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ダイヤ「貴女と選んだ」千歌「道の先で」
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1 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 00:40:24.03 ID:Tx30bpDo0
ラブライブ!サンシャイン!!SS
ダイちか
過去作
千歌「――私はある日、恋をした。」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491711229/
のあとのお話的な何か
書き溜めを余りしてないので、のんびりやります。
お付き合い頂ける方はどうぞ気長に見てやってくださると幸いです。
よしなに。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1502466023
2 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 00:42:14.86 ID:Tx30bpDoo
山々の木々の葉が散り始めた冬の頭。
生徒会室の張り詰めた空気の中、二人で黙々と仕事を進める。
ダイヤ「……」
書類に目を通して、必要なものには判を押す。
そんな流れ作業に少し辟易しながらも、やらないわけにはいかない。
それが生徒会の仕事だから。
わたくしはふと、一緒に仕事をこなしている向かいの席に座る人を見る。
赤い髪を両側に揺らしながら、黙々と作業を進める、最愛の妹を──
ルビィ「……?お姉ちゃん、どうかしたの?」
わたくしの視線に気付いてルビィが問いかけてくる。
ダイヤ「あ、いえ。……生徒会の仕事も随分板についてきたなと」
ルビィ「ホントに?えへへ、嬉しいな」
ルビィが無邪気に笑う。
だけど、それが意味するものを考えて少しだけ胸がチクリとした気がした。
ルビィ「お姉ちゃん」
そんなわたくしの様子に気付いたのか
ルビィ「ルビィが好きでやってることだから、気負わないで」
そう言う。
ダイヤ「……ありがとう」
わたくしは、そう返すことしか出来なかった。
* * *
ルビィ「最近、千歌ちゃんとはどう?」
仕事をひと段落させ、小休憩を取っていると、ルビィがそう尋ねてきた。
ダイヤ「滞りなく、清いお付き合いをさせていただいていますわ。」
ルビィ「そっか」
ダイヤ「ええ……」
3 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 00:42:56.65 ID:Tx30bpDoo
わたくしは少し迷ってから
ダイヤ「ルビィ……生徒会は楽しい?」
そう続けた。
ルビィ「……うん。お仕事は大変だけど、ルビィにも出来ることがあるんだって感じることも一杯増えてきて、楽しいよ」
ルビィは生徒会に前向きだ。だが、肯定の前の僅かな沈黙。わたくしは──
ダイヤ「ねぇ、ルビィ……やっぱり」
ルビィ「お姉ちゃん」
でも、言葉を遮られる。
ルビィ「そろそろ休憩終わりにして、続きはじめよ?」
ルビィにそう促された。
ルビィ「今日は千歌ちゃんち泊まるんでしょ?」
ダイヤ「……ルビィ」
ルビィ「お仕事早く終わらせていってあげないと! 千歌ちゃんね、お姉ちゃんにおいしい手作り料理、振舞うんだって張り切ってたんだから」
ダイヤ「……それは、楽しみですわね」
ルビィ「うん! だから──」
ダイヤ「ねえ、ルビィ」
でも、それでもわたくしの中のつっかえたものが消えることはなくて
ルビィ「お姉ちゃん……前にも言ったけど、ルビィはお姉ちゃんにはお姉ちゃんのために生きて欲しい」
ダイヤ「……」
ルビィ「ルビィのこと信用できない?」
──噫、その言葉はずるい。最近はどうやっても、この言葉で、最終的に煙に撒かれてしまう。
ダイヤ「……信用してますわ。だから、こうして生徒会に入ってもらっているのですから。」
わたくしはそれ以上は何も言えなくなって、目を伏せた。
* * *
千歌「ダイヤさん」
千歌さんがわたくしの名前を呼んで、自分の膝をぽんぽんと叩いた。
4 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 00:43:23.50 ID:Tx30bpDoo
ダイヤ「ん……」
わたくしは二の句を告げずに千歌さんに近付き、そのまま彼女の膝に頭を乗せて横になる。
千歌「よしよし……」
ダイヤ「千歌さん……」
千歌「なぁに?」
ダイヤ「千歌さん……」
千歌「うん……大丈夫、ちゃんと傍にいるよ。」
優しく頭を撫でてくれていた彼女の手が滑らかな動作で、そのままわたくしの手を握り締める。
千歌「ルビィちゃんのこと?」
ダイヤ「……」
千歌「……そっか」
ダイヤ「……ごめんなさい」
千歌「どうして謝るの?」
ダイヤ「わたくしの悩みは……貴女に失礼だと思って……」
千歌「そうかな?」
ダイヤ「……」
千歌「考えすぎだよ。きっと疲れてるんだと思う。今日はもう寝ちゃう?」
ダイヤ「まだ、ご飯食べただけじゃない……。せっかく、お呼ばれしてるのに勿体無いですわ。」
千歌「そっか。じゃあ、眠くなるまでお話しよっか。」
ダイヤ「千歌さん……」
千歌「んー?」
ダイヤ「好き……」
千歌「うん、私も好きだよ。」
零れ出る幸せな言葉。なのに……なのに
心の中に黒い霧のような不安が沸き立つようで
ダイヤ「好き……好きよ……」
それを振り払うように
千歌「うん、知ってる。」
ダイヤ「千歌さん……」
わたくしは起き上がって、彼女の唇を塞いだ。
ダイヤ「──ん」
千歌「──んっ」
5 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 00:43:54.98 ID:Tx30bpDoo
短い、口付け。
千歌「えへへ、落ち着いた?」
ダイヤ「千歌さん……千歌さん……」
千歌「だいじょぶだよ。ちゃんと、ここにいるから。」
抱きしめて、千歌さんを感じて。
千歌「よしよし……」
優しく頭を撫でてくれる貴女に甘えて、わたくしは──
* * *
黒澤家を継ぐ人間として、生まれたときからわたくしはいろいろな習い事をこなして来た。
お琴、日舞、華道、茶道、書道……数え切れないくらいに
それも全て黒澤の娘として、家を継ぐため……なのに
──ある日、家の郵便受に入っていた、綺麗に包まれた便箋を見て。
わたくしは……わたくしは──
* * *
ダイヤ「わたくしは……!!」
そんな言葉と共に覚醒する。
暗い部屋と……もはや見慣れた天井。
ダイヤ「……夢」
すぐ横に目を配らせると
千歌「……ん……ダイヤさん……?」
千歌さんに寝ぼけ眼でこちらを見上げていた。
ダイヤ「あ、わたくし、あのまま寝ちゃって……」
千歌「ん……怖い夢見た?」
ダイヤ「……」
6 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 00:44:52.39 ID:Tx30bpDoo
千歌「また寝たら怖い夢見ちゃうかもしれないし、楽しいお話しよっか」
ダイヤ「なんで……」
千歌「ん」
ダイヤ「なんで、貴女はそんなに優しいの……」
千歌「……うーん、ダイヤさんがチカに優しくしてくれるからじゃないかな」
ダイヤ「……わたくしのは、そんな高潔なものじゃない」
千歌「高潔……かはよくわかんないけど、ダイヤさん優しいよ」
ダイヤ「ねえ、優しくしないで……わたくし、どんどん弱くなってしまう……」
黒澤の女は常に強くあらねばならない。
なのに。
千歌「……」
ふわりと……千歌さんに抱きしめられる。
千歌「弱くなっちゃ……ダメなの?」
ダイヤ「ダメなの……わたくしは……強くなくちゃ……」
自分に言い聞かせるように、言葉を搾り出す。
千歌「そっか……」
ダイヤ「だから、弱いわたくしを受け止めないで……お願いだから」
千歌「それは出来ないかなぁ……」
ダイヤ「どうして……」
千歌「だって、それもチカの大好きなダイヤさんだから。」
ダイヤ「……」
千歌「ダイヤさんだって、チカが泣いてたら抱きしめてくれたもん」
ダイヤ「……」
千歌「同じだよ」
その言葉を聞いて、堅くなっていた肩から少し力が抜ける。
ダイヤ「……ここ数日わたくし、少し動揺が過ぎますわね……」
千歌「しょうがないよ。でも、チカの前ではどんなダイヤさんでも大丈夫だから。……ね?」
ダイヤ「……ありがとう。千歌さん。」
抱きしめられたまま、深呼吸をする。千歌の匂いに包まれていて、すごく……すごく安心する。
ダイヤ「貴女でよかった……」
千歌「うん。チカもおんなじ気持ちだよ」
再び眠りに落ちるまで、千歌さんは優しく頭を撫でてくれていた。
7 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 00:45:36.78 ID:Tx30bpDoo
今日はここまで。
おやすみなさい。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/12(土) 09:18:55.70 ID:DZNPqTnSO
千歌ちゃんにバブみを感じる
9 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 10:12:41.58 ID:Tx30bpDoo
* * *
梨子「おはよう、千歌ちゃん。今日も早いね。」
千歌「あ、梨子ちゃん。おはよ」
朝起きるとベランダ越しから梨子ちゃんが声を掛けてきた。
梨子「今週もダイヤさん泊まってるの?」
千歌「うん。まだ寝てるけど」
梨子「……珍しいね。ダイヤさんも早起きなイメージなんだけど。」
千歌「あーうん。ちょっと疲れてるみたいで」
梨子「そっか……。ねえ……」
梨子ちゃんが不安そうに私を見つめているのがわかった。
梨子「千歌ちゃんは大丈夫……?」
ずっと、私とダイヤさんのことを想って見守ってきてくれた梨子ちゃん。
だから、今回のこともすごく心配している。
千歌「チカは大丈夫だよ。」
梨子「ホントに?無理してない?」
千歌「ん、全く無理してないかと言われると……ちょっと嘘になるかもしれないけど」
梨子「けど?」
千歌「……ルビィちゃんにも頼まれてるから」
梨子「ダイヤさんのこと?」
千歌「うん」
梨子「……」
千歌「これは私の憶測だけどね。……きっと、ルビィちゃんが私に『お姉ちゃんをお願いね』って言ったのはこういうことだと思うから。」
ダイヤさんにとっては今が一番しんどいタイミングだと思うから……だから
10 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 10:13:28.18 ID:Tx30bpDoo
千歌「今はチカがしっかりしてないといけないと思う。」
梨子「そっか……」
千歌「ねねね。それより、梨子ちゃん今日暇?」
梨子「え?あ、まあ、それなりに……」
千歌「じゃあ、うちに遊びに来てよ」
梨子「ダイヤさんと二人っきりなのに、お邪魔していいの?」
千歌「ちょっとダイヤさん、ここ数日思考がループしてるから……皆で遊べば少し気分転換になるかなって。お昼過ぎから果南ちゃんも来ることになってるから。」
梨子「あぁ……果南ちゃんもだいぶ心配してたもんね。」
千歌「うん。だから今日は4人で遊べないかなって」
梨子「そういうことなら。私もお昼過ぎに行けばいい?」
千歌「うん。それで大丈夫」
梨子「そっか、それじゃまた後でね」
梨子ちゃんが部屋に戻っていくのを確認してから、私も部屋に戻る。
部屋の奥、自分のベッドの上ですぅすぅと可愛らしく寝息を立てるダイヤさんを確認して。
その横に腰掛ける。
ダイヤ「ち……か……さん……」
千歌「ん」
ダイヤ「すぅ……すぅ……」
これは寝言だったみたい。
ダイヤさんの頭を撫でる。
ダイヤ「んゅ……」
少し身動ぎして、声をあげる。
無防備なダイヤさん。
きっと私しか知らない、安心しきったダイヤさん。
千歌「今は傍にいてあげないと……」
考えすぎかなって思うけど、起きて私がいなかったら
また寂しくなっちゃうかなって思って
なんて思ってたら──
11 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 10:14:11.85 ID:Tx30bpDoo
ダイヤ「……るび……ぃ……」
ダイヤさんがルビィちゃんの名前を呼んだ。
ダイヤ「……ごめん……なさい……」
千歌「……」
また、夢を見てるのかな。
さっきまでおだやかだった寝顔が少し息苦しそうになっていた。
私はダイヤさんの手を優しく握る。
千歌「だいじょぶだよ……」
ダイヤ「ん……。……すぅ……すぅ……」
私の声が聞こえたのか、またおだやかに寝息を立て始める。
ダイヤ「ちか……さん……」
千歌「ここにいるよ」
私がそう言葉にしたら、繋いだ手が少しだけ強く握り返された気がした。
……まだ、朝も早いから。
しばらくはダイヤさんが落ち着いて眠っていられるように。
こうしていようと思う。
* * *
もはや見慣れた便箋。
ただ、見慣れていないことがただ一つ。
そこに書いてある宛名はわたくしの名ではなく。
…………。
いつか来る未来だとわかっていたはずなのに。
自分でそうなる道を選んだはずなのに。
その便箋の宛名を見て、わたくしはうろたえずにはいられなかった。
* * *
12 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 15:26:03.03 ID:Tx30bpDoo
沼津の冬はリリーの話によると、東京よりはやや温かいらしい。
とは言っても、すぐそこにある海から吹いてくる風はもう冷たい。
ってか、そういう理由どうこう以前に主観的に寒い。
善子「元引きこもりが、気まぐれでうっかり散歩なんて、するもんじゃないわね……」
どこかの誰かに触発されたのか、最近はどうも晴れ模様を見ると身体を動かしたくなる。
晴れていてもだんだん近付いてくる冬の足音──跫が確実に聞こえてきている。
身も心も凍て付かせる、終焉の季節が……。
……ちょっと、このフレーズかっこいいわね。
そんなことを考えていると茶々を入れるように冷たい風が吹き付けてきた。
善子「さむ……」
風を避けるように商店街に逃げ込む。
善子「はぁ……本屋でも行こうかな……」
見慣れた商店街で一人のときに行く先なんて、だいたい決まってるようなもので
本屋へと足を運ぶ。
店内に入り、サブカルコーナーを物色しようとしていたら、本棚の前に見覚えのあるちっこいのがいるのに気付く。
善子「ずら丸?あんた何してんのよ?」
そこにはずら丸が本棚の前で立ち尽くしていた。
善子「まさか、貴方もついにリトルデーモンとしての宿命を自覚したというの!?」
花丸「……」
善子「……えーと、ずら丸?さすがに無視は堪えるんだけど……」
花丸「……あ、ここ文庫の棚じゃない」
そう呟いてずら丸が私の方に方向転換して。
花丸「ずらっ!?」
ぶつかった。
花丸「ご、ごめんなさい!オラぼーっとしてて……善子ちゃん?」
善子「……」
花丸「あ、えっと、ごめんね」
善子「いや、いいけど。大丈夫? 普通文庫の棚とサブカル棚間違えないわよ?」
花丸「あ、うん。……ちょっと、考え事してて。」
善子「まあ、いいけど……。あんたが沼津に一人で来るなんて珍しいわね? バス間違えなかった?」
花丸「む……マルもそこまでじゃないずら。今日は1回しか降りる場所、間違えなかったし。」
13 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 15:26:29.15 ID:Tx30bpDoo
沼津、終点なんだけど、どうやって間違えたのかしら……。
善子「ルビィはどうしたのよ」
花丸「今日はお稽古だって」
善子「今日も?」
花丸「そうみたい」
善子「ふーん……」
花丸「うん……」
ずら丸が僅かに目を伏せた。
善子「本、買うんじゃないの?」
花丸「あ、うん」
そう促すと、とてとてと文庫棚に向かって歩いていく。
その後ろをついていく。
花丸「えっと、これとこれと……これとこれと」
善子「相変わらずたくさん買うわね」
花丸「あ、善子ちゃんちょっと持ってもらっていい?」
善子「……リトルデーモンの分際で私を使おうと言うのね?いい度胸だわ。」
花丸「これと……あと、これと……」
有無を言わさず私の両手に本が積み重ねられていく。
善子「……」
花丸「えっと、これ……あと、これ」
善子「あんたホント本好きよね」
花丸「これと……これとこれと、これ。……あとこれ」
善子「あの、花丸さん?」
花丸「あ、これも……あと、これとこっちも……あ、これ新刊読んでなかった。あとこっちのシリーズを……」
善子「ずら丸ッ!?」
花丸「ずら!?い、いきなりおっきな声出さないでよ、善子ちゃん。」
善子「いやいやいや、あんたどんだけ人に本持たせるつもりよ!」
花丸「え、まだ半分もないけど……」
善子「店員さーん!台車貸してくださーい!!」
このままじゃ腕が?げる……
* * *
14 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 15:27:49.16 ID:Tx30bpDoo
ありゃりゃ、もげるって環境依存文字か……
このままじゃ腕がもげる……
です。
15 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 15:28:30.33 ID:Tx30bpDoo
花丸「全く善子ちゃんは情けないずら」
善子「あんた、そんなに本持ち歩いてて重くないの?」
花丸「本は別腹ずら」
善子「いや、意味わかんないし……」
一先ず買い物を済ませて、今は近くのカフェで腰を落ち着けている。
ずら丸の隣の席には風呂敷に包まれた大量の本が置いてある。
20冊……いや、30冊くらいある?
善子「普段からそんなに買うの?」
花丸「買うときは……でも、最近はあんまりなかったかな」
店内の窓ガラス越しに空を仰ぎながら
花丸「最近はあんまりお休みに沼津も来てなかったし……」
ぼんやりとそう言葉を零した。
善子「……」
理由はなんとなくわかる。
善子「……あんま、気にしてもしょうがないんじゃない」
花丸「……うん」
行間を読んだのか、唐突な言葉にもしっかり相槌を打つずら丸。
花丸「……ルビィちゃん最近、大人っぽくなったよね。しっかりした……というか」
善子「……そうね」
花丸「それって、いいことだよね……」
善子「……そうね」
花丸「なのに、それが寂しいって思うのは……マルの心が汚れてるからだよね」
善子「それは違うと思うけど……」
花丸「……マル、どうしたらいいんだろ」
善子「ずら丸はどうしたの?」
花丸「……わかんない」
善子「そう……」
相槌を打ちながら、最近の練習風景に記憶を廻らせる。
練習はいつも通り。
ただ、ダイヤだけはなんだか雰囲気が違う。
言葉や態度に出ていない……というか、出さないようにしてる雰囲気が伝わってきていて、皆その違和感に気付いてはいるが口にはしない。
16 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 15:29:37.46 ID:Tx30bpDoo
たぶん、ダイヤの彼女である千歌と妹のルビィはその原因を知ってるんだろうけど……。
ずら丸も口のこそ出さないが、そんな空気に当てられてしまったのかもしれない。
これは正直、直感なのだけど。
ダイヤが落ち込むのに反比例して、ルビィが忙しくなっている気がする。
……いや、逆かしら。
ルビィが忙しくなっていくことにダイヤが落ち込んでいる。
……まあ、こんなのは自明かしら。
ことがことだけに。
善子「全く難儀よね……」
私もそう呟きながら、窓の外を仰ぎ見た。
店の外は太陽が雲に隠れて、陽の光を遮られていた。
それを受けてか、さっきよりも外の通行人が寒そうにしているのが目に入ってきて、たまらず追加でホットコーヒーを頼もうと決意した。
* * *
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/12(土) 18:20:29.89 ID:DZNPqTnSO
ずら〜
18 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 20:38:17.74 ID:Tx30bpDoo
ダイヤ「ん……」
千歌「あ、起きた。おはよ、ダイヤさん」
ダイヤ「おはよう……。今、何時ですか……?」
千歌「10時過ぎだよ」
ダイヤ「……随分寝坊してしまいましたわね。」
千歌「昨日遅かったからいいんじゃないかな?気持ちよさそうに寝てたし。」
ダイヤ「ええ、お陰でぐっすり……」
半身を起こしたダイヤさんはしばらく時計をぼーっと見つめて
突然はっとしたような顔になった。
千歌「……ダイヤさん?」
ダイヤ「い、いえ……」
ダイヤさんの目が泳いでいる。
千歌「だいじょぶ……?」
ダイヤ「ごめんなさい……」
千歌「ん……」
真っ青な顔をしたダイヤさんを抱きしめる。
千歌「……」
抱きしめた腕の中で
ダイヤ「わたくしだけ、こんな……」
と小さく呟くのが聞こえた。
そういえば、ルビィちゃん……今日は朝からお稽古なんだっけ。
どう言うのが一番かなと少しだけ考える。
千歌「ダイヤさん」
ダイヤ「なん、ですか……?」
千歌「チカと一緒にいるときは何も考えなくていいから」
ダイヤ「……」
千歌「私が全部許すから……ね?」
ダイヤ「……ちかさん」
千歌「だいじょぶだから」
その場しのぎの言葉だなんてことはお互いわかっている。
でも、こんなにことあるごとに気に病んでいたら、本当にダイヤさんの心が押しつぶされちゃう。
だから、私と一緒にいる間だけは……忘れていいと言うことにしてあげたい。
忘れられない、忘れてはいけないことなんだとしても……ね。
19 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 20:56:20.62 ID:Tx30bpDoo
* * *
しばらくしてダイヤさんが落ち着いてきた頃合で私は一旦一階に降りてきた。
志満「あ、千歌ちゃん。ダイヤちゃんまだ寝てる?」
早速、志満姉に遭遇する。
千歌「ううん、さっき起きたところ。」
志満「そっか、じゃあこれ」
と言ってお皿に盛られたおにぎりを手渡される。
志満「朝ごはん……と言っても、もうお昼前だけど。二人で食べて。」
千歌「うん、ありがと。」
志満「そういえば、千歌ちゃん。」
千歌「ん?」
志満「ダイヤちゃんとのことって、お母さんに言ったの?」
千歌「え? ……いや、特に言ってないけど。なんで?」
志満「お母さん、電話でダイヤちゃんのこと心配してて……」
千歌「どゆこと……?」
お母さんとダイヤさんって面識あったっけ……?
まあ、Aqoursのメンバーだから、一方的に知ってはいるだろうけど……
志満「まあ、知らないならいいの。えっと……それと、お母さんから千歌ちゃんに伝言があって」
千歌「でんごん……?」
志満「『しっかりやりなさい』って……」
千歌「……」
志満「お母さん、どこまで知ってるのかしら」
昔っから見透かしたようなことを言うんだよなぁ……お母さん。
あんまり家に居なかった癖に……。
志満「やっぱり、離れてても親子なのね」
千歌「そうだね……」
家族って、そうなんだなって思い知らされる。
……いろんな意味で、ね。
20 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/12(土) 21:11:08.08 ID:Tx30bpDoo
今日はここまで
おやすみなさい
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/13(日) 02:28:44.98 ID:OWdqI+jXo
おぉ、続き来てた!
凄く楽しみにしてます!
22 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/14(月) 13:49:16.18 ID:3eNuSAZNo
* * *
予兆はあった。
ダイヤ『はい、黒澤です。……え? 明日のお稽古はお休み? ……はい。はい。……わかりました。』
最近、自分のお稽古事が頻繁に休みになるようになった。
理由は──なんとなくわかる。
ダイヤ『……。』
考え事をしながら、ぼんやりと開きっぱなしになった、自分のガラパゴス携帯を見つめていると。
手元のソレから簡素な着信音が流れる。
画面には【高海千歌】と表示されていた。
ダイヤ『もしもし』
千歌『あ、ダイヤさん? すごい、すぐ出てくれた!』
ダイヤ『たまたま今、携帯を開いていたところだったので』
千歌『ホントに? えへへ、私たちなんか繋がってるみたいだねっ』
ダイヤ『もう……それで、どうかしたの?』
千歌『あ、うんっ 声……聞きたくなって。』
ダイヤ『千歌さん……』
千歌『ん……?』
ダイヤ『?』
千歌『ダイヤさん、何かあった?』
ダイヤ『……え?』
一言二言しか交わしていないのに、千歌さんはそう言う。
ダイヤ『……わたくし、何か変なこと言ってましたか?』
千歌『うぅん、何か言ってたとかじゃなくて、なんとなくなんだけど……』
噫そうかと思う。
わたくしは本当にこの人と繋がっているのかもしれない。
ダイヤ『……。あの……わたくし──』
* * *
23 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/14(月) 14:19:06.28 ID:3eNuSAZNo
千歌「えっと、ここだっけ……」
トランプを捲る。
千歌「……違う」
梨子「千歌ちゃん、さっきも同じところ捲ってたよ」
千歌「え、ホント……?」
果南「全く、こっちでしょ」
果南ちゃんがそう言ってトランプを2枚続けて捲る。
果南「あ、あれ? おっかしいな……」
絵柄が違ったのでまた元に戻す。
ダイヤ「千歌さん、果南さん。そんなに無策に捲ってしまって良いのですか?」
今度はダイヤさんの番だ。
ダイヤ「ここと……ここ」
千歌「むむ……」
ダイヤ「あと、こっちも確定ですわね」
果南「あ、そこさっき私が捲った場所! ずるい!」
梨子「いや、そういうゲームだから……」
ダイヤ「あと、ここもですわね。」
ダイヤさん、3連取。
ダイヤ「……さっき、梨子さんが開いたところがそこだから。……こっち。……ふふ、運がいいですわね」
さっき、梨子ちゃんの手番で開いた数字が出たので更にもう一組。
梨子「……4連取! すごい!」
ダイヤ「まだ、行きますわよ!」
千歌「っく……さすがダイヤさんっ! 千歌も負けてられない……!!」
果南「ちなみにこの時点で千歌は最下位がほぼ確定なんだけど」
千歌「なんですと!?」
24 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2017/08/14(月) 14:19:32.91 ID:3eNuSAZNo
ダイヤ「貴女は無計画にあっちこっち捲りすぎなのよ。周りに情報を与えすぎですわ。……あ、また揃いましたわ。」
千歌「ぜ、絶望……」
梨子「千歌ちゃんスピードは強いのにね」
千歌「ソリティアもだよ!」
果南「いや、それ対戦ゲームじゃないし……。というか、千歌が無駄にソリティアうまそうなのはなんだろう……」
千歌「作詞の合間によくやってたからね! じゅくれんのわざだよ!」
梨子「へー……」
果南「まあ、千歌に神経衰弱みたいな、記憶力が必要なゲームは向いてないよね。」
千歌「果南ちゃんに言われたくないよ!? 千歌がぶっちぎりでビリなだけで、果南ちゃんもほとんど揃えられてないからねっ!?」
ダイヤ「千歌さん……自分で言ってて悲しくなりませんか……?」
千歌「ダイヤさんっ そんな目でチカのこと見ないでっ」
ダイヤ「……んじゃ、あとはここ……。あ、これたぶん残り全部わたくしの手番の間に取れますわね。」
梨子「……ですね。」
果南「え、マジで?」
千歌「お、終わった……」
私は立ち上がってふらふらと廊下に向かっていく。
ダイヤ「あら、千歌さんどこへ行くの?」
千歌「頭がおーばーひーとしそうだから、外の空気を吸いに……もうチカの負けなんでしょ。」
ダイヤ「そう、いってらっしゃい」
千歌「ダイヤさん冷たくない!?」
ダイヤ「ほら、わたくしまだ自分の順番の最中なので」
千歌「うー……いーよーだっ! 一人でいってくるもん!」
そう言い放って、廊下に出る。
暖房の効いた、自室から出た廊下の床からひんやりとした冷気が身体から熱を奪っていく。
千歌「さむ……」
すぐに戻ろうかと思ったけど、なんかすぐに帰るのは悔しい。
しいたけでももふもふしてこようかな……。
* * *
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荒巻@中の人 ★
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