少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」

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225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/26(土) 07:49:40.27 ID:mlt0YSOoo
乙ですぞwwwwww
しかしムックはありえないwwwwwwぺゃっwwwwww
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/26(土) 11:23:44.78 ID:Ue2pLgH20
おもろい
227 : ◆mclKiA7ceM [saga]:2017/08/26(土) 18:24:27.53 ID:Rg3u98mHo
感想ありがとうございます。とても励みになります
緑は敵ですぞwwwwwwぴゃっwww


それでは、第二章を開始します。
今回も200レスほどの予定です。
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:24:57.88 ID:Rg3u98mHo




ザァー…



少女「……、んっ……」

少女「ぐっ、うぅ〜……、くぁ〜〜〜」ノビッ


少女「あれ、ココは……」ガバッ


少女「……そっか、男さんの家か」

少女「あれ、でもさっきまで、COMIKEから帰って……」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:25:25.96 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」


チクタク チクタク


少女「……3時」

少女「外は真っ暗……」

少女「ああ、そうか。もう朝になったのか……」


少女「…………」

少女「なんだか、肌寒いな」
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:25:52.29 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」


少女「……寒いのは、イヤだな……」


少女「……?」

少女「あれ。そういえば、男さんがいないな……」

少女「昨日は、この部屋で一緒に寝てたハズなのに」


少女「ああ、でも向こうの部屋だけ明かりがついてる」

少女「ヨイショっと」タタッ

少女「髪を……、まとめて……」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:26:21.94 ID:Rg3u98mHo


――ダイニング

少女「男さーん!」

男「ん。今、起きたか」

少女「ええ。ゆうべはグッスリ眠れたようです!」

男「なら良かった。出発まではまだ時間がある。体の調子を整えろ」スイッ スイ

少女「……? あの、男さんは、何を?」

男「ケータイで今の状況を調べていた」

男「どうやらココと同じく、有開でも雨が降っているらしいな」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:26:48.39 ID:Rg3u98mHo

少女「雨……」

男「天気予報では、昨日と同じく、朝は降ってても昼にはやむようだが」

男「とはいえ、待機列で雨に降られるコトは間違いない」

男「ある程度カクゴしておくことだな」

少女「……そうですか」

男「……? どうした。元気無いな。朝は低血圧か?」

少女「ええと……、ですね。それも、ありますが……」


少女「……ちょっと、私のハナシ、してもいいですか?」
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:27:14.66 ID:Rg3u98mHo

男「…………」

男「わかった。聞こう」

男「ソコに座れ」ガタ

少女「ありがとうございます」


男「…………」

少女「…………」


男「……何か、飲み物を入れるよ」

男「寒いし、ホットコーヒーでいいか?」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:27:54.81 ID:Rg3u98mHo

少女「ホットコーヒー……」


少女「……ええ。お願いします」フフ

男「……? なに笑ってるんだ……」


男「ああ、そうだ。俺はあいにくとブラック派でな。牛乳と」

少女「―――牛乳とガムシロップの貯蔵は無いが、フレッシュならある」

少女「……ですか?」


男「……!」

男「あ……、ああ。たしかにそうだが……」
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:28:21.53 ID:Rg3u98mHo

少女「いいえ、構いませんよ。実は私もブラック派なので」

男「ほう。その年の頃で、たいしたモノだ」

少女「ムカシから飲んでいますから」



男「……そら、コーヒーだ」コト

少女「うぅ……ん。おごそかな闇色の薫り……」スン

少女「一日はコレが無いと始まりませんね」

男「ふふっ。通だな」

男「俺も食にコダワリは無いが、コレだけはな」ズズ
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:28:50.04 ID:Rg3u98mHo

少女「……苦くて、熱いですね。五臓六腑に染みわたります」

男「飲みすぎはキンモツだぞ。さて、ハナシを聞こうか」

少女「…………」

男「…………」


男「……話しにくいなら、別にいいんだが」ボリボリ

少女「いえ。私から言い出したコトですから、喋らせてください」


少女「……そうですね。男さんには、知るヨシも無いと、ことわっておきますが……」

少女「私の“ふるさと”のハナシです」
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:29:17.48 ID:Rg3u98mHo

男「ふるさと。そういえばお前、いったいどこから来たんだ?」

少女「お教えしても良いんですが、絶対にご存知無いので、やめておきます」

男「おいおい。俺だって、そんなに世間知らずじゃ……」

少女「私にはそう断言できるのです」

男「…………」

男「……そうか。なら、まあいいがな」


男「で。お前の“ふるさと”というのは、どういうところなんだ?」ズズ

少女「……。そう、ですね……」
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:29:44.58 ID:Rg3u98mHo

少女「……いいですか。カーテン」

男「ああ」

シャアッ



            ザァー…



少女「私のふるさとは、こんな風に、いつでも“雨”が降っているところです」

少女「いつでも。どこでも。いつまでも」

少女「やむコトの無い雨が、永遠に降り続けている場所です」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:30:11.81 ID:Rg3u98mHo

男「…………」

少女「まあ、そんなワケですから。私は生まれてからずっと、屋根の下で育ちました」

少女「別に、私にはソレが常識でしたので、何とも思いませんでしたが」

少女「この国に来て、青い空、白い雲、眩い海、瞬く星というのは」

少女「絵本の創作ではなく、本当に存在するモノだと、初めてこの肌で感じたのです」

男「それは、東狂の海か?」

少女「ええ。どこまでも眩く照らされる海、無窮に瞬く星々……」

少女「世界というのは、スバラシイものですね」

男「田舎のほうに行けば、自然はもっとキレイだぞ」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:30:38.03 ID:Rg3u98mHo

少女「ええ。一度、行ってみたいモノです」


少女「でも、私の“ふるさと”は」

少女「今の、この景色のように」

少女「ずっと、雨が降っていました」



            ザァー…



少女「ずっと、ずっと、ずっと……。終わるコトの無い雨」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:31:04.68 ID:Rg3u98mHo

少女「それに、この“雨”というのは、いささかタチの悪いモノでして」

少女「浴びると、カラダに良くないのですね」

男「……酸性雨のようなモノか?」

少女「きっと似ていますが、もっと、もっとタチの悪いモノをご想像いただければ」


少女「とにかく、その“雨”は、人々の往来を億劫にさせました」

少女「必然、一ヶ所に多くのヒトが住むと、食糧や資材も大量に必要になりますから」

少女「なるたけ行動しなくて済むように、少人数が分かれて住むようになったのです」

男「……それは、面白くないな」
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:31:30.99 ID:Rg3u98mHo

少女「ええ。面白くありません」

少女「一緒に遊んでくれるオトナのヒトも、同年代の友達も少ないですから」



            ザァー…



少女「でも、そんな私にも、一つだけ楽しみがありました」

少女「それは、おじいちゃんから、大人数のヒトが集まっていた時のハナシを聞くことです」

男「君のおじいちゃんか。いったい、どんなヒトなんだ?」

少女「うーんと。そうですねえ……」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:31:57.91 ID:Rg3u98mHo

少女「普通のおじいちゃんでしたよ。うん、ごく普通の」

少女「物静かで、落ち着いていて……。優しくて、モノ知りで……」

少女「私の、大切なおじいちゃんでした」

男「…………」


少女「そんなおじいちゃんから聞いたんですね。私は、COMIKEのハナシを」

少女「もっとも、私が聞いたのは“コミケ”だったような気もしますが……」

男「ほーう。孫にCOMIKEのハナシをするとは、かなり変わったおじいちゃんだな」

少女「ええ、本人もそう言っていました」

少女「でも、私はそのハナシが好きでした」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:32:24.33 ID:Rg3u98mHo

少女「私には考えられないくらいのヒトが集まって……」

少女「その人々には、それぞれ一人一人に、目的が、嗜好が、人生があって……」

少女「自分のほんの人生の一部を見せ合い、認め合う」

少女「COMIKEはそんなところだと、おじいちゃんは話していました」


男「そんなキレイなモンじゃないぞ? COMIKEは」

男「色んなヒトが集まりすぎて、体臭はクサいし、変なヤツもやってくる」

男「昨日今日はマシそうだが、もし気温が上がれば、会場自体どうなるコトか」

少女「あはは。ソレについては、身をもって体感するコトにします」
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:32:50.78 ID:Rg3u98mHo

少女「でも、伝え聞くCOMIKEの姿は、とても楽しそうで……」

少女「貸してもらったチャームや同人誌からも、その光景を想像していました」

男「お、おい……。お前のおじいちゃん、同人誌も持ってたのか?」

少女「ええ。その手のマニア、というワケではないようでしたが」

男「ちなみに聞くが、同人誌といっても、普通の本と変わらない健全なやつだよな?」

少女「いいえ? えっちぃのも多かったですが。えへへ」

男「えへへて……」

男「おじいちゃん。あなたは孫を、どんな風に育てたいんですか……?」

少女「ふふ。でも、ソレも、必要なコトだったのかもしれませんね」
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:33:17.78 ID:Rg3u98mHo

少女「そしていつしか、私は、生でそのお祭に参加してみたい」

少女「そう思うようになりました」

男「だから、一昨日、ココに来たのか」

少女「ええ! その機会を手に入れた私は、それはもう、バビューンと!!」スッ…

少女「はるばるやってきたのですよ!!」シャキーン

男「……ふっふっ。エネルギッシュなヤツだ」

少女「ええ! 不肖私、元気なコトだけが取り柄なので!」

男「結構。だけどその元気も、二日目、三日目のいつまで保つかな?」

少女「いつまでも、ですよーっ!!」
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:33:45.13 ID:Rg3u98mHo


少女「……ふう。話してたら、なんだか目も覚めました」コト

少女「さあ、男さん! 出発はいつにしますか!?」

男「そうだな、それじゃあそろそろ行くとするか」ガタ

男「だが、出来ればその前に腸の中のモノは出しておけ」

男「並び始めたら、待機列確定まではガマンしてもらうぞ」

少女「うぅ……。ちなみに、どうしてもダメだったら?」

男「喜べ。一気に十数万人の中のスターダムだ」

少女「そんなの喜べませんよーっ!!」

男「スターダストともいうな」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:34:13.55 ID:Rg3u98mHo


少女「ぐぅぅ……っ、そんなハナシしてたら、なんだか下ってきました」ゴロゴロピー

少女「では! ちょっと! おトイレお借りしますね!」ダダダッ

男「はいはい。……やれやれ、生理現象までニギヤカなヤツだ」


男「さて、アイツ薄着だし、防寒用のズボンも用意してやるか……」ガサガサ

男「それと上着。夏コミで追加の上着なんて、珍しいコトだが」

男「この雨だとレインコートじゃダメかもしれんな。使うかどうかは別にして、折り畳み傘か……」

男「あと、重要なのが防水カバー。戦利品を濡らすワケにはいくまい」ゴソゴソ


男「…………」ピタ
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:34:40.32 ID:Rg3u98mHo

男「雨の降り続ける世界、ね」

男「一日中昼だったり、夜だったり、凍ってたりする国ならまだしも」

男「ニワカには信じがたいハナシだ、が」ギュウギュウ

男「……アイツがウソをついているというワケでもないだろう」

男「……本当に存在するのか、そんな国が」

男「…………」


男「少人数で人々が暮らして、COMIKEも行えない世界か」

男「……ふん」

男「あまり、好かんな」ギュウギュウ
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:35:07.05 ID:Rg3u98mHo


――アパート前の道路

少女「男さん! 今日も今日とて重装備ですね!」

男「雨だから、特にな。それに列待機用のジュンビもある」


ブロロロロロ

キキー


カパッ

運転手「どうぞ」
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:35:33.94 ID:Rg3u98mHo

少女「おっ! 昨日の運転手さん!」

運転手「またお会いしましたな」

男「この地区の担当なんですか?」

運転手「そんなところです。では、どうぞ」


ブロロロロロ…

バシャバシャ

運転手「今日はドシャブリの雨ですなあ」

男「ええ。雨の日は、やっぱり客足も遠くなるモンなんですか?」
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:36:00.08 ID:Rg3u98mHo

運転手「いかにも。今朝は、お二人が最初のお客様で」

男「そうですか……。やっぱり雨の日はCOMIKEの人も少ないのかな」

運転手「経験則から言うと。ですが、しかし」

運転手「やはり行くヒトは行っておられますよ」

少女「私たちも今から行くところですもんね!」

男「お前、言っておくがそんなジマンするハナシじゃないからな……」

運転手「はっは。しかしこの十数年、COMIKEもずいぶん一般的になりました」

運転手「私としては喜ばしくも、フクザツでもありますな」

男(この運転手さんも、あるいは一家言あるヒトなのか……?)
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:36:27.19 ID:Rg3u98mHo


――秋羽原

ゴー

少女「やっぱり朝はスイスイですね」

男「夕方はえらく混んでたがな」

運転手「東狂という街の日常ですな。……と!」

プァーン


少女「あ……っ! 左手の路地から、別のクルマが!」

男「危ない、ぶつかる!!」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:36:54.72 ID:Rg3u98mHo

運転手「――――――ふ」

キキッ!!

シュゴオオオオオオオオ!! ジャバアアアア


少女「な……っ!」

男「ドリフト走行で、回避した……ッ!?」

運転手「ほっほ」ギュウウウウン

男「運転手さん、あなたはいったい……?」


運転手「東狂という街の日常ですな」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:37:22.21 ID:Rg3u98mHo


――豊州

少女「ちょっと、男さん! 何ですかアレは!」

少女「前方の水たまりが、毒沼のような瘴気を発していますよ!」


ゴポゴポ…


男「音がおかしい! アレ絶対入ったらダメージ受けるやつじゃん……!」

男「明らかに色もグレープ味のそれだし!」

男「運転手さん! 何かご存知ですか……!?」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:37:50.72 ID:Rg3u98mHo

運転手「ああ。アレは、いま話題の“土壌汚染”の影響ですな」

男「土壌汚染!? それってそんな殺人的な問題でしたっけ!?」

運転手「新市場予定地から漏れ出した化学物質が、突然変異して道路を侵食しているのです」

運転手「東狂という街の日常ですな」

少女「と、東狂とはいったい……!!」


運転手「さて、日が昇れば、行政が対処に動き出すでしょうが……」

運転手「我らは悠長に待っていられませんな」キキッ

シュバ!! シュババ!! シュババババババ!!!!!!
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:38:22.19 ID:Rg3u98mHo

男「た、ターンに次ぐターンで毒沼をかわしていく……!」

少女「車体は方向転換と、急失速、急発進を繰り返している……」

少女「なのに!!」


少女「サイドブレーキ脇の、紙コップに入れられた水が、一切こぼれていない……!!!」


運転手「一万一千回転まで」

運転手「キッチリ回せ!!」バッ!!

男「ソレは誰に向けて!?」

ブオオオオオオオオ…
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:38:48.95 ID:Rg3u98mHo


――鷲ントンホテル前

運転手「さて、今日もココで良かったですかな」

男「ありがとうございます……。あの、スゴいドライビングテクニックでしたね」

運転手「なんの。ココは峠でもなければ、張り合う相手もいない」

運転手「文字通り、ロートルの朝飯前ですよ。では」

ブロロロロロ…


少女「……なんで、ただのタクシー運転手さんに、あんなヒトがいるんですか?」

男「ううむ、わからん。東狂、おそるべし……」
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:39:16.75 ID:Rg3u98mHo


――鷲ントンホテル 1029号室

友人「おやwww男氏、少女氏wwwヤケモーニンwwwwwwぴゃっwww」

白い死神「来たか。男とカノジョさん」

少女「おっはよーございまーす!!」

男「二人とも揃い踏みか。……だから、そういうんじゃないからな」


男「ていうか死神、今日はお前もいたのか?」

白い死神「ああ。昨日は初日だから、下見も兼ねて、早くに出てたが……」

白い死神「今日は二日目だからな。しかも雨だ。濡れネズミになるシュミは無い」
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:39:44.26 ID:Rg3u98mHo

友人「それでは死神氏www最後の作戦確認をwww」

白い死神「ああ。まず今日は二日目、女性向けの日だ。さらにこの天気、低い気温」

白い死神「さして混むというコトはあるまい」

白い死神「だが、それでも待機列は既に徹夜組でごった返している……」

白い死神「主な大手は瞬殺と考えるべきだろうな」

友人「んんwwwCOMIKEの厳しい現実www」


白い死神「お前さんたちが狙う黒ずくめも、結構な大手だが……大丈夫か?」

友人「ダイジョウブかwwwダイジョバナイかでいえばwww断言はできないwww」

友人「COMIKEには常に例外が存在するwww」
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:40:12.38 ID:Rg3u98mHo

友人「だがwwwその例外の中でwww最善を尽くすwww」

友人「それが我ら“戦士”たちのやり方wwwwww」

白い死神「さすが、ベテランは言うコトが違うね」


白い死神「じゃあ、黒ずくめはお前たちに任せるとして」

白い死神「俺たちは天帝をはじめとした商業作家の大手に波状攻撃を仕掛ける」

白い死神「いちばん人気は、おそらく、ボッチ系ラブコメの柑橘類だろうが……」

白い死神「今回、俺たちはココはトラッシュだ。リスクが高すぎる」

友人「委託もありますからなwww適切なリスクマネジメントと言わざるを得ないwww」
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:40:46.51 ID:Rg3u98mHo

白い死神「俺も柑橘類の絵は好きなんだがな……」

白い死神「しかし、限5なら、派遣するのは一人で十分といえる」

白い死神「また、同じ理由で、企業もパスだ」

白い死神「企業といえば、昨日レジ1台で牛歩作ってたところもあるらしいから、恐ろしいハナシだ」

友人「それでも一時期に比べればwww企業の失態も聞かなくなったwww」

友人「スナオに喜ぶべきか、なんとするべきかwww」


白い死神「逆に今回速攻をかけるべきは、限3の行楽地だ」

白い死神「よほど在庫に自信があるのか、それともただのバカなのか……」
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:41:17.97 ID:Rg3u98mHo

白い死神「開場一時間くらい経ってから行って、やっぱ限1にしましたー」

白い死神「なんて言われたら、たまったモンじゃない」

友人「自分の人気を適切に見極めるのもwwwサークル主の重要なスキルですなwww」

友人「謙虚すぎるのも、傲慢すぎるのもいけないwww」


白い死神「ちなみにお前は昨日、売れ行きはどうだったんだ?」

友人「んんwwwあの後、宅配便を利用しましたなwwwwww」

白い死神「余ったってコトね。やっぱオワコンじゃねえの?」

友人「委託は売れているからwww根強いファンはいると信じたいwww」
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:41:45.36 ID:Rg3u98mHo


少女「……お、男さん! 専門用語がバンバン飛び出していて、ワケがわかりません!」

男「別にわからなくてもいいよ。俺たちには関係の無いハナシだ」

少女「でも、気になりますよぅ……」

男「そうだな……。じゃあ、何が訊きたい」


少女「まず、二日目が女性向けの日、というのは?」

男「文字通りだな。二日目は、女性向け作品の頒布物が多い日だ」

男「そもそも、COMIKEは、開催日ごとに頒布物の傾向がある」

男「ちなみに一日目は小説・ゲーム・アニメ中心。三日目は……、男性向けだな」
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:42:13.01 ID:Rg3u98mHo

少女「ほう。私がキョーミありそうな作品も、頒布やってますかね?」

男「そんなの知らん。自分の…………、……胸に訊け」

少女「……? ハイ、わかりましたとも」


少女「じゃあ、限5とか、限3というのは?」

男「限は限数のコトで、そのサークルで一人が一度に買える頒布物の数のコトだ」

男「たとえば限5なら、一人が一度に買えるのは5セットまで、となる」

少女「そんなの、あらかじめ決めておく必要あるんですか? 適宜対応すれば?」

男「決めておかないと、転売屋に在庫根こそぎ持っていかれるんだよ」

男「限数決まってないのを良いコトに、ダダコネられると、列も停滞するしな」
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:42:39.10 ID:Rg3u98mHo

少女「なるほど……。色々と、メンドクサいんですね」

男「もしこんなコトを何も知らないCOMIKE初参加の大手なんか現れたら、大事故だろうな」

男「つまらん暗黙の了解で参加の敷居が上がるのも、如何なものかと思うが……」

少女「秩序と自由の兼ね合い、ですか」フーム

男「そんなところだ。まあ、売れるのがわかってるなら、限1にしてもらえると親切だな」

男「限1にすると、今度はアイツらファンネルが苦しむコトになるんだが……」

男「まあ、それでも転売屋なら、一度買って、二周目並んだりするけどな」

少女「むーぅ。二回以上並ぶのって、オッケーなんですか?」

男「マナーとして良くはないが、並んだヤツの顔一人なんて、覚えられないからな……。黙認だろう」
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:43:06.88 ID:Rg3u98mHo


少女「それでは、柑橘類とか、行楽地っていうのは?」

男「それは、参加サークルの名前の隠語だ……。わからないなら、深く追究するな」

男「検索しても出てこないぞ! もし出てきても人違いだ!」

少女「別にしませんよ……」


白い死神「おっ、そろそろ始発の時間だぞ」

友人「んんwwwではwww出陣といきますかなwwwwww」

男「本当に、あの待機列に並ぶのか……。苦労しそうだな」

白い死神「お前らが並んでるとこ、まずは文字通り高みの見物と洒落込ませてもらうよ」
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:43:32.73 ID:Rg3u98mHo

少女「あれ? 死神さんは、列には並ばないんですか?」

白い死神「ああ。俺は7時半ごろ、サークル待機列から入場させてもらう」

少女「え……? 死神さん、サークル参加してたんですか?」

白い死神「いやいや、違うよ。コイツを使うのさ」ピラッ


少女「それは……、サークルチケット……!」

白い死神「ああ。始発組よりも、徹夜組よりも早く入場できる、魔法のチケットさ」

友人「んんwwwその言い方はwww」

白い死神「おっと、悪い悪い。本来そういう使い方じゃなかったな」
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:43:59.79 ID:Rg3u98mHo

白い死神「んじゃま、お三方。健闘を祈るぜ」ビッ

少女「ええ! 死神さんも、お目当てのモノが買えるように!」

白い死神「ああ。この白い死神の名にかけて、狙い撃つぜ」


――鷲ントンホテル前

男「雨、だな……」

少女「今朝からずっと、降ってますね……」

友人「んんwww待機列につくまで、傘は必須www」ブバッ

友人「ついでに今日の始発ダッシュも見ていきますかなwww」
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:44:26.75 ID:Rg3u98mHo


――シーサイド線 国際展覧場駅

始発組「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」ドドドドドドドド

          コ ミ   ケ ッ ト
スタッフ長「 C o m e G e t (来たりて取れ) !!!!!!」

スタッフ「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」


アナウンス『は し ら な い で く だ さ い』


                               ヽ`
                              ´
                               ´.
                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                    \
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                       ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙       .'                             ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
                ゙゙゙゙i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙
              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,  ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙|lii|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´`゙
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271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:44:53.94 ID:Rg3u98mHo


ブアァァァァァァァァッ


少女「う……、ぐ。すさまじい、風圧……!!」

男「二日目だってのに、元気なコトだ……」

友人「ですが始発組は毎回、同じ人間とは限りませんからなwww」

友人「真に賞賛するべきは300人のスタッフ兵ですぞwwwwww」


ダン!! ガン!! ギン!! グチャァ ドン!!

始発組「ぶるああああああああああああああああああ」

始発組「なのはは完売しましたーー!!!」
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:45:20.15 ID:Rg3u98mHo


――LAMSON 国際展覧場駅前店

店員「ラーシャッセー」


男「今日はココで本格的に食糧調達していくか」

友人「ツナマヨとかいう邪道具材は悪ですぞwwwwww」

少女「ツナマヨもオイシイのに……。あっ、私イクラにしようーっと」ガシッ

男「やめておけ、生モノは腐りやすい。しかも今日湿ってるからな」

少女「えぇ? でもさすがに数時間じゃ……」

男「死にたいヤツだけ前に出ろ……」
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:45:47.71 ID:Rg3u98mHo

少女「やれやれ……」ポス

少女「あれ、ていうか商品棚、なんか食べ物減ってます?」

少女「ところどころに穴が……」

男「消費期限切れの早いモノは、即日入れ替えしてるだろうが……」

男「それでもやっぱり、減ってるな」

友人「んんwww昨日どれだけの人が食糧を買い求めたかは想像に難くないwww」

友人「むしろLAMSONの在庫入荷能力に感心せざるを得ないwww」

少女「ある意味ちょっとコワいですね」

男「戦いはこれからだ。さて、明日にはどうなってるかな……」
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:46:14.51 ID:Rg3u98mHo


――ビッグサイト周辺

男「さて、待機列の最後尾は、このへんか……」


スタッフ「COMIKEに参加される皆さんはコチラでーす!!」

スタッフ「東待機列と、西待機列に分かれてくださーい!」


少女「おや。二つの列のどちらかに分かれないといけないみたいですが」

少女「いったいどっちに並ぶんですか?」

男「むう……」
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:46:41.50 ID:Rg3u98mHo

少女「……? 男さん、どうしたんですか?」

男「……いや、どちらにするべきか、と思ってな」

少女「え。男さんにも、列の意味わからないんですか?」

男「いや、列の意味はわかる。東ホールに行く待機列と、西ホールに行く待機列」


男「今回は大まかにいって、同人サークルが目当てなら、東ホール」

男「企業サークルが目当てなら、西ホールだ」

少女「なあんだ! ソレならカンタンじゃないですか!」

少女「黒ずくめさんは当然同人サークルでしたよね」

少女「ならば、東ホールに行く列でキマリです!」
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:47:08.23 ID:Rg3u98mHo

友人「…………、いや、少女氏www」ジジジ

友人「ここはあえて西ホールに行く列へ行く列を選ぶwwwwww」

少女「ええっ! どうしてですか!?」


男「なるほど……。西東、というワケか」

友人「いかにもwwwwww」

少女「え……。西東……、って、何ですか?」


友人「んんwwwこれはCOMIKE上級者の高等テクwww」

友人「たしかに本来、東ホール、つまり東館が目当てなら」

友人「当然東ホールに行く列を選ぶべきwww」
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:47:36.07 ID:Rg3u98mHo

男「だが、“東ホールに行く列のほうが早く東ホールに入れるか”、」

男「“西ホールに行く列のほうが早く東ホールに入れるか”は」

男「開催されるCOMIKEごとに傾向が違ってな」

友人「この場合、後者が“西東”と呼ばれるルートになるワケですなwww」


少女「えぇ……。東に入るのに、西から行ったほうが早いコトがあるんですか?」

男「ある。常識的に東に入るなら東からだから、東に待機列が殺到するコトが多い」

男「その結果、西のほうが空いて、西からのほうが東に入りやすくなるんだ」

男「実際、一日目の昨日はそうだったらしい」

友人「そして今日もwwwどうやらその傾向にある様子wwwwww」
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:48:03.82 ID:Rg3u98mHo

少女「その傾向って……。どうしてそんなコトがわかるんですか?」

友人「それはwwwコレを聞いてみるといいですぞwww」ジジジ

少女「イヤホン……? ハイ、わかりました」

男「おい……」イラッ

友人「んんwwwこうみえて耳の穴は毎日洗っているwww」


スタッフ『こちら東待機列。西待機列の現状は?』

スタッフ『こちら西待機列。雨足は強く、人影もまばら』

スタッフ『東も雨はキツいが、既に待機列は長いな』
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:48:30.39 ID:Rg3u98mHo


少女「……こ、これは……!」

男「無線傍受か。なかなかハデなコトをやるな」

友人「んんwwwコレは死神氏の贈り物www」

友人「我は盗聴器を自作できるほどキカイには強くないwww」

男「だけどソレ、ちょっとヤバくないか? 見つかったらどうする?」

友人「死神氏にはwwwカン付かれたらキカイごと壊せと言われているwww」

友人「ですが、そもそもこの雨では傍受してる音なんて周りに聞こえませんなwww」

少女「おお……。なんか、キンチョー感出てきましたね!」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:49:04.41 ID:Rg3u98mHo

友人「とにかくwwwスタッフの無線によるとwww」

友人「今日も西待機列のほうが空いているwwwwww」

友人「つまり、西東が正解ですなwwwwww」

男「よし。じゃあ、西ホールに行く列に並ぶとしよう」


少女「しかしこの盗聴器。いったいどういう仕組みなんですか?」

友人「借り物なので我にも詳しいコトはわからないがwww」

友人「どうやら市販のトランシーバーを受信専用にしてwwwwww」

友人「かつ、周波数をスタッフが使っている数値に固定しているもようwww」

少女「へえ……。けっこうアナログなんですね」
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:49:31.36 ID:Rg3u98mHo

友人「ちなみに、西待機列のほうが、コンビニやトイレなどの施設もジュージツしていますなwww」

少女「え? 東待機列のほうは、無いんですか?」

男「ああ。人気ジャンルを狙う時は、東待機列に並ぶコトになるが……」

男「施設も無いし、日陰も無い。本当にタイヘンだぞ」

友人「そのため、仮設トイレなどの施設が当日のみ出現しますがwww」

友人「まさに最大手の名に恥じぬ威容を誇りますなwww」

少女「うへえ……。さすがに行きたくないなぁ……」

男「欲を出さなければいいんだ。欲を」

男「もっとも、本当に欲しい頒布物があるなら、なりふり構ってられないだろうがな」
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:49:58.24 ID:Rg3u98mHo


署長「……?」ギロ


署長「おい、君」ポン

友人「あひぃっ!」ビクッ

友人「なっ、ななな、なんですかなwww」


少女「うっ!」

男「……!」


男「……、警察官か……」
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:50:56.93 ID:Rg3u98mHo

署長「……いや。……君の持っている、この、黒いキカイ……」

署長「コレは、何かね?」

友人「んんんんんwwwwwwこ、コレはwwwwww」

友人「……そ、そう!」

友人「知り合いと連絡を取るためのトランシーバーですなwww」

署長「…………」ギロ

友人「んんんwwwwww」

友人「COMIKEではwww通信回線が渋滞しwwwケータイでの連絡もままならないwww」

友人「ゆえに一般人でもトランシーバーが重宝されるのですなwwwwww」
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:51:22.59 ID:Rg3u98mHo


少女「……ちょっと。男さん。ポリスメンですよ……」

男「ああ……。ウワサをすればナントヤラ、だ……」

男「なんで警察って、会いたくない時に限って会っちまうんだろうな」

男「COMIKEだと本当に会いたいヤツには会えないのに」

少女「まあ、昨日から待機列の外、見回りしてましたからね……」


少女「……しかし、あのおまわりさん。すっごい威圧感だな」

少女「大家さんとはまた違った、別種の凄みを感じます」

少女「東狂のおまわりさんって、皆がああなんですか?」
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:51:50.62 ID:Rg3u98mHo

男「いや……。いくら大都市の警察官でも、あんなのがゴロゴロはいないだろう」

男「あのヒトがたぶん特別なんだと思う」


署長「このあたりを管轄する警察署の署長だ」


少女「……!」

男「……き、聞こえてたんですか」ダラダラ

署長「COMIKEの開催にあたって、治安維持のため」

署長「私をはじめとした警官隊自ら会場近辺に赴き、都民の“保護”を行っている」


署長「……あまり、かぶいたマネはせんコトだ」
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:52:17.20 ID:Rg3u98mHo

男「は……、はぁぁいっっっっっっ!!!」

少女「お、お勤めご苦労様です!!」ビシィッ

署長「うむ」


署長「君たちも、法律と法令を守って、健康的な営みに努めるように」


男「……は、はい……」


署長「それで、君」

友人「……ん、んんwwwなんですかなwww」

署長「……ふん。トランシーバーか……」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:52:52.64 ID:Rg3u98mHo

署長「たしかに、COMIKEでは、一般都民でもトランシーバーを重宝しているのを見るが……」

友人「…………」

署長「重宝、ね」フン


署長「諜報のマチガイではないかね?」

友人「……!!!」

男「……、…………」ダラダラ

友人「めめめ、めwww滅相も無いwww」

友人「コレはスタッフの中にいる知人と連絡を取っているだけにあるからしてwww」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:53:24.40 ID:Rg3u98mHo

署長「…………」

署長「……そうか。なら、構わないが」

友人「ほっ」


署長「だが」


友人「……!!」

男「……!」

署長「無線通信を傍受して存在や内容を漏らし、また窃用した場合は」

署長「国が定める電波法第59条に抵触するコトになる」
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:53:52.60 ID:Rg3u98mHo

友人「……、…………」

署長「もし当該行為が発覚し、物的証拠が提示された場合には」

署長「われわれ警察も。それ相応の対処を迫られる」

署長「ゆめ、忘れぬコトだ」

友人「りょ、了解でございまするwwwwww」

署長「……では」


ザッ、ザッ、ザッ…


少女「…………」
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:54:19.23 ID:Rg3u98mHo

少女「…………あー、キンチョーしたぁー!」

男「はあ、はあ……。焦った……」

友人「んんwwwあやうく豚箱行きかと思いましたなwww」

男「友人、やっぱソレ使うの、やめたほうがいいんじゃね?」

友人「たしかにwww常用しないにしても、油断はキンモツですなwww」

少女「情報の漏洩は生死に関わる。まさに、戦場……」

少女「警察の方とこんなにカンタンにエンカウントするとは。気を抜けませんね!」

男「なんでお前は燃えてるんだ」

友人「ふとした行動が犯罪に繋がるのはコワいモノですなwww」
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:54:47.84 ID:Rg3u98mHo


スタッフ「おはようございまーす! 雨の中ですが、大丈夫ですかー? 生きてますかー?」

スタッフ「本日のCOMIKE、シャワー機能が開放されておりまーす」

スタッフ「ただしみなさんの心の醜さは洗い流せませーん」


少女「うへぇ……、相変わらず雨はやむ気配がありませんね……」

男「昨晩から降り続けてるんだったか? いい加減やんでほしいが」

男「というか今回もスタッフ、相変わらずキレッキレだな」

友人「んんwwwここまで寒い夏コミは世にも珍しいwww」

友人「ですが、その影響で体調を崩している参加者も少なくない様子www」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:55:15.28 ID:Rg3u98mHo


スタッフ「本日、低体温症が多発していまーす」

スタッフ「具合の悪いヒト居ませんかー。冷たくなってるヒトいたら声かけてくださーい」

スタッフ「そいつは死んでる!! 置いていけ!!」


男「ここは冬将軍に襲われたナポレオンの陣営か何かか……?」

少女「まさに、カコクな戦場ですね……」

少女「かくいう私も……。ブルブルブル」

男「おい、大丈夫か? 革ジャンを貸してやる」ホイッ

少女「あ、ありがとうございます。はーっ、ファーがあったかい……」
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:55:42.69 ID:Rg3u98mHo

男「あとはモノ食べてカラダあっためるくらいだな」

少女「やったー! あさごはん、あさごはん!」バタバタ

男「騒ぐな……。メイワク女としてネットに晒しあげられるぞ」

友人「非日常の場とて、公共の場には違いありませんからなwww」

友人「テンションが上がっても常識はわきまえるべきですぞwww」


男「あ。スレに不審者情報の書き込みだ」

友人「ほうwwwBIPの民が食いつくような参加者でも現れましたかなwww」

男「リアルで論者口調のヤバい奴が近くの待機列にいるんだって」

友人「んんwwwwwwwwwwwwwwwwww」
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:56:09.95 ID:Rg3u98mHo

男「やっぱお前その口調やめられないの?」

友人「んんwww我がもしこの口調を変えてしまったらwww」

友人「それはもはや我ではありませんなwwwwwwぴゃっwww」

男「バンダナ、メガネ、チェックのシャツじゃ周りに埋没しちまうもんな」


男「ほら、梅おにぎりとスポーツドリンクだ」

男「涼しいように思えても水分と塩分は確実に失ってる。補給を怠るな」

少女「はーい。いただきまーす」モシャモシャ


少女「うーん、しゅっぱぁーい!!」
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:56:36.81 ID:Rg3u98mHo

男「酸っぱいのはニガテか?」

少女「いや、そーじゃないですが。それでも酸っぱいモノは、すすす、しゅっぱ……」

男「つらかったら、スポーツドリンクで押し流せ」

少女「はぁい。んっ、んっ、んっ……。ぷはぁ」


少女「……おコメとスポーツドリンクってあんまり合いませんね」

友人「んんwww白米と牛乳の次に合いませんなwwwwww」

男「……お茶は、利尿作用が強いんだ……」

男「もっとも、この雨なら漏らしてもわからんかもしれんがな」

少女「それはヒトとしての尊厳を失っています」
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:57:03.79 ID:Rg3u98mHo

男「しかし、ここまで寒くなるとは、さすがに予想外だな……」

友人「今朝の東狂の気温は23度wwwwww」

友人「さすがに半袖は死にますなwww」

男「結局のところ、登山服が大正義ってワケですか……」


男「スタッフはさすがに透明のゴミ袋みたいなの被ってるヒトばかりだな」

友人「メジェド様のコスプレイヤーも混じっていますなwwwwww」

男「俺もジャンパーを着るとするかな」

友人「男氏wwwジャンパーは死語ですぞwww」

男「うっそだろお前」
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:57:30.85 ID:Rg3u98mHo


カイロ屋「えー、カイロ。カイロはいりませんかー」


男「カイロ……? そんなモノを売ってる店まであるのか」

友人「普段の暑い夏コミなら、ただの嫌がらせですがwww」

友人「低体温症の犠牲者が出ている現状では、かなりオトクな買い物ですなwww」

男「……。……って、ちょっと待て……」


カイロ屋「はい、一つ300円! ありがとうございます。カイロー……」

男「ちょっと、大家さん!!」

カイロ屋「ん……? …………、あっ」
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:57:59.18 ID:Rg3u98mHo

カイロ屋「その声、さては男だなオメー」

少女「大家さんじゃないですか! こんなところで何を?」

カイロ屋「少女ちゃんもおはようございます。見ての通り、カイロを売っています」

男「えぇ……。この、雨の中?」

カイロ屋「火の中、水の中、なんのその。商売チャンスは逃しませんよ!」

男「商魂たくましいコトで」

カイロ屋「だけど、さすがに寒いので自分でも使います。さながらマッチ売りの少女ですね……」

男「そこまで貧しい身の上じゃないでしょう……。しかも若干ボッタくってるし」

友人「あ、我もカイロ一つー」
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:58:26.03 ID:Rg3u98mHo


少女「……っていうか、男さん」

少女「なんか、私たちより前に並んでるヒト、多くないですか?」

男「うん、多いな。1000人ではきくまい」

少女「私たちって始発組のヒトの、すぐ後についてきましたよね?」

少女「なのに、何でこんなに人が多いんですか……?」

友人「それはwwwひとえにwww徹夜組が多いからwww」

友人「おそらく現在の列の3分の2は、徹夜組と思われるwww」

少女「3分の2……。そんなに多いんですか」
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:58:53.87 ID:Rg3u98mHo

少女「私たちは、ルールを守って並んでるのに」

少女「ちょっとシャクですね。納得いきません」フンス

男「まあ、徹夜は禁止されてるとはいえ、別にペナルティとか無いからな……」

少女「えっ、無いんですか? ペナルティ!?」

友人「COMIKEの徹夜組は数が多すぎて、処罰しきれないのが現状ですなwww」

男「むしろ、準備会もあらかじめ徹夜組に整理券を配ったり」

男「非公式だがスタッフが列を誘導したり、事実上、徹夜を黙認している」

少女「……。じゃあ私も徹夜してやりましょうか」

男「しんどいだけだから、やめときなさい。そこまでして欲しいモノも無いだろう」
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:59:20.63 ID:Rg3u98mHo

少女「むぅー……」


スタッフ「みなさーん、お知らせでーす! つい先ほど、待機列確定しましたー!」

スタッフ「でも8時半には戻ってきてくださいねー! 遅れたらパワー系のスタッフが押し出します!」


男「おっ、列確定きたか」イソイソ

友人「それでは近くのダルイーズで時間を潰しますかな」イソイソ

少女「……? ちょ、ちょっと! 二人とも、列を抜けてどこに行こうとしてるんですか!」

男「ん?」

少女「こ、ここまで並んだのに、入場せずに帰っちゃうんですかぁ!?」
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:59:49.54 ID:Rg3u98mHo

友人「んんwww少女氏www違う違うwwwwww」

少女「え……?」

男「ああ……。少女。COMIKEには、待機列確定というシステムがあってな」

男「スタッフが待機列を確定させたら、しばらく持ち場を離れててもいいんだ」

友人「ただしwww列を離れていて良い時間にも制限があるwww」

友人「今回は8時半を過ぎて列に戻っていなかったらwww問答無用で並び直しですなwww」

少女「そ、そんなシステムが……。知らなかった……」

男「まあ、誰も教えてくれない部類のハナシではあるな」

友人「前後左右の人確認や現在地の暗記は必須ですぞwww」
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:00:15.67 ID:Rg3u98mHo

男「さて。目印となるモノは、何を置いておく?」

友人「んんwwwでは、コレをwww」ニョキッ

少女「わああ!!? なに、これ……」


少女「男のヒトの、巨大な、板?」

友人「等身大パネルですなwww炎の妖精のwww」

男「『できる!』、『君は最高だ!』……」

男「……相変わらず、アツい」

少女「……ほう。……ほう、ほう、ほう」

男「友人、こんなモノ、いったいどこで手に入れたんだ?」
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:00:43.78 ID:Rg3u98mHo

友人「もとは書店の店頭宣伝用のパネルですなwww」

友人「ソレを、フェア期間が終わって、廃棄するのは忍びないというコトで」

友人「ならばと我が貰ってきたのですぞwwwwww」

男「お前の家、こんなのばっかで溢れかえってそうだ」


男「ちょっと待て。ソレはソレとして、今お前、コレどっから出した……?」

友人「んん、深く追究してはいけませんぞ」


友人「彼のパネルを置いておけば雨雲も吹き飛ぶかもしれませんなwww」

少女「……なるほど!! テルテルボーズのような方なんですね、この彼は!!」
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:01:14.26 ID:Rg3u98mHo

友人「おおwww少女氏、炎の妖精氏が気に入りましたかなwww」

友人「彼は、諦めない、絶対できるをモットーとする熱血漢で有名な男ですぞwww」

友人「一説によると元プロテニヌプレイヤーらしいですなwww」

男「ソッチのほうがサブなのかよ。いや、俺も試合は見たコト無いけど」


少女「諦めない……、絶対できる……。スバラシイ! 最高のコトバです!!」

少女「私も信じています。前向きに生きていれば、絶対必ずイイコトあると!!」

友人「んんwww熱血少女ですなwww」

友人「では少女氏には、炎の妖精のポジティブで暑苦しい教えを伝授しますぞwww」

少女「ええ! ゼヒ、よろしくお願いします!!」ギュッ
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:01:40.35 ID:Rg3u98mHo

友人「頑張れ頑張れ出来る出来る絶対出来る頑張れもっとやれるって!!」

少女「ガンバれガンバれ出来る出来るゼッタイ出来るガンバれもっとやれるってェェッ!!!」


男「!?」

待機列「!?」


友人「やれる! 気持ちの問題だ、頑張れ頑張れ、そこだ! そこで諦めんな!」

少女「やれる!! 気持ちの問題だっ、ガンバれガンバれ、そこだァ!! そこで諦めんなァァ!!!」


待機列「マツオカ…?」

待機列「シジミ?」

待機列「ザワザワ」
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:02:10.62 ID:Rg3u98mHo

友人「絶対に頑張る積極的にポジティブに頑張る頑張る」

少女「ゼッタイにガンバる積極的にポジティブにガンバるガンバるゥッ!!」



友人「―――北狂だって頑張ってるんだから!!」


少女「―――ペキンだって、ガンバってるんだからァァァァァァッッッ!!!!!!」




待機列「……オオオオ」パチパチパチ

待機列「熱くなれよぉぉ!!」

待機列「オコメタベロ」パチパチパチ
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/26(土) 19:02:22.56 ID:rm1tRk1PO
勉強になる
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:02:38.92 ID:Rg3u98mHo


男「……いつの間にか、人が集まってきてる……」

男「まあ、大声で北狂のアレ、復唱してたらなぁ」

男「しかも友人のヤツ、完コピしてるし」

男「……こりゃあ今回のマンレポに載るかもなぁ」

男「あ、マンレポってのは、COMIKEのカタログや公式ホームページに載ってる」

男「前回のCOMIKEの様子を1コマ漫画にまとめた、まんがレポートのコトな」


男「……あれ? なんか、晴れてきた?」


スタッフ「えー、西待機列に炎の妖精発見。北狂だって頑張ってるなどと意味不明なコトを……」
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:03:18.79 ID:Rg3u98mHo


――喫茶店 ダルイーズコーヒー

少女「いやあ! スっとしました!!」

少女「大声で叫ぶってのは良いモノですねぇ!!」

男「……もう、謝るの俺なんだから、やめてくれよ……」

友人「んんwww我一人ならカクジツにしょっぴかれていたwww」

友人「やはりおにゃのこ補正おそるべしwww」

友人「あとは、炎の妖精氏の人徳ですかなwww」

男「あー、もうネットに動画アップされてるよ……」ガタタン
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:03:58.97 ID:Rg3u98mHo

少女「え、マジですか? 見せてください!」

男「見切れてるけど、俺もハシッコに映ってるよぉ……」

友人「んんwww一部始終が完全に撮影されているwww」


男「ヘンなコトしたら、こうやって晒し上げられて一生残るんだから、気を付けろよ」

少女「一生、ですか……。うぅ。スイマセン」

少女「でもソコはソレ、なかなか良く撮れていますね! この動画!」

少女「もうちょっとお腹から声出したほうが良かったかな……」

友人「ジューブン男らしい声でしたぞwww」

友人「あ、それポチ。ダウンロード」ヴヴゥン
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:04:27.37 ID:Rg3u98mHo

友人「少女氏は学校で応援団長でもやってたのですかな?www」

少女「応援団長、ですか……。いわゆる、チアガール、とかいう?」

男「いや、友人の言ってるのは、ソレじゃないと思うぞ。ソッチじゃなくって……」

男「ほら。頭にハチマキ巻いてて、膝下まである丈の長い黒の学生服のやつだろ」

友人「んんwwwいかにもwww」

友人「先程の大音声は、まさに経験者のソレでしたなwww」

少女「なるほど。ソレでしたら、似たようなモノをやったコトがあります」

少女「大きな声でテンション上げていくのは! ダイジですからねぇ!!」

男(応援団長……ねぇ。けっこう似合いそうだな)
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:04:54.86 ID:Rg3u98mHo


男「……さて。この喫茶店も、けっこう混んできたな」

友人「ココのダルイーズは、列確定後によく利用するのですがwww」

友人「COMIKE期間中でも混んでないのに、今日はヤケに混んでいますなwww」

友人「おっとwwwヤがついていても、そのままヤケという意味なので悪しからずwww」

少女「やっぱ雨だからですかねえ?」

男「今日は雨だから人少ないとかいうのは何だったのか……」


少女「……ん?」

少女「おっ、窓の外を見てください男さん、友人さん! 空、晴れてきましたよ!」
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:05:22.51 ID:Rg3u98mHo

男「ああ。さっきから明るくなってきてたが、雨もやんできたみたいだな」

友人「雨雲レーダーでも、徐々に赤い部分が通過しつつありますなwww」

少女「コレはさっきのペキン、効果テキメンですね!!」


少女「やっぱりやまない、雨は無い!!」ガタッ

少女「もう一回、いっちゃいますよぉぉ――――!!!」ダンッ

男「やめろ! 店の中だぞ……!」

男「コラ待て片足をテーブルに乗り上げるなァァァ!!!!」

友人「んんwww男氏の声がイチバン大きいwww」
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:05:49.29 ID:Rg3u98mHo


――西待機列 某所

男「さて、もうすぐ8時半だし、待機列に戻ってきたワケだが」


ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ…


少女「なんだかんだで、人、多いですねえ……!」

友人「んんwww晴れたはいいが、気温が上がって蒸してきたwww」

友人「すなわち、ここから開場の10時までが、戦いの佳境ですなwww」

少女「勝負とは山場の一瞬で決するモノ! 頑張りますよーっ!!」
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:06:18.92 ID:Rg3u98mHo


サワ…


少女「あ、でも、風が涼しい……」

男「うん……。気温が高ければ、風なんて吹いても熱風だが」

男「気温の低い朝の風は、こうも快いか……」


少女「かすかに聞こえる波の音、あまねく漂う潮の香り……」

少女「これぞ海に面した港町、ってカンジがします」

友人「でも少し……この風……泣いています……」
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:06:45.94 ID:Rg3u98mHo


友人「…………」ジジジ

友人「……んんwww」

男「……? 友人、どうした」

友人「いや、今またスタッフの無線を傍受していたのですがwww」

友人「やはり今日は待機列の人が少ないとのコトwwwwww」

男「そうか。俺にはいつも通りの数に見えるが」

男「俯瞰で見れば、案外列が伸びてなかったりするのかな」

友人「だがwww少し気になるのがwww」

友人「既に入場している参加者が、気持ち多いというスタッフの発言ですなwww」
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:07:14.31 ID:Rg3u98mHo

男「何……? まだ一般参加者が入場できる時間じゃないだろう」

男「……いや。そうか、……サクチケか。キナ臭いな」

スタッフ「然りwww加えて、スタチケの使用者もいるもようwww」


少女「何なに、どうかしましたか?」

男「既にサクチケやスタチケで入場しているヤツが多いらしい」

少女「スタチケ……? って、何ですか」

少女「サクチケはわかりますけど。サークルチケットのコトですよね」

友人「んんwwwスタチケとは、スタッフチケットのコトwww」

友人「サクチケと理由は同じwww当日、頒布物を買えないスタッフのためのモノですなwww」
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:07:41.54 ID:Rg3u98mHo

少女「ああ、たしかに……。スタッフのヒトも、サークル参加者と同じで」

少女「COMIKE中は、自分の持ち場を離れられないから」

少女「気になる頒布物があっても、買いにいけませんもんね」

友人「また、COMIKEのスタッフはボランティアですがwww」

友人「連日の労働に対する、実質的な報酬という側面もありますなwww」

男「スタチケの場合も、サクチケと同じで、あらかじめ一人に配られる枚数は決まっている」

男「もっとも、全員が均一、というワケではないだろうがな」

友人「これらチケットを使用すればwww我ら一般参加者よりも早い入場が可能www」

友人「そんなチケット使用での入場者が今日は多いというハナシですなwww」
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:08:10.55 ID:Rg3u98mHo

少女「なるほど。つまりそのヒトたちは、今日出てるサークルやスタッフの代わりに」

少女「頒布物を買うために、先に入ってる、ってコトですか!」

男「…………。まあ、そうだな」

少女「……なんですか、その沈黙は」


友人「……しかし、オカシイとは思いませんかな、少女氏www」

少女「え?」

友人「今日の一般参加者は、スタッフ自身が“少ない”と証言しているwww」

友人「なのに、チケットを使っての入場者は“多い”と、これまた別のスタッフの発言www」

男「……ちっ。そういうコトか」
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:08:38.23 ID:Rg3u98mHo

少女「ど、どういうコトですか?」

少女「ええと。おハナシを聞く限りだと、チケットはサークルやスタッフのためのモノで……」

少女「別に一般参加者や、その数には関係ありませんよね?」

友人「いかにもwwwですが、こうも考えられませんかなwww」


友人「“一般参加者が少ないのは、チケット入場者が多いからだ”」

少女「……!」

男「むろん、参加者が少ない主な理由は、さっきまでの雨と、今日が女性向けの日であるコトだろう」

男「パっと見ればわかるが、COMIKEに限っては、男の参加者が多いからな」

男「だが……。それらがカモフラージュに利用されていたとしたら」
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:09:05.94 ID:Rg3u98mHo

男「普通は、今日は雨だし二日目だから、人が少ない」

男「物事の表面だけ見れば、そう思うだろう」

友人「むろんwwwただの人間が天候や日程をどうこうするコトは出来ませんなwww」

友人「だが、あらかじめ予想される事象を、利用するコトができるのも人間だけwww」

少女「で、でも……。仕方なくないですか?」

少女「チケットを使って入場するヒトたちは、サークルやスタッフのために……」

男「本当にソレだけだと思っているのか」

少女「…………えっ」

友人「他の参加者よりも自分が早く入場したいと思うのは、単純な心理www」
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:09:32.81 ID:Rg3u98mHo

友人「徹夜組や、我ら始発組とて、動機自体は同じですなwww」

男「それにだ……。すべてのサークルが、スタッフが、全日の頒布物を欲しいワケじゃない」

男「必然、チケットは余る場合もある。すると、どうなると思う?」

少女「……。早く入場したいヒトに、チケットを、譲る……?」

男「“無償で”譲るだけなら良いな。チケットの理念範囲内だ」

少女「……ちょ、ちょっと待ってくださいよ……」

友人「COMIKEのサークルの当落発表は、開催の数ヶ月前に行われるwww」

友人「そして、その時期になると、ネットオークションを湧かせる“商品”がありますなwww」

少女「……サークル、チケット……ですか……」
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:10:01.22 ID:Rg3u98mHo

男「そうだ。サクチケやスタチケは、誰よりも早く入場できる魔法のチケット、という見方もある」

少女「そ、そんなの……。まちがってないですか!?」

少女「チケットは、当日のサークルやスタッフのためのモノなのに!!」

友人「もちろんチケットの転売行為は準備会に禁止されているwww」

友人「ですが、サクチケやスタチケに高額で取引される需要があるのも、また事実www」

男「当然チケットは、早くに入場し、貴重な大手の頒布物を手に入れるために使われるが」

男「そういった貴重な大手の頒布物は、貴重ゆえに金銭的な価値を持つ」

男「これをまたネットオークションで転売し、儲けるヤカラもいるワケだ」

少女「許せない……。そんなの、チケットが、ただの転売の引換券に成り下がってる!!」
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