ダイヤ「今夜も」花丸「鬼退治ずら!」

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1 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:19:01.69 ID:JoO5hW230
『――もう一度確認するよ、本当にいいんだね?』

ダイヤ『…はい、覚悟はできています』

『…でも』

ダイヤ『黒澤家に欠陥品は必要ありません。私にとっても、この子にとってもこれが一番いいんです』

『欠陥品って…』


ダイヤ『おばあ様、お願いします』

『……分かりました。それでは始めますよ――――』


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2 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:21:20.70 ID:JoO5hW230

―――――――

―――――

―――


果南「――よし、今日の練習はここまでにしようか!」

ダイヤ「皆さん、お疲れ様でした」

千歌「ひぃ〜…疲れたぁ」

曜「今日は暑かったからねー」


善子「……ぐへぇ」グッタリ

ルビィ「善子ちゃん…だ、大丈夫?」

花丸「ほら、こんな所で寝そべらないの。起きて起きてー」

善子「…どうしてあんた達は平気なのよぉ」


鞠莉「――そうそう、こんな噂があるのって知ってる?」

梨子「噂…ですか?」

鞠莉「『内浦には鬼が出る』って噂よ」

果南「内浦に鬼ぃ? そんな馬鹿馬鹿しい」ヤレヤレ

鞠莉「でも、ここ最近街の人が意識不明で倒れている事件が多発しているじゃない?」

曜「ずっとニュースでやっているよね。確か全国的にも起きているとか」

鞠莉「内浦で襲われた意識不明の子が病院で『鬼が…鬼が……』って言いながらうなされているんですって」

千歌「それで鬼が出るって噂になっているんだ」

善子「ふぅ〜ん…」

梨子「でも、本当に鬼が出てきて襲われちゃったらと思うと怖いよね…」

花丸「万が一って事もあるずら」

ダイヤ「被害を受けた方は全員夜に出歩いていて襲われています。だったら対策は簡単ですわ」

ルビィ「夜は家に居ればいいって事だね!」


ダイヤ「っと言う訳で、被害が収まるまで夜の外出は禁止しますわ!」

千歌「えー、禁止ですかぁ……」

曜「別に出歩く用事も無いし、いいんじゃない?」

果南「どうせ鬼なんていないのに…」

ダイヤ「被害が出てからでは遅いのです! いいですわね?」

果南「……はぁ〜い」
3 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:25:01.20 ID:JoO5hW230
―――――――

―――――

―――


〜桜内家〜


梨子(んんー‥作曲が進まない‥‥明日までに完成させる約束なのに)

梨子(ちょっと気分転換に散歩でもしようかな?)

梨子(ダイヤさんには出るなって言われたけれど‥まあ、大丈夫よね)



時刻は20時、それほど遅い時間では無い。
母親に外出の旨を伝え、梨子は散歩へ出掛けた。

――異変に気が付いたのは家から少し離れた場所まで来た時だった。



梨子(‥‥なんだか肌寒いわね。まだ8月だっていうのに‥)

梨子(それに人の気配が全く無い‥まだ20時よ?)



いくら内浦が東京と比べて田舎だとしても、この時間帯に人一人、車一台通らないのは今まで経験した事がなかった。



梨子「―――まるで、人払いの魔術でもかけられたみたい‥なんてね」



―――ゾゾゾゾ‥‥



言葉では言い表せない奇妙な感覚が梨子を襲う。
ただ、これだけはハッキリと分かった…
背後から何か近づいている。



梨子「な、何‥何がいる‥‥の?」ドクンッドクンッ



ゆっくりと振り返る。

そこには額から二本の角を生やした全長3メートル近くの化け物が居たのだ。
そう、それはまるで絵本の挿絵で見た事のある鬼そのものだった。
4 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:26:31.58 ID:JoO5hW230



梨子「う、ウソで‥‥しょ? ‥へ?」



目の前の光景を受け入れる事が出来ない。
そんな梨子を差し置いて、鬼は突然走り出す。


梨子「っっっ!!!!!!?」



自分より大きな、それも化け物に接近されてパニックに陥る梨子。
逃げる事も叫ぶ事も出来ない。

鬼は梨子目掛けて腕を振り下ろした



―――ブウゥン!!!



梨子「きゃあっ!!?」ドサッ



間一髪、尻餅をつく形で体への直撃は免れるが、その鋭い爪は梨子の両足を刈り取った。
――ように見えたのだが‥



梨子「あ‥あれ? 痛く‥無い。それに、足もちゃんとある‥‥」

梨子(確かに当たったはず。鬼の攻撃が私の体をすり抜けたの?)

梨子(なら、早く逃げないと! ‥‥えっ、足が動かない!? 何で!!?」ゾッ



全く力が入らない。それどころか足の感覚が完全に消滅していたのだ。つねっても叩いても何も感じない。
そんな事をしているうちにも鬼は梨子へジリジリと近付いて来ていた。



梨子「い、いや‥‥来ないで! 来ないでよおお!!!」

「‥‥グルルルッ」


梨子「だ、誰か‥‥誰か‥助けて‥‥!!!!」



―――ザクッ!!



梨子「!?」



鬼と梨子の間に割って入るように、槍のような黒い武器が突き刺さる。
刹那、その武器のすぐ近くに二人の少女が瞬間移動して来た。
その少女達は梨子がよく知る人物で――
5 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:29:47.41 ID:JoO5hW230
梨子「―――だ、ダイヤさんに花丸ちゃん‥‥!?」


ダイヤ「‥‥全く、夜は出歩くなと言ったではありませんか」ハァ‥

花丸「大丈夫? 怪我とかしてない?」

梨子「え、あ、うん‥‥怪我はしてないけど、足が‥」

ダイヤ「鬼に魂を削られたんでしょう。暫くすれば動くようになるので安心して下さい」

梨子「魂? 削られた??」

花丸「後で説明するずら。今はあの鬼を何とかしないとね」

梨子「そ、そうだよ! どうして鬼がこんな所にいるの!? そもそも何とかするって‥‥」


ダイヤ「―――っ!」ズズズ‥


梨子(えっ‥ダイヤさんの髪色が赤くなった‥‥?)

花丸「ダイヤさんの家系は代々、鬼退治をしていたずら」

梨子「鬼退治?」

花丸「鬼は普通の人間では触れる事が出来ずにすり抜けるちゃうの」

花丸「その時にすり抜けた部位の魂を鬼に喰われちゃうずら。今、梨子さんの足の魂は消滅しているから動かないんだよ」

梨子「喰われる!!? 本当に大丈夫なの!?」

花丸「仮に全身喰われても死ぬ事は無いよ? ただ、数十年間は意識が戻らないだけ」

梨子(全然大丈夫じゃないじゃない‥‥)

花丸「でも、ダイヤさんはそんな鬼と対抗出来る"妖力"を扱えるずら。髪が赤くなったのはその力を纏った影響なの」

梨子(黒澤家なのに赤くな‥‥)
ダイヤ「今、黒澤家なのに赤くなるのかって思いやがったな!!!!」

梨子「ひっ!?」ビクッ

ダイヤ「‥‥ゴホン、思いましたね?」

梨子「は、はい‥‥」
(なんか、口調が荒々しくなってる‥)

花丸「ダイヤさんは妖力を纏うと少し攻撃的な性格になっちゃうんだよね‥」アハハ‥

梨子「な、なるほど」



6 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:31:20.84 ID:JoO5hW230
ダイヤ「さぁーて‥最近内浦で悪さをしている鬼は貴様だなぁ? ‥ですね?」

「グルルルッ!!」

ダイヤ「―――排除します!!!!」



ダイヤは大きく飛び上がり、鬼の顔面を蹴り飛ばす。助走なしで3m近くジャンプしたのだ。これには梨子も驚愕した。
体勢を崩した鬼の体に連続で拳を叩き込み続ける。

が、鬼も一方的に攻撃され続けるだけではない。
攻撃を受けながらも、鋭い爪でダイヤの腕を斬り裂いた。
それ程深くは無いが、その痛みにダイヤは顔を歪ませた。



ダイヤ「痛っ!!!?」

梨子「ダイヤさん!!!」

ダイヤ「問題ありません。この程度の傷なら直ぐに治ります!!」

花丸「妖力を纏ったダイヤは身体能力と回復力が飛躍的に向上してるの。あれなら数十秒で完治するずら」

梨子「な、なんでもアリなのね‥」

花丸「まあ、ダイヤさんなら即死じゃ無ければ死なない奥の手があるから大丈夫」

梨子(奥の手?)


ダイヤ「花丸! 封印の準備を!!!」

花丸「了解ずら!」



ダイヤ「――Double accel(二重加速)」ボソボソ



ダイヤは小声で何かを唱える。
すると、まるで映像を倍速再生しているかのような速度で動き出した。



ダイヤ「ハアアアアああああ!!!!」ズドドドドドド!!!!

「っっっ!!!!?」



7 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:33:11.40 ID:JoO5hW230
梨子「は、速い!! これも妖力なの…?」

花丸「あれは 妖力 を使って発動させる 妖術 ずら」

花丸「黒澤家は代々『時間』を司る術を得意としていて、ダイヤさんは自身に流れる時間を操れるの」

梨子「時間を操る…そんな事が……」

花丸「今ダイヤさんの体内に流れる時間は通常の二倍、つまりいつもの二倍速く動けるずら」

梨子「だからあんなに速く…でも大丈夫なの?」

花丸「勿論、体には相当の負担がかかってる。でも、倍速なら回復力強化で補えるから大丈夫」



反撃の隙も与えずに攻撃を続けるダイヤ。
鬼の口元や腹部から赤い血が飛び散る。

鬼が倒れるのも時間の問題だと思われたが…



梨子(ダイヤさんが優勢なのは明らかなのに…どうしてこんなに胸騒ぎがするの……?)

梨子(……痛っ!!? 目が…)ズキンッ!



突然の痛みに両目を覆う



花丸「梨子さんどうしたの!? 目が痛いの!?」アワアワ

梨子「そ、そうなの…いきなり痛くなって……」

花丸「少し見せて?」


梨子「う、うん。お願い」

花丸「どれどれ…えっ? 瞳が……赤い?」



梨子の視界には戦闘中のダイヤの姿があった。
その光景を見た直後、梨子の脳内には最悪なイメージが浮かび上がる。

確信は無い、だが断言出来る。
このままではダイヤが――



梨子「―――ダイヤさん避けて!!!!!」

ダイヤ「はい? 何を言って……」
8 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:36:39.96 ID:JoO5hW230



――ドスッ!!!



ダイヤ「……は? ………ゴホッ」ボトボト



ダイヤの腹部に鬼の片手が深々と突き刺さっていた。

鬼の両手両足には常に注意を払っていた。
ただ、流石のダイヤも肩のすぐ下から生えてきた新たな両腕による攻撃は予測出来なかったのだ。

鬼が腹部から手を抜くと、ダイヤは糸の切れた操り人形のようにそのまま地面に倒れ込む。



花丸「そ、そんな…ダイヤさんがやられた!?」

梨子「どうするの!? 花丸ちゃんも戦えるんだよね!!?」

花丸「マルは妖力を纏っても何も変化しない…それに戦闘向けの妖術も無いずら!」

梨子「打つ手無しじゃない! く、来るわよ!!!」


「ガアアアアアア!!!!」ダンッ!!


花丸(あ……速過ぎて見えな――)ゾッ

梨子「伏せて!!!」

花丸「っ!!!?」バッ



梨子の指示に従い、即座に身を屈めた。
鬼攻撃は花丸の頭上を掠める。



花丸(梨子ちゃんには今の攻撃が見えたの…? いや、今はそんな事考えている場合じゃ無い!)

花丸「掴まって!!」

梨子「う、うん!!」ガシッ



梨子は花丸の手を握る。
それと同時に花丸は持っていた槍を鬼がいない方向へ思いっきり投げ飛ばした。
そしてすぐさま人差し指と中指を立てて印を結ぶ。

鬼の攻撃が当たる直前、二人は槍のある場所へ瞬間移動した。



9 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:40:20.86 ID:JoO5hW230
梨子「うおぉ!? こ、これが花丸ちゃんの妖術?」

花丸「そうだよ。一定の範囲内ならこの槍のある場所に自身を瞬間移動させる事が出来るずら」

梨子「これなら攻撃の回避は――」

花丸「ただ、一回使うと再発動に30秒必要なの。連発は無理ずら……」

梨子「そんな…! 私の足はまだ動かないよ!?」

花丸「安心して? もう避ける必要は無いから」

梨子「…は?」



にこっと笑うと、今度は槍を向かってくる鬼の方向に投げた。
しかし槍は鬼の遥か頭上を越える軌道、絶対に当たらない。



梨子(え? あんなに高く投げちゃうの?)

花丸「……さっさと決めるずら!!!」



――パシンッ!!



ダイヤ「――……任せなあああああああ!!!」ズシャ!!!



そこには倒されたはずのダイヤの姿があった。
投げた槍を空中でキャッチしたダイヤは、そのまま鬼を頭のてっぺんから真っ二つに斬り裂いた。

動かなくなった鬼を確認し、妖力を解くとダイヤは再び黒髪へ戻った。



ダイヤ「ふぅ、まさか奥の手まで使わされるなんて…わたくしもまだまだ甘いですわね」

花丸「全く…しっかりして欲しいずら!」


梨子「だ、ダイヤさん!? 怪我…お腹の怪我は大丈夫なんですか!!?」

ダイヤ「ん? ええ、この通り大丈夫ですわ」

梨子「…服に穴が開いているって事は、間違いなく貫いていたって事ですよね。いくら回復力が高まっているとはいえ、あんな短時間で治るものなんですか?」

ダイヤ「いいえ、無理です。あの傷だと回復力に頼っていたら治る前に出血死するでしょうね」

梨子「だったらどうやって…」

花丸「さっき、ダイヤさんは自身に流れる時間を操作出来るって言ったよね?」

梨子「うん」
10 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:42:06.83 ID:JoO5hW230
ダイヤ「その能力を使って身体の時間を10秒巻き戻しました」

梨子「巻き戻す…?」

ダイヤ「24時間に一度使える奥の手ですわ。どんな怪我をしても10秒前の身体が無傷ならば元に戻ります。戻せるのは傷だけですけれど」

梨子(おぉ…何でもアリなんだなぁ)

ダイヤ「…ん? 梨子さん、その眼は――」
花丸「じゃあ、早速鬼の封印に取り掛かるねー」

ダイヤ「あ、ええ。お願いします」

梨子「封印? この鬼はもう死んでいるんじゃないの?」

ダイヤ「残念ですが鬼には死の概念がありません。あれだけのダメージを与えても、時間が経てば復活します」

花丸「とは言っても、あれなら復活に数年以上はかかると思うけどね」

梨子「でもまたあんなのが動き出すなんて…」

ダイヤ「国木田家は封印術に長けた一族ですの。代々、黒澤家が鬼を弱らせて国木田家がそれを封印する。そうやってこれまで戦ってきました」



花丸は鬼の体の近くまで行くと、両手を合わせた。
不思議な風が花丸の周囲に発生する。



梨子(花丸ちゃんの妖術が発動してるって事なのかな)


花丸「――封印!!!」



掛け声とともに、合わせた両手を鬼の体に押し付ける。
淡い光を発しながら鬼の体は地面と同化していった。



花丸「よし! これでもう大丈夫!」

梨子「良かった…」
11 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:43:11.83 ID:JoO5hW230



ダイヤ「……さて、問題はここからですわね」

花丸「うん…そうだね」

梨子「え? まだ何かあるんですか?」キョトン

ダイヤ「取り敢えず、いつまでもここにいるわけにはいきません。梨子さん、立てますか?」

梨子「ごめんなさい……まだ力が入りません…」

ダイヤ「そうですか。なら、わたくしが担いで行きますわ」ヒョイ

梨子「ひゃ!?」

ダイヤ「このまま家に帰すわけにはいかないので、一旦我が家まで連れて行きます」

梨子「え…それって――」ゾッ

花丸「……」


12 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/18(月) 21:51:44.87 ID:JoO5hW230
最近までバトル系のSSを書いていた者です。
今作も亀更新ですがよろしくお願いします。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 23:23:27.77 ID:kAYKUe6U0
なんだこれ
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 00:39:09.79 ID:kwCgccDY0
ほう、犬夜叉とかブリーチ感があるな期待させていただこうか
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 00:52:41.82 ID:L7YUzsMKo
期待
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/19(火) 00:57:01.99 ID:BhtIFH/XO
ちかっちの扱いによる
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:20:13.69 ID:7SRng8NSO
このダイヤさんがAVコーナーからロシア人もの持って出てきたのか

ルビィの髪は赤い…あっ(察し)
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:52:41.34 ID:Lvav+yHt0
期待の新作
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 19:25:27.22 ID:N9km92AWO
>>17
くっさ
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 21:38:38.90 ID:7SRng8NSO
>>19
このID:N9km92AWOめちゃくちゃくさいんだけど…
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 00:00:21.24 ID:LNYo8MUQo
>>20
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 00:33:06.65 ID:Dp/xALuN0
>>20
あなたもしょーもないSS書いてないでさぁ
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/20(水) 00:59:18.18 ID:6QDgHe7TO
>>20
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 08:00:41.48 ID:7mfBNVZSO
期待
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 19:32:47.16 ID:B+VgfHTSO
>>22
初めての拉致の大泉くん乙
26 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:29:15.57 ID:vBeOgIYi0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜黒澤家〜


ルビィ「あっ! 二人ともお帰りな……あれ!? 梨子さん!!?」

梨子「こ、こんばんわー…お邪魔します」アハハ…

ダイヤ「ルビィ、わたくし達は着替えてきますので梨子さんを応接間に連れて行ってくれます?」

ルビィ「う、うん」

梨子「ごめんね? ちょっと足に力が入らなくて…」

ルビィ「それは大丈夫ですけど…お姉ちゃん、梨子さんは……」

ダイヤ「……」

梨子(やっぱり…私、これから何かされるんだね。秘密を知った部外者は処分されるって事…なのかな)ブルブル





27 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:31:35.04 ID:vBeOgIYi0



ダイヤ「――お待たせしました。足の調子はどうですか?」

梨子「はい…もう歩けるくらいには回復しました」

ダイヤ「そうですか。安心しましたわ」


梨子「あ、あの…私はこれからどうなっちゃうんでしょうか……?」

花丸「……」

ダイヤ「……」

ルビィ「……」

梨子「……ゴクッ」


ダイヤ「本題に入る前に、一ついいですか?」

梨子「何ですか?」

ダイヤ「桜内家は代々、鬼狩りやその補佐を行う一族では無いんですか?」

梨子「…いいえ、そんな話は今まで聞いた事がありません」

ダイヤ「そうですか」


28 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:33:00.88 ID:vBeOgIYi0


ダイヤ「……無用な混乱を避けるため、鬼の存在、妖力及び妖術の存在は公にしない取り決めになっております」

梨子「…はい」

ダイヤ「それでも止む追えず目撃された場合は、当人の記憶を抹消することで対応してきました」

梨子「あ、なんだ…てっきり存在を消されるかと――」

花丸「でも、梨子さんの記憶は消すことが出来ないずら」

梨子「え?」

ダイヤ「記憶の抹消は妖力が使える人間には効果がありませんの。先ほど梨子さんが開眼したあの赤い眼、あれは間違いなく妖術の一種ですわ」

花丸「妖術は妖力が扱えないと発動できない。つまり梨子さんには記憶の抹消が効かないって事なの」

梨子「ええっと…つまり?」


ダイヤ「秘密保持の為、これより梨子さんは黒澤家及び国木田家による監視対象になります」

梨子「監視…ですか」
29 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:34:18.81 ID:vBeOgIYi0
ダイヤ「その為に梨子さんの体に特殊な刻印を埋め込みます」

梨子「ええっ!?」

花丸「大丈夫大丈夫、普段は表面に現れないから見えないよ」

ダイヤ「梨子さんが私達のいないところで無闇に妖力を使用したり、鬼の話をしたりした場合、私達に伝わるようにする刻印です」


梨子「もし…もし、他の人に鬼の話をしたり妖力を使ったりしたらどうなるんですか……?」

ダイヤ「…聞かない方がいいと思いますよ?」

花丸「多分梨子さんが最初に想像した通りだと思うな」

梨子「……」マッサオ

ダイヤ「まあ、梨子さんは賢い方だと思っているので大丈夫だとは思いますが」


梨子「でも…どうして私に発現したの?」

ルビィ「梨子さんは鬼に攻撃されたんだよね?」

梨子「うん、足に攻撃を受けたよ」

ルビィ「鬼に直接攻撃を受けた人が突然能力に目覚めるのはよくある事なんだよ」

花丸「確率的には3割くらいかな」

梨子「意外と高確率なんだね。…ん? だったら私みたいに監視対象になっている人って結構多いの?」

ダイヤ「いいえ。今は梨子さんだけですわ」

梨子「あれ、どうしてですか?」

ダイヤ「鬼に襲われた一般人が生き残れる可能性が極めて低いからです。下手に発現して妖力を纏ってしまえば、魂だけでなく体まで喰われますし」

梨子「私、かなり運が良かったって事ですね……」


30 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:35:38.08 ID:vBeOgIYi0
花丸「それにしてもさ、梨子さんはよく鬼の初撃を回避できたね?」

梨子「?」

花丸「鬼って必ず背後から襲うんだ。私達は知ってるから警戒できるけれど、何も知らない人は一撃でやられるのが普通だから」

梨子「そうなんだ…あの時は寒気みたいなものを感じたから気が付つけたんだよ」

ダイヤ「寒気? それは本当ですか!?」

梨子「え、ええ」

ダイヤ「そうですか…梨子さんは眼以外にも感知能力があるんですね」

梨子「??」

ルビィ「簡単に言えば、目視しなくても鬼の位置を感じ取れる能力だよ」

梨子「へー、能力は一人一つって訳じゃないんだね」



31 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:38:37.53 ID:vBeOgIYi0



花丸「ねえ、ダイヤさん…提案があるの」

ダイヤ「……予想できますが、一応聞いておきましょう」

花丸「梨子さんに 力 の使い方を教えない?」

ダイヤ「……」

梨子「教えてくれるの?」

花丸「今、内浦には複数の鬼が入り込んでいるずら」

梨子「あんなのがまだ他にもいるんだ…」

花丸「鬼の侵入は先代がこの街に張った結界で感知出来る。でもその後は正確な位置までは分からないの。普段だったらダイヤさんのお母さんが感知能力を持っているから大丈夫なんだけど…」

梨子「今はこの家にご両親はいないみたいだね」

ルビィ「日本全国で鬼が大量に発生しているんだ。それの対処の為に花丸ちゃんとお姉ちゃんをここに残して一族みんなが各地に出張しているの」

梨子「す、凄いね…立った二人でこの街を守るなんて」

ダイヤ「本来なら、月に二体くらい…多くて三体なのですが、既にもうそれ以上の数との戦闘を終えましたわ」

ダイヤ「ですが‥ご存知の通り、犠牲者も多く出している始末です」

花丸「マル達だけじゃ、正直人手が足りない‥だから――」

梨子「私の協力が必要…って事ですね? 勿論いいですよ」


32 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:39:41.82 ID:vBeOgIYi0


ダイヤ「‥今晩のような事が何度も続くんですよ? その覚悟がありまして?」

梨子「それは怖いけれど‥このままじゃ、この街の人々やAqoursのメンバーだって襲われる可能性が高いんだよね」

梨子「それを防ぐ力が私にあるんだったら‥‥私は戦うよ!」


花丸「梨子さん…!」パァ!

ダイヤ「‥‥見かけによらず強いんですね、梨子さんは」フフフ

ダイヤ「分かりました、梨子さんの身は私達が全力でお守り致します。ですから、力を貸して下さい」

梨子「――はい! よろしくお願いします!!」


花丸「そうと決まれば、早速修行を始めるずら!」

梨子「‥へ? 今から!?」

花丸「いつ鬼が現れるか分からないんだよ? だったら一刻も早く力を自在に操れるようにならなくちゃ! 大丈夫、私がしっかり教えるから!」

ダイヤ「ここの道場は自由に使っていいですからね」

ルビィ「あはは‥梨子さん、頑張ってね」

梨子「うぅ‥これから大変そうだなぁ」トホホ



33 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:41:10.35 ID:vBeOgIYi0
―――――――

―――――

―――


〜数日後〜


曜「――ねえねえ、これから千歌ちゃんと一緒に松月に行くんだけど、梨子ちゃんも行かない?」

梨子「あー、ごめんね? 今日はダイヤさんの家に行くことになっているの」

千歌「えー、またぁ…最近ダイヤさんとずっと一緒じゃん」ブウブウ

梨子「ご、ごめんね?」

曜「そっか…それなら仕方ないね。また誘うよ」

梨子「ありがとう。今度こそは必ず行くから!」



――ガラガラ



ルビィ「梨子さーん…?」

梨子「あ、ルビィちゃん!」

ルビィ「む、迎えに来ました」

梨子「わざわざごめんね? 今行くから。またね、曜ちゃん」

曜「またね〜」フリフリ

千歌「バイバ〜イ」



34 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:42:54.13 ID:vBeOgIYi0
梨子「……いつも迎えに来るのは、ダイヤさんの指示?」

ルビィ「ごめんなさい…本来長い期間をかけて行う修行を数日で終わらせようとしているから…途中で投げ出さないか心配なんだと思うの」

梨子「確かに辛いけど、自分で決めた事だからね。最後までやり遂げるよ!」

ルビィ「うん、頑張ってください!」ニコッ



梨子「…そう言えば、ルビィちゃんはどんな妖術が使えるの? 黒澤家は『時間』を操るって聞いているけど…」

ルビィ「……」

梨子「ルビィちゃん?」

ルビィ「私…使えないんです」

梨子「え…使えない?」

ルビィ「黒澤家が力を得てから現在に至るまで、例外なく全員がその力に目覚めてきました。…でも、私は初めての例外だったんです」

ルビィ「要するに、私は欠陥品だったって事ですよ…」アハハ…

梨子「その…ごめん、なさい……」

ルビィ「き、気にしないでください! 梨子さんは悪くないですから! とっくの昔に受け入れた事実ですし」

ルビィ「…ただ、梨子さんが力に目覚めたのを知った時は正直羨ましかったかな」

ルビィ「私もお姉ちゃんや花丸ちゃんと一緒に……」ボソボソッ


梨子「ルビィちゃん…」



35 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:45:08.25 ID:vBeOgIYi0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜黒澤家 道場〜


花丸「――3、2、1…15分経過。もう解いていいよ」

梨子「だはぁぁぁ!! 妖力を纏いながら妖術を発動させ続けるのってホントしんどい…」グッタリ

花丸「消費量が単純に倍増しているから辛いのは当然だよ。今は座ってやっているけど、本来は戦いながらやるわけだからね」

花丸「この具合だと実戦で二つの同時に維持できるのは…多分5分位かな?」

梨子「そんなに短いのね…」

ダイヤ「いいえ、十分過ぎるくらいですよ。よくこの短期間でここまで維持出来るようになりましたね」

梨子「ダイヤさん…ありがとうございます」



ダイヤ「さて、これまでの修行で判明した梨子さんの能力についておさらいしましょう」

梨子「妖術を発動した時に赤くなるこの眼は、目に映る物体の動きを予測することが出来るみたいです」

花丸「妖力を纏った時の力も反応速度アップだったから、その術を最大限使いこなす為って感じだね」

梨子「ええ、ダイヤさんの動きも二倍速までは何とか反応出来ました」

ダイヤ「感知能力の方は鬼が実体化するまで確かめようがありませんね」

梨子「実体化するところは結界で感知できるんだよね?」

花丸「そうだよ。侵入時と実体化はマルにも分かるけど、その後は内浦中飛び回って探さないといけないんだよ」

ダイヤ「梨子さんの感知範囲によっては発見までの時間が大幅に短縮されるという事ですわ」

梨子「な、なるほど」


36 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:46:22.47 ID:vBeOgIYi0
ダイヤ「梨子さんの能力はどちらかと言えば戦闘向きですが…妖力による身体能力の補正が反応速度だけとなると少々心もとないですわ」

花丸「武器を使えば戦えると思うけど…戦闘は嫌だよね?」

梨子「う、うん…でもそんな事言ってられないんだよ…ね?」

ダイヤ「別に無理して戦う必要はありません。花丸さんだって戦闘時は後ろで隠れていますし」

花丸「基本的に封印専門だからね!」エッヘン

ダイヤ「花丸さんの場合狙われても回避術がありますから。幸運にも梨子さんも持っているので大丈夫でしょう」

梨子「でも…」

ダイヤ「気にする必要はありません。黒澤家の人間が前に出て戦うのは当然の事なのですから」

花丸「私にも戦闘向きの能力があれば良かったんだけれど、こればっかりは生まれ持ったものだから…」

梨子「そうですか…」


ダイヤ「さて、休憩はこの辺りで終わりにして、修行の方を再開しましょう」

花丸「あともう少しだけ頑張ろう!」

梨子「はい!」



37 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:48:32.92 ID:vBeOgIYi0
―――――――

―――――

―――


〜帰り道〜


梨子(痛てて…防御の訓練とはいえ、ダイヤさん強く蹴り過ぎだよぉ……骨が折れるかと思った…っていうか絶対ヒビ入ったわ)

梨子(ダイヤさん程では無いけれど、一応回復力が上がるみたいね。今日出来た細かい擦り傷とかもいつの間にか治っているし)


梨子「改めて考えれば本当に不思議な力よね。善子ちゃんが知ったら羨ましがるんだろうな」クスクス


善子「――私が何ですって?」ジトッ

梨子「うわあっ!? よ、善子ちゃん!?」ビクッ

善子「何よ、そんなに驚く必要ないでしょ?」

梨子「ご、ごめんごめん。まさかこんな場所にいるとは思わなくて…」

梨子「ん? そもそも、どうしてここにいるの??」

善子「曜さんと千歌さんと一緒に松月に行ってたのよ」

梨子「ああ、そういえば行くって言っていたわね。曜ちゃんは一緒じゃないの?」

善子「曜さんは急用が出来て先に帰ったから途中から千歌さんと二人だったの」

梨子「へー、珍しい組み合わせね」

善子「普段二人っきりで話す機会が無かったから会話が弾んでね…見事に終バスを逃して歩いて帰っている状況よ」トホホ

梨子「あはは…大変だね」

善子「全くよ…じゃあまた明日ね」

梨子「うん、また明日」


38 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:49:49.86 ID:vBeOgIYi0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜



善子と別れてから暫く、後数分で自宅に着くというタイミングだった。
梨子は再びあの時と同じ寒気を感じ取った。



梨子「っ!? い、今の感覚は…」ブルブルッ



――プルルルル、プルルルル



梨子「電話だ…ダイヤさんからだわ」ピッ


梨子「もしもし?」

ダイヤ『梨子さん、たった今鬼の実体化を感知しましたわ。内浦に鬼が出現しました。』

梨子「…やっぱり」

ダイヤ『!! 感知出来たのですね』

梨子「はい。大体の位置は分かりますが…口頭で伝えるのは厳しそうです」

ダイヤ『分かりました。では、鬼を遠目で目視出来る場所まで移動して、その場で妖力を纏ってください』

梨子「妖力を?」

ダイヤ『梨子さんに付けた刻印がそれに呼応して発動するので、その反応を目印に私達は駆け付けますわ』

梨子「なるほど」


ダイヤ『いいですか? 私達が着くまで絶対に鬼の前に身を出さないで下さい』

梨子「…分かっています」

ダイヤ『どんな場所でも5分以内に到着するよう努めますわ。…梨子さん、お気をつけて――』ピッ


梨子「…そうだよね、いくら妖力を使えるようになったとは言っても、戦うだけの実力は皆無。すぐにやられるのは目に見えている…」

梨子「でももし誰かが襲われていたら――」



善子『――じゃあ、また明日ね』



梨子「…大丈夫、まさか善子ちゃんが巻き込まれるなんて――」



――プルルルル、プルルルル



梨子「また電話? 今度はだ……っっ!!!?」



携帯の画面に表示された名前を見た瞬間、嫌な汗が一気に噴き出す。



梨子「もしもし!?」



善子『――た、たす……助けて!!!!!』


39 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:51:03.01 ID:vBeOgIYi0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜



梨子は夕暮れ時の街を全速力で駆け抜ける。
スクールアイドル活動で並の女子高生以上の体力はあるとは言え、数キロの距離を全力で走り続けるのは極めて辛い事だろう。

それでも、梨子は走る、走る、走る、走り続ける。
一刻も早く駆けつけなければ善子の命が危ない。



梨子「ハァ…ハァ……お願い…ま、間に合え…!!!」タタタタ



徐々に鬼へ近づいている確かな感覚があった。



梨子「この曲がり角の先に――きゃっ!」ドンッ



誰かと衝突し、尻餅をついて倒れる。
顔を上げるとそこには、恐怖と涙で顔をグシャグシャにした善子の姿があった

梨子の顔を見た善子はすぐに抱き着く。



善子「り、梨子さああああん!!!」ダキッ

梨子「善子ちゃん! 無事なの!? どこも怪我してない!!?」

善子「あ、ああ……鬼…鬼がぁ!!?」ガクガク

梨子「大丈夫、大丈夫だから! 落ち着いて!!」

善子「ごめんなさい…私、怖くて……巻き込んじゃって…ごめんなさい……」ポロポロ

梨子「いいの! 善子ちゃんは全く悪くないから」ナデナデ

善子「ううぅ……うわああああああん!!! 怖かったよおおおおおおお!!!」



梨子「……善子ちゃん、立って」

善子「…? 梨子…さん?」



善子を抱きしめる梨子の視線の先には、彼女を追い回していた鬼の姿があった。

角の数は一本
背丈は成人男性くらいしかないが、先日よりも筋肉質な体つきだった。

梨子と目が合うと、鬼は一気に距離を詰めてきた。



40 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:52:38.29 ID:vBeOgIYi0
梨子「善子ちゃん!!!!」ドンッ!

善子「きゃああ!!?」



善子を突き飛ばし、空いた両腕で防御の構えを取り攻撃に備える。
それと同時に妖力も纏った。



――バキッ!!!



強烈な蹴りが梨子の腕に直撃。
そのまま壁へ叩きつけられる。



梨子「がはっっ!!!?」
(い、意識が……と………)

善子「梨子さん!!!!!」

梨子(善子……ちゃん…)ギリッ



梨子「――来るなああああああああ!!!!」

善子「っ!!?」

梨子「大…丈夫だから……助けは…呼んである。善子ちゃんは…隠れていて!」

善子「り、梨子さんはどうするのよ!?」

梨子「……私は助けが来るまで、この鬼は私が何とかする!!!」

善子「そんなの無茶よ!!」

梨子「…いいから行きなさい!!」ギロッ

善子「ひぃ!!?」ビクッ



梨子の見た事の無い形相に圧倒された善子は、恐怖ですくんだ足を強引に引きずりながら近くの物陰に隠れる。
姿が見えなくなったタイミングで梨子は妖術を発動。
瞳の色が赤く染まる。


41 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:53:19.24 ID:vBeOgIYi0
梨子(ここまで来るのに大分体力の使った…それにさっきの修行で妖力も消耗している)

梨子(万全の状態で力を維持できるのは最長15分。花丸ちゃん曰く、戦闘時では5分間しか維持できないらしい)

梨子(そして、二人が到着するまで最短5分……ギリギリね)

梨子(はは…ダメだ。怖くて震えが止まらない……)ブルブル


梨子「……ふん!!!」バチン!!

梨子「い゛た゛い゛…強く頬を叩き過ぎた……」ヒリヒリ

梨子(うん、今更怖がったって仕方ないじゃない! 覚悟を決めなさい、桜内 梨子!!)


「コオオオオオオオオオッ……」


梨子「――かかって来なさい、5分間だけ相手をしてあげるわ!!!」
42 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 17:54:10.95 ID:vBeOgIYi0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


花丸「――準備出来たよ! 早く向かおう!!」

ダイヤ「…妙ですわね」

花丸「ん、何が?」

ダイヤ「刻印の反応がやけに強すぎますわ」

花丸「言われてみれば確かに…」

ダイヤ「どうして梨子さんは全力で妖力を発動させているのでしょうか…?」

花丸「…まさか」

ダイヤ「花丸さん、飛行術で空から最短距離で向かいましょう」

花丸「この時間から使っちゃうの? 流石に噂になっちゃうよ」

ダイヤ「多少のリスクは無視しましょう。今は急いで梨子さんの所に行くのが最優先です!」

花丸「…分かった! すぐに飛ぶから掴まって!!」

ダイヤ「お願いします!」


43 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 18:00:01.69 ID:vBeOgIYi0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ガアアアアアアアアア!!!」ブウゥゥン!

梨子「っ!!!!」バッ!



戦闘が始まって2分、梨子は自身の能力を最大限に活用して鬼の猛攻を避け続けていた。
初の戦闘で動きに鈍さはあるものの、最初の攻撃以来一度も受けていない。



梨子(凄く速い攻撃…でも、ダイヤさんの方の攻撃の方がもっと速い!!)

梨子(能力のおかげで鬼の次の動きのイメージがハッキリ分かる。それに合わせて攻撃すれば……)


梨子「えいやああ!!!!!」ブンッ!

「っっ!!?」ドゴッ



梨子のカウンターパンチが鬼の顔面を捉えた。



梨子「よし!! 当たっ……痛っっっ〜〜〜〜〜!!!?」ミシミシッ

梨子(い、痛い…殴るってこんなに痛いの……!?)ズキンッズキンッ



妖力を纏った時に付与される能力は回復力の向上以外は術者によって様々だ。
ダイヤのように身体能力が全体的に向上したり、花丸のように飛行能力を得たりする。

梨子の場合は反応速度が上がった以外はごく普通の女子高生と同じ。
本気で殴れば手を痛めるし、強烈な打撃を受ければ骨も折れる。



梨子(素手での攻撃は無理。やっぱり回避に徹する方がいい!)

「ゴオオオオオオオ!!!」ブンッ!

梨子「来る!! 次の攻撃は……あれ、見えな――」



――グシャ



鬼の拳が梨子の腹部を直撃する。
肉を打つ鈍い音を響かせ、後方へ吹き飛ばされた。


44 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 18:01:05.13 ID:vBeOgIYi0
梨子「ぐっ…ぐうううううううう!!!!?」

梨子(妖術が…解けた!? もう維持するだけの力が残っていないっていうの!?)

梨子(ヤバイ、反応速度が高くても見え無かったら避けられない!)



鬼の攻撃は止まらない。
梨子は両腕で何とかガードするものの、強烈な鬼の攻撃に骨が耐えられなかった。
渾身のストレートパンチを受けて後方に吹き飛ばされ、同時に纏っていた妖力も消滅する。



梨子「ぐあ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

善子「梨子さん!!」ダッ

梨子「よ、しこちゃん……どうして出てきたの!?」

善子「そ、それは――」チラッ







ダイヤ「――待たせたな、後は任せろ。……任せて下さい」



45 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 18:02:39.86 ID:vBeOgIYi0
梨子「だ、ダイヤさん!」

善子「梨子さんの言っていた助けってこの二人の事だったの…? ズラ丸は空から降りてきたし、ダイヤの髪は赤いし……」

花丸「善子ちゃん、マルの目をよーく見て欲しいずら」

善子「は?」

花丸「……」ジーーッ

善子「一体な……に………を…」ガクン

花丸「…うん、これでよし。善子ちゃんの記憶から今回の出来事は綺麗さっぱり消去したずら♪」

梨子「良かった…善子ちゃんは力に目覚めて無かったのね」

花丸「何人も目覚めたら大変だよ」



梨子「えっと…花丸ちゃん、怒ってる…よね?」

花丸「……お説教は後でダイヤさんがたっぷりすると思うから、マルの分は割愛しておくずら」

梨子「あ、あはは…」ダラダラ


ダイヤ「――全く、帰ったら覚悟しておきなさい」

梨子「っ!? ダイヤさん、もう終わったのですか!!?」

ダイヤ「ええ、案外大した事のない鬼でしたわ。運が良かったですわね、梨子さん」

梨子「だから一人でも生き残れたんですね…」

花丸「封印し終わったら善子ちゃんを家まで送り届けよっか」

ダイヤ「そうですわね。梨子さん、その怪我を治すためにも微量でも妖力を纏ってください」

梨子「分かりました」




46 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 18:03:40.23 ID:vBeOgIYi0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜



花丸「取り敢えず部屋のベッドに寝かせてきたよ〜」フワフワ

梨子「凄い…本当に空が飛べるんだね」

花丸「消耗が激しいから短時間しか使えないけどね。マルに触れていれば二人まで連れて行けるよ」

ダイヤ「腕の調子はどうですか?」

梨子「痛みはかなり治まって来ました」

ダイヤ「纏うのが辛くなったらすぐに解いて下さい」

花丸「無理して力を使い続けると最悪死んじゃうから気をつけてね」

梨子「そ、そうなの!?」

ダイヤ「まあ、激痛に襲われるので死ぬまで発動し続けるのはそうそう出来ませんが」


花丸「じゃ、帰ろう……ん?」ピクッ

梨子「っ!?」ゾクゾク

ダイヤ「…結界に反応がありましたね。また現れましたか……梨子さん」

花丸「今夜は連戦かぁ…二人とも大丈夫?」

梨子「場所は分かります。案内は任せてください!」

ダイヤ「問題ありません。早く退治に行きましょう!!」

47 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/09/23(土) 18:04:07.87 ID:vBeOgIYi0
今回はここまで
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/24(日) 00:57:05.90 ID:KO4jVT9IO
今のところ千歌ちゃんの名前が出たのは3レスか
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/24(日) 10:06:57.89 ID:ZujVLe1l0
凝を怠るなよ
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/25(月) 11:16:58.90 ID:S2yNxWqSO
壊されるのが異性愛でよかった…
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/09(月) 04:48:05.21 ID:7GFoozuoO
まだずらか?
52 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/10/22(日) 22:12:52.76 ID:aY+gFCQi0


〜〜〜〜〜〜〜〜〜



今夜現れた二体目の鬼は幸運にもパワー、スピード共に平均以下の雑魚だった。
ダイヤは妖術を使わずに圧倒している。
梨子と花丸はその様子を少し離れた場所から眺めていた。



梨子「ねえ、花丸ちゃん」

花丸「何ずら?」

梨子「鬼と戦闘を行う術者っていうのは、みんなダイヤさんみたいな格闘メインの戦い方をするの?」

花丸「うんん、ほとんどの人は武器を使っているよ。マルも槍を持っているくらいだし」

梨子「武器…鬼を直接攻撃出来る妖術とかは無いの?」

花丸「どうだろう…梨子さんみたいな突然使えるようになった人の中にはいたのかもしれないけど、マル達みたいに代々受け継いできた術の中には存在しないね」

梨子「…意外。てっきり炎とか電撃とか、そういう如何にも異能力って感じの力があるものだと思っていたわ」

花丸「もしかしたら昔はそういう妖術があったのかもしれないね。ただ、現代まで受け継がれた中には無いって事は、そういう系統の妖術じゃ生き残れなかった、つまり強い鬼を倒せずに滅ぼされたんだと思うよ」

梨子「そ、そうなんだ…」ゾッ

花丸「妖術で攻撃しても、その辺にある武器に妖力を纏わせて叩いても変わらないからね。動きをサポートする妖術の方が有利って事。急所を貫ける刃物なんかは相性抜群ずら」

梨子「ならどうしてダイヤさんは武器を使わずに戦うんだろう…?」

花丸「ダイヤさんは武器に妖力を纏わせるのが少し苦手なんだよ。戦闘中に一瞬でも途切れると武器が鬼の体をすり抜けちゃうからね」

梨子「そんなに難しいの?」

花丸「そこまで難しい技術じゃないよ。多分梨子さんなら出来ると思うから今度練習しよっか」

梨子「うん、お願い」




ダイヤ「――終わりましたわ。封印お願いします」スウゥゥ

花丸「はいは〜い、お任せずら!」

梨子「お疲れ様です、ダイヤさん」

ダイヤ「ありがとうございます」

梨子「今日みたいに複数体現れる日もあるんですね」

ダイヤ「ええ、夕方に現れた日に複数体出現しますわ。滅多にありませんけど」

梨子「この鬼の出現量は異常なんですね…」

ダイヤ「…お母様やお父様が戻ってくるまでは、私達で乗り切るしかありません。それまではよろしくお願いしますわ」

梨子「はい! 勿論です!!」


53 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/10/22(日) 22:14:33.44 ID:aY+gFCQi0

―――――――

―――――

―――



〜数日後〜



千歌「――ねぇ梨子ちゃん、いつも夜遅くにどこ行ってるの?」

梨子「え!?」ドキンッ

曜「ダイヤさんから夜の外出禁止令が出ているのに?」

千歌「そーなんだよ! 昨日も一昨日も、その前だって出歩いていたんだよ!!」

梨子(どうしてバレているのよ!?)

鞠莉「あら〜、意外と不良ガールなのね?」

果南「そもそも女の子が夜に外出するのは感心しないなぁ」

梨子「い、いやーほら、作曲の気分転換に散歩しているだけで……」

千歌「……散歩ぉ? ならどうして毎回あんな大慌てで飛び出してるの?」

梨子「……ギクッ」

千歌「それどころか、帰って来ない時もあるじゃん!」

曜「そうなの!?」

梨子「それは千歌ちゃんの勘違いよ! ちゃんと家に帰ってます!!」

花丸(本当はダイヤさんの家に泊まっているんだけどね)モグモグ


千歌「ダイヤさんからも言ってやって下さいよ!」

鞠莉「そうね、禁止令を出したのはダイヤだし」

ダイヤ「…梨子さん」ハァ

梨子(うぅ…目でもっと『気を付けて家を出ろ』って言ってるよぉ)ダラダラ


ルビィ「…本当ですよ。最近被害が減っているとは言え、調子に乗り過ぎです。もっと身の程をわきまえた行動をして下さい」ギロッ

花丸「ルビィ…ちゃん?」

善子「ど、どうしたのよ…やけに冷たいじゃない」

ルビィ「別に…普通だよ?」

梨子「い、いいの。ルビィちゃんの言う通りだから」アセアセ

ルビィ「……」ムスッ
54 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/10/22(日) 22:15:17.68 ID:aY+gFCQi0


ここ最近、梨子に対するルビィの態度がやたらと冷たい。
部室や黒澤家で会っても目を合わせないし、二人きりになろうものなら即座に席を離れる始末。
梨子は勿論、花丸やダイヤもこの異変には気が付いていた。



ダイヤ「取り敢えず、梨子さんの件は後でわたくしがキッチリと叱っておきます。そろそろ練習に行きましょう」

全員「「はーい」」


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