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「藤原肇がそれを割る日」
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102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/18(金) 01:10:23.08 ID:dZyp/T120
「……ッ!」
「奇遇だね……私、ずっと似てるなぁって思ってた。
アイドルも、こんな感じなんだろうなぁって、それがさ……その植木鉢、ステージそっくりに見えてさ。
私がずっと直面して、思い描いてきた世界、そっくり」
「私、雑草になりたくない……でも、雑草だと言われて、切り捨てられた子達も、ずっと多いんだよね」
――何を言ったら良いのか、分かりません。
夕美さんは、私よりもずっとこの世界の過酷さを、ガーデニングを通して既に受け止めていたのです。
「……えへへっ、やっぱり、何か変な風になっちゃったね。でもね?
やっぱり私、それでもガーデニングは好きなの」
もう一度、笑いました――心なしか、先ほどよりも、明るくなっています。
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/18(金) 01:12:38.84 ID:dZyp/T120
「だって、選択をしたら、それを大切にしなくちゃって、思えるから」
ちょっと俯いて、首を振って、また顔を上げます。
「省みたらいけないと思うの。捨てちゃった子達のことを省みたら、その子達が余計に可愛そう。
……ううん、そんなの、言い訳でしかないし、私の勝手な思い込みだよ。でも……そう思うようにしてる」
夕美さんは、後ろに組んでいた手を、胸の前で握りしめました。
「その子達を犠牲にした分、ちゃんと自分で選んだ子達は、しっかり咲かせてあげなくちゃって。
綺麗に、輝かせてあげなくちゃって。そうでなきゃ、その子達を捨てた甲斐が無いもの!
自分の身勝手な選択を、自分がちゃんと受け止めなきゃ、ダメだよって! 私、ずっと思うの」
「自分の選択を……自分だけは、肯定して、大切にして、しっかり生かさないとって……私、思うんだ」
「…………」
「……あっ、えへへ……ごめんね! 何が言いたいんだって話だよね!? よし、ごめんごめん!」
顔をゴシゴシと拭いて、夕美さんはピシッと気をつけをしました。
「結論を言います!」
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/18(金) 01:14:24.16 ID:dZyp/T120
「私は、肇ちゃんには、それを割ってほしくありません」
「……はい」
何となく、ホッとしました。
それは、そうだろうなと思います。自分へのプレゼントを――。
「あっ、ううん! ウソウソ、今の正しくない。言葉が足りないな、えーとね……」
「えっ?」
「肇ちゃんには、私のために、それを割ってほしくありません」
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/18(金) 01:19:00.28 ID:dZyp/T120
「……夕美さんの、ために?」
夕美さんは、鼻を鳴らしました。なぜか、どこか得意げです。
「それを割るのも、割らないのも、肇ちゃんの自由だよ。
どっちを選択したとしても、私はそれを尊重する。でも……」
「誰かのためとか……もちろん、誰かのせい、っていうのもダメ。
他の人の器に自分を嵌め込んでいったら、どんどん“肇ちゃん”じゃない、丸っこくて特徴の無い、普通の人になっちゃうと思う」
「器……」
「ううん、変なこと言ってるなぁ……でも、言いたいこと、きっとそういうことなの。
肇ちゃんは、誰にも媚びたり、阿るようなこともしない、しっかりした器?“肇ちゃん”っていう個を持っていて、私はそれが大好き」
「だから……」
大きく深呼吸をして、夕美さんは私の目を、もう一度見ます。
「肇ちゃんには、絶対に私や誰かのためじゃなく、自分のために選択をしてほしいの。
そして、その選択に誇りを持って。絶対、私だけは肇ちゃんの味方だし、何があってもその選択を尊重するよ。ねっ?」
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/18(金) 01:22:36.43 ID:dZyp/T120
「夕美さん……」
「自分で選ぶから、自分が一番それを大切に出来るんだって、思うから」
夕美さんは、今日一番の――。
いえ――いつか見て、今まで少しだけ忘れていた、とても眩しい笑顔です。
「凜としてて、しっかり屋さんで、でもちょっとだけ頑固で、視野がアレしちゃう、真っ直ぐな子――。
私が好きな、雑味が無い肇ちゃんでいてほしいから、自分のために、それを選択してほしいんだ」
「…………」
「あれ? 返事は?」
「ふふ……」
涙を拭いて――負けないくらい、しっかりとした笑顔で返します。
「はい」
私も、そういう雑味の無い自分――いえ、そうあろうとする自分。
そして、それを好いてくれる夕美さんが、好きです。
「あはは、それそれっ! うん、よろしい!」
「はい……それと」
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/18(金) 01:25:00.90 ID:dZyp/T120
「お誕生日、おめでとうございます、夕美さん」
「言うの遅くない? あはははっ!」
「ふふっ……」
どんな自分でありたいか。
それを見出すために、自分のための選択が必要なのだと、彼女は教えてくれました。
ありがとうございます。夕美さん。
私は、夕美さんに頷くと、改めてそれに向き直り――。
大きく、深呼吸をして――。
両手で持ちました。
***
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/18(金) 01:27:41.71 ID:dZyp/T120
***
「……肇ちゃん? おーい、肇ちゃん」
「えっ?」
「えへへっ……肇ちゃん、結構ボーッとしぃだね?」
本番直前にも関わらず、少し、あの時のことを思い出していたようです。
舞台袖に立つと、会場の地鳴りのような歓声が、すぐそこまで聞こえてきます。
「夕美さん」
「ん?」
「これからも、よろしくお願いします」
「……うん! こちらこそ、よろしくね、肇ちゃん!」
「はい」
どちらともなく手を差し出し、ぎゅっと、握りました。
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/18(金) 01:32:04.67 ID:dZyp/T120
結局、私はそれを、割ることが出来ませんでした。
どこまでも独りよがりで、我が儘を通したそれは、夕美さんへの誕生日プレゼントである以上に、私そのもの。
雑味ばかりの、未熟な私そのものでした。
我が身可愛さとは、このことでしょう。
夕美さんにそれをプレゼントすると、彼女はとても喜んでくれました。
何だかんだで、やはり割らないことを願ってくれていたのだと思います。
その日から、ちゃんと花を生けて、玄関に飾ってくれています。
でも、もし今後、自分が作り上げていくそれを、私が――。
藤原肇がそれを割る日が、いつか来るとしても――。
今の私なら、それを素直な気持ちで肯定し、大切にすることが出来ると思います。
夕美さんがいてくれるなら、きっと――。
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/18(金) 01:34:44.74 ID:dZyp/T120
すぐそこに見える会場を、満員のお客さん達を見つめます。
なぜこの人達が今日ここに集まり、期待に満ちた声を上げてくれるのか。
何を期待されているのか。そして――私達はなぜここにいて、それにどう応えるべきなのか。
私と夕美さんが、これからも選択を繰り返しながら、見出していく道。
「見極めました。行きましょう」
「うん!」
私達は、輝くステージに飛び出しました。
〜おしまい〜
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/18(金) 01:42:03.01 ID:dZyp/T120
この二人は何となく仲良さそうだなぁと思いながら書きました。
ただ、キャラだけでなく、備前焼等の専門的な話についても不勉強が多いです。
変なところがあったらすみません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、失礼致します。
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/18(金) 02:20:54.48 ID:LHTfNSLQO
乙
良かった
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/18(金) 05:22:09.25 ID:rk/p75qDO
乙
相葉ちゃんはやっぱり、笑顔で誰にでも優しい子であるのが似合うなぁ
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/21(月) 09:54:56.06 ID:HKdYZI3Z0
良かった・・・乙
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