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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 18:18:24.12 ID:fuPv5M+10
※注意※
このSSは艦隊これくしょん二次創作です。
キャラ崩壊や拙い表現力等があります。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1503739103
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 18:59:54.28 ID:fuPv5M+10
雪が降る北方で、ひっそりと佇む建物。本国から遠く離れたそれはほとんどの者が知らず、知っていても誰も近づかない。骨まで凍りそうな極寒のこんな辺境の地に飛ばされた青年が一人、送る用の船は、青年を下ろすとすぐに離れていった。
「うぅ…クソ寒い…」
とにかくこの風邪と雪から解放されるために建物に向かう。灯りは一切ついておらず、人の気配は全くしない。一応、扉をノックし誰かいるかを確かめる。すると、中から足音がこちらに近づいてきて扉を開けた。
「…どちら様かな」
「私は…」
中から出てきたのは少し青が混ざった白髪の少女、帽子に星のマークと錨の様なマークがある。蒼い目でこちらの姿をみると、何かを察したのかこちらが言い終わる前に建物の中に入るように促してきた。
「言わなくて良いよ、中に入って」
「ああ、ありがとう」
さっきの吹雪よりはましだが、建物の中もかなり寒い。底冷えするような寒さに、顔を歪めるが前を歩いている少女は平然として歩いている。
「な、なぁ」
「何かな?」
「暖房はつけないのか?これじゃあ、外も中も変わらないぐらい寒いんだが…」
「…執務室に暖房がある。それまでは我慢してほしい」
「ああ…」
寒さで倒れてしまいそうだ、せめてもう一枚上着を着てくれば良かったと今さら思っても時すでに遅し。執務室が近いことを祈ろう。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 19:32:32.60 ID:fuPv5M+10
2度階段を登り、廊下を歩く。途中、窓から外をみたが、吹雪で外が全く見えない。まるで、檻に閉じ込められているみたいだ。
「ここだよ、どうぞ」
キィと油の切れた音を立て、ゆっくりと扉が開けられた。意外と中は綺麗に掃除されていて整っている。
「ふぅ…」
暖炉に火がついていて、窓には結露ができている。コートを脱いで、荷物を机に置く。暖炉に近付き手をかざして暖をとる。
「さて、それじゃあ自己紹介していいかい?」
「ん?ああ、寒さのせいで忘れてた」
その華奢な体に似合わない敬礼をすると、名前を言い始めた。
「私は元ソ連艦『Верный』。よろしく司令官」
「君はソ連艦だったのか」
「そうだよ、元は違う国の艦だったらしいけどね」
「覚えてないのか?」
「思い出そうとしても靄みたいなのがあって思い出せないんだ」
「それにしても幌筵は寒い、君はそんな格好で寒くないのか?」
「あれぐらいなら大丈夫さ」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 19:33:00.68 ID:fuPv5M+10
スマホの充電がないので一旦ここまで
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 01:16:50.16 ID:S5rcsZpr0
それではまた始めます
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 02:04:47.30 ID:S5rcsZpr0
「ココアを飲むかい?少しは体が暖まるはずだ」
「ああ、頼む」
Верныйが部屋を出てココアを作りに行ってくれた。それにしても幌筵がここまで酷く寒いとは思わなかった。確かにユーラシア大陸からくる風は強く冷たいが、それに加えて吹雪まで起きるともう凍え死んでしまう。何故こんなところに泊地を作ったのか分からないが、恐らく戦術的なものがあるんだろう。そんな考え事をしていたら、Верныйドアを開けてココアを持ってきてくれた。
「ほら、少し熱いかもしれない」
「ありがとう」
差し出されたココアを縁を持って受けとる。さっきまで外に居たせいか手袋越しでも異様にココアが熱い。手放すことはなかったが、1度机に置く他なかった。
「ふふっ、熱かったみたいだね。それを飲み終わったら君の事を聞かせてほしい」
「そういえば俺はまだ名前も何も言ってなかったな。ちょっと待ってくれ」
出来るだけ早くココアを飲もうと口をつけるが、あまりの熱さにあまり飲めない、口をつけては放してを繰り返して飲んでいると、飲み干すのに五分もかかってしまった。その間、隣からはクスクスと笑い声が聞こえてきていた。
「ふぅ、やっと飲めた」
「ふふっ、だいぶ苦戦していたね」
「すまない、まさかあそこまで熱いとは思わなかった。それじゃ」
軍服の襟や裾を正し、軍帽を深く被る。
「私は新たにこの幌筵泊地に着任した、『明戸 玲二』少佐だ。前までは舞鶴で補佐をしていたが、こちらに飛ばされることになった」
「へぇ、左遷かな?」
「考えたくない事を言わないでくれ…」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/27(日) 02:32:49.59 ID:6TSrzJN/0
期待
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 09:00:30.34 ID:S5rcsZpr0
Верныйは、微笑んでクスクスと笑っている。私もそれにつられて笑ってしまった。一応一通りの話を終え、持ってきたカバンを開ける。中には万年筆や私服一式、軍人手帳、日記帳とメモ用紙が入っている。ちゃんと忘れ物はしてないようだ。
「何を持ってきたんだい?」
Верныйが隣から顔を出してカバンの中を覗き込んでくる。大して面白いものは入ってはいないが、どうやら好奇心旺盛の様だ。しゃべり方や振る舞い方はまるで大人のようだが、まだ心は子供のままらしい。
「これはなんだい?」
1枚の写真をカバンから取った。
「この幌筵に来る前に現像しておいた写真、まだ私が軍人になる前の家族写真だ」
Верныйに教えると、やけに姉の姿を見続けていた。
「家族写真…何だろうな、こう言うのを見ていると何かモヤモヤする」
「そういや、ソ連艦の前はどこかの国の船だったな。私は船に詳しくないから分からないが、その前の国で同じような写真を取ったんじゃないのか?」
「そうかもしれないな、まぁ思い出せても良かったぐらいの程度だろうけどね」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/27(日) 09:01:07.11 ID:S5rcsZpr0
ここまで、寝落ちして申し訳ない
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/27(日) 19:18:54.69 ID:niVVQZVT0
期待
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/28(月) 00:37:02.72 ID:IYrDO8pO0
再開、明日から学校が再開するので更新が遅れるかもです
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/28(月) 01:16:21.42 ID:IYrDO8pO0
写真を写真立てに入れて机にかざり、椅子に座ったときに見やすいよう調整する。これである程度自分の荷物はほぼ出しただろう。私服は使うまでこのカバンに入れ続けておこう。
「さて、荷物はもう触らなくて良いだろう。Верный、仕事をしよう」
これからはこの幌筵で頑張っていくぞと気合いを入れ直し、椅子に座って仕事を始めようとしたときВерныйはキョトンとした顔でこちらを見ていた。
「どうしたВерный、流石に着任早々から仕事をサボる訳には…」
「いやそうじゃなくて、ここでどんな仕事をするつもりだい?」
「そりゃあ、工廠で建造や装備開発をしたりだな」
「ここの設備は全て壊れてるけど、どうやって建造・開発をするんだい?」
その言葉を聞いた途端、目眩がした。建造するための設備が壊れているのにどうやって戦力を増やせというのか。これじゃあ、こんな辺境の地でどうやって過ごしていけというのか。
「…どうするんだよこれ。完全に厄介払いじゃないか。とにかく残っている資源の量を確認しよう」
「そうだね、倉庫に案内するよ」
コートを羽織、軍帽をかぶり直して執務室の外に出る。さっきまでの暖房がある執務室とは違って、廊下は嫌な寒さがある。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/28(月) 01:29:53.07 ID:IYrDO8pO0
相変わらずВерныйは平気な顔をして廊下を歩いているが、どれだけ寒さに強いのだろうか。流石は元ソ連艦と言ったところか、それとも幌筵に過ごしていて慣れたのか。もし後者ならば私も見習わなければならない。
「寒さでここにいるのが嫌になったかい?」
「そうじゃない、寒さに強いВерныйが純粋に羨ましいんだ」
「ずっと寒いところに居たからね、嫌にでも慣れる。司令官もじきに馴れるさ」
「ずっとか、幌筵にはどれくらいここで住んでるんだ?」
この質問をした途端、Верныйの声色が変わった。
「…どれくらいだろうか。わからないよ、独りで居る時間が多すぎたせいでここに来た記憶さえ消えてる」
「ずっと独りで、か…」
「別に私に気にかける必要はないよ。所詮駆逐艦何て使い捨ての駒でしかないしね」
そういうВерныйの顔はどこか寂しそうで、私たちの間に少し気まずい空気が流れてしまった。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/28(月) 01:30:24.59 ID:IYrDO8pO0
ここまで
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/30(水) 00:20:19.63 ID:3WCjd/8f0
再開します
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/30(水) 01:06:39.30 ID:3WCjd/8f0
「その…なんだ?これから俺たちはここで2人暮らしなんだ。これからは協力して生活していこう」
「…そうだね。これからは2人で生きていこうか」
Верныйはこちらを見ることは無く、ただただ倉庫に向かって歩いているだけだ。
「(まずいな…この空気が続いたらこれからの生活に支障が出かねない…)」
「ほら、ここが倉庫だ。所々床が凍っているから足元には気を付けてほしい」
「おう、気をつけ…うおっ!?」
足を思いっきり滑らせ、尻を床に強打した。それに加えて、床がコンクリートということもあり、数分はその場に座り込んでしまって立つことが出来ない。
「言ったばかりなのに、全く君というやつは…ほら、立てるかい?」
「すまない」
Верныйの差し出してくれたを握り、何とか立ち上がる。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/30(水) 07:22:46.13 ID:3WCjd/8f0
「いててて…」
打った尻はヒリヒリと痛む。恐らく赤くなっているだろうが、今はとにかく倉庫に残っている資材を数え始める。
「燃料は多く余ってるみたいだ、だが弾薬、鋼材がが壊滅的だね」
「鋼材と弾薬が無いのか、一度中央に連絡して、こっちに資材を送ってもらうか」
メモ帳に今の資源の現状を書き込み、要望することを箇条書きにして書き留めておく。まぁ、そもそも電子機器が機能していたらの話だが。
「さてと、資源はこんなもんか。後は食糧か、定期的な供給をしてもらいたいものだが…」
「こんな辺境の地に輸送艦が来るのかい?」
「吹雪が1日でも弱まってくれれば来てくれるはずだ。そうじゃないとこれが飢え死ぬ。艦娘はその辺りどうなんだ?」
「燃料と弾薬、鋼材があれば生きていけるよ。艤装をつけてたらね」
「なるほど、艤装をつけるかつけないかで変わるのか。艦娘というのはよくわからないな」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/30(水) 07:24:15.52 ID:3WCjd/8f0
すみませんね落ちしました。
ここまでです
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/03(日) 22:21:00.91 ID:m7DDZgrW0
再開します
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/03(日) 23:09:07.12 ID:m7DDZgrW0
残っている資材を確認し終えると、執務室に戻るために外に出る。相変わらずの視界の悪さに凍りそうになるほどの寒さ、慣れるまで長い時間がかかりそうだ。
「そういえば、司令官はどこから左遷されたんだい?」
「だから左遷て…私は舞鶴で大将の補佐をしていたんだ。好感度を上げるために、結構努力したはずなんだがなぁ〜」
Верныйがクスクスと笑っている。吹雪の中でもその笑顔はかき消されること無く、ハッキリと浮かび上がっている。
「こんな辺境の地に飛ばされて君も不幸だったね。2人だけでこの吹雪の中、暮らすのは辛いものがあるんじゃないかな?」
「そうだなぁ、とにかく執務室で中央に連絡を取らないことには始まらない。必要最低限の食糧と資材を輸送してもらわないと冗談抜きで私が死ぬ」
「死なれたら死体の処理をしないとだから、死なないでほしい」
「怖い事を言わないでくれ…君がいうと何故か冗談に聞こえないんだ」
「ふふっ♪」
Верныйの笑顔は可愛らしいが、目が笑っていない。その目の奥はまるで氷のように冷たい。
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/03(日) 23:57:14.17 ID:m7DDZgrW0
執務室の前に戻ると、まるで実家に戻ったような安心感に包まれる。穏やかな気持ちで扉を開けると、机の上でちょこんと座わっている何かを見たとき私はギョッとした。20p程の2頭身の小人だ…
「あ、貴方がここの司令官ですね?」
「しゃ、喋った…」
「貴方がここに着任してくれたお陰で、ようやく私たち妖精が生成されました!」
「妖精?生成?どういうことなんだ…」
「んと、説明した方が良さそうですね」
私は椅子に座り、Верныйは窓のそばで立っている。妖精は説明を始める。
「まず、私たちは司令官さん達や艦娘達から妖精と呼ばれてます。全鎮守府、泊地で司令官が着任すると生成されるようになっていて、設備の機能と司令官の補助をするようになっています」
「それじゃあ、君たちがいれば建造や開発が出来るようになるのかい?」
「そうです!流石は司令官!物分かりが早いですね!今は壊れている設備も、私たちがいればささっと直してしまいます!」
これで1回だけでも建造が出来る。別にВерныйが嫌という訳ではないが、人は多い方が楽しい。
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/03(日) 23:57:57.34 ID:m7DDZgrW0
ここまでです
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/04(月) 18:41:53.35 ID:eY5oYx4v0
おつ
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/09(土) 18:18:12.41 ID:VCCttfCQ0
再開します
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/09(土) 18:54:30.11 ID:VCCttfCQ0
「なら、早速建造で新しい娘を迎え入れよう。Верныйもそれで良いよな?」
「そうだね、人は多い方がいい」
「分かりました!それでは先に行って待ってますので、来てくださいねー!」
ふわっとその場から妖精が姿を消すと、そこには歯車が5つ置いてあった。ご丁寧にメモ用紙まで置かれていて、中に建造の仕方が書いてあった。
「へぇ、この歯車で艦娘が出来るのか。艦娘には謎がいっぱいだな」
「へぇ、私はその歯車から作られたのか」
「知らなかったのか?」
「まぁね、自分でも自分がよくわからないよ」
「そういうものなのか」
歯車を軍服のポケットにいれ上からコートを重ね着する。窓の外を見ると、だんだんと吹雪が強くなっているのがわかる。
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/09(土) 19:19:36.30 ID:VCCttfCQ0
工廠へはまだ案内されていない。Верныйには再び先導してもらい、妖精が待っている工廠へ向かう。
それにしても、こうも吹雪の音しかしないと何故か不安にかられる。
「そうだ司令官」
「ん、どうした?」
「私の部屋にだけは絶対に入らないようにしてほしい」
「あぁ、別に構わないが」
「ありがとう」
それほど見られたくないものがあるのだろうか。見た目は少女だから、もしかしたら思春期というものが艦娘にもあるのかもしれない。Верныйの機嫌を損ねないように、部屋には入らないでおこう。
そんなことをいっていると、工廠へ向かう渡り廊下にたどり着いた。筒のようになって、外の寒気に晒されないようになっている。
「この先が工廠だよ」
「工廠には、外に出なくても向かえるんだな。寒いのにはかわりないが」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/09(土) 19:20:08.51 ID:VCCttfCQ0
ここまで
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/09(土) 19:36:50.40 ID:pM2DwMK00
おつかれさん
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/11(月) 21:32:40.43 ID:6RtuXDBn0
乙
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/16(土) 23:14:08.65 ID:G0vTotL+0
再開します
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/17(日) 00:08:50.48 ID:x/v0PbBI0
通路を進み重々しい鉄製の扉を開ける。鉄の臭いと油の臭いが鼻につき、Верныйも顔を歪めている。
「臭いが酷いな。Верный、工廠の掃除はしなかったのか?」
「地図で見ただけだからね。中には入ったことなかったよ」
未だに顔を歪めている。今までに何回か左遷される前の鎮守府で工廠には入ったことはあったが、いったいどれだけ放置すればここまで酷くなれるのだろうか。
「あ、こっちですこっちです!」
声のした方向を見ると、装置の上でピョンピョンと跳ね、手を振ってこちらに気づいてもらおうと精一杯努力していた。
「やぁ妖精、ちゃんと来たぞ」
「はい、それはいいんですけど。ちゃんと歯車持ってきましたか?」
「安心しろ。ちゃんと持ってきてるぞ」
コートのポケットから出した歯車を見るとホッとした様子で装置を起動していた。
「よかったよかった。それじゃあ、その歯車をこの窪みに、ググッと押し込んでください!」
「こうか?」
窪みにはめると、装置がガコンという音をたてて起動する。歯車が輝きはじめ、ゆっくりと回り出す。
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/17(日) 07:19:38.89 ID:x/v0PbBI0
「あ、使用資源はどれくらいですか?」
「えっと、今は人数を増やしたから最小値で頼む」
「はいはーい!」
妖精が何やらボタンを押すと天井からアームが降りてきて、資材つかんで装置の中へ放り込んでいく。
「すごいな。こうやって艦娘が生まれるのか」
「前居たところではさせてもらえなかったのかい?」
「ああ、建造が出来るのは鎮守府の最高権力者である大将殿だけだったからな」
話している間にも装置は稼働し続け、中からは鉄を金槌で叩く音が聞こえる。
「はい!これで工程完了です!後は20分ぐらい待つか高速建造材使うかどうかですけど、どうします?」
「おとなしく待つよ、高速建造材がいつ必要になるかわからないからな」
「分かりました!それでは私はこれで!」
妖精がその場で一回転して姿を消す。さて、どうしたものか。20分を何もせずに待つと意外と長い。とはいえ、また執務室に戻るのも嫌だ。
「司令官」
「ん?どうした、Верный」
「少し眠くなってきた。先に部屋に帰っても良いかい?」
時計を見ると、既に午前1時になっていた。さっきまで昼だったのに、夜になるのは早いものだ。
「ああ、良いぞ。俺も建造が終わったら戻る」
「ああ、お休み。司令官」
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/17(日) 07:20:08.40 ID:x/v0PbBI0
ここまで
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/17(日) 11:33:31.39 ID:/MyckWKL0
おつです
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/17(日) 17:12:24.14 ID:KecaZgZd0
乙
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/27(水) 22:13:22.79 ID:FBBzDfqD0
再開します
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/27(水) 22:57:09.03 ID:FBBzDfqD0
先にВерныйが工廠から出ていき、工廠の中には稼働中の装置の音しかしない。
「っ〜〜…はぁ、俺も眠くなってきたな。建造が終わるまで少し寝るとするか」
壁の側に寄りかかって座り込む。今までの疲れが出たのか、睡魔によって意識を手放すのは早かった。
「司令官さん、建造した後のことなんですけど…ってあれ?」
妖精が建造後の後片付けを聞こうとしたときには、既に提督は寝息を立ててグッスリと眠っていた。
「あらら、寝ちゃってますね。風邪引いたらダメだから毛布でも…」
備え付けの毛布を提督の体にかける。工廠の中とはいえ、底冷えするような寒さだ。
「さてと、なら後片付けはこっちで勝手にさせてもらいますね〜」
妖精が再び姿を消し、自分の作業にへと戻っていった。
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/27(水) 23:17:55.45 ID:FBBzDfqD0
「……っ…?」
何分経っただろうか。目を覚ますと、いつのまにか毛布がかけられており装置の騒音も止まっていた。
「ああ、建造が終わったのか。よっと」
眠たいからだを無理やり起こし、装置の前までよろよろと歩く。
「やっぱり中途半端に寝るとよけい眠たくなるな。次からはもう少し考えて寝るとしよう
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/27(水) 23:18:46.42 ID:FBBzDfqD0
いったんここまで
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/29(金) 22:34:39.65 ID:9QAU+S/m0
再開します
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/29(金) 23:18:34.31 ID:9QAU+S/m0
装置の前に立つと、どこからか私の姿を感知したのか自動で扉が開いた。ガコンっと音を立て、中から少女が出てきた。
「えっと、ここの司令官かな?」
前に舞鶴で見たことがある制服だ。確か…村雨という艦娘が着ていた制服だったか、と言うことはこの娘は白露型なのだろう。とりあえず、名前を聞いておこう。
「ああ、君の名前は?」
「僕は白露型二番艦、時雨。これからよろしくね」
綺麗な水色の瞳に三つ編みの髪、背負った少し大きめの艤装。Верныйと同じぐらいの身長の少女。
「幌筵泊地へようこそ。私もまだ着任して一日もたってないから説明は出来ないが、執務室に案内できるぞ」
「なら、執務室に案内して欲しいな」
「ああ、分かった」
時雨を連れ、執務室へ向かう。
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 00:50:04.18 ID:kHvnv4hL0
おつおつ
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:41:07.38 ID:Cmd4XTLW0
執務室へ向かっている最中、渡り廊下を渡りきった時のことだった。廊下の向こう側でВерныйの姿が見えた。Верныйは既に部屋に戻って眠っているはず、なぜあそこに居るのだろうか。
「提督、あの娘はここの艦娘?」
「ああ、だが先に部屋に戻って寝たはずだが…」
呼びかけようとしたとき、フラッと進路を変えて姿が見えなくなった。
「見えなくなっちゃったね」
「まぁ、眼が覚めてトイレでも行ってたんだろう。…トイレの場所を聞くの忘れてたな。朝一に聞かなければ」
Верныйの事は気がかりだが、今は執務室へ向かおう。いい加減、私自身も眠たくなってきた。相変わらず外の吹雪は止まず、窓に雪がへばりついている
。
「時雨、だったか。村雨って娘を知ってるか?」
「もちろん、村雨は三番艦で僕の妹に当たるよ」
村雨の方が妹…パッと見では村雨の方が姉に見えるのだが…
「提督、今失礼なこと考えたね?」
「い、いやそんなことはないぞ」
この娘はエスパーか何かか?
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 06:41:44.08 ID:Cmd4XTLW0
ここまで
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 15:55:37.70 ID:Cmd4XTLW0
再開します
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 16:59:52.18 ID:Cmd4XTLW0
執務室の前につくと、時雨が服を引っ張ってくる。何事かと思い振り向くと、少しかしこまった様子でこちらを見つめていた。
「その、提督…僕あんまり他の娘と話すのが得意じゃないんだ。良かったら慣れるまで助けてくれると嬉しいんだけど…」
「安心しろ、今この幌筵には私とВерныйしか居ない。大きさの割りに寂しい白地だよ」
「ふふっ、提督は面白いね」
「あ、あんまり面白い事言ったつもりは無いんだがなぁ…」
時雨のことが良く分からないと思うのは私だけだろうか。だが、これでこの泊地へ3人になった。確かに少ないがそれでもまだマシだ。執務室の扉を開けて暖かい天国へ入る。
「ふぅ、流石に執務室は暖かいな。時雨、名簿に君の名前を追加する。何か名前の他に記入して欲しいことは?」
「そうだね、1つだけ『ム望造建艦妹姉』とでも書いといてよ」
「…直接言わない辺りいやらしいな」
「僕は他人に自分の気持ちを伝えるのも苦手なんだ♪」
「そうか、なら名簿に『ズラカベルス話会』とでも書いとくとしよう」
「…提督もいやらしいじゃないか」
「お互いにな」
名簿に時雨の名前と詳細を書いていく。もちろん、先程の『ム望造建艦妹姉』もだ。もし姉妹艦が4、5人集まったら消しておこう。
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 17:53:37.91 ID:Cmd4XTLW0
「それで時雨、今の時刻を見て欲しい」
「えっと…午前2時だね。もう良い子は寝てる時間だ」
「そうだ、そして私たちは悪い子になってしまうな。それにこれ以上起きていると、昼夜逆転した生活を送ることになる。廊下を通った時に分かっただろうが、ここは吹雪で全く外の様子が分からない。せめて時計だけでも昼夜に従いたい」
「その時計が正確だと良いね」
「安心しろ、ちゃんと来る前に合わせてきた。滅多なことがない限りずれないぞ」
「なら嬉しい限りさ」
暖炉の火を消し、懐中電灯を取り出して部屋の明かりを消す。そういえば寝床を作っていなかった、どこかの空き部屋で一晩を過ごすとしよう。
「提督、今日は僕と一緒に寝ないかい?」
「何を言い出すんだいきなり」
「冗談だよ、もうちょっと照れてくれたって良いじゃないか」
「すまんが、そういうのは幼馴染で間に合っている」
「あーあ、つまんないや…」
時雨という娘がどういう娘なのか更に分からなくなってきた。とにかく今日は隣で一夜を過ごそう。
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/30(土) 17:54:10.94 ID:Cmd4XTLW0
ここまで
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 18:39:37.32 ID:7dSISGHWO
乙
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 01:04:00.68 ID:LN/fEczn0
おつおつ
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/22(日) 21:57:43.96 ID:SGGQmyHZ0
再開します
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/22(日) 23:04:07.80 ID:SGGQmyHZ0
「っ〜〜…眠たくなってきたな。この部屋でいいか」
適当に側にあった部屋に入ることにする。スイッチを入れて電気をつけると二段ベッドが二つ、奥には机が机があり挟むようにロッカーが二つ、向かいに二つの計四つある。が、金具は錆びまともに開けられそうにもなかった。
「時雨はどこに寝るんだ?」
「僕は提督と一緒のベッドが良いな。この部屋寒いからかけ毛布だけじゃ足りないよ」
「確かに寒いが他のベッドから毛布をとってこれば良いじゃないか。別に俺と一緒に寝なくても…」
時雨が目をじっと見つめる。まるで誰が譲るもんかと抗議をするかのようだ。
「わかったわかった。これ以上言っても無駄みたいだしな」
「えへへ♪」
上着を脱いでベッドの端にかけておく。時雨は嬉々として毛布をとって来ると、同じ毛布の中へ入り込んでくる。モゾモゾと動かれてかなり気になる。しかし、時雨の体温が高いのか引っ付かれるだけでかなり暖かい。
「なぁ時雨」
「ん?どうしたの提督」
「まだあって一時間も経ったかどうか怪しいが、何で俺にそんなに引っ付いてくるんだ?普通は距離を開けて様子を見ると思うんだが」
「うーん、何でって言われても…初めてあったのが提督だったから、かな?」
「なるほど、生まれたてのひなが初めてみた鳥を親鳥と思い込むのと同じ原理か」
「僕は生まれたてのひなだと言いたいのかい?」
「間違ってるか?」
「ぐぬぬ…」
段々と力強く抱きついてきて少し暑い。こんな寒い部屋の中でまさか暑いと思うとは思わなかった。
「悪かった悪かった、抱きすぎで暑い」
「ダメ、朝までこうする」
「はいはい、おやすみ」
頭を撫でてやると目を瞑って顔を擦り付けてくる。
こう見ていると、犬を思い出す。
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/22(日) 23:43:30.50 ID:SGGQmyHZ0
何分ぐらい撫でていただろうか。ふと気がついて布団の覗き込むと、時雨は穏やかな顔で眠っている。自分も枕に頭をおき、目を瞑る。体がベッドに深く沈み込み、力が抜けていく。
「て、提督。もう寝たかい?」
時雨の呼ぶ声が聞こえる。だが、あまりの眠気と脱力感で答える気にならない。
「そっか〜…寝ちゃったかぁ〜…」
しょんぼりとしたような声色で時雨がまた布団のなかに潜り込んでいく。が、こっちはすでに頭が回らない。考えることをやめ意識を捨ててしまおう。
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/22(日) 23:43:59.41 ID:SGGQmyHZ0
ここまで
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/23(月) 11:39:38.86 ID:L+Hxs53a0
どうしてウチの時雨ちゃんは画面の外まで着いてきてくれないんだろ……
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 14:56:09.00 ID:oyhUll3T0
再開します
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 16:06:35.18 ID:oyhUll3T0
あれからどれ程寝ただろうか、窓が無いため外の明るさも分からない。まだ時雨は布団の中で寝息を立ている、もうВерныйは起きているだろうか?ベッドが抜け出て上着を羽織り部屋の外に出る。廊下は明るい白の光で照らされており、目の奥まで光が届くようだ。執務室の扉を開け、中に入ると既にВерныйが暖炉に薪を焚べて火力を調整していた。
「やぁВерный、おはよう」
こちらに振り返ると少し不思議そうな顔をし、目を細める。少しして普段の表情に戻ると挨拶を返してくれた。
「おはよう、"提督"」
椅子に座り机の上を見回す。相変わらず書類も何もない、あるとしたら用もないのに置いてある万年筆だけだろうか。今日は強い風が叩きつける音もせず、雪も降っていない。
「さてはて今日はどうしたものか。運動するついでに島の見回りでもするか」
「いいと思うよ」
「少し外に出てくる。時雨が起きたら外に出ていると伝えてくれ」
「了解」
コートを羽織り、防寒具を整える。多少は体を動かせるだろう。
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 17:06:35.10 ID:oyhUll3T0
外は案の定辺り一面雪景色、枯れた木が何本か哀しく立っているだけで他には何もなかった。本当にここが軍事施設なのかと疑問になってくる程だ。港、といっても少し舗装されただけの桟橋まで来ると、遠くの方に小さな島影が見える。
「うぅ…」
どこからか女性の呻き声が聞こえたような気がした。もしもこんな極寒の中で倒れてしたら大問題だ。とは言え、こんな所に人が倒れているとも考えづらい。自分の疲れから来た幻聴かもしれない。
「おい、誰か居るのかー?」
少し待っても返事はなかった。そろそろ切り上げようと踵を返す。
「ん?」
突然右足が何かに固定されたように動かなくなった。
「ま、待って…」
「うおっ!?」
いきなりのことに体が飛び上がってしまう。すぐに足元を見ると雪の中から手が出ていた。
「ひっ、引っ張って…」
「お、おう…」
ゆっくりと引っ張り上げると、金髪の少女の顔が出てきた。意外と顔色は良く寒がっている様子もない。
「ぷはー…新鮮な空気…」
「…寒くないのか?」
「あ、うん。えっと…最後まで引っ張ってくれると嬉しいかなぁ〜って…」
「分かった」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 17:07:33.80 ID:oyhUll3T0
ここまで
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/05(日) 18:20:00.81 ID:LOS5R7RAO
乙
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/21(火) 13:45:28.77 ID:EAi+tSFy0
再開します
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