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QB「ついに僕にも感情が芽生えたんだ!」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/14(木) 23:11:59.12 ID:0i9pKl1ao
ほむら「嘘ね」
QB「酷いなぁ、前に何があったかは知らないけど君は本当に僕の扱いが雑だよね」
ほむら「まどかが概念として固定されて沢山のものが良くも悪くも変わってしまったけど、あなただけは絶対に変わらない自信があるもの」
QB「ははぁ、また夢物語の話かい」
ほむら「夢物語じゃないって言ってるでしょ」ガシャッ
QB「怖い怖い」
ほむら「第1あなたに感情が芽生えたところで何があるっていうの?」
QB「聞きたいかい?」
ほむら「…」イラッ
QB「確かめたいなら君の家に僕を連れて言ってごらんよ」
ほむら「鬱陶しいわね…」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1505398318
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/14(木) 23:16:04.76 ID:0i9pKl1ao
QB「…」モグモグモグモグモグ…
ほむら「…で?」
QB「…ん?見てわからないかい?」
ほむら「何が変わったのかしら」
QB「ご飯が美味しい」
ほむら「…?……???」
QB「僕らにとって食事はエネルギー補給でしかなかった、もちろん味なんて二の次だ、そういう変換方法だったならガソリンでさえ摂取しただろうね」
ほむら「…」
QB「でもね、今はご飯が美味しい」
ほむら「…つまり…ご飯が美味しいから感情が芽生えたって言いたいの?」
QB「そうだよ、これは僕らにしてはとてつもなく大きな変化だ」
QB「味を感じるってことは好みを感じるってことだ、つまり僕に好き嫌いが出来たんだ」
ほむら「人参も食べなさいよ」
QB「好き嫌いが出来たんだ」
ほむら「杏子を呼ぶわ」
QB「君たちはいつもそうだね、他者が思い通りにならないとすぐに暴力による鎮圧を良しとする…うぅっ…」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/14(木) 23:19:38.49 ID:0i9pKl1ao
ほむら「長くここの星に居れば味覚ができるのも当然のことだと思うけれど」
QB「君らと一緒にしないで欲しいな、僕らがそう簡単に変わるのであればこんな非効率的なエネルギーの回収方法なんかに手を出さないだろう」
ほむら「…」
QB「感情がなかったからこそ、僕らはここへ来ることを余儀なくされたんだ」
ほむら「…で、それがどうしたの?」
ほむら「まさかあなたに感情が芽生えたからって扱いが変わるとでも思ってないわよね?」
QB「そうだね、未だまだ起伏は乏しいけれどそれでも少しは分かるつもりだ」
QB「いや、昔だって頭では一応論理として理解はしてた」
QB「君らにとってひどいことを僕らはしてるんだろうってね」
ほむら「…」
QB「うん、こういう事を軽々しく言えるのも今の僕だからこそ、という訳だね」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/14(木) 23:27:12.88 ID:0i9pKl1ao
QB「だから、謝るよほむら」
QB「僕らは君にひどい仕打ちをしていたんだね」
ほむら「夢物語だと笑わないの?」
QB「あぁそうか、笑う、そういうことも出来るんだ」
QB「感情が芽生える以前と今の僕とでは明らかに違うけれど、それでも意識は連続してる」
QB「以前の僕は、今の僕から見てややおぞましい」
ほむら「…でも、契約をやめるつもりなんてないのでしょう?」
QB「残念ながらね、そもそも魔女とやらが居なくなったこの世界じゃ契約自体そこまで蔑視されるものじゃないと僕は思うよ」
ほむら「偽物の奇跡を餌に戦う使命を背負わせるくせに」
QB「その意見は変わらないな、君たちは真実を知っていたら願いを取り下げたかい?どんなリスクを背負ってでも叶えたい願いがあったからこそ君は今も魔法少女としてここに居る」
QB「その覚悟があったから、彼女はこの世界を変えたんじゃないのかい?」
ほむら「…」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/14(木) 23:32:24.99 ID:0i9pKl1ao
QB「誰だって、自分の現状と誰かを見比べて不幸だ地獄だと泣き喚く」
QB「そんな不幸の真ん中にいる君たちは少しだけ運が良かった」
QB「魔法少女として生きる素質があった、それだけの話さ」
ほむら「イライラせずにあなたの話をここまで聞けたことが何より奇跡だわ」
ほむら「あながち感情が芽生えたというのも嘘じゃないのかしらね」
QB「だからそう言ってるじゃないか」
ほむら「…それで、あなたをそうさせたのは、一体なんなのかしら」
QB「え?」
ほむら「今まで普通にインキュベーターとして生きてきて、自ずと感情が芽生えたなんて言わせないわ」
QB「鋭いなぁ君は」
ほむら「…」
QB「着いてきてくれないかい?見せたいものがあるんだ」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/14(木) 23:37:31.45 ID:0i9pKl1ao
ほむら「…」
ほむら「…これ…」
QB「僕もまだよく分かっていないんだよね、刷り込みという事象を知識としては知っていたけれど、見た目がこれまで違う僕に懐いてくる意味がわからない」
黒猫「……」スリスリ
QB「…なんだい?」
ほむら「…嘘でしょ…?」
ほむら「いっ…今まで多くの感情に触れてきて…眉一つ動かさなかったくせに…たった一匹の猫ぐらいで……くくっ…!」
QB「僕らに眉はないよ」
ほむら「……ぷっ……くくく……うふふふ…あはははっ…!」
QB「…そんなにおかしいかな」
ほむら「おっ…おかしくないわ…おかしくないけれど…ぷっ…!」
QB「やれやれ…やっぱり人間は度し難いね、黒猫」スリスリ
ほむら「……エイミー」
QB「え?」
ほむら「その子の名前は、エイミーよ」
QB「…エイミー…いい名前だね」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/14(木) 23:42:44.90 ID:0i9pKl1ao
杏子「魔獣会議、行っとくか」
マミ「風見野の方で魔獣たちの群れを見つけたわ、恐らく今夜辺りにでも見滝原に到達するでしょうね」
ほむら「こっちは収穫なしね、まぁ収穫がないってことはいい事なんだろうけれど」
杏子「それじゃあたし達が濁りっぱなしじゃねえか、こっちも異常なし、ちっシケてんなぁ」
QB「こら、そっちはトイレじゃないよ、あっちでしないとほむらに殺されるよ」
杏子「突っ込んでもいいのか?」
ほむら「何て?」
杏子「お前猫だったのかよっ!?って」
マミ「可愛い猫ねぇ、暁美さんが飼ってるのかしら?」
ほむら「…私というか…QBが」
杏子「はっ!?猫の癖に猫飼ってんのかよ!傑作だなぁおい、あはははは!」
マミ「それが普通なんだけれどね」
ほむら「まぁ…邪魔にもならないし置いてあげてるのよ、ご飯も一応あげてるわ」
杏子「QBにはやらねーのに、猫以下かよQB」
ほむら「当然でしょう」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/14(木) 23:46:54.04 ID:0i9pKl1ao
杏子「いやぁー面白いわ、ほむらの話聞いた限りじゃQBは極悪非道の限りを尽くすクズ野郎だったのに」
QB「君は一体どんな話をしたんだい?」
ほむら「事実を言ったまでよ」
QB「だからそれは…まぁいいや」
エイミー「ニャー…」
マミ「きゃっ…まぁ…とってもお利口なのね、この…」
ほむら「エイミー」
マミ「エイミーちゃんは」
杏子「なぁ、ほむら」
ほむら「え?」
杏子「この猫は割とどうでもいいんだけどよ、QBってこんなキャラだったか?」
ほむら「あら、あなたにはどう見えていたの?」
杏子「二言目には契約契約の契約馬鹿だ」
ほむら「あながち間違いではないわよ、3言目にエイミーが来るだけで」
杏子「そんなもんか…」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/14(木) 23:52:14.53 ID:0i9pKl1ao
QB「僕にはうまく言い表せないけれど、エイミーがマミの膝に乗ってたら何となく胸の奥がグツグツしてくるよ」
ほむら「あら、偉いじゃない、それが嫉妬よ、エキスパートの杏子先生に聞くといいわ」
杏子「なんであたしが嫉妬のエキスパートなんだよ」
ほむら「さやかは上条恭介にずっと密かな想いを寄せていたわ」
杏子「ぐぅううおおおお…」ガンッガンッ!
ほむら「ああやって嫉妬を沈めるのよ、やってご覧なさい」
QB「人間はいつもそうだね、受け入れ難い現状に陥るとすぐ自傷行為に走ってしまう」
ほむら「手伝うわ」
QB「やめて」
杏子「さやかぁぁぁあああ……!なんで死んじまったんだァあああ…!」
マミ「ちょっと発作が起きてるじゃない、エイミー行ってきて」
エイミー「…ニャー」スリスリ
杏子「うおおおおお!!」スリスリスリスリスリ…!
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/14(木) 23:56:35.36 ID:0i9pKl1ao
QB「…あ」
ほむら「?」
QB「……そうか、さやかは死んでしまったんだね」
ほむら「あら、意外ね、死を悼むような性格だったかしら」
QB「いや、別に悼んではないよ、ただ…」
QB「自分にとって掛け替えのないものが失われた時が、僕にも来るのかなって思ってね」
ほむら「…出来てもないくせに、今からそんな心配?」
QB「そうか、杏子は強いんだね」
QB「……ううん、マミも、君も、とっても強い」
ほむら「強くなんてないわ」
ほむら「歯を食いしばって、辛さに耐えながら辛うじて生きてるだけよ」
QB「僕にはそんなことできそうにないや」
ほむら「本当に、あなたにそんな存在ができたらわかると思うわ、「じゃあ、今するべきことはなんなのか」がね」
QB「…」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/15(金) 00:00:19.89 ID:2NhZMciTo
QB「そんな時、来て欲しくないな」
ほむら「言うようになったじゃない」
QB「どうも人間は精神と肉体の強さが釣り合っていない」
QB「自分に近しければ近しい程失った時は、まさに身をもがれる痛みだろうに」
QB「そんな辛さには耐えられるくせに、どうしてそんなに脆い肉体なんだい?」
ほむら「さあね」
ほむら「でも、逆に言えば、肉体の痛みに耐えることが出来ても、心が耐えられないことだってあるわ」
ほむら「強さなんて、その時々で変わるわよ」
QB「…」
ほむら「あなたは、今痛いかしら?」
QB「……」
QB「ううん、心地いいよ」
ほむら「だったら、今はそれでいいのよ」
QB「うん、そうだね」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/15(金) 00:02:53.69 ID:2NhZMciTo
QB「予想通り風見野の方から魔獣の群れだ、気を付けて、増殖しながらこっちへ向かってる」
杏子「やれやれ、休ませてもくれないんだからしんどいわ」
マミ「どの道休む暇もないでしょう」
ほむら「……来るわ」
魔獣「オオオオオオオオオオオ!!」
QB「…」
エイミー「ニャー…」
QB「きっと大丈夫さ、今まで通りに、やってくれるよ」
エイミー「ニャー」
QB「…」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/15(金) 00:06:09.03 ID:2NhZMciTo
杏子「……キリッ……がねえ!!!」
マミ「……ほんと…!どうやったらここまで増えるのかしら…!」
ほむら「…っ……!」
ほむら(まずい…数が多すぎる…三手に分かれるのは愚策だった…)
ほむら(ちっ…時間さえ止められさえすれば、こんなの…!)
魔獣「……オオオオオオオオオオオ!!」
杏子「……ゲッ……!ぐぅっ……!」
マミ「……精神……汚染……!?」
ほむら「……んっ……ぐぅっ!!」
ほむら(……まずい……意識が……)
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/15(金) 00:08:04.36 ID:2NhZMciTo
QB「……遅いね」
エイミー「……」
QB「やれやれ、手間がかかるね、やっぱりどうも僕は彼女たちのそばにいないといけないようだ」
エイミー「ニャー」
QB「大丈夫、すぐに帰ってくるよ」
QB「……」
QB「でも、きっと3人とも疲れて帰ってくるだろうから、その時は」
QB「その時は、三人を労ってあげてくれないかな?」
エイミー「ニャー!」
QB「うん、行ってくる」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/15(金) 00:12:14.43 ID:2NhZMciTo
「あの時とめてくれればよかったのに、そうすれば私は固定なんかされなかったのに」
「だからお前は魔女だと言ったんだ、他者を傷付けて繋ぐ歪な命になんの意味がある?」
「楽しそうに嬉しそうに生きてるのね、もうきっと私たちのことなんて忘れてしまったのね」
ほむら「……ぐううううっ……!」
ほむら(頭が……!割れる……!)
ほむら(違う……!違う違う違う違う!!!まどかはそんな事言ってはいない!)
ほむら(助けられなかったけれど、でも、まどかはそんな事を言わない!)
ほむら(言わない言わない言わない言わない言わない!!!!!)
「嘘つき」
ほむら(あ……)
ほむら(……ま、ど……)
QB「いつまでそこでうずくまっているんだい?」
ほむら「……Q……」
QB「早くしておくれよ、僕はもうお腹がぺこぺこなんだけど」
ほむら「……」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/15(金) 00:21:22.02 ID:2NhZMciTo
QB「いやまぁ、そうだね、いざとなったら僕はガソリンでも舐めるさ」
QB「試したことはないけれど、基本僕らに不可能はない、多分生きることは出来る」
QB「でもね、エイミーがうるさいんだ」
QB「早く帰って来いってうるさすぎてたまらない」
QB「感情が多少なりとも芽生えると、彼女の鳴き声がここまで耳障りなものになるんだね」
QB「同じ鳴き声にしても、君らに対してのものなら幾分かはマシだ」
QB「まだかい?僕はもうとっくに」
QB「君らは克服したものだと思っていたんだけれど」
ほむら「…」
ほむら「……うるさいわね、バカ」
ほむら(そうだった、何を考えているのかしら…)
ほむら(…私はもうとっくに、乗り越えたはずでしょう)
ほむら(あの子の分まで、生きるんでしょう)チラッ
杏子「…」
マミ「…」
「ほむらちゃ」
ほむら「うるさい!」ドシュッ!!!
「……あぁ、ああぁ……!ほむら……ちゃ……!」
ほむら「……まどかはそんなこと言わないわ」
ほむら「……」
ほむら「もちろん、杏子の父親も、マミのお母さんもね…」
ズガァン!!!
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/15(金) 00:26:05.71 ID:2NhZMciTo
エイミー「……」
エイミー「ニャー……」
エイミー「……」
ガチャッ
エイミー「……!」
QB「……」
ほむら「……」
杏子「……」
マミ「……」
エイミー「ニャー!ニャー!!!」
QB「ほら、エイミーが君たちを労ってくれたよ、何か言うことはないのかな」
杏子「嫌もう勘弁してくれ……精神えぐられて……結構キツいんだよ」
QB「……やれやれ、酷い人たちだねエイミー」
エイミー「ニャー」
杏子「…全く……くく……くくっ……!」
QB「人間は窮地に陥ると涙より笑が零れるらしい、未だ僕にはわからない現象だね」
杏子「うるせーよ、あはっ……ふふふっ……」
マミ「…平気かしら?暁美さん」
ほむら「ええ、もちろん」
QB「他社の記憶を盗み見て投影するタイプの魔法だ、それに耐え難いほどの頭痛をプラスしてた、まぁいわゆる原始的とも言える洗脳だね」
杏子「あ゛ー…今はお前の魔法解説聞きたくねぇ……」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/15(金) 00:29:28.56 ID:2NhZMciTo
ほむら「……」
QB「……」
ほむら「ねえ」
QB「なんだい?」
ほむら「……その、助かったわ…まさか、あなたに気付かされるとは思ってなかった」
ほむら「…まどかの事を一番よく知っているのは私だと思ってたけれど…」
QB「気にすることは無いよ、他者への一方的な思いは奇しくも直進的になりがちだからね」
QB「それに、君には優しい言葉をかけてあげるよりも、奮い立たせる言葉をかけた方がいいだろう?」
マミ「……ふふ、随分と暁美さんの事を知ってるのね」
QB「こういう言葉があるだろう?押してダメなら引いてみろさ」
杏子「馬鹿な私にもわかるぞ、微妙に誤用だろそれ…」
ほむら「…まぁ、ありがとう」
QB「…どういたしまして、でいいのかな」
ほむら「……えぇ、いいと思うわ」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/15(金) 01:06:51.81 ID:GYEiKaZu0
これは良いほむQ
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/15(金) 01:38:19.52 ID:KVvxkLI30
なまじ人間よりよほど人間らしいな、QB
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/16(土) 00:27:32.99 ID:GN2g1NyP0
おつ
元々、反逆も利害が対立したからあんなことになっただけで、
改編後のべえさんって基本的にこんな感じなんだろうな
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/16(土) 00:58:09.51 ID:Qp/G1Bm1o
QB「やれやれだね、ようやくこれでエイミーも静かになるよ」
ほむら「杏子とマミが帰ってなおうるさいのだけれど」
QB「それくらいは許してあげてほしいな」
ほむら「それで、一つ聞きたいことがあるんだけど」
QB「なんだい?」
ほむら「聞きたいことが多くて上手くまとまらないから、大雑把に聞くけれど、あなたはどう変化しているの?」
QB「……それは」
ほむら「今までインキュベーターとして生きてきて、そしてそういうふうに生きていく上で邪魔にしかならないものを抱え込んだあなたが今迄と同じように生きていける、そんなことあり得るの?」
QB「…」
QB「やれやれ、そこまで分かってくれるのなら、涙の一つでも流して欲しいものだね」
ほむら「冗談でしょ」
QB「インキュベーターは一つの意識を共有してる」
QB「そうして情報を共有して生きていくことで、僕らはエネルギー回収の効率化を図ってる」
QB「「そういうもの」を抱えてしまった個体が、どういう扱いを受けるのかは、君が予想しているとおりだ」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/16(土) 01:02:11.75 ID:Qp/G1Bm1o
QB「精神疾患を患った個体として処理される……とまでは行かないけれど、僕の意識はもう総体から切り離されている」
QB「インキュベーターの種としての個体ではなく、この世でたった一つの存在になった訳だ」
ほむら「…」
QB「寂しくない、といえば嘘になる、運命を共にした種族との別れが辛くないはずはない」
QB「けれど、まぁこれも悪くは無いかなって思うんだ」
QB「マミがいて、杏子がいて、君がいてエイミーが居る」
QB「うん、だったら何にも苦しむ必要は無いよね?」
ほむら「まるで仲間だと言わんばかりの言い草ね?」
QB「そうだね、ただ生きていく上では君らなんて必要ないのに」
QB「それでもどこかで拠り所を求めてしまう、これも、感情が芽生えたからなのかい?」
ほむら「…」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/16(土) 01:08:12.52 ID:Qp/G1Bm1o
ほむら「人間は一人じゃ生きていけないわ」
QB「それは、また……君の口から聞くとは思わなかったよ」
QB「むしろ誰にも頼らないと決意を固めてそうな君なのに」
ほむら「ちょっと言い方が悪かったかしらね、それは、生きているとは言えないの」
ほむら「楽しいことを楽しいと思うためには、一人より二人の方がいい、って事よ」
QB「随分と変わったんだね、最初の頃は君はまるで鉄仮面だったのに」
ほむら「あなたに言われたくはないわ」
ほむら「…私も同じよ、マミがいて杏子がいて…だから今、生きるのが楽しい」
QB「そっか、僕らは似たもの同士だったんだね」
ほむら「…なんかムカつくわね」
QB「酷いや」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/16(土) 01:11:15.85 ID:Qp/G1Bm1o
QB「厄介だな、人間は」
ほむら「そうね、厄介すぎてね」
QB「でも、悪くない」
ほむら「ええ、悪くない」
QB「今まで、すまなかったよ、ほむら」
QB「僕らは君たちのことを真の意味で何一つ考えては居なかった」
QB「お詫びなんていうつもりもない、君はそんなこと必要としないだろうしね」
QB「でも、ごめん」
ほむら「…」
ほむら「悪いと思ったら、謝る、ちゃんと出来てるじゃない」
ほむら「…こちらこそ、すまなかったわ」
ほむら「今まで邪険にしすぎたわね」
エイミー「ニャー」
QB「…うん、そうだよ」
QB「僕は今、幸せだよ」スリスリ
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/16(土) 10:35:01.26 ID:VCPuVLnNO
ほむ
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/16(土) 11:06:15.27 ID:pbyisC+oo
これで裏切ったら胸糞だな
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/17(日) 01:39:19.22 ID:r8LHhy60o
QB「……」
QB(綺麗な月だ、こういうのを落ちてきそうなって言うのかな)
QB(魔獣の反応は……無し……うん、これで彼女たちも今日は平穏に眠ることができそうだ)
QB「……」ピクッ
「……やあ」
QB「やあ」
「驚いたよ、まさか前例少ない精神疾患の個体がまだ生きているなんてね」
QB「……姿を表さないで語りかけるなんて、どういうつもりなんだい?」
「随分と人間らしいことを言うんだね君は」
「まぁそれも当然といえば当然だ、人間と同じものを持っているんだから」
QB「僕を処理しに来たのかい?」
「そういうものが僕らに備わっていないということは、君が一番よく知っているはずだよ」
QB「じゃあ、何しにきたんだい?」
「何ってことは無いんじゃないかな」
QB「……」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/17(日) 01:43:54.71 ID:r8LHhy60o
「彼らに与えた知識と科学は全て元を正せば僕らのものだ、その元が興味深い対象への観察から成り立ってることは知ってるだろう?」
QB「……僕は研究対象か」
QB「いや、モルモットかな」
「その言葉はどういう定義からなのか、という事を君と僕とで擦り合わせることには意味がない」
「どうだい?感情というものは」
QB「知りたければ僕をまた総体に戻してくれればいい話じゃないか」
「そうもいかないよ、君の汚染された意識が混じってしまったら他の個体にまで影響が出る可能性がある」
「感情についてまだ結論は出ていないけれど、それは恐ろしく理不尽で、途方もない」
「僕らには不必要なものだ」
QB「……汚染……か」
「怒っているかい?」
QB「哀れんでいるよ」
「……」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/17(日) 01:50:15.04 ID:r8LHhy60o
「哀れむ、それも僕らにはないものだ」
「ただ、それが物理的法則を超えたエネルギーになることはよく知っている」
「奇跡を叶えるために使うエネルギーを遥かに凌駕するほどの感情の昂り、特に絶望、怒り、悲しみ、といった負の感情には目を見張るものがある」
「こういう方法は君には効果があるんだっけ?」
「幸せでいたいかい?」
QB「何が言いたいのかな」
「僕らには君を処理する程の爪は牙は備わってはいない、でも僕らにはもっと優れた武器がある」
「僕らという種をを今まで生きながらえらせた、君もよく知っている武器がね」
QB「それで、僕を脅すってことかい?」
「いいや、君に直接危害は加えないよ、君には」
「ただ、まぁ、いかに爪や牙がない僕らと言えど、人間の赤子にも満たない動物を殺すくらいならわけない」
QB「……」
「何も無茶を言っているわけじゃないよ、ただ観察させてくれればそれでいいんだ」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/17(日) 01:57:42.46 ID:r8LHhy60o
「君の精神が汚染される前、興味深い話を聞いた」
「なんでもこの世界は、ある一人の少女が絶望から逃れるべく作り替えた新しい世界なんだってことだ」
「勿論この話は君から送られてきた情報の一つに過ぎないんだけれど」
QB「……暁美ほむらの物語」
「「夢」物語だね」
「それで、その話を聞いて僕らは確かに微かな違和感を覚えた」
「魂をソウルジェムに変えた目的は、脆い人間をカバーするためのものなのか?」
「エネルギー回収は、魔獣を倒すことでしか成しえないのか?」
「負の感情が最大のエネルギーになると知っていた僕らが、その方法を模索しなかったのか?」
「……濁りきったソウルジェムを導く、僕らの干渉し得ない円環の理とは一体何なのか」
QB「……」
「一度気になってしまえば、僕らは止まることが出来ない」
「君らで言う情熱とやらが僕らを突き動かして、ようやくこういうものが完成したんだ」
QB「……それは……?」
「干渉遮断フィールド発生装置」
「知らないよね、君が総体から離れて急拵えで作ったものだから」
「もちろん完成品ではない、完璧な調整にはまだまだ時間がかかる」
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/17(日) 02:03:28.06 ID:r8LHhy60o
「僕らはこれを完璧なものにしたいんだ」
QB「なるほど、黙って見ていろ、そういう事だね?」
「そうだね、黙って見ていろ」
QB「……」
「なんて、君たちの口調を真似たところでやっぱり感情なんてものは理解できないな」
「君に束の間の幸せを約束するよ」
「僕らの誰も、君たちの空間に立ち入ることはしない」
「だから、君も僕らに関わって欲しくはないんだ」
「分かるよね?感情があり、僕らのことをよく知っている君だからこそ、分かるはずだ」
QB「…」
「この場合、沈黙は了承ってことかな」
「この装置を完成させたら僕らは実験に移る、誰を選ぶかはまぁその時によるけれど」
「少なくとも暁美ほむら、巴マミ、佐倉杏子には手を出さないよ」
「それで、いいかな?」
QB「拒否権なんてないって言ってるようなものだ」
「そうかな?これでも君たちのことをきちんと考えた上での提案のつもりなんだけど」
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/17(日) 02:10:30.99 ID:r8LHhy60o
QB「分かったよ」
「そう言ってくれて嬉しいよ」
「じゃあ、僕はこれで……」
QB「ねえ」
QB「僕からも一つ質問してもいいかい?」
「……」
QB「君たちと彼女たちの最大の違いはなんだと思う?」
「感情の有無かな、アレのせいで彼女達は合理的ではない理不尽な選択を強いられることになる」
QB「そうだね、それでどっちがより望ましいと思う?」
「……」
QB「感情を、心を侮ってはいけないよ、彼女達は心があるからこそ君たちには到底生み出せないエネルギーを生み出すことが出来る」
「そのせいで絶望に陥ることもあるなんて、酷く滑稽だね」
QB「心があるから奇跡が起きる、今に吠え面掻いたって知らないよ」
QB「君たちの足元を掬う存在があるとすれば、それは他の知的生命体なんかじゃなく、心を持った彼女たちだ」
QB「奇跡を対価に彼女たちは人間を捨てる、でも」
QB「心を捨てたわけじゃない」
「……」
「まぁ肝に銘じておくよ」
QB「…」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/17(日) 05:41:38.27 ID:lsye4CiB0
感情を手にしたきゅっぷいの感情の昂ぶってる感じが興味深いな
生き物らしいって思える
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/19(火) 00:06:47.51 ID:ZzpTaV7Vo
QB「……」
QB(やれやれ、折角しがらみから解かれたと思っていたのに、隠し事があったんじゃ彼女たちに合わせる顔がないね)
QB(……)ジー
QB(……でも、まぁうん……僕は顔に出にくい、そんな風に生きてきたことに感謝だ)
QB(これならば、彼女達から隠し通せるだろうね)
ほむら「おかえり」
QB「……」
ほむら「どこに行っていたのかしら、こんな夜遅くに」
QB「君こそ、魔獣退治で疲れているはずなのにこんな時間まで起きていてもいいのかい?」
ほむら「こんなのなんて事無いわ、明日も明後日も魔獣退治があるかもしれない、疲れてなんかいられないのよ」フワァ
QB「そうかい、体を大切にね」
ほむら「……」
QB「……特に、なんてことは無いよ、散歩に出ていただけさ」
QB「感情を持ってしまうと、無駄だとさえ思えることもしたくなってくる、それだけだよ」
ほむら「……そう、ならいいわ」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/19(火) 00:15:07.41 ID:ZzpTaV7Vo
ほむら「……」
ほむら「美樹さやかも、鹿目まどかも私は失ってしまった」
ほむら「いえ、巴マミも佐倉杏子も、多くの人間を、私は何度も何度も失ってきた」
ほむら「その痛みに慣れたことなんて一度もない、とはいえない」
ほむら「身を割かれるようなその痛みは、次第に麻痺してきた」
ほむら「……誰が死んでも、私は耐えられる」
QB「……」
ほむら「けれど、エイミーは、そういう訳では無い」
QB「……!」
ほむら「何があったのかなんて聞かないわ、知りたくもない」
ほむら「けれど、自ら命を捨てようとすることも、そういう選択をする事も馬鹿のやることよ」
ほむら「誰かが死ぬ事で訪れる平和は、根本的解決になっていない」
QB「……それは、僕に言ってるのかな?彼女に言ってるのかな?」
ほむら「……」
ほむら「……一度、目の前で見たからこそ、もう誰も犠牲にしたくない」
ほむら「感情があるなら、当たり前のことだと思うわ、おやすみ」
QB(鋭いね、だからこそ、彼女は今まで苦戦を強いられてきたんだろう)
QB(何があったか、なんて話せるわけがない)
QB(それを知って、君は死ぬなと言ってくれてるんだね)
QB(そうだ、他人の為に生きられる君たち魔法少女が優しくないはずがない)
QB(僕は死なない)
QB(そして君達も、むやみに死なせるつもりもない)
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/19(火) 04:30:44.19 ID:11L9zlqn0
スレタイがキュゥべえのセリフだと名作SSになる確率高い説
その片鱗を感じる
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/24(日) 21:27:47.88 ID:peQiHgCN0
叛逆ルート回避なるか、支援
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 05:15:03.77 ID:8ffL7gRuo
QB(けれど、実際のところ彼らが彼女たちに手を出さないと言ったのは、明らかに嘘だ)
QB(僕らは、彼らは、真実を隠す)
QB(僕という約束の対象が消えたとしたら、彼らに実験できるという名目を与えてしまったら)
QB(彼らはすぐにでも動き出す)
QB(どうすればいい?どうすれば、彼らに干渉させず、彼女たちを守ることが出来る?)
QB「……はは、彼女の言う神様にでさえ、成し得なかったことだ」
QB「そもそも無理な話だ、既に魔法少女としての契約という形で関わりあっているのに、今更その関わりを断ってしまおうなんて」
QB「魔法少女として生きている限り、その生き方には必ず彼らが関わる」
QB「…鹿目まどか」
QB(曰く、絶望にまみれた世界を救済するために、神様として固定化されてしまった魔法少女)
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 05:19:20.70 ID:8ffL7gRuo
QB(たった一人で世界を救えるはずがない、それは君もわかっていたことなんだろう?)
QB(それなのに、どうして君は自分一人だけを犠牲にして、この世界からその存在を抹消してしまったんだ)
QB(それは、逃げじゃないのか)
QB(「そこそこ都合のいい世界」とやらを創ってやった、後は僕らでなんとかしろっていう逃げじゃ)
QB(いいや、そんな事、考えているはずがない)
QB(だとしても、どうして君はそう神様をやっていられる?)
QB(作り替えたところで絶望の連鎖が終わることは無い、それは分かっているはずなのに)
QB(たった一人で全てを救えるはずもないのに)
QB(すくい上げて、隙間からこぼれてしまった悪意を、君はどうやって救うつもりでいたんだい?)
QB「教えておくれよ」
QB「僕は今、きっと誰より君との会話を望んでいる」
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 05:22:49.36 ID:8ffL7gRuo
ほむら「……」
QB「眠れなかったようだね」
ほむら「ぶつぶつと独り言がうるさくてね、詳しいことは聞こえなかったけれど」
QB「済まないね、感情を持ってしまうとどうも無駄なことに時間を割いてしまうようだ」
ほむら「……一つ言っておくけれど、あなたは割と昔も独り言が多かったと思うわ」
QB「状況確認のために言葉を出すのとは訳が違うさ、現に僕は昔の僕じゃ絶対に口に出さないことを出している」
杏子「へえ、なんだよそれ?」
ほむら(何で一緒に登校してるのかしら)
QB「さぁね、それはほむらに聞くといい」
ほむら「だから聞いてないって言ってるでしょ」
QB「へえ、本当だったんだ、意外だな」
杏子「いや、だからなんだよ」
QB「……」
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 05:30:07.86 ID:8ffL7gRuo
QB「君はいつもそうだね、そうして人の隠し事というプライベートな問題にずかずかと入り込んでくる」
杏子「お前人じゃねえじゃん?」
QB「僕が言っているのはそういう意味じゃないって言うのは分かってるよね!?」
QB「杏子、君はもっと人の心の機微というものを理解した方がいい、今の君じゃ確実に学校で浮く存在になるだろう」
杏子「うっせー!余計なお世話だ!そもそもちょっと前まで機械みたいだった癖にうるせーんだよ!マミみてーなこと言いやがって!」
QB「マミは未だに君を見捨てずに世話を焼いてくれるんだね、今度君はお礼にクッキーでも焼いてあげるといい」
ほむら(うまい)
杏子「はん!マミに世話焼かれるとか冗談だろ!あたしはあんなやついなくても一人で……!」
マミ「一人で?」
杏子「……生きて……いけ……」
マミ「私の援助なくして美樹さんとの約束を守れるのね?泥棒しない、ホテルに勝手に侵入しない、ええ、それはとっても素敵ね」
マミ「暁美さん、今日夕食一緒にどうかしら?一人分余ってしまったんだけれど」
ほむら「頂くわ」
杏子「嘘だよ!!嘘に決まってんだろ!ほむらァ!お前とるんじゃねーぞ!」
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 05:34:41.00 ID:8ffL7gRuo
ほむら「……」クスクス
QB「……やれやれ」
ほむら「意外ね、あなたが口調を荒らげている姿なんて、初めて見たわ」
QB「僕も初めての経験だよ、難しいね」
ほむら「そうね、今からのあなたは初めてが多くなる」
QB「……」
ほむら「楽しい?」
QB「随分とストレートに聞くもんだね」
ほむら「嘘をつくのも濁すのも当分はやめにしたの、こっちが気を使っても向こうはこっちの気持ちなんてわかってくれやしないから」
QB「説得力があるね」
ほむら「それで?」
QB「口に出すまでもないだろう、いくら出せると言っても」
QB「こういう事は、出さない方が風情がある、違うかい?」
ほむら「……ふふ」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 05:38:24.81 ID:8ffL7gRuo
ほむら「案外、昨日の夜の事も口に出さなくても分かるものなのかしら」
QB「……さあね」
QB「ただ、僕にはそれを口に出す資格がないと思っただけさ」
QB「1種の願望であるそれを、年端も行かない少女から無理やり聞き出して騙していた僕に」
QB「それを望む資格も、必要も無い」
QB「だから、せめて祈るだけだよ」
ほむら「……そう」
ほむら「あなたがそう言うなら、別にそれでいいわ」
ほむら「……」
QB「……」
ほむら「まぁ、もしかしたら……」
ほむら「……」
ほむら「……もしかしたら、それは私と同じかもしれないから」
ほむら「あなたの分まで、望んであげるわ」
QB「……それは、心強いね」
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 05:44:15.65 ID:8ffL7gRuo
杏子「……来たか」
マミ「油断しないでね、とても大きい魔力の波動を感じるわ」
ほむら「……」
杏子「しかし慣れたもんだな、さやかが居なくなっても案外なんとかなるもんだ、ま、あいつはいうほど戦力になってなかったし当然といや当然か」
QB「ホントは?」
杏子「すげえ寂しい、ってうるせーよ!」
杏子「……大きさもそうだけどよ、半端じゃない数だぜこりゃあ」
ほむら「……今のうちに数を減らしておくべきかしら、マミと私なら遠距離からでも攻撃できるわ」
杏子「却下だ、遠くなればなるほど当たりにくいし何より外したら街がぶっ壊れちまう」
QB「へえ、君に他人を心配する気持ちがあったのかい」
杏子「おめーは何かとすぐちょっかいかけてくるな……」
ほむら「楽しいのよ、人と口喧嘩するなんて今までしたことなかったから」
杏子「……へっ」
マミ「今の内に作戦でも立てておきましょうか」
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 05:49:10.87 ID:8ffL7gRuo
マミ「いつも通り、佐倉さんが前衛、私が中衛、暁美さんが後衛ね」
杏子「グリーフキューブの数はどうだ?戦ってる間に汚れが溜まっちまってそのままお導きとかシャレになんねーぞ」
マミ「数は大丈夫、けれど汚れをとる暇があるかどうか……」
ほむら「その時は汚れが溜まった人から後衛に回ってしまえばいい、適していると言うだけで、誰も前衛中衛が出来ないという訳では無いのだし」
杏子「そんじゃ、基本後衛のほむらは魔力を気にせずぶち込めるってわけだ」
ほむら「そうね」
杏子「でもこえーなー、ほむらの魔法案外外れることがあるから、最大威力土手っ腹に受けてそのまま死んじまうことも有り得るぞ」
マミ「まぁ流石に大丈夫でしょう……」
ほむら「あなたが避けきれなかった時は、私の夕食がタダになるだけよ」
杏子「何しれっとあたしの後釜に収まろうとしてんだよ……」
ほむら「私が作るよりマミの夕食の方が美味しいもの」
QB「違いないね」
ほむら「……」イラッ
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 05:55:07.88 ID:8ffL7gRuo
スパァン!
QB「ぎゅっ!」
ほむら「……それと、まだ時間があるから聞いてほしいのだけれど」
マミ「?」
ほむら「……少し、私のお話も入るんだけれど……今の魔獣たちは少しずつ知能をつけているように思えるわ」
杏子「知能?」
ほむら「……ええ、少し前までは単なる魔法による攻撃だったんだけれど、前回は精神攻撃をしてきた」
ほむら「……私の知る限りでは、そんな攻撃をしてきた魔獣はそんなに多くない」
ほむら「魔女は、単なる攻撃で倒せることが多かったのだけれど……精神攻撃はかなり厄介だと思うの」
杏子「確かにな、あの時はかなり面倒くさかった」
ほむら「精神を攻撃されるとその分汚れがいつもより貯まる、それはもう分かっているわよね?」
ほむら「……そして、あいつらの精神攻撃の方法も、もう分かっているはず」
杏子「……」
マミ「……」
ほむら「……皮肉よね、辛い過去を持ってる人の方が多い魔法少女にこそ効きやすい方法だと思うわ」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:02:52.69 ID:8ffL7gRuo
ほむら「……対策、という訳では無い、そんなに大層な事じゃないけれど」
ほむら「……覚えていて欲しい」
ほむら「……自分たちの過去に、今の自分をどれだけ否定されても、あなた達を信じる私はここに居る」
ほむら「……今この瞬間だけじゃなくて、あなた達と過ごした時間や、一緒にお茶を飲んだときも、喧嘩をしたときも」
ほむら「……私は、忘れないでここに居るから」
ほむら「その時間が、どれだけ素敵なことか私は知ってるから」
ほむら「……その……だから……」
杏子「何言ってんだ、当たり前だっつーの」
杏子「この前は不覚をとっただけだよ、心構えさえしてりゃあんなもん屁でもねえ」
マミ「ふふ、そうね、確かに過去はとっても辛いものだけれど」
マミ「死にたくなるような過去が襲ってきたとしても、生きていたい今があるんだもの」
杏子「やられねーよ、誰も」
ほむら「……」
QB『意外だね、とは言わないよ、もとより君はそういう人間だったんだろうね』
ほむら『……』
QB『今が大事かい?』
ほむら『……ええ、そうね、今は……何より今が大切よ』
QB『なら君たちは負けないよ、行っておいで』
マミ「来るわ!」
杏子「オラァ!!!!!」
ほむら「……!!」
ガガガガガガァン!!!
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:07:16.96 ID:8ffL7gRuo
魔獣「オオオオオオオオオオオオオオ!!!」
杏子「へっ!数がっ!多いって言っても!1匹1匹は大したことねぇな!っとと!!」
マミ「佐倉さん!左!」
杏子「っと……オラァ!!!」
ほむら(……杞憂だった……とはまだ言いきれない……だからあの攻撃が来る前に確実に数を減らしておく……!)
ほむら「……ふっ!!」ドシュッ!
魔獣「……オオオオオオオオオオオオオオ!!!」ババッ!!
ほむら「……っ!?」
杏子「……散開……!?いや……違うこれは……!!」
マミ「……私たちとの戦闘を放棄した!?」
ほむら(いけない!!)ドシュッ!ドシュッ!
杏子「やり切れねぇ!ほむら!!避けろ!!」
ほむら(……違う!!!狙いは……私ですら……無い!!)
魔獣「オオオオオオオオオオオオオオ!!!」ドドドド!!
ほむら「街の……方にっ!!!」
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:11:35.60 ID:8ffL7gRuo
杏子「クソっ!!」バッ!
マミ「……迂闊だったわ、まさかあんな方法をとるなんて」
杏子「いいや、考えても見りゃ当然かもしれねー、魔獣の役割はあたし達を殺すことじゃないんだからよ」
ほむら「…でも、今までこんなことなかったわ」
杏子「お前が言ったんだろ、知能とやらを付けてんだろ、それか誰かの入れ知恵だ」
マミ「……幸い、魔獣は直接人を殺すことはないわ、でも急がないと多くの人が呪われてしまう」
杏子「ちっ、厄介なことになってきやがった」
ほむら「……」
ほむら(やっぱりおかしい……この前の今回で、こんなにも魔獣が戦い方を変えてくるなんて……!)
QB「皆!無事かい!?」
杏子「ああ!あたし達はな!クソっ!!」
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:18:25.15 ID:8ffL7gRuo
QB「とにかく今は君たちが無事でよかったよ」
杏子「そうも言ってらんねーよ!街の方に魔獣が行っちまった!」
QB「大丈夫、今魔獣は君たちなんて眼中に無いよ、今の内に体制を立て直すべきだ」
杏子「……あ?」
QB「そうだね、ひとまず……」
ほむら「似てないわよ、全然ね」
QB「……」
ほむら「お前が何しに来たのかなんて、分からない、どうでもいい」
ほむら「私にとって今のお前は、まどかの真似をした魔獣が皆殺そうよって私に囁いてくる、それ位不気味よ」
ほむら「そしてそれ位腹が立つ……!」
杏子「……ほむら……こいつ……!もしかして……」
ほむら「相も変わらず人の気持ちを踏みにじって、お前はいったい何がしたいの?」
QB「勘違いしないでおくれよ、僕は……」
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:22:51.88 ID:8ffL7gRuo
ほむら「黙れ」
マミ「……QB」
マミ「もうあなたの事は暁美さんから聞いているわ、あなた達の体にスペアがあるって言うこともね」
マミ「私たちがどこまであなたのことを把握してるのか、あなたは憶測でしか分からないんでしょう?」
マミ「中途半端なお芝居は辞めにしましょう、ね?」
ほむら「私が「お前」と呼ぶのはインキュベーターだけよ、これ以上あの子を騙ると言うのならお前を殺すわ」
インキュベーター「……やれやれ」
インキュベーター「別に騙したつもりは無いんだけどな、彼の今の立場を加味して、僕ならこう言うと思っただけで」
インキュベーター「僕は僕なりに君たちに助言をしたまでだよ、誤解させたならすまないね」
ほむら「白々しい……!」
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:28:41.46 ID:8ffL7gRuo
インキュベーター「しかしまぁ、困ったことになったよ」
インキュベーター「僕らはただ単に「こうされたら厄介だね」ということを話していただけなのに」
インキュベーター「よりによって、魔獣なんかに聞かれているだなんて」
インキュベーター「知能が発達してきているのは知っていたけれど、まさか人語を理解できるようにまでなってたなんてね」
ほむら「……っ!!!!」
ほむら「……殺す……!お前は……殺す!!!」チャキッ
杏子「……おいやめとけ、まずはアイツらを倒すのが先だ」
マミ「……そうね、今は気にしちゃいけないわ」
インキュベーター「うん、僕もそれに賛成だ、そう言えば精神汚染された彼はどこかに行ってしまったよ、急いでいたようだけれど追いかけなくても……」
杏子「勘違いすんじゃねー、全部にケリつけたら、あたしらはお前をぶっ殺すって言ってんだよ」
インキュベーター「それが無意味だと知っていてもかい?」
杏子「さぁな、ただ、お前っていう個体はとりあえず殺す」
マミ「行きましょう……!早く彼らを倒さないと……!」
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:34:04.20 ID:8ffL7gRuo
バシュッ!
ドガッ!!
杏子「……クソっ!!まだ全部じゃねーのか!?」
マミ「落ち着いて!確実に数は減ってきてる!もう少しよ!」
ほむら「……くっ……!」
ほむら(……真正面から向かってこない!やっぱり……!)
キィィィィィ!!
杏子「……精神……っ」
マミ「……ぐ……うぅうううぅ……!!」
ほむら「……耐えられる!!大丈夫よ!!」
杏子「分かっ……てるァ!!!!」ガァン!!!
マミ「……これ位で……へこたれるもんですか……!!」
ほむら(……早く……!早く倒さないと……!!皆が……あの子達が……!!)
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:36:57.67 ID:8ffL7gRuo
杏子「……はぁっ……はぁっ……」
杏子「……これで……漸く……全部か?」
マミ「そうだと……いいのだけれど……はぁ……はぁ……」
ほむら「……」
ほむら(魔獣がつけた知恵とやらが……どこまで広がっているか……分からない……また対策を立て直さないと……)
杏子「……そうだ!QBは……!」
マミ「……!」
ほむら「……!!」
ガチャン!!!
杏子「QB!!エイミー!!!」
マミ「……大丈夫!?」
QB「やあ、遅かったね」
ほむら「……」
QB「どうやら僕は……してやられたみたいだ」
エイミー「……」
ほむら「……!」
ほむら「エイ……ミー……?」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:41:17.97 ID:8ffL7gRuo
ほむら「エイミー……エイミー!!!」
杏子「……クソっ!!マミ!!!治癒魔法だ!!お前も使えるはずだろ!」
マミ「……」ポゥ……
杏子「エイミー!おい!早くしろ!!マミ!!早く治癒魔法を……!!」
マミ「……わよ」
杏子「マ……!」
マミ「……やってるわよ!!!!!」
杏子「……っ!」
マミ「……やってるわよ……ずっと治癒してるわよ……でも目を覚まさない……覚まさない!!」
マミ「体にはどこにも傷がないはずなのに!!目を覚まさない!!どういう事か、分かるでしょうっ!?」
ほむら「……うぅ……あぁぁぁああぁぁ……!」
QB「死んでしまったようだ、恐らく魔獣の精神攻撃に耐えられなかったんだろうね」
QB「激しい頭痛を伴うから、きっと単なるショック死だったんだろう」
杏子「……てめぇ……!何でそんなに冷静なんだ!もしかしてまた……!!っ……!」
QB「知りたくなかったな、こんな時に涙すら流せない自分の愚かしさなんて」
ほむら「……エイミー……!」ギュッ
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:43:45.49 ID:8ffL7gRuo
ほむら「……」
QB「……まるで抜け殻のようだね」
ほむら「……」
QB「申し訳ないと思うけれど、言わせてもらうよ」
QB「猫が一匹死んで、そこまで君が塞ぎ込むなんて思っても見なかった」
ほむら「……」
ほむら「守ろうと思っても、すり抜けて落ちてしまう、まるであの時と同じ」
ほむら「……考えてしまうわ、エイミーが隣の家に拾われていたら」
ほむら「飼わずに居たとしたら」
QB「……」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:48:57.94 ID:8ffL7gRuo
ほむら「結局私は、堂々巡りもいいところ」
ほむら「同じ過ちを繰り返して、同じだけ後悔して、同じ数だけ死にたくなる」
ほむら「そうしていつかそんな痛みにさえ慣れてしまって……」
ほむら「いつかはきっと、心を無くす」
QB「少なくとも、今は失くす心があるんだろう、落ち込むっていうことはそういうことさ」
ほむら「……辛い……何かを抱えると……失った時、辛い……辛すぎる……!」
QB「彼女は確かに、幸せだった」
QB「キミに飼われていなかったらなんて、考えるだけ無駄だ、その分君は彼女に幸せを分けてあげたじゃないか」
ほむら「そんな風には、私は考えられない……!」
QB「じゃあ君は、そんな風に引きずって生きていくのかい?」
ほむら「人間は!そんなふうに合理的に考えて生きていけないのよ!!!あなたと違って!!」
QB「……!」
ほむら「……あ」
QB「……そう、かもね」
ほむら「……違っ……!待っ……!」
QB「僕も少しだけ、頭を冷やしてくるよ、やっぱり未だ、僕に本物の心は宿っていないかもしれない」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:53:25.54 ID:8ffL7gRuo
QB「……」
QB「エイミーが、死んだ」
QB(他の生命が失われて、もうこれから先絶対に交わることがない)
QB(楽しかったと思えて、共に過ごした日々が大きければ大きいほど、その喪失感は凄まじくて)
QB(未だに現実から切り離されているようで、地に足つかない浮遊感だけが確かなもので)
QB(今までの悪いことすべてが嘘だったんじゃないかと思えてきて)
QB(現実に引き戻されて、あの時こうしていれば、あぁしていればと言う後悔と自責の念に押しつぶされそうになる)
QB「これが、死か」
「やあ」
QB「……」
「どこまで聞いたのかな?僕らの失態を君にはあまり知られたくないんだけれど」
QB「まぁ、そうだろうね、大体は理解しているつもりだ」
「そうか、申し訳ないことをした」
QB「心にもない事を言うもんじゃないと思うよ、そういう態度は一層神経を逆なですることにもなりかねない」
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:59:24.47 ID:8ffL7gRuo
「あの猫のことは残念だったね」
QB「君たちには関係の無いことだ、僕は彼女を守りきれなかった、それだけだ」
「そうだね、少しきつい言い方かもしれないけれど、君はあの時確かに役立たずだった」
QB「……」
「でも、今はそうとは限らない」
QB「……?」
「マレフィカファルス……って知ってるかい?」
QB「……魔女の心臓……?」
「感情が生まれると、記憶の整理が必要になってくるのかな、当然といえば当然か、記録に感情を足して記憶になるんだから」
「魔女の心臓から生まれた少女がいた、彼女は偽物の体でしかなかったのに、自分を人間だと信じて疑わなかった」
「偽物の体に、本物の心が宿った」
QB「……」
「僕らが契約できるのは、素質を持った少女のみ」
「定義すると、心を持っていて、因果を背負っているもの」
「しかし彼女は、実際には少女ですらなく、そして因果すらも背負ってすらいなかった、背負っていたとしたら、それは間違いなく作られた偽物の因果だ」
「にも関わらず、彼女の契約は成立した」
QB「……」
「君の言った通りだね、心があるから奇跡が起こる」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 07:06:23.35 ID:8ffL7gRuo
「一番重要なのは、心じゃないかって、僕は思うんだ」
「契約に必要なのは、心と、願い」
「それらが揃ってさえいれば、彼女ほどではなくとも、不完全ではあったとしても契約は成立するんじゃないかなってね」
QB「君は、悪魔だね」
「何とでも言っていいよ、僕らは呼ばれ方に特別こだわりを持たない」
「もちろん約束は変わっていないよ、僕らは、暁美ほむらにも佐倉杏子にも巴マミにも絶対に手を出さない」
QB「……」
「あぁ、後、全ての権利を剥奪したと思っていたんだけれどね、契約執行の権利は何かの手違いで君に残っていたみたいだ」
「契約したいと思ったらしてもいいよ、それ自体は僕らにとって不利益となり得ないからね」
「そうだね、鏡にでも話しかければいいんじゃないかな?」
「それじゃあ」
QB「……」
QB「ますます、鹿目まどかと話したくなってきたよ」
QB「君はこんな気持ちだったのかい?もう自分しかいなくて、どうしようも無くて」
QB「嫌々ながら、運命を恨みながら、神様になったのかな」
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 08:02:00.09 ID:OLT6bWESO
かずみ…
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 15:34:59.91 ID:UFWcCToy0
改変後の世界なのにやけに敵対的なべえさんだな、嫉妬でもしているんだろうか?
支援
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 20:37:53.19 ID:e9M8PSeiO
QBががが
感情が出来立てとはいえキツい一言だわ
おつ
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 08:36:36.46 ID:s8/o1CofO
QB(こう言ってるわけだ)
QB(今の僕にできることは何も無い、但し、それでもエイミーを救いたいのならば一つだけ方法がある)
QB(なんて皮肉なんだろう、半ば無理やり、選択の余地もないくらい他の可能性を削ぎ落とし年端も行かない少女と契約しておいて)
QB(最終的に僕がすがるのはその契約だなんて)
QB(これが罰なんだとしたら、妥当すぎて笑えてくる)
QB(……でも、それもまた仕方が無いと考える僕がいる)
QB(契約出来るんだろうか、自分一人で、不完全とも呼べる心しかない僕は、たった一人で)
QB(エイミーを生き返らせるという願いを叶えることが出来るんだろうか)
QB(……いいや、出来るんだろうかって考えてる時点で答えはもう決まってる)
QB(僕は何があってもエイミーを生き返らせたい)
QB(例え、地獄に落ちたとしても)
QB「……あ」
杏子「……おう」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 08:40:12.55 ID:s8/o1CofO
杏子「案外動じてねーみたいだな」
QB「さあね」
杏子「死んじまったなー、エイミー」
QB「君も、昨日と打って変わって随分と軽いじゃないか」
杏子「いいや、そんな事ねぇよ」
杏子「でもさ、さやかが死んだ時決めたんだ、誰が死んでもあたしは揺らぐことのないようにしようって」
杏子「死んじまっても、クヨクヨすんのはやめようってな」
QB「強いね、君は」
杏子「強くなんねーといけなかったんだ、あたしも、マミもほむらも」
杏子「だってこんな世界だぜ?誰かが死ぬなんて雨が降るよりも起こることだろうよ、それが今回エイミーだっただけだ」
QB「世界が悪いって、思ってるのかい?」
杏子「ほむらに言ったら殺されるな、こんな世界でもあいつにとっちゃまだ救いのある世界らしい」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/01(日) 09:05:11.92 ID:s8/o1CofO
QB「君はよくさやかに言っていたね、他人のために願うのはバカのやることだって」
杏子「言ったね」
QB「あの言葉の真意を聞かせて欲しい、どうして他人のために願うことが悪いことなんだい?」
杏子「……」
杏子「別に悪いことじゃねーさ、他人のために願うくらい優しいことが、悪いはずねぇじゃんよ」
杏子「悪いのは、やっぱり世界だ」
杏子「他人を思うくらい優しいやつから酷い目にあう、そんなふうな世界だからダメなのさ、他人のために願うってのは」
QB「……」
杏子「だからさ、それでも他人のために願ってんなら、覚悟を決めた方がいいんだ」
杏子「何が起こっても、そのためなら命でさえ捨ててもいいっつー覚悟を」
杏子「……それがないから、あたしは今でも後悔してる」
QB「覚悟か、それもまた僕に足りないものの一つだろうね」
杏子「さあて、あたしにはお前のことはよくわかんねーよ」
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/01(日) 09:11:33.73 ID:s8/o1CofO
杏子「争いとか、下らねーもんが終始続く馬鹿みたいな世界だけどさ」
杏子「優しいやつにはとことん厳しくて、まともなやつが馬鹿を見る世界だけどさ」
杏子「それでも、ここはあいつが守ろうとした場所なんだ、だったらあたしは、死んじまったアイツの分までここで生きて戦わなきゃいけねーもんな」
QB「……生きて、戦う」
杏子「それくらいしか、今のあたしにはやることがねーんだけどさ」ケラケラ
QB「戦うという定義は、沢山あるよね、例えばそれが地獄に落ちてまで目的を果たすことだとしても、それは戦いだって言えるのかな?」
杏子「難しいことは良くわかんねーよ」
杏子「だけどまぁ、お前がそう決めたんならいいじゃねーか、何を決めたかしらねーが」
杏子「本気なんだったら、あたしにも世界にも止める権利はねーんだよ」
QB「……」
QB「……エイミーを、生き返らせようと思う」
杏子「……そりゃまた随分と大きくでたな」
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/01(日) 09:16:04.15 ID:s8/o1CofO
杏子「どうやって?」
QB「僕に生まれた心を、不完全かもしれないけれど出来た心を使って、僕自身が僕と契約する」
杏子「そんなこと出来るのかよ?」
QB「理論上は不可能だろうね、でも、不条理を覆すことこそ魔法少女の使命なんだろう?」
杏子「さてどうだか、あたしはそんなこと聞いたことねぇな」
QB「何が起こるかわからない、契約不履行に終わってただただ自分の命を捨てるだけの行為に代わりないかもしれない」
杏子「その場合、ただで死ぬわけねーな」
杏子「いつぞやほむらが言ってた魔女ってのになっちまう可能性もある、か」
QB「円環の理が僕にまで作用するかどうかはわからない、いいや、きっとしないだろう」
QB「するはずが無い、だからこそ、今この事実を君に教えたんだ」
杏子「……」
杏子「損な役回りだね、ほんと」
QB「申し訳ないと思っているよ、それでもそういう事が出来るのは、今は君だけだと思ってね」
杏子「……あたしだって、辛くないわけじゃねーんだぞ」
QB「うん、ごめんね」
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/01(日) 09:19:37.12 ID:s8/o1CofO
杏子「あんたは、何を望むんだ?」
QB「エイミーに、生き返ってほしい」
杏子「その願いは、あんたの命を差し出すに足るものかい?」
QB「うん」
杏子「そうか、ならもうあたしは何も言えねーな」
QB「……」
QB(後悔はない、ただ、僕みたいな存在がなにかのために死ぬ事が出来るという事実は、意外と悪くない)
QB(エイミー、君といて僕はとても楽しかった)
QB(君がいたお陰で、僕はかけがえのないものを手に入れた)
QB(だからもう1度、君に会うために僕はこの命を使うよ)
QB(君が理不尽に殺された事実なんて、僕は絶対に受け入れられないからね)
ズッ
インキュベーター「……始まったね」
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/01(日) 09:23:36.95 ID:s8/o1CofO
QB(……)
QB(自分の魂が取り出されて、形作られるのがわかる)
QB(今の僕を見たら、君はなんていうだろうか)
QB(誰か一人の命と引き換えに訪れた平和は、根本的解決にならない、そう言ったね)
QB(肉体が崩れていく、魔法少女として不完全な形で出来上がっていく)
QB(無様で醜い、壊れかけのソウルジェムが、最後の僕か)
QB(……あぁ、ほむら)
QB(それでも、君たちといた数週間は、数百年生きてきた僕の人生の中で、一番輝かしいものだったよ)
ほむら「……!」
ほむら「……この魔力……嘘……ありえない……!」
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