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恭介「来ヶ谷を見つけたぞ」理樹「……」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/22(火) 23:02:49.31 ID:KAp8fU8U0
理樹(その電話がかかってきたのは洗濯物を取り込んでいた時のことだった。もう高校を卒業したとはいえ、未だに彼からのコールが来ると胸が高鳴る。彼はこういう時はいつも唐突に何か”面白いもの”をぶら下げてやってくるからだ)
恭介「よう。元気か理樹」
理樹「……うん。恭介の方は?」
恭介「俺は出張で今は東京にいるよ。理樹こそ一人暮らしはもう慣れたか?」
理樹「もう2年になるんだよ?……ところで今日はどんな用?」
恭介「ああ、そうなんだ聞いてくれ。来ヶ谷を見つけたぞ」
理樹「……」
理樹(今回は少し違ったものを持ってきたようだ)
恭介「あれ、反応が薄いな」
理樹「……やめてよ恭介」
恭介「まあそう邪険にするな。お前だって気になるだろ?」
理樹(気にならないと言えば嘘になる。来ヶ谷さんは『ある時点』から僕はおろかリトルバスターズの誰とも連絡を取らないようになり、鵺のようにどこかへ消えてしまったからだ。しかし、その原因は多分僕にある)
恭介「実は今、来ヶ谷も東京にいるんだ」
理樹「なんで恭介はそれを知ったの?」
恭介「フッ、それが驚くなよ?電車の広告で見たのさ。三日後にピアノコンサートをするらしい」
理樹「本当!?」
理樹(来ヶ谷さんは学校を卒業したあと、実家に……つまり海外に行ってずっとピアノを続けていた。元からあれは素人のものではないと思っていたけど、とうとうそこまでいったとは)
恭介「逆に言えばそこまでいかないと俺たちの目に入らないっていうのも考えさせられるが、とにかくやっと見つけたんだ。一緒に行ってみないか理樹?」
理樹「やっぱりそういう話になるんだね……」
恭介「おいおい!まさか嫌だって言うんじゃないだろうな?俺はこれをお前の運命と受け取ったぜ。どうせ大学は今夏休みだろ?」
理樹「そういう事じゃないよ。ただ、僕が今更行っても……」
恭介「なあ、ずっとこのままでいるつもりか?自然消滅したまま燻ってるようじゃこの先どうやって前に進むつもりだ」
理樹(なんだかその言葉を聞いて少しムッとした。多分、それは恭介のせいじゃなく、その不甲斐ない僕自身にイラついているからなんだろうけど、ついついその場でその怒りをこぼしてしまった)
理樹「恭介に何が分かるのさ……」
理樹(言ってからハッとなったが、恭介は意外にも怒った様子ではなさそうだった)
恭介「分かるさ……今お前が電話してる顔だって目に見えるようだ。嘘だと思うか?」
理樹「ふふっ……いや、そうかもしれないね」
恭介「どちらにせよまずはこっちに来てみろ。東京観光がてら旧交を温めようじゃないか」
理樹(結局恭介のペースに乗せられてしまった。こういう所は本当に変わっていない)
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1503410568
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/22(火) 23:22:17.91 ID:KAp8fU8U0
理樹(幸いこの一週間は何も予定がなかったので、旅行の準備を整えると次の日にはもう新幹線に乗ることになった。東京に着くまでの間、僕は悶々とした気持ちで過ごした。来ヶ谷さんのことだ)
理樹(彼女とは2年の秋から交際を始めた。学校を卒業するまで、それはとても幸福な時間を過ごしていたが、その後、来ヶ谷さんはピアノの道に進むため、あちらの国に戻って修行することになった。彼女は日本に残って僕と出来るだけ一緒に過ごす事も考えていたが、それでは彼女自身のためにならないと思って僕が断った。そしてそれが決定的な僕らの分かれ道になってしまったのだ)
理樹(僕らは最初遠距離恋愛というものを甘くみていた。お互い生きているのだから気が向けばまた会える。そう考えていたのだ。しかし、所詮は僕もまだ学生の身。何度かあちらに足を運んだり、逆にあっちが日本に帰って来ることもあったが、基本的にはメールや電話でのやりとり。そしてその唯一の繋がりさえ、お互いの予定が重なり合って次第に疎かになっていった。そして今年に入る頃にはもうほとんど連絡は取らず、事実上の自然消滅となってしまった。あんなに好きだったのに何故こうなってしまったのだろう。ただ、お互いの関係がずっと変わらないままなんてあり得ない事だったのかもしれない)
『みなさま、まもなく終点、東京です…』
理樹(リュックサックを背負い、駅の出口に向かうと切符売り場の人ごみの中から大手を振ってぴょんぴょん跳ねている人物がいた)
恭介「おおーい!こっちだ理樹ー!」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/22(火) 23:23:57.97 ID:KAp8fU8U0
寝る(∵)
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/22(火) 23:34:03.29 ID:5kUm8EGyo
ハッピーエンドだといいなあ
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/23(水) 00:17:20.53 ID:k4lwJ9Y6o
おつwktk
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/23(水) 09:29:36.49 ID:hMEVeciVO
期待
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/23(水) 22:01:04.76 ID:f5UuN0bG0
理樹(昼ご飯は駅前のハンバーグ屋で取ることにした。テーブルの装飾から伝票の紙に至るまで東京ともなれば飯屋一つでここまでお洒落なのかと感心した)
恭介「俺がこっちに来て初めて食べた所がここだ。東京の飯といったらチェーン店以外はどこも高いがここは割とリズーナブルだから安心しな」
理樹「はは……ところで恭介はいつからこっちに?」
恭介「ざっと3ヶ月前ってところだな。駅の付近は特に人混みが多いから前に鈴を案内した時は途中でリタイアしてしまったな」
理樹(恭介おすすめの料理に舌鼓を打ちつつ近況を笑いながら話し合った。こうしている間は食堂で食べていた頃となんら変わらないように感じるのは彼の子供心がまったく薄れていないからだろう)
恭介「さて、そろそろ出かけるか!荷物は重くないか?」
理樹「リュックサックだし服とかはどうせならこっちで調達しようと思って軽くしてきたよ」
恭介「流石理樹だ!」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/23(水) 22:13:21.74 ID:f5UuN0bG0
・・・
理樹(その後、僕は恭介が案内観光人として素晴らしい才能を持っていることを知った。お約束の観光地から恭介が見つけた風情のある穴場まで色々案内してもらい、移動している間は東京にまつわる面白い話を挟んで僕を飽きさせないのであっという間に1日が過ぎてしまった)
恭介「ただいま我が家!」
理樹「うわっ、これ本当に恭介の家!?」
理樹(恭介の家は一言で言うと物が散乱しまくっていた。机には書類が散乱していてテーブルはいつの物か分からないようなペットボトルが山積みとなっていた)
恭介「い、いやぁ…理樹が来るのが予想以上に早くてな……一応和室は片付けておいたからお前が寝るところは大丈夫だ!」
理樹「恭介はどこで寝るのさ?」
恭介「うーん……ソファ?」
理樹「………恭介」
恭介「な、なんでしょう?」
理樹「片付けよう」
恭介「一応聞いておくが今からって訳じゃないよな?」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/23(水) 22:22:30.97 ID:f5UuN0bG0
理樹「恭介ーこれも捨てるよー?」
恭介「あ!ま、待ってくれ!それはドイツ人の友達から貰った大切なお土産の袋なんだ!」
理樹「そんなものまで置いてたらいつまで経っても終わらないよ!?」
恭介「……はい」
理樹(観光から帰ってきて疲れが溜まっていない訳ではないがこんな家じゃロクに寝れやしないだろう。あちこちから変な匂いもするし、こんなのじゃ恭介も毎日目覚めが最悪だろう。もし恭介に彼女が出来たとして遊びに行きたいと言われたらどうするつもりなんだ?そう考えると居ても立っても居られなかった)
・・・
恭介「な、なんとか終わったな……」
理樹「うん……流石に疲れたね……」
恭介「ああ、もう眠てー!」
理樹(そう言って恭介が長いこと書類置き場と化していたベッドにダイブした)
理樹「待って、埃だらけでしょ?一応お風呂沸かしておいたから入ってきて」
恭介「お前は嫁か!」
理樹(そう目を輝かせながら恭介は風呂場に直行した。どちらかというと親子の関係の方が近いと思うけど)
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/23(水) 22:37:56.26 ID:f5UuN0bG0
理樹(僕が風呂から上がるといつの間にか恭介が外から出てきた)
理樹「どこか行ってたの?」
恭介「ああ。ちょっとコンビニにな」
理樹(そう言って恭介はお酒をかかげてニッコリ笑った)
・・・
恭介「ふっ、まさか理樹と飲む日が来るとはな」
理樹「いやいやいや!僕まだ未成年だから!当然のようにグラス用意しないでよ!」
恭介「なに言ってんだ理樹?あと半年だろ?それくらい変わんねえよ」
理樹(そう言って恭介はその赤い瓶を勝手に二つのグラスに注ぎ、そこへジンジャーエールを大量に入れて混ぜた)
恭介「大丈夫。ジンジャーエールで割れば飲みやすいから」
理樹「いやそういう問題じゃないよ……」
恭介「まあまあ!いいから飲んでみろって」
理樹「もう………あれ?」
理樹(ちょっぴり口に含んで味を確かめてみた。とても甘いが飲みやすい。いや、飲みやすいんじゃなくこれは……)
恭介「クックック……」
理樹「これお酒入ってないじゃないか!」
恭介「あっはっはっ!騙されたな理樹!そりゃ、シロップだよ!ノンアルコールカクテルって奴だ」
理樹(道理でなんだか恭介らしくないと思った)
恭介「さて…外に出たらなんだか眠気が冷めちまったな」
理樹(恭介の顔は依然と楽しげな笑みを浮かべたままだったが、今の台詞の意図は何となく分かる)
理樹「明日、どうするかだよね…」
恭介「そうだな……」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/23(水) 22:50:21.21 ID:f5UuN0bG0
恭介「どうする?」
理樹(本当のことを言うともう新幹線の中で、いやもしかすると旅の荷造りをしようと決意した時から選択は決まっていたのかもしれない。そりゃそうだ。恭介はああ言っていたけど最初からそのつもりでなければ行こうともしなかっただろう。彼女のいる場所へなんて)
理樹「行くよ」
恭介「良い選択だ」
理樹「ただ、見るだけで実際会いに行くかはまだ決めてないよ」
理樹(僕のグラスの氷がカランと音を立てた)
恭介「ふっ。顔を見たらどのみち気持ちははっきりするだろうさ」
理樹(恭介は決まりだなと言うと引き出しから紙切れを2枚持ってきた)
恭介「明日のチケットだ。無駄にならずに済んだぜ」
理樹「そ、そんな…僕が断ってたらどうしたの?」
恭介「おいおい。当日券なんてないんだぜ?それに理樹なら行くって言うと信じてたからな」
理樹「恭介……」
恭介「さ、もう寝ようぜ。来ヶ谷の前の奴の演奏で寝ちまったら元も子もないからな」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/23(水) 23:28:37.53 ID:f5UuN0bG0
・・・
理樹(家を出ると雨が降っていた)
恭介「レンタルサイクルでもと思ったがこりゃバスの方がいいな」
理樹「そうだね」
理樹(そのコンサートホールまでは片道30分だった。東京は昨日と変わらず人がこれでもかと言うほど歩いていて、みんな雨から身を守るため険しい顔つきだった。いつかは思い出せないが、来ヶ谷さんは雨はつまらないと言っていた気がする)
運転手『〇〇前、〇〇前です……』
恭介「ここだな」
理樹(そのホールはとても大きなものだった。来ヶ谷さんは既にもうここに着いて準備しているんだろう。そう考えると心臓の鼓動が徐々に早くなった)
・・・
理樹(恭介が買ったチケットはそれほど前ではなく、かと言って演奏者の顔が見えないほど遠い席でもなかった。きっとまだ完全に心の準備が出来ていない僕に対する配慮だろう。恭介に限ってこういうことは偶然ではないんだ)
恭介「なんだか不思議だな。今集まってる奴は全員来ヶ谷のために集まってるんだぜ」
理樹「そうだね……」
理樹(しばらくしてからホールが少し暗くなり、雑談をしている声が止んだ。そして若い男の司会が現れ、集まった僕らに感謝をするとまず来ヶ谷さんのこれまでの経歴を並べていった。こういう事には詳しくないがやはり二十歳にすらなっていない人がこういう場に出るのは珍しいのだろうか?来ヶ谷さんにまつわるだいたいの事を言い終わると、その人は満を持して来ヶ谷唯子の名を呼んだ)
恭介「来るぞ理樹」
理樹「……」
理樹(その人は万雷の拍手で迎えられながら姿を現した)
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 21:07:20.37 ID:VbCvuMD40
来ヶ谷「………」
理樹(当たり前だけど最後に会ってから何も変わっていなかった。見る者の心の奥を見透かすような大きな眼、これ以上ないほどの美しい歩き方。あの髪飾りも健在だった。僕らに軽く挨拶のジェスチャーを送ると最初に演奏する人のため一旦引いていった)
恭介「どうだった?」
理樹「どうって……別に、普通だよ」
理樹(それは嘘だった。一年ぶりに見る来ヶ谷さんの姿をずっと頭の中で再生していた。それから次の人の演奏は頭に入ってこない癖にいざ彼女がまたピアノの前に立つとその瞬間、生き返ったように我に帰るんだ。なんてことはない。僕は彼女を見ることで未練を残していたことを思い出してしまったんだ)
恭介「弾くぞ」
理樹(その来ヶ谷さんの演奏は最後に聞いた時から何倍も良くなっているように感じた。静かに始まった第1章が弾いていくにつれて徐々に熱を帯びるように激しくなっていき、燃え上がるような曲のムードを見せ、しばらく観客を魅了すると、最後の方でまた最初のようなテンポに戻り、目を瞑りながらラストと思わしき音を弾いた。完璧な演奏だった)
理樹(完全な沈黙から数秒後、指し示したように周りの観客は同時に大きな拍手を送った。それにつられるまでもなく僕らも負けじと拍手を送った。そして彼女は立ち上がりこちらに向いて膝を曲げてお辞儀をした。更に拍手は大きくなった。そしてもう一度お辞儀をして姿勢を直した瞬間、目が合った)
理樹「………」
来ヶ谷「………」
理樹(わずか1秒もないくらいの間だったが、確かにお互いの視線は繋がっていた。そして何故だかその目を見て僕は今の自分の立場を冷静に自覚することが出来た。そう、今の僕は勝手に連絡を取らなくなった癖に彼女が有名になった途端のこのことコンサートに顔を出す恥知らずなんだ。それから僕はばつが悪くなって来ヶ谷さんから目を逸らし、いつの間にか握りしめていたパンフレットを見つめ、やっぱりまた目を戻すと彼女は既に舞台から消えていった)
恭介「…最高だったな」
理樹「……うん……」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 21:13:21.16 ID:VbCvuMD40
・・・
司会の男「流石だよ来ヶ谷ちゃん!観客も大喜びだ!」
来ヶ谷「それは良かったです」
司会の男「どうだい?成功を祝ってこれからどこか食事にでも……」
来ヶ谷「……いや、今はそんな気分じゃありません。また今度にしてください」
司会の男「あ、そう……分かった。またね!約束だよ!」
マネージャー「あの男も懲りないな」
来ヶ谷「ふっ……今日はもう私のやる事はないな?」
マネージャー「ああ。なにか予定でもあるのか?」
来ヶ谷「外を歩きたいだけだ」
恭介「おいそこをどいてくれよ!俺たちは来ヶ谷の友達なんだって!」
警備員「例えお知り合いの方であっても通す訳には行きません!プレゼントでしたら私から渡しておきますので…」
恭介「あ、さては信じてないな!?なんなら来ヶ谷が学生だった頃の恐怖談だって言えるぜ!………ってあれ?どこ行った理樹の奴……」
・・・
理樹(あのあと思わず飛び出てしまった。雨宿りのためになんとなく近くのバーに避難した。静かなオルゴールが流れる場所だった。他に客はいないせいか、まるでこの店の中だけ時間がゆっくりと動いているようだ)
店主「………」
理樹「………」
(ただ、一人になるにはいい場所かもしれないけど少し僕には大人過ぎる。ちゃんと酒を飲んだこともないような僕がいったい何を頼めばいいのか。店主は何も頼まない僕を待ってくれてはいるが、ずっとこうしている訳にもいかない。かといってこのまま外へ出るのも失礼だなんて考えていると後ろから声がした)
「この人と私にノンアルコールで適当に一杯お願いしていいかな」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 21:45:34.70 ID:VbCvuMD40
理樹「………」
理樹(先ほどまでずっと遠くから見ていた人がすぐ横の椅子に座った。それはなかなか奇妙な感覚でいて、とても久しい暖かさも感じた)
理樹「もしかしてつけてきたの?」
来ヶ谷「はは、いやまさか。なんとなく一人になりたかっただけさ」
理樹「僕もそうだった……ちょっと考え事をしたくて」
来ヶ谷「もし私がここじゃなく別の場所に来ていたならきっと同じ時に同じ事を考えるところだったんだろうな」
理樹「……さっきの演奏良かったよ」
来ヶ谷「来ると知っていたら招待券を渡していたのに」
理樹「いや、急に行くことになったんだよ。恭介に連れてこられてさ」
来ヶ谷「ふふ…変わらないな君は」
理樹「来ヶ谷さんこそ……」
理樹(いや、美しさという点では、まだ向上する一方だった。学生の頃から匂わせていた大人らしさが一層際立っている。仕草や喋り方自体は変わっていないはずなのに、僕の知らないところで来ヶ谷さんも大人になっているんだ)
店主「バージン・ブリーズです」
理樹(出されたカクテルは透き通るピンク色が綺麗だった。一口飲んでみると甘さが控えめでほろ苦い味だった)
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 22:02:17.34 ID:VbCvuMD40
来ヶ谷「……もう1年は連絡していなかったな。もはや私と理樹君のどちらが最後にメールを送ったのかも忘れてしまった」
理樹「………そうだね」
理樹(来ヶ谷さんが送ったメールで最後だった。来ヶ谷さんも覚えているはずだ)
来ヶ谷「そういえばみんなは変わりないか?」
理樹「うん。みんな元気にやっているよ」
来ヶ谷「良いことだ」
理樹(そうやって僕と来ヶ谷さんはずっとお互い何もなかったように昔話に花を咲かせた)
来ヶ谷「……む。もうこんな時間か……」
理樹(気がつけばもう時計は11時を回っていた)
来ヶ谷「今の君の所だと電車では間に合わないだろう。どこか泊まる当ては?」
理樹(この時、恭介の所に泊まると言うか、来ヶ谷さんがそう提案すればこのまま別れてそのまま僕らはお互いの生活に戻っただろう。しかし、僕にはどうしてもそれが出来なかった。出来るはずがない)
理樹「………困ったな。どうしよう」
来ヶ谷「……そうか。では私の家に来るか?ここからすぐ近くだ」
理樹(…………)
理樹「じゃあ、そうさせてもらおうかな」
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/26(土) 22:05:36.21 ID:VbCvuMD40
続く(∵)
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/26(土) 23:37:00.14 ID:KLCnX5/6O
わふー
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/26(土) 23:38:47.03 ID:YDF/tPr9o
恭介ェ…
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/27(日) 02:03:37.87 ID:fLpYcl+to
おつなのー
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/27(日) 18:15:40.03 ID:DAgvAEuGO
恭介ほんとすこ
あんな友達が欲しい……
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/31(木) 09:57:32.85 ID:NFrW24YFo
ハッピーエンドがいいなあ
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