少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」

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161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:12:53.99 ID:Fzl9L1Z/o


――鷲ントンホテル レストラン

男「大人2人です」

受付「ありがとうございます。それでは、ご自由に料理をお取りください」


少女「おっ、朝と違って、人も多いですねえ……!」

男「昼時だからな。もっとも、ビッグサイトの混み様とは、比べるべくもないが」

少女「お昼はローストビーフやってるみたいですよ! いいですか!?」

男「ビュッフェなんだから好きなように取れ」

男(肉も、魚も、コダワリは無しか……)
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:13:22.88 ID:Fzl9L1Z/o



少女「男さぁん! 取ってきましたー!!」

男「よし、俺も終わった。じゃあ、ソコに座って……」

少女「……? どうかしましたか?」

男「……お前、皿の上が一面まっ茶色なんだが」

少女「ふふん! 肉は元気のミナモトですよー!!」

男「だからといって肉だけ取る奴があるか! 栄養バランスを考えろ!」

少女「えっ……。でも野菜とか、だいたいマズくないですか?」

男「こんなところの野菜がマズいワケがないだろう!?」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:13:51.45 ID:Fzl9L1Z/o

男「引き返せ! 一度取ったモノを戻せとは言わんから」

男「野菜と、あとコメかパンも取ってこい!」

男「それと果物だ! 食後のフルーツも持ってきなさい!」

少女「ちぇー。わかりましたよっと。うるさいなぁ」

少女(でも、やっぱり、お母さんみたいだなあ……)


男「取ってきたか?」

少女「ええ。マコトに遺憾ながら、空前絶後のヘルシー盛りです」

男「茶色面積7割で自称ヘルシーとはお笑いだな」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:14:19.28 ID:Fzl9L1Z/o

少女「では、いただきます」

男「うん。さすがに一流ホテルのビュッフェだけあって……、昼もうまいな」モグモグ

少女「おっ! 野菜もオイシイじゃないですかー!!」ムシャムシャ

男「だから言ったろう。お前は今まで何を食ってきたんだ……」

少女「焼き飯もヒエヒエかと思いきやパラパラでオイシイですねえー」

男「ピラフだろう」

少女「もちろんローストビーフも! でも、ローストビーフって、取る時」

少女「肉切ってるヒトにニラまれるから、あんまり多く取れないですよねー!」

男「わかるよ。わかるが、デカい声で言わんでくれ……」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:14:47.36 ID:Fzl9L1Z/o



少女「ぷっはー! ごちそうさまでしたー!」

男「あれだけの量を食いきったか。よく食べる……」

少女「食べれる時にたくさん食べないと、ですね!」

男「そのわりには、体形は引き締まってるようだが」

少女「体質でしょうか? まあ、食後の運動くらいはちゃんとしますが」

男「健康で良いコトだ。それじゃあ、この後どうする?」

男「疲れたし、もう家に戻るという手もあるが……」

少女「なーにを言ってるんですか!!」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:15:14.35 ID:Fzl9L1Z/o

少女「私はまだまだ元気ですよー! いざ、第2ラウンドです!!」シュッシュッ

男「その無尽蔵の体力はどこから湧いてくるんだ……」

男「まあ、三日間通してその意気でいられるかは、見物だな」

少女「目にモノ見せてやりますとも!」


男「やれやれ。といっても、一日目終了まで、あと2時間くらいか?」

男「目的は絞れよ。寄り道が過ぎると、すぐに時間は経つからな」

少女「なるほど。では計画的に、かつ衝動的に!」

男「どっちなんだ……。いや、お前なら何故か実行できそうな気がするな」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:15:40.71 ID:Fzl9L1Z/o


――東館 ホール内

男「……お、重い…………」ズシッ

少女「なんか、買い終わった本を入れてたら、リュック膨らんできましたね……」

少女「私も少し持ちましょうか……?」

男「い、いや……。動き回るお前が持っちゃ、他のヒトにメイワクだろう……」

男「俺のコトは気にするな。お前は、先に行け……」

少女「いやいやいや! ソレは確実にダメなやつじゃないですか!?」

男「お前がどこまで知識持ってるのか、いまだにイマイチ掴みかねるよ」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:16:08.41 ID:Fzl9L1Z/o


少女「さて、めぼしい本はあらかた、買ってしまいましたが……」

男「健全なのも、そうじゃないのも買ったが、コイツにとってのめぼしい基準とはいったい……?」

男「まだまだわからないコトだらけだな」

男「昨日会ったばかりだから、当然だが」

少女「今日売ってるモノは、だいたいこんな感じなんですか?」

男「いいや。西館に行けば、企業サークルの頒布物もあるが……」

男「まあソッチは、朝のうちに売り切れてるだろうな」

男「だけど本じゃなくて、アクセサリーや自作CDなんかを売っているサークルもある」

男「見に行ってみるか?」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:16:37.27 ID:Fzl9L1Z/o

少女「ええ! ぜひとも!!」

男「わかった。じゃあ、このホールを出て、通路の向かいのホールに入れ」

男「その後は、また別の離れのホールだな」

男「金は……、まだまだあるな。俺のじゃないけどな」

少女「わっかりましたー! いざ、突撃!」ダダダ


スタッフ「ちょっと、ソコの女の子! COMIKEでは走らないでください!!」

少女「うわっと! すみません!!」


男「はは、バカめ。怒られてやんの……」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:17:05.27 ID:Fzl9L1Z/o


――東館 館内

少女「たっはー!! いっぱい買っちゃいましたー!!」

男「買っちゃいましたーじゃないぞ、お前……。ああ、重……」

少女「やっぱ少し持ちますよ。男さんだけには任せられません」

男「そうか……。じゃあ、こっちのアクセサリー袋を頼む」

男「コワレ物だ。あんまり持って走り回るなよ」

少女「了解です。こう見えて、危険物処理は、お手の物でして……」


ピンポンパンポーン
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:17:31.96 ID:Fzl9L1Z/o

少女「……? アナウンスですか。何でしょう?」

男「ああ……。来たか、この時が」


パチパチパチパチパチパチパチパチ


少女「わわっ! 皆、拍手しはじめましたよ! これって……!」

男「ああ。そういうコトだ」


アナウンス『これにて、COMIKE 92 一日目を終了します』

アナウンス『皆さん、お疲れ様でした。残り二日も頑張りましょう』
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:18:06.08 ID:Fzl9L1Z/o

ピンポンパンポーン

パチパチパチパチパチパチパチパチ


少女「ああ……。終わったんですね」パチパチパチ

男「いや、まだだ。まだ、一日目が終わったに過ぎん」パチパチパチ

男「本当の戦いはこれからだぞ」

少女「ええ。わかっていますとも!」


少女「そういえば、この後、サークルの参加者さんたちはどうするんですか?」

男「ん? そりゃあ、俺たち一般参加者は、ただ帰るだけだが……」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:18:33.90 ID:Fzl9L1Z/o

男「サークル参加者は、設営を撤収する作業も残っているな」

少女「友人さん、大丈夫でしょうか?」

男「何度も参加してるから大丈夫だと思うけどな」

男「まあ、アイサツくらいはしてやるか」



――友人のサークル

男「おーい、友人。生きてるかー?」

少女「友人さん! お昼ぶりです!」

友人「これは男氏、少女氏www無事で何よりですなwwwぴゃっwwwwww」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:19:00.93 ID:Fzl9L1Z/o

友人「それであの後、良い買い物は出来ましたかなwww」

少女「んもー、バッチリです!! 気になる本とか、グッズとか、いっぱい買えちゃいました!」

友人「んんwwwそれは何よりwww」

男「はたしてコレで良かったのか……」


白い死神「おい友人ー、ダベってないでゴミ片付けてくれよー」

友人「んんwwwこれはwww申し訳ないwwwwww」

男「お、白い死神か。お前も、毎回ご苦労なコトだな」

白い死神「あれ、男? 今回も来てたのか?」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:19:29.74 ID:Fzl9L1Z/o

男「いや、本当は不参加のつもりだったんだが……」

男「この子が、どうしてもCOMIKEに行きたいっていうんでな」

少女「こんにちは! 友人さんの、ご友人ですか!?」

白い死神「ああ、そうだ。今回はコイツ専属のファンネルでやらせてもらってる」

白い死神「“白い死神”って者だ。ヨロシクな」

少女「白い死神……? たしかに見た目、白いカンジですけど……」

友人「彼はwww通称“ビッグサイトの白い死神”wwwwww」

友人「狙った頒布物は必ず狙い撃つといわれるwww凄腕ファンネルですなwww」

白い死神「必ず狙い撃つといわれる、じゃない。必ず狙い撃つんだ」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:19:56.77 ID:Fzl9L1Z/o

少女「なるほど……。スナイパーの方ですか……」

少女「ちなみに、仕留めた敵のご遺族の方から恨みを買ったりは?」

白い死神「はっはっは! たしかに買えなかったヤツから恨みを買うコトはある!」

白い死神「だが、だからこそ転売はしないし、逃げも隠れもしない」

白い死神「その象徴が、この白い服なのさ」パリッ

少女「狙撃手でありながら、歴とした戦士でもある、というコトですね」

少女「……感服します」スッ

白い死神「おいおい、オオゲサだな。単に早くに並んで頒布物買ってるだけだぜ?」

少女「いえ。COMIKEに参加される方々には、敬意を払うべきだと思っていますので」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:20:24.23 ID:Fzl9L1Z/o

男「それで、白い死神。今日の釣果はどうだった?」

白い死神「上々だな! 友人のヤツに頼まれた依頼はすべて完遂した」

友人「まったくありがたいですなwwwwww」

白い死神「今回は、列が長くなりそうな大手は他のファンネルに任せて」

白い死神「俺自身は信用できる大手を複数回る作戦だったんだが……」

白い死神「コレが大当たり! 初参加の大手の列の、長いコト長いコト」

白い死神「案外列を早くさばいた新参の大手もいたのは予想外だったがな」

白い死神「その後は、しつこく島中を爆撃して、俺の目当ても買って、終わり」

男「まったく。お前もお前で、COMIKE、エンジョイしてるな」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:20:52.34 ID:Fzl9L1Z/o

白い死神「それよりも、男。どうしたこの子は? アキバで引っかけてきたのか?」クイクイ

男「……ホント、出会うヤツ出会うヤツ、マジで全員同じ質問するな……」

男「だからそんなんじゃないって。……実は、俺の姪っ子なんだ」

白い死神「うわウソくさ」

男「ちっ……」


黒ずくめ「友人さん、お疲れ様です」

友人「おうふwww黒ずくめ氏、お疲れ様ですなwww」

白い死神「黒ずくめちゃん、今日もイケメンだねー」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:21:24.08 ID:Fzl9L1Z/o

黒ずくめ「茶化すな死神。それよりも、朗報だ」

白い死神「あっコレ絶対朗報じゃないやつ」

黒ずくめ「ほらお前、ツイに写真アップされてるぞ。昼ごろ、戦利品チェックしてただろう」

白い死神「え? ……うわ、マジじゃん! 俺が写真撮ってるところを撮られてる!」

友人「どれどれ……、『白い死神、今日の大手の頒布物ほとんど持ってる……震える……』wwwwww」

白い死神「かーっ! 有名人はつらいわー、かーっ!!」


少女「友人さん、ホントに友達いっぱいいたんですね……」

男「アイツ、ああ見えて交流広いからな」

男「やはり時代は動けるオタクか……」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:21:51.24 ID:Fzl9L1Z/o

友人「あ、そうそうwww少女氏www」

少女「はいっ!? 何でしょうか!」

友人「こちら、黒ずくめ氏wwwwww」

友人「昼ごろに言ってた、我の知り合いの二日目の女性向けサークルの方ですぞwww」

黒ずくめ「おや。貴女が、友人さんのおっしゃっていた……」

黒ずくめ「初めまして。ご紹介に預かった、黒ずくめです」

少女「えっ!? あっ、ハイ!」ビクッ

少女「どどど、どうも。よよよよろしくお願いします」ドキドキ

男「何をビクビクしてるんだ」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:22:19.02 ID:Fzl9L1Z/o

少女「だだだだって、男さん! 黒ずくめさん、スゴいイケメンなんですもん!!」

黒ずくめ「あはは。言いすぎですよ」

男「…………」


男「……黒ずくめさん。あんたその服、まさかフォーマルスーツでCOMIKEに来たワケじゃないよな」

男「というコトは、レイヤーか?」

黒ずくめ「ええ。今日はコスプレエリアで、コスプレをしていました」

男「……重ねて訊くが、男が黒ずくめのコスプレなんてしないよな?」

黒ずくめ「はい、その通りです。お察しの通り、男装レイヤーですよ」

少女「えええっ!! ……お、女のヒト、ってコトですか!?」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:22:46.23 ID:Fzl9L1Z/o

黒ずくめ「そうですよ。似合っていますか?」

少女「似合ってるも何も……。ほ、本当に男のヒトだと思いましたよ!!」

黒ずくめ「ありがとうございます。イチバンの誉め言葉ですよ」ニコ

少女「うっ……。い、いえ、コチラこそ……」ドキドキ


男「……なあ、友人」

男「どんどん少女がアブナイ領域に引きずりこまれてる気がするんだが」

友人「んんwwwCOMIKEは参加者のカルマを映す鏡www」

友人「少女氏が初めからそれだけの宿業を背負っていたというだけのハナシですなwww」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:23:13.73 ID:Fzl9L1Z/o

友人「さてwwwwww男氏www少女氏www」

友人「黒ずくめ氏は明日、二日目にサークルを出されるんでしたな?www」

黒ずくめ「はい。今回も、自作の同人誌を出させていただきます」

少女「ち、ちなみに、どんな同人誌を……?」

黒ずくめ「ふふ。当日のヒミツ、というコトで」


友人「というワケでwww我は明日の朝、黒ずくめ氏のサークルに並ぼうと思うのですがwww」

友人「男氏と少女氏も一緒にどうですかな?wwwwww」

少女「えっ! 私たちも、黒ずくめさんのサークルに並ぶんですか!?」

男「おい、友人。ちょっと待て」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:23:45.18 ID:Fzl9L1Z/o

男「黒ずくめさん、あんたのサークルはどこだ。島か? 壁か?」

黒ずくめ「センエツながら、壁でやらせてもらっています」

男「……なら必然、始発と同時に並ぶ、というコトになるな……」

友人「何か問題がありますかな?www」

男「いや、俺としては問題無いが」

男「心配なのは少女だ。コイツは、COMIKE初参加だぞ?」

男「今日も安全策を取って、昼から会場に入った」

男「なのに、いきなり二日目で、待機列に並んでも大丈夫なモノか……」

少女「男さん……」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:24:11.62 ID:Fzl9L1Z/o

少女「心配してくださってありがとうございます」

少女「でも、私は大丈夫ですよ!」

少女「今日一日で、COMIKEのフンイキは掴みましたし!」

少女「今なら、朝から待機列にだって、並べる気がします!!」

男「…………」

友人「男氏www少女氏が心配なのはわかりますがwww」

友人「少女氏はCOMIKEに来るというチャレンジを既に行っているwww」

友人「何事もチャレンジですぞwwwwww」

男「…………」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:24:39.68 ID:Fzl9L1Z/o

男「……そうか」

男「なら、わかった。いいだろう」

少女「男さん!!」

男「ただし! 明日に備えて、今日は早く寝ること」

男「待機中は必ず俺の指示に従うこと」

男「……いいな?」

少女「ええ、もちろんですとも!!」

友人「明日は我も一緒に並びますからなwww」

友人「共に頑張りますぞwwwwww」
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:25:07.10 ID:Fzl9L1Z/o

黒ずくめ「あの……、男さん」

男「なんだ?」

黒ずくめ「大丈夫でしょうか、彼女……」

黒ずくめ「ジマンじゃないですが、僕の列には、かなり人が並びます」

黒ずくめ「明日の天気もどうなるかわからないし、やはり初参加では……」

男「いえ、黒ずくめさん」

男「俺が許可を出したからには、最後まで責任を持ちますよ」

黒ずくめ「……そうですか」

黒ずくめ「彼女を、よろしくお願いしますね」
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:25:35.16 ID:Fzl9L1Z/o


白い死神「おい友人ー、撤収作業終わったぞー」

友人「んんwww死神氏wwwありがたいwwwwww」


友人「では、我らはこれにて失礼いたすwww」

友人「男氏、少女氏、黒ずくめ氏wwwまた明日会いましょうぞwww」

男「ああ。明日行く時は、またホテルに寄るよ」

友人「大歓迎ですぞwwwwwwぴゃっwww」

白い死神「俺は明日もファンネルとして行動する。ココで会ったら、またヨロシクな」

少女「ええ! 二日目で、また会いましょう!」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:26:02.40 ID:Fzl9L1Z/o


男「さて、俺たちも帰るか」

少女「そうですね。黒ずくめさんは?」

黒ずくめ「僕も着替えたら帰ります。皆さんは、お先にどうぞ」

少女「着替える……? 何でですか?」

男「COMIKEでは、会場の外でのコスプレは禁止されているんだ」

男「だからコスプレイヤーは、会場で衣装を着て、会場で衣装を脱がなきゃならない」

黒ずくめ「そういうコトですね」

少女「…………」ウズウズ

男「……?」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:26:30.67 ID:Fzl9L1Z/o

少女「ちなみに、黒ずくめさん! 今日のお泊まりは、どこに?」

黒ずくめ「えっ……。都内のホテルですが」

少女「なら、私たちがタクシーで送っていきますよ!」

男「おい……」

少女「いいじゃないですか。お金は私持ちなんですから!」

男「……そうだったな。なら、俺からは異存は無い。黒ずくめさんは?」

黒ずくめ「……、そうですね……」

黒ずくめ「では、おコトバに甘えて」

少女「やったー!」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:26:57.43 ID:Fzl9L1Z/o

黒ずくめ「……?」

男「……?」

黒ずくめ「では、更衣室で着替えてくるので、少々お待ちいただけますか?」

少女「ええ、ええ! もちろんですとも! 待ってますね!!」

黒ずくめ「ありがとうございます。それでは、後で」


男「……お前、なんで黒ずくめさんを引き止めたんだ?」

少女「だって一緒に帰れば、コスプレしてない黒ずくめさんが見れるじゃないですか!」

少女「私服の黒ずくめさんって、どんなヒトなんだろうなぁ……!」

男「ああ、ナルホドね……」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:27:33.99 ID:Fzl9L1Z/o



黒ずくめ「皆さん、お待たせしました」

少女「あっ、黒ずくめさ…………」


少女「……ん?」

黒ずくめ「……? はい、黒ずくめですよ」

男「黒ずくめじゃない黒ずくめさんだな」


少女「……男さん」

男「なんだ?」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:28:01.94 ID:Fzl9L1Z/o

少女「フツーの、女のヒトですね」

男「……お前はいったい、何を期待してたんだ?」

少女「ええ!? そりゃ、こう……」

少女「私服でも隠し切れないイケメンオーラが、バリバリ出てるモノかと!」

男「お前は幻想を抱きすぎだ……」

男「コスプレってのは、たいてい、メイクで理想の姿に近づけるモンだぞ」

少女「そ、そうだったんですね……。メイク、スゴすぎます……」

男「ああ。ここはメイクがスゴいんだと思っておけ」

男「むしろ俺は黒ずくめさんが普通の美人な女のヒトで良かったと思うぞ」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:28:29.32 ID:Fzl9L1Z/o


――ビッグサイト周辺

少女「へい、タクシー」ビッ!


スーッ キキッ

カパッ


運転手「お乗りください」

少女「あっ、今朝の運転手さん!!」

運転手「おや。奇遇ですな」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:28:57.21 ID:Fzl9L1Z/o


――秋羽原

少女「……それでですね、ホールに入ったら、そりゃもうスゴかったんですよ!」

運転手「なるほど。私も昔は行ってましたが、最近はスゴいですな」

黒ずくめ「ふふ。三日目はいちばんスゴいよ?」

少女「そうなんですか!? うわはぁ、楽しみだなぁ……!」


男(女子同士の会話にはついていけんな)

男(俺は家につくまで黙ってるとしよう)

男(……というか、しれっと会話についていける運転手さんは何なんだ?)
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:29:24.55 ID:Fzl9L1Z/o


――都内 某ホテル前

黒ずくめ「それでは、僕はここで」

少女「はい! また明日、ビッグサイトで会いましょう!」

黒ずくめ「ええ。……おっと、少女ちゃん」

少女「ひゃぁっ!! きゅ、急に私の首元を触ってどうしたんですか!?」

黒ずくめ「いえ。せっかくのかわいいネックレスのチャームが曲がっていたモノで」

黒ずくめ「身だしなみも油断しないように。家に帰るまでが、COMIKEですよ」ニコ

少女「うっ……。は、ハイ!」
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:29:52.26 ID:Fzl9L1Z/o

少女「そ、それでは、お疲れ様でしたー!」

ブロロロロロ…


少女「……はぁ。黒ずくめさん、やっぱり私服でもイケメンだなぁ……」ウットリ

少女「あんなヒトが書く同人誌って、どんな本なんでしょうね!?」

男「さあな。オシャレなモノも好きそうだし、茶葉の解説本とか……」

男「いや、それなら最初から解説本だと言うか。……同人誌か」

男「まあ、二日目というだけで、だいたい想像はつくがな」

少女「……? まあ、楽しみにしておきます」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:30:19.39 ID:Fzl9L1Z/o


――アパート前の道路

パタン

少女「ありがとうございましたー!!」

運転手「いえいえ。またのご利用を」

ブロロロロロ…


少女「……はー、やっと帰ってきましたよー!! 懐かしき我が家!」

少女「なんだか何日も家を空けていたような気がします!」

男「ああ、そうだな。……まあ、お前は昨日初めてウチに来たハズだが」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:30:52.90 ID:Fzl9L1Z/o

少女「細かいコトは言いっこナシですよ。ほいガチャ、っと……」


――居間

ドシン!!!

少女「ハァー、重かったー!!」

男「まったくだ。こんなに買い物したのは、いつ振りかな……」


男「さて、俺の疲れが取れたら晩飯の時間にする」

男「それまでは、戦利品チェックでもしておけ」

少女「はーい! ああ、これが手に入れたお宝をあらためる感覚……!」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:31:19.92 ID:Fzl9L1Z/o


少女「ふーん、ふーん。健全な本はコッチ、えっちぃ本はコッチ……と」

少女「げ……。この健全じゃない本、ちょっとカゲキすぎません?」

少女「私、こんなの買ってましたっけ?」

男「嬉々として買ってたろうが。俺もサークルさんも顔引きつってたわ」

男「というかカゲキだと思うなら俺に見せるな」

少女「えー。いいじゃないですかぁ、男さんなんだから」

男「どうして俺ならオッケーなんだ」

少女「冷静な自分なら困惑するようなモノでも、無意識のうちに買ってしまう……」

少女「さすがCOMIKE、恐ろしい場所です。熱気にあてられないよう注意しなければ」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:31:46.65 ID:Fzl9L1Z/o


少女「コッチはCDですね。……これって、音楽ですよね?」

男「そりゃそうだが。お前、わからないで買ってたのか」

少女「そうじゃないんですが。ただ、どうやってCDで音楽を聴くのかな、って」

男「な……。ダウンロード世代は、CDの使い方もわからないのか? ウソだろ……」

少女「音楽はケータイで聴くモノじゃないんですか?」

男「ソレも間違っちゃいないが。……とりあえず、CDを貸せ」

男「まず、CDから音楽を俺のパソコンに取り込んで、そこからお前のケータイにコピーする」

少女「よろしくです! ああ、直に話したヒトの作った音楽が聴けるなんて、カンゲキだなぁ……!」

男「人生楽しそうだな、コイツ」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:32:22.18 ID:Fzl9L1Z/o


男「よし、そろそろ晩飯の時間だ」コト

少女「……? なんですかコレ」

男「何って、ココナッツミルクだが」

少女「いやソレはわかりますが。ば、晩ご飯が……、コレですかぁ?」

男「いちおう聞いてやるが、お前は晩飯に何を期待していた」

少女「そりゃあ高そうなところに外食とか、豪華に出前のお寿司ですね!」

少女「まあ男さんの手作り料理でもいいですよ?」

男「俺の料理が二の次に置かれているのが何となく腹立たしいんだが」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:32:56.08 ID:Fzl9L1Z/o

男「まず第一に、いちど家に帰った以上、わざわざ外に食べに行ったりしない」

男「寝る時間も遅くなるし、疲れるだけだ」

少女「むーぅ。出不精ですねぇ」

男「次に、なんでわざわざ出前とか高いモン取らなきゃならんのだ」

少女「家にお客さんが来てるんですよ? それにお金は私持ちですし」

男「こういう時だけ客気取りか……。だとしても。だとしてもだ」

男「お前、明日は朝から待機列に並ぶと言っただろう」

少女「ハイ、そうですね。ソレが何か?」

男「よほど死にたいらしいな」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:33:22.73 ID:Fzl9L1Z/o

男「明日、朝から何時間も並ぶとわかってるのに、前日の夜にバカ食いする奴があるか」

男「討ち死にが目に見えているだろう」

少女「えぇ……。12時間くらいじゃ食べたモノは出てきませんよ」

男「だったら腹に残ってるんだろう。人間、非日常の場では緊張もするし委縮もする」

男「その時、いま食ったモノが胃袋でカーニバらないと何故言える?」

男「それに、排泄のサイクルが24時間だというのなら」

男「お前は今朝から昼にかけて何を食ったか。その腹に訊いてみろ」

少女「うぅ。でも、さすがにココナッツミルクだけでは、空腹でお腹が痛くなります!」

男「わかったよ……。じゃあ、赤いき○ねと緑のた○きがあるから、好きなほう選べ」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:33:49.87 ID:Fzl9L1Z/o

少女「やったー! 私、カップ麺、大好きなんですよね」

男「インスタント中毒者か。ハンバーガーとか、ファストフードはどうだ?」

少女「あまり食べる機会はありませんでしたが、モチロン好きですよぉ」ベリベリ

男「まあ、今朝にしたって、ケバブ食ってたか……」

少女「おほー、容器の中の乾燥した香りがたまらない」スンスン

少女「お湯あります? ありませんね? 沸かしますよー」

男「急に元気になりやがって。まあ、俺も何か食うか……」


男「……アイツ、どん左ェ門もっていきやがった」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:34:17.39 ID:Fzl9L1Z/o



少女「ごちそうさまでしたー。このチープな感じは、他に代えられませんね」

男「ココナッツミルクを忘れるな。整腸の役割も兼ねてるんだぞ」

男「それでも胸焼けがすると思うなら、野菜ジュースを飲んでおけ」パカ

男「ヨーグルトもいいぞ」

少女「なんで冷蔵庫の食材は少ないのに、健康食品みたいなのはいっぱいあるんですか……?」

男「食材が少ないのは、この三連休に買いに行こうと思ってたからだ」パタン

男「それに、一人暮らしとなると、どうにも栄養バランスが偏りがちでな」

少女「あはは、きっと良いお婿さんになれますね……」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:34:44.75 ID:Fzl9L1Z/o

ピーッ ピーッ

男「お……っ。ようやく風呂が沸いたな」

少女「へえ、気付かなかったけど、お風呂もあったんですねー」

男「このアパート、わりと設備は整ってるからな」

男「……それが何故かは、察しろ」

少女「???」


少女「とにかくカラダも服もベタベタしてたので、ようやく汗を落とせそうで、助かります!」

男「今は夏の時期だからな。ましてやCOMIKEの後」

男「ちゃんと風呂に入っておかないと自分も他の参加者もヒドいコトになる」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:35:20.40 ID:Fzl9L1Z/o

少女「ああ……。たしかに、ちょくちょくですが、異臭を放ってるヒトもいましたね」

男「今日の天気は、朝が雨、昼が曇りだったから、夏コミにしてはかなり楽だったが」

男「その分、湿度が高くて、生乾き臭がスゴかった」

少女「自分の臭いは、自分じゃわからないのが、悩みのタネですね」スンスン

男「それに二日目以降は、家にも帰らず、カラダも服も洗わず」

男「通しで参加しているような野生のモンスターが幾度となく現れる」

少女「草むらならぬ人ごみから飛び出してくるという風情ですか」

男「まあヤツらは野生だから仕方ないが」

男「せめて俺たちはモンスターにならないよう、湯舟につかるぞ」
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:35:48.34 ID:Fzl9L1Z/o

男「で、どっちから先に入る? 俺としては……」

少女「ハイ! 一番風呂、行かせていただきます!!」

男「元気でよろしい」


男「脱いだ服は、脱衣所のデカいカゴに入れておいてくれ」

男「あとで洗濯機で洗うが……。俺と一緒でいいか?」

少女「はあ。構いませんよ」

男「あっそう。まあ、水が節約できて助かるがね」

少女「資源は大切にしないといけませんからね」
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:36:15.80 ID:Fzl9L1Z/o

少女「それじゃあ、また後でー」ダダダ


少女「んー! スッポンポンは快適だなあ!」

少女「わお、洗剤がいっぱい揃ってる! セッケンとボディーソープってどう違うの?」

少女「蛇口をヒネれば水が出るんだよね……。ひゃあ! 冷たぁい!」


男「…………」ハァ

男「知らない男の家でハダカになれば、襲われるかもしれないとか、考えないのかね」

男「いや、泊めてくれるなら何でもするとか言いやがるし、今さらか……」

男「……それとも、俺の常識がまちがってるのか……?」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:36:45.80 ID:Fzl9L1Z/o



少女「はー! サッパリしました! お風呂、お先です!!」モクモク

男「あ……っ、着替えはあるんだよな?」

少女「ハイ。持参していますが」

男「良かった。さすがに、女モノの服までは用意できないからな」

男「じゃあ、俺も入ってくる。戦利品でも見ながら好きにしててくれ」

少女「はーい! 実は中身が気になってる本があるんだよね……、と!」


男(……なんて、知らない女を一人で部屋に放置する俺も、大概か)

男(お互い、甘い親に育てられたモンだな)
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:37:11.70 ID:Fzl9L1Z/o



男「あがったぞー」

少女「あ、うーん」シャクシャク

男「…………」

男「……てめえ、そのアイス、どこから出してきた」

少女「え? そこの冷凍庫からですが」

男「お前の親は人様の家の食い物を勝手に漁って良いとでも教えたか」

少女「そんなワケないでしょう。えへへ」

男「……頭が痛い。もう、好きにしろ」
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:37:38.13 ID:Fzl9L1Z/o


少女「う。あ、いたたた。痛たた。きゅ、急に足が……!」

男「ふ。アドレナリンが切れて、痛みの波が来たか」

少女「痛みの波って無知の知みたいですね」

少女「でも痛い、痛いですよぅ。男さんは大丈夫なんですか?」

男「……今は、大丈夫だな」

少女「え? それって……」

男「……最近、痛みが来るのが遅くてな」

少女「…………」

少女「……イヤですね、老化って」
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:38:13.84 ID:Fzl9L1Z/o

男「だが、当座の問題はお前だ。足は大丈夫か?」

少女「うーん、歩くのには問題無いと思いますけど。やっぱり痛いです」

男「どれ……。うーん、たしかに両足とも熱持ってるな」ピタ

男「とりあえず、冷水でひやすか」


――浴室

シャワー

少女「わっはー、つっめたーい!!」バシャバシャ

男「暴れるな、俺にもかかるから! ヒエッ、つめてっ!!」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:38:42.48 ID:Fzl9L1Z/o


――居間

少女「ふえ〜、冷えた冷えた」

男「体温が下がって硬直したままだと筋肉痛めるぞ。揉んでやる」

少女「いいんですか? じゃあ、背中もマッサージお願いします」

男「誰がそこまでやるか。エステ屋いってこい」グイグイ

少女「―――あ゙ッ、気持ちイ゙ィ゙〜〜……」ゴキゴキ

男「えらい音が出てるぞ、色々と。普段カラダいたわってるか?」

少女「はあ? 疲れなんて、寝れば治るでしょう」

男「若いっていいね。でも、たまにはじっくり休むのもダイジ……」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:39:09.46 ID:Fzl9L1Z/o

男「…………」

少女「……? どうかしましたか」

男「……へ? あ、いや」

男「脚、長いな、と思ってな」

少女「どこ見てんですか。んー、他のヒトの脚とか意識しないんで、何とも言えませんが」

少女「あ、でも、回し蹴りとかトクイですよ?」シュッシュッ

男「トクイと自称できるほど回し蹴りを撃つ機会があったのか」

男「陸上部?」

少女「そこはカラテとかじゃないんですか? まあ、いずれでもありませんが」
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:39:35.74 ID:Fzl9L1Z/o

男「ふーん。あっ、そう」


男(……なんだ、この足のマメの数)

男(片足だけで軽く10個は超えてる。ハッキリ言って異常だな)

男(だが、今日のCOMIKEで出来たのかといわれると)

男(そんなに新しいマメが多いようには見えない)

男(マメは前からあったと考えるべきか)

男(……コイツ、いったい今までどこで、何をしてきたんだ?)

男(知識が食い違う部分もあるし。ワケがわからんな)
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:40:02.62 ID:Fzl9L1Z/o

男「……よし、こんなモンだな」スッ

少女「ふいー! ありがとうございます、だいぶ足が軽くなりました!」ブンブン

男「そりゃ良かった。あとはサロロンパスを貼っといてやる」ペタ

少女「うーん、つめた〜い……」

少女「あ、そうだ。余ったサロロンパス、ちょっと分けてもらえます?」

男「別にいいが。何に使う?」

少女「ふふん。鼻にペタリ」

少女「どうですか! 勝利の勲章です!」ヘヘッ

男「アホだコイツ……」
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:40:29.54 ID:Fzl9L1Z/o



男「よし、そろそろ寝るぞ」

少女「えー? まだ7時ですよ? 若い時から、お年寄りですか?」

男「年寄り扱いするな、まだ大学生だぞ」

男「……今日、何時に起きたか覚えているか?」

少女「ああ……。たしかに、まだ暗い時でしたね」

男「そういうコトだ。早く起きなきゃならないし、睡眠時間を欠いてもいけない」

男「COMIKEはスポーツだ。戦場だ。まず万全の体調が大前提と知れ」

少女「んー、ハイ! そうですね! おやすみなさい!!」
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:41:03.83 ID:Fzl9L1Z/o

男「ちょっと待て。何故お前は当然のようにベッドを占領している?」

少女「え……? あ、たしかにベッド一つしかありませんね」

少女「ごめんなさい。このベッドは男さんに譲るべきですね」

男「お、おう……。急に殊勝だな」

少女「衣食住の重要性は心得ているつもりです」

男「でも、いいよ。お前がベッドで、俺がザコ寝。それで構わない」

少女「え? いいんですか?」

男「別に。礼儀には礼儀を、というやつだ。例えば友人とかなら蹴り飛ばしてたがな。じゃ、消すぞ」

少女「はーい」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:41:42.47 ID:Fzl9L1Z/o


パチ


男(……やれやれ。やっと一日目が終わったか)

男(本当に長い一日だった)

男(……まさか、三連休がこんなコトになるとはな)

男(昨日までは思いもしなかった……)

男(さて、今日は比較的うまくいったが、明日はどうかな)

男(……考えても仕方ないな。答えの出る問題じゃない)


男(……寝るか)
222 : ◆mclKiA7ceM [saga]:2017/08/25(金) 19:42:08.82 ID:Fzl9L1Z/o
第一章は以上になります。
第二章は、明日18時ごろの開始を予定しています。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/25(金) 19:52:23.53 ID:wkorhzzKO
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/26(土) 02:22:41.97 ID:PCyBtLfOO
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/26(土) 07:49:40.27 ID:mlt0YSOoo
乙ですぞwwwwww
しかしムックはありえないwwwwwwぺゃっwwwwww
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/26(土) 11:23:44.78 ID:Ue2pLgH20
おもろい
227 : ◆mclKiA7ceM [saga]:2017/08/26(土) 18:24:27.53 ID:Rg3u98mHo
感想ありがとうございます。とても励みになります
緑は敵ですぞwwwwwwぴゃっwww


それでは、第二章を開始します。
今回も200レスほどの予定です。
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:24:57.88 ID:Rg3u98mHo




ザァー…



少女「……、んっ……」

少女「ぐっ、うぅ〜……、くぁ〜〜〜」ノビッ


少女「あれ、ココは……」ガバッ


少女「……そっか、男さんの家か」

少女「あれ、でもさっきまで、COMIKEから帰って……」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:25:25.96 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」


チクタク チクタク


少女「……3時」

少女「外は真っ暗……」

少女「ああ、そうか。もう朝になったのか……」


少女「…………」

少女「なんだか、肌寒いな」
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:25:52.29 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」


少女「……寒いのは、イヤだな……」


少女「……?」

少女「あれ。そういえば、男さんがいないな……」

少女「昨日は、この部屋で一緒に寝てたハズなのに」


少女「ああ、でも向こうの部屋だけ明かりがついてる」

少女「ヨイショっと」タタッ

少女「髪を……、まとめて……」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:26:21.94 ID:Rg3u98mHo


――ダイニング

少女「男さーん!」

男「ん。今、起きたか」

少女「ええ。ゆうべはグッスリ眠れたようです!」

男「なら良かった。出発まではまだ時間がある。体の調子を整えろ」スイッ スイ

少女「……? あの、男さんは、何を?」

男「ケータイで今の状況を調べていた」

男「どうやらココと同じく、有開でも雨が降っているらしいな」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:26:48.39 ID:Rg3u98mHo

少女「雨……」

男「天気予報では、昨日と同じく、朝は降ってても昼にはやむようだが」

男「とはいえ、待機列で雨に降られるコトは間違いない」

男「ある程度カクゴしておくことだな」

少女「……そうですか」

男「……? どうした。元気無いな。朝は低血圧か?」

少女「ええと……、ですね。それも、ありますが……」


少女「……ちょっと、私のハナシ、してもいいですか?」
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:27:14.66 ID:Rg3u98mHo

男「…………」

男「わかった。聞こう」

男「ソコに座れ」ガタ

少女「ありがとうございます」


男「…………」

少女「…………」


男「……何か、飲み物を入れるよ」

男「寒いし、ホットコーヒーでいいか?」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:27:54.81 ID:Rg3u98mHo

少女「ホットコーヒー……」


少女「……ええ。お願いします」フフ

男「……? なに笑ってるんだ……」


男「ああ、そうだ。俺はあいにくとブラック派でな。牛乳と」

少女「―――牛乳とガムシロップの貯蔵は無いが、フレッシュならある」

少女「……ですか?」


男「……!」

男「あ……、ああ。たしかにそうだが……」
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:28:21.53 ID:Rg3u98mHo

少女「いいえ、構いませんよ。実は私もブラック派なので」

男「ほう。その年の頃で、たいしたモノだ」

少女「ムカシから飲んでいますから」



男「……そら、コーヒーだ」コト

少女「うぅ……ん。おごそかな闇色の薫り……」スン

少女「一日はコレが無いと始まりませんね」

男「ふふっ。通だな」

男「俺も食にコダワリは無いが、コレだけはな」ズズ
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:28:50.04 ID:Rg3u98mHo

少女「……苦くて、熱いですね。五臓六腑に染みわたります」

男「飲みすぎはキンモツだぞ。さて、ハナシを聞こうか」

少女「…………」

男「…………」


男「……話しにくいなら、別にいいんだが」ボリボリ

少女「いえ。私から言い出したコトですから、喋らせてください」


少女「……そうですね。男さんには、知るヨシも無いと、ことわっておきますが……」

少女「私の“ふるさと”のハナシです」
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:29:17.48 ID:Rg3u98mHo

男「ふるさと。そういえばお前、いったいどこから来たんだ?」

少女「お教えしても良いんですが、絶対にご存知無いので、やめておきます」

男「おいおい。俺だって、そんなに世間知らずじゃ……」

少女「私にはそう断言できるのです」

男「…………」

男「……そうか。なら、まあいいがな」


男「で。お前の“ふるさと”というのは、どういうところなんだ?」ズズ

少女「……。そう、ですね……」
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:29:44.58 ID:Rg3u98mHo

少女「……いいですか。カーテン」

男「ああ」

シャアッ



            ザァー…



少女「私のふるさとは、こんな風に、いつでも“雨”が降っているところです」

少女「いつでも。どこでも。いつまでも」

少女「やむコトの無い雨が、永遠に降り続けている場所です」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:30:11.81 ID:Rg3u98mHo

男「…………」

少女「まあ、そんなワケですから。私は生まれてからずっと、屋根の下で育ちました」

少女「別に、私にはソレが常識でしたので、何とも思いませんでしたが」

少女「この国に来て、青い空、白い雲、眩い海、瞬く星というのは」

少女「絵本の創作ではなく、本当に存在するモノだと、初めてこの肌で感じたのです」

男「それは、東狂の海か?」

少女「ええ。どこまでも眩く照らされる海、無窮に瞬く星々……」

少女「世界というのは、スバラシイものですね」

男「田舎のほうに行けば、自然はもっとキレイだぞ」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:30:38.03 ID:Rg3u98mHo

少女「ええ。一度、行ってみたいモノです」


少女「でも、私の“ふるさと”は」

少女「今の、この景色のように」

少女「ずっと、雨が降っていました」



            ザァー…



少女「ずっと、ずっと、ずっと……。終わるコトの無い雨」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:31:04.68 ID:Rg3u98mHo

少女「それに、この“雨”というのは、いささかタチの悪いモノでして」

少女「浴びると、カラダに良くないのですね」

男「……酸性雨のようなモノか?」

少女「きっと似ていますが、もっと、もっとタチの悪いモノをご想像いただければ」


少女「とにかく、その“雨”は、人々の往来を億劫にさせました」

少女「必然、一ヶ所に多くのヒトが住むと、食糧や資材も大量に必要になりますから」

少女「なるたけ行動しなくて済むように、少人数が分かれて住むようになったのです」

男「……それは、面白くないな」
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:31:30.99 ID:Rg3u98mHo

少女「ええ。面白くありません」

少女「一緒に遊んでくれるオトナのヒトも、同年代の友達も少ないですから」



            ザァー…



少女「でも、そんな私にも、一つだけ楽しみがありました」

少女「それは、おじいちゃんから、大人数のヒトが集まっていた時のハナシを聞くことです」

男「君のおじいちゃんか。いったい、どんなヒトなんだ?」

少女「うーんと。そうですねえ……」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:31:57.91 ID:Rg3u98mHo

少女「普通のおじいちゃんでしたよ。うん、ごく普通の」

少女「物静かで、落ち着いていて……。優しくて、モノ知りで……」

少女「私の、大切なおじいちゃんでした」

男「…………」


少女「そんなおじいちゃんから聞いたんですね。私は、COMIKEのハナシを」

少女「もっとも、私が聞いたのは“コミケ”だったような気もしますが……」

男「ほーう。孫にCOMIKEのハナシをするとは、かなり変わったおじいちゃんだな」

少女「ええ、本人もそう言っていました」

少女「でも、私はそのハナシが好きでした」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:32:24.33 ID:Rg3u98mHo

少女「私には考えられないくらいのヒトが集まって……」

少女「その人々には、それぞれ一人一人に、目的が、嗜好が、人生があって……」

少女「自分のほんの人生の一部を見せ合い、認め合う」

少女「COMIKEはそんなところだと、おじいちゃんは話していました」


男「そんなキレイなモンじゃないぞ? COMIKEは」

男「色んなヒトが集まりすぎて、体臭はクサいし、変なヤツもやってくる」

男「昨日今日はマシそうだが、もし気温が上がれば、会場自体どうなるコトか」

少女「あはは。ソレについては、身をもって体感するコトにします」
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:32:50.78 ID:Rg3u98mHo

少女「でも、伝え聞くCOMIKEの姿は、とても楽しそうで……」

少女「貸してもらったチャームや同人誌からも、その光景を想像していました」

男「お、おい……。お前のおじいちゃん、同人誌も持ってたのか?」

少女「ええ。その手のマニア、というワケではないようでしたが」

男「ちなみに聞くが、同人誌といっても、普通の本と変わらない健全なやつだよな?」

少女「いいえ? えっちぃのも多かったですが。えへへ」

男「えへへて……」

男「おじいちゃん。あなたは孫を、どんな風に育てたいんですか……?」

少女「ふふ。でも、ソレも、必要なコトだったのかもしれませんね」
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:33:17.78 ID:Rg3u98mHo

少女「そしていつしか、私は、生でそのお祭に参加してみたい」

少女「そう思うようになりました」

男「だから、一昨日、ココに来たのか」

少女「ええ! その機会を手に入れた私は、それはもう、バビューンと!!」スッ…

少女「はるばるやってきたのですよ!!」シャキーン

男「……ふっふっ。エネルギッシュなヤツだ」

少女「ええ! 不肖私、元気なコトだけが取り柄なので!」

男「結構。だけどその元気も、二日目、三日目のいつまで保つかな?」

少女「いつまでも、ですよーっ!!」
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:33:45.13 ID:Rg3u98mHo


少女「……ふう。話してたら、なんだか目も覚めました」コト

少女「さあ、男さん! 出発はいつにしますか!?」

男「そうだな、それじゃあそろそろ行くとするか」ガタ

男「だが、出来ればその前に腸の中のモノは出しておけ」

男「並び始めたら、待機列確定まではガマンしてもらうぞ」

少女「うぅ……。ちなみに、どうしてもダメだったら?」

男「喜べ。一気に十数万人の中のスターダムだ」

少女「そんなの喜べませんよーっ!!」

男「スターダストともいうな」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:34:13.55 ID:Rg3u98mHo


少女「ぐぅぅ……っ、そんなハナシしてたら、なんだか下ってきました」ゴロゴロピー

少女「では! ちょっと! おトイレお借りしますね!」ダダダッ

男「はいはい。……やれやれ、生理現象までニギヤカなヤツだ」


男「さて、アイツ薄着だし、防寒用のズボンも用意してやるか……」ガサガサ

男「それと上着。夏コミで追加の上着なんて、珍しいコトだが」

男「この雨だとレインコートじゃダメかもしれんな。使うかどうかは別にして、折り畳み傘か……」

男「あと、重要なのが防水カバー。戦利品を濡らすワケにはいくまい」ゴソゴソ


男「…………」ピタ
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:34:40.32 ID:Rg3u98mHo

男「雨の降り続ける世界、ね」

男「一日中昼だったり、夜だったり、凍ってたりする国ならまだしも」

男「ニワカには信じがたいハナシだ、が」ギュウギュウ

男「……アイツがウソをついているというワケでもないだろう」

男「……本当に存在するのか、そんな国が」

男「…………」


男「少人数で人々が暮らして、COMIKEも行えない世界か」

男「……ふん」

男「あまり、好かんな」ギュウギュウ
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:35:07.05 ID:Rg3u98mHo


――アパート前の道路

少女「男さん! 今日も今日とて重装備ですね!」

男「雨だから、特にな。それに列待機用のジュンビもある」


ブロロロロロ

キキー


カパッ

運転手「どうぞ」
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:35:33.94 ID:Rg3u98mHo

少女「おっ! 昨日の運転手さん!」

運転手「またお会いしましたな」

男「この地区の担当なんですか?」

運転手「そんなところです。では、どうぞ」


ブロロロロロ…

バシャバシャ

運転手「今日はドシャブリの雨ですなあ」

男「ええ。雨の日は、やっぱり客足も遠くなるモンなんですか?」
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:36:00.08 ID:Rg3u98mHo

運転手「いかにも。今朝は、お二人が最初のお客様で」

男「そうですか……。やっぱり雨の日はCOMIKEの人も少ないのかな」

運転手「経験則から言うと。ですが、しかし」

運転手「やはり行くヒトは行っておられますよ」

少女「私たちも今から行くところですもんね!」

男「お前、言っておくがそんなジマンするハナシじゃないからな……」

運転手「はっは。しかしこの十数年、COMIKEもずいぶん一般的になりました」

運転手「私としては喜ばしくも、フクザツでもありますな」

男(この運転手さんも、あるいは一家言あるヒトなのか……?)
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:36:27.19 ID:Rg3u98mHo


――秋羽原

ゴー

少女「やっぱり朝はスイスイですね」

男「夕方はえらく混んでたがな」

運転手「東狂という街の日常ですな。……と!」

プァーン


少女「あ……っ! 左手の路地から、別のクルマが!」

男「危ない、ぶつかる!!」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:36:54.72 ID:Rg3u98mHo

運転手「――――――ふ」

キキッ!!

シュゴオオオオオオオオ!! ジャバアアアア


少女「な……っ!」

男「ドリフト走行で、回避した……ッ!?」

運転手「ほっほ」ギュウウウウン

男「運転手さん、あなたはいったい……?」


運転手「東狂という街の日常ですな」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:37:22.21 ID:Rg3u98mHo


――豊州

少女「ちょっと、男さん! 何ですかアレは!」

少女「前方の水たまりが、毒沼のような瘴気を発していますよ!」


ゴポゴポ…


男「音がおかしい! アレ絶対入ったらダメージ受けるやつじゃん……!」

男「明らかに色もグレープ味のそれだし!」

男「運転手さん! 何かご存知ですか……!?」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:37:50.72 ID:Rg3u98mHo

運転手「ああ。アレは、いま話題の“土壌汚染”の影響ですな」

男「土壌汚染!? それってそんな殺人的な問題でしたっけ!?」

運転手「新市場予定地から漏れ出した化学物質が、突然変異して道路を侵食しているのです」

運転手「東狂という街の日常ですな」

少女「と、東狂とはいったい……!!」


運転手「さて、日が昇れば、行政が対処に動き出すでしょうが……」

運転手「我らは悠長に待っていられませんな」キキッ

シュバ!! シュババ!! シュババババババ!!!!!!
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:38:22.19 ID:Rg3u98mHo

男「た、ターンに次ぐターンで毒沼をかわしていく……!」

少女「車体は方向転換と、急失速、急発進を繰り返している……」

少女「なのに!!」


少女「サイドブレーキ脇の、紙コップに入れられた水が、一切こぼれていない……!!!」


運転手「一万一千回転まで」

運転手「キッチリ回せ!!」バッ!!

男「ソレは誰に向けて!?」

ブオオオオオオオオ…
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:38:48.95 ID:Rg3u98mHo


――鷲ントンホテル前

運転手「さて、今日もココで良かったですかな」

男「ありがとうございます……。あの、スゴいドライビングテクニックでしたね」

運転手「なんの。ココは峠でもなければ、張り合う相手もいない」

運転手「文字通り、ロートルの朝飯前ですよ。では」

ブロロロロロ…


少女「……なんで、ただのタクシー運転手さんに、あんなヒトがいるんですか?」

男「ううむ、わからん。東狂、おそるべし……」
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:39:16.75 ID:Rg3u98mHo


――鷲ントンホテル 1029号室

友人「おやwww男氏、少女氏wwwヤケモーニンwwwwwwぴゃっwww」

白い死神「来たか。男とカノジョさん」

少女「おっはよーございまーす!!」

男「二人とも揃い踏みか。……だから、そういうんじゃないからな」


男「ていうか死神、今日はお前もいたのか?」

白い死神「ああ。昨日は初日だから、下見も兼ねて、早くに出てたが……」

白い死神「今日は二日目だからな。しかも雨だ。濡れネズミになるシュミは無い」
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:39:44.26 ID:Rg3u98mHo

友人「それでは死神氏www最後の作戦確認をwww」

白い死神「ああ。まず今日は二日目、女性向けの日だ。さらにこの天気、低い気温」

白い死神「さして混むというコトはあるまい」

白い死神「だが、それでも待機列は既に徹夜組でごった返している……」

白い死神「主な大手は瞬殺と考えるべきだろうな」

友人「んんwwwCOMIKEの厳しい現実www」


白い死神「お前さんたちが狙う黒ずくめも、結構な大手だが……大丈夫か?」

友人「ダイジョウブかwwwダイジョバナイかでいえばwww断言はできないwww」

友人「COMIKEには常に例外が存在するwww」
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