渋谷凛「GANTZ?」 その3

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:33:33.84 ID:XqdRLcCj0
人一人が入るだろうカプセルが大量に並べられた部屋。

その部屋で一つのカプセルがプシュウという空気音を吐き出し開放され、液体に満たされた中から一人の少年が這い出してきた。

「がはッ!! ごほッ!!」

少年は口に満たされた液体を吐き出して息を大きく吸って辺りを見渡していた。

その顔は最初は困惑した感情が浮かんでいたが、すぐに落ち着きを取り戻してカプセルから出て部屋の中心にある機械を操作し始める。

「まッたく……信じられんな。この私を殺そうとするなど……」

機械を操作しながら少年は先ほどまでの記憶を思い出していた。

そう、少年はハインツのクローン体であり、ハインツが凛に殺された時点での記憶を保存されてこのクローン体に記憶の転写をされていたのだった。

ハインツ「システム停止の際、私に対する自動防衛プログラムも停止するが…………フッ、予想外もいいところだ。いや、今日はこれほどまでに私の予想を覆すことが起きてくれた。これは非常に喜ばしいことだな」

ハインツ「しかし……この私に明確な敵意を見せ、あろうことか私の命を一つ奪ッていッた……これは万死に値する行為だが、彼女は私にここ数年は味わッていなかッた高揚感というものを与えてくれた……」

ハインツ「……フッ、許そうではないか。処罰など如何様にもできる、彼女は今の所、私の課した試練を乗り越え、さらには私の精神を高ぶらせてくれるといッた功績を成している。素晴らしいことではないか」

あくまで余裕の表情でひとりごちていたハインツだったが、機械を操作していた指が止まり怪訝な表情を浮かべた。

それは機械のモニターに表示された文字。

『ハインツ・ベルンシュタイン……本ユーザーは全ての権限を停止されています』

ハインツ「…………?」

ハインツはモニターを見ながら眉をひそめながらそれを見ていた。

すると部屋の機械のモニターが切り替わり、非常に愉快に笑う西が立体映像で表示された。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:34:12.01 ID:XqdRLcCj0
西「よォ」

ハインツ「……西、丈一郎君かね?」

西「おォ、本当にテメー若返ッてンだな。誰かわかんねーだろ? ジジィの姿で生き返れよな」

ハインツ「……どういうことだ? 君に渡したマスターキーではこの部屋にアクセスする権限は無いはずだが……」

西「あァ? まだ気が付いてねーのか?」

ハインツ「どういうことかね?」

西「ハッハッハッ! テメー本当にカスだな! いいぜ、教えてやンよ!」

画像の西はハインツを心底馬鹿にした顔で、

西「システムの管理権限を俺が全部掌握したんだよ! ちなみにテメーにはもう何もできねー様にしてやッたからな、アクセスをしようとしても無駄だぜ?」

ハインツ「……何を馬鹿なことを」

西「バカはテメーだ。いつまで余裕ぶッこいてンだ? それとも現実が見えてねーのか?」

ハインツ「…………ユーザー認証、ハインツ・ベルンシュタイン。システムアクセス」

ハインツが音声入力によりシステムにアクセスをしようとするが、機械から音声が返ってくる。

『アクセスを許可できません』

ハインツ「!?」

その音声を聞いて少しずつ顔色が変わるハインツ。

西「無駄無駄。メインシステムの管理権限を書き換えたンだよ。もうどーすることもできねーぞ?」

ハインツ「馬鹿な……」

西「おォ? よーやく状況飲み込めて来たのか?」

ハインツは今起きていることを俄かに信じられないでいた。

自分以外の人間が、自分の作り出したシステムの管理権限を奪い取ったなどという事が。

ハインツ「できるわけがない……ましてや君のような子供があのプログラムを書き換えることなど……」

西「あァ? ナメてンのか? 俺はこの1ヶ月、誰よりもガンツのプログラムを解析してたンだ。特にこの1週間はアイツのおかげで寝る間も惜しんで解析しつづけた。ガンツのプログラムに関しては隅の隅まで熟知してンだよ」

ハインツ「ありえん……そんな事は……」

西「つーか、テメーとことん間抜けだよな? ガンツのプログラムもこのメインシステムのプログラムも殆ど同じじゃねーか。あんな場所に俺達を連れてきて、何? 乗ッ取ッてもらいたかッたのかよ?」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:35:20.11 ID:XqdRLcCj0
西はそう言うが、実際にはこうやって乗っ取れる可能性は限りなく0だった。

システムが起動している間はハインツに対する敵対行動などは全てシステムが自動的に排除し、メインシステムに近づくことすらも出来ない。

今回のようにイレギュラーが起こり、ハインツが管理権限を開放して、さらにはシステムが一時的に停止したからこそできたのであった。

それらの偶然の産物と、ハインツ自身の油断と慢心が、ハインツが全ての力を失ってしまう事態に繋がってしまった。

しかし、このような状況に陥ってもハインツは愉快そうに笑い始めた。

ハインツ「は、ハハハ! 素晴らしい! まさか私の力が奪われてしまうとは!」

西「……あン? テメー、何笑ッてンだ?」

ハインツ「笑うとも! ここまで想定外の事態などこの十数年起きなかッた! 実に久しぶりに感じているのだよ! 本当に楽しいというそういう感覚を!」

西「…………あー、そうかよ。テメー、マジで変なヤツなんだな」

ハインツ「実に楽しい! やはり人生というものは予想が付かない事態というものがある程度は必要だな!」

興奮気味のハインツに、ややげんなりした西が言った。

西「まァ、テメーの変人具合はどーでもいーけど……もーそろそろテメー死ぬぞ?」

ハインツ「む? 何を言ッているのかな? 私が死ぬ?」

西「おう」

ハインツ「ハハハハハ! これは面白い! 私は不老不死だと説明しただろう?」

西「あァ、聞いた。でも、俺、テメーのデーターを消去しちまったんだよな」

ハインツ「……データー?」

西「おう。生物情報の記録。テメーが不老不死の技術とか言ッてた記録データーを消しちまッたンだよ」

ハインツ「…………何?」

西「ついでに言うと、テメーが色んな場所に隠してたクローンは今全部生命維持装置を停止して全部ぶッ殺してやッたぞ」

ハインツがいる部屋のカプセルからけたたましいアラート音が発生して、全てのカプセルが開放されて中の液体が固まっていった。

それぞれのカプセルに取り付けられていたモニターに表示されていた心電図のようなものは全て停止していった。

それを見てハインツは茫然自失となり、すぐに我に帰り焦った声で、

ハインツ「な、何をしているのだ!?」

西「これでテメーのライフは残り1。テメーは次死んだらゲームオーバーだ」

ハインツ「き、君は何をしているのか分かッているのか!?」

西「おう。しッかりはッきり自分のしてる事を理解してンぜ?」

ハインツ「ならば早く元に戻すのだ!! クローン自体はすぐに作ることが出来る!! 君が私のデーターを消したというのならば早く再登録を……」

西「え? やだし」

ハインツ「!?」

西「つーか時間切れ。こえー女がやッて来たぞ」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:36:15.40 ID:XqdRLcCj0
キィン! キィン!!

部屋全体に金属音が2回鳴り響いた。

その音源は部屋に存在する一つの扉から発せられた。

ハインツは音のした扉を見ると、扉に違和感があった。

扉に線が十時に入っている。

すぐにその違和感が何であったのかがハインツは理解した。

扉がゆっくりと4分割になり崩れ、扉の向こうにガンツソードを持った凛がいたからだ。

凛「……」

ハインツ「し、渋谷、凛君……」

西「おう、渋谷ー。こいつがあのカスジジィだぞ。他のクローンは俺が全部処分しといたからこいつをぶッ殺せばOKだ」

凛「……」

凛がガンツソードを伸ばして一歩踏み出した。

それを見てハインツは一歩後ずさる。

すでにハインツの顔からは余裕は消えうせ、近づいてくる凛から発せられる異様な雰囲気に呑まれていた。

凛が発するのは純粋な殺気。

その殺気に中てられてハインツはある一つの感情を感じていた。

不老不死の技術を作り出し、自分の思い通りにならないことなど無くなった時点で消えうせた感情。

ハインツは目の前の凛に恐怖していた。

同時、ハインツは凛に背を向け逃走を開始した。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:36:46.69 ID:XqdRLcCj0
凛「……」

ハインツが向かう先は凛が入ってきた入り口とは別の扉。

わき目も振らず全力でその扉まで走り、勢い余って扉に到達する寸前で転びその勢いで扉に背中をうちつけ、ハインツは今まで自身の頭が存在していた場所に一本の黒い物体が存在していることに気が付いた。

それは凛の手に握られたガンツソードの刀身。

伸ばされたガンツソードはハインツを傷つけることなく扉に突き刺さっていた。

刀身が突き刺さっていたのもつかの間、凛は伸ばしていたガンツソードを縮め、柄を両手で持ち、ハインツに狙いを定めて再度伸ばそうと構えを取った。

それを目の当たりにしたハインツは、

ハインツ「ヒッ、ヒァァァァアアアアアア!?」

叫びをあげ開いた扉の先を駆け抜けていった。

それを見た凛は眉間に皺を寄せて舌打ちをしてハインツが逃げた先に足を進め始めた。

凛「………………ちっ」

西「おいおい、逃げられてんじゃねーか。何やッてんだよ?」

凛「…………すぐに始末するから黙ってて」

西「おー、こえー。あのジジィも気の毒になー」

凛「……」

凛は西の軽口を無視して足を速めてハインツを追う。

それに伴って西も立体映像の姿のまま凛の後に続いて歩き出した。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:37:46.50 ID:XqdRLcCj0
ハインツは走っていた。

ハインツ「ハァッ! ハァッ!!」

ハインツの今の肉体は若い少年の肉体、その走る速度もかなり速いものでハインツは白い通路を駆け抜けてとある部屋の扉の前にたどり着いていた。

その扉を開くと、その先には数ブロックに分かれた研究区画が存在し、大勢の人間が様々な研究を行なっていた。

そのどれもが人体実験。

ある場所では白衣の研究者が生きている人間を意識のある状態で解剖している。

またある場所では、人間と見たことの無い怪物、何らかの星人を外科手術により物理的に融合させられており、その融合体のデーターがとられていた。

またある場所では透明な部屋の中で少女が化け物によって犯されていた、研究員たちはその様子を見てデーターを取りつつ、データーが確認でき次第、化け物も少女も研究員が押した何かのスイッチによって爆散していた。

他のあらゆる場所でも非常に非人道的な研究が繰り広げられており、常人が見たらその場で嘔吐し続けるようなグロテスクな光景が広がっていたが、そこにいる研究員たちはそれが日常とでも言わんばかりの何食わない顔で実験を続けていた。

そんな研究員たちの中、ハインツに気が付いた研究員たちがいた。

「ハインツ様ではないですか。そのお姿は……クローン体への移動はまだ先ではなかッたのでしょうか?」

ハインツ「ハァッ!! ハァッ!!」

「ハインツ様? 一体どうなされましたか?」

息も絶え絶えで言葉も出てこないハインツに疑問を抱く研究員たち。

この場にいる研究員たちは皆ハインツのこのクローン体のことを知っていた。

それほどまで情報を知る権利を与えられた優秀な人間たち。

彼らはハインツの浮かべる恐怖の表情と、ハインツが自分達の知らないところでクローン体に転生しているという事から、何か異常事態が発生していることに瞬時に気が付く。

「……緊急事態ということでしょうか?」

ハインツ「そッ、そうだッ!!」

「畏まりました……おい! お前達! そのようなゴミは捨て置け! 緊急事態が発生した、各部署に伝え警備班を呼べ!」

「了解しました。おいッ、そのゴミを捨てて急ぐぞッ!」

「はッ!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:39:15.76 ID:XqdRLcCj0
ハインツに一番最初に声をかけた研究員はこの中でも一番地位が高い研究員だったのか他の研究員たちに指示をし行動を取り始めた。

研究員たちは指示に従い、ゴミと呼ばれた何かを投げ捨てる。

その何かは人の死体であった。

頭部を開放されてその内部にあった脳を抜き取られて死亡した死体。

その死体が二つ。

生前の可愛らしい顔が見る影も無く無残で苦しみぬいた表情をした……卯月と未央の死体。

先ほど脳の摘出が終わった卯月と未央の死体を処理する為に運んでいた研究員たちは、その二つの死体をあろうことかゴミと言い、死体を投げ捨て、さらに研究員は死体を踏みつけて行動を開始しようとした。

そこで気が付いた。

ハインツが入ってきた扉に白いワンピースを着た黒髪の美しい少女が立っていることを。

卯月と未央の死体を足蹴にしたまま研究員たちはその少女、凛を見続ける。

一体あの少女は何者? 実験体が逃げ出した? それともまさかこの緊急事態は……。

その思考にたどり着く前に、卯月と未央の死体を踏みつけていた研究員は、額をガンツソードの切っ先に貫かれて思考を分断され死んだ。

瞬時に貫かれた研究員二名はその場で崩れ落ちて卯月と未央の死体に覆いかぶさった。

その研究員の死体を頭を下げたまま近づいた凛は全力で蹴り飛ばし卯月と未央の死体を優しく抱き起こす。

凛「…………うづ…………みお…………やだ…………なん…………こんな…………」

凛は二人の死体を抱きしめながら嗚咽を上げ始める。

凛「…………ひどい…………ひどすぎるよ…………こんなこと…………」

身体を振るわせながら、その頬に涙が伝い続ける。

凛「…………怖かったよね…………苦しかったよね…………」

凛が卯月と未央の身体を見て、二人が想像を絶するほどの苦しみを与えられたという事を知ってしまった。

二人の身体は傷のないところを探すほうが難しいほどの状態だったからだ。

凛「…………あんまりだよ…………こんなことってないよ…………二人が何をしたっていうの…………」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:40:50.63 ID:XqdRLcCj0
凛が二人の死体を抱きしめながら涙を流し全身を震わせていると、乾いた発砲音が凛の耳に届いた。

その音を生み出したのは、先ほど他の研究員に指示をしていた研究員。

彼は懐から拳銃を取り出し凛に発砲した。

研究員はすでに凛がこの異常事態を引き起こした人間だという事に気付いていた。

それゆえに、凛を殺そうと発砲した。

しかし、研究員が発砲した弾丸は、凛が抱きしめていた未央の半分残っていた顔面に吸い込まれて凛に届くことは無かった。

それを凛は見ていた。

未央の顔に弾丸が吸い込まれて、苦しみぬいた表情の未央が、弾丸を打ち込まれたことによりさらに正視に耐えないほどの悲惨な表情へと変化したことにより、凛の中で何かがはじけ飛んだ。

「外したか……次は外さな…………」

銃を構えた研究員が再度構えた時、研究員は金縛りにあったかのような感覚に襲われ動けなくなってしまった。

目の前の凛に見られている。

限界まで目を見開いて自分を凝視する凛。

その凛の瞳の奥から溢れ出す殺意と怨嗟の重圧に研究員は飲み込まれ硬直する。

凛は幾度の殺し合いを経てすでにその身体能力や精神面は常人のそれを逸脱していた。

そして、凛が放つ殺気というものも通常のそれとは違い、圧倒的な圧力を帯びており、常人であればその場で意識を失ってしまうほどの殺気であった。

その殺気に当てられいまだかつて無いほどの危険が自身に迫っていると感じた研究員は、凛を正面に見据えたまま直立不動の状態となり動かなくなる。

動かずに硬直することが自分の寿命が1秒でも長らえると判断してしまったから。

そうして研究員は金縛りにあったまま凛を見続けた。

近づいてくる凛に発砲することも出来ずに見続けた。

そして、自分の腹部に小さく伸ばされたガンツソードが刺し込まれても動けなかった。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:41:58.43 ID:XqdRLcCj0
凛「何、やってんの?」

凛は無防備な研究員の腹部を刺して問いかけた。

研究員は何も答えない。

凛「アンタは今何をやったのって聞いてるの」

再び凛は研究員の腹部を刺して問いかける。

それでも研究員は恐怖の表情を浮かべたまま何も答えない。

凛「アンタ、今未央を撃ったよね」

凛は研究員を指し続け、その返り血を浴びて全身が赤く染まっていった。

それでも研究員は何も答えずに動かない。

凛「ふざけてんの? ふざけてるよね? ふざけないでよね」

研究員は直立不動のまま凛にされるがままになっていた。

こんな状況になっているにも関わらず、少しでも生きながらえる道がただ立ち続ける行為だと自身の肉体が、脳が判断して立ち尽くしていた。

凛「聞いてるの? 黙ってないで答えてよ。アンタは今何をやったのか。何をやってしまったのか答えてよ。答えてくれたら殺してあげるからさ。ねえ、答えてよ、早く、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて」

凛が答えてと問いかけながら研究員を滅多刺しにして、数十回凛が問いかけたところで研究員は直立不動のまま死亡した。

凛は研究員が死んだことに気が付くと、何も答えずに死んだ研究員を忌々しげに見て、研究員の手から拳銃をもぎ取ると研究員の顔に弾丸を撃ち込んで、崩れ落ちる研究員に見向きもせずに拳銃を投げ捨てた。

凛は再び卯月と未央の死体がある場所に戻り、

凛「未央……卯月……ゴメン、ちょっとだけ待ってて……」

二人の苦痛に歪んだ顔をそっと手で触れてその表情を整える。

凛「二人をこんな目に会わせたヤツ等を、全員殺してくるから」

凛によって整えられた二人の表情は少しだけ悲しそうな表情になっていた。

凛「それから二人共再生してあげるからね……ちょっとだけ待っててね……」

二人の死体をそっと床に横たわらせて凛は研究区画を見渡して立ち上がる。

凛「西、二人を見てて。二人にもう誰も近寄らせないで」

西「お、おう。い、いや俺も行く」

凛「……」

西「こ、こいつらは俺の本体がいる場所に転送しておく。だ、だから俺も一緒に行かせてくれ」

凛「……いいよ」

西が卯月と未央の死体を転送するまで見届けた凛は、一緒に来ると言う西と共に行動を開始する。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:43:04.87 ID:XqdRLcCj0
ハインツ「ハァッ、ヒィッ、ハァァッ」

ハインツは芋虫のように這い蹲って逃げていた。

ハインツ「ヒィッ、ヒィィッ……」

その顔には余裕というものは一切無く、ただただこの場から離れるという事だけが頭をしめていた。

そのハインツの足に激痛が走った。

ハインツ「ッグアァァァァァ!?」

反射的に足を見ると、足にはガンツソードが深々と刺さっていた。

そして、そのガンツソードと共に目に入ったのは、

白いワンピースを返り血で真っ赤に染め上げた無表情の凛の姿。

ハインツ「ヒッ、ヒァァァァァァァアアアア!?」

凛「何逃げようとしてるの?」

ハインツ「H.H.H…Hör auf…Hilf mir!!」

凛「何言ってんの? はっきり日本語で喋って」

ハインツ「た、た、たたすけ、こ、ころころさないないないないで……」

凛「はっきり喋れって言ったよね」

凛はハインツのもう片方の足にもガンツソードを突き刺しハインツの両足は床に固定されてしまった・

ハインツ「ギャアアアアアアアアァァァァァァ!!」

凛「うるさい」

凛はハインツに近づくと、髪を鷲づかみにしてハインツの顔を覗き込み、

凛「ねぇ、未央と卯月をあんな目にあわせた奴等はどこ? まだいるんでしょ?」

ハインツ「ァァァァァァアアアアアアアッ!」

凛「それ以上耳障りな叫びをあげたら殺す」

ハインツ「ヒゥッ」

凛「さっきの質問に答えて。答えなかったら殺すから」

ハインツは心底脅えた声色で凛の質問に答えていった。

ハインツが言うには卯月と未央の実験に携わったのは残り3名。

全てこの区画にいる研究員だという。

それを確認した凛は、ガンツソードを1本転送しハインツの前に立ちガンツソードを構えた。

ハインツ「や、やめやめやめれれれれ」

凛「死ね」

ハインツは凛によって身体を一刀両断されて死んだ。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:44:22.05 ID:XqdRLcCj0
その様子を黙ってみていた西は、

西「も、もう少し生かしておいてもよかッたんじゃねーのか?」

凛「何故?」

西「い、いや、お前そいつに滅茶苦茶ムカついてるみてーだし、もッと苦しませて殺す方法とか考えてよ……」

西がそう言うと、凛は振り向いて西を見ると、

凛「…………あぁ、ああ、そうだよね、そうじゃない」

まさに天啓を受けたような表情でブツブツと呟きだした。

凛「何でさぁ……私はさぁ……このクズに未央と卯月が与えられた苦しみの数十分の数百分の数千分の1でも味あわせてから殺さなかったの?」

凛はハインツの死体に近づいてその死体を蹴り始める。

凛「二人共、あんなにっ、酷い目にあってっっ、殺されたっていうのにっっっ!!」

何度も何度も死体を蹴り飛ばし、それだけでは足りないのかガンツソードで死体を刺しはじめ、

凛「何勝手に死んでんの!? もっと苦しんで死なないとおかしいでしょ!? 私の許可無く死ぬなんて何なの!? ねぇ、聞いてんの!?」

理不尽な罵声をハインツの死体に浴びせ続け、その死体がグチャグチャになって原型がなくなったところでようやく凛は止まった。

凛「……あぁ、もう、頭がおかしくなりそう……」

西「は、ははッ、い、いいじゃン、お前、やッぱ本性隠さねーほうがいいッて!」

凛「……」

凛は西に言葉を返さずに頭を押えながらふらふらと歩き始めた。

西「お、おいッ、どこ行くんだよ!?」

凛「……まだ殺さないといけないクズがいる」

西「! いいねェ!! らしくなッて来たじゃねーか! ドンドンいこーぜ!」

凛「……さっきあのクズが言った名前のクズがどこにいるか分かる?」

西「おう、すぐ調べる……見つけた、あの先の実験区画に全員いるみてーだぜ!」

凛「……ありがと」

西「おぉッ!」

凛は暗い視線を西が指差す実験区画の扉に向けて歩みを進める。

共に歩く西は、凛を見続けて年相応の少年のように輝く視線を凛に向け続けていた。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:45:38.21 ID:XqdRLcCj0
「次の実験を開始する。準備を始めてくれ」

一つの区画でとある実験が始まろうとしていた。

この区画の研究は、人間の未知なる力を研究する区画。

超人的な身体能力や様々な特殊能力、そういった力を非人道的なやり方で研究が行なわれていたのだった。

そして、今回行なわれようとしている実験の被験者は、

すでに頭部を開放されて虚ろな表情をしている坂田と、

肉体というものが無く、首だけになっているが、その首がホルマリン漬けのように液体に浸されている桜井の姿。

二人共生きているとは思えないような姿だったが、二人に取り付けられた脳波を測定する機械が二人がまだ生きていることを示していた。

そうして、何らかの実験が始まる寸前、実験区画の扉が開き血に濡れた少女と非常に愉快に笑う少年が現れた。

実験区画にいる十数人の研究員たちは一斉に同じ方向に顔を向けた。

同時に全員が疑問を浮かべる。

「何だ?」

「誰だあれは?」

「いや、まて……見たことがあるぞ」

「あれは確か……あびゃッ!?」

「え?」

血濡れの少女、凛が実験区画を見て、その被験者になっている二人を悲痛な面持ちで見た後、一番近くにいた研究員の頭部を輪切りにして殺害した。

それを呆然と見る他の研究員たち。

「え? え? な、何が起きたんだ?」

「お、おい、おま……がぽッ!?」

「う、あ、嘘だろ…………げはッ!!」

凛はガンツソードを巧みに操り、区画内にいる研究員たちを次々と殺し始めた。

当初、全員何が起きているかも理解できていなかった研究員たちだったが、やがて現状を理解したのかパニックになって逃げ惑い始めた。

「うッ、うわぁぁぁぁぁぁ、に、逃げッ、ごぽッ!?」

「た、助けてく…………うげッ」

凛は逃げようと背を向けた研究員たちの後頭部をガンツソードで突き、ものの数分で実験区画にいた研究員を全て殺しつくしてしまった。

西「おー、あッという間に全員ぶッ殺したなァ……でもいいの? またお前サクッと一瞬で殺しちゃッたけどさ?」

凛「……」

凛は西の問いかけに答えずに、血の海と化した実験区画を進み、実験の対象となっていた坂田と桜井の元にたどり着き、その悲惨な姿を見て唇を噛み締める
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:46:14.67 ID:XqdRLcCj0
凛「……何?……何なの?……こんなこと……狂ってるよ……どうしてこんなことをできるの……」

西「……あぁ、こりゃひでーな。コイツら全員レベルの高けー変態共だわ。ッて、この二人はガンツの部屋にいた二人じゃン」

凛と西が坂田と桜井を見ていると、坂田の口がかすかに動いた。

凛「っ!?」

西「お?」

桜井の目も薄っすらと開いて、坂田と同じように口をかすかに動かす。

口の動かし方で、凛と西は二人共同じ言葉を発したことに気がつく。

その言葉は、

『殺してくれ』

だった。

凛「………………」

西「ま、こんな状態になッちまッたらそりゃそーだわな……」

凛は目を閉じてしばらく考え込み、

凛「……西、苦しまないように死なせてあげる事はできない?」

西「これ以上苦しむことなんてねーんじゃねーの? 殺すならさッさと殺してやッたほうがいいんじゃね?」

凛「……」

凛は頭をたれて坂田と桜井の顔を見ないようにガンツソードを伸ばし始め、

二人同時にその額にガンツソードを突き入れて殺した。

同時に、凛は持っていたガンツソードを手放してその場に崩れ落ち、頭を抱えて蹲った。

凛「……うぅぅ……」

西「お、おい?」

凛「……何なの? これは一体何なの?」

西「どーしたんだ、おい?」

明らかに様子のおかしい凛に西は問いかけるが、凛は蹲ったまま顔を上げずその表情を読み取ることが出来ない。

凛「……信じられない……こんなことを平気で……何を考えてこんな事を……」

西「どーしたんだよ、おいッ!」

西が凛にひと際強く問いかけると、凛はその顔を上げて西に向ける。

凛「……西。教えて……このクズ共はどうしてこんな事を平気でできるの……何を考えてこんな酷いことをやっているの……」

西「い、いや、それを俺に聞くなよ」

凛「……そっか」

西「……あぁ、そンなら聞いて見るか?」

凛「……え?」

西「ほら、あッちにも同じよーな実験区画あるみてーだし、あッちにも同じことやッてるヤツいるだろ、たぶん」

凛「……こんな事がまだ行なわれてるっていうの?」

西「多分そうじゃねーか?」

凛「……」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:47:19.20 ID:XqdRLcCj0
それから凛は西の指し示す扉に進み、実験区画を歩き始め、その研究内容を目にしていった。

およそ人間が出来る非道の限りを尽くしたかのような研究内容。

そこには凛が今までに見てきた人間の綺麗な部分は何も存在しなかった。

ただただ残虐な方法で殺される人間にそれを研究する研究員たち。

何故こんな事をしているのかと聞く前に凛の頭は真っ白に染まり、再び全ての研究員を皆殺しにしてしまい、また別の区画に移動していった。

卯月と未央に実験を行なっていた研究員は全て殺した凛だったが、凛はすでに止まらなかった。

一つの区画で悪魔的な研究を目の当たりにするたびに凛の瞳は濁り、凛の身体は返り血で赤く染まって行く。

研究員たちは異常事態を理解し、近づいてくる凛を殺そうと応戦したが無駄だった。

研究区画であり強力な武装を使う事は緊急事態のみと限定されているこの区画、そしてその強力な武器は西の手によって使用不能状態にされ、重火器で凛と戦うことを余儀なくされた研究員たち。

凛は発砲される銃弾を悉くガンツソードの腹で弾き、最小限の身のこなしで避けていった。

全てはぬらりひょんとの戦いによってもたらされた死に際の超感覚のおかげであり、今の凛にとって銃弾は止まって見えるものでしかなかった。

そうやって銃撃を受けることも無く一人ずつ殺害していく凛はやがて研究員から悪魔のように見え、最終的には誰一人抵抗することもせずただ逃げまどうのみの状態になっていた。

そうして、逃げた先は西によって閉ざされ開くことの無い扉。

研究員たちは凛に命乞いをするが、凛は耳も貸さずに殺し続け、

実験区画に存在した100人近い研究員は全員凛の手によって殺しつくされ、実験区画は血の海と化し、

その返り血を浴び続けた凛の姿は血をすいすぎてどす黒くなったワンピースを身に纏い、血に濡れてベタベタに固まってボサボサになった髪が顔を覆いつくし、その姿は化け物といわれてもおかしくないほど恐ろしいものになっていた。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:48:02.77 ID:XqdRLcCj0
凛「西」

西「お、おう。どうした?」

流石の西も今の凛の姿に若干引いていた。

凛はそんな事も知る由も無く、西に近づいて、

凛「まだ他にこんな事をしている場所はあるの?」

西「え? あ、ああ、ちょッと待てよ」

凛「うん」

西が光のキーボードを展開して操作し調べ始めると、

西「……あぁー、何個かあるな。実験じゃねーけど、人間を使ッて変なことしてッ所は何個かあるぞ」

凛「どこ?」

西「ここが……人間牧場? 何か女を調教して性処理の道具にして出荷してるみてーだな。ンでこッちが……人間市場?……生きてる人間の臓器を取り出して商品にしてるみてーだ。……ッておい!?」

凛は西が見せた画像を見てすぐに動き始めた。

西の映し出したモニターには、年端もいかないような少女が何人もの醜悪な中年の男達に犯されていたり、生きたまま内臓を取り出されている子供たちの姿が映し出されていた。

凛はその全てを破壊していった。

人間の醜悪を全て体現したかのような光景を次々に破壊し、それに関わる全ての人間を殺しつくし、

凛「西、次は?」

西「さッきのとこが最後だ、もうねーよ」

凛「そう」

西「つーかお前あんだけ殺してもまだ足りねーの? 本性ぶちまけた後はトコトンだよなお前」

凛「殺さないといけないクズがいる、だから殺したし殺してる。それだけ」

西「ははッ、つーかお前今日一日でドンだけ人殺したんだよ? もしかすると個人で人を殺した数1位とかじゃねーの?」

凛「………………なかった」

西「ん?」

凛「私が殺したのは人じゃなかった。あれは人の姿をした悪魔たち」

西「く……くッくッくッ……おもしれー事いうなお前」

凛「……」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:50:50.05 ID:XqdRLcCj0
西がくつくつと笑いながら、何かを思い出したかのように凛に言った。

西「おお、そーだ。お前が言う悪魔ッてよー、こいつらも該当するんじゃねーの?」

凛「……」

西が凛に見せるのは名簿。

ずらりと並んだ名簿には名前と顔写真、そしてその人間が今まで行なってきた悪事が事細かく記されていた。

凛「……これは?」

西「世界各国の権力者たちがやらかしてきた悪事ッてやつだ。どいつもこいつも愉快な悪事をやッてのし上がッて来た奴等だぜ」

凛「……」

凛がそのリストを見始め、しばらくリストを見続けていた。

数十分見続けて、凛は最後の一人まで見終わると、

凛「……この世界はこんなクズ共によって作られていたの?」

西「そうだ、このクソみてーな世界は一部の権力者たちが自分達の都合のいいように作ッてンだよ」

凛「……」

西「どーよ? こいつ等もぶッ殺してこんなクソみてーな世界を一緒に壊しちまおうぜ? 俺とお前ならぜッてーできる!」

西は凛に手をさし伸ばしながら語り続ける。

西「そンで俺達で支配するんだ! 旧世界をぶッ壊して新世界を作り出して俺達が支配するンだよ!!」

凛「……新しい世界……か」

西「そーだ! こんな世界お前も嫌気がさしてンだろ!?」

凛「……そう、だね。みんなが死んじゃうようなこんな腐った世界はいらない……」

凛の言葉に西ははじけるような笑顔になり、凛の肩に手を回す。

西「そーだろ! お前もそー思うだろ!!」

凛「……うん」

西「よし! よしよしよしよし!!」

西は凛の肩を叩きながらよほど嬉しいのか笑顔を絶やさずに笑い続ける。

西「ンなら、こいつ等の処理は俺にやらせてくれよ! お前ばッかにやらせてちゃーよ、世界を支配する人間として面子がたたねーからな!」

凛「……いいよ」

西「おう! あぁ、そーだ、お前のツレの再生だけどよ、すぐに……「今はいい」 あン?」

凛「……みんなの再生は後。こんな腐った世界にみんなを呼び戻したくない」

西「いーのか?」

凛「……新しい世界を作るんでしょ? みんなが笑って生きていけるような新しい世界を」

西「はッ! ハハハッ! そーだな! 俺達が笑ッて生きていけるよーな最高の世界を作りあげようじゃねーか!! ハーハッハッハッハ!!」

西は高笑いをし続ける。

自分と凛が作り上げる最高の未来を思い描きながら。

そして凛は、闇よりも深い色に染まった眼をゆっくりと閉じた。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:52:02.19 ID:XqdRLcCj0
かなりの広さを誇るホール。

壇上の舞台に黒い球が鎮座していた。

それを見る視線は一つや二つではない。

数百の視線が壇上の黒い球に注がれ、その視線の持ち主たちは皆困惑しきっていた。

「これは……ああ、あのゲームか。本日開催されるとは聞いていなかッたぞ」

「賭け金が用意できていないのだが、主催者は何を考えているのだ!?」

「飲み物を寄こして! どうしたの? 早くなさい!」

少しずつ場に混乱の渦が巻き起こり始める。

この場にいる100名近くの人間たち。

その内の大半が、壇上に存在する黒い球のことを知っていた。

マイエルバッハという会社が主催する本物の殺し合い。

その殺し合いにおける賭けを行なっている主催者側の人間や、賭けを行なう会員達だったからだ。

しかし、彼らは少しの疑問が頭にあった。

何故自分達は、いつの間にこの場所に来ていたのか、と。

通常ならばゲームの日時は事前に連絡があり、その日までに様々な準備や掛け金を用意する。

それが通常なのに、今回はいきなり呼出されていた。

それが彼らの混乱を巻き起こす要因だった。

その混乱が大きくなり始めた頃、ホール内に響き渡る美しい歌声が全員の耳に届いた。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:52:58.64 ID:XqdRLcCj0
「あ〜た〜らし〜い〜あさがきた〜」

「き〜ぼ〜おのあ〜さ〜が〜」

言語は日本語。

会場にいる日本人はラジオ体操? と疑問を浮かべてその歌声が聞える場所に視線を向ける。

そこには、いつの間にか壇上の黒い球の傍に黒いスーツを着た少女と少年が立っていた。

その黒いスーツの少女は傍らの少年に持っていたマイクを渡すと、

「……これでいいの?」

「おー、バッチリだ。お前結構歌うまいのな」

マイクを受け取った少年は上機嫌な表情で少女を茶化していた。

それもつかの間、すぐに少年はマイクを口に近づけて言葉を発した。

「よォ、テメー等の命は俺達が預かった」

「テメー等には今から楽しいゲームをやッてもらうから喜べよ」

「宇宙人との殺し合いッつー、それは楽しいゲームをなァ!」

少年、西の言葉にホール内で西の言葉を理解できるものはざわめき始め、その様子を少女、凛は冷たく暗い視線で会場内の人間を見渡した。


こうしてガンツにおける最後のミッションが西の手によって行なわれることとなった。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/22(土) 03:53:43.09 ID:XqdRLcCj0
今日はこのへんで。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 04:09:11.25 ID:SeyUqBSZo
建ったか良かった
最後を嵐で埋められるとエタること多いから
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 04:20:41.88 ID:AFuOK27Z0
おつおつ 待ってたよ もう少しで完走かな?頑張ってほしい
23 :全治全能の未来を予言するイケメン金髪須賀京太郎様に純潔を捧げる [sage saga]:2017/07/22(土) 04:56:14.95 ID:1i17oUrF0
マータ武内赤羽のケツ狙ってるのかよ
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 06:01:57.45 ID:5MV69dgNO
おっつおっつ
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 06:08:43.69 ID:Bh72HJlY0
カタストロフィって凛さんのことだったんだなあ(白目)
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 12:39:44.93 ID:yAj+uv1+o
乙乙
待ってた! 凛ちゃんつよい
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 13:30:43.07 ID:R5WrQE3Do

悪い方向に向ってるのは間違いないんだけど気分良いな
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 20:54:09.50 ID:6W0JZVLm0
無双しすぎだけどどう収拾付けるんだろう
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:41:30.82 ID:IRzUbXNj0
西がゲームを始めると告げてすぐ、一人の男が壇上に駆け上がる。

その男は日本人の中年男であるが、一目で高級なスーツと分かる服を着こなしており、どこかの社長や政治家といわれてもおかしくない見た目をしていた。

しかし、男の発する雰囲気がその全てを消し去っていた。

男はかなりの興奮状態にあり、その視線は壇上の凛に向けられていた。

西「おい、オッサン、俺の話まだ終わッてねーんだけど」

男は西のことなど眼中に入っていないのか凛に向かって歩みを進めていく。

「おぉ……間違いない……オリジナルの凛ではないか……」

西「おーい、オッサン、無視すンなよ」

「あれほどまで捜し求めて捕まらなかった君がこうして私の目の前に来てくれるとは……私はとても嬉しいぞ……」

西「……おい渋谷。この気持悪いオッサン、お前の知り合いか?」

凛「……知らないよ」

男は凛に近づくにつれその息を荒くし、凛の目の前にたどり着いたと同時に、凛を両腕で抱きしめようとした。

凛はその腕に捕まるより早く跳躍し、西の背後に降り立ち氷のような視線を男に向ける。

「……何故逃げるのだ?」

凛「……」

西「いやいや、いきなり見知らぬオッサンが抱きついてきたら誰だッて逃げるだろ……」

男は凛が西の後ろに逃げたことによって、今まで凛にのみ向けていた視線を西に向けて男は激昂し始める。

「貴様……さては貴様が、オリジナルの凛を攫い、今の今まで凛をどこかに監禁していたのだな!?」

西「はァ?」

「そうとしか思えん!! 私が凛を手に入れる為にあれほどまでに私財や権力を使ッたというのに、凛は一向に捕まらずその姿さえも見つけることはできなかった、警察やマスコミを動かし磐石の体勢を取ッたにも関わらずだ!」

西「えぇッと……」

凛「……」

「貴様が! 前回の賭けが終わッた直後に! 凛をどこかに監禁していたのだろう! なんというガキだ、信じられん!」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:42:12.80 ID:IRzUbXNj0
西は頭に手をやり米神に指を当てて少し考えるポーズをとって、何かに合点がいったのか男に問いかけ始めた。

西「あのさ、もしかして、オッサンは渋谷を全国指名手配にした張本人?」

「そうだ!」

凛「……」

西「えぇーッと…………なンでそんなことしたン?」

「決まッている! 凛を私のモノにする為だ!」

凛「…………」

西「あのォ……意味分かンねーンですけど、詳しく教えて貰えませンかねー……」

「理解も出来んのか、これだから教養のないガキは……」

西「あァ、そーッすね。俺、バカなんでオッサンの言ッてる言葉が何一つ理解できないンスよ。詳しく教えて下さりやがッて頂ければ、スゲー助かるンですけどー」

西は何故か男の話を詳しく聞こうとする。

その理由は、凛の男を見る視線が、ハインツや研究員たちを皆殺しに来た時と同じになっているから。

男がもう少し凛を怒らせるような何かを言えばその時点で凛はこの男を容赦なく殺すであろう。

それを見せしめにして他の人間たちに今の自分達の置かれている立場を分からせてやろうと考えていたのだった。

その西の思惑通りに、男は口を開く。

自らの命が後僅かで消えてしまうことも知らずに。

「……いいだろう。オリジナルの凛もここにいることだし話してやろう」

西「おー、ペラペラ喋ッてくれよー」

男は恍惚とした表情で凛を見つめながら語りだす。

「私はずッと他人などただの駒にしか思えず、女などは道具以下の存在にしか見ていなかッた」

「そんな私にとッて恋や愛などただの言葉でしかなく、下らなく無価値なものだと考えていた……そう、凛と出会うまでは!」

西「ほうほう」

「私と凛の出会いはマイエルバッハの主催する賭けというものを視察する為に足を運んだ時だッた」

「私にとッて、要人との顔通しに過ぎないはずのそれは私の価値観を一変させた」

西「ほーん」

「異様な盛り上がりを見せる会場のモニターを見上げると、そこには凛の姿が映し出されていた。最初はこんな少女が殺し合いなどできるのか? ああ、この少女は殺されるだけの存在かとタカを括ッていた」

「しかし凛は自身の持つあらゆる手段を使い異星人をたッた一人で全滅させていた。四肢をもぎ取られようが、生きているとは思えないような状態になッても最後までその戦意を失わず……そしてミッションが終わるその瞬間に、少女とは思えないような妖艶な表情を見せたのだ」

「その表情を見た時、私は雷に撃たれたような衝撃を受けた。今思えば完全な一目惚れだッたのだろう」

西「あー、そーなンッスねー」

西はもっとこの男が頭のおかしな発言をすると考えていたのに、語られるのは単なる恋話で興味をなくし始めていた。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:43:06.85 ID:IRzUbXNj0
だが、状況が一変した。

「私はすぐに凛のクローンを購入したよ」

西「おッ?」

凛「……」

「マイエルバッハはミッションの人間達のクローンを販売していてな、その中でも彼女のクローンは非常に人気で、かなりの値はしたが何の後悔もなかッた」

西「ほー、そンで、そのクローンをどーしたワケ?」

「決まッている、三日三晩抱き続けた」

男の言葉を聞いた瞬間、笑っていた西はピシリと固まりその表情を機嫌の悪いものへと変化させた。

西「……」

凛「……」

「年甲斐にも無く盛ッてしまッたよ。まるで青年時代の肉体に戻ッたかのような感覚だッた。それほどまでに素晴らしかッたのだよ、凛の肢体は」

「しかし、クローンは生きている人形でしかなくてな、何度抱いても反応することはない凛に私は不満を抱いた……するとマイエルバッハは凛のコピーを作り出すことができると私に情報を提供したのだよ」

西「……そンで?」

凛「……」

「買ッた。何も悩む事も無く即買ッた。そして、生きて反応する凛に私は涙してしまい…………欲望の赴くままに犯してしまッたよ!!」

西「…………」

凛「…………」

「何度も何度も犯して私と凛は相思相愛となッた……様に見えたのだ。だが、凛は私の目を盗んで逃げようとしたのだ。……すぐ捕まえてなぜ逃げようとしたのかを聞いたよ。何度も何度も聞いて……その過程でコピーの凛は私の事を愛していないという事も知ッてしまい……悲しさのあまりコピーの凛をついつい殺してしまッた」

「非常に悲しかッた……しかし、その一件で、私はオリジナルの凛をどうしても手に入れたいと考えたのだ」

すでに西と凛の男を見る目は冷え切っていた、

西も男が行なった行為に何故か心の底から煮えたぎる感情を感じており、爆発寸前であった。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:43:54.40 ID:IRzUbXNj0
「地位も何もかも捨てても良いと思ッた。どんな無茶をしてもオリジナルの凛を手に入れ、私の想いを伝え、受け入れてほしかッた……だから私は凛を捕まえる為に私が持てる全てを投げ打ッて行動に出たのだ」

男はそう言い、凛に近づいていく。

「凛、君には分かるだろう? 私のこの想いが」

凛は下を向いて動かない。

「私は君さえいれば他の何もいらない。君だけが私を満たしてくれるのだ」

男が凛に触れようと手を伸ばす。

「さぁ、凛。私を受け入れておくれ……愛し合おうじゃあないか……」

その男の手が凛に触れようとした瞬間、

西が男の手を掴んだ。

「……何をする?」

西「……くせェ息吐きながら渋谷に近づいてんじゃねーよカス」

西が男の腕を捻り上げながら男を凛から遠ざけ始めた。

「ッぐあ!?」

西「テメーが渋谷を手に入れる? ンなことできるワケねーだろ? コイツは俺のパートナーだ」

「き、貴様……」

西は捻りあげていた男の腕を離し、男の首を掴んで持ち上げ始める。

西「コイツはテメーのモンじゃねー。俺のモンだ」

「……ぐッ……がッ!」

男は西を睨んでいたが、足をばたつかせて暴れても西が自分を離さないことに気がつき、その顔色を青いものと変化させていく。

西「だけどよー、テメーはコイツのクローンやコピーとやらを好き勝手しやがッたんだよな?」

「……あがッ……ががが……」

西「見せしめとして殺すつもりだッたが、気が変わッた。テメーはただで死なせねぇ、死にたいと思ッても死ねねぇ殺し方にしてやる」

男は視線を宙に動かし、その視界に凛を捉えると、凛に向かって助けを求めた。

「……た、だず……げ……」

凛は男の視線にゴミでも見るような視線を返し、

凛「キモチワルイ」

男は凛から向けられた拒絶の視線と言葉を受けながら、西によってどこかに転送されていった。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:45:00.56 ID:IRzUbXNj0
西は男を転送した後、酷く不機嫌な表情で、

西「……あー、クッソ、折角色々やッてやろーと考えてたのによ、なんかどーでもよくなッた」

酷く投げやりな感じを出しながら西はホールに集まった人間たちに視線を向けて宣言した。

西「そんじゃ、ゲーム開始だ。さッさとくたばッて来てくれ。万が一生き残れたら開放してやッからよー」

その宣言と共にホール中の人間は転送されていった。

全員、スーツも武器もなしで。

それを見届けた後、西は壇上のガンツの前にソファーを二つ転送しそれに深く腰掛けて足を組んだ。

西「悪りーな渋谷。色々お前にも手伝ッて貰おうと考えてたけど、やッぱやめた。気分がのらねーわ」

凛ももう一つのソファーに腰をかけるとソファーの縁に肘を置き西を見据えた。

凛「……別に良いけど。アイツ等はどうしたの?」

西「ああ、ライブ映像を今出すわ」

すぐに二人の目の前にあるガンツ球の上空に立体映像が二つ浮かび上がった。

一つは、先ほど凛に固執していた男が、どこかの部屋で何か小さな虫の様な生物に襲われている映像。

もう一つは、西によって転送させられた人間達が、イタリアと思われる街並みの場所に転送されて互いに何かを言い争っている映像。

凛は男にはすでに興味を失っているのか、興味も持ちたくも無いのか、男の映像には視線を向けずにもう一つの映像を見る。

凛「……外国?」

西「ああ。イタリアにそーとーやべー星人がいたからそこに送ッてやッた」

凛「……わざわざ星人に殺させるっていう事?」

西「奴等の死に様に相応しいと思わねーか?」

凛「……そうかもね」

西「だろ? 前々から思ッてたんだよ。俺達のミッションを見て楽しんでる奴等がいるなら、自分達もミッションに参加させてその楽しさを味あわせてやりてーッてな」

凛「……因果応報ってやつだね」

西「違いねーな。はははは」

西は少しずつ機嫌が治まってきたのか凛に笑いかけて、凛との語らいを楽しんでいた。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:45:56.62 ID:IRzUbXNj0
西はさらに液体の入った二つのグラスを転送して、一つを凛に渡す。

西「奴等の死に様でも見ながら乾杯しよーぜ」

凛「……お酒?」

西「ああ、超高級ワインだ。味も折り紙つきとかッて書いてあッた」

凛「……私達未成年でしょ?」

西「おいおい、これからは俺達がルールで、俺達が全てを作ッてくンだぜ? 旧世界のルールに縛られてンなよ」

凛「……」

凛は少しだけグラスの液体を見ていたが、やがて西から受け取った。

西「そうこなくッちゃな」

凛「……乾杯するって言うけど何に?」

西「そりゃ、俺達の未来にだろ」

凛「……ならそれで」

凛と西はお互いのグラスを軽く合わせてワインを一口口に含んだ。

すると、お互い顔を見合わせて、

西「……」

凛「……美味しくないんだけど」

西「……俺もそー思ッた」

凛は西があまりにも顰め面をしているのに少しだけ表情を緩めて、

凛「……飲めもしないお酒なんか用意するから」

西「ッ!? の、飲めねーワケねーだろ!? ンッンッ……オラ! どうだ!?」

凛「……無理しちゃって」

西「無理なんてしてねーし!?」

西が立ち上がって赤い顔で凛に言い寄っている背後では、イタリアに送られた人間達が美術品のような星人に次々と殺されていく様子が流れ続けていた。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:46:35.96 ID:IRzUbXNj0
凛と西が会話をしながら立体映像が星人の蹂躙を映し出している中で、凛はふと映像に何か違和感を感じて映像を見た。

西「ん? どーした?」

凛「……あれ? さっきあのクズ共を転送したときスーツとかも転送した?」

西「いや、してねーぞ?」

凛「それじゃ……あれは?」

凛が立体映像を見ると、そこにはスーツを着た人間が星人と戦っている姿が映し出されていた。

しかし、その人間もあっという間に星人に殺されてしまう。

西「何でスーツを着た人間が……あッ」

西は何かに気がついたのか手をポンと叩き、光のキーボードを展開し何かを調べ始めた。

すぐに西は自分の調べたい何かを見つけて凛に答えた。

西「なんか全世界のガンツが同時起動しちまッて、世界中のガンツメンバーがイタリアに転送されちまッたみてーだ」

凛「……何やってんの」

西「ま、特に問題ねーか」

凛「……」

凛は何気なく立体映像を見た。

すると、そこでありえないものを見て思わず立ち上がった。

凛「!?」

西「どーした?」

凛「なんで……あの人が?」

立体映像が映し出すのは目つきの悪い長身のスーツの男が数人のスーツを着た少女達を守るように映し出されていた。

その男は、卯月と未央のプロデューサーであり、ガンツとは係わり合いがないはずの男だった。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:48:39.32 ID:IRzUbXNj0
少し時間は遡り、1台の車が高速道路を走っていた。

その車を運転するのは卯月と未央のプロデューサー。

彼は後部座席に乗せた4人のアイドルの仕事を終わらせて、アイドルの少女達を送迎していた。

P「皆さんお疲れ様です」

Pは後部座席の4人に労いの言葉をかけて、後部座席の4人もそれに反応し、

「あっ、は、はい! お疲れ様でした」

ショートカットの女の子が少し緊張気味にプロデューサーに返し、

「今日は学生さんたちに囲まれて質問されっぱなしで緊張しちゃいました……」

サイドテールの女の子が今まで行なっていた仕事の感想を言う。

「美穂ちゃんと響子ちゃん、すっごく質問攻めにあってたからね〜」

ゆるくほんわかした雰囲気を出す女の子がニコニコしながら美穂と響子と呼んだ女の子に言い、

「藍子ちゃんは恋愛相談なんて受けてたじゃないですかっ! あんなに的確な回答、私感動しましたよっ!」

ひと際元気な女の子が藍子と言う女の子を見ながらうんうんと頷いていた。

藍子「茜ちゃんなんて男の子の進路相談に乗ってあげていたじゃない」

茜「それを言うなら美穂ちゃんと響子ちゃんも一緒でしたよねっ!」

美穂「あはは、私はあんまりうまく相談に乗ってあげられなかったかも……」

響子「そんなことないですよっ、緊張してオロオロしていた私をフォローしてくれて……」

Pが後部座席の4人をバックミラーで見て、お互い仲が良さげに会話している所を見て一息をついた。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:49:21.01 ID:IRzUbXNj0
P(渋谷さんが島村さんと本田さんを連れ戻すと言って下さってから数日)

P(私は渋谷さんの言葉を信じ、シンデレラプロジェクトのメンバーには島村さんと本田さんはもうすぐ戻ってくると伝え彼女達の不安を和らげた)

P(私自身も渋谷さんの言葉を信じて、こうして彼女達がいつ戻ってきても良い様に彼女達の仕事を進めている)

P(今日も、彼女達の新ユニット……ピンクチェックスクールとポジティブパッションが新曲を収録するロケ地である学校に行っていた)

P(島村さん、本田さん……あなた達の居場所は私がいつだって用意し待っています……ですから、早く、戻ってきてください……)

Pは凛を西の自宅に送ってからすぐに仕事を再開し、アイドル休止中のはずの卯月と未央が行なうための仕事を取り始めていた。

今回のメンバーにはまだ卯月と未央が同じユニットとなる事は伝えていない。

しかし、大まかなスケジュールは作り上げて、それを進めていた。

それらの事は全てPの内から来る不安から逃げるためのものだった。

Pは凛の言葉を信じていたが、どうしても小さな不安が残っていた。

もしかすると、このまま凛も消えてしまい、卯月も未央も戻ってこないのではないかと。

そんな思いを払拭する為に、Pは二人が行なうための仕事を作り出そうとしていた。

そうすることによって、二人は戻ってくる、凛と共にまたあの笑顔を見せてくれると信じ。

そうやって考えながら運転するPに運命のいたずらが襲い掛かってきた。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:49:48.02 ID:IRzUbXNj0
ガンッ!

藍子「きゃっ」

茜「わわっ!?」

美穂「えっ?」

響子「きゃぁっ!?」

車が大きく揺れた。

P「!?」

Pがバックミラーを見た時、そこには大きなトラックが存在していた。

ガンッ!!

再び大きな衝撃が車を襲う。

美穂「な、何?」

響子「え? と、トラック?」

藍子「え……うそ?」

茜「ぷ、プロデューサー!! ま、前っ!!」

Pが前を見るとそこは急なカーブ。

Pがハンドルを切ろうとするが、

ガンッ!!!!

さらにひと際大きな衝撃が車を襲い、次の瞬間にはPはエアバックに包まれて、浮遊感を感じていた。

「「「「きゃああああああああああああああああああ!?」」」」

後部からアイドル達の悲鳴を聞きながら、数秒の浮遊間を味わった後、Pは全身に衝撃と爆発音を聞き意識を暗転させた。

Pが運転していた車は、後方から飲酒運転のトラックに衝突されて、カーブを曲がりきれずに崖の下に落ち車は爆発し炎上していた。

その中にいる全員が落下した衝撃と、炎にまかれて死亡してしまった……。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:50:44.67 ID:IRzUbXNj0
P「…………」

P「……っ」

死んだはずのPは薄っすらと目を開ける。

そこは古びた教室。

中心に黒い球がある教室だった。

P「こ……れは……」

その球にPは見覚えがあった。

先日、菊地というフリーライターに見せられたガンツと言われる黒球。

そこまでPの脳で認識して、Pの全身が酷い悪寒に襲われた。

咄嗟に教室を見渡すPの目に入ったのは、スーツを着た7人の男女。

それと、自身が送迎していたアイドル4人。

7人の男女は自分の事を品定めするような視線を向けており、4人のアイドルはいまだ気を失っていた。

Pはすぐに4人の傍に駆け寄り、

P「小日向さん! 五十嵐さん! 高森さん! 日野さん! 目を覚ましてください!」

普段では考えられないほどの声量で、焦燥感を出しながら4人を呼び続けた。

そのPを見ながら、7人の男女は、

「……知り合いか?」

「……みたいだな」

「えーッ、違うッて! アイツ絶対変質者だよ! だッて眼つき悪いし!」

「森下さん……見た目で判断しちゃだめだよ……」

「焦ッてる……? 何で……?」

「安孫子さん、藤本さん、今回もまた前回みたいに違うパターンですかね?」

「……」

Pを見ながらもそれぞれの考えを零し、

Pが4人を起こしたと同時に、7人のうち2人の男がP達に声をかけた。

美穂「うぅ……あれ?」

響子「え? ど、どうなったんですか?」

藍子「え〜っと……私、さっき……」

茜「んん!? ここはどこですかっ!?」

P「皆さん無事でしたか……」

「はい、全員目を覚ましたところで聞いてもらえるかな?」

P「……貴方方は……」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:51:30.17 ID:IRzUbXNj0
スーツの男二人は説明を始める。

「これからみなさんは違う場所に強制移動させられます」

「その先であなた達を待つのは奇妙なハンティングゲームです」

「そこで星人と呼ばれる生き物をハント……つまり殺すわけですが」

「いッぱい殺して点数を集めないと自由にはなれません。そして、星人に殺されたら本当に死んでしまいます」

「その黒い球からもうすぐ指令が出ます。我々はその球をガンツと呼んでいます」

P「っ!!」

「ガンツの中には一人ずつのオートクチュールのスーツが入ッています」

「絶対にスーツを着てください。着ない人はすぐ死にます」

「以上です」

まくし立てるように言ったその言葉をP以外の4人はぽかんとした顔で聞いていた。

何を言われたかも分かっていない表情を浮かべていたが、その4人の意識を戻すためにPが言う。

P「みなさん……この人達の言っている事は真実です……」

美穂「え?」

「おッ?」

P「まずは今言われたように、そのガンツと言う球に内蔵されているスーツの確認を行ないましょう……」

響子「あの? え?」

「なんだ……この男……?」

P「すみません……この、ガンツから我々の分のスーツを取り出せるのはどのタイミングになるのでしょうか?」

藍子「あの……プロデューサーさん?」

「……もうすぐ指令が出る。それからガンツの両扉が開いて中からスーツが入ったケースを取り出せる」

P「ありがとうございます……みなさん、ガンツが開いた後、スーツを必ず着て下さい」

茜「あーっ!! もしかしてこれは撮影ですかっ!?」

P「……日野さん、これは撮影ではありません。そして遊びでもありません……」

Pは小さく唾を飲み込んで4人に向かってはっきりと言った。

P「……本当の……殺し合い……戦争が始まります……」

4人は目を大きくしPを見つめ、

7人のスーツを着た男女は訝しげな視線をPに向けていた。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:51:57.58 ID:IRzUbXNj0
今日はこの辺で。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 05:57:55.00 ID:9SfScgyR0
乙、G?だっけのメンバーが出てくるとは思わなかった
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 06:33:47.94 ID:1Ra3AFn4O
Oのメンバーだね、珍しい
おっさんのキモさたるやよ
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 06:49:41.29 ID:8IX5GiqPO
おっつおっつ
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 09:54:25.38 ID:EC86xL2Do
八幡出してもええんやで
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 12:16:14.40 ID:4XTa9K0ho

>>西「テメーが渋谷を手に入れる? ンなことできるワケねーだろ? コイツは俺のパートナーだ」
>>西「コイツはテメーのモンじゃねー。俺のモンだ」

後から自分の台詞を思い出すかも
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 12:38:36.87 ID:xBg6o7I0o
まさかのメンバーだ
続き楽しみ
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 17:38:47.83 ID:IUpSyrr30
まさかのGANTZ Gメンバー
7人って女の子4人と内木と我孫子、藤本 か
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 21:08:46.18 ID:vAeRMt8XO
しぶりんの親を殺したのも指名手配の男なのかね
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 22:51:57.81 ID:dLBLl4wI0
Part1から一気読みしてきた。
おっつおっつ
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:51:58.48 ID:Zwi3F1RV0
Pが4人に言った言葉に対し、おずおずと藍子が手を上げて質問を返した。

藍子「あ、あの〜、プロデューサーさん? せ、戦争って一体どういう事なんですか?」

P「……混乱される気持ちも分かりますが、頭を切り替えてください……私達は巻き込まれてしまったようです……恐ろしい命を懸けた戦争ゲームに……」

藍子「えっと、その……やっぱりこれお仕事ですよね?」

P「違います! これは……違うのです!」

藍子「う〜ん……」

藍子は困った表情で首をかしげている。

美穂と響子も同じだった。

茜だけがガンツに興味津々と言った感じで触れたりしていた。

Pが焦る気持ちとは裏腹に4人はまったくこの状況を理解できていなかった。

Pは何とかして4人に危機感を持ってもらいたかった。

だが、このままでは4人は何の気構えも無く、菊地の話していた凄惨なデスゲームに放り出されてしまう。

それだけは避けたいと考えていたP。

そして、Pへ思わぬところから助け舟が出された。

「あなた達、これを見なさい」

Pたちの前に来て語りかけてきたのは、スーツを着た黒髪ロングの少女。

少女は持っていた鞄の中から黒いオモチャのような短銃と飲みかけのペットボトルを取り出して、ペットボトルをガンツの上に置くとそれに狙いを定めて引き金を引いた。

数秒後、ペットボトルは爆発して、中の水がガンツに降り注いだ。

美穂「ひっ!?」

響子「きゃぁ!?」

藍子「ば、爆発!?」

茜「おおっ!?」

「これが今からあなた達が使う銃の威力。こんなペットボトルどころか車なんかも一発で破壊できる性能がある。そのことを理解して」

P「貴女は……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:52:54.58 ID:Zwi3F1RV0
黒髪ロングの少女はさらに、

「次はスーツの性能。……黒名! やるよッ!」

「! うんッ!」

黒髪ロングの少女はショートカットの黒名と呼んだ少女に向かって、突然飛び蹴りを繰り出す。

二人の距離は5メートルほどあったが、そんな距離を黒髪の少女は一回の跳躍で無くし、黒名という少女の顔面に足が触れる寸前、

黒名という少女はその足を掴んで、黒髪ロングの少女を一回転振り回して、少女の蹴りの勢いをプラスして投げ飛ばした。

黒髪ロングの少女は投げ飛ばされながらも、空中で体制を整えて教室の黒板の上に位置する壁と天井の隙間に張り付いた。

僅かな引っ掛かりを指で掴み自身の全体重を固定して不自然な体制を保っているようだった。

黒髪ロングの少女は壁を蹴ってくるりと回転して降り立つと、Pたちの前に再び来て、

「どう? これがスーツの性能。超人的な力を着ている人間に与えてくれる」

美穂と響子は口をあんぐりと開けながら驚いており、藍子は口を押えて目をまん丸にしていた。

そして、一人、茜は、

茜「す、す、す、すごいですねっ!!」

「ちょ!?」

黒髪ロングの少女に詰め寄って手を握り締めていた。

茜「私、あんな動きを出来る人初めて見ましたよっ!! ラグビーの選手よりも早く動けるなんてあなたは一体何のスポーツをやってるんですかっ!?」

「ちょ、ッと!!」

茜「ああ、すみませんっ!! 私、日野茜と言います!! あなたのお名前を教えていただいても宜しいでしょうか!?」

池上「い、池上季美子よ」

茜「池上さんですねっ!! では池上さんっ!! 私と一緒に全力ランをしませんかっ!? 走って走って頂を目指しましょうっ!!」

池上「な、何、この子……」

P「……日野さん、落ち着いてください」

茜「どうしましたかっ、プロデューサー!?」

P「……彼女は私達に何かを伝えてくれています。それを遮ってしまうのは彼女に失礼です……」

茜「ハッ!? こ、これは失礼しましたっ!! 池上さんの動きに感動してしまいついつい……。池上さん、日野茜、全力で謝罪しますっ!!」

池上「え……いや、いいけど」

茜「ありがとうございますっ!! では、お話の続きをお願いしますっ!!」

小さな茜から発せられる全力な元気に池上は少し圧倒されていたが、小さく咳払いをして再度話を元に戻した。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:53:52.60 ID:Zwi3F1RV0
池上「コホンッ……見てもらッたように、今からあなた達もこのスーツや銃を使ッて生き残りをかけたゲームをやらなくてはいけない……それを理解して。そうしないと……あなた達全員、死ぬわよ」

緊迫感の伝わる表情で死ぬと断言する池上に4人の顔色も真剣なものに変わっていった。

池上がそうやって説明している間にも、スーツの男達は、

「あいつ、変わッたなー」

「俺達が死んでる間に結構色々あッたらしいぞ」

「色々ね……しッかし俺達情けねーよな。二人揃ッて年下の女達に生き返らせて貰ッてんだぜ?」

「……言うな」

「そんでもッて、まだ俺達を信頼してくれてるッてな。……もう俺達よか、アイツ等のほうがずッとしッかりしてるッてのになぁ……」

「……頼られるなら答ないといけないだろ。あの子達の中ではまだ俺達はこのゲームの先達であり、生き残り方や戦い方を教えた師匠みたいなものだからな」

「デキる後輩を持つ先輩の気分だな。そんじゃ、俺達ももう少しデキる先輩をアピールしとくか」

「ああ」

そこまで小声で話して、男達は池上に近づいてその肩を叩くと、

池上「藤本さん……」

藤本「はい、この池上が言うように今からあなた方は私達と共に生き残りをかけたゲームを行なわなくてはいけません……安孫子」

安孫子「ですが、全員がスーツを着て力を合わせることによって生き残る確率は飛躍的に上昇します。ですので、スーツを着ること、武器を持ッていく事は必ず行なッてください」

藤本と安孫子という男達も池上と同じように真剣かつ緊張した面持ちでPたちに再度忠告を行なった。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:54:41.27 ID:Zwi3F1RV0
さらに二人は話を続けて、

藤本「後、あなたは先ほどこの状況を冷静に分析……いや、この状況を知ッているような発言をしましたよね?」

藤本はPに問いかける。

P「……ええ、私は今、置かれているこの状況と、このガンツと言う物についてある程度の知識を持っています」

藤本「……まさかあなたは一度解放された人間では?」

P「いえ、私はこのガンツと調べている人間、そしてこのガンツによって戦争ゲームをさせられている人間に話を伺ったことがあるのです。詳しい情報はその時に知りました」

藤本「……調べている人間?」

安孫子「……ガンツのメンバーから話を聞いた? 一体どういうことだ……」

P「あなた方に聞きたいのですが、あなた方のチームには渋谷凛さんという女性はいらっしゃいますか?」

藤本「……渋谷凛? もしかしてあのテロリストのことですか?」

P「……そうですか、彼女はこのガンツチームの所属ではないようですね……」

安孫子「……」

Pがさらに何かを問いかけようとしたところで、安孫子が手を叩き全員の注目を集める。

安孫子「色々な質問、疑問が互いにあると思う」

安孫子「だが、俺達がまず優先させる事は、今からの狩りを生き残ることだ」

安孫子「その為の作戦をここにいる全員で話し合いたい。あなた達も協力をしてもらいたいのだが構わないかな?」

安孫子は他に転送されてくる人間がもういないと判断し、今この場にいる新規の5人に提案した。

アイドルの4人はPの顔を伺っていたが、Pは安孫子の提案に頷いて、

P「はい」

小さく一言だけ返事をした。

しかし、その表情は真剣そのものであり、安孫子と藤本はPから出される気迫に少しだけ笑い、こいつは使えるかもしれないと同時に思った。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:55:08.68 ID:Zwi3F1RV0
安孫子はスーツの少女達をPたちの近くに呼ぶと全員を円陣状にして座らせた。

安孫子「時間ももう無いと思うから手短に説明する」

安孫子「俺達はチーム全員で動き、お互いの死角をカバーして行動する」

安孫子「前衛は基本3人。こッちの藤本と俺、プラスこッちの池上、黒名、梶のうち誰かだ。3人が前に出た時点で残りの2人は後衛を守る為に後衛チームと行動を共にする。その基本パターンで星人の足止めを行なッて、後方からの銃撃で星人を削ッて倒す戦法だ」

安孫子は前衛という藤本と池上、そして先ほどのショートカットの少女、黒名と派手目の金髪の少女、梶に指を刺す。

安孫子「今回あなた達は、後衛からの狙撃を担当してもらう。銃の使い方は……池上、銃を貸してくれ」

池上から銃を受け取った安孫子は銃の説明をPたちに行なっていく。

安孫子「引き金は上と下の二つのトリガー、これは全ての銃で統一されている。上を引くことによりロックオンをかけることができ、その状態で下のトリガーも引くと発射される。銃のモニターを確認して誤射しないようにしてくれ」

安孫子「この他に武器は、刀とバイクも存在する、そッちの武器は指令が出た後に隣の教室から持ッてくるんだが……数の限りもあッてあなた達は今回銃のみを使ッて貰うことになるだろう」

武器の説明をした後、安孫子は一呼吸を置いて、P以外の4人のアイドルに向かって言う。

安孫子「最後に、一番重要なことを言う。どんな状況になッても散り散りに逃げないでくれ」

安孫子「恐怖にかられて逃げた先に待つものは……確実な死だ。君達のような女の子は特にそういッた傾向があるから、どんな状況になッても自分を見失わず、今いッた言葉を忘れないでくれ」

4人は真剣な表情で忠告する安孫子に対し、唾を飲み込みながら首を縦に振った。

ある程度であるが、4人とも今のこの状況を飲み込んでいる証拠だった。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:55:52.55 ID:Zwi3F1RV0
藤本「と、こんな所で、自己紹介でもやッとくとするか」

安孫子「……藤本」

藤本「もう基本的な事は伝えただろ? 次は残された時間でお互いのチームワークを得る為に出来ることをやんねーとな」

安孫子「そうだな」

藤本は全員を見渡しながら簡単に自己紹介を始めていった。

藤本「そんじゃ、言いだしッぺの俺から……俺は藤本、大学生。こッちの安孫子とは同じ大学で同学年です。好きなものはラーメン。次、安孫子」

安孫子「……俺は安孫子、藤本とは腐れ縁ッて奴だ……次」

本当に簡単に自己紹介をした安孫子は視線を池上に向ける。

その視線に池上は頷くと、

池上「私は池上季美子。藤本さんと安孫子さんがいない間はリーダーをやッていたからある程度は助けてあげることもできるし、頼られればそれに答えるわ」

池上「でも、自分勝手な行動を取るようなら、私は頼られてもあなた達を見捨てる覚悟もしている。生き残りたかッたら協調してお互いを助け合う気持ちを忘れないで……私からはそれだけ」

池上は真剣な面持ちでPたちに言い、全員を見定めていた。

次に池上の隣の黒名と呼ばれていた少女が立ち上がって自己紹介をする。

黒名「あたしは黒名蛍。えッと……池上さんは厳しい事言うけど、あなた達を見捨てるような事なんて本当は考えてないから安心して」

池上「黒名、余計な事は言わなくていい」

黒名「あはは……とにかくみんなで協力して生き残ろう! どんな時だッて希望はあるんだから! 次、よッちゃん!」

黒名によッちゃんとよばれた眼鏡をかけた少女はおずおずと自己紹介を始めた。

宮崎「あ、あの……私、宮崎美子です……えッと……その……私、弱いですけど……その頑張ります……」

「なーにが私弱いですーッてアピールしてんの? この女ゴルゴさんは? この中でも一番星人を殺してんのはアンタでしょーに」

宮崎「も、森下さん!?」

森下「はーい、あたしは森下愛、こッちの美子と同じ後衛からのスナイパーでーッす! ちなみにメジャーデビューを控えたアイドルでもあるから、サインしてあげてもいいよ?…………あれ?」

ツインテの少女、森下が宮崎を後ろからハグしながら自己紹介をする。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:56:31.81 ID:Zwi3F1RV0
そうして、P達を目を細めてじっくりと見て何かに気がついたようで、

森下「……ちょッとまッて。もしかして、小日向美穂?」

美穂「え? は、はい。そうです」

森下「ちょッ!? 本物じゃん!? ウソウソッ!?」

薄暗い教室でお互いの顔も近づかないとはっきりと分からなかったのだが、近づいたことによってお互いの顔が分かるまでになっていた。

森下は、目の前に自分とは違ってすでにメジャーデビューを果たして一線で活躍しているアイドルがそこにいることに気がついて驚きの声を上げていた。

森下「うッわー、ほんとに本物じゃん……やッば、さッきのあたしの言葉忘れて!」

美穂「えっと……あなたもアイドル、なんですか?」

森下「うぐッ……ま、まだ地下アイドル卒業手前だけどね……来月にはメジャーデビューも控えてるんだけど……」

その森下の言葉に美穂は今まで緊張していた表情を崩して笑顔になって、

美穂「それじゃあ、これからお仕事が一緒になることもあるかもしれないですね! その時は一緒に頑張りましょうね!」

森下「こ、これが一流アイドルの笑顔……くッ、ま、負けられない……」

美穂「響子ちゃん、藍子ちゃん、茜ちゃん、こちらの森下さんも私達と同じアイドルなんだよ……「うぇ!?」 ひゃっ!?」

美穂が他の3人の名前を呼ぶと、森下は身を乗り出して美穂の近くにいる3人に近づいて、その顔を見て大きな声を上げた。

森下「ちょッ!? 五十嵐響子に高森藍子、日野茜もいるじゃん!? どうなッてんのこれ!?」

池上「森下……アンタいい加減にしなよ。もう時間も無いッて言うのに」

森下「だ、だッて、こんな所にアイドルが4人もいるんだよ!? しかも現役のトップアイドル達がだよ!?」

池上「そういう話は全部終わッてからしなさい。次、梶。手短にね」

池上は森下を引きずって美穂達から引き離すと、金髪の梶と呼んだ女性に自己紹介するように促す。

梶「……梶芽衣子。生き残りたかッたら戦いな。私からはそれだけ」

森下と違い立ち上がって一言だけ言うと、すぐに座った梶。

そうしてスーツ組みの自己紹介が終わり、次はP側、まずは美穂が立ち上がって自己紹介を始めた。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:57:54.31 ID:Zwi3F1RV0
美穂「こ、小日向美穂です。す、すみません……まだ何が起きているのかいまいちわからないんですけど。その、私に出来ることを頑張りますので、よろしくお願いします」

そのまま大きく頭を下げる美穂。

美穂「えっと、それじゃ、響子ちゃん」

響子「あっ、はいっ」

美穂に促されて立ち上がった響子は同じように、

響子「五十嵐響子です。えっと……みなさんが言ってる事、生き残りをかけたゲームが今から始まるっていう事は本当なんですよね?」

響子が再確認するように聞くと、スーツ組みは全員が頷く。

響子「そうですか……私、みなさんの足を引っ張らないようにしますので、その、よろしくお願いします!」

美穂と同じように深々と頭を下げる響子、その様子を見て藤本と安孫子は小さな不安を覚えた。

響子「それじゃあ、藍子ちゃん。お願いします」

藍子「あ、は〜い」

二人の挨拶を見ていた藍子は少し緊張を解いて、自己紹介を始める。

藍子「高森藍子です。あの、戦いって私には出来ないかもしれないですけど。私に出来ることを精一杯やりますので、どうかよろしくお願いします」

またも深く頭を下げて締める。

それを見て藤本と安孫子は小声で話し始めた。

藤本「……おい、マズいぞ」

安孫子「……あぁ、さッきまでの緊張感が消えちまッた」

藤本「……チッ、自己紹介が裏目に出たな……森下のヤツが張り詰めた空気を壊しやがッた」

安孫子「……なッちまッたものは仕方無い、協力はしてくれるみたいだから後は実際に星人との戦いに突入したときにどうなるかだが……」

そうしているうちにも、小声で話している二人の声を打ち消すような声量の挨拶が始まった。

茜「こんにちはっ!! いえっ、こんばんはっ!! 日野茜です!! ゲームとかよくわかりませんが、やるからにはトップを狙いましょう!! 日野茜、全力で頑張りますよーっ!!」

藤本「……あいつ等の中で使えそうなのはあの男だけか」

安孫子「……そうだな」

茜「では、プロデューサー! どうぞっ!」

茜が全員に挨拶をした後、プロデューサーに次と促すが、その直後にガンツから音が漏れた。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:59:10.87 ID:Zwi3F1RV0
それは、何かの歌のようだったが、途切れ途切れになっており聞き取ることが出来なかった。

『あーー ブチッ らしー ブツッ さがー ブツッ きー ブツッ』

藤本「何ッだ!?」

安孫子「ッ!?」

池上「!?」

次にガンツに解読することも出来ないような記号が浮かび上がり、突如ガンツの両脇が開放されて、中から銃とスーツが取り出せるようになった。

黒名「何……? こんな事、一度もなかッたのに……池上さん、これッて……」

池上「……藤本さん、安孫子さん」

藤本「俺達も……ワカらねェ……けど……」

安孫子「……ああ、何かヤバイぞ」

今まで余裕の表情を崩さなかった藤本と安孫子だったが、今までにないガンツの表示に一抹の不安を感じる。

その様子を見たPは、すぐにガンツに近づいて、中からスーツの入ったケースを取り出し中身を確認すると。

P「みなさん、早く自分の分のスーツケースを取り出して確認してください!」

美穂「え? は、はい……!? く、くまさんパンツ女……ちょ、ちょっと、何で私の秘密を!? 家で寝るときにしか穿いてないのに……」 

響子「ごじゅうあらし……これって私ですか?」

藍子「ゆるふわ貧乳……あの、これは……」

茜「ボンバー、これは私ですねっ!!」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:59:37.70 ID:Zwi3F1RV0
P「自分のスーツを手にしたらすぐに着替えてください!……池上さんでしたか、こちらに着替える更衣室などはありますか?」

池上「え……ああ、今は隣の教室にいけるから、そこで着替えることができますけど……」

P「申し訳ありませんが、みなさんを案内すると同時にこのスーツの着方を教えてあげていただけますか」

池上「……わかりました」

スーツケースを見ながら何かを考えている二人がいたが、池上はすぐに4人を連れて教室を出て行った。

それを確認して、Pもすぐにスーツに着替え始め、少し手惑いながらもスーツに着替えたPは次にガンツの中から銃を取り出して確認を行ない始めた。

P「……玩具のようにも見える……だがこれは本物の銃……」

重量感のあるショットガンタイプの銃を手にしてゴクリと息を呑むP。

そのPの耳に焦る声が届いた。

森下「ちょッ!? 転送!? 速いよッ…………」

安孫子「!? マズい!! 藤本、デカ銃を…………」

藤本「チッ!!」

安孫子が頭半分ほど転送されてから藤本に叫んだ、藤本はすぐに教室の隅に置いていた2丁のZガンに飛びついて転送されていく。

宮崎「う、ウソ、じゅ、銃を…………」

黒名「よッちゃん…………」

次々に転送されていくメンバーたち。

梶「くッ…………」

梶がガンツに飛びつこうとしたが、すでに顔が全て転送されて見当違いの場所に走って行ってしまう。

P「!!」

その中で一番最後に転送をされ始めたPはガンツに内蔵されていた銃を全て取り出して持てるだけその両手に抱えた。

何丁かは持つ事はできなかったが、4丁のショットガンタイプの銃と5丁のハンドガンタイプの銃と共に転送されていき、Pの視界は暗転した。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:00:07.81 ID:Zwi3F1RV0
P「……ここは」

今まで夜だったはずなのに、Pの視界が写すものは太陽の光。

そして、見慣れぬ外国の街並み。

P「イタリア……?」

Pは辺りを見渡していたが、すぐに頭を切り替えて、美穂達のことを思い出す。

P「っ! 小日向さん! 五十嵐さん! 聞えますかっ!?」

P「高森さん! 日野さん! 返事をしてください!!」

Pがそうやって美穂達を探すために声を上げて叫んでいると、建物の間から何かが飛び出してきた。

P「!?」

安孫子「ッ……アンタか……」

P「安孫子さん、でしたね」

安孫子はPの傍らに銃が何丁も散らばっていることを確認すると、小さく笑みを作って、

安孫子「その銃、アンタが持ッて来たのか?」

P「ええ……」

安孫子「良い判断だ」

安孫子は散らばった銃を手に取ると、すぐに行動を開始する。

安孫子「恐らくはこの付近に全員転送されているはずだ。探すのを手伝ッてくれ」

P「わかりました」

安孫子「後、大声はあまりあげないほうが良い。星人によッては聴覚の鋭いヤツもいるかもしれない。声に反応して寄ッてくるヤツもいるかもしれない……」

P「……それは経験則というものでしょうか?」

安孫子「いや……あらゆる可能性を考えておくことが生き残る秘訣だ。アンタも生きて帰りたいなら頭を動かし続けるんだな」

P「……はい」

安孫子の忠告を受けながら、Pは辺りを警戒して美穂達を探し、

数分もしない内に全員合流することが出来た。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:00:57.42 ID:Zwi3F1RV0
合流してPはすぐに美穂達に駆け寄ったが、美穂達は教室にいた時とは違いかなり不安な表情になっていた。

美穂「あ、あの、プロデューサーさん……ほ、本当にこれ、何が起きてるんですか?」

響子「わ、私達、頭からその、少しずつ無くなっていって、えっと……」

藍子「ほ、本当に、戦い……を、するんですか?」

茜「み、みなさん、大丈夫ですっ! な、なんとか、なるはずですっ!」

P「……」

不安を感じている4人にPは少し考え、まずは落ち着かせることを第一と考えた。

P「……大丈夫です。不安にならなくても私が何とかします……」

P「……みなさんに危害が及ぶ事はありませんので、安心してください」

目つきの悪いPが精一杯表情を緩め4人の不安を取り除くように言い、それを見て4人とも少しだけ顔色を良くしていった。

そうしていると、傍でパソコンと小さな機械を操作していた宮崎が焦った声を上げる。

宮崎「い、一匹、近づいてきます……」

黒名「ッ! 池上さん!」

池上「黒名、行くよ」

黒名「うんッ!」

すぐに黒名と池上が前に出て、それに続くように梶も二人の後を追った。

その様子を見ながら、Pは残っている藤本と安孫子に問いかける。

P「……まさか、星人が近くに?」

安孫子「1匹かなりのスピードで近づいてきているな……」

藤本「宮崎、森下、準備しろ」

安孫子「アンタ達も出来るなら狙撃する準備をしておいてくれ。敵の姿を確認したと同時にロックオンをしたらモニターを確認するんだ。敵の姿が映ッたままならロックオンは成功、引き金を引け…………来るぞッ!」

宮崎がショットガンとパソコンに繋いだハンドガンを両方構えて体育すわりの姿勢になる。

森下も寝そべりながらショットガンを構えて敵の姿を待つ。

藤本と安孫子はZガンを手にして、レーダーで周囲の警戒を怠らずに前後左右を見渡していた。

前から来る敵は完全に池上達に任せるかのように。

そして、Pはショットガンを構えて前方に現れるであろう星人を隠すように4人の前に立ち、その星人の姿を見た。

それは小さな子供に羽が生えた彫刻のような星人。

かなりの速度で飛んでいるのか、その姿が見る見る大きくなって、前衛の池上、黒名、梶と邂逅した。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:01:35.43 ID:Zwi3F1RV0
前衛の3人と星人の戦いは一瞬だった。

池上が持っていたガンツソードを黒名に投げ渡し、二人は同時に星人に斬りかかった。

しかし、二人のガンツソードは星人に触れた瞬間、刀身がガラス細工のように砕け散ってしまった。

池上(そんな……)

黒名(バカな……)

今まで折れたことなど一度も無いガンツソードが砕けた事実は二人を硬直させる。

その二人に目がけて、星人は空中で軌道を変化し、二人の頭を目がけて高速で飛来し、二人に衝突する直前であらぬ方向からの衝撃によって吹き飛ばされた。

それを行なったのは梶。

彼女は星人が二人に攻撃する直前で殴りつけて二人を助けていた。

しかし、その殴りつけた梶の拳は、

梶「ッぐぅぅッ!?」

池上「梶ッ!?」

黒名「梶さんッ!?」

スーツを着ているにもかかわらず、梶の右腕は肘まで粉砕するようにはじけ飛んでおり、血を噴き出していた。

黒名と池上は梶に一瞬気を取られたが、すぐに吹き飛ばされた星人に視線を向けて、手に持ったガンツソードを捨ててハンドガンタイプの銃を構える。

星人は再び二人に向かって二人の頭を目がけて飛び込んでくるが、二人共その直前でかわして星人に数発の銃撃を撃ちこんだ。

しかし、

池上「ウソ、でしょ?」

彫刻のような星人にほんの少しだけヒビが入っただけで、まるで効果があるように見えなかった。

星人は何事もなかったかのように飛行し、今度は黒名と池上ではなく、吹き飛んだ腕を押えて膝をついている梶に狙いを定めて飛んだ。

梶「……グッ、く、くそッ……」

梶と星人の距離が数メートルほどとなった時、重い音と共に突然星人の姿が消え去った。

梶の目の前には円状の窪みが発生しており、それを作り出した銃を持った男が梶の背後に立っていた。

藤本「梶、下がッて手当てをしとけ、その怪我じゃ万が一もありえる」

梶「……藤本、さん」

腕を押えながら、藤本を見てほっとする梶。

池上と黒名も藤本が梶を助け星人を倒してくれたということが分かり表情を緩める。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:02:15.69 ID:Zwi3F1RV0
だが、すぐにその表情が固まった。

Zガンで押しつぶされたはずの星人が先ほどよりも身体にヒビや傷が入っていたが勢いよく飛び上がってきたからだ。

藤本「なッ!?」

藤本は再度Zガンの引き金を引いて星人を押しつぶす。

しかし、星人はすぐに飛び上がり藤本に襲い掛かる。

藤本「うッそッだろォッ!?」

Zガンを乱射する藤本だったが、星人はやがて、Zガンの重力砲を受けながら藤本に突撃し、藤本は紙一重で避けたがZガンを星人によって破壊されてしまった。

星人はかなり傷ついていたが、高速で空を飛びまわって藤本に狙いを定めると上空から隕石のように降下して来た。

藤本「やッべェ……」

それを見上げながら藤本は、星人が横殴りにあった様な光景を見た。

藤本「ッ!!」

藤本は反射的に視線を宮崎と森下のいる後方に向ける。

そこには、宮崎と森下の銃口が激しく何度も光り輝いており、自分を窮地から救ったのは彼女達だという事を知り苦笑した。

藤本「あー……ッたく、カッコ悪りィな俺……」

藤本は傍らの梶を抱えて飛び上がり、後方に撤退すると、自分と入れ替わりで走り抜ける男に言った。

藤本「バトンタッチだな」

安孫子「休んでろ」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:02:58.13 ID:Zwi3F1RV0
安孫子は空中で何度も吹き飛ばされる星人に向かってZガンを撃ちこんだ。

一瞬で地面に叩きつけられる星人にさらにZガンとは別の手に持ったハンドガンで追撃していく。

しかし、それでも星人は動き出しかけていた。

信じられないといった表情で星人から目をそらさずに攻撃を続ける安孫子。

その安孫子の目に、突如黒いものが映りこんだ。

その黒いものは、Zガンで押しつぶされていた星人の罅割れた身体に食い込んで星人を四分割にしていた。

咄嗟に顔をあげる安孫子が見たのは、別方向から、Zガンの範囲に入るようにガンツソードを振り下ろしている黒名と池上の姿。

安孫子は星人が完全に死んだことを確認して、息を吐いて黒名と池上に声をかけた。

安孫子「何とかなッたな」

池上「倒せ……ました?」

安孫子「ああ」

黒名「……ふぅ〜〜〜、ッて、梶さんッ!」

星人を倒したと分かった黒名は深い息をつくと共に、酷い怪我をした梶の様子を見に駆けて行った。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:03:30.32 ID:Zwi3F1RV0
その様子を見ながらも、安孫子はレーダーを取り出して索敵を行なっていた。

池上「敵はまだいますか?」

安孫子「……いや、いないな」

池上「あれ……ボスだッたんですかね?」

安孫子「恐らくな……デカ銃が効かない星人なんてそうそう出る事はない。十中八九今回のボスだろう」

池上「……今回は、誰も死なずに戻れますかね?」

安孫子「……戻れるといいな」

二人共、今回のボスであろう星人を倒したと考えてほんの少しだけ緩んでいた。

その二人がレーダーに新たに3つの星人の姿を捉えたのは同時だった。

安孫子「休む暇もなしッて事か」

池上「3体……黒名ッ!! 敵が近づいてる!! フォーメーションを組んで!!」

黒名「ッ! わかッた!」

後衛の下へ駆けていた黒名だったが池上の呼びかけにすぐに踵を返して安孫子と池上の元に駆け寄る。

3人が敵を迎え撃とうとして、近づいてくる星人の姿をその視界に入れて、3人共目を見開いた。

安孫子「……マジかよ」

池上「……ちょッと」

黒名「……ウソ」

その星人は先ほど全員で倒した星人と同じ姿をした小さな子供の彫刻星人。

それが3体同時に高速で近づいてきていた。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:04:05.24 ID:Zwi3F1RV0
後衛の宮崎は先ほど倒した星人の点数を確認して息を呑んでいた。

宮崎「な、75点……」

森下「ハァ!? さッきのヤツが!?」

宮崎「う、うん」

藤本「……そりゃそれくらいあるだろ……デカ銃も効かなかったし、梶のゲンコツでダメージも与えられなかッたんだぞ」

梶「……くぅッ……」

藤本「まあ、さッきのヤツがボスだろうからこれ以上はヤバイやつは出てこねーだろうし、慎重に行動すれば今回は帰ることが出来るだろ」

梶の腕をきつく縛りながら藤本は宮崎と森下に話していた。

そして、その様子をP達は青ざめた顔で見ていた。

美穂「あ、ああ、あの……う、うう、腕が……」

藤本「ああ、大丈夫だ。狩りを完遂してあの教室に戻れればこの怪我も治る」

響子「ち、ち、血が、あ、あんな、あんなに……」

藤本「……出血は確かにマズイな、梶、何とかいけそうか?」

梶「……意識はしッかりしてるよ」

藤本「なら問題ないな、最後まで意識を無くすなよ」

藍子「も、問題ないって……お、おかしいですよ!?」

茜「そ、そうですっ! て、手当てを、いえ、病院に早くいかないとっ!!」

藤本「……ちッ、やッぱりか……」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:05:01.15 ID:Zwi3F1RV0
梶の手当てをしながらも藤本は、やはりアイドルの4人がまったく今の状況を理解していないことに少しだけ苛立つ。

初回の人間など皆こんなもの、それは分かっているのだが、どうしても苛立ちが湧き上がってしまう。

それと同時に、早くボスを倒せたことに安堵していた。

もしも、あのボスが他の星人を倒して疲弊したあとに現れたらもっと被害は大きく、美穂達はパニックを起こしていたかもしれない。

そう考えて、藤本は今回は運がよかったと考えた。

その直後、前衛の池上の敵が近づいてきたという声を聞き、視線を前に向ける。

そうして、向かってくる星人たちの姿を見て固まった。

藤本「……バカな」

先ほどの星人と全く同じ姿の星人。

そんなわけがない、75点の敵が複数現れる狩りなど今まで一度も無かった。

黒名たちが経験したという100点のはんぎょじん星人が今まででも最高の点数の敵だったが1体のみの出現だった。

そうやって思考を続ける藤本に、宮崎の震える声が届く。

宮崎「……うそ、ま、また75点……蛍ちゃん……に、逃げて……」

75点が3体、先ほどのように高速で動かれて銃撃ももろともせずに攻撃されたらどうなってしまうのか。

最悪の思考を頭から拭い、藤本は宮崎と森下に強めに言った。

藤本「おいッ! すぐに迎撃準備だ! 俺達で安孫子達の援護をするんだ!」

藤本「梶も出来るなら狙撃しろ! そッちの……アンタも銃を使えるなら使ッて援護しろ!」

藤本はアイドル4人にはどうすることも出来ないと判断し、まだ動けそうなPに援護指示を出したが、Pも青ざめた顔で銃を持つ手は震えていた。

それを見て、Pも銃を撃つことも出来ないと判断した藤本はPの銃を奪い取り、2丁のショットガンを手にして安孫子達の援護を始めた。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:05:28.97 ID:Zwi3F1RV0
黒名は向かってくる星人の突進を必死に避けていた。

黒名「うッ……くッ……」

先ほどの星人は1体だったから全員で集中して攻撃できた。

しかし、今回の星人は3体、黒名も池上も安孫子もそれぞれ向かってくる星人に攻撃を仕掛けていたが圧倒的に火力が足りず、後方からの援護も意に介さずに成人は3人に攻撃を仕掛け続けていた。

そして、黒名は気がついた。

星人の攻撃が掠った場所、スーツの上にも関わらずに痛みを感じ、血が出ている。

即ちこの星人にスーツの防御は意味が無いという事を。

黒名「みんなッ! コイツの攻撃を貰ッちゃダメ! コイツ、スーツが効かない!!」

その黒名の叫びは全員に小さな絶望感を植え付ける。

全ての攻撃を回避しなくてはならない。

それも、かなりのスピードで飛びまわる星人の攻撃を。

前衛の三人はその事実に焦りを隠せずにいた。

そして、更なる絶望が近づいてきていた。

安孫子「……なん、だッ……あれは……」

安孫子が見たもの、それは子供のサイズの彫刻ではなく、数メートルはあろうかという彫刻の星人。

その星人が石の翼をはためかせ近づいてきていた。

3体の星人と必死に戦っていた安孫子たち。

あの星人に襲われたら今均衡が保たれているこの状況が一気に覆される。

まずい、下手したら全滅してしまう。

その思考が安孫子の脳裏に浮かび上がり、近づいてくる星人を忌々しげな目で見ていた。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:06:13.96 ID:Zwi3F1RV0
そうやって小さな子供の星人をZガンで押しつぶしながら近づいてくる星人に気を向けていると、数メートルの星人は突如地面に叩きつけられた。

安孫子「ッ!?」

藤本がZガンで援護をしたのか? いや、藤本のZガンは先ほど破壊された。

ならば一体何が、誰が、と考えた安孫子の視線の先で、放電現象が起きていた。

次の瞬間には、立ち並んだ建物が崩れ落ちて、星人の周囲も爆発したような衝撃波が発生した。

それが何度かおき、近づいてきていた星人はいつの間にか半分になっていた。

透明な何かに斬りつけられたようであったが、安孫子はすぐにその透明な何かの正体を見ることとなった。

バチバチと放電が起きて安孫子たちの眼前に十数メートル近い黒い機械の巨人が姿を現した。

その巨人の手にはかなり刃こぼれをした巨大な剣が握られており、先ほどの星人はその巨大な剣によって斬り潰されたのだという事を知った。

そして、その巨大な機械の巨人の頭頂部に人影を見た。

その人影は巨人から跳躍して自分達に向かって飛んできた。

安孫子はその人影が空中で叫んだ言葉を耳にする。

「死にとおないなら、避けぇや!!」

安孫子「黒名ッ! 池上ッ! 下がれッ!!」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:06:45.91 ID:Zwi3F1RV0
安孫子の声に反応して黒名と池上は全力で後方に跳躍した。

星人の攻撃を回避しながらの跳躍。

すぐに星人は黒名たちを追おうとしたが、上空から降り注いだ無数の光線に押しつぶされるような形で地面に縫い付けられる。

無数の光線が雨霰のように降り注ぎ、地面が爆発を起こし続ける。

その爆発の中心地に、空から降り注いだ黒い影が突っ込んでいった。

安孫子たちはその様子をただ見ていた。

土煙で見えなくなったそこからいつ星人が出てきてもいいように。

しかし、その土煙の中から姿を現したのは星人ではなかった。

安孫子達が見たことも無いスーツを身に纏った人影。

その黒い人影は、先ほどの星人3体の首を持って安孫子たちに近づいてくる。

その男は、パーマの掛かった髪で精悍な顔つきをしていた。

「9回目のクリア報酬のスーツ……悪くないやんけ」

軽量型のハードスーツを身に纏い、星人達の首を途中で投げ捨てて手を握り締める。

「おお、お前ら、丁度ええわ、武器を俺に寄こさんかい。今回の敵は固くてアカン、刀がもう何本も根元からポッキリや」

別の手に持っていたガンツソードは柄の部分が壊れていてもう起動しないようだった。

そのガンツソードも投げ捨てて男は安孫子たちに手を出した。

「ほれ、はよせんかい。今回の敵はお前らには荷が重いやろ? 俺が殺ッてやるから武器を寄こせ言うとるんや」

安孫子「……アンタは、何者だ?」

「ああ? 俺か?」

男は安孫子の問いかけに対して名乗りを上げた。

岡「岡や。俺の名は岡八郎や」

大阪最強の男が、イタリアの地に舞い降りた。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:07:28.95 ID:Zwi3F1RV0
今日はこの辺で。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 03:12:46.93 ID:uKtGCBlQo

世界ランカーもいっぱい居るだろうし逃げ切ったりもありえるはず
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 06:15:26.60 ID:n5r9IN+y0
初戦がイタリア戦ってのはキツすぎだろ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 07:30:18.85 ID:Jyltc3RfO
おっつおっつ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 07:42:34.09 ID:QhZe85rzO

やっぱダビデも硬くなってるのね
絶望感すごいけど岡さんや武田とかもいるだろうしなんとかなるんじゃないかとなる
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/25(火) 00:49:39.08 ID:RCNfKUvdO
クロスなら八凛にしろや、ゴミ
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/26(水) 21:53:38.36 ID:2khnKKpj0
おつおつ
そっか大阪メンバーも生き残ってるのいるんだよな
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 04:35:52.35 ID:KWjSOHMB0
内木は生き返ってないルートか。
しかし大集結だな期待
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:19:08.86 ID:wGALB0W20
安孫子は岡を見て思考を回転させていた。

安孫子(……前回の狩り、転送されてすぐに終了して何もする事はなかッたが……)

安孫子(……転送された時点で、俺達の知らないスーツの人間が何人も死んでいた……)

安孫子(……そしてあの後、テレビで見た大阪の破壊状況と、あの日見た転送された先の崩壊した一帯……間違いなく前回のあの転送された場所は大阪だった……)

安孫子(……この男の口調……大阪弁……まさか……前回、大阪で狩りをしていた人間の一人か?)

安孫子「岡か……大阪弁という事は、アンタは大阪の人間なのか?」

岡「せやで」

安孫子「それならアンタは前回、大阪で狩りをしていた当事者か?」

岡「……せやな、前回、あの場所に俺もおッたわ」

安孫子(!! やはりか! この男の戦闘能力、さッきの3匹の星人をアッという間に倒してしまッた事を含めて、あの黒い巨人……前回の狩りを終わらせた張本人か!)

安孫子(今回の狩り……ヘタするとさッきの星人クラスが雑魚の可能性がある……だが、この男と協力関係になれれば……)

安孫子は岡が現れてから現在の状況を分析しながら思考を続けていた。

1体だけでも苦戦した星人が数体現れた時点で今回のミッションの危険性を数段階引き上げていた。

しかし、その星人をいともたやすく葬った岡を前にして何とか協力を取り次ごうと考え、

安孫子「提案があるんだが聞いてくれないか?」

岡「なんやねん」

安孫子「俺達はアンタと協力してこの狩りを生き残りたい。アンタは恐ろしく強い男だという事はすぐワカッたが、それでも狩りでは何が起きるか分からない。後方援護を行なッてアンタのサポートくらい出来るはずだ」

岡「協力やらサポートやらしたい言うなら勝手にせぇ、俺は俺でやらなあかん事があるでお前らに何かするッちゅーことは無いけどな。それでもええなら後付いて来て勝手にしとれや」

安孫子(くッ……協力関係は結べないか……しかし、この男の戦闘力があれば俺達に対処することも難しい星人が現れてもこの男に何とかさせることが出来る……)

安孫子「わかッた。それならば俺達はアンタのサポートを勝手にやらせてもらう」

岡「ほうか。そんなら、まずはさッさと武器をよこさんかい」

安孫子「ああ……池上、黒名、刀をこの男に渡してくれ」

それまで岡と安孫子のやり取りを見守っていた池上と黒名は安孫子の指示で岡にガンツソードを手渡した。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:21:02.30 ID:wGALB0W20
岡「よし…………あぁ、そうや」

ガンツソードを受け取って刀身を延ばした岡は安孫子に一つの質問をした。

岡「お前ら、渋谷凛ッちゅー女を見とらんか?」

安孫子「……あのテレビでテロリストと言われている女の事か?」

岡「そうや。そいつや」

安孫子「いや、俺達は見ていないが……それが一体何なんだ?」

岡「そいつを見たら俺に教えろ。俺はそいつを守らなあかんのや」

安孫子は岡の言った言葉を考察しようとしたが、岡が黒いロボットに向かって移動し始めたのを見ると、後衛の藤本達に合流するようにジェスチャーをして、全員が合流した後は自分の考え、岡と協力することが生き残る確率が上がるという事を説明しながら岡の後を追った。

岡はロボットに搭乗してレーダーを確認していた。

岡「敵は……何か固まッとる場所があるのォ……100点反応は今んとこ一つ……」

岡「まァ、どーせ前回同様何か起こるんやろーがな……それまでに見つかるんかいな?」

岡「我ながら、厄介な口約束をしてもーたわ……あの嬢ちゃん全国指名手配やらアホみたいな厄介ごとに巻き込まれよッて……」

岡「守るゆーて簡単に言わんとけば良かッたわ。ッたく……」

岡はロボットを動かそうとしたところで、レーダーに新たな星人の反応がある事に気が付いた。

岡はガンツソードを伸ばし、飛んでくる2体の星人に向かって跳躍の構えを取る。

岡「まァ、しゃーないわな……」

岡の脚部の筋繊維が異様な盛り上がりを見せる。

岡「男なら女の最後の願いを……」

跳躍と同時に岡が踏みしめていたロボットの装甲がへしゃげる。

岡「叶えんわけにいかんやろーが!!」

弾丸のような速度で岡は星人と交錯し、岡と星人たちの激しい空中戦が始まった。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:21:45.25 ID:wGALB0W20
安孫子達は、岡がロボットから急に飛び出した姿を見ていた。

その先には数メートルはある彫刻星人が2体。

岡は激しい空中戦を行ないながら、2体の星人の攻撃を身動き取れないはずの空中で巧みに避けながら、2体の星人を地面に叩き落して地上戦を始めていた。

その様子を見ていた安孫子達は、

安孫子「……マジかよ」

藤本「……安孫子、アイツは一体何者なんだ?」

池上「れ、レベルが違いすぎる……」

黒名「すごい……」

前衛組みは岡の動きに目を見張り、自分達とは明らかに違う次元の戦いを行なう岡を見続けていた。

その前衛組みの少し後ろで、今回初ミッションとなるPや美穂達は同じように岡の戦いを見上げていた。

P(い、生き残りをかけたゲーム……し、しかし……これは……もう……)

P(あの男性のように戦わないといけない……?)

Pの視線の先で岡が星人を叩き落し、ガンツソードを投げつけながらも掌から閃光を放ち、星人たちが爆発する瞬間が映る。

P(……不可能だ。私はもちろん……小日向さん達にあのような戦いを行なうことなどできるわけ……ない)

岡が地面に着地し、爆発したものの殆ど傷の無い星人と激しい斬りあいを始め、その剣戟はPの動体視力では見る事すらできなかった。

P(島村さんや本田さんは……この恐ろしい戦いに巻き込まれてしまった……?)

P(あの二人が……こんな……人知を超えるような……恐ろしい戦いに……)

Pの脳裏に柔らかな笑顔を浮かべる卯月と元気な笑顔を浮かべる未央が浮かび、同時に卯月と未央が恐怖に震えながら星人に襲われるシーンが浮かびあがる。

しかし、すぐに浮かび上がったそれを頭から追い出して別のことを考え始めた。

P(……二人共生きている……渋谷さんと共に逃げ延びている……)

P(私が今すべきこと……この恐ろしい戦いを生き延びる為にやれることをやらなければならない……)

Pが震えていた手を握り締めて、歩みを進めて安孫子に声をかけた。

P「……あの男性を援護しましょう」

安孫子「あ? あ、ああ……」

安孫子はPに声をかけられて漸く自分が戦場で棒立ちの状態で岡の戦いを見ていたことに気付く。

安孫子は頭を切り替えて岡の援護を始めようとするが、その安孫子達の耳に関西弁の声が届いた。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:23:17.17 ID:wGALB0W20
「おーおー、相も変わらずド派手にやらかしとんのぉ……」

「あッ、あのッ!! お、俺達、どうすればええんですかッ!?」

「どーもこーもあるかい。最初の一匹で俺はもうマジメにやるんはあきらめたわ、岡に任せときゃアイツが何とかしてくれるやろ」

その声の方向に全員が振り向くと、くせっ毛の男と眼鏡をかけた少年、そしてその眼鏡の少年に背負われて震える小さな女の子がいた。

くせっ毛の男は岡の様子を見ながら建物の屋根の上にいたが、安孫子達に気が付いたようで、

「おッ? おおォッ!」

屋根から飛び降りて安孫子達の前にやってきて声をかけた。

いや、その目線は安孫子や藤本やPは入っておらず、その場にいる少女たちに向けられていた。

そして、男は池上の前に立つと、

「そこのネーちゃん。一発やらせてくれんか?」

池上「はァ?」

「く、桑原さんッ!? アンタ何言うとるんや!?」

くせっ毛の男、桑原は目を血走らせながら少女達を見て、己の欲望のままに言葉を発した。

桑原「せやからセックスさせてくれ言うとるんや、ええやろ?」

池上「セ、セッ!?」

藤本「……おい、アンタ……いきなり現れて何言ッてんだよ」

桑原「なッ、ええやろ? 俺もう辛抱たまらんのや。一発でええから頼むわ」

池上の胸に手を伸ばす桑原だったが、その手が触れる寸前、

池上「……死ねッ、変態!!」

池上が銃を向けて発砲しようとした。

それを見て慌てて距離を取る桑原。

桑原「うッおお!? 危ないやろ、そんなモン向けんなや!」

池上「……」

軽蔑の視線を向ける池上。

その視線に何も感じないのか桑原は再度池上に近づこうとしたが、視界の端に明らかに困惑している4人の少女達を見つけた。

桑原「おッ……ほーー、こいつは……」

その4人の少女、美穂達を舐め回すように見て、

桑原「最近どッちかと言うと巨乳ばッか食ッて来たで、あーゆーロリッぽいのもたまにはええなァ……」

桑原は4人の前に立つと、

桑原「可愛らしい嬢ちゃん等、セックスしようや」

目だけは血走っていたが、爽やかな笑顔で言い切った。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:24:39.91 ID:wGALB0W20
美穂達は戦いに巻き込まれてから感じていた不安が一瞬にして羞恥心に塗りつぶされ、顔を真っ赤にして桑原の言った言葉に反応する。

美穂「せ、せせ、せせ、セセセセセセセ…………」

響子「セッ〜〜〜〜!?」

藍子「ななな、何を言ってるんですか〜〜〜!?」

茜「」

桑原「何や? その反応。全員まさか処女か?」

「「「「     」」」」

4人とも顔が赤くなりすぎて、まるで顔が爆発した後のような状態になっていた。

さすがに見かねてPが桑原と美穂達の間に割って入ろうとするが、何かが走る走行音が聞えてPや桑原含めて全員が音のする方向に目を向けた。

そこには黒いバイクに乗った男達、

「おい、ロボットが見えたぞ前嶋!」

前嶋「……他の人間もいる、前回と同じか」

全員が新たに現れた前嶋達に声をかけようとするが、それもつかの間建物の屋根の上から戦闘音が聞えてきた。

戦闘音は屋根の影になって見えなかったが、一つの影が姿を現すと共にそれを追うように一匹の小型の彫刻星人が飛び出してくる。

影は金髪の外国人の美少女だった。

少女は右手を骨折しているようで、痛みに顔を引きつらせながら星人から逃げているようだった。

その少女を見て、バイクの男達は、

「外人もいんのかよ!?」

前嶋「ッ!!」

「お、おい前嶋ッ!!」

前嶋はその少女を助ける為に瞬時に反応して星人を殴ろうと跳躍するが、

前嶋の行動を見た少女は、流暢な日本語で前嶋に言った。

「殴ると手が壊されるッ! 投げ技を使ッて!」

前嶋「!!」

前嶋は殴りつけようとしていた手を開いて星人の翼を持つと、明後日の方向に向かって投げ飛ばした。

その星人は、投げ飛ばされていったがすぐに空中で軌道を変えて今度は前嶋に向かって襲い掛かってきた。

しかし、星人は前嶋に近づくに連れてその身が破損し始めていき、前嶋の目の前で急に星人の背後に現れた桑原が、

桑原「おう、表面割れて中身見えとるのォ」

桑原が星人にガンツソードを突き入れる。

銃撃によってひび割れた隙間に滑り込ませるようにガンツソードを差し込むと星人の中から血が噴き出して星人の動きは停止した。

星人が完全に死んだことを全員が理解すると、追われていた少女は屋根の上で息を吐き、攻撃をしていた前嶋や桑原、星人に銃撃を加えていた宮崎や森下達も緊張を解いた。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:25:18.86 ID:wGALB0W20
外国人の少女は右手を抑えながら前嶋の前に飛び降りると、

「感謝するよ」

一言だけ言って視線を黒いロボットに向けた。

前嶋「……日本語、喋れんのか?」

外国人にしか見えない少女が短いながらも流暢な日本語を喋ったことに少し驚いて聞き返すと、

「……日本語しか喋れないし、あたしは日本人だよ」

さらに前嶋は少女に質問をしようとしたが、戦場にまた複数の影が現れたことにより、新たな星人が現れたのかと戦闘態勢をとるが、その複数の影はスーツを着た男女。

「計ちゃん! あれは本当に渋谷さんが出したロボットなのか!?」

「ああッ!! 間違いねぇ!! やッぱりアイツも来ていた!!」

「加藤君!! 後ろから敵が来たよッ!?」

「玄野クン、あッちからも大きい星人がッ!!」

黒いロボットに向かって屋根を駆け抜けていく4人の男女、玄野達東京チーム。

玄野達は建物の下にいた他のチームには気付かずに駆け抜けていくが、すぐに星人と交戦を始めていた。

前嶋「アイツ等……前回の」

安孫子「また人が増えた……しかも明らかに戦いに慣れている人間……これなら……」

桑原「あの爆乳はレイカやんけッ!! やッぱ乳デカいほうがええわーーー!!!!」

各々が交戦を始めた玄野達の元に向かう。

共闘をしようとするもの、助けようとするもの、自身の欲望を満たそうとするもの、それぞれだったが、Pは玄野達のチームの一人加藤が発した言葉を聞いていた。

P(確かにあの男性は渋谷さんと言った)

P(では、この場に渋谷さん……そして、島村さんと本田さんも来ている?)

P(……確かめなければならない)

Pは美穂達を連れ、先に玄野達の元へ向かった面々を追いかけていく。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:27:42.92 ID:wGALB0W20
玄野達はロボットの足元までたどり着くとその場でロボットに背を向けて襲い掛かる小さな彫刻星人と戦い始めた。

玄野「剣もッ、効かねェのかよッ!!」

星人をガンツソードで切りかかった玄野だったが、ガンツソードが砕け散った瞬間を見て瞬時にZガンの持ち替えて攻撃を行なった。

しかし、そのZガンの攻撃も足止め程度にしか効果が無かった。

何度も何度も玄野がZガンを撃ち込み続けて、急に星人の動きが止まった。

いつの間にか星人の身体に光のワイヤーが巻きついており、星人は頭からどこかに転送をされて行っていたのだ。

銃口を向けて荒い息をつくのは加藤と岸本。

完全に送ることが出来たとほっとしたのもつかの間、

レイカ「玄野クンッ!! ダメッ!! この銃じゃ通用しないッ!!」

ショットガンを2メートル強の彫刻星人に撃ち込んでいたレイカだったが、ショットガンでは通用しないのか星人は高速で襲いかかって来ていた。

それを玄野はZガンで対抗しようとする。

だが、Zガンの重力砲は確かに星人に当たったに関わらず、星人は若干スピードを落とした程度でレイカに襲い掛かった。

レイカはその星人の突進をギリギリのところで避けて玄野の元に駆け寄って星人に再び銃を向けた。

玄野「やべェ……この銃も効かねェのか……」

加藤「ならッ! このYガンでッ!!」

加藤が星人に向けて放ったYガンのワイヤーは星人を巻きついて拘束したかと思った瞬間はじけ飛んでしまった。

岸本「うそ……」

レイカ「玄野クン……」

自分達の持つ全ての武器が通用しないという事が分かってしまい、玄野以外の全員に絶望感が襲う。

だが、玄野は。

玄野「あきらめんなッ!! まだなんとかなるッ!!」

レイカ「で、でも、どうやッて……」

玄野「無敵の生物なんていねェ!! ぜッてーに弱点があるはずだッ!! まずはそれを見つけるぞッ!!」

岸本「弱点……」

玄野「それにだッ!! このロボットがある以上、渋谷も近くにいるはずだ!! アイツが来て一緒に戦えばこんなヤツ瞬殺だぜ!!」

加藤「渋谷さん……」

玄野「全員集中しろよォ!! ヤツの攻撃を受けるんじゃ…………」

玄野が3人に激を入れていたその時、星人に光の閃光が雨霰のように降り注ぐ。

その発生源を探すと、玄野の視線の先に、星人2体の死体を足蹴にして、凛の着ている軽量ハードスーツを着ている岡の姿を目にした。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:29:03.39 ID:wGALB0W20
玄野「あれは……」

岡に気を取られていた玄野だったが、星人の周囲が大きな破壊痕が発生していることに気が付いた。

玄野が首を動かすとそこには玄野の知らないガンツチーム、安孫子達が星人に攻撃を仕掛けていた。

玄野はその攻撃に合わせるように自身のZガンも星人に向けて引き金を引いた。

2丁の重力砲と岡の閃光、さらに様々な面子からのショットガンの乱射を受けて星人の頭部に傷が発生した。

それを見た岡は閃光を止めてガンツソードを伸ばして跳躍の姿勢を見せる。

しかし、岡が跳躍する前に、二つの影が星人の上空に現れて、

傷の入った星人の頭部にガンツソードを突き入れ、星人は完全に沈黙した。

玄野はその二つの影を見て、すでに顔見知りになった男達の名前を呼ぶ。

玄野「武田……吉川……」

武田「あの目立つロボットを目指して来てみたら……これで君達とは3回目の合同ミッションになるのか?」

吉川「おゥ、今回お前ら大所帯だな? それとも別のチームの奴等か?」

お互い顔を見合わせて口元を緩ませる。

その3人にハードスーツの男、岡が声をかけた。

岡「おー、そこの兄ちゃん、お前さッき渋谷がどーとか言うとらんだか?」

玄野「アンタは?」

岡「お前の言う渋谷言うのは渋谷凛ちゅー女の事か?」

玄野「!! アンタ、渋谷を知ッてンのか!?」

岡「……何や、お前もあの嬢ちゃんの居場所を知ッとるわけやなさそうやな……」

岡は落胆した様子で玄野の質問を適当にいなし始めた。

そうしている間にも、安孫子は集まってくるガンツチームの人間を見て不敵な笑みを見せていた。

安孫子「おい、藤本……」

藤本「なんだよ」

安孫子「どいつもこいつも化け物ぞろいだぜ」

藤本「んなもん見りゃわかる。アイツ等どんな修羅場潜ッて来たらあの星人を瞬殺できんだよ」

安孫子「まッたくだ……だけど、今回で終わることが出来るかもしれない……」

藤本「そうだな、あれだけの点数の敵……池上や黒名たちも全員解放できるほど稼げそうだな」

安孫子と藤本はこれほどまでの戦力をもつメンバーを見て、共闘することにより今回で確実に終われると考えていた。

そうして、ここにいる人間に協力を取り次ぐ為に玄野や岡達に話しかけていた。

その頭には、今回新しいメンバーのPたちの事は抜け落ちて、元の場所から建物を何棟も飛び越えたこの場にPたちがいないことに気が付かなかった。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:30:14.43 ID:wGALB0W20
玄野達が星人を撃退した頃、P達5人は舗装された道路を走っていた。

美穂「あ、あのっ、プロデューサーさん、さっきの人達は……」

P「あの方々はあそこに見える大きなロボットの元に向かったようです。私達も向かいましょう」

響子「大きな、ロボット……本当にこれ、撮影じゃないんですか?」

P「……ええ、撮影ではありません。これは現実に起きている事です」

藍子「信じられないです……でも、先ほどの人は……腕があんなに酷い怪我で……」

P「……急ぎましょう」

茜「は、はいっ」

不安になるような事は語らずPは走る。

全員不安で一杯だった。

美穂や響子はもちろん、藍子も茜も普段のマイペースさを保てないほどになっていた。

車がトラックにぶつかり、何かが起きた。

その後見知らぬ教室にいて、さらには気が付けば外国の地。

そこで美術品の彫刻のようなものに襲われて、一緒に来ていた人は酷い怪我を負った。

そして、今、自分達だけの状態。

不安にならないわけが無かった。

そのPたちの正面に無常にも子供の彫刻星人が現れた。

P「っっ!!」

美穂「あれ……」

響子「さっきの……」

藍子「こっちに……来ますね」

茜「ま、まずいんじゃないですか?」

4人を守るように一歩前に出るP。

そのPにゆっくりと星人は近づいていった。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:31:18.57 ID:wGALB0W20
Pが星人に襲われる様子を立体映像で見る凛と西。

西「あー、ありゃダメだな。武器も何も持ッてねーじゃん」

凛「……西、あの人を助けてあげて」

西「あン?」

凛「……あの人は死ぬべき人じゃない」

西「何? あのオッサンお前の知り合いなン?」

凛「そう。あの人には助けてもらったし、何よりもあの人は未央と卯月のプロデューサー……あの人がいなくなったら未央と卯月が悲しむ」

西「……わーッたよ。アイツをここに転送してやるよ」

少しだけ不機嫌な声色で西は凛の頼みを聞こうと光のキーボードを展開させた。

その時だった。

立体映像に映し出される星人が光の閃光に焼かれたのは。

西「お? 何だ?」

凛「……?」

凛にはすぐにその閃光がハードスーツの攻撃のものと分かった。

誰かがPを助けたのか? そうやって立体映像を見ていると、星人がZガンの重力砲で押しつぶされていく瞬間も映し出された。

Pとの間に誰かが割って入った。

軽量化前のハードスーツを装備した誰かだった。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:32:32.69 ID:wGALB0W20
ヘルメットに覆われて顔が見えないその人間はPに声をかける。

「あの子達はアンタのチームの子達? 脅えてるから早くいって落ち着かせてあげなよ。ここはアタシ達が何とかするからさ」

P「貴女は……?」

立体映像から届いた音声に凛の全身が強張り、闇色に染まっていた眼に光が戻った。

凛「う、うそ。で、でも、う、ううん、聞き間違えるわけない」

西「渋谷?」

立体映像に向かって震える足を進める凛に、立体映像はさらにもう一人の姿を映し出した。

「オラオラオラオラオラオラ!! ブッ潰れろーーーー!!!!」

2丁のZガンを乱射しながら歩みを進める少女。

凛「あ、あぁぁ、あああああぁぁぁ……」

西「あいつ……確か……」

少女はZガンを撃ちながら、飛び上がったハードスーツの人間に叫んだ。

奈緒「加蓮!! トドメ任せたっ!!」

加蓮「オーケー、奈緒!! たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

Zガンと閃光によってボロボロとなった子供の彫刻星人は、加蓮のハードスーツのブレードによって胴体を斬り飛ばされた。

その様子を凛は呆然と見続けていた。

その瞳から気付かないうちに大粒の涙を流しながら。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:33:46.30 ID:wGALB0W20
今日はこのへんで。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/29(土) 21:16:00.20 ID:MoAZ5S840
乙 
生きてた……これでPの情報(凛がガンツの製造元に向かった事)が関東チーム&岡に伝わるかな
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/29(土) 21:32:50.29 ID:ezkduan60
アイマスとのクロスだからって桑原自重させてなくて良かった。
てかなんで千葉2人生きてたんだろ
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/29(土) 21:42:38.58 ID:XzMcKJEtO
乙乙
誰かが奈緒加蓮を生き返らせたってことなのかな
オールスター共演すると最後の戦い感あっていいね
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/29(土) 23:06:19.51 ID:EpC13osg0
このイタリア戦は途中で終わるのか最後までやるのか
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 03:20:35.89 ID:y6VCMaL20
おつおつ なおかれ尊い
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 03:41:42.78 ID:9Vd547pGo
よしアイドルに勧誘だな
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/30(日) 07:02:40.25 ID:xZFpk8sG0
アメリカに岡より強いのいたよね確か。
意外とダヴィデまではイージーかも
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 08:03:32.02 ID:FD6YFZj2O
おっつおっつ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 20:46:39.95 ID:i2nzrGMZ0
最期はイヴァにやられたけど巨人とタイマンして完膚なきまでに叩きのめしてたアメリカの人達とかもいるしまだまだ強キャラは残ってるな
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/31(月) 17:16:02.78 ID:TydsRY+90
ランキング2,3位の市長とかも出るの期待
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