QB「ついに僕にも感情が芽生えたんだ!」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/14(木) 23:11:59.12 ID:0i9pKl1ao
ほむら「嘘ね」

QB「酷いなぁ、前に何があったかは知らないけど君は本当に僕の扱いが雑だよね」

ほむら「まどかが概念として固定されて沢山のものが良くも悪くも変わってしまったけど、あなただけは絶対に変わらない自信があるもの」

QB「ははぁ、また夢物語の話かい」

ほむら「夢物語じゃないって言ってるでしょ」ガシャッ

QB「怖い怖い」

ほむら「第1あなたに感情が芽生えたところで何があるっていうの?」

QB「聞きたいかい?」

ほむら「…」イラッ

QB「確かめたいなら君の家に僕を連れて言ってごらんよ」

ほむら「鬱陶しいわね…」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1505398318
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/14(木) 23:16:04.76 ID:0i9pKl1ao
QB「…」モグモグモグモグモグ…

ほむら「…で?」

QB「…ん?見てわからないかい?」

ほむら「何が変わったのかしら」

QB「ご飯が美味しい」

ほむら「…?……???」

QB「僕らにとって食事はエネルギー補給でしかなかった、もちろん味なんて二の次だ、そういう変換方法だったならガソリンでさえ摂取しただろうね」

ほむら「…」

QB「でもね、今はご飯が美味しい」

ほむら「…つまり…ご飯が美味しいから感情が芽生えたって言いたいの?」

QB「そうだよ、これは僕らにしてはとてつもなく大きな変化だ」

QB「味を感じるってことは好みを感じるってことだ、つまり僕に好き嫌いが出来たんだ」

ほむら「人参も食べなさいよ」

QB「好き嫌いが出来たんだ」

ほむら「杏子を呼ぶわ」

QB「君たちはいつもそうだね、他者が思い通りにならないとすぐに暴力による鎮圧を良しとする…うぅっ…」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/14(木) 23:19:38.49 ID:0i9pKl1ao
ほむら「長くここの星に居れば味覚ができるのも当然のことだと思うけれど」

QB「君らと一緒にしないで欲しいな、僕らがそう簡単に変わるのであればこんな非効率的なエネルギーの回収方法なんかに手を出さないだろう」

ほむら「…」

QB「感情がなかったからこそ、僕らはここへ来ることを余儀なくされたんだ」

ほむら「…で、それがどうしたの?」

ほむら「まさかあなたに感情が芽生えたからって扱いが変わるとでも思ってないわよね?」

QB「そうだね、未だまだ起伏は乏しいけれどそれでも少しは分かるつもりだ」

QB「いや、昔だって頭では一応論理として理解はしてた」

QB「君らにとってひどいことを僕らはしてるんだろうってね」

ほむら「…」

QB「うん、こういう事を軽々しく言えるのも今の僕だからこそ、という訳だね」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/14(木) 23:27:12.88 ID:0i9pKl1ao
QB「だから、謝るよほむら」

QB「僕らは君にひどい仕打ちをしていたんだね」

ほむら「夢物語だと笑わないの?」

QB「あぁそうか、笑う、そういうことも出来るんだ」

QB「感情が芽生える以前と今の僕とでは明らかに違うけれど、それでも意識は連続してる」

QB「以前の僕は、今の僕から見てややおぞましい」

ほむら「…でも、契約をやめるつもりなんてないのでしょう?」

QB「残念ながらね、そもそも魔女とやらが居なくなったこの世界じゃ契約自体そこまで蔑視されるものじゃないと僕は思うよ」

ほむら「偽物の奇跡を餌に戦う使命を背負わせるくせに」

QB「その意見は変わらないな、君たちは真実を知っていたら願いを取り下げたかい?どんなリスクを背負ってでも叶えたい願いがあったからこそ君は今も魔法少女としてここに居る」

QB「その覚悟があったから、彼女はこの世界を変えたんじゃないのかい?」

ほむら「…」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/14(木) 23:32:24.99 ID:0i9pKl1ao
QB「誰だって、自分の現状と誰かを見比べて不幸だ地獄だと泣き喚く」

QB「そんな不幸の真ん中にいる君たちは少しだけ運が良かった」

QB「魔法少女として生きる素質があった、それだけの話さ」

ほむら「イライラせずにあなたの話をここまで聞けたことが何より奇跡だわ」

ほむら「あながち感情が芽生えたというのも嘘じゃないのかしらね」

QB「だからそう言ってるじゃないか」

ほむら「…それで、あなたをそうさせたのは、一体なんなのかしら」

QB「え?」

ほむら「今まで普通にインキュベーターとして生きてきて、自ずと感情が芽生えたなんて言わせないわ」

QB「鋭いなぁ君は」

ほむら「…」

QB「着いてきてくれないかい?見せたいものがあるんだ」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/14(木) 23:37:31.45 ID:0i9pKl1ao
ほむら「…」

ほむら「…これ…」

QB「僕もまだよく分かっていないんだよね、刷り込みという事象を知識としては知っていたけれど、見た目がこれまで違う僕に懐いてくる意味がわからない」

黒猫「……」スリスリ

QB「…なんだい?」

ほむら「…嘘でしょ…?」

ほむら「いっ…今まで多くの感情に触れてきて…眉一つ動かさなかったくせに…たった一匹の猫ぐらいで……くくっ…!」

QB「僕らに眉はないよ」

ほむら「……ぷっ……くくく……うふふふ…あはははっ…!」

QB「…そんなにおかしいかな」

ほむら「おっ…おかしくないわ…おかしくないけれど…ぷっ…!」

QB「やれやれ…やっぱり人間は度し難いね、黒猫」スリスリ

ほむら「……エイミー」

QB「え?」

ほむら「その子の名前は、エイミーよ」

QB「…エイミー…いい名前だね」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/14(木) 23:42:44.90 ID:0i9pKl1ao
杏子「魔獣会議、行っとくか」

マミ「風見野の方で魔獣たちの群れを見つけたわ、恐らく今夜辺りにでも見滝原に到達するでしょうね」

ほむら「こっちは収穫なしね、まぁ収穫がないってことはいい事なんだろうけれど」

杏子「それじゃあたし達が濁りっぱなしじゃねえか、こっちも異常なし、ちっシケてんなぁ」

QB「こら、そっちはトイレじゃないよ、あっちでしないとほむらに殺されるよ」

杏子「突っ込んでもいいのか?」

ほむら「何て?」

杏子「お前猫だったのかよっ!?って」

マミ「可愛い猫ねぇ、暁美さんが飼ってるのかしら?」

ほむら「…私というか…QBが」

杏子「はっ!?猫の癖に猫飼ってんのかよ!傑作だなぁおい、あはははは!」

マミ「それが普通なんだけれどね」

ほむら「まぁ…邪魔にもならないし置いてあげてるのよ、ご飯も一応あげてるわ」

杏子「QBにはやらねーのに、猫以下かよQB」

ほむら「当然でしょう」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/14(木) 23:46:54.04 ID:0i9pKl1ao
杏子「いやぁー面白いわ、ほむらの話聞いた限りじゃQBは極悪非道の限りを尽くすクズ野郎だったのに」

QB「君は一体どんな話をしたんだい?」

ほむら「事実を言ったまでよ」

QB「だからそれは…まぁいいや」

エイミー「ニャー…」

マミ「きゃっ…まぁ…とってもお利口なのね、この…」

ほむら「エイミー」

マミ「エイミーちゃんは」

杏子「なぁ、ほむら」

ほむら「え?」

杏子「この猫は割とどうでもいいんだけどよ、QBってこんなキャラだったか?」

ほむら「あら、あなたにはどう見えていたの?」

杏子「二言目には契約契約の契約馬鹿だ」

ほむら「あながち間違いではないわよ、3言目にエイミーが来るだけで」

杏子「そんなもんか…」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/14(木) 23:52:14.53 ID:0i9pKl1ao
QB「僕にはうまく言い表せないけれど、エイミーがマミの膝に乗ってたら何となく胸の奥がグツグツしてくるよ」

ほむら「あら、偉いじゃない、それが嫉妬よ、エキスパートの杏子先生に聞くといいわ」

杏子「なんであたしが嫉妬のエキスパートなんだよ」

ほむら「さやかは上条恭介にずっと密かな想いを寄せていたわ」

杏子「ぐぅううおおおお…」ガンッガンッ!

ほむら「ああやって嫉妬を沈めるのよ、やってご覧なさい」

QB「人間はいつもそうだね、受け入れ難い現状に陥るとすぐ自傷行為に走ってしまう」

ほむら「手伝うわ」

QB「やめて」

杏子「さやかぁぁぁあああ……!なんで死んじまったんだァあああ…!」

マミ「ちょっと発作が起きてるじゃない、エイミー行ってきて」

エイミー「…ニャー」スリスリ

杏子「うおおおおお!!」スリスリスリスリスリ…!
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/14(木) 23:56:35.36 ID:0i9pKl1ao
QB「…あ」

ほむら「?」

QB「……そうか、さやかは死んでしまったんだね」

ほむら「あら、意外ね、死を悼むような性格だったかしら」

QB「いや、別に悼んではないよ、ただ…」

QB「自分にとって掛け替えのないものが失われた時が、僕にも来るのかなって思ってね」

ほむら「…出来てもないくせに、今からそんな心配?」

QB「そうか、杏子は強いんだね」

QB「……ううん、マミも、君も、とっても強い」

ほむら「強くなんてないわ」

ほむら「歯を食いしばって、辛さに耐えながら辛うじて生きてるだけよ」

QB「僕にはそんなことできそうにないや」

ほむら「本当に、あなたにそんな存在ができたらわかると思うわ、「じゃあ、今するべきことはなんなのか」がね」

QB「…」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/15(金) 00:00:19.89 ID:2NhZMciTo
QB「そんな時、来て欲しくないな」

ほむら「言うようになったじゃない」

QB「どうも人間は精神と肉体の強さが釣り合っていない」

QB「自分に近しければ近しい程失った時は、まさに身をもがれる痛みだろうに」

QB「そんな辛さには耐えられるくせに、どうしてそんなに脆い肉体なんだい?」

ほむら「さあね」

ほむら「でも、逆に言えば、肉体の痛みに耐えることが出来ても、心が耐えられないことだってあるわ」

ほむら「強さなんて、その時々で変わるわよ」

QB「…」

ほむら「あなたは、今痛いかしら?」

QB「……」

QB「ううん、心地いいよ」

ほむら「だったら、今はそれでいいのよ」

QB「うん、そうだね」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/15(金) 00:02:53.69 ID:2NhZMciTo





QB「予想通り風見野の方から魔獣の群れだ、気を付けて、増殖しながらこっちへ向かってる」

杏子「やれやれ、休ませてもくれないんだからしんどいわ」

マミ「どの道休む暇もないでしょう」

ほむら「……来るわ」

魔獣「オオオオオオオオオオオ!!」






QB「…」

エイミー「ニャー…」

QB「きっと大丈夫さ、今まで通りに、やってくれるよ」

エイミー「ニャー」

QB「…」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/15(金) 00:06:09.03 ID:2NhZMciTo
杏子「……キリッ……がねえ!!!」

マミ「……ほんと…!どうやったらここまで増えるのかしら…!」

ほむら「…っ……!」

ほむら(まずい…数が多すぎる…三手に分かれるのは愚策だった…)

ほむら(ちっ…時間さえ止められさえすれば、こんなの…!)

魔獣「……オオオオオオオオオオオ!!」

杏子「……ゲッ……!ぐぅっ……!」

マミ「……精神……汚染……!?」

ほむら「……んっ……ぐぅっ!!」

ほむら(……まずい……意識が……)
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/15(金) 00:08:04.36 ID:2NhZMciTo
QB「……遅いね」

エイミー「……」

QB「やれやれ、手間がかかるね、やっぱりどうも僕は彼女たちのそばにいないといけないようだ」

エイミー「ニャー」

QB「大丈夫、すぐに帰ってくるよ」

QB「……」

QB「でも、きっと3人とも疲れて帰ってくるだろうから、その時は」

QB「その時は、三人を労ってあげてくれないかな?」

エイミー「ニャー!」

QB「うん、行ってくる」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/15(金) 00:12:14.43 ID:2NhZMciTo
「あの時とめてくれればよかったのに、そうすれば私は固定なんかされなかったのに」

「だからお前は魔女だと言ったんだ、他者を傷付けて繋ぐ歪な命になんの意味がある?」

「楽しそうに嬉しそうに生きてるのね、もうきっと私たちのことなんて忘れてしまったのね」

ほむら「……ぐううううっ……!」

ほむら(頭が……!割れる……!)

ほむら(違う……!違う違う違う違う!!!まどかはそんな事言ってはいない!)

ほむら(助けられなかったけれど、でも、まどかはそんな事を言わない!)

ほむら(言わない言わない言わない言わない言わない!!!!!)

「嘘つき」

ほむら(あ……)

ほむら(……ま、ど……)

QB「いつまでそこでうずくまっているんだい?」

ほむら「……Q……」

QB「早くしておくれよ、僕はもうお腹がぺこぺこなんだけど」

ほむら「……」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/15(金) 00:21:22.02 ID:2NhZMciTo
QB「いやまぁ、そうだね、いざとなったら僕はガソリンでも舐めるさ」

QB「試したことはないけれど、基本僕らに不可能はない、多分生きることは出来る」

QB「でもね、エイミーがうるさいんだ」

QB「早く帰って来いってうるさすぎてたまらない」

QB「感情が多少なりとも芽生えると、彼女の鳴き声がここまで耳障りなものになるんだね」

QB「同じ鳴き声にしても、君らに対してのものなら幾分かはマシだ」

QB「まだかい?僕はもうとっくに」

QB「君らは克服したものだと思っていたんだけれど」

ほむら「…」

ほむら「……うるさいわね、バカ」

ほむら(そうだった、何を考えているのかしら…)

ほむら(…私はもうとっくに、乗り越えたはずでしょう)

ほむら(あの子の分まで、生きるんでしょう)チラッ

杏子「…」

マミ「…」

「ほむらちゃ」

ほむら「うるさい!」ドシュッ!!!

「……あぁ、ああぁ……!ほむら……ちゃ……!」

ほむら「……まどかはそんなこと言わないわ」

ほむら「……」

ほむら「もちろん、杏子の父親も、マミのお母さんもね…」


ズガァン!!!
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/15(金) 00:26:05.71 ID:2NhZMciTo
エイミー「……」

エイミー「ニャー……」

エイミー「……」

ガチャッ

エイミー「……!」

QB「……」

ほむら「……」

杏子「……」

マミ「……」

エイミー「ニャー!ニャー!!!」

QB「ほら、エイミーが君たちを労ってくれたよ、何か言うことはないのかな」

杏子「嫌もう勘弁してくれ……精神えぐられて……結構キツいんだよ」

QB「……やれやれ、酷い人たちだねエイミー」

エイミー「ニャー」

杏子「…全く……くく……くくっ……!」

QB「人間は窮地に陥ると涙より笑が零れるらしい、未だ僕にはわからない現象だね」

杏子「うるせーよ、あはっ……ふふふっ……」

マミ「…平気かしら?暁美さん」

ほむら「ええ、もちろん」

QB「他社の記憶を盗み見て投影するタイプの魔法だ、それに耐え難いほどの頭痛をプラスしてた、まぁいわゆる原始的とも言える洗脳だね」

杏子「あ゛ー…今はお前の魔法解説聞きたくねぇ……」
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