クラリス「教会生まれのCさん」

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1 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 02:44:20.15 ID:FqcG0Fn80
前の
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1494245917/

寺生まれのPさんとか、歌鈴ちゃんとか、ふじともとか、みくにゃんとか出ます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1501868659
2 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 02:44:53.38 ID:FqcG0Fn80
歌鈴「はぁ……レッスンしてたらすっかり遅くなっちゃいました……」

歌鈴「もうすっかり真っ暗で……あ、月が綺麗……」

歌鈴「まんまる……」

歌鈴(……)

歌鈴(……そういえば、お兄さんが言ってました)

歌鈴(満月の夜は、人ならざるものが現れやすい……って)

歌鈴(……)

歌鈴(……少し、警戒しておこうかな)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴「……!」

歌鈴(感じた……! 人じゃない何かの気配……!)

歌鈴(おちつけー……おちつけー……歌鈴ー……)

歌鈴(ええっと……気配はどっちから……)

歌鈴「あっち……!」
3 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 02:45:36.05 ID:FqcG0Fn80
歌鈴(……道、合ってるかな?)

歌鈴(ううん、気配は濃くなってるんだから、それは大丈夫)

歌鈴(それよりも、もしかしたら誰かが襲われてるかもしれないんだから……もっと早く……!)

歌鈴「はっ……はっ……!」

歌鈴(……あとは、ここを曲がれば――)

「――!」

「ひ、ひぃっ!」

歌鈴(いたっ! 怪物と……襲われてる人!)

歌鈴(よし……歌鈴、行きますっ!)

歌鈴「破ァ!!!」

「――!?」

「なんだ、光……!?」

「……はっ! そ、そうだっ、今のうちに……!」ダッ

歌鈴「ふぅ……」

歌鈴(あの人は……逃げたみたいですね)

歌鈴(うまく邪魔できたみたいです)

「――」ギロッ

歌鈴「!」

歌鈴(……本当は、今ので終わらせたかったんですけど……)

歌鈴(……大丈夫、歌鈴。大丈夫)

歌鈴(たぶん、この怪物はそこまで強くない)

歌鈴(だから……一発でダメならもう一発……!)

歌鈴「すぅ……」

「――!」

歌鈴「……歌鈴、行きま――」

????「滅ッ!!!」

歌鈴「――えっ!?」

歌鈴(突如、空から女の人が現れた)

歌鈴(そして、私たちと同じように手を前に出し、叫び)

歌鈴(手のひらから放たれた光は怪物を包み込んで……)

歌鈴(……光が消えるころには怪物はいなくなっていた)
4 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 02:46:03.41 ID:FqcG0Fn80
????「……ふぅ」

歌鈴(……間違いありません。あれは私たちと同じ……!)

????「……地の獄で永久に懺悔なさい」

歌鈴「……」ポカン

????「お怪我はありませんか?」

歌鈴「え……あ、はいっ。大丈夫でしゅっ! ですっ!」

????「ふふ……そうみたいですね」

????「……危難は去りました。もう怯えることはありません」

????「それでは私はこれで……夜道にはくれぐれも気をつけるよう……」

歌鈴「あ……あのっ、待ってくださいっ!」

????「……どうしました?」」

歌鈴「その……お名前聞いてもいいですか……?」

????「私は……」

????「……そうですね、教会生まれのCとでも名乗っておきましょう」

歌鈴「教会生まれのC……」

クラリス「それでは」タッ

歌鈴「あっ!」

歌鈴「……いっちゃった」

歌鈴「……」

歌鈴「私たち以外にも……本当にいたんだ……」
5 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 02:47:02.08 ID:FqcG0Fn80
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歌鈴「ってことが昨日の夜にあったんです」

朋「手柄を横取りされちゃったのね」

歌鈴「そっ、そんなこと考えてませんっ!」

朋「ふふ、冗談よ」

朋「にしても……シスターの除霊師ねぇ……」

朋「……もしかして、最近うわさになってるあの除霊師かしら」

歌鈴「きっとそうだと思います……藍子さんが話してたうわさの、ですよね?」

朋「そうそう。歌鈴ちゃんの勘違いしてた、あのうわさのね」

歌鈴「うぅ……それは、忘れてください……!」

朋「ふふっ」

朋「シスターの服着て、除霊師……なんてぴったりじゃない」

歌鈴「そうですね……」

歌鈴「それに、教会生まれの……とも言ってましたし」

朋「……除霊師ってみんななんとか生まれってつけるものなの?」

歌鈴「わ、私はつけてませんけど……でも、お兄さんもCさんもつけてますね……」

朋「やっぱり歌鈴ちゃんも神社生まれのDさんで活動したら?」

歌鈴「しません!」

歌鈴「……ととっ」

歌鈴「それで、朋ちゃん、話は戻るんですけど!」

朋「ん?」

歌鈴「よかったら何ですけど……Cさんがいる教会を一緒に行きませんか?」

朋「教会に?」

歌鈴「はい」

歌鈴「……せっかく同じような力を持つ方に会えたんですから」

歌鈴「その、いろいろお話してみたいな……って思いまして」

歌鈴「……でも、一人じゃちょっと心細いので」

歌鈴「お願いできませんか?」

朋「もちろん、いいわよ」

歌鈴「わ、やったっ!」

朋「あたしも、ちょっと気になるしね」

朋「……でも、その教会の場所はわかるの?」

歌鈴「それは……」

歌鈴「……ち、近くの教会からしらみつぶしに探していこうかと」

朋「……」

朋「……まあ、手がかりなんて何もないもんね」

歌鈴「うぅ……」
6 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 02:47:52.72 ID:FqcG0Fn80
朋「……わかった」

朋「じゃ、あたしが占いでその教会見つけるわ」

歌鈴「……いいんですか?」

朋「こういうときのための占いよ」

朋「特定の人物がいる……なんて手がかりさえあれば場所なんて簡単に見つけられるしね」

歌鈴「朋ちゃん頼もしい……!」

朋「えへんっ……なんてね」

朋「それじゃ、占うわ」

歌鈴「お願いしますっ!」

朋「ん」

朋「それじゃ、携帯の地図を出して……教会で検索っと」

朋「……わ、結構出てくるのね」

歌鈴「こ、これ全部をしらみつぶしは大変ですね……」

朋「でしょ?」

歌鈴「朋ちゃんにお願いしてよかった……」

朋「ふふっ」

朋「さてとっ、後はこのペンデュラムで……どの教会かなー……?」

歌鈴「……あ、もしかしてペンデュラムが触れたところが……」

朋「そう、目当ての教会よ」

歌鈴「おぉ……すごい……!」

歌鈴「……でも、これって占いなんですか?」

朋「あたしが占いと思えば占いよ」

歌鈴「……」

朋「……あ、反応あったわ!」

朋「ここの教会みたい!」

歌鈴「……一番近い教会ですね」

朋「そうね。ラッキーだったかも」

朋「……じゃ、行ってみよっか」

歌鈴「はいっ!」
7 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 02:49:32.20 ID:FqcG0Fn80
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朋「えーっと……あ、あったあった。ここね」

歌鈴「わぁ……すごい……教会です……!」

朋「そりゃ、教会だからね」

歌鈴「あっ!……あうぅ」

朋「ま、いいたいことはわかるわよ」

朋「あんまりこういう建物ってみないしね」

歌鈴「はい……」

歌鈴「……私の実家も実家でしたし」

朋「あー」

朋「……そういやさ、歌鈴ちゃんって教会入って大丈夫なの?」

朋「神社生まれだけど……」

歌鈴「あ、はい……大丈夫……だと思いますけど……」

歌鈴「そういう風に教えられたこともないし……」

歌鈴「……」

歌鈴「……大丈夫ですよね?」

朋「あたしに聞かれても」

歌鈴「うぅ……どど、どうしよう、急に不安になってきちゃいました……」

歌鈴「……朋ちゃんだけで行きますか?」

朋「いや、行きたいっていったのは歌鈴ちゃんでしょ?」

歌鈴「そうなんですけどぉ……!」

朋「……ごめんね、歌鈴ちゃん。変なこと聞いちゃった……」

歌鈴「いえ……むしろ、私ももっと気にするべきだったのかも……」

歌鈴「……うぅ……!」

????「……あの」

歌鈴「ひゃっ!?」

朋「きゃっ!?」

????「わっ……す、すいません」

????「門前で話し込んでいたものですから、気になってしまって」

朋「あ、いや。あたしたちこそごめんなさい」

歌鈴「はい……邪魔でし――あっ!」

歌鈴「Cさん!」

朋「えっ?」

????「あら、あなたは昨日の……」

????「まさか、こんなにも早く再開するとは……」

歌鈴「あっ、あのっ! Cさん!」

歌鈴「私、Cさんとお話したくって!」

????「私と……?」

????「……」

????「……では、立ち話ではなく、ゆっくり座ってお話しましょう」

????「中へどうぞ」

歌鈴「は、はいっ!」

朋(……この人がCさん……)
8 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 02:52:55.29 ID:FqcG0Fn80
????「こちらへおかけください」

歌鈴「は、はいっ!」

歌鈴「……わぁ……中もすっごい教会……」

朋「歌鈴ちゃん……」

????「それでは、改めて自己紹介させていただきましょう」

クラリス「私はC……改め、クラリスと申します。以後お見知りおきを」

歌鈴「よ、よろしくお願いしますっ!」

歌鈴「あっ、私は道明寺歌鈴と言います!」

朋「あたしは、藤居朋よ、よろしくね」

クラリス「歌鈴さんに……朋さん……」

クラリス「……ふふ、よろしくお願いしますわ」

歌鈴「はいっ!」

クラリス「それで……私とお話がしたいと話されていましたが……」

クラリス「……先日のことで何か聞きたいことでも?」

歌鈴「あ、えっと……その、何が聞きたいとか何が話したいとかはなくって……」

歌鈴「ただ……私と同じ力を持っていたみたいなので、少しお話がしてみたかったんです」

クラリス「歌鈴さんと同じ……?」

朋「……歌鈴ちゃんも除霊の力があるのよ」

クラリス「あら……そうなのですか?」

歌鈴「はい! こんな感じで……破ぁ!!!」

クラリス「まあ……!」
9 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 02:55:01.61 ID:FqcG0Fn80
クラリス「確かに私と同じ……あなたも除霊ができるのですね」

クラリス「……では、昨日はもしかしてお邪魔でしたか……?」

歌鈴「ああ、いえ。そんなことは!」

歌鈴「わ、私一人だと危なかったかもしれませんし……」

歌鈴「なのでっ、えっと、むしろ……ありがとうございますっ!」

クラリス「いえいえ」

クラリス「……そのような力をお持ちということは、、ここらの平和は歌鈴さんが守っていたのですね」

歌鈴「あ、いえ。私ではなく……お兄さんが……」

クラリス「まあ、ご兄弟が……?」

歌鈴「えっと……兄弟じゃないんですけど……でも、とっても頼れるお兄さんなんです!」

歌鈴「私よりもとっても強くてすっごいお兄さんが……」

クラリス「なるほど……」

朋「……寺生まれのTさんって、聞いたことない?」

クラリス「存じております」

クラリス「私の故郷にもその名声は届いておりました……あらゆるものを除霊してきた凄腕の除霊師がいると……」

歌鈴「そ、そんなすごいんですね、お兄さんって」

朋「あいつ全国で修行してたしね……」

クラリス「……もしや、歌鈴さんの言うお兄さんがTさんなのですか?」

歌鈴「はい……きっと、そのうわさと同じ」

クラリス「まあ……!」

クラリス「Tさんは実在していたのですね……!」

朋「UMAみたいな扱いね」
10 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:00:20.25 ID:FqcG0Fn80
クラリス「……こほん、失礼しました」

クラリス「Tさんには憧れていましたので……つい、興奮してしまいましたわ」

歌鈴「憧れ……」

クラリス「ええ」

クラリス「彼は、どのような妖でも、退けるほどの力を持っていると聞いていましたから」

クラリス「私もそのような力を、と常々憧れていました」

歌鈴「はわぁ……やっぱりすごいなぁ……」

クラリス「……Tさんを知る貴女たちからしても、やっぱり彼はすごいのですね」

朋「まあね」

朋「ずっとそばにいて、見てたから……あのうわさが誇張でもなんでもないこともわかるわ」

クラリス「そうなのですね……」

クラリス「……私は、Tさんのような力を持ちたい、と」

クラリス「Tさんのような力を持ちたかった、と常々思って鍛錬していました」

歌鈴「持ちたかった……ですか?」

クラリス「そう……」

クラリス「力があれば、あのような悲しみを持つこともありませんでしたから……」

朋「……」

歌鈴「……あの、聞いていいかわかりませんけど……何があったんですか?」

クラリス「単純な話です」

クラリス「だいぶ昔に、私の周りの者が、妖に襲われて亡くなったのです」

歌鈴「!」

クラリス「教会は荒らされ、食料は奪われ、人命は弄ばれ……」

クラリス「すべてがめちゃくちゃになりました」

クラリス「なにもかもが」

歌鈴「……ごめんなさい」

クラリス「昔の話です、気にしないでください」

クラリス「……あの時もう少し力があれば……と思わなかった日はありません」

クラリス「それと同時に、暴虐の限りを尽くす妖への憎しみを忘れた日もありません

クラリス「その悔しさ、憎しみをバネに今日まで鍛錬してきました」

クラリス「そして、これからも」
11 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:01:53.65 ID:FqcG0Fn80
歌鈴「じゃあ、クラリスさんは……復讐のために……」

クラリス「いえ、復讐はもう済みました」

朋「……そうなの?」

クラリス「はい。私たちを襲ったものは一人残らず、討伐しましたから」

クラリス「もちろん、その者たちだけでなく、故郷付近にいた妖はすべて」

朋「ずいぶん時間かかったでしょ、それ」

クラリス「えぇ、とても」

クラリス「……しかし、それによって故郷は平和になりました」

クラリス「もう私のように悲しむ人は誰もいないでしょう」

朋「……」

クラリス「教会も復興し、故郷には完全に平和が戻ってきたのです」

クラリス「人命を除いて、すべてが元通りになったのです」

朋「……平和ねぇ」

クラリス「なので、今度は故郷の外……世界のために、私は戦っているのです」

歌鈴「せっ、世界のために……!?」

クラリス「……なんて。ふふ、少し大げさすぎましたね……」

クラリス「本当は、手の届く範囲の妖を殲滅しているだけですわ」

朋「……」

クラリス「それを続けていけば、いつか妖はいなくなるでしょう」

クラリス「そして私のように妖のせいで大切な人を亡くす人も……」

歌鈴「……」

クラリス「だから、私は戦うのです」

クラリス「平和を求めて」

歌鈴「……そう、なんですか」
12 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:04:15.74 ID:FqcG0Fn80
歌鈴「殲滅……」

朋「……そのためにここに引っ越してきたってこと?」

クラリス「はい。近くに教会もあったので」

クラリス「……しかし、まさかTさんがいる町だとは思いませんでした」

クラリス「これなら私が来る必要もなかったのかもしれませんね」

歌鈴「……で、でもっ、クラリスさ――」

みく「――たのもーっ!」バンッ

歌鈴「ひゃっ!?」

クラリス「な、何事ですか……!?」

みく「あ! やっぱりいたっ!」

クラリス「!」

朋「げ……みくちゃんじゃない」

みく「『げ』って、何『げ』って!」

朋「いや、えーっと……どしたの?」

みく「散歩中に二人の気配を感じたから来ただけー」

みく「……で、来てみたんだけど。お邪魔だった?」

クラリス「……」

みく「……あんなに睨まれてるし」

クラリス「……」

朋「……やっぱそうなるわよね」

歌鈴「……ど、どうしたんですか、クラリスさん?」

クラリス「……あなたたちは、あの妖とどんな関係なのですか?」

みく「わっ、みくが妖怪だってわかるんだ」

朋「……仲間よ、仲間」

クラリス「仲間……?」

朋「そう、あたしたちのね」

クラリス「……」

朋「……そんな怖い顔しないでも大丈夫よ、クラリスさん。みくちゃんは悪い子じゃないし」
13 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:06:00.00 ID:FqcG0Fn80
クラリス「……悪い子じゃない、ですか?」

歌鈴「は、はいっ!」

歌鈴「もう人も襲いませんし……ねぇ?」

みく「やばい奴らに見られてるしね、もうしないよ」

みく「……ま、歌鈴ちゃんたちの害になるなら容赦はしないけどにゃ」

歌鈴「……」

クラリス「……二人はそれを信じているのですか?」

歌鈴「えっ?」

クラリス「あの妖の言葉を、あなたたちは信じているのですか?」

歌鈴「は、はい……信じてますけど……」

朋「実際ずっと一緒にいる仲間だしね」

朋「危ない子じゃないってことはあたしたちが保障するわ」

クラリス「そうですか……」

クラリス「なるほど、よくわかりました」

クラリス「……今すぐここから立ち去ってください、皆さん」

歌鈴「えっ!?」

クラリス「ここは聖なる場所……悪しき者が入るところではありません」

みく「だから、別にみく悪いことなんてしないってば」

クラリス「黙りなさい。妖風情が」

みく「……うぇ、感じ悪っ」
14 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:07:27.05 ID:FqcG0Fn80
クラリス「……そして、妖に絆されるような人間も、この場に立ち入る資格はありません」

クラリス「まして、妖と共に過ごし、妖を仲間と呼ぶなど……人の風上にも置けません」

クラリス「即刻立ち去りなさい」

歌鈴「絆される……って」

朋「……引き入れたのはクラリスさんじゃない」

クラリス「……そうですね。そこは私の失態でした」

クラリス「妖の臭いを感じ取れないとは……自分で自分が情けないですわ」

歌鈴「あ、あのっ、ほんとに! みくちゃんは悪い子じゃないんです!」

クラリス「帰りなさい」

歌鈴「でもっ!」

クラリス「帰りなさい」

歌鈴「……」

クラリス「帰りなさい」

みく「……いこいこ、歌鈴ちゃん」

みく「こんな奴と一緒にいたらこっちが腐っちゃうにゃ」

歌鈴「……うぅ」

クラリス「それは、こちらの台詞です」

クラリス「穢れた気質を、この場へ持ち込まないでください……二度と」

みく「言われなくても、二度とこないにゃ」

みく「べーっ!」スタスタ

クラリス「……あなたたち二人も」

歌鈴「……」

朋「……行こう、歌鈴ちゃん」

歌鈴「……はい」

クラリス「……」

クラリス「……残念です。あなたたちとは良き友になれると思ったのですが」

歌鈴「……」

歌鈴「あ、あのっ……!」

クラリス「……」

歌鈴「……」

歌鈴「……妖怪だって、悪い子ばかりじゃないんです、クラリスさん」

クラリス「……」

歌鈴「……また、来ますね」

クラリス「……ここは、悪しき者が立ち入る場所ではありません」

歌鈴「……」
15 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:09:03.96 ID:FqcG0Fn80
みく「はー……いらいらするー……!」

みく「なんなのにゃ、あいつ!」

朋「……クラリスさん。大切な人を妖怪のせいで亡くしてるみたいなの」

朋「だから……」

みく「あー、だから、みくが来たときの朋チャンあんな顔してたんだね……」

みく「……ちょっと傷ついてたんだよ?」

朋「クラリスさんの話を聞いてドンピシャのタイミングだったからね……ごめんね」

みく「別にいいけどー」

みく「……まあ、同情はできるけどさ」

みく「でもね、妖怪ってだけでひとくくりに見てほしくないにゃ」

朋「そうね……それができたらクラリスさんも楽だろうけど」

朋「……そう簡単に割り切れる人ばっかりじゃないのよ。どんなことでもね」

歌鈴「……」

朋「みくちゃんもわかるでしょ?」

みく「まあにゃ……みくもそれなりにお前らと付き合ってるし、人間も見てきたし」

みく「そりゃあ、気持ちもわかるよ?」

みく「でもね……うーん……」

みく「むー……!」

みく「……うー、でもやっぱムカツくにゃ!」

みく「みく! そんな臭くないし!」

朋「真っ先に気にするのはそこなのね」

歌鈴「……」

歌鈴「……クラリスさんも、みくちゃんみたいな優しい妖怪と一緒にすごしたら、割り切れるようになるのかな……」

みく「にゃふふ、優しいなんて……照れるにゃ……♪」

みく「……でも、あいつに近づける妖怪なんていなそうだけどにゃ」

みく「……っていうか、あいつなんなの?」

みく「みくのこともぱっと身で妖怪ってわかってたし……」

みく「……もしかして、今のみく、猫耳生えてる!?」

朋「いや、ぜんぜん」

みく「うにゃぁ……」

朋「えっと、クラリスさんはね――」

みく「――うぇ!? あいつもみくの天敵!?」

歌鈴「……」

歌鈴(……せっかく同じ力を持っているんだから)

歌鈴(やっぱり、仲良くなりたいな……)
16 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:09:57.66 ID:FqcG0Fn80
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歌鈴(……なんて思ってから一週間)

歌鈴(教会に行っても、門前払いされるだけ……ぜんぜん話なんか聞いてくれなくって)

歌鈴(……やっぱり、もう仲良くなれないのかな)

歌鈴(……)

歌鈴(朋さんに……ううん、こんなのは百発百中で占うことじゃない)

歌鈴(それに友達になるのに、変な力なんて使いたくないし……)

歌鈴(でも、ほとんど話してもくれなくって……)

歌鈴「……はぁ」

歌鈴(……あの時、みくちゃんが来なければ……)

歌鈴(……ううん、それも違う)

歌鈴(そもそもみくちゃんは何も悪くないし……)

歌鈴(きっと、いつか自分からこの話はしただろうし……)

歌鈴(だって、大切な仲間だから……)

歌鈴(……)

歌鈴(……やっぱり、無理なのかな)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……!)

歌鈴(また、何かの気配……!)

歌鈴(この前の怪物と同じ感じ……ううん、もっと大きい……)

歌鈴(……違う、いっぱい……?)

歌鈴(……)

歌鈴「……っとりあえずいかなきゃっ!」

歌鈴(また誰か襲われてるかもしれないし!)

歌鈴「はっ……はっ……!」タッタッ

歌鈴(……)

歌鈴(……もしかしたら、クラリスさん、いるかも)

歌鈴(……よしっ!)
17 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:10:42.24 ID:FqcG0Fn80
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クラリス(……邪なる気配を感じて来てみれば)

「――!」

クラリス(たくさんの妖が私を待ち構えていました)

「――!」

クラリス(何を言っているのかはわかりませんが、なにやら鬼気迫っている様子)

クラリス(姿形、そしてその気配からして。おそらく先日のものと同一種)

クラリス(……仇討ちといったところでしょうか)

クラリス(……願ったり叶ったりですね)

クラリス(私自ら探す手間が省けます)

クラリス(それに、広い平地で待っていてくれますから、誰かを巻き込む心配もありませんね)

クラリス(……ですから……あとは、ただやるだけ)

クラリス「……かかってきなさい」

クラリス「貴方たちのような悪しき者は私が――」

歌鈴「――クラリスさんっ!」

クラリス「!」

歌鈴「やっぱりいたっ! だっ、大丈夫ですか!?」

クラリス「……平気です」

歌鈴「はぁ……はぁ……間に合ってよかったぁ……」

歌鈴「ととっ! 加勢します、クラリスさん!」

クラリス「……結構です」

クラリス「貴女に手を貸され――」

歌鈴「――嫌って言われても加勢しますっ!」

歌鈴「こんなにいっぱいいるのに、放って帰るなんてできません!」

クラリス「……」
18 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:11:55.88 ID:FqcG0Fn80
「――!!」

クラリス「……来ますっ」

歌鈴「!」

クラリス「滅ッ!!!」

歌鈴「破ぁ!!!」

歌鈴(よしっ、今回は一発で――)

クラリス「止まらない!」

歌鈴「!」

クラリス「敵は郡です、一匹倒したからといって油断しない!」

歌鈴「はっ、はいっ!」

「――!!」

クラリス「滅ッ!!!」

歌鈴「破ぁ!!!」

歌鈴「はぁ、はぁ……本当にいっぱいですね」

クラリス「……加勢するといったのは貴女ですよ」

歌鈴「わ、わかってますっ!」

クラリス(……とはいえ、確かに多いのは事実)

クラリス(人気の少ない広場に連れ出してきましたから、巻き込む心配はありませんが…

…)

歌鈴「破ぁ!!!」

クラリス(……)

クラリス(……余計なことを考えるのはやめましょう)

クラリス(今は、ただ目の前の妖を)

クラリス(妖を、ただ滅するのみ――!)


………………

…………

……
19 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:12:45.12 ID:FqcG0Fn80
クラリス「滅ッ!!!」

クラリス(……どれくらい倒したでしょうか)

クラリス(あと、どのくらいでしょうか)

クラリス(……)

歌鈴「破ぁ!!!」

歌鈴「……わわっ!」クラッ

クラリス「!」

歌鈴「ふぅ……ま、まだまだっ!」

クラリス(歌鈴さんも、疲れてきている様子ですね)

クラリス(……無理もありませんか)

クラリス(しかし、どうしましょう……このままでは数に圧殺され――)

「――!!」

クラリス「――ッ!」

クラリス(考えさせる時間もくれませんか)

クラリス(なら、私も)

クラリス(考えず、ただ目の前の敵を――)

歌鈴「あっ、クラリスさんっ!」

歌鈴「後ろっ!」

クラリス「!」バッ

クラリス「しまっ――!」

「――!!」

クラリス「――」グッ
20 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:14:09.82 ID:FqcG0Fn80
クラリス「――」

クラリス「――」

クラリス「――?」

クラリス(衝撃が……攻撃が、来ない……?)

クラリス(何故……)

クラリス「……!」

みく「……にゃふふ、残念だったにゃ」

クラリス「あ、あなたは……!」

歌鈴「み、みくちゃんっ!」

みく「やっほー、助けに来たよー」

歌鈴「ど、どうしてここが……!?」

みく「そりゃあ、こんなドンパチやってたら嫌でも気づくにゃ」

みく「あ、もちろん、みく一人じゃないよ!」

モバP「破ぁ!!!」

歌鈴「あっ、お兄さん!」

クラリス(お兄さん……)

クラリス(ということは、この方が……)

朋「大丈夫!? 歌鈴ちゃん! クラリスさん!」

歌鈴「それに、朋さんも!」

歌鈴「わ、私は大丈夫ですっ!」

クラリス「……私も、大丈夫です」

朋「そう……よかった」
21 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:15:47.44 ID:FqcG0Fn80
モバP「よくがんばったな、歌鈴」

歌鈴「は、はいっ。がんばりました……」

歌鈴「はあぁ……あ、安心しちゃって、力が……」

モバP「お疲れ」

モバP「もう大丈夫だ。安心して、ゆっくり休んでいてくれ」

モバP「クラリスもな」

クラリス「!」

クラリス「私のことを知っているのですか……?」

モバP「少し前に歌鈴から聞いたんだ」

モバP「私たちと同じような力を使う人がいるってな」

クラリス「……そうですか」

モバP「……積もる話はいろいろあるだろうが……今は後だ」

モバP「離れて休んでいてくれ」

クラリス「……いえ、まだわたくしは」

みく「妖怪風情に助けられちゃうくらい疲れてるのに?」

クラリス「……」

みく「にゃっふふ。今のお前が戦ったところでただの足手まといなんだから、そこで見てにゃ」

モバP「口は悪いが、みくの言うとおりだ」

モバP「後は俺たちに任せろ」

クラリス「……」

クラリス「……わかりました。足手まといになるのなら」

クラリス「しかし……貴女に一つだけお尋ねしても?」

みく「みく?」

クラリス「はい」

みく「ん、手身近にお願いにゃ」

クラリス「……どうして私を助けたのですか?」

みく「お前を助けたつもりはないにゃ」

みく「みくはお前がどうなろうと知ったこっちゃないし」

みく「むしろみく個人としてはムカつくし、やられたほうが清々したかもにゃ」

クラリス「……」

みく「……でも、みくが興味なくても、歌鈴チャンはお前と友達になりたいって思ってる

んだって」

みく「……友達が傷ついたらみんな悲しむでしょ?」

みく「だから、みくはお前を助けたの……歌鈴チャンが悲しまないようにね」

クラリス「……」

みく「もういい?」

クラリス「……」

みく「……ふん」
22 : ◆6QdCQg5S.DlH [sage saga]:2017/08/05(土) 03:17:32.47 ID:FqcG0Fn80
みく「待たせたにゃ、Pチャン! みくはいつでも準備オッケーにゃ!」

モバP「そうか」

モバP「……それじゃあ行くぞ!」

みく「にゃあ!」

朋「……よし、じゃああたしたちも移動しましょう」

朋「ここだとまだ巻き込まれるかもしれないわ」

歌鈴「そうですね……はぁ……」

朋「……お疲れ様」

歌鈴「あはは……今までで一番がんばったかも……」

歌鈴「でも、私一人じゃなくてクラリスさんもいたからよかったです……」

クラリス「……」

歌鈴「……クラリスさん?」

クラリス「……あの妖怪は、何か弱味でも握られているのですか?」

朋「あの妖怪……って、みくちゃん?」

クラリス「はい」

クラリス「自らの思いを押し込めてまで、人のことを考える妖など、信じられません」

朋「弱味ねぇ……」

歌鈴「……あ、魚が苦手なこととか?」

朋「それは弱味に入るのかしら……」

クラリス「……」

朋「……まじめに答えるとね。クラリスさんの思ってるようなことは一切ないわ」

朋「弱味を握ったり、洗脳したり……」

朋「みくちゃんを操って無理やり守らせるようなことはしてないわ」

クラリス「……」

クラリス「……ならば、どうしてあの妖怪はあそこまで――」

歌鈴「――だって、私たちは友達で、仲間ですから」

歌鈴「……きっと、みくちゃんもそういうと思いますよ」

みく「もちろんにゃぁっ!」

歌鈴「……聞こえてたんですね」

みく「へへんっ! 猫の耳はすごいの……にゃあっ!?」

朋「ちょっと、危ないわよみくちゃん!}

モバP「もう少しだから集中しろ、みく!」

みく「にゃはは、ごめんごめん!」

みく「ま、こんな数を集めただけの奴らなんか余裕だけどにゃ」
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