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【咲SS】京太郎「京太郎アレコレ」【短編集】
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102 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 15:34:35.04 ID:4+dXZQHIo
「透華、良くやったぞ!」
目の前で父さんに褒められる透華。
「京太郎、お前も透華に負けないようにな」
俺も透華のことは凄い奴だと思っていた。
何をしてもあっという間に自分のものとしてしまう。
羨ましかったから、俺も頑張った。
頑張って頑張って、頑張っても追い付けない。
才能の差はどんなに頑張っても埋められない。
天才で努力家の透華に、俺が勝てる要素なんてなかった。
でも俺にはひとつだけ。
たったひとつだけ得意なことがあった。
麻雀だ。
父さんに言われて父さんの友人と打った俺は、初めて父さんに褒められるほどの大勝をした。
それが嬉しくて、俺は学校の勉強の傍ら麻雀にのめり込んで行った。
ある日透華が、麻雀を教えてほしいと言ってきた。
俺は得意になって、麻雀を教えた。
二人でやる麻雀だけど、これなら透華にも負けないだろうと思っていた。
「お兄様、それですわ! ロンです!」
その手は、平和のみ。
だがそれだけに留まらず、和了り続けた透華は俺を飛ばした。
次の日も……次の日も……。
俺がどんなに手を尽くしても、透華に勝てない。
二人だけの麻雀だから……と自分を納得させたが、それだけでは済まない程に透華は引くべき所で引き、当然のようにツモった。
俺は格の違いを思い知った。
心配そうに俺の額に触れる透華。
俺は…………。
〜〜〜〜〜〜
103 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 15:37:42.38 ID:4+dXZQHIo
「あぁ、透華はまた一番だ」
「凄いわね。誇らしいわ」
「いずれは透華に家を継がせ、京太郎には透華の補佐をしてもらおう。京太郎も優秀な子だ、二人なら龍門渕を今よりも強くしてくれるだろう」
「えぇ……でも京太郎は納得するかしら?」
「大丈夫だ、あいつも賢い」
「そうね。二人で頑張ってもらいましょう」
「あぁ」
………………
………………
………………
分かったよ、父さん
何をしてでも
勝てば良いんだろ?
〜〜〜〜〜〜
104 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 15:40:28.65 ID:4+dXZQHIo
「京太郎、話がある」
京太郎「なんでしょうか」
「……○○建築を潰したのはお前だな?」
京太郎「あぁ……はい、その通りですが。あそこはうちの仕事を掠め取ったりしてまして……邪魔でしたからね」
「確かに目に余る所もあったな。だが随分強引な手を使ったようだな」
京太郎「一般的では無いでしょうね」ハハ
「京太郎、ひとつ言っておく。お前のやり方は、いずれお前の身を滅ぼすことになる」
京太郎「…………」
「分からない訳ではないだろう。敵が増え」
京太郎「父さん」
京太郎「俺が……そんなことも考えていない無能だとでも思っているのですか?」
「……な」
京太郎「あぁ……父さん達にしてみれば俺は透華以下の無能でしたね、そういえば」
「京太郎!」
105 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 15:47:00.52 ID:4+dXZQHIo
京太郎「逆らう人間が増える? 放置するからそうなるんでしょう。そういう人間は、端から全て根絶やしにすれば良い。逆らう気も起きない程に」
「何を言っている!? そんなことがで」
京太郎「できますよ」
「……!?」
京太郎「……俺の邪魔をする人間は、二度と、立ち上がる気も起きないほど、徹底的に……潰します」ニコッ
「……お前は……」
京太郎「父さん、俺ごときに何故怯えているんですか? 今、父さんは何を考えているんですか? もし俺の考えている通りなら、それはやめた方が良い。どうか……父さんと敵対しないことを願っていますよ」スタスタ
「京太郎! 待ちなさい!」
京太郎「……俺は……徹底的にやりますよ? どちらかが死ぬまでね」スタスタ
「京太郎!」
ドンッ
透華「ッ! ……お兄……様……」
京太郎「………………」スタスタ
透華「待って、待ってください!」グッ
京太郎「触るな!!」バシッ
透華「きゃあ!」ドサッ
「透華! ……京太郎、なんてことを!」
京太郎「これ以上俺をイライラさせるなよ……目障りなんだよ、お前。一生あのバケモノと一緒に遊んでろ、俺の前に姿を見せるな」
透華「なっ――――――お待ちなさい!」タッ
ガシッ
106 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 15:49:25.75 ID:4+dXZQHIo
透華「私をどう言おうと構いません。ですが、衣の……私の友人への侮辱は許しませんわ!」
京太郎「なんだと?」
透華「取り消してくださいませ!」
京太郎「ハ……ハハハハハハ!!! お前、少し見ない間に随分と頭が悪くなったんだな? 真実で突かれて頭に血を上らせるような……いや、まるで野蛮人そのものじゃないか」
透華「な……!?」
京太郎「バケモノにバケモノと言って何が悪い!? あいつは疫病神だ。両親を殺したのがあいつなのは知っているだろう? 他者を支配する能力まで持っている……なぁ? バケモノそのものだろう?」
透華「違う! 衣にはなんの非もありませんわ!」
京太郎「あぁ、お前がそう思うんならそうなんだろうな。クックック……。一生そうしてろ、透華」
透華「…………勝負ですわ……」
京太郎「……あ?」
透華「どちらが正しいのか、麻雀で勝負ですわ!!」
京太郎「…………おいおい、俺の話を聞いていたか? お前が信じたいものを勝手に信じ」
透華「許せません!! 許せません許せません許せません許せません許せませんわぁぁ!!」
キィィィン!!!
京太郎「ぐ……!?」
透華「私が勝てばお兄様は非を認め、衣に謝罪してもらいます!! ついでに私の言うことも聞いてもらいます!!」
107 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 15:50:06.44 ID:4+dXZQHIo
京太郎「そんなことになんの意味が」
透華「お兄様が勝てば! ……私は、金輪際、お兄様の前に姿を見せません!!」
京太郎「…………ハッ。それは良いな。あぁ良いぜ、受けてやるよその勝負」
透華「ッ……。日時は明日の13時! 四人麻雀で決着をつけます! メンバーは私とお兄様、それに衣とハギヨシを入れますわ!」
京太郎「へぇ……」
透華「ハギヨシには公平に、あくまで自分が勝つように打ってもらいます! 私も、衣もですわ! 良いですわね!」
京太郎「あいつかハギヨシが勝った場合はどうするんだ?」
透華「その時の私とお兄様の順位で決着をつけますわ!」
京太郎「分かった。……楽しみにしてるぜ、透華」スタスタ
透華「……………………」
「……透華」
透華「お父様……お兄様の、あの瞳は……何故あんなにも……」
「すまない、私のせいだ。もっと早く気付いていれば……」
透華「……明日……決着をつけます。必ずお兄様に認めてもらいます!」
〜〜〜〜〜〜
108 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 17:10:00.57 ID:4+dXZQHIo
楽しそうだった。
悪意なんてなかった。
楽しそうにしている透華のことが、とても羨ましかった。
俺も透華と……遊びたかった。
でも何をしても勝てない。
長男だから勉強をして、家を継がないといけないから。
だから、勉強を頑張った。
いろんなものを犠牲にして、龍門渕を背負うのに相応しい人間になろうとした。
なのに……なのに。
あいつは、透華は、楽しそうに遊んでいるだけの妹は、俺の存在意義すらも奪っていった。
周りにはいつも友人がいる。
俺にはいない。
俺の周りにいるのは、龍門渕の名に集ってきた奴らだけ。
遊んでるだけのあいつが……俺から……何もかも……。
京太郎「そうだ、お前は俺から全てを奪った。憎い……憎くてたまんねぇんだ……」
透華「………………」
京太郎「だから、今度は俺が奪ってやるよ。居場所も友も名前も……なんなら命すらも」
衣「そんなもの……ただの逆恨みだ!! ツモ! 8000オール!!」
京太郎「それで結構。俺が今生きている理由は、透華への憎しみだけだ」
衣「…………お前は、狂っているぞ!!」
京太郎「ハハハ。どうしたバケモノ、そんなに焦るなよ。まだ俺の点棒は一万点ほど残ってるんだ、まだまだ遊べるぞ?」
衣「衣はバケモノなんかじゃない! 天江 衣だ!」
109 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 17:10:52.43 ID:4+dXZQHIo
透華「………………お兄様……私は、お兄様に認められたかっただけで……」
京太郎「良かったじゃないか! 今ここにいる俺以外の全員がお前を認めてくれているぞ! 龍門渕を背負って立つのは龍門渕 透華だってな!」パチパチ
一「ッ……いい加減に」
純「やめろ。場外のオレ達は口を挟まねぇ約束だろ」
一「…………くっ」
透華「私は龍門渕の名に執着などありません! お兄様の方が相応しいと思っています!」
京太郎「だからどうした? 俺も興味ない。ただお前という存在を認めたくないだけだ」
透華「なんで、なんで! なら私はどうすれば」
京太郎「――――死ねよ。透華」
………………
京太郎「安心しろ。お前が死ねば俺も一緒に死んでやる」
透華「――――――」
京太郎「俺はお前を一生認めねぇよ。死ぬまで認めねぇ。お前の不幸を願って願って願って願って願い倒してやる。お前が死ぬときが俺の死ぬときだ。出来るだけ惨めに、絶望的に死んでくれ。俺が味わってきた絶望を少しでも感じてくれたら最高だな。ハハ……ハハハハハハ!!!」
透華「………………」
京太郎「続けようか。こんなつまらない麻雀はさっさと終わらせたい」
110 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 17:11:19.43 ID:4+dXZQHIo
衣「………………お前は、間違っている。家族は大切にしないといけないんだ。死ぬと、寂しいんだぞ……?」
京太郎「あぁ、そうかもな。だけどさ……俺は! 透華を否定しないと立ってられねぇんだよ!! 今まで誰にも認められたことなんてなかって!! どんなに努力しても【無邪気な透華】に全部奪われた!! 皆は透華を褒めて俺は出涸らしかのような扱いだ!!」
透華「…………」
京太郎「いつまでたっても追い抜けねぇ! いつまでたっても俺は二番だ! だからよ……」
【修羅】
京太郎「お前だけは俺の命をかけて地獄へ叩き落とす……!」ゴッ
【治水】
透華「………………」ゴッ
【支配】
衣「たとえ京太郎でも、透華をいじめるなら……衣が許さないぞ!」ゴッ
111 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 17:14:25.66 ID:4+dXZQHIo
衣「(とてつもなく息苦しい……京太郎は、こんなに威圧感のある男だったか……? 衣の支配でも覆せない透華の治水ですらも包み込めない、圧倒的な激情……)」
京太郎「ツモ! 三色チャンタ南ドラドラで6000.3000だ!」
衣「(この勝負は透華と京太郎の順位勝負だ。オーラス……衣がツモっても二人の順位は変動しない……京太郎を狙い打ちできれば……だが、衣の支配がまるで及ばないぞ!)」
カチャ
衣「…………あ!」
透華「…………お兄様」スチャ
京太郎「なんだ?」
透華「麻雀は……楽しくありませんか?」
京太郎「……。まったくな」スチャ
透華「でも、昔の……私に麻雀を教えてくれたお兄様は、とても楽しそうに笑っていました」
京太郎「お前がぶち壊した俺はそうだったのかもしれないな」
透華「今は……とても辛そうです」スチャ
京太郎「…………一分一秒でも早くここから立ち去りたいんでね」
透華「どうしてそんなに辛そうに……牌を見ているのですか?」スチャ
京太郎「…………黙れ」
透華「お兄様は、今でも麻雀が好きなんでしょう? だから、今の……私への復讐の道具にしているのが嫌なんでしょう?」
京太郎「黙――――」スチャ
112 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 17:15:36.82 ID:4+dXZQHIo
透華「お兄様。……私に初めて教えてくれた役。あの時のお兄様は、本当に幸せそうに笑っていました。お兄様は麻雀を嫌いと言っていても……麻雀はまだお兄様を嫌っていますか?」
京太郎 一二三四五六EFGHH66 7
京太郎「………………ッ!」タンッ!
打7
透華「お兄様の落とした心、私が救いあげますわ。ロン」パタッ
透華 一二三四五六EFGHH56 7
透華「丁度1000点……逆転ですわね」
ガタッ!
京太郎「………………平和。俺も最初に覚えた役だ。平和という言葉が好きだった」
透華「えぇ……」
京太郎「皆が幸せでいられれば、と。その為に、俺は……いつか龍門渕の当主として頑張ろうと……思ってたよ」
透華「……知っています」
113 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 17:16:02.86 ID:4+dXZQHIo
京太郎「……勝負はお前の勝ちだ、透華。衣、俺はお前のことが嫌いだったが……八つ当りをして悪かったな」
衣「…………許してやる。衣は大人だからな」
京太郎「ありがとう。……あれからずっと勉強してきた。いつかお前を倒すためだ、透華。だが、また俺は追い付けなかった。……約束通り、俺は龍門渕から去ってやる」
透華「お兄様!」
京太郎「本当なら、これも予定調和だったんだがな。龍門渕からいなくなろうが、俺はお前を諦めるつもりはなかった。……けど……俺は今日、自分に負けた。俺が、平和から目を背けなければ、お前に勝ててただろうな」スチャ
8
京太郎「過去の自分を振りきれなかった。心の底からこれを楽しんでいた時の俺を……いや、今だって好きだ。そうだ、麻雀が好きだよ。……だが、それも今日で終わりだ。俺はこいつを、復讐の道具にした。…………透華、お前は幸せになるべき人間だ。足を引っ張って悪かったな、二度と顔を見せないから安心しろ」タッ、タッ
透華「お待ちなさい! 私が勝ったときの条件をお忘れですか!?」
京太郎「衣には謝っただろう?」
透華「いいえ! 私が勝ったとき、お兄様には私の言うことを聞いてもらうと言いました!」
京太郎「……そうだったか? なんだ、どうせ最期だ、なんでも聞いてやるよ」
透華「………………でしたら――――」
〜〜〜〜〜〜
114 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 17:16:29.79 ID:4+dXZQHIo
京太郎「…………おはようございます、お嬢様」
透華「ん……おはようございます……」
京太郎「お食事の準備が出来ています。……顔を洗わせていただきます」
……シュッ、シュッ
透華「えぇ……。すぐに起きますわね。このあとは衣の所でしょう?」
京太郎「………………」
透華「まだ不満でもありますの? なんでも、と言ったのは……京太郎ですわよ?」
京太郎「まさか休業して、透華が納得するまで執事として働け、なんて言われるとは思ってなかったんだよ……とんだ辱しめだ……」
透華「お兄様に足りないのは心のゆとりですわ。ハギヨシの元で仕事をすれば、いずれ身に付きますわよ!」
京太郎「ここの面子の前であれだけ悪役晒してこれだ……死んだ方がましだったな……」
透華「フフ。……お兄様、今はまだ私への不満があるかもしれません。ですがいつかまた……また、私のお兄様になってくれませんか?」
京太郎「……俺はこんな人間だが、これからもお前の兄貴だよ。それに、前ほどお前に対して思うところがあるわけでもない。元々俺だってただの逆恨みであることは理解していたんだ」
透華「お兄様は聡明ですものね」
京太郎「……もう少し時間がかかりそうだが……今までのこと、しっかりと謝罪する。ハギヨシに鍛えられてからな」
透華「……お待ちしていますわ」
京太郎「……おう。それでは失礼致します」
ガチャ、パタン
透華「……………いつまでも、待ってます」
「京太郎、お嬢様にため口とは何事ですか」
「やっぱり聞いてましたか。自然の流れに逆らうものではないと思いま…………ぐぉ!?」
「口答えはしない。口だけは達者ですからね」ニコ
「ハギヨシ、さん! 本気で怒ってませんか!?」ギギギ
「当たり前です。ですが、とりあえず性根をみっちり叩き直しますので観念してくださいね」
「いっ……分かってますよ……。……迷惑かけて悪かったな」
「……分かっていただけたなら、良かったです」
完
115 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 17:19:08.10 ID:4+dXZQHIo
次回のお題
【ヤンデレシリーズ第一弾・天江 衣】
当初の予定
京太郎と透華のいざこざ→途中でお互いを想う気持ちを知ってイチャイチャ→衣も混ざって修羅場
どうしてこうなった
あと投下途中で寝落ちしてごめん
ヤンデレシリーズは続くか分からないけどとりあえず第一弾と銘打っておきます
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/13(日) 17:24:07.91 ID:NoGtEcrGO
乙〜
諸悪の根元っぽい親父が何事もなくフェードアウトなのか〜
(ヤンデレの)衣は殺傷力無さそうだしほんわか出来るかな
117 :
◆kRykt0DYkU
[saga]:2017/08/13(日) 17:26:27.92 ID:4+dXZQHIo
>>116
その後京太郎の話を聞いた透華が親父をボコボコにやっつけました
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/13(日) 17:43:19.25 ID:NoGtEcrGO
ならいいやw
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/08/13(日) 17:59:24.05 ID:FLZ//ca8O
SS初心者の様な稚拙な文章だなぁ〜
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/13(日) 22:17:57.16 ID:14hwB9eBo
乙です
とても面白かった
ヤンデレ衣楽しみ
121 :
◆kRykt0DYkU
[sage]:2017/09/06(水) 16:26:12.60 ID:S1VRbe8Fo
衣「京太郎ー!」テテテ
ボフッ
京太郎「うぉっと……相変わらず元気だな衣」
衣「衣はいつも元気だぞ! 京太郎に会えなくて寂しかったけど、大丈夫だ!」
京太郎「俺も衣に会いたかったぞ」ナデナデ
久しぶりの京太郎との抱擁に衣の胸が熱くなる。
大人しくおしとやかにしよう……そう決意した昨日のことなど忘れて京太郎に飛び付いてしまったが、頭を撫でられたからもうどうでも良かった。
衣「京太郎、今回は随分と長かったな」
京太郎「少し言語的な問題で四苦八苦してな」ハハハ
透華「あ……! お帰りなさい、お兄様!」
京太郎「あぁ、ただいま」
衣「…………」
京太郎は衣と離れ、今度はトーカと抱擁した。
途端に温かさが消え失せ、冷たい感情が浮かび上がってくる。
122 :
◆kRykt0DYkU
[sage]:2017/09/06(水) 16:26:43.29 ID:S1VRbe8Fo
京太郎はトーカの兄だ。
数年前、衣がここに引き取られてきた時からとても良くしてくれた。
トーカと三人でよく遊んでいた。
二人はとても仲が良いのは知っている、知っているが……。
透華「さ、こんなところではなんですから中に入りましょう。お土産話も沢山聞きたいですわ!」ギュ
京太郎「そうだな」
透華が京太郎の手を握るのを見て、カーっと頭に血が上った。
京太郎「ほら、衣も行くぞ?」
京太郎が衣に手を伸ばしてくれた。
それだけですぐに黒い感情は霧散してしまう。
衣「……うん!」
京太郎の手は、いつも温かい。
123 :
◆kRykt0DYkU
[sage]:2017/09/06(水) 16:27:17.81 ID:S1VRbe8Fo
京太郎は最近、仕事であちこちへと行っているらしい。
まだ龍門渕にいた時も勉学に追われていたが、それでも暇なときは足を運んでくれた。
だが京太郎が卒業し、仕事をするようになってからはそうもいかなくなってしまった。
それでもたまにはこうして帰ってきてくれるが……。
衣「(……衣は物足りないぞ)」
周りには皆がいてくれるが、京太郎の代わりになんてなれない。
いつ来てくれるかも分からない京太郎に、衣は大いに不満だった。
たまに帰っても京太郎は衣だけのものではない。
龍門渕の平和王子として全国大会で準優勝をした京太郎は、今もプロとして活躍している。
だから帰ってきた時はそちらの仕事もしている。
テレビにイベントにと大忙しだ。
衣と京太郎が会える時間は少ししか無かった。
本当に少しだ。
124 :
◆kRykt0DYkU
[sage]:2017/09/06(水) 16:27:56.09 ID:S1VRbe8Fo
コンコン
衣「京太郎」
京太郎「ん……衣か。どうした?」
衣「また仕事をしているのだな。たまに休まないと倒れてしまうぞ?」
京太郎「はは、明日麻雀の方の仕事があるからな。二足のわらじを選んだ以上、どちらの手も抜けないさ」
衣「……なんで京太郎はそんなに頑張るんだ?」
京太郎「え?」
衣「毎日毎日仕事ばかりだ。休みなんて年に数日しかない。……どちらかを辞めれば、もっと時間が取れるだろう」
京太郎「まさしくその通りだな。透華と萩原にも散々言われたよ、死ぬから止めろってな。あの萩原がマジな顔になって一時間説教された時は、何事かと驚いたなぁ」
衣「なら何故……」
京太郎「何故、か。うーん……なぁ衣。俺さ、一時期透華に嫉妬してた時期があったんだ」
衣「嫉妬? 京太郎が?」
京太郎「あぁ。あいつは昔からなんでも出きるやつだったからさ。あいつの才能が羨ましくて仕方なかった。でも一ヶ月くらいで目ぇ覚まして、そんときに思ったんだ」
京太郎「……こんな情けねぇ兄貴じゃ、恥ずかしくて出歩けないってな。お前たちに尊敬してもらえる……そんな兄貴を目指そうって、誓ったんだ」
衣「…………京太郎は馬鹿だ」
京太郎「知ってるよ。でもそれで良いんだ」
衣「馬鹿」
京太郎「あぁ」
京太郎は馬鹿だ。
そんなことよりも……。
衣たちは。
…………衣は……京太郎と一緒に居られる方がもっと嬉しいのに。
125 :
◆kRykt0DYkU
[sage]:2017/09/06(水) 16:28:22.56 ID:S1VRbe8Fo
だから……。
京太郎「衣……なんで、こんな……」
衣「…………京太郎が悪いんだ」
京太郎「……俺が?」
衣「……京太郎が……悪い」
京太郎「…………頭が……何を飲ませ……?」
衣「京太郎が衣から離れていくのが悪い。衣はそんなこと望んでいないのに」
京太郎「衣…………頼むから、悪ふざけはやめろ……」
衣「…………京太郎」
チュッ
京太郎「ッ……(衣、目が……)」
衣「寂しいんだ……京太郎がいないのが……衣は、京太郎といたい……」ギュッ
京太郎「………………衣。これが悪ふざけじゃないことは、よくわかった……だからこそ、尚更やめろ……。こんなことをして、どうなるのか分かっているのか……?」
衣「……覚悟している。己がどうなろうと……知ったことじゃない」
京太郎「…………そうか……分かった……なら……」
京太郎は、奥歯を噛み締めた。
衣「え―――」
126 :
◆kRykt0DYkU
[sage]:2017/09/06(水) 16:28:50.83 ID:S1VRbe8Fo
その瞬間、衣は京太郎に押し倒されていた。
天地がいきなりひっくり返ったような錯覚を受けた。
京太郎「悪い子だな、衣」
衣「きょ……」
京太郎「眠り薬でも盛っていたのか? こういう事態には、常に備えてあるんだ。龍門渕を敵視している存在は多いからな」
京太郎「もっとも……まさか身内を相手に使うことになるとは思っていなかったが」
ガシッ
京太郎に腕を押さえつけられる。
衣は京太郎を見ていることしかできない。
恐い……。
京太郎「…………寂しい思いをさせたのは悪かった。考えなしだったのは認める。だが……悪い子にはお仕置きが必要だ。分かるな?」
衣「…………う、ん」
京太郎「衣、お前は俺に何をしようとしてたんだ?」
衣「…………京太郎を、衣の物に……」
京太郎「どうやって?」
衣「京太郎と……睦み合って……」
京太郎「衣は……俺のことが、好きなんだな」
衣「…………」コクッ
京太郎「………………ふぅ……衣」
衣「……な、なんだ……?」
京太郎「少し痛いぞ」
衣「え―――」
127 :
◆kRykt0DYkU
[sage]:2017/09/06(水) 16:29:17.59 ID:S1VRbe8Fo
透華「お兄様、もう行かれるのですか……」
京太郎「今回はすぐに帰ってこれそうだから、そんな顔をするな」なでなで
透華「……ん……分かりました……」
京太郎「それじゃあ行ってくるよ」
衣「…………」もじもじ
京太郎「衣も元気でな」スタスタスタ
衣「……あぁ」もじもじ
透華「…………? どうかしましたの、衣?」
衣「な、なんでもないぞ!」
ハギヨシ「…………あっ」
透華「え?」
ハギヨシ「……少し用事があるので、京太郎様の所に言って参ります。すぐに戻ってきますので」シャッ
透華「えぇ。……? なにか納得が行きませんわね……」
完
128 :
◆kRykt0DYkU
[sage]:2017/09/06(水) 16:30:09.24 ID:S1VRbe8Fo
次回のお題【お姉ちゃんはダルがってる】
長く時間かかった上にこんな書き方になってごめんなさい
衣の喋り方を模倣しようとリアル参考書買ってきたりして勉強してたんですけど、投げました。無理です
これ以上時間開くのもあれなのでパパッと書きました
次回はもう少し早く来れると思います
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/06(水) 18:09:47.51 ID:/MwjMb+Co
乙〜
前回の龍門渕京太郎のIFルートか……うん、ほんわか出来た
催眠薬とかはきっとハギヨシが手配したに違いない(邪推)
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/10(日) 19:00:53.06 ID:mUvfQObeo
乙です
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/11(日) 18:18:23.13 ID:4tRVD3nkO
kitai
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/09/02(日) 01:50:50.45 ID:pzi5vdNyo
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