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安斎都「高峯のあの事件簿・夏と孤島と洋館と殺人事件と探偵と探偵」
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1 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 15:53:38.85 ID:Ahhc8lJY0
あらすじ
ここは殺人鬼が自ら演出し、主役を務める舞台です。あなたはこんな舞台に立つ役者なのですか?
前話
小室千奈美「高峯のあの事件簿・コイン、ロッカー」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484475237/
あくまでサスペンスドラマです。
設定はドラマ内のものです。
それでは、投下して行きます。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1503557618
2 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 15:55:16.82 ID:Ahhc8lJY0
メインキャスト
高峯のあ
木場真奈美
佐久間まゆ
高垣楓
間中美里
大西由里子
古澤頼子
乙倉悠貴
藤居朋
杉坂海
井村雪菜
沢田麻理菜
松本沙理奈
西島櫂
愛野渚
江上椿
桐野アヤ
三好紗南
遊佐こずえ
南条光
安斎都
3 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 15:56:03.68 ID:Ahhc8lJY0
序
命は何よりも尊いものだって、言う。
ならさ、その命を。
その命が自分のものになったら。
何よりも尊いものを手に入れたってことになるのかな。
そっか。
こんなにも簡単だった。
人生は舞台だって、言う。
一人一人が主役の舞台だとか。
主役だけが、舞台の幕をおろすことが出来る。
だから、主役は交代だ。
こんなに簡単に主役になれるんだ。
変われるんだ。
首を掴んだ腕に力を込める。
耳でかすかな呼吸を聞いた。
目で怯えた表情を見下ろした。
手のひらで首の脈動を感じた。
頭に血が上っていたのが嘘のように、あたしは落ち着いていた。
大丈夫、窒息させるつもりなんてないから。
息が出来なくて死ぬなんて、嫌だもんね。
安心して。
ちゃんと折るから。
折ってしまったから。
序 了
4 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 15:59:20.18 ID:Ahhc8lJY0
1
7/24(金) 午後
希砂本島・フェリー乗り場
希砂本島
ジェットフェリーで約3時間。周辺の小さな島を含めて、観光地として人気。
高峯のあ「良い天気ね……」
高峯のあ
日焼けしているイメージが浮かばない銀髪の美女。職業は自営業。
木場真奈美「佐久間君、荷物を持とうか」
佐久間まゆ「いえ、大丈夫ですよぉ。よいしょ、っと」
木場真奈美
高峯家の居候。職業はボイストレーナーなど歌のお仕事。
佐久間まゆ
高峯家に居候。星輪学園高校の2年生。お料理と編み物が好きな優しい女の子。
のあ「真奈美に甘えてもバチは当たらないわよ」
真奈美「キャリーケースぐらいは持とう」
まゆ「あっ、ごめんなさい……」
真奈美「感謝の方が良い」
まゆ「そうですね、ありがとうございます。真奈美さん」
真奈美「どういたしまして」
5 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:00:16.17 ID:Ahhc8lJY0
のあ「真奈美の荷物は少ないわね。リュックサック一つだけ」
真奈美「2泊3日ならこんなものだろう」
まゆ「まゆの半分くらいですねぇ」
真奈美「のあは珍しく大荷物だな」
まゆ「望遠鏡を持って来たんですよねぇ」
のあ「星が綺麗なそうだから」
真奈美「確かに、そんなことを言っていたな」
まゆ「留美さんが、ですかぁ?」
のあ「言っていたのは留美だけれど、そう思ってるのは留美の友人ね」
真奈美「フェリー乗り場で迎えてくれると言っていたが」
のあ「どこかしら。長身だから、目立つらしいわ」
まゆ「のあさん、あの人ですかぁ?」
のあ「写真で見た顔ね。なんで、旗を持ってるのかしら」
真奈美「気づいたみたいだな。旗を振ってくれてる」
まゆ「高峯様、歓迎って書いてありますねぇ」
真奈美「お手製のようだ」
のあ「見かけよりお茶目な性格のようね」
真奈美「さて、行くとしようか」
のあ「はじめまして。高垣楓ね」
高垣楓「ようこそ、希砂島へ!」
高垣楓
希砂本島の駐在さん。階級は巡査部長。刑事だったこともあるとか。
6 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:01:37.25 ID:Ahhc8lJY0
2
希砂本島・フェリー乗り場
楓「はじめまして。高垣楓です」
のあ「留美から聞いてるわ。高峯よ」
真奈美「木場だ」
まゆ「佐久間まゆ、です。こんにちは……高垣さん」
楓「お会いできて光栄です」
真奈美「こちらこそ。おかげで良い旅行が出来そうだ」
楓「感謝をするのはこっちの方です」
のあ「キャンセルが出たと聞いてるわ」
楓「ええ。それなので、留美さんに連絡してみたのですけれど」
真奈美「忙しいと断られて、こっちに話が来た」
まゆ「普通より安かったですけど、大丈夫なんですかぁ?」
楓「はい、無駄にしてしまうよりはいいですから」
のあ「そう」
真奈美「和久井警部補とは同僚だったのか?」
楓「直接の同僚ではありませんけれど、刑事だった頃にお世話になりました」
のあ「どうして、島で駐在をしてるのかしら」
楓「良い所ですよ?ケータイもインターネットも通じますし、ほらコンビニもそこに」
まゆ「本当ですねぇ」
のあ「ここが不便かどうかではなく」
7 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:03:17.79 ID:Ahhc8lJY0
楓「そうですね、刑事にはあまり向いてなかったのかもしれません」
まゆ「刑事さん、大変でしたか……?」
楓「今となってはわかりませんけれど……でも」
真奈美「でも?」
楓「今は、お仕事も島での生活も楽しいですよ」
のあ「そう。留美みたいな生き方が全てじゃないわ」
楓「留美さんの生き方も憧れますけれど……そうだ」
まゆ「これは……綺麗なビンですねぇ」
のあ「何かしら」
楓「本島で製造しているソーダです。このソーダは評判の良いそうだ、ふふっ」
まゆ「……良いソーダ?」
楓「差し上げます」
まゆ「ありがとうございます」
楓「お二人は、お酒はお好きですか?」
のあ「思考が鈍るものは嫌いなの」
楓「残念……こちらも是非と」
真奈美「日本酒か?」
楓「希砂島の名酒です。島のお魚とあいます」
のあ「そういえば、留美から聞いたわ。お酒好きなのね」
楓「ふふ……住みたくなりました?」
のあ「楽しそうで安心したわ」
真奈美「日本酒は頂いて、いいか?」
楓「どうぞ」
真奈美「雪乃君と飲むとしよう」
のあ「あら、雪乃はお酒を飲むの?」
真奈美「結構、いける口だぞ。のあも来るか?」
のあ「考えておくわ。クルーザーの出る時間になるわよ」
真奈美「そうだったな。ツアー会社の窓口があると聞いたが」
楓「あちらです。ご案内しましょうか?」
のあ「お願いするわ」
8 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:05:12.65 ID:Ahhc8lJY0
3
希砂本島・フェリー乗り場
楓「美里ちゃん」
間中美里「楓さん、こんにちはぁ」
間中美里
希砂本島にあるツアー会社勤務。のあ達が申し込んだツアーの企画とガイドを担当する。
楓「ツアーの人、お連れしました」
真奈美「予約した木場だ。よろしく頼む」
美里「お待ちしておりましたぁ。木場さんですねぇ」
真奈美「それと連れの」
のあ「高峯よ。こっちは佐久間」
美里「短い間ですけどぉ、よろしくお願いしますねぇ」
まゆ「こちらこそ、よろしくお願いします」
美里「楓さんも今から希砂二島にいらっしゃいますかぁ?」
楓「遠慮しておきます。お約束通りに」
美里「そんなに遠慮しなくてもいいのに」
楓「お言葉だけいただきますね。高峯さん、私はここで」
のあ「案内ありがとう」
真奈美「話はまたの機会に聞くとしよう」
楓「ええ、ごゆっくり」
美里「希砂二島行きのクルーザーは準備出来てますよぉ」
真奈美「さて、ゆっくりするのは宿に着いてからするとしよう」
まゆ「はい」
美里「簡単にツアーについてご確認しますねぇ」
真奈美「ああ」
美里「ご予約は3名様、キャンセルが出て急だったのに前入金助かりましたぁ」
のあ「どういたしまして」
美里「宿泊先はここからクルーザーで30分の希砂二島ですぅ」
まゆ「そこに洋館があるんですよねぇ」
美里「はい。ケータイもインターネットもつながるので、快適ですよぉ」
真奈美「ふむ、便利な時代だな」
9 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:06:19.88 ID:Ahhc8lJY0
美里「食料品と日用品はストックがあるので自由に使ってください。もし、コンビニで欲しい物があるなら今のうちですよぉ」
のあ「買うものはあるかしら」
真奈美「ない」
まゆ「大丈夫ですよぉ」
美里「島では私ともう一人職員がずっと、食事時間の前後はシェフとスタッフがいますので、お声がけくださいねぇ」
まゆ「はぁい」
美里「海とプールはご自由に使ってくださいねぇ。ただ、事故にはお気をつけて」
のあ「ええ。自己責任で」
美里「ライフセーバーと救命処置の資格は、私ともう一人の職員は持ってるんですよぉ」
真奈美「なかなか、がんばってるな」
美里「大変でしたぁ。急病でも本島には病院もありますしぃ、必要以上に心配しないでくださいねぇ」
のあ「ええ。もちろん、こちらでも気をつけるわ」
美里「最後ですけどぉ、ごめんなさい」
のあ「謝られるようなこと、あったかしら」
美里「私達の会社は小さい会社なのでぇ、イベント等は何もありません」
真奈美「聞いた通りだな」
美里「至らないところもありますが、2泊3日ごゆっくり」
のあ「ええ。楽しみ方ぐらいは自分で作るわ」
まゆ「何にもしないのも、素敵ですよぉ」
美里「ありがとうございますぅ。実はぁ……」
のあ「何かしら」
美里「この便で島へ向かう人は既にお揃いなんですよぉ」
真奈美「待たせてしまったかな」
美里「いえいえ、まだ時間前ですからぁ。さぁ、出発ですよぉ」
10 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:07:26.00 ID:Ahhc8lJY0
4
希砂二島・船着き場
希砂二島
希砂本島から約30分。岩場と小さな砂浜しかない無人島だったが、バブル時に洋館が建った。
船着き場
希砂二島の東側。ビーチ近くの岩場と歩道までつながっている。
美里「到着〜、皆様足元にお気をつけてくださいねぇ」
のあ「ふむ……良い所ね」
真奈美「ビーチの桟橋は使わないのか?」
美里「水深が足りないんですよぉ。ヨットとかに使ってくださいねぇ」
のあ「海も綺麗ね……」
美里「晴天続きでしたからねぇ」
まゆ「のあさん、上を見てください」
のあ「あら、本当に崖の上に立ってるのね」
真奈美「土台はしっかりとしていそうだな」
まゆ「眺めが良さそうですねぇ。遮るものもありません」
のあ「二回、事業者が失敗したと聞いたけれど」
美里「ありがとうございましたぁ、行ってらっしゃいませ〜」
のあ「あら、クルーザーは?」
美里「夕食スタッフを呼びに行きましたぁ。さっきの話ですけど、本当ですよぉ」
まゆ「そうなんですかぁ?こんな立派な建物なのに」
のあ「立派だからでしょうね。どうやって投資費用を回収するつもりだったのかしら」
真奈美「島の改造と建物はバブル時代に」
のあ「改装とインターネットはITバブルの頃かしら」
美里「その通りですぅ」
まゆ「どうして、失敗したんですかぁ?」
美里「ここは、失敗してませんよぉ?」
のあ「失敗したのはどちらも本業の方だったらしいわ」
真奈美「行政とツアー会社に買われた。残念ながら、元の所有者の助けにはならなかった」
美里「その通りですよぉ。景観と環境の維持まで、私達の使命ですぅ」
まゆ「へぇ……ステキ」
美里「もちろん、利益は上げますよぉ」
のあ「わかってるわ。費用に見合う価値があるならば」
美里「期待していいですよぉ。でも、私からアドバイスです」
真奈美「なんだ?」
美里「今日は島の散策だけにして、明日思いっきり遊ぶのがオススメですぅ」
のあ「そうね」
真奈美「慌てることは何もないからな」
のあ「部屋に荷物を置きに行きましょう。散策はその後に」
11 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:10:25.08 ID:Ahhc8lJY0
5
逢伊江館・2階・のあ達の寝室(204号室)
逢伊江館
あういえかん。希砂二島に建つ洋館。2階建ての本館、離れ、ジャグジー+プールからなる。成金趣味が隠しきれてない。
まゆ「わぁ……見てくださいっ」
真奈美「高台に建っているだけあるな。海が一望できる」
のあ「南窓と東窓、両方海が面してるのね」
まゆ「まぁ、本当ですねぇ」
真奈美「東は船着き場か」
のあ「南は砂浜の方ね。バルコニーは、部屋にはないのね」
まゆ「のあさん、星は見えそうですかぁ?」
真奈美「バルコニーは共用のものか」
のあ「そっちの方が良さそうね。担いできたから疲れたわ」
まゆ「よいっしょ、っと」
真奈美「聞いてはいたが、一番良い部屋みたいだな」
のあ「そのようね」
まゆ「お風呂も綺麗ですよぉ」
のあ「大浴場もあったわよね?」
真奈美「ああ。大浴場というよりはジャグジーだ」
まゆ「そうでしたぁ」
のあ「無駄に天然温泉よ」
まゆ「そうなんですかぁ?」
のあ「海底より下から掘り出したらしいわ」
真奈美「金はある所にはあるんだな」
のあ「あるべき所でないから、逃げて行ったのよ」
まゆ「えいっ」
真奈美「ベッドに飛び込むのはお行儀が悪いぞ」
のあ「……」
真奈美「のあも、しれっと無言で倒れこむな」
12 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:11:08.81 ID:Ahhc8lJY0
のあ「ベッドは良いわ。真奈美、手を」
真奈美「はいはい」
のあ「まゆも立ちなさい」
まゆ「はぁい。散策ですかぁ?」
のあ「ええ。島の裏側にも行けるようだし」
真奈美「他の宿泊客にも挨拶しておくとしようか」
のあ「そうね」
まゆ「のーあさんっ」
のあ「どうしたの、手を伸ばして」
まゆ「起こしてください♪」
のあ「まだ寝転んでるのね。子供ね、ほら」
まゆ「ありがとうございます。さぁ、行きましょう」
のあ「今日は元気ね。行ってしまったわ」
真奈美「……」
のあ「真奈美、どうしたの?」
真奈美「のあと同じことしただけじゃないか?」
のあ「何のことかしら?」
真奈美「無意識か」
まゆ「のあさん、真奈美さんー」
のあ「呼んでるわよ」
真奈美「まぁ、いいか。行くとしよう」
13 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:12:37.55 ID:Ahhc8lJY0
6
逢伊江館・2階・階段前
立て看板『危険だから、立ち入り禁止だじぇ』
真奈美「上には行けないのか」
まゆ「カワイイ絵が描いてありますよぉ」
のあ「手描きのようね。外からは屋上があったように見えたけれど」
美里「あらぁ、お散歩ですかぁ?」
のあ「ええ」
真奈美「屋上には行けないのか?」
美里「ごめんなさい、行けないんですよぉ」
のあ「なぜかしら」
美里「柵が低くて危ないんです。職員以外は入らないでくださいねぇ」
のあ「そういうことね」
まゆ「間中さんは、2階に何かご用ですか?」
美里「夕方にいらっしゃるお客様のために、お部屋の点検ですよぉ」
真奈美「まだ、来てないのは」
まゆ「あそこの部屋ですかぁ?」
のあ「西向きの部屋、202号室」
美里「はい。午前中は部活の練習をしてから、だそうで」
まゆ「学生さん、なんですかぁ?」
美里「そうみたいですねぇ、あっ、ヒミツですよぉ?」
のあ「それくらい自分で聞き出せるわ」
真奈美「会話をする気があるんだな」
まゆ「まぁ、珍しい」
のあ「何よ、その反応は」
美里「うふっ。私はお仕事に戻りますねぇ」
14 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:14:57.17 ID:Ahhc8lJY0
7
逢伊江館・1階・玄関ホール
玄関ホール
南側に面した玄関から屋敷内へ続くホール。ガラス張りの温室に面していて、開放感がある。
のあ「さっきも気になっていたのだけど」
真奈美「あの温室に入れるのか?」
のあ「そう。玄関の隣にある、あそこ」
まゆ「職員さんがいらっしゃいますよぉ」
のあ「お聞きしたいのだけれど」
大西由里子「んー、何かあった?」
大西由里子
本ツアーのアルバイト。夏の祭典に向けての軍資金作りに加えて、長い時間が確保できる一石二鳥のバイトだじぇ、とのこと。
のあ「この温室に入っていいのかしら」
由里子「もちろんだじぇ。花屋さんのオススメだから、近くで眺めていいよ!」
まゆ「ありがとうございますぅ」
由里子「もうユリユリの時間だから、何でも言っていいじぇ」
真奈美「君の時間、か?」
由里子「語ると長くなるけど……」
のあ「なら、簡潔に」
由里子「夜勤だから?」
まゆ「なるほど」
由里子「さて、肉体にエネルギーを入れたら、心にもエネルギーを入れるじぇ!ばいばい!」
まゆ「心のエネルギー……?」
のあ「さようなら」
真奈美「ということだ。入ってみようか」
15 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:18:34.50 ID:Ahhc8lJY0
8
逢伊江館・1階・温室
温室
屋敷の南側に面した温室。ガラス張りで目にも楽しく、光と温度の制御装置も完備、ただし強力なので電力過多に注意。
まゆ「赤が鮮やかですねぇ」
のあ「そうね。これは、何かしら」
真奈美「ホウセンカだ」
のあ「物知りね」
真奈美「ここに説明書きが」
のあ「あら、そこにあったのね」
まゆ「こっちは、ベルガモットみたいですよぉ」
真奈美「どちらも今が開花時期か」
のあ「季節によって変わるのかしら?」
まゆ「そうかもしれないですねぇ」
遊佐こずえ「ふわぁ……ぼうえんきょうのおねえさんだー……」
遊佐こずえ
205号室。町内会のツアーで訪れた小学生。のんびりとした性格。保護者は本島のホテルに滞在しているとのこと。
のあ「間違ってはいないわ」
まゆ「あらぁ、一人ですかぁ?」
こずえ「そう……ぼうえんきょう……」
のあ「まだ夜には早いわ」
桐野アヤ「こずえー、いたいた」
桐野アヤ
205号室。とある町の青年会員。面倒見のよい姉御肌。こずえとは仲が良いご様子。
16 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:19:18.84 ID:Ahhc8lJY0
こずえ「あや……いっしょにおほしさまみるのー……」
アヤ「星はまだ出てないだろ。さっきから、望遠鏡を気にしてんだ」
のあ「船でもそんな話をしてたわね。いいわよ」
アヤ「何がだ?」
のあ「一緒に、星を見ましょうか」
こずえ「やったー……あやもいっしょにみるのー……」
アヤ「わかった、って。迷惑じゃないか?」
のあ「良いものは共有した方がいいわ。物証と同じよ」
真奈美「一言余計だ」
のあ「2階のバルコニー、あるでしょう?」
アヤ「ここの真上だよな?」
のあ「ええ。夕食後、20時ぐらいに来なさい。準備はしておくわ」
アヤ「ありがとな。こずえも、ほら」
こずえ「のあ……ありがとー……」
アヤ「呼び捨てにするのが治らないんだよな」
のあ「構わないわ」
まゆ「うふっ、カワイイと思いますよぉ」
アヤ「それなら、いいんだけど。ついでに平仮名みたいな発音だしさ」
真奈美「のあのことを言ってるなら、平仮名だぞ?」
こずえ「じー……」
アヤ「そんな目で見るなよ。自分の名前もカタカナだけどさ」
17 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:20:24.12 ID:Ahhc8lJY0
まゆ「アヤさんはどうして、カタカナだと思ったんですかぁ?」
アヤ「ノアはカタカナっていう先入観があってさ。それに」
真奈美「それに?」
アヤ「なんか、カタカナっぽいし」
のあ「私、カタカナっぽいかしら」
真奈美「気分はわかる。カタカナっぽいな」
のあ「そうかしら。気にしたこともなかったわ」
こずえ「あやー……そふぁーにすわりにいくのー……」
アヤ「こら、急に走ると危ないって言ったろ。まったく……」
真奈美「気をつけるんだぞ。島内は危ないところもあるだろうからな」
アヤ「ありがと。良かったら、気にしてくれると助かる」
まゆ「わかりましたぁ」
アヤ「また、夜にな。こずえ、連れて行くから」
のあ「ええ。待ってるわ」
18 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:21:17.16 ID:Ahhc8lJY0
9
逢伊江館・1階・ロビー
ロビー
天井は特徴的な形をした吹き抜けと無駄に豪華なシャンデリアが特徴的。
のあ「さっきの子が言っていたソファー、って」
真奈美「あそこだ。ホールに置いてある」
のあ「パーティやダンスのためのホールかしら」
真奈美「もともとはな。今はあの通り」
のあ「大きなテレビとソファーが置いてあるだけね」
真奈美「イベントもなく、ゆったりとした時間がコンセプトだからな」
のあ「物は言いようね」
真奈美「おや、社交場は好きだったか?」
のあ「言わなくてもわかるでしょう」
真奈美「そう言えば、掃除をしていたら、ドレス姿の女の子の写真が出てきた」
まゆ「まゆも、見せてもらいましたぁ」
のあ「……」
真奈美「満面の笑みだったな。きっと、ドレスでお出かけが嬉しかったのだろう。な、佐久間君?」
まゆ「ええ、きっとそうですよぉ」
のあ「遥か昔の話でしょう。今はキライよ」
真奈美「つれないな」
まゆ「でも、のあさんらしいです」
のあ「良い方にとっておいてちょうだい」
真奈美「食事くらいなら、いいか?」
のあ「そうね。別に人の話を聞くのがキライなわけでも、人がキライなわけでもないわ」
真奈美「なら、何がキライなんだ?」
のあ「定型文通りの会話よりも何より、立ってることね」
真奈美「……意外だ。ランニングを嗜む人物とは思えない発言だな」
のあ「人は止まるために立つ必要はないでしょう?」
真奈美「確かにその通りだが」
まゆ「ねぇ、のあさん」
のあ「どうしたのかしら」
まゆ「あの子……」
のあ「扉に入って行ったわね」
真奈美「キッチンか?」
のあ「キッチンはその隣。オヤツには遅すぎるわ」
まゆ「入っていいんでしょうか……?」
真奈美「どうだろうな。そもそも何があるんだ?」
のあ「行ってみればわかるわ」
19 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:22:57.99 ID:Ahhc8lJY0
10
逢伊江館・地下・階段室
階段室
屋敷の東側。更に東奥に行くと物置がある。
まゆ「部屋の中にあったのは……」
のあ「地下への階段」
真奈美「そして、降りた先にも扉だ」
まゆ「階段下のお部屋は南京錠が掛かっていますねぇ」
真奈美「そして、こちらの扉には貼紙だ」
貼紙『ご自由にどうぞぉ。足元には気をつけてくださいねぇ』
のあ「入ってよさそうね」
まゆ「そういえば、娯楽室があるそうですよぉ」
真奈美「娯楽室というよりは」
のあ「心置きなく時間を無駄に出来る部屋、だとか」
真奈美「音が聞こえるな。何か、流してるのか」
まゆ「開けてみましょうかぁ」
20 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:25:07.27 ID:Ahhc8lJY0
11
逢伊江館・地下・娯楽室
娯楽室
地下にある娯楽室。非常に広々とした部屋に偏ったラインナップを揃えている。
真奈美「どことなく暗い照明に」
のあ「ビリヤード台」
まゆ「棚もいっぱい。本とか時計とか……」
真奈美「何かと思ったら、ビデオテープが棚に並んでるのか」
まゆ「こっちの棚はゲーム機ですよぉ。あらぁ、ここのは持ちだされてますねぇ」
真奈美「ビデオは随分とジャンルが偏ってるな……」
のあ「大きなテレビが二つ。本当に大きいテレビ」
真奈美「ブラウン管の高級品だな」
のあ「昔はそうだったのでしょう。あら」
三好紗南「わっ!」
三好紗南
205号室。ゲーム以外もしなさい、と町内会のツアーに応募された。しかし、親の予想に反して、彼女は楽しそうに出かけて行った。
21 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:25:45.87 ID:Ahhc8lJY0
のあ「ごめんなさい。物陰で見えなかったわ」
紗南「レトロゲーはやっぱりシビアだなー。お姉さん達、得意?」
のあ「得意ではないわ。真奈美、出来るかしら」
真奈美「人並みには」
紗南「なら、一緒にやろ?せっかく色々なゲームがあるから、遊びつくさなきゃ!」
まゆ「こんにちはぁ。あら、さっきの子じゃないですねぇ」
紗南「都ちゃんのことかな?」
のあ「都?」
紗南「うん、そこの倉庫じゃない方の部屋に入って行ったよ」
まゆ「倉庫は、立ち入り禁止みたいですねぇ」
紗南「カギもかかってたから、入れないよー」
真奈美「ふむ。そっちは何かあるのか?」
紗南「物置と本棚だったかな。レアアイテムは、やっぱりカギのかかった扉の先だよね」
のあ「そう。真奈美、彼女のお相手をしてあげなさい」
真奈美「ああ。何をしようか」
紗南「格ゲー見つけてきたんだ」
真奈美「ふむ……いいだろう」
紗南「負けないぞー!」
のあ「まゆ、向こうの部屋へ行ってみましょうか」
まゆ「はぁい」
22 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:28:44.56 ID:Ahhc8lJY0
12
逢伊江館・地下・書物庫
書物庫
娯楽室の南側にある書物庫。こちらもラインナップが偏っている。
まゆ「わぁ、本がいっぱいですよぉ」
のあ「ふむ、書物庫のようね」
まゆ「でも、なんだか……見覚えがあるような……」
のあ「気のせい……でも、なさそうね」
まゆ「のあさんも、そう思いますかぁ?」
のあ「いいえ。本当に見たことがあるからよ」
まゆ「どういうことでしょうか?」
のあ「あそこの棚、よく見てみなさい」
まゆ「えーっと、あれ?」
のあ「家の書斎と同じ並びで同じ本が並んでるから、当然よね」
まゆ「なら、ここの本を集めた人は」
のあ「私と同じ悪趣味を持っているようね」
安斎都「ふふ、気が付きましたか!」
安斎都
206号室。町内会のツアー参加者の一人。虫眼鏡とショルダーバッグ、そして室内なのにハンチング帽。
まゆ「こんにちはぁ」
のあ「何に気づいたの?」
都「ふっふっふ、聞きたいですか?」
のあ「ゴキゲンね。聞かせてちょうだい」
都「こちらの本棚、世界で一番有名な推理小説が並んでいます」
まゆ「はい。大切にしてそうですねぇ」
都「保存状態はとても良いです、しかも初版」
のあ「当然でしょう」
まゆ「当然ではないと思います……」
都「隣には、サスペンスドラマのビデオテープばかり。ゲームも推理ゲームがたくさん」
まゆ「そうだったんですかぁ?」
のあ「ふむ」
都「しかーし!」
23 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:30:06.47 ID:Ahhc8lJY0
まゆ「しかし?」
都「ここはどこですか?」
のあ「地下室まである洋館」
まゆ「小さな島」
のあ「電波は通じるけれど」
都「思いませんか?」
まゆ「事件でも起こりそうですか?」
のあ「……」
都「その通りッ……と言いたいところですが」
まゆ「違うんですかぁ……?」
都「事件は起こらないので、勝手に探偵ごっごをしていたようです」
のあ「物好きね」
都「それで、そこの本棚です」
のあ「本棚……」
都「旅行客が自由に手を取れますが、それでも保存状態は良いと思いませんか」
まゆ「そうですねぇ……でも、これだけ汚れているような」
都「はい、この中には」
のあ「あなたは見たのかしら」
都「はい」
のあ「まゆ、見てみなさい」
まゆ「はぁい。えっと、中には」
のあ「まゆ、背表紙」
まゆ「あらぁ、画用紙が入ってますねぇ」
24 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:30:46.95 ID:Ahhc8lJY0
のあ「これは、屋敷の見取り図かしら」
都「はい」
まゆ「手描きですねぇ。この部屋は、ここですか?」
のあ「そのようね。隣は娯楽室、カギのかかった部屋は」
都「職員の人によると、寝具を入れてる倉庫だそうです」
のあ「隠し部屋とかはないのね」
都「ええ、そこまで趣味に走れなかった?」
のあ「人を迎え入れる所に、そんなものを入れる方がおかしいわ」
まゆ「でも、ロマンがありますよぉ」
都「ロマンは大切ですッ!」
のあ「そうかしら」
都「そう言えば、自己紹介してませんでした。206号室の安斎都です」
のあ「高峯よ。こっちは佐久間」
まゆ「3日間、よろしくお願いしますねぇ」
都「はいっ!私はこの屋敷の調査を進めます、それではっ!」
まゆ「お気をつけて」
都「そうだ、何か気になることがあったら教えてください。調べに行きますから!」
のあ「ええ。見つけておくわ」
25 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:32:15.82 ID:Ahhc8lJY0
13
逢伊江館・地下・娯楽室
紗南「よしっ!」
のあ「真奈美」
真奈美「お見事だ」
紗南「あっ、さっきのお姉さん聞いてよ!」
のあ「うちの真奈美が何か粗相をしたかしら」
紗南「この人、素人じゃないね」
のあ「その通り」
まゆ「深い意味はないですよね……?」
真奈美「少しだけ自信があったが、この通り」
のあ「負けたのね」
紗南「ホントに強かったよー。でも」
まゆ「楽しそうですねぇ」
真奈美「満足してくれたなら、何よりだ。私はこれで失礼しよう」
紗南「えっと……いつでも挑戦を待ってるよ!」
26 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:34:01.04 ID:Ahhc8lJY0
14
逢伊江館・1階・食堂
食堂
広々として清潔感のある食堂。下品な高級さを隠す工夫がされている。
真奈美「南側、東側も海が見えるのか」
まゆ「綺麗ですねぇ。水平線まで見えます」
のあ「あら、崖側の庭もあるのね」
真奈美「一段下げて、柵を隠してるのか。考えられているな」
沢田麻理菜「こんにちは。さっきのクルーザーで来た人?」
松本沙理奈「そうじゃない?銀髪の人、目立つし」
沢田麻理菜
201号室。趣味はサーフィン。希砂二島は波が高くないので、のんびり過ごすとのこと。
松本沙理奈
201号室。ほら、人が集まっちゃうでしょ?こういう所を探してたの、とのこと。
のあ「ええ、合ってるわ」
まゆ「こんにちはぁ」
麻理菜「こんにちは。3人で旅行?」
のあ「ええ。そちらは」
麻理菜「こっちも同じ。サリナが静かなところが良いって」
沙理奈「ほら、アタシ人を集めちゃうから」
麻理菜「女の人だけだものね」
沙理奈「でも、もしかしたら、オンナノコも魅了できるかも?ねぇ、一緒に遊ばない?」
まゆ「まゆ……ですか?」
麻理菜「健全な淑女になりたかったら、オススメしないわよー?」
沙理奈「ちょっと危険な方が、魅力的よ♪」
のあ「うちの子にはまだ早いわ」
沙理奈「うふっ」
麻理菜「ちょっと、気になったんだけど」
真奈美「どうした?」
麻理菜「3人で来てるの?」
のあ「そうよ」
27 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:34:47.34 ID:Ahhc8lJY0
沙理奈「マリナが気になってるのは、そうじゃないでしょ?」
麻理菜「ええ。どんな関係なの?友達?」
まゆ「えっと……」
のあ「そちらこそ」
沙理奈「アタシ達は、そうねぇ」
麻理菜「私達は友達よ、ね?」
真奈美「どうして、疑問形なんだ?」
麻理菜「正直に言うと、会うのは2回目なのよ」
まゆ「そうなんですかぁ?見えないです」
沙理奈「なんとなく、気が合うのよね」
麻理菜「知り合いくらいかな?」
沙理奈「だから、お互いのことを話してるとこ」
のあ「そう」
沙理奈「そっちは?」
のあ「そうねぇ……」
まゆ「……」
のあ「同居人よ。私が大家」
まゆ「……そうなんですよぉ」
麻理菜「そうなの?」
真奈美「間違いはない」
沙理奈「へぇ、旅行も一緒なんて、仲が良いのね♪」
のあ「……そうね」
麻理菜「そうだ、コーヒーでもいかが?」
沙理奈「お茶菓子も自由にもらっていいのよ」
のあ「今は遠慮しておくわ。島の探索がまだなの」
沙理奈「そう?」
麻理菜「なら、夕ご飯の時にでも。またね」
28 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:36:31.94 ID:Ahhc8lJY0
15
逢伊江館・中庭・離れ前
離れ
畳でしか眠れない人は一説には1千万人と言われる。高級リゾートこそ、和室は必須なのだ。
まゆ「大理石のお庭に」
真奈美「噴水」
のあ「彫刻」
真奈美「成金趣味をどうこう言うつもりはないが」
のあ「少なくともそこにある離れとは合わないわね」
まゆ「そうですねぇ。噴水は水も流れてないし……」
藤居朋「海ちゃん、雪菜ちゃん、行くわよ!」
井村雪菜「朋ちゃん、待ってくださいぃ〜」
藤居朋
離れに宿泊。占い好きの専門学校生。今回の旅行は自分が見つけたのよ、と自慢げだったとか。
井村雪菜
離れに宿泊。メイクが得意な専門学校生。特徴的なぬいぐるみといつも一緒。
朋「あら、こんにちは!」
まゆ「こんにちはぁ」
のあ「あなた達は離れに泊まってるのかしら」
朋「そうよ。そっちは?」
真奈美「204号室だ」
雪菜「海が見える部屋でいいですねぇ」
朋「そうなのよ。部屋はいいけれど、眺めはね……」
杉坂海「朋、そんなに慌てるなって」
杉坂海
離れに宿泊。お裁縫が得意な専門学校生。朋は妹みたいで可愛いよ、年上だけどさ。
朋「海ちゃん、遅いわよっ!」
海「どうして、そんなにはしゃいでるんだ?」
朋「……」
のあ「首を傾げたわ。まるで」
真奈美「どうしてはしゃがないのか、と言いたげだ」
海「いや、ウチもテンションがあがってないわけじゃないから」
朋「なら、問題ないじゃない?」
海「雪菜、そう思うか?」
雪菜「えっとぉ、楽しんだもの勝ちですよぉ」
海「雪菜が言うなら、そうなんだろうな」
朋「ちょっと、あたしの時と違くない?」
海「はいはい。行こっか」
のあ「どちらに?」
朋「砂浜よ。良い物が見られる気がするの」
のあ「そう」
朋「それじゃあね」
まゆ「はい。今日からよろしくお願いしますねぇ」
29 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:38:27.82 ID:Ahhc8lJY0
16
逢伊江館・ジャグジーとプール
ジャグジーとプール
ジャグジーは天然温泉という豪華さ。温水プールは廃熱と太陽光を利用している。
のあ「こんにちは」
愛野渚「あっ、こんにちはっ!」
愛野渚
203号室。ポニーテールが似合う溌剌としたスポーツ女子。8月は合宿と練習のバスケット漬けの月になるとか。
真奈美「ここは、更衣室か」
まゆ「一つしかないんですねぇ」
渚「だって、男の人はいないでしょ?」
のあ「そう言えば、そうね」
渚「そっちはジャグジーで、結構広いよ」
まゆ「まぁ、キレイですよぉ」
渚「凄いよ、天然温泉だって」
のあ「向こうの扉は」
渚「プール、どうだった?」
西島櫂「深さが変わるプールだったよ。練習向きじゃないね」
西島櫂
203号室。渚とこの島を訪れた。水泳に打ち込んでいる。三好紗南曰く、水属性。
30 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:39:18.41 ID:Ahhc8lJY0
渚「まさか、練習するつもりだったの?」
櫂「しないよ。お休みも大切だもんね」
渚「そうそう。がんばり過ぎは敵だよ」
櫂「それに、泳ぐなら海だよね。せっかく、島に来たのに」
真奈美「確かに」
のあ「なら、どうしてプールもあるのかしら」
櫂「確か、温水プールにもなるんだよ」
まゆ「冬用ですか?」
渚「そうなの?」
櫂「知らない。雨の時とか?」
真奈美「プールはともかく、ジャグジーは良さそうだ」
櫂「うん。部屋のユニットバスじゃ、味気ないからさ」
のあ「そうね」
櫂「そう言えば、島の裏側には行った?」
のあ「いいえ。まだよ」
櫂「泳がない方がいいけど、裏にも砂浜があるんだ」
渚「良い所だったよ」
まゆ「のあさん、真奈美さん、行ってみましょう」
のあ「そうね」
真奈美「どう行くんだ?」
櫂「この建物と離れの間の道から、道なりに行けば着くよ」
渚「途中で塔があった。電波塔なのかな?」
まゆ「そう言えば……見えましたねぇ」
のあ「ありがとう。行ってみましょう」
31 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:40:15.64 ID:Ahhc8lJY0
17
希砂二島・中心部・電波塔
電波塔
島の中心にある電波塔。塔そのものは古い。
看板『高電圧注意・立ち入り禁止』
まゆ「これが、電波塔ですねぇ」
真奈美「そのようだ」
のあ「こんな大きな設備はいるのかしら」
真奈美「さぁな」
まゆ「でも、これで電波を受信してるんですよねぇ」
のあ「違うわ」
まゆ「違う?」
のあ「受信するには本土からも離れすぎてるわ。しているのは、発信」
真奈美「電話もインターネットも海底ケーブルか何かだろうな」
まゆ「それなら、要らなんですかぁ?」
のあ「ケータイが通じるのはいいことよ」
まゆ「そうですけどぉ……」
真奈美「あるいは、災害時とかに役立つかもしれない」
のあ「世界から隔離されたいと言っても、現代人は現代人」
真奈美「完全に隔離されたら、パニックだ」
まゆ「なんだが、ロマンがないです……」
のあ「人間はワガママなのよ」
まゆ「仕方ありません……ステキを探しに行きます……」
のあ「一緒に行くわ。まゆ、少しお待ちなさい」
32 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:43:20.10 ID:Ahhc8lJY0
18
希砂二島・裏のビーチ
裏のビーチ
島の北側にある小さな砂浜。高い木に囲まれて、神秘的な雰囲気。
まゆ「のあさん、見てください」
真奈美「陽があまり当たらない砂浜の様だ」
のあ「だから、神秘的に見えるのかしら」
まゆ「うふふ……あらぁ」
のあ「どうしたの?」
まゆ「あそこの岩場、誰かいますねぇ」
江上椿「光ちゃん、はい、ポーズ♪」
南条光「こうだっ!」
江上椿
206号室。とある町の青年会員。島の景色と自然な表情を撮るつもりです、町の皆様のために。人に見せられないものは私の秘蔵コレクションにします。
南条光
206号室。町内会ツアーの参加者。どこかで見たポーズを決めている。
真奈美「のあ、特撮は?」
のあ「どういう意味かしら」
真奈美「精通しているか?」
のあ「映画などに用いられる特殊な撮影技法なら知っているわ」
まゆ「たぶん、そういうことじゃないと思います……」
のあ「妖精の写真で騙されたくないもの」
真奈美「佐久間君は、子供の頃、見ていなかったか?」
まゆ「まゆは、見てませんでしたねぇ」
真奈美「私は見ていたかな。今思えば、もう少し女の子らしいものを見ていれば良かった」
まゆ「真奈美さんは素敵ですよぉ」
真奈美「ありがとう」
椿「こんにちは」
光「こんにちはっ!」
33 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:44:36.08 ID:Ahhc8lJY0
椿「お写真を撮っていいですか?」
真奈美「ああ。たくさん撮ってくれ」
まゆ「どうぞぉ、キレイですよねぇ」
のあ「どうして、二人は下がるのかしら」
椿「ふふっ、3人で並んでくださいな」
のあ「だそうよ」
真奈美「そういうことなら」
椿「はい、チーズ」
光「うんうん。今度は、こう!」
まゆ「こうですかぁ?」
椿「はい、いいですよー」
光「いいよっ!」
椿「冗談はそのくらいにしておいて」
真奈美「冗談だったのか……」
椿「写真のデータ、後でお分けしますね」
まゆ「まぁ……ありがとうございます」
光「そうだっ、どこかワクワクするような所を見つけなかった?」
椿「あるいは、オススメの写真スポットとか」
光「ほとんど椿さんと見て回ったんだけど」
のあ「そうなると、提案は難しいわね」
光「そっか」
椿「でも、場所は変わらなくても」
まゆ「人は変わりますよぉ」
光「なるほど。じゃあ、屋敷に帰ろうっ」
椿「はい。もう日が傾き始めましたね」
光「じゃあね、また会おうっ!」
真奈美「ああ」
のあ「私達も戻りましょうか」
まゆ「島は一通り見ましたか?」
のあ「おそらく」
真奈美「正面のビーチくらいか」
のあ「そろそろ、最後の便が来る頃ね」
真奈美「挨拶に行くとしようか」
34 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:45:38.16 ID:Ahhc8lJY0
19
希砂二島・正面ビーチ
正面ビーチ
パラソルなどが常備されている遊泳用のビーチ。遠浅で安全に楽しめる。
真奈美「彼らが夕食のスタッフかな」
美里「みなさん、島はいかがですかぁ?」
のあ「良い所ね」
美里「ご不便があったら、何でも言ってくださいねぇ」
まゆ「はい」
美里「それでは、お夕飯の準備がありますので、失礼しますねぇ」
のあ「クーラーボックスを運んでいったわね」
まゆ「多分ですけど」
のあ「言ってみなさい」
まゆ「お料理はほとんど出来てるのかなぁ、って」
真奈美「私も佐久間君と同意見だ」
まゆ「キッチンが充実してないのかなぁ……」
真奈美「単純にガスを節約したいだけかもしれない」
のあ「ふむ。色々あるのね」
乙倉悠貴「こんにちはっ!」
乙倉悠貴
202号室。歌奈中学校で陸上に勤しんでいる。カワイイリュックサック姿。
まゆ「こんにちはぁ」
のあ「あら……?」
悠貴「皆さんもご宿泊ですかっ?」
まゆ「はい。お一人、ですかぁ?」
悠貴「違います。中学生一人だと心配ですからっ」
まゆ「中学生なんですかぁ、背が高くて羨ましい……」
悠貴「古澤さーん、こっちですっ!夕暮れがキレイですよっ!」
真奈美「おや」
古澤頼子「乙倉さん、待ってください。荷物を減らせば良かったでしょうか」
古澤頼子
202号室。市立美術館の学芸員。東郷邸の事件で、のあ達と面識がある。
35 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:46:48.96 ID:Ahhc8lJY0
悠貴「持ちますよっ」
頼子「ありがとうございます」
まゆ「あら……お久しぶりです」
頼子「お久しぶりです。一緒のツアーだったのですね」
まゆ「……あの」
頼子「成宮さんは元気にしていますよ。作品にも精力的です、もちろん学業も」
まゆ「それは……良かったです」
頼子「お元気でしたか?」
まゆ「はい」
頼子「話は成宮さんから聞いています。お世話になっています、高峯さん、木場さん」
のあ「お久しぶり。美術館の方は」
頼子「皆様のご厚意のおかげで、来館者数も増えています」
のあ「ところで、乙倉悠貴」
悠貴「はい?呼びましたか?」
のあ「彼女とは知り合いだったのね」
悠貴「はいっ」
のあ「何時からかしら」
頼子「さて……校外学習の時だったでしょうか」
悠貴「私は小学生でしたっ。親切に教えてくれて、今もお話を聞いてもらってるんですっ」
のあ「そう」
頼子「市立美術館は乙倉さんのお家からは遠くありませんから」
悠貴「古澤さん、見てくださいっ!洋館ですよ、洋館!」
頼子「実は由緒ある洋館なのですよ」
真奈美「そうなのか?」
頼子「ええ。実際にある洋館をモチーフにしていますから」
悠貴「楽しみですっ。だって、事件が起こりそうですっ!」
頼子「ふふ……そうですね」
真奈美「今、なんて?」
悠貴「古澤さん、先に行ってますね!」
36 :
◆ty.IaxZULXr/
[saga]:2017/08/24(木) 16:48:17.88 ID:Ahhc8lJY0
頼子「気をつけてください。午前中に部活の練習をしていたと思えないほど、元気ですね」
のあ「あの子、事件でも起こりそうと言ったのかしら」
頼子「ドラマの見過ぎですよ。そう、モデルとなった洋館の名前を知っていますか?」
のあ「知らないわ」
頼子「ジェンセンス邸です。向こうでは首なし幽霊の館と呼ばれていますね」
まゆ「……え?」
頼子「冗談ですよ」
真奈美「君は自分の職業を自覚してくれ」
頼子「本当なのは洋館の名前だけです。しかも、日本にあります」
まゆ「まゆ、信じちゃいましたぁ……」
頼子「お騒がせしました。乙倉さん、待ってください」
まゆ「真顔で冗談を言う人だったんですねぇ……」
真奈美「前に会った時も、独特なペースで話をしていた気がするな」
のあ「彼女の知識と見方も、それを産み出す要因かしら」
真奈美「だが、夏の島に来るイメージはなかった」
まゆ「私も、です」
のあ「彼女、ミステリーも読むと言うし」
まゆ「クールに見えましたけど」
真奈美「内心、ワクワクしてるのかもな」
のあ「そうね」
真奈美「誰かさんみたいに」
のあ「誰かさん、って誰かしら」
真奈美「それは、のあに決まってるだろう」
のあ「私じゃないわよ。戻りましょうか」
真奈美「正直じゃないな」
のあ「私は二人と旅行に来れて、嬉しいだけよ」
真奈美「……」
まゆ「真奈美さん……」
真奈美「ああ、佐久間君」
のあ「どうしたのかしら。置いていくわよ」
まゆ「ストレートな言葉はドキドキします……」
真奈美「見かけと比較して、感情表現の成長が遅いからなぁ……」
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