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神通「カリブの、海賊?」【艦これSS】
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1 :
◆JjxDNGokTU
[saga]:2017/08/14(月) 23:22:26.78 ID:ediltvGc0
日本近海//
水平線に日が落ちるとともに、海は沖の方からゆっくりとかすみ始めた。
輸送艦の艦長を任されていた男は、ちらりと外を見ると、部下に船速を上げるよう促した。
艦長「これは急いでもかなり遅い時間になりそうだな」
彼は規律と時間に厳しい、模範的な帝国軍人であった。
そんな彼にとって、自分の輸送船が遅れるというのはプライドが許さなかったのだろう。
艦長の男は焦るように、軽く歯噛みする。
部下「とはいえ艦長、これは仕方のないことです。なにせ海の機嫌が悪かったんですから」
艦長「ううむ……」
上官の苦悩を宥めるように、部下の男が軽口でフォローした。
とはいえそのフォローはただの慰めではなく、正しい見解だったといえよう。
事実、今日この船はどうも海に嫌われていた。出航して1時間程度経った頃だろうか。
湾を出た頃は全くの快晴であったにも関わらず、次第に波が高くなり、空も淀み始めた。
雨こそ降らなかったものの、風も強く、荒れた海模様に見舞われたのである。
そんな海を半日、歯を食いしばりながら耐え、ようやく穏やかな海になったのがついさっきのことだ。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1502720546
2 :
◆JjxDNGokTU
[saga]:2017/08/14(月) 23:22:46.01 ID:ediltvGc0
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*注意書き
「パイレーツ・オブ・カリビアン」と「艦隊これくしょん」のクロス。
構成はパイレーツ・オブ・カリビアンの感じをベースに。
文字数は約17万4000字。文字で見れば、ノベライズ版のパイレーツ換算で、
最長の「ワールド・エンド」の1.3倍くらい。一貫完結の「生命の泉」、「呪われた海賊たち」の2倍程度。
大体平均的な文庫本2冊分くらいになるので、お時間のある方はお付き合いください。
時間軸は「生命の泉」終了時点から数か月後。
後、ネタバレにならないであろう程度には、最新作の要素が出てきます。ご注意ください。
艦これ側は特に準拠する設定はありません。
ただ、神通のキャラが若干二水戦仕様になっております。違和感があるかもしれません。重ねてご注意ください。
日にちをかけての不定期更新になるかと思います。
後、検索すると、他にもパイレーツSSがあったので大丈夫だと思いますが、
原作が原作なので、万が一掲示板に警告が来ようものなら問答無用で停止・削除していただいて結構です。
では、長くなりましたが、前置きは以上。よろしくお願いします。
===============================================
3 :
◆JjxDNGokTU
[saga]:2017/08/14(月) 23:23:59.98 ID:ediltvGc0
部下「あの海を切り抜けただけでも勲章ものですよ。事情を説明すれば、遅刻を責められるどころか、
寧ろ『よくぞ荷と船を守った!』って賞賛されますって」
そんなポジティブな部下の言葉にほぐれたのか、艦長の眉間が柔らかくなる。
艦長「……そうだな。私も焦りすぎていた。どうもあの頃の記憶が抜けないようだ」
部下「あぁ、深海棲艦の?」
艦長「あの頃は輸送船がこうして海を往くだけで自殺行為だったからな。どうしても、
一秒でも早く陸につきたいと思ったものだ」
部下「あはは、でもまぁ、今はそれも過去の話ですよね」
艦長「そうだな。戦線を拡大し、制海権の多くを取り戻した我々にとって、こんな日本海近海は
舗装道路と変わらん。……よし、通信で多少遅れると内地に伝えろ」
部下「了解」
そういうと部下の男は無線で連絡を取り始めた。艦長が再び外を見る。通り過ぎてきた海の空は
まだ鉛色の雲で覆われ、既に雨まで降りだしていた。対してこちらの海は実に静かであった。
部下「? あれ?」
静かすぎるほどに。
4 :
◆JjxDNGokTU
[saga]:2017/08/14(月) 23:24:50.46 ID:ediltvGc0
艦長「どうした?」
部下「いえ、何やら……、どうしてでしょう。通信がつながりません」
艦長「なに? こんな穏やかな天気で、本土の近い所でか?」
部下「うーん……」
近年の通信設備は優秀だ。たしかに距離は近すぎるほど近いわけではないが、ここら一帯の島には
日本軍がこしらえた電波中継の塔がいくつもある。つながらない道理はない。
部下「とすると、故障でしょうか?」
艦長「だとすると厄介だな、うーむ……」
今度は艦長が唸る番であった。
と、その時である。
5 :
◆JjxDNGokTU
[saga]:2017/08/14(月) 23:26:14.29 ID:ediltvGc0
轟音。同時に、船全体が衝撃で包まれる!
部下「うわああっ!!?」
艦長「なんだ!?」
船体が不自然に揺れる。まるで飛ばしていた車が急停止したかのように。
「何かにぶつかったか!?」と外が慌ただしくなる。艦長も急いで甲板に出た。
すると……、
艦長「な、なぁっ……」
部下「艦長! どうし……ひぃっ!?」
そこにあったのは白い腕だった。
海の底から巨大な白い腕が船体をつかんでいた。
部下「な、こ、これは……、」
艦長「落ち着け! レーダーには何が映っている!?」
部下「れ、レーダーには、……。なんだこれ……」
部下の男の視線の先には、ノイズでホワイトアウトしたレーダー画面が表示されていた。
艦長「こ、これは……、一体!?」
慌てふためく船長。対してその部下は、死を前に現実感が喪失したのか、
場違いな程に静かに語り始めた。
部下「俺、聞いたことがあります。ウチの島の住民たちが畏れ敬う海域があるって。
……この辺りの海域には、出るそうなんですよ」
艦長「何……?」
6 :
◆JjxDNGokTU
[saga]:2017/08/14(月) 23:27:36.80 ID:ediltvGc0
虚ろな目で抵抗を止める部下に気づき、叱咤しようと肩をゆする。
同乗している船員たちが小銃で応戦するも、効果はない。
艦長「おい! しっかりしろ! 何が出るというのだ!
幽霊か! ゲリラか! どれも敵ではないわ!」
部下「違います。違うんですよ、艦長。それは、」
外を見ると、船員たちが敵の姿を確認するため、ライトを当てていた。
するとその光に誘われるように、轟音を上げ、海から現れた。
部下「それは、」
それは、巨大な口。
真っ黒で無骨な外殻を持ち、鋭利な歯が何本も並んでいる。
顎は大きく開かれ、人のそれとは違い、顔の形状は口が前方に長く伸びている。
艦長「ひっ」
『ウ゛ゥゥヴウ゛ゥウゥウ゛ウ……』
響くような、唸り声。
そう、海から突き出たその姿はまさしく、
部下「――ドラゴン」
『ア゛アアア゛アァアア゛アァァ゛ァァア゛アァ!!!』
咆哮と共に、その輸送艦は爆炎に包まれた。
7 :
◆JjxDNGokTU
[saga]:2017/08/14(月) 23:28:07.73 ID:ediltvGc0
後に残されたのは、戦闘などまるで無かったかのような、
ただ、嘘の様に静かな海だけであった――。
8 :
◆JjxDNGokTU
[saga]:2017/08/14(月) 23:28:34.05 ID:ediltvGc0
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