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梨子「カードキャプター」善子「さくらうち?」
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74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:12:18.25 ID:i5gu9J0q0
千歌の部屋の壁『さくらうち、貴女の友を想う気持ち、しっかりと伝わっています……』
梨子「千歌ちゃんの部屋の壁さん……!」
千歌の部屋の壁『あとは、言葉にするだけですよ』
梨子「でも、どんな言葉をかけたらいいか……」
千歌の部屋の壁『貴女が今考える必要はないのです。今まで見て、聞いた言葉を思い返して……』
梨子「今までの、言葉……」
―――ダイヤ『もったいない』
―――ダイヤ『喜び、悲しみ、つらさ、幸せ……勉学に恋に、様々な想いを抱いてこそ、一人の人間というものですのに』
千歌の部屋の壁『そう。そして貴女の力を、今までやってきたことを、信じて――』
梨子「私の、力……」
☆ ☆ ☆
梨子(11)『ねえ壁さん、また期待外れだって言われちゃった』
梨子(11)『私がダメなのかな。私が足りないのかな……』
幼い頃の梨子の部屋の壁『……』
梨子(11)『ごめんね、いつも愚痴ばっかり。でも、壁さんは何でも聞いてくれるもんね』
梨子(11)『わたし、強くなるね。壁さんのおかげで、毎日ちゃんと進めてる、そんな気がするんだ』クイックイッ
☆ ☆ ☆
梨子「そうだ! 私は続けてきたんだ……! 感謝の壁クイ……! 何年も、毎日毎日―――」
梨子「それが私の力……! 私は、雨の日も風の日もへこたれることはなかった……!」
うちっちー「そりゃ屋内だからね」
梨子「今は黙って」
うちっちー「……」
梨子(これを、千歌ちゃんにぶつける……。千歌ちゃんの部屋の壁さんはそう言うんだ……!!)
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:13:05.89 ID:i5gu9J0q0
梨子「千歌ちゃん」
千歌『なあに、梨子ちゃん』
梨子「ね、私も漫画読んでいいかな」
千歌『うん、もちろん! 何読むー?』
梨子「千歌ちゃんのおすすめを取ってもらってもいい?」
千歌『いいよ! えーっと、それじゃあこれを……ううん、こっちかな』ガサガサ
梨子「……」
梨子「ねえ千歌ちゃん、ちょっとこっちむいて?」
千歌『え、なに――』クルッ
梨子「千歌ちゃん」ドンッッッ
千歌『ぇ―――』
うちっちー(いったあああああ!!)
千歌『り、梨子ちゃん……?』
梨子「ねえ、千歌ちゃんのおすすめ、どこ……?」ササヤキ
梨子「おでこ? ほっぺ? それとも――」ツー
千歌『ひゃっ……』
梨子「こっち―――?」クイッ…
千歌『あ、ぁぁ……///』
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:14:11.99 ID:i5gu9J0q0
梨子「千歌ちゃん」
千歌『う、うぅ……』
千歌『うっ、うぐっ、ううっ』ポロポロ
梨子「どうして泣いてるの、千歌ちゃん」
千歌『だって、だってぇっ! びっくりしたのに! ドキドキするのに! もっとときめいていたいのにっ!』
千歌『そう思うとすぐに、すぅって気持ちが薄れて、別の千歌のところに行っちゃうんだもん!』
千歌『そんなの、そんなの、悔しいじゃん!』ギュッ
梨子「そうだね、壁ドンは、ドキドキして嬉しくて、怖くて、でも幸せで―――とっても複雑なものだもの」
千歌『そ、そうだ梨子ちゃん、他の千歌にもやってよ、そうすれば――』
梨子「でもね」
梨子「壁ドンは、おひとり様向けなの」
梨子「色んな感情を一度に抱ける……1人の人間じゃないと、真の壁ドンはできないのよ」
千歌『ぅ……』
梨子「だからね千歌ちゃん」
梨子「1つになった後で、もっとしましょう……?」ササヤキ
千歌『………ハイ///』
パアアアアアア
千歌1『あア……もう……おわ……り……かア……』シュウウウ……
うちっちー「し、信じられないっ! 『同化』が解けたっ!!」
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:16:40.20 ID:i5gu9J0q0
千歌「……」クラリ
梨子「わわっ、千歌ちゃん!?」ダキッ
うちっちー「果南の時と同じさ。寝かせておこう」
うちっちー「さて、と」
MIRROR『……』ニコ
梨子「封印……されてくれるよね、MIRROR」
MIRROR『……』コクン
うちっちー「さくらうち、あれを」
梨子「……うん」
梨子『闇の力を秘めし「鍵」よ! 真の姿を我の前に示せ――』
梨子『契約のもとさくらうちが命じる―――』
梨子『レリーーーーーズ!!』パシッ
うちっちー「よしっ、封印だ!」
梨子『汝の在るべき姿に戻れ―――』クルクル
梨子『クロウカーーーード!!』パアア
MIRROR『……』スゥ
シュルシュルシュル
シュウウウウン……
カード「」フワッ
梨子「な、なんとかなったぁ……」パシッ
ドタドタドタ
善子「り、リリー、やったのね!」バンッ
鞠莉「あの娘たちが急にシュンって消えたから……!」
梨子「2人とも! 無事だったんだね!」
善子「って、なんか千歌さん顔赤いんだけど……大丈夫?」
梨子「う、うう、思い出したら――」
梨子「は、恥ずかしいよぉっ!」アタマカカエ
善子「え、ちょっとリリー!?」
うちっちー「……今さらなんだよなあ」ヤレヤレ
☆ ☆ ☆
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:17:37.65 ID:i5gu9J0q0
善子「リリー……あなたねえ……」ジトー
梨子「ちょっと! どうして言っちゃうのうちっちー!」ガクガク
うちっちー「ゆ、揺らすのは胸だけにしてよさくらうち」
梨子「この不純妖精!」
うちっちー「今回ばかりは君に言われたくないよ」
鞠莉「はー……、あのdiaryはやっぱり……」
善子「リリー、千歌さんのこと好きなの?」ウルッ
梨子「違います違います! そんなんじゃありません!」
うちっちー「ほんとにー? あの時の君ったら、ほんとにどすけ――」
梨子「うちっちーは黙っててっ!」
鞠莉「とにかく、皆無事でなによりね! またご飯でもいきましょ! 千歌っちも一緒に!」
梨子「そうですね……。はあ、千歌ちゃんにも説明しなきゃ……」
善子「私あんまり活躍できなかった……」シュン
うちっちー「何を言ってるんだい。善子と鞠莉が下で抑えてくれていたからこそじゃないか」
善子「うちっちー……!」
鞠莉「Thank you! うちっちーは紳士なのね!」
うちっちー「だろう? ほら、お礼にボクを挟んでくれたまえよ。その豊満ボディでね」
善子「台無しよ!」
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:18:22.17 ID:i5gu9J0q0
千歌「ん……んぅ……?」パチクリ
梨子「あ、千歌ちゃん、目が覚めたんだね! ごめんね、私のあげた万華鏡が――」
千歌「あ……」
千歌「……」
千歌「梨子ちゃん///」テレッ
鞠莉「……」
うちっちー「……」
梨子「」ダラダラ
善子「リリー」ジト
梨子「他意はなかったのぉぉーーー!!」ダダッ
千歌「あっ、梨子ちゃん待って! 梨子ちゃーーん!!」ダダッ
鞠莉「これは波乱の予感……なんてねシャイニー☆」キラッ
第3話「うすだいだいの万華鏡」終
♪ ♪ ♪
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:19:06.34 ID:i5gu9J0q0
スゥ……スゥ……ゴロン……
ルビィ(今日も失敗しちゃったなあ……)
ルビィ(どうしていつもこうなんだろう……)
ルビィ(明日は……きっと……もっとちゃんと……)
ルビィ「……」スゥ…スゥ……
ルビィ『……』
ルビィ『……あれ? ルビィ布団に入ったはずなのに……なんだろう、この黒い場所……』
『……ガ………シイカ……』
ルビィ『ぴぎっ!? な、なにかいるよぉ……!』
『チカラガ……ホシイカ……』
ルビィ『ち、力……?』
『アネニ……カテルヨウナ……スベテヲ……テニデキルヨウナ……』
ルビィ『すべてを、手に……?』
『ソウダ……チカラガ……ホシイカ……』
ルビィ『うゅ……う、うん! もう弱いルビィは嫌だもん! 強くなりたいんだもん! だから――』
ルビィ『力がほちい!!』
『……ククッ』
☆ ☆ ☆
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:20:23.69 ID:i5gu9J0q0
第4話
「仁義なきエンドレス・ラグナロク」
梨子「ふんふんふーん♪」
うちっちー「なんだかご機嫌じゃないか、さくらうち」
梨子「そう見える?」ニコニコ
うちっちー「……気持ち悪いくらいそう見えるよ」ヒキ
梨子の部屋の壁『今日はご友人とお出掛けでしたね』
梨子「そうなの! よっちゃんでしょ、鞠莉さんと果南さんでしょ、そしてなんと――」
梨子「ダイヤさんも来るんだって!」キャー
梨子(今日は土曜日。前々からお茶会メンバーで出掛ける予定だったんです)
梨子「あ、お土産買ってきてあげるね!」ニコニコ
うちっちー「うへえ、ほんとにご機嫌だね。……ダイヤって、いつも話に出てくる生徒会長か」
梨子の部屋の壁『随分と熱を上げているようですね』
梨子「うん、知り合ってからしばらく経つし、仲良くなりたいな」
うちっちー「お得意のフェロモン攻撃を仕掛けてやればいいじゃないか」
梨子「そういう意味じゃありません! それにフェロモンって何?」キッ
うちっちー「千歌の件は?」
梨子「うっ……」
梨子の部屋の壁『最近は毎晩のように千歌さんとお話していますね』
うちっちー「善子に刺されないようにね」
梨子「よっちゃんが? どうして?」ポカン
うちっちー「あー、可哀想に。さくらうちの色気にあてられたばかりに……」オヨヨ
梨子「ちょっと、変なこと言わないで」ジト
梨子「とにかく、ダイヤさんは常識人枠なの! ほんとに貴重なんだから……」
うちっちー「おや、まるで自分が常識人側にいるかのような口ぶり」
梨子「……もう、やっぱりお土産なし!」フン
うちっちー「わかった、悪かった、悪かったからそこは頼むよさくらうち!」
☆ ☆ ☆
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:21:35.02 ID:i5gu9J0q0
ザワザワ……ザワザワ……
梨子「えっ……ダイヤさん途中で帰っちゃうんですか?」
鞠莉「そうなのよ、このお馬鹿さん、せっかくのお出掛けなのにSweetsがどうたらって……」
ダイヤ「今日発売の限定プリンですのよ!! 買わずにいられますでしょうか、いやいられますまい! 反語ですわ!」クワッ
鞠莉「ちょ、ダイヤ近い近い……」
梨子(ダイヤさん、こんなにテンション高かったっけ……)
果南「ダイヤはプリンに目がないんだよ。あとシスコン」
梨子「姉妹がいるんですか?」
ダイヤ「ええ! ルビィというのですが、それはそれは珠のよう――いえ、不肖の妹ですわ」キリッ
善子「今さら真面目な顔しても遅いわよ」
ダイヤ「う、うるさいですわね!」
鞠莉「ルビィと言えばね、ダイヤったら、すっごい量の写真を手帳に入れて持ち歩いてるのよ」
梨子「へえ……! せっかくなので妹さん、見たいです!」
ダイヤ「なんだかお恥ずかしいので……少し見たらすぐ返してくださいね」ハイ
ペラッ
梨子(うわあ、可愛い! すごく大人しそうだし、なんだか小動物みたい)
善子「ちょっと、ルビィの写真、私にも見せてよ!」グイッ
梨子「あ、そんな引っ張ったら……!」グラッ
手帳「」ポトッ
写真「」バサササササアアアアア
ダイヤ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:22:20.47 ID:i5gu9J0q0
善子「ご、ごめんなさいダイヤさん! って、これ……」
果南「うわっ、ルビィの写真ばっかり」
梨子「でも、何だかアングルが変な気が……」
鞠莉「これ盗撮ね。いつもドローンで果南の写真を撮ってるからわかるわ」
果南「えっ」
ダイヤ「と、盗撮ですって!? ちちちちが、ちが、違いますわ!」アセアセ
梨子(誤魔化すの下手すぎるよ……)ホロリ
ダイヤ「わた、わたくしはこの辺で! 限定抹茶プリンが店頭で待っておりますので!」タタッ
善子「……行っちゃったけど」
梨子「ああ、ダイヤさんのイメージが……」
鞠莉「うふふ、ダイヤも可愛いところあるわよね!」
鞠莉「じゃあ、気を取り直して私たちも――」
果南「鞠莉はこの後大事な話があるから」ガシッ
鞠莉「」
梨子「ご愁傷さまです、鞠莉さん」
善子「ドローンとお金の無駄遣いね」
☆ ☆ ☆
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:23:16.95 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「それで、結局善子と2人でカフェに行ってきたってわけだ」
梨子「そうなの。はあ……ダイヤさんも変な人だった……」ガックリ
うちっちー「妹相手とはまた業が深いね。ところでさくらうち、そのルビィって娘の写真、取ってきてくれただろうね」
梨子「え、全部返したけど」
うちっちー「君がそんなに無能だとは思わなかった」
梨子「ほんっと不純」
うちっちー「褒め言葉さ」
梨子の部屋の壁『しかし残念でしたね。せっかくの土曜日でしたのに』
梨子「あはは……でも、よっちゃんとのお話も楽しかったし、大丈夫」
梨子「あ、そうだ。お土産があるの。前から欲しがってた柑橘系のスプレーだよ」
梨子の部屋の壁『ありがとうございます、さくらうち……! さっそくかけて頂けますか?』
梨子「うん!」
シュッシュッ
梨子の部屋の壁『ああ……いいですよ……もう少し下に……ええ、最高です……』
梨子「そ、そう? よかった///」ドキドキ
うちっちー「……何回見てもさっぱりわからないよ」ハア
うちっちー「さくらうち、ボクにはお土産はないのかい?」
梨子「うちっちーにはあげないって言ったでしょ?」
うちっちー「なっ!? あれ本気だったのかい!? なんてむごい……」
梨子「うそうそ、買ってきたよ。ほら、これ」ガサッ
うちっちー「プリン?」
梨子「帰りに寄ったの。限定のは売り切れてて、普通のプリンなんだけどね」
うちっちー「ああ、信じてたよさくらうち!」ジーン
梨子「もう、いちいち大袈裟なんだから」クス
梨子「冷蔵庫に入れておくから、食べたいときは言ってね」
☆ ☆ ☆
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:24:14.08 ID:i5gu9J0q0
チュンチュン……チュンチュン……
梨子「あれ、ない、ない!」ガサゴソ
梨子ママ「どうしたの梨子? 何か探し物?」
梨子「お母さん、冷蔵庫に入れてあったプリン知らない?」
梨子ママ「プリン……? そんなの入ってたかしら」
梨子「え、食べないでねって昨日の夜に言ったよ!」
梨子ママ「そ、そうだったかしら……」
梨子(どういうことなの……?)
梨子「と、いうことなんだけど――」
うちっちー「プリンがないって!? それは一大事だ!」
梨子「うん、お母さんも食べてないって言うし、絶対なくなるはずないんだけど……」
うちっちー「不可解な事件……むむ、これはひょっとして……」
梨子「え、嘘、『クロウカード』の仕業ってこと?」
うちっちー「可能性の話さ」
梨子の部屋の壁『プリンだけじゃありません。昨日いただいたスプレーもなくなっているようです……』
梨子「あれはこの部屋から動かしてもいないはずなのに……」
うちっちー「これはいよいよ怪しくなってきたね」
梨子「でも、気づかれずに物を盗るクロウカードなんてあるの?」
うちっちー「『SHADOW』あたりの悪戯かな?」
梨子「その『SHADOW』っていうのは―――」
ピコンッ
梨子の部屋の壁『さくらうち、何やら携帯電話が光っているようですが』
梨子「え、あ、うん……よっちゃんからだ」スッスッ
堕天使†ヨハネ『ちょっとリリー、もう待ち合わせの時間よ。どうしたの?』
りじちょー☆『寝坊かしらー?』
梨子「え、待ち合わせ……?」
うちっちー「今日も約束をしていたのかい?」
梨子「ううん、してない……」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:25:03.35 ID:i5gu9J0q0
ピコンッ
堕天使†ヨハネ『体調悪かったりしないでしょうね。大丈夫?』
果南『もししんどかったら無理しちゃだめだよ』
梨子「ど、どういうこと?」スッスッ
さくらりこ『ごめんなさい、今日も出掛けるんでしたっけ?』
堕天使†ヨハネ『何言ってるのよ。今日は初めて生徒会長と一緒に出掛けるんだってはしゃいでたじゃない』
りじちょー☆『まあまあ、忘れることくらいあるわよ、ね?』
果南『うん、特に予定があるわけでもないし、ゆっくり待ってるよー』
梨子「……」
梨子「初めてダイヤさんと出掛ける……? だって昨日も……」
うちっちー「……もしかして」
梨子「うちっちー?」
うちっちー「さくらうち、携帯で日付を確認してみてくれるかい?」
梨子「え、うん……今日は……ど、土曜日!? いやいや、土曜日は昨日だったよね?」
うちっちー「やっぱりだ」
うちっちー「今回のカードは『TIME』」
梨子の部屋の壁『時間を司るカードですね』
梨子「それって……っ! じゃあ、ひょっとして……!」
うちっちー「ああ。時間が、巻き戻っている!!」
☆ ☆ ☆
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:25:57.02 ID:i5gu9J0q0
梨子「お、お待たせしました……!」ゼエゼエ
善子「遅いわよリリー!」
梨子「ごめんなさい!」
果南「お店にいたし、大丈夫だよ。でも、予定忘れるなんて梨子も案外おっちょこちょいだね」アハハ
梨子「いやあ、その……あはは」
梨子(うちっちーは「昨日と違う行動をとる人を探せ」って言ってたけど……)
――うちっちー『時間が巻き戻ったことを、普通の人は覚えていないんだ』
――うちっちー『魔力の多いさくらうちと、『TIME』を使った人を除いて、ね』
――うちっちー『だから何もなければ、普通の人は全く同じ行動をとり続けるはずなんだ』
――うちっちー『「昨日」と違う行動をする人間……そいつが犯人さ』
梨子(そんなこと言われても、遅刻した時点で状況も全部変わっちゃってるよ……)
鞠莉「ほらほら、せっかく揃ったんだから行きましょ」
梨子「あれ、ダイヤさんは?」
善子「先に帰っちゃったわよ。プリンを買いたいって」ハア
果南「ごめんね梨子。ダイヤったら、プリンのことになると見境ないんだ」
梨子「そ、そうなんですね……」
梨子(ここは変わってない……ダイヤさんじゃなかったってことかな)
鞠莉「準備はOK? じゃあ皆で果南の家にGO GO!」
梨子「果南さんの家?」
☆ ☆ ☆
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:27:02.50 ID:i5gu9J0q0
果南「皆ー、ウェットスーツはちゃんと着られた? 手伝うよー」
梨子「う、うぅ……恥ずかしい……」ピチピチ
善子「そう? 衣装の方がよっぽどじゃない?」
梨子「あれも恥ずかしいんだってば!」
果南「おー、梨子似合ってるね」ピチピチボイン
鞠莉「やっぱり梨子はエロスを持ってるわよね!」ピチピチボイン
梨子「……よっちゃん」
善子「ええ、言いたいことはわかるわ、それじゃあ、せーのっ」
よしりこ「「えっろ」」
ザザア……ザザア……
果南「ボンベがこれで、使い方は――」
梨子(ダイビング、か……。何もかも昨日と違う……)
梨子(私が遅れちゃったから、ダイヤさんは盗撮がばれないし、鞠莉さんも口を滑らさないし)
果南「梨子、聞いてる? 安全に関わるから、ちゃんと聞くんだよ」
梨子「あ、ご、ごめんなさい!」アセ
果南「今が3時だから、だいたい30分くらい潜って、3時半には戻ってこようね」
鞠莉「OK! 果南についていけばいいんでしょ?」
果南「そういうこと! 善子と梨子は初めてだから、ゆっくりいくね」
善子「ヨハネよ。そうしてもらえると助かるわ」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:29:10.11 ID:i5gu9J0q0
果南「よーしっ! じゃあ海へ飛び込むぞーっ!」バシャン
善子「え、えいっ」バシャ
梨子「わわっ、2人とも勇気あるなぁ……」ビクビク
梨子(色々考えないといけないんだけど、ここまで来たら行くしかないよね)
鞠莉「なーに怖がってるの、梨子!」ドンッ
梨子「え、わっ、きゃあああああ――――」
梨子(もう、鞠莉さんってば乱暴なんだから! せめて痛くないといいなあ―――)
梨子「ああああああ―――――」
梨子(――あれ、海面が、全然近づいてこない……え、私浮いてる?)
梨子(むしろ、だんだん遠ざかって―――)
キイイイィィィィィィン……
梨子「―――――ああああああああ!」ガバッ
うちっちー「さくらうちっ!」
梨子「えっ、うちっちー!? ど、どうなったの!? 私、さっきまでウェットスーツで――」
うちっちー「まずは落ち着いて、周りを見るんだ。あとそのウェットスーツについて詳しく」
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:29:38.02 ID:i5gu9J0q0
梨子(周り、周り……って!)
梨子「私の部屋? しかも夜だし……」
うちっちー「そうさ。今は夜の0時。しかも『土曜日の0時』さ。あとそのウェットスーツについて詳しく」
梨子「土曜日の……って、それって!」ハッ
梨子の部屋の壁『また、時間が……』
梨子「巻き戻った……!」
梨子「で、でも昨日は、いや『前回』は何も気づかなかったよね?」
うちっちー「ああ、たぶん寝ている間に時間が巻き戻ったんだ。……ねえ、ウェットス――」
梨子「黙って」
うちっちー「はい」
梨子「前回は夜だった。それなのに、今回はこんな昼間に……」
うちっちー「さくらうち、巻き戻った時間は覚えているかい?」
梨子「確か、3時ごろだったよ」
うちっちー「3時ごろ……その時間に何かがあったんだ」
梨子「何か……」
梨子の部屋の壁『カードを使った人物が、時を巻き戻したくなるような「何か」ですね』
うちっちー「ああ、さくらうちは3時までにおかしな行動をする人を見つけるんだ!」
梨子「ってことは、また待ち合わせ……?」ハア
☆ ☆ ☆
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:30:33.30 ID:i5gu9J0q0
果南「よし、全員集まったね」
梨子(3回目……。最初はあんなに楽しみだったのに、なんだか気が滅入っちゃうな)
善子「あれ、生徒会長は?」
梨子「……え?」
梨子(本当だ! ダイヤさんがいない!)
鞠莉「なんだか今朝すごい剣幕で電話が来たのよ」
果南「何でもプリンがどうとか……」
梨子(今日は私は遅刻していない。でも、ダイヤさんの行動だけが変わってるんだよね)
梨子「じゃあ、犯人はダイヤさん……?」ボソッ
善子「……犯人?」ピク
梨子「え、あっ、えっと、そのー……」
果南「何だか物騒だね。何かあったの?」
梨子「そういうわけじゃないんですけど」
鞠莉「梨子、あなたひょっとしてまた……」
善子「クロウカード! そうなのね!」
梨子「えっと、いやあ、まあ」
善子「やっぱり! 何かあったらちゃんと言ってって言ってるでしょ!」プンプン
果南「そうそう。私たちに隠したって、いいことないよ」
梨子「でも、迷惑が……」
鞠莉「Oh、まだそんなこと言ってるのね! 迷惑なんて思ったことないわ!」ビシッ
善子「そうよ。マリーなんて、勝手に衣装作って来てるだけじゃない」
鞠莉「あら、そんなこというなら、今回は善子の衣装はなしね」
善子「ごめんなさい。……あ、それとヨハネよ!」
梨子「皆……!」ウルッ
果南「それで、今度はダイヤなの?」
梨子「まだわからないんですけど―――」
☆ ☆ ☆
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:31:41.11 ID:i5gu9J0q0
善子「時が巻き戻ってる?」キラキラ
梨子「本当に大変なんだからね! 興奮しない!」
果南「記憶がないからわかんないなあ……。それで、その『TIME』ってカードが、ダイヤに憑いてるかもしれないってこと?」
梨子「それはまだわかりません。でも、ダイヤさんの行動が変わってて……」
鞠莉「なるほど。記憶がないなら行動は変わらない、そういうことね!」
梨子「はい、ダイヤさんが3時ごろ何をしているかわかればいいんですけど」
鞠莉「OK! 電話してみるわね!」
プルルルル
鞠莉『シャイニー☆ プリティボン――』
ブツッ、ツー…ツー…
梨子「真面目にやってください」
鞠莉「Oh, sorry」
プルルルル
鞠莉「小原と申します」
善子「んふっ」
鞠莉「―――ええ、えっ? ……ええ、わかったわ」
ピッ
梨子「何かわかりましたか?」
鞠莉「ダイヤ、プリン食べるって。それしか言わなくて少し怖かったんだけど」
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:32:41.34 ID:i5gu9J0q0
梨子「プリンって限定の……?」
鞠莉「ええ、今日発売らしいのよ。だから買いたかったみたい」
果南「ダイヤはプリンに目がないからね」
梨子(限定プリンを買うことは変わらないんだ……)
善子「それでそれを馬鹿正直に3時に……? どこの小学生よ」
梨子「でも、何で時を巻き戻さないといけなかったんだろう」
果南「何度も食べたいとか?」ウーン
鞠莉「欲張りお腹でかなんと一緒にしちゃ Non Non よ!」
果南「それ言うのやめて……」ガク
善子「それか、食べられなかったとか」
梨子「そんなに食べたかったのかな……」
果南「でも、プリンのことしか言わないっていうの、気になるね」
善子「そうね。『カード』に同化されてるとき、そうなるもの」
「「うーん……」」
鞠莉「これ以上は考えても仕方ないわね! いつものよ!」
善子「いつものって、やっぱり……」
梨子「私たち、色んなお家に乗り込みすぎじゃないかなあ」ハア
☆ ☆ ☆
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:33:36.92 ID:i5gu9J0q0
ピンポーン……
ダイヤ『はい、どちら様でしょうか』
鞠莉「シャイニー☆」キャハ
ブツッ
ガチャ
ダイヤ「何しに来たんですの?」
鞠莉「私たちよりプリンが大事な薄情ダイヤちゃんに会いに来たの!」
ダイヤ『……』
ダイヤ『プリン……プリン……』ボー
梨子「……!」ゾワ
梨子(プリンの話になった途端、何だか雰囲気が変わった!)
ダイヤ『わたくしは食べねばなりません。プリン愛好家として、いえ、黒澤家長女として!』
善子「そんなに食べたいならすぐに食べればいいじゃない」
ダイヤ『いいえ! 古今東西おやつは3時と相場が決まっておりますの!』クワッ
梨子(そんなことないと思うけど……)
ダイヤ『とにかく! わたくしは3時に限定抹茶プリンを食べねばなりません』
ダイヤ『だと言うのに、何度繰り返しても、何度繰り返してもあの「影」が―――!!!』
梨子「うっ……」ゾワワワワ
梨子(なんだか、怖い……)
果南「梨子、大丈夫?」
梨子「は、はい、なんとか」
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:34:44.56 ID:i5gu9J0q0
ダイヤ『―――ふぅ』
ダイヤ『ああ、ちょうどいいところに。あなたたちは、わたくしを手伝ってくれますのよね?』ニコニコ
梨子「手伝う……?」
ダイヤ『ええ。抹茶プリンを守りし、選ばれし少女たち―――輝きの勇者たちよ!』ビシッ
「「「……」」」
善子「は?」
ダイヤ『ええ、あなたたちが来た理由はわかっています。わたくしのプリンを守ってくれるのでしょう?』
果南「ちょっと、話が見えないんだけど……」
ダイヤ『わたくしのプリンは冷蔵庫にあります。これを3時までに死守してわたくしはプリンを食べるのです』
ダイヤ『それなのに、いつも……いつもあの憎き影に盗られてしまうのですわ!』
鞠莉「よくわからないけど、その『影』からプリンを守ればいいのね!」
ダイヤ『ええ、わたくしは何をしてでもプリンを食べなければなりませんの』
梨子(ダイヤさんはプリンを食べるために時間を巻き戻している……『TIME』を使って)
梨子(じゃあ、プリンを食べることができたら……?)
梨子(きっと「願い」はなくなる。時間を巻き戻す必要はなくなる! カードの『同化』が解ける……?)
善子「リリー、これって……」
梨子「うん、今はダイヤさんに協力した方がいいみたい」
果南「冷蔵庫を見張っていればいいんでしょ? そんなに難しくないんじゃ……」
鞠莉「油断は禁物よ。梨子の話が正しければ、ダイヤは2回も失敗してるんだから」
ダイヤ『とにかく、プリン防衛作戦、開始ですわぁ!』
☆ ☆ ☆
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:36:00.17 ID:i5gu9J0q0
カチッコチッ……カチッコチッ……
果南「スゥ……スゥ……」
鞠莉「……」ソワソワ
善子「……」スマホポチポチ
梨子「……」
梨子(暇だなあ……。このお家、壁も和風でお洒落だし、お話したいなあ)
梨子(でも、流石に皆の前では、ね)
梨子「ね、ねえ皆」
果南「何!? なんかあった!?」ガバッ
梨子「い、いえ、まだ……」
果南「なーんだ、びっくりした」グデン
善子「何も起きないわね」
梨子「もうすぐ3時なんだけど……」
鞠莉「まあ、これでダイヤがプリンを食べられるならいいんじゃない?」
果南「っていうかさ、ほんとに3時になるまで待たなきゃダメなの?」
ダイヤ『さっきも言いましたわ! おやつは3時ですの! 3時前に口をつけるなど言語道断っ!』
果南「あ、そうっすか……」ガクリ
ダイヤ『そろそろ時間ですわね……』
善子「ねえ、影がプリンを盗るって言ってたわよね。心当たりある?」
梨子「うちっちーが『SHADOW』ってカードがあるって言ってたから、それかなあ」
果南「とにかく、これが最後の瞬間だね」
鞠莉「ええ! ダイヤがスプーンを口に運んでMission終了ね!」
ダイヤ『ああ……っ、麗しき抹茶プリン様……っ、緊張の一瞬ですわぁ……っ!!』ゴクリ
ダイヤ『それでは、いただきま――――』
ドゴオオオオオオォォォォォォッッッ!!!
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:37:34.60 ID:i5gu9J0q0
梨子「きゃああああああっ!!」
果南「な、なに、爆発!?」
鞠莉「あ、ああ、あれ……!」
善子「壁に、穴が……!」
黒澤家の水墨画が描いてある壁『』グシャア
梨子「あ、あああ、あああああああ……!!」ガクッ
梨子「まだ、まだお話できてなかったのに……っ!」ポロポロ
果南「え、な、何の話!?」
善子「たぶん壁の話」
鞠莉「えぇ……」
ダイヤ『クッ……! 来るなら来なさい! わたくしは、このプリンを――』
――瞬間、風が吹いた。
壁に開いた穴からびゅうと飛び込んだつむじ風が、紅い弧を描く。
余談であるが、梨子の最近のお気に入りは同級生の曜が作るオムライスである。
毎日昼休みにおかず交換をしているうちに、すっかりトリコリコになってしまったのだ。
今、眼前で閃く紅い影は、まさにそのケチャップの如き紅であった。
知らず知らずのうちに、梨子の舌は記憶の中のケチャップを舐めとっていた。
トマトのような青臭さと、砂糖のように甘い紅。
梨子は「影」の正体について、嗚呼、年下の小さな可愛い女の子なんだろうな、と期待せずにはいられなかったのである。
ダイヤ『ぴぎゃあああああああ!!』
梨子「だ、ダイヤさん!」ハッ
ダイヤ『ああ、ああああ……! わたくしの抹茶プリンんんんんんっ!!』
果南「あ、し、しまった!」
ダイヤ『許せません、許せませんわあああ! こうなったら、もう一度――――!』
梨子「だ、ダメえええ!」ダッ
ダイヤ『アアアアアァァァァァッッッ!!!』
キイイイィィィィィィン………
梨子「……」ナミダメ
うちっちー「おかえり、さくらうち。何かわかったかい?」
梨子「うん、一応……」
☆ ☆ ☆
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:38:30.24 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「色付きの影……? それはたぶん『SHADOW』じゃないな」
梨子「え、そうなの?」
うちっちー「ああ。『SHADOW』は文字通り影なんだ。人の影に潜むことはできても、そんなカラフルにはなれないよ」
梨子「じゃあ、なんだったんだろう……」
うちっちー「うーむ、直接見てみないとね」
梨子「それに、あの場にカードが2枚あったってことなのかな」
うちっちー「そうかもしれない、どちらにしても厄介そうだ。今回はボクもついていくよ」
梨子「行ってきます……」ガチャリ
梨子ママ「気を付けてねー」
梨子「これで待ち合わせ4回目だよ……」
うちっちー「いいじゃないか。今回は最初から作戦会議だ」
梨子「まあ、それはそうだけど。場所も変えたから気分も変わるかな……」
テクテク
千歌「あっ、梨子ちゃん!!」パアア
梨子(え、千歌ちゃん……? あ、そうか、待ち合わせ場所を変えて、通る道が変わったから……)
梨子「千歌ちゃん、どうしたの? って、その犬近づけないで!」
千歌「えー、散歩してただけなのになあ。ひどいよ、ねー、しいたけ?」
しいたけ「バウッ」
梨子「ひいぃっ」ビクッ
うちっちー「あれ、さくらうちは犬が苦手なのかい?」ヒョコ
千歌「あーっ! うちっちーだ!」
うちっちー「やあ千歌。この前の事件以来だね」
千歌「久しぶり、うちっちー! でも梨子ちゃんがうちっちーを連れて出掛けるってことは……」
千歌「事件の香り、なのだ!」ピョコン
☆ ☆ ☆
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:39:13.66 ID:i5gu9J0q0
善子「それで、千歌さんを連れてきたってわけね」ムー
千歌「私は梨子ちゃんのお隣さんで友達だもん」ムー
果南「こらこら、喧嘩しないで」
鞠莉「そうよ。梨子の話を聞く限り、私たち4人とダイヤでもどうしようもなかったらしいじゃない」
梨子「壁を壊されて、驚いてたから……」
善子「1回見たから、今度はびびっちゃだめってことね」
うちっちー「そうさ。冷静に相手を見極めれば、きっと勝機が見える。大事なのは信じる心さ」
梨子「うちっちー、たまにはいいこと言うね」
うちっちー「だろう? そういえば鞠莉。今回の衣装は?」
鞠莉「梨子に連絡もらってすぐ手配したわ! 安心して、善子の袖はないわよ!」
うちっちー「ああ、勝ったな」
善子「台無しよ! あとヨハネ!」
ピンポーン……
ダイヤ『はい、どちら様でしょうか』
鞠莉「シャイニー☆」
ブツッ
ガチャッ
ダイヤ『お待ちしておりました、輝きの勇者たちよ!』
善子「それ、私の専売特許だと思うのよね」
☆ ☆ ☆
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:40:00.81 ID:i5gu9J0q0
カチッコチッ……
果南「さて、そろそろ3時だね」
鞠莉「じゃあ、作戦通りに!」
千歌「だ、大丈夫かなあ……」
梨子「千歌ちゃんは初めてだから、後ろの方に。私たちに隠れててね」
千歌「梨子ちゃん……///」
善子「むー……私たちも記憶ないんですけど……」
梨子「でも、よっちゃんは一緒に戦ってくれるんでしょ?」ニコ
善子「それは、そうだけど……///」
千歌「むー……」
善子「リリー! 『カード』の準備は?」
梨子「うん、そろそろ―――」
梨子『闇の力を秘めし「鍵」よ! 真の姿を我の前に示せ――』
梨子『契約のもとさくらうちが命じる―――』
梨子『レリーーーーーズ!!』パシッ
うちっちー「よし、これでいつでもカードが使える!」
果南「そろそろだよ……」
鞠莉「ええ。3時まであと3、2―――」
ダイヤ『今度こそプリンを食べますわ! いただきま―――』
ドゴオオオオオオォォォォォォ!!
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:40:44.69 ID:i5gu9J0q0
千歌「ひ、ひゃあああああああ!!」
果南「ほ、ほんとに壁が……!」
梨子「果南さんもこの前壊してましたよね」
果南「うっ、ごめん」
鞠莉「言ってる場合!? 作戦開始よ!」
梨子(まずは……)
梨子『FLY!』キイイイン
梨子「杖の羽ばたきで煙を晴らす!」バサッバサッ
ヒュオオオオオオ……
影『』シュババッ
梨子「見えた! よっちゃん!」
善子「ええ、プリンはこっちよ!!」ヒラヒラ
影『!!』バシュンッ
梨子(飛んでるわけではない、みたい。地面を走ってる……? でも―――)
善子「速っ……!」
鞠莉「善子伏せなさい! 私が相手―――きゃあああ!!」ドゴオッ
梨子「よっちゃん! 鞠莉さん!」
梨子(2人とも跳ね飛ばされた……! でも、時間を稼いでくれたから!)
梨子『WATERY!』キイイイイン
梨子(攻撃カードで動きを止める!)
WATERY『……オオォォォッッッ!!』シュルシュル
影『……ッ』ググッ
うちっちー「少しスピードが落ちた!!」
梨子「で、でも『WATERY』が速さについていけてないよ! どうしよう!」
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:42:00.57 ID:i5gu9J0q0
千歌(あわわわ、身体が動かないよ……! でも、皆はあんなに頑張ってる……!)
千歌「わ、私だって何かできるもん……!」フラフラ
影『ッ!』ヒュオオオオ
梨子「千歌ちゃん! 危ないっ!!」
千歌「いやあああああ」ズササッ
ポロポロコロコロ……
影『……?』
千歌「あ、千歌がいつも持ち歩いている飴が……!」
影『……アメ……アメ……ワタシノ……ルビィノ……』
―――それは、ほんの一秒にも満たない時間だった。
千歌の落とした飴が、彼女―――黒澤ルビィの琴線に触れた。
飴。大人が子どもに与える無償の愛の証。
幸運なことに、ルビィはそれを受け取ることのできる家庭に生まれ落ちた。
両親と姉妹の幸せな生活。その中で飴を独り占めするのは、先に生まれた姉だろうか。
否、妹である。
ルビィは容赦なく姉から飴を収奪し続けてきた。それは下の子だからという倫理観の暴力であった。
そんな環境下で醸成されるのは、名前の通り、宝石色の愛され体質。そして―――鈍く光る独占欲。
飴は全て私のもの。傲慢にも似たその感覚が、黒澤ルビィの足を止めた。
ダイヤ『る、ルビィ……?』
ルビィ『あはっ』
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:42:33.04 ID:i5gu9J0q0
果南「なっ……! 影はルビィだった……?」
鞠莉「ちょっとまって! あの足の筋肉! 普通じゃない!」
うちっちー「そうか! 『POWER』だ!」
梨子「『力』……?」
うちっちー「ああ、あのルビィって娘、カードの力で足の筋力が上がっているんだ!」
梨子「『POWER』はどうやって封印したらいいの?」
うちっちー「力比べと勝負事が好きなんだ! きっとルビィの目的を失敗に終わらせれば、『POWER』は諦めて出てくるはずだ!」
梨子(ルビィちゃんの目的……ダイヤさんのプリンを盗ること!)
梨子(ダイヤさんの目的は、プリンを食べること!)
梨子(それじゃあ、ダイヤさんがプリンを食べられれば、2枚とも封印できる!)グッ
ルビィ『うゅ……っ!』ダダッ
梨子『うぉ、WATE………』
梨子(と、止めなきゃ……! でも、間に合わ―――)
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:44:07.27 ID:i5gu9J0q0
ガガガッッッ
ルビィ『え……っ?』
果南「見えてしまったら怖くない。悪いけど、ここからは私が相手だよ」シュウウウ
ルビィ『―――うゅゅっ!!』ドゴオ
果南「くっ……重い蹴りだね!」
果南「プリンくらい、後で買ってあげる、よっと……!」ガシッ
ルビィ『お姉ちゃんのものはルビィのものだもん! 絶対渡さない!』ブンッ
ズガガガ゙ッ、バキィッッ
果南「どうして足技ばっかり……。舐めてるの?」キッ
ルビィ『ううん、ルビィは力をもらったの。全てを手に入れる力なんだよ』
ルビィ『だから、手は空けておかなくちゃ』ニコ
ドゴオオオッッ
果南「ぐうぅっ……!」ザザッ
善子「す、すごい、手が出せない……!」
梨子「ダイヤさん! 今のうちにプリンを……!」
ダイヤ『え、ええ、でも手が震えて、うまくフタが……!』
果南「ダイヤ早く! 抑えておくのも限界がある!」グググ
ルビィ『プリンはルビィが食べるんだもん!』サッ
果南「ルビィ! ごめんね……!」ブンッ
スカッ……
果南「え……?」
ルビィ『あはっ、そっちは残像だよ』フッ
果南「やられたっ!!」
善子「果南さんが抜かれたっ!!」
梨子「ダイヤさん! 早く!」
ダイヤ『もう駄目ですわ。もう1回、もう1回やりなおせば……』
梨子「そんな……っ!」
梨子(ああ……ルビィちゃんが近づいてくる! ダイヤさんも諦めてる! どうしたら、どうしたら―――)
黒澤家の水墨画が描いてある壁『さくら……う……ち……』
梨子「!!」
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:44:40.58 ID:i5gu9J0q0
水墨画の壁『諦めるのは……まだ……はやいですよ……』
梨子「水墨画の壁さん! まだ意識が……!」ヒシッ
水墨画の壁『黒澤ルビィに対抗する手段を、あなたはまだ持っています……』
梨子「そ、それって、何なの!? わかんない、わかんないよ!」
水墨画の壁『古代からの……言い伝えがあります……』
水墨画の壁『古代人は……壁や柱に文を書きますからね……よく知っています……』
水墨画の壁『目には目を……歯には歯を……』
梨子「目には目を、歯には歯を……!」
水墨画の壁『ええ、あなたなら大丈夫……きっと、対抗できる……』
水墨画の壁『未来へ一歩踏み出すことを、信じて……いま………す……』
水墨画の壁『』
梨子「う、うぐ、うううぅぅぅ……! でも、泣いてる暇なんてない……っ!」ポロポロ
うちっちー「……強くなったね、さくらうち」
梨子「まだ、戦える! 目には目を、歯には歯を! そして残像使いのルビィちゃんには―――」
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:45:26.24 ID:i5gu9J0q0
ルビィ『オラァッ!!』ドカアッ
千歌「きゃあああぁぁ!」
善子「ちょっと! キャラ変わっちゃってるじゃない! もう限界よ!」
梨子「あと少しだけ! 私に考えがあるの!」
鞠莉「何でもいいからすぐ試すわよ!」
梨子「わかった、じゃあ―――『WATERY』!」キイイイィィィン
シュウウウウゥゥゥゥ
果南「わっ! 部屋全体に、霧みたいな……!」
善子「これでダイヤさんを隠そうって言うのね!」
ダイヤ『手元が見えませんわぁ! プリンが食べられません!』
鞠莉「くっ、このわがまま撫子……!」
ルビィ『声のする方……こっち!』バシュンッ
千歌「わわっ、また来たよ!」
果南「行かせない!」ガシッ
ルビィ『うゅ……』ムッ
梨子「皆! ダイヤさんを移動させるよ!」
ルビィ『移動……無駄だよ、ルビィすぐ追いつくもん』ググッ
シュバババッ
果南「また行ったっ! だんだん霧も晴れてきてる!」
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:46:16.39 ID:i5gu9J0q0
鞠莉「止めて見せる!」
善子「私だって、リリーの相棒なんだから!」
ルビィ『ふふっ、善子ちゃん、教室で見るのと違うなあ』
善子「こっちだって必死なのよ!」ブンッ
ルビィ『あたらないよ』ヒョイ
ルビィ『それにルビィ、知ってるんだぁ。2人は囮。果南さんも囮。本命は奥の――』
千歌「ダイヤさん! 口開けて! ほら、あーん!」
ダイヤ『はい、あ――――』
ルビィ『あの人だって』シュバッ
ルビィ『プリン貰ったッッ!!』ガッ
スカッ……
ルビィ『え……』
梨子「ごめんね。それ、鏡像なの」バサッバサッ
ルビィ『て、天井近くに3人で……!』
千歌「あーん!」
ダイヤ「あーん……」パクッ
ダイヤ「ンまああああぁぁぁぁ!!!」キラキラ
ルビィ『……』
ルビィ『あ……ルビィ……負けちゃったんだ……』
ルビィ『やっぱり、お姉ちゃんのものは、お姉ちゃんのものだったんだね……』ホロリ
パアアアアアアア
うちっちー「やった! 2人の『同化』が解けるぞ!」
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:47:03.33 ID:i5gu9J0q0
善子「リリー、今のうちに!」
梨子「うんっ!」
梨子『汝の在るべき姿に戻れ―――』クルクル
梨子『クロウカーーーード!!』パアア
TIME『……』
POWER『……』
シュルシュルシュル……
シュゥゥゥウン
カード『』フワッ
梨子「2枚とも、封印完了!」パシッ
果南「あ゛ーーーーーー! 疲れたああああ!」バタン
鞠莉「お疲れ様、果南!」
梨子「本当にありがとうございます……! 果南さんがいてくれなかったら……」
果南「松浦家は代々武闘派でさ。これくらい平気平気」
梨子「よっちゃんたちも、ありがとね」
善子「打ち身ばっかりよ、あいたたた……でも、何とかなってよかったわ」
うちっちー「まったくだ。それにしてもやるじゃないか、さくらうち」
うちっちー「『WATERY』で作り出した霧に、『MIRROR』で偽の像を映し出すなんて」
梨子「壁さんが教えてくれたんだ。残像には、残像で返さないとねって」
うちっちー「『FLY』と合わせて3枚同時展開か、成長してるなあ。このまま胸も――」
梨子「隙あらばそれだよね、ほんと」
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:47:49.45 ID:i5gu9J0q0
ダイヤ「スゥ……スゥ……」
千歌「……」ポケー
梨子「千歌ちゃん、どうしたの?」
千歌「ね、ねえ梨子ちゃん、さっきの見てた?」
梨子「さっきの?」
千歌「私、私……!」
千歌「『あーん』ってしちゃった! ダイヤさんに! きゃー///」
梨子「へ?」
善子「んん?」
千歌「だって『あーん』だよ! 千歌そういうの曜ちゃんにしかしたことなかったのに!」
千歌「それに今だって膝枕だよ! ダイヤさん、生徒会長で網元さんだよ! それを千歌が膝枕!」キラキラ
千歌「この前の壁ドンとはまた違うんだけどさー……。うわあ、ダイヤさんの顔見るの恥ずかしい……っ!」カオマッカ
うちっちー「あー、えーっと、千歌ってそういう感じ?」
鞠莉「もう、恋に恋するって感じ? ウブでcuteね!」
千歌「そんなんじゃないよー! あ、そうだ! 放課後のお茶会、梨子ちゃんもダイヤさんもいるんだよね! 私も行っていいかなあ……」チラッ
鞠莉「Of course! 大歓迎よ! ね、善子!」
善子「ヨハネよ。あー、うん、いいんじゃない?」ポカン
千歌「やったあ! じゃあ月曜日からね!」クルクル
梨子「月曜日……。そっか、月曜日、ちゃんと来るんだ……」
梨子「はあ、なんかどっと疲れたかも……」グッタリ
☆ ☆ ☆
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:48:30.37 ID:i5gu9J0q0
ダイヤ「本当に申し訳ございませんでしたああっっ!!」ドゲザ
ルビィ「でしたあああっっ!」ドゲザ
梨子「いや、そこまでしなくても……」
千歌「そうだよ、頭上げて……?」
ダイヤ「しかし! 皆さんに怪我まで負わせて、それもプリンなどのために……」
善子「あ、普段はそこの理性は働くのね。よかった」
果南「まあまあ。私もやっちゃったしさ。お互い様だよ」
鞠莉「果南がそれ言うのおかしくなーい?」
梨子「あはは、私は本当に気にしてないので……」
ルビィ「お姉ちゃんと一緒にお詫びしますっ!」ボロボロ
善子「いいわよ別に」
ルビィ「うう、でも……!」
梨子(この前暴れてたのが嘘みたい)クス
ダイヤ「あ、で、では今度の土曜日に出掛けるなんていかがでしょうか! 何かご馳走させてくださいな」
ダイヤ「ほら、駅前の洋菓子屋で限定スイーツが―――」
「「「遠慮します」」」
善子「こんな週末戦争は、二度とごめんよ、なんてね!」ウインク
第4話「仁義なきエンドレス・ラグナロク」終
♪ ♪ ♪
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 23:59:50.44 ID:i5gu9J0q0
モグモグ……モグモグ……
果南「美味しいっ!」パア
鞠莉「当然ね! このマリーの手作りマフィンだもの!」
果南「でも鞠莉、何で急に手作りのお菓子なんか……」
鞠莉「だ、だって……」
果南「だって?」
鞠莉「果南に食べてほしくて…///」
果南「そっか。ありがと!」ニシシ
鞠莉「うふふ」ニコニコ
果南「じゃあ、帰るね!」
鞠莉「えっ」
果南「え、どうかした?」
鞠莉「いや、帰るって、もう? まだ来たばかりじゃない」
果南「だって、食べ終わったし……。あ、美味しかったよ!」
鞠莉「あ、う、うん」
果南「じゃあ、また今度お返しするね!」フリフリ
鞠莉「OK……」フリフリ
鞠莉「……」
鞠莉「……はあ」ウツムキ
鞠莉「……ぁぁぁああああーーーーーーもうっ!!」
鞠莉「あのバカナン!! バカ! バーカ!」プンプン
鞠莉「せっかく頑張ったのに! 美味しく食べてもらって、いい雰囲気にって思ったのにぃ……っ!」バンバン
鞠莉「……」
鞠莉「はぁ……。全く進展ないんだから」ジワ
鞠莉「もっと、こう―――」
鞠莉『Sweetな世界に浸りたいわよね……』
???『クスッ……』
☆ ☆ ☆
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:00:21.55 ID:C0VN0tby0
第5話
「スイーツ・パラダイスへようこそ」
うちっちー「……」ボー
梨子「うちっちー」
うちっちー「……」ボー
梨子「うちっちーったら!」
うちっちー「え、あ、何だい、さくらうち」ビクッ
梨子「もう、さっきからずっとぼーっとしてるよ。どうしたの?」
うちっちー「あー、『カード』もだいぶ集まって来たなと思ってね」
梨子「『FLY』『WATERY』『MIRROR』『POWER』『TIME』……5枚だもんね」
うちっちー「ああ、それと……」
梨子「私の『カードのお守り』、かあ」
梨子(去年拾ったカードのお守り……相変わらず模様の所が真っ黒なままなんだよね)
梨子「何のカードなんだろう……。ずっと汚れが取れないままなのかなあ」ペラッ
うちっちー「……」
梨子の部屋の壁『……』
梨子「でも、もう名前は書いてあるし、別にいいんだよね?」
うちっちー「……ああ、他の8枚さえ封印できれば大丈夫さ。封印されたカードが9枚になることに変わりはない」
梨子「カードが元の世界に戻ったら、この汚れもちゃんと取れるの?」
うちっちー「そのはずだよ」
梨子「よかった、ずっと汚れたままは、可哀想だもんね」フフ
うちっちー「……ああ、そうだね」
☆ ☆ ☆
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:00:53.73 ID:C0VN0tby0
千歌「美味しーーーい!」キラキラ
善子「もう少し落ち着いて食べなさいよね」
梨子「千歌ちゃん口の周りベタベタだよ……」フキフキ
千歌「ありがと梨子ちゃん! でもずるいよー、毎日放課後にこんな贅沢してたなんて!」
梨子「ごめんね。果南さんたちとは、『カード』がきっかけだったから……」
善子「よく考えたら、ずっとおごってもらってるわけなのよね。いいのかしら」
鞠莉「いいのよ、皆の幸せが私の幸せだもの! ねー、果南♪」
果南「ねー♪」ダキッ
ダイヤ「……」
梨子「……」
善子「……」
千歌「……ほぇー」
曜「あ、あ、あのさ! 私まで呼んでもらっちゃって、よかったの?」
梨子「今日は飛び込みお休みなんでしょ? 大丈夫だよ、曜ちゃん」
鞠莉「そうそう、relaxしていいのよ! ねー、果南♪」
果南「ねー、鞠莉♪」ニコニコ
ダイヤ「……」
梨子「……」
曜「……」
千歌「……ほわぁ」
善子「…………あっま」ボソッ
梨子(梨子です。果南さんがおかしくなりました。……また)
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:06:57.54 ID:C0VN0tby0
鞠莉「果南! あーん!」キャッキャッ
果南「あーん♪ わ、美味しいケーキ! ね、鞠莉……今すぐお礼、したいな」ササヤキ
鞠莉「きゃっ、もう、果南ったら!」デレデレ
曜「千歌ちゃん、見ちゃダメだよ」メオサエ
千歌「曜ちゃん放してぇ!」ジタバタ
善子「口の中がじゃりじゃりする……甘いぃ……」
梨子「よく食べられるね、よっちゃん。私、甘いのはもういいや……」
ダイヤ「確か鞠莉さんは紅茶はストレート派でした。ポットを取ってきましょうか」
梨子「ありがとうございます……」
鞠莉「はい果南、Sweetsの後にTeaはいかが?」
果南「ありがと鞠莉! わっ、甘い!」
鞠莉「今日はお砂糖たっぷりよ! 甘い気持ちになってほしくて……どうだったかしら?」ウワメヅカイ
果南「そんなの……朝、鞠莉に会ったときから私はずっと甘い気持ちだよ」イケボ
鞠莉「やぁん///」クネクネ
ダイヤ「……」
善子「……フッ、私は絶望の堕天使、ヨハネよ……」
梨子「現実逃避しないで!」
ダイヤ「いいですわね、我慢、我慢ですわよ……!」ボソボソ
善子「つっこんだら負け。それくらい私にだってわかるわよ」ボソボソ
梨子「でも、これはどう考えても―――」
「「「クロウカードのせいだよね……」」」
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:07:37.95 ID:C0VN0tby0
トントン
梨子(お客さん? こんな時に……!)
ダイヤ「はい、どなたでしょうか?」
ガチャ
ルビィ「お姉ちゃんいる……?」
ダイヤ「あらルビィ、それと花丸さんも」
梨子(ルビィちゃんのお友達かな? 手に持ってるのは……のっぽパン?)
花丸「えーっと、ルビィちゃんと善子ちゃんと同じクラスの国木田花丸です! よろしくお願いするずら!」ペコリ
梨子「ずら?」
花丸「あっ、お、オラまた……あっ///」
ルビィ「花丸ちゃんはそのままでいいんだよ」ニコニコ
花丸「で、でもぉ……」
ダイヤ「ルビィの言う通りですわ。自分に自信を持ちなさいな」
ダイヤ「……それで、どうしたんですの? 今日は帰りが遅れると伝えてあったはずですが」
ルビィ「これ持ってきたんだぁ!」ガサッ
曜「あ、ブラウニー! 去年私たちも作ったよね!」
千歌「ほんとだ、懐かしー!」
梨子「へえ……そんなお洒落な物つくるんだ」
曜「あ、そっか! 梨子ちゃん知らないもんね。毎年恒例でさー」
ルビィ「ルビィ、お姉ちゃんに食べてほしくて。あ、もちろん皆さんの分もあります!」
花丸「マルのはちょっと焦がしちゃって、苦くなっちゃって……。でもでも、ルビィちゃんのは甘くできたから、食べてあげてほしいずら!」
鞠莉「かなーん!」イチャイチャ
果南「鞠莉♪」イチャイチャ
「「「……」」」
「「「花丸ちゃんので」」」
花丸「えっ」
☆ ☆ ☆
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:08:06.69 ID:C0VN0tby0
ダイヤ「さて、あの2人は放っておいて黒澤家にお越しいただいたわけですが……」
梨子「ほら、うちっちーも。せっかく連れてきたんだから挨拶して」
花丸「わわっ、しゃべるぬいぐるみずら! 未来ずらー!」ツンツン
うちっちー「まったく、さくらうちはすぐにけしからん娘を見つけてくるね……! 最高だよ!」ジー
花丸「え、え、何のこと……?」タユン
梨子「気にしないで」ハア
ルビィ「ごめんなさい梨子さん、うっかり花丸ちゃんに少し話しちゃって……」
梨子「ううん、秘密って言ってなかったから、仕方ないよ」
曜「それにしても魔法少女かあ、梨子ちゃんだいたーん」ニヤニヤ
千歌「だいたーん!」ニヤニヤ
梨子「千歌ちゃんは前から知ってたでしょ!」
ダイヤ「わたくしたちの多くは梨子さんに救われたのです」
ルビィ「善子ちゃんもすごかったんだよ!」
花丸「へえ〜、善子ちゃんが」
善子「だからヨハネよ! 私はちょっと手伝うだけよ。リリーみたいに『カード』が使えるわけでもないし」
梨子「でも、いつも助かってるよ、ありがとう」ニコ
善子「……ぅ///」
花丸「善子ちゃんがいつも話してる「リリー」って、梨子さんのことだったずらね」
梨子「え、そんな話してるの……? ちょっとよっちゃん、変なこと言ってないよね?」
ルビィ「大丈夫です! いつもすっごく楽しそうに――」
善子「た、ただ名前出しただけよ、ね、ね!?」アセアセ
うちっちー「君たちも大概だと思うんだけどね」
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:08:45.63 ID:C0VN0tby0
うちっちー「それで、果南と鞠莉の豹変が『カード』のせいじゃないかって?」
梨子「うん。だって果南さん、あんなことしないと思うし……」
ダイヤ「ええ。間違っても『ねー♪』などと」
うちっちー「今のもう1回」
梨子「変なこと言わないで」
うちっちー「冗談じゃないか、冗談」
善子「……何のカードかとか、わからないの?」
うちっちー「情報が少なすぎる。ただ、『カード』のせいなのは間違いない」
千歌「どうして?」
うちっちー「カードがだいぶ集まって来たからね。ボクにも力が戻ってきているのさ」
花丸「力……」
うちっちー「ああ、ボクの感覚では、今活動しているカードが1枚ある」
曜「1枚なの? 2枚じゃなくて?」
うちっちー「1枚さ。おそらくその1枚が、果南と鞠莉、両方に影響しているんだ」
梨子「じゃあ、もう少し2人を観察してみるしかないってこと?」
うちっちー「ああ、それしかない。だからボクも学校に行―――そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃないか、さくらうち」
梨子「ちゃんと静かにしててよ?」
梨子(このとき私たちは知らなかったんです。浦女が、もう私たちの知っている学校ではなくなってしまったことを……)
☆ ☆ ☆
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:09:27.94 ID:C0VN0tby0
テクテクテク……
うちっちー「こちらうちっちー。夢にまで見た女子高に潜入します、どうぞ!」キャッキャッ
梨子「ふんっ!」ゴスッ
うちっちー「い、痛いじゃないか!」
梨子「『どうぞ!』じゃないよ『どうぞ!』じゃ! 静かにしてって言ったよね?」
千歌「でもさー、千歌たちの前なら大丈夫でしょ?」
梨子「それはそうだけど……」
梨子「とにかく、学校に着いたら静かにしててね?」
うちっちー「もちろんさ」
ザワザワ……ザワ……
千歌「……あれ、あんなの浦女にあったっけ? ほら、校門の横に……」
梨子「え、何あのやけに豪華なワゴン車」
梨子(何だか、甘い匂い……。お菓子が焼けるみたいな――)
鞠莉「あ! 2人ともー! Welcome to Mary's Kitchen!」ブンブン
梨子「ま、鞠莉さん!? その、これは……?」
鞠莉「うふふ、クレープ屋さん始めちゃった☆」
梨子「」
鞠莉「ほら買って買って!」
梨子「ど、どうして急に?」
鞠莉「やりたかったんだもの! 果南と2人でお菓子屋さん、私の夢だったのよ!」
梨子「学校は……?」
鞠莉「私は理事長なのよ? ねー、果南!」
果南「ねー♪」
梨子「ええ……」
果南「あ、千歌これ食べる? 焼きたて包みたてのみかんクレープだよ!」
千歌「み、みかんクレープ……!」ジュルリ
梨子「ちょっと千歌ちゃん!」
鞠莉「あら、千歌っち食べてくれるの? だったらマリーの魔法の粉で―――」サラサラ
梨子「―――っ」ゾワゾワ
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:10:08.81 ID:C0VN0tby0
梨子(え、い、今の悪寒は……?)
うちっちー(さくらうち、クロウカードだ! 気配が一瞬強くなった!)ボソッ
梨子「え……」
梨子(悪寒がしたのは鞠莉さんが粉を振った瞬間……! ってことは!)
千歌「いただきま――」
梨子「千歌ちゃんっ! ダメぇ!」バシッ
千歌「痛っ!」ベチャリ
梨子「はぁ……はぁ……っ!」
千歌「ちょっと梨子ちゃん何するの! せっかくのクレープが!」
梨子「それは食べちゃダメなの!」
果南「梨子、それはひどいんじゃない?」
鞠莉「ど、どうして……? せっかく作ったのに……」ウルウル
梨子「ぁ……」
果南「―――梨子」マガオ
梨子「ひぅ……っ!」
果南「鞠莉を泣かせたね?」ハイライトオフ
梨子「あ、あの、その―――」
果南「」ユラリ
うちっちー「さくらうち! 走れっ!」
梨子「……っ!」ダッ
果南「……」
果南「鞠莉」クルッ
果南「もう大丈夫。私が守ってあげるからね」
鞠莉「かなぁん……」ダキッ
果南「ほらほら、よしよし」
果南「あ、そうだ千歌」
千歌「へ?」
果南「クレープ、作り直すよ。食べていくよね?」
☆ ☆ ☆
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:10:48.37 ID:C0VN0tby0
梨子「はあっ、はあっ……!」
梨子(ど、どうしよう……! 千歌ちゃんおいてきちゃった……!)
うちっちー「あのままだったら果南と争いになっていたさ。さくらうちのせいじゃない」
梨子「で、でも……」
ガラララッ
曜「た、たすけてえええええっ!!」ダダダッ
梨子「曜ちゃん!?」
うちっちー「さくらうち! 危ない! そこをどくんだっ!」
ズドドドドドッ
ヨウチャーーーーーンッ マッテエエエエエエエ
アイヲウケトッテエエエエエエ……
梨子(クラスの子たちが曜ちゃんを追いかけてる!?)
ドドドドドドド……
梨子「……行っちゃった」
うちっちー「あー、さくらうち、君は随分とアグレッシブな学校に通ってるんだね」
梨子「いつもはこんなんじゃないの!」
グチャア……
梨子「うわ、教室がクレープの包み紙だらけ……ちゃんと捨てておかないと」サッサッサ
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:11:36.22 ID:C0VN0tby0
先生(♀)「あら? 桜内さんじゃない」
梨子(あ、あれは美人で有名な国語の先生! あの人なら真面目だから――)
梨子「せ、先生! 助かりました! 皆どこかに行っちゃって――……先生?」
先生(♀)「恋愛って、人生で最も大事なものだと思わない?」
梨子「へ……?」
先生(♀)「あの子たちはね、そういうものに一所懸命なの。先生として見守ってあげなきゃね」ウフフ
梨子「あ、あの、何を言ってるんですか?」
先生(♀)「ああっ、でも私もいい歳なのに……あっ」
梨子(『あっ』……?)
先生(♀)「ねえ、桜内さん……」スッ
梨子「えっ」ビクッ
先生(♀)「先生と生徒の禁断の恋って、いいと思わない……?」ササヤキ
梨子「」
うちっちー「……ほう」
梨子「し、し、失礼します///」ダッ
先生(♀)「あ、桜内さん!?」
梨子「ちょっと! 今のは逃げろって叫ぶところだったでしょ!!」
うちっちー「いやあ、見てるのも悪くないかなって」
梨子「この不純妖精!」
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:13:03.87 ID:C0VN0tby0
ロウカ トボトボ
梨子「うう、クラスがめちゃくちゃだよ……授業も始まらないし」
うちっちー「早いところまともな人を探した方がいいね」
梨子「皆どうしちゃったんだろう……」ハア
ルビィ「あ、梨子さん……っ!」
梨子「ルビィちゃん!」
タタタッ
ダキッ
ルビィ「よ、よか、よがっだでずううぅぅぅぅ」ポロポロ
梨子「ちょ、る、ルビィちゃん!? どうしたの!?」
ルビィ「お姉ちゃんがおかじくなっぢゃっでえぇぇ……」ポロポロ
梨子「ダイヤさんが……」
うちっちー「詳しく話してくれるかい?」
ルビィ「は、はいぃ……」グスッ
ルビィ「お姉ちゃんと一緒に登校してたんですけど……」
☆ ☆ ☆
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:13:40.81 ID:C0VN0tby0
ダイヤ「な、なんですの、あの派手なワゴン車は!?」
ルビィ「まりーずきっちん?」
ダイヤ「ま、ま、ま、鞠莉さんんんっ!!」タッタッタッ
鞠莉「Oh! ダイヤじゃない! ほらこれ、食べて?」
果南「美味しいよ!」
ダイヤ「果南さんまで! どういうことですか! こんなところでこんなこと!」
鞠莉「いいじゃない、ほら、甘ーいクレープよ?」
ダイヤ「よくありません! 全部片づけてさっさと教室に―――むぐっ」
鞠莉「ダイヤうるさーい」
果南「うんうん♪」ニコニコ
ルビィ(うゅ……果南さんが変な笑顔……)
ダイヤ「……」モグモグ
ルビィ「お、お姉ちゃん?」
ダイヤ「……」
ダイヤ「」
ダイヤ「……ルビィ」ハアハア
ルビィ「」
ルビィ「お、お姉ちゃん顔怖いよ……?」ビクビク
ダイヤ「ねね、お姉ちゃんと手繋ぎましょ?」
ルビィ「え、やだよ」
ダイヤ「そう言わずに、ほらその可愛らしいお手々を出して?」ハアハア
ルビィ「」ゾワリ
ダイヤ「ルビィ?」ハアハアハア
ダイヤ「ほら……お姉ちゃんに全部任せて……?」フーッ
ルビィ「ぴ、ぴ、ぴぎいいいいいいいいいっ!!!」ダダダッ
☆ ☆ ☆
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:14:28.93 ID:C0VN0tby0
ルビィ「う、うぅ……っ、ほんとに、怖くて……っ」グスグス
うちっちー「さすがに不憫だと言わざるを得ない」
梨子(そういえばダイヤさん、ルビィちゃんを盗撮してる変態さんだった……)
ルビィ「あのクレープ、どういうものなんですか……?」
梨子「たぶん『クロウカード』が絡んでいるんだと思うけど……」
うちっちー「ああ、諸君の尊い犠牲により、たぶん正体はわかった」
梨子「ほんとに!?」
うちっちー「おそらく『SWEET』のカードだ」
梨子「『甘い』カード? そんなのがあるの?」
うちっちー「ある。効果は単純だ。料理を甘くできる」
ルビィ「料理を、甘く」
梨子「あっ、クレープをつくるとき、鞠莉さんが「魔法の粉」って!」
うちっちー「『SWEET』の能力のことだろうね」
うちっちー「あのカードはただ味を甘くするだけじゃないんだ。さくらうち、教室の机の上を見たかい?」
梨子「机の上?」
梨子(確か、机の上には『Mary's kitchen』って書かれた包み紙があって……)
梨子「ということは、あのクレープを食べた人がおかしくなった?」
うちっちー「そうさ、『SWEET』の力でつくったお菓子は、それを食べた人間を甘い雰囲気に誘って、惚れやすくするんだ」
梨子「そ、そんな効果が……」
うちっちー「そして、鞠莉と『同化』して暴走した『SWEET』は、食べた人間を―――」
梨子「食べた人間を……?」ドキドキ
千歌「あ、梨子ちゃんみーつけた!」
梨子「」ビクッ
千歌「ひどいよ梨子ちゃん、置いていっちゃうなんて」
千歌「でもいいの。だって、恋愛に障害はつきものだもんね……///」
梨子「は?」
うちっちー「恋愛至上主義のスイーツ脳にしてしまうんだ!!」
ルビィ「えぇ……」
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/27(日) 00:14:49.53 ID:5bvQ4JnSO
ほう…
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:15:38.44 ID:C0VN0tby0
千歌「梨子ちゃん、つかまえた」
梨子「ちょ、千歌ちゃん落ち着いて!」
千歌「ね、ね、運命のちゅー、いいでしょ? 私と梨子ちゃんは相性抜群だって占いで出たもん!」
梨子「ダメダメダメ! だいたい千歌ちゃんには曜ちゃんとかダイヤさんが、ね?」
千歌「よ、曜ちゃん……! ダイヤさん……! ああ、そんなの千歌どうしたら……!」
千歌「これが……愛の試練……」ガクッ
うちっちー「ほらね、見事にピンク色だろう?」
梨子「もともと千歌ちゃんそういうところあったから……」
ルビィ「それよりルビィはお姉ちゃんの恋愛観があんなのだったことに絶望しています」
「「……」」
ルビィ「何か言ってくださいぃ!」グスン
梨子「へたり込んでる千歌ちゃんは置いておいて、曜ちゃんを助けに行かなきゃ」
うちっちー「いや、その前に大元を封印するのが手っ取り早い」
梨子「『SWEET』はどうしたら封印できるの?」
うちっちー「辛いのが極端に苦手なんだ。塩をかければ一発さ」
梨子「そんなナメクジみたいな」
ルビィ「塩なんて学校にあるかなあ……?」
ルビィ「調理実習でも、わざわざ家から調味料まで持ってこないといけなかったし……」
梨子「確かに……」
うちっちー「それに、鞠莉から『SWEET』を引き剥がさなきゃならないって問題もある」
梨子「それはいつもの――」
うちっちー「そうさ。鞠莉の願いを解消してやらなきゃならない」
梨子「願い、か……。全然わからないけど……」
ルビィ「まずは塩の捜索、がんばるびぃ……!」
☆ ☆ ☆
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:16:22.82 ID:C0VN0tby0
ガララッ
梨子「手っ取り早くこの調理室にあるっていうのが一番ありがたいんだけどね」
うちっちー「見たところ何もなさそうだね」
ルビィ「あの大きな棚にあるのかもしれません! ルビィはこっちを見てみます」
梨子「お願いね、ルビィちゃん」
テクテクテク
ガチャ
曜「……あ」
梨子「」
バタン
梨子「……」
ガチャ
梨子「何してるの、曜ちゃん」
曜「あ、あはは……」
ピギィ!
梨子「る、ルビィちゃんどうしたの!?」
ルビィ「こ、こっちの棚から花丸ちゃんが……」
梨子「えぇ……」
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:17:05.55 ID:C0VN0tby0
梨子「ええっと、2人して逃げてたらこうなった、と」
曜「そうなんだ。何だか皆がすごい勢いで追いかけてきてさ、ひどい目に遭ったよ……」トホホ
花丸「マルは途中で曜さんに会って、巻きこま、いや、被害に、じゃなくて――」
曜「巻き込みましたごめんなさい」
ルビィ「花丸ちゃんも大変だったんだね……」
梨子「あれ、花丸ちゃんその包み紙は……」
花丸「これずらか? 鞠莉さんたちが作ってたクレープずら! 美味しかったあ……」ペラッ
りこるび「「!?」」
梨子「なっ、曜ちゃん離れてっ!」
曜「へ?」
花丸「え、マル何かした……?」ポカン
ルビィ「え? 花丸ちゃん、何ともないの?」
花丸「何ともって、何が?」
うちっちー「驚いたな、『SWEET』が効かない人間がいるとは」
梨子「そういう体質?」
うちっちー「どうだろう、ボクにはわからないな。とにかく、ここには塩はなさそうだし先を―――」
ズドドドドドドトッ!!
曜「ひっ」ガタガタガタ
花丸「ま、また来たずらぁ……!」ガタガタ
ズドドドドッ ピタッ……
ガララララッッ
「「「曜ちゃんみーつけた♪」」」
曜「ひいいぃぃぃ!」
ルビィ「り、両側の扉からたくさん……!」
「もう逃げ場はないよ、曜ちゃん。私たちの愛の言葉、受け取ってくれるよね」
曜「あ、愛って……」
「「曜ちゃん」」
「「曜さん」」
「「曜先輩」」
ワラワラワラワラ
梨子(曜ちゃんどれだけ人気なの……)
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:17:55.12 ID:C0VN0tby0
うちっちー「くっ、逃げる隙がない……!」
ルビィ「塩があれば、塩があれば……!」
梨子(何か探さなきゃ! この場にあるもので、使えそうな何かを……!)
「「曜ちゃん」」グイグイ
曜「嫌、いやあっ、怖いよぉ!」
「「ふふっ、泣いてる曜先輩も素敵……」」ペロ
曜「いやそれは本当に怖いよ!」
梨子(何でもいい、何でも―――あ、あれは花丸ちゃんの鞄……?)
曜「ああ、もう駄目だ、梨子ちゃん、千歌ちゃんに遺言が――」
梨子(私は、諦めないっ!!)
梨子「あ、あったっ! 塩があるよっ!」
うちっちー「何だって!?」
梨子「これっ! のっぽパン! 花丸ちゃんの鞄にたくさん入ってたっ!」
ルビィ「だ、ダメです梨子さん! のっぽパンは甘いんです……!」
うちっちー「そうだ、のっぽパンはクリーム、チョコ、ピーナッツ味が基本なんだ! いくら塩分があるとはいえ、その味じゃあ――」
梨子「違う! 花丸ちゃんが持ってるのは―――――」
梨子「のっぽパン塩キャラメル味(サンシャインコラボ版)っ!!」
花丸(買ってくれましたか?)
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:18:55.85 ID:C0VN0tby0
うちっちー「そ、そうか! 花丸は自分でそれを食べたから『SWEET』の効果が解除されてるんだ!」
うちっちー「いける! これがあれば乗り越えられる! 早くあの子たちの口にこれをねじ込むんだ!」
梨子「曜ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃん!」シュババ
曜「うん、梨子ちゃん!」パシッ
ルビィ「ルビィ、闘います!」パシッ
花丸「うぅ、マルのパン、あげちゃうのかぁ……」パシッ
梨子「いくよ! のっぽパンブレード、レリーーーーズ(開封)!!」ガサッ
ようるびまる「「「レリーーーズ(ら)!」」」ガサッ
「「曜ちゃん曜ちゃん曜ちゃん」」ワラワラワラ
梨子「これを!」ブン
「むぐっ!?」
「……」モグモグ
「……」
「あれ、私たち、何でこんなところに……」
梨子「やった!」グッ
うちっちー「さくらうち! 数が多すぎる! 道が開けた今のうちに!」
梨子「うん!」バッ
梨子『闇の力を秘めし「鍵」よ! 真の姿を我の前に示せ――』
梨子『契約のもとさくらうちが命じる―――』
梨子『レリーーーーーズ!!』グググッ
梨子「皆捕まって! ―――『FLY』!」キイイインッ
うちっちー「よしっ! 調理室から脱出だ!」
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:19:31.30 ID:C0VN0tby0
――――バサッバサッバサッ
曜「た、助かったぁ……」ハア
花丸「これがカードキャプターの力……未来ずらぁ」
梨子「今日は衣装じゃないけどね」
うちっちー「何を言ってるんだい。学校が舞台なんだ。制服以上の衣装なんてないさ」キリッ
梨子「はいはい」
ピコンッ
ルビィ「梨子さん、携帯が……」
梨子「ほんとだ。誰だろう―――っ!?」
曜「ど、どうしたの?」
梨子「―――理事長室に、行かなくちゃ」
堕天使†ヨハネ『たすけて、いま、りじちょうし』
☆ ☆ ☆
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:20:22.91 ID:C0VN0tby0
鞠莉『よく来たわね』
梨子(うっ、朝よりもカードの気配が強まってる……!)ゾワゾワ
梨子「よっちゃんはどこ?」
果南「……そこだよ。手は縛ったけど、跡は残らないようにしてあるから」
善子「リリー///」
善子「えへへ、来てくれるなんて嬉しい! やっぱり惹かれ合う運命なのね!」テレテレ
梨子「よっちゃん……」
うちっちー「遅かったか……。もうクレープを食べさせられた後だ……」
鞠莉『私たちがクロウカードに操られてるなんて、失礼なことを言うんだもの』
果南「私と鞠莉を引き離そうとするんだよ。そんなことあるわけないのにね」ダキヨセ
鞠莉『きゃっ、もう、果南ったら大胆なんだから』フフ
梨子「鞠莉さん、どうしてこんなこと……」
鞠莉『どうして? 果南と私が甘ーい世界を作るのに理由が必要?』
梨子「果南さんと、甘い世界……。それが『願い』なんですね」
鞠莉『あたりまえのことを聞くのね? 恋は女の子みんなの夢でしょ?』
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:21:09.27 ID:C0VN0tby0
うちっちー「がっかりだよ、鞠莉」
果南「何だって?」
うちっちー「君は何もわかっちゃいない」
梨子(うちっちーが、怒ってる……?)
鞠莉『面白いじゃない。聞いてあげるわ』
うちっちー「じゃあ、僭越ながら」ゴホン
うちっちー「もっと恥じらうべきだ!」クワッ
うちっちー「手だってさあ! そんながっしり繋いじゃうんじゃなくてさあ! もっと不安そうに! 白百合が絡むように!」
うちっちー「数秒ごとに名前を呼び合うんじゃなくてさあ! ここぞって時に耳元で囁くように!」
うちっちー「理事長室でおおっぴらにいちゃつくんじゃなくてさあ! 夕暮れの教室の片隅で身を寄せ合うように!」
うちっちー「ボクはそういうのを見にこの学校まで来たのにっ!!」
うちっちー「君たちは何もわかっちゃいないっ!!」
鞠莉『……』
果南「……」
うちっちー「どうだい、さくらうち?」ドヤ
梨子「私の方ががっかりだよ、うちっちー……」ハア
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:21:52.41 ID:C0VN0tby0
鞠莉『くふ、あっはははは! 面白いこと言うわね、このアザラシ!』
うちっちー「セイウチだよ」
鞠莉『幸せで何が悪いの? 甘々で何が悪いの? 私も果南も幸せなんだから、それでいいじゃない!』
梨子「果南さんを操ってまで?」
鞠莉『……』
梨子「鞠莉さんがしていること、そういうことだよ。果南さんに、学校の皆に無理させてる」
鞠莉『……』
鞠莉『果南、私、嫌』
果南「わかったよ、鞠莉」ポンポン
果南「梨子」スッ
果南「ごめんね」ダッ
梨子「……ッ!!」
梨子「ぱ、『POWER』!」キイイイン
梨子(やば、間に合わな―――)
果南「ふっ……!」ドゴオオオ
梨子「がはああっ!!」
うちっちー「な、何て速い……! 今の一瞬で3発も……!」
梨子「がっ……あっ……」ガクガク
梨子(壁に、叩きつけられて……)
梨子(だめ、意識が……)
善子「リリーーーー!!」
果南「松浦は内浦にて最強……」スウゥゥ
梨子「」グラッ
梨子「」バタリ
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:22:35.26 ID:C0VN0tby0
花丸「くっ、鞠莉さん、のっぽパンブレードを食らうずら!」ブンッ
鞠莉『あら、美味しいわね』モグモグ
ルビィ「ふ、普通に食べてる……」
曜「そんな……っ! 効かないなんて!」
うちっちー「他の生徒たちとは違うんだ! 鞠莉の『願い』を消さない限り『SWEET』に塩は届かない!」
花丸「で、でも……! 梨子さんも……!」
梨子「」グッタリ
善子「リリー! 起きてよ! リリーったら……!」ポロポロ
うちっちー「信じるしかない、カードキャプターを、信じるしかないんだ!」
梨子(身体が、重い……)
梨子(頭もぼんやりする……)
梨子(果南さん、あのままでいいのかな。よくないよね)
梨子(でも、全く敵わなかった。これ以上、どうすることも……)
梨子(ダメだな、私。力もなくて、すぐ諦めて)
梨子(でも、もうダメだよ。どうにもできないよ。もう、もう―――)
理事長室の荘厳な壁(さくらうち―――)
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:23:48.25 ID:C0VN0tby0
梨子「り、理事長室の……荘厳な壁さん……?」
理事長室の荘厳な壁『さくらうち、あなたはそれでいいのですか……? 松浦果南が、小原鞠莉があのままで……』
梨子「そ、それは……。ダメだよ、だって、前にダイヤさんが言ってたんだもん」
梨子「様々な想いを抱いてこそ一人の人間だって。今の2人は……見てられないよ。でも―――」
理事長室の荘厳な壁『ああ……それが真理なのです、さくらうち』
理事長室の荘厳な壁『人間だけではありません。この世の全てのものには、表と裏がある。2つの面がある。ちょうどこの私のように―――』
梨子「こ、この世の全ては壁だった……? 壁が、世界だった……?」ゴクリ
理事長室の荘厳な壁『ええ、近づいていますよ。そして、あの2人も、壁なのです。表と裏がある、いや、なければならない』
梨子「鞠莉さんは、甘い世界を願ってた……。それじゃあ、私は苦い世界を見せればいいのかな。でも……」
理事長室の荘厳な壁『発想の転換ですよ。そう、壁の中の仕掛け扉を回すのと同じ』
理事長室の荘厳な壁『彼女は今、逃げているのです。冷たい世界から、身を切る風から、肩を縮こまらせて……』
梨子「発想の転換、逆に考える……鞠莉さんは、逃げてる……」ハッ
梨子「そ、そっか! 『北風と太陽』!」
理事長室の荘厳な壁『……』ニッコリ
梨子「わかるっ! 理事長室の荘厳な壁さんが笑っているのが!」
梨子「苦い世界を見せるんじゃない! 太陽を、太陽を見せるんだ!」
理事長室の荘厳な壁『ええ、あなたならできます、さくらうち』
理事長室の荘厳な壁『私は、いつもあなたの傍にいますよ――――』
スウウ……
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:24:24.79 ID:C0VN0tby0
梨子「」パチリ
善子「お、起きたのね!」グスン
果南「あれ、まだやるの?」
梨子「……」
ズリ……ズリ……
梨子(身体が、痛い……! でも、行かなくちゃ!)
梨子「よっちゃん、じっとしててね……」ニコ
善子「何を……」
梨子(簡単だったんだ……。鞠莉さんは甘い世界を欲してる……)
梨子(苦い現実を直視できずに、夢を見てる……)
梨子(願いを消すなら、甘い世界はいらないって思わせるには―――)
―――善子『口の中がじゃりじゃりする……甘いぃ……』
梨子『よく食べられるね。私は甘いのは、もういいや……』
―――花丸『マルのはちょっと焦げて、苦くなっちゃって』
「「「花丸ちゃんので」」」
梨子(お腹いっぱいにすればいいって、そういうこと、だよね)
ズリ……ズリ……
善子「ダメよ、リリー……。私のことなんて放っておいて、逃げて……?」
梨子「こんなに泣いて……。ふふ、涙の味で『SWEET』の魔法もすっかり解けちゃってるね」フフ
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:25:04.33 ID:C0VN0tby0
梨子「鞠莉さん、見ていてください……」
鞠莉『なあに? 現実を見ろとでも言うつもり?』
梨子(ううん、逆……今から見せるのは、甘い夢……)
梨子「よっちゃん」
善子「ひゃっ、私、手が縛られてて……って、何で押し倒されて―――」
梨子「……」スッ
善子「り、りー……? あ、手が、髪に……柔らかい――……」
梨子(白百合が絡むように、そうだよね。うちっちー)
梨子「私のために泣いてくれて、ありがとう」
梨子「いつもいつも、助けてくれて、ありがとう」
梨子「嬉しいよ、よっちゃん」ササヤキ
善子「……ぁ……///」
梨子(名前は耳元で囁くように)
善子「そんな、の、あたりまえよ……だって、だって……」
梨子「ううん、大丈夫。言わなくてもいいんだよ」ギュッ
梨子(身を寄せ合うように)
善子「リリー……」
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:26:11.19 ID:C0VN0tby0
梨子(よっちゃんの目が、潤んでる。怖くて、不安だったんだ……。でもね、苦さがあるから、甘さが引き立つんだよ)
梨子(色んな気持ちがある方が、甘いだけの世界より、ずっとずっと甘いはずだよ)
梨子(だよね、よっちゃん)
梨子「目、閉じて?」
善子「―――っ」ギュ
梨子(ごめんね、もっと好きな人とが良かったよね。ほっぺだから、許してね)
梨子「よっちゃん……」
梨子「んっ」チュ
鞠莉『ぁ……ぁ……』
鞠莉『甘ーーーーーーーーーーいっ!!』
パアアアアアアア
うちっちー「やった! 『同化』が解けた!」
SWEET『……!』オロオロ
うちっちー「曜、ルビィ、花丸! 今だ!」
ようるびまる「「うん!」」
ようるびまる「「トリプルのっぽパンブレーーーード!!」」
SWEET『』キュゥゥ
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:27:26.75 ID:C0VN0tby0
梨子「あとは、私が!」
梨子『汝の在るべき姿に戻れ―――』クルクル
梨子『クロウカーーーード!!』パアア
SWEET『』
シュルシュルシュル
シュウウウウン……
カード「」フワッ
梨子「……よかった」パシッ
善子「……リリー? あの……///」
梨子「あ、よっちゃん、その、ごめんね///」
梨子「怪我はない? あ、縄解いてあげるね!」アセアセ
善子「……」
うちっちー「……」
曜「……」
ルビィ「……」
花丸「……」
梨子「え、なんで皆黙ってるの?」
うちっちー「いやあ、まあ結果的に封印できたからいいんだけどさあ」
ルビィ「えっと、少し気になるっていうか、何ていうか……うゅゅ……」
花丸「うんうん、マルでもわかるずら」
曜「梨子ちゃんさあ、あれだよね、あれ」
善子「ねえ、リリー、どうしてほっぺだったの……?」
梨子「え、だって、ファーストキスは好きな人とがいいかなって……」
「「「……」」」
善子「リリーの、バカ」ジワッ
梨子「え、ええ、えええっ!?」
うちっちー「……はあ、幸せそうだなあ」
うちっちー「でも、それでもボクは―――……」トオイメ
☆ ☆ ☆
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:28:13.42 ID:C0VN0tby0
鞠莉「すいませんでした」
果南「重ねてすいませんでした」
ダイヤ「ほんっとうですわ!! 一日学校を崩壊させるなど、理事長の威厳はどうなるのですか!!」
ルビィ「お姉ちゃんの威厳はどうなったんですか……」ボソッ
花丸「ルビィちゃん、抑えて抑えて」
千歌「んー……、何か気づいたら廊下で寝てて、よく覚えてないなあ」
曜「あはは、梨子ちゃんが解決してくれたからね」
千歌「あー! 曜ちゃんは全部知ってるの!? ずるいよー!」
曜「ちょっと! 引っ張らないで千歌ちゃ―――あ、いい匂い……」スン
梨子(クロウカードがなくても大概あれな人たちだよね)
鞠莉「で、よく覚えてないんだけど、善子はどうして不機嫌なの?」
善子「ヨハネよ」プクッ
梨子「あー……、そのー……ね、よっちゃん」
善子「なんですか、桜内さん」
梨子「うっ、ぐっ……」ポロポロ
うちっちー「うわあ、泣いてるよ……」
曜「あー、平たく言うと……」
花丸「梨子さんが少し、その……」
うちっちー「へたれた」
「「それです」」
梨子「ちょっと、へたれたってどういう――あ、よっちゃん待って! 待ってえええ!!」
ルビィ「うゅ……魔法なんてなくても、甘ーいままです。善子ちゃん、がんばるびぃ!」グッ
第5話「スイーツ・パラダイスへようこそ」終わり
♪ ♪ ♪
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:28:53.29 ID:C0VN0tby0
テクテクテク
千歌「でさー、美渡姉すっごく怒ってくるんだよねー」
曜「あはは! 千歌ちゃんらしい話だね!」
千歌「そうかなー?」
千歌「この前、梨子ちゃんにもそう言われたんだ!」
曜「……」ズキ
曜(まただ……また梨子ちゃん……)
曜(家が隣だからって、毎晩おしゃべりして)
曜(いつもいつも、私が千歌ちゃんの話を聞くのは梨子ちゃんの後だ)
千歌「曜ちゃん、聞いてる?」
曜「あ、うん、聞いてるよ」
曜(カードキャプターのことだってそうだよ。千歌ちゃんだけ、前から知ってて)
千歌「あ、もうこんな所かあ。曜ちゃんと話してるとすぐ着いちゃうね!」
曜「ほんとほんと! また明日、たくさんお話しようね!」
千歌「うん! ばいばーい!」フリフリ
曜「ばいばい!」フリフリ
曜「……」
曜(あんなこと、他の人にも言ってるのかな。あんな笑顔を、梨子ちゃんにも見せているのかな)
曜「ダメだよね、こんなこと考えちゃ」
曜(でも、でもね千歌ちゃん、私ほんとは―――)
???『アハッ』
☆ ☆ ☆
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:29:28.10 ID:C0VN0tby0
第6話
「恋の本心 火の用心」
梨子「はあ……大丈夫かなあ。変じゃない?」クルクル
うちっちー「今の君を変だっていうやつは、目が見えてないか、ものを考えられないかのどちらかだね」
梨子の部屋の壁『ええ。お似合いですよ、さくらうち』
梨子「そ、そうかなあ。浴衣なんて久々に着たから……」
うちっちー「破壊力抜群さ、さすがどすけ――」
梨子「褒めてくれるのは嬉しいけど黙って」
うちっちー「はい」
梨子の部屋の壁『その調子で仲直りもできるといいですね』
梨子「……うん」
うちっちー「大丈夫。花火にも誘ってくれたんだろう?」
梨子「そ、そうだよね……」
梨子(私、桜内梨子。地味で普通な高校生の女の子――のはずでした)
梨子(カードキャプターになってからは、たくさん友達もできて、楽しい日々を過ごしてたんだけど……)
うちっちー「しかしあれだね、善子もなかなか強情だね」
梨子「よっちゃん……」ウル
梨子(『SWEET』の事件以来、よっちゃんが機嫌をなおしてくれません)
梨子の部屋の壁『ですが、前回の騒動のすぐ後はそんなに怒っているわけではなかったんですよね?』
梨子「そうなの。すぐに機嫌なおしてくれると思ったんだけど……」
梨子(原因は、つい1週間前、ケーキ屋さんに行ったときのことだと思います)
☆ ☆ ☆
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:30:08.21 ID:C0VN0tby0
梨子「よっちゃん、ごめん!」ペコリ
善子「もう、『SWEET』騒動から何日経ってると思ってるのよ。もう怒ってないわ」
梨子「で、でも、罰としてケーキ食べに行こうだなんて……」
善子「そ、それは! 口実というか、何というか……」プイ
梨子「……?」クビカシゲ
善子「……っ///」
善子「ほ、ほら、さっさと食べなさいよ! 冷めるわよ!」
梨子「冷めるって、これ普通のケーキなんだけど……」モグモグ
鞠莉「あら? 梨子と善子じゃない」
果南「こんなところで会うなんて、奇遇だね」
善子「マリーに果南さん! って、ヨハネだって言ってるでしょ!」
果南「はいはい。それで、2人はどうしてここに?」
鞠莉「Date、かしら?」キラキラ
善子「そ、そんなんじゃ……///」
鞠莉「そんなんじゃ?」
善子「うるさいわね!」
鞠莉「ふふっ」
梨子「よっちゃんにこの前のお詫びをしに来たんです。ほら、ほっぺに、その……」
鞠莉「Kissしたから?」
梨子「そ、そうです。よっちゃんに嫌な思いさせちゃったみたいで」
善子「別に嫌だったってわけじゃ……」
梨子「ううん、わかってる、本当にごめん。でも『仕方なくて』……」
善子「…………は?」
善子「……仕方、ない?」カチャリ
鞠莉「Oh……」アタマカカエ
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:30:49.58 ID:C0VN0tby0
善子「どういうこと?」ジト
梨子「その、あの場ではそれしか思いつかなくて、よっちゃんが嫌がることはわかってたんだけど! でも、その、近くに――」
善子「近くにいたから?」
鞠莉(か、果南! 帰るわよ、今すぐ!)ヒソヒソ
果南「え? あ、うん、え?」ズルズル
カランコロン……
善子「……」
梨子「えっと」
善子「ねえリリー。近くにいたから私にしたの?」
梨子「え、それは、その……」
善子「はっきりしてよ」
梨子「よっちゃんが、目に入って……」
善子「……そう、だったんだ」
梨子「よっちゃん?」
善子「……バッカみたい」
梨子「そ、そうだよね、ごめんね」アセアセ
善子「私がってことよ……っ!!」ガタッ
梨子「へ……?」
善子「何よそれ! 誰でもよかったんじゃない! 期待してケーキ屋さんなんか誘った私がバカみたいじゃない!」
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:31:34.56 ID:C0VN0tby0
ザワザワ……ケンカダ……ザワ……
梨子「え、えっと、店内だから落ち着いて、ね?」
善子「……リリーは、誰にでもああいうことするの?」
梨子「そ、そういうわけじゃないよ! よっちゃんに感謝してるのは本当で、だから――」
善子「感謝なんて、一言伝えてくれれば満足だった!」
梨子「え……?」
善子「あんなことしなくても伝わったわ! 休み時間だって、夜一緒に飛ぶ時だっていいじゃない! 一言もらえれば、私わかったわ!」ジワ
梨子「でも、あの時は……!」
善子「わかってるっ!!」ポロ
梨子「よっちゃん、泣いて……」
善子「泣いてない!」グス
善子「……帰る」ゴソゴソ
梨子「待って! ごめんなさい、ごめ――」
善子「もういい」
善子「……わかってる。リリーは悪くない。仕方なかった」ウツムキ
善子「ただちょっと、ほんのちょっとだけ、私は自分が惨めになった………それだけよ」ポロポロ
カランコロン……
梨子「……よっちゃん」
☆ ☆ ☆
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:32:26.14 ID:C0VN0tby0
うちっちー「ああぁぁ……何回聞いてもさくらうちが悪いし胃が痛い」
梨子の部屋の壁『さすがに、言葉選びがまずかったかと』
梨子「……わかってるよ」ムス
うちっちー「それで、一昨日LINEが届いたってわけだったね」
梨子「うん、そうなの」スッスッ
堕天使†ヨハネ『今週末、9人で夏祭りに行くじゃない?』
堕天使†ヨハネ『そのとき、花火の時だけ、2人で話がしたいの』
堕天使†ヨハネ『私の大事な話を、聞いてほしい』
梨子「……」
うちっちー「……さくらうち」
梨子「流石に、わかるよ。そこまで鈍くないもん」
うちっちー「どうするんだい?」
梨子「……」
梨子の部屋の壁『……』
梨子「……私は、よっちゃんのこと―――」
うちっちー「……」
うちっちー(気づいているかい、さくらうち……?)
うちっちー(自分が、今までしたこともないような表情をしていることに)
うちっちー(そしてボクは、どうするつもりなんだい)
うちっちー(もうすぐ終わりだって知っていながら、お節介のつもりかい)
―――梨子『いいから黙って』
―――梨子『この不純妖精!』
―――梨子『うちっちーもありがとう』
うちっちー(ああ、それでもボクは――――)
☆ ☆ ☆
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:33:22.86 ID:C0VN0tby0
梨子「早く来すぎちゃったかなあ……」ボー
梨子(約束の夏祭りだけど、よっちゃんのこと考えてたら寝不足だよ……)ハア
善子「……リリー」カラコロ
梨子「あ、よっちゃん……。まだ余裕あるのに、早いね」
善子「リリーだって早いじゃない」
梨子「今来たところだよ」
善子「そう……」
梨子「……」
梨子(気まずい!)
梨子(それにしても、よっちゃん、すっごい綺麗……。白地に薄紅色の牡丹柄が柔らかく映えてて……)
梨子「よっちゃん、浴衣、すっごい可愛いよ。それに髪型も似合ってる。今日はポニーテールなんだね」
善子「う……。リリーだって、髪あげてるの初めて見るし、簪も素敵だし……」プイ
梨子「……え、えへ」テレ
善子「……///」ウツムキ
鞠莉「あら、私たちはお邪魔だったかしら?」
ダイヤ「もう、茶化すのはやめなさいと言ったばかりですのに」
梨子「あ、皆さんも……」
ルビィ「善子ちゃん、浴衣可愛いー!」
善子「ヨハネよ! ま、まあ堕天使なら当然ね! リトルデーモンも似合ってるわよ」テレテレ
ルビィ「りと……? でも、ありがとう善子ちゃんっ!」ダキ
善子「だからヨハネって言ってるでしょ!」マッタクー
梨子「……」ズキ
梨子(あ、あれ……?)
ダイヤ「ルビィ、喜ぶのは結構ですが、静かに動きませんと、浴衣がはだけてしまいますわよ」
ルビィ「あ、お姉ちゃんはルビィに近づかないでね」
ダイヤ「えっ」ガーン
花丸「あとは千歌さんと曜さんだけずら……」
果南「あ、あれじゃない?」
鞠莉「あらまあ、手なんか繋いじゃって」フフ
善子「あの2人、本当に仲いいのね」
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:33:54.82 ID:C0VN0tby0
千歌「みんなー!」タタッ
曜「ち、千歌ちゃん! 走らないで!」
千歌「わっ、ごめん曜ちゃん! ……それにしても、梨子ちゃんひどいよ!」
梨子「へ?」
千歌「一緒に行こうと思ったのに! 曜ちゃんが迎えに来てくれなかったら、私1人だったよ!」
梨子「えーっと、ごめん?」
千歌「むー」
曜「……」
千歌「はー……でも梨子ちゃん、浴衣綺麗だなあ。千歌なんて美渡姉に子どもみたいって言われたのに……」
千歌「やっぱ梨子ちゃんはすごいなあ……」
曜「……千歌ちゃん」ボソッ
梨子「」ゾワ
梨子(―――え?)
梨子「ち、ちょっと千歌ちゃん離れて!」
千歌「ほぇ?」
梨子(間違いない! 今、ほんの一瞬だったし、強くはなかったけれど、あの感覚がした!)
梨子「今のは―――」
うちっちー「そう、クロウカードだ!」ヒョコ
梨子「ひゃあっ!」ビクッ
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:34:56.53 ID:C0VN0tby0
梨子「うちっちー! ど、どうして私の巾着の中に!?」
うちっちー「夏祭りと聞いて、ボクが黙ってると思ったのかい?」
梨子「ああ、浴衣を見たかっただけ……」
うちっちー「浴衣じゃない! ボクが見たいのは浴衣を着た女の子さ! ここは大事なところだよ、さくらうち!」
うちっちー「鮮やかな浴衣! 薄くひいた口紅! 袖をつまむ白い指! ちらりと覗くうなじ!」
うちっちー「劣情がなんだ! うなじがなんだ! ポニーテールを禁止したって、浴衣や夏祭りは禁止するかい? 否!!」
うちっちー「みんなは気づいているはずなんだ! もう決して止められないんだって! それこそが青春の輝きを与えてくれるんだって!」
うちっちー「そう……うなじは文化なんだ」
ダイヤ「話ずれてますわよ」
梨子「聞き流せばいいんですよ、ダイヤさん」ハア
善子「それより、さっきクロウカードがどうとか言ってなかった?」
うちっちー「ああ、さくらうちも気づいただろう?」
梨子「さっき、一瞬クロウカードの気配がした……」
うちっちー「ついてきて正解だったね、うん」
梨子「結果的にね」
うちっちー「手厳しいね。君たちも、警戒しながら歩くんだよ」
鞠莉「OK! いざとなったら小原家の力でなんとかしてやるわ!」
うちっちー「いや、この前まで暴れてたの君だからね?」
鞠莉「I don't know what you mean」
アハハハ
ネードコイクー?
キンギョスクイ!!
ヤキソバガイイズラ!
曜「……」
☆ ☆ ☆
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:35:32.26 ID:C0VN0tby0
果南「千歌、集中して……」ゴクリ
ルビィ「精神統一です……!」ゴクリ
千歌「……」
千歌「……」スッ
千歌「とおおりゃあああ!!」バシッ
梨子「きゃっ! 千歌ちゃん振り回さないで!」
千歌「ふっふーん、金魚すくいには集中力と勢いが大事なのだ!」ニコニコ
曜「もう千歌ちゃん、梨子ちゃんにくっつきすぎだよ」グイ
善子「そうよそうよ」ムー
千歌「えー、そう? じゃあ、えいっ!」ギュ
曜「あっ」
梨子「ちょっと、なんでもっとくっつくの?」
千歌「高海アタック! なんちゃって」エヘヘ
善子「もうっ、仲いいんだから……」ハア
曜「……」ジー
梨子「―――っ」ゾク
梨子(ま、また……!)
うちっちー「気づいたかい、さくらうち?」
梨子「うん……。さっきも、千歌ちゃんが近くに来たら気配が強くなった……」
うちっちー「千歌から目を離さないようにしたほうがいいね」
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:36:10.12 ID:C0VN0tby0
花丸「焼きそば買ってきたずらぁ!」
鞠莉「んー! たまにはこういう庶民的なのもGoodね!」
果南「もう、嫌みっぽいよ鞠莉」
鞠莉「失礼ね! そんなこと言う口には……えいっ!」
果南「むぐっ! って熱い熱い!!」
うちっちー「いやあ、むぐむぐ、平和、はふっ、だね!」
梨子「食べるか話すかどっちかにして。えっと、千歌ちゃんは……」
千歌「はい、ダイヤさんあーん!」
ダイヤ「は……? いきなりなんですの?」
千歌「だって、この前もプリン食べさせてあげたし……」テレテレ
ダイヤ「あれは不可抗力ですわ!」
千歌「ええ、あんなに情熱的に千歌のスプーンを咥えたのに……?」
ルビィ「お姉ちゃん……」ヒキ
ダイヤ「」
ダイヤ「誤解を招くような言い方をしないでください!」ガシッ
千歌「あはは! ごめ、ごめんなさい、冗談、冗談だから! 痛い!」
曜「千歌ちゃん、やっぱり……」ジー
梨子(曜ちゃん……何だか怖い顔してる……?)
梨子「っ!」ゾワゾワ
梨子(また来たっ!)
うちっちー「さくらうち! 今の!」
梨子「うんっ! うちっちー、あのね……」
☆ ☆ ☆
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:36:48.46 ID:C0VN0tby0
ガヤガヤ……
梨子「ここなら聞かれないかな」
うちっちー「それで、怪しい人を見つけたって?」
梨子「うん、曜ちゃんなの」
うちっちー「曜が? どうして?」
梨子「そこまではわからないけど……千歌ちゃんがダイヤさんと話してるのを、怖い顔で見てて……」
うちっちー「その直後のカードの気配がした、というわけか」
梨子「曜ちゃんは、何を願ったんだろう?」
うちっちー「曜と千歌、か……」フム
千歌「あれー? 2人とも、何してるの?」テクテク
善子「急にいなくなるんだもの、探したわよ」
曜「……」
梨子「あ、ごめんね3人とも……」
善子「いったいどうしたのよ?」
梨子「えっと」チラ
曜「……何、梨子ちゃん?」
梨子「う、ううん! 何でもないの! ほら、みんなのところに戻ろう?」アセアセ
千歌「もう、梨子ちゃんいないからびっくりしたよー」
千歌「逃げないように、こっちの腕捕まえた!」ギュ
梨子「ひゃっ!」
梨子(って、千歌ちゃんがくっついたら、曜ちゃんが……!)
曜「……」
曜『……マシイ』
梨子「―――っ!!」ゾワゾワゾワ
梨子(この気配……! 今までで一番強い……!)
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:37:43.93 ID:C0VN0tby0
曜『――――シイ、――ヤマしい』ブツブツ
善子「ち、ちょっと曜さん?」
梨子「よっちゃん! 離れてっ!!」
曜『――――ウラヤマシイッ!!』ゴウウウウッッッ
千歌「……え?」
善子「曜さんが……燃え……っ!?」
千歌「曜ちゃんんんんっ!!」
うちっちー「炎……! あ、あれは……!」
曜『千歌ちゃん千歌ちゃん千歌ちゃん千歌ちゃん―――ッ』シュインシュインシュイン
千歌「は、早く火を消さなきゃっ! 曜ちゃんがぁ! 曜ちゃんが死んじゃう……!」ポロポロ
うちっちー「大丈夫だ! 曜自身に害はない!」
千歌「ほ、ほんと?」
梨子「ど、どういうことなのうちっちー?」
うちっちー「『FIREY(ファイアリー)』だ! 『WATERY』と同じ、攻撃カードだ!」
善子「火の、攻撃カード……!」
曜『……千歌ちゃんから、ハナレロ』スッ
ボウウウッッッッ
バチバチバチッ
梨子「きゃあっ!! 屋台が焼けちゃう……!」
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:38:26.33 ID:C0VN0tby0
ザワザワ……カジ……?
ダレカ……ショウボウシャ……
うちっちー「まずい、騒ぎになる!」
梨子「とにかく消化しなきゃ!」バッ
梨子『闇の力を秘めし「鍵」よ! 真の姿を我の前に示せ――』
梨子『契約のもとさくらうちが命じる―――』
梨子『レリーーーーーズ!!』
鍵『』グググッ
梨子「よしっ、あとは……」クルクル
梨子「お願い! 『WATERY』!!」キイイイン
シュワアアアアアア……
善子「な、なんとか鎮火できたわね……」
曜『……』シュウシュウ
梨子「曜ちゃんの火の勢いも弱まってる……」
うちっちー「『WATERY』だけのおかげじゃないな。千歌がさくらうちから遠ざかったからだ」
千歌「私が?」
うちっちー「そうさ。さっきの曜の言葉を聞いたかい?」
梨子「うらやましい、って」
うちっちー「ああ。曜の炎は、千歌を愛するが故の妬みの炎……」
うちっちー「いわゆる、嫉妬ファイヤーなんだっ!」ビシッ
千歌「嫉妬、ファイヤー……!」
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:38:57.65 ID:C0VN0tby0
千歌「じ、じゃあ曜ちゃんは私が梨子ちゃんにぎゅってしたから、羨ましいって……?」
うちっちー「そういうことだね」
千歌「……曜、ちゃん」
曜『……千歌ちゃん』シュウウウ
千歌「……」ギュ
梨子「な、なんでまた私に!?」
曜『―――ッ!』ゴウウウッッ
千歌「……」パッ
曜『……』シュウウウ
千歌「……」ギュ
曜『―――ッ!』ゴウウウッッ
千歌「……」パッ
曜『……』シュウウウ
千歌「ほんとだ!!」
梨子「遊ばないでっ!」
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:39:34.37 ID:C0VN0tby0
曜『ウ……ぐ……っ!』
梨子「よ、曜ちゃんが苦しんでる?」
曜『ダメ、だ……千歌……ちゃんに、迷惑、かけちゃう……』
曜『梨子ちゃんにも、嫌なこと、しちゃう……』クルッ
曜『ここにいたら、ダメ、ダメだよ……っ!!』ダダッ
千歌「あっ、よ、曜ちゃんっ!」
うちっちー「なんて子だ……。カードの魔力に精神力だけで抗っている……」
梨子「でも、放っておいたら……!」
うちっちー「ああ、『同化』は今も進んでいる。じきにさっきみたいに暴走してしまうだろう」
梨子「じゃあ、すぐに追いかけ――」
善子「わ、私が追いかける!」
梨子「え?」
善子「曜さんの気持ち……少しはわかると思うから。だから、私が行く」
うちっちー「善子……」
梨子「……」ズキ
善子「リリーと千歌さんは、作戦考えてて!」タタッ
梨子「よっちゃん……!」
千歌「……」
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:40:31.69 ID:C0VN0tby0
うちっちー「作戦を立てよう。善子の犠牲を無駄にしないためにも」
梨子「死んでないよ」
千歌「……曜ちゃん、何を願ったんだろう」
うちっちー「今回は、願いじゃないんだ」
梨子「どういうこと?」
うちっちー「今の『FIREY』は嫉妬ファイヤー。羨ましいっていう気持ちに巣食うんだ。『同化』して、嫉妬心に応じて燃え盛る……」
梨子「じゃあ、曜ちゃんは……」
千歌「嫉妬しちゃった、それだけってこと?」
うちっちー「ああ、だから『願い』を消すって方法は使えない」
梨子「となると『嫉妬』自体をなくすしかない……でも、そんなの」
うちっちー「『FIREY』が気に入るほどの想いの強さだ。そうやすやすとは収まらないだろうね」
梨子「収めることができるのは……」
千歌「私だけ、なんだね」
うちっちー「……ああ、そうさ。千歌、やれるかい?」
千歌「うん、やる。私のせいだから。私が曜ちゃんに、ちゃんと向き合えなかったせいだから」グッ
梨子「……千歌ちゃん」
梨子(千歌ちゃんはすごいな。普段はぼーっとしてるのに、いざとなったらとってもまっすぐ)
梨子(曜ちゃんのことだって、話を聞いたらすぐにわかってあげられて……)
梨子(私はどうなのかな。私はよっちゃんのこと、どれだけ知ってるのかな)
―――善子『曜さんの気持ち……少しはわかると思うから』
梨子(よっちゃんは、曜ちゃんの気持ちがわかるんだ。曜ちゃんもそうなのかな。曜ちゃんだったら、よっちゃんのこと、わかるのかな)
梨子「……」ズキズキ
うちっちー「さくらうち?」
梨子「あ、うん、ごめんね。行こっか」
☆ ☆ ☆
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:41:16.99 ID:C0VN0tby0
梨子「……ごめんなさい! ……すみません!」
千歌「す、すごい人だよ! これじゃあ曜ちゃんがどこに行ったかなんて……!」
果南「あれ、千歌たちどこ行ってたのさ? 探したよ?」ガサガサ
千歌「果南ちゃん! って、何そのすごい荷物」
果南「あはは……。いろいろあってね」
梨子「あ、あの! 曜ちゃん見ませんでしたか?」
果南「曜? それっぽい人は見たけど……」
鞠莉「ちょうどボヤ騒ぎがあって、見失っちゃったわ」
梨子「ボヤ騒ぎ……! 詳しくお願いします!」
鞠莉「えーっと、ついさっきなんだけどね」
☆ ☆ ☆
鞠莉「果南! 私あのぬいぐるみほしい!」
果南「無茶言わないでよ鞠莉。射的はそんなに得意じゃないし……」
果南「それにこの屋台のおじさん、毎年、的が倒れにくいように細工してるって噂だよ」
鞠莉「ちょっと! 卑怯じゃない!」
屋台のおじさん「まあまあ小原の嬢ちゃんと松浦の娘さんや。いっちょやって、文句はそれからさ」
鞠莉「OK! 果南、貸しなさい。私がやるわ!」キッ
果南「えー? 鞠莉できるの?」
鞠莉「ほら、そこは手取り足取り教えてちょうだい?」
果南「まったく……」スッ
曜『……』
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:42:04.92 ID:C0VN0tby0
果南「ほら、こう持つんだよ」ピトッ
鞠莉「かなぁん……!」テレテレ
果南「そこに手を掛けて……よーく狙って……」ギュウ
鞠莉(Oh、ただでさえ浴衣なのに、くっつきすぎよ果南……!)クラリ
果南「せーのっ」カチッ
曜『―――ッ!』ボウッッッ
ドカアアアンッッッッッ
果南「」
鞠莉「」
鞠莉「え、え? 射的ってこんな威力あるの?」
果南「い、いや、ただのゴム弾のはずだけど……」
鞠莉「あー、えーっと、とりあえず、的は全部倒れたみたいだけど?」
屋台のおじさん「ぜ、全部持っていきやがれ、ちくしょう……」
曜『……』クルッ
果南「……曜?」
☆ ☆ ☆
果南「……ということなんだけど」
うちっちー「いちゃいちゃしてたら曜に襲われた、と」
千歌「曜ちゃんが向かった方向はわかる?」
鞠莉「奥のほうに行ったわ。ほら、あの『わたあめ』って書いてある方!」
梨子「ありがとうございます!」
うちっちー「よし、追跡だ!」
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:42:49.70 ID:C0VN0tby0
花丸「あっ! 梨子さんたちこんなところに! 探したずらー!」
ルビィ「心配しました!」
梨子「あのね、わたあめ舐めながら言っても説得力ないよ」
ダイヤ「道すがらお店を見つけたのですわ。祭りと言えばやっぱりこれですわよね」
千歌「ダイヤさん、曜ちゃんがどこにいるのか知りませんか?」
ダイヤ「曜さんですか? わたくしは知りませんが……」
花丸「あ、曜さんならさっき見たずら」
ルビィ「うん、お姉ちゃんがお金払ってる時だったよね?」
梨子「詳しくお願い!」
ルビィ「はい、あれは……」
☆ ☆ ☆
花丸「よかったの、ルビィちゃん。マルまでご馳走になっちゃって……」
ルビィ「大丈夫だよ! お姉ちゃんがこの前のお詫びだって!」
花丸「マルは何もされてないんだけどなあ。あ、わたあめ美味しいずら!」ハムハム
ルビィ「ルビィはされたよ」ハイライトオフ
花丸「あ、あー、ほら、ルビィちゃんのわたあめも美味しそうだな、なんて……」アハハ
ルビィ「うんっ、美味しい! ね、花丸ちゃんのも一口ちょうだい?」
花丸「ふふっ、味は一緒ずらよ、ルビィちゃん」
曜『……』ジー
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:43:40.80 ID:C0VN0tby0
花丸「でも、はい、あーん!」スッ
ルビィ「あーん!」
曜『―――バクハツシロ』ゴウゴウッッッ
ボンッッッッ
花丸「」
ルビィ「」
ルビィ「わたあめが、溶けた……!?」
花丸「あ、ああぁ……マルのわたあめ……」ガックリ
曜『……』クルッ
ルビィ「……曜さん?」
☆ ☆ ☆
ルビィ「と、いうことなんです」
花丸「わたあめはダイヤさんがまた買ってくれたずら!」ハムハム
梨子「なんだかんだいいお姉さんですよね、ダイヤさん」
ダイヤ「なんだかんだとは何ですか!」
うちっちー「しかし、またしてもいちゃいちゃしているところへの妨害か……」
うちっちー「嫉妬ファイヤーが完全にリア充僻みファイヤーになってしまっている……!」
千歌「曜ちゃん……」グス
梨子「やっぱり暴走してるんだ……」
花丸「曜さんは浜辺の方に行ったと思います」
ルビィ「ちらっと善子ちゃんっぽい人影も見ました!」
うちっちー「浜辺か! すぐに向かおう!」
☆ ☆ ☆
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:44:24.51 ID:C0VN0tby0
ザザア……ザザア……
曜『……』
ザッザッザッザ
善子「探したわよ、曜さん」
曜『……善子ちゃん』
善子「ね、もうやめましょう?」
曜『やめられないよ。想いは、止まらないよ。善子ちゃんだって、わかってるでしょ?』
善子「……」
善子「……そう、そうね。私だって、千歌さんに妬いてるわ」
善子「だって、あの2人……」
曜『とっても仲良し。仕方ない。そんなの……っ! そんなのわかってるっ!』ボウッッ
善子「曜さんっ!」ダキッ
曜『善子……ちゃん』
善子「カードなんかに負けちゃダメ。せっかく、そんなに強い種火が、胸の中にあるんだから……」
善子「曜さんの種火は、曜さんの手で、顔で、声で、言葉で燃やしてあげなくちゃ」ギュウ
善子「曜さんだったら、きっと千歌さんに伝えられる」
曜『ダメだよ……私には無理だよ。だって、千歌ちゃんだよ? 今まで当たり前みたいに近くにいて、どうして今更……』ポロポロ
善子「諦めちゃダメ……! 曜さん……!」
曜『諦めちゃうよ……あんなの楽しそうな千歌ちゃん見たらさ。もう、無理だよ。もう―――』
千歌「曜ちゃんっ!!」
曜『千歌、ちゃん……?』
☆ ☆ ☆
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:45:11.46 ID:C0VN0tby0
千歌「曜ちゃんっ!!」
曜『千歌、ちゃん……?』
うちっちー「なんとか見つかったみたいだね……」
梨子「……」
梨子(よっちゃん、曜ちゃんのこと、後ろから抱きしめてた……)
梨子「思い出しちゃうな」ズキズキ
梨子(一緒に空を飛ぶときのこと。はじめて飛んだときのこと。よっちゃんが後ろにいると、ふわっと甘い香りがして……)
うちっちー「さくらうち!」
梨子「え、えっ?」
うちっちー「集中するんだ! 千歌が曜と話してる! 『FIREY』が剥がれる瞬間を逃さないようにしないと」
梨子「あ、うん……!」
善子「ほら、千歌さんが来てくれた! 曜さん、素直になって!」
千歌「曜ちゃん、もうやめよう?」
曜『ううん、やめない』ボウッッ
善子「曜さん、どうして……!」
曜『……』
千歌「強情だね曜ちゃん。だったら――……」
千歌「はいっ! 汗だく千歌ちゃんの匂い嗅ぎ放題 欲張り浴衣セット!!」ドンッ
曜「わーい!」キャッキャ
善子「は?」
善子「…………は?」
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:46:07.35 ID:C0VN0tby0
善子「え……? どういうこと?」
千歌「いやー、曜ちゃん、昔っから機嫌損ねてもこれで一発なんだよね。ねー、曜ちゃん?」ダキツキ
曜「すぅ……はぁ……」スンスン
善子「うわあ」
FIREY『ググ……ギギ……』
うちっちー「『FIREY』が苦しんでる! もう少しで『同化』が解けるぞ!」
梨子「えぇ……」
千歌「曜ちゃん、ごめんね」ギュ
曜『……みかんちゃん』スンスン
千歌「うん、人を香りで呼ぶのやめようね。嬉しいけど」
曜『千歌ちゃん、私……』スン
千歌「分かってる。寂しくさせちゃってごめん。私もね、寂しかった」
曜『千歌ちゃんも?』スンスン
千歌「うん。だって曜ちゃん、卒業したら県外の飛び込みが強い大学に行くんでしょ?」
千歌「だったら千歌は『曜ちゃん離れ』しないといけないのかなって思ったんだ」
曜『……』スンスン
千歌「だから、今まで曜ちゃんとしてきたことを、梨子ちゃんとしてみたり、ダイヤさんにしてみたり……」
千歌「もちろんね! 梨子ちゃんのことも、ダイヤさんのことも大好きだよ! でもね」
千歌「やっぱりダメだね。曜ちゃんのこと、寂しいままで……私、バカ千歌だ……」
曜『千歌ちゃんは、私のこと、好きなまんま? これからも、仲良くしてくれる?』スンスン
千歌「うんっ! もちろんだよ曜ちゃん! 私たち、一番大事な幼馴染だもん!」
曜『千歌ちゃん……!』ポロポロスンスン
善子「せめて鼻離してから泣きなさいよ」
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:47:04.10 ID:C0VN0tby0
FIREY『グ……オアアア……』
パアアアアアア
うちっちー「『同化』が解けた!」
千歌「曜ちゃん、よかった……」
曜「うん、ありがとう千歌ちゃん……!」
曜「それに、善子ちゃんもありがとう!」クルッ
善子「ああ、うん。なんだか複雑だけど」
千歌「えへへ、サンドイッチ! ほら、曜ちゃんも!」ギュウッ
曜「うんっ! 善子ちゃん覚悟ー!」ギュウッ
善子「ちょっ! 暑苦しいっ! 離れなさいってば!」グイグイ
曜「善子ちゃんの想いは届いたぞー!」
千歌「たぞー!」
曜「あ、そうだ千歌ちゃ――」クラリ
善子「わっ、よ、曜さん!」ダキッ
曜「」スースー
千歌「寝ちゃった……?」
善子「ずっと『同化』していたもの、仕方ないわ」フフ
アハハ……
ヨウチャンホッペプニプニー
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:47:56.77 ID:C0VN0tby0
うちっちー「さくらうち! 『FIREY』が剥がれた! 封印するんだ!」
梨子「……」
うちっちー「さくらうち?」
梨子(よっちゃん、あんな優しい顔してるところ、初めて見た……)ズキズキ
梨子(何だろう、この気持ち)
梨子(千歌ちゃんに抱き着かれて、曜ちゃんを抱きしめて笑ってるよっちゃんを見ると、胸がざわざわする……)
梨子(違うよ、よっちゃん、そこじゃないよ)ズキ
梨子(ダメだってわかってる。よっちゃんは、曜ちゃんを助けただけ。私はよっちゃんを傷つけてばっかり。でも……)
梨子(よっちゃんが抱きしめるのは、曜ちゃんじゃないっ!)
梨子(だって、だってっ!)ズキズキ
―――善子「ねえ、リリー!」
―――梨子「なあに、よっちゃん」
―――善子「私、忘れないからっ! 助けてくれたことも、この景色も――」
―――善子「だ、だからっ!」
―――善子「これからもこういうことするなら、呼びなさいよね! 責任、とってもらうんだからっ!」ギュウッ
梨子(はじめて会ったときから、そこは、そこは私の―――)
梨子「あぁ……羨ましいな……」ボソッ
FIREY『……』ニヤ
ゴウウウッッッッ
うちっちー「ダメだ! さくらうち! 危ないっ!!」
梨子「ぇ……」
梨子「き、きゃあああああっ!!」
善子「リリー!?」ハッ
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:48:35.26 ID:C0VN0tby0
ゴオオオ――――ッッッ
梨子「あああぁぁぁぁ、ぐあぁぁっ……! 熱い熱い熱い……っ!」
善子「な、なにが起きたの? 『FIREY』は剥がれたはずじゃ……!」
うちっちー「さくらうちの中に嫉妬の炎を見つけてしまったんだ! 今は『同化』しかけている……!」
梨子「いやぁぁぁっ! 熱い! 焼け……っ、うぐっ……!」ジュウジュウ
善子「どう、して……!? 曜さんの炎は熱くなかったのに!」
うちっちー「さくらうちの魔力が強すぎるんだ……! 『FIREY』の魔力とぶつかって、身体の中で爆発を繰り返してる……!」
善子「リリーはどうなるの!?」
うちっちー「魔力は、さくらうちの命の一部だ。それが爆発を繰り返してる今、放っておけば……」ガク
善子「そ、そんな……!」ポロポロ
千歌「な、何か助ける方法はないの……?」
うちっちー「彼女が自力で『FIREY』を引き剥がすしかない……! 自分の嫉妬の心に打ち勝つしか……!」
善子「嫉妬の、心……。リリーが……嫉妬した?」
梨子「ぁ……が……っ!」ボウボウッ
梨子(全身が……熱い……! 焼けてるみたいに、溶けるみたいに……!)
梨子(声が出せない……。私、ここで死んじゃうのかな……)
梨子(私、やっぱりこの程度なのかな。カードも集められなくて、よっちゃんも悲しませて)
梨子(ああ、よっちゃんと花火、見たかったな……)
梨子(さよなら……よっちゃん、うちっちー、みんな――……)
炎の壁『さくらうち……!』
梨子(!!)
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:49:14.86 ID:C0VN0tby0
炎の壁『諦めてはいけません……!』メラメラ
梨子(私を取り囲む、炎の壁、さん……?)
炎の壁『そうです。私たち壁は、いつも貴女の傍にいる……』
炎の壁『さくらうち、あなたは、生きたいですか……?』
梨子(……)
梨子(私は……生きたい……! 生きて、まだみんなと笑っていたい!)
梨子(でも、もうどうにも……。炎の壁さんは、助けてくれますか……?)
炎の壁『……』
炎の壁『いいえ。これは、あなたが乗り越えなければなりません。あなたが向き合わなければなりません』
炎の壁『さくらうち、あなたは知っているはずです。壁とは何か。壁とは、どういう存在か』
梨子(壁とは何か……)
炎の壁『壁は、あなたを助けてはくれない。壁は、あなたの想いを受けとめることしかできない』
炎の壁『立ち上がって歩き出すのは、いつだって、さくらうち、あなた自身でしかありえないのです』
梨子(でも! 私、もう何にもできないよ! 熱くて、痛くて、身体も動かなくて……)
炎の壁『……大丈夫。なぜなら、貴女は―――』
善子「リリーーーーーーッ!!」ダッ
炎の壁『―――1人ではないのだから』
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:49:55.09 ID:C0VN0tby0
梨子(炎の壁の向こうから、よっちゃんが……!)
善子「リリー! 無事……じゃ、ないわよね」
梨子「ょ……ち…ゃん……やけど、しちゃう……」
善子「海水と熱いお茶を被ってきたから大丈夫よ!」
梨子「そ……っか……うっ、ぐうううっ!!」ゴウゴウッ
善子「リリー、負けないで! 死なないで!」ポロポロ
梨子「……ぁ……ぅ」
善子「リリー! お願い!」ギュウ
善子「一緒に花火を見たいの! 喧嘩中だとか、大事な話だとか関係ない! ただ、一緒に……!」
梨子「……よ……ちゃん……わ、たし、も……見たい……」
善子「本当? 嬉し―――熱っ!」バチッ
梨子「よ……ちゃん……もう、ダメ……もう、戻って……っ」
善子「嫌よ!」
梨子「どう、して」
善子「そんなの、決まってるじゃない! 私は、津島善子は―――」
善子「あなたが、好きだから」ポロポロ
梨子「……!!」
梨子(ふふ……よっちゃん、頬も顔も真っ赤だよ……。炎のせい? ううん、違うよね)
梨子(幸せだな……。ああ……私は、この言葉が聞きたくて……)
パアアアアアア
うちっちー「『同化』が、解けていく……」
千歌「梨子ちゃん……よかった……」ツー
FIREY『……』フラフラ
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:50:52.91 ID:C0VN0tby0
梨子「ふういん、しなきゃ……」ヨロッ
善子「が、頑張れる?」
梨子「汝のあるべ――ごほっ、がはっ!」
善子「リリー! ほら、堕天使の翼につかまって……!」ガシッ
梨子「それ、た、だの……肩、だよ、よっちゃん……」クスクス
梨子「はあっ……はあっ……!」
梨子『汝の在るべき……姿に戻れ……っ!!』
梨子『クロウカーーーーード!!』
FIREY『ッ!』ジタバタ
シュルルルルル
シュウウウウン
カード『』フワッ
善子「ほら、これ……」パシッ
梨子「ありがとう、よっちゃ……ん……」グラリ
善子「リリーっ!!」
梨子「……」スゥスゥ
善子「寝てるだけ……。よかったぁ……」ホッ
うちっちー「封印完了、助かったよ、善子」
善子「ふっ……この堕天使ヨハネにかかればこんなものね!」ギラン
うちっちー「涙で顔がぐちゃぐちゃだよ、堕天使さん」
善子「あ、えっと、これはぁ……!」
うちっちー「……あはは」
うちっちー「ねえ、善子……。少しの間、さくらうちを任せていいかい?」
善子「うちっちー……?」
うちっちー「……」
善子「……わかったわ。返事もまだ聞いてないし」
うちっちー「ありがとう。ボクは先に帰ると伝えてくれると助かるよ」
善子「うちっちー、あなた……何を……」
うちっちー「……じゃあ、またね、善子」
☆ ☆ ☆
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:51:39.11 ID:C0VN0tby0
ヒュルルルルル
ドーーンッ
パラパラパラ……
善子「花火始まっちゃったわよ、リリー」
梨子「……」スヤスヤ
善子「まったく、せっかく見たいって言ってくれたのに」ムスッ
梨子「……」
善子「綺麗な顔で寝ちゃって、まあ」ナデナデ
梨子「……」
善子「……」
善子「この前のお返し……しちゃうわよ」
梨子「……」
善子「いいのね? いくわよ? 起きないリリーが悪いんだからね!」
梨子「……」ドキドキ
善子「リリー……」
ヒュルルルルル
ドーーーーンッ……
善子「んっ」チュ
梨子「……っ///」
善子「ぷはっ……」
善子「はーっ、やっちゃった……///」
梨子「よっちゃんって、やっぱりイチゴの香りがする……」
善子「どひゃあっ!!」ビクッ
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 00:52:24.29 ID:C0VN0tby0
善子「お、起き、起きてたの!?」
梨子「えへ、実は?」
善子「はああ!? なら何か言いなさいよ! なんでずっと黙ってるのよ!」
梨子「だって、タイミング逃しちゃって……」
善子「もうっ、リリーのバカ……」
善子「って、ちょっと待って。起きてたのに、何も言わなかったって……」
善子「そ、それって……///」
梨子「ねえよっちゃん、お返事、してもいいかな」ニコ
善子「ひゃい!」
梨子「私ね、私も、よっちゃんのことが―――」
ヒュルルルルル
ドーーーンッ……
☆ ☆ ☆
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