見えるものの、言語難により正確な意思疎通は出来ない。が、彼は事もあろうにそんな妖精と、“談笑”したことがあるらしい。
艦娘を連れた提督がその様子を目撃しているので間違いない。
確かに、それが嘘の類でなければ稀有の中の稀有。提督に抜擢しない手はないのかもしれない。
「ですが、いくら妖精と会話が出来る力があったとはいえ、やはり他が伴っていなければ提督は務まりませんよ。聞くところによれば彼の成績は『中の上』、提督として多くの艦娘を纏めるならば、せめて上位15%以内には食い込んでもらわないと……」
言いかけて、ハッと気付いた。この発言は、元帥殿の決定に文句をつけているも同然。一介の部隊長に過ぎない私にはあまりにも僭越すぎた。
203 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:18:30.43 ID:El68fOKQ0
「も、申し訳ございません! 私は元帥殿の御決断を何よりも尊……
元帥「ーーいや、まあそれなんだが」
「ーーーー?」
ど、どうしたと言うのだろうか。ま、まさか今の失言がそのまま私の失職になるというのか!? そんな、あんまりだ。
元帥「彼、全部満点なんだよね」
「…………はい?」
元帥「いや、実技筆記面接に至るまで、彼は文句無しの満点。いわゆる“天才”だ」
「え、いやでも成績は確かに『中の上』と報告されていましたし、彼にもそう伝えた筈なのですが……」
204 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:19:50.59 ID:El68fOKQ0
元帥「点数なんてものは本人には言わないさ、渡す物はあくまで“決められたルールの中で”付けられた評価のみ」
「……と、申しますと?」
元帥「訓練で根を上げそうになった仲間の荷物を代わりに持ってタイムを遅くしたり、災害に見舞われた土地に飛んで座学に遅れてきたり……色々とね」
「それで、最終的に与える評価が下がったという訳ですか!? 考慮の余地は……」
元帥「いや、そういう決まりなので下がるのは当然だ。我々は戦いを強いられる。時には“非情さ”も必要。彼にはそれが欠けている。全ての実を拾うことなど出来ないのだ。そういう意味では、彼へのこの評価は正当とも言える」
205 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:22:48.05 ID:El68fOKQ0
「…………」
成る程、最もだ。綺麗事だけではやっていけないし、荷物を代わりに持った行為は、持たれた側からすれば極論だが、テストで解答用紙を見せたような物……
「その事を、彼は知っているのでしょうか?」
元帥「まあ、知らないだろうね。だけど、彼にそうやって救われてきた人達は少なくない」
「…………はい」
元帥「情けは人の為ならず。そういうものは得てしていつか返ってきてくれるものだ」
「勉強になります」
出来れば彼が、安寧に暮らせますように……
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 22:32:39.88 ID:Zs3odVvJo
提督「学校では評価されない項目ですからね」
207 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:34:32.68 ID:El68fOKQ0
すいません、赤城と加賀と勝負するネタなのですがこれは内容に関してはストーリー進行にほぼ影響が無いので、安価させて頂きます。
ランダム採用です。
1人3つまで勝負する内容お願いいたします。
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 22:36:51.59 ID:fUg136tPO
え?話の流れ的に考えたら弓勝負だと思ったのに違うの!?
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 22:41:42.56 ID:AkpZqE5U0
花札とかどうでしょう
210 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:41:45.66 ID:El68fOKQ0
>>208
さん
違うくても良いかなと。
安価下3まで、勝負する内容1人3つまで、お願いいたします。
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 22:45:02.33 ID:AkpZqE5U0
花札 将棋 福笑い
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 22:45:27.60 ID:a6ryctoLo
猫の前に無造作に2つの干し肉を放り投げてどちらを先に取るかを当てるゲーム
グラスに注いだ酒に交互に硬貨を入れて先に溢れされた方が負けなゲーム
ポーカー
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 22:46:25.79 ID:g2PyYUwe0
せっかくだし弓でもやればいいんじゃね?
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 22:49:46.67 ID:TDLadvPGO
相手の得意分野で勝たなきゃ
215 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:51:03.35 ID:El68fOKQ0
将棋、猫の前に干し肉
採用いたします。
あと一つは?
下2で。(卑猥なものだったり実現不可能な場合はさらに下1)
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 22:56:13.59 ID:n+maX7CDO
弓
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/09/30(土) 22:57:05.87 ID:MlqHsAfq0
甘いもの早食い対決
218 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/09/30(土) 22:59:26.90 ID:El68fOKQ0
承知しました。短いですが今日はここまでとします。
明日時間があればですが大量に進みます。それでは。
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 23:03:39.79 ID:AkpZqE5U0
乙
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 23:16:28.68 ID:99X8RBpnO
>>212
自分の飼い猫を使う
綿で酒を吸うorグラスの下にあらかじめチョコか何かを仕込む
周囲の人間全員がサクラ、イカサマが仕込まれたカード、タバコやジュースを使ったブラフ
ってか
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/10/01(日) 02:08:17.72 ID:zGtj11lH0
乙
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 08:35:58.36 ID:P0E5kv6so
期待
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 09:32:18.75 ID:LuO6fSOMO
後にしたって事は、曙と潮は横鎮出ていったって事だよね?
224 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/01(日) 10:37:01.46 ID:hvIf8TJd0
>>223
はい。外出したということです。
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 12:31:14.49 ID:tlz2ZuY6o
後にしたって表現は外出とかで使う言い方じゃなくて何かしらの決意を込めてもう戻ってこないとかの時に使うんや
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 12:38:29.61 ID:qcBQWZNyO
敬礼を謝罪だと思ってたのもそうだけど格好つけようとして滑るの凄い恥ずかしいな……普通の言葉つかえはいいのに
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 12:49:14.75 ID:IFBRtLMhO
賢者の孫と同じ物を感じる
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 13:02:37.45 ID:+gTsMklrO
>>225
普通に使うから。
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 13:06:34.64 ID:+gTsMklrO
わたしは台所を後にして、部屋に戻ると……
普通に書籍にある文章。『出て』って意味で使われてる。
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 13:45:39.56 ID:C0DogdYiO
うるさい外野やでほんま
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/10/01(日) 20:34:16.91 ID:zGtj11lH0
続き待ってます
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 22:31:11.87 ID:bmHL9lf+O
>>226
なんか可哀想だから言っとくけど、敬礼と最敬礼は違う。最敬礼は頭下げるし、ちゃんと1の言ってるみたいに謝罪の意味もある。目上の人間に対して使うってのも合ってる。ただ 最大限 の謝罪って意味じゃなかったってことな?
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 23:00:47.27 ID:vW+DKsUkO
敬礼の上位が最敬礼だろ?
確かに敬礼(最敬礼)には謝意の意味もあるけど敬礼における謝意は「感謝する心」の方で謝罪の方の意味はないだろ
「礼をして敬う」んだぞ?
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 23:11:28.37 ID:haRa+hTzO
>>232
何か指摘がトンチンカンじゃね?
>>226
が言ってる敬礼は文脈的に最敬礼のことだって見れば分かるでしょ……ってか目上の〜ってのはどっから出てきたのよ
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/02(月) 00:40:01.87 ID:FWA+cIs70
そんなこといいから続きはよ
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/02(月) 01:15:36.88 ID:TOit2Oaeo
今更だけどヘイト物ってそれだけでアンチが湧きやすいんだからサクッと短編で終わらせたほうがいいかもね
あとヘイト物はカタルシス得る前にエタるのもよくあるしなー
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/02(月) 06:25:42.33 ID:DgMN6a8LO
言うほどヘイト物か?この程度じゃ言うほどじゃなくね
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/02(月) 07:57:11.90 ID:nOvkVjyJO
なろうよ系ハーレム物に慣れた人はちょっとキツいこと言われただけでヘイトと感じてしまう軟弱メンタルだからね、仕方ないね
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/10/02(月) 18:18:47.91 ID:cfBUuGLP0
続き待ってます
240 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/02(月) 20:55:17.32 ID:68mArPb90
すいません、実は一昨日の夜から高熱が出ているので治るまで書き込めません。申し訳ございません。
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/02(月) 21:28:25.43 ID:7nSW/cpg0
ありゃりゃお大事に
のんびり待ってますよー
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/02(月) 21:57:50.72 ID:+vGhDVOxO
お大事に
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/02(月) 21:59:48.37 ID:IyLkyumYo
それでも毎日スレは見るってか
ネットなんかやってねーで寝ろ
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/02(月) 23:43:02.80 ID:AW5fQeyDO
ゆっくり療養してくれ
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/03(火) 01:45:22.71 ID:jaddy5Fvo
お大事に
246 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:03:17.53 ID:i/ikTpOF0
提督加賀「「よろしくお願いします」」
私、赤城は今お二人の“勝負”に立ち会っています。提督が勝負をしないかと提案してきたのには少々驚きましたが、加賀さんはこれを呑みました。
意外……と思われるかもしれませんが、それはひとえに“条件”の存在が大きかったのでしょう。
提督『この勝負にもし俺が負けた場合、上官を殴った件は不問、さらに指揮の最高決定権をお前に譲渡しても良い』
ーー破格。
最高決定権ということは、もし提督の指揮に不満があった場合、最終的にはその指揮を破棄することも可能ということ。それは正しく今の加賀さんが欲しているもの。
提督『その代わり俺が勝ったら、俺をちゃんと提督として認め、お前らはしっかり俺の指揮に従うこと』
247 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:05:55.98 ID:i/ikTpOF0
そう。それは私達にとって、メリットこそあれ、“デメリットが殆どない”提案でした。何故なら提督の指揮に従うのは、こんな勝負以前に“当たり前”だからです。
加賀さんも昨日はカッとなって提督に手をあげたものの、指揮に従わないような素振りはあくまで形だけ。気持ちはそうでも、それを周囲(大本営)が認める筈もない。
ゆえに結局のところ提督という立場の人間の意見は、艦娘にとって絶対的な強制力を持っているのです。
悪態はつけど、提督に刃向えば自分がどうなってしまうのかを、しっかりと理解していますから。
そういう意味では、加賀さんの昨日の行動は感情に任せた愚かな行為だったと言えるでしょう。
加賀さんはこの提督の条件を聞いた瞬間、明らかに闘志を剥き出しにしていました。その目は彼女の言葉を借りるなら、「ここは譲れません」と言いたげでした。
248 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:08:39.17 ID:i/ikTpOF0
赤城「手番は振り駒により加賀さんから。それでは始めます」
そう。勝負は幾つか行う。そのうち第一回戦は『将棋』。将棋はいわば戦争のシミュレーション。お互いが同等の兵力で持って、戦略をぶつけ合う勝負です。
提督がこの種目を選んだ理由、それは暗に私達へ伝えようとしているのでしょう、「俺の戦略はどうだ?」と。
加賀「(それを真っ向から叩き潰す……)」
2人は共に居飛車、それに加賀さんは手早く舟囲い?……急戦でしょうか?
対して提督は矢倉囲い。スタンダードにいくならここからは3-7銀戦法ですかね。
と、最初に手を止めたのは提督でした。
249 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:10:36.88 ID:i/ikTpOF0
提督「俺に将棋を教えてくれたのは、俺の爺ちゃんでさ」
加賀「ーーーー」
提督のお爺さん?
提督「俺は昔っから合理主義みたいなところがあって、爺ちゃんはその反対でバカばっかやってたからさ」
加賀「…………それで?」
加賀さんも私も、急に話し出した提督の話に一時耳を傾けます。私はともかく、加賀さんも興味があったのでしょう、彼という人物をつかむ情報に……
提督「俺絶対将棋やっても勝てるだろって思ってたんだけど、あっさり負けてさ。……最後まで勝てなかったな」
加賀「貴方のお爺様がどれぐらい凄い人なのかは分からないけれど、それは貴方の指揮力が無いことを吐露しているように聞こえるのだけど?」
250 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:16:47.00 ID:i/ikTpOF0
勿論一口に将棋に負けたからといって、それだけで提督に指揮力が無いとまでは言わないでしょうが、あくまで指標として。“そういう意図”で彼が設定したのなら、尚更でしょう。
提督「ああ。でもあん時爺ちゃんが言ってたことが、3年経ってようやく分かってきたんだ」
加賀「それは一体?」
提督「定石ばかりじゃダメってこと。型にとらわれ過ぎるのは、結局その型を作った人間以上にはなれない」
加賀赤城「「ーーーーッ!!」」
そう言って提督が打った手は、とんでもないものでした。
加賀「あなた、それは一手損……」
一手損角換わり。
後手の角がわりで一手損。しかし、近年ではまあ見るようになった……が、ほぼ確実に矢倉を形成するかにみえたその戦略を急変させたのだ。
251 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:19:16.87 ID:i/ikTpOF0
たちまち提督の手は無定形へと変わってしまいました。
それは序盤も序盤での出来事。
しかし、思えばここからすでに加賀さん、そして私は提督の術中にハマっていたのかもしれません。
持ち時間20分としたこの勝負。気付けば加賀さんの残りタイムは2分を切り、提督はなんと15分以上を残していました。
加賀「ーーーーっく……」
加賀さんが塾考し、やっとの思いで打った手も、提督が即座に打ち返し、また加賀さんの塾考が始まる。
これを6度程繰り返し、
加賀「……参りました」
252 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:21:07.17 ID:i/ikTpOF0
ーー詰み。
加賀さんは潔く提督に頭を下げました。
この勝負、決して加賀さんが弱かったわけではありません。寧ろ、確か加賀さんは相当将棋が強かったはず……その強さを一切感じさせずに、提督は彼女を倒してしまいました。
まるで、その辺の雑兵のように……
暫し加賀さんが目を閉じたままジッとしていましたが、彼女は一呼吸おいて意を決したように
加賀「……次の勝負は何?」
ーー加賀さん、やる気満々ですね……。
提督「なんだ加賀、お前結構負けず嫌いなんだな」
加賀「当たり前よ。貴方のような人になら尚更ね。……将棋には負けたけれど、次は絶対に勝つわ」
余程悔しかったのでしょう、加賀さんの瞳に強い意志が見えます。
赤城「それで提督、次の勝負は」
加賀さんのような動機ではありませんが、私もこの勝負には少し興味があります。先程の提督の手腕、並みのそれではありませんでした。
勿論、ただ単に将棋が上手かっただけという可能性も否定は出来ませんが……
提督「そうだな、次は赤城も参加してもらおうか」
赤城「ーーーーへ?」
253 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:23:39.69 ID:i/ikTpOF0
*********************
所変わって食堂へ。
前までは間宮さんがいらした食事処も寂しく、ここ最近は大鯨さんが料理を作ってくれています。
しかし、おかしいですね。いつもなら大鯨さんがいらっしゃる筈なのですが、何か都合が合わなかったのでしょうか?
提督「そろそろ腹も減ってきたとこだし、次の勝負、こんなのはどうだ?」
加賀赤城「「…………?」」
そう言って提督はカウンターの奥へ入って行ったかと思うと、ガラガラと大きいカートを引いて戻ってきました。
加賀「こ、これは……」
赤城「ーーーーっまあ!?」
254 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:25:01.34 ID:i/ikTpOF0
そこにはとても美味しそうなショートケーキの山が……。
赤城「流石に気分が高揚します」
加賀「赤城さん……」
加賀さんがジト目を向けてきましたが、最早それに構ってはいられません。だって、だって目の前に宝の山があるのですから!
赤城「提督、これは一体どうなされたんですか? それも普通のショートケーキには見えません!」
提督「ご明察。このショートケーキは某有名ケーキ専門店の、まあ所謂高級なやつだ。今朝早くに頼んでおいたんだよ。まあお前らが勝負を受ける受けないどちらにせよ、消費はできるしな」
ーーあの、ショートケーキが一個1000円近くするという超有名専門店の!?
ああ、いけない。思わず口から何やら液体が……
255 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:27:10.47 ID:i/ikTpOF0
加賀「そんな高価な物どうやって……っ! ま、まさか貴方、鎮守府の運営経費から!?」
赤城「ーーーーッ!」
そう加賀さんが言った瞬間、一気に温度が冷えた気がしました。
ケーキは全部で軽く100個はくだらない。単純計算で10万円、決して安い額ではありません。
そもそもこの様な個人の争いに経費を割くなどもってのほか。
ーーこれは早急に対処しないと……
赤城「ていと……
提督「あ、いや。これはポケットマネーだ」
加賀赤城「「…………はい?」」
What is Pocket Money? (ポケットマネーって何?)
256 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:28:12.07 ID:i/ikTpOF0
驚きのあまり思わず金剛さんの真似をしてしまいました。
隣で加賀さんも私と同じ様な反応をしています。
赤城「えっと……つまりこれは提督の自腹、ということでしょうか?」
提督「ああ、まあウチは多少裕福な家庭でね……」
赤城「多少……」
少なくともこの様な使い方が出来るほどには、お金持ちということでしょうか。それは世間一般的には多少、ではなく“かなり”、の部類に入りそうですが……
提督「で、多分察しているかもしれないが今回の勝負はケーキ早食い対決だ」
257 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:30:07.95 ID:i/ikTpOF0
*********************
時刻は12時を少し過ぎたところ。普段なら昼食の時間でお腹も空いてきたというもの。
しかし、私(赤城)としては提督の前であまりバカバカと食べるというのは、なんともはしたない気がします。
ただこの時ばかりはこれが勝負なので、仕方がありません。
赤城「おいしぃ、ですねぇ〜!(もぐもぐ)」
……仕方がないことなのです。
258 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:32:07.45 ID:i/ikTpOF0
提督「お、赤城は流石の食いっぷりだな」
加賀「そういう貴方はどうしたのですか? もう限界ですか?」
設けられた制限時間は8分。現在3分が経ち、私こと “加賀” が9皿、赤城さん8皿、そして提督が6皿という状況、平均ペースは1皿約22秒といったところ。
提督「馬鹿言うな、まだまだいけるさ」
加賀「ふっ、どうやら戦う種目を誤ったようね」
自分で言うのもなんだが、私と赤城さんはかなりの大食漢だ。正直いってこの8分間手を休めることなく食べ続けられる自信がある。
対して彼はどうだ、男で身長は高く中々に鍛え上げられた肉体をしているが、所詮それだけ。
その証拠に、既に私と比べて3皿分の差がある。
大食いではなく“早食い”にしたとはいえ、彼に勝機があるようには……
259 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:33:41.00 ID:i/ikTpOF0
提督「うん、結構美味いな。……じゃあそろそろ、“飛ばすか”」
加賀「ーーーーッ!?」
そう提督が零したかと思うと、彼は今までとは比較にならない程のスピードでケーキを口へとかきこんでいった。
ーーま、まさか今までは早食いをしていた訳ではなく、“味わって食べていた” とでも言うの!?
赤城「おいひぃ〜ですぅ(もぐもぐ)」
加賀「ここは譲れません!」
早食いというのは大食いと違い、ペース配分が一定であれば逆転というものが起こりにくい。
ーーだからここで抜かれる訳にはいかない!
260 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:36:40.04 ID:i/ikTpOF0
そこからは激戦だった。
私と提督は一進一退、残り1分30秒を切ったところで私と提督が共に26皿、赤城さんが20皿となった。つまり差はない。
彼の胃袋がまだ根を上げていないと言うのなら、ここから先は一歩も引くことは出来ない。
提督「うおおおおおお!!」
加賀「ラストスパート……行きます!」
正直言ってこれ以上のペース上げはきついが、勝ちたいという一心で自分に喝を入れた。
その時だった。
261 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:38:15.11 ID:i/ikTpOF0
赤城「…………ラスト?」
提督加賀「ーーーー?」
赤城さんが何やらボソリと呟いた。しかし手を休める訳にはいかないのでそちらを振り向くことは出来ない。
しかし次に聞いた彼女の言葉で、私は理解してしまった。
ーー“怪物”が動き出したことを。
赤城「ラスト? ……ラストって、
……もう食べられないってことですか?」
262 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:42:01.39 ID:i/ikTpOF0
瞬間、辺りの空気の流れが変わった。
私は手を、口を、呼吸が止めた。
ーー否、“止められた”
真横から襲い来る途轍もないプレシャーに、身体を拘束されてしまったのだ。
しかしそれは幸い首位争いには影響しなかった。それはなぜか? 提督も私と同じように固まっていたからだ。
提督加賀「「…………」」
食べる……というよりは吸う感覚だろうか、おそらく掃除機に近い。そして噛むというよりは飲み込まれるという表現が正しいように思える。そう、まるでブラックホールのような。
赤城「ーーヅッーーッーーヅッーーヅッーーッ」
263 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:44:55.97 ID:i/ikTpOF0
>>262
私は手を、口を、呼吸が止めた →ミス
私は手を、口を、呼吸を止めた→◯
264 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:46:50.57 ID:i/ikTpOF0
赤城「ーーヅッーーッーーヅッーーヅッーーッ」
それは咀嚼音……というには些か質素な音であった。
永遠に空気を吸い込み続ける音。
無声音で表すなら字面に濁音が混ざったような……。これは一体 “何を” 食べている音だろうか。
私はしばらく考えた。隣を見やれば、どうやら提督も考えているようだ。
ーーあ。
そして思い付いたのだ。
そうだ、これは “麺類だ”、と。
ーー赤城さんは今、 “麺類を食べている” のだ、と。
265 :
◆IJfM0QLMGnst
[saga]:2017/10/04(水) 00:50:52.54 ID:i/ikTpOF0
納得した私と提督はお互いに顔を見合わせて頷きあった。
ーー良かった。どうやら麺類という見解で合っているようだ。
1分程、私と提督は拘束されているかのように動かなかったというのに、食器の触れ合う音がやけに顕著になったかと思うと、ラスト20秒を切ったところで突然ピタリと止んだ。
加賀「…………」
赤城さんはとても満足そうな笑顔を浮かべながら、今しがた食べ終えた1枚の皿を自身の皿の山へと積んだ。
赤城「ごちそうさま」
それが最後の音だった。
それ以降、音が鳴ることはなかったのだ。
そして何故か、ショートケーキは全て消滅していた。
不思議な事もあるものだと、私と提督はハハハと無機質に笑い合った。
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