【安価】 ガンダムビルドファイターズトライ・アズールU【艦これ×GBF-T】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

422 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/03/25(日) 05:34:15.55 ID:XD4eYRNf0
海風「速い、だけど!」

スドウ「避けた!?」


高速で背後から襲い掛かる百万式の斬撃を左腕のブレイドで防ぐ。並みの人間なら対応出来ない攻撃も海風は余裕で対処出来る。

例えEXAMシステムによる補助があろうとも海風の脳の思考速度を上回らない限り、脳が限界を迎えない限りは彼女を倒すことは難しいだろう。


スドウ「何故だ…!EXAMを使ってるんだぞ!」

海風「確かにシステムは強力で厄介、だけど! 動きのパターンは読めます!」

浜風「それに、複数の敵意には対処出来ない!」


浜風がすかさずドラグーンによる砲撃を行いサーベルを持っていた右腕を吹き飛ばす。

後退を図るスドウの百万式、だが浜風のドラグーンのビームが道を遮り逃げ道を断つ。


スドウ「チイッ…!だが、お前達は再生出来ない!」


ライフルと右腕を再生させてドラグーンをライフルで狙撃しようとする。だが浜風も負けじとドラグーンを巧みに操作して射撃をかわす。

そして浜風が拾っていた『ある武器』をウイングに向け投擲し、それを海風のウイングは掴んで照準を合わせる。


浜風「チャンスは一度、決めてください!」

海風「分かっています!出力最大、メッサーツバーグ全エネルギー解放!」

海風(続いて機動予測開始、敵回避パターンから『必殺』の位置を推定!照準マニュアル設定、プロヴィデンスに緒元データを転送!)

浜風(緒元データ? ここに誘導しろ、と言う事ですか!)


浜風が海風の意図を汲み、ドラグーンを使い百万式を壁際の逃げ難い位置まで追い込んでいく。

その位置に百万式が付いた瞬間、集束していたエネルギーを海風は解放し一撃を放つ!


海風「これで、終われぇぇぇぇぇぇっ!」

スドウ「な、なんだと…!」


一直線に進む極大のビーム砲撃、だが百万式は既に回避は間に合わない。

そして海風の一撃は容易く百万式を呑み込み、周囲一体をも吹き飛ばした。


浜風「今度こそ、塵に返してあげましたよ」

海風「ビルダーの方には申し訳ありませんが… だけど犯罪に利用されるよりは良い結末でしょう」
423 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/03/25(日) 06:17:07.16 ID:XD4eYRNf0
「ククッ… 誰が終わりだと言った…!」

浜風「直撃したのに…!あれで消し飛ばないなんて、どんなビームコーティングを…!」


視線の先にはボロボロになっていた百万式の姿があった。既に各部に亀裂が入り右脚と左腕は吹き飛んでいる。

海風は機体の損傷状況、そして周囲に飛散している『モノ』でどうやって彼が攻撃を防いだかを見極めた。


海風「粒子結晶により防御、そして粒子結晶でも防げなかったからメガライドランチャーによって威力を無理矢理弱めた…」

スドウ「そうだ…! だがこっちは、再生できんだよ!」

浜風「くっ…!こちらもドラグーンのエネルギーが…!」

海風「なら一人で下がってください!あとはこっちでやります!」

浜風「海風!?」


再生する百万式に向けて連結した『アズライトウイングブレイド』を構えてスドウへと肉薄する。

だがその道を阻むように無数のコピー体が現れるが海風は容易くそれらを切り裂き消していく。


海風(思考速度をもっと上げないと…!)


『ウイングガンダム・アズライト』の直進は止まらない。目の前の全てを薙ぎ払いながら百万式の本体へと迫る。

そして彼女に目がけて百万式の本体がサーベルを構えて突っ込んできた。


海風(来い…! 今なら、コイツと『相討ち』になれる!)


確実にスドウ・シュンスケと百万式を倒す最良の手段、突撃してくる本体と刺し違えてでも彼を倒そうとする海風。

そして互いの機体の距離が近付き、互いに剣を突き立てようとした瞬間、割ってはいる機体があった。


海風「なっ…!?」

浜風「やらせる、かぁぁぁぁぁぁぁっ!」


百万式のサーベルが割って入ったプロヴィデンスの脇腹を貫く。その光景に海風は唖然となった。

何故浜風が割って入ったのか理解出来ない。このままなら自分一人の犠牲で彼を確実に倒せた筈なのに、と。


スドウ「コイツ…!」

浜風「大事な妹を、やらせるか…!」

海風「い、一体何を…!」

浜風(マズイ、致命傷かも… でも海風を守れたなら、それで…)

「良い訳、無いでしょう!」


高速の機体が百万式へと迫り、背後からクローシールドでサーベルを持っていた右腕を引きちぎりプロヴィデンスから剣を抜かせる。

そして百万式を蹴り飛ばして地面へと叩きつけた。 海風の前に立つのは深緑のMS、『改RX-0』の1機。


海風「スレイプニル…!?」

天城「姉さん、二人を連れて後退を!ここは引き受けます! あとニクスの応急処置も!」

榛名「了解!二人共、下がりますよ!」


増援到着
・RX-0[S]スレイプニル
・RX-0[FR]フェンリルtype-R
424 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/03/25(日) 07:00:28.00 ID:XD4eYRNf0
海風「榛名さん、あの…」

榛名「…何があったかは後で聞かせてもらいます。今はこちらの応急処置が先です」

浜風「しかし今は…」

榛名「動かさないで。致命傷一歩手前ですが、まだギリギリ直せる範囲です。リペアシステム起動、マテリアライズ」


RX-0[FR]フェンリルtype-R
武装
・60mmバルカン×2
・ビームサーベル×2
・タクティカルアームズUL改『イチイバル』
・カレトヴルッフ改『グロッティ』

概要
フェンリルのもう一つの姿で味方の補助、修理に特化した仕様。
スライサービットは取り外されており、大幅に戦闘力がダウンしているがあくまでも前衛で戦うためでは無いので問題はないとのこと。
専用装備はカレトヴルッフを改造した『グロッティ』。カレトヴルッフの戦闘機能の大半を削り、修理に特化させたもの。
通常の修理機能としてパテ等を内臓してはいるが、特殊な能力としては損傷箇所に粒子結晶を損傷箇所に形成することで『補填』することも出来る。
ただしあくまでも一時的な『補填』であり、戦闘で激しい動きをすれば壊れてしまうほど脆弱な結晶しか形成できないというネックも。
『イチイバル』はフェンリル用に新造された装備であり、全仕様共通の装備。応戦する際はもっぱらこちらを使う。


浜風「損傷が、直って…!」

榛名「一時的に損傷箇所を粒子結晶で補填しただけです。本格的な修理は今から…」

海風「あの…」

浜風「大丈夫、多分一時的に頭が熱くなっただけです」

海風「どうして、あの時海風を庇って…」

浜風「当然でしょう。海風は私の妹、私が守らなくてはならない存在ですから」

榛名「だからと言って、身体と機体は大事に扱ってください」

浜風「はい…」

榛名(海風さんの状態、間違いなくあれは『理性の暴走』、海風さんの能力の本質である『脳のリミッター解除』したことがトリガーとなって起きたこと…

なら必要なのは『使いこなすだけの強い心』だけど… 何か本質が違うような気が…)



スドウ「何なんだよ、お前は!」

天城「コード・ブレイヴ! 終わらせます!」


スレイプニルが百万式の四肢を切り落とし、再生を許さぬように破損箇所をズタズタに破壊し歪めていく。

そしてリミッターを解除したスレイプニルは『レーヴァテイン』から巨大な粒子刃形成して、百万式へと振り下ろす。


スドウ「こ、この俺が…!」

天城「簡単に誰かを傷付ける貴方にバトルをする資格はない!天城達の前から、失せろ!」

スドウ「これで勝ったと思うなよ…!」


そして百万式の機体は真っ二つに叩き割られ、大爆発を引き起こす。

しかしそれと同時に粒子結晶が暴走して建物の天井を貫いていく。


天城「不味いですね… 姉さん、バトルシステム強制終了コード入力、脱出します!」

榛名「分かりました!システム強制終了、逃げますよ二人共!」
425 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/03/25(日) 23:54:18.59 ID:XD4eYRNf0
《屋外》


天城「ケホッ… 姉さん!」

榛名「流石にこれは誤魔化せませんね…」

浜風「ビルが崩落して…」

海風「そうだ… 彼は!?」

天城「逃げられましたね… 知覚出来ません」

榛名「ええ。気配はもうありません」

海風「くっ…!」

浜風「…だけど今回はテロを阻止して誰も犠牲を出さなかった。それだけで充分です」

榛名「今回は榛名と天城が街中に偶然居たから何も起きなかっただけです。さらに偶然『フェンリル』のtype-R用装備を所持していたことで誰も犠牲者が出なかった…

だけどもし持っていなかったとすれば浜風さん、貴女は死んでいました」

浜風「はい…」

海風「それは海風が…!」

榛名「海風さんも、です。 おおよそ『自身と引き換えにでも彼を倒す』と言う予測が『最良の結末』として出てしまったのでしょう。

それは恐らく能力の過剰使用による『理性の暴走』です」

海風「『理性の暴走』…」

天城「能力は通常以上に行使出来るようになりますが命の危険性や肉体への負荷を完全に無視し『効率』だけを重視するようになる状態です。

だから現状で『最適』だと思った行動しか出来なくなってしまう、非常に危険な状態… 本来の自分を見失っている状態とも言えますね」

榛名「暫く未来予測演算は封じた方が良いかと。それと暴走が収まるまでは指揮を執らないように」

海風「しかしそれでは…!」

天城「一番それが危険なんです。理性が暴走している人間が指揮を執ったらどうなると思いますか?

当人には最良の結果になろうとも、周囲にとっては最悪の結末になるかもしれないんですよ? 誰かを犠牲にする重みを背負えますか?」

海風「あ…」

瑞鳳「二人共!…ってあれ、どうしたの?」

榛名「ここではマズイでしょう。人が集まってきました」

瑞鳳「…分かりました。では移動しましょう」
426 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/03/26(月) 01:05:21.16 ID:JRDi0bHQ0
《旅館 瑞鳳の部屋》


瑞鳳「理性の暴走、ね。それでプロヴィデンスが破損しちゃった、って訳か」

浜風「機体はどうですか…?」

瑞鳳「あと2mmずれてたらアウト。しかもフレームやっちゃってるから全とっかえしないと修復不可能」

浜風「そんな…」

瑞鳳「寧ろどうしたらこんな奇跡が起きるのかが不思議なくらいだよ… 天城さんが間に合って無ければ確実にやられてた」

海風「…」

瑞鳳「…多分、頭がそう判断しちゃったから暴走が起きちゃったんだよね。これで責めるのは少し酷かな…」

榛名「ええ。ですが暴走が起きた原因の中には確実に焦りがあったと思います」

天城「人間、焦ると頭がこんがらがりますから。だけどこの事態は軽くは済ませられないでしょう」

榛名「どうにかして対処しない限り… また暴走が起きれば、次は誰かが犠牲になります」

海風「っ…!」

榛名「『理性の暴走』は榛名に経験はありませんが、『突然変異者』としてなら能力の暴走を引き起こした時があります。

人の心を無差別に読んで、頭をパンクさせて… 精神壊しかけました」

天城(天城は特にありませんが… まあ、基本姉さんとしか感応できないから意味ないですけど)

榛名「『暴走』は時に誰かを巻き込むことがある。それを理解してください。

そして己の力をどうにか出来ない限り能力行使は愚か、バトルも止めざるを得なくなります」


「ここで私の出番ね!」ガラッ


瑞鳳「出てくんな!」バキィッ

大鯨「きゃ〜っ」ドゴォォォォ

浜風「た、大鯨さん!?」

天城「庭の壁越えて雑木林転がり落ちていきましたよ…?」

榛名「あれでも多分死なないのが恐ろしいところですね」

瑞鳳「ハァ… 確かにお母さんは精神制御のプロだけどさ!? シリアス空気壊さないでよ!?ともかく、どうにかしないとね…」

海風(海風が、暴走… ちゃんと、制御できてなかったの…?)


行動選択 3票先取まで↓
・天城&萩風『シスターズ・カウンセリング』
・神通&朝雲『シスターズ・リーズン』
・大鯨&霞『滝・トレーニング』
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 02:01:37.26 ID:+K+MImTrO
陣痛朝雲
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 09:37:57.50 ID:Q5OZ2e5u0
大鯨&霞
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 13:47:17.37 ID:7ZWAAQd9O
1
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 17:41:43.19 ID:fu9jepG8O
>>427
まるで陣痛起こしてる朝雲みたいでワロタ
安価は神通&朝雲で
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 18:18:22.67 ID:MO/DGH5gO
3
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 18:36:18.36 ID:ZOOfrwkO0
大鯨&霞
433 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/03/27(火) 00:28:49.68 ID:sVuTvGbR0
大鯨「だからこそ私の出番じゃない♪」ガラッ

天城「て、天井!?」

榛名「気が薄いと思ったら… 今のは分身でしたか」

大鯨「YES♪」

海風「分身って…」

大鯨「よっと」シュタッ

瑞鳳「今度は宮城までぶっ飛ばしてあげようか…」パキポキ

浜風「本当に飛ばせそうなのが瑞鳳さんなんですよね…」

瑞鳳「と言うか脇に抱えてる霞ちゃんは何?」

霞「いや、なんか気が付いたら抱えられてて…」

大鯨「ちょっと精神修業に滝行でも、と。準決勝までには帰ってくるけど」

瑞鳳「確かにウチにはお隣の富士山の近くに修業用の別荘と滝もあるけどさ… それはお母さんが決めることじゃないでしょ」

大鯨「だから海風ちゃんの意思も聞いてみないとね」

瑞鳳「じゃあ訳に抱えてる霞ちゃんは何?」

霞「滝行ってどんなのかな、って言ったら気が付いたら抱えられて…」

榛名「本物の拉致じゃないですか」

天城「興味あるって言っただけでこの始末ですよ」

浜風「海風、嫌なら嫌って…」

海風「…いえ、行きます」

瑞鳳「良いの?」

海風「はい。 心が弱いと言うのなら、その心を鍛えなおすしかありません」

大鯨「まぁ今回は瑞鳳がやったようなベリーハードなことはしないから平気平気」

瑞鳳「怪しい… でも海風ちゃんが決めたことなら、そうすべきだと思う」

大鯨「じゃあしゅっぱーつ♪」
434 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/03/27(火) 03:09:29.68 ID:sVuTvGbR0
《滝》


大鯨「じゃあまず15分の精神統一から」

霞(白装束)「え、そんな短くて良いんですか?」

大鯨「うん。滝行って言うのは長い時間居れば良い、ってものじゃないのよ。別に効果さえ出れば5分でも構わないし」

海風(白装束)「じゃあよくフィクション作品にありがちなのは?」

大鯨「実際の滝行を知らないから適当な感じになっちゃってるのよね。私達から見れば普通は1時間が精々、それ以上はバカよ。

冷たい滝に打たれて体の感覚がなくなっちゃって体冷やしたら元の子も無いじゃない」

霞「じゃあ瑞鳳さんのベリーハードって言うのは?」

大鯨「滝に打たれながら精神統一、そして水の一滴を見極めてその滝を手刀で斬るのよ。ここまで行くと『明鏡止水』の域だから普通の人はやらないけど」

海風「そ、そうですか…」

大鯨「じゃあ時間計っておくからね。よーい、スタート!」


ザァァァァァァァァ


霞「っ…!」

霞(痛いじゃない、これ…!)

海風「…!」

海風(余計な事を考える余裕が…)

大鯨「痛くても我慢、何も考えれなくなった時が貴女達の到るべき場所よ」

霞「…」

海風「…」



大鯨「15分、終わって良いよ〜」

霞「っ、はぁ… 痛い…」

海風「流石に水圧が強いような…」

大鯨「まだ弱いほうの滝よ、これ。流れを少しだけせき止めておいたもの。

はい、二人共体を温めるストレッチして。 あと体を温め易いように生姜湯も用意しておいたわ」

霞「ありがとうございます…」

海風「あの… これで終わりですか?」

大鯨「そうよ? この後はそうね… 座禅とかもやるけど」


イベント選択 直下
1.大鯨『えがお』
2.霞『こころ』
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/27(火) 09:45:03.59 ID:F9fw6/sf0
436 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/03/28(水) 01:03:49.13 ID:y8fphHwC0
《別荘 大鯨の部屋》


大鯨「ねぇ、どうして『相討ち』と言う手段を選んだの?」

海風「え…?」

大鯨「理性の暴走があったとは言え貴女の『真価』ならそうじゃない方法も見出せた筈よ。

その時貴女が『相討ち』って手段を選んだのは何かあったんじゃないかしら?」

海風「それ、は…」

大鯨「戦いを終わらせなきゃいけないって使命感か、それとも早く終わらせなきゃいけないって焦燥感か…

あるいはそのどっちも、か。 当たってる?」

海風「…」

大鯨「だんまり、ね… じゃあ別の質問。貴女はどうして昏睡病キャリアー、EXAMと戦う道を選んだの?」

海風「…誰も笑えて無いから…」

大鯨「笑えて無い?」

海風「だっておかしいじゃないですか… 身勝手な、頭の狂った誰かの為にチームのみんなが笑えなくなったんですよ…!

誰も彼もが取り繕った笑顔ばかりで誰もかも心から笑えなくなった! 地区決勝の時はまだマシでした… 合宿を終えたあたりから皆おかしくなっていって、バビロニア学園の虐殺で完全に狂った!」

大鯨「…」

海風「天津風さんも朝雲さんも、地区予選の頃はまだ笑ってた… 霞や先輩も、少し翳りはあっても笑えてた…

なのに今じゃ誰も笑えない! 瑞鳳さんや愛宕先生からも本当の意味での笑顔がなくなった!そんなの理不尽で、絶対おかしいじゃないですか!」

大鯨「だから笑顔を取り戻すために戦う、それが貴女の戦う理由?」

海風「海風、間違ってますか? 皆楽しむためにガンプラバトルをやってた筈なのに、ガンプラバトルを殺人の道具にされて…!

人類の進化だとかふざけた事をほざいた連中に何度も襲われて、戦って! アイツ等さえ居なければ皆平和だったのに!」

大鯨「そうね… 彼等は絶対に間違えてる。だからこそ、奪われた皆の笑顔を取り戻したい気持ちも痛いくらいにわかる…

でもね、海風ちゃんは少しだけ… ううん、一つだけ間違えてる事があるの」

海風「どこが間違えてるんですか…!」

大鯨「貴女が選んだ『選択』よ。 海風ちゃんが犠牲になって、誰が笑えるの?

自分の近しい人が居なくなって、それで平和が齎されたところで誰が心から笑うことが出来ると思う?」

海風「…あ…」

大鯨「少なくとも霞ちゃんや神通ちゃん達は笑わない。瑞鳳も愛宕ちゃんも笑わない。

貴女はそれが見えてなかったの。 違う、そもそも自分を勘定に入れてなったのが間違いって言えば良いのかしら」

海風「でも海風は…」

大鯨「自分より他人の笑顔が良いって言うのはわかる。だけど本当に皆の本当の笑顔を取り戻したいのなら、貴女自身も笑えるようにならなきゃいけない。

本当に誰かを笑顔にしたいのなら自己犠牲の特攻や相討ちなんて考えは持っちゃいけないのよ」

海風「…」

大鯨「そして何より… 理性の暴走を起こしたのはその自己犠牲が原因ね。 戦わなきゃいけない使命と早く皆の笑顔を取り戻したい焦燥が生んだ、ちょっとしたミスよ。

理性の暴走は、自分を強く保ってる限りは起こらない。 自分を含めて皆が心から笑える未来を『創る』、その願いを胸に秘めていれば絶対に暴走はしないわ」

海風「大鯨さん…」

大鯨「ただ思い描くだけじゃない。貴女が持つ『ソウゾウ』の力は無限大なんだから。

いつか望んだ未来を、貴女の信じる明日を、その胸の鼓動が止まらない限りは『ソウゾウ』しなさい。それが貴女の、本当の力になるから」
437 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/03/28(水) 03:59:48.80 ID:y8fphHwC0
《その頃・某所》


「ほう、作戦は失敗したか…」

スドウ「申し訳御座いません。あの化け物共が邪魔さえしなければ…!」

「女子供に負けるとは不甲斐ないな。せっかく見出されたと言うのに、稀少なナノマシンが…」

「言うなトリスタン。貴様も一度は子供相手に手玉に取られただろう」

トリスタン「クッ…!」

「まぁ良い。セルジュ、同士からの連絡は?」

セルジュ「ハッ。真紅の戦乙女に動向は無し、大会にかかりきりのようです。またホエールグループの手の内の者は動向不明、しかし会長が富士山の麓にある別荘に滞在中とのこと。

そしてそこには例の二人、『進化に辿り着いた少女達』が同行しているとの情報が」

「ほう… 残る粒子結晶の数は?」

トリスタン「10個です。いかがいたしますか?」

「では仕掛けるとしよう。しかしたかが二人と言えど『進化に到りし者』だ。全員でかかるぞ」

トリスタン・セルジュ「ハッ!」

スドウ「今度こそ、奴等を葬ってやる…!」



霞「ッ…!」ピキィン

海風「霞?」

霞「敵意が、何か…!」

大鯨「警戒態勢に入ったほうが良さそうね… 瑞鳳や榛名ちゃんたちにもいざと言う時の救援要請も行っておきましょう。

二人共、機体を。私が整備しておくわ」

霞「え、でもこの機体は…」

大鯨「大丈夫よ。私は瑞鳳のガンプラの師匠、見て整備するだけなら出来る。それに瑞鳳謹製のZZ用強化パーツも預かってるもの」

霞「ZZの?」

大鯨「ええ。それに強化改修されて『ブラストアクロスZZ』になった今でも旧ブラスト時のFAパーツは使える。

それに急場凌ぎにしかならないと思うけど、工作室もあるから即応で装備や部品も作れるわよ」

海風「そう言えば瑞鳳さんの家で見たような工作室が…」

大鯨「それに戦力が私含めて3機じゃ心もとないだろうし、予備戦力もね」

如月「今買出しから戻ったけど… あら、確か二人は…」

野分「どうしてここに?我が家の別荘ですけど…」

秋月「どうなんです、お母さん?」

大鯨「ちょっと滝で修業するのにね。皆、機体の用意を。敵襲に備えておいて」


イベント 直下
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 23:45:51.64 ID:Rf2xS5XYO
増援(チーム全員と瑞鳳・愛宕・浜風)&新武装到着
439 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/03/30(金) 04:30:28.36 ID:QuYRZEaa0
ガサガサッ

海風「っ…!敵!?」

大鯨「違うわよ。多分この気配は、瑞鳳ね」

瑞鳳「はい正解。まぁお母さんなら気付くよね、普通」

大鯨「あと、瑞鳳以外にも来てるでしょ」

神通「ここ、この時代にもあったんですね…」

萩風「なんだか懐かしい気持ちのような、ちょっと切なくなるような…」

海風「先輩、萩風さん!?」

朝雲「ったく、面白いことするなら私も誘いなさいよ」

天津風「別に精神修業は面白いことじゃないと思うけど」

海風「朝雲さん、天津風さん…」

愛宕「先生も、ちゃんと居るわよ〜」

海風「愛宕先生まで…」

浜風「勿論、私も居ます」

海風「チッ…」

浜風「酷い!?」

霞「いや、暴言吐かないだけまだマシじゃないかしら…」

大鯨「望んだ、のね… 戦うことを」

瑞鳳「うん。 それに私が不在の間にこの子達に何かあったら大変だから、私の側に置いておくって意味合いもある」

如月「あら、一気に増えたわね… でも、お布団足りるかしら…?」

瑞鳳「足りない分は旅館の人に言って借りてきたよ。あと夕飯用の食材と… あと海風ちゃんに、春雨ちゃんからの預かり物」

海風「海風に…?」

瑞鳳「『ウイングガンダム・フレスヴェルグ』の製作に関わったビルダーとして、だって。

フィッティングは出来る用に貰ったデータで調整しておいたから即実戦でも使えるし」

海風「だからあの時データを…」

瑞鳳「ま、データ取りの理由はそれだけじゃないんだけどね」



イベント選択 直下
1.神通『理由』
2.浜風『姉妹』
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 09:56:34.86 ID:SdNfNOMe0
441 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/01(日) 05:41:34.65 ID:+kzb1FuD0
浜風編『姉妹』


《夜・別荘の外》


海風「…」

浜風「こんな所に居ましたか。夜は冷えますよ」

海風「別に、貴女に心配される謂れはありません」

浜風「そうですか」

海風「…あの時、どうして海風を助けたんですか」

浜風「え?」

海風「ニクスを大破させ、死の因果に呑まれかけてまで何で助けたんですか。 貴女にも劣り、憎まれ口しか叩かないような、歪な人間を」

浜風「そうですね… あまりよく考えてませんでした。あの時必死になってて、気が付いたら機体が前に出てたもので」

海風「真面目に答えてください…!」

浜風「真面目です。 もしかすれば私も『理性の暴走』が起きていたかもしれません」

海風「え…?」

浜風「あの時、海風なら未来を託して大丈夫だと何処かで考えていたんでしょうね… だからこそ命を賭したのかも」

海風「どうして… また、全部押し付けて逃げる気だったんですか…!」

浜風「そう言うわけではありませんが、そう取られても不思議では無いでしょう… 私は一度、海風から逃げてしまったから」

海風「…」

浜風「海風が『そう』なってしまったのは私の責任です。きっと私がもう少し貴女と向き合っていれば、3年前に貴女を連れ出していれば…

だからその贖いにでもなれば良い、とでも思っていたのでしょうね…」

海風「…もう、その話は済んだ事です。貴女を殴って、もうケリはつけましたから」

浜風「海風、EXAMの事が全部終わったらもう一度ゆっくり話をしましょう。 もう逃げないで、これから私が『姉』として貴女と向き合うために」

海風「構いませんよ。それに『約束』、守ってもらってませんから」

浜風「『約束』…?」

海風「ハンバーグですよ、ハンバーグ。結局食べそびれてます」

浜風「ああ… それくらいなら付き合いますよ」

海風「『妹』との約束、破らないで下さいね」

浜風「変わりましたね、海風… 私が家に居た頃でもそんな事は言わなかったのに」

海風「『今の海風』があるのは全部チームの皆のお陰です。先輩が海風を見つけてくれたから、霞が友達になってくれたから…

天津風さんと朝雲さん、そして萩風さんと出会ってチームを組んで… 居場所が出来て、今の海風を皆が創ってくれたんです」

浜風「良い仲間に恵まれましたね」

海風「だからこそ、海風は何としても守りたいんです。 皆の未来を、明日と言う希望を… その為に、戦うと決めたから。

なんて、言葉では言えますが… 現実では暴走して、死にかけたんですけどね」

浜風「それでも、謳い続けなさい。どれだけ脆くとも、弱くとも… 言葉にする限り、その灯火は絶対に消え無いから。

積み重ねた『これまで』が『これから』に変わるように、謳い続けた願いを力に変えて戦うんです」
442 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/02(月) 03:46:42.54 ID:GE/Ok22W0
パァァァァァァッ…


浜風「海風! 光が!」

海風「あれは… 粒子の光…?」

浜風「瑞鳳さんに報告! それと全員第一次戦闘態勢に移行の通達を!」



《別荘・リビング》

大鯨「どうやら敵はこの一帯をバトルフィールドにするつもりみたいね」

天津風「でもどうやってシステム外にフィールドを形成してるのかしら…」

瑞鳳「バビロニア学園の時と同じだよ。広域に撒いて大気を粒子で満たせばガンプラは動くようになる。

それに新製造された人工の粒子結晶を使って、暴走・膨張させて広域散布させてるの」

朝雲「それって環境に影響とかは?」

瑞鳳「人体や環境に問題は無い。ただしガンプラが暴れた場合の被害は別で、例えばビームが壁に当たったりしたらその箇所は抉れちゃったりするよ」

萩風「結晶か暴走の大本を破壊すれば粒子も大気中に溶けて消えるので残留の心配もありません」

神通「その代わり敵は、地区決勝戦や学園の時のように無人のコピー体を無限生成可能です。

制限もなく、壊れたらすぐ新しいのが現出するのでそこが厄介なところでしょうか…」

瑞鳳「まぁ思考ルーチンはゴミだから大した脅威じゃないけど」

如月「で、現状の戦力が…」


戦力
・ガンダムエピオン・クロイツ(瑞鳳)
・ウイングガンダム・アズライト(海風)
・インフィニットジャスティス・ロンギフローラム(神通)
・ブラストアクロスZZ(霞)
・ガンダムハルート・ボーライド(天津風)
・RX-0[Sm]シームルグ(朝雲)
・ガンダムエクシアルベルム(萩風)
・ギャプラン・カスタム(愛宕)
・RX-0[E]エイクスュリュニル(秋月)
・RX-0[Fv]ファヴニール(野分)
・RX-0[Ra]ラタトスク(如月)
・???(浜風)
・???(大鯨)

野分「13機、4小隊分ね…」

秋月「バビロニア学園の時より戦力が…」

浜風「しかしやるしかありません…!瑞鳳さん、例のものを」

瑞鳳「あいよっと」

海風「それは?」

瑞鳳「前にマフィアぶちのめした時にかっぱら… 戦利品よ。遠隔型バトルシステム、これでガンプラを操れる」

霞「今かっぱらった、って言いかけましたよね」

瑞鳳「さ、さあ? 細かい事は気にしない!」
443 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/02(月) 04:36:29.75 ID:GE/Ok22W0
瑞鳳「じゃあ後は… 各機、機体チェックを。 あとお母さんの機体は?」

大鯨「一応準備はしてあるわ」

朝雲「大鯨さんも戦うんですか?」

大鯨「ええ。一応、瑞鳳と同程度には戦えるつもりだけど」

天津風「それって相当じゃないですか…」

瑞鳳「あとはZZとウイングの強化パーツと… 浜風ちゃんの新型ね」

浜風「もうロールアウトを?」

瑞鳳「うん。 これね」

海風「…どこかで見たような機体ですねぇ?」

瑞鳳「あ、バレた」

神通「そのままウイングガンダム・アズライトじゃ…」

萩風「微調整と装備の変更、それ以外はアズライトの2号機とも言うべき機体でしょう」

瑞鳳「『ウイングガンダムゼロ・クロイツ』、まぁ実質的な2号機と言うか参考にしたと言うか… 機体の装備はファイターにあわせて変えてあるけども。

あと『アズライトバースト』は無いから… ガワだけ似てるだけだから…」


新型
ウイングガンダムゼロ・クロイツ(浜風機)
武装
・ツインバスターライフルクロイツ(サーベル内蔵)
・ビームサーベル×2
・マシンキャノン×2
・ビームガン兼ビームトンファー×2
・ウイングシールド
・クロイツドラグーン(シールド・ドラグーン×1、ウイング・ドラグーン×2)×2
・腰部ドラグーンユニット(シールド・ドラグーン×1、ウイング・ドラグーン×4)×2
・RGシステムtype-Z mode『AZ』

概要
浜風用の新型機であり、ニクスプロヴィデンス・クロイツ・リバイの代替となる機体。
海風機である『ウイングガンダム・アズライト』のデータやパーツを参考に製造され、実質的な2号機に相当する。
武装はアズライトから格闘兵装を大幅に削減、その代わりにドラグーンを積極的に採用することで火力増強を図った。
クロイツドラグーンはビームシールドを展開可能な1基のシールド・ドラグーンとビーム砲を内蔵した2基のウイングドラグーンで構成されており、防御・攻撃が両立した構成。
そしてウイングドラグーンにはツインバスターライフルとの連結機能を有し、計12基のビーム砲を扇状に展開する『ハモニカモード』と直結させて大出力化させる『マグナモード』が存在する。
特殊システムとして『RGシステムtype-Z mode『AZ』』を内蔵。基本は通常のRGシステムtype-Zと特に変化は無いが、追加機能として『あるシステム』との共鳴機能が追加された。
塗装はアズライトの水色の部分をシルバーに変更した以外、アズライトと大差が無い。



海風「…あとできっちりお話しましょうか」

瑞鳳「う、うん… あ、あとは春雨ちゃんからのアズライト用追加装備とZZの強化パーツね」



強化パーツ安価
・ウイングガンダム・アズライト(海風機)用 直下
・ブラストアクロスZZ(霞機)用 下3

機体安価(大鯨機) 下5


機体条件:MSであること、ふざけた機体はNG
改造内容指定:とくになし
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/02(月) 20:35:25.18 ID:CAjdtMCaO
ツインバスターライフルアズライトNEX

ツインバスターライフルを長砲身化しジェネレータを内蔵、威力・射程をアップさせている。
本体とは別のジェネレータを使うことで粒子消費を削減、またメッサーツバーグへの補給機能も追加。


新型アンテナ

索敵、通信機能を強化した頭部のV字アンテナ。
形状はカレトヴルッフフェーダーに付いてるV字アンテナと同じ
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/03(火) 01:47:47.09 ID:1lLVV8yzO
踏み台
446 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/04(水) 02:48:06.92 ID:cHM8vHgO0
来なさそうなので安価


霞(ブラストアクロスZZ)用新装備 直下
1.フルアーマーtypeD(デストロイ)
2.フルアーマーtypeF(フォートレス)
3.フルアーマーtypeN(ニュータイプ)
4.その他(内容も)


大鯨機 下3
1.グレイフォビドゥン(ベース機:ディープフォビドゥン)
2.オムライジンクス(ベース機:スペルビアジンクス)
3.トールギスベラール(ベース機:トールギスV)
4.その他(ベース機・改造内容・機体名 併記)
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/04(水) 09:33:56.09 ID:0QHqOQkC0
2で
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/04(水) 09:48:57.39 ID:0AaDrufo0
3
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/04(水) 17:50:06.36 ID:ac6QGDGmO
1
450 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/05(木) 02:36:17.82 ID:o4zPDj5Q0
瑞鳳「『ツイン・バスターライフルアズライトNEX』と新型アンテナが海風ちゃん用に春雨ちゃんが用意したものね」

海風「NEX?」

瑞鳳「まぁ新型、とかって意味かな。ツインバスターライフルは砲身の延長による射程と威力の向上、そしてジェネレーターを内蔵して本体からの粒子供給に頼らずに運用出来る。あとメッサーツバーグへの粒子供給機能も追加ね。

アンテナは通信・索敵機能が強化されてるって。あと粒子制御アンテナとしての役割もある、とかないとか」

海風「曖昧ですね…」

瑞鳳「私が作った訳じゃないし、調整はしたけど具体的な効果まではね。 はい次、霞ちゃん用の」

霞「ZZはやっぱりフルアーマーじゃないとね。でもこれ、前と違うような…?」

瑞鳳「幾つか試作した内の一つで、名付けて『フルアーマーtypeF(フォートレス)』。 一部本体の武装を取り外すけど、大丈夫?」

霞「火力落ちません?」

瑞鳳「それを補って余りある大出力にしたから平気平気。それに防御・機動性もちゃんと強化してあるから」

大鯨「あとは… 私の機体ね」

天津風「『フォビドォン』? でもテイルエクステンションが付いてるから『フォビドゥンブルー』の系譜かしら」

大鯨「ガンダムヘッドに戻してるけど一応『ディープフォビドゥン』よ」

神通「『グレイフォビドゥン』、この時代にもあったんですね…」

大鯨「と言う事はこの機体、まだ未来に残ってたのね。 結構年季は入ってるけど、まだまだ現役よ」


自軍参戦

グレイフォビドゥン(大鯨機)
武装
・75mm対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」×2
・テイルエクステンション
・トライデント
・ビームガン内蔵トンファー×2
・アーマーシュナイダー×2

ホエ−ルストライカーtypeY
・装甲内蔵式重刎首鎌「ニーズヘグ」×4
・複合ステルスシステム「ハイパー・コロイド」
・エネルギー偏向装甲「ゲシュマイディッヒ・パンツァー」

概要
大鯨が自分専用に用意している複数機の内の1機。『コククジラ』の名前を冠し、耐圧殻には自作の鯨ステッカーが貼られている。
大鯨自身あらゆる武器や格闘術を使いこなすエキスパートであり射撃武装は最低限のもののみ。
高い可動域を持っており大鯨の『技』を一部再現できるなど完成度は非常に高い。
基本的にはトライデントを用いて戦うが『本気』の際には背中のストライカーを切り離しトンファーのみで戦うことも。
瑞鳳と同じく広い可動やストライカーを好む点、後継者である萩風同様ステルスシステムを用いるなど親子3代に渡る関連が見られる機体となっている。
塗装は名前の元である『コククジラ』と同じ灰色、そして一部が青。

ホエ−ルストライカーtypeY
大鯨が保有しているストライカーの1つで実質フォビドゥン用のストライカー。
ハイパージャマーとミラージュコロイドを組み合わせたステルスシステム『ハイパー・コロイド』を有する。
またゲシュマイディッヒ・パンツァーも展開可能であるため高い防御性能も持つ。


機体強化

FAブラストアクロスZZ(フルアーマーtype-F仕様)
武装
・ダブルバルカン
・ハイ・メガ・キャノン
・ハイパー・ビーム・サーベル(ダブル・キャノン)×2
・大腿部ビームカノン×2
・リフレクターインコム
・ビームキャノン×4
・ホーミング・ビームキャノン×16
・腹部ハイ・メガ・キャノン
・IFジェネレーター×2
・ビーム・バズーカ×2
・Cファンネル×8
・腕部内蔵モーターブレード×2

概要
フルアーマーtype-F(フォートレス)を装備した『ブラストアクロスZZ』の姿。一部武装が交換・取り外されており手持ち武装も変化している。
両肩・両膝にセラヴィーガンダムのGNキャノンを改造した『ビーム・キャノン』を追加、胸部に計8門・両頸部に4門ずつのホーミング・ビームキャノンを内蔵。
両肩装甲内部にはIFジェネレーター、そして腹部にハイ・メガ・キャノンが内蔵され、他にも各部にCファンネルやを装備した。
手持ち武装は『GNバズーカU』を改造したビーム・バズーカに変更し、全砲門での一斉射撃時には周囲一帯が消し飛ぶほどの出力を有する。
そして近接は不得手かと思われるが腕部装甲に内蔵した対・粒子コーティングを施したモーターブレードで応戦可能などの対策も万全。
また装甲各部に小型のジェネレーターやスラスターを内蔵することで出力不足・運動性低下対策もされた。
反面操縦や火器管制の複雑化を招いており、NTとなった霞以外にまともに使いこなせるファイターはほぼ居ない。
451 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/06(金) 01:23:51.95 ID:GG8ZDBnB0
《別荘・外 森の中》


朝雲「…クラッシャー01より各隊、敵軍が所定ラインを通過したわ」

浜風「クロイツ02、了解。 うみ… アズール01、そちらは?」

海風「アズール隊、所定位置に到達。いつでも作戦行動可能」

如月「ブレイヴ01、こっちも交戦準備完了よ」

浜風「よし… では先程の打ち合わせ通り、迎撃作戦を展開します。 アズール隊は別個に行動、残存の小隊は私が引き受けます」

海風「了解。では時間あわせ、3、2、1…」


海風「全機、兵装自由。交戦開始してください!」

浜風「オールウエポンズフリー!オープンコンバット!」

部隊編成
・アズール隊(海風、神通、霞、大鯨)
・クラッシャー隊(朝雲、天津風、萩風)
・クロイツ隊(瑞鳳、浜風、愛宕)
・ブレイヴ隊(如月、秋月、野分)


朝雲「じゃあ初手は私達からやるわよ!」

萩風「ステルス解除! ちょっとど真ん中で暴れてくるので援護を!」

天津風「面制圧なら任せなさい!」


シームルグとエクシア、ハルートが戦端を開く。シームルグが放つ実体弾とハルートのミサイルが前衛に展開する数機を破壊し、その爆煙の中からエクシアが現れ纏めて敵を切り裂いた。

それに続いて3機の『改RX-0』が敵陣へと突入を敢行し、無数の敵機へと攻撃を開始する。


秋月「敵の総数は… バビロニアの時よりは少ないですが…!」

如月「纏めてやっちゃえば良いのよ! ルーメン・キルクス、シュート!」

野分「了解! シャドーマネージング、スタート! こちらも手数で!」


ニムバス「敵が仕掛けてきたか… ではこちらも仕掛けると…」

大鯨「ざんね〜ん。お・バ・カ・さ・ん♪」

トリスタン「何っ!?」


別荘の裏手から現れた4機に大鯨の操るフォビドゥンがステルスを解除し、手に持ったトライデントで襲い掛かった。

その一撃が周囲にトリスタンの操る『ドム』の左腕を貫き、切り落とす。


トリスタン「奇襲とは、卑怯な!」

大鯨「それブーメランよ。大方私達、生身の人間を殺そうとしてた癖によく言えるわね」

トリスタン「黙れ!大義の為ならば…」

神通「何をやっても許される、そんな訳は無いでしょう!」

セルジュ「くっ…!」


屋根の上からファトゥム-02をアローモードで展開した神通がもう1機の『ドム』を狙撃するが回避されてしまう。

一撃を外した神通は即座に切り替え、ファトゥム-02を本体に接続しなおして剣を抜く。


神通「『イフリート改』に『ドム』が2機、それに強奪されていた『スクランブルガンダム』が1機ですか…」

霞「これで4対4… 戦力比は同数よ」

スドウ「お前…! お前も、絶対に殺さないと…!」

霞「…お父さんやお母さんが、あの事故で死んだ人達が、そしてお婆ちゃんがくれたこの命。むざむざアンタなんかにくれてやるかってのよ、このクズ共!」

海風「行きます! ここで一人残さず倒してしまいましょう!」

イベント 直下
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 11:21:14.93 ID:J+lB3hID0
コピー体出現
453 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/08(日) 05:50:58.44 ID:gCnJycX00
大鯨「やぁぁぁぁぁぁぁっ!」

トリスタン「な、何だよコイツ!」

セルジュ「下がれトリスタン!」


セルジュのドムがフォビドゥンの猛攻を受けているトリスタン機のフォローの為にバズーカを放つ。

大鯨はバックステップで回避し、さらに追撃で放たれるバズーカの弾を手に持ったトライデントで打ち払い、トリスタン機へと直撃させた。


セルジュ「しまっ…」

トリスタン「よく狙え!」

大鯨「残念だけど、私相手に『まとも』な戦いが通じるとは思わないことね。今!」

神通「風刃、破斬!」


2機が一瞬、気を取られた瞬間に神通が刀を振るい風を巻き起こす。その風が刃となってトリスタン機とセルジュ機を斬り刻んだ。

だが2機は即座に機体を再生させて、2機との距離を取り態勢を立て直す。


セルジュ「ホエール・グループ会長、お前は一体何者だ…!」

大鯨「そうねぇ… 正義の味方、ってところかしら?」

トリスタン「ふざけるな! 我々こそが正義、『化け物』から『人間』を守る為の…」

大鯨「貴方達のやってる事はただの迫害よ。それに無関係の人間を巻き込んでる時点で最早正義とは言えない。

それに人々に昏睡病を齎す貴方達こそ世間から見て『化け物』ね」

セルジュ「では貴様はどうなのだ!」

大鯨「そうねぇ… 世間から見れば私も充分『化け物』か。でも私は『守護者』、人の理を護る者。

化け物と蔑まれようと構わないし、愛する人が居ればそれで良い。それだけ居れば、私は戦える!」

セルジュ「話にならん… コピー体を使う!」


ドムの周囲に複数の無人機が出現し、一斉に大鯨へと銃口を向ける。だが大鯨は動じず、トライデントを投げ捨てて新たにトンファーを手に取った。

そして無尽蔵に湧き出るコピー体に向け神通が剣を神速で振るい、その衝撃波たる不可視の刃で敵を切り裂く。


神通「コピーは私が引き受けます! 大鯨さんはあの2機のドムを!」

大鯨「可愛い可愛い孫の頼みなら、任せなさい!」


並び立つ大鯨のフォビドゥンと神通のジャスティス。同じ『守護者』の名を背負う者として、血の連なる人間として、同じ敵にその刃を向ける。

そしてジャスティスとフォビドゥンは無数の敵機相手に飛び込む!


大鯨「当代当主・大鯨。『人の守護者』の名において、人の世を乱す悪を討たん! 麒麟、解放!」

神通「後代当主・神通… 『守護』を継ぐ者として、世界を滅ぼす悪を討つ! 天剣、絶刀!」
454 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/08(日) 08:12:52.17 ID:gCnJycX00
side-海風-


海風の操る『ウイングガンダム・アズライト』がブレイド抜き放ち『イフリート改』と切り結ぶ。

しかしウイングの側がイフリートに押され気味となり、海風が苦しい表情を浮かべる。


霞「海風、さがって!」

海風「っ…!」


イフリートへと霞がホーミング・ビームキャノンを放ち、イフリートはその攻撃を後方に跳躍し回避する。

その隙を見て海風は機体を下がらせ再び態勢を整えなおす。そして海風の後退を助けるまで霞が相手をしていたスドウ・シュンスケがニムバスに並ぶ。


海風「ニムバス・シュターゼン…!」

ニムバス「聞いていた程では無いな。所詮はその程度か」

スドウ「その程度かよ、化け物!」

霞「海風、まさか… 躊躇ってる…?」

海風(未来予測演算を使えば暴走するかもしれない… だけど使わないと海風は…!)


能力を使って暴走する恐怖、そして使わなければ『確実な死』が待っていると言う恐怖。その二つの恐怖が海風の心を塗りつぶしていた。

初めてだった、海風がこんなに恐怖を抱いたのは。海風は他人にあまり感情を曝け出す事は少なかった。いつも感情を押し殺して生きていたから。


海風(怖い… 自分が自分じゃなくなるのも、死ぬのも…)

霞「…海風、アンタは後退して。私がアイツ等を倒す」

海風「ですが、それでは…!」

霞「今のアンタに、二人は倒せない。 私なら、多分やれる。 それにまだ、私はアンタに恩を返してない」

海風「霞…」

霞「アンタに庇って貰って命を助けられたから。 だから今度は私がアンタを助ける番よ」


そう言い、霞は2機へと砲撃を行う。 ホーミング・ビームキャノンやビーム・キャノンを使ってニムバス達を攻撃していく。

だが海風は動けなかった。 心の中にある葛藤が、迷いが、恐怖が身体を竦ませていた。


海風(怖い… でもこのままだと霞が…)


このままなら霞は確実にやられる、海風の脳が警鐘を鳴らす。だが今の海風にはどうする事も出来ない。

そんな時、海風の頭の中にある言葉が蘇った。それは大鯨により言われた言葉…


大鯨『理性の暴走は、自分を強く保ってる限りは起こらない。 自分を含めて皆が心から笑える未来を『創る』、その願いを胸に秘めていれば絶対に暴走はしないわ』


海風(自我を強く保つ… だけど、海風には… 違う、海風には絶対に… 叶えなきゃいけない想いがある…!)


皆の笑顔を取り戻す、そう海風は決めたから。 次の瞬間、頭の中がクリアになった。 先程までの恐怖は無い、寧ろ心の中から何かが溢れ出していく。

そして大鯨の言葉の続きを海風は心の中で思い出した。


大鯨『ただ思い描くだけじゃない。貴女が持つ『ソウゾウ』の力は無限大なんだから。

いつか望んだ未来を、貴女の信じる明日を、その胸の鼓動が止まらない限りは『ソウゾウ』しなさい。それが貴女の、本当の力になるから』


海風(海風の『ソウゾウ』… 未来予測は『想像』の力… 違う、海風の力は…!)

海風「応えて… 『ウイングガンダム・アズライト』…!」


これまで共に数多の戦いを駆け抜けた愛機の名を呼ぶ。姿形を『ウイングガンダム・フレスヴェルグ』の時から変えてなおも海風と共にあり続ける宝石の名を冠する相棒。

そして海風の声に呼応するが如く、機体の各部が唸りを上げ、ツインアイが力強く煌いた。
455 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/08(日) 10:04:14.34 ID:gCnJycX00
海風「アズライト… 力を貸して…!今を切り拓く『剣』と、明日を『創る』力を!」


武器のスロットを操作して最後尾の『SPスロット』へと合わせる。この力がどんなものかは海風はまだ知らない。

だけど海風は信じている。この機体を作った浜風と春雨の想いを、この機体を改修し託した瑞鳳の意思を。 そして最も信じるべきものは…


海風(仲間と機体と、自分自身を信じて…!)


そして叫ぶ。自ら信ずるべき愛機の名を、自らが全てを託すべき機体の名を。

今まで以上の最高の一体感が海風にやってくる。 海風は、自らの『力』名を叫んだ。


海風「解き放て!ウイングガンダム・アズライト! アズライト、バァァァァァァストッ!」





愛宕「ちょっと、何アレ…!?」

浜風「蒼い、光の柱…?」

愛宕「あそこ、確か神通ちゃん達の戦線よね!」

瑞鳳「あり得ない… 一体何が起きてるの…?」


萩風「あれは…!」

朝雲「知ってるの?」

萩風「粒子の光… プラフスキー・バースト現象…!」

天津風「プラフスキー・バースト現象…?」

萩風「だけど引き起こすには粒子結晶が必要… いや、これなら辻褄があう…!?」

萩風(『アズライト』は粒子を溜め込む特性がある… そして貯蔵粒子が増えて濃度が増して、結晶に近いクラスになれば…しかも周囲の粒子も取り込んで…! 

だけどアレには『強い意志』、お母様に匹敵する精神力が必要なはず…! 海風さんは、その域に至っていると言うの…!?)



トリスタン「な、何だアレは!?」

セルジュ「まずい、フォローに!」

大鯨「行かせる訳、無いでしょ!」

神通「大鯨さん、アレは!」

大鯨「やっぱり、私の見込んだ通りだった…! 大丈夫、海風ちゃんならきっと操れるから!

私達はこっちの相手を続けるわよ! 私も、本気出しちゃうからね!」
456 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/10(火) 04:06:48.63 ID:GC2TnxV+0
空に昇る蒼い光が消え、光が放たれていた場所には『ウイングガンダム・アズライト』の姿があった。

だが光を放つ前とは姿が大きく変化し各部の装甲に蒼い宝石を鎧のように纏い背中からは宝石で形成された有機的な形状の翼が生えている。


ニムバス「なんだ、アレは…!?」

スドウ「前に戦った時と違う… 何が起きてるんだ…!」

霞「ったく、遅かったじゃない」

海風「霞… 信じてくれたんですね」

霞「仲間を、友達を信じないで何を信じるのよ。もう、大丈夫なのね?」

海風「ええ。ここから先は海風のターンです。反撃開始と行きましょうか…!」

霞「フォローは私がするから好きなだけ暴れなさい!」

海風「任せます! もう勝利の道筋は決まりました! 後はこの手を伸ばすだけです!」

スドウ「ふざけるなよ、この化け物がぁぁぁぁぁぁ!」


スドウの操る『スクランブルガンダム』が『ウイングガンダム・アズライト』に向け右腕でサーベルを抜き放ち斬撃を行おうとする。

しかしかつて『スクランブルガンダム』を操縦した事があり性能を把握しきった海風にとっては悪手だった。


海風「いくら速くても…!」

スドウ「見掛け倒しで…」

海風「もっと速く動けば良いだけです!」


斬撃が振り下ろされるが、スドウの視界からウイングの姿は消えていた。そして次の瞬間、機体に警告が鳴り響くと同時にスクランブルの四肢が切り落とされる。

さらに海風は胴体を瞬時に高速で切り刻み、残った頭部を2本連結させた『アズライトウイングブレイド』振り下ろして粉砕してしまう。


スドウ「なっ…!?」

海風「EXAMは敵意を受信してから動く… なら、それより速く動けば良いだけ…!」

スドウ「だ、だが… まだ再生は…!」

海風「なら、塵さえ残さない!」


メッサーツバーグと連結したツイン・バスターライフルの銃口を残骸へと向ける海風。その銃身を結晶が覆い尽くし蒼く輝く。

海風が引き金を引くと、通常の威力の数倍、それどころか数十倍もの出力の極大のビームが放射され残骸を射線上にあった数本の樹ごと消滅させた。


霞「嘘でしょ…」

海風「…後始末は大鯨さんにお願いしましょう」

ニムバス「何と言う力だ…! だがその様な力、並みの人間が制御出来る訳が無い!」

海風「なら自分を見失わなければ良いだけです! もう、力に溺れたりはしません!」


ニムバスの斬撃をブレイドで防ぎつつ、マシンキャノンをイフリートへと放つ。放たれた銃弾がイフリートの右腕を破壊すると海風はイフリートを蹴り飛ばして地面へ叩き付ける。

そしてツイン・バスターライフルを投棄し『アズライトウイングブレイド』を抜き放ち、2本を合体させた。それと同時にイフリートが再び右腕を再生させ、ウイングと激突した。
457 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/12(木) 05:37:17.83 ID:+mfM/7iz0
ニムバス「この私が、ここまで追い詰められるだと…!」

海風「これが海風の力! この力で、皆の笑顔を取り戻す!」

ニムバス「笑顔だと… ふざけているのか!」

海風「誰が!」


イフリート改が両腕に持っていたヒート・ソードを弾き飛ばしブレイドを使って両腕を切り落とす。

即座に両腕を再生させ、同時に再生させたヒート・ソードで斬撃を放つニムバス、そして海風は即座に反応してブレイドで攻撃から身を護る。


ニムバス「絵空事を掲げて…! 貴様の様な子供に何が出来ると言うのだ!」

海風「絵空事で何が悪い!」


ニムバスの反応、EXAMの動きを越える速さで海風は思考する。海風の力は最早『想像』の力などでは無い。

海風は敵の動作一つ一つを予測し最適な勝利への道を創り出す。暴走しそうな理性を生身の心で押さえ込み、イフリートの胸部に斬撃を加え吹き飛ばす。


海風「理想が現実にするのは簡単じゃ無いのは分かってる… だから海風は!」


左腕に持っていたブレイドを投棄し、右腕のブレイドを両腕で持つ。そして刀身に粒子が集まり結晶が刀身を覆い尽くしていく。

全身のクリアパーツがさらに蒼い光を帯びて、その光に呼応して全身の結晶が眩い光を放った。


海風「戦う! 理想を、願いを、未来を! この手で『創造』する為に!」


結晶化した刀身が伸びていき、その長さは100m近くになる。 さらにその刀身に膨大なエネルギーが収束して、解き放たれようとしていた。

海風は目を瞑り未来を予測していく。頭の中で『最適な勝利』ではなく『最高の勝利』、そして『願う未来』を創造する。


海風「全出力解放… アズライト!」


その声に応えるように『ウイングガンダム・アズライト』は駆ける。 蒼い閃光が夜闇を裂き、敵に向けて一直線へと。

ニムバスが逃れる事は叶わない。どう逃げようと、例え背を向けようとも海風の刃はニムバスを確実に倒せるのだから。


ニムバス「馬鹿な、この私が…!たかが子供に!」

海風「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


振り下ろされた刃が大量のエネルギーを放出し、一帯ごとイフリートを両断する。

そしてウイングが背を向け、全身の結晶が砕けると同時に背後で大爆発が発生してイフリートを消滅させた。


海風「…これで、終わりです」

ニムバス『くっ… だが、これ、で終わ、り、では無いぞ…! 貴、様に―――を救え、るもの、か―――』

海風「え…?」

霞「まさか… 待ちなさい、ニムバス!」


ダブルゼータがニムバス達を追おうとするが周囲を満たしていた粒子が消失し、地面に機体が落下する。

それと同時に夜が明け、朝日が昇った。
458 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/12(木) 06:48:09.83 ID:+mfM/7iz0
やべぇ、ミスだ…
>海風「理想が現実にするのは簡単じゃ無いのは分かってる… だから海風は!」

正しくは
海風「理想を現実にするのは簡単じゃ無いのは分かってる… だから海風は!」




瑞鳳「蓄積した粒子の濃度が結晶クラスまで高まった結果、バースト現象が起きた… そして操縦者、海風ちゃんの意思に呼応して力を発現させた、ってことね」

萩風「そのようです。海風さんはバーストと能力行使による疲労で眠っていますが」

瑞鳳「…で、その能力をフル行使した結果がこの焼け野原と」

萩風「…一面綺麗サッパリしてますね」

神通「…昨日までここ林ありましたよね?」

瑞鳳「植樹しなおそうか」

萩風「樹が伸びて元に戻るまでにどれ程かかるのやら」

神通「その前に抉れてクレーター化してるので整地も要るかと」

瑞鳳「代金は春雨ちゃんに請求しよう。作ったの春雨ちゃんだし」

萩風「強化したのはお母様です」

瑞鳳「だってこんなイレギュラー過ぎる能力発揮するなんて誰が思う!?」

神通「確かに予想出来ないでしょうけど…」

瑞鳳「しかも完全に制御してこれだからね? 暴走してたら一帯消し飛んでたよ!?」

萩風「…これは誰にも責任はありませんね」

神通「…そうしておきましょう。責任問題で揉めるの嫌ですから」

萩風「お母様、機体の方は?」

瑞鳳「奇跡的に損傷無し、と言うかほぼ損耗が無いのが不思議レベル」

神通「霞さんの言っていた『全身が宝石の鎧に覆われた』、と言う現象が原因では?」

瑞鳳「外装で脆いフレームを強化した、ってことね… とは言え、これからどうするべきか…」

萩風「リミッターは?」

瑞鳳「無理。リミッターなんて仕掛けたら粒子制御に影響が出る。それこそ次に同じ現象が起きたら暴走するよ」

神通「ではこのまましかないと…」

瑞鳳「現状はそうだね。あとは海風ちゃんに意識研ぎ澄ますな、って言っておくくらい?」

萩風「でも先程の戦いで粒子を放出しきった筈では? いくら結晶くらいの濃度でも、あれだけ放出すれば…」

瑞鳳「それがね… 周囲の粒子を取り込んじゃってまた溜め込んだみたい…」

神通「…」

萩風「…」

瑞鳳「…全部終わったら、アズライト封印しよっか」

神通「許可があれば、ですね」

萩風「仕方の無い処置です」
459 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/14(土) 08:01:00.96 ID:ncUSdF8v0
《別荘・寝室》


海風「Zzz…」

霞「…」

朝雲「思いつめた顔して、霞にしちゃ珍しいじゃない」

霞「うっさい能天気」

朝雲「ま、私は『ニュータイプ』なんかじゃないからアンタの考えてる事は分かんないわ。

だけど顔見れば分かる。何かあったんでしょ」

霞「…別に」

朝雲「当てたげよっか? アンタ達はニムバスと戦った、で本人達には逃げられたけど一応倒した。その時に何か言われた?」

霞「何でも無いったら…!」

朝雲「アンタがキレるって事は何かあったに決まってるじゃない」

霞「っ…!」

朝雲「アンタ達の通信、ちょっとだけ混信してきたのよ。『救えるものか』、この単語だけだったけど。

未来を救えるものか、とか人類を救えるものか、とか色々考えたけどさ… 可能性が高いのは…」

霞「『マリオンを救えるものか』…」

朝雲「マリオン、多分EXAMの核にされた人間のことね」

霞「どうして知ってるのよ」

朝雲「瑞鳳さんに聞いてる。まあ『マリオン』って名前は聞かされてないけど」

霞「…ニムバスは、何が目的なのか分からなくなってきたのよ…」

朝雲「そうね… 聞いてる限りマリオンってのを助けようとしてるのか、進化した人間の抹殺か、目的が分からなくなってる。

でも逆に考えなさい。 『どっちも』の可能性があるかもしれないのよ」

霞「どっちも、ってどう言うこと…!?」

朝雲「推測だけどニムバスはEXAMの狂気に呑まれてる部分が大半だけど呑まれてない正気の部分が少し残ってるのかもしれない。

その正気の部分でニムバスはマリオンを内心助けようとしてるんじゃないの?」

霞「…多分、私の感覚だとアンタの推理は合ってる。だけどアイツはEXAMにマリオンを取り込ませた…」

朝雲「…恐らく、取り込ませた『誰か』が居るかもしれない。そしてソイツが宇宙世紀から流れ着いた人間なのかも…」

霞「じゃあ私が、私達が倒さなければならないのはニムバス達じゃなくて… 裏に居る『黒幕』ってことね」

朝雲「そう言う事よ。 そうしないと他の人も、『マリオン』も、助けられないから」


イベント選択 直下
1.朝雲&秋月『救いの手』
2.萩風&野分『羨望』
3.天津風&如月『成すべきこと』
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/14(土) 09:26:49.90 ID:WTPpldOk0
1で
461 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/16(月) 03:14:26.21 ID:s7BYhj160
side-朝雲&秋月-『救いの手』


朝雲「…救う、って何かしら?」

秋月「は?」

朝雲「いや、こっちの話」

秋月「はぁ…」

朝雲「ただ助け出すだけじゃ『救う』なんて言わないわよね…」

秋月「…きっと人を心から助けることを『救う』と言うのでは?」

朝雲「心から助ける?」

秋月「例えばですけど… 酷い目にあって、その場から助けられても心に傷は残りますよね」

朝雲「まぁ、そうね… PTSDとかある訳だし」

秋月「だから心の傷も支えて助けることが『救う』と言う事になるんじゃないかな、と思いますよ」

朝雲「成る程ねぇ… 何か、見てきたような、経験したことあるような言い方ね」

秋月「ええ。秋月は3度も誰かに助けられ、救われましたから」

朝雲「3度?」

秋月「一度目は姉さんです。 泊地への特攻作戦の際に、死しか待ち受けてない絶望から私達を救ってくれたんです。

共に過ごした時間は長くない筈なのに、そんな人間を助ける為に自分が傷付く事すら厭わないで…」

朝雲「あの人は規格外ね、本当…」

秋月「二度目はお母さんでした。姉さんに拾われてこちら側に来て、行く先の無い私達を保護して引き取ってくれたんです。

食事すら満足に出来なかった私達に『ごく普通の人間としての生活』を与えてくれました。『兵器』扱いされていた私達を『人間』として受け入れてくれたのが何より嬉しかったです」

朝雲「あの人、やる事は突拍子無かったりするけど普通に良い人だから。まぁ10人くらい引き取るなんて財力が規格外だけどさ…」

秋月「ええ。普通にマンション一室軽く貰えたりとか…」

朝雲「…それ普通じゃないわ、絶対」

秋月「ですよね… 一室だけで一体どれくらいお米が買えるのか…」

朝雲「で、三度目って言うのは?」

秋月「それは榛名さんです。 少々色々あって、落ち込んでいた秋月を榛名さんが助けてくれたんです。

その時、私に『エイクスュリュニル』をくれました。自分の機体のパーツを使って、わざわざ作って…」

朝雲「色々が知りたいのよ」

秋月「そこは秘密です。と言うかあまり思い出したくは無いので…」

朝雲「そう…」

秋月「だけど榛名さんにその時言われました。『他人の痛みが分かっていてもそこから救わないと意味は無い』と。

だから秋月も昏睡病と戦う事にしたんです。 誰かの痛みを無くして、そこから救うために」

朝雲「私には真似出来そうに無いわね…」

秋月「榛名さんから聞いてますよ。貴女が妹さんの為に戦ってる事は」

朝雲「だけど私に救えるものは無いわ。ニュータイプでも無いし、特殊な力も無いただの一般人だから」

秋月「それでも手を伸ばせば、きっと届く手はあると思いますよ。 もしかしたらそれが誰かにとっての『救い』になるかもしれません」


イベント選択
1.天津風&如月『成すべきこと』
2.萩風&野分『羨望』
3.霞&大鯨『届く声』
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 09:18:55.94 ID:nePgmMBL0
463 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/19(木) 02:32:12.42 ID:tGAOJHU40
side-霞&大鯨-『届く声』


大鯨「そう… ニムバス・シュターゼン、その後ろに黒幕が居るのね。やっぱり私が調べた通りだった…」

霞「調べてたんですか?」

大鯨「私、と言うより青葉ちゃんがだけど。あの子、私が専属で抱えたいくらい優秀よ」

霞「優れた調査能力と人の心を、感情を見通す力… 確かに諜報員としてはかなり凄い…」

大鯨「彼等の過去の経歴を漁ったのよ。『ニムバス・シュターゼン』『セルジュ・ラウ』『トリスタン・トレーダー』…

元PPSE職員、そして『マリオン・ウェルチ』が持つ感応能力とプラフスキー粒子を組み合わせた実験に参加してた」

霞「粒子と感応能力にどんな関係が?」

大鯨「少し前の話なんだけど、PPSEの研究所の事故は知ってるわよね?」

霞「ええ。確か『スクランブルガンダム』の暴走が起きた…」

大鯨「スクランブルが暴走したのは、新型の人工粒子結晶を用いた感応操縦実験が原因よ。ガンダムで例えると、『インテンション・オートマチック』みたいな」

霞「要するに感応波を使って操縦しようとしたら粒子が反応して、スクランブルが暴走したってこと…?」

大鯨「そう言うこと。これは従来の天然の粒子じゃ発生しない、人工粒子だから起きた事なの。

で、その前段階の実験の時に参加してたのがマリオンとニムバス一味だった。でもね、ある時マリオンは倒れちゃった」

霞「え…?」

大鯨「元から身体が強くなかったらしいの。で、無理な実験を繰り返したのが祟って病気になって使い物にならなくなった。

で、要らなくなったから体よくアナハイムの医療系に回され、人体実験の道具にされたみい」

霞「酷い…」

大鯨「そしてその感応波に目をつけたある人間、ニムバス達と同時期に行方を眩ましたあるナノマシン研究者が彼女をEXAMの核にしたんじゃないか、って言うのが私の推測」

霞「じゃあその研究者が…!」

大鯨「一連の黒幕の可能性が高い。 名前は『クルスト・モーゼス』、彼がナノマシン制御プログラムの第一研究者よ」

霞「クスルト・モーゼス…」

大鯨「多分、ニムバス達の当初の目的は多少なりとも情があったマリオンを助け出すことだった。だけど次第にEXAMの狂気に呑まれて、今は多分正気は残ってないと思う…」

霞「じゃあもう、戦いを止めるのは…」

大鯨「無理ね。もう絶対に声は届かない。 だけど届かせられるかもしれない人が一人だけ居る」

霞「誰ですか!?」

大鯨「霞ちゃんよ。 もしマリオンの声を拾えてニムバスに届かせられれば、だけど」

霞「私が…」

大鯨「その可能性を持つのは霞ちゃんだけ。純粋なNTになりつつある霞ちゃん唯一人なの。

もう貴女なら聞こえる筈よ。マリオンの悲しみの声が」

霞「確かに最近、『止めて』、とか聞こえて…」

大鯨「なら可能性はまだある。戦いを止め、一人の女の子を救える可能性が」
464 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/21(土) 02:30:43.41 ID:joxe9w+h0
海風「ふぁ…」

瑞鳳「あ、起きた」

海風「まだ少し眠いです…」

神通「もうお昼前ですが、朝方まで戦闘をしていたので仕方はありませんね」

海風「戦闘… そう言えば被害は?」

萩風「海風さんが薙ぎ払った林以外は特に」

海風「あ、あははは…」

瑞鳳「体調は大丈夫? 気だるいとか、力が入らないとか」

海風「睡眠不足で眠い以外は特に」

瑞鳳「なら良かった」

海風「あの、『アズライトバースト』は一体…」

神通「それはですね…」



海風「つまりアズライトと海風が共鳴して発現した力、と」

瑞鳳「掻い摘んで言えばね。本来の仕様とは違うバースト、『アズライトバースト・イレギュラー』とでも言うべきかな」

海風「しかしこれで下手に『アズライトバースト』を使う事が出来なくなりましたね…」

萩風「そこは大丈夫です。あの現象は人の意思に敏感な人工粒子環境下だから発現した能力、現行システムの天然粒子環境下でなら問題はないかと」

神通「ただ問題としてはアズライトの内部に人工粒子が蓄積してる可能性があるので…」

瑞鳳「その点はそこら辺のバトルシステムに放り込んで粒子全放出させれば問題無いよ。ただそれには時間がかかる」

海風「どれくらいですか?」

瑞鳳「2日。 放出させた後天然粒子をチャージさせて、その後機体を整備して、ってなるとどうも…

アズライトは機体が特殊なの。 他のバーストやRGを持つ機体と比較して」

海風「特殊、ですか」

瑞鳳「アズライトには機体の粒子制御・粒子貯蔵・予備として機体のコアモジュール、システムの核を3つ積んでるの。

フレスヴェルグの時は1つだけだったから上手く粒子の制御が出来なくて自壊寸前までいったからね」

萩風「コアモジュールに1つ、例えミリ単位の傷でもついてしまえば機能を十全に発揮できなくなります。 その為どうしても時間がかかってしまうんです」

神通「機体の外装やフレームに損傷がなくとも、あれほどの粒子放出・制御を行ったコアモジュールにはどんな負荷がかかっているか分かりません」

瑞鳳「だからこそ入念にチェックが要るのよ」

海風「でも二日と言う事は…」

瑞鳳「そう、貴女は準決勝には出られない」

海風「…」

瑞鳳「納得できない?」

海風「そう言う訳では…」

瑞鳳「浜風ちゃんの機体借りる? 装備換装すればアズライトと同仕様になるし」

海風「絶対にNOです」

瑞鳳「だよね〜」

海風「個人的な感情はなんとかなりますが、アレが世界選手権に出られないとなって海風のせいにされても困ります」

瑞鳳「そこは大丈夫だと思うけど…」

神通(浜風さんの機体を使うことに抵抗は無い、と言う事はある程度は浜風さんを認めてるんですね…)
465 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/21(土) 03:50:33.16 ID:joxe9w+h0
《その後 リビング》


愛宕「じゃあ次の試合には海風ちゃんは出れないのね」

海風「はい。それに元々海風は二連続で出場してますから休息も必要でしたし」

天津風「最悪私のシューティングスター貸すわよ」

海風「それなら愛宕先生のギャプランの方が…」

愛宕「ごめんね、私の機体は今瑞鳳に調整して貰ってるところなの」

瑞鳳「今の私の技術なら『アレ』をまともに使えるように出来る。だからその調整にね」

海風「残念です」

天津風「じゃあ私のシューティングスターで…」

海風「バスターソードがあるなら」

天津風「ある訳無いじゃない」

海風「じゃあいいです」

天津風「ちょっと!?」

萩風「それに射撃型のシューティングスターより私のエクシアや姉さんのジャスティスの方が海風さん向けかと」

朝雲「適性のない機体を渡されても困るわよね、そりゃ」

霞「あれ、準決勝のトーナメント分けって…」

神通「! …今日でしたよね?」

全員「!?」

瑞鳳「ヤバッ!? 確か13時からだから… 車飛ばさなきゃ間に合わないじゃん!皆行くよ!」



如月「慌しいわね…」

野分「まさか全員忘れてるなんて…」

秋月「だけど、皆楽しそうです」

大鯨(でも海風ちゃんが目指すのはもっと先、皆が心の底から笑えるようになる世界… 駆け抜けなさい、鼓動が止まらない限り。

その気持ちが偽りでないならきっと誰にもその願いは消せない。 貴女の『創造』の力はきっと『アンリミテッド』に到れるわ)
466 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/21(土) 04:05:19.10 ID:joxe9w+h0
《大会会場》


瑞鳳「皆、大丈夫!?」

霞「っはぁ… こ、呼吸が…」

海風「毎朝、ランニングは、欠かさなかったけど… キツイです…」

神通「…申し訳ありません。部長である私が、完璧に忘れていました…!」

萩風「責任問題ですよ、部長。あと朝雲さんそろそろ背中から降りてください」

朝雲「ちょっと待って…! さっき攣った足が…」

天津風「何やってんのよアンタは… って愛宕先生は?」

愛宕「」チーン

瑞鳳「あちゃー… 日頃の不摂生が祟ってるね。早朝ランニングやらないから…」

愛宕「うぅ… だってぇ…」

阿武隈「…一体何やってるの?」

海風「あ、どうも」

陽炎「大鯨さんから話は聞いてるけど… まさか忘れてたの、抽選会」

神通「はい…」

長波「どうして忘れちゃうかな…」

霞「ニムバス達とやりあってたんだから仕方無いでしょ…!」

阿武隈「あとここ学生オンリーだから瑞鳳さんたちは…」

瑞鳳「あ、そうだった。じゃあ私達は席に座ってるね」

愛宕「ちょっと待って… ま、まだ脚が…」

瑞鳳「いいから行くよ、愛宕先生」ズルズル

愛宕「あ゛〜…」

長波「…見た目と力関係が完全に逆転してるな」

萩風「私でもバーベル片手で持ち上げられるので、それ以上のパワーを持つお母様ならそれくらい当然かと」

陽炎「アンタ達の一族本当訳分かんないわ」

朝雲「しかも冗談でもなくて事実なのもね…」

阿武隈「静かに。もうすぐ抽選会はじまるよ」

天津風「ついに…!」
467 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/21(土) 04:14:38.39 ID:joxe9w+h0
『これより第二回全日本ガンプラバトル選手権・中高生の部、決勝大会の抽選会を始めます』


天城「どう見ます、姉さん?」

榛名「どこが試合をしても激戦は必須、『切り札』を投入しないといけませんね」

満潮「…」


瑞鳳「参戦してるのは… 順当に居るね、ホワイトクリーンもソレスタル・スフィアも」

愛宕「残りのチーム、あそこって…」


『準決勝第一試合、宮城県代表天山学園『ホワイトクリーン』対…』


阿武隈「来た…!」

陽炎「お先、抜けるわね」

長波「対戦相手が怖いけどな」

海風「どこと戦うのでしょうか…」


『静岡代表・ガンプラ学園チーム『ソルスタル・スフィア』』


天津風「なっ…!?」

朝雲「よりによってガンプラ学園と…!?」



ウィルフリッド「遂に来たか…」

アドウ「倒し甲斐があるぜ…!あの連中はよ…!」

シア「でも、勝つのは私達ね」


阿武隈「どうやら、覚悟を決めなきゃね」

長波「ああ。決着、つけなきゃいけないもんな」

陽炎「どんなヤツでも倒す。私達の改RX-0で…!」



第16話『Belive Myself』 終
468 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/21(土) 04:22:36.53 ID:joxe9w+h0
次話選択 ↓3先取

1.『復讐の終わり』…天津風VS霧島

2.『もう一人の蒼き翼』…朝雲VSルーカス・ネメシス

3.『神話の獣と天使と』…阿武隈VSウィルフリッド
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 06:25:39.97 ID:c2MvpU8L0
2
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 07:07:31.53 ID:Yf93BIplO
3
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 09:24:22.35 ID:m9VsG2810
2で
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 09:46:29.65 ID:i2Fw/Xwc0
3
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 10:06:19.54 ID:z3jIT/1MO
3
474 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/22(日) 22:12:48.51 ID:E7RnjH+i0
第17話『神話の獣と天使と』

《2年前 函館港》


「さ、寒い…!」ガクガク

「東北民ならこの程度…!」ガクガク

「滅茶苦茶震えてるじゃないですか…! と言うか何で函館なんですか!?」

「北海道新幹線特集だからですよ…!」

「でも誰も居ないし大雪で市場すらやってないじゃないですか!」

「仕方ありません… 明日には止むそうなので今日は本来明日の予定だったジンギスカンでも…」


コォォォォォォォ…


「っ…!榛名さん、見てください!」

榛名「海の上に、光…? 青葉さん、行きましょう!」

青葉「了解です! ってどうやって?」

榛名「出来るだけ近いところまでです!」



「う… ぁ…」

「もうちょっとで港だから…!」

「糞っ…!何なんだよあの光!」

「私が知るか! 南方に居たと思ったらこんな大雪の海だなんて…!」

「おーい! 誰かー! 電探には近くに船の一隻も居ないから、無理か…!」


青葉「声…! 人…?」

榛名「青葉さん、読み取れますか?」

青葉「ちょっと待ってください…! 3、感情は… 一人は無反応、多分意識がありません。二人は焦りと困惑…?

海の上に居る、と言う事は確実に『艦娘』ですね…」

榛名「転移者… 青葉さん、今から榛名の感応波を全力で周囲に飛ばします。青葉さんはスマートフォンを信号代わりに振ってください」

青葉「前に使ったアプリがそれ用のアプリがありました…! お願いします!」


『聞こ… すか…!』

「な、何!?」

「声! 通信機じゃ…」

『赤… 誘導…!』

「見て! 赤い光よ!」

「誘導してるのか…? だが、どうして…」

「助けるには行くしかないわ!」
475 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/22(日) 23:00:45.05 ID:E7RnjH+i0
榛名「来た…!」

青葉「艦種、恐らく駆逐でしょうか」

「お願い、助けて! 私達庇って怪我をして…!」

「頼む!何でもするから!だから…」

青葉「これは酷い… よく生きてましたね、これ」

榛名「容態は… 脈拍が薄い、止血しないと…! 救急車を呼んで下さい!榛名が応急処置をします!

そこの二人も手伝ってください! そこのバッグに肌着があるのでそれで止血します!」

青葉「もしもし、けが人です!救急車お願いします! 場所は函館港の…」

「あった、この肌着ですか!?」

榛名「ええ。 あと二人はこの人の艤装と貴女達の艤装を外して隠すか投棄してきてください。

『艦娘』なんてものはこの世界には居ません。余計な混乱を招くことになります」

「え…?」

榛名「事情は後で! 早く!」


《数時間後 病院》


「治療は終わりました。応急処置が間に合わなければ危ないところでしたよ」

榛名「そうでしたか」

「…しかしあの怪我は普通じゃない。 体の側で花火が暴発したような傷付き方でしたよ」

榛名「ではそうなのでしょうね」

「…何かあったのか、我々医師は知らなければなりません。場合によっては警察に通報する義務があります」

榛名「…それを言われると少々困るんですよね。こちらも事情はほぼ知らないものでして」

「なら尚更…」

榛名「ではこれで」ドサッ

「は?」

榛名「入院費です。動けるようになるまで束の二つもあれば充分でしょう」

「そ、それは足りてますが…」

青葉「大人しくしていてくださいね〜。眉間撃っちゃいますよ〜」

榛名「選択肢は二つです。受け取って何も見なかったことにするか、鉛玉を受け取るか」

「よ、よろこんで!」



榛名「はぁ… どっと疲れました…」

青葉「小心者なのに無茶するからです」

榛名「主にその言い草は酷いです… 大鯨さんに言われた対処法を実践しただけなのに」

青葉「第一普通ははったりだって分かりますよね。これそこで買ってきた3000円のエアガンですし、普通銃なんか持ってるわけないじゃないですか」

榛名「まぁいきなり背後から音も無く忍び寄られれば誰でも思い込みますよ」

青葉「しかし大鯨さんもちょっとお願いしたらお金出してくれるなんて」

榛名「後が怖いんですよね… あくまでも事情が事情による『貸し』ですから。あとで何させられるやら…」

青葉「1ヶ月はタダ働き覚悟ですね…」
476 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/23(月) 01:36:54.98 ID:h6npTpVE0
《病室》


榛名「危ない状況らしかったですけど今は命に別状はないそうです。傷跡も残る可能性は少ないと」

「そう… 重巡『青葉』、ソロモンの狼… アンタに助けられるとは思わなかったわ」

青葉「狼の名は返上しましたよ。それに隣にもっと『狼』の名前に相応しい人が居ますし」

「助かった… 本当に、ありがとう…!」

榛名「どんな命も生きたいでしょうし、当然のことをしただけです」

青葉「確かお二人は… 呉所属の陽炎型1番艦『陽炎』と横須賀所属の夕雲型4番艦『長波』、そして今眠ってるのが『幌筵の鬼神』こと阿武隈ですね」

陽炎「…その情報、古いわよ。私達は半年前に幌筵に転属したわ」

青葉「ありゃ。1年も経てば情報も腐りますかぁ」

長波「1年…?」

青葉「青葉がこちら側に来たのが去年だからですよ」

陽炎「要領を得ない…」

榛名「ここは貴女達が本来居た世界ではありません。 異世界の一つですよ」

長波「い、異世界だって…!?」

青葉「ええ。異世界で、この榛名さんが今の青葉の主ですよ」

陽炎「あの青葉を手懐けた…?」

榛名「誤解を招く言い方はやめてください。ビジネスライクな関係でしょう」

青葉「まぁ上司と部下の関係ですね。『今の所』は」

榛名「で、仕事の都合で青葉さんと一緒に食べ歩きをしようとしたところで貴女達を発見した次第です。

恐らくあの光は次元の裂け目のようなもの、それに呑まれた可能性が高いかと」

陽炎「次元の裂け目…」

青葉「実はこの世界は色んな平行世界につながる穴ぼこだらけでして、しかも閉じたり開いたりが忙しくて調査が間に合わず観測放置してるんですよ。

恐らく通った裂け目も突発的に出来た代物… 艤装が機能してる状態で転移したのは幸いじゃないですか」

長波「アンタはどんな状況だったんだよ」

青葉「気が付いたらフィッシングです。比喩じゃなくて、マジで」

榛名「あれはウォースパイトが原因なので… いや釣り上げたの榛名ですけど」

陽炎「訳が分からない…」

榛名「ともかく、二人も少し怪我をしているようなので手当をしておきましょう。 青葉さん、ホテルの手配を」

青葉「了解です!」
477 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/23(月) 01:53:19.84 ID:h6npTpVE0
《現在・全日本選手権会場》


『準決勝第一試合、宮城県代表天山学園『ホワイトクリーン』対静岡代表・ガンプラ学園チーム『ソルスタル・スフィア』』


阿武隈「どうやら、覚悟を決めなきゃね」

長波「ああ。決着、つけなきゃいけないもんな」

陽炎「どんなヤツでも倒す。私達の改RX-0で…!」


榛名「…満潮」

満潮「何、出番?」

榛名「スタンバイだけしてください。出すかどうかはあの子達が決めることです」

天城「ソレスタル・スフィアのデータは纏めてあります」

榛名「ではブリーフィングを行いましょう」


阿武隈(ここまで来たんだ… あの時から…!)

陽炎「さて、私達はお先に失礼するわ」

長波「榛名姉からブリーフィングの召集がかかりそうだしな」

神通「どうか武運を」

阿武隈「言われるまでもないよ。私達の敵は倒す、それだけだから」

長波「今は自分達の心配しとけ。 無事に決勝にいけるかどうかのな」

陽炎「ま、決勝で待ってるわよ」


天津風「流石に気合入ってるわね…」

朝雲「今、背筋がゾクッってなったわ」

萩風「気負いすぎてるような気がしますが… 放たれるプレッシャーは尋常ではありません」

霞「今のは、何…?」

海風「霞…?」

霞「執念だけじゃない、何か別の感情…」

神通「執念以外の感情、ですか」

霞「あれは『恩』…?」
478 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/23(月) 02:24:01.39 ID:h6npTpVE0
《ガンプラ学園用の部屋》


能代「敵は3機の『HGUC ユニコーンガンダム』系統をベースにした改造機『改RX-0』を使ってるわ」

ウィルフリッド「監督、あの『改RX-0』については何か知っているのですか?」

能代「嫌と言う程ね。ガンプラ塾当時、現メイジンですら勝てなかったわ」

アドウ「メイジン相手にかよ!?」

能代「あのシリーズは一つの系統、そして『ガンダムシリーズ』と言う枠組みから外れてる。ガンプラとしては異色過ぎるの。

正直、馬鹿げてるとしか言いようがない。 そもそも全機の共通の特徴の、完全変形機能だけでも狂ってるとしか…」

シア「敵の機体は?」

能代「まずはリーダー機『RX-0[M] マーナガルム』から。 あの機体は『本来の意味のフルアーマー・ユニコーン』ね。

各部に装甲を追加、さらにIFジェネレーターによる高い防御力を持ってる。武器はホーミング・ビームキャノンを脚部に複数、遠隔ドリルユニット『スコール』『ハティ』、それとクローアームとバルカンかしら」

アドウ「アイツ、スピードもパワーも尋常じゃねぇぞ。下手にクローに捕まれば俺達の機体もミンチだ」

能代「そして高い加速能力も持ってる。旋回性能が若干低いのが救いだわ…

アレに真正面から対峙は無理、絶対に正面から単機で戦わないことね」

シア「この翼を持った機体は?」

能代「『RX-0[V] ヴェズルフェルニル』、スピード特化の機体よ。ビームマシンガンと実体剣、そして背中に装備されたMドライブユニットによる光の翼が武器。

この機体の特徴は高い運動性・機動性よ。…正直、スローカメラを使わないと撮影すら難しいわ」

ウィルフリッド「尋常じゃ無いスピード… 私でも完全に捉えるのは難しいな…」

能代「それにファイターも反応が早い。 組み合わせは最悪ね…」

アドウ「そしてラストはステルスか」

能代「『RX-0[G] ガルム』。武器はクローシールドを両腕に、両肩にはビームキャノン… そして最悪の武器、弓装の『グシスナウタル』。

『グシスナウタル』のビームは威力はそこまでではないけど『絶対に直撃する』か『絶対に貫く』かの二つの特性を切り替えられるの。どれだけ逃げても、どんな防御策を練ろうとも無力化される」

ウィルフリッド「さらにステルス特性持ち、中々やりにくい…」

シア「なんて恐ろしいガンプラなの…」

能代「しかも全ての機体が『フリューゲル・ヴェント』の主力の『ウイングガンダム・アズライト』や『シームルグ』に匹敵、もしくは上回ってる。

ファイターも強豪、能力も折り紙つき。油断してもしなくても、足元を掬われかねないわ」
479 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/23(月) 22:28:13.82 ID:h6npTpVE0
《天山学園・控え室》


榛名「今回相対するのはガンプラ学園です。 敵のファイター、機体情報を再確認しておきましょう」

天城「まず1機目はアドウ・サガの操る『ガンダムジエンド』、太陽炉搭載機ですが各シリーズの意匠が見られるますね。

戦法は先手にファング、その後は大型のビーム砲と『デッドエンドフィンガー』、ハンドガンを用いた戦いが主です」

阿武隈「近づくのが厄介だけど…」

榛名「だけど弱点はあります。あの首、『フィストジエンド』に武装を依存していることです。しかもアレは首が伸びる機能のせいで操作入力の伝達が遅いんです。

その隙に本体から切断すればほぼ無力、脅威にはなりにくいかと。さらに言えば腹部に注目してください」

長波「裂け目だな…」

榛名「あれは『口』です。 敵機を食み砕き、ビームを呑み込むための。 個人的にはもう一つくらい隠し玉がありそうと踏んでますが…

『口』など、無駄なものを設置したせいで構造上脆弱になっています。例えパワーの劣る『ヴェズルフェルニル』でもNT-Dを使えば上半身と下半身を引きちぎれます」

陽炎「つまり私向けの相手、って訳ね」

榛名「ええ。『ヴェズルフェルニル』の運動性を以ってすればファングなど容易く避けられるでしょう。パワーと、口に注意しておいてください」

天城「次はキジマ・シアの駆る『G-ポータント』です。 武装はオーソドックスにライフル、それとウィップになる剣です。

また強力な粒子フィールドを持ち、華奢な見た目とは裏腹に高い堅牢性を持っています」

榛名「この機体は弱点は少ないですね。 攻略方法は機体各部に装備されたグラビカルアンテナを潰すことです。

グラビカルアンテナは粒子制御の役割を担っています。弱点を露出している以上、破壊し易いでしょう。1個でも壊せば防御能力は半減する筈です」

長波「じゃあ最適なのは私か」

榛名「ええ。ガルムの能力、そして『グシスナウタル』ならば戦えるでしょう」

阿武隈「そして最後は… 『トランジェントガンダム』だね」

天城「武器はランス、と言うかパルチザンですね。 攻防・近距離遠距離全てに対応しています」

榛名「だけど武器に依存し過ぎているのも問題ですね。パルチザンさえ壊せばサーベルくらいしか武器はなくなりますから」

陽炎「簡単に言うよ…」

榛名「しかもクリアパーツを使っている以上あまり強度も高くないかと。しかもパワーはこちらの平均値と同程度…

厄介なのは機体性能をブ−ストする『トランジェントバースト』、トランザムに相当する能力です」

長波「どう攻略するよ」

榛名「使えば敵は突撃一辺倒になるでしょう。そこを突ければ、いけるはずです。 彼の相手は阿武隈が適任ですね」

阿武隈「わかった」

榛名「問題は… 満潮」

満潮「何よ」

榛名「満潮と『フレスヴェルグ』なら3機どの相手にも引けを取りません。貴女の能力ならばガンプラ学園すら確実に倒せるでしょう」

満潮「そのために私を、対・ガンプラ学園の戦力としてチームに編入させたのよね」

榛名「阿武隈。 決めてください。 誰が抜け、代わりに満潮を入れるか。もしくはこのままで戦うか」


阿武隈の選択 直下
1.阿武隈が抜ける
2.陽炎を抜く
3.長波を抜く
4.満潮を編入しない
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 12:00:27.40 ID:/kbyg2mUO
4
481 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/24(火) 23:34:53.26 ID:WJ/PXQWK0
阿武隈「…大丈夫。助けは要らない」

満潮「そう」

榛名「良いんですか?」

阿武隈「これは『私達』三人の戦いだから。姉さんに貰った『改RX-0』があれば充分。

それに… あの三人と戦うための戦いでもある。そこに誰かの手を借りるなんて出来ないよ」

陽炎「去年負けた鬱憤も晴らしたいしね」

長波「そう言うこと。これだけは… 譲れないんだ」

満潮「あっそ。私は自由時間が増えるから結構よ」

榛名「…分かりました。3機の整備は万全、『例のもの』も用意できています」

陽炎「服は?」

天城「ちゃんとありますよ」

長波「じゃあ私達着替えるから、また後で」



榛名「どうしてあそこまで頑ななんでしょう、妹達は」

天城「きっと誰かの妹だからかと」

榛名「…榛名ってそこまで頑なでしたか?」

天城「まずRX-0に拘ってるのに、頑なではないと?」

榛名「うっ…」

天城「それに… 阿武隈達の気持ち、分からなくはありません」

榛名「え…?」

天城「…鈍感なところも直したほうが良いと思いますよ。阿武隈達の気持ち、分かってないんですから」

榛名「気持ち、って?」

天城「教えません」

榛名「感応波で…」

天城「『有事以外の感応波の使用は禁止』、そう定めたのは姉さんですよ」

榛名「うぐっ…!」

天城「第一天城が感応波を遮断してる状態で姉さんが感応波を天城相手に使って読み取るには最大の力を使う必要があります。

ハッキリ自殺行為です。 ここは人が多すぎる、全力で使えば無差別に人の頭を読み取って精神を破裂させますよ」

榛名「そうでした… 自分の能力、全力にすると自分じゃ制御できなくなるの忘れてました…」
482 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/25(水) 00:26:45.37 ID:LLZom0kH0
長波「あれ、この前直したのにまた胸が…」

陽炎「なに、またアンタデカくなったの!?」

長波「おっかしいなぁ… 陽炎より食ってない筈なんだけど…」

阿武隈「良いなぁ… 半分分けてよ」

長波「私に言うなって。んなこと言ったら陽炎だってちょっと成長しただろ」

陽炎「そりゃあれから2年経ってるし。まだまだ成長するのよ」

阿武隈「」グサッ

長波「おい、今地雷踏んづけたぞ」

阿武隈「いいよ… どうせ私は… 胸なんかなくても良いもん…」

陽炎「…面倒なことになった」

長波「自虐モード、長いんだぞ。試合前に自虐モードにしちゃ駄目だろ」

陽炎「胸がデカい長波が悪い」

長波「私のせいかよ!?」

陽炎「アンタが胸キツイとか言うからよ」

阿武隈「良いよ、もう… 諦めてるから…」

陽炎「ほら、拗ねたじゃない」

長波「お前が余計なこと言うからだろうが!?」

陽炎(だけどこんな日常も、二年前の私達には想像できない代物だった…)



《二年前 仙台市内・模型店『エンガノ』1号店※》 ※瑞鳳店は2号、1号店は仙台市内と言う設定です(KBFより)


大鯨「で、この子達がそうなのね?」

榛名「ええ。 阿武隈さん、陽炎さん、長波さんと言うそうです」

阿武隈「…」

陽炎「あの、ここは…」

長波「なんか速い電車に揺られてたと思ったら、こんな所に…」

青葉「向こう側は新幹線なんてないですからね。整備・維持する技術も費用も今の向こう側にはありませんし」

大鯨「当面の間に入用になりそうなものはこっちで用意しておいたわ。後必要なものがあれば…」

阿武隈「…向こうに、帰れないんですか」

榛名「…無理でしょうね。 貴女の艤装は既に使い物にならなかった、それにこの世界と向こうの世界に確実に帰れる裂け目は…」

阿武隈「っ…!じゃあどうしてあのまま死なせてくれなかったの…!」

陽炎「阿武隈さん…!」

長波「帰る方法は後で探せば良い、だから今は身体を…」

阿武隈「戦えなくなった私に、なんの価値があるの!? 『そう』なるくらいなら、いっそ死んだ方が…!」

榛名「じゃあ今すぐ殺してあげましょうか」ジャキッ

阿武隈「ひっ…」

大鯨「ウチでトマホークを出さないで。この子はきっと…」

青葉(軍部の常套手段、青葉たち艦娘は『戦う以外に価値はない』そう刷り込まれて戦わされた。

精神的にも未熟な子供に刷り込んで価値観を固定化させる。戦争時は有効な手段ですが、平和な世界においては無意味どころか悪質過ぎるやり方でしょう)

大鯨「…カウンセリング、青葉ちゃんに任せて良いかしら?」

青葉「この前資格取ったばかりですがやれることはりますよ。それと娘さんを数名お借りしても?」

大鯨「ええ。 そこは一任します」

榛名「では榛名はここで。帰ったら仕事があるので。 …それと阿武隈さん。死ぬ、なんてことは榛名の前で二度と言わないでください。次は容赦しません」
483 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/25(水) 01:22:19.88 ID:LLZom0kH0
陽炎「何なのよ、あの人…!」

青葉「…二人共、あと阿武隈さんも。 榛名さんの前で軽々しく死ぬ、とは言わないでください」

長波「…何かあったのか?」

青葉「過去に親しかった友人を自殺で亡くしているんです」

陽炎「え…?」

青葉「『ある夢』に破れて、目指す目標に成れなくて、10年近くの努力がふいになって… 榛名さんが駆けつけた時には首を吊っていたそうです」

陽炎「だから、阿武隈さんを…」

青葉「まぁ殺す、なんて言ったのは言い過ぎですけども… だけどあの人は誰かが自ら死のうとするのを見たくない、って人なんですよ」

阿武隈「なんで、私を…」

青葉「この世界は、少なくとも今この国は戦争なんて起きてません。そんな世界で生まれた人間だからこそ命を軽々しく扱う人を許せなかった、のだと思います」



榛名「…やってしまいました。またこうですよ…」

榛名(許せ無い事があるとトマホークを取り出すのは駄目な癖です… 言葉で諭せばよかったのに…)

榛名「だけど…」


榛名『…久し振りですね。どうかしましたか?』

『アハハ… 負けちゃった。メイジンに、なれなかったよ…』

榛名『そう、ですか… で、今後は…』

『これで全部台無し。私の人生、意味なくなっちゃった』

榛名『そんな事はありませんよ。 夢破れても…』

『榛名… 貴女はどうして捨てられたの? メイジンとしての道を、そんな簡単にさ…! 私より強いくせに、私なんかより才能があったのに!』

榛名『…』

『…榛名、ごめん。私もう、疲れちゃった…』

榛名『っ…! 待ってください! 今何処ですか!』

『寮だよ。明日には出て行かなくちゃ… でも、出たくないから…』

榛名『今から行きます!大好きな間宮さんの羊羹持って行きますから、早まった事は!』

『じゃあね。 今までありがと』


榛名(あの時榛名が仙台から駆けつけた時にはもう亡くなっていた… もし榛名が向こうに残っていたら彼女を、あの子を救えたのでしょうか…)

榛名「答えて、『フェンリル』… 無理ですよね。口なんてありませんもの」

榛名(人よりプラモを作れても、人より強くても、人と変わった力を持っていても、誰も何も救えなかった。それが榛名なんですから…)

コンコン

天城「姉さん、夕飯の… 何かあったのですか?」

榛名「何でもありませんよ。感傷に浸ってただけです。 メニューは?」

天城「間宮さん特製の…」
484 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/28(土) 01:49:47.17 ID:Z1kViqi00
《現在・天山学園控え室》


阿武隈「行くよ、二人共」

陽炎「了解。準備も終わってる」

長波「いっちょ、蹴散らしに行って来ますか」

阿武隈「機体は… うん、仕上がってる」

陽炎「『例の力』も使えそうね」

長波「今回はコード・ブレイヴを使うのは避けられないよなぁ…」

陽炎「当たり前でしょ。そう簡単にいく相手なら去年負けてないわよ」

阿武隈「…二人共、最初からトばすよ」

陽炎「何、最初からNT-D?」

長波「機体負荷ヤバそうだぞ…」

阿武隈「そんな事に躊躇してたらガンプラ学園は倒せない」

長波「わかってるよ。 だけど私は最初からは使えない」

陽炎「『ガルム』はステルスとの兼ね合いのせいでNT-Dはステルス機能を切ってるときにしか使えない、でしょ?」

長波「ああ。ま、最初の方は隠れて『グシスナウタル』で援護に徹する」

阿武隈「別に切り込んで貰っても構わないんだけど、その役目は陽炎ちゃんに譲るか…

さて二人共、作戦会議は終わり。 いつも通り、そしていつも以上の力を出して戦いなさい」

陽炎・長波「了解!」

阿武隈(こんな所で負けられない… 私達にはやらなきゃいけない事が、あの子達との決着と『それ以上』のことがあるんだから…!)



《小沢学園控え室》


瑞鳳「どう見る、この試合?」

神通「激戦は避けられないでしょうね…」

萩風「しかし僥倖でもあるかと。大会当初からの優勝候補のうち私達の最大脅威とされていた2つが潰し合ってくれるのは」

海風「それはそうですが…」

霞「ちょっと複雑、よね… ガンプラ学園、シアたちとは戦ってみたかったけど宮城の連中とも決着は付けたかったし…」

朝雲「まぁ、私達から見ればどっちでも良いやって感じなんだけど…」

天津風「私はガンプラ学園を潰せればそれで良いわ」

愛宕「貴女達は練習試合の時は入部してなかったから仕方無いわね」

海風「この際なので個人的な感傷は置いておいて… この試合、五分と言いたいですが… どちらかと優勢なのは『ホワイトクリーン』でしょう」

瑞鳳「理由は?」

海風「まずファイタースキルは恐らく五分、連携や作戦次第と言った所です。次に機体性能は『ホワイトクリーン』が勝っているのは明確ですね」

天津風「確かにガンプラ学園の機体データと比較すると性能は『ホワイトクリーン』が上、ただし一部がピーキー過ぎてるけども」

朝雲「『改RX-0』自体、この大会に出すにはオーバースペックなのよ。グリプス戦役にF91突っ込んだみたいなもんだから」

萩風「『Zガンダム』みたいに一部の機体がF91を上回る推力を持っている場合もあるけど基本的には性能で勝る相手はいない、と言う意味では正しい例えでしょう」

愛宕「もしくはTR-6系統とか、ね。あれもオーバースペック過ぎてあの時代の代物とは言えないし…」

海風「話を戻しますと、あとの違いは指導者の質の問題でしょうか」

霞「確か向こうはPPSEのメイジン専任ビルダーが担当してるんだったかしら?」

神通「ワークスチーム、ガンプラ造りの最高峰の専門家が集まり最高の機材を持ったチームの主任、ですね。榛名さんの後輩にあたり、お母様には幾度も煮え湯を飲まされているとか」

瑞鳳「いくら作っても片っ端からこっちが勝っちゃうからね、仕方無い」

海風「しかし『ホワイトクリーン』は朝雲さんにガン=カタを仕込んだ元メイジンの筆頭候補生である榛名さん、それに意外に面倒見がよく霞曰く『丁度良い感じに鍛えてくれる』らしい天城さんです。

製作畑の人間と、『指標』となるべく育てられたファイターと面倒見が良い妹、果たしてどちらが上となるでしょうか?」
485 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/28(土) 03:10:55.57 ID:Z1kViqi00
《会場》


『これより全日本ガンプラバトル選手権・中高生の部、準決勝第一試合。宮城代表・天山学園『ホワイトクリーン』対静岡代表・ガンプラ学園『ソレスタルスフィア』の試合を開始します』


阿武隈「…勝つよ」

陽炎「言われなくても」

長波「そのつもりだ…!」


ウィルフリッド「ここで立ち止まっては居られん…!」

アドウ「全員ぶっ潰してやるよ…!」

シア「勝つのは、私達よ」




榛名「…お母さん達、観てるでしょうか?」

天城「録画してある、とは言ってましたが…」

榛名「多分大丈夫でしょう… リアルタイムで観ろと言っておいたのですが…」



天津風「…わざわざこっちに移動する必要あった?」

朝雲「生で観たいでしょやっぱり」

萩風「ええ。テレビでは戦うガンプラは映しますがファイターはほぼ映しませんから」

瑞鳳「録画してきたし、私達の試合は明日だし平気平気」

愛宕「何があっても後で確認できるようにしてあるわ」

神通「始まります、静かに」

霞(見える、ホワイトクリーンから発する『何か』が… 半端じゃないわよ、あのプレッシャー…!)

海風(キジマさんとの約束が果たされるか、それともホワイトクリーンとの決着か… どちらにしろ、海風にはまだ未来を予測できません。どちらも、全力を尽くして欲しいですね)



Please set your GP Base

Beginning plavsky particle dispersal

Field to "Speace"

Please set your GUNPLA

BATTLE START!


長波「『ガルム』、長波…」

陽炎「陽炎、『ヴェズルフルニル』…!」

阿武隈「『マーナガルム』、阿武隈! チームホワイトクリーン!」


長波「行くぞ!」

陽炎「出るわよ!」

阿武隈「行きます!」



阿武隈「フィールドは宇宙… コロニーの周辺宙域みたい」

長波「資源衛星付きだな… 『ヘリオポリス』か?」

陽炎「違うみたい。だけど、内部でも戦闘が出来るくらいには大きいわ」

阿武隈「侵入して重力下で戦うか、そのまま宇宙で戦うか…」


行動安価 直下
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 22:14:48.71 ID:MWXt0QzgO
阿武隈が単身でコロニー内部に進入、陽炎と長波は進入すると見せかけて外に隠れておく
487 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/29(日) 01:53:32.18 ID:tJO4NgZp0
阿武隈「私はコロニー内に先行する。二人は港の外に隠れて待機、その時に侵入したフリをして」

陽炎「こっちがコロニー内に全機が入った、と見せかけて相手をコロニーにおびき出す作戦ってことね」

長波「確か港は二つ、対岸にある。片方から3機入ったと思わせれば港での待ち伏せを考えて別の方向から入らざるを得ないからな」

阿武隈「それに陽炎ちゃんを外に置いておくと、もし外部からの攻撃が起きた場合即応出来るから」

陽炎「ヴェズルフェルニルのスピードならこんなフィールド、2分くらいで横断してやれるからね」

長波「それに私が外に居ても気付かれずに移動できるから、もう片方の港に回りこんで背中も狙える」

阿武隈「相手が上手くノればだけどね。 じゃあ作戦開始!」


シア「敵、コロニー内への侵入を確認」

ウィルフリッド「『ホワイトクリーン』はコロニー内での戦いを選んだか…」

アドウ「どうするよ、キジマ?」

ウィルフリッド「小細工はしないさ。私達のそれぞれのスタイルで正面から行く」

シア「それって、好きにしろってことじゃ…」

アドウ「ハハッ、面白れぇ!」

ウィルフリッド(私には彼女、海風さんのような戦い方は出来ん… だが私達のスタイルを貫き、この手で勝利を掴んで見せよう!)



瑞鳳「コロニー内での戦闘を選んだ… この状況、どう見る?」

海風「…どう出るか、次第です。『ホワイトクリーン』側はまだ2機、コロニー外に機体を隠していますから…

この戦い、アドウ・サガがどう動くかで勝敗が決まります」

天津風「アイツが?」

海風「はい。もし今外からコロニーへと攻撃しようとしているアドウ・サガが伏兵に気付けば一気に『ソレスタルスフィア』へと勝利の比重が傾く、しかし伏兵に気付けず奇襲を受けた場合彼に勝ち目はなく負けるでしょう。

そうなった場合戦力比を覆すことはほぼ不可能、シアとキジマさんは『余程』の隠し玉が無い限りは勝てません」

朝雲「チャージ中で無防備になってる今なら『ヴェズルフェルニル』の超スピードか、『グシスナウタル』を持った『ガルム』なら倒すことも出来るし…」

萩風「動き次第で今後が決まる、と言う訳ですね」

霞「だけどあの二人は戦場馴れしてる… あれだけあった殺気も今は全く押さえ込まれて気配すら知覚は難しいわ」

神通「ええ。鍛え上げた私や霞さんですら知覚が難しいとなると…」

愛宕「私も、うっすらと感じるくらいで…」

海風「この勝負… 決着まで長くはありません。決まるのは15分未満になるでしょう」


《コロニー内》


阿武隈「…『トランジェントガンダム』!」

ウィルフリッド「『マーナガルム』、1機だけか…? 隠れているのならば!」


パルチザンを掲げて頭上でクロスさせるトランジェントガンダム、そして粒子ビームが雷のように放出されコロニー内の街を焼く。

阿武隈は両肩に内蔵された『スコール』と『ハティ』を射出しクローアームで掴んで放つ!


阿武隈「リモート、ドリルバーストッ!」

ウィルフリッド「クッ! あれに当たればトランジェントと言えども…」

阿武隈「まだ!どこに逃げようと追い詰める!」


脚部からスフィア・フォーカス・ビームキャノンの屈折するビームが放たれ、ドリルユニットから逃げるトランジェントへと襲い掛かる。

トランジェントは辛うじて回避するが追撃してきた『スコール』『ハティ』が掠め、さらにマーナガルム本体が加速の勢いで右腕で打撃を放ち直撃したトランジェントを地面へと叩き付けた。


ウィルフリッド「やはりパワーが桁違いか…!」

阿武隈「ちょっと凹んだだけ… でも『マーナガルム』の攻撃、どれだけ耐えられるかな?」
488 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/29(日) 02:52:31.31 ID:tJO4NgZp0
シア「兄さん!」

阿武隈「G-ポータントまで来た…! 狙い通りだね!」


阿武隈はスマッシュライフルによる射撃をIフィールドで防ぎ脚部からビームキャノンを放つ。しかしシアはその攻撃をフィールドによって防いだ。

それこそ阿武隈の狙い、そして足を止めたG-ポータントの背後から一条のビームが走り左肩を貫く。


シア「後ろっ!?」

長波「警戒が甘いんだよ!追え『グシスナウタル』ッ!」


放たれたビームを右への回避機動で避けようとするG-ポータント、しかしグシスナウタルの一撃はポータントを追って曲がり直撃する。

収束が甘く威力は低い為かダメージこそ軽微だが墜落して建物に落下するG-ポータント。そこに今度は長波が『貫く』一撃を放つがポータントは飛び上がってビームをかわす。


長波「やっぱり真正面からは当たらないか…!」

シア「あの一撃、こっちの装甲を一撃で貫いた… 直撃は避けなきゃ…!」

ウィルフリッド「下がれシア!態勢を…」

阿武隈「余所見する隙なんてあると思わないで!」


一瞬の隙も逃さずトランジェントへとビームキャノンを放つ阿武隈。パルチザンを使ってビームを防御するが長くは保たないだろう。

射撃による攻撃を受けないためには近付く必要がある。だが不用意に近付けばマーナガルムのパワーの餌食になるのは必然だ。


ウィルフリッド(一旦態勢を整えなおさなければ、負ける…!)

ウィルフリッド「くっ、アドウ!」


コロニー外部からバイフィストの銃口へとエネルギーを溜め込んでいたアドウにウィルフリッドからの通信が入った。

その通信を受けて一撃を放ち、コロニー外壁を破って内部に侵入しようとしていたアドウだが…


アドウ「避けろよ、デカイのが…」

陽炎「行かないわよ」


そこにNT-Dを発動しながら『スキーズブラズニル』の光の翼を展開した『ヴェズルフェルニル』が超高速で迫り、反応が遅れたジエンドのフィストジエンドの顔に『グラム』で斬撃を加える。

そして溜めていたエネルギーが暴発して、フィストにあった顔が吹き飛び完全に『デッドエンドフィンガー』銃口が破壊された。


アドウ「テメェ、よくも! ファング!」

陽炎「ネージュエール! 手数はこっちが上よ!」


距離を取ったヴェズルフェルニルへとジエンドがファングを10発放つが、スキーズブラズニルの光の翼から放出されたエネルギーが無数の刃となって襲い掛かる。

手動でファングを操り刃を躱そうとするが数が多すぎる故に完全に回避できず全てのファングが撃ち落された。


アドウ「やる…!だが…」

陽炎「反撃? させないわよ!」


ビーム・マシンガンをジエンドへと放つ陽炎、陽炎の射撃はフィストの甲部によって防がれるが陽炎はその隙を狙って機体を急加速させて距離を詰める。

そして『グラム』による斬撃を放ち右側のフィストのアームを切り落として光の翼で八つ裂きにしてしまう。


アドウ「何だと!?」

陽炎「行くわよ。ガンプラ学園の不敗、今日で終わらせてあげるから」


視点選択 直下
1.阿武隈『VSウィルフリッド』
2.長波『VSシア』
3.陽炎『VSアドウ』
4.榛名『独白』
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 09:41:37.44 ID:GF55OZrW0
490 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/30(月) 00:07:31.47 ID:3tMFy5qE0
side-陽炎-


アドウ「ちょこまかと!ファング!」

陽炎「もうその手は分かってる!ネージュエール!」


襲い掛かるファングへと光の翼から無数の刃を放ちその全てを切り裂く。その隙にアドウは銃であるショットジエンドを右手にマウントさせてヴェズルフェルニルへと数発放つ。

だが常軌を逸した速度で機動を行うヴェズルフェルニルを捉える事は出来ずに周囲に浮いていたデブリに当たる。アドウの狙いはデブリ帯に陽炎を追い込み機動力を削ぐことであり、狙い通りに陽炎はヴェズルフェルニルをデブリ帯に突入させた。


アドウ「バカが!まんまとかか…」

陽炎「甘く見られたものね… この程度で私が止まるかっての!」

アドウ「コイツ、デブリでも速度が落ちないのかよ!?」


だが目論みは全て外れヴェズルフェルニルの機動力は落ちない。デブリ一つ一つを小刻みな機動で掻い潜る姿は『ガンダムUC』のシナンジュの映像を彷彿とさせる程だった。

陽炎にはデブリ全てが見えている。そして反射的に回避機動を行いデブリを掻い潜るなど彼女にとってはお菓子の袋を開けるのと同じレベルだ。寧ろたまに暴発させて零したりする分お菓子の袋の方が難易度が高いかもしれない。


陽炎「でもいい加減鬱陶しいしキモイわね、その潰れた顔。こっちも切っちゃうか」

アドウ「させるかよ!」


機体を反転させジエンドへとヴェズルフェルニルは直進する。その間もアドウは迎撃のためのファングを放つが全て右腕のマシンガンで撃墜され距離を詰められてしまう。

そして左腕の実体剣『グラム』で真正面からの斬撃を行うがジエンドの右の5本指に内蔵されたサーベルで防がれ鍔競り合いとなる。


アドウ「俺にサーベルを使わせやがったな…!」

陽炎(これが隠し玉? 違う、『口』に何かあるかもしれない。ならここは…)

アドウ「コイツも、喰らえってんだよ!」


ジエンドの腹部にある口が裂け中から飛び出す内蔵の小型MSの角。『イッカク』と呼ばれるその機体がヴェズルフェルニルを串刺しにしようと回転しながら放たれる。

この間合いでは反射的に対応するのは普通は不可能、故に必殺を確信するアドウ。しかし次の瞬間、目の前からヴェズルフェルニルの姿は消えていた。


アドウ「何っ!?」

陽炎「『コード・ブレイヴ』… 一瞬遅れてたらヤられてたかも」


咄嗟に発動したリミッター解除システム『コード・ブレイヴ』、そして陽炎は機体を上昇させることで『イッカク』による一撃を避けていたのだ。

そして陽炎はマシンガンを投棄しグラムを両腕で構えて加速しジエンドとの距離を再度、瞬時に詰めて『イッカク』を両断する。


陽炎「切り札は、もう無いわよ」

アドウ「ふざけやがってぇぇぇぇぇっ!」


ここまで追い詰められたのはどれぐらい前だろう、とアドウは逡巡した。互角の戦いではなく一方的過ぎる戦いに血が滾るどころか全身の熱が恐怖で冷めていく感覚を覚える。

それはかつて自分自身が他人にやってきた事、しかし彼はそれに気付きもしない。気付けないほど思考に余裕が無いのだ。そして彼は怒りのまま右の五指のサーベルをヴェズルフェルニルへと繰り出す。


アドウ「これでぇぇぇぇっ!」

陽炎「そんな感情任せで、やれると思うな!」


『グラム』とサーベルが鍔競り合いとなった瞬間、陽炎はグラムを僅かにずらすことでジエンドの指から展開されたサーベルを逸らす。

そして腹部の『口』にグラムを押し当てる。それに気付いたアドウはグラムを噛み砕こうと腹部の牙でグラムに噛み付こうとするが、グラムの刃が結晶化しそのままジエンドを両断した。


アドウ「俺が…!負ける、だと…!」

陽炎「マテリアライゼーション… 勝ちは、貰ったわ」


背後で爆散するジエンドを見届けた陽炎はNT-Dを解除し先程投棄したマシンガンを探す。その目や頭の中には『倒した相手』の事など微塵も残っていない。

そしてマシンガンを発見すると再びコロニーの方へと機体を飛翔させる。ただ敵対する者を全て屠るために…
491 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/30(月) 01:14:40.36 ID:3tMFy5qE0
天城「姉さん!陽炎が1機倒しました!」

榛名「去年より腕を上げましたからね。しかしまだ1機、油断は出来ません」

榛名(正直満潮を編入しなかったのは不安でしたが、この調子なら心配ありませんね)



天津風「あのアドウが…?」

朝雲「私達が5人がかりで倒せなかったのよ!?」

海風「ですが陽炎さんは単機で倒してしまった… その事実は覆しようがありません」

愛宕「あの子達、やっぱり強敵になりそうね…」

瑞鳳「でもこれでこの勝負、一気に傾いた…」

萩風「戦力比は2:3、ヴェズルフェルニルのスピードならばコロニーまで1分もかかりません」

霞「そうなった場合はガンプラ学園、シア達に勝ち目は無い…」

神通(もし次に戦う時は私が、彼女と戦わなければならない… あのスピードを相手に…)

天津風「…」

朝雲「どうしたのよ天津風?」

天津風「…ごめん、ちょっと一人にさせて」

萩風「どうかなさったのですか?」

瑞鳳「一人にしてあげましょ。きっと感情が納得できてないのよ」



天津風「何でよ…! 私がアイツを倒したかったのに…!」

天津風(私の復讐が… ガンプラバトルを続けて、ここまで来た意味が…!)

「そんな邪な感情を持って戦うならガンプラバトルなんかしない方が良いよ」

天津風「確か貴女、時雨さん…」

時雨「かつて僕は言われたんだ。『ガンプラバトルは所詮遊び』、ってね。遊びだからこそ本気になれるのに…

復讐なんて考えを、私怨を持ち込まれたらそれこそ他のメンバーの迷惑でしか無い。しかもガンプラ学園と戦いたい、ってことは今戦ってる彼女達にも『負けろ』って言ってるようなものだ」

天津風「貴女に、何が分かるんですか…!」

時雨「分からないね。だけど僕もある人に負けて、勝ちたいって思ってガンプラバトルを続けた… 強くなりたいって思ったさ」

天津風「じゃあ私とどこに違いがあるんです!」

時雨「楽しいか、楽しくないかの差だよ。 僕は彼女に辿り着くまで色んな人と出会って戦って、楽しかった。

でもキミは相手を対戦相手じゃなくて『ただの踏み台』としか見てない。 そんな敬意も何も持ってないなら戦う資格は無いね」

天津風「っ…!」

時雨「厳しい事を言っちゃったかもしれないのは謝るよ。 だけどこの先何も目標も何も持ってないようじゃ、漠然と戦うだけなら皆に迷惑をかけることになる。

それとも僕の言う事が納得できない、認められないって言うなら… 僕が相手になるよ」
492 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/01(火) 02:34:00.23 ID:x+Pk5MP90
シア「兄さん!アドウさんが…!」

ウィルフリッド「分かっている!」

ウィルフリッド(だが退路は無い… それに今ここで退いたとしても『ヴェズルフェルニル』が合流すれば形成の逆転は難しくなる。

どうにかして1機だけでも戦闘不能に追い込みたいものだが…!)

阿武隈「このまま攻めきるよ!」

長波「おう! コイツを喰らえ!」


『ガルム』の肩部のビームキャノンと『マーナガルム』のスフィア・フォーカス・ビームキャノンが一斉にポータントへと襲い掛かる。

シアはコロニー内のビルを盾にすることでその攻撃を躱すが盾にしたビルは崩れ逃げ場を失う。


シア「何なの、この強さ…!」

ウィルフリッド「機体もそうだが、去年よりファイターの能力が上がっている…!」

阿武隈「一年間、何もしてないと思わないで!リモートドリルッ、バースト!」


シアのフォローをしようとトランジェントが割って入ろうとするが阿武隈の放った『スコール』『ハティ』がトランジェントへと一直線に加速する。

そして『ハティ』のドリルの先端がトランジェントの右肩を掠めてアーマーを吹き飛ばし、態勢を崩した隙に『スコール』が左脚を貫いた。


シア「兄さん!?」

ウィルフリッド「くっ… だが!」


パルチザンを振るい『スコール』を切り裂き、そして旋回する『ハティ』をパルチザンの先端を展開した放ったビームにより撃墜するウィルフリッド。

だがそれに気を取られた瞬間、マーナガルムの超加速を利用した体当たりが炸裂しコロニーの壁面へと吹き飛ばされる。


シア「兄さんの機体を軽々と…!」

長波「余所見してるとやっちまうぞ!」

シア「きゃあっ!?」


ガルムがクロー・シールドを展開して右腕のシールドで斬撃を放つ。咄嗟に防いだシアだが出力差と機体の体格差で押し負け地面に叩きつけられた。

シアと長波は何度も打ち合ったがシアの方が最初から押され気味だ。


シア「私とあの人、どこが違うの…!」


年齢だってほぼ同じなのに彼女から見えるオーラが同年代のソレとは全く異なっていた。海風や霞のような雰囲気とは違う独特の雰囲気、それに気圧される。

一方で長波は空気でシアを一方的に呑み込む。戦場では気圧されたら死ぬ、兵士として戦ってきた者なら本能的に覚えること。そして長波は自分のペースに持ち込み彼女を追い詰めていく。


長波(怯えるのも無理ないか… だって私達みたいな『兵士』じゃないから)
493 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/01(火) 03:34:35.92 ID:x+Pk5MP90
《2年前・仙台 『模型店エンガノ1号店』》


陽炎「不知火、アンタこんな所で暮らしてて良いの?」

不知火「別に。こちら側の方が色々スキルの習得には役に立ちますし」

陽炎「そりゃアンタみたいに秘書艦やってて、今は会長秘書だかやってんならそうだろうけどさ…

艦娘として、とか兵士として、とかそう言う誇りは無いわけ?」

不知火「そんなもの、当の昔に犬に喰わせましたよ。 今の不景気でそんなもの残してたら自分が食べれません」

陽炎「…こんな金持ちの家の癖に?」

不知火「大黒柱が毎回毎回変なグループ企業を設立したり変な風に貯蓄を使い、その旦那は大学教授の仕事を放って武者修行をしてきたり…

姉さんくらいですよ、土地運用やらで堅実な資金運用をしているのは」

陽炎「まぁ、そうでも無かったら見返りも無しにこんなに艦娘引き取ったりしないか…」

不知火「…陽炎の言う通り、少し前までは艦娘がどう、とか言っていた時期もありました。

だけど不知火は、不知火と野分、秋月と朝潮は『見捨てられた』んです」

陽炎「…」

不知火「見捨てられたのにおめおめ生き残って帰っても次に出撃する時は今度こそ『確実な死』が待っている可能性の方が高いでしょう。

特攻より酷いことをさせられる可能性も、青葉さんの言うように実験体にだって…」

陽炎「…もう良い。旧知だったアンタに聞いた私が間違いだった」

不知火「陽炎…」

陽炎「そんなに命が大事? 私達の前でいっぱい人が死んだのに、自分はこんな世界でのうのうと生きる訳?」

不知火「…あちら側に、戦場に戻って何がしたいんですか?」

陽炎「決まってる。奴等を皆殺しにする、死ぬまで戦ってやる」



野分「で、陽炎は?」

不知火「駄目です。聞く耳すら持ってません」

松風「こっちもだ。阿武隈さん、全く話し通じない」

初月「ここまで凝り固まってるとは思ってなかった…」

秋月「初月、それは貴女もでしたよ」

初月「うっ…」

如月「でもこの状況、流石によくないわね… このままだと『こっち側』で何をしでかすか分からないもの」

照月「幸いなのは長波ちゃんは多少なりとも聞く耳を持ってるってことかな…」

弥生「二人に比べたら、だけど…」

青葉「やっぱり芳しくないですかぁ…」

舞風「ちょっと、何処行ってたの?」

青葉「残務処理ですよ。取材旅行前に受けた仕事の書類で先方から問い合わせがあったんです」

朝潮「そんな雑な仕事してるから…」

青葉「いや、ちゃんとやりましたよ? ほぼ言いがかりでしたからね。 これ、差し入れの間宮さん特製羊羹です」

松風「…毒とか入れてないだろうね」

青葉「そんな勿体無いことしたら後で榛名さんに首を削がれて、天城さんに串刺しにされて、間宮さんには解体されますから…

そもそも盛る必要ないじゃないですか。別に敵対してる訳でもあるまいし」

初月「おい、カウンセラ−だろ。 あの三人の心を開く方法は無いのか」

青葉「今は時に任せるしかありません。 無理矢理心を開けるのは向こう側の『洗脳』と一緒ですよ」

野分「いっそ間宮さんを連れて来れば…」

青葉「無駄ですよ。真実を説いても心変わりが無かった、それなら間宮さんを投入したところで無意味にしかなりません」
494 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/02(水) 00:53:38.05 ID:U31J+I6o0
《仙台市内・大鯨のオフィス》


榛名「ではこちら、報告書となっています」

大鯨「分かったわ。…やっぱり動いてたのね」

榛名「ええ。現状は脅威とは言い難いですがこのままグループ内部の情報流出が起きれば痛手は受けるでしょう」

大鯨「なら早めに芽は摘まないと… 痛手を受けていっぱい従業員を手放すより、裏切り者を2,3人切り捨てるほうが良心は痛まないし」

榛名「会長の仕事と言うのも大変ですね… こんな、まだ大学の卒業式も迎えていない学生を企業に潜入させるなんて」

大鯨「ええ。私はこのグループの会長、だから企業の経営者としての視点は持っていても労働者としての視点は持ってない。

恥ずかしい話、末端の人が考えてる事は末端の人にしか分からないの。だからこうやって貴女に依頼をしたのよ」

榛名「両親の顔を立てて、ですか」

大鯨「違うわ。能力を見込んで、よ。 学生で変な商売を始めた、ってご両親から聞いたからお試し感覚で利用させて貰ったけど。

私が想像した以上に二人は働いてくれた。それどころかウチのグループの影を暴いてくれちゃったじゃない。だからこそ…」

榛名「その話はお断りしました。 専属契約は承ることは出来ません」

大鯨「ちぇっ… ま、たまにはウチのグループ企業から依頼を出すかもしれないから、その時はよろしくね」

榛名「ええ。依頼であれば法律に触れたりしない限りは承ります。 …ところであの3人は?」

大鯨「駄目ね。不知火ちゃんすら匙を投げちゃった」

榛名「旧知だから大丈夫、かと思いましたが…」

大鯨「…瑞鳳連れて来ようかしら?」

榛名「お聞きになった限り、そう言う根深いものがある人には瑞鳳さんは不向きかと…」

大鯨「そうよねぇ… 瑞鳳の場合、姿勢で誰かを救う事はできても対話で救うことには向いてないから」

榛名「どうしましょうね、本当…」

大鯨「試しに榛名ちゃん、行ってみる?」

榛名「いえ、多分榛名には向いてないと思います」

大鯨「それは、『助けられなかった』から?」

榛名「…」

大鯨「貴女の話は前に聞いてる。 お友達の自殺を止められなかったことも」

榛名「榛名には誰も助ける事は出来ませんよ。そんな力は…」

大鯨「出来るわよ。 貴女は誰かを救う『力』がある、他の人にはない特別なものが」

榛名「感応波、ですか」

大鯨「そう。そして救えなかった後悔がある、だからこそ真摯に命と向き合うことが出来るんじゃないかって私は思ってる。

誰かを助け、救って抱き締めてあげられる… 貴女にならきっと出来るわよ。青葉ちゃんと向き合えた貴女になら」
495 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/02(水) 01:56:45.53 ID:U31J+I6o0
コンコン


榛名「失礼します…」

阿武隈「確か貴女は…」

榛名「様子見に来ただけですよ。別に取って食おうなどと…」

陽炎「よく言うわ。阿武隈さんに斧突きつけた癖に」

榛名「いや、それは… まぁ別に言い訳はしませんが」

長波「で、何しに来たんだ。用がないなら…」

榛名「ちょっと戦いましょうか」

阿武隈・陽炎・長波「は?」



妖しくモノアイが輝き、白いMSが立ち上がる。榛名の操縦する『ザクV改』、通常のマシュマー機とは異なり形状的には無印に近い機体、が腰のショートバレル・ビームライフル二丁を抜く。

目の前に立つのは『ヘイズル・ラー』『アマクサ』『ガンダムデスサイズヘル』の3機。店のディスプレイから選ばれた機体であり、外観だけならザクVより作りこまれている。


榛名「操縦は先程レクチャーした通り、もし榛名を倒すことが出来れば元の世界への帰還の術を探す手伝いをしましょう」

陽炎「所詮はたかがゲームでしょ? おもちゃを使った」

榛名「ええ。たかがゲーム、されど… これで貴女達の『運命』が決まると考えてください」

陽炎「なら、ちゃっちゃと片付け… え…?」


ライフルの銃口を向けた瞬間、陽炎の視界から消えるザクV。陽炎は気付く、ザクVが既に跳躍して目の前に落下しつつある事に。

しかし動作が一手遅れる。次の瞬間、着地と同時にザクVがライフルの引き金を引いてアマクサの腹部を貫いた。


榛名「…1機撃破。たかがゲーム、などと大口を叩いた割にはそれ程脅威ではありませんね」

長波「陽炎! 阿武隈さん!」

阿武隈「わ、分かってる!」

榛名「初動は悪くありませんが… だけど、遅いですよ!」


数分、それどころか数十秒のうちに勝敗は決した。無傷のままフィールドに立つザクV、そして他の機体は正確に腹部を一発で打ち抜かれて機能を喪失している。

榛名は多少苦笑いを浮かべる。これでも加減、あえて動作を鈍くしたり意図的に性能の低いガンプラを持ち込んだりハンデを与えたが3人は成す術もなくやられていたのだった。


陽炎「たかがゲームで、こんな…!」

榛名「ええ、たかがゲームです。 それでも貴女達は私を倒すどころか、傷一つつけられなかった。

もしこれが本物の『戦争』だったら、死んでいましたね」

長波「ふざけんな…! 私達が死ぬ、って言いたいのかよ!」

榛名「ええ。格上相手に成す術も無く、傷一つ与えられず、何も残せず無様に」

阿武隈「ふざけないで…! 貴女に、ただの人間に何が分かるの!」
496 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/04(金) 04:04:07.18 ID:uy/8mXXk0
榛名「何も残せず死んだ人間を知っているから、ですよ」

長波「青葉が言ってたやつか…?」

榛名「聞いていましたか… この『ガンプラバトル』に命を賭けて頂を目指した少女が居ました。だけどその子は頂に到る資格を失った。たった一度のバトルで負けただけでその資格を無惨に奪われたんです。

先程『たかがゲーム』と言いましたが、こんなたかがゲームにすら人生を、命を狂わされた人間が居るんです。これはただ戦争を模しただけのゲームなのに、そのゲームで命を断った人間が居ました」

陽炎「それと私達に何の関係があるのよ!」

榛名「…関係はないでしょうね」

陽炎「…は?」

榛名「だけど命の重さを知っているから、すぐ側に居た筈の人間が居なくなるのはとっても悲しいことだから…」

阿武隈「…どうして? 私は、貴女達に関わりなんて…」

榛名「榛名が助けた命です。 助けた命に死なれたくないと思うことは当たり前でしょう」

「こうなったら何を言っても無駄ですよ。この人、頑固ですから」

陽炎「青葉…!」

青葉「でも、だからこそ… そんな人だからこそ青葉に進むべき道をくれました。数多の命を奪ってきた贖いに、それより多くの人を生きてる限り救い続けろと」

榛名「人は誰にでも生きなければならない責務があります。 敵を倒し命を護る『兵士』、『戦士』であるならなおの事人より生き抜く責任があるんです…!」

阿武隈「生き抜く、責任…」

榛名「『戦士』である事の否定はしません。だけど命を、助かった命を決して無駄にだけはしないでください」



長波「…アイツ、なんなんだよ」

陽炎「どうして、見ず知らずの他人に…」

青葉「あの人は『突然変異』の人間、一種の超能力者なんです」

阿武隈「超能力…?」

青葉「人と感応する力、声を頭に直接伝えたりする力が発達して、人の感情もある程度読みとることだって出来ます」

長波「あの時の声か…」

青葉「読み取る力は青葉の方が数段上ですが、それでも感じてしまったんでしょうね… 貴女達の死への恐怖を」

陽炎「死の恐怖って… アンタ、これ以上言ったら…!」

青葉「だったらどうしてあの時震えてたんです?」

陽炎「っ…!?」

青葉「確かにあの時、大寒波で滅茶苦茶寒かったです。だけどそれ以上に、阿武隈さんを失う事、そして自らの死に対して震えていたんじゃないんですか?」

長波「それ、は…」

青葉「それに青葉は数多の闇を垣間見てきました。 あんな連中に付き従うなんて、青葉にはもう到底不可能です」

阿武隈「じゃあ不知火ちゃん達の話は…」

青葉「全部事実でしょう。こちら側にもその生き証人が居ますから」

長波「どうすれば…」

青葉「折角拾った命を無駄にしないでください。 きっと、見ず知らずの他人であっても、あの人は泣いてしまいますから」
497 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/05(土) 03:25:34.03 ID:a2T23Csq0
《現代・観客席》

榛名(あの時から2年、色々あって榛名の家で三人を引き取って、バトルを始めることになって…)

天城「まさかガンプラ学園をここまで追い詰めるとは…」

榛名「いいえ、もう勝ちは見えています」

天城「姉さん…?」

榛名「既に勝敗は決しました。ガンプラの性能やファイタースキルに差があった訳ではありません。

圧倒的な戦闘経験と勝利への執念の差、覆せないこの差が勝敗を分けました」

天城「ですがキジマ・シアさんはまだしもキジマ・ウィルフリッドさんの方は負けていませんよ」

榛名「ええ。勝利への執念は負けていないしトランジェントはまだ『切り札』を残しています。

だけど『切り札』を残しているのは同じで状況はイーブン、ここから顕著な差が出るのは戦闘経験値です…!」



左腕で保持していたパルチザンをマーナガルムへと突き立てようとするがマーナガルムがトランジェントの左腕をクローアームで粉砕する。

その隙に右腕のパルチザンで斬撃を放つトランジェント、しかし斬撃をマーナガルムが結晶の防御フィールドで防ぐ。


ウィルフリッド「こんな隠し玉を…!」

阿武隈「『スフィア・クレイドル』、使うつもりは無かったよ…!」

ウィルフリッド「高濃度の粒子を結晶化させてフィールドを形成するなど…!」


一度距離を離すウィルフリッドだが阿武隈は逃さない。マーナガルムの脚部に内蔵されたスフィア・フォーカス・ビームキャノンが他方向からトランジェントを襲う。

残るパルチザンを振るいビームを打ち払うウィルフリッド、阿武隈は機体のSPスロットへとカーソルを合わせる。


阿武隈「NT-D!」

ウィルフリッド「何っ!?」

阿武隈「ここのフィールド、ちょっと狭いよね」


頭部の角が割れ『ガンダム』となるマーナガルム。阿武隈はマーナガルムの右腕にありったけのエネルギーを収束させていく。

そして全力の一撃をコロニーの地面へと叩きつけ、その一撃がコロニー全体に亀裂を生じさせた。


ウィルフリッド「コロニーが…!」

阿武隈「行こうか、宇宙に」


次の瞬間、コロニーの隔壁が全て砕けて重力が消え、空気が漏れていきそこから吸い出されるようにマーナガルムとトランジェントは放り出される。

コロニー内で戦っていた長波とシアもまたそれに巻き込まれて宇宙へと吸い込まれた。


シア「コロニーを破壊した…!?」

長波「いや、やるなら予告してくれよ!? 焦るわ!」


態勢を整えなおすガルムとポータント。宇宙に出たことでの戦闘における優位性はお互いに変わりは無いがシアはデブリに紛れて逃走を図ろうとする。

しかしそこに『光の翼』から放たれる無数の羽の刃が殺到して周囲のデブリを砕いていく。


シア「『ヴェズルフェルニル』まで…!」

陽炎「逃がすと思う?」

長波「遅いぞ陽炎! ってかその機体ならコロニー入ってこっちの援護できただろ!?」

陽炎「え、だって狭いコロニー入る理由ないじゃん。戦いに水差したら悪いし」

長波「あのなぁ…」

陽炎「ま、でも… 宇宙に出れば私も『全力』で加勢できる。 ちゃっちゃと片付けて、援護にまわるわよ!」
498 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/05(土) 04:44:29.31 ID:a2T23Csq0
シア「そう易々と!」

長波「来るぞ!」

陽炎「分かってるわよ!」


陽炎は再度NT-Dを発動しピアスソードから放たれる鞭状の攻撃を刃を結晶化させた『グラム』で受け流す。

その隙に長波が肩部のビームキャノンでポータントを攻撃して左脚の膝関節から下を撃ち抜き破壊する。


シア「数に、押されて…!」

陽炎「今よ長波!決めなさい!」

長波「コード・ブレイヴ! クロー、マテリアライゼーション!」


機体の燐光が強くなり、振りかざした左腕のクロー・シールドの爪に収束した粒子が結晶化していく。

そして爪を振り下ろすと同時に結晶の刃が放たれる。咄嗟にフィールドで防いだシアだが刃はフィールドを切り裂き本体に到達してダメージを与えた。


シア「なんて、威力… しまっ…!?」

長波「終わりだ!」


気が付くと目の前に『ガルム』の姿があり、シアは唖然となるがそれすら意に介さず長波は右腕の結晶を纏ったクロー・シールドの爪を突き立てる。

胸部を貫かれたポータントは機能を喪失し、それを見届けた長波はクローの結晶を炸裂させて内部からポータントを破壊しその場から離脱した。


シア「ごめん海風、霞…」

長波「こっちにも、負けられない理由があるんだよ」

陽炎「大丈夫、アイツ等も私達が倒すから」




霞「シアがやられた…」

神通「これで勝敗は決しましたね」

萩風「ええ。この数の差は覆せません」

朝雲「あれ、天津風遅いわね…」

愛宕「ちょっと探してくるわね」

瑞鳳「海風ちゃん?」

海風「コード・ブレイヴに『グシスナウタル』を使わなかった…?」

瑞鳳「『グシスナウタル』は元々ガルム用の武器じゃないからだよ。あれはフェンリル用だった武器、そしてガルムは系統が違うから。

あの機体がコード・ブレイヴを発動して使える武器は同系統機用の、多分天城さんと間宮さんの『レーヴァテイン』『レーヴァテインU』だけ」

海風「ではあの榛名さんの必殺、『エクサブレイヴシュート』は榛名さんだけの…」

瑞鳳「シームルグと朝雲ちゃんの妹に贈られた機体を解析して判ったんだけど、系統によってコード・ブレイヴで使える必殺が違うの。

例えばシームルグじゃ『レーヴァテイン』を使えてもコード・ブレイヴ時に必殺は使えない、逆にスレイプニルに『プラフスキー・ステラ・ストレイターレット』は撃てない」

霞「中々面倒な仕様で…」

瑞鳳「だから数少ない弱点、と言うか付け入る隙になるね。武器に対して互換性がないのは致命的だよ」

萩風「装甲の脆さと武器の互換性、そして粒子消費の多さくらいしか弱点はないんですけどね」

朝雲「それ以外が一定水準の性能超えてるし… 装甲脆いって言っても瑞鳳さん製に比較したらってだけで世間から見れば強度は充分だし…」

神通「なんともやり辛い相手です…」


イベント 直下
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 22:56:10.87 ID:qXqG2VWyO
阿武隈、切り札を切る
500 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/07(月) 02:23:12.45 ID:YqshdZdB0
ウィルフリッド「シアもやられるとは…!だがこれ以上は!」

阿武隈「追い込まれてる身で!」


スフィア・フォーカス・ビームキャノンを連射しトランジェントの機動を追い込む阿武隈。

このままでは勝てない、そう踏んだウィルフリッドが最後の手札を切り機体が蒼く輝きスタビライザーからは光の翼が放出される。


ウィルフリッド「トランジェントバースト!」

阿武隈「使ってきたね、ようやく…!」


NT-Dを使用している『マーナガルム』なら対応は出来る。しかし『対応』まででありあくまでも倒すのは少しばかり困難であろう。

そう踏んだ阿武隈は通信を外部に送る。1コール置いたあとに外部との音声が繋がり、送った人物が応答した。


榛名『どうかしましたか、阿武隈?』

阿武隈「…切り札を、『UC-D』を使わせて」

榛名『良いですよ。 好きに使いなさい、阿武隈!』

阿武隈「わかった…! コード・ブレイヴ!」


マーナガルムのリミッターを解き放ち機体から放たれる燐光が増していく。それだけならば他の2機、『ガルム』『ヴェズルフェルニル』も使っている。

しかし阿武隈は『その先の力』を使う為にコード・ブレイヴを発動していた。


阿武隈「行くよ、マーナガルム…」

ウィルフリッド「くっ… どんな力かは知らないが、使わせる訳には…!」


一直線に加速し『システム』の発動前にマーナガルムを倒しそうとするトランジェントが一気に距離を詰めてパルチザンによる刺突を放つ。

その一撃はマーナガルムに到達する直前に発生した粒子の奔流により弾かれ、トランジェントは吹き飛ばされてしまう。そして…


阿武隈「唸れ! アンチェインドドライヴッ!」


マーナガルムの機体を覆う『ヤールングレイヴル』の一部が変形し展開形態へと移行、頭部のメインセンサーの左右が展開してサイコフレームが露出された。

ウィルフリッドは唖然となる。本来HGではオミットされていた筈の機能であり、RGやMGでもその再現はされておらずPGにのみ備わっていた筈の能力が目の前の機体、しかもベースはHGが平然と行使しているのだから。


ウィルフリッド「『アンチェインド形態』をHGでここまで造り込むだと…!?」

阿武隈「ただのアンチェインドだと思ってもらったら困るよ。この機体の、全力だから!」


マーナガルムが右腕で掴んだのは先ほど粉砕した筈のコロニーの外壁だ。その外壁の残骸はマーナガルムより巨大でありそのサイズはマーナガルム5機あっても足りないほどの大きさである。

それでもマーナガルムは右腕だけで残骸を掴み上げてトランジェントへと高速で投擲した。


ウィルフリッド「何と言うパワー、しかも先ほどより上がっているだと…!?」


辛うじて迫る残骸をパルチザンで切り裂き破壊するトランジェントだが切り裂いた残骸の向こう側から目にも止まらぬスピードでマーナガルムが迫り、左腕による打撃が放たれた。

その攻撃も機体を左側に逸らすことで回避したウィルフリッド。しかし打撃の衝撃波だけでトランジェントの機体装甲が砕けて右腕のアーマーが崩壊する。


ウィルフリッド「この力… 『彼女』と同じ…!?」

阿武隈「機体が軋む…! 早く勝負をつけるよ!」
501 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/07(月) 03:56:10.76 ID:YqshdZdB0
朝雲「何あれ… 私のシームルグには、あんな力は…」

萩風「『デストロイ・アンチェインド』、PGユニコーンの発売時に追加された能力です。能力としてはNT-Dの完全上位互換扱いでしたが…」

神通「しかしあそこまで爆発的に能力が上昇する訳では無い筈です。あのパワー、掠めるどころか振るった衝撃波だけで機体装甲を粉砕していますから」

瑞鳳「最悪だ… パクられてる…」

海風「パクられた?」

瑞鳳「あのアンチェインドは多分『アズライトバースト』、『モード・アズール』と同質の力…」

海風「フレスヴェルグの時のシステムと一緒!?」

霞「確か溜め込んだ粒子の分に比例して性能が上昇する…」

瑞鳳「そうだよ。 理論は厳密に言えば違うけど能力としてなら同質の力、機体内部の粒子の分だけ性能がブーストしてる」

朝雲「つまりガンダムで言えば普通のトランザムと『スサノオ』のトランザムみたいな関係、ってこと…?」

瑞鳳「例えで言うならそれに近いね。差は本体に蓄積した粒子か、周囲の粒子を取り込んでるかの差だから」

神通「周囲の粒子を…?」

萩風「アンチェインド形態へと移行時に一部装甲を展開、そこから周囲の粒子を吸収して性能をブーストさせているんです。

アレは恐らく時間経過に比例してパワーが上昇していく仕組みでしょう。だけどそんな事をすれば…」

霞「フレスヴェルグだってパワーに負けて腕が砕けた、だから性能が上昇すればする程…」

瑞鳳「自壊の危険性が高くなる。諸刃の剣だよ」


榛名「だから短時間で勝敗を決する必要がある、長期戦には向かない力です。我ながらこうも矛盾の生じるシステムを生み出してしまうとは…」

天城「しかしこれが唯一『ウイングガンダム・アズライト』を始めとする3機に対抗出来る方法…」

榛名「あと整備負担が… 全力行使で3分しか使えないのに…」

天城「まぁ過負荷をかける訳ですから仕方無いことだと割り切ってください」




マーナガルムの圧倒的な力に押されていくウィルフリッド、だがその顔から歓喜の笑みは消える事は無かった。

自分が圧倒される感覚などどれくらいぶりだろうか、自分と互角以上の戦いを行ってくれる数少ない相手が目の前に居ることに彼は喜びを隠せない。


ウィルフリッド「面白い!私が望んでいたのは、こんなバトルだ!」

阿武隈「勝てる、これなら! マーナガルム、フルドライヴッ!」

ウィルフリッド「ならばこちらも! トランジェント!」


マーナガルムが粒子結晶フィールドである『スフィア・クレイドル』を展開し肩部のブースターで一気に加速して距離を詰める。同時にトランジェントもパルチザンを構えて突撃を敢行する。

互いに距離が詰まって激突する2機。ぶつかり合うパルチザンとフィールドが火花を散らし、そして決着の時が訪れた。


阿武隈「行って、マーナガルム!」


パルチザンが砕け散り、そのままトランジェントに激突するマーナガルム。そしてそのままデブリへと突っ込みトランジェントを叩き付ける。

抵抗を試みようとするトランジェントだがマーナガルムはクローアームでトランジェントを持ち上げてしまう。


ウィルフリッド「まさか、私に…!」

阿武隈「砕け、散れぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


そのままクローアームでトランジェントを粉砕し、トランジェントは爆散する。 そこに残っていたのは機体の残骸と、マーナガルム1機だけだった。


BATTLE ENDED

Winner"White Clean"


『全日本ガンプラバトル選手権、準決勝第一試合。勝者、宮城代表・『ホワイトクリーン』!』
502 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/08(火) 01:29:00.34 ID:T98kleyp0
ザワザワザワ

「あのガンプラ学園が…?」

「たった2回目の大会で…」


萩風「…これで優勝候補の最大手が消えました」

霞「でもガンプラ学園が手も足も出無いなんて…」

朝雲「勝てるのかしら…」

瑞鳳「勝てるよ。積み重ねたこれまでをこれからの力に変えて、それをぶつければ」

神通「積み重ねたこれまでを…」

海風「これからの力に…」


榛名「これで手札を全て晒しました…」

天城「如月さんからの『アズライトバースト』のデータと2回戦時の『フルブルームバースト』のデータ…

これがあれば、海風さん達にも対抗は出来る筈です」

榛名「まだ霞さん、『ブラストアクロスZZ』のデータは未知数です。油断は出来ません」

榛名(恐らく決勝に上がるのは『フリューゲル・ヴェント』、その時こそ決着をつけなければ…)


阿武隈「ふぅ… 二人共、お疲れ様」

陽炎「まさか阿武隈姉さんがアンチェインドまで使うなんてね」

阿武隈「必要があったから使っただけだよ」

長波「だけどこれで、お膳立ては整った」

阿武隈「うん。私達が『倒さなきゃいけない相手』と戦うための…!」



第17話『神話の獣と天使と』終
503 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/08(火) 01:42:33.49 ID:T98kleyp0
次話選択 ↓3票先取


1.朝雲編『もう一人の蒼いツバサ』…朝雲VSルーカス・ネメシス。 会場からの帰り道、海風と朝雲はある人物と遭遇する。その相手は対ガンプラ学園の為に国外から招聘されたルーカス・ネメシスだった…
2.天津風編『復讐の終わり』…天津風VS霧島。 案の定時雨にフルボッコにされた天津風。そこに『同じ目標』、ガンプラ学園への復讐を考えていた霧島が現れる…
3.萩風編『TwinBird』…萩風VSカリマ・ケイ。朝雲とその家族と一緒に出かけた萩風。だがその隙に部屋に空き巣が入りエクシアが破壊されてしまう。落ち込む萩風に渡されたものは…
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 09:03:54.61 ID:y7t1NxZF0
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 09:47:48.02 ID:EAnMuqb30
1で
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 09:58:30.76 ID:iUhq7zt7O
3
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/09(水) 16:30:47.67 ID:aG6n0c0TO
3
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/10(木) 05:18:21.70 ID:JqwkG2nmO
3
509 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/12(土) 04:08:54.47 ID:0rZgvxBT0
第18話『TwinBird』

《選手控え室》


瑞鳳「次の対戦相手は『グレートK』、神奈川の本牧だね」

海風「あのワカメですか…」

霞「よく生き残って来れたわね、アイツ」

天津風「…元々実力自体はそれなりにはあった筈よ」

朝雲「どうしたの?テンション低いけど」

天津風「別に…」

愛宕「ちょっと時雨ちゃんとね…」

神通「時雨さんが?」

瑞鳳「あの子には後でちょっと言っておくよ。思うところがあったにしてもやり過ぎだし」

萩風「これが本牧の資料です」

霞「『サイコMK-U』に『ノイエ・ジール』、それに『アプサラスV』ってものの見事にMAばかりね…」

神通「毎回機体を変えているのも… 一体どれ程の労力が…」

朝雲「対モビルアーマーなら編成は私と天津風と海風が最適だけど…」

海風「今回アズライトは使用不可能です。なので強襲に向いた能力を持った機体は… エクシアが最適解ですね。 萩風さん、機体の方は?」

萩風「コピー体との戦闘での機体疲労がありますが、今夜中には整備も終わらせられる見通しです」

海風「瑞鳳さん、『シームルグ』の整備状況は?」

瑞鳳「アズライトの調整の合間に終わらせられる程度だよ。ストライクの方も万全」

海風「では天津風さん」

天津風「ハルートは… 予備パーツもあるし、部品交換でなんとかなる。間に合わないなら間に合わないでシューティングスター弄ったからそっち引っ張り出せるけど」

海風「分かりました。では編成はこれで確定、と言う事で届出を出してきます」


「…」




朝雲「萩風、ちょっと良い?」

萩風「どうかしましたか?」

朝雲「もうちょっとしたら五月雨達、ここに着くんだって。だから萩風も一緒に食事でもどう、って」

萩風「私が行ってもご迷惑になるだけでは…」

朝雲「別に迷惑なんかじゃないわよ。両親が気に入ってるし、何より五月雨も懐いてる」

萩風「しかし… 折角の団欒が…」

朝雲「良いのよ。 アンタ居た方がウチの一家喜ぶから」
510 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/14(月) 04:42:43.33 ID:vAdtGzu80
《神通・萩風の部屋》


萩風「なのでちょっと夜は居ません。夕食には不参加です」

神通「分かりました。 機体の方は?」

萩風「やるべき事は分かっているので帰ったらやります」

神通「そうですか… ジャスティスと一緒に私がお母様の所に持っていっても良いんですよ?」

萩風「フルブルームみたいに何仕込まれるか分からないので遠慮です」

神通「アレ一晩でやりましたからね…」

萩風「私も『明鏡止水』自体は使えますが姉さんより体力の劣る私では機体からのフィードバックに耐えられる保障はありませんから」

神通「ではエクシアは置いていく、と言う事で… 戸締りは私がやっておきます」

萩風「オートロックと固定窓ですからその必要はないと思いますけど。 鍵はフロントに預けておきましょう」

神通「ええ。その方が安全ですから」

萩風「では私は… …なんでそんなにニヤついて?」

神通「だって珍しいんですもの。貴女がこうして友達と出かけることが」

萩風「別に良いじゃないですか… 出不精が出かけたって。友達殆ど居ない癖に」

神通「そ、それ言われると… って何で知ってるんですか…!」

萩風「スマホのロックは指紋認証にしておいた方が良いですよ」

神通「ひ、人のスマホを見たんですか!?」

萩風「そもそもパス設定すらしてないのはどうかと思いますが」

神通「だって一々面倒で…」

萩風「そんなガバガバセキュリティだから盗み見られるんです」
511 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/14(月) 04:42:43.11 ID:vAdtGzu80
《神通・萩風の部屋》


萩風「なのでちょっと夜は居ません。夕食には不参加です」

神通「分かりました。 機体の方は?」

萩風「やるべき事は分かっているので帰ったらやります」

神通「そうですか… ジャスティスと一緒に私がお母様の所に持っていっても良いんですよ?」

萩風「フルブルームみたいに何仕込まれるか分からないので遠慮です」

神通「アレ一晩でやりましたからね…」

萩風「私も『明鏡止水』自体は使えますが姉さんより体力の劣る私では機体からのフィードバックに耐えられる保障はありませんから」

神通「ではエクシアは置いていく、と言う事で… 戸締りは私がやっておきます」

萩風「オートロックと固定窓ですからその必要はないと思いますけど。 鍵はフロントに預けておきましょう」

神通「ええ。その方が安全ですから」

萩風「では私は… …なんでそんなにニヤついて?」

神通「だって珍しいんですもの。貴女がこうして友達と出かけることが」

萩風「別に良いじゃないですか… 出不精が出かけたって。友達殆ど居ない癖に」

神通「そ、それ言われると… って何で知ってるんですか…!」

萩風「スマホのロックは指紋認証にしておいた方が良いですよ」

神通「ひ、人のスマホを見たんですか!?」

萩風「そもそもパス設定すらしてないのはどうかと思いますが」

神通「だって一々面倒で…」

萩風「そんなガバガバセキュリティだから盗み見られるんです」
512 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/14(月) 05:21:03.79 ID:vAdtGzu80
神通「こんななら、これから萩風と付き合うことになる人は苦労するでしょうね…」

萩風「失敬な。私だって姉さん以外のスマホは盗み見たりはしません」

神通「じゃあ私の見るのもやめてください」

萩風「一度見てつまらない、って思ったんでやりませんよ」

神通「人のスマホ勝手に見ておいてそれですか!?」

萩風「だってやり取りなんて海風さんと霞さんぐらいでクラスメイトのアドレスなんて…」

神通「それ以上言わないで下さい…!」

萩風「あとは…」

神通「っ!」ブォン

萩風「きゃっ!? こんな所で刀振るうの止めてください! 危ないじゃないですか!」バッ

神通「貴女こそトンファーなんか持ち出して…!」

萩風「いきなり日本刀を振るわれたら応戦するのが当然でしょう…! 姉さんが刀振るった余波その辺斬って修理費請求されると困るんです!」

神通「その程度なら制御出来ます!」

萩風「そもそも日本刀で斬りかかる自体が…」

神通「即座にトンファーで応戦しようとした癖に…!」

萩風「こちらはあくまで対人制圧用です」

神通「ならこっちも素手で…」

萩風「そんな事したら私が吹っ飛んで壁に穴開くだけですよ」

神通「くっ… はぁ… 二度と見ないで下さい。次見たら容赦しません」

萩風「分かってますよ。まだ死にたくないんで」

神通(後でスマホはロックしておきましょう…)



《ショッピングモール》


朝雲「あんまり隣部屋で喧嘩しないでよね。余波が来ると困るのこっちだから」

萩風「あ、あははは…」

朝雲「で、まだちょっと時間あるのよ。到着が7時半って言ってたし」

萩風「今高速混んでますからね… それまで何しましょうか?」


イベント 直下
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/15(火) 15:40:35.26 ID:rGk2MXYBO
ガンプラを見に行く
514 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/19(土) 23:35:50.57 ID:EqXD1fF50
《模型ショップ》


朝雲「ねぇ、この『RG ユニコーンガンダム』って作り易いかしら?」

萩風「個人的にはフレームのパーツが硬くてはめ込み難かったり装甲が可動のせいか脆い、頭部アンテナがデカールだったりで…」

朝雲「え、頭部デカールなの!?」

萩風「はい。可動するアンテナと差し替えでユニコーンモード・デストロイモード用のが各1ずつ、可動用とデストロイ用にはデカールが付属しています※」※本当です

朝雲「他のデカールは?」

萩風「あとはセンサーアイと細かいモールド、あとはマーキングデカールくらいだったと思いますが… 正直、HGしか経験が無いならオススメは出来ません」

朝雲「じゃあこれは? 『HGUC ガンダムAN-01 トリスタン』」

萩風「悪い事は言いませんので捨てて来て下さい」

朝雲「悪い事言ってるじゃない!?」

萩風「アレックスの金型を流用、武装もモナカ割、肩の関節構造はポールジョイントですらない、腕部内蔵のビームガンは付属してない、その他色々…」

朝雲「聞いただけでちょっとアレなのが分かるわ」

萩風「これならアレックスの簡易量産型扱いされてるジム・カスタムの金型をベースにした方が… 実際ミキシングではジム・カスタムが使われることが多いです」

朝雲「ミキシング前提はちょっと勘弁して…」

萩風「逆に最近ので作り易いのはHGならバーザムやイフリート・ナハト、あとはダンダリオンなどの鉄血系…

MGならオリジンガンダムやプロヴィデンス、REのハンマ・ハンマなんかも良いかもしれません」

朝雲「ふぅん… …聞きたいんだけどさ、未来のガンプラってどうなってるの?」

萩風「…昏睡病の大規模パンデミックの際、ガンプラバトルが原因とされたのでテロからおおよそ1年後に発売が中止されました」

朝雲「そうなんだ…」

萩風「最後のガンプラは… MGのジェガンです」

朝雲「じぇ、ジェガン!?」

萩風「あとは同時期に出たクアンタフルセイバーとREヤクト・ドーガ、と言ったところでしょう」

朝雲「なんとも突っ込み難いラインナップ…」

萩風「HGは新機軸のリーオーなんかも出たのに… ですがもしテロを止める事ができればその先が見れるかもしれません」

朝雲「え、リーオー出るの!?」

萩風「シッ…!あまり大きな声を出さないで下さい…!」

朝雲「わ、分かった。 で、リーオーって本当…?」

萩風「はい。簡易構造を採用して値段も安価になった結果家電量販店なんかでは2割〜3割引きで販売されたりしたので万札払えばダースで買えたらしいです」

朝雲「おおよそ800円くらいよね、それって…」

萩風「しかも簡易構造のおかげで初心者でも一時間あれば組める、色分け完璧デカールなし、関節の後ハメ加工不要など末恐ろしい何かが…

難点としては頭部が全く動かないのと保持力が少し弱いくらいです※」※個人(>>1)の感想です

朝雲「それでも充分良キットよね、それ…」
515 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/24(木) 02:13:28.37 ID:fV+opWMR0
《その後》


五月雨「あ、姉さん!」

朝雲「こらっ。走ったら危ないわよ」

五月雨「ごめんなさい…」

朝雲「人も多いし、まだ激しい運動は駄目って言われてるでしょ。気を付けなさい」

五月雨「はーい…」

萩風「御無沙汰しています、お二人共」

「こんばんは、萩風ちゃん。いつも娘の面倒見てくれてありがとう」

「元気で悪戯好きだから、困ったりはしていないかい?」

萩風「いいえ、寧ろ私が助けられてますから。日常でもバトルでも」

朝雲「そうよ。萩風から目を逸らさせたり、やりすい状況に持って行ってるのは私なんだから」

「でも朝雲、貴女遠くから撃ってるだけじゃない」

朝雲「いやいや… 三回戦はちゃんと近接戦闘だってやったわよ!しかもドッグファイトで!」

「でもやっぱり接近戦で戦う方が華があるんじゃないか?」

萩風「それは違いますよ。華があるのは『魅せる』動きが出来る人だけ、例えば私達の先生や部長の様な格闘戦のエキスパートでないと」

朝雲「じゃあ萩風も充分じゃない」

朝雲(エキスパートどころの話じゃないけども)

萩風「ところがネットだと『やり方がえげつない』とか『戦闘マシーンみたい』とか結構叩かれてるんですよね…

お世辞にも正々堂々とは言えない戦い方ですから」

五月雨「でもとっても強くて、格好良いですよ!」

萩風「くすっ… ありがとうございます」

朝雲「でも私まだ一回も切り札使って無いし… どデカイ大砲撃の方がエフェクト的には格好良いし…」

萩風「朝雲さんの場合はガン=カタもあるじゃないですか」

朝雲「使える状況がね… やっぱ適度に重力ないと動き難いし、高機動戦闘だと使えないし…」

「やっぱりお手本になるのはあの子、確かあの青い…」

朝雲「海風?」

「確かあの子も剣で戦ってたな。しかもそれで指揮も執ってるんだろう?」

五月雨「あの人、そんなに凄いんだ…」

萩風(海風さんの素養は群を抜いている… 姉さんや霞さんの様に突出している訳ではないものの全体的にも優秀、それに指揮能力は浜風さんにも匹敵しつつある…

同じ血族の遺伝子を持ってるのに、ちょっとこの差は悔しいかな…)
516 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/27(日) 02:05:41.50 ID:+9womFWc0
《レストラン》


萩風「ではもう完治しているのですか?」

「ええ。でもあまり無理は出来ないから暫くは自宅療養ね」

五月雨「だからその間にいっぱい勉強して姉さん達の学校に通いたいんです!」

朝雲「…ウチの学校、レベル高いわよ?」

萩風「寧ろなんで朝雲さんが合格したんですか。曲がりなりにも名門ですよ」

朝雲「死に物狂いよ」

「受験勉強を試験日の5日前に始めて寧ろどうやって合格したのかこっちが聞きたいよ…」

「しかも補欠合格じゃなくて普通に掲示板に番号貼りだされてたものね…」

朝雲「いやぁ、アレは死ぬかと思ったわ。受験の次の日から2日くらい寝続けたもの」

萩風「そうなる前に常日頃の勉強はしておかないといけませんね」

朝雲「…私、アンタが勉強してるところ見た事ないんだけど」

萩風「ちゃんとやってますよ。ランニングマシンで走りながらとか料理の合間にとか」

朝雲「それ、身に入る?」

萩風「入らないなら入るまでやるだけです」

朝雲「海風と霞の勉強法の方が参考になるわ…」

萩風「何かしらの合間や並行してやらないと時間が足りませんから。やる事が多いので」

萩風(ハッキングとか株とか情報収集とか張り込みとか)

「やっぱり大変なのね、一人暮らしは…」

「そう言えば前に話していた件はどうするかい?」

萩風「…申し訳ありません。折角の申し出ですが、ご迷惑をおかけすることになるので…

養子の件、お断りさせて頂きます。ご好意だけ受け取らせてください」

朝雲「…」

「そうかい… でも困った事があったら頼って欲しいな。娘の友達だからね、何かあったら手伝うよ」

「残念ね… 折角良い子なのに」

萩風「ありがとうございます」
517 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/28(月) 02:41:20.63 ID:aHFCEB0t0
《帰り道》


朝雲「…その、良かったの?」

萩風「はい。だって、私のこの手はとっくに血に塗れてるんです。多くの人を、仕方ないとは言え傷つけてきました。

そんな罪を抱えた人間が『普通の幸せ』を手にするなんておこがましいことです」

朝雲「だけどそれは仕方のないことで…」

萩風「仕方のないことだとしても、どれだけ取り繕ったとしても罪は消えないんです。

人の人生を奪ってしまったことは例え誰もが私を咎めなくとも私自身にとっては背負うべきもので生涯向き合うべき罪だから」

朝雲「萩風…」

萩風「それに『私の家族』はお母様と姉さんだけです。 お母様を救いにこの時代に来たと言うのに『新しい家族』を手にするなんて私には出来ません」

朝雲「そう、よね… その、ごめん。萩風の事、何も考えてなかった」

萩風「御両親はきっと善意で言ってくれているんです。責める必要も、理由も何もありませんよ。

それに今の私はもう一人じゃないから。 貴女と言うパートナーが隣に居てくれる、それだけで私は…」

朝雲「…変わったわね、アンタも」

萩風「変わりますよ、人は。 色々な人に出会って、一緒に戦ってきて、お母様の過去を知って…

だからこそ私は止まれないんです。今歩んでいるこの時を未来に繋げるためにEXAMのパンデミックを止めなくちゃいけないんです」

萩風(お母様だけ救えば良いんじゃない、EXAMを止めて人々の未来を取り戻す… あの時、この時代に来ると決断した時の私からは想像も出来ない考えです)

朝雲「ま、私も変わったから人の事言えないわ。私だって戦う理由が最初は妹の為だけだったし。

だけど今は違う。 私は未来が欲しいから、皆とガンプラバトルを続けられるような未来が。未来じゃガンプラが無くなるなんて、絶対に嫌だから」

萩風「…そこまでガンプラ好きでしたっけ?」

朝雲「まぁ最初はあんまり、五月雨より知識も愛情も無かったし。だけど今は違う。ずっと戦ってきて、楽しいって思ったから。

人の作った機体でしか戦った事はないけどそこらの人間よりはガンプラに対する情熱は負けてないはずよ」

萩風「今度自分のガンプラ作ってみます?」

朝雲「そうね。 そろそろ私も、自分の手で作ったガンプラに…」

プルルルルル…

萩風「姉さんから…?」

朝雲「何かあったのかしら?」

萩風「はい、どうかしま…」

神通『緊急事態です! すぐに戻ってください二人共!』

萩風「…何かあったんですか?」

神通『…空き巣です』

萩風「…はい?」

朝雲「どうかした?」

萩風「え、今空き巣って言いました?」

神通『だから、早く戻ってください!』
518 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/28(月) 03:12:34.43 ID:aHFCEB0t0
《神通・萩風達の部屋》


警察A「では盗まれたのは下着が数点と… プラモデルの予備パーツですか?」

萩風「はい…」

警察B「それにキミのプラモデルも壊されちゃってるね。まぁ間違えて壊して…」

瑞鳳「…鑑識さん、ちょっと見せてもらっても?」

鑑識「ええ、どうぞ」

瑞鳳「違うね。この壊れ方は明らかに質量のあるもの、例えば金槌とかで思いっきりで叩き壊してる」

神通「…意図的、と言う訳ですか」

瑞鳳「うん。多分下着なんかはカモフラージュかオマケ、本当の目的は『ガンプラの破壊』ね」

警察B「どうしてそんな事が? 第一なんでそんな事を…」

瑞鳳「そうとしか言えないからですよ。 普通にぶつかっただけならこんな壊れ方はしない、これはガンプラバトルで金属製のハンマー系武器で壊されたような壊れ方と似ています」

警察B「だからどうしてそんな事が…!」

鑑識「えっと、この人は…」

瑞鳳「私は世界選手権出場のビルドファイターです。壊され方なんて、見れば普通に分かります」

警察A「まぁそこは鑑識に出せば…」

萩風「あの、返却までどれくらい時間が…」

鑑識「事件の捜査終了まで、ですから… 犯人が捕まって、判決が出無いと…」

萩風「…」



《朝雲・天津風の部屋》

海風「…困りましたね」

霞「嫌がらせ、しかも悪質だわ」

天津風「悪質なんてレベルじゃない。多分殺されても文句は言えないわよ」

瑞鳳「しかもあの警察『間違って壊れた』って過失扱いで済まそうとしてたもん。捜査する気無さそうだし」

神通「所詮はプラモ、と言う認識なのでしょう。彼等にとってはどうでも良いもの、ですから」

萩風「…」

朝雲「海風、アンタが前に模型部にやったみたいに…」

海風「そうしたいのは山々ですけど本物の鑑識が出張ってますからね…」

霞「だけど今回、容疑者は固まってるわ」

神通「萩風が出れなくなって喜ぶのは『次の対戦相手』…」

天津風「あの陰湿ワカメね…!とっ捕まえて…」

瑞鳳「駄目だよ。まだ確定してないのに手を出しちゃ。 それに今回、『EXAM』絡みの人間が犯人の可能性がある」

霞「EXAM絡みの…?」

瑞鳳「昨日、見回りをしてた時雨ちゃんが怪しい人間を確保したの。その人盗聴器を持ってた、しかも仕掛けてあったのが旅館の私の部屋と別のホテルの榛名さんの部屋だった」

天津風「じゃあ本当にEXAMの可能性も…」
519 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/29(火) 02:24:43.01 ID:N2eldOvm0
海風「ですが最大の問題は…」

萩風「…」

瑞鳳「エクシアは予備パーツまで盗まれてる… 投入出来る機体が無い」

天津風「先輩達の機体は?」

瑞鳳「ウイングはまだ機体のコアの調整が終わってない。ZZとジャスティスもオーバーホールしておかないと決勝に投入するのは難しいから…」

朝雲「投入出来るのは私の予備機の『ストライク・エインヘリヤル』と天津風のお蔵入り『シューティングスターガンダム』だけ…」

天津風「別にお蔵入りはしてないわよ!ちゃんと改修して全国大会用にしてるってば!」

霞「だけど二人は私と同じ射撃メインの戦闘スタイルじゃない」

天津風「必然的に射撃武器が多くなってるのは確かだけど…」

朝雲「元々私のは支援機だし」

瑞鳳「戦闘スタイルが機体と致命的に噛み合ってないね。萩風ちゃんは狙撃も出来るけど、必然的に近接戦闘がメインになる」

萩風「それにお二人の機体はファイターに合わせてフィッティング済みですから…」

瑞鳳「一度染み付いた癖は人間もガンプラも取るのは難しい。だから二人の機体を使うのは現実的じゃない」

神通「ではどうするんですか…!」

瑞鳳「1機だけ、使える機体があるかもしれないよ」

海風「他に機体が?」

瑞鳳「浜風ちゃんが『ウイングガンダムゼロクロイツ』に機体を変えて、それにあわせて夕雲ちゃんも機体を変えたの。

だから壊れてないし、戦闘スタイルの噛み合った『アストレイミラージュフレーム・クロイツリバイ』が現状浮いてる」

神通「確かに、ミラージュなら…」

萩風「しかし夕雲さんがそれを承諾していただけるか…」

瑞鳳「まぁ私が言えばなんとかなるよ。ただし調整が要るから一晩で間に合うかどうか…

それに世界大会ももう終わりも近いし機体の方も限界に近付いてる。確実に使える保障は…」

海風「実質無理と同義じゃないですか」

瑞鳳「あくまでも可能性、できるかもって話だし。…確実性があるなら瑞鶴からゲルググかっぱらってくるしかないね」

神通「さ、流石にそれは…」

コンコン

瑞鳳「…皆、私と神通ちゃんの後ろに」

神通「一体こんな時間に誰が…!」

霞「この感覚、知ってる…?」

陽炎『あのー、ここに全員居るって聞いたんだけどー』

天津風「宮城のスピード狂ね」

神通「その言い方はやめてあげてください」
520 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/29(火) 02:57:03.08 ID:N2eldOvm0
霞「で、こんな時間に何の用よ」

陽炎「ガンプラ壊された、って聞いたから被害確認」

瑞鳳「壊れたのは萩風ちゃんのエクシアだけだよ」

陽炎「エクシアね… 実はさっき、こんなもん拾ったのよ」

萩風「っ…!?」

陽炎「やっぱり、それアンタの機体の部品よね」

萩風「これをどこで!?」

陽炎「ロビーのゴミ箱。お菓子の袋を捨てようとしたらプラゴミに混じってた」

萩風「そんな…」

陽炎「一応拾える限りは拾っておいたけど… 細かい部品しかなかった。ごめん、もっと探せば…」

瑞鳳「よし決めた。ぶっ殺す」

全員「!?」

瑞鳳「私の可愛い娘のガンプラを壊して、挙句パーツを盗み出してプラゴミ扱いなんて良い度胸だよねまったく。

決めたよ。見つけ次第私が死より酷い目にあわせて地獄に落としてやる」

神通(こ、この殺気は…)

霞(体中に悪寒が…!?)

海風(こ、呼吸が苦しい…)

天津風(マジギレしてる…!)

朝雲(ヤバイヤバイヤバイヤバイ)

陽炎「え、えと… 今青葉が押収されたロビーの監視カメラの映像を警察から盗み出してくれてるからちょっと待ってて」

瑞鳳「…分かった。それまでは機体の調整に全力を尽くす」

陽炎(ヤバイ… この空気から早く脱したい!)

陽炎「皆、コンビニ行くわよ!」




海風「窒息で死ぬかと思いました」

霞「気持ちはわからなくもないけど…」

神通「お母様を本気で怒らせるなんて… 命知らずと言うか…」

朝雲「私達が怒られた時より凄い殺気だったわ…」

天津風「しかも殺す宣言まで…」

萩風「…」

陽炎「ほら、アンタもいつまでも落ち込んでんじゃ無いの。アイス買ってあげるから」

萩風「ごめんなさい、甘いの苦手なんです…」

陽炎「そ、そう…」

神通(相当ショックみたいです… いつもならアイスを全否定して暴れるのに…)
521 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/05/30(水) 03:18:49.02 ID:bL/2tksI0
陽炎「でも心配してくれて、怒ってくれる人が居るならまだ良いじゃない。頼れる人間も何も居ないのは悲惨だもの」

天津風「頼れる人間、か…」

陽炎「そうよ。そう言う人が居るだけまだ貴女は幸せ」

萩風「…」

陽炎「ショックが大きいのは分かる。だけどもっとしっかりなさい。犯人探しは私も手伝うし、姉さん達も全面的に協力するって」

朝雲「榛名さん達も?」

陽炎「前に私達がこっちの世界に来る前、姉さん達が巻き込まれたパーツハンター事件ってのがあったの。

誰かにガンプラを奪われて、壊されてきたのを姉さん達は見てきた。だからこそそう言う類の人間は許せないんだって。事件の当事者だった天城姉さんと明日こっちに来る予定の間宮さんも手伝うから」

海風「あれ、間宮さんって艦娘ですよね? どうしてあの人が…」

陽炎「あの人が転移してきたのは5年近く前よ。年齢的には天城姉さんと同年代だけど、こっち側に居た時間は飛龍さん達より長いの」

霞「だから満潮?だったかに伝説扱いされてたのね」

朝雲「でもパーツハンター事件って、そんな事もあったのね…」

陽炎「そうよ。ガンプラ学園の前身の旧ガンプラ塾、その元塾生が狙われ何人も被害に遭った。当時一線を退いてた姉さんも襲おうとして…

だけど天城姉さんにブチのめした。当時新造されたばっかの『スレイプニル』でね。で、逃げてもう一度襲い掛かったのを間宮さんが『スヴァジルファリ』でボコって…」

天津風「二度も襲撃されたの!?」

陽炎「三度よ。『改RX-0』は元塾生の機体の中でも一級品、だからこそ是が非でも手に入れたかったんでしょ。

そして三度目、しかも相手はメイジンの機体の『カテドラルガンダム』を預けられてたらしいの。でも姉さんが直接復帰して戦って、一方的に倒しちゃったんだってさ」

海風「『カテドラルガンダム』を…」

陽炎「だからこそ姉さん達、そして私達は許せないの。ガンプラバトルで壊れるのは分かるけど、それ以外で壊すのはファイターとして間違ってる。

例え相手がファイターじゃなくても、嫌がらせが目的だとしても、正々堂々と戦わないのは間違ってるから」

神通「そうですね… 萩風、いざとなれば…」

「あら、朝雲じゃない」

五月雨「姉さん? それに萩風さんも…」

「どうしたんだい、そんなに落ち込んで?」

神通「朝雲さん、この方達は?」

朝雲「私の家族です。 どうしたの、コンビニに」

「ホテルで飲む飲み物とかを買いにね。この子達はチームメンバー?」

陽炎「あ、私は違います。私は宮城です」

五月雨「宮城って… あ!」

陽炎「妹、ってことは… ああ、この子か。もう1機の『改RX-0』持ってるの」

五月雨「貴女があの機体を?」

陽炎「違うわよ。アレ作ったのは私の姉の榛名、って人」

「それよりどうしたんだい。萩風ちゃん、何かあったの?」

朝雲「それは、ちょっとね…」
1227.59 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)