【安価】 ガンダムビルドファイターズトライ・アズールU【艦これ×GBF-T】

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571 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/29(金) 03:08:08.91 ID:LCnx5wdy0
海風「これで、14!」


白く塗装されたアッシマーの頭部を右脚のハンター・エッジで蹴り壊しその回転の勢いを乗せて左腕のバエル・ソードで胴体を両断する。

呼吸を整え次の相手に備える海風。既に多数の敵を倒してきた疲労はあるがまだ戦える、と海風は自分の状況を判断した。



フェリーニ「やるねぇ… 出れたなら戦ってみたかったんだがなぁ…」

時雨「能力は間違いなく前より上がってるね。 正面きっての戦闘なら浜風に並べるんじゃないかな」

浜風「寧ろ私の近接戦が不得手な分海風の方が優位かもしれません。それに戦闘経験を重ねて指揮能力もこちらに並びつつある…」

夕雲「ただ間合いさえ詰めさせなければ浜風さんの優位は覆りません」

春雨「問題は『予測』の力… どんな攻撃もあの娘は容易に予測して躱せてしまいます、はい」

フェリーニ「予測でも限界はあるだろ」

浜風「それが海風の場合、無いんです。どんな戦況でも動作でも瞬時に予測して最適解通りに動ける、それが海風がチームでも神通さんと霞さんと言うエース級に並べる理由の一つでもある…

予測自体は誰でも出来ること、ですが海風の場合にはそれが並のコンピュータをも凌いでいるんで限りなく事象に近い予測を打ち立てることが出来るんです」

時雨「簡単に言えば人の思い通りに操れるゼロシステムが頭の中にある状態と同じなんだよ、彼女の場合」

フェリーニ「すげぇな、それは…」

春雨「疑わしいですが、本当のことなんです。はい」

夕雲「それに精神力だけで言えば夕雲達すら軽く凌げますから…」



海風「はぁ… 一体あと何人来るのやら…」

『海風選手、順当に14人を軽く撃破! 次の挑戦者が中々現れません! これは彼女の優勝か!?』

海風「むしろそっちの方が良いんですけど。いい加減疲れました」

『そうは言わずに… おっと、15人目が来たぞ! これで勝ち抜けば、優勝だぞ!』

海風「ラストバトル… 景品はちょっと要りませんが、勝たせていただきます…!」



対戦相手 直下
1.ミスター・ブシドー
2.フリオ・レナート
3.その他(名前も)
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/29(金) 04:47:15.90 ID:0GcU1OvkO
2
573 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/30(土) 06:42:35.48 ID:2wPwbqi/0
「ケッ… どんなヤツが戦ってるのかと思えば、まさかあのクソガキの妹とはな…!」

海風「あの機体、どこかで…?」

海風(ジェガンの改修機、それにミリタリー色が強い… 確か世界大会出場ファイターにそんなタイプのファイターが居た筈ですが…)


夕雲「あの機体… 『ゴーストジェガンF』…!」

時雨「レナート兄弟の…」

浜風「フリオ・レナート、それに兄のマリオ・レナートもサブで…!」

春雨「流石に世界選手権のファイター相手は分が…」

フェリーニ「アイツ、子供相手に何ムキになってやがる…!」


マリオ『フリオ、所詮は子供だ。叩き潰せ』

フリオ「了解だぜ兄貴!」

『おーっと! ここで登場したのはアルゼンチン代表・レナート兄弟! 浜風選手に煮え湯を幾度と無く飲まされた恨みを晴らすつもりだろうか!?』

海風「うわ、ちいさ…」

フリオ「うるせぇ! テメェみてぇなガキに、本物のバトルってやつを教えてやるよ!」

海風(行動予測開始。敵の武装から機体特性を狙撃型と断定、ただし過去データから何らかの『仕込み』を行っている可能性を考慮。

フィールドは宇宙、その場合のこちらの最適行動を推定、この場合は… 隙を与える暇なく、近接戦を仕掛ける事!)

海風「そのガキに倒される屈辱、味わって貰います!」


ライフルを投棄し両手でバエル・ソードを抜き放ちつつ加速し距離を詰め、狙撃による迎撃も海風は瞬時に射線を予測し掻い潜る。

ここまでが海風が導き出した『勝利への最低限の道筋』、まず自分が有利なフィールドに持ち込むことが最低条件なのだ。


フリオ「コイツ、俺の狙撃を…!」

海風「間合いは詰めた、あとは!」


翼に内蔵されたレールガンを連射しジェガンの逃げ道を塞ぐ海風、そしてソードの間合いに入ると海風は右腕のソードで斬撃を放ち狙撃用のライフルを破壊する。

フリオも左腕でバックパックからヒート・ナイフを抜きバエルに突き立てようとするがバエルの左脚部に装備されたハンターエッジで防ぎ、ナイフを蹴り飛ばす。


フェリーニ「おぉ、アイツもう二つも武器を封じやがった!」

時雨「師匠、と言うか先生があの瑞鳳だからね。近接戦は得意分野なんだろうさ」

春雨「予測も使った状態でイーブンに持ち込んでいますが…」

夕雲「あの機体、ゴーストジェガンFには…」

浜風「…どうやらフォローに入る必要性があるかもしれません」
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 06:48:36.43 ID:TVJc3Fme0
愛梨「さあ行こう、空の果 てへ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1519427437/
久美子「永遠のレイ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520033314/
伊織「誰が魔王サーの姫 よ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520637298/
エミリー「修正…悪しき文 化ですね」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521241832/
奈緒「何で関西弁=恐竜やねん!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521850482/
常務「新制限を全て撤回。 白紙に戻す」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1522451692/
千夏「このTGはテックジーナスじゃないの?」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523058431/
礼子「大人の魅力で破滅さ せてあげる」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523661962/
フレデリカ「恋人は校庭のパラディオンだよー」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1524265978/
海美「竜騎士の結束を見せちゃうよ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1524871125/
志保「茶運びといえばカラクリだよね!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1525475657/
茜「みんなで勝鬨を上げちゃおう!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526133608/
桃子「この金の城いい踏み台だね!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526686132/
美紗希「化学反応式も女子力よ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527292985/
小鳥「アリガトウワタシノデッキ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527896333/
柚「狩らせてもらうよ。キサマのぴにゃンバーズ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528498815/
加奈「ダストンの掃除法をメモしておきますね!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529105813/
さくら「えぇっ?!3分って1ターンなのぉ?!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529710563/
575 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/30(土) 07:21:50.94 ID:2wPwbqi/0
分が悪いと悟り後退を試みるジェガン、それを海風はワイヤークローを射出し左脚を拘束することで防ぐ。

一見すれば有利なのは海風、だが海風の脳内で警鐘が鳴り響いていた。


海風(これは上手く行き過ぎてる… 何か『仕込み』を…!)

フリオ「今だぜ兄貴!」

海風「っ…!」


クローを機体から切り離し咄嗟に機体を真横に逸らす。そして次の瞬間、バエルの居た場所をビームが通過する。

海風がビームの発射位置を見るとそこにはもう1機のジェガン、緑色に塗装された『ゴーストジェガンM』の姿があった。


マリオ「あの状況で避けたか…」

海風「もう1機居そうとは考えましたが… 子供相手に2対1とは良心の呵責も無いんですか?」

マリオ「黙れ。フリオ、こちらで追い詰める。お前が仕留めろ」

フリオ「了解だぜ兄貴!」


『なんと、ここでマリオ・レナート選手も乱入!絶体絶命のピンチだ!』


フェリーニ「アイツら、大人気ねぇってレベルじゃねぇぞ…」

夕雲「ほぼ八つ当たりじゃないですか…」

浜風「…」コソコソ

春雨「何する気ですか」

浜風「うっ… 少し助けに行こうかな、と…」

時雨「キミが行っても神経を逆撫でするだけだと思うよ」

浜風「し、しかし…」

春雨「それに機体、準決勝で使って整備中だって聞いてますが」

浜風「一応別の機体もありますから…」

時雨「それでも、だ。 フォローをするなら…」



海風は追い込まれていた。 全部が手詰まりになってる訳ではない、しかし今の状況では勝ちを取りに行くのは困難だろう。

今隠れているデブリでさえいつ見つかるかも分からない。その状況で手札を整えなおすには時間が足りていない。


マリオ「見つけたぞ。 落ちろ」

海風「意外と索敵も早かった…!」


軽口を叩きながらも狙撃をデブリを盾にしつつ回避し距離を取ろうとする。これが自分にとっての最悪手であるのは理解している、しかしこれしか手がないのだ。

下手に前に出ればマリオだけではなくフリオとも戦わなければならなくなる。 完全な2対1だけは避けたい、そんな時に一条のビームがゴーストジェガンMに放たれ、機体を掠める。


マリオ「何!?」

海風「一体誰が…」



増援 直下
1.夕雲
2.春雨
3.時雨
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 07:52:47.69 ID:9cSgFX7I0
3
577 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/01(日) 07:14:40.41 ID:2am8f/y40
時雨「僕、基本的に支援される側なんだけど… 今回ばかりは仕方ないからする側に回るよ」

海風「し、時雨さん!?」

マリオ「コイツ、2年前の…!」

時雨「あれからちょっとは成長してるけど、意外に憶えられてるものだね。

マリオ・レナート、キミの目の上のタンコブの妹だからってやり過ぎだし、フェアじゃない。ただの八つ当たりだ」

マリオ「貴様…!」

時雨「だからこれで2対2、文句あるならボクを倒してみなよ。 キミが自分を卑怯じゃ無いって言うなら僕だって卑怯じゃないんだから」

マリオ「くっ…!舐めるなよ、ガキが二人になったところで…!」

時雨「それは3下の吐く台詞だ。 子供だって侮辱して足元3度も掬われてるのをいい加減学習すれば?

海風、で良いんだよね? キミの好きなように動いて良いよ。 僕がフォローするから」


『おーっと、海風選手側に味方だ! 彼女は確か… 第7回優勝ファイターの時雨選手か!?

元チャンピオンが新型を引っさげて公に帰って来たぞ! これは来年への布石か!?』


海風「その機体は…」

時雨「『リボーンズガンダムヘヴィレイン』、春雨用の機体の試作機の一つさ。見た目砲撃型だけど近接戦もやれるから大丈夫」


味方参戦

リボーンズガンダムヘヴィレイン(時雨)
武装
・大型ビームサーベル×2
・GNハンドガン×2
・GNバトルシールド×2
・腰部直結式GNバスターライフル×2
・GNバスターキャノン/GNフィンファング×2
・エグナーウィップ×2
・RG-TRANS-AM

概要
『リボーンズガンダム』の改修機で春雨が『新たな自機』を作るために製作した試作機体の1機であり、それを時雨が気に入り予備機体として実戦仕様にされて譲り受けたもの。
去年異世界で発生した『東京湾沖空戦』『第一次宙間戦役』において実機2機が確認された『リボーンズガンダム』(内1機はオリジン仕様)の回収された残骸及び台場研究所地下で保管されている『1.5ガンダム』実機の技術を取り入れた。
それ以外にも瑞鳳が『別の異世界(ガンプラ学園勢と戦った世界)』で見かけたらしい『リバーシブルガンダム』と言うガンプラの話を聞き、参考にしている。
原型機からの変更点は腰部にV.S.B.Rのように発射することが出来る『GNバスターライフル』を追加、背部は『リバーシブルガンダム』のものを参考にタンク形態への変形機構を取り除いたものに、武装はクローアームを外したシールドとハンドガンに変更された。
そしてRGシステムも搭載されているがこちらはトランザムと連動し、さらに機体出力を向上可能な『RG-TRANS-AM』へと変更、発動時の性能はトランザムの三倍とRGシステム(ベースはtype-Z)の2.5倍を乗算した7.5倍となる。
ただし過負荷が大き過ぎるため発動時には制限時間は30秒、使用後はオーバーホールが必須。もし1秒でも超過した場合周囲(最小のバトルシステムと同規模程度)を巻き込んで大爆発を引き起こし木っ端微塵に吹き飛ぶ、とのこと(何故そうなるかを知っているかと言うと春雨は別の試作機で一度やらかした、との時雨談。翔鶴にこっ酷く怒られたらしい)。
塗装は時雨のビギナにあわせて白がベースで『リバーシブルガンダム』のクリーム色部分がクリアパーツ化されてブルーになっている。
因みに本機には『前面に火力が集中し過ぎてキャノン形態に変形する必要がなくなってしまった』と言う本末転倒な難点?が存在しており、改良しているのだか改悪になっているのか分からなくなりそれが原因でお蔵入りしかけた、とのこと。
さらに余談中の余談だが参考にした『リボーンズガンダム』の残骸はオリジンが『台場研究所』の地下で修復し保管、ツインドライヴ型は修復後『ハシラジマ』にて厳重に封印されている。
特にツインドライヴ型はあちら側に現出した『ディメンション・インベーダー』の元首魁の機体でありその旨が公表されているらしく『あちら側』での運用は不可能、とのこと。


フリオ「兄貴、ヤバイぜコイツは…!」

マリオ「ああ。 少しばかり分が悪くなってきたな…!」

時雨「行くよ…! 海風、キミに指示は任せるから!」

海風「了解! 行きます!」
578 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/03(火) 04:31:54.35 ID:/+mFa05C0
海風「脇腹が、がら空きです!」

マリオ「ガキが! しつこいんだよ!」


ジェガンMの左脇腹に右腕のソードで斬撃を加えるバエル、しかし斬撃こそ直撃したもののダメージが通らず、逆にマリオの反撃によりバエルは吹き飛ばされ姿勢を崩す。

だがタダでは海風は転ばない。姿勢を整えつつ関節部の隙間を目がけてソードを投擲しジェガンMの右腕のジョイントを破壊する。


海風「とった…!」

マリオ「くっ…! フリオ!」


咄嗟に支援を要求するマリオ、だが支援が行われる様子は無い。 そして気付く、既にフリオ側の戦闘の光が消えていたことに。

代わりに届いたのは四条の大出力ビーム砲撃、その一撃は時雨のリボーンズガンダムから放たれていたものだった。


フリオ「く、糞っ…!すまねぇ、兄貴…!」

時雨「残念だったね。 僕が命令されたのは邪魔な1機の排除、これで良いんでしょ?」

海風「ありがとうございます! これで勝ちに一手近付きました!」



フェリーニ「アイツ、弟の方フルボッコにしてたよな…」

浜風「夕雲と同等か少し上の技量を持ってる時雨なら当然でしょう。策で優位な立場を作れなければ単体での技量が戦局を左右しますから」

夕雲「それにリボーンズの性能も恐らくジェガンより上であったのも大きいかと」

春雨「あれただの試作機なんですけど…」

浜風「そう言えばアレも新技術の試験機、でしたっけ?」

春雨「海風さんのアズライトの兄弟機、に相当する機体です、はい。 コンセプトは異なるシステムの共存、お陰で性能をシステム発動時には性能を7.5倍まであげられました、はい」

夕雲「ですが本採用ではない、ということは… 例の如く、トンデモ欠陥をお持ちと」

春雨「えっと… 使用制限時間を1秒でも超過するとフレームが内蔵粒子ごと大爆発、弾け飛んだパーツがガラスを粉砕する威力を…」

フェリーニ「一歩間違えたら殺人兵器じゃねぇか!?」

浜風「いつも春雨は瑞鳳さん以上に変なモノを作って… 大体アズライトだって完全制御できたらできたで想像以上に危険な代物だと判明してるし…」

浜風(春雨は想像力こそ瑞鳳さんを上回ってるけど… 問題は技術に安定性が不足していることでしょう。強力なものが多い分、危険を伴いすぎるのが…)



マリオ「まさか、こんな子供に使わされるとはな…!」

海風「機体から蒼い炎、ナイトロ…?」

マリオ「そうだ! 悪いがこちらにも意地があるのでな!」

海風「海風だって負けたくはありません! どんな相手だろうと!」


ナイトロを発動したジェガンを相手にバエルのリミッターを解除する海風。ツインアイが真紅に染まったバエルが蒼き炎を纏うジェガンへと突撃する。

そのまま2機は激突し、バエルが左腕のソードから放った斬撃とジェガンのナイフがぶつかり火花を散らした。
579 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/11(水) 22:58:05.68 ID:+G416FXz0
海風は右腕のシールドクローを射出しジェガンMの左腕を絡め取って封じる。既に左腕は海風がジョイント部を的確に破壊したことで装備しなおす事は出来なくなっていた。

そのまま海風はジェガンを引き寄せてデブリへと叩き付け、左腕のソードで斬撃を放つ。


海風「これで、両腕は使えません!」

マリオ「まさか、アイツの妹にまで…!?」


斬撃がジェガンMの左肘関節の部品を破壊したことで武装を使用することが出来なくなったゴースト・ジェガンM。

そして海風は右手のソードの先をゴースト・ジェガンMの胸部へと突き立て機能を奪い、戦闘不能に追い込んだ。


海風「ふぅ… 人を侮るから、こうなるんです」

時雨「終わった?」

海風「今終わりましたよ… 疲れました…」


『な、なんと海風選手!世界大会出場選手すら下し、優勝を勝ち取った!』

ワァァァァァァァ



フリオ「あ、アニキ…」

マリオ「まさか、世界選手権にも出場出来ない子供にまで…!」

海風「…正直『アズライト』の無い状況で、時雨さんが割って入ってくれなければこちらの勝ちは薄かったでしょう。

こちらも全力で、ようやく貴方達に届かせることが出来たんです」

フリオ「皮肉のつもりかよ…!」

海風「いえ。ただアレと一緒にされては困るので少し弁解をと… 海風も貴方達の戦い方に見習うべき点も多かったと思います。

伏兵の使い方や索敵、作戦の立案などは貴方方の方が上回っていたでしょうから」

マリオ「…次は容赦しないぞ」

海風「ええ、その時はこちらの『最強』を以って迎え撃ちます」




夕雲「で、優勝のガンプラどうします?」

海風「霞の家に宅配するよう手配しました」

時雨「流石に送料は向こうが持ってくれるみたいだし」

春雨「キットは確認しましたが… 嫌がらせの様なラインナップでしたね…」

浜風「案の定HGしかないしSEEDの時期のキットが多かったですし…」

フェリーニ「前よりラインナップ悪化してるな…」
580 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/11(水) 23:44:40.29 ID:+G416FXz0
海風(その後も見回りをしたが成果はなし、と言うかあってたまるか、なんですけど…)

時雨「じゃあ今日の分は終わり、だね」

春雨「お疲れ様でした、はい」

海風「なんか丸一日振り回されたような気がします…」

夕雲「実際そうでしたね。 バトルさせられたりガンプラ作らされたり」

浜風「明日までの辛抱ですから…」

海風「えぇ… 明日も…」

時雨「このあと蒼龍達が合流するって言っても人手不足が解消される訳じゃ無いから」

春雨「こういう時に瑞鳳さん達が不在なんですから…」

浜風「自分の娘で後継者の神通さんを鍛えなおしに、一番キャリアーを引き寄せ易い霞さんは大鯨さんが修業に拉致しましたからね」

海風「霞の事をゴキブリホイホイみたいに言うのやめてください。霞だってなりたくてなっている訳ではないんです」

浜風「分かっています。 彼女だって、本来は巻き込まれなくて良い筈だったのに…」

夕雲「その事態を早く終わらせるのが夕雲達のやるべき事ですよ、浜風さん。 そうしないと、夕雲達に未来が来るかは…」

春雨「夕雲… 焦ってますか?」

夕雲「ええ、少しだけ… 自分が死ぬ、なんて聞かされて落ち着いていられるほうがおかしいんです…」

時雨「だけど焦りすぎも禁物だ。 それが死を招くかもしれないんだ」

夕雲「分かっていますが…」

海風(夕雲さんは確か瑞鳳さんの遠縁、だけどメンタルや育ちは一般人のソレに近い… 瑞鳳さんや飛龍さん達と比べて、焦るのも当然ですね…)

浜風「私だって死ぬのは嫌です。 だからこそ今を必死に抗う、それが今私達に出来ること。 そうですね、海風」

海風「そして自分の道を、未来を創るために戦う。 海風も、そう決めました」

春雨(夕雲はメンタルが一般寄り過ぎなのは理解できますが何故この姉妹はメンタルが常軌を逸してるんですかね?

瑞鳳さんとも血縁も何もないのに心がタフネス過ぎるというか…)

時雨(それはキミの言える立場じゃ無い、春雨)


イベント選択 直下
1.春雨『空っぽの少女』
2.神通『宝石と花』
3.霞『変わってくもの、変わらないもの』
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/12(木) 04:48:16.80 ID:MN6t7KjUO
3
582 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/14(土) 02:35:29.31 ID:DlSYb5tL0
side-霞-『変わってくもの、変わらないもの』


《富士山麓 別荘》

霞「ふぅ…」

大鯨「どう? 変化はあった?」

霞「少しだけ感覚が鋭くなったよな、周りをよく感じられるような気がします。前とメニューは変わってないのに効果が違って…」

大鯨「それは余計な心配事がなくなってより集中出来ているから、よ」

霞「余計な心配事?」

大鯨「前の時、全然集中出来てなかったでしょ。 海風ちゃんを気にしすぎて」

霞「海風を…? 確かに、暴走が起きて落ち込んでたから気にかけていましたが…」

大鯨「だから今回あの子を連れて来なかったの。 それに自分の力の本質を知って、使いこなすだけの強い心を持てばもうあの子に修業は必要ないわ。

だけど霞ちゃんはまだまだ未熟、『ニュータイプ』に変わることを恐れてる節があるし」

霞「…本当に、変わらなきゃいけないんですか? この力のせいで私は…」

大鯨「無理に変わる必要は無いわ。そもそも無理矢理変わることを『変革』とは呼べ無いもの。

だけどその力は… きっとあの日、命を理不尽に奪われた人達の願い、受け継がれた想いの力なんだと思う」

霞「受け継がれた想いの力… だけど、変わっていけばいずれ自分が自分でなくなるような…」

大鯨「それを海風ちゃんは乗り越えられた。 自分のためじゃなくて『誰か』のために」

霞「『誰か』のために…」

大鯨「どうして海風ちゃんは戦うのかって私は聞いた。 『皆の笑顔を取り戻したい』、それがあの子の原動力。

だけどそこに自分を勘定に含めてないことに気付く余裕が無かった、それが暴走の原因であって私が前にあの子が危ういって言った理由」

霞「海風がそんな事を…」

大鯨「貴女はどうして戦うの? 海風ちゃんと同じ様に逃げる選択肢があっても選ばず、立ち向かうことを選んだのでしょう?」

霞「私は… 海風が居てくれたから… 海風が私を信じてくれたから、一緒に戦うって決めたんです」

大鯨「ならその気持ちを、想いを失くさなければ貴女は貴女のままよ。どれだけ肉体や能力が変化してもその人次第、心の在り方次第なの。

霞ちゃんの海風ちゃんへの想い、それだけあれば貴女は貴女のままだから」

霞「大鯨さん…」

大鯨「人は変わってく。 時や環境が否応なく人を変えてしまう時だってある。

だけど変わらないものもあって、そこを貫き通せるかどうかは全部その人次第。想いや意地を通せるかは心の強さで決まるわ」

霞「私の心の強さ…」

大鯨「そしてガンプラも、貴女の想い次第で強さが決まる。 『ブラストアクロスZZ』について少し如月ちゃんにテストして貰ったの。

感応波を持たないテストファイターでは起こりえない事象、『アズライト』『フルブルーム』同様に機体と人間の同調現象が起きた」

霞「それって、瑞鳳さんの意図してない現象ってことですか…?」

大鯨「恐らくね。 高濃度の圧縮粒子は結晶と同等の純度を得る。『アズライト』はコアを3つ積載したこととフレーム能力の粒子貯蔵による影響、『フルブルーム』は閾値として設定された明鏡止水の心への反応…

『アクロス』は恐らく感応波の強さで能力が変動する。 まだ誰も解らない未知数の領域、正直かなり危険だと思う。 それを使うか、そして使いこなせるかは貴女次第よ」


イベント選択 直下
1.春雨『空っぽの少女』
2.神通『花と宝石』
3.榛名『決意と訣別』
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 09:17:40.35 ID:a9YZQmfy0
2で
584 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/15(日) 02:57:05.96 ID:0A/gDklZ0
side-神通-『花と宝石』


《海岸》


神通「はぁぁぁぁぁぁっ!」ブォン

瑞鳳「拳に力が乗ってる、けど!」ブォン

ドゴォ

神通「きゃぁぁぁぁぁっ!?」

瑞鳳「一撃の重さは私の方が上だよ」

萩風「お母様に一本。 これで5-0ですね」

瑞鳳「はい、今日はここまで。 感覚は取り戻せた?」

神通「ようやく9割、と言ったところでしょうか。 組手が出来る人が居なかったからどうにも実戦不足で…」

瑞鳳「萩風ちゃんとやれば良かったじゃん」

萩風「真正面からやったら私がミンチです」

瑞鳳「そこまでパワー差あったんだ…」

萩風「一撃のパワーはお母様が強制波動装甲を突き破れるクラス、姉さんが通電したPS装甲を壊せるクラス、私は頑張ってアストレイ用発砲金属を貫けるクラスです」

瑞鳳「うわ、ランク差が酷い」

神通「しかもお母様に関してはクラインフィールドすら破って装甲も破壊できますからね」

萩風「単純なパワー差もありますが戦闘スタイルの違いもありますし… 少なくとも私は姉さんやお母様とは相性が最悪なんです」

瑞鳳「そりゃ仕方ないか… でもまさか神通ちゃん側から訓練の要請があるなんてね」

神通「時間が無い中申し訳ありません…」

瑞鳳「春雨ちゃんも呼んだから手は足りてるし一番のネックだったアズライトの整備も終わったから後は大丈夫だよ」

萩風「バーストに関する調整も、ですか?」

瑞鳳「流石にバーストまでは無理。 『アズライトバースト』のリミッターは海風ちゃん自身になってもらうしかない。

浜風ちゃんの『ウイングガンダムゼロクロイツ』に搭載したアズライトのフレームと互換性を持つ『RGフレームW型』への換装も考えたけど…」

萩風「あのフレームは危険過ぎます。従来型粒子のシステムでも暴走の危険を孕んでいる以上、破棄すべきです。

海風さんの心が暴走しないとも限らない、また理性の暴走を引き起こす可能性だって…」

神通「いえ、海風さんならきっと… 彼女なら絶対にあの力を正しい方向に使ってくれる筈です」

萩風「どうしてそこまで断言出来るんですか」

神通「彼女を初めからずっと見てきたからです。 誰かの力になろうとして、誰かのために戦って、そして彼女は折れそうになっていた私の中に希望を創ってくれた…

だからこそ私が剣を預けるに相応しい人間だと、信じるに値する人間だと確信が持てました」

瑞鳳「萩風ちゃんだってあの子の指示に従って戦ってる。 それは心からあの子を信じてないと出来ない事じゃない?」

萩風「確かに彼女への信頼はありますが、それとこれとは別問題で…」

瑞鳳「大丈夫だよ。 あの子を信じてくれる人が居る限り、あの子の心は暴走しない筈だから」

神通「だから私も… 海風さんの期待に応えられる『先輩』でありたいから…」

萩風「姉さんまで… 何と言うか、海風さんは好かれ易いと言うか…」

瑞鳳「行動が身に返ってきてるだけだよ。 重ねた今までの結果があの子の信頼に繋がってる。 その点は見習わないとね」

萩風「い、痛いところを…」

神通(海風さん… 私を助け、そして一緒に立ち向かってくれる人。 だからこそ私は彼女を護りたい…

彼女が私を信じて折れない限り、私も一緒に立ち向かいますから)
585 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/15(日) 04:28:08.73 ID:0A/gDklZ0
side-海風-『にせものの空と』



戦術の構築に煮詰まって外に空気を吸いに出て、たった一人で夜空を見上げる。 

夏の夜空に浮かぶ満点の星は綺麗で、その一つ一つがまるで宝石みたいだと思う。


海風(だけど、『空』はやっぱり偽物だ)


未だに海風自身、目に映る『空』が全部偽物で虚ろに思えてしまう。 未だ『本物の空』は見えない、それはあの地獄の日々を抜けても変わらなかった。

だけどようやく気付けたことがあった。 目に映る『空』とは自分の心を映す鏡なのではないのか、と。


海風(だから虚ろだったんだ。 海風自身が空っぽだっただから)


海風が何も持っていなかったから。夢も目標も何も無くて、鬱屈としていた日々をただ抜け出したいとだけ考えていただけで主体性など何も無い。

自分自身、世界に対して色や価値を見出せなかった。宝石だって誰かが価値を見出さないとただの石ころと同じで、きっと海風は自分の人生に価値を見出せなかったのだと思う。


海風「だけど…」


今はどうだろう。 誰かに価値を見出して貰って、その人たちと一緒に今まで戦ってきて自身に価値を見出せたのだろうか。

その答えは未だ自分の中で見つかっていない。だからまだ『空』は偽物だ。


海風「いつか届くかな、本物の『空』に…」


そう呟いて手を伸ばす。 同年齢の平均身長より少し大きいか小さいくらいの身長の人間の手で空に手が届く訳が無い。

ガンダム、特に自分の使うガンプラの原型機の『ウイングガンダムゼロ』にでも乗れば届くだろうが生身ではまず無理。


海風(だけどもう少し進んだ先なら、届くかもしれない)


そこにいつ辿り着けるかなんて分からない。 もうすぐかもしれないしまだまだずっと先かもしれない。

能力を使っての予測でも答えは出てこなかった。当然だろう、だってその答えを出すのは自分自身なのだから。


海風(一人で届かなくても… 今の海風には仲間が居るから)


神通先輩と霞、二人と出会ってチームを結成していなければ今ここに居る海風は居なかっただろう。

朝雲さんと天津風さん、萩風さんと言うチームメイトに恵まれなければここまで辿りつけなかった。瑞鳳さんや愛宕先生のような人に会わねば今のようにはならなかった。


海風(どこぞの誰かはゴミ箱にポイ… は流石に出来ないか)


アレが『ウイングガンダム・フレスヴェルグ』を贈ってこなければ海風の愛機の今は無かったし本格的にガンプラへと身を投じもしなかった筈だ。

アレへの感情は… 微妙。ガンプラバトルと言う道をくれた事に感謝はしているがそもそも置いていかれた恨みは決して浅いものではないから。なので色々保留。


海風(他にも、いろんな人に出会って…)


蒼龍さんや飛龍さんと言った周囲の大人達、榛名さんを始めとした宮城県民の一同。 そして海風に初めて負けた、と敗北感を味あわせたキジマさんなど色々な人に出会って…

そして色んな悲劇もあった。スドウ・シュンスケの転落、バビロニアの虐殺、そして始まりの事件。それらは海風が戦う決意をするのに充分な理由になった。


海風(だからこそここに居る。海風が信じた明日を、この手で創るために。 その想いは、胸の鼓動は、本物だから)


何度傷付いても、何度奪われても、絶対にこの気持ちは消せない。 芽生えた想いは幻なんかじゃない。

いつか心から笑える日々を、夢見た未来を諦めないために。 
586 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/16(月) 01:56:15.88 ID:DdH/xnBz0
《翌朝》


海風(さて、今日こそ戦術を…)

浜風『海風、居るのは分かっています。出てきなさい』

海風「またか… またですか…! こうなったら…」



天津風「何で私まで…」

朝雲「暑っ… アイスぐらい驕ってよね、暑いんだから」

海風「驕らせます!コレに!」

浜風「まさかドア蹴破って二人も無理矢理つれてくるなんて…」

海風「失敬な。蹴破ってはいません。 戦術の相談と偽って開けさせて拉致りました」

時雨「より悪質じゃないかな」

海風「自分だけ参加で二人が涼しいところでのうのうとするなんて許せませんからね… 死なば諸共です」

夕雲「い、妹さんって随分と過激な子で…」

海風「文句なら性格歪ませた不倫大好きクソ両親と目の前の元凶に言ってください」

春雨「寧ろなんで不良一直線に向かわなかったのかが不思議ですね、はい」

海風「だって一度グレて非行に走ったら人生お終いお先真っ暗じゃないですか。 だから名門に入って勝ち上がって見返して心の底から叩きのめしてやろう、って思っただけです」

飛龍「蒼龍見てよ、これが5ヶ月くらい前まで小学校に居た人間の台詞だよ?」

蒼龍「普通はこうはならないでしょ…」

海風「こうなる要因を作った人間が目の前に居るので文句はそちらにどうぞ」

浜風「すいません、妹が…!」

天津風「聞いてる限りじゃ納得よね、海風がこうなるのも…」

朝雲「恵まれてる家庭環境で本当良かったわ…」


イベント 直下

天津風「」
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/17(火) 13:27:33.43 ID:yEZs/+0JO
両親襲来
588 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/18(水) 03:31:20.26 ID:sUFK74Uq0
海風「…」チョイチョイ

浜風「? 何ですか海…」

海風「!」ビシッ

浜風「…!?」

蒼龍「二人共、どうかした?」

海風「少しばかりお暇させて頂きます」

浜風「その、何と言うか見つかりたく無い相手が…」

「ようやく見つけたぞ…!」

「貴女達、何やってるの!」

海風「うげ…」

飛龍「噂をすれば、ってやつね…」

天津風「海風の御両親…?」

夕雲「浜風さん…」

「こんな下らない、おもちゃの大会に参加して…!」

春雨「…」カチッ

時雨「落ち着くんだ春雨」

「お前達は… 東京の学校に通ってまでこんな下らないことをしているのか!」

朝雲「下らない、ですって…!」

蒼龍「いやー、これ大人として看過出来ないわ…」

海風「…自分達の方が下らない真似してる癖に」

「なんですって!?この…!」

「お前は人に、親に恥を掻かせて…!この『出来損ない』が!」

海風「では言いますが、育児放棄して不倫に勤しんでたのはどこのどなたでしょうか? 若い男に揉まれて、水商売の女に入れ込んで…

貴方達こそ、どこに出しても恥ずかしい人としての出来損ないの分際で!」

飛龍「うわ、言っちゃったよ…」

「お前、ここまで育ててきてやった恩を…!」

海風「誰が? 物心付いた時からこっちは一人でしたよ! 最低限の事以外、親戚に咎められてもやらなかった癖に!

子供にお金だけ与えてれば育児になるとでも思ってるなら、親を名乗る資格すらありません!」

「このっ!」ブォン

ガシィ

蒼龍「…謝れ」グググ

「な、何なのよ!?」

蒼龍「この子に、謝れって言ってるのよ…!」グググ

「い、痛い痛い!」

「放せ、この!」ブォン

飛龍「とうっ!」ゲシッ

「がっ…!?」

飛龍「女の子に暴力は駄目でしょ。ま、私達は鍛えてるから別だけど」

海風「蒼龍さん、飛龍さん…」

飛龍「蒼龍、ここ人が多いからどっか物陰連れて行くわよ」

蒼龍「賛成。 少しお灸据えなきゃね」
589 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/18(水) 04:51:20.36 ID:sUFK74Uq0
「は、放しなさいよ!」

蒼龍「じゃあお望み通り。飛龍」

飛龍「はいはい。放せば良いんでしょ」

「ぐっ…!お前達、一体何なんだ!」

飛龍「この子達の先生よ。あんまり顔は出せてないけど」

「教師がこんな事をしても良いと思ってるのか…!」

蒼龍「私達は『講師』だから。所詮は雇われね。 それにそっくり返すけど、親が子供を殴って良いと思ってる?」

「躾の一貫よ! 情けない子供を修正して何が悪いの!」

飛龍「違う。貴方達は言葉に詰まって暴力に走っただけ、それは躾じゃなくて虐待って呼ぶのよ」

「子供が口答えをするなんて許される訳無いでしょ…!」

時雨「…間違えてる事は間違えてる、って言えるだけ立派だと思うよ」

「黙れ!子供が口を挟むな! 第一アレは出来損ないなんだ!躾けて…」

浜風「…こんなものから生まれた自分が恥ずかしくなってきましたよ」

「ち、違う!ご、誤解なんだ浜風!」

浜風「どこが誤解ですか…! 海風を虐げて、苦しめて、歪めさせた元凶の分際で…!

私にも責任は勿論あります。苦しみに気付けなかったこと、心の歪みを見抜けなかったこと… 何より、こんな悪意まみれの人間のところに置き去りにしてしまった事が…!」

「わ、悪気は無いのよ…? ただあの子のために…」

浜風「どこがだ!? 悪気が無い? ええ、性根が腐りきってて本当に悪気がなくなってるようですね…

血を分けた子供である事がもう恥ずかしくてたまりません…!」

「だからこれは…」

春雨「それに二人が歩んだ道を『下らない』と切り捨てるなんて、子供を何だと思っているんですか…!

私の両親は道は示した、だけどその道を歩んだのは春雨自身です! 子供が歩んできた道を、歩もうとする道をどうして頭ごなしに否定出来るんですか!」

「下らない遊びに興じて、何を得られる!」

天津風「学ぶ事は多い、かしら? 少くとも私の通ってたガンプラ学園じゃ就職先は色々斡旋されてたし、モデリングとか加工の技術なんかも習得は出来る。

あとガンプラバトルのe-SPORTS化も検討されてるからその道に進むって選択肢だってある」

朝雲「意外と真面目だった、ガンプラ学園… それにたかがおもちゃ、って言うけどそのおもちゃのお陰で成長出来る人も居る。

たかがおもちゃで仲間と絆を結べたり、尊敬できる先生に会えたり、不倫なんかよりよっぽど健全よ!」

「子供が大人を否定するのか!?」

夕雲「否定されるような大人だからですよ…! 自分の事しか考えて無い貴方達より浜風さんと海風さんの方が余程立派です!

夕雲の両親だって自分が忙しくても辛い目にあっても子供には構ってくれたし、ちゃんと育ててもくれました!なのに貴方達はそれすら出来ていない、その上子供を歪ませて…!」

海風「…もう、いいです。皆さん」

天津風「海風… でも…」

海風「…最初から、きっと間違いだったんです。少しは情があると期待した海風も、どこかで認めてもらえると思っていた海風も…

こんなものに期待を抱く事すら間違いだった、ようやく今になって気づけました。13年生きて、ようやくです」

朝雲「…謝りなさいよ。 謝りなさいよ、この子に! 海風と、浜風さんに!」

「…」

「…」

海風「もう良いです。諦めて、期待しなければ良いんです。 そうすれば、きっと楽だから」

浜風「…もう二度と、近付かないで下さい。 今大鯨さん、家主のお母様に頼んで二人分の新しい戸籍の用意と古い戸籍の抹消を頼んでいます。

貴方達とは今後一切親子としての付き合いはしません。 近付けば法的に対処します」

「そ、それだけは…!頼む…!」

浜風「黙れ! そして二度と私達にその面を見せるな! お前達に子供を持つ資格なんかない、持ってはいけなかったんだ…!」
590 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/20(金) 05:06:17.23 ID:H1yfb1eP0
天津風「その、大丈夫…?」

海風「はい。 心のどこかでは覚悟していた事なので」

朝雲「辛かったら言っても良いのよ? 私これでも妹の面倒ずっと見てきたから、吐き出すくらいなら…」

海風「大丈夫ですよ。 その程度で折れる程、ヤワでは…」

飛龍「それでも辛かったら辛い、って言いなさい。 心に毒を溜め込むのは良くないよ」

蒼龍「そうそう。私も昔、そんな経験あったし… 確実に心にも体にも悪いわ」

時雨「いっその事、辛い事は忘れるのが良いと思うよ。無かった事にしてさ。いっその事記憶喪失なんてどうだい?」

夕雲「時雨さんが言うと洒落にならないような… 記憶が無くて辛いこともあったでしょう」

時雨「え、無いけど。 だって記憶無い方が色々新鮮だったし、ロクな記憶じゃないなら失くしといた方が良いと思うよ」

春雨「変なところで時雨はマイペース過ぎるんですよ…」

海風「だけどそれは、歩んできた時間を無かった事にすることです。 それだけはしたくはありません」

時雨「キミはそう言う人間はそう言うタイプだって分かって言ったんだけどね。だけど本気で辛いなら吐き出すことも、忘れる事も重要だよ」

海風「お気遣い、ありがとうございます。 だけど海風は大丈夫ですので、あっちの豆腐の方の心配をしてあげてください」

浜風「と、豆腐!?」

海風「こちらがボロクソ言われてる中一言も貶されてないのに、海風以上にウジウジしてた癖に」

浜風「そ、それは… 一応、あんなのでも実の両親ですから見切りをつけるのを簡単にやっていいのか、くらいの迷いは…」

海風「それにいつの間にか逃げ道の確保までしてたのに」

浜風「出来れば使いたくはなかったんですけど… ですがこれで、ようやく本気で絶縁に動き出せます」

海風「その件については礼代わりに豆腐の中でも堅い方の木綿豆腐に格上げしておきます」

浜風「木綿って、せめて硝子とか…」

海風「じゃあ高野豆腐」

浜風「確かに単体だと結構堅いですけど、豆腐から離れてくださいよ!?」

天津風「海風の精神って鋼ね…」

夕雲「鋼より硬いのでは…?」

朝雲「ダイヤモンド並ね… 大好きな宝石並だから納得でしょ」

春雨(確かにダイヤモンドは硬く、削るようなダメージには強い… だけど重過ぎる一撃には簡単に砕ける…

積み重ねた結果のダメージだから今回は耐えたけど、別の重い一撃なら粉微塵になってしまいます。はい)

時雨(それをこの朝雲って子が分かってて言ったなら凄いね… 多分分かってないだろうけど)


イベント選択 直下
1.榛名『決意と決別の神狼』
2.青葉『贖罪の戦い』
3.海風『傷だらけでも』
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/20(金) 10:10:49.61 ID:ektnw4Uz0
3で
592 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/21(土) 05:12:05.01 ID:UmfMJzvY0
side-海風-『傷だらけでも』


心が痛む。分かってたいた事なのに、それでもなお心が少し悲鳴を上げていた。

当然だろう、ようやくかつての自分を抜け出そうとしたところにあのゴミクズが来て人を全否定していったのだ。


海風(こんな、弱かったかな…)


前はもっと罵られてたのに耐える事が出来ていたのに、少しばかり苦しい。

人間、環境が変わるとこうも内面も変わってしまうのだろうか。今は自分が弱くなった、そう感じる。


海風(誰かに優しくされたことなんて無かったから…)


他の誰かに甘えられる環境が海風を弱くしたのかもしれない。違う、『普通』になっただけだ。

誰だって罵られれば傷付くだろうし心は痛む。そうならない人は少しイカれてると思う。


海風(じゃあ前の海風は…)


感覚が麻痺して何も感じなくなって、人として壊れていた。きっと霞が『歪んでる』と言っていたのもそれが原因だろう。

だからきっと、今の方が人として正しいのかもしれない。でもこの先、もっと傷付く事が起きればどうなるのだろうか?


海風(きっとこれからの戦いは、辛いものを見るはず…)


もう既にバビロニア学園で大量の惨死体を、目の前で命が理不尽に奪われるのを見てきた。

これからEXAMとの戦いではきっと同じような、それよりももっと酷い光景や出来事を目の当たりにするかもしれない。その時、この程度で傷付いていた海風の心は耐えられるのだろうか。


海風(違う、耐えなきゃいけないんだ…!)


覚悟は揺るがない。 皆の笑顔を、未来をこの手で創ると決めているから。 何度傷付いても、進まなきゃいけないんだ。

傷だらけになっても、痛みを堪えて先へと手を伸ばし続ける。それが海風が歩むと決めた道だから。


海風(皆が笑えるようになるまで、泣いちゃいけないんだ…!)


どれだけ痛くても、どれだけ辛くても。 絶対に涙は流さない、流しちゃいけない。

胸に鋭く刺さる刃にも、悪意の攻撃にさえも海風は負けない。 心の中に望む未来があって、意志が折れない限り。


海風(海風が信じた明日が、思い描いた未来がこの胸に在る限り)


絡みつく雑音を断ち切って、想いを力へと変えて。 信じた明日へと駆けていくだけだ。

だから絶対に心の痛みなんかに負けない。あんな下らない痛みで、歩みを止めるなんてしたくないから。



イベント選択 直下
1.榛名『神狼の覚悟』
2.青葉『贖罪』
3.阿武隈『戦う理由』
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/21(土) 09:31:06.06 ID:ZckE3QZ60
1で
594 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/22(日) 07:24:19.76 ID:617xEuA80
side-榛名-『神狼の覚悟』


《某所・霊園》

榛名「…最後に来たのは2年前でしたか。これ、貴女の好きだった羊羹です」

「…」

榛名「貴方も、冥福ぐらい祈ったらどうです。元凶の一人、マスクド・セカンドG… いや、エレオノ−ラ・マクガバン教諭」

エレオノーラ「…こんな所に連れて来て、どう言うつもり?」

榛名「別に、他意はありませんよ。 居たから連れて来ただけで。

貴方が常に言っていた『勝者は敗者の夢を奪った呪縛からは逃れられない』と言う言葉、これが彼女の遺した呪縛ですよ」

エレオノーラ「それは皮肉? 私が、彼女を倒したことに対する」

榛名「ええ。 いくら仮面を纏おうと貴方の罪は消えない、消させない。 彼女の夢と命を摘んだ罪、先代の主義を曲解した罪、そして先代の名を騙りカテドラルまでも弄んだ罪は」

エレオノーラ「だからこそ私に戦いを挑んだ、って訳ね」

榛名「確かに貴方は強かった。 当時のメイジンと遜色は無かったし、粒子共鳴現象まで発現させて… だけど榛名と『フェンリル』には勝てない、カテドラルがこちらと致命的に相性が悪いのを忘れましたか?」

エレオノーラ「そうね。いくら粒子を収束した大技を使おうと結晶まで濃度を高めた粒子塊を破壊する事は叶わない、それが『純白の神狼』が持つ唯一無二の力…

それは当時のメイジンすらどう足掻いても再現出来なかった能力でもあるし、貴女を後継者にしたがった理由でもある」

榛名「原理なんて簡単ですよ。 『ガンダムに囚われなければ良い』だけです」

エレオノーラ「…は?」

榛名「入学当初の榛名のガンダム知識、忘れてませんか?」

エレオノーラ「確かに貴女の知識量は最悪だったけど… まさか、それで?」

榛名「そう言うことです。 『ガンダムシリーズ』に囚われるから発想が狭まる、だから他のロボットアニメやゲームから使えば良い。

だからそこから機体内部に結晶の精製を担うジェネレーター的なものを機体に内蔵して、後は人に反応する粒子の特性を活かして結晶化するプロセスを頭の中で組み上げるだけです」

エレオノーラ「そんな単純な… だから貴女、各方面から怒られそうなガンプラばかり量産して…」

榛名「恐らく出来た原因はガンダム知識が無かったこと、他の作品から得た柔軟な発想が影響でしょう。 知識があるとどうにも『ガンダム』に囚われる、それが先代も再現できなかった原因でもありますから。

記憶消してスパロボシリーズを1作品最低20週と無改造クリアとターン縛りに初見早解き隠しコンプでもすれば多分この域に至れるかと」

エレオノーラ「最初の段階で実質不可能じゃない」

榛名「そう言っていますが。しかしそこまでしなくとも今は発展させて、誰にでも結晶化を使えるように改良しています」

エレオノーラ「呆れた… そんな技術を持ちながら、メイジンにならないなんて」

榛名「なりたくもなかったし、向いてない職業を選びたくはありませんし、『名前』に縛られるのはもっと嫌ですから」

エレオノーラ「それでよく塾に入ったこと…」

榛名「無理矢理願書書かされたんですよ、両親に。そうでなければ…」

プルルルル

榛名「失礼。青葉さん、状況は?」

青葉『ビンゴですよ。瑞鳳さんに聞いた通り、薬を流していたのはガンプラマフィアの残党でした。始末しておきます?』

榛名「制圧だけしておいてください。こちらも現場に急行します」ピッ

エレオノーラ「随分物騒な仕事してるじゃない」

榛名「ただの便利屋稼業です。昏睡病の始末、って仕事を請け負ってるだけで」

エレオノーラ「何故そこまでして、貴女は戦うの」

榛名「終わらせたく無いからですよ。 彼女が愛したガンプラバトルを」
595 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/23(月) 06:25:51.03 ID:MT8jb+XO0
《マフィア残党アジト》


榛名「これが残党全員ですか」

衣笠「中に居た奴は全員とっ捕まえたよ。多分構成員はこれだけじゃないかな」

「うぐっ… 貴様等、こんな事をして…!」

天城「黙りなさい。槍の餌食になりたくなければ」

榛名「一時は世界中に拠点を持っていたガンプラマフィアも今や20人にも満たない弱小組織、落ちぶれたものです」

「あの『真紅の戦乙女』共さえ居なければ…!」

古鷹「確か瑞鳳さんに潰されたんだっけ?」

青葉「新スタジアムのオープニングセレモニー前日に占拠して瑞鳳さんに喧嘩売って返り討ち、組織ごと壊滅させられましたね」

衣笠「また盛大な自爆したねぇ…」

「何が目的だ、お前達!」

榛名「ナノマシンですよ。貴方達が『クルスト・モーゼス』の一派に資金と製造工場を提供したのは調査で判明しています。

そしてクルスト一派を匿って、どこかに潜ませているのも」ジャキッ

「クルスト?知ら…」

ブォン スパァン

「なっ…!?」

榛名「どこへ逃げようとしても良いですよ。このトマホークは貴方達をどこまでも追いかけ、首を削ぐことなんて容易いですから。

今のはほんのデモンストレーション、被害がそこのソファがバラバラになっただけで良かったですね」

天城「それとも串刺しなんて如何です? 首を刎ねられるのと違って簡単には死なないからいっぱい苦しめますよ」

古鷹「二人共、悪役ムーブが板につき過ぎですよ…」

青葉「二人は手を汚さないで下さい。 汚れは青葉の仕事ですから」ガサゴソ

「な、何だよそれは…」

青葉「何って、ダイナマイトに決まってるじゃないですか。 南米原産の良い火薬を用意してるんですよ。

美しい花火に巻き込まれるなんて凄い芸術的ですよ? 楽しみじゃありません?」

衣笠「…因みに量はいかほど?」

青葉「対人用なので10キロ弱、ですかね」

間宮「…この様に死に方は色々選べますよ? 話せば味わうことはありませんが」

「わ、分かった…! クルスト達は市内の廃棄された製薬工…」

ゴゴゴゴゴゴゴ!

古鷹「じ、地震!?」

榛名「総員退避! この感じ、来ます!」

ドゴォォォォォォォォッ!


ウォースパイト「ハル!大丈夫!?」

榛名「なんとか。ただ彼等は全員…」

青葉「口封じ、にしては盛大にやりますね… もう残る結晶も少ないでしょうに」

天城「一体、どれ程犠牲を出す気ですか…!市街地で結晶を暴走させるなんて!」

榛名「仕方ありません… 天城、ウォースパイトは結晶破壊の支援を。残りは避難誘導を開始してください!」

榛名(終わらせない、彼女が愛したガンプラを…! その為に榛名は、戦うと決めたから!)
596 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/07/24(火) 02:39:07.58 ID:/prkZ5Iz0
浜風「そうですか、分かりました」ピッ

飛龍「何かあったの?」

浜風「街中で作戦行動中の青葉さん達がマフィア残党のアジトを制圧、クルストの居場所を聞き出そうとしたようですが…

粒子結晶の暴走が発生、残党も口封じされてしまったと」

天津風「口封じって…」

海風「…被害規模は」

浜風「ビル1棟が倒壊、周囲に被害は無いとのことです。ただし残党は一人残らず…」

蒼龍「まだ残りが居た、って言うのも呆れるけど危険な連中にまで手を貸してたなんて…」

朝雲「私達はどうすれば?」

浜風「既に結晶体は破壊したとのことなのでこのまま周辺警備を続行、警戒強化しつつ見回りを継続します。

しかしこれからは密集してではなく、班分けをしての警戒に移行します」

夕雲「メンバーはどうします?」

浜風「第一班として私と夕雲、そして蒼龍さんを。第二班は春雨に時雨と海風。第三班は朝雲さんと天津風さん、飛龍さんの編成にします」

天津風「え、このメンバーなら海風と私達の方が連携の練度が…」

海風「いえ、ここに居るうち『指揮能力』を持った人間は三人です。 なので三班に分けると指揮官は一人ずつ、が最も良い選択肢になります。

それに使用機体の編成バランス、各個のファイター能力の問題から考えるとこれが最良の采配になるかと」

朝雲「そう言えば私も申し訳程度だけど『指揮官』だったわね…」

春雨「でも三班に分けても手が足りるかは…」

浜風「現在瑞鳳さんや大鯨さんをここに招集しています。あとは榛名さん達から…」

陽炎「暑い… 見回りってやんなきゃ駄目なの…?」

阿武隈「駄目に決まってるよ。 街中で結晶体の暴走だってあったんだし」

長波「にしても、ここまで雁首揃ってるとなぁ…」

満潮「ハァ… 早く部屋に帰りたい…」

海風「阿武隈さん達まで…」

時雨「まぁ彼女達も艦娘、らしいし戦力にはなるね」

浜風「これでメンバーは揃いました。では見回りに分かれましょう」


イベント 直下
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/25(水) 14:53:22.98 ID:aDpl6iH1O
霞・神通合流
598 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/05(日) 22:15:41.93 ID:bU2HUiyL0
時雨「僕達の持ち場はこっちだ。警戒は厳重に、なおかつ目立たないよう慎重にね」

海風「そこまでの必要が…?」

春雨「相手はテロリスト、しかも先ほど大きな事件を起こしています。何をしでかすか分からない以上、警戒するのは尤もです、はい」

時雨「何もなければ良い、とは思うけど… 空気に淀みを感じるし嫌な匂いもする」

春雨「今日起こらずとも別のタイミングで起きる可能性もあります。その時対処出来るようにしておかないと…」

海風(この二人、目つきが鋭くなってる… 普段とは雰囲気がまったく違う…)

霞「海風!」

海風「あれ、霞…?」

霞「春雨さん達と一緒に居る、って聞いたから探したわ… まだ何も起きて無いわよね?」

春雨「ええ、今の所は」

霞「なんか、変な感じがするのよ… バビロニアの時より酷い悪意みたいなものが、この周辺で渦巻いてる」

時雨「聞き捨てなら無いね。バビロニア学園より酷いなんて」

海風「…霞が言うのなら警戒を厳にするのは正しい判断でしょう。 ですが問題は人員不足…」

霞「それなら…」

神通「遅くなりました。海風さん、現状は?」

海風「先輩… 今の所は何も」

神通「なら良かった… 今からお母様、萩風、大鯨さんが合流して警戒にあたるとのころです。私はお二人の護衛に回されました」

海風「しかしこれだと戦力が一極に…」

時雨「なら僕と春雨は別行動するよ。 元々僕達は二人のペア、その方が動き易いし何より手数は多い方が良い」

春雨「それに そちらの三人チームの方が春雨達が加わるより連携精度は高いでしょうし。はい」

海風「分かりました。ではお二人共、よろしくお願いします」



神通「お母様から、海風さんにこれをと」

海風「アズライト… 整備終わったんですか?」

神通「はい。バーストに関しては自力でなんとか制御して欲しいと…」

海風「やはりアレを制御できるのは…」

神通「海風さんの心次第、です」

霞「アンタの精神力は大鯨さんも褒めてたわよ。常軌逸してるって」

海風「褒められてるのですかね、それ…」

神通「ですがあれは本来人工粒子下でのみ起きる現象、アリスタ由来のものであれば起こる可能性は低い筈です。

基本的には気にしなくて良いとお母様は仰っていました」

海風「あんな力普通のフィールドで発動なんてしたら大惨事ですよ」

霞「間違いなく死人が出るわね。気をつけておきなさいよ」

海風「善処します…」
599 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/06(月) 00:58:45.57 ID:6ImCqdTV0
神通「現状、異常は見られませんが…」

海風「霞、感覚は?」

霞「まだ朧気ね。悪意自体はあるけどまだ薄め… 今日起こる可能性は低そう」

海風「可能性が高いのは明日か、それとも世界大会の決勝にあわせてか… 予測では明日の方が可能性が高いです」

神通「確かに、彼等のターゲットである海風さん達が出る大会は明日… それにこの催しの影響で来訪者は多くなる筈ですから」

霞「それなら運営側になにかしら報告したほうが…」

海風「運営がそれを信じるかは分かりませんが、一応瑞鳳さん経由で矢矧さんあたりに連絡して頂くのがベストでしょう」

神通「どうします? 今日の見回りは打ち切って、他の人達と合流しましょうか」

海風「そうですね… 情報の共有と、あとは今後の方針についての打ち合わせをしましょう」

霞「大丈夫、海風? その、なんか元気が…」

海風「大丈夫ですよ。何でもありませんから」

霞(違う、嘘ね… 何か隠してる、前は分からなかったけど今ならハッキリと…)

霞「なら、もうちょっとシャキっとしなさいな。私達の『指揮官』がそんなに元気なくてどうすんのよ」

神通「それに、本当に何かあるなら私達をもっと頼ってください。私達はチームメイトで、一緒に戦う仲間でしょう?」

海風「先輩、霞…」

霞「ほら、行くわよ。 私これでも修業帰りで疲れてるんだから」

神通「私も少々疲れが残っているので休みたいかな、と…」

海風「そうですね… 行きましょうか」



浜風「明日の可能性が高い、と…」

海風「ええ。他にも可能性がある日はありますが、中でも明日が抜きん出て高いです」

瑞鳳「その事に関しては運営サイドと地元警察、あと協力者の人達にも流しておくね。榛名さん、アジトの方は?」

榛名「既にガンプラマフィアアジト跡から候補地を特定、今絞り込んでいます」

大鯨「あと候補地の奇襲には警視庁と一部陸上自衛隊の方からも戦力が出せるそうよ」

浜風「海風達学生はバトルの方に、春雨と時雨を含めた私達は周辺警戒と迎撃準備、そして榛名さん達は警視庁の人達と協力してアジトへの奇襲の3チームに別れることになりましたね」

海風「警察や自衛隊まで出動とはかなり大掛かりな作戦ですね…」

瑞鳳「バビロニアの一件があるから警察も動かざるを得無いんだよ。あれだけの虐殺を国内でもう一度やられたら沽券に関わるでしょ。

被害規模で言えばもう1995年の地下鉄サリンよりも犠牲者が多くなってる以上、また何かあったらマスコミからバッシング可能性だってあるしね」

大鯨「逆に、ここまで至るまでに何も出来てないって時点で警察の怠慢かしら? あれだけ情報だって流したのにバビロニア学園の事件が起きるまで動こうともしなかったのよ?

そのツケを今払わされてるのよ。 言っちゃ悪いかもしれないけど、現場を何も分かってないのよ上の人達は。大人の世界ってこれだから嫌ね」

榛名「しかし敵の規模が不明な以上はそう言う手も使わないといけない程こちらも手が足りてないのが…」

浜風「杞憂であれば良いのですけど… 情報の伝達は怠らないようにしてください」
600 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/06(月) 03:36:04.82 ID:6ImCqdTV0
《その夜 宿舎屋上》


海風「明日か…」

海風(明日で全てが終わる。 ホワイトクリーンとの因縁も、EXAMのことも… そこから海風は…)

「何黄昏てんのよ」

海風「霞…」

霞「ほら、アンタの好きなイチゴ牛乳」

海風「ありがとうございます」

霞「これから、なんて誰にも分からない。それは人が自分で決めるものよ。 海風、アンタはどうやって、何をしてここまで来たの?」

海風「それは…」

「戦ってきた、のでしょう? 最初から自分のためでなく、誰かのために」

海風「先輩…?」

神通「貴女はずっとそうだった。自分が傷付く事も厭わないで霞さんを模型部の部長の襲撃から護り、スドウ・シュンスケとの戦いでも諦めかけていた私を奮い立たせた。

その真っ直ぐな姿勢があるからこそ創れた今がある。今の霞さんや私を創り上げたのは海風さんなんです」

海風「海風が…?」

霞「アンタはまぁ自分勝手でマイペースだし、冷静かと思ったらいきなりキレて何かしでかすし、何がなんだかサッパリなのよ。

勝手な奴だって思ってたけど自分以上に他人を優先するし、そして誰かのために戦おうとする。 そんな姿勢に私は、私達は突き動かされてきた」

神通「貴女が意識していなくても私達の道を創ってきたのは他でもない貴女です、海風さん」

海風「海風が創ってきた道…」

霞「戦いの先、なんてものは終わってから考えれば良いのよ。寧ろいきなり夢物語を語り出したらそれはただの死亡フラグじゃない」

神通「今はただ、自分の選んだ道を突き進んでください。そこからきっと道は見えてくる筈です、新たな貴女の道が」

霞「例え見えてなくても、海風なら自分で道を創り出せるでしょ? その『想像』の力は『創造』のためにあるんだから」

神通「いつだって貴女はそうやって、勝利を創り上げてきたのですから」

海風「そうでした… いつも海風は道を描いて、その道筋の通りに戦って、ここまでの道を創ってきた。 これからもそれは変わらない…」

霞「そう言う事よ。 まずは目の前の壁をぶち破って、そこからは全部白紙なんだから」

神通「壁を壊すのは私達も一緒です。 創ってきた『これまで』全部を使って、一緒に『これから』の道を創っていきましょう」

海風「先輩、霞… 明日の戦い、力を貸してください。この戦い、負ける訳にはいきませんから…!」

霞「私だって負けたくはないもの。 最後の壁、一緒にぶち壊してやろうじゃない」

神通「そして共に参りましょう、いつか必ず辿り着く、私達の未来に」
601 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/06(月) 03:44:19.63 ID:6ImCqdTV0
《そして…》


『これより全日本ガンプラバトル選手権全国大会・決勝戦、東京代表『フリューゲル・ヴェント』対宮城代表『ホワイトクリーン』の試合を開始します』



Please set your GP Base

Beginning plavsky particle dispersal

Field to "Speace"

Please set your GUNPLA

BATTLE START!



神通「神通、『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』…!」

霞「『ブラストアクロスZZ』、霞!」

海風「海風!『ウイングガンダム・アズライト』! チーム・フリューゲル・ヴェント!」



長波「『ガルム』、長波…」

陽炎「陽炎、『ヴェズルフルニル』…!」

阿武隈「『マーナガルム』、阿武隈! チーム・ホワイトクリーン!」


長波「行くぞ!」

陽炎「出るわよ!」

阿武隈「行きます!」



神通「行きます!」

霞「出るわ!」

海風「戦闘、開始します!」


第20話『決戦への道』 終
602 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/06(月) 18:52:09.81 ID:6ImCqdTV0
第21話『蒼と白、真紅と青』


愛宕「始まった…」

萩風「本当なら私も向こうに行きたいのに…!」

朝雲「私達はここの予備兵力よ。もしこっちで何かあった時のための」

天津風「悔しいけど、今は我慢するしかないのね」



《同時刻 世界大会・前夜祭会場》


『皆様、避難のほうをお願いします! 現在、この現象について調査をしており…』

瑞鳳「行くよ、皆」

浜風「ええ、ここで彼等を倒します」

夕雲「絶対、民間人への被害は食い止めなければいけません」

蒼龍「それに皆の未来はここにかかってる」

飛龍「私達の未来、絶対に繋ぐわよ」

瑞鶴「避難誘導は警備にやらせて、私達は直接戦うのね」

時雨「ここでは僕達が敵に対抗出来る勢力だからね」

春雨「本当なら海風さん達の力もお借りしたいところですが…」

如月「だからこそ私達も居るのよ?」

野分「榛名さん達の代理として、この戦線に参加します」

秋月「出来る事は少ないかもしれませんが、全力を尽くします」

瑞鳳「よし… 全員、戦闘準備!各方面に連絡、作戦行動開始!」



神通「海風さん、向こうも作戦が開始されたと情報が入りました」

霞「やっぱり今日に合わせたのね…」

海風「二人共、今はバトルに集中を。 バトルの最中に余計な考え事は失礼です」

霞「そりゃそうだけど… でも瑞鳳さんが居ればなんとかなるか…」

神通「…分かりました。今出来ることに、全力を尽くします」

海風「では作戦開始。 各機、先ほど打ち合わせた通りの変則フォーメーションを使います」
603 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/06(月) 19:16:34.84 ID:6ImCqdTV0
《少し前》


霞「変則フォーメーション?」

海風「はい。 今こちらの編成では海風と先輩が前衛で霞が後衛に回る、というのが常でしょう。

ですが相手はそれを知り尽くしている、なら対策もされてる可能性は高いかと」

朝雲「だからこそフォーメーションの位置変えをする、ってこと?」

海風「そう言うことです。これまでのパターンとは違うパターンを用いて、敵を混乱させます」

神通「概要は分かりましたが、具体的な配置は?」

海風「最初は前衛が先輩、後衛に霞と海風という配置です。あとは戦闘時に適宜判断し、入れ替えを行います」

萩風「そしてフォーメーションを入れ替えつつ敵を分断、撃破する…」

海風「はい。最優先目標は背後を襲ってくる可能性の高い『ガルム』、そして指揮能力の高い『マーナガルム』を設定、これらを優先的に撃破しましょう」

天津風「『ヴェズルフェルニル』は?」

海風「確かに彼女も脅威ではあります。しかし機体特性は『速い』だけ、先輩の格闘能力や海風の予測、霞のNTとしての直感があれば対応はしやすいかと」

愛宕「ガンプラ学園のアドウ・サガ君が対応出来なかったのは機体の相性もあったけど、今の貴女達は対応できる…」

海風「だから必然的にトップクラスの性能を持つ『マーナガルム』、そしてステルス機能を有する『ガルム』が難敵なんです」

神通「そう言う事ならば… 指揮はいつも通り、海風さんに一任するということで…」

霞「機体の整備と、新装備も用意は終わってるからあとは戦うだけね」

萩風「はい。お母様からロンギフローラムとアクロス用の新装備の方、お預かりしました」

海風「あれ、アズライトには…」

萩風「もう充分かと」

海風「確かにそうですが…」

朝雲「これ以上強化のしようがないでしょ」

霞「で、新装備ってやつは…」



新装備 安価

・インフィニットジャスティス・ロンギフローラム(神通機)用 直下

・ブラストアクロスZZ(霞)用 下3
604 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/07(火) 01:10:13.27 ID:0Tos9C6I0
来なさそうなので選択肢


インフィニットジャスティス・ロンギフローラム(神通機) 直下
1.新型ビームライフル『生弓矢』
2.刀剣型ビームサーベルビット『兼光』『兼定』
3.その他(内容も)


ブラストアクロスZZ(霞機) 下3
1.フルアーマーtype-N(ニュータイプ)
2.フルアーマーtype-D(デストロイ)
3.その他(内容も)
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/07(火) 05:59:17.89 ID:zRTVAI+rO
2
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/07(火) 10:45:32.04 ID:V7ZYkHvf0
踏み台
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/08(水) 05:17:00.34 ID:A7FgGumOO
1
608 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/11(土) 01:36:22.24 ID:uUWuGIzVO
萩風「まず姉さんには刀型のビームサーベル・ビット、赤い柄の『兼定』と青い柄の『兼光』です。

能力としてはビームサーベルが発振できるビットとしての機能が主ですが低出力ながらビーム砲として使え、ビームシールドも形成可能、さらには『光忠』『貞宗』が破損した際の予備にもなります」

神通「これを計4本、ですか」

萩風「はい。あとこれ、両腰脇のアーマーつけかえておいてください。 それがビットのラックを兼ねていますから」

霞「私のは?」

萩風「『フルアーマーtype-N』、『ニュータイプ』の使用を前提とした新型フルアーマーです。

type-Fとは異なり運動性能と反応速度の強化に重点をおいた装備、と言ったところでしょうか。武装はtype-F同様に一部換装方式を採用、手持ち武装も全部変更と」

霞「…私、素のアクロスそんなに使って無い気がするわ」

萩風「元々アクロスは機体パワーが全体的に向上しているせいで余剰な出力が多く、全力行使した場合自機の破損に繋がる可能性がある、とのことで。

だからこそフルアーマーはそれを抑え込む鎧としての側面もあるのでしょう」

霞「なる程ね…」

萩風「またアーマーの一部にクリアパーツを採用したことで粒子反応性が向上、あくまでも可能性ですが『アクロスバースト』に変質が起きるかもしれないとのことです。

感応波がどのように作用するかは不明ですが、多少のリスクについては胸に留めておいてください」

霞「あの人なんてもん押し付けてくれちゃってるのよ…」

神通「痛覚共有するフルブルームよりは…」

海風「100mを焼け野原にしたアズライトよりは良いんじゃないですかね?」

霞「海風の場合は春雨さんだけど、先輩のはまぁ… ヤバい、ちょっと怖くなってきた」

海風(確か先輩のは心象風景の具象化で『花吹雪』、海風の場合は『宝石の鎧』だからこっちも多分心象でしょうか?

じゃあ霞の場合は… 一番深く根ざした『炎』と『水』…? 『熱さ』『冷たさ』となるのでしょうか…)


FAブラストアクロスZZ(フルアーマーtype-N仕様)
武装
・ダブルバルカン
・ハイ・メガ・キャノン
・ハイパー・ビーム・サーベル(ダブル・キャノン)×2
・大腿部ビームカノン×2
・リフレクターインコム
・ビームキャノン×4
・腹部ハイ・メガ・キャノン
・腕部内蔵モーターブレード×2
・IFジェネレーター
・ハイパー・ビームライフル
・ハイ・メガ・シールド
・フィン・ファンネル×6

概要
FAtype-Nを装備した『ブラストアクロスZZ』の姿。こちらは高機動形態のFAとなっている。
type-Fと一部装甲・武装を共有しているが全身に小型のスラスターやアポジモーターを、プロペラントタンクを増設しており高い運動性を持つ。
また粒子反応の良いとされるクリアパーツを部分的に採用することで機体の反応速度が向上、より機敏に動くことができるように。
センサー系も強化されており範囲向上やステルス能力もある程度は探知可能になるなど索敵性能も大幅に向上、それ以外にも継戦能力も上がっている。
手持ちの武装は『Hi-νガンダムHWS』用のライフルとシールドに変更、そして背腰部分にはフィン・ファンネルが追加された。
火力の低下や機体の反応の過敏化を招いているが霞の『ニュータイプ』としての能力を活かすには最適な装備となっている。
そして全身のクリアパーツにより『アクロスバースト』に新たな『進化』が訪れる可能性も示唆されているが可能性は未知数。
余談ではあるが『初期フルアーマー(大鯨製)』『type-F』とはある程度互換性がある。その気になればV2ABのような装備形態にもできるとか…



《バトルフィールド デブリ帯》


霞「敵機捕捉、『ヴェズルフェルニル』『マーナガルム』と推定。あとステルス反応も検知、『ガルム』ね」

神通「どうしますか、海風さん?」

海風「よし… 交戦開始します、二人共展開を!」

霞・神通「了解!」


視点選択 直下
1.神通『奇襲作戦』
2.瑞鳳『戦乙女の飛翔』
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/11(土) 09:23:15.86 ID:3dcv7KPo0
2で
610 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/12(日) 01:08:55.53 ID:KBt40cPtO
side-瑞鳳-『戦乙女の飛翔』


《世界大会会場 アリーナ内》


瑞鳳「…」


たった1機佇むMS、『ガンダムエピオン・クロイツ』。現在使用されている『クロイツシリーズ』の中でも最古の機体であり他の機体のテストヘッドとして製造された機体。

戦線を単機で強行突破しながらも損傷は無く、無数の敵機を相手に戦った後とは思えない美しさを誇っていた。


「単機でここまで来たか。仲間はどうした?」

瑞鳳「傷付くのは私だけで良い。もう誰の未来も失わせたくないから」


語りかける男の声に彼女は返す。単機による強行突破を敢行した理由、それは『未来の自分の娘達』に教えられた『事象』の話だった。

本来であればバビロニア学園での戦いで飛龍と浜風は敗れ、歴史から消えていたこと。そして今回の『決戦』において夕雲と蒼龍が消えること、それがあるべき歴史。


「まさか貴様達の側にも『歴史を知る者』が居るとはな。だから我等に先手を打てたか」

瑞鳳「だからこそ私一人で戦う。 それは皆承知の上だし、そのための道も拓いて貰った。

…ニムバス・シュターゼン、貴方も『歴史を知る人間』って認識で良い?」


声の主、ニムバス・シュターゼンへと怒気を孕んだ声で瑞鳳は問う。彼も未来の人間であれば結末を知ってるのも納得がいく。

霞が前に別荘で襲撃された時に聞いた『マリオンを救えない』と言う台詞も彼自身が結末を見た、としか言い様が無いからだ。


ニムバス「それは言えんな。何しろ貴様をここで消せば歴史は変動する」

瑞鳳「じゃあ私が貴方を殺せばその後の歴史も変わるかもね」

トリスタン「生意気な…!貴様如きがニムバス様を…!」

セルジュ「『真紅の戦乙女』、貴様は歴史の中に消える。我等の道は決して阻めん!」

スドウ「そうだ!アンタも、ここで消えるんだよ!」


エピオンのサーベルから刀身が形成されると同時に4機の『スクランブルガンダム』が現れる。その内1機は全身が青く、両肩がオレンジであり一目で誰が操っているのかが判別できた。

彼女の覚悟はとうに決まってる。ここで彼等の命を奪おうと、自らの命を引き換えにしても彼等を討ち仲間や教え子、これから未来を奪われる筈の命を護る決意が。


瑞鳳「小石、舐めないほうが良いよ。躓かせられるし、怪我だってさせられるし、当たり所が悪ければ死んじゃうからね」


意識を研ぎ澄まして無の境地、『明鏡止水』へと即座に至る瑞鳳。同時に黄金色の光を纏うエピオンだがそれだけではない。

瑞鳳の『真の本気』、肉体にかけていたリミッターを解き放ちガンプラへと意識を同調することで『それ』は発現した。


瑞鳳「見せてあげる。私が『真紅の戦乙女』って名付けられた由来を」


黄金色から全身が赤い光を帯びてクリアパーツから炎のエフェクトが放たれる。各部から放たれる炎は羽のように舞い、背部からは『炎の翼』があふれ出す。

そしてその炎は地面に燃え移り会場を彼等の逃げ場を断つように彼等の背後にも火の手が回り、決戦の場が形成される。


ニムバス「くっ、粒子操作か!?」

瑞鳳「『バーニングバースト』、使うのは3年ぶりかな。私が『真の本気』に至った時だけ発現する力、そしてここに誰も連れて来れなかった理由でもある」


この炎は敵味方際限なく呑み込む危険な炎、故に仲間との連携では使えない力。その炎は3年前に『ある人物』との戦いで発現させた時以上に炎が燃え上がっていた。

『RGシステム』を強化し榛名製の機体からリバースエンジニアリングを行い粒子制御能力を向上させた結果、さらに元々『ガンダムエピオン・クロイツ』はその力の使用を前提に作っているのだから。


瑞鳳「行くよ… 我が真紅の炎を以って、眼前の悪を焼き尽くさん! 瑞鳳、『ガンダムエピオン・クロイツ』!押して参る!」
611 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/12(日) 02:45:22.68 ID:ybjrffZGO
スドウ「所詮、子供騙しだ!」

トリスタン「待つんだ!」


両腕のライフルのからエピオンに向けてビームが放たれる。並みのガンプラなら一撃で破壊出来るような出力だが瑞鳳のエピオンは避けようともしない。

しかしビームは前面に展開した『何か』に防がれてしまい、エピオンに傷をつけることすら出来なかった。


瑞鳳「『シュトゥルム・ウント・ドラング』、ディフェンサーモード。私に射撃は効かない」


両腕に装備された『シュトゥルム・ウント・ドラング』、『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 敗者たちの栄光』に登場する追加兵装、が攻撃を防ぐことでエピオンを護ったのだ。

ここまで無傷で強行突破してこれた理由、そして彼等の射撃兵装は一切これによって取るに足らないものに成り下がる。


セルジュ「ならば、サーベルならどうだ!」


スクランブルの常軌を逸した加速能力、それもEXAMによる性能ブースト付きでエピオンへと距離を詰めるセルジュ機。だがそれは大きな間違いを犯していることに気付いていない。

瑞鳳の本領は格闘戦、徒手格闘は当然ながら剣技も常人を遥かに越えた技能を持っていることを彼は失念していた。そうとも知らず彼はサーベルをエピオンへと突き立てようとするが…


瑞鳳「遅いよ」

セルジュ「な、に…?」


刹那、剣を振るったことに気付けない程のスピードで剣技が奔りセルジュ機のサーベルを持っていた右手首が切り落とされる。そして次の瞬間、スクランブルガンダムの機体の四肢が千切れた。

それだけではなく、数ミリ単位以下の細切れになる。一瞬、それだけあれば瑞鳳の神速の一閃は敵をバラバラに出来るのだから。そしてセルジュは『痛み』に絶叫をあげる。


セルジュ「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!!!!」

トリスタン「せ、セルジュ!? 貴様、何をした!?」

瑞鳳「痛みを味わって貰ったんだよ。 『バーニングバースト』は機体のダメージを自他問わずファイターにも反映する。

例えばエピオンが刺されたら私の痛覚にもフィードバッグが来る。でも逆もまた然り、私がサーベルを敵機に刺せば相手の痛覚にもフィードバックされちゃうんだよ」

スドウ「まさか、そんな事があるのかよ!?」

瑞鳳「研究員なら聞いた事あるでしょ?『アシムレイト』って。 その力の一端だね、これは。 彼には『無数に刻まれる痛み』を味わって貰ったよ」

ニムバス「貴様、よくも…!」

瑞鳳「これはお前達が犠牲者に与えてきた痛みだ、苦しみだ…!その報い、今ここで受けて貰う!」


エピオンが炎の翼で上昇し、両脚に炎を纏わせる。脚が燃える苦痛に瑞鳳は耐え、スドウの操るスクランブルへと急降下した。

スドウはその攻撃から逃れようとするが周囲に放たれている炎が鞭のようにスドウのスクランブルを拘束し…


瑞鳳「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

スドウ「あ、ガッ…!?」


腹部をぶち抜かれ、その後燃えてスドウの機体は塵となる。 だがエピオンの両脚の炎は消えない。 呆然とするトリスタン機にそのまま加速し、間合いを詰めた。

咄嗟にガードの態勢を取ったトリスタン機に向け瑞鳳は機体を両脚で挟み込む。そして挟んだスクランブルをそのまま捻じ切り、粉砕した。


トリスタン「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


爆散するトリスタン機を背に、脚から炎を消した『ガンダムエピオン・クロイツ』は佇む。スドウには『腹をぶち抜かれて全身を燃やされる痛み』、トリスタンには『身体を捻じ切られて爆発させられる痛み』を味わって貰った。

残る1機、首謀者たるニムバス・シュターゼンの機体を睨んでどんな痛みを与えようかと思案する。


ニムバス「貴様だけは、必ずこの手で殺してやる…!」

瑞鳳「残念だけど私は死なないよ。 だって死ぬのは、ベッドか布団で可愛い子供達に看取られながらって決めてるから!」
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/12(日) 10:16:13.09 ID:oH20m31cO
【決講】風花「副作用には気をつけて下さいね!…シモッチって何かしら?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1530920009/
【決講】茜「不屈の魂、夢ではありません!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531525117/
【決講】摩美々「まみみのホーム・アローン、始まるよー」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1533339190/
【決講】のり子「青コーナー、キィィングティィレッスルゥゥゥ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1533946743/
613 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/14(火) 01:10:34.20 ID:rx7R23gmO
《その頃 海風達は…》


海風「やぁっ!」

長波「こっちが、押されてっ…!」


連結させたブレイドによる斬撃を長波はシールドで防ぐ。NT-D発動状態でも『ウイングガンダム・アズライト』に『ガルム』はパワー負けしており長波は焦りを抱く。

本来『ガルム』は『スレイプニル』『スヴァジルファリ』の使用武器『レーヴァテイン』の同型を所有している筈だった。しかしステルスに出力をまわしたことと、専用武装ではない『グシスナウタル』を使用した弊害で2機と比較し大幅に近接能力が下回っている。


陽炎「長波、下がって!アンタの機体を捕捉されたら…」

霞「余所見してる暇があるか!」

陽炎「っ…!しつこい…!」


海風と長波の方へ向かおうと試みる陽炎を霞が的確な射撃で阻み、隙を与えない。いくら速くても霞相手には無力、次の行動を察知し的確に阻む相手には分が悪いのだ。

そこに神通のジャスティスからのビットが襲い掛かり陽炎は逃げの一手を打つハメになってしまう。


神通「逃がしません!」

陽炎「ここで逃げなかったらやられるっての!」

阿武隈「二人共、退いて!」

海風「全機回避運動! 来ます!」


海風達の機体に『マーナガルム』から放たれた『スフィア・フォーカス・ビームキャノン』が襲い掛かる。しかし海風と神通は剣で切り払い、霞はライフルで撃ち落とす。

それでも隙は生じ、『ヴェズルフェルニル』『ガルム』の後退を許してしまった。海風は舌打ちしたい衝動に駆られるが押さえ込み態勢を整えなおす。


阿武隈「…二人共、やるよ」

陽炎「コイツ等相手に…?」

長波「背を見せるのは癪だけど…!」

阿武隈「全機散開しつつ逃走!」


デブリ帯の中に3機のMSが突っ込み、その姿を眩ます。 霞と神通は一瞬困惑したが海風はその意図を瞬時に見抜く。

相手は『誘い込んでいる』のだ。自分達の領域へと。


海風「1対1で戦う気ですか…!」

霞「でもそれならどこか一つに3機全員で…」

神通「それをやれば背後から狙われます。そうなった場合、こちらが今度は不利になるでしょう」

海風「二人共、これからは互いにカバーすることが出来ません。 各機『バースト』の使用許可を出します。

海風は阿武隈さんを、先輩は陽炎さん、霞は長波さんをそれぞれ追撃してください!」


視点選択 直下
1.神通『神速VS神速』
2.霞『2つの属性』
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/14(火) 06:24:01.89 ID:rHospDOFO
1
615 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/16(木) 00:21:42.99 ID:0VSOAmYsO
side-神通-『神速VS神速』


デブリ帯の中にあった空白の何もない空間、そこで『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』と『ヴェズルフェルニル』は切り結ぶ。

だが近接戦は神通の領域、彼女が右脚部の『グリフォン』を展開し蹴りを加えようとするが陽炎は動物的な反射でそれを察知し瞬時に機体の高速性を活かして後退する。


神通「速い…!」

神通(海風さんの『予測』や霞さんの『直感』よりも動きにラグが無い…)

陽炎「アンタも充分だと思うけど。こっちの奇襲、何度躱されたか」


彼女も幾度かスピードを活かした強襲を彼女に仕掛け、翻弄して追い込もうと考えたがその度に全て見抜かれ失敗に終わるの繰り返しだった。

こうなったら互いに千日手、恐らくまともに戦えば決着は着かずに消耗戦へ陥るのは目に見えている。そうなった場合エネルギー消費の激しい陽炎が不利になるのは明白だ。


陽炎「ねぇ、お互い『はやく』決着を付けたいとは思わない?」

神通「ええ、そう思います」


互いから溢れ出す殺気を隠そうとしない二人。 お互い『戦士』として譲れないものがあり、そして仲間・姉妹のために勝ちを譲る気はない。

そして二人はSPスロットへと手をかける。覚悟は決まった、後は駆けるだけ。


陽炎「コード・ブレイヴ… 『アンチェインド・ドライヴ』、行くわよ!」

神通「花よ、咲き誇れ!『フルブルームバースト』ッ!」


『勇気』で鎖を解き放ち、『ヴェズルフェルニル』が蒼い燐光を強く放ち背中から巨大な光の翼が形成される。

神通と『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』も『満開』の力を使い、機体各部が橙色に輝き花吹雪が溢れ出す。互いにライフルを投棄し陽炎は『グラム』を、神通は二本の刀を両腕で構え…


陽炎「『ネージュエール』!」

神通「天剣絶刀!」


ビームの羽根が刃となってジャスティスに襲い掛かり、神通はそれを神速の一閃が生み出した衝撃波で迎え撃ち、全てを薙ぎ払う。

次の瞬間、陽炎は機体を加速させて一直線にジャスティスへと突っ込む。ヴェズルフェルニルのスピードならば間合いに飛び込むのは余裕、だが神通もそれに対応し両腕の刀で陽炎の一撃を防いだ。


陽炎「やっぱこっちの分が悪いか…!」

神通「そちらが高速なら!」


神通はジャスティスの隠していた機能、『ファトゥム-02』に内蔵されていた『ヴォアチュール・リュミエール』を展開し離脱を図るヴェズルフェニルを追う。

その姿に陽炎は一瞬唖然となったが、唇の周りを舌なめずりして歓喜に打ち震えた。自分の『スピード』に追いつく相手がようやく見つかった、その相手と戦うことが出来るという喜びが溢れ出す。


陽炎「やっぱり、狂いは無かった…!」

神通「どこまでいけるか分からない、だけど!」


互いの全てを賭けて、どちらが速くどちらが強いか、それだけを競い合うために…


陽炎「私は、アンタを倒す!」

神通「私は、貴女を越える!」
616 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/18(土) 02:32:13.72 ID:4OE/uz6PO
side-霞-『二つの属性』


霞「デブリに紛れてても!」

長波「バレてる…!どんだけ鋭いんだよ!」


デブリに紛れながらステルス能力を行使するガルムを相手に霞はライフルを放ち、長波の機体を正確に攻撃する。

長波は結晶のバリアフィールド『スフィアクレイドル』を展開し防ぐがこの障壁はエネルギーの消費が激しいため、すぐデブリの背後に回って盾にする形で態勢を整え直す。


長波(コイツ相手に絡め手は通じない…!)

霞(動きが、考えが分かる…!このままこっちの領域に… ッ!大きい力が来る!)

長波「なら真っ向から!コード・ブレイヴ発動! 『アンチェインド・ドライヴ』!」


ステルス能力や余計な機能を全てカットし長波は機体の楔を解き放つ。そして瞬時に機体間の距離を詰めて霞に右腕のシールドクローで斬撃を放つ。

咄嗟に反応しモーターブレードで防ぐ霞だがライフルを喪失し、パワー負けしてデブリへと叩きつけられてしまう。


霞「くっ… パワーが、負けて…!」

長波「これで決める!」

霞(覚悟、決めるしかないわね…!)

霞「ここで負けるかっ…! アクロス!」


クローにエネルギーを収束し結晶化させていくガルムを相手に霞は意識を研ぎ澄ます。自分でも驚く程にクリアになった意識の中、霞の前にはある光景が蘇った。

『燃える船』と『冷たい水』。自分の心の奥底にある風景、蓋を閉じても漏れ出す悪夢のような記憶の一端。


霞(私の『光景』なんだ、これが… だったら私は…)

霞「それを、超える…!」


だが『炎』と『水』だけでは勝つ事は出来ない、霞はそう断ずる。だからこそそれを超える、より上の力を『想像』する。

海風が、自分の『共犯』が目の前でそうやったように彼女も自分の中のイメージを整え、ソレを解き放つ。


長波「これでっ!」

霞「『アクロスバースト』ッ!」


放たれる結晶の刃、しかし溢れ出す『ソレ』がその刃を押し留めて相殺する。在り得ない光景に長波は唖然となった。

デブリから起き上がった『ブラストアクロスZZ』、その機体のクリアパーツは紫の光を帯びる。だが機体からあふれ出しているのは灼熱の、粘性のある溶融物質たる…


長波「『溶岩』…!?」

霞「それだけじゃ、無いのよ!」

長波「何っ!?」


霞がガルムを睨むと同時に機体の周囲に『結晶』が形成され、ZZが右腕を翳すと同時に長波へと『結晶』が襲い掛かる。

長波は咄嗟にバックで結晶を避け、再度物陰へと隠れた。霞が発現させたのは『熱い炎』の上位たる『溶岩』、そして『冷たい水』の代わりに出たのは…


長波「『氷』もかよ…!」

霞(炎の赤と水の青、合わせて紫で私の『色』…)

霞「悪いけど、私は負けないから! ここで、この力でアンタを倒してみせる!」
617 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/19(日) 02:19:23.03 ID:MgWHHcTlO
side-海風-『創造と破壊』


海風「このバトルフィールド、廃棄コロニーまであるなんて…」


逃げる『マーナガルム』を追撃している最中、コロニーの残骸の内部に侵入した海風。周囲を警戒しているとセンサーが警報を鳴らす。

ロックされた、咄嗟に海風はライフルを構えて迎撃態勢へと移行する。だが意外にも阿武隈の操る『マーナガルム』は無防備のまま目の前に姿を現した。


海風「…ロックしたのにビームすら撃たないなんて、故障でもしましたか?」

阿武隈「違うよ。不意打ちってするのもされるのも嫌いだから」

海風「あ、はい」


拍子抜けする海風だが阿武隈から敵意が消えていないのに気付き再度警戒を行う。そして阿武隈もまた海風の敵意を受けて戦う姿勢を取る。

しかし睨みあうだけで一行に戦闘は始まらない。そこで阿武隈は目の前の敵に問うた。


阿武隈「…貴女は、貴女達はここまで戦い抜いて来た。何十人、何百人もの夢を踏み躙って」

海風「え…?」

阿武隈「何の為に? どうして、ここまで来たの? 私達にはあるよ、ちゃんとした理由が」


この問いは彼女の意志を確かめるためのもの、海風が自身と戦うに相応しい『理由』を持っているか確かめたかったのだ。

海風は一瞬言葉に詰まった。何故敵にそんな事を問うのか、と。海風は質問を返す形になったが、阿武隈へと問う。


海風「じゃあ何故貴女達はここまで来たんですか」

阿武隈「大事な人に報いるため、かな? 導いて、力をくれた、一番大事な人に」


阿武隈は目を瞑る。かつては空っぽの兵器だった自分に『人としての生き方』をくれて、進むべき道を創ってくれた人が居る。

その恩に報いたい。 彼女が作ったガンプラが『一番』だと轟かせて、そして今の自分が彼女のお陰でそこまで辿り着けたと見せてあげたいから。


阿武隈「だから私はここに居る。何百もの夢を踏み躙ってでも、叶えたい想いがあるから」

海風「叶えたい想い…」

阿武隈「貴女の夢に、勝ちたいって想いにそれだけの重さはある?」


彼女の問いに海風は心の中で答えを探す。上辺だけを取り繕った答えなら誰にだって出せるだろう、

だがこの問いにだけは自分の本心、そして心の中の本音をぶつけなければ彼女は納得しない。そして海風は口を開く。


海風「…最初は、自分のためでした。 誰かに認められたい、自分の居場所が欲しい、ただの自己承認欲求でした」

阿武隈「…」

海風「だけど今は違う。心の中から負けたくないって思ってる自分が居る。 そして自分が創る『勝ち』の先を、明日の先を見たいから…

皆と一緒に明日を創って、その先に何があるかをこの目でみたいから。だから、ここまで来ました」


それが海風の本心だった。自分に価値を見出せず、何もかもが曖昧だった少女はもう居ない。ちゃんと世界に『色』があって、想いにも『色』がある。

その答えを聞いた時阿武隈は笑みを浮かべた。おかしい、などとは思って居ない。ただ彼女が戦うに相応しい相手だとちゃんと認識できたからだ。


海風「おかしい、ですか?」

阿武隈「全然。言ってる事は青臭いけど、羨ましいくらい真っ直ぐでしっかりしてるし。だけど、譲れないものはこっちにもあるから…」


クローアームを展開する阿武隈、マーナガルムの加速性を以ってすれば海風との間合いなど即詰められる。

そして海風も即座に判断を行いライフルを投棄し、『アズライトウイングブレイド』2本を連結させたものを右腕に、さらにもう一振り連結させたブレイドを左腕で構える。


阿武隈「だから、貴女の夢はここで『壊す』! 解き放て、アンチェイド・ドライヴッ!」

海風「皆の想いで、勝利を『創る』ために! 解き放て、アズライト、バースト!」
618 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/22(水) 02:36:17.97 ID:bYJirayk0
宇宙空間で剣の鍔迫り合いの火花が飛び散り、2機の高速の機体が宙を駆けながらぶつかり合う。

神通の放つ一閃の衝撃波がデブリをバラバラに切り裂きヴェズルフェルニルの道を塞ぐが、陽炎は一つ一つを見極め躱し妨害を意に介さない。


神通「やはり小細工は…!」

陽炎「倒したきゃ、直接斬ってみなさい!追いつけるもんならね!」


陽炎が機体を反転させて再度、ジャスティスとヴェズルフェルニルは切り結ぶ。

その頃霞は『ガルム』を相手に奮戦し、長波をギリギリのところまで追い詰めていた。


霞「こいつを、受けろ!」

長波「もう何でもアリだな!?」


機体から溢れ出す溶岩、ほぼマグマと言って差し支えないようなものをムチ状にしてガルムの左脚に巻きつけるZZ。

そして動きを止めたところに氷の塊が襲い掛かるが長波はシールドでそれを防ぎつつマグマから左脚の膝関節から下を切り離す。


海風(攻撃軌道予測! 最適な回避・防御パターン推定! まだ…!)

海風「ッ…!」


『スフィア・フォーカス・ビームキャノン』の軌道を全て予測した海風は回避機動を行いつつ躱しきれない攻撃をシールドで吸収する。

だが間髪入れずにマーナガルムが迫り、右腕から放たれたクローアームの打撃がシールドを粉砕してしまう。


阿武隈「これで、そっちの吸収能力は!」

海風(あちらは機体そのものに吸収機構を付与してある、これで『粒子量に比例しての性能向上』のアドバンテージは向こうだけになった…

あと3分もすれば完全にこちらまで追いつく、それまでに『マーナガルム』を倒せなければこちらが負ける!)

海風「だとしても!」


翼から溢れ出す粒子を左腕のブレイドに纏わせて放つ『ウイングガンダム・アズライト』。その一撃は完全に直撃コースだったが阿武隈は咄嗟に『スフィア・クレイドル』を展開して防いでしまう。

しかし完全にダメージを無効化できた訳ではなく、胸部装甲に内蔵されているフィールド発生器が損壊し廃コロニーの壁面に叩きつけられた。


阿武隈「やるね、だけど!」

海風(頭が…! 限定予測でも、あと2分もすれば限界だ…!)

海風「負ける訳には…!」



愛宕「戦況、見立ては?」

萩風「霞さんは優勢、姉さんは拮抗、海風さんは… 劣勢、でしょうね」

天津風「予測の力、使って無いの…?」

朝雲「多分、使ってる。だけど『マーナガルム』は遠隔操作兵装が多い分、動きが読み難いのかも…

だとすればそれが原因で脳にかなり負荷がかかってる筈よ。 海風の予測、もう長くはもたないかも」

萩風「さらに言えば通常の粒子環境下における『アズライトバースト』は他のバーストと比べ特殊性もなく、粒子吸収機構の喪失で弱体化が起きています。

それに比べて『マーナガルム』は時間の経過で性能が上がり続けています。あと1分以内に決着をつけない限り、海風さんの負けは確実かと」

愛宕「残り4分、どうなっちゃうの…?」



視点選択 直下
1.神通『無限に至った先』
2.霞『乗り越えた先は』
3.瑞鳳『世界を焼く真紅の業炎』
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 09:36:44.97 ID:hEoX2j6+0
3で
620 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/23(木) 02:43:22.75 ID:qgy2CTDg0
side-瑞鳳-『世界を焼く真紅の業火』


ニムバス「ぐぅっ…!『真紅の戦乙女』、貴様…!」

瑞鳳「まだだ、もっと燃え上がれ!」


武器を全て投棄したエピオンがスクランブルをその身一つで圧倒する。どれだけ傷付こうと、体が焼ける痛みに襲われても彼女は耐え続けていた。

スクランブルも武装を全て破壊され、各部を再生させることで形をギリギリ保っているという有様であり既にニムバスに勝ち目は無い。


ニムバス「その力とて、貴様の身を食い潰すものだ…!何故そこまでして戦える!?」

瑞鳳「この程度、あの子達の苦しみに比べたら!」


嫌いだった。戦うことしか出来ない自分が、定められた道を進むしか出来なかった自分が、拳を振るい敵を倒すことしか出来ない自分が大嫌いだった。

だけどそんな自分を慕ってくれた人が居る。仲間や教え子、そして未来の娘達。だけど彼女達は要らぬ戦いに身を投じ、『苦しみ』を背負ってしまった。全部、自分のせいで。


瑞鳳「私が、止められていたら!」


昏睡病、EXAMナノマシンの流通を完全に阻止出来なかったことが原因で多くの犠牲者が出た。その怒りを込めて左拳でスクランブルの頭部を殴り、首関節を叩き折る。

彼女の怒りは収まらない。左腕を掴んで炎を纏った手刀で左腕の関節を破壊し、腹部に右拳を一発叩き込み壁際へと追い込んでいく。


ニムバス「ガッ…!?」

瑞鳳「私が、護れていたら!」


両肩の関節を外した上で力任せで引きちぎり損傷部位を炎で炙り溶かす。機体の損傷部分が溶かし、元の形へと再生を封じた瑞鳳はさらに拳を叩き込む。

自分が無力なせいで教え子達を戦いに巻き込み心に傷を負わせてしまった、そんな自分を瑞鳳は許す事が出来ない。そして何より…


瑞鳳「私が、弱くなければ… あの子達は苦しまずに済んだのに!」


未来の自分の死のせいで娘達が、神通と萩風が過酷な運命へと身を投じることになった。何もかもが自分が原因で、何もかも私の弱さが招いたこと。

だからこそ敵以上に不甲斐ない自分が許せない。故に彼女は戦う、『未来の自分』、『弱さを抱えたまま進み続けた自分』の過ちを繰り返さないために。


瑞鳳「私のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと、轟き叫ぶ!」


右拳が黄金色に輝き、背後から炎が大量に放出されその炎はアリーナにも延焼し、会場全体に火の手が及ぶ。

そして瑞鳳は決別の一撃を、全てを終わらせる一撃をニムバスの操るスクランブルの腹部へと叩き込んだ。


瑞鳳「爆熱!ゴッドフィンガァァァァァァァァッ!」

ニムバス「カハッ… こ、これで終わりと、思ってい…」

瑞鳳「ヒート、エェェェェェェェンドッ!」


そのままスクランブルを爆散させるエピオン。そして瑞鳳は息を整えると火の手の回りきったスタジアムを見回し呆れ返る。

これって幾らの負債になるのか、とか大会継続が出来るのか、とか他愛のないことばかり考えているが…


瑞鳳「…これ、私も逃げなきゃだよね?」


このままここに留まればエピオンが溶ける。と言うかもう所々溶け始めていた。スクランブルを破壊した影響で粒子結合が崩壊しつつあるが延焼した炎自体は本物で、実際に熱を持っているのだから。

全力を出し切った直後かつ痛覚共有で散々ダメージを負った肉体にムチを打って彼女はエピオンを操り急いで脱出を敢行する。 仲間達の居る、還るべき場所へと… ただ一つ頭を抱えながらだが。


瑞鳳「どう言い訳しよう、この大惨事!?」


視点選択 直下
1.神通『無限に至った先』
2.霞『乗り越えた先は』
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/23(木) 03:36:14.60 ID:kifA7TFzO
1
622 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/25(土) 02:07:25.95 ID:gfuf+aVg0
side-神通-『無限に至った先』


結晶を刀身に纏った『グラム』を振り下ろす陽炎、その一撃を神通は両手の剣で防ぎ鍔競り合う。

しかし幾度もの打ち合いによる磨耗と軽量化した影響で生じた強度差が決定的となり、ついに『光忠』『貞宗』の刀身が砕け散った。


神通「ッ…!だけど!」


後退し距離を取って今度は腰にマウントしていた『兼光』『兼定』を構えようとする神通だが陽炎は追撃し蹴撃を放ってサーベルの柄を落としてしまった。

そして正面からグラムによる斬撃を加えようとする『ヴェズルフェルニル』に神通はボディーブローを放つ。


陽炎「何っ…!? って当然か、そっちが『本命』だものね…!」

神通「私に拳を使わせるなんて…!」

陽炎(今の一撃で機体にガタが出始めた、システムを維持すれば保って1分ってところね… さっさと決着を着けないと、負けるのはこっちよ…!)

神通(痛覚共有の痛みを躊躇ってなんか居られない…! 一瞬でも躊躇えばこちらが負ける…! ここは真っ向から打って出るしか…!)


向き合う『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』と『ヴェズルフェルニル』。お互いに腹は括った、あとはぶつかるだけ。

先に動いたのは『ヴェズルフェルニル』、陽炎だった。陽炎は持ち前の運動性と高速を活かしジャスティスの背後へと回り込む。


陽炎「これで決めるっ!ヴェズルフェルニル!」

神通(既に動きは見切った、後は私次第… 確実に仕留めるには…!)

神通「私のこの手が真っ赤に燃える…!勝利を創れと轟き叫ぶ!」


黄金色に輝くジャスティスの掌、そして迫るヴェズルフェルニルの不意を突く形で彼女は技を放つ。

ヴェズルフェルニルの粒子結晶で覆われた『グラム』の刀身が振り下ろされ神通も己が一撃を放ち、拳と剣がぶつかり火花が飛び散る。


陽炎「嘘っ!? だけど、負けるかぁぁぁっ!」

神通「アンリミテッド、フィンガァァァァァッ!」


勝負は互角かと思われた、だが次の瞬間『グラム』の刀身が粒子結晶ごと砕け神通の掌がヴェズルフェルニルを捉え、その胸を貫いた。

神通は一気にエネルギーを流し込み、完全にヴェズルフェルニルを破壊しようとするが…


神通「フォール、エン…」

陽炎「タダで、終われるか…!」

神通「しまっ…!?」


神通は失念していたのだ。ヴェズルフェルニル、『ユニコーンガンダム』シリーズには基本的に腕部にサーベルが付属していることを。

そして陽炎はそのサーベルを展開し、『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』の腹を貫き、神通は『刺された』感覚に襲われる。


神通「がッ…!?」

陽炎「一矢は、報いたわよ…!」


粒子の循環が途絶え、2機のクリアパーツから光が消えた。 『アンチェインド・ドライヴ』と『フルブルームバースト』が機能を停止し、機体から火花が溢れ出す。

そして次の瞬間、2機のMSは爆散し宇宙の藻屑へと消えていくのだった…
623 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/27(月) 03:32:32.51 ID:3ezUFqeh0
side-霞-『乗り越えた先は』


霞「機体の粒子残量が…!」

長波「あんな大技、バカみたいに使うからだ!」


機体のエネルギー残量が底を尽きかけている『ブラストアクロスZZ』に『ガルム』が左クローの斬撃を放ち、霞はモーターブレードで防御する。

先ほどまでとは打って変わって霞が追い込まれていた。それは機体内部の粒子を『マグマ』『氷』と言う形で具象化、攻撃へと転化させたことによる大量消費が原因だった。


霞「アンタだって、ギリギリの癖に…!」

長波「こっちは元からカツカツなんだよ!」


しかしガルムのパワーは『アンチェインド・ドライヴ』の影響で上昇し続けており、パワーダウンしかけているZZよりも高い。

形勢の不利を悟った霞は一度距離を取りダブル・キャノンとミライルランチャーによる一斉砲撃を行い、ガルムを攻撃するが長波が展開した『スフィア・クレイドル』に防御されてしまう。


長波「効かないよ、そんな攻撃!」

霞「防御フィールド…!」

霞(どうすれば良いのよ、アレ…!ハイ・メガでも防がれるか、減衰させられるかもしれないし、何より当たる可能性が低い…

でも他の攻撃じゃ絶対に火力が足りない… 『アレ』、やるしか無いわね…!)


霞はシールドを投棄し真っ向から『ガルム』へと機体を突撃させる。絶対に長波は自分の手で倒す、そう決めた以上取れる道はただ一つ。

紫色に輝くクリアパーツから再びマグマが溢れ出し『ガルム』へとソレを振るう。


長波「糞っ… なけなしの粒子で、やけっぱちか!」

霞「違う! もう少し保って、『ブラストアクロスZZ』!」


鞭状のマグマを切り裂こうとした長波が右腕のクローを振るう。しかしその動きこそが霞の最大の狙いだった。

右腕にマグマの鞭が纏わりつき、クローの展開を封じてしまう。長波は振り払おうと機体の腕を振り回すが…


霞「『凍れ』!」

長波「何っ!?」


鞭状のマグマを氷が覆い尽くし、瞬間的に冷却されたマグマが凝固して石化する。長波は唖然となって一瞬思考が止まってしまう。

霞はその隙に乗じて距離を詰める。 ようやく霞の意図に気付いた長波だが既に遅く、霞は機体の残るエネルギーを全て『一撃』へと集めながらガルムへと迫り…


長波「このっ!やらせるかよ!」


残る左腕のクローを振るい、迫るZZの胸部へとそのクローを突き立てる長波。 しかしクローが貫けたのはFAによる追加装甲のみだった。

そして霞の目論見は功を奏し、ガルムの左腕を凍らせることで長波の逃げ道を封じ、その上で『スフィア・クレイドル』の展開範囲の内側へと入ったのだ。


霞「この距離なら、バリアは張れないわね!」

長波「放せ、このっ!」

霞「ハイ・メガ・キャノン、フルパワー!コイツを、喰らえぇぇぇぇぇぇぇっ!」


放出される極大のビームが防御することすら出来なくなった『ガルム』に直撃する。だが直撃しても粒子残量の不足により威力が減衰していたのか頭部を吹き飛ばし、腹に大穴が開いた程度のダメージだった。

しかし致命傷には相違なく、ガルムは大爆発を引き起こし接射を行った『ブラストアクロスZZ』はそれに巻き込まれ、大破してしまう。


霞「粒子残量ゼロ、損傷レベルは機体戦闘続行不可… ここまで、か…」
624 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/27(月) 04:47:17.39 ID:3ezUFqeh0
side-海風-『拮抗の果てに』


『スフィア・フォーカス・ビームキャノン』をブレイドで切り払い、背後から襲い掛かる『スコール』を振り向き様に展開した左脚の『グリフォン・ビームブレイド』で切り裂き破壊する。

海風の脳は限界に近付いていた。それでも未来予測演算の行使を止めず、阿武隈の『マーナガルム』へと喰らいつく。


阿武隈「やるね… だけど…!」

海風「っ、はぁ…!」

海風(『アンチェインド・ドライヴ』の力はもう『アズライトバースト』を上回ってる… 残る勝ち筋は…!)


脳が限界に近付き機体もパワー負けしている以上、技量の劣る海風に既に勝ち筋は殆ど存在していない。しかし『チーム』としての勝ち筋は残っている。

自爆覚悟でマーナガルムを破壊する、そして残るメンバーへと全てを託す。それが『フリューゲル・ヴェント』として『勝利』への最適解だったのだが、神通と霞の機体ステータスが『戦闘不能』へと変化してしまった。


海風「先輩と霞が… でも『ガルム』と『ヴェズルフェルニル』も…」


二人は敵対する2機と相討ちになった、その事実に海風の顔が青ざめる。もう既に勝ち筋は殆ど無い、それどころか勝機が絶望的になったのだから。

しかし海風は絶対に諦めない。ここで負ければ語った想いが、積み重ねた今までが全部無駄になる。譲れない想いがある以上、諦めたくない。


海風「まだ負ける訳には…!アズライト!」


海風の意志に応えるように『ウイングガンダム・アズライト』のツインアイが輝き、各部のクリアパーツが強い輝きを帯びる。

だが相対する阿武隈もまた、勝ちを譲るつもりはなく『全力』を以って海風を倒そうと、最後の切り札を切った。


阿武隈「行くよ、マーナガルム… ジェネレーター・フルドライヴッ!」

海風(『ファイナルウルフストライク』、キジマさんを打ち破った技… 今の『マーナガルム』が使えば限界を迎える筈…!

勝機は、ここに賭けるしか無い… 分の悪い博打ですが、やるしか道は無い…!)

海風「アズライト…! 勝利を、この手で創るために!」


両腕の『アズライトウイングブレイド』に粒子が収束し、膨大なエネルギーを剣が纏い海風は迎撃態勢を整える。

そして次の瞬間、阿武隈の『マーナガルム』が突撃を行いアズライトに迫った。


阿武隈「ファイナルウルフ、ストラァァァァイクッ!」

海風「これで、終われぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


海風も両腕のブレイドを振るい収束させたエネルギーを解き放ち、放たれる刃がマーナガルムと激突する。どちらも一進一退、互いに退かずそしてその余波で周囲のデブリや廃コロニーは吹き飛ばされていく。

しかし勝敗は決してしまった。『アズライトウイングブレイド』の刃がエネルギーに耐え切れず、砕け散ってしまったのだ。


海風「しまっ…!?」

阿武隈「勝負、ありだよ!」


そのまま突っ込んできたマーナガルムにより廃コロニーの残骸へと叩きつけられるウイングガンダム・アズライト。

諦めずに海風は足掻こうとするが『アズライトバースト』の粒子循環が途絶え、機体のパワーがダウンを始めてしまう。


海風「な、何!?」

阿武隈「勝負、ありだよ」


振り下ろされるクローアームが目の前に迫り、海風は目を瞑る。 ここで終わってしまった、その絶望が心に押し寄せ海風は諦めてしまう。

しかし耳に響いたのは機体の爆発音や負けを知らせる音声などではなく、意外なシステムボイスだった。


『OVER THE TIMELIMIT BATTLE ENDED』
625 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/27(月) 05:11:28.54 ID:3ezUFqeh0
天津風「時間切れ…?」

愛宕「確か大会規定じゃ残存機体の数で勝敗が決まる…」

朝雲「先輩の機体はもう駄目、霞の機体も戦闘不能判定、海風の機体は生きてるけど…」

萩風「そしてそれは向こうも同じ… 残るのは『マーナガルム』一機のみです」

天津風「延長戦にもつれこんだ…」


『制限時間となりバトルは終了、両チームとも2機を撃破… 従って、大会規定通りインターバルの後代表者同士による延長戦を行います』


阿武隈「…首の皮、一枚繋がったね」

海風「いえ、あれは海風の負けで…」

阿武隈「違う。勝負はまだ終わってなかった。機体が少しでも動く限り、まだ負けじゃ無い」

海風「阿武隈さん…」

阿武隈「だから次は、延長戦は私が絶対勝つ」

海風「海風も、負けるつもりはありません」


『また現在、近隣施設で発生中の事故の調査・確認のためインターバルの時間を1時間に延長します。皆様、ご理解の方をお願いします』




神通「うぅっ…」

霞「先輩、大丈夫ですか…?」

神通「ダメージのフィードバックが… だけど、大丈夫です…」

萩風「無理しないでください。立つのもやっとの有様で」

神通「でも機体修理をしないと…」

天津風「運営側から許可を頂いてきました。ここからは私と萩風が引き継ぎますから、先輩は朝雲と医務室に行って下さい」

神通「お願いします…」

海風「萩風さん、機体の方は…」

萩風「…思った以上に酷いです。『アズライトバースト』による過剰負荷の影響で、外装は無事でもフレームが軋みをあげています」

海風「そんなにダメージを…」

萩風「そして何より… 根幹である『アズライトバースト』のコア、メインコアは無事ですがサブコア2つが完全に逝きました」

海風「最後の、一撃が原因ですか…!」

霞「それって、ヤバくない…?」

萩風「ヤバイどころの話じゃないですよ… 天津風さん、外装と武器は任せます。こちらのコアとフレームは私がやりますから」

天津風「アズライトをそのまま使うつもり?」

萩風「確かにインターバル延長はしていますが『ロンギフローラム』も『ブラストアクロス』を直すには時間もパーツも足りない。

唯一無事かつ、損傷が軽微な『アズライト』を使う以外道は…」
626 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/28(火) 01:36:54.32 ID:3t2pdRCp0
萩風(とは言ったものの… アズライトのサブコアが破損してるからバーストは使えない。

フレーム自体は共通部品が多いから『フルブルーム』と『アクロス』の生きてる部品を使えば直せなくはないけど…)

萩風「…海風さん、決断をしてください」

海風「決断、ですか」

萩風「今選択肢は2つあります。1つは『現状のままバーストを封印すること』、これならバーストが使えない以外機体出力はそのままで戦えます。

二つ目は『『フレブルーム』か『アクロス』用のコアを移植すること』です。コアもほぼ同一規格ですし、海風さんなら両方の『特性』を行使可能でしょう」

海風「でも海風は明鏡止水には…」

萩風「フルブルーム自体は一定ラインの閾値を越える『意志』があれば誰にでも行使可能です。かなり高めのラインが設定されていますが、海風さんの精神力なら問題なく行使可能でしょう。

それにアクロスもクリアパーツの量は素の状態でもZZを上回ってる以上、余裕で使えると思います。ただあくまでも『使える』だけですが…」

霞「それって、全性能は発揮できないってこと?」

萩風「はい。だけど素の状態で戦うよりは勝機はあるかと」

海風「…それでも、確率はかなり低いでしょう」

萩風「ですが、それで負けたとしても誰も文句は…」

海風「…」

霞「納得しない、って顔だけど」

萩風「我侭を言わないで下さい。これ以外の選択肢は…」

天津風「萩風、1個選択肢隠してるわよね」

霞「天津風?」

天津風「前に瑞鳳さんが『アズライトは同系統のコアを3つ積んでる』って言ってて、今萩風は『他の機体のコアはほぼ同一規格』って言った。つまり…」

海風「『2機のコアをサブの代替にできる』、と言う事ですか…!」

萩風「…理論上は可能です。だけど敢えて選択肢から外したのは…」

「『何が起きるか分からない』、でしょ?」

萩風「お母様!?」

霞「戦いは…?」

瑞鳳「全員、ぶっ潰してきたよ。今頃、警察とか自衛隊にとっ捕まえられてると思う。確かに代替コアに二人の機体のコアは移植できる。

だけどそれは3つのコアに付与された能力が同時に発現しちゃうんだよ」

萩風「海風さんの『粒子量に比例して性能が向上する能力』と姉さんの『人の意志に比例して性能が向上する能力』、霞さんが先ほど発現させた『イマジネーションを粒子を用いて具象化する能力』の3つの特性…

これを行使すれば、海風さんや機体の負荷だってバカにならないし本当に何が起きるかだって予想すら… 最低でもこの前の別荘の戦いで使ったアレレベルの何かが…」

霞「アレ以上のものが…?」

海風「構いません。 危険は承知の上、それにその程度も御せ無ければ海風に『戦う』資格はありません」

萩風「…」

瑞鳳「やってあげて、萩風ちゃん」

萩風「…はぁ… どうなっても、知りませんよ」
627 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/28(火) 02:16:03.57 ID:3t2pdRCp0
陽炎「…どうやら、あっちの揉め事も終わったみたいね」

阿武隈「どう、直りそう?」

長波「ぶっ壊れた部分はね。 改RX-0が共通パーツ多くて助かったよ…

あと背中には陽炎のヤツを移植、胸部装甲には私の使ったから『スフィア・クレイドル』も展開できる」

阿武隈「それだけあれば充分だよ、あとは向こう側を待つだけだね」



天津風「外装は出来たわよ」

萩風「こちらもフレームはなんとか直せました。それに不本意ながらコアも…」

海風「ありがとうございます。これで、戦えます」

天津風「二人の機体の部品も使った、決戦仕様よ。これで存分に戦って来なさい」



ウイングガンダム・アズライト (決勝戦仕様)
武装
・ツインバスターライフルアズライトNEX(サーベル内蔵)
・メッサーツバーグ・ラズールスタイン×6
・アズライトバスターソード×2
・マシンキャノン×2
・ビームガン兼ビームトンファー×2
・グリフォン・ビームブレイド×2
・脚部内蔵パイルバンカー×2
・ハイ・メガ・シールド
・ファトゥム-02
・頭部ハイ・メガ・キャノン
・腹部ハイ・メガ・キャノン
・フィン・ファンネル×3
・刀剣型ビームサーベルビット『兼光』『兼定』

概要
ウイングガンダム・アズライトを対・阿武隈用に、『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』『ブラストアクロスZZ』のパーツを使用し応急処置を施した機体。
2機の武装を受け継いでおり射撃武装も多いが切り離すことも可能であり、デッドウェイトにはならない。またZZのFAも一部使用し防御能力も向上している。
そして破損したサブのコアの代わりに『フルブルームバースト』『アクロスバースト』用のコアを使用、その為誰にも予測できないような能力を持つ可能性がある…
628 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/30(木) 03:38:12.87 ID:ssS5jdIy0
形成された砂漠のフィールドに降りる『ウイングガンダム・アズライト』。斃れた仲間達の武装を受け継いだ藍銅鉱の翼は悠然と敵を待ち構える。

そして少し遅れて地面に着地した『マーナガルム』。阿武隈は不敵に笑うが殺気を隠さない。


阿武隈「やっぱり、出てきたね」

海風「この機体は海風の機体ですから。例え、誰かに貰った機体だとしても… 駆け抜けてきた時間は、積み重ねた『これまで』は嘘じゃないから」


海風と『ウイングガンダム・アズライト』は一緒に駆けてきた。機体の姿形が変わろうと、彼女自身が変わろうと共に駆けたという事実は変わらない。

互いに足りないから補いあって、苦楽を共にした愛機に心で海風は語りかける。


海風(やっぱり貴方は海風と『同じ』だったんですね)


最初は不完全だった。力を使えば壊れるからと枷を嵌められた『ウイングガンダム・フレスヴェルグ』と、何も持っていなかった海風。

『フレスヴェルグ』は新しい力と『アズライト』の名前を得て、海風も様々なものを得た。きっとどちらかが欠けていればそうはならなかっただろう。


海風「力を貸して。 この戦い、絶対に負けたくないから」


機体が唸りをあげ、別荘での戦いで感じた『最高の一体感』が再び訪れる。そして海風も少し微笑み、操縦桿を強く握り締めた。

覚悟は決まった、後は一緒に駆け抜けるだけ。 仲間達の想いを全て背負った、最高の『半身』と共に。そして無機質な音声が鳴り響き、戦いの幕が上がった。


『BATTLE START』


阿武隈「行くよ、『マーナガルム』! 解き放て、『アンチェインド・ドライヴ』ッ!」


最初に動いたのは阿武隈だった。機体のリミッターを解除し鎖を全て解き放つ。

蒼い燐光がフレームから溢れ出し、各部の粒子吸収機構が稼動を始めて輝きが増す。そして海風も続き、SPスロットの力を使う。


海風「先輩と霞の分まで行きますよ、『ウイングガンダム・アズライト』! 解き放て、『アズライトバースト!』」


『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』と『ブラストアクロスZZ』のコアが橙色と紫に輝き、その直後に機体本来のコアが蒼い光を放ち2つのコアも蒼く染まる。

そして天に昇るような蒼い光の柱が形成され、各部を『宝石の鎧』が覆いつくす。そして宝石の翼が形成されたのを確認した海風は『メッサーツバーグラズールスタイン』とライフルを連結させ、照準をマーナガルムへ向けた。


阿武隈「その力、例の…!」

海風「この力は二人の『想い』を受け継いだもの… これで、貴女を倒す!」


フィン・ファンネルを射出し前面に展開、さらにシールドのビームキャノンの砲口も同時に照準を合わせる。

そして結晶がライフルの銃身とシールドの砲口、そしてフィン・ファンネルを覆い海風は引き鉄を引く。


海風「まずは、これで!」


放たれる超大出力の砲撃、『ブラストアクロスZZ』のハイ・メガ・キャノンの威力の数倍はあろうビームがマーナガルムに襲い掛かった。

阿武隈は間一髪機体を上昇させて射線から逃れるがその威力に戦慄する。明らかに牽制射を超える一撃であり、普通の機体なら粒子を全て消耗しきるであろう一撃を平気で放っているのだから。


阿武隈「最初からトばすね… ならこっちだって! 『ネージュエール』!」


背部の光の翼の余剰エネルギーが無数の刃に形成されてアズライトに殺到する。海風は銃火器全てを投棄し、『兼光』『兼定』を抜き放つ。

そしてビームの刃の雨を掻い潜りながら『マーナガルム』へと肉薄した。
629 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/09/02(日) 04:03:02.86 ID:r9nFI0U40
霞「あの力、あの時と同じ…」

瑞鳳「違うよ。同質だけど、発生原理は全く違うから」

萩風「…また、何を仕込んだんですか」

瑞鳳「仕込みはしたけど、仕込んだのは大分前… 機体をアズライトに改修した時だし使う事ないだろうから封印してたし」

愛宕「原理が違う、って?」

瑞鳳「前の現象、『アズライトバーストイレギュラー』は海風ちゃんの意志がアリスタを経由して機体自身と共鳴したことで起きたこと。

今のは想定外だけど想定内、『アズライト』を核に『フルブルーム』『アクロス』のコアが共鳴したことで『2つのコアに予め定められた力』を引き出してる状態なの」

天津風「それって『RGハウリング』の…」

瑞鳳「2機のRGシステムを共鳴させて機体能力を増幅させる『RGハウリング』の発展型、って感じかな。問題はその必要なく海風ちゃんが同質の能力を単一で発揮させちゃうことだけど…」

霞「想定外だけど想定内って、コアが3つ共鳴してるのは想定内じゃ…」

「本来ならコアを搭載した3機が共鳴する事で能力を引き出す筈が、単一の機体に3つのコアが収まってしまったことで能力が発動しているのが想定外、と言うことでしょう」

瑞鳳「あれ、もう大丈夫なの?」

神通「ええ、お陰で散々ですが… まだ痛みますし…」

朝雲「フルブルームの弱点ね、ファイターとの感覚共有は… アクロスも燃費が劣悪なのも難点だし」

瑞鳳「やっぱフィードバックの強制カットは入れといた方が良かったかな… まぁ神通ちゃんの言った通り、3機のコアが1機に集中してる状態で発動してるのが想定外なの。

まぁ『フルブルーム』と『アクロス』の本来の担い手じゃ無い分性能は落ちてるから『イレギュラー』と同じ程度の力に納まってるけどね」

天津風「3機が共鳴した時、何が起きるんですか?」

瑞鳳「さぁ?」

萩風「さぁ、って… 無責任過ぎるのでは?」

瑞鳳「だから封印してたんだよ。 本気で『何が起きるか分からない』。 三人のファイターが機体にリンクした状態で3機が共鳴すれば…

意志が増幅されて粒子の持つ『人の心に反応する特性』の影響でそれこそ物理法則を超えた何かトンデモない現象が起きる可能性だってある」

朝雲「萩風と先輩のように時間を遡って過去に行く、とか?」

瑞鳳「その可能性もあるし、もっと別の事象だって起こせる可能性も… 少なくとも手に負える範疇の事じゃなくなるから共鳴能力は封印したんだよ。

でもコアを1つの機体に纏めて搭載した結果、粒子循環によって物理的なリンクが出来て共鳴しちゃったって訳」

萩風「つまり私、間違った事言ってませんでしたよね?」

瑞鳳「…」

神通「何か言ってください、お母様」

愛宕「ま、まぁ今の所は何も起きてないんだから…」
630 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/09/02(日) 05:53:12.96 ID:r9nFI0U40
海風「はぁぁぁぁっ!」

阿武隈「今度は、こっちが押されて…!」


振り下ろされる2本の刃を右腕で粒子結晶のバリアを形成することで受け止めるマーナガルム。先ほどとは打って変わって阿武隈が圧倒される側になっている。

胴に向け阿武隈は左腕でボディーブロ−を放つが海風は瞬時に予測し、生じた隙を逃さず高速で背後い回り込んで『スキーズブラズニル』の翼部を右手の剣で切り裂き破壊した。


阿武隈「このっ…!」

海風「そんな攻撃、当たらない!」


阿武隈は左腕で振り向き様の打撃を放つが海風は即座に後退し、リーチから外れてその攻撃を躱す。そして海風は次の行動を脳内で組み立て、勝利への道筋を創り上げていく。

不敵に笑う海風。予測した無数の未来から『最良』の未来を選び、そこへ至る道をずっと創り出してきた。そして『いつもの言葉』を海風は言い放つ。


海風「整いました、勝利への道筋が!」

阿武隈「そう簡単には、行かせない! リモートドリルバースト!」


右肩部から残っていた『ハティ』を射出し、クローアームで掴みそのまま『ウイングガンダム・アズライト』へと放つ。

海風はマシンキャノンでハティを迎撃し、炎煙を剣で払う。しかしマーナガルムは瞬時に距離を詰め体当たりを行い、ウイングが吹き飛びその衝撃で海風は剣を落としてしまう。


海風「なら、こちらも!」


背中に強引に装着していた『ファトゥム-02』を射出しマーナガルムに直撃させるが、『スフィア・クレイドル』を展開しており機体へのダメージは無い。

さらにクローアームで掴まれた『ファトゥム-02』は握りつぶされ、爆散してしまった。


阿武隈「これで、もうマトモな武器は…!」

海風「果たして、どうでしょうかね?」


スロットを切り替える海風。その直後背中の翼が2枚切り離され、そして二振りの剣になる。海風の『奥の手』だ。

その二振りのバスターソードを掴み、右腕のバスターソードの切っ先をマーナガルムへと向ける。


海風「ブレイドは本命じゃない… こちらが真打です…!」

阿武隈「呆れた… この期に及んでそんなものまであるなんて」

海風「前回は武器ほぼ剥ぎ取られましたからね。それに対する回答ですよ」

阿武隈「だからって、翼まで剣にするのはやり過ぎだよ…!」
631 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/09/02(日) 07:29:19.82 ID:r9nFI0U40
再度激突する『ウイングガンダム・アズライト』と『マーナガルム』。海風と阿武隈、二人の信念がぶつかり合いフィールド上に火花を散らす。

互いに距離を取り、態勢を整え直して向き合い『マーナガルム』は天へと拳を掲げ、『ウイングガンダム・アズライト』は左腕のバスターソードを投げ捨てて残るバスターソードを両腕で構える。


海風(きっと阿武隈さんは『ファイナルウルフストライク』を使う… パワーはさっきの戦闘から推測可能な粒子吸収速度から試算すると、おおよそ互角レベル。

そして向こうの機体もそろそろ限界点を迎えつつあるのは打ち合いで確認済み、持久戦は向こうが許さない。だからこそ勝利に至る道はここなんだ)

海風「これが最後です『アズライト』! 二人の力で、勝利の先を…!」


バスターソードの刀身に粒子が集束し、結晶の刃が形成される。機体の外装に形成された宝石の鎧も、腕が砕けないよう防御する最低限以外のものが崩れ剣に取り込まれていく。

阿武隈も全てのエネルギーを機体の右腕に集中させ、ブーストのチャージを始め迎え撃つ準備を整える。


阿武隈(ここで勝負を決めないと、機体が保たない… でも焦っちゃ駄目、パワーは互角だから…!)

阿武隈「行くよ『マーナガルム』…!これが最後の一撃だよ!」


互いの機体に膨大なエネルギーが集束し、その余波で2機周辺に形成されているフィールドの地面が崩れ始める。

そして2機は今、最大の一撃を解き放った。


阿武隈「ファイナル… ウルフ、ストライクッ!」

海風「全てを、断ち切れぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


2機は宙を駆け、振り下ろされた剣と右腕の拳がぶつかり合い、そのエネルギーの余波でフィールド自体が崩壊を始めてしまう。

だが互いに一歩も退かない。そんなぶつかり合いに遂に決着がついた。


阿武隈「『マーナガルム』ッ!」


『ウイングガンダム・アズライト』のバスターソードがエネルギーの放出とマーナガルムの力に耐え切れずに砕け散る。

だがそこも海風の想定通り。 次の瞬間、頭部と腹部にある発射口からビームは放たれた。


海風「ハイ・メガ・キャノン!」

阿武隈「ッ…!」


通常のガンプラなら消し飛ぶであろう一撃、しかしマーナガルムは両腕をクロスさせ防御する。ハイ・メガ・キャノン自体威力がエネルギーの集束率の低下により本来の威力が出ていないから防げたことだ。

だがそれは阿武隈にとって悪手の選択、そしてハイ・メガ・キャノンの威力不足も海風の勝利への筋書き通り。機体の両腕をクロスさせていたことで、海風の姿が見えなくなっていたのだから。


海風「これでぇぇぇぇぇぇぇっ!」

阿武隈「嘘っ!?」


距離を詰めた海風が放ったのはただの左足による跳び蹴り、しかし阿武隈は知らなかった。 『ウイングガンダム・アズライト』の脚部に何が内蔵されているのかを。

蹴りが両腕に直撃した瞬間、足の裏から内蔵されている杭が飛び出し両腕ごとマーナガルムを貫く。パイルバンカー、今まで隠し通してきた『ジョーカー』を海風は最後の最後で使ったのだ。


海風「海風の、勝ちです…!」


機体が既に限界に近付いていた『マーナガルム』にとってその一撃は致命傷になる。ボロボロだった機体はそのダメージの影響で機能を失い崩れていく。

無機質なシステム音が響く中、フィールドに残っていたのは蒼い輝きを帯びた『宝石』の名を冠する機体だけだった。



BATTLE ENDED

Winner"Flügel Vento"
632 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/17(水) 00:27:18.29 ID:oW5+AeCy0
ようやく復旧… ボチボチ再開します



阿武隈「…私が、負けて…」ガクッ

阿武隈(『真の姿』を晒して、アンチェインドまで貰ったのにまだファイターになって半年も経ってない相手に…!)

海風「阿武隈さん!? どうかしましたか!?」

阿武隈「…なんでも無いよ。大丈夫、だから」

海風「そうですか…? てっきり阿武隈さんにも先輩と同じ現象が起きたのかと…」

阿武隈「え」

海風「フルブルームみたいにダメージフィードバックは起きていないようですが…」

阿武隈「そんな危険なガンプラ使ってたの!?」

海風「はい。海風も、ちょっとフラついて…」フラッ

阿武隈「ちょ、ここで倒れないで!?まだ表彰式も残ってるんだからね!?」ガシッ

海風「す、すみません… なんか、全身に力が…」

阿武隈「もう、たかが『遊び』で命削り過ぎだよ…!」

阿武隈(違う。例えフィードバックで傷付いてでも勝ちたい、って思いがこの子にはあったんだ… その『覚悟』が私を上回った、それだけの話で…)

阿武隈「変わったね、貴女も」

海風「え…?」

阿武隈「最初に会った時より、ずっと良い顔してるから」

海風「ならきっと、そう変えてくれたのは海風の周囲の皆のお陰でしょう。先輩が道をくれて、霞が同じ道に立ってくれて、他の皆も同じ場所に居て…

アズライトだって誰かさんと春雨さんが創って、榛名さんがくれた技術で瑞鳳さんが改修して、そして先輩と霞の機体が無ければここには立てなかった。だからきっと、海風がここまで変われたのは皆のお陰なんです」

阿武隈(ここで浜風さんを名前で呼ばないのもらしいけどね…)

海風「それにここまで来たのだって、阿武隈さん達が居たからですよ」

阿武隈「私達が?」

海風「海風達が初めて、そして唯一『勝てなかった』のは阿武隈さん達です。だからそれを乗り越えたい、って思うのも当然でしょう」

阿武隈「…だから、ここまで来たんだ」

海風「もっと早く当たるかなとは考えましたが、まさかここまで縺れ込むとは思ってませんでしたけど」

阿武隈「まぁそこは数奇な因縁ってことに…」


神通「海風さん!」

霞「海風!大丈夫なの!?」

萩風「だから危ないって言ったのに、全く…!」

天津風「やったじゃない、海風!」

朝雲「凄かったわよ、海風!」


阿武隈「ほら、皆も来てるから。行ってあげたら?」

海風「はい。 では阿武隈さん」

阿武隈「何?」

海風「ありがとう、ございました」

阿武隈(ああ、やっぱり… この子には、本当に敵わないなぁ…)


海風(こうして、海風達の戦いにひとつの幕が下りた。 全てのことに一区切りがついてようやく肩の荷が下りると、そう誰もが信じていた。

これから始まる『最後の戦い』… 加速していく運命のうねりに気付く事が無いまま、束の間の勝利に身を委ねるのだった)


第21話『蒼と白、真紅と青』
633 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/17(水) 00:51:19.75 ID:oW5+AeCy0
お久し振りです。>>1です

ここから物語は最終章にはいります。大体シナリオは決まってるので大丈夫です
そして最終章突入なので主人公格の『神通』『霞』、そして割と不遇な『天津風』の強化編(選ばれなければ次々話に統合、もしくは同時系列扱い)をやります
今回は諸事情により霞&萩風、神通&朝雲、海風&天津風と言った組み合わせになることをご承諾ください

次話選択 下3票先取まで
1.霞『Burning/Glacial My Soul』…諸事情により萩風と共に京都へと身を隠す霞。大鯨のツテを辿り、かつて戦った神風達の下へ向かったが追撃するEXAMキャリアーが彼女達へと襲い掛かる。NTとして、彼女はどうEXAMと向き合うのか…

2.神通『My Fate』…朝雲の家族を護るために彼女と暮らすことになった神通。しかし神通も萩風同様、『前の神通』の人格が目覚めつつあり… そんな中でキャリアーとの戦闘に陥ってしまうが…

3.天津風『感情の果て』…海風と共に仙台へと赴く天津風。天津風は未だに自分の中のガンプラ学園への復讐心を拭えない、その最中彼女達へと海風へ一方的な憎悪を抱くスドウ・シュンスケが襲い掛かる…
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 10:12:25.57 ID:QgWzlXw/0
3で
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 13:26:48.29 ID:+QQkoaCoO
3
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 22:56:07.07 ID:oW5+AeCy0
3
637 : ◆6G6UiAPa1Q [saga sage]:2018/10/17(水) 22:59:36.71 ID:oW5+AeCy0
>>636
ごめんなさい、これミスです
無かった事にしてください
638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 13:26:26.92 ID:CorwRJKi0
3
639 : ◆6G6UiAPa1Q [saga sage]:2018/10/20(土) 01:25:57.36 ID:JKaiHStV0
断章『変動する事象』


《静岡某所 EXAMナノマシン製造工場》


古鷹「施設に居た全員の捕縛、完了したみたいです」

衣笠「護衛のテロリストまで雇ってたとはねぇ。ま、衣笠さん達に比べたらド素人にも程があったけど」

SAT隊員「御協力、感謝します。こちら側の被害はお陰で殆どありませんでした」

榛名「いえ、こちらこそ支援に感謝します。今後、クルスト以下メンバーの移送はそちらにお任せします。

物証の類の処分はなるべく早急に。これで『契約』は満了、ですね」

SAT隊員「承知しました。では…」

榛名「さて、向こう側は…」



《世界大会会場 外》


ニムバス「くっ…!」

トリスタン「は、放せ!この!」

警察A「大人しくしろ!逃げられんぞ!」

浜風「テロリスト4名を確保、引渡しを完了します」

警察B「御協力、ありがとうございます。しかし建物は壊滅、ですね」

浜風(瑞鳳さんが『バーニングバースト』を使えばこうもなる、か… いくらなんでもやり過ぎだけど)

夕雲「これで、未来は変わるのかしら…」

浜風「まだ分からない… だけど、細かい事象の変動が大きくなれば全体の流れも変わる筈…」

浜風(この先、何が起きるかは解らない… 念のため、手を打っておくか)
640 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/20(土) 02:07:14.90 ID:JKaiHStV0
《その夜 焼肉屋・個室》


瑞鳳「夜は焼肉っしょ!」(例のポーズ)

萩風「また焼肉… 健康に…」

朝雲「萩風じゃないけど、流石に週に2回目はね…」

瑞鳳「いや、今回は割りと止むを得ない事情があって焼肉なんだけどね。お祝いも兼ねてなんだけど。

ぶっちゃけると私だってお肉はそんなに好きじゃ無いけど、個室で全員で話せるのはここくらいだし」

大鯨「私のツテで借りてるから、盗聴とかは大丈夫よ」

海風「止むを得ない事情?」

神通「一味も捕まえて、施設も抑えたのであれば…」

瑞鳳「だから、だよ。『終わった事だと思い込んでると後で痛い目に合う』、ってよく言うじゃ無い。

対策として、明日から皆をバラバラの場所に夏休み明けまで匿って貰うことにしたの。特に霞ちゃんと海風ちゃんは狙われ易いし」

天津風「霞はまだしも、海風も?」

霞「だって逆恨みとは言っても海風は一味、スドウ・シュンスケに恨まれてるしニムバスにも辛酸を舐めさせてる。狙われるのは当然よ」

瑞鳳「二人ずつに分けて皆を各地に分散させて隠匿することで襲撃のリスクを下げる、って浜風ちゃんが提案したの」

海風「…まぁ、アレの提案なのは気に食わないですが仕方のないことだと思います」

瑞鳳「じゃあお母さん、お願い」

大鯨「まずは海風ちゃんと天津風ちゃん、二人には私達と仙台に来てもらうわ。襲撃の可能性が高い海風ちゃんを護るためには、私達のおひざ元が一番だもの。天津風ちゃんの御両親には連絡済みだし、警護もつけておいたわ」

天津風「仙台には榛名さん達も居るから、大丈夫そうね…」

大鯨「で、霞ちゃんと萩風ちゃんには京都。 京都には私達と似た系統の家系、『人の守護』を生業にしてるところがあるから。既に先方には依頼済みよ」

萩風「何故私を? 単体での強さであれば、姉さんの方が…」

大鯨「萩風ちゃんは気配遮断のスキルがあるし、一応私と同じ鯨流の人間だからよ。本来は流派・東方不敗よりこっちの方が家系的には正統派、だから私の代理としてね」

霞「京都、か… 行くのは初めてかしら…」

神通「では私達は?」

大鯨「東京に残って貰うわ。 だけど可能な限り、二人で行動して。 そうしないと、ご家族に累が及ぶかもしれないから」

朝雲「…もしかして私達って、囮?」

瑞鳳「そう言うわけじゃ無いよ。 バランスとか色々考えた結果だよ。 何がこの先起きるか想像できないから、手を打っておかないと」



神通(既に歴史は変わりはじめている。私が『過去』として学んだ記録よりも大きく、道が逸れ始めていた)

霞(過ぎていく時間は止められないし巻き戻す事なんてできない。だから、『未来』への手を打たないといけない)

海風(出来る事を全力でやって、より良い方向に向かう。それが今海風達のできる最善だから…)」


断章『変動する事象』終
641 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/21(日) 02:27:34.66 ID:wP1CdtwL0
第22話『感情の果て』


《仙台市 仙台駅》


大鯨「はい、ここが仙台よ。長旅、ご苦労様」

海風「思ったよりも栄えてますね…」

榛名「東北最大の地方都市ですから。ただ大きく発展しているのは青葉区などの中心街だけで、他の交通機関で20分もすればド田舎ですよ」

天城「天城の大学のある泉区なんか結構… 都市再開発計画からもハブられてますし」

天津風「えぇ…」

阿武隈「仙台は行政区が泉、青葉、宮城野、太白、若林の5つに分かれてるの。私達が住んでるのは太白で、大鯨さん達の家があるのが宮城野区。榛名姉さんは青葉区ね」

天津風「く、詳しい説明をどうも」

浜風(牛たんの美味しいお店は… 仙台駅の近くにも結構…)

海風「こんな時に、名店の検索をしないで下さい!」ゲシッ

浜風「あだっ!? な、何するんですか!」

海風「食い意地ばかり張って、恥ずかしい…!と言うかなんで居るんですか!」

浜風「だって折角だし… それに私も一応護衛として…」

海風「はぁ… 絶対役に立たないのが予測しなくても目に見えてる」

浜風「一応私だって瑞鳳さんから護身の訓練受けてますよ!」

時雨「だけど浜風、僕らの中でキミが最弱じゃないか。春雨以下だよ?」

浜風「うっ…!?」

春雨「そこは擁護出来ないですね、はい」

浜風「春雨にまで言われた…」

海風「何故お二人まで…」

時雨「護衛だね。 浜風の」

海風「…訓練受けてる癖に護衛対象扱いとは」

時雨「仕方無いよ。生身の戦闘能力は微妙だけど浜風は僕等の中でも指揮や戦況予測に関しては一番だから」

陽炎「まぁその辺の話は置いておいて、これからどうするの?」

長波「こっちは南仙台の家にこれから帰るけど」

大鯨「そうねぇ… 如月ちゃん、手配は終わってる?」

如月「ええ。マンションの部屋の確保は終わって、後は不知火ちゃん達に頼んだ日用品とか必要なものが揃ってれば」

大鯨「じゃあまずは私達の家に来て貰おうかしら」
642 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/21(日) 03:32:01.24 ID:wP1CdtwL0
《中野栄 瑞鳳実家》


海風・天津風「(唖然)」

時雨「まぁ、そうだよね。こんな武家屋敷なんて時代劇にも出てくるかどうかの代物だし」

大鯨「中身はリフォームしてるから大丈夫よ。お陰で歴史的価値は大幅ダウンだけど」

春雨「私達も初めは驚きました、はい」

浜風「では私達は今後の打ち合わせをしてきますので、海風達は別室で待っていてください」


松風「あれ、キミ達だけなのかい?」

海風「確か、松風さんでしたね。はい、海風と天津風さんだけです」

松風「他のも来るかと思ったんだけど… まぁ良いか。数が少ない方が、守り易いし」

天津風「貴女だけ? 他の娘たちは?」

松風「照の字と初の字と朝潮は店、母さんが道楽でやってる模型店の店番。不知火以外の残りの面子は買い物、僕は留守番さ」

海風「残る不知火さんは?」

松風「アイツは如月と一緒で『特別』だから。母さんの代理で仕事してるよ」

天津風「私達と殆ど年も変わらないのに…」

松風「キミ達だってテロリストと戦ってるじゃないか。まともな訓練も受けてない、軍人でもないのに」

天津風「それはそうだけど…」

松風「それと同じさ。 出来る事をやってる、ただそれだけの事だよ。 拾って貰った恩返し、ってのもあるけどね」

天津風(出来る事、か…)

松風「こんな所じゃ暇だろうから、ウチの案内でもするかい? 一応母さんは暇そうなら一通り見学させろ、って言ってるし」



見学場所 直下
1.書庫
2.同上
3.中庭
4.蔵
643 : ◆6G6UiAPa1Q [sage saga]:2018/10/21(日) 03:47:23.28 ID:wP1CdtwL0
あ、誤字ってました

見学場所 直下
1.書庫
2.道場
3.中庭
4.蔵
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 05:29:38.22 ID:G8y8aLINO
1
645 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/22(月) 01:46:17.63 ID:AFEKY64S0
《書庫》


松風「ここは書庫。母さんと父さんの仕事の資料、あとは僕等も読むような本も仕舞ってある。基本的にウチの方針は『本は共有財産』、買った本は誰でも読んでいいってことになってるんだ」

海風「学校の図書室並ですね…」

天津風「何でも揃ってるというか… ってこれモデ○ラの第一号じゃない!ホビージャ○ンの創刊号に宇○船、B-○LUBまで…

それにガンダム関連の資料集も、しかも新品同様の…!ちょっとこれ借りて良い?て言うか貸して!」

松風「駄目。その辺は母さんのだし、保管状態だって良く保ってるんだ。少なくとも部屋からの持ち出しは出来ないよ」

天津風「読みたかたったのに…」

松風「ま、どうせ何か仙台に留まるんだからここに来て読めば良いさ。勿論母さんの許可を取ってだけど」

天津風「分かったわ…」

海風「あ、この本読みたかったヤツ…」

松風「ああ、その辺のは後で返してくれれば持って行っても良いよ。多分母さんの読み終わって死蔵してる本だし」

天津風「何その本?」

海風「医学の本です。図書館なんかにも置いてない専門書なので」

松風「珍しいね、そう言う本に興味を示すなんて。宝石好きって聞いたから、こっちの鉱物事典なんか読むかと思ってた」

海風「実は今度先輩に剣術の指南を頼んでいて… それで怪我した時の応急処置なんかを学んでおこうかと」

天津風「てっきり医者でも目指してるのかと思った」

海風「将来の事なんて、まだハッキリ決まってませんよ。 進学して、手にそれなりの職に結びつくような事はしたいんですけどね」

松風「現実的と言うか、まったく夢が無いね。 もう少し何かないの?」

海風「今の所はまだ何も。 今、この状況に対応するだけで精一杯です」

松風「そうかい。 じゃあキミは?」

天津風「私は… パイロットでも目指してみようかな、って考えてるかしら」

松風「良いじゃないか。民間なら最近増えてきてるらしいし、女性パイロット」

天津風「私が目指してるのは軍用、自衛隊の戦闘機パイロット志望よ」

海風「意外ですね… 航空機が好きなのは知っていましたが」

天津風「私のお父さん、パイロットなの。 今は松島に居る」

松風「なんだ、すぐ近くに居るじゃないか」

海風「松島と言うと、結構エリートじゃ…」

天津風「そうよ。私の自慢で、私もそこに追いつきたいの」

海風「でもガンプラ学園に入学したのは?」

天津風「…触れないで。その名前、聞きたくない」

海風「…分かりました。こちらにも触れて欲しくないものもありますし、お互い様です」

松風「ま、人には触られたくない事の1つや2つはあるさ。 あ、キミ。これは持っていって良いよ」ドサッ

海風「…何です、これ?」

松風「母さんにこれ渡しておけって。剣術の指南書。色んな流派のモノがあるから。あと蔵に行けばもっとあるよ」

海風「既に山なのに、これ以上あるんですね…」
646 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/22(月) 02:35:31.12 ID:AFEKY64S0
《道場》


松風「ここが道場。僕等も修練でよく使ってよ」

天津風「えーと、武具の山が…」

海風「騎馬用の槍にヌンチャク、ハンマーから弓… よくもまぁ古今東西の武器がここまでゴチャゴチャに…」

松風「ここにあるのは練習用のものばかりさ。 一般的にはお値段は張るけど歴史的な価値とかは殆どないよ」

天津風「貴女達、これを使って鍛えてるの?」

松風「僕達が武術を始めるって決めた時、好きな武器を一人一つ選んで、徒手格闘だけじゃなくてもう1個武器を使った戦い方の練習もしろって母さん達に言われたんだ。

拳一本でやってるのはのわっちだけで、後は全員何かしらの武器を使ってるよ。ああ、でものわっちも篭手は使ってるか」

海風「何故そんなことを…」

松風「ぶっちゃけると僕等が素手の格闘が弱すぎるんだよ。だから武器を使ってそれを補えって事さ。本当に拳の才能があるのはのわっちだけで、僕等にはそう言うのが皆無らしくて」

天津風「でも武器を使う意味はあるの? 元から格闘戦の才能が無いと…」

松風「いや、例えば母さんの場合なんだけど素手だと姉貴や父さんには劣るけど、トンファーとか武器を握れば途端に二人纏めて相手に出来るようになるんだ。

そんな感じで武器との相性次第だと化ける可能性がある、ってことらしいよ。実際、弥生とかそんな感じで武器持っちゃえば中々強いし」

海風「因みに武器は?」

松風「これさ」つメイス

天津風「よりによってそんな武器!?」

海風「実際、振るえるだけの筋力さえあれば技術が要らないので意外と強かったりするんですよね質量武器って。

海風だってアズライトでバスターソード使ってる理由がそれですから」

天津風「機体パワーは桁違いだものね、アズライトは…」

松風「あと榛名と天城も同類だよ。 あの二人、トマホークと槍を持つと並の人間じゃ手をつけられないからね。

あと古鷹もかな? 銃器持った途端、辛うじて物理法則がついてこれるような狙撃術披露するし…」

天津風「そう言う人間も身の回りに居るものね…」

松風「キミ達も何かやってみるかい?」

海風・天津風「遠慮します」

松風「だろうね」
647 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/23(火) 02:03:13.11 ID:kSdKXoV90
《中庭》


松風「で、中庭ね。結構広いから迷ったらここに出れば分かり易いよ」

天津風「もうかなり疲れたんだけど…」

海風「静岡からここまでの疲労もありますし…」

松風「なら休憩しようか。丁度ここに休めるテーブルもあるし。飲み物取ってくるよ」



天津風「鯉まで居るのね、ここ」

松風「母さんの趣味だよ。動物好きで、特に水生生物が好きらしくてね。

ここじゃないけど、別宅みたいなところに魚の飼育専用の建物と、お手伝いまで雇ってさ」

海風「水族館にでもすれば良いじゃないですか」

松風「もうしてるよ。 福島のいわきとか、仙台に新しく出来たとことか、稀少な魚は提供してるし出資もしてるんだぜ」

天津風「やってるのねもう…」

松風「当人曰く慈善事業、だとさ。おかげで東北の地域好感度No.1企業になってるし」

天津風「色んなモンに手を出しすぎじゃ無いかしら?」

松風「流石に車とか飛行機とかは作ってないけど、それ以外なら色々やってるよ。水産加工から不動産業、芸能関連に孤児院経営…

前はもう少し規模は小さかったけど、倒産した企業とか吸収していった結果こうなっちゃったんだと」

海風「吸収ですか…」

松風「倒産した会社にも社員は居るし、そこに生きる技術やノウハウもある。だから迷った人に手を伸ばして見返りとしてそれらを得る、そんな事を繰り返してたら成長しちゃった訳さ」

海風「成るほど… そう言うやり方もありますね…」

松風「すべては人助けのために、って言うのが母さん… ウチの先祖からのやり方さ。僕は血は繋がってないけどね」

天津風「そう言えば大鯨さん達の家系って、『守護者』だって聞いたけど…」

松風「そうさ。 人を人ならざるモノから護る、それだけを使命と生業にして生きてきた家系の一つ。 今もその使命に準じてるのは日本では2・3家しか無いみたいだけど」

海風「人ならざるモノ…」

松風「ああ、大丈夫だよ。キミや霞って娘はちゃんと『人』だから。 もし人に悪意を持って危害を加えるってなら話は別になるけど」

天津風「どう言う括りなのよ…」

松風「人か人じゃ無いかは人の心を持っているか持ってないかで決まる。 例え見た目が化け物になり果てても心が人間なら人間、人の心まで捨てるならそれは人間じゃ無い…

キミ達の持つ力は言わば『人の持つ個性』でしかない。で、連中は個性を否定する、その『人』に仇なす悪意を持った化け物。だからキミらを護り、連中は排除対象と認めたのさ」

天津風「分かるような、分からないような…?」

松風「海風、だっけか。 キミは『人』かい? それとも『化け物』かい?」

海風「…『人』、だと思いたいです」

松風「なら護るべき者だ。 これが判断基準」

天津風「そんな曖昧な…」

松風「そんなもんだよ。 あそこにある碑、あれに刻まれてるのが母さん達の先祖… あの碑に名を刻まれた人達は、そうやって護る為に戦って来たんだから」
648 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/23(火) 03:06:45.34 ID:kSdKXoV90
《蔵》


海風「ここが蔵、ですか…」

松風「正しくは蔵1号だね。 4つあるうちの」

天津風「ここには何が在るの?」

松風「1号は先祖代々伝わる『武』に纏わる文献とか、あとは美術品とか歴史的な資料の類だね。

武術ってのは戦う為のもの、だから後継者が途絶えることで失われるものが多いらしい。それを保管するのがこの蔵さ」

海風「でも失ったものをどうやって?」

松風「秘伝書とか文献なんかをかき集めてるんだよ。そう言うのが無いのは関係した人たちから色々聞き出して、資料化してるんだと。

まぁ案の定古過ぎて劣化して文字が読めなくなったり、そもそも字が読めないものもあったりで…」

天津風「この壷は…」

松風「触らないほうが良いよ。専門家が見たら目玉ひんむいて、泡吹きながら尿漏れするくらいの代物だから」

天津風「ひぃっ!?」

松風「この1号蔵にはそんな類のものがゴロゴロしてるから気を付けてね。あとは昔の暮らしとかを記録した本とかもここに収蔵されてるか」

海風「博物館が建てられそう…」

松風「実際ウチに博物館からの寄贈の要請がわんさかさ。 だけどここは歴代の重ねた歴史だから、どこにも出しちゃ駄目って先祖代々言われてる。

GHQすらここに手出しは出来なかったそうだよ。 この前の震災でちょっとモノが壊れたりしちゃったけどね」

海風「セキュリティ大丈夫なんです?」

松風「ここに来るまで無事で済むと思うかい? ヘリで空からとか地面掘って入ってきても、迎撃できるだけの準備はあるし」

海風「ですよねー…」

松風「キミらに見せられるのはここだけだよ」

天津風「他の蔵は駄目なの?」

松風「内容だけ言っておくと2号は武器蔵で歴史的にヤバめの武器とか収蔵してて、3号蔵はまぁ人が触れちゃいけないような類のものが入ってて、4号は…」

天津風「4号は?」

松風「…」

天津風「何よその沈黙!?」

松風「下手な真実は知らないほうが良いよ」

天津風「そんなヤバイの!?」

松風「ぶっちゃけると… 『人じゃないもの』が」

海風・天津風「!?」

松風「ミイラとか骨とかが大半なんだけどさ…」

海風「それって生きてるのもあるって…」

松風「厳重に封印された悪霊の類とか、死なずの化け物とか…」

天津風「…見た事、ある?」

松風「深海棲艦、化け物と戦ってた僕から見ても… 漏らしかけたね」

海風「うわぁ…」

松風「まぁ人に友好的なのも居るから一概には言えないんだけど… その、ね? おかげであそこだけ地球が壊れでもしない限り壊れないような特殊物質で出来て、まじないの類も幾重にも重ねてるから」

天津風「安心、して良いの…?」

松風「そ、それに今は昔は駄目だったけど今は殺せるような武器もあるし… これとか」

天津風「携帯電話…?」

海風「それ、ファ○ズフォン…」

松風「出所は不明なんだけどね… おもちゃかと思ったら本物でびっくりだよ」
649 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/24(水) 02:31:38.09 ID:wVDLRdIA0
プルルルル

松風「ん? 母さんかな… はい、どうしたの? 分かった、連れて行くよ」

天津風「家の中に内線電話まであるのね…」

海風「と言うかよく蔵に居ると分かりましたね…」

松風「母さんがキミ達をお呼びさ。応接間に行くよ」


《応接間》

大鯨「どう、我が家の感想は?」

海風「す、凄く広かったです」

天津風「色々と凄まじくて…」

大鯨「誰もがそう言うわ。仕方のないことだけど。 で、これからについて説明するわね」

海風「海風達はどうすれば?」

大鯨「二人には青葉区、仙台駅から徒歩15分くらいのところにあるマンションに住んでもらうわ。今そこの隣部屋に榛名ちゃんが住んでるから、何かあったら頼って。

食事や日常生活については可能な限り自分でやって貰うことにはなるけど… 隣に秋月ちゃんも居るから多分大丈夫だと思うから」

天津風「そこに引き篭もっていれば良いんですか?」

大鯨「どこかに出かけても構わないわ。だけど可能な限り買い物とかは近場で済ませること、遠出をするなら変装をして護衛をつけること、戦う『備え』はしておくこと。でも可能な限り交戦は避けることと、今から渡す携帯を持ち歩く事。

で、外出先で『もしも』の事態にあったら点在しているウチの系列会社に逃げ込んで貰えれば対応出来るように通達はしておいたわ。住所と社名の目録は貴女達のアドレスに転送してあるから」

海風「意外と自由はあるんですね」

大鯨「全部縛り付けていたら苦しいだけだもの。ただ貴女達は危険と隣り合わせだってことは留意しておいて」

海風・天津風「はい」

大鯨「一応日用品とかベッドは用意しておいたけど、あと必要なモノ、買っておいたものが好みと合わなかったりしたら部屋に資金をちょっとだけ置いておいたからそれを使ってね」

海風「良いんですか、そこまでして頂いて?」

大鯨「貴女達は守護対象であり、お客様。もてなしは当然じゃない」

天津風「はぁ…」

大鯨「松風ちゃん」

松風「はい。 これがキミ達に渡す携帯だよ」

海風「さっきのファ○ズフォンじゃないですか!?」

大鯨「はぁ… 勝手に持ち出さないの、蔵2号に戻してきなさい。あと渡すならファ○ズじゃなくてサ○ガとオ○ガ、ギアも一緒しなさいな」

海風「その2つのギアもあるんですか!?」

松風「冗談さ。 こっちが本物、まぁ極普通のiPh○neさ」

天津風「流されたわね、見事に」

海風「海風Android派なんですけど…」

松風「じゃあこっちだ。極普通のエクス○リア」

海風「最新機種ですけどね…」

大鯨「じゃあ後は… 天津風ちゃんは隣に、海風ちゃんは此処で待って。あと松風ちゃんは浜風ちゃん呼んで」
650 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/24(水) 04:53:04.78 ID:wVDLRdIA0
浜風「私が呼ばれたと言う事は例の件ですね?」

大鯨「そう、貴女達の戸籍の話よ」

海風「目処が立ったのですか?」

大鯨「実はねぇ… 戸籍自体は作るのは簡単、まぁ手を回せば良いだけなんだけど問題が生じちゃってね…」

浜風「問題、ですか?」

大鯨「戸籍を作るのは良いけど、学校の問題とか色々手を回しきれないのよ。しかも古い戸籍の抹消なんて無理、少なくとも記録は残っちゃうの」

海風「じゃあどうするんです?」

大鯨「ここで一つ提案。 私の養子にならない?」

浜風「養子!?」

大鯨「メリットは今の両親から籍を外せる、手続きも最低限で済むからコストは最低限、法的に守り易くなる、その他色々…

デメリットは苗字が変わることで世間からの目がくること… そしてもう一つが大きいのよ」

海風「…『人の守護』の業を背負うことになる、と言うことですか」

大鯨「そう。一応私の幾つか用意してる偽装戸籍の一つに養子にするつもりなんだけど… 私と偽装とは言え戸籍上の義娘になるってことは、否が応でもその運命に巻き込まれる可能性が生じる」

浜風「―――私は、構いません」

大鯨「良いのね?」

浜風「もう何度も深海棲艦とは矛を交えています。なのでそんなのは今更の話、とっくに戦う覚悟は出来ています」

大鯨「そう… 海風ちゃんは?」

海風「海風は…」

大鯨「考える時間、必要かしら?」

海風「…いいえ。 海風も、それでお願いします。 バビロニアで目の前で救えない命を見て、理不尽に命を奪われるのを見て…

そんなのはもう嫌だから… 海風の力で誰も傷付かない未来が創れるのなら、守護者の業も戦う罪も全部背負います」

大鯨「分かった。手続きはこっちでしておくわ。 じゃあ後は… 大丈夫かしら? あ、ガンプラの整備はこっちでやっておくから。

あと瑞鳳から『例の機能』について聞いたから、使えるようにしておくわね」

海風「例の機能?」

浜風「私の機体、『ウイングガンダムゼロ・クロイツ』には他の機体にはない特殊機能を有しています。

そしてその機能は『ウイングガンダム・アズライト』にも密接に関わっていますがその能力は特殊状況下、人工粒子影響下でしか使用出来ない難点があって未調整で放置されているんです」

海風「で、その機能の調整を大鯨さんが?」

大鯨「ええ。ビルダーとしては瑞鳳よりちょっと下程度だけど、RGフレームを弄ることくらいは私にも出来るし、予備パーツも貰ってるから」

海風「そう言えば『RGフレーム』って共通部品が多いんですよね? アズライトのフレームは失敗作で他とは変質してる筈なのに、どうして互換性が?」

浜風「今のアズライトのフレームは春雨製の『フレスヴェルグフレーム』と瑞鳳さんの『RGフレームtype-Vプロト』を組み合わせたものです。

変質しているのはコアと胸部フレームだけでそこはオリジナルのまま、他は全部type-Vプロトを用いて改修を施してあります」

大鯨「因みに系譜をホワイトボードに書いてみると、こんな感じ」


・RGフレーム(全ての始祖。搭載機:『ゲイルストライク・クロイツ』『レーゲンデュエル・クロイツ』、春雨製の機体全般)
・RGフレームtype-T改(パワー全振り。搭載機:『ネブラブリッツ・クロイツ』)
・RGフレームtype-U(RGシステムtype-Z搭載型の始祖。搭載機:『ヘイルバスター・クロイツ』『ヴァンセイバー・クロイツ』)
・RGフレームtype-U改(RGハウリング搭載型。搭載機:『ニクスプロヴィデンス・クロイツ(リバイ)』『ミラージュフレーム・クロイツ(リバイ)』)
・RGフレームtype-V(機体とファイターの共振機能搭載、パワー強化。搭載機:『ガンダムエピオン・クロイツ』)
・RGフレームtype-V改(パワーを落とす代わりに共振機能を拡大化させた。搭載機:『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』『ブラストアクロスZZ』)
・RGフレームtype-V改改(共振機能を省き、パワー全振り。搭載機:『ダブルオーガンダム・クロイツ』『ガンダムダブルエックス・クロイツ』)
・RGフレームtype-W(Vを安定させたもの。浜風用のものは特殊機能有り。搭載機:『ウイングガンダムゼロ・クロイツ』)


海風「じゃあロンギフローラムとブラストアクロスはtype-V改に相当するからtype-Vプロトのアズライトとは互換性があったと」

大鯨「ぶっちゃけると胸部パーツとコア以外はほぼ大差無いのよね。V以降は関節強度はエグイくらい強くなってるけど」

浜風「完全に互換性が無いのはT系統だけで、あとは多少の互換性はあります。この点は覚えておいてください」

海風「覚える意味があるのですかねぇ…」


イベント安価 直下
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 15:57:50.44 ID:YwFtYygxO
武器蔵に行く
652 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/26(金) 04:48:46.44 ID:IFJAJKYk0
《蔵2号》


大鯨「よいしょっ、と… ここが蔵2号。所謂武器蔵ね。武器と言っても『曰くつき』のものばっかりの蔵だけど」

海風「海風達をどうしてここに?」

浜風「ここは立ち入るなと瑞鳳さんが以前にも…」

大鯨「そうね。ここに所蔵している武器には『意志』があるものもある。長年に渡ってあり続けた武器に九十九神が宿るなんてザラだもの。迂闊に近付けば取り憑かれる。

九十九神ってどうして百じゃなくて九十九なのか、知ってる?」

浜風「そう言えば聞いた事は…」

大鯨「九十九神は神様の成り損ない、『百』である神に至ることなく存在が定着してしまったもの。

八百万の神として不適格、つまり欠けている神様だから『九十九神』なのよ。諸説ある中の一つ、なんだけどね。人を求めるのも、『百』へと至るためじゃないかって私は考えてる」

海風「足りないモノが、人にあると?」

大鯨「それが何なのか、例えば血の通う肉なのかそれとも人の魂なのかは分からない。だけど九十九神の生じた武器は人を求める、呪いの武器やら妖刀って言うのがソレなのよ」

浜風「成るほど… でも何故尚更私達をここに?」

大鯨「貴女達は私の娘になる、それはさっき海風ちゃんが言った通り『守護者の業』を担うことになるわ。

戦うための道具は要るでしょう? 持っているだけで使わないで済むのが御の字だけど、念のためにね」

浜風「つまりここにある武器から選べ、と?」

大鯨「簡単に言えばね」

海風「しかし海風は武器なんて持った事は…」

大鯨「大丈夫よ。もし貴女に完全に適合するような武具があれば、きっと勝手に身体が動くようになるから。

適当に手にとってみれば大体はわかるわよ。拒絶すれば武具の側から逃げるし」

海風「それって操られてる状態じゃ…」

大鯨「精神力さえあれば制御出来るわ。海風ちゃんの精神力なら問題は無し、寧ろ浜風ちゃんの方が危ないかも」

浜風「メンタル弱い扱いなの何で…」



海風「うわ、さっきのファ○ズフォンだけじゃなくて他のドライバーも揃ってる…」

大鯨「あ、そこのほぼ化石になってるベルトの類は駄目よ。本当に取り返しつかないから」

海風「アー○ルとオー○ドライバーは流石に… と言うかライ○ーズギアってオル○ェノクじゃないと適合しないのでは?」

大鯨「そこはバッチリ弄ってあるわよ。 ハシラジマに持っていってもらって、ベルトの認識機能を弄って貰って」

海風「えー…」

大鯨「まぁ戦○ドライバーとかゴース○ドライバー、あとロ○トドライバーなんかは使っても問題は無いと思うけど…

あまりその辺は持って行って欲しくは無いわね。本当に色々危ないし」

海風「そこは流石に弁えていますよ」




浜風「何と言うか、どれもしっくり来ないような…」

海風「あまり武器なんか詳しくも無いし…」

大鯨「そうね… 無理に選ぶ必要は無いわ。 またいずれ、正式な手続きが済んだあとでも遅くはないし」
653 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/28(日) 01:53:38.53 ID:B2N8LnO20
時雨「終わったかい?」

浜風「ええ。今後の段取りもつきました」

天津風「何の話してたの?」

海風「複雑は話ですよ。天津風さん達は無関係ですけど」

天津風「なら家庭の話ね… それくらいしか私達が無関係なのは無いし」

海風「まぁその位であれば簡単に予想は出来るでしょうし… 後は大鯨さんがマンションまで車で送ってくれるそうです」

春雨「流石に電車はもう飽きましたし、はい… あ、瑞鳳さんから連絡がありました」

浜風「瑞鳳さんは何と?」

春雨「『二人が無事に目的地に到着したのを確認、それぞれ穏便に活動しつつゆっくり休養を』だそうです」

海風「そう言えば瑞鳳さんは何処に?」

浜風「箱根の夕雲の実家です」

時雨「…一番豪勢なとこに陣取ったね」

天津風「え?」

春雨「夕雲の実家は高級旅館でして…」

海風「そう言えばこの前先輩の口を割らそうと実家から貰ったらしいA5飛騨牛を餌にしてたような…」

浜風「その、何と言うか著名な方々もよく利用するようなところなので贈り物が絶えないんです… そこの一部を夕雲経由で瑞鳳さんが受け取ってて…

さらには瑞鳳さんが夕雲の実家問題を解決した時偉く気に入られてるし、凄い高待遇は間違いないんじゃ…」

海風「何かずるい様な、ずるくない様な…」

時雨「まぁ擁護するなら瑞鳳は昏睡病の発覚直後からずっと動いてて、休んでる暇もほぼ無しのハードワークだったから。

各方面とかけあってたのも瑞鳳だし、何なら裏組織一つ一つを虱潰しにして流通ルートを壊滅させたりしてたからね」

浜風「それに『バーニングバースト』を使用したのであればここ数日は立ってるだけでやっとの有様でしょうし… 療養も兼ねて、休んでもらわないと」

天津風「『バーニングバースト』?」

春雨「簡単に言えば『アズライトバーストイレギュラー』の超強化版で、スタジアムを全焼させたのもその力です。はい」

海風・天津風「え」

春雨「必要なのは瑞鳳さんが『ガンプラを完全に精神を同調させ』ることと『肉体のリミッターを全部外すこと』で、肉体・精神的にも過負荷が激しくて常人なら廃人になる程だとか」

時雨「キミ達には弱いところは見せられない、って頑張って平気なフリしてたけどね」

海風「瑞鳳さんが…」

大鯨「お待たせ〜。あら、どうかしたの?」

浜風「いえ、何も。 では行きましょうか」
654 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/28(日) 03:07:28.98 ID:B2N8LnO20
《マンション》


舞風「あー、疲れたぁ…」

弥生「荷物、絶対二人で運ぶ量じゃない…」

大鯨「二人共お疲れ様。来月のお小遣い、2倍ね」

舞風「やったぁ!こっち選んだ甲斐があったよ!」

弥生「じゃんけんで、負けただけ…」

舞風「うっ…!? それは言わないでって…」

野分「はぁ… 舞風、もうお客様が来てるんだからあまり騒がないの」

舞風「はーい。じゃ、後はごゆっくり」

弥生「失礼、します…」

野分「すみません、騒がしくて」

時雨「元気があって良いと思うけど? それにしてもかなり広いね、ここ」

大鯨「ファミリータイプのマンションだもの。4LDKだから一組だけ同じ部屋になっちゃうけど…」

春雨「なら春雨と時雨がその部屋を使います、はい」

浜風「え、なら私達でも…」

海風「断 固 拒 否 し ま す」

浜風「…」

時雨「そうなると思ってたよ、うん」

野分「秋月と如月、私と榛名さんは隣の部屋に居ます。如月は不在がちですが私と秋月はトレーニング以外は居るので何でもおっしゃって下さい」

天津風「スーパーとかはこの近くにあるの?」

野分「徒歩2分のところに大きめのスーパー、アーケードまで出れば飲食店もあって衣類の類も買えますし10分も歩けば駅ですから買い物は大丈夫かと。

コンビニも色々あるけど夜は治安が良いとは言い難いのであまり出歩かないのが賢明です」

天津風「その、模型とかは…」

野分「チェーン店なら駅前に出てヨ○バシとボー○ス、あとは文○堂ホビーとか… あとは八乙女にあるTam○amくらいかしら…?

あとは個人ね。 ここの最寄だとあおば通りの中のデパートの向かい、あとは南仙台の榛名さんの実家に中野栄のウチね」

天津風「榛名さんの実家も模型屋だったのね」

野分「ええ。と言っても榛名さんがやってるなんでも屋としての側面が最近強くなってるけど…」

海風「本業より副業が儲かるってあるあるですよね」

野分「継いでないから副業って訳じゃ… まぁ、その辺は置いておいて… 観光は… この辺何かあるかしら…?」

大鯨「勾当台公園と西公園くらいじゃない? どっちも大きな公園って位で、見所は西公園にSLが飾ってあるくらい?

観光がしたいなら駅に出れば観光用の循環バスとか秋保とか観光地行きバスもあるわよ。鉄道使えば仙台空港と利府の新幹線基地、あとは三陸方面なら気仙沼に松島もあるわ」

天津風「い、色々あるんですね…」

大鯨「勿論見て欲しいのは海の○水族館と仙台港だけどね」

天津風・海風「あ、はい」


イベント選択 直下
1.海風『未知の地に』
2.天津風『空への憧憬』
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/28(日) 09:50:11.60 ID:vVIWt0w70
1で
656 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/29(月) 03:41:29.72 ID:HIwDuUJz0
side-海風-『未知の地に』

《仙台市内 アーケード街》


野分「ここの路地は行き止まりで、あそこの路地は今工事で通行止めです」

海風「成るほど…」メモメモ

秋月「あの、さっきから何を…?」

海風「逃走経路の確認です。マンションや周辺で襲撃があった時の為に確認は必要でしょう」

野分「確かに逃げ道の確保は必要ね… あ、そこの路地は裏通りに繋がってて右に曲がると勾当台公園に着きます」

海風「左は?」

野分「大通りに出て、そこを右に真っ直ぐ行けば駅に出ます。でも人に紛れるなら公園駅から地下鉄に乗ったほうが良いかしら…

地下鉄はここを通っているのは南北線で終着駅は泉中央と住宅街のある富沢、仙台駅で東西線に乗れば動物園のある八木山と浜に近い荒井が終着駅ね」

海風「ありがとうございます。 じゃあ次は逃げ込めそうな施設は…」

野分「この近場なら県庁と市役所があります。あとはデパートが幾つかに、確か県警本部があったかと」

海風「県警本部があるなら何とかなりそうですね」

秋月「あ、少し良いですか?」

海風「どうしました?」

秋月「ここの周辺なんですけど、大きな病院が2箇所あるんです。1つは普通の大きめの病院で、もう一つは大学病院なんですけど…」

海風「成るほど、医療施設も確認しておいて…」

秋月「それだけじゃなくて、その… その2箇所の病院に、昏睡病の罹患者の3割が入院しているんです」

海風「罹患者が…?」

秋月「はい。一応その事を頭に入れておいて欲しい、とお母さんが言ってました」

海風「…分かりました。留意しておきます」



海風「大体このくらいで良いでしょう。二人共、ありがとうございました」

野分「いえ、母さんに助けになれと言われてるから。 だけど貴女も真面目ですね」

海風「ここは未知の場所ですから。 把握しておかないと、イザと言う時に動けませんし。それに結構、こう言うのも好きなんです」

秋月「場所の把握とか、ですか?」

海風「自分の知らない街や風景を見て歩いて隅々まで知るのも、楽しいですよ」

海風(だけど身の安全は自分で護らないと… あまり襲われる、と言うのは想像したくはないけど)

野分「あ、そうだ。 そろそろ良い時間ですし、お茶でもどうです?この辺に結構オススメのお店があるんですよ」

海風「良いですね。 試しに行ってみたいです」
657 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/30(火) 02:40:30.52 ID:Q9g+Khbz0
カランカラン

<イラッシャイマセー


榛名「あら…」

海風「あれ、榛名さん…?」

野分「ここに居たんですか?」

榛名「ええ。実家で用事を済ませて、こちらに戻ってきました」

秋月「用事?」

榛名「破損した3機と天城達の機体の回収です。阿武隈達のは修復と調整、天城と満潮の機体にはUC-Dを搭載しようかと。

勿論『ファヴニール』『エイクスュリュニル』『ラタトスク』、そしてここに無い機体にも搭載予定です」

海風「しかしアレは…」

榛名「勿論、欠陥があるのは知っています。力にリミッターをかけられないから際限なくパワーを増幅させて自壊を招く、オリジナルである『ウイングガンダム・フレスヴェルグ』から続く欠点であり改良できなかった点です。

その改良理論自体は完成していますが、今のデータではどうにも… それでもEXAMの脅威が残っている以上、力は必要です」

海風「それだけじゃありません。機体内部に蓄積された粒子が人に感応して、共鳴現象を引き起こす可能性だってあるんです。

ファイターの過負荷だって馬鹿にならないし、制御不能になって暴走すれば…」

榛名「分かっています。だから使用した実機のデータが必要なんです。 完全に制御を行うために」

海風「と言うかやっぱりコピーじゃないですか」

榛名「…」

海風「何とか言ってくださいよ」

榛名「春雨さんには申し訳なく思っています、はい」

海風「しかもサラっと言ってますけど、瑞鳳さんすら至らなかったフレスヴェルグのフレーム技術を完全再現したと」

榛名「いえ、粒子貯蔵の技術までは出来ていないので完全とは言い難いかと」

海風「それでも、大まかな理論は模倣出来ていると」

榛名「ええ。それは完璧に出来ています」

海風「呆れた…」

榛名「…丁度良かったです。海風さん、少しお話があります。座って、何か適当なものを頼んでください。奢りますから」

海風「はぁ…」

榛名「野分さんと秋月さんも。好きなモノをどうぞ」
658 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/31(水) 03:51:28.94 ID:dRuJfKTl0
海風「UC-Dのデータ取得の依頼…?」

榛名「海風さんはオリジナルの『モード・アズール』の使用経験があり、完全制御した唯一の人間です。

さらには強化された『アズライトバースト』、その変質状態すら制御してみせた… 貴女以上に適役は居ません」

海風「具体的にはどうしろ、と? まさかアズライトのデータを…」

榛名「いえ、貴女とアズライトのデータは正直参考にならないんです。貴女達はもう人と機体が完全に同調している状態、未知の領域に達しているので」

野分「未知の領域…?」

榛名「その一端があの力、『アズライトバースト』の変質形態… 更なる可能性を引き出せば… …いえ、ここで話すことではありませんね」

秋月(榛名さんが口をつぐんだ… 一体何を…?)

海風「では、どうデータを?」

榛名「貴女に改RX-0、既に改修を加えUC-Dを搭載済みの機体を貸与します。 その機体で他の機体とのUC-D使用時の交戦データを複数採取してください。

欲しいのは発動時の稼動データだけ、他のデータは破棄するとお約束しましょう」

海風「もう改修した機体が…」

榛名「一番最初、実験的に導入した機体です。 これが、その機体…」

海風「青い『スヴァジルファリ』…?」

榛名「元々は榛名用の予備機、3機の性能を統合させた実験用の機体『RX-0[Fg]フィルギア』です。

パワーはアズライトに劣りますが、性能は引けをとらない筈かと」

海風「『フィルギア』…」

榛名「勿論報酬はありますし、条件はそちらでお決めください。どうかお願いします」



依頼に… 選択 直下
1.応える
2.依頼を受けない
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/31(水) 10:34:46.88 ID:ZmviJPutO
1
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/31(水) 10:34:54.93 ID:tahLP7Sg0
1で
661 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/03(土) 02:30:54.44 ID:ceLtQ+Ct0
海風「ではこちらから3つ条件を提示させて頂きます。これを飲めなければテストは請け負えません」

榛名「条件は?」

海風「1つ、取得データ及びUC-D基礎理論データの春雨さんと瑞鳳さんへの開示。あれは元々の技術はこちらのものですから」

榛名「構いません。元々、『シームルグ』と『カラドリウス』導入するつもりでいましたし」

海風「2つ、交戦するファイターは海風との交戦経験が無くこれから戦う可能性が無いファイターであり、その人物から海風のデータの供与を受け無いこと。

榛名さん自身は採らない、と言いましたがテストの相手がそうとは限りません。そちらにこちらのデータだけが渡るのは不公平です」

榛名「分かりました。 大会に参加しない、不知火さん達に協力を仰ぎましょう」

海風「そして最後の3つ目は… 『ウイングガンダム・アズライト』及びこちらの予備機である『ガンダム・バエルセレスタイト』の2機分の改修パーツの供与です。

仕様書は後程お渡しします。また設計データ等は完成後こちらに譲渡しそちらの分は破棄、一切の複製や再現を禁じます」

野分「最後のは些か吹っかけ過ぎじゃ…」

榛名「別にそこまでの無茶ではありません。寧ろ前者二つはこちらで配慮すべき事であって当然のこと、こちらとしては実質的に条件は1つだけかつ1人分の機体を強化するだけで全ての『改RX-0』が強化される…

こちらにとっては好条件、損より利益の方が大きい美味い話です。だけど海風さん、今は協力関係とは言え普段は競い合う相手ですよ? もしかすれば機体パーツに何かしら仕込む可能性も否定できないのでは?」

海風「榛名さんのお仕事は信用が第一、ですよね? しかもビルダーとしての誇りもある、そんな人物がわざわざ自分の名を貶める行為をしますか?」

榛名「必要であれば、しますがね。 今回はその時では無いので絶対にしませんが。疑うのであれば瑞鳳さんと春雨さんの二重チェックでもして頂ければ」

海風「そこまで言うのであれば大丈夫です」

榛名「あと仕様書を頂いても無理なモノ、例えば確実に強度が足りなくなるような無茶な装備などは承れません」

海風「そこは後程すりあわせを行いましょう。その場合の仕様変更は仕方無いことなので」

榛名「ではこの条件で契約の締結と言う事で」

海風「ええ。仕様書の形式は紙媒体と電子どちらで?」

榛名「電子で。3DCADの図面とか送られても素人のモノは手直しに時間がかかるので出来れば文書で」

海風「元々CADなんか弄れるのは天津風さんぐらいなので大丈夫です。では後程送付します」

秋月(何だか、この二人怖いです…)

野分(顔は割りと笑みなのに腹の探りあいしてて変なオーラが…)


・機体変更(一時)
海風:RX-0[Fg]『フィルギア』

RX-0[Fg]フィルギア
武装
・60mmバルカン砲
・ビーム・サーベル×4
・専用ソード・ライフル『レーヴァテインS』
・クロー・シールド
・肩部ビームキャノン×2
概要
改RX-0の『スレイプニル』『スヴァジルファリ』『ガルム』の同型機であり性能統合機。
それぞれの能力は特化させた同型3機にこそ少しだけ劣るものの高い水準の性能を誇り改RX-0の中でも上位機種に該当する。
機体特性は『スレイプニル』に近く、武装は『スヴァジルファリ』と同じで、頭部は『ガルム』同様バンシィベース。
専用武装の『レーヴァテインS』は天城用の『レーヴァティン』に性能は近い。しかし『コード・ブレイヴ』発動時には天城・間宮機両方の能力を行使可能と言う破格の能力を持つ。因みにクローを使えば長波機の『コード・ブレイヴ』も使用できる。
ステルス機能は持っておらず機体特性が『スレイプニル』に近いため燃費は良い。また3機共通の能力『スフィアクレイドル』『シャドー』の能力は保持したまま。
塗装は青。NT-D使用時には蒼い光を各部から発する。海風が使用するために調整した結果とのこと。
モチーフ『ラフトクランズ』。天城の『アウルン』と間宮の『ファウネア』、長波の『カロクアラ』と3機はOG版ベースだが本機のみスパロボJの『隠し主人公機仕様』となっている。
余談ではあるが本機の同型は上記の3機だけでなく残り2機程存在している。しかし2機とも『コード・ブレイヴ』発動機能はオミット、扱い易さを優先しているため性能も低めらしい。
662 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/03(土) 04:22:10.16 ID:ceLtQ+Ct0
海風「そう言えば青葉さん達ってどうしてるんです?」

榛名「向こう側で事後処理と工作を。実は不穏な動きが…」

秋月「不穏な動き…?」

榛名「工場にあった機材は警察が全て押収しようとしているのですが… 陸自が引渡しの要求をしているらしく一触即発らしいんです」

野分「陸自がナノマシンを…?」

榛名「夕張さんが以前盗み出したデータの中にナノマシン絡みのものがあった、と言うのは知っていますね」

海風「あぁ、それは一応バビロニア事件の際のブリーフィングで聞きました」

榛名「ナノマシンは本来医療目的のものとして開発されました。もしEXAMなど入れなければナノマシンによる応急治療で致命傷で無ければ銃創でも数分で治癒できる程の効果があったそうです。

もしかすれば陸自はナノマシンを独自開発するつもりなのかもしれません。現状でも、脳を作り変えることすら出来てしまうナノマシンですから」

海風「どこのG4ですか一体…」

秋月「じーふぉー?」

海風「警察が対化け物用にって作った装備の内危険だからと設計段階で封印していたものを自衛隊が持ち出して実際に作った、って内容の作品があるんですよ。

そのモノ自体は強力なものでしたがAIに致命的な欠陥を抱えていて、結局人の手に負えなくなってしまうんです」

秋月「それで、どうなったのですか?」

海風「そのモノはパワードスーツなんですけど、AIによる過負荷によって装着者は死んでしまいました。しかしAIが勝手に再起動して、その人の遺体すら部品にして動き出そうとして…

で、対峙した似たようなパワードスーツを装着した警察官の怒りの銃撃でようやく沈黙して、まぁ作品はそこで終わりです」

榛名「もしナノマシンの独自開発など行えばおそらく海風さんの言う様に『人の手に負えなくなる』のは目に見えています。

なのにそれすら分かっていない、一部の自衛隊のお偉方が居るんです。なので青葉さん達には監視と警察への協力を頼んでいます」

海風「…もしかすれば、『完全制御出来る手立てがある』可能性は?」

秋月「まさか、そんな事…」

野分「だけど、単純に考えるとそんなに強気に出られるのは何かしら理由があってのことかも…」

榛名「やはり海風さんもその結論に達しましたか… 海風さん、『能力』を使ってください」

海風「予測する事象は? どの規模の予測で?」

榛名「『自衛隊が何をしてくるか』の中で最も可能性が高いものを、最大予測で」

海風「分かりました。 2分、あと可能な限りの糖分をください」

榛名「すみません、注文お願いします!」



海風「…予測終了しました。頭いた…」

榛名「とりあえずホットチョコレートで、一気に糖分を流し込んでください」

海風「いえ、まず結論から… 『自衛隊が護送車もしくは留置場所を極秘裏に襲撃、クルストの身柄の保護』が一番高いです。最大予測を行使して745パターンを予測した結果534通りが該当しました」

野分「そんなに多いんですか…!?」

海風「いくつか条件を変えて、分岐予測をした結果ですけど… 自前で作れる、なんて可能性は2通りしかありませんでした。

そして出来たとしても、ナノ・ハザードを高確率で引き起こして… 阻止しない場合、良い結果はありません」

秋月「榛名さん、これって…」

榛名「分かりました。 大鯨さんを経由して現地警察に連絡、そして青葉さんたちによる警戒強化にPMCの導入も視野に『テミス』を…」

海風「テミス?」

秋月「榛名さんのお知り合いの古巣のPMCらしいです」

海風「何でそんな知り合いが居るんですかねぇ…」


イベント選択 直下
1.天津風『感情とソラ』
2.浜風『心の落ち着き』
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/03(土) 08:50:43.49 ID:JW4TqOUjO
2
664 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/05(月) 02:43:11.64 ID:FyRSU+N00
side-浜風-『心の落ち着き』

《マンション リビング》


浜風「ふぅ… ああ、極楽…」グデー

春雨「…コーヒー牛乳飲みながらマッサージチェア使ってると、零しますよ」

浜風「春雨? どうかしましたか?」

春雨「なんか堪能してるな、と思って…」

浜風「ようやく、少しは肩の荷が下りたんです。これくらいの贅沢良いじゃないですか」

春雨「でもまだ終わった訳じゃ…」

浜風「…この4ヶ月、ずっと戦ってました。今の日常を守りたくて、関わらせたくないと言う瑞鳳さんに反抗してまで。

でも止められなくて沢山の犠牲者を出して、自分の無力さを改めて思い知らされた気分です」

春雨「浜風だからこそ防げた犠牲もあったと思いますよ、はい」

浜風「だけど結局全員を救えなかった。挙句、海風まで戦いに巻き込んで要らぬ力を目覚めさせて…

私がスドウ・シュンスケが薬を手にする前にクルスト達を止められていれば、あの子も霞さん達も傷付くことは無かったのに…!」

春雨「だけど海風さん達の参戦が明暗を分けたのも事実です。神通さんが未来の情報を齎して、霞さんがこちらを妨害するアナハイムの崩壊の引き金を引いて、海風さんが決勝戦でのテロ発生を予測して…

海風さん達が居なければ私達の未来は無かった、それは紛れも無い事実です。はい」

浜風「だからこそ自分が、自分の無力さが、何の力も持っていない自分自身が許せ無いんです。

これがただの現実逃避だってのは頭では分かっています。だけどこんな事実を突きつけられたら逃避したくなりますよ…」

春雨「浜風だって強いですよ。自分が志半ばで斃れると告げられても逃げないで戦って、運命を変えたんです」

浜風「春雨…」

春雨「それにもう一度言いますが浜風が戦わなければ生じた犠牲だってある、それを止めただけ立派だと思います。はい」

浜風「…やっぱり、春雨には敵いませんね。 少しだけ心の靄が取れた気がします」

春雨「ならこのまま気分転換に少しでかけませんか? この辺少し歩いてみたいんです、はい」

浜風「時雨でも誘えばよかったでしょうに」

春雨「時雨は天津風さんと一緒に先ほど出かけましたよ?」

浜風「…気付かなかった。海風が野分さん達と出かけたのは知ってたけど…」

春雨「…相変らず海風さん以外のことは眼中に無いんですね…」
665 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/06(火) 02:03:46.67 ID:mdCChN2p0
《市街地》


春雨「…まだ食べるんですか?」

浜風「勿論。次はここの鯛焼きを…」

春雨「いくらなんでも4件目はやり過ぎです、はい」

浜風「でもまだ抹茶ソフトとひょうたん揚げ(蒲鉾を2つ刺して揚げた食べ物)にずんだシェイクしか…」

春雨「もう充分だと思いますけど。それよりあっちに模型のお店が…」

浜風「…こんな遠方に来て模型ですか?」

春雨「え、駄目…?」

浜風「マンションに戻れば徒歩5分もせずに模型屋があって10分もあればヨ○バシもボー○スもあるのに…?」

春雨「個人経営のお店だからレアなキットが残ってる可能性があるんです…!」

浜風「いや春雨の実家だって模型屋ですし、そもそも春雨ガンプラ以外作らないでしょうし、何よりイベント限定品とか売れ筋になりそうなのは軒並み2個くらいストックしてるじゃないですか」

春雨「め、メタルビルドとかロボット魂とかあるかも…」

浜風「ロボット魂はまだしもメタルビルドはもう全部揃えた上でもう1個ずつストックしてるじゃないですか」

春雨「…」

浜風「…」

春雨「しょ、書籍…」

浜風「無理して理由作らないでください」

春雨「…」

浜風「…」

春雨「春雨達って、する事がいつもワンパターンな気が…」

浜風「時雨と夕雲の貴重さがよく分かりますね… 二人だと食べるか模型見るかどっちかしかしてないです」

春雨「次は海風さんを連れてきましょう。あの子ならきっと観光とか楽しんで…」

浜風「どうだろう… あの子どちらかと言えばマイペースだから変な方向に楽しみそうで付いて行け無い気が…」

春雨「時雨と夕雲の貴重さが身に染みます… 好奇心旺盛で何でも楽しむ時雨と観光地出身だから楽しむ方法を熟知してる夕雲が…」

666 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/06(火) 04:32:08.01 ID:mdCChN2p0
side-天津風-『感情とソラ』


《仙台空港》

時雨「…仙台空港って言う割には、ここ仙台市内じゃないんだね」

天津風「そうみたいですね」

時雨「そう言うもの、なのかな?」

天津風「流石に空港なんか市街地に建てたら騒音問題で訴えられますよ」

時雨「確かに、それもそうか…」

天津風「…」

時雨「…何か僕に不満でもあるのかい?」

天津風「別に」

時雨「あの時、僕がキミを叩きのめした事を根に持ってる?」

天津風「その件は時雨さんが正しい、って事は理解してます。ガンプラ学園への恨みを捨て切れて無い自分が悪いって」

時雨「だけどまだ心の中にしこりがある、って訳か…」

天津風「時雨さん、貴女は誰かを潰して立てない程に叩きのめしたいって思った事はありますか?」

時雨「無いといえば嘘になるかな。 この前出会ったシェリンドン・ロナとかナノマシンをばら撒いた連中とか」

天津風「いや、そう言うのじゃなくて… こう、個人的な恨みとか…」

時雨「無いね」

天津風「聞いた私がバカだった…」

時雨「だって恨むような相手に遭った事が無いし。学校だって通ってないのに、そう言う相手を見つけるほうが難しいって」

天津風「え、通ってないんですか!?」

時雨「一応高校生だけど、通信制で日中は基本店番だから。因みに中学校には通ってないから高校が学校デビューだよ」

天津風「はぁ… 頭痛い…」

時雨「…でも、そうだね。キミの身近に恨みとか嫉妬とか、ヤバめの感情の塊だったのが居るじゃないか」

天津風「海風、ですか?」

時雨「そうさ。 求める答えとは違うと思うけど、参考くらいにはなるんじゃないかな」

天津風「でも海風は私と違って、何でも持ってて…」

時雨「いや、その逆さ。彼女は『何も持ってなかった』、そこがあの子のスタートラインだよ」

天津風「何も持ってなかった…?」

時雨「キミは最初からガンプラ学園、あの結構恥ずかしい名前の学校に入るだけの才能を持ってた。

浜風と夕雲、春雨を新設時にスカウトしてきたようなガンプラに関してだけは超名門に… だけどあの子はソレすら無かった」

天津風「…でも海風は今の私よりずっと強くなって…」

時雨「それは心の差だよ。 あの子の動機、なんて僕には分からない。最初はキミのように負の感情で戦ってたのかもしれない。

だけど今のあの子は前向きな感情で戦って、今じゃ『ウイングガンダム・アズライト』と完全に同調すら果たした。ここがキミとの差さ」

天津風「私と海風の差…」

時雨「人は憎しみだけじゃ強くなれない。 強くなれてもそれは一過性、いずれ限界が来る。 だから目指さなきゃならないのはその先さ」
667 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/08(木) 03:40:35.01 ID:d62G5I280
天津風「時雨さん、貴女に夢はありますか?」

時雨「夢、か… 考えた事はそんなに無いかも。目先の事は考えてても、その先までは特に」

天津風「私にはなりたいものがあった、だけどその夢を奪われたんです。たった一度の敗北で、資格無しって言われて…」

時雨「ガンプラ学園の事? 確かに、前に矢矧が苦言を呈してたよ。 『流石に入学直後に一発退学はやり過ぎ、こんなんじゃ生徒の伸び代が駄目になる』って」

天津風「矢矧… メイジンが…!?」

時雨「そうさ。僕これでも、矢矧とはたまにプライベートで会うんだよ。主に愚痴ばっか聞いてる。

特にガンプラ学園の教育方針には相当頭にきてるみたいでさ、『旧ガンプラ塾を廃止したのに教育方法をそのまま継いじゃ意味は無いでしょ』ってもね」

天津風「だけど相当マイルドになってるって聞いてますけど…」

時雨「全然だよ。現にキミみたいな子が出ている時点で、褒められたような場所じゃないと思うし。夢を目指す人達を育む場として現実を教えるのも確かに役目ではある。

そこから夢を諦めてしまう子が出るのは仕方無い、だけどこれじゃただの暴力と変わらないよ。一方的に見切りをつけて潰すのは絶対に違う、理不尽に可能性を潰すEXAMと何ら変わらないじゃないか」

天津風「時雨さん…」

時雨「それに矢矧だって僕等には僅差で負けて、浜風や夕雲にも負けて、飛龍達にはフルボッコにされてるんだよ?

だけど矢矧のメイジンとしての支持は厚い。 先代の頃よりもガンプラに興味を持ったファイターだって増えてる、それは矢矧が掲げる『楽しいガンプラバトル』が理由じゃないかって僕は思う」

天津風「『楽しいガンプラバトル』…」

時雨「ただ強いだけじゃ駄目なんだ。 それではいずれ誰もが離れて、孤独しか残らない… だから楽しんでいる手本を見せる、それが彼女のやり方なんだよ。

それにキミは弱かった事で得たものもあった。 キミの周りには今誰が居る?」

天津風「誰って…」

時雨「頼りになる仲間に、先生が居るじゃないか。 些か思考のネジは10本くらい外れてるのが多いけど。

失った夢を『呪い』のままにするか、糧にして新しい『ソラ』へと向かうかはキミ次第だよ」

天津風「私は…」

時雨「そろそろ帰るよ。あと春雨が心配するし、何より今日はもうこの後の便は少ないからね」

天津風「分かりました」

時雨「あと、一つ聞きたいんだけど」

天津風「何ですか?」

時雨「キミにとっての『ソラ』って何?」

天津風「え…?」

時雨「少し解り難いか… ソラをどう感じるか、ってことさ」

天津風「私にとって空は…」

時雨「ま、この答えはまたの機会に聞かせてもらうよ。試しに海風にも聞いてみたら? きっと、面白い答えが返ってくると思う」
668 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/08(木) 04:30:52.79 ID:d62G5I280
《夜 マンション》


浜風「全員、揃いましたね?」

春雨「揃ってます、はい」

海風「何ですか… 食べ過ぎて少し眠いんですけど…」

天津風「牛タンは暫く見たくない」

時雨「まさか帰ったら大鯨さんが部屋のベランダで七輪使って山盛りの牛タンを焼いてたなんて…」

春雨「わんこ蕎麦ならぬわんこ牛タンでした…」

浜風「しかも残りは全部冷凍庫に… ってそうじゃなくて、明日の事について話しましょう」

天津風「明日の事?」

浜風「出かけるにしろ引き篭もるにしろ、それぞれの予定を全員が把握しておく方が良いと思います」

時雨「そうだね。出先で何かあった時困るし、把握しておくに越した事はないから」

海風「海風は野分さん達と図書館、あと中野栄に行きます。早速水族館の方に行ってみようかと」

天津風「私は… どこかに出かけたい、って思ってます」

浜風「では私はここで待機を。 護衛は今日と同じで天津風さんに時雨、春雨は私に就いて下さい。海風は野分さん達に任せたほうが戦力的に安心ですし。

後は… 夕飯のローテーションとか考えておかないと…」

時雨「この中で料理出来ない人、手をあげて」

浜風「…」ビシッ

海風「…自炊すら出来ないなんて」

浜風「だ、だって下宿だし必要ないから…」

春雨「やっても基礎も出来ないのに凝ろうとして失敗するのが常です、はい」

海風「うわ、最低なパターン…」

浜風「」ガーン

時雨「いや、もっと最低なのは出来るって自己申告してる癖に実態はメシマズってパターンだよ」

如月「そうね、天城さんとか天城さんとか…」

海風「っていつの間に!?」

如月「合鍵貰ってるもの。ちょっと様子見にね」

時雨「天城って人の、そんなに酷いのかい…?」

如月「例えばエビチリを作ったら食べた人が突発的に海老アレルギー発症したり、高校の調理実習でクラス全員が当時人気だった天城さんのモノを食べて食中毒を起こしたり…」

春雨「最早テロでしかない気が…」

如月「その癖料理したがるから、天城さんがキッチンに入るのを陽炎ちゃん達が総出で抑えこむのがほぼ毎日の榛名さんご一家の日常ね」

海風「ひ、酷い…」

如月「だから忠告ね。 天城さんの持って来た食べ物は全力で受け取り拒否と置いて行ったらこのマスクとゴム手袋と防護服とトングを使って廃棄、作るって言い出だしたら野分ちゃんと榛名さんを絶対に召喚して阻止。

病院のお世話になったり今後食品アレルギーを患いたくなければね… 決して、怖い物見たさに食べるなんて選択は駄目よ…!」


イベント選択 直下
1.『対極の二人』
2.『三人の思い出』
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/08(木) 10:27:47.47 ID:s3JwcPh20
1
670 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/10(土) 04:35:49.49 ID:hWtUTpr40
side-海風&天津風-『対極の二人』


海風「話、とは?」

天津風「単刀直入に聞くわ。貴女、『空』をどう思う?」

海風「いや、意味わかりませんて」

天津風「だから、貴女にとっての『空』って何?」

海風「と言われても… まず貴女の回答はどうなんですか」

天津風「私にとっての『空』は… 空は…」

海風「…答えが出せない、んですか?」

天津風「…みたいね。時雨さんに言われて考えたけど、結局自分の答えを見いだせなくて…

だから聞いてみようと思ったの。海風に聞けば面白い答えが聞ける筈だ、って言うから」

海風「海風にとっての空は… 偽物で、虚ろな鏡みたいなものでした」

天津風「偽物…?」

海風「何か本物って感覚がしない、見ているだけで苛立つような偽物の青が世界を覆って…

神経を逆撫でしてるみたいで大嫌いでした。まるで自分だけが世界から隔絶されているような感覚で、お前は空っぽだって言われてるみたいで。実際、そうなんですけどね」

天津風「何か嫌なことでもあったの?」

海風「いえ、寧ろ『何も無かった』んです。 海風自体何も無い、目指すべきものも生きる為の道標もあやふや…

そして何より海風は自分や世界に価値を見出すことが出来なかったんです。世界がセピア色のように見えて、って何か厨二病みたいな発言してる気がする…」

天津風「何も無かった、か…」

海風「だから鉱物に惹かれたのはきっと綺麗でハッキリと色があって、価値があるからなんだと思います」

天津風「でも『だった』、って事は何か心境の変化でもあったんでしょ?」

海風「そうですね。自分が空っぽだったことに気付いて、ようやく世界に色が少しずつ見えてきて… 何がしたいか、何処に進みたいかが分かってきました。

これも多分、先輩や霞に出会ってガンプラバトルに身を投じたお陰でしょう」


時雨『いや、その逆さ。彼女は『何も持ってなかった』、そこがあの子のスタートラインだよ』


天津風(海風は二人に出会うまで本当に何も無かったんだ… 私はメイジンになりたいって目標もあって、ガンプラ学園に入れるだけの力もあった。

だけど今度は真逆になって、夢も無くて力だって追い越された私と色んなものを手に入れた海風と…)

天津風「私と海風、どこに差が出来たって言うの…」

海風「天津風さん?」

天津風「私だって人一倍努力して、認められるだけの力を持ってガンプラ学園に入った筈なのに、結果が退学させられて何もかも奪われて…!

なのに始めてたった4ヶ月で自分の機体だって他の人任せの海風や霞は私を追い抜いて…」

海風「…それはきっと、心の在り方だと思います。海風だってこの心境に至るまで、勝手に恨まれてスドウ・シュンスケに何度も襲われるわ向き合いたくも無かった相手に向き合わされるわ…

色々あって、その末に未来を創るために戦うと決めたんです。確かに自分の今まで全部を否定された天津風さんは辛いと思いますが、そこに囚われて後ろ向きなんです」

天津風「前を向けてないって言うの…!?」

海風「先輩だって折れそうになったし、霞だって最初は人を拒絶してました。だけどそこから二人は一歩踏み出して、前に進んだ。

だけど天津風さんは復讐に囚われて後ろ歩き状態、前に向かって全力ダッシュしてる人にムーンウォークが追いつけますか?」

天津風「あ…」

海風「きっと必要なのは何もかもを振り切る心と前をむくための少しの勇気、これだけあればきっと追いつけるかもしれませんよ」
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