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周子「切なさ想いシューコちゃん」
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19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/11(金) 21:18:00.33 ID:P+4Tj8oJO
同じ名前のキャラっているのか?
20 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/14(月) 23:54:30.35 ID:Gq/QuK8U0
>>18
自分でスレ探すのもめっちゃ時間かかりました……
再開します。
21 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/14(月) 23:55:54.49 ID:Gq/QuK8U0
「Pさんはさ。」
ちょっと弱気になるあたしの心を、背筋伸ばして建て直す。
「お人好しだから。なんでもない只の親切だったかもしんないけど。あたしはホント、救われたんだよ。」
行き場が無くなってたあたしのこと受け入れて、同じ目線でとことん付き合ってくれたの、Pさんがはじめてだったからさ。
だから実家にも戻れたし、そのあとの人生が「活きてる」って感じになったんだ。
たぶん、あの時飛び出さなかったら、あたしはどっか居づらいなと感じながらも実家を継いで、適当な人とお見合いをして、シアワセな生活を送ったんだと思う。そんな知れ切ったシアワセが、逃げ場の無い閉じた未来に感じられて、たまらなく怖かった。
けど一人じゃ結局、ダメでさ。あたしはあたしで居たくて……知れ切った往生の枠に填められたくなくて逃げ出したけど、生身のあたしってのは世間様に対してどーしようもなく非力でさ。いよいよ持たなくなって、家出少女らしく援助でもしてもらうしかないかなー、なんて自棄くそな考えが頭を掠めた、あの時に出会ったのがPさんじゃなかったら、あたしは本当にどうなってたんだろう。
それから一ヶ月、Pさんはあたしに時間をくれた。自分と向き合って、時々Pさんに感情の塊をぶつけて。Pさんは全部許してくれた。見ず知らずのあたしのこと。
知れ切った未来に向き合う勇気も、それを変えていく力も、全部Pさんに教えてもらったんだよね。
「出会ってくれて、ありがと。こんなの、ホントに、あたしの、ガラじゃ、ないなっ、て、わかってるん、だけどっ……」
おっと、がんばれ、あたし。
まだちょっと早いぞ。エンディングまで泣くんじゃない。
まずは言わなきゃいけないこと、全部Pさんに伝えるんだ。
Pさんとあたしは、ずっとそうやって来たんだから。
22 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/14(月) 23:57:49.26 ID:Gq/QuK8U0
「Pさんの事が好きだよ。こんなに誰かを好きになることは、きっと二度と無いから。だからっ……」
だーっ、くそう。決壊しちゃった。
Pさんにその気がないなら諦めるから、とか、それでもアイドルは続けたい、とか、当分は好きでいさせてほしい、とか。
言おうとしてたことは結構あったんだけど、本音って難しいね。うまく言葉にならなくて、代わりに嗚咽が漏れてきた。
しゃくりあげそうになった時、体温の高いぬくもりに包まれた。
一瞬わかんなかったけど、Pさんが後ろから抱きしめていてくれていた。
「すまん。その……俺もうまく伝えられるかわからないから、少しの間、こうさせてくれ。」
あたしの肩、こんなに細かったんだな、って思うくらい、Pさんの腕や胸の感触はごつごつしてて。ちょっとだけ力を込めたら、全然動かなくて、びっくりした。
「……正直、俺は生きてきて良かったと思えたことはあまり無かった。帰る場所もねえし……それなりに頑張っても、中々上手くもいかねえし、人にも好かれねえ、何のために頑張るのかも自分でよくわかんねえ。でも……あのボロアパートに帰ってきたとき、周子が『あ、おかえりー』って、コンビニの菓子頬張って待っててくれるあの時の生活は……はじめて生きてて良かったと思ったよ。」
あたしはメイクの崩れた泣き顔をPさんの腕にうずめて、ただその言葉を聞いていた。
あたしが逃げていかないように、捕まえていてくれる大きな腕。ふわりとしたお酒の匂い、優しい声。
「あの一時の為だけに生きてみようと思えたもんさ。周子が幸せになれれば良いと思った。周子にはもっともっと可能性があるから……もっと色んな世界見て、そこから自分の幸せを見つけて欲しいと思ってた。けど、お前はもう何処に出ても恥ずかしくねえ大人の女だもんな。」
23 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/14(月) 23:59:46.66 ID:Gq/QuK8U0
グッと、Pさんの力が強くなる。
あたしの顔が熱くなって、心臓が跳ね上がる。
「大学卒業して、アイドルも突っ走り切ったら、そしたら一緒になろう。周子が許してくれる限り、俺も周子の傍に居たい。」
へたくそな告白だな、って思ったよ。
けど。想いが通じたことの、胸に広がった暖かさのおかげで、気になんなくなった。
へたくそな告白も、Pさんのダーツと同じ、あたしの歌やダンスと一緒で、二人で一緒にうまくなっていけばそれでいいよね。
……今日のあたしは、言いたい事を言う日だって決めたからさ。
「あんな、Pはん」
Pさんの拘束から抜けて、腕の中で向き直る。
やば、顔見たら、またあふれそう。
それを噛むように飲み込んで、唇が震えないように頑張って言った。
「そーゆー大事なことはさ、面と向かっていわなあかんえ?」
24 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/15(火) 00:01:15.29 ID:ytW4vJUe0
一瞬だけ、Pさんが怯えるような顔をした。Pさんでも、そんな顔するんだね。
大丈夫だよ、それは。五光が出るって決まってる花札みたいなもんだから。
あんたの育てたシューコちゃんを信用しぃ。
「……周、」
「あ、ちょいまち。」
「えっ」
「五年もいけずされたんやし、口約束じゃ足りないかなー」
と何か言いかけたPさんの顔の前に、しゅび、っと手を出して、指先で少し背の高い唇にちょんと触れる。
「証文ちょーだい? 恋の認め印的な。」
そのまま、あたしの唇を指す。
知ってる? 唇は喋る為じゃなく――――って、Pさんが知らないわけ、無いよね。
「認め印っておまえ……古いぞ。」
「うっさいあほ。ほら! 逃げないから。」
Pさんの顔が赤くなってる。お酒のせい、じゃないよね。
あたしの顔も、きっとあっかいあっかい。真っ赤っか。
シューコは白いから赤くなるとわかりやすい、って、言われたことがある。きっといまも、Pさんには全部お見通し。
いっそ都合が良い、今日のあたしには、隠すことなんてなにもないのだ。
ぽんと押すように、Pさんの背中に手を回すと、あたしの大好きな優しい手が、そっとあたしの頬に触れる。
その日、あたしは世界で一番幸せな女になった。
25 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/15(火) 00:05:57.99 ID:ytW4vJUe0
「はーあ、あたしのファーストキスはお酒の味かあー」
「……俺はちょっとしょっぱかったな。涙味。」
「んー? ファーストやったん? ほんまに?」
「……それ、やっぱ正直に言わなきゃダメか?」
「ふーん……なーんか妙に慣れてはったもんねー。Pはんにとって、あたしは何番目の女なんやろか。はー、あたしにとっては最初で最後の男やと思うのになぁ。上手くいかんもんやねえ。」
「うっ……」
「ふふっ、いいよ。許したげる。」
「飄々としてからに……あのあと結局ぼろ泣きしてた、しおらしい周子はどこ行ったんだ?」
「涙は女の武器どすー♪」
「ちきしょう。」
「しおらしおみー」
「なんだって?」
「なんでもー」
小指を絡めて、たらーんたらーんと歩きながら、涙味、なんて洒落たこというPさんをからかってやった。
夜の街から離れた、あの四畳一間に続く帰り道は、静かな暗闇に街灯でぼうっと浮かび上がらされて、世界で二人だけになったみたい。
「その代わり、こっから先は、あたしの独り占めっ♪」
Pさんと昔一夜を過ごしたかもしれない、名前もわからない女の子に対抗心を燃やしてしまうあたしは、可愛くないかな。
あたしって結構、独占欲強かったんだねえ。
さっきから余韻の続いてる、ふわふわした多幸感に任せて、胸のなかにPさんの腕をひったくる。
「おっ……!? あ、あんまり、外でくっつくなよ。」
「……イヤなん?」
「〜っ!」
腕に耳をぴったりくっつけて、お澄まし顔で少し不安そうにPさんを見つめる。
ふふっ、この見上げられ方、結構好きでしょ。ちゃんと知ってるよ。
26 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/15(火) 00:07:29.49 ID:ytW4vJUe0
「……俺はたぶん、一生周子には敵わないんだろうな。」
「あ、それ、一生一緒に居てくれや宣言? やったーん! シューコちゃん嫁入り確定♪」
「……まあ、どんな形になるかわからんが、そうなれるように頑張れるよ。」
「期待してるーん。ふふっ、信じてるからね?」
「ん。」
「ふっふ〜……んふふ。」
「なんだよ。」
「ようやっと一方通行から相互通行になったわけやしー将来の話もいちおーまとまったし。」
「うん。」
「……ナカヨシ、します?」
「……しません。」
「えー?」
もう一回、今度はもっと胸を押し付けて、上目遣い攻撃。
効果ばつぐんなのはわかってるんだぞ。うりうり。
つかね、あたしだって恥ずいんよ。けどPさんはっきりさせんと全然前に進まんやんか。
「……っ! そういうのは、だなあ。ちゃんとお父様お母様にご挨拶申し上げて、結納なりかんなり済ませてから……」
「Pさん……古くない?」
「うっさいな! 周子に対してはそういうのちゃんとしたいの! 俺!」
「へっ……!?」
あっかい顔したPさんに、今度はあたしが赤くさせられた。
27 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/15(火) 00:13:13.12 ID:ytW4vJUe0
「……そーゆー不意打ちは、反則かなーって」
「うっさい。大体お前、寮に外泊届け出してるのか。」
「んー……Pはん、うまいことやってな♪」
「お前なぁ」
「むー、なにさーカノジョの可愛いワガママ聞いてくんないのー?」
「彼女……な。うん。彼女だな。」
「そーだよ! カ……カノジョだよ。」
「自分で言って照れんなよ。」
「うっさいあほ。」
これ以上に撃ち合ってもお互いを傷つけるだけだとして、ここらで手打ちにしてやるとした。
このくらいで勘弁してやる、ってやつだ。
「てかさ、Pさん。あのアパート引っ越さんの? 結構シューコちゃんで稼いではると思うんですけど?」
「イヤな言い方するなよ。」
「二人で住むにはやっぱりちょっち狭いしさー」
「住むなよ。」
「……もしかしたら、あそこさ。あたしが突然帰ってきたりしても大丈夫なように、そのままにしておいてくれてたり、した?」
「……言わなきゃダメか?」
「……ん、聞きたいかな。」
「……また、お前がおかえりって言ってくれるような気がして、引っ越せなかったんだよ。」
「……うぅ……」
「……これ、めっちゃ恥ずいぞ。」
「う、うん……そだね。」
あかん。めっちゃこそばい。けど気持ちいい。なんなん、こーゆーやりとり。
この感覚は、重ねるとどんどん歯止めが利かなくなりそう。
こうやって人はバカップルというものに成っていくんだろう。人って、業の深い生き物だ。
世のバカップルたち、ごめんよ。いままで白けた目で見てたけど、恐らくあたしたちもその仲間入りを果たすだろう。
それも、べったべたの、砂糖吐きそうなほど胸やけするくらいのやつだ。
28 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/15(火) 00:16:42.79 ID:ytW4vJUe0
「すまんな。本当にこういうの、慣れてないんだ。どう接して良いのかわからない。」
カン、カン、カン、ふたりでアパートの階段を歩いていく。あたしの後から昇ってきたPさんが、ふとそんなことをつぶやいた。
「いいんじゃない、それでも。」
振り返ったPさんが、不安そうだったから。
心臓をくっつけるように、強く。Pさんを抱き締めた。
「ふたりでのんびり歩いていこ。あたしはずっと、傍におるよ?」
ダメになりそうな夜も、壊れそうなくらい辛かった時も、二人で越えてきたじゃんか。
寂しさを、心の穴を埋めることくらい、ふたりだったら、楽勝だよ。
告白がへたくそでも、距離感や触れ合い方がわからなくなっても。
あたしはなんでも、付き合ったげるから。Pさんがあたしにそうしてくれたように。
「ありがとう。」
泣きそうなような、はにかんだような。そんな顔で、Pさんはあたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。
ふたりだったら、無敵だよ。だってこんなに幸せじゃんか。
「あ、ちょい待って」
「ん? またか?」
部屋のドアを開けて中に入ろうとしたPさんを制止し、Pさんを押しのけ、あたしは先に入り、ドアを閉め、また開けた。
怪訝な顔をするPさん。
そんなPさんに、あたしは言ってやった。
29 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/15(火) 00:17:38.22 ID:ytW4vJUe0
「――――――おかえり、Pさん!」
今日、とびっきりの笑顔で。
Pさん、お澄ましよりも笑ったあたしのほうが好きだから。
Pさんの話を聞いてから、これは絶対、やってあげたかったんだ。
「……ただいま!」
あたしの良い人は、あたしの好きなその顔をくしゃくしゃにして、飛び込むようにあたしを抱き締めた。
あたしの輝ける場所を、未来を作ってくれたのは君だから。
あたしは、君の帰る場所になる。
そしたらほら――――――怖いものなんて、なさそうでしょ?
30 :
znAUHOH90
[sage]:2017/08/15(火) 00:21:36.95 ID:ytW4vJUe0
以上です。ありがとうございました。
二人は幸せな初夜を過ごし終了。
周子にうっさいあほ、いけず! って言われたいだけの人生だった。
寝て起きたら周子がおはようって言ってくんないですかね。
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/15(火) 01:44:05.67 ID:I1WGMeqxO
周子がおはようって言ってくる続きはよ
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/15(火) 07:41:20.78 ID:ft6I9F4eo
乙乙
これはブラックコーヒーが捗るわあ
おかわり淹れてくるから次回作はやくよこすのです
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/15(火) 20:14:15.74 ID:ODhb/K6Z0
奏の「ここで、キスして」書いた人?
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/16(水) 10:53:15.81 ID:2ClvNXbc0
乙
出逢ったばかりの周子とPの話も読みたい
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/22(火) 11:32:12.99 ID:pG+SwGBb0
乙
さあ同棲生活を書く作業に戻るんだ
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/22(火) 16:44:36.65 ID:bXegcdBzO
乙
続きはよ
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