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【艦これ】羽黒「司令官さん、私、信じていますね」
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1 :
◆m9ZGL07ULFKn
[saga]:2017/08/21(月) 18:55:51.69 ID:YDsn8rSZ0
「今日は、風が強いですね」
注意
・オリジナル設定・独自解釈があります
・だいぶシリアスなものになるかもしれません
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1503309351
2 :
◆m9ZGL07ULFKn
[saga]:2017/08/21(月) 18:56:53.80 ID:YDsn8rSZ0
「今日は、風が強いですね」
隣に立った羽黒が、僕にそう話しかけてくる。
急遽作られたこの泊地には、それを遮るものの何もない分、強い風が”いつも”吹きつけていた。僕は、彼女の意図を察した。彼女は僕の声を求めているのだ。会話がしていたいのだ。初めての大規模な攻勢作戦を翌日に控えて、落ち着かないのはみな同じはずで。一人だけ、逃げるように海を眺めていた自分の勝手さを、僕は思い知った。
「そうだな」、と僕は答えた。
「私、少し怖いです」
隣に立つ、少しだけ年下に見える女性の姿に、その言葉に、僕は何も言えなくなる。
僕は何を言えると言うんだろう。『きっとうまくいく』、『大丈夫』。そんな無責任な言葉を投げかける勇気が、僕にはなかった。『何にせよ、作戦だ』。そんな風に非情になるには、僕には経験が圧倒的に足りなかった。
何も言えず無言になった僕に、そして彼女は微笑みかけてくれた。
「でも、私、信じています」
3 :
◆m9ZGL07ULFKn
[saga]:2017/08/21(月) 18:59:54.43 ID:YDsn8rSZ0
羽黒と出会ったのは、一年前のことになる。
関東近海において、制海権確保の作戦が進められている頃だった。
瀕死の状態で確保された重巡リ級に、新開発の薬を無理やり投与し、僕はひたすら祈っていた。本当に切実に祈っていた。彼女が助かるように。僕たちの”形”になりますように、と。
リ級は目の前で青い光を放ち、光の中で、徐々に少女の形に変わっていった。
そして――発光が止まると、そこにはショートカットの、綺麗な少女が眠っていた。
それが彼女と僕との最初だった。
4 :
◆m9ZGL07ULFKn
[saga]:2017/08/21(月) 19:02:26.56 ID:YDsn8rSZ0
今、僕の指揮下には重巡1、軽巡1、駆逐4の戦力がある。
これは通常の艦艇ではなく、”艦娘”と呼ばれる少女たちで構成された部隊である。彼女たちは、一人で戦闘艦一隻分の力を発揮できるのだ。
僕自身のことについて言えば、書類上は東京の艦隊司令部の直属の隷下であるが、実質的には横須賀・呉の両鎮守府の下に所属している。
明朝から開始される作戦も、両鎮守府の要請によるものだ。”要請”と言っても、僕には断ることが許されておらず、だからそれはほとんど”命令”に等しい。
そして、高知県宿毛市に建てられたこの泊地は、僕のために作られたようなものである。隷属する艦隊を指揮するための司令部、整備のための工廠といった、艦娘を運用するにあたっての設備が、一通り備えられている。
これは決して僕に対して与えられた報酬ということではない。僕をよく思わない人からすれば“厄介払い”であり、少しの理解者から見れば”同情からの措置”なのだ。
5 :
◆m9ZGL07ULFKn
[sage saga]:2017/08/21(月) 19:04:14.05 ID:YDsn8rSZ0
一睡もできないまま、いつの間にか夜は明けていた。
指令室で6人の少女たちに命令を訓示し、出撃していくその姿をそのまま見守る。
空の指令室の中で、僕はやりきれない思いを抱えていた。
それが何への怒りなのか、悲しみなのか、憎しみなのか。それすらもわからなかった。
何から思い出し、整理していったらよいのか。僕は自問する。
たった数年で、大きなことがあまりにも頻繁に起きすぎているのだ。
6 :
◆m9ZGL07ULFKn
[sage saga]:2017/08/21(月) 19:06:17.94 ID:YDsn8rSZ0
「問題は、小さな問題に分けて考えるの」
頭の中で、彼女の声がした。
僕はそれだけで全く心が震えてしまう。ボロボロになりそうになる。
でも、そうだ。
「複雑な問題は、単純な小さな問題の組み合わせで、きっと解くことができる」
世界が変容し始めた最初の日を、僕は思い出すことにする。
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