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北上「我輩は猫である」

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599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 13:26:29.30 ID:q/r1jLA5O
肋骨以下のバストかよ
胸窪んでるじゃん
600 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:26:47.85 ID:SYfXOo7I0
以上が工房で消えるネジと資源の理由である。

無駄遣いどころの騒ぎじゃない。

元々は夕張と明石でコソコソやってらしい。

私が夕張に借りた本に影響され銃に興味を持ったのを切っ掛けに色々とはっちゃけだした。

そこへいくともしバレた時私も責任がなくはないのだが。

止めた方がいいかな。

とかなんとか考えながら自室へ戻る途中、提督に出くわした。

提督「おーいたいた。探したぜ」

北上「んー?どったの提督」

提督「いや、そのな。工房の、というか夕張と明石の話でな」

北上「うんうん」

あれ、何か嫌な流れが。

提督「ここ最近資材の減りが妙に増えてんだよ。お前アイツらと仲いいだろ?なんか知らないか」

OH…
601 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:27:30.26 ID:SYfXOo7I0
夕張「燃やそうか」

明石「事故装って爆破しよう」

北上「落ち着いて落ち着いて」

提督からの頼みをとりあえずは引き受け工房へとんぼ返りしてきた。

私にも責任の一端はあるからと対策を一緒に練ろうと思っていたのだが、二人がまず出したのは後処理だった。

北上「きっぱり切り捨てるんだねそこは」

明石「そりゃあ、まあねえ」

夕張「内容が内容だし」

自覚があるからなおタチが悪い。

明石「これが未来ガジェットとかなら誤魔化すとこなんだけどねぇ」

夕張「流石にこれはバレたら死ぬ」

北上「今更でしょそれは…」
602 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:27:57.63 ID:SYfXOo7I0
とは言え冷静な判断ではある。爆破焼却はともかく無かった事にはすべきだろう、とりあえずは。

明石「いやでも拳銃とかなら隠せるか」

夕張「あズルい!私だって1丁くらいなら」

北上「はいはいストーップ」

まあそうなるな。

ちなみに明石はリボルバー拳銃大好きっ子。

ファニングショットも出来る。

手先器用だからとの事。いやそういう話じゃないでしょ。
603 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:28:23.50 ID:SYfXOo7I0
北上「とにかく、早いとこ決めないとホントにバレるよこれ」

夕張「と言っても、ねえ」

明石「感情を殺したとしても後処理、フェイクの理由、色々と用意しなきゃだし…」

吹雪「あまり時間はないですよね〜」

んーと黙り込む4人。

4人?

北上「吹雪?」

夕張「アイエエエ!」

明石「ブッキー!?ブッキーナンデ!?」

吹雪「その呼び方やめて下さい…」
604 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:29:11.16 ID:SYfXOo7I0
吹雪「皆でしかめっ面して、もしかしてチャカの事バレました?」

北上「チャカって…」

夕張「まあそんな感じかなあ…相変わらず鋭いね」

吹雪「司令官が資料と睨めっこしてましたから。内容から予想しただけです」

明石「さすふぶ」

吹雪「なんですかそれ」

北上「アレ、ブッキーってこの事知ってたの?」

吹雪「その呼び方やめて下さい」

夕張「ブッキーにバレると怖いので早めに打ち明けて交渉しました」

明石「やり過ぎない限りは不干渉という事に」

吹雪「…まあそんなところです」

北上「ほう」

これはやり過ぎに入らないというのか。
605 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:29:51.85 ID:SYfXOo7I0
吹雪「私がしたいのはこの鎮守府の維持ですから。多少の無駄遣いや違法な武器製造に興味はありません。でも司令官の方は戦力の増強や施設の拡張など色々とやりたいらしくて。だからこそこの件も無視出来なくなったんでしょうね」

真面目な話をする時の彼女はおおよそその稚い容姿からはは想像もつかないような独特の雰囲気を発する。

駆逐艦といえど、何十年とここで秘書艦をやってきているのだ。年季が違う。

吹雪「とはいえこれがバレるのは私としても避けたいですね」

夕張「沈めよう」

明石「魚雷に詰めて深海に届けよう」

北上「堂々巡りだこれ」
606 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:30:18.83 ID:SYfXOo7I0
夕張「えー秘書艦さまなんとかしてよ〜得意の書類偽装とかなんとかでさ〜」

吹雪「そんな特技ないですよやった事も無いですよ。欲しいとは思いますけど」

明石「提督が北上に頼んだ以上あまり時間もないのよねぇ」

夕張「もうだめぽ」

吹雪「仕方ないですね。ここは助っ人を呼びましょう」

夕張「助っ人?」

明石「ダンス?」

北上「あ」

察しがついた。
607 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:31:01.86 ID:SYfXOo7I0
吹雪「……あ、むらむら、くもくも? うわっ!」

もしもし感覚で妙な事を言ったかと思うとさっと携帯を耳から遠ざける。

電話の相手、なんて言うまでもなく叢雲なんだろうけど、彼女が大声で何を言ったのかは想像に難くない。

吹雪「ゴメンゴメンそんなにムラム、イライラしないでよっ」

言い終わると同時に今度は予め携帯を離しておく。

なんで息をするように妹を煽るのだろうか…

吹雪「いやいやちょっと真面目な話でね。そう!さっすが分かってるじゃん。うんお願い。工房のとこ。うん、うん。じゃね」

携帯を切る。

吹雪「オッケー」b

夕張「ナイスゥ」b

明石「おk」b

誰かいたわって上げて…
608 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:31:53.15 ID:SYfXOo7I0
叢雲「で、私に頼ってきたわけ?」

夕張「このと〜り」
明石「何卒何卒」

ジャパニーズ土下座。この2人に物作り以外のプライドはない。

吹雪「やっぱこの手の事は叢雲が1番頼りになるから。貸一つって事で、ね?」

叢雲「はぁ…まあいいわ。やったげる」

不承不承、という感じを醸し出しているが口元が僅かに緩んでいる事を誤魔化しきれていない。

あー吹雪が凄く、こう、生暖かい目というか、可愛いなコイツみたいな目で見てる。もう少し普通に可愛がって上げればいいのに。

叢雲「それで、その「趣味で作ったオモチャ」は隠し通せる前提でいいのよね」

夕張「イェスマム!」
明石「ノープロブレム!」

嫌味な言い方をするあたりこの件に賛成はしていないようだ。
609 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:32:38.94 ID:SYfXOo7I0
叢雲「となると必要なのはカバーストーリーね。「 無 駄 遣 い 」が増えたのはいつから?」

夕張「に、2ヶ月ほど前ですサー!」
明石「北上が来た辺りですサー!」

サー、は男性に対するものである。と言う場面ではないか。

叢雲「二ヶ月前ねぇ。えっと…」

スマホを弄り始める。カレンダーとか予定表などを参照しているのだろう。

叢雲「あっ」

夕張「い」

明石「う」

吹雪「え」

叢雲「お゛!」ダンッ
夕明吹「」ビクッ

怒りのこもった足で工房の床を踏み鳴らす。

北上「ビビるならやらなきゃいいのに…」
610 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/10(火) 17:33:11.08 ID:SYfXOo7I0
吹雪「何か思いついた?」

叢雲「これよこれ、これでいいじゃない」

夕張「これって?」

明石「端末何も写ってないけど」

叢雲「中身もそうだけれど、これ自体よ」

吹雪「あーなるほど」

夕張「ワケワカメ」

明石「二ヶ月前?スマホ…?」

叢雲「だからー
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 20:10:05.77 ID:ILSc/AHFo
乙カレー
612 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/13(金) 02:17:59.65 ID:5HydsKiY0
提督「端末の開発に?」

北上「うん。図書室のもそうらしいんだけど、勝手に色々と開発してたんだって」

提督室で作業中だった提督に今回の件の報告(偽)をする。

提督「でも資源はともかくネジは使うか?」

北上「いくらあの二人でも携帯は専門外でしょ?分からないところはネジと妖精パワーで無理やり作ってたんだって」

提督「妖精さんも共犯か…まったく、科学の結晶かと思ってたのにオカルトが混じってたとは」

やれやれとスマホを眺める提督。大丈夫、ちゃんと化学の力100%だから。

北上「本の貸出のアプリとかも前から作ってたらしくてさ。私が図書室欲しいって言ってたのに聞いてたみたい」

提督「それでここ最近消費が増えたのか」

北上「その通り」

ではない。こうして嘘を並べるのは2度目だけど、上官に対してそれってどうよ。
613 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/13(金) 02:18:36.15 ID:5HydsKiY0
北上「今回の事話したら暫くは自重するってさ」

これは本当。

提督「暫くかよおい。まあいいかぁ、結果役に立ってるんだし」

北上「あははーソダネー」

提督「何はともあれこれでようやく計画通りに進める」

北上「何か目標とかあるの?」

提督「そりゃあるさ。その為にやってんだから」

北上「何目指してんのさ」

提督「内緒だ」

北上「ちぇー」
614 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/13(金) 02:19:08.51 ID:5HydsKiY0
ふと机の上の書類を見る。

北上「ん?これが無駄遣いってやつ?」

提督「そ。大した量じゃないんだけどな。うちはまだまだ小さいから貴重なんだよ」

北上「へー」

おかしい。こんなに少ないわけがない。どういう事だ?

北上「それじゃ、北上撤退しま〜す」

提督「おう、ありがとな」

藪蛇な気がしたので無視して部屋を出る。

夕張に聞いてみようかな一応。

吹雪「その様子だとバッチリ見たみたいですね」

北上「うおっ、びっくりさせないでよ…」

吹雪「北上さん、取引です。夕張さんや明石さんと同じく」

北上「え」

同じく?

吹雪「他言無用、ですよ」

北上「…イエスサー」
615 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/13(金) 02:20:00.23 ID:5HydsKiY0
吹雪「鎮守府にある資材。それは司令官も把握してます。なのに計算が合わない。司令官の知らない所から消費されている。さてどうしてか」

北上「…」

10あるものから2使われた。と思ってたら実際は4だった。なのに残りの8という計算は合ってる。2はどこから来たのか。

いやそもそも10はどこから来ているのか。

北上「抜いたな…」

つまり任務の報酬から、という事か。

10ではなく12あったのだ。

吹雪「ええ、提督に届く前に」

北上「書類の偽装はやったことないんじゃなかったの」

吹雪「得意じゃないだけです」

いけしゃあしゃあと。たいした秘書艦だこりゃ。
616 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/13(金) 02:20:39.20 ID:5HydsKiY0
北上「そこまで夕張達に協力するのはなんでさ」

吹雪「協力はついでです。私の目的は取ったものの活用ではなく取ることで提督に届かなくさせる事」

北上「…」

吹雪「…」

野生の勘、と言うやつかもしれない。

北上「他言無用ね」

吹雪「はい」

私は引いた。
617 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/13(金) 02:21:06.38 ID:5HydsKiY0
現状が維持できれば鎮守府の拡大は不要。

そう言っていたが実際は

現状を維持するには鎮守府の拡大の阻止が必要、という事らしい。

一体吹雪と提督はどんな関係なのか。

鬼嫁?どっちかというと怖い小姑みたいな。

前任者、提督の前の提督ってどんな人だったんだろう。

自分にはあまり関係のない話だが、段々と頭の中でその事が少しずつ、確実に忘れられなくなってきていた。
618 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/13(金) 02:21:41.82 ID:5HydsKiY0
北上「ん」

ポケットからバイブの振動が伝わってきた。

スマホを取り出すと夕張からのメッセージが表示されていた。

『パイルバンカーって、いいと思わない?』

北上「懲りてない…」

どころか味を占めてる。

やれやれ、流石にこれは一言言ってやらねばなるまい。

『ヒートパイル好き』

とりあえず返信。

さて工房へ向かおう
619 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/13(金) 02:26:21.98 ID:5HydsKiY0
海上輸送で三個もらえるのに北方撃破しても三個…?
これはまさか!(日記はここで途切れている
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/13(金) 04:00:52.61 ID:hIL+EwqRO
パイルバンカーと言えば突破王、某会社のロボットもいいけどね。
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/13(金) 11:25:55.59 ID:lds7sQDp0
ここの提督は部下へは性善説で接するいい上司なのねー
獲得報酬の聞き込みとか提督同士の横の繋がりが薄い?
海上輸送って何かなと思ったがネジ3本ならマンスリーの海上護衛かね?
ウィークリーの海上輸送は1本だったような?
東方はあれ単体でネジくれんかなと思うわ
更新乙です
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/13(金) 18:07:37.39 ID:9JaYThtJO
油壺ぶつけてからの炎派生パイル最大溜めも好きです
623 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:51:41.88 ID:AMpF4EnN0
39匹目:猫と提督



提督室というのは本来上司の、というか職場におけるトップの部屋という意味なのだが、

30いくつの人間と生きた年数や生まれた年を考えれば三桁すらいる艦娘、人と兵器、人と船に一般的な上下関係やらが当てはまるはずもなく、

だからこの扉も一応ノックしろというあってないようなルールのみが辛うじて残る程度の薄いものなのだ。

北上「おじゃましま〜す」ガチャ

提督「お〜う」

適当な挨拶に適当な返事。

こんなもんだし、そんなもん。
624 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:52:53.36 ID:AMpF4EnN0
北上「うわ、すごい書類」

提督「紙一枚分の情報を3枚分に増やすのが上の仕事なんだよ」

北上「それを紙半分にまとめるのが提督仕事ってわけか」

提督「そゆこと。あー座るならこっちのソファーにしとけ」

北上「ん?なんでよ」

提督「れでぃーがお茶をこぼした」

北上「あ〜」

言われた通り机を挟んで反対側のソファーに移り仰向けに体を倒す。

おっと靴をソファーに付けないようにしなきゃ。

持ってきた本を開く。

ページと資料をめくる音だけが部屋を支配する。
625 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:53:31.70 ID:AMpF4EnN0
鎮守府はともかく人が多い。

そりゃ田舎のそれほど大きくもない建物に百人以上もの人間がいればそうなるわって話。

別に皆でわいわいやるのが嫌いなわけじゃないけどやはり一人になりたい時ってのがある。

そういう機会はあるにはあるけれど、出撃や遠征の関係で偶然訪れるものでなりたい時になれるわけじゃない。

だからこそ、そういう場所を探す必要がある。

そして見つけたのがここ。

図書室とは少し違う。

少し特別。

お昼ご飯の後、おやつの時間の前の提督室。

予定がある者は出撃し、そうでなければお昼寝など。

ティータイムや間宮に提督を誘う人達はまだこない。

この時間こそが、至福の時となるのだ。
626 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:54:04.55 ID:AMpF4EnN0
北上「ふう」

パタンと本を閉じる。

本というのは基本的に章などで区切られているのだが、私には章を読み終える毎に本を閉じそれまでの内容を頭で反復するという癖がある。

いつ何故ついた癖なのかサッパリだが、癖とはそういうものだろう。

提督「今日はなんの本だ?」

北上「えと、ふしぎの国のアリスって知ってる?」

提督「大体は。読んだことはないけどな」

北上「それを元にした殺人事件」

提督「えらく物騒だな。しかし元にしたってどういう事だ」

北上「アリスの夢ってやつだよ」
627 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:54:43.74 ID:AMpF4EnN0
提督「夢?」

提督が作業をやめて椅子に深々と座りリラックスモードに入る。

つまり休憩という事だ。

北上「まず主人公がね」

今しがた読みえた所までの粗筋を話す。

いつも通り。

提督は本が苦手というわけじゃ無いらしいけど、仕事人間なのか読む事はないらしい。

最初は単にどんな本を読んでるんだって質問だった。

そのうち内容や感想等を色々聞いてくるようになって、私の方も提督に分かりやすいように伝えたり感想をまとめるのが好きになっていた。

人に教えるにはその三倍理解してなくてはならない、という言葉があるけど、こうして人に話すことによって新たに気付く事や自分の思っていた事がハッキリしたりと思わぬ収穫もあった。
628 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:55:23.37 ID:AMpF4EnN0
北上「この夢の中の会話が好きなんだ〜。アリス風の独特の言い回し」

提督「独特っていうとアレか、和訳する際に出る違和感みたい話か?アリスって海外の作品だし」

北上「それもあるけど…相手に伝える事を前提にしてない会話っていうのかな〜。そんな感じ」

提督「あとは読んでみろってか」

北上「そゆこと」

提督「そうだなあ、戦争終わったらのんびり田舎で読書三昧とかいいな」

北上「あ、それいいね〜。ベランダとかにあの、なんだっけ、揺れる椅子」

提督「ロッキングチェア?」

北上「それそれ。あれに座って本読むとかよくない?」

提督「俺はあれだ、ハンモックとかやってみたいな」
629 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:55:53.24 ID:AMpF4EnN0
北上「どっちも元は海外のだよね」

提督「畳にチェアは合わないし、ハンモックするような木もないからな」

北上「いいよね〜。外国の本とか読んでるとさ、一度行ってみたいなっておもうんだ」

提督「ん?お前外国語読めんの?」

北上「え、あー、うん。英語なら」

しまった口が滑った。別に問題は無いのだけど。

提督「そうか、なんか意外だな」

北上「あはは、だよね〜」
630 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:56:33.26 ID:AMpF4EnN0
とりあえず話題を変えなくては。

慌てて本を開きページをめくる。

北上「あ、これこれこれだよ」

提督「どれどれどれだよ」

北上「んしょっと」

ソファーから体を起こし提督の隣に移動する。

北上「おりゃ」

提督「おいおい、書類の上に本置くなよ」

北上「こいつのせいで机に張り付いてるんでしょ?なんなら北上様が焼き払ってあげようか」

提督「机傷つけたら弁償な」

北上「そーゆーとこ細かいよね〜提督。モテないぞー」

提督「え、マジでか」

北上「マジマジ。彼女の体重が五キロくらい増えても気にしないくらいの器量がなきゃ」

提督「いや五キロはやべぇだろ」

北上「そうかな…?そうかも…」
631 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:57:22.02 ID:AMpF4EnN0
北上「じゃなくてー、ここここ。ここ見て」

提督「どれだよ」

北上「ほらここの会話のところ」

少々強引なやり方だが提督を本に集中させる。

立っているのも疲れるので提督の座る椅子の肘掛に体を半分乗せる。

提督「あーうん。なんとなくさっき言ってた意味が分かった」

北上「読むの早っ」

提督「書類仕事で鍛えられたのさ」

北上「無駄なもん持ってるね〜」

提督「うっせ。というかそこに座るなよ。狭いし壊れるかもわからん」

北上「大丈夫っしょ、この椅子デカいし」

提督「何一つ大丈夫な要素がないんだが」
632 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:59:12.63 ID:AMpF4EnN0
北上「あっそうだ。提督速読できる?」

提督「資料ならできるし、本もできると思う」

北上「ねえやってやって。ここで見てるからさ」

提督「なんでそうなんだよ。見てどうする」

北上「えーどんな感じでページが進むか見てみたいの」

提督「速読っつっても早めに読めるってだけで、ページパラパラめくって内容把握するとかは無理だぞ」

北上「なんだぁつまんないの。北上さんはもう少し面白いオチを求めていたのですよ〜」

提督「お前なぁ」

ガチャ

ガチャ?
633 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 02:59:47.12 ID:AMpF4EnN0
大井「失礼しまー……あ」
提督「げ」
北上「あ」

扉を開けて大井っちの目に飛び込んで来た光景。

同じ椅子に腰掛け(?)体を密着させて話している想い人と親友。

うーん修羅場。

提督「北上、ちょっと大井と話がある」
大井「北上さん、少し提督と話があります」

北上「アッハイ」

本をさっと回収し流れるように部屋を出る。
634 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/16(月) 03:00:42.27 ID:AkkuITTR0
サンマ…ドコ?

アトゴヒキ…ドコ?
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 03:31:47.27 ID:ccD5XuSd0
乙です。
でぇじょうぶだ、北方回ってれば何とかなる!と思う。
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 07:44:40.11 ID:o9NoaU98o

そこに爆雷があるじゃろ?
637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 10:36:27.79 ID:SUkKvdho0
解放してるなら6-5下ルート
夜戦も入れて3連続チャンス!
更新乙です
638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 13:09:40.33 ID:t/Nl2Ixn0
3-2ハズレルートのどん詰まりも楽でいい
3-3は秋刀魚マスまで事故で行けない時があるけどこっちなら流石に大丈夫でしょ
空母マシマシの大空襲編成で秋刀魚装備満載の4スロ艦を2隻送り届ける
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 19:36:46.61 ID:21kbHU5AO
海防艦が出ねぇ・・・他の提督が乱獲してるからとかじゃないよね・・・?
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 20:04:14.57 ID:t/Nl2Ixn0
駆逐キラ付けしてる方が秋刀魚が出るジレンマ
漁業装備とは
641 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/19(木) 03:02:29.18 ID:J3X0E7kt0
部屋を出てしばらくすると提督室から賑やかで騒がしい声が溢れてきた。

提督のところへ大井っちが来るのは少し久しぶりだったが相変わらずの仲なようで一安心だ。

前は私があそこで本読んでると遅かれ早かれ必ず来てたのに、最近はめっきりだった。

やっぱあれか、改造後の服装が原因か。

恥ずかしがることもなかろうに。

何はともあれ久々に2人でゆっくりしていただこう。

提督に釈明の余地があればいいけど。
642 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/19(木) 03:03:08.82 ID:J3X0E7kt0
北上「ん」

右腕を触る。

提督と触れ合っていたせいか少し温い。

流石に馴れ馴れしくしすぎたかね私も。

どうにも球磨型内での距離感で接してしまいがちな所がある。

まあ悪い気はしないんだけど。

北上「ん?」

悪い気はしないってなんだ。

北上「〜♪」

でも、いい気分だ。
643 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/19(木) 03:03:40.02 ID:J3X0E7kt0
41匹目:猫と多摩







北上「よし」

深夜。

消灯時間をすぎ皆が寝静まった頃。

私は部屋で、バケツを抱えていた。
644 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/19(木) 03:05:57.41 ID:J3X0E7kt0
今日の皆の寝る位置。いや、多摩姉の寝る位置は丁度本棚のすぐ近くに頭がくる所だ。

棚の空いてる位置にバケツをセットする。

うん、これで落ちたら多摩姉の頭にクリーンヒットするはずだ。

仕掛けは目覚ましと連動してバケツが落ちるだけのシンプルなもの。

さあ目覚めるのだ。

内に秘めた猫の記憶よ!
645 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/10/19(木) 03:07:39.69 ID:J3X0E7kt0
イタ…イタヨ…ホッポウニイタヨ…アリガトウ、アリガトウ…

なんでこんなに出ないかって間違いなく母港にいる9人の園児達のせいだと思うんですよ
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/10/19(木) 07:37:12.38 ID:1g+4cQhg0
此方は秋刀魚55で園児0 羨ましい
更新乙です
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 13:26:36.23 ID:sKunI9qC0
ネジメインでぶん回して秋刀魚85占守2
満足じゃ

おつ
648 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:50:52.26 ID:8TRS/tjI0
木曾「いってぇ…」

多摩「そんなに痛むにゃ?」

木曾「いや痛さとしては全然気にならないレベルなんだけどさ。地味ーにジワジワくる感じが凄くイラッとくる」

球磨「鼻真っ赤クマ」

大井「北上さん、納豆いります?」

北上「あ、貰う貰う〜」

朝食は納豆派である。
649 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:51:31.51 ID:8TRS/tjI0
さて作戦はどうなったかというと、語るに落ちると言った感じで。

明け方トイレに起きた木曾が寝ぼけ眼でバケツに顔面から直撃したという運びだ。

上手くいかないもんだね〜。

北上「ゴメンね、変なとこに置いちゃって」

木曾「いやいいよ。こっちも寝ぼけてたしな」

球磨「せいっ!」グシャ

多摩「…なんで卵が出るたびに片手で割ろうとするにゃ」

球磨「で、できたらカッコイイと思ったクマ」

大井「拭くものもらってきますね」

球磨「スマンクマ…」
650 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:52:15.70 ID:8TRS/tjI0
北上「球磨姉球磨姉」

球磨「クマ?」

北上「ほっ」タマゴカパッ

球磨「なぁっ!?」

多摩「北上煽るんじゃないにゃ」

球磨「木曾!それ寄越すクマ!」

木曾「やだよ!絶対失敗するだろ!」

球磨「貰いぃ!」

木曾「あぁ!」

球磨「てやぁ!」ゴシャ

木曾「あぁ…」

北上「うわぁ…」

多摩「にゃぁ…」

大井「球磨姉さん…?」スッ

球磨「ヒッ」
651 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:52:53.01 ID:8TRS/tjI0
北上「よいしょっと」

昼前。

自慢の魚雷を担いで出撃の準備をする。

と、勿論担ぐ必要はないのだが。

今度はこれで、
652 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:53:45.02 ID:8TRS/tjI0
北上「出撃めんどくさいな〜」

多摩「それを言ったら終わりにゃ」

北上「ただのパトロールじゃん?いらないじゃん?」

谷風「こういった所を怠らない事が大切なのさ。提督はそこんとこよぉ〜く分かってるからねえ」

伊勢「ほらほら、みんな準備して〜」

北上「魚雷重いなぁ…軽巡の頃は軽くてよかったよ」

多摩「まあ確かに量は増えたにゃ」

谷風「かぁーなっさけない。それでも軍艦かい?」

北上「ちぇー、皮かぶっちゃって」

谷風「そっちは猫被りだろ?お、リベが来たね」

多摩「北上お昼はどうするにゃ?」

北上「ん〜そだねー。うどんとか?」
653 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:54:20.17 ID:8TRS/tjI0
取り留めのない会話をしつつ多摩姉に近づく。

よし、ここなら当たるはず。

多摩「うどんはやっぱりオクラだと思うんだにゃ」

北上「私はとろろかな〜。あっ、蝶々だー」ブン

上半身を右に思い切り振る。

担いだ魚雷が勢いよく、多摩姉の後頭部めがけて振られる。

唸れ!黄金の魚雷!

リベッチオ「ヘブンッ!!」ゴチン
北上「えっ」
多摩「にゃ!?」
谷風「うわー…」
654 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:54:52.87 ID:8TRS/tjI0
どうなったかといえば、

何を思ったか思いっきり助走を付けて多摩姉に飛びついていったリベの顔面に魚雷が思いっきり当たった次第である。

飛びつかれる側の負担を一切考慮しない飛びつきと遠心力を加えた魚雷のスイングが見事にジャストミートした結果、場外ホームランが生まれたのだった。

飛んでったのはボールではなく意識なのだけど。

幸いにも出撃前の艤装装備時のことなので鼻血すら出ず、まるでギャグ漫画の如く仰向けで倒れるだけですんではいるが。

伊勢「え、何今の音?」

リベ「」チーン

北上「あはは…いやちょっとね」

多摩「ふ、不幸な事後がにゃ…」

谷風「おぉー白だねえ」ピラッ

多摩「こらっ」ペシッ
谷風「あいたっ」
655 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:55:29.30 ID:8TRS/tjI0
多摩「リベちゃんの部屋ってどこだったかにゃ」

北上「海外組だし4階だよ」

お昼の後。

私達は階段登っていた。

最早手段を選ぶ余裕はない。今までも大概だったけど。

やるしかない。
656 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:56:06.57 ID:8TRS/tjI0
3階と4階の間。

周りに人気はない。

私が前、後ろに多摩姉。

ええいままよ!

北上「うわっ」ズリッ
多摩「にゃ!?」

足を滑らしたていで多摩姉の体に体当りする。

転げ落ちるというより踊り場にすっ飛ぶ形になるはずだ。

大丈夫!艦娘だし!大丈夫、大丈夫?

飛んだ反動をそのまま回転に利用し、にゃんぱらりんと着地する。

北上「ほっ」スタッ
多摩「にゃ」スタッ



あれ?
657 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:56:38.33 ID:8TRS/tjI0
多摩「大丈夫かにゃ?」

北上「う、うん。多摩姉こそ、大丈夫、みたいだね」

多摩「気をつけるにゃ。艦娘とはいえ何があるかわからんにゃ」

北上「ごめんごめん。怪我人のお見舞いに行くのに怪我してちゃ世話ないよねー」

多摩「まったくにゃ。まあ周りに誰もいなくてよかったにゃ」

北上「だねー」


忘れてた。

いや忘れてるのは多摩姉で今まさに思い出させようとしているのだけれど、

私達は猫だったのだ。

この程度で怪我をするドンくささは持ち合わせていない。
658 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:57:04.78 ID:8TRS/tjI0
北上「もうだめぽ」

神風「何かよっぽどの事とお察ししますがだからと言って私の袴に顔を突っ込まないでください」

北上「え〜」

黙々と、淡々と言われた。

神風「話しなら聞きますから後数ページ待っててください」

北上「うい」

助けを求めに図書室に来ると神風が本棚に背を預ける形で座り本を読んでいた。

ので袴に芋虫の要領で顔を突っ込んでみた。

ところで猫は狭いところが落ち着くものだが私はそうでもない。

それでも袴の中はなんというか心地よかった。
659 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/03(金) 02:57:52.01 ID:8TRS/tjI0
秋刀魚漁に疲れて燃え尽きていました

あれこれなんのゲームだっけ
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/03(金) 12:35:50.63 ID:uJyNhjHT0
資源を集め年数回盛大に吹っ飛ばしてニヨニヨするゲームだったはず
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/03(金) 16:59:05.09 ID:NEpbq/V70
>660
その通りだね、後、新規艦娘のおっぱいをぷるんぷるんするゲーム
涼月はでかいぞぉ〜
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 09:30:50.27 ID:90srvaLP0
おい北上さんその袴の中ちょっと代われ(血涙)
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 23:42:19.09 ID:G47zqZum0
いなかっぺ大将ネタとは…
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 11:55:38.62 ID:EJVCjUyC0
乙です。
え?意地張り通すべくwiki信じて5-3空母入れたまま攻略しようとして、いつのまにか高確率で逸れるじゃなくて確定逸れと分かったらしいって聞いて愕然とするゲームだろ?

それと年一回秋刀魚を集めるゲーム。
665 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/13(月) 02:44:34.14 ID:ZyLHAVHx0
北上「寝そう」

神風「って何してるんですか!?」ゲシッ
北上「ぐぇ」

文字の世界から現実に戻った神風がようやく現状を理解したらしく容赦のない蹴りをかましてきた。

北上「ぐおー…なんの本読んでたの〜」

神風「もりのくまさん。処刑人の方の」

北上「あーあれね」

羞恥心からか若干涙ぐむその幼い容姿からは想像もつかないくらいエグいもの読んでやがる。
666 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/13(月) 02:45:15.70 ID:ZyLHAVHx0
神風「記憶を戻す方法?」

北上「はい」

現在の姿勢。正座。

神風「北上さん記憶喪失なんですか!?」

北上「あーいや、私じゃなくて。でも同じようなものなのかな〜」

神風「んー、イマイチ要領を得ませんね」

北上「まああんまり深く考えずにさ、物語上でよくある記憶喪失って感じに考えて」

神風「方法ねぇ。定番なのは頭に衝撃を与えるやつですよね」

北上「だよね〜」

もうやり尽くした、とは言えないな。
667 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/13(月) 02:46:19.03 ID:ZyLHAVHx0
神風「科学の発達した今だからなにか馬鹿馬鹿しい方法に聞こえますけど、記憶や意志が魂に宿ると言った考えの名残って感じで私は好きですね」

北上「確かに今じゃあまりに危険な方法だよね。壊れた家電製品を叩いて治すようなもんだし」

神風「昔みたいな簡単な作りならともかく、今の家電は精密機械ですからね。そこへいくと人間の脳も精密機械、もしくはそれ以上ですから」

叩くなんて以ての外、と言ったふうに語る。

めっちゃ叩こうとしちゃってたよ私。

神風「後は入れ替わりなんかも同じですね」

北上「入れ替わり?」

神風「ほら、角で男女がごっんつんこして入れ替わっちゃった!ってアレですよ」

ザ・少女漫画。どうでもいいけどごっつんこって言う神風カワイイ。
668 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/13(月) 02:47:05.25 ID:ZyLHAVHx0
北上「改めて言われると凄い発想だよね。メモリーとメモリーを叩き合わせたら中身が入れ替わるなんて」

神風「だからやっぱり魂こそが人の根幹であり、体は入れ物という考えから来たものなんでしょうね」

北上「なるほどねぇ」

確かに、私にとってこの体は入れ物だ。

神風「荒っぽいのはなしだとして、後はキーワードですよね」

北上「定番だね」

事実、多摩姉が思い出しかけたきっかけも麦畑というキーワードだ。

残念ながらきっかけ以上の効果はあれ以降見られていないけれど。
669 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/13(月) 02:47:56.41 ID:ZyLHAVHx0
北上「ところでさ」

神風「はい?」

北上「足が痺れてきた」
神風「ダメです」
北上「はい」

神風「後はー、五感に訴えるですかね」

北上「五感?」

視覚聴覚味覚…嗅覚!後は〜ああ触覚か。

神風「物語上でいうなら、例えば思い出の場所に連れて行ったり、写真を見せたり音楽を聞かせたりとか。臭いや触覚はあまり出てこないですけど」

北上「五感かぁ」

視覚と嗅覚。とくに嗅覚は結構効果あるかもしれないな。猫だったし。でも何を使えばよいのやら。
670 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/13(月) 02:48:34.78 ID:ZyLHAVHx0
神風「思いつくのはこれくらいですね」

北上「ありがとね。やっぱこういうのは自分以外に聞いてみると意外な発見があるもんだよ」

神風「お役に立てたようで何よりです」

北上「さてでは」
神風「私が読み終えるまではそこに正座です」
北上「そんなにっ!?」

神風「日頃の分も含めてですよ」ジトー

北上「うっ」

それを言われると弱い。

北上「仕方ない。代わりに私のパンツを見せてやろう」ピラッ

神風「キャーー!何してるんですか!」

キャーが似合う系女子。顔を背けつつしっかりとチラ見してる当たりが高得点。
671 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/13(月) 02:49:20.96 ID:ZyLHAVHx0
北上「普段から見慣れてるし見られ慣れてるからねえ」

神風「ま、まあ確かに…」

艦娘の常である。

北上「大井っちなんかも露出度上がってがっかり来てたみたいだし」

神風「そうなんですか?」

北上「直接聞いたわけじゃないけど、最近少し元気ないからさ」

神風「意外です。なんていうか、そのー、北上さんさえいればって感じに思えたので」

北上「ふふ、結構大井っちは乙女なところあるよ」

それじゃ、と図書室を出る。



よし!脱出成功!!
672 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/13(月) 02:52:24.37 ID:ZyLHAVHx0
年末に向けて順調に更新が遅くなってますね…

レイテ怖い
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 03:05:43.65 ID:OtRB2vO00
大丈夫
最近は煩雑で理不尽なだけで難しくはない
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 10:30:20.36 ID:wuKi1S+z0
(ギミックが)煩雑で(夜戦が多めで)理不尽そうな今度のイベ
よし!2、3日は様子見だ!
更新お疲れ様です
675 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:49:40.69 ID:RbKvlfqg0
北上「うーむ」

しかし困った。

五感に訴えるとして、使えそうなのは嗅覚とか視覚かな。

嗅覚ってどうすんだ?

麦の匂いと言われてもねえ。

日向「おっと」
北上「むぐっ」

おお、ちょうど目の前に柔らかいクッションが。

日向「いや離れてくれないか」

北上「ごめんごめん」モミモミ

曲がり角でごっつんこ、とはならなかった。
676 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:50:48.25 ID:RbKvlfqg0
日向「五感、匂い、ね。一体何がどうしてそういう話になったんだ?」

北上「まあまあそこら辺は気にせず」

相談がある、と言ったら日向さん(と伊勢さん)の部屋に招かれた。

以前は部屋の半分が本棚、もう半分が船や飛行機の模型となっていたが図書室の完成により99%模型になっていた。

日向「何か案はあったのかい?」

北上「ん〜、とりあえず小麦粉でも嗅がせようかと」

部屋の中央のテーブルを挟み向かい合うように椅子に座る。

肘掛に手を置きいつもと同じ朴訥とした表情で話す日向さんはなんという貫禄を感じる。

日向「それは小麦粉の匂いだよ。麦畑というのならきっと、その土地の匂いであって麦自体の匂いではないだろう。私も詳しくは知らないけれど、麦はそうわかり易い匂いを放つ植物ではないはずだ」

北上「言われてみれば」

流石に安直すぎたようだ。
677 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:51:26.14 ID:RbKvlfqg0
日向「そもそも私達は五感、というか人間的な感覚が鈍いからね」

北上「鈍い?」

日向「砲撃音や被弾、至近弾による爆音に晒されても鼓膜はおろか精神に影響すらない。血や硝煙の臭いを嫌がる事もなく、彼方まで続く海からの照り返しに目を痛めたりもしない」

北上「そりゃあまあ船だしね、私達」

そんなんに一々反応してたら三日と持たずに海の藻屑だろう。

日向「私達は人に近い形をとっているが、それはつまり人とは決定的に違うということさ」

北上「人とは、違うね確かに」

船だったり猫だったり鳥だったりだ。

思えば猫の時に感じた匂いを今再現するのって中々無茶だよね。

何を迷走してるんだか。
678 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:52:07.32 ID:RbKvlfqg0
日向「『艦娘を殺すなら砲弾や魚雷ではなくナイフで動脈を切れ』なんて言葉がある。これは、なんだったかな。元ネタがあるらしいが。海外だったかな」

北上「なにそりゃ。初耳だよ」

日向「1種のブラックジョークってやつなんだろう。我々は怪我に鈍いからね。艤装が壊れても服が破けても体から煙が出ていてもバケツを被れば治る」

ここだけ聞くと爆発で髪の毛アフロになる世界の住人みたいだよね。

日向「逆に切り傷のような、艤装を付けていない生身の時の怪我に弱い。バケツじゃ治らないからね。そしてその事にひどく無自覚だ」

北上「でも実際そんな事あるかね。そりゃ本能的にヤバイと思えなくとも血が出るのがヤバイって知識はあるじゃん?」
679 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:52:50.41 ID:RbKvlfqg0
日向「以前に、誰とは言わないけれど駆逐艦の1人が包丁で指を切った事がある。本人はうわ血が出たという程度の反応だった様だが、他の者が一乙止血やら消毒やらの知識があってな。だから水で指を洗って清潔なタオルで傷口を抑えた」

北上「正しい、かどうかイマイチ私にゃ分からないけど。でも問題なさそうに思えるね」

日向「その場にいた1人が提督室に来たんだ。何せ艦娘相手に包帯やらなんやらを使う事はあまり無いからな。その手の道具は提督室にある」

北上「へー。そりゃ知らなかったよ」

以前に提督窓から落ちたのを思い出す。

なぜ提督室で看病してたのかと思ったがそれが理由か。
680 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:53:36.83 ID:RbKvlfqg0
日向「その時は私と提督が部屋にいた。そして部屋に来た駆逐艦は苦笑いしながらこう言った。妹が料理中に指を切ったから絆創膏が欲しい、と」

そういえば私は包丁を握った事がないな。

料理に興味はないからいいけれど。

日向「その顔を見て提督は何をやってんだ気をつけろと言いながら絆創膏を渡したんだ。そして少し気になるから一応私に付いていくように言った」

北上「なんだかオチが見えてきた気がする」

日向「まあそうなるな。ともかく私も台所についた。そこで見たのが、ケロッとした顔でこれどうしたらいいの?と問いかけてくる駆逐艦と、文字通り真っ赤に染まったタオルだった」

あれ、予想よりヤバそうなんだけど。
681 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:54:35.65 ID:RbKvlfqg0
日向「それほど大きくないとはいえタオルが一色に染まり、それでも吸いきれなかった血が滴り落ちるというのが本来どれほど危険な状況か。キミには説明する必要はないだろう?」

北上「別に詳しいわけじゃないけどね。でも普通なら救急車案件だよね」

人によっては痛みや、その惨状を見て気絶、なんて事も考えられる。

勿論医学的にとかじゃなく推理小説とかの展開的に、なのだが。まあ見当はずれな予想でもあるまい。

日向「文字通り痛感というやつだね。いかに人に近いと言っても、根本的に人間らしさが足りないのさ。私達はね」

北上「うーん。そりゃ確かに艦娘として人とはズレているところは多いとは思うけどさ。そこまでじゃないと思う」

日向「ほう」

相変わらずぶっ飛んだというか、極端な意見を言う日向さんに反論してみる。
682 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:55:09.72 ID:RbKvlfqg0
北上「痛みとかは人間らしさともいうより生物らしさでしょ?五感が鈍いのはその通りみたいだけど、文学的な人間らしさなら私達は十二分にそれがあると思うけど」

日向「例えば?」

北上「姉妹とか」

私の家族とも言える球磨型の皆を思い出す。

北上「恋しちゃったりとか」

恋する乙女な大井っちを思い浮かべる。

北上「そういうの」

提督の事を、思い返す。

日向「なるほどな」

といいつつ急に前のめりになって碇司令のあのポーズみたいな格好をする。

なんだかこちらも身構えてしまう。
683 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:55:47.60 ID:RbKvlfqg0
日向「確かにそうだ。それは人間らしさであり、私達はそれを持ち合わせている」

あ、これは否定されるパターンだ。

日向「だがそれは私達が持って生まれたものでは無い」

北上「ん?でもそういうものじゃないの?人間は幼い時に親や近しいものから受けた、色々で、人間らしさを会得するわけじゃん」

愛情、とは言えなかった。世の中がそれほどドラマチック出ない事は知っている。

日向「そうだな。例えば狼に育てられた人間という話を聞いたことがあるが、おおよそ人間らしさと言えるものはなかったらしい」

北上「へー」

ヤバイ。もののけ姫しか浮かばない。

あれはかなり人間らしかったよね。

あ、育ての親が人語を喋れるから別か。
684 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:56:20.19 ID:RbKvlfqg0
日向「でも私達に親はいないだろう」

北上「強いて言うなら、妖精さん?」

親、親かあ。アレは生みの親ではあるかもだが、親ではないなぁ。

北上「でもほら、姉妹艦とか。そうでなくとも色んな艦娘がいるじゃん。親代わりみたいな」

日向「ではこう考えよう。誰もいない鎮守府に1人の提督と、生まれたばかりの駆逐艦が1人やってくる」

北上「提督が親か」

日向「親どころではないさ。唯一の人間だ」

人間、という言葉を強調する。
685 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:56:48.07 ID:RbKvlfqg0
日向「今現在でも提督はこの鎮守府における唯一の人間だよ。それこそが提督であり、だからこそ私達に必要なんだ」

北上「ちょっとタンマタンマ。話がぶっ飛び過ぎだって」

流石についていけなくなる。この人いつもこんな事考えてるのかな。

この人、か。

北上「確かに提督が大元なのはまあ分かるけどさ。それってこう、なんだろ」

上手い例えが出てこないな。

北上「うーん、言い方は悪いけどウイルスの発生源みたいな話でしょ?大元なのはそうだけど、1度感染してそこからまた広がっていったらもう発生源はあまり関係ないじゃん」

日向「提督はウイルスか」

北上「なんでそこだけ真に受けるのさ」
686 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:57:29.83 ID:RbKvlfqg0
日向「元、というなら女王蜂と言った方が正しいだろうね。男女比は正反対だがね」

北上「女王蜂って…」

あれ、思い返してみると確かに私達のやっている事って働き蜂のそれと同じじゃあないか。

なんか釈然としないな。

日向「人と違って私達には生まれた時から人格がある。だがそれは型に過ぎない。言わばまだ白紙の塗り絵だ」

なんだがロマンチックな言い回し。

日向「考えた事はないかい?世の中には私と同じ日向が沢山いる。それは確かに同じだったろうけれど、実際会ってみるとその性格には差異がある」

北上「他の鎮守府の自分かあ。私は会ったことないや」

私はなにせ中身がアレなもんだから他所の北上を自分だというふうにあまり見れない。
687 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:58:09.76 ID:RbKvlfqg0
日向「常に帯刀してる危ない私や妙にイケメンな私や一言も喋らない私や、瑞雲狂の私なんかもいたな」

北上「瑞雲?」

何故に。

日向「同じ日向なのにこうも違いが出る。何故か。それは提督の影響だ」

提督と言い切る。すごい自信だ。

日向「鎮守府の最高責任者は提督だ。運営方針もその提督次第で異なる。極端な話、ルールに厳格で根っからの軍人基質な提督の鎮守府であれば、私や皆もそれに沿った性格になっていただろう。ウチの提督は、まあそれの真反対だな」

北上「確かに。うん、そうだね」

うんうんと頷いてしまう。

トップの意向にそうというのは一般社会でも同じかもしれないが、私達にとって鎮守府こそが生活であり全てだ。その影響はもろに出る。

なんたる社畜。
688 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:58:42.21 ID:RbKvlfqg0
北上「そういや何処ぞの鎮守府じゃ毎日艦娘と淫靡で淫らな生活を送ってるなんて話を聞いたことがあるよ」

日向「つまりそういう提督であり、そういう艦娘になったという事だ」

北上「…なんか洗脳じみてて怖いね」

日向「何をもって洗脳というか、だな。穿った言い方をすれば親が子供を躾るのを洗脳ととることも出来る」

北上「それは穿ちすぎでは…」

日向「私達の場合は刷り込みと言うべきだろう。元々染まりやすく出来ているのさ。提督色にね」

北上「刷り込みって…ああ鳥が最初に見たものを親と思うってやつか」

日向「それだ」
689 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:59:09.03 ID:RbKvlfqg0
日向「私達は無意識に色々と刷り込まれてるのさ。例えば姉妹。当たり前のように姉妹とされているが、それは誰が言い出した?

元来船の姉妹というのは同型艦の呼び方の1種であり、それだけでしかない。実際作戦などで姉妹艦と行動する機会は殆どないことが多いし、生まれの時期に差があれば一度も合わずに終わる事すらある。

それを人の姉妹のように受け取り、そうあれと願っているのは提督だ。部屋割りや作戦時の編成にもその意識は現れる。そしてそれが私達の意志になる。

勿論姉妹として扱わない提督もいる。その場合その艦娘もそれ相応の者になっていたが。

他には、そうだな。鎮守府の上下関係かな。

軍艦としての年齢、艦娘としての年齢。戦績、実力。ふっ、提督のお気に入りかどうか、なんて。鎮守府によって異なるがそれはそこでは当たり前の常識となる。

また… 」

上下関係か。ウチは、上から戦艦や空母、重巡、軽巡、駆逐艦、みたいな感じかな。あらためて考えると潜水艦だけ特別枠な感じだ。

しかしいつまで話すつもりだこの人。段々話が頭をすり抜けてきた。谷風を彷彿とさせるがこっちは内容が濃いのでついていけない。
690 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 02:59:43.54 ID:RbKvlfqg0
日向「

そして提督が居なくなると崩壊する



北上「え?」

不意に飛び込んできた言葉に意識を戻された。

日向「戦闘の結果鎮守府が壊滅するという例はいくらかあるが提督が居なくなるという例は少ないからな。あまり意識することもないだろう」

提督が、提督だけが居なくなる。

日向「この戦争が始まってまだ四半世紀もたっていない。寿命や病気でこの先そういった問題は増えていくとは思うが」

そういえば、提督は2代目だと言っていた。

だとしたらその数少ない例がここなのでは。
691 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 03:00:59.02 ID:RbKvlfqg0
北上「問題、なんだ」

日向「そう問題だ。染まりやすい。だが一度染まればその色は中々変わらないのさ。適応ができない」

北上「…つまり次の提督に、適応できないと」

日向「多くの場合はな。人は大勢の他人から自己を形成するが艦娘は提督1人からなる。女王蜂がいなくなった巣は、どうなるだろうな」

例えば提督の事を嫌いな艦娘はいない。likeではなくloveのほうで提督の事が好きな艦娘も多い。

その提督が消えたら、どうなるか。

日向「五感や人らしさも全て、提督からもらった仮初のものなのさ。結局のところ」

北上「なんというか、ぞっとしないね」

日向「好き好んで考える話題ではないかもな」

なら話すなよと目で訴える。
692 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 03:01:49.47 ID:RbKvlfqg0
日向「だから私は本を読むんだ」

北上「だから?」

日向「提督以外の好きな物であり、私が自身で見つけた趣味であり、私の個性であり、私の証明だからだ」

北上「なんでわざわざ」

日向「…提督を失った鎮守府を、知ってるからさ」

それってつまり…
693 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 03:03:55.86 ID:RbKvlfqg0
北上「はぁ…」

提督室に向かう途中、思わずため息が出た。

日向さん。吹雪に負けず劣らずの変人だ。

個性が光りすぎてる。

年長者は変人しかいないのだろうか。

いや色々と年を重ねるうちに変人になるのか?

あまり考えたくないなそれは。

少なくともあんなアドバイスの仕方をするようにはなりたくない。
694 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 03:04:26.07 ID:RbKvlfqg0
日向「つまり提督に相談してはどうかという事だ」

北上「え、今の壮大な話からそんなありふれた結論に帰結するの?」

日向「意外な回答は見ていて面白いが解決を望むならあまりオススメはしないぞ」

北上「いやそういう話ではなく」

日向「なに簡単な話さ。その手の人間らしさならば人間である提督に聞くべきというだけの事。まああまり期待できる相手でもないか」

さりげなくディスって行くスタイル。
695 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 03:05:57.11 ID:RbKvlfqg0
目的地周辺、回想を終了いたします。

北上「結局ここか」

2代目の、提督の部屋。

その事を頭の片隅に押しやる。

朝から色々あって身体も脳もへとへとだ。

ここらで休憩が必要だろう。

さて安らぎの空間へ、

北上「お邪魔しま〜す」
696 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/17(金) 03:10:47.18 ID:RbKvlfqg0
日向には何か難しい事を言って欲しいと思ったけど自分でも何言ってるか分からなくなってきた。もうやらない

アナタの日向はどんな日向?
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/17(金) 11:55:34.71 ID:ASoTo+nc0
乙です。
瑞雲瑞雲言いながらカバディしてる日向さんです、瑞雲を受けとると退いてくれます、瑞雲教に入ると手伝わされます。

嘘だけど嘘じゃないかも。
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/17(金) 13:28:22.86 ID:mJWKA6K10
低速戦艦最古参として幾多の海域の攻略を成し遂げた生真面目な武勲艦だよ
瑞雲瑞雲唱え続ける不審者ではない
699 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:13:53.86 ID:hFvFWQV80
提督「珍しいな。お前が本も持たずにここに来るなんて」

北上「別に本が目的じゃないもん。静けさを求めてここに来るのであって、読書はあくまでその静けさの中で最もやりたい事なだけ」

提督「んーよくわからん」

北上「まーつまりここが好きなのさ」

提督「ここがねえ。でも今は図書室もあるんだろ?」

北上「そりゃあ…まあ、そうねぇ。なんだろ、ここに慣れたというか、落ち着いちゃった?」

提督「いや俺に聞かれてもな。落ち着くなら、別にいいんだけどな」

そういって椅子ごとくるりと回りそっぽを向く。

なんか邪魔しちゃったかな?
700 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:14:46.36 ID:hFvFWQV80
北上「ん〜〜…ッ!」

とか思いつつくつろいじゃうんだけどね〜。

ソファーに寝転び猫のように思い切り伸びを1回。

提督「猫かお前は」

北上「え」

提督「あぁいや、その気持ちよさそうな伸びがさ」

北上「あはは」

ちょっとドキッとした。
701 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:16:24.63 ID:hFvFWQV80
北上「提督はさ、何か思い出したいのに思い出せない時とかってどうしてる?」パタパタ

提督「ソファーの上で足を揺らすな。思い出したいのに思い出せない?忘れてるってことか」

北上「そうそう。絶対記憶のどっかにはあるのにそれが見つからない〜みたいな時」

提督「んーなんか難しいな」

北上「テキトーでいいよテキトーで」

提督「そーだなぁ。まだ覚えてる時の自分が残したものを探すかな」

北上「残し、え?何それ」

提督「メモとかなんか残してるかもしれないだろ?それすら忘れてるだけで」

北上「おー…おー!」

提督「おー?どしたどした」

思わず声が出た。それくらいには意外な回答だった。
702 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:17:08.17 ID:hFvFWQV80
北上「目からウロコとはこの事だね。まさか提督なんかからこんな答えが出るとは」

提督「さり気にディスってないかおい」

北上「自分の胸に手を当てて考えてみるとよい」

提督「あ言ったな、後悔するぜ」

そう言うと机の横に立て掛けられていた板を持ち出した。

あ、ホワイトボードか。

提督「じゃん」

北上「わお、こりゃ凄いや」

ボードの上にはメモ用紙や文字がびっしり並んでいた。
703 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:18:04.84 ID:hFvFWQV80
提督「これでも提督の業務ってのは色々と忙しくてな。こうして書いてわかりやすくしてるのさ」

北上「へーなるほどねー。いやはや見損なったよ提督」

提督「それを言うなら見直しただろ〜」

北上「いやいや合ってる合ってる」

提督「え」

北上「これ殆ど吹雪の字じゃん」

提督「あ」スッ

さり気なく戻そうとするホワイトボードの端を掴んでぐっと引き寄せる。
704 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:18:44.52 ID:hFvFWQV80
北上「一人称に私とかあるし」

提督「いや」

北上「提督って二人称あるし」

提督「その」

北上「これってさ」

提督「あのね」

北上「提督がすぐ仕事忘れるからわざわざメモ残してくれてるだけだよね」

提督「ハイ」

蚊の鳴くような声で返事を返す。

鳴くというか泣きそうな声で。
705 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:19:40.44 ID:hFvFWQV80
提督「いやあのね、提督も男なんですよ」

北上「ほう」

提督「見栄を、張るんです」

北上「ほう」

提督「良く、見られたいんです…」

北上「何故私に張ったし」

提督「いやぁ…」

北上「…」

男ってめんどくさいなー。
706 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:20:49.96 ID:hFvFWQV80
提督「実際さ、これだけの人数を動かして資材資源の管理や食費やら電気代やらなんやらとはっきり言って一人でやる事じゃないと思う」

北上「うん、実際一人でやる人はいないと思う」

何のために秘書艦がいると。

提督「だから仕方ない」

北上「いや提督はもうちょっと、かなり働こう」

私が特になにかしているわけじゃないけど、流石に吹雪の負担が大きいのでは。

提督「人間大切なこと以外は中々覚えられないものじゃん?」

北上「提督業務は大切じゃないというのか…」

いったい何が大切なんだろう。まさか大井っち?

もしくっついたらサクッと引退しちゃいそうだなこの人。

人間かあ。それともやはり私達と提督とじゃ何か根本的に違うのかね。
707 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:21:38.58 ID:hFvFWQV80
提督「そういや北上って英語読めるんだよな」

北上「へ?うん、まあね」

それは覚えてるのか。

提督「丁度いいや。見せたいものがあってさ」

北上「見せたいもの?何何、サプライズ?」

提督「んな大層なもんじゃないけどさ、丁度お互いに暇だし」

北上「暇なの?」

吹雪「暇じゃねー!!」ドガッ

豪快な蹴りによるドアの開閉。いい加減なれてきた。

というかあのドアよく持つね。
708 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:22:24.01 ID:hFvFWQV80
吹雪「何のためにメモ残してると思ってんですか!」

提督「何を言う。次の出撃までは何も無いはずだぞ」

吹雪「あーりーまーすぅーちゃんと書きましたー」

提督「ああ?何処にもねーだろんなもん、ほら見ろよ」

吹雪「何言ってんですかほらここ、に、ない!なんで!?」

提督「書いたかどうかも忘れてちゃ世話ないぜ。指示がないなら俺は動かん!」

吹雪「いやトップが指示待ち人間誇ってどうすんですか!少しは自分で考えて動いてくださいよ小学生ですかあなた!」

提督「ちーがーいーまーすー力を蓄えてるんですぅー三年寝太郎なんですぅー」

吹雪「能無しの鳩が爪のあるふりしてどーすんですかいっそ永遠寝てろ」
709 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:23:07.90 ID:hFvFWQV80
提督「なにぃ?」

吹雪「なんですかあ?」


北上「おっとゴミ箱に何やらメモガー」
提督「おっと仕事を思い出したそれでワッ」ガクン
吹雪「おっと年貢の納め時ですよ寝太郎さ〜ん。もちろん3年分」グワシッ

提督「いやあ年貢より怒りを収めて欲しいかなあなんて」

吹雪「あはは」

提督「ははは」

吹雪「ふんっ!」ドス
提督「ごぉっ!?」

うわ入った、鳩尾入ったよぉ…
710 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:23:49.72 ID:hFvFWQV80
吹雪「あとは私が始末しとくんで」

満面の笑みで。笑顔とは本来攻撃的な意味があるというがなるほど、その通りだろう。

北上「ほ、ほどほどにね〜」

始末とは仕事の事だろうか、提督の事だろうか。私には知る由もない。

気にはなるけどタイミングもいいし部屋に戻ろう。

今の時間なら丁度、部屋には誰もいないはずだ。
711 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/11/20(月) 03:29:30.72 ID:hFvFWQV80
しおんちゃんエロい
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 11:20:44.09 ID:rDNSRtmSO
>>697-698

この温度差
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 11:40:13.54 ID:1TGd1Mf20
1さんお迎えしたのか・・・
E1Lで情報待ちの堀してるわ・・・
そろそろとっかかるかぁー
更新乙です
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 02:15:29.40 ID:eddIodbf0
ふぶきすき
715 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/03(日) 04:14:16.98 ID:1YbTad+m0
43匹目:cat burglar



意味:泥棒、空き巣

二階から侵入する空き巣とかを指してそう言う。

泥棒猫、猫泥棒。

最も私は入口から堂々と侵入しているのだけれど。

いや自分の部屋なんだから侵入とは言わないか。

強いて言うなら、プライベートに侵入する。
716 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/03(日) 04:15:22.66 ID:1YbTad+m0
日本には

例えば兄弟や友人、彼氏の家に遊びに来た時などにとりあえずその部屋にエロ本がないかを探す文化があるらしい。(夕張談)

艦娘である私にとってそれが果たして一般的にどれほど行われている行為なのかは皆目見当がつかないが、

そういった秘匿しているもの。秘密にしている何かを見つけるというのは実に背徳的で興味をそそられるというのは分かる。

気になる。

気になるけれどこれまで気にならないふりをしていたが、せっかくの機会だ。

存分に探索しよう。
717 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/03(日) 04:16:17.59 ID:1YbTad+m0
北上「よし」

場所、球磨型の部屋。

皆は今のところ出払ってる。

時間制限、最低でも1時間。

がっつり皆の私物を漁っていこう。

全員分漁るとなるとなかなかの量に思えるかもしれないけど、実のところ個々の私物の量はかなり少ない。

理由は単純部屋が狭いから。

私達が下手なだけという可能性は否定出来ないが四人部屋を5人で分けて使うというのはなかなか難しいのだ。

図書室の完成で私の荷物がかなり減ったのだけどその代わり球磨姉の作った棚が共用として置かれたので結局私物の量はあまり変わっていない。
718 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/03(日) 04:16:57.28 ID:1YbTad+m0
北上「まあ最初はやっぱ球磨姉だよね」

球磨姉の机に向かう。

仕事用というよりは勉強机と言った感じの木製の机。ほかも似たり寄ったりだ。

北上「さてと」

あまり躊躇せず上から棚を開いていく。

左棚右棚、横についてるタンスの上からひいふうみい最後に大きめの棚。

内容は釣り雑誌情報誌、何かの作戦の書類、誰かからもらったのか封の空いてない手鏡etc

北上「これは…」

様々な種類の熊のボタン。

集めてるのかな?それとも駆逐艦から貰ったとか。

しかしまあやはりこれといったものは何も無い。
719 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/03(日) 04:17:38.92 ID:1YbTad+m0
球磨姉は、はっきり言って何も無い。

いやこの表現は少し違うな。

表裏がない。

360度どこからみても球磨姉ちゃんであり微分しようが積分しようが球磨姉ちゃんなのだ。

私達の頼れるお姉ちゃんなのだ。

北上「ん?」

これは、料理本!?料理なんてしないはずだが…

唯一付箋が貼ってあるページを開いてみる。

北上「そんなに片手で卵割れるようになりたいのか…」

なんとも球磨姉らしい。
720 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/03(日) 04:18:19.27 ID:1YbTad+m0
2番手、木曾。

なのだが、正直躊躇するものがある。

木曾はまず、絶対に何かある。その上でなんというか、見るのが怖い。

こう、痛々しいというか、見てるこっちが恥ずかしくなるようなものがありそうで。

具体的にいえば黒歴史的なにかである。

偏見かもしれないが。

まあ見るけど。
721 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/03(日) 04:19:23.37 ID:1YbTad+m0
まず出てきたのは剣道の本。

これはまあ普通。やってるし。

上から初級中級上級。

おや最後のこれは普通の本だ。

北上「どれどれ」

パラパラと流し見してみる。

うん。所謂ラノベ、勧善懲悪ものだ。

主に刀を持った主人公が活躍するやつ。
722 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/03(日) 04:20:24.30 ID:1YbTad+m0
いやいやこれくらいは普通だよ憧れるよ。

やってんだもん剣道。

私だって猫ってだけで猫の本読みたくなるもん。

さて二段目の棚に。

また剣道の本と雑誌。

そして最後に、刀雑誌。

北上「ワンパターン過ぎでしょ!!」

思わず声が出た。

それほど隠す気がないながらもなんとな〜く見られたくない的な気持ちが漂う配置。

なんだろうこのこっちまで心の隅っこ当たりをくすぐられる感じ。

世の母親は息子のエロ本を見つけるたびにこんな感じになってたりするのだろうか。
723 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/03(日) 04:21:09.37 ID:1YbTad+m0
いやいやいやでもね、剣道やってるしさ、本人も元から刀、軍刀?刃物さしてるしさ。

趣味がこうじてこういったものに興味を示すのも自然な流れだようん。

さあラスト行ってみよう。

北上「お」

ファッション誌?これは意外な。

そういえば皆で街に行く時はお洒落してくーなんて大井っちが言ってたっけ。

木曾も乙女なんだなあ。

その下もファッション誌ファッション誌ファッション誌ファ

北上「じゃなーい!」

一番下のファッション誌(表紙)を取り出し不自然に凹んでるカバーをつまんではずす。

タイトル:イケてる眼帯

北上「…」

そっちか
724 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/03(日) 04:22:19.93 ID:1YbTad+m0
ようやく色々と再開

E3輸送が辛すぎる
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 07:32:18.97 ID:9DGYIKoy0
ワロタwwwwwwwwww
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 09:59:29.90 ID:WLu5Nne/o
そっちか……しかしイケてる眼帯ってどんなのだ
727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 12:15:52.88 ID:RcCbv53L0
今から輸送ですか

間に合うのかE4(丙ならラクラク?)

更新乙です
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 14:25:51.58 ID:ODEmDp8c0
輸送が辛い
道中が辛い→青葉鬼怒浦波を混ぜれば伊勢型1+大鷹を入れても最短コース
まだ辛い→道中支援を入れましょう
Sが取れない→Aでいいのでいらん
729 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 02:52:27.43 ID:RF25deVt0
大井っちの机は他のみんなとは違って色々なものが置いてある。

そもそも私も含めて机を使う事が皆少ないのだ。

何かを書くための最低限の文房具と小物を除けばあとは雑誌や本が仕舞ってあるだけ。

基本的に外か海にいるし今は大抵の事がスマホで出来るのが原因だろう。

球磨型には机を使うような趣味を持つ人がいないし。

そんな中大井っちの机には、例えば裁縫道具やアクセサリー、色々な色のペンやヘアピン櫛髪留め。

雑誌や本も裁縫料理ファッションなどなど沢山ある。

マヂ女子力ちょぉ高い。球磨型の女子力は全て大井っちに集約されていると言っても過言ではない。
730 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 02:53:16.20 ID:RF25deVt0
私の髪を梳いてくれるのも、結んでくれるのも大井っちだ。

今使っている髪留めも大井っちの自作だとか。

改めて考えると大井っちに色々やってもらい過ぎである。

向こうが好きでやってくれているとはいえ。

北上「ありがとね」

流石になにか覗くようなものもないし、本命に行くとしよう。
731 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 02:53:52.54 ID:RF25deVt0
北上「ゴクリ」

と口に出してみる。

いよいよ大本命。

あるかどうかは分からないけど。

さて中身は、

まずは猫関係の本。

いちいち反応してたらキリがないな。

次だ次。
732 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 02:55:31.96 ID:RF25deVt0
北上「あ」

トランプゲーム攻略本だと?この前からやたらとトランプゲームを推してくると思ったら…これか。

しかも戦績は特に良くはない。

これは、CDか。随分古いものだ。

タイトルは『カレーライス』。なんで?

んー他も大したものはないなあ。

これは、メモ帳かな?

〇月〇日、皆で海に行った。

北上「うおっ!」

つい手を離してしまう。

まさか日記帳かこれ!

多摩姉がこんなもの付けてるとは…
733 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 02:56:13.05 ID:RF25deVt0
日記帳の下には同じ日記帳がビッシリ詰まっていた。これだけの量。着任当時からつけていたに違いない。

大当たりを引いてしまった。

恐る恐る一番下の日記帳を取り出して、開く。

北上「って、ありゃ。やぶけてら」

前半のページがごっそり無くなってる。

残ってるのは…四年前の日付か。

〇月〇日、全部回収された。今日からここが最初のページになる。でも忘れるわけにはいかない。他の娘もきっとそうだ。
734 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 02:57:01.02 ID:RF25deVt0
四年前?

というと、提督がここに着任した時期か?

でも回収ってなんだ回収って。

あれ、というか

北上「多摩姉っていつからここにいるんだ」

ここの艦娘は基本的に提督が来たあとに、つまりここ4年の間に着任している。

後は提督着任前からここにいるという吹雪、谷風。

でもだとしたら着任前からここにいるのは吹雪だけじゃないのか?

多摩姉も、それにあの口ぶりからして日向さんも。

他にもいるのか?

だとしたら何故。
735 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 02:57:35.41 ID:RF25deVt0
日向さん言ってたよね。提督が居なくなった鎮守府がどうなるか。そしてそれを知っているとも。

どうなったんだ?そもそもなんで前任者はいなくなった。

北上「…」

可能な限り綺麗に日記帳を元の状態に戻し引き出しを戻す。

さて面倒くさくなってきたぞお…
736 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 02:58:34.91 ID:RF25deVt0
阿武隈「北上さ〜ん。いますうわっ!?」

北上「」

阿武隈「あの、何やってるんですか…」

北上「」

阿武隈「そのままうつ伏せてると鼻潰れますよ…」

北上「頭痛い」

阿武隈「エッ!?な、何か病気とかですか!」

北上「そうじゃないけど」

阿武隈「私に出来ることありますか?」

北上「ん〜」

阿武隈「?」

北上「あぶぅの膝枕あんまり気持ちよくないしなあ」

阿武隈「おりゃ」ゲシッ
北上「ぐえ」
737 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 02:59:25.79 ID:RF25deVt0
阿武隈「もう!変な心配させないでください」

北上「ごめんごめん。ちょっと疲れただけ」

阿武隈「…でも、顔色はあんまり良くなさそうですよ」

北上「そう、かな」

阿武隈「そうですよ」

流石にきつくなって仰向けになった私の横に座る阿武隈が、シュンと頭を下げる。

力になれない事を気にしているのだろうか?

そういえば

北上「おりゃ」ワシャ
阿武隈「ヒャァッ!ななななんですか急に!」

北上「いやさ、提督が阿武隈の前髪ワシャワシャやってたの思い出して。嫌だった?」

阿武隈「いや、じゃあないです、けど」

あれ、提督の時と反応が違う。もっとプンプンと怒るのを想像してたんだけど。

なんだか複雑そうな顔をされた。
738 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 03:02:34.21 ID:RF25deVt0
ちょいとばかり顔を赤くしてコチラを睨みつけてくるその表情は、しかし残念ながら余計に弄りたくさせるものでしかない。

北上「いやじゃないならないいよねー」ワシャワシャ

阿武隈「エェッ!続けちゃうんですかあ!やーめーてー」

北上「あ、じゃあやめる」

阿武隈「え」

北上「ほらそうやって物欲しそうな顔をする〜」ワシャワシャ

阿武隈「キャー!!」
739 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 03:03:09.81 ID:RF25deVt0
ガラッ

北上「ん?」
阿武隈「?」

大井「この泥棒猫」

阿武隈「大井さん!?」

またこれか

ちなみにこの場合の泥棒猫は英語でhome wreckerとなる。

直接的な表現だよね。

阿武隈「北上さん現実逃避してないで何か言ってくださいよ!!」

北上「私ファンタならグレープがいいかなあ」
阿武隈「きーたーかーみーさーん!」
740 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/11(月) 03:07:47.22 ID:RF25deVt0
惜しみ無いキラ付けとフル支援は裏切らない。

もうすぐイベントも終わりですね。
私は最後の手段と拾った扶桑を必死にレベリングしているところです、
丙のラスダンなんで大丈夫です…
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/11(月) 08:33:22.90 ID:0B1FC0Jq0
あっ、あっ、あぁ・・・・

色々お疲れ様です

攻略出来たのだろうか・・・
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/11(月) 08:57:25.20 ID:C7FDj1CiO

がんばれちょうがんばれ
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/11(月) 11:40:57.54 ID:yZQByB420
開始半年の友人提督は扶桑は行けるが山城満潮ちょっと苦手で50レベルまで急いで育てました状態で丙問題無く行けてたよ
だからきっとなんとかいけてると信じたい
というか聞いてくれればみんな知恵を貸してくれるんだから早く聞こうよw
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/15(金) 01:03:42.96 ID:xZtK72FO0
続きが気になるぜ
特に吹雪の現提督への感情とか
745 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:41:57.45 ID:NNSlpbDu0
45匹目:猫と友人



一言で友人と言っても様々な種類がある、なんて言い方だとややもすればなんだか嫌な意味に取られるかもしれない。

親友とか友達とか腐れ縁とか、

立場上仕方なく付き合ってるとか便利だから友達やってるとか、

別にそんな友人にランクがあるなんて話じゃない。

例えば私も同じ球磨型姉妹でも一対一で話す時はそれぞれ違う対応をする。

他の艦娘や提督でも、それぞれ違った接し方になる。

ランクとかじゃなく、つまり距離感なのだろう。

近ければいいわけでも遠ければ悪いわけでもない。

その相手との最も適した距離が違うのだ。
746 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:43:03.37 ID:NNSlpbDu0
だからつまりこういった少し気分が落ち込んだ、

なんだかパァっと気晴らしをしたい時に適した、

ちょっと不思議な距離感の二人の友人を訪ねて

夕飯や風呂を終え少しずつ眠っていく鎮守府の中で昼間と変わらない明るさを漏らす工房の扉を開けて中へ入る
747 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:44:16.08 ID:NNSlpbDu0
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァァァァ!!」

夕張「っていうネタ」

明石「あるじゃん?」


北上「ネタという言い方はアレだけど、まああるね」



夕張「こう、愛し合う二人がさ」

明石「色々なんやかんやすったもんだあって」

夕張「最終的にキスをするシーンとかで」

明石「エンダァァァァァァ!!!」
夕張「イヤァァァァ!!」

明石「ってコメントがつくノリ」

夕張「あるじゃん?」


北上「あるね」
748 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:45:13.87 ID:NNSlpbDu0
明石「アレのね」

夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァァァァ!!」

夕張「の元ネタ」

明石「実は見たことがない」


北上「そだね」






北上「えそりだけ?」

明夕「「ソリダケ」



北上「ふz「エンダァァァァァァ!!!」「イヤァァァァ!!」誤魔化すなっ!!」
749 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:46:33.71 ID:NNSlpbDu0
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァァァァ!!」

夕張「ってほら、あの有名な」

明石「船沈むやつの主題歌」

北上「え?」

夕張「タイトル何だっけ」

明石「タイタニック!」

夕張「それだ」

北上「ボディーガードだよ」

夕張「え」

明石「え」

北上「え」
750 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:47:04.88 ID:NNSlpbDu0
北上「いやタイタニックはほら、We'll stay forever this way〜♪って」

夕張「え、何それ」

明石「知らない」

北上「うっそでしょ。My Heart Will Go Onて曲」

夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァァァァ!!」

夕張「じゃないの?」

北上「じゃないよ…」
751 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:47:40.64 ID:NNSlpbDu0
夕張「イメージって怖いなって」

北上「ホントだよ…」

明石「タイタニックって船の先端でのあのシーンと」

夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「イヤァ…ァ…ヴッ」

夕張「だけで出来てると思ってた」

北上「ファンに刺されても知らないよ…というか明石もう限界じゃん」

明石「水水…」

夕張「はいはい」

明石「んっ…ッハー!夕張よく喉持つね」

夕張「えっへん」

北上「いやそんじゃなくてさ」
752 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:49:10.61 ID:NNSlpbDu0
明石「よく考えるとタイタニックって私達にとっては中々えぐい話よねー」

夕張「流石に氷山を見る機会は無かったけど、ああいった事故でいつ沈むかわからないものね」

北上「あ、もうその話題で行くんだ。タイタニック路線なんだ」

明石「砲弾とか魚雷で穴あけられるのもいやだけど、浅瀬とか氷山とかで底をえぐられるのも怖いわよね」

夕張「今で言ったらお腹を岩でえぐられるみたいな感じでしょ?ゾッとするわね」

北上「…船の底ってお腹なの?」

明石「お腹、でしょ?」

夕張「艦首が顔で」

北上「つまり腹ばいになって進んでいると」

明石「うーん…」

夕張「なんかそう言われると」

明石「キモい」

北上「だよね」
753 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:50:12.50 ID:NNSlpbDu0
夕張「そこへいくと今の私達みたいに立って進むって1番しっくりくるわよね」

明石「確かに。となるとタイタニックは画鋲を踏んでスっ転んだイメージか」

北上「イメージかな…」

夕張「それで沈むってのも、ねえ」

明石「でも元来船ってちょっとバランス崩したら海の藻屑だものね」

北上「私達がそこら辺異常なだけだもんね。水上で逆立ちする奴もいるし」

夕張「画鋲ってのも言い得て妙かもね」

明石「本当に些細なことでも沈むものね」

北上「どんな感覚なんだろうね」
754 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:50:57.22 ID:NNSlpbDu0
夕張「…」

明石「…」

北上「…ん?」

夕張「」スッ
画鋲「ヨロシクニキー」

明石「」スッ

北上「待て待て靴を脱ぐな裸足になるな」

夕張「そこは誰かを実験体にせずまずは自分達で試す私達を褒めて欲しい」

北上「それは当たり前の事であって褒められることではない」

明石「押さないでよ!絶対押さn「そおい!」プスッ ギャァァァァァ!!!」

北上「楽しそうだね…」
755 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:51:35.16 ID:NNSlpbDu0
明石「条件反射的に叫んではみたけど意外と痛くはなかった」

夕張「はいバンソーコー」

明石「サンキュ」

北上「足の裏ってそんなに神経通ってるわけでもないのかな」

夕張「かもねー。そこら辺は人間と一緒なのかも」

明石「指しどころが悪かったか」

夕張「増やす?」

明石「おっきくする?」

北上「そこじゃないでしょおよ」
756 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:52:10.21 ID:NNSlpbDu0
明石「バケツかぶりゃ治るしさ」

夕張「戦艦の砲撃でワンパン大破されるよかマシよマシ」

北上「そーだけどさ。いやそうじゃなくてね」

明石「まあここら辺はまた次の機会にやろっか」

夕張「そうね」

北上「持ち越したまま墓まで持ってって欲しい…」
757 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:53:05.31 ID:NNSlpbDu0
明石「あれ、なんの話してたんだっけ」

夕張「装備改修における確実化はどの段階からやるのが最も効率的かみたいな話だった気がする」

北上「そんな難しくて答えのでにくい上にまともな会話をした覚えはない」

明石「何故ピンクは淫乱扱いされるのか」

夕張「おうおうおう。そんなスケベなスカート穿いて牛丼から瑞雲まで仕事を選ばない姿勢、さらには夏にドエロエプロンまで着ておいて淫ピを否定とはヤりますなあ」

北上「言い方言い方」

明石「夏のアレはもう触れないで…」

夕張「あゴメン。マジごめん。まって、ちょっまち、いやほら似合ってたから、ね。ああいかないでいかないで待って待てえ!」




北上「えぇ…」
758 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:53:49.38 ID:NNSlpbDu0
明石「見た目はともかくこのスカートは実は気に入ってる」

夕張「工房熱いもんねぇ」

北上「立ち直り早い」

明石「まあ結局普段はタンクトップとツナギなんだけどね」

夕張「軽い洗いやすい脱ぎやすい、比較的涼しい汚れやすいけど気にならない。臭いは、うん…」

北上「ブラも付けないってどうなのよ」

明石「むしろ食らったら破ける戦闘時にブラ付けてく方がおかしいと思う」

北上「いやそっちも十分おかしいのは重々承知だけどだからと言ってこっちがおかしくない訳では無い」

夕張「たまにパンツも履いてない時がある」

北上「え」

明石「え」

夕張「え」
759 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:54:38.06 ID:NNSlpbDu0
北上「それは引くよ流石に引くよ」

明石「え、いや、嘘でしょ?ねえ」

夕張「いや違、というかえ?明石?明石も?言ってなかったっけ?」

明石「言ってないって聞いてないって聞いてたらその時点でドン引きしてるって」

夕張「ほら!だってツナギなら透けないし!スカートと違って見られることないじゃん!いらないじゃん!」

北上「叫ばなくても」

明石「バリちゃん」

夕張「な、何よ。あか、あかしん?あかー、あかちん…赤チン?赤チン!ブフッww」

北上「自分で言って自分で笑ってどうするよ」

明石「オラァ」スパナ
夕張「ヴェアァァッ!?」
760 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:55:21.32 ID:NNSlpbDu0
明石「夕張」

夕張「な、何よ。あか、しw」プルプル

北上「肩で笑うな肩で」

明石「私達女の子なのよ」

夕張「う、うん」

明石「ノーブラはまあいいわ」

北上「いいのだろうか」

明石「ノーパンはダメよ」

夕張「ゴメン…私が間違ってた」

明石「分かればいいのよ、分かれば」

夕張「明石!」

明石「夕張!」

夕明「「グワシッ」」

北上「口で言いよった…」
761 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:55:55.09 ID:NNSlpbDu0
北上「というか今こそアレじゃないの」

夕張「え?何が」

明石「アレ?」

北上「いや、ほら。ってまあ忘れたならその方がいいんだけどさ」

夕張「エンダァァァァァァ!!!」
明石「わっビックリした」

夕張「え」

北上「え」

明石「え」


明石「いやぁぁぁぁダメダメいたたたたおさげはダメェェ!!」
夕張「ええいこの肝心な時に淫ピめこれでもか!これでもか!」

北上「元気だねえー」
762 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:56:38.18 ID:NNSlpbDu0
明石「で、何の゛話ずる゛」

夕張「そうねえ」

北上「まず涙拭きなよ。というかもう話戻す気はないんだね」

明石「じゃ服装の話で」

北上「戻ってるし」

夕張「ハイ!」

明石「はい夕張さん」

夕張「お腹が寒い」

北上「あー」

明石「私も結構ギリギリだけど、夕張はモロよね」

夕張「別に人間みたくヤワじゃないから寒さでお腹壊すってことはないんだけど、たまにヒヤッとくるのはなんともいただけない」
763 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:57:29.82 ID:NNSlpbDu0
北上「私もさ、今はいいんだけどね。雷巡になるとアレだよアレ」

明石「色はまあいいけどね」

夕張「何故ヘソ出しだしって感じよね」

北上「大井っちもだいぶ応えてるみたいでさ」

明石「そうなの?」

北上「ちょっと元気ないというか、テンションが低い」

夕張「大丈夫?修理する?」

北上「そんなおっぱい揉むみたいな感覚で人体改造申し出られても」

明石「安くしとくわよ」

北上「金を取る気だったかこのマッドサイエンティストズ」

夕張「ハッ、ハッ、ハッ!」
明石「フーーン!!」

北上「何故よりによって逆再生の方を」
764 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:58:08.10 ID:NNSlpbDu0
夕張「服装自由なら良かったのにね」

明石「着なきゃいけない機会が多いもんね〜」

北上「二人は比較的楽なんじゃない?ツナギとかで」

夕張「いやいや、私は意外と出撃あったりで制服着なきゃだし」

北上「あー対潜番長か」

夕張「あと兵装実験で」

北上「なるなる」

明石「私は出撃はほぼないんだけど」

夕張「ほぼ?」

北上「ほぼ…」

明石Lv37「私の練度を聞きたいかね、え?」
765 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:58:41.31 ID:NNSlpbDu0
明石「売店あるでしょ?」

夕張「あー制服か」

北上「そこは別に服装自由なんじゃないの?艤装使うわけじゃないし」

明石「上の意向なので…」

夕張「あー…」

北上「別にバレないじゃん」

明石「あとやっぱ工房以外もツナギってのは流石に女子力が…」

夕張「そんなんの気にしてどーするの」

明石「ノーパンにはわからないでしょーね」

夕張「ぐっ…」
766 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 02:59:43.37 ID:NNSlpbDu0
北上「でも殆ど周りは女性だしいいんじゃない?ノーパンはともかく」

明石「そりゃまあそういう気持ちもあるけど、ノーパンはともかく」

夕張「あれよ、私はもう泣く一歩手前よ」

北上「やっぱ提督か」

明石「え、いや〜別にそんな///」
夕張「エンダァァァァァァ!!!」
北上「イヤ〜ウィルオ〜ルウェイズラ〜ヴュ〜ウ〜〜ウ〜」

明石「お〜」パチパチ
夕張「さっすがぁ」パチパチ

北上「ツッコんでよ」
767 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:00:15.92 ID:NNSlpbDu0
明石「逆になんで夕張は提督の目が気にならないの」

夕張「普段工房でのだらしなさをあれ程見せつけておいて今更外面よくしてもよ」

北上「忘れかけてたけどツナギタンクトップノーブラも相当だからね」

明石「流石に店員の時くらいはしっかりしたいじゃない」

夕張「今更でしょ」

北上「今更だよ、二人とも」
768 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:00:42.44 ID:NNSlpbDu0
明石「正直ツナギは癖になる」

夕張「分かりあじがある」

北上「ないないありません」

明石「というわけで用意した洗いたてのツナギ」

夕張「私のならサイズ的に履ける」

北上「よし、私が履こう」

夕明「「どうぞどうぞ」」

北上「ノれよ」
769 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:03:10.54 ID:NNSlpbDu0
北上「意外とぶかぶかじゃないんだね」ゴソゴソ

明石「ゴムできゅっとするタイプなの」

夕張「艦娘は熱とか衝撃には強いから役割としては破片や汚れがつかないようにってのが主なんだ」

北上「へ〜、このまま着てファスナー?」ゴソゴソ

明石「そうそう。耐熱とかあるともっと太くてゴワゴワしてたりするのよ」

夕張「おーいい感じ〜」

北上「うん。だいぶ暑さも引いたこの時期のこの時間帯でもわかるこの暑さ」

明石「不思議なものでね、1度中で汗まみれになると逆にどうでもよくなるのよ」

夕張「どれくらい汗貯められるかな〜とか考え出すくらい」

北上「怖っ
770 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:03:43.30 ID:NNSlpbDu0
北上「やっぱこれブラはともかく下着は必須でしょ。汗伝ってくのすっごい気持ち悪そう」

明石「そうだそうだー」

夕張「えー逆に何も無い方がいいってならない?」

北上「いやならんでしょ。今私パンツとシャツだけどもう1枚汗吸収用になにか着たいなって思ってるもん」

明石「…オムツ?」

夕張「ハッ!?」

北上「ハッ!じゃないでしょ。はぁ?でしょそこは」
771 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:04:27.46 ID:NNSlpbDu0
明石「こうも変わった服装の多い環境だと感覚が麻痺っちゃうじゃん?」

北上「麻痺というか神経死んでるレベルだよね」

夕張「島風ちゃんを見て何も思わなくなってからが本番」

明石「確かに」

北上「同意せざるを得ない」

夕張「脱げるという性質上ただ露出が多いだけなのはあまり気にならなくなる」

明石「他人事だからだけどね」

北上「着てる本人はどう思ってるのかな」

夕張「慣れだって」

北上「慣れかー」

明石「慣れよねー」

夕張「慣れなのよね」

北上「いやノーパンはない」

明石「慣れない、成れない」

夕張「それはもういいでしょ」
772 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:05:11.80 ID:NNSlpbDu0
明石「第3回チキチキマシン猛レース。最強の服装は誰か!選手権」

夕張「k~hッhッhッhッhッhッ」

北上「ケンケンの声真似の完成度の高さが怖い」

夕張「喉にきつい」

北上「というか私もうツナギ脱いでいい?」

夕張「残念ながら制服はこちらが預かっている」

明石「そしてツナギを脱いだら下着のみ。つまり、分かるね?」

北上「分からん。分かりたくない」

夕張「ところでチキチキってどういう意味?」

明石「さあ?元ネタあるのかな。チキチキマシンが最初だと思ってたけど」

北上「どうだろ。なんか海外に元ネタあるんじゃない?」

夕張「あれだ!チキンレースのような命の駆け引きからとってチキチキだ!」

明石「レースならカツカツじゃないの?」
773 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:05:41.09 ID:NNSlpbDu0
北上「で、私の制服なんだけどさ」
夕張「さあ始まりましたチキチキなんとか選手権!」

北上「記憶力」

明石「はい!一番明石!」

北上「主催者から挑んでいくスタイル」

明石「武蔵さん」

北上「あー」

夕張「あー」
774 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:06:22.94 ID:NNSlpbDu0
北上「アレは、服なのだろうか」

明石「もう布よね。下着ですらない」

夕張「本人が脳筋よりで色気とかないからなんとなく誤魔化されてるけどほぼ裸よね」

北上「武人的なキャラや褐色肌、ゴッツイ艤装で誤魔化されてる感は否めない」

明石「艤装で偽装ってね」



明石「艤装でg「エンダァァァァァァ!!!」「イヤ〜」ゴメンナサイ」

夕張「次!私!アイオワ!」

北上「あー」

明石「あー」
775 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:06:55.19 ID:NNSlpbDu0
北上「サラ姉にあんな呼ばわりされるという」

明石「服装自体は割と長門型よりというか、私達基準ではそれほど変でもないのよね」

夕張「配色も、まああっちの文化という事で納得はできるわね」

北上「胸だよね胸」

明石「長門さんも陸奥さんもそこはしっかり守ってるというのに」

夕張「零れ落ちそうな胸という表現が最も似合う艦娘」

明石「激しく同意」
776 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:07:40.95 ID:NNSlpbDu0
北上「武蔵さんのあとだとアレだけど祥鳳さん」

明石「服を着ると誰かわからない人」

夕張「今思ったんだけどさ」

北上「ん?」

夕張「祥鳳って一応弓の邪魔だから副半脱ぎでサラシもキッと巻いてるわけじゃん?」

明石「まあそうよね。一応」

北上「一応」

夕張「逆に武蔵さんって一応隠しておこうみたいな感じで普通に巻いてるわけだよね」

明石「多分ね。一応」

北上「一応」

夕張「つまり祥鳳は意外と胸が大きい説」

明石「ある」

北上「あ、そっちに話がいくのか」
777 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:08:11.69 ID:NNSlpbDu0
明石「私が一番でかい」ドヤァ

夕張「モゲればいいのに」チッ

明石「似非メロンw」

夕張「お?やる?やっちゃう?私は最後まで抵抗するわよ」

明石「もちろん?」

夕明「「拳で」」ガシッ

北上「仲良しか」

夕張「GGかストファーどっちがいー?」

明石「ストファー」

北上「うわしかもスーファミ版」
778 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:08:43.06 ID:NNSlpbDu0
夕張「ザンギ禁止ね」

明石「投げハメ禁止が許されるのは小学生まで」

夕張「核抑止論みたいな事になるけどよろしいか」

明石「禁止で」

夕張「うい」

北上「…」

こうなるともう周りは見えちゃいないだろう。

こちらから押しかけたとはいえ勝手に対戦始めるとは相変わらず自由だ。
779 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:09:19.74 ID:NNSlpbDu0
北上「今のうちに服探そう」

さっきツナギを持ってきた時に置いてきたのだろう。なら向こうにあるはずだ。

提督「おーい穀潰しどもー」ガチャ

北上「ありゃ、提督?どったの」

提督「お前こそ、というかなんだその格好」

北上「色々ありましてな〜。提督はどったの?」

提督「作業してるわけでもないのに工房の明かり全部つけっぱにしてるアホ共に一言言いに」

北上「ご苦労さまで〜す」

提督「お前からも言ってやってくれよ…」

北上「言ってもねえ…」
780 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:09:58.71 ID:NNSlpbDu0
あったあった。

制服は驚くほど綺麗に畳まれていた。変なところキッチリしてるんだから…

北上「んしょっと」

提督「だぁっちょ!なんで脱いでんの!」

北上「いやいつまでもこれはイヤだし。下はシャツだから大丈夫大丈夫」

提督「そうか、そうか?」

北上「私はシャツ1枚で事足りるスタイルだしさ。ところでさっき話してたんだけど武蔵さんの服装どう思う?」

提督「武蔵?あー、大和と逆だったらめちゃくちゃエロかったと思う」

北上「おー…おー!流石に男の意見は違うねえ」

提督「褒められてんのか俺」

北上「褒めてる褒めてる。ほっ」

提督「ブッ!?」

おっと、下はパンツだけだった。
781 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:10:40.97 ID:NNSlpbDu0
提督「恥じらい持てよお前らは…」

北上「破けるし脱げるししょうがない」

提督「そりゃまあ、そうだな。俺も見慣れてるところあるし…」

北上「ありがたみ薄れる?」

提督「ほんとそれ」

北上「ならなんで私の見て驚いたのさ」

提督「北上は見慣れてない」

北上「あんまり露出多くないもんねこれ」

提督「一応そのスカートは一般的には短い部類だと言っておこう」

北上「そうかあ。提督には見慣れたパンツと見慣れないパンツがあるのかあ」

提督「やめてマジやめてホントやめて」
782 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:11:09.66 ID:NNSlpbDu0
北上「見たいなら見せてもいいんだよ?」

提督「ばっかおめえこういうのは見えちゃうからいいんだよ!」

北上「力説されてもよ」

提督「大事なとこだから」

北上「そんな私でも重雷装艦になると露出が一気に」

提督「確かに、な」

北上「肌見せるのはあまりいいとは言えないけど、提督を誘惑するのは面白そうだねぇ」

提督「物騒な事考えるな」
783 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:11:44.52 ID:NNSlpbDu0
とはいえやはりあれは恥ずかしそうだ。

大井っちが落ち込むのもまあ分かる。

北上「服だけこのままならなあ」

提督「…お、俺はその服が一番似合うと思うぞ!」

北上「そう?そかなぁ。そっかー」

提督「そうそう」

北上「ほらほら、どう?可愛い?」

提督「可愛い可愛い」

北上「胸はないんだけどねえ」

提督「男が胸だけ見てると思うなよ。目に付くだけだ」

北上「訂正されたのにむしろ酷くなった気がする」
784 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:13:01.87 ID:NNSlpbDu0
北上「胸チラー」

提督「シャツしか見えない」

北上「悲しいね」

提督「現実だよ」

北上「萌え袖、はできないね。セーターでも買うかな」

提督「じきに寒くなるからな」

北上「ヘソ出し〜」

提督「改造したらそんな感じだな」

北上「スースーしてやな感じ。摩耶さんとかよくあんなので動けるよね」

提督「へそどころか下乳だぞ下乳」
785 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:13:39.14 ID:NNSlpbDu0
北上「パンチラ〜」

提督「やめろたくしあげるなおっさんが女子中学生にパンツ晒さしてるみたいな感じで罪悪感がやばい」

北上「おっさんじゃないでしょ」

提督「世の中30超えたらおっさんだよ」

北上「それに常日頃女性の下着見てるくせに今更でしょ」

提督「不可抗力!不可抗力ですぅ」

北上「可能でしょ」

提督「男には無理です」
786 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:14:06.76 ID:NNSlpbDu0
北上「お尻、も私はあんまりなあ」

提督「そだなぁ」

北上「あ、うなじとか?」

提督「なあ北上」

北上「ん?」

提督「どうしんだよさっきから。何か変なテンションっつーかさ」

北上「…へ?」

テンション?テンションが何か変だろうか。

私は何か変だろうか。

私?
787 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:14:52.80 ID:NNSlpbDu0
北上「ムグゥ」
提督「き、北上さん?」

何かに吸い寄せられるように、提督の体に泣きつくような形で顔をうずめた。

北上「提督」

提督「はい」

北上「私変だ」

提督「…みたいだな」

北上「どうしよう」

提督「どうしよって言われてもな」

北上「提督は提督なんだからなんとかしてよ」

提督「提督は提督だけどなんともできません」
788 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:15:32.29 ID:NNSlpbDu0
北上「なんかもう頭ん中ぐちゃぐちゃなんだ」

提督「いつからだよ」

北上「…さっきから?でも気づかなかっただけで前からずっとぐちゃぐちゃだった気がする」

提督「ぐちゃぐちゃってどんな感じだよ」

北上「んー。灰色の画用紙に黒い筆で書き殴ったみたいな」

提督「なんか悪夢みたいな話だな」

北上「悪いかどうかは分からないけど、なんだか夢みたいなのは確かだよ」

提督「そっか」ポン
北上「」ビクッ
提督「うおっ、わりぃわりぃ。いやだったか?」

北上「いや、別に」

提督は、あの何だか懐かしい手でそのまま私を撫でてくれた。
789 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:16:12.75 ID:NNSlpbDu0
提督「今もぐちゃぐちゃか?」

北上「ぐちゃぐちゃー、だね」

提督「同じ感じ?」

北上「んーちょっと違う。だいぶ違う」

提督「違うのか」

北上「うん。なんだろ。沸騰したお湯みたいな」

提督「なんだそりゃ」

北上「分かんない。暖かいんだけど熱くて、でも悪い感じはしないかも」

提督「ふーん。よくわからんな」ナデナデ

北上「私もー」
790 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:16:57.12 ID:NNSlpbDu0
提督「こうしてるとさ」ナデナデ

北上「ん?」スリスリ

提督「やっぱお前猫だなって」ナデナデ

北上「そう?そうかな」

提督「そうだ」

北上「ふふふ、実は私前世が猫なのだよ」

提督「船はどこいった船は」

北上「船の前が猫だったのさ。真っ黒な黒猫〜」

提督「船の付喪神なのに船の前があるのかよ」

北上「じゃあ船のあとに猫になったんだ。兄弟もいたんだよ。アレ?姉妹かも」

提督「球磨猫に多摩猫に大井猫、木曾猫か」

北上「球磨姉ちゃんは熊だよ熊」
791 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:17:24.92 ID:NNSlpbDu0
北上「ていとーグエッ」

提督「上向くの禁止」ギュッ

北上「なんでさー」

撫でていた手でやんわりと頭を抑えられた。

提督「いやほら、そのさ。女子中学生程度の身体とはいえ人一人の体重でそう大胆に今以上に寄りかかられるときついので」

北上「提督なんだからそれくらい支えなよ〜」

提督「提督なんだけどそこまでは支えられん」
792 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:18:00.71 ID:NNSlpbDu0
大井「北上さーーん。あら提督?こんな時間に何やってるんですかって、ああいつも通りサボりですか」

うわお。また大井っちだ。

今現在私は提督の体に隠れて見えないはずだがさてどうしようこれ。

提督「間髪をいれずサボりと断定すな弁解させろ」

大井「…その腕は?」

提督「これか?ほれ」クルリ
北上「うわった」

北上「はろー」

大井「もうすぐ寝る時間ですよ北上さん」

北上「あいあいさー」

提督「俺はあれだぞ。夕張と明石に用があってな」

大井「はいはいそうですかー」

提督「ホントだって!」

ありゃ?意外と大井っちの反応が薄い
793 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:18:30.94 ID:NNSlpbDu0
北上「んじゃありがとねてーとく」

提督「おうおう」

大井っちの前でこれ以上くっつくわけにはいかん。

北上「おやすみ〜」

提督「おやすみ〜」

せっかく落ち着いたしこのまま布団に潜っていい夢を見るとしよう。

北上「行こっか大井っち」

大井「ごめんなさい北上さん」

北上「ん?」



大井「私、少し提督とお話があります」
794 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:18:59.73 ID:NNSlpbDu0
いつになく真剣な目だった。

いったい何だというのだろう。

北上「イテッ」ゴン

曲がり角で壁に頭をぶつけてしまった。

いかんいかん。とりあえずは部屋に戻らねば。

思考を中断しようとするけど、考えないようにと思うほどまた深みにハマっていく。

先程の状況。大井っちの目。二人きりで話。

まさかまさか

北上「こ、告白!」

ついにか!ついに言うのかまさか!
795 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:19:52.24 ID:NNSlpbDu0
はっきり言って今更感が凄いのだが。

そうなると私が普段提督と一緒にいたりする時なんかも実は大井っちの背中を押すきっかけになってたりしたのだろう。

北上「これは使えるかもね」

私が提督に近づくことで二人の仲かより親密になる。完璧な作戦じゃないか。

さて具体的に何をすれば効果的だろうか。

あの二人にとって。
796 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:20:31.06 ID:NNSlpbDu0
二人に。

北上「あれ?」ピタ

球磨型の部屋の扉に手をかけたところで思考が止まった。

またぐちゃぐちゃになっている。

元のぐちゃぐちゃに。

先程までの温もりはすっかり冷めきっていた。

むしろ元よりも冷たくて、

少しだけ

寂しい。
797 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:21:05.68 ID:NNSlpbDu0
多摩「何してるにゃ?」ガラ

北上「多摩姉」

多摩「入口で突っ立って何してるにゃ。大井は一緒じゃないにゃ?」

北上「なんか、提督と、話があるって」

多摩「ふーん。ならしょうがないにゃ。とりあえずそんな顔してないで早く入るにゃ」

北上「そんな顔って?どんな顔?」

多摩「どんなって、うーん。捨て猫みたいにゃ?」

北上「捨て猫?」
798 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:21:51.55 ID:NNSlpbDu0
球磨「多摩ー早く戻るクマ。多摩の番クマ」

多摩「急かすにゃ急かすにやあ゛!?誰にゃ赤に変えたのは!?」

木曾「フッ」ドヤァ

多摩「木曾ぉぉぉぉ…」

球磨「ほれ1枚引くクマ」

多摩「己ぇぇ、パスにゃぁぁ…」

木曾「はいUNO」

多摩「にゃぁぁああ!」

球磨「ドロー2」

多摩「にゃ…」パタン

木曾「あ、死んだ」
799 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:22:58.19 ID:NNSlpbDu0
捨て猫か。

いったい誰に捨てられたというのか。

北上「私もいーれてー」

木曾「もうちょい待ってくれ。今多摩姉にとどめ指すから」

球磨「おらさっさとドローしろクマ」

多摩「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
木曾「うるさい」
多摩「ニャ」

いやいい。

今はいいや。

疲れた。

思考を捨てよう。
800 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/12/19(火) 03:26:12.34 ID:NNSlpbDu0
徹夜でイベント突破してそのテンションで書いた

宗教所の理由で西村艦隊が最上んしかいない鎮守府。
いけなくはないのだけどいかんせん時間がなくてですね。
最近のイベントは資源より時間の確保が辛いです。
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 09:28:33.02 ID:N5zZs3qz0
しばふのみ鎮守府とかいう宗教?(どんな宗教だww)
更新お疲れ様です
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 17:40:34.72 ID:yUFYVfbc0
まー厳しい縛り(勝手に首がしまったともいう)ながら突破おめでとう
久々にキレのある掛け合いが来て楽しかったよ
803 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/03(水) 02:57:04.59 ID:V4sVfJuP0
47匹目:猫と朝





私は朝に弱い、なんて言うと本当に朝に弱い人達に怒られる。

阿武隈なんかもそうだけどともかく寝起きの機嫌が最悪だったり朝食を食べる気がしなかったりと生活に支障が出るレベルらしい。

それを言われると私なんかは単に布団の魔力から逃れる意志の強さを持たない軟弱者でしかないわけだ。

でも逆に朝に強い人ってめちゃくちゃレアだよね。

羨ましいとまではいかなくとも、一体どうしたら朝からそんなに元気なのか是非ともコツを教えてほしいものだ。
804 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/03(水) 02:57:37.59 ID:V4sVfJuP0
大井「…さん…北上さん、きーたーかーみーさん」ユサユサ

北上「…おはヨ」

大井「はい、おはようございます」ニコ

そういつも通りに100万ドルの笑顔で答えるとタンスの方へ向かう。

いやいつも通りじゃないな。

今日はなんか1億ドルくらいの笑顔に見えた。

北上「ふ…あぁぁぁぁ……ぁ…っ」ノビー

ん?

両手を伸ばして思い切り伸びをすると何かが手に当たった。
805 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/03(水) 02:58:07.73 ID:V4sVfJuP0
北上「…UNOか」

布団の近くに雑に置かれていた。

そういえばあの後半ば寝落ちみたいな感じで終わったんだっけ。

北上「んしょっと」ムクリ

球磨「北上、おはよう」

北上「おはよ。制服?」

多摩「私達これから遠征にゃ」

北上「なる」

球磨「くそねみぃクマ」

多摩「まったくだにゃ」

大井「自業自得ですよ」
806 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/03(水) 02:58:35.20 ID:V4sVfJuP0
北上「で、球磨姉その髪は?」

球磨「治まらなかったクマ」ボサッ

膨れ上がった髪のせいで本当に熊見たくなっている。

球磨の髪は特に何もせず自然な状態に見えるが実は朝必死に膨張を抑えているのだ。

多摩「これじゃまた駆逐艦達のぬいぐるみにされるにゃ」

球磨「うげー疲れるクマァ…」

大井「自業自得ですよ」

多摩「自業自得だにゃ」
807 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/03(水) 02:59:11.24 ID:V4sVfJuP0
球磨「多摩はずるいクマ。短髪は長髪の苦労を知らないクマ」

多摩「知らんにゃ。知りたくもないにゃ」

北上「髪整える時間を他に使えるのはずるい」

球磨「そうだそうだー」

多摩「そんな事言われてもにゃぁ」

北上「手入れいらず〜」

球磨「淫乱ピンク〜」
多摩「アホ毛ぶち抜くぞ」
球磨「え」

北上「え」

多摩「にゃ」
808 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/03(水) 02:59:37.53 ID:V4sVfJuP0
球磨「行ってくるクマ」

多摩「にゃ〜」

北上「いってら〜」

大井「行ってらっしゃい」

木曾「ただいま〜」

球磨「おお木曾。おかえり」

木曾「語尾、あと髪はそれなんだ」

球磨「時間なかったクマ」

木曾「早く起きりゃいいだろ」

多摩「早く寝りゃいいにゃ」

球磨「なんで二人はピンピンしてるんだクマ…」
809 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/03(水) 03:00:27.18 ID:V4sVfJuP0
北上「木曾は朝練?」

木曾「うん。ついでにシャワー」

北上「いいなあ朝強くて。辛くないの?」

木曾「好きでやってるからな」

大井「北上さんもどうですか?早起きは三文の徳と言いますし」

北上「え〜なんで急に。三文程度なら寝ていた方がお得だよ」

大井「朝練でなくとも散歩とか。私も付き合いますし!」

北上「いいっていいって」
810 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/03(水) 03:00:53.49 ID:V4sVfJuP0
木曾「おい姉は基本早起きだもんな」

北上「凄いよね〜」

大井「それほどでも〜」

そういえば昨晩は結局私達が寝落ちるまで大井っちは帰ってこなかったっけ。

大井「髪結びますから顔洗ってきてください」

北上「あいあい」

今にもスキップしそうな軽い足取りで先に洗面所へ向かう大井っち。

やけに上機嫌だ。

これってやっぱりつまるところそういうアレがアレなんじゃなかろうか?
811 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/03(水) 03:01:59.61 ID:V4sVfJuP0
一番端の布団でストレッチをしている木曾に目をやる。

木曾「…」

黙々と身体を伸ばしながらもその目はじいっと大井っちを追っていた。

木曾「!」

あ、目が合った。

木曾「」クイックイッ

顎で大井っちを指す。

頷き返してみた。

木曾「…」ス

手を伸ばしながら右手の小指をスっと立てる。

いわゆる愛人のサイン。

北上「」スン

肩を竦めてさあ?と伝える。

ことの真相を大井っちからどうにかして聞き出さなくては。

眠気はすっかり吹き飛んだ。
812 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/03(水) 03:04:44.82 ID:V4sVfJuP0
年が明けて期間も空きましたが飽きずにやっていきたいです。
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/03(水) 10:03:08.68 ID:6iJ4IAFS0
昨晩はお楽しみでしたね!

更新乙さまです
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/03(水) 18:14:00.16 ID:9zRuZcwj0
ここからどうなるのか……
2スレ目にいってもいいのよ?
815 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:30:22.00 ID:uJGQU72d0
49匹目:猫と髪型






大井「さてお客様、今日はどうなさいますか?」

北上「ん〜いつも通りで〜」

鏡の前に座る私とその後で私の髪をとく大井っち。

日課である。

大井「どうですかたまには違う髪型とか」

北上「違うってどんな?」

大井「金剛さんみたいなのはどうですか!」

北上「また極端にややっこい方面に行くね」

大井「では浦風で」

北上「あれ、大差なくない?ポンデリングじゃない?」

大井「北上さんの三つ編みというトレードマークを残しつつ最大限に生かそうかと」

北上「トレードマークだっけこれ。というかそんなに色々考慮した上での提案だったんだね」

ちなみにあの髪型。

やろうとすると貞子もビックリの長髪が必要である。
816 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:30:57.94 ID:uJGQU72d0
大井「安心してください!物理的に無理なものでなければどんな髪型もいけます」

北上「不思議な説得力がある」

大井「北上さんは何か要望はありますか?」

北上「いつも通りはなしの方向か。だったら…バッサリと短髪に」
大井「散髪は却下で」

北上「おぉ…そんなバッサリと…」

大井「どうせバケツかぶるか入渠したら生えるじゃないですか」

北上「でもこれやっぱ邪魔だよ」

大井「オシャレは我慢です」

北上「オシャレのつもりはないんだけどねえ」
817 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:31:30.45 ID:uJGQU72d0
大井「短髪と北上さんはこう、イメージが違います」

北上「言わんとすることは分からなくもないけど」

大井「そういえば提督は長髪の方が好きらしいですよ」

北上「いや聞いてないし」

大井「ポニーテールでうなじを見せるとか!」

北上「あれは座る時とかに邪魔だからやだ」

大井「三つ編みお下げも割とそうなのでは?」

北上「だからバッサリといきたいんだよ…」

大井「すみません…」

北上「大井っちは楽そうでいいなー」

大井「スミマセン」
818 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:32:10.33 ID:uJGQU72d0
北上「汁物とか食べる時髪の毛入りそうで大変なんだよね」

大井「いつも苦労してますものね」

北上「私なんかまだマシな方ってのがね」

大井「駆逐艦は何人か凄いのがいますから」

北上「早霜と清霜はあれ何を思って生活してるんだろうね」

大井「聞くに聞けない空気があります」

北上「耳に引っ掛けられないくらいの中途半端な長さが一番めんどくさかったりすると思う」

大井「鎮守府ないではヘアバンドやピンで抑えてる人が多いですものね」

北上「邪魔だししゃあない」
819 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:33:07.52 ID:uJGQU72d0
北上「で、何があったの?」

大井「何がですか?」

北上「やたらテンション高いじゃん」

大井「え、いつも通りじゃありません?」

北上「ありません」

髪型を変えようなんて初めてだ。

それがいつも通りなら流石に私も辛い。

北上「提督と何話してたの」

大井「いえっ、なにも」

いえ、で声が上ずってる。

隠し事はできないタイプか。
820 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:33:34.59 ID:uJGQU72d0
北上「結構遅くまで提督と話してたじゃん」

大井「そんな遅くはないですよ。すぐですすぐ」

北上「昨日はUNOで遅くまで起きてたんだよ」

大井「…実はあの後夕張さんたちと」

北上「ダウト」

大井「UNOじゃないんですね」

北上「じゃあUSOで」

大井「上手い!座布団1枚」

北上「UNOだけに?」

UNOはどこかの国の言葉で「1」だそうだ。
821 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:34:03.50 ID:uJGQU72d0
北上「で!なんなのさ」クルッ

身体を180度回転させ鏡越しではなく真正面から大井っちを見つめる。

大井「にゃんにもありません!」

噛んだ。動揺が隠しきれていなさすぎる…

北上「なら夜遅くまで何を、ナニをしていた?」

大井「なっ、それはありません!絶対に!」クワッ
北上「うおっ」

物凄い剣幕。

まあ確かに、このツンデレカップルがそんないきなり進展するのは流石にないか。
822 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:34:30.98 ID:uJGQU72d0
北上「ならいいけどさ。何にせよ髪はいつも通りね」クルッ

大井「仰せの通りに」ホッ

胸をなでおろす仕草は鏡越しにしっかり見えているのだが…

しかしなるほど。

このようだと告っただけとかかな?キスができるとは思えないし。

とはいえ時間の問題かなあ。

親友としてしっかり見守っていかねば!
823 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:35:18.86 ID:uJGQU72d0
大井「北上さん?」

北上「どったの〜」

大井「いえ、その。不機嫌そうな表情をしていたので」

北上「ん〜?寝不足なだけだよ」

大井「睡眠はしっかりとってください」

北上「UNOが悪い」

大井「球磨姉さん達は無視して寝てください」

北上「それはそれで難易度が高いね」
824 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:36:00.19 ID:uJGQU72d0
大井「はい完成です」

北上「バッチリだね〜」

いつもと同じ髪型。

大井っちなら三つ編みの編み方まで寸分違わず編んでいても不思議ではない。

大井「私布団を片付けてきますね」

北上「えぇ、いいよ。私も行く」

大井「その前に着替えてください。そこに置いてあるので」

北上「はーい」

布団まで畳むのは今日が初めてだ。どんだけテンションあげあげなのよバカップルめ。



北上「ホントだ。ひっどい顔」

鏡の中の私は確かに不満げな表情だった。

なんでだろ?

寝不足か。

北上「しっかりしろ私」
825 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/08(月) 02:39:19.89 ID:uJGQU72d0
やたら長くなってきた…もう少しまとめた方がいいと思わなくもない。

何とは言いませんが最近レ級が怖い
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 12:06:32.38 ID:WvCi0OW60
新春任務はレ級が駆逐を狙わないように祈るのだからねー
毎月やってるとAでいいのかーって感じになるけど流石に4回はやり過ぎと思った
更新お疲れ様です
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 12:29:00.08 ID:qm8Swgny0
Aでいいならと割り切って駆逐は缶とタービン積んで空母の開幕火力で薙ぎはらったなあ
艦隊の充実度に自信がないなら支援は最大火力で道中出した方がいいかな
決戦はいらんかも
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/10(水) 00:16:39.89 ID:DpBTCqp80
長くてもいいのよ
無自覚北上さまを書き続けていいのよ
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/10(水) 19:49:18.64 ID:5TQrqRNp0
クマー改二度候補急浮上おめ
830 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:37:44.57 ID:fbNs0xK70
50匹目:猫と球









川内「ヘイヘイヘイ!ピッチャービビってるよ!ブッ!?」バチン

ドッヂボールを知らない人というのは、少なくとも日本にはいないと言っても過言ではないのではなかろうか。

清霜「うわぁ…顔面だぁ」

小学生から大人まで幅広い層でかつ多くの地域で遊ばれている球技だ。

江風「顔面セーフ?」

漢字だと避球とか飛球と書く。

球磨「アウトの方向で」

この遊びが多くの人間、特に子供達にとってサッカーや野球をも凌ぐほどに人気なのはそのルールの単純さが主な要因だと思う。

神通「姉さんの仇…」スッ

サッカーも野球もチームプレイがメインの球技だ。楽しく遊ぶには最低でも4.5人は必要だろう。
831 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:38:36.39 ID:fbNs0xK70
多摩「やれるもんならやってみろにゃ!」

対してドッヂボールは二人からでも十分に楽しむ事ができる。

那珂「ギャンッ!」バン

それでいて30.40人などの大人数でも十二分に機能する。

響「そっちか」

また当てたらアウト、という究極的にはその1点のみを守ればいいような競技なのでルールの加筆修正はいくらでも可能だ。

神通「姉さんと那珂ちゃん。これで差し引きゼロです」

残基性、キャッチで回復、復活etc…

川那「「どんな計算!?」」

子供特有の自由な発想と勝ちたい一心で捻り出す幼稚な悪知恵は無限の可能性を秘めている。
832 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:39:27.08 ID:fbNs0xK70
響「やぁ!」ブン

もちろん子供だけの遊びではない。

神通「く!」

きちんとしたルールの元行われる公式の大会も存在する。

長波「うまい!足に当てた!」

どんな遊びも本気でやれば戦いとなる。

球磨「まだだあ!キヨシー!」

顔面アウト上等。

清霜「任せニャッ!」バシ

バレーボールを彷彿とさせる形状の球を時速100km超で投げ合う様はまさに戦争だろう。

長波「また顔面だ…」

内野外野の駆け引きや試合スピードもお遊びのそれとは次元が違う。

響「ダブルアウトだね」

本気と書いてマジ。

浦風「さぁてウチの番じゃ!」ブン

つまり何が言いたいのかというと、

多摩「甘いにゃあ!」バシィ
833 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:40:26.92 ID:fbNs0xK70
ビッ!と空を切り裂くような音とともに放たれた球が私の左耳を掠める。

フェイントで重心を左に寄せたのが功を奏したためギリギリで躱せたが、いやはやとんでもないコントロールだ。

バチンと弾けるような音が後ろからした。

どうやら球磨姉が無事にキャッチしてくれたようだ。

多摩「上手く避けるもんにゃ」

北上「あれ?今のはサービスじゃなかったの?」

多摩「言ったにゃあ」

球磨「ふふん、悪いが今度は球磨の番だクマアッ!」ブン

文字通り熊のような腕力から繰り出される球はちゃちな拳銃の弾速ならば凌駕しているのではなかろうか。
834 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:41:03.46 ID:fbNs0xK70
長波「おりゃ!」バン

多摩「ナイスキャッチにゃ」

北上「うわズルいや。私達にはあんなにキャッチ力ないのにさ」

球磨「ふこーへーだクマ。包容力(物理)だクマ」

多摩「ふふん、負け惜しみは見苦しいだけにゃ」

長波「いやこれ運動においては邪魔でしかないんだけどね…」

響「…」ペタペタ

浦風「大丈夫じゃよお二人さん。ウチが二人分の包容力持っとるけん!」

球北「「嬉しくない!」」
835 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:41:51.86 ID:fbNs0xK70
10人対9人で始まったドッヂボールは現在、両チームとも内野に3人を残すのみとなった。

もうすぐお昼なので当てての外野復活はなし。

こちらは球磨姉と私と浦風。向こうは長波と多摩姉と響だ。

長波「暁ぃ!」

外野へのパス。

通常ドッヂボールの外野は内野から見て三方向を使えるがここでは一つだけ。お互いのチームが相手を内野外野縦でで挟む形になっている。

暁「っと。よーしいっくわよぉ!」

これにより外野から内野へのボールが外れると相手チームの外野へボールが渡る危険性が出る。

投げる方も投げられる方も細心の注意が必要となる。
836 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:42:29.44 ID:fbNs0xK70
球磨「二人とも、しっかり取れ」

浦風「承知くま」

北上「えーやだくまー」

外野の暁から出来るだけ離れて、しかし暁の球が内野の多摩姉などに渡ると近距離で当てられる可能性もあるので一番後ろに下がるわけにもいかない。

躱したら即反対側へダッシュ。

取ったら即振り向いてカウンター。

判断は刹那に行わなければならない。

腰を落とし重心を低くする。

暁が振りかぶったのを見て呼吸を止める。

さあてどこに来るかな。



バァン!

と破裂音がした。
837 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:43:06.37 ID:fbNs0xK70
北上「いや破裂音というか破裂したんだけどね」

神風「え?それってどういう」

北上「思いっきり地面にボール叩きつけてさ。衝撃に耐えられずボールがバン」

神風「ありゃりゃ。それで試合終了ですか」

北上「そ、予備ないしね」

終了というか中断。断念。残念無念また来年。

キリもいいので今はコート周辺で各自自由時間となった。
838 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:43:55.39 ID:fbNs0xK70
響「暁はまだ艤装の繊細な動作は慣れてないからね」

北上「まあ仕方ないよね〜。そのための訓練なんだしさ」

神風「私もやりたかったなあ」

遠征帰りの神風がそうボヤく。

ちなみにその暁はコートで球磨姉と多摩姉に色々と教わっている。雷電も一緒だ。

響「本人はとても熱心にやってるからね。今は下手だけど、そのうち化けるかもしれないよ」

北上「そりゃこわい」

響「まあ下手なままだとは思うけど」

神風「響は身内に厳しいよね…」

響「そうかな」

神風「そうよ」

私は知っている。響は暁が姉妹でなければ超絶スパルタ訓練でもって鍛えあげようとするタイプだ。

こうして姉の努力を見守っているのは身内への甘さという事だろう。
839 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:44:47.40 ID:fbNs0xK70
ドッヂボール。鎮守府での訓練の1種だ。

目的は艤装の繊細なコントロールを磨く事。

艦娘は砲や魚雷を装備してなくても艤装により人ならざる力を発揮することが出来る。

が、これは単に力持ちと言うだけではダメなのだ。

戦場。つまり水上において私達はうねる波や荒れ狂う風の中砲撃を当て魚雷を躱し敵陣へと進む必要がある。

これがとても難しい。

初めて海に出た時は綱渡りとスケートとドッヂボールを同時にやっている気分だった。
840 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:46:56.25 ID:fbNs0xK70
艦娘の練度とはすなわちそのコントロール能力の高さである。

戦闘経験を多く積むほど練度は上がり回避や攻撃能力は上がる。

攻撃を受ける際の姿勢やどこで受けるか、受けた後どうするかでダメージも大きく変わるので耐久も上がる。

もっとも練度はあくまで強さの指標の1つでありそれだけでは測れないものなのだが。

ともかく海の上だけでなくこうした訓練も私達にとっては大事なのだ。

ちなみに暁は艤装のコントロールというよりは単純に球技が苦手なだけであり練度は私より上だ。
841 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:47:35.70 ID:fbNs0xK70
神風「北上さんの勇姿、見たかったな〜」

北上「勇姿って…私ゃただ避けてるだけだよ」

響「北上さんはホントにボール取らないよね。しかも取れないんじゃなくて取ろうとしてない」

北上「いやだってあんなの飛んできたら普通は避けようと考えるでしょ」

響「それは人間の感覚だよ」

北上「まあ、そうか」

人間というか、生き物の。
842 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:48:12.37 ID:fbNs0xK70
北上「どうせ見るなら私より向こうの試合を見た方がいいんじゃない?」

神風「向こうって、ああ。いや確かに迫力はありますけど、なんども見るほどじゃ」

響「結構面白いよ。相撲みたいなものさ。単純な力の押し合いに見えて、実は色々な工夫や戦略が見える」

神風「んーじゃあ行ってみよっかな」

北上「わったしも〜。どうせ暇だしね」

響「私はここにいるよ」

北上「暁いるもんね」

響「…そんなんじゃない」

神風「はいはい照れない照れない」

響「むー…」
843 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:48:42.81 ID:fbNs0xK70
膨れっ面の響を残し鎮守府の建物を挟んで反対側のコートへ向かう。

既におおよそドッヂボールとは思えない破裂音、いや爆裂、爆発音がする。

神風「こっちはまだ続いている見たいですね」

北上「こっちは最後からが長いから」

角を曲がる。

さて今日の最後は誰と誰かな。
844 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:49:28.55 ID:fbNs0xK70
Гангут「だらァァァァ!!」
武蔵「ふっ!」

球、いやもう砲弾でいいや。砲弾が武蔵さんのお腹に直撃する。

対する武蔵さんもそれを真正面から受け止めてみせる。

グワンと音こそ低く小さいが、衝撃で大気が震えるのがここまで伝わってくる。

神風「かんぐーとさんの貴重な手袋非着用シーンですね」

北上「そだねー」

ドラゴンボールか何かの世界ですかといった光景だが、ここでは日常の一コマである。
845 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:49:57.85 ID:fbNs0xK70
軽巡や駆逐と違って撃って撃たれての殴り合い砲撃戦となる戦艦でなどは小細工なしの一騎打ちになりやすい。

この場合の小細工というのは外野内野のパス回しやカウンターである。

神風「それで、工夫とか戦略って?」

北上「んー例えばあれとか?」

Гангутさんと武蔵さんでは馬力が違う。文字通りに。

それでも彼女達がああして渡り合えるのはГангутさんの技量だ。
846 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:50:25.52 ID:fbNs0xK70
武蔵「ッアアァ!!」ブン
Гангут「ハァッ…ッ!!」バシィ

北上「ほら飛んだ」

神風「飛んだ?」

北上「自分で少し後ろに飛んで勢いを逃がすのさ。まあそれでもあのパワーだし、Гангутさんの馬鹿力あっての技だけど」

神風「戦闘民族か何かなんですかねあの人」

北上「そういう意味じゃ私らみんな戦闘民族みたいなもんだよ」

神風「確かに」
847 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:51:06.49 ID:fbNs0xK70
飛龍「おや?二人とも〜何してんの?」

神風「飛龍さん」

北上「殴り合いの見学に」

飛龍「あぁあれかー。迫力あるよね〜」

私の横に並んで座る。出撃帰りかな。

神風「戦場じゃないからこそ余計に怖いです」

北上「というかよくボール無事だよね。特注品とはいえ」

飛龍「工房タッグの自信作だしね!」

神風「あ、ちなみにこっちのはさっき破裂しました」

飛龍「え、マジ?」

北上「マジマジ」

飛龍「マジかぁ…」

今殴りあってる二人の物とは別物なのでそこまで高くはつかない、はず。
848 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:51:44.19 ID:fbNs0xK70
飛龍「やっぱさ、駆逐艦もいるとはいえもう少し頑丈にしてもいと思わない?」

神風「でもそうしたら流石に痛いですよ」

北上「私らは真正面にあまり投げないから流れ弾による事故とかあるもんね」

飛龍「そっかー、難しいところだねぇ。こっちは流れ弾とかはほとんどないし」

北上「そりゃあんな風に投げ「あ」え?」

最後まで言い終えることはできなかった。

飛龍さんがコートを見ながらあ、と言ったのでそちらに目をやった時には全てが遅かった。

流れ弾。

文字通りのあの球が、私の目の前にあった。
849 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/14(日) 03:53:22.24 ID:fbNs0xK70
いっぱい書きたいからいっぱい書くね。

練度及び艤装の設定は人によって千差万別なのでとても面白いです。
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 12:09:42.92 ID:R5JVsQMO0
更新乙です
是非いっぱい書いて下さい
艦これSSは色々あるけど最近ので設定にそれなりに踏み込んだのってあったけ?と思ってしまった
最近のは安価かコメをもらいやすいイチャコラが主流だよね
1さんは最近の他の作者様のだとどんなの読まれてるのかなんとなく気になった
851 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:14:34.44 ID:8hN5TkSb0
この時の事は恐ろしく鮮明に覚えている。

それこそこの瞬間スローモーションになったと錯覚する程に。

人智を超えた速度のボールは真っ直ぐ私の顔面を目掛けて飛んできた。

わーホントに近づくほどにボールがおっきくなってるーとか思うくらいには混乱してた。

艤装も付けずに体育座りという無防備すぎる体制。

無理だコレ。

と思った次の瞬間、

脳を揺さぶるほどの音と衝撃とともにボールが停止した。

目の前にはボールと、それを防いだ手袋をした手があった。

ゆっくりと左を向く。

そこには先程までのコロコロと笑うどこか幼さを感じさせる先輩の顔はなく、そのギラギラとした鋭い眼光は確かに飛龍という名が相応しかった。
852 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:15:22.94 ID:8hN5TkSb0
鍛えているとはとても思えない華奢な腕は完全にボールの勢いを殺してしまった。

ボールが地面に落ちる。

コートに居た誰もが飛龍さんを見ていた。

神風「…」ブルブル

神風は耳と目を塞いで縮こまってた。

飛龍「まったくもー。みんなヒートアップし過ぎ!めっ!」

右手を払いながらいつもの調子で話す。

武蔵「すまなかった。つい力んでしまって…」

Гангут「け、怪我はないか!」

戦艦達が慌てて駆け寄ってくる。

座ってる目の前に並ばれるとすごい威圧感だ。

北上「あー大丈夫大丈夫。むしろこっちの方が問題かも」

神風「」ブルブル
853 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:15:49.32 ID:8hN5TkSb0
飛龍「はぁ…じゃ、神ちゃんは私が連れてくから、二人は吹雪に報告すること。いい?」

Гангут「う、アイツに言うのか…」

武蔵「仕方あるまい。了解した」

北上「神風ー、おーい。かーみーかーぜー」

神風「?」

北上「神風?あれ、聞こえてない?」

神風「耳が、こう、キーンとしてて」

飛龍「一応明石っちゃう?」

北上「そうしますかね〜、ほら神風」

背中を差し出す。いわゆるおんぶというやつだ。
854 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:16:38.36 ID:8hN5TkSb0
神風「いや流石にそこまでじゃ」

飛龍「ならばこうだー!」
神風「キャッ!ひ、飛龍さん?」

おんぶじゃなくてだっこ。しかもお姫様だっこ。

北上「凄い様になるねえお姫様。いやお嬢様かな」

飛龍「スカート短い娘多からねえ。これ出来る娘ほとんどいないのよ」

神風「うーまったく聞こえない…」

飛龍「それではでっぱーつ」

北上「おー」

神風を抱き抱える右手に、もう手袋はなかった。
855 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:17:06.26 ID:8hN5TkSb0
明石「え?」

武蔵「ん?」

飛龍「ありゃ?」

工房にて、集結。

明石「三人はどういう集まりなんだっけ」

飛龍「私は神風の診察に」

武蔵「私はボールの修理に」

明石「え?」

武蔵「ん?」

飛龍「およ?」
856 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:17:43.75 ID:8hN5TkSb0
飛龍「いやちょっと事故がね」

神風「私はもう大丈夫だって言ってるんですけどね…」

北上「抱っこするのが楽しくてやってた節があるよね」

飛龍「気にしない気にしない」

明石「診察します?」

神風「あ、大丈夫です。ホントに」

明石「ではそちらは」

武蔵「ボールが壊れた」

神風「破れたとか割れたとかじゃなくて壊れたってすごい表現ですよね」

北上「確かに」
857 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:18:23.52 ID:8hN5TkSb0
武蔵「ほら」

明石「んー、ん?何ですかこの痕」

北上「どれどれ?」

飛龍「んー?げっ!」

神風「うわぁ凄い痕」

明石「手形、ですよね」

武蔵「そうだな」

明石「武蔵さんの?」

武蔵「私はもう少し手が大きい」

神風「というかこの痕って」

北上「今そろそろと工房を出ていこうとしている人のものだよね」

飛龍「ギクッ」
858 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:19:01.31 ID:8hN5TkSb0
かくかくしかじか

飛龍「正当防衛です」

明石「なるほど状況は理解しました」

飛龍「守護る為です」

明石「その上でひとつ言いたいことがあります」

飛龍「必要な犠牲でした」

明石「もっと上手くやれたでしょう」

飛龍「だってぇ〜!ビビったもん!私もビックリしたもん!ちょっとばっかし力んじゃっても仕方ない!」

明石「仮にもウチの最高練度なんですから力加減考えてくださいよ。怒るつもりは無いですけど実際こうして修理費が数字として出るんですから文句くらい言わせてください」

飛龍「ぶえ〜…」
859 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:19:40.66 ID:8hN5TkSb0
神風「なんだか申し訳ないですね」

北上「そだね」

結果として私達があそこに居なければ、と思わずにはいられない。

しかし最高練度かあ。

ボールを受け止めた時右手には弓道で使うという手袋がハマっていた。

いわゆる正装。つまり艤装の力。

それをあの緊急事態に瞬時に右手に纏い受け止めた。

右手だけに、一瞬で。

艤装を一部だけ使うというのはとてつもなく難しいのだ。

パワーだけでなく繊細なコントロールも完璧だ。力んでボール潰してたけど。

普通これだけの力をあんなふうにぱっぱと出し入れなんて出来ない。
860 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:20:10.51 ID:8hN5TkSb0
武蔵「右手の方は大丈夫なのか?」

飛龍「ん?全然へーき」

武蔵「そうか…」

空母は馬力だけなら戦艦をも凌駕している。

さらに力を防御や反動や体制の制御、つまり下半身に力の多くを使う戦艦と違い艦載機を送り出すための腕に多く使うという。

普段弓で訓練する空母組がドッヂに参加するとひどい事になるとかならないとか。
861 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:22:01.60 ID:8hN5TkSb0
明石「はあーまた修理かー、残業かー辛いなー」

飛龍「あーはいはい間宮!間宮で手を打ちましょう!」

明石「何日分?」

飛龍「日!?」

明石「何日分?」

飛龍「よ、3日!三日分なら!」

明石「ばりー聞いてたぁ?」

夕張「チャリできた」ヒョイ

正確にはチャリではなく作業用のあの、なんかスケボーみたいなやつ。

飛龍「え゛」

夕張「一人三日分ならやるしかないね〜」

明石「しばらくは一緒に間宮タイムだね〜」

飛龍「え、いや、その」

夕明「「何か?」」

飛龍「イエナニモ」

夕明「「ヨッシャ!!」」

飛龍「うぅ…ごめん蒼龍…」

うーん。

流石の最高練度も二人には頭が上がらないようだ。
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 03:25:48.81 ID:04AfV4e30
流石人殺し多聞丸の薫陶を受けただけのことはある、強いw
戦艦たちが即座に謝罪できるいい大人たちでほっとした
863 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/18(木) 03:26:44.62 ID:8hN5TkSb0
私の艤装の出し入れのイメージはFF零式の武器召喚のアレで固定されている

艦これSSは基本的に何でも読みますが、非所有艦がメインのモノは読まないようにしています
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 12:55:40.09 ID:hiXqg6sz0
更新お疲れ様です
間宮3日分で躊躇うお値段?
高級菓子なんだろなー(間宮には一流菓子職人が軍属で乗船してたそうです)
865 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:01:46.95 ID:bfDD7pNk0
51匹目:猫はコタツで丸くなる


雪やこんこん霰やんちゃ…あれ、何か違う?

実際猫は雪だろうと霰だろうとなんだろうとコタツがあれば丸くなるものだ。

でも例えば、それが吹雪だったりすると?
866 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:02:46.94 ID:bfDD7pNk0
吹雪「っプハー!」

北上「…え」

吹雪「へ?」

この鎮守府。色々な所が後付け工事で構造が変わっていたり建物が増えてたりするらしい。

提督、つまり2代目である今の提督がやったとか。

嘘か真か、秘密の研究室やら禁断の実験室がどこかに隠れてるとか。噂だけどさ。

そんなんだからあまり人気のないところ探してサボってたりする艦娘がいたりする。

するのだが…
867 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:04:14.34 ID:bfDD7pNk0
3階。

外階段へと通じる扉を開けた先にあったのは

叢雲「っちゃー…」

右手を額に当て天お仰ぎやっちまったーのポーズを取る叢雲。

吹雪「」

右手に十中八九ビールの類であろう缶を持ち左手は腰に当て今しがた喉越しを味わいましたというポーズを取っている吹雪。

北上「…」

吹雪「…」

北上「…」

吹雪「ノンアルコールですから!」

北上「嘘をつけ」

どうみてもINアルコールである。
868 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:04:50.38 ID:bfDD7pNk0
叢雲「まあ溜まり場、サボり場なのよここ。私たちしか知らないけど」

吹雪「あ、でもでもサボってるわけじゃないんですよ。ちゃんと休憩時間なんです」

北上「そこは疑ってないけど」

というか普段の働きからしてもっとガンガンサボっても文句は言われないだろう。

北上「でそれは?」

吹雪「マイソウルドリンク」

叢雲「飲む?普通のビールだから」

北上「遠慮しとくよ」

吹雪「えー罪を共有しましょうよ」

罪の自覚はあるのか。

北上「私アルコール好きくないからさ」

吹雪「む、ならしょうがないですね」

飲めない部下に理解があるいい上司。
869 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:05:23.94 ID:bfDD7pNk0
叢雲「意外ね。球磨型はアルコールには強いと思ってたけど」

北上「別に飲めなくはないよ。好みの問題。というか皆そんなに強いの?」

吹雪「球磨さんは強いですねえ、飲んでも飲んでも顔に出ないタイプです」

叢雲「木曾は、強いのだけどそれ以上に飲みすぎるから潰れやすいわ」

北上「大井っちは普通に酔うけど潰れはしないタイプだったなあ」

吹雪「多摩さんは、多摩さんはなんといいましょうか」

叢雲「謎よね」

北上「謎?」

すごい表現だ。
870 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:06:02.24 ID:bfDD7pNk0
叢雲「飲んだらすぐ寝るのよ」

吹雪「でもちょっと寝たと思ったらいつの間にか起きててまたぐいっと飲むんですよ」

叢雲「そしてまた寝る」

北上「なんだそりゃ」

吹雪「最初の落ち着いてる時も中盤のどんちゃん騒ぎの時も終盤のお通夜モードの時も一切変わらず寝て起きて飲むを繰り返すんです」

叢雲「それで翌朝みんなが吐き気と頭痛に呻いてる中ケロッとした顔で朝ご飯食べるのよね」

吹雪「あれはホント謎だよね」

北上「なんだろう。なんか多摩姉らしい」

叢雲「マイペースの極みよある意味」
871 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:06:43.86 ID:bfDD7pNk0
北上「今度みんなで飲んでみようかな」

叢雲「いいんじゃない。でもみんなでってなると途端に難しくなるわよ」

吹雪「暇な時は多いですけど予定が会う日となると意外と揃わないんですよね〜」

北上「確かに。次の日出撃とかでも辛いしねぇ」

叢雲「ま、そこは最悪艤装を使えばアルコールは抜けるわよ」

吹雪「気持ち悪さは自己負担ですけどね」

北上「遠慮しておきたいところだね」

ちなみに猫にアルコールはダメ絶対。

我々はアルコールを分解する構造を持ち合わせていない。
872 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:07:19.50 ID:bfDD7pNk0
北上「二人はどうなのさ」

叢雲「私は普通ってとこかしらね。はっちゃけたりはしないわ」

吹雪「この子酔うと色っぽくなるタイプでしてね」
叢雲「ちょっと」
吹雪「特型駆逐艦は全員この子に唇奪われているなんて言われるくらいで。あ、半分くらい事実です」
叢雲「違っ」
吹雪「さらには提督を誘惑した事までありまして」ゴソゴソ
叢雲「なっ!?」
吹雪「こちらが証拠のビデオ映像になグヘェッ!!」

ビールの缶が凄く楽しそうな表情をした吹雪の頬に直撃した。

中身開けてないやつが。

ドッヂボールより痛そうだ…
873 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:07:53.72 ID:bfDD7pNk0
叢雲「はい!」ポイ

吹雪「あぁ…メモリーが…妹の貴重な映像がぁ…」

スマホにあった映像はしっかり消されたようだ。

バックアップあるんだろうなあ。

叢雲「吹雪はそもそもあまり飲まないわね」

吹雪「私はみんなの介抱する立場ですからねえ。強いとは思いますよ?こうしてビール飲んでますし」

北上「ビールって言っちゃってるし」

吹雪「生いきビールです」

叢雲「駄菓子でしょそれは」グビ
874 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:08:34.41 ID:bfDD7pNk0
しかし偶然ではあるがいい機会だ。

北上「ねえ吹雪」

吹雪「ん?」グビ

北上「ここの前任者って、どんな人?」

サラッと事も無げに聞いてみる。

吹雪「ブフッ」

北上「ありゃ」

吹き出した。吹雪だけに。

叢雲「吹雪」

吹雪「な、なに?」

叢雲「ヒゲヒゲ」

吹雪「おっと」フキフキ

泡の白いヒゲを手の甲で拭く。

オヤジか。
875 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/22(月) 03:11:38.92 ID:bfDD7pNk0
嫁がローソンの店員になったと聞いて。

もっと時間が欲しいものです。
876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 11:14:17.89 ID:9lgrDVvi0
更新乙でございます
瑞鳳が嫁艦ですか、次イベで活躍しそうなので楽しみですね
物語はいよいよ核心へですかね
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/23(火) 10:46:52.70 ID:08MLsIw80
誘惑した提督は前任者なのか今提督なのか
878 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:08:51.07 ID:7kJBhy8y0
吹雪「前任者って言っても普通の人ですよ。退役したのは、歳でしたからね」

北上「提督ってのは記録を回収してまで引退するものなの?」

酔って口を滑らす、なんて期待しているわけじゃないがこんな機会は滅多にないだろう。

畳み掛けてみる。

吹雪「…」

叢雲「吹雪?」

吹雪「叢雲。ビールお代わり」

叢雲「まだ飲む気?もうないわよ」

吹雪「取ってきて」

叢雲「はあ?」

吹雪「お願い」

叢雲「…また一つ貸しよ」
879 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:21:43.11 ID:7kJBhy8y0
叢雲「…」

空き缶を持って扉を開ける。

中へ入る時、少し立ち止まったけれどそのまま静かに扉を閉めて室内へ消えていった。

北上「ん?」

叢雲の足音がしない。

扉を隔てた向こう側にいる?

覗いてみようと取手に手をかけたところ

吹雪「静かに」ボソッ

視線を戻すといつの間にか息がかかるくらい近くに吹雪の顔があった。

北上「ふ、吹雪?」ヒソヒソ

吹雪「いいから、このままで」ヒソヒソ

私はそう身長が高いわけではないけれど流石に駆逐艦とは身長差がある。

少し背伸びをしてまるでキスでもするような体制で吹雪が私の耳元で囁く。

吹雪「こうでもしないと話せませんからね」

どっちに対する言葉だろう。

いや、どちらにも当てはまる言葉か。
880 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:23:57.47 ID:7kJBhy8y0
2.3歩離れて手すりに寄りかかると元の調子で話始める。

吹雪「何処で知ったんですか?前の提督を知る人なんて殆どいないですし。多摩さん、は口は硬いですからねえ。日向さんも」

口は固そうだったけどガードは緩かったよ多摩姉。

吹雪「意外と谷風あたり?それとも、飛龍さんか」

飛龍。あの人も前からここにいるのか。

吹雪「おや、飛龍さんのことは知りませんでしたか」

北上「げっ、引っ掛けか」

顔に出てたか。私も隠し事は得意ではないようだ。

吹雪「まだまだですねえ北上さん」

北上「ぐぬぬ」
881 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:26:25.11 ID:7kJBhy8y0
吹雪「なんで、知りたいんですか?前任者のことなんて」

じっと見つめてくる彼女の目は、酷く冷たく感じる。

北上「普通気になるもんなんじゃない?」

少しおどけて答える。

お互いに探り合いだ。先手は取られたが次はこちらが攻める番だ。

吹雪「まあそうですね。でもそれならさっきの私の答えで満足でしょう?仮にも軍ですから、開示できる情報に限りはあるものです」

北上「同じ鎮守府にいたんだ。身内みたいなものでしょ」
吹雪「身内なんかじゃありませんよ」

食らいつくように答えを返してきた。何か気に触ったのか?
882 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:27:15.08 ID:7kJBhy8y0
北上「…理由は言えない。でも興味本位じゃないよ。知らなくちゃいけないんだ」

吹雪「何か提督に縁でもあるんですか?」

「提督」の言い方がいつもと違った。

優しいような、懐かしむような、慈しむような。

多分前の提督を指しての「提督」なんだろう。

北上「分からないよ。でもそうかもしれない」

そうだ。興味本位だった。でも今は違う。

何か縁がある。

そう思ってる。
883 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:38:02.72 ID:7kJBhy8y0
吹雪「日本生まれ日本育ちのごく普通の男性ですよ。まあ提督なんてものになってる辺りは普通ではないかもですが」

北上「国を守る為の、一国一城の主だものね」

吹雪「優秀な人でした。この戦争の始まりが何時からかというのは中々定義が難しいですけど初期から最前線で戦い続けた人ですからね」

北上「随分長いね」

吹雪「今の提督は三年と少しくらいですかね。昔より環境は格段に整っているとはいえ彼も中々優秀ですよ。前任者に似たんですかねぇ」

北上「前任と、後任か」

吹雪「優秀かは実際あまり関係はないんですよね多分。提督の必要性に関して言えば」

北上「必要性?」
884 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:38:38.80 ID:7kJBhy8y0
吹雪「艦娘ってのは提督がいて初めて艦娘なんですよ。この場合の「提督がいる」の意味は色々ありますけど、提督ってのは私達船にとって灯台のような目印であり港のような帰る場所なんです。

ならその提督がいなくなったらどうなるか」

北上「…」

提督のいなくなったら鎮守府。最近よく聞く話だな。

吹雪「あらゆる鎮守府のこれからの課題ですよ。戦争は長期化してきています。今後何らかの理由で鎮守府や艦娘より先に提督が消える事例はどんどん出てくるでしょう。

その場合どうするか。どうなるか。

この鎮守府はその実験というか、試験的な意味合いがあるんですよ。偶然にもね」

提督がいなくなったら、どうなる。

手から離れた風船。飼い主から解き放たれた犬。蒲公英の綿毛。雛の巣立ち。

そのどれかか、そのどれもなのか。
885 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:40:13.01 ID:7kJBhy8y0
北上「前任者の記録がない。というか末梢されてるのはその問題に気づかせないためってこと?」

吹雪「まあそういう感じでしょうね。結局のところ問題の先延ばしでしかないんですけど」

北上「そうだね」

吹雪「私達艦娘が実戦投入された時も世間はお祭り騒ぎでしたからねー。非人道的だーとかなんとか。

まあ安全地帯で騒いでるだけの暇人共ですから、深海棲艦に砲弾一発ぶち込まれれば泣いてすがりついてきますけど」

北上「危険だ、とかもね」

吹雪「扱い辛いのはその通りですよ。人形なのに戦力としては軍艦相当なんですから。そのくせ人のように振る舞う。縛り付け押さえつけて反乱でもされたら事ですよ。

なのに私達以外に現状を打破できる手段はない。仕方ない」

北上「提督がいなくなれば楔がなくなる、と」

吹雪「その可能性を知られるだけでも反乱の危険がありますから。情報が消されてるのはそのためです。

と言ってもここが初めての例ですし何がきっかけで艦娘が暴れるか分かったもんじゃないですからね。上もおっかなびっくり処理した感じで、こうして気づかれる程度のお粗末なものですよ」

北上「確かに。お粗末なものだったよ」
886 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:41:21.51 ID:7kJBhy8y0
吹雪「この鎮守府、昔も結構な人数がいたんですよ?戦力としても上から数えた方が早いくらいには優秀でした。

その結構な人数、どうなったと思いますか?」

変わらない調子で淡々と話す。

でも私は目の前の彼女がまるで宇宙人のように思えてきた。

同じ存在のはずなのに、自分とはあまりにも何かが違う。

吹雪「結果としてこの鎮守府で、新しい提督の元でも機能すると判断され、実際にそうだったのが僅かに数人だったという話なんですよ」

私の背中で、扉越しに僅かだが音がした。

これが聞かせたかった話しか。

自分から伝えるわけにはいかないが、知って欲しかった事実。

扉の向こうの彼女は何を思って聞いているのだろう。

目の前の少女は、他のみんなと同じように見える。

でも誰も経験した事がない何かをきっと知っている。
887 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:42:38.50 ID:7kJBhy8y0
北上「その結構な人数は、どうなったの」

努めて冷酷に、あえて淡々と聞き返す。

吹雪「当たり障りなく書類上の報告で返せば処分、ですかね」

北上「なんでさ」

吹雪「飼い主が消えたペットはどうなると思います?逃げ出すでしょうか。暴れたり、仲間同士で喧嘩したり、誰彼構わず襲うような猛獣だったり?

まあどれにしたって処分ですよね」

北上「そう」

吹雪「ええ」

聞きたいことを押し殺してただ相槌を打つに留める。

もしそうしなかったらと思うと、ゾッとする。
888 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:43:28.18 ID:7kJBhy8y0
北上「じゃあさ、吹雪は、なんで残ったの?」

言葉を慎重に探りながら聞く。

吹雪「頼まれたんですよ」

北上「頼まれた?」

吹雪「提督に、鎮守府を頼むって」

それは、あまりにも重い言葉だ。

北上「鎮守府の維持にこだわるのはそれが理由か」

吹雪「そーゆー事です」
889 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:44:03.47 ID:7kJBhy8y0
北上「おや?」

吹雪「行っちゃいましたか?あの子」

北上「みたいだね。そろそろ終わると踏んだか」

吹雪「引き際はホントに上手いんですけどねぇ」ヤレヤレ

北上「聞かせたことには気づいてるのかな」

吹雪「どうでしょう。そこら辺鈍いですから」

北上「信用ないんだね」

吹雪「信頼してますよ。だからこんな危ないやり方したんです」
890 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:44:49.99 ID:7kJBhy8y0
北上「正直意外だった」

吹雪「何がですか」

北上「一応とは言え話してくれた事が」

吹雪「それはこっちもですよ。まさかそっちから聞いてくるなんて」

北上「そっちからって、自分から言うつもりはあったの?」

吹雪「そうすべきかも、とは思ってたり」

微妙な笑顔で意味深な事を言われた。

北上「提督は、なんでいなくなったの?」

最後にもう一度聞く。

吹雪「…原因は色々あるのかもしれません。でも元凶は1人です。戦争ですからね、奴ら以外にいないでしょ?」

深海棲艦(奴ら)。それも、『1人』、か。
891 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:45:19.89 ID:7kJBhy8y0
吹雪「さてさて、話はおしまいです」

北上「ありがとね。色々話してくれて」

吹雪「叢雲の事があったから、いい機会はいい機会だったんですよ。でもそれ以上に」

喋りならがらゆっくりと扉まで歩いていきノブに手をかける。

北上「それ以上に?」

吹雪「期待してるんですよ」

北上「?」

吹雪「アナタにね」ガチャ

期待とはなんの事だ?

しかし私が何か言うよりも早く吹雪は扉の向こうへ消えていった。
892 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:45:48.60 ID:7kJBhy8y0
と思ったら顔だけが戻ってきた。

吹雪「おっと忘れてた!提督がさっき呼んでましたよ。東棟1階に来いって。それじゃ」シュン

北上「お、おう。りょーかい」

東棟?あそこ何かあったっけ?

やれやれどうやら丸くなってる暇はなさそうだ。

北上「んッ…ー」ノビー

大きく身体を伸ばす。

さて行きますか。
893 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 02:48:23.91 ID:7kJBhy8y0
第五次タペストリー争奪戦

何としてでも26日前には終わらせる所存。
北上にはひたすらイチャイチャしてもらいます
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 10:11:40.11 ID:FQcksltM0
タペって30日からだった希ガス
いつも更新楽しみにしております
無理の無い感じの更新でいいと思いますですよ
895 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:07:34.79 ID:7kJBhy8y0
52匹目:猫は三年の恩を三日で忘れる







文字通り、猫は三年の恩を三日で忘れるという意味。

いやふざけるなよと。

そりゃ放し飼いというかエサだけやってる近所の猫なんていつの間にかさっと消えててこの恩知らずなんて思われるかもしれない。

しかしそんな人間の尺度で勝手に猫は恩知らずだとことわざまで残されちゃたまったもんじゃない。

犬と比べるからぱっとしないだけで忠犬ハチ公ならぬ忠猫タマ公みたいな話は昔からある。

家猫が増えている昨今、飼い主と強い絆で結ばれている猫は増えているだろう。

結局のところ恩に報いるかどうかは人それぞれ、猫それぞれだ。

少なくとも私は

報いたい。
896 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:08:13.01 ID:7kJBhy8y0
私は飼い主を探している。

谷風曰く、こうして生まれ変わっているのには意味がある。

ならばここには何かしら縁があるのだろう。

事実白猫、もとい多摩姉がいた。絶賛記憶喪失中だけど。

しかしこうなるとどん詰まりだ。手がかりがない。

飼い主の情報はゼロ。頼りの相方の記憶は戻りそうもない。

故に私は今ここの鎮守府の前任者を探っている。

何か縁があると信じて。
897 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:10:13.26 ID:7kJBhy8y0
北上「ここか」

鎮守府東棟。

通称物置小屋。

つまりそういうことである。

古いものから最近のものまで要らなくなった物をとりあえず詰め込んだここは半ばパンドラボックス化しているとかなんとか。

外見はそこそこ普通なのだが中はかつて夏に肝試し会場として使われ多数の艦娘が上はモチロン下からも涙を流す羽目になり使用禁止となるくらいには不気味らしい。

北上「おじゃましまーす」ギィ

腐った木製のドアがいかにもな音を立てる。

うん、確かにこれは怖い。
898 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:11:09.98 ID:7kJBhy8y0
提督「よっ」

北上「…よかった。足はついてるみたいだね」

提督「幽霊なんかいねえよ。少なくとも俺には見えない」

北上「いるいないじゃなくて、いそうってのが幽霊なんだよ」

提督「おおなんかそれっぽい」

北上「でしょ」

提督「さてこっちだこっち」

提督の後について奥へ進む。

まだ明るい時間だというのに中はいやに暗い。

窓の掃除は、まあする人もする必要もないか。
899 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:11:49.52 ID:7kJBhy8y0
提督「ここだ」

北上「どこだここ」

一階の隅っこ。

古ぼけた建物の中でも一際古臭く見える部屋。

北上「なんの部屋?」

提督「それは見てのお楽しみだ」

そう言うとポッケから鍵を取り出し扉に差し込む。

北上「ふむ」

見たところ古臭い以外は他の部屋と変わらない。

提督「ん?」ガチャガチャ

だとしたらなんで私はなんで呼ばれたんだろ?

提督「ほ!」ガチャン

荷物運びとかなら私である必要は無いし、というかそれなら今すぐ帰る。

提督「ほ?」ガッガッ
900 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:12:27.73 ID:7kJBhy8y0
他に私が呼ばれるような理由は…

提督「…」カチカチ

北上「いやいつまでやってるの」

提督「せいっ!」ガチャ

北上「お」

提督「開いた…」

北上「長く苦しい戦いだったね」

提督「見ての通りボロッボロだからな。鍵もサビとかでひでぇんだこれ」

北上「鍵変えたらいいじゃんか」

提督「そうもいかなくてな。さ、入れ入れ」ガッ

北上「あれ?」

提督「…」ガッガッ

北上「…扉事変えたら?」

提督「…検討しよう」

この後もう少し手間がかかった。
901 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:13:18.66 ID:7kJBhy8y0
北上「おー不気味なほの暗さ」

中はぼんやりと棚やら物が見える程度には光が入っているようだ。

提督「オラァ!」バタン

北上「閉める時も大変なのね」

提督「最初から全力でやるのがコツだな」

扉を変えるのと壊れるのどっちが先だろうか。

提督「えーと、確かこの辺にランプが」

北上「ライトはないの?」

提督「電気通ってるように見えるか?」

北上「んー見えない」

提督「どっちの意味で」

北上「どっちも」

提督「なる」カチッ

北上「おわ眩しっ」

提督「おっと悪い悪い」

形はキャンドルランプのようだ。もっとも中身は電池式の豆電球のようだが。
902 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:14:04.21 ID:7kJBhy8y0
北上「ん?それって」

ランプが置いてあった台。見たことはないが知っている形だ。

提督「これか?昔使ってたプリンターだよ。業務用のでっかいやつだけどな」

北上「でもこれ結構新しいよね?なんで物置小屋に」

提督「2.3年前はフル稼働だったよ。北上は知らないだろうけど、週の予定やその日の出撃、遠征、演習の編成。大規模な作戦がある時なんか資料をしおりみたいにして配ったりしてたんだぜ」

北上「人数分?」

提督「流石に全員ってわけじゃないけどな。掲示板に貼ったり各部屋に一部配るとか艦隊の旗艦に渡したりとか。それでもえらい量だったよ」

北上「なのに今はお払い箱か」

提督「スマホあるからな」

北上「あーなるほどね〜」
903 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:14:38.18 ID:7kJBhy8y0
提督「便利なもんさ。ファイルでポンと送ればそれで終わりなんだ。修正も楽だし紙もインクもいらない。掲示板が廃れたのを青葉あたりが残念がってたけどな」

北上「時代の流れだねぇ。侘び寂びだよ」

提督「それって意味あってるのか?」

北上「さあ」

提督「おい」

北上「今はプリンターないの?」

提督「家庭用のちっこいのが代わりを務めてるよ」
904 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:15:21.83 ID:7kJBhy8y0
提督「まあこんなのはどうでもいいんだ。そろそろ目は慣れたろ?」

北上「うん。たいぶ」

提督「なら、ほら」

提督がランプを掲げ部屋に明かりを放つ。

北上「おー!」

思わず感嘆の声を上げてしまった。

部屋に広がっていたのは、いくつもの棚に収められた無数の本たちだった。

北上「凄い数!奥も全部そうなの?」

提督「おうよ。お前らの図書室ほどじゃないが結構な量のはずだ」

北上「でもなんでこんなところに」
905 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:15:59.94 ID:7kJBhy8y0
提督「あーっと、前の、ここの前の提督の忘れ物ってところかな。一応所有権は俺にあるから心配すんな」

北上「…前の提督の」

提督「この部屋もそもそもその人の図書室みたいなもんだったらしい。読書家だったんだろうよ。そんなだから、捨てるに捨てられなくてな。こうして部屋ごと残してあんだ」

北上「これが、全部」

前任者。

これまで一切経歴やその人となりが見えなかった誰かさん。

北上「…読んでもいい?」

提督「モチロン。そのために呼んだんだ」

本棚の適当な1冊に指をかけ手前に抜く。

初めて誰かさんに触れられた気がした。
906 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:16:37.55 ID:7kJBhy8y0
北上「ホコリとかはあんまりないんだね」

提督「それくらいの掃除はしてるさ。本のほうはよく分からないから保存状態は保証できないが」

北上「重畳だよ」

日光が入らないのは見た通りだけど、換気の方もそこそこされているようだ。

よれていたりはするけれど古本ならではという程度で素人の保存としては及第点だろう。

手に取ったのは『The Door into Summer』。

北上「英語?」

本棚に並ぶタイトルをざっと眺める。

提督「そ。これ全部海外の本なんだよ」

北上「なるほど。それで私ってわけか」

提督「別に無理に読む事はないぞ。もう北上くらいしか読むやつもいないだろうし、気に入ったのだけでも使ってくれれば御の字だ」

北上「気に入ったのかあ。これ全部をチェックするにはそれだけで長い時間楽しめそうだよ」
907 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:18:24.81 ID:7kJBhy8y0
提督「そりゃよかった。ほい」

北上「これって、ここの鍵?」

提督「俺はもう戻るから自由に使ってくれれ。あー暗かったら本はバンバン持ち出して構わないぞ。目ぇ悪くなるだろここ」

北上「人間じゃあるまいし、そんなんで悪くならないよ。ここで読む」

提督「そっか、ならいいけど。んじゃ」

北上「はいはーい」

日本人でこれだけ海外の本を集めるって中々だなあ。もしかして読書好きとかが私の飼い主との共通点とか?

さてどこから読んでいこうか。

ガタッ

いやその前にこの本たちがどう並んでいるかをチェックしよう。

提督「あれ?」ガタガタ
908 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:19:00.95 ID:7kJBhy8y0
とりあえずアルファベット順ではあるようだけどもっと大まかにジャンルや年代作者別の可能性もある。

提督「フンッ!」ガッ

いやらパッと見作者別はなさそうだ。

提督「ソッ!ハッ!」ガッガッ



北上「てーとく〜。いつまでやってんの」

提督「いや…」

北上「てーとく?」

提督「なんて言うかその…」

北上「提督?」

提督「微動だにしない」

北上「うそん」

驚きの密室体験。
909 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:19:53.78 ID:7kJBhy8y0
北上「艦娘パワーならいけると思うけど」

提督「それだと扉壊れちまうし」

北上「緊急事態じゃない?」

提督「まあそうとも言えるが…」

北上「なんか引っかかってるのかね」

提督「多分さっき閉めた衝撃で鍵が変に閉まっちまってんだと思う」

北上「鍵?あーホントだ。隙間から錠が見える」

提督「鍵でいけるかな」

北上「んー…ダメだ。中途半端に鍵かかってるせいで入らない」

提督「ダメかあ」

北上「ダメだあ」
910 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:20:35.46 ID:7kJBhy8y0
北上「やっぱ壊すしかないんじゃ」

提督「最終手段でお願いします」

北上「最終って…」

提督「そう悲観することもないだろ。鎮守府の誰かに連絡とりゃいいんだし」

北上「あっそうか」

普段スマホなんて持ち歩かないから完全に失念していた。

提督「…」

北上「…」


北上「あれ、連絡は?」

提督「え、いやスマホ部屋に置いてきちった」

北上「私スマホなんて持ち歩かないよ」



提督「マジで」

北上「マジか」
911 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:21:14.71 ID:7kJBhy8y0
提督「つんだ」

北上「最終と言ってもいいのでは」

提督「ん〜。ここに行くことは吹雪も知ってるしあんまり遅けりゃ探しに来るだろ」

北上「そんなにこの部屋が大切なの」

提督「まあな」

北上「…仲良かったりしたの?前の提督と」

提督「いや…仲はあんまし良くなかったかな」

凄く難しい顔をする。
912 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:21:46.85 ID:7kJBhy8y0
北上「よく考えたら私は別に急いで外に出る必要ないよね」

提督「俺も別に急いで外に出る必要はないな」

北上「いや提督は仕事しよう」

提督「不可抗力不可抗力」

北上「やはり扉を壊して出よう」

提督「まて落ち着け」

北上「日頃の行いが悪かったと諦めよう」

提督「それとこれとは別問だいたたたた折れる折れる本気出すなおい!」
913 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:22:20.10 ID:7kJBhy8y0
提督「どうせ俺がいなくても鎮守府回るし」

北上「これは酷い」

提督「書類とかだってぶっちゃけアレいらないだろ?古臭いしきたりみたいなもんだよ。今時んなもんデータで送れってんだ」

北上「まあまあ。私達のためだと思ってさ」

提督「お前らのためになるかは微妙だぞ?」

北上「なんでよ」

提督「戦争だからな」

北上「そっかー」

提督「俺が仕事をサボれば平和になる」のでは」

北上「それは見て見ぬふりって言うんだよ」

提督「う…」
914 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:22:56.28 ID:7kJBhy8y0
北上「後で吹雪に謝っときなよ」

提督「そーするよ」

北上「さてと。じゃ方針も決まったし救援がくるまでゆっくりくつろぎますか〜」

提督「くつろぐっても椅子もなんもないんだけどな」

北上「ホコリがないならそれで十分だよ」

一番手前の棚の左上から5冊ほどを抜き取る。とりあえずは片っ端から見ていこう。

本棚を背に床に座る。

北上「うわ」

提督「どした」

北上「妙な湿り気というか感触というか」

年季の入った板の出す独特の柔らかさがお尻に直に伝わってくる。

夏も終わり残った暑さと湿気がなんとも言えない生暖かさを演出していた。

スカートをしっかり下に引いた方が良さそうだ。
915 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:23:32.88 ID:7kJBhy8y0
北上「こういう時男が羨ましいよ」

提督「ズボンだしな」

北上「提督も来なよ」

提督「俺英語は読めねえぞ」

北上「そこは北上さまに任せなさい。それにずっと立ってるわけにもいかないでしょ?」

提督「まあそりゃそうだが」

北上「いつもの提督室みたいな感じでさ」

提督「…」

何やらしばし躊躇した後、

提督「おーけー、お邪魔するよ」

そうっと私の隣に座ってくれた。
916 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:24:09.02 ID:7kJBhy8y0
やっぱり大井っちの事を考えたりしているのだろうか。

まあ今は緊急事態だししょうがない。

しょうがないよ。

提督「で、それはなんて本だ?」

北上「『The Door into Summer』これくらいは分かるでしょ」

提督「…夏に、夏の、中の扉?」

北上「そんな固く考えなくてもいいって。夏への扉ってやつ。これは和訳のやつを読んだことあるんだ」

提督「青春ものって感じのタイトルだけど」

北上「内容はもっと大人っぽいよ。仲間に裏切られた主人公がね、唯一信頼してた猫ともはぐれて未来に行っちゃうって感じかな」

提督「裏切りかぁ。そりゃ辛いな」

北上「提督も明日は我が身だよ〜」

提督「よせやいこんなアットホームな職場で」

北上「うわぁこりゃいつ刺されるかもわからんね」

提督「俺が主人公なら猫は北上かな」

北上「またまたそんなこと言って〜。素直になりなよ〜」ツンツン

提督「素直な意見だよ素直なぁ」
917 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:24:42.23 ID:7kJBhy8y0
北上『The Lord of the Rings』」

提督「これは映画を見た気がするな」

北上「見に行ったの?」

提督「いや。鎮守府で上映会みたいなのやって色んな映画を見たりするんだ。正直これは途中から見たからあまり記憶が正確じゃないなあ」

北上「長いからね〜これ。よく映画にまとめたよ。ハリーポッターなんかもそうだけど」

提督「海外の映画なら俺はパイレーツ・オブ・カリビアンが好きかな」

北上「いつも安全地帯で指示出すだけなのに前線に出て船長とかに興味あるの?」

提督「グサッとくる。箱に心臓入れたくなるくらいグサッとくる」

北上「あ、結構気にしてた?」

提督「いいもん。これが俺に出来る最善だもん」

北上「でも海賊には憧れる」

提督「というよりは自由ってやつだな。もちろん無責任なほうじゃなくてな」
918 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:25:34.25 ID:7kJBhy8y0


……

北上「これもなんかなあ」

提督「二冊連続だぞ」

北上「やっぱ出だしでこう、なんか合わないって本あるんだよねぇ」

提督「俺にはよく分からんな」

北上「アニメとかで出だしでいきなりなっがい独白から始まってえっ…てなる感じ、かなあ」

提督「なんとなく分かった」

北上「こっちは、『Stray』?迷うとかはぐれる」

提督「びっきーアラン。聞いたことはないな」

北上「…これはちょっと読みたくなる感じ」

提督「そりゃよかった」

北上「ちょっと肩かりまーす」

提督「ちょ、おい。北上ー」

北上「やっぱ椅子無しは辛い」

提督「へいへい」
919 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:26:10.89 ID:7kJBhy8y0
北上「…あー、迷い猫はぐれ猫って意味か」パラパラ

なんだか親近感が。

あれ?

北上「なにやってんの」

提督「こうして座るとあんまり身長差感じねーなーって」

北上「そうじゃなくてなんで私のおさげをいじってるのさ」

提督「なんかフサフサしてて気持ちいい」

北上「猫の尻尾じゃないんだからさ」

提督「というかさっきからいじってたけど全然気が付かないのな」

北上「読み込んでたからね」

提督「ところで猫の尻尾って気持ちいいのか?」

北上「んー、どうだろう」
920 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:26:50.36 ID:7kJBhy8y0
提督「やっぱ長い髪だと筆みたいで気持ちいいな」

北上「そんなに気に入ったの?」

提督「俺なんかつんつん頭だしさ」

北上「提督のは染めてるのもあるでしょ」

提督「確かに」

北上「髪長いってのも色々大変なんだよ?寝転がったら体制変える度に髪に引っ張られたり巻きついたり。こうして座ってるとこから立とうとすると髪を足や手で挟んでピーンってなったり。艤装降ろそうとしたら髪の毛挟まってて頭を引っ張られたり「待て待て、落ち着け。ゴメン俺が悪かった」分かればよろしい」

提督「髪切りたいのか?」

北上「出来ればね〜」

提督「ふ〜ん。それはそれでもったいねえな」

北上「そう?」

提督「男は髪短いからさ、長髪ってなんか大切な感じがするのかな」

北上「隣の芝生は青いってやつかな」
921 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:28:08.97 ID:7kJBhy8y0
北上「あとこそばゆいねこれ」

提督「あ、やっぱ自分でもそうなんだ」

北上「風呂上がりとか特にさ。私の長さだと鎖骨あたりにちょーど刺さって。もうちょい長いと胸とかいくんじゃないかな」

提督「あのさ、その生々しぃ体験談を俺に対して女子トークのノリでするのはどうかと思うんですよ」

北上「あ、ごめん」

提督「俺って男だって事意識されてないのかな」

北上「どうだろね。人によるとは思うけど、私としては性別じゃなくて異性って感覚があまり無い気がする」

提督「どゆこと」

北上「提督が異性だと思えない」

提督「同じことだろ?」

北上「いやいや。例えば私が男で提督が女でも、提督がイケメンでも不細工でも、なんであれ差異を感じないって感じ」

提督「友達感覚しかない、ってことか」

北上「ここには仲間しかいないから」
922 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:28:46.67 ID:7kJBhy8y0
提督「仲間、ねえ」

北上「家族の方が合ってるかも。ファミリーだよ」

提督「姉妹にとどまらずか」

北上「みんな個性的だからね、私達には海より濃い血が流れてるんだね」

提督「なんだそりゃ」

北上「さあてね。提督、長い髪が好きなんだっけ」

提督「誰から聞いたよそれ」

北上「大井っち」

提督「あんにゃろ」

北上「てことはそうなんだ」

提督「自分にないものって憧れるじゃん」

北上「髪伸ばせば?五年もあれば結構な長さになるんじゃない」

提督「よせやい変人だよそんなん」

北上「今更でしょ」

提督「おい」
923 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:29:37.80 ID:7kJBhy8y0
北上「よっと」

読み終えた本を戻して新たに本を取り出す。

ずっと座っているのでこうして体を定期的に動かさないとあとが怖い。

提督「北上ーパンツ見えてんぞー」

北上「やーんえっちー」

提督「反応が薄い」

北上「見せ慣れてるからねぇ。それを言ったら提督こそ」

提督「見慣れてるからなぁ」

北上「世間的には結構とんでもないこと言ってるよねお互い」

提督「女ばっかの兄弟の中で1人だけ男みたいなもんなんじゃね。一々興奮なんかしねえだろ」

北上「んーイマイチわかんないや」

そこら辺は人間の感覚だろう。
924 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 21:30:16.84 ID:7kJBhy8y0
北上「提督も立ったら?腰痛めるよ」

提督「いやいいよ。今は」

北上「そお?流石に体育座りのままはキツそうだけど」

提督「フフ、提督を舐めるなよ」

天龍より怖くない。いっそかわいい。

北上「ならいっそ提督を椅子にしよう」

提督「へ?」

北上「ほら足広げて伸ばして」

提督「わっバカやめろ!ストップ!待て!」

北上「猫に待ては効かないよ〜」

提督「だあやめやめ!」
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 22:21:26.70 ID:FQcksltM0
更新乙です
口ではそんなことをいいつつ
息子スティックはおっきしてるのか……
提督も男という事なんですね
926 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:32:49.63 ID:7kJBhy8y0
北上「そんなに嫌だった?」

しばし取っ組みあったが流石に少女と大人、力の差は歴然だ。

ここで艦娘としての力を使うようなことは流石にしない。

提督「嫌ではないんだが…まあ色々とね、男としてと言いますか」

男?

大井っちの事かな。

別にこれくらいはいいじゃないか。

独り占めはよくないぞ。

提督「北上?」

北上「なら膝枕を要求しますよ〜」

提督「だ〜もわかったわかったやりゃいいんだろ。それならかまわないよ」
927 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:33:24.14 ID:7kJBhy8y0
北上「えー」

提督「んだよ」

提督、胡座。

北上「正座じゃないのそこは」

提督「木の板の上で長時間正座かつ膝枕とか拷問かよ」

北上「それもそうか。ちぇーひ弱だなあ人間」

提督「繊細だと言ってくれ」

北上「いやその言い方もどうなのさ」

提督「…割れ物注意とか?」

北上「ガラス細工だったとは」

提督「デリケートなんだぜ」
928 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:33:51.67 ID:7kJBhy8y0
北上「よいしょっと」

提督の少し固めの膝枕に頭を預け上を向き本を開く。

提督「お前はホント膝枕好きだな」

北上「知ってたの?あー大井っちか」

提督「私の膝は全然使ってくれないーって言ってたよ」

北上「大井っち余計なことばっかするからゆっくり寝れないんだよね…」

提督「本人に言ったらどうだ」

北上「なまじ悪気がないだけにこちらからは言い難い」

提督「善意って怖いな」

北上「てーとくから言っといてよ」

提督「なんで俺が。んな事言ったら嘘つけーって酸素魚雷が2発ほど飛んでくる」

2発という具体的な数字が出てくるあたり提督も慣れているというかなんというか。
929 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:34:19.65 ID:7kJBhy8y0
ふと上を見ると提督の顔が見える。

北上「提督ってなんで髪染めてるのさ」

提督「カッコいいだろ?」

北上「…」

提督「北上?」

北上「…」

提督「…」

北上「…」

提督「きたかみさーん」

北上「鏡って知ってる?」

提督「お前ほんっと容赦ないよな」
930 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:34:47.80 ID:7kJBhy8y0
提督「そんなに変か?それこそ海外じゃ金髪なんて珍しくないだろ」

北上「国によるけどね。でも天然の髪色を金髪というなら提督のそれはパツキンだよ。塗ってるどころか塗られてるレベルだよ」

提督「マジかよ…そんなに似合ってない?」

北上「見慣れたから特に変とは思はないけど、絶望的に似合ってない」

提督「マジかぁ…似合っててもおかしくないはずなんだがなぁ…」

妙な言い回しをする。なんでそんなに自分に自信を持てていたのか。
931 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:35:23.00 ID:7kJBhy8y0
ハラリとページをめくる。

北上「本のページをめくるのはパンツをめくるのと似ているのかもしれない」

提督「何言ってんの。いやほんとマジで何言ってんの」

北上「普段は目に見えない所を自分の手で顕にしていくというのがたまらないと言いますか」

提督「それ一緒にするのは他の読書家に失礼なんじゃないのか」

北上「中身はこうじゃないかと予想しながらそれが当たっても外れても楽しめる感じがさ」

提督「凄い、俺女子にパンツめくりについて熱く語られてる」

北上「提督はどう思う?」

提督「んー、パンツは見慣れてるしなあ」

北上「…もしかして提督って既に枯れてたりする?」

提督「そんな!ことは、ない…はず」
932 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:35:55.38 ID:7kJBhy8y0
北上「よし、こいつはまた今度読もう」

提督「当たりだったか」

北上「うん」

さて次の本はと。

提督「…」サラッ
北上「うわっ、なにさ提督〜」

前髪をサラリとかき分けられた。

提督「改めて見るとまつげ長いなって」

北上「そりゃあ私だってオンナノコですから」

提督「どうせ大井だろ」

北上「マアネー」

提督「大井は結構化粧とかファッションこだわる方だからなあ。鎮守府じゃそういうの気にするやつ少ないし」

北上「戦場だしね。でも大井っちが私にこういうの気にするようにって言い出したのは最近だよ」

提督「そうなのか?」

北上「そだよ」
933 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:36:31.86 ID:7kJBhy8y0
北上「最低限これくらいはしてください、ってさ。めんどくさいけど大井っちがやってくれるならいーかなーって」

提督「めんどくさがりだな」

北上「必要な事はやるよ。でもこれは別に必要じゃないでしょ?」

提督「そうか?オンナノコなんだろ?」

北上「猫が磨くのは爪だけだよ」

提督「毛繕いもしろってことだろ」

北上「えーやだーめんどくさいー」

提督「やっぱめんどくさがりじゃねえか」

北上「提督やってよ」

提督「俺?無茶言うな。三つ編みだってできねぇぞ」

北上「やってみると案外簡単なもんだよ」

提督「なら自分でやるんだな」

北上「ちぇー」
934 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:37:04.04 ID:7kJBhy8y0
提督「この髪も、海に出たら焼けてしまうんだよな」

北上「バケツかぶりゃ元通りだけどね」

提督「バケツじゃ治らないものもあるよ」

北上「ん?艶とか?」

提督「艶は、どうだろ」

北上「キューティクル」

提督「たまに聞くけどキューティクルって結局なに」

北上「私達で言う艤装みたいなものらしいよ」

提督「武器なのか」

北上「シールドってこと」

提督「そっちか」

北上「どお?私の髪は。キューティクルあるかな」

提督「サラサラだよ。サラサラだとキューティクルあるってことなのか?」

北上「…さあ?」

提督「えぇ…」
935 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:37:38.42 ID:7kJBhy8y0
北上「さっきの話だけど、こうやってさ」

提督「ん?」

北上「膝枕が好きっての。こうやって人に、ひっつくというかー擦り寄る?寄り添う感じが凄く安心するんだ」

提督「ほー。いよいよ猫みたいだな」

北上「アレはマーキングとかの意味もあるんだけどね」

提督「んじゃ今俺はマーキングされてんのか」

北上「…」

広げていた本を少し下にずらし提督の顔を見る。

提督「北上?」

今度は目が合った。
936 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:38:15.47 ID:7kJBhy8y0
北上「マーキングかぁ」

提督「んだよ」



北上「じゃあさてーとくは、私のモノだね」




北上「ぐえ」

一瞬の間の後驚くほど速い仕草で開いていた本を顔に押し付けられた。

提督「バカ言うな。そんなことしたら大井にありったけの魚雷を撃たれちまう」

北上「あはは、そりゃ怖いや」ガバッ

提督「もういいのか?」

北上「上向きで本読むと手が疲れる」

提督「最初に気づけよそれ」
937 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:38:42.64 ID:7kJBhy8y0
さて次の本次の本。

提督「今の本はどうだった?」

北上「これ?あー、えっとねえ」

なんだっけ、どんな内容だった?出だしは?登場人物は?

いやそんなことはいい。次の本だ次の本。

ガタンッ

提督「ん?」

北上「扉。救援かな」

そういえば救援が来たとしてあの扉をどうするか考えてなかったな。
938 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:39:15.42 ID:7kJBhy8y0
吹雪「チェストー!!」バキィッ!
提督「えぇーー!?」
北上「うわぁ…」


吹雪「イチャコラしてるバカップルはここかぁ!」

提督「てめ何してんだよ派手にぶっ壊しやがって!お前だってこの部屋はこのまま残しとこうって言ってたじゃねえか!」

吹雪「まともに機能しなくなったらそんなもの思い出せない思い出と一緒ですよ!朽ちた過去に想い入れなんか持たずに思い出くらい自分の中でしっかり保存しといてください!」

提督「いやでももうちっとなんかこう、あるだろお!」

吹雪「あるのは仕事だけですよ!鍵がぶっ壊れてるあたり状況は察しますがそんなんじゃ仕事は減りません」

提督「んな殺生な!あーまてまて引っ張るないててて北上ー……」


北上「おぉ…」

嵐はあっという間に扉の向こうへ消えていった。
939 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:39:41.04 ID:7kJBhy8y0
北上「せっかく貰った鍵だけど意味なくなっちゃったね」

静かになった事だし読書を再開しよう。

北上「なんだろこれ」

手に取った本に何かが挟まっている。

北上「写真か」

随分古い。

そこには

一面の麦畑と

その中で笑う一人の女性が写っていた。

その金髪の女性を、私は知らない。

知らないけれど、どこかで見た覚えがあった。

あの神社で。
940 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:40:33.63 ID:7kJBhy8y0
麦畑と比較して見るに身長はそこそこ高い。

それこそ大男と並んでいても不思議じゃないくらいには。

私ならきっと麦に胸くらいまで覆われてしまうだろう。

写真は、ここか。

本の見開き。ここに挟まっていた。

そこには写真と同じ大きさの跡と

M.Hという文字があった。

イニシャルか?

なんだか見覚えが…
941 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:41:03.95 ID:7kJBhy8y0
北上「あっ」

本の背表紙を見る。

下の方に、かすれて見えにくくなっているが同じM.Hの文字がある。

やっぱりこれは持ち主の、前の提督のイニシャルだ。

他の本にも書いてある。

M…提督も、今の提督も苗字はMだな。

あーいや、イニシャルだから苗字はHか。

イニシャルだけじゃどうしようもないか。

しかし何故この本に、この…

北上「『The Catcher in the Rye』。またこの本か」

あれ、そういえばあの時。図書室での時。
942 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:41:31.47 ID:7kJBhy8y0
多摩姉が言っていた。

まるで一枚の写真のように、

小麦色に、金色で、

一人の女性が。

じゃあ多摩姉が見たのはこれの事か?

でも何故?ここにあったのなら多摩姉が見る機会はなさそうなものだ。

だとしたらここにない時、まだ前任者がここにいた時に見た?

わからない。

わからないから、調べるしかない。

本を片っ端から見て、何か他にもないかを。
943 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:42:09.80 ID:7kJBhy8y0
北上「まだ何か挟まってるな」

こっちは栞か。

この本が好きだったのだろうか。

妙なマークが描かれているが特に情報になるものはなかった。

そんな事はいい、次の本だ。

早く、のんびりしてはいられない。

ここにある本全部だ。

機械的にページをめくっていく。

さっきまで広がっていた本の世界は、ただの文字の羅列になってしまった。

かまわないさ。私には目的があるんだ。

何かの本の前編を閉じ、私は棚に戻した。






っと、ここらでちょっと休憩にしようか。
944 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/01/25(木) 23:45:31.14 ID:7kJBhy8y0
終わ、らない!

というわけでまだまだ書きたいのです。
随分と長話になってしまいましたがお付き合いいただければ幸いです。
でもとりあえず今日はこれから狩人生k
945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/27(土) 18:20:12.82 ID:goCMYBGlO

このスレの吹雪好き
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 17:46:58.05 ID:+9Ci3t3L0
吹雪も北上もしゅき
はたして提督の矢印はどこを向いているのか
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 09:26:55.29 ID:sRTRDis9O
その心荒ぶる羅針盤のごとき……
948 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:38:46.82 ID:9A3FF+BK0
谷風「いやあびっくりしたよ。丁度寝るとこだったからよかったものを、こんな時間に部屋に押しかけてくるなんてさ。一応私らの仲はあまり知られないようにしてるんじゃないのかい?」

北上「…」

時間は23時を過ぎたところ。

あれから無我夢中に本を漁った結果寝食を忘れてしまい、夕飯になっても現れない私を大井っちが血眼になって見つけ出してーまあ一悶着あった。

本に夢中になっていたと誤魔化し夕飯をさっさと済ませまた本を漁っていたらこんな時間。

でも明日を待つ余裕はなかった。

お馴染みの屋上。

北上「この写真の女性、誰か知ってる?」

谷風「ん〜?血相変えてこの谷風さんを呼び出したと思えば最初の質問がそれかい」

北上「知ってる?」

谷風「知らないね。生憎だけど艦娘以外で女性に会ったことは無いね」
949 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:39:42.76 ID:9A3FF+BK0
北上「これがね、物置小屋の本棚にあった本に挟まってたんだ」

谷風「あぁ、あの部屋か」

私が何を見て聞いてきたか察しがついたようだ。

北上「谷風」

谷風「なんだい」

北上「前任者について、話してほしい」

谷風「それはできないね」

即答だった。

常に囀りのやまないその口から飛び出た言葉とは思えないほど完全な否定。
950 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:40:10.32 ID:9A3FF+BK0
北上「何故」

谷風「あんまし覚えてないからね。なにせ鳥頭だからさ」

北上「…」

そうヘラヘラと笑う。

私が猫なら今頃食ってかかっているだろう。

谷風「そう今にも食いかかるような顔をしないでおくれよ。冗談さジョーダン」

北上「…」

トリはトリでも妖怪サトリの方みたいだ。
951 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:40:37.50 ID:9A3FF+BK0
谷風「覚えてないってのは嘘じゃないんだ。何せ私は自分の事で頭がいっぱいたったからね。自分の同族を見つけるために艦娘のことしか見てなかったんだ。

こう言っちゃなんだか悪い気もするけれど提督とは決して仲は良くなかったんだ。悪くもないだけで。まあそれは今の提督も同じなんだけどね」

北上「覚えてないから話せないって?そんな理由で」

谷風「それは違う」

北上「?」

谷風「私はね、同じ境遇の仲間を見つけるために止まり木としての鎮守府が必要だった。だからこの鎮守府に残った」
952 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:41:08.80 ID:9A3FF+BK0
谷風「吹雪から聞いたろ?彼女は、そうだねえ。ある種の呪いみたいなものだね。前任者から受けた言葉でこの鎮守府に残った」

北上「な、なんであの時の話の内容知ってるのさ」

谷風「壁に耳あり障子に目ありってね。最もあの時は扉に耳があったようだけど」

北上「そこまで…」

谷風「内緒話をするには少々場所が開けすぎだよあそこは」

北上「次回から参考にさせてもらうよ」

谷風「そいつぁこまるね。盗み聞きしにくくなっちまう」

北上「悪びれもしないんだね」

それにしても呪いだなんて。

言い得て妙なのかもしれないけれど。
953 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:41:52.25 ID:9A3FF+BK0
谷風「日向さんは読書という提督以外の拠り所があったからこの鎮守府に残った。もっともそれも提督の影響みたいだけどね」

あぁ、そう言えば以前そう言っていたっけ。

谷風「他にも何人か自分なりの理由があってここに残った。でもそれは決して提督の事を大切に思っていなかったわけじゃないんだ。それとは別問題なのさ。

私だってそうさ。大して関わりもなかったけれど、こんな変わり者をここに置いてくれた事に感謝してる」

言葉一つ一つから前任者への思いが伝わってくるようだ。

いつものように軽い口調だが、その一つ一つはとても重い。
954 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:42:30.09 ID:9A3FF+BK0
谷風「提督がいなくなっても提督がいたからこそここに残った。そして、だから私達は提督に最も近かった吹雪に付いていくつもりだ」

北上「吹雪に?」

前任者の秘書艦でもあったという吹雪。

谷風「もしかしたら私達も気づかないうちに吹雪を提督の代わりの拠り所としちまってるのかもねえ。ま、そんなんだからさ、吹雪が君に話さなかった以上私達もこれ以上君には話せない。そういうことさ」

北上「義理堅いんだね」

私達とはつまりここに残った艦娘の事か。

吹雪や谷風、飛龍さんに日向さんに、他の人も。

谷風「お堅いだけだよ。ついでに口も硬い。残ったのはみんなそんなやつばかりさ」

北上「どうだかね」
955 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:42:58.80 ID:9A3FF+BK0
谷風「ともあれ君の飼い主と前任の提督が何かしら繋がりがあるのは確かだろうね。随分と読書家だったけど海外の物まであったなら外人と繋がりがあってもおかしくない」

北上「無いと困るよ。この糸も繋がってないんじゃ本当に八方塞がりだ」

谷風「そうだねぇ。ならやっぱり提督、今の提督を調べるべきなのかな」

北上「今の?なんで?」

谷風「ここが少々特殊なのは知ってるだろう?ならその後釜になった彼にも何かしらの繋がりがあって然るべきじゃあないかな」

北上「繋がりねえ」

確かに提督は前任者に対して思わせぶりなところがある。

北上「君達が普通に話してくれりゃそれでいいんだけどね」

谷風「そいつは言わないでおくれよ。協力したいのは確かなんだからさ」
956 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:43:32.80 ID:9A3FF+BK0
北上「よし、とりあえずは」

谷風「とりあえずは?」

北上「お風呂に入ろう」

谷風「まだ入ってなかったのかい」

北上「ずっと本読んでた」

谷風「よっしゃ!なら私も付き合おうしゃないか」

北上「え、なんでさ」

谷風「裸の付き合いって言うだろ?」

北上「まあいいけどさ」

谷風「親子水入らずなんて言うけど、裸の付き合いは友人お湯いりようって感じだね」

北上「水を差すとかもそうだけど言葉における水って悪いイメージだよね」
957 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:44:27.24 ID:9A3FF+BK0
廊下を歩く。

私の横にはウミネコがいる。

裸の付き合いねぇ、猫は水は苦手なものだというのに奇妙な話だ。

北上「あ」

谷風「ん、どーしたんだい?」

北上「てーとくに鍵返さなきゃ」

谷風「鍵?鍵ってなんの」

北上「物置小屋の部屋の。まあ扉は吹雪がぶっ飛ばしちゃったから無用の長物なんだけどね」

谷風「ぶっ飛ばしちゃったかー。そこら辺は後で詳しく聞かせてくれるんだろうねえ」

北上「ありゃ、そこは覗き見してなかったんだ」

谷風「あはは、そんな覗き魔じゃあるまいに」

北上「あはは」

いや覗き魔だよお前は。
958 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:45:06.92 ID:9A3FF+BK0
「だからなんで急に見せたんですか!!」
「そりゃお前には関係ないだろ!色々と大変だったんだぞ!」


谷風「うわー」

北上「うわー」

提督室、の前、よりももちっと遠く。

廊下にもそこそこ声が漏れていた。

谷風「あのバカップルはいつも元気なもんだねぇ」

北上「これ周りへの騒音はどうなのよ」

谷風「あまり想像したくないね」

北上「鳥さん鳥さん、あの家はいつもあんなに騒がしいのかい?」

谷風「そうさねえ、週に一、二回はああしてピーチクパーチクやってるよ」
959 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:45:37.06 ID:9A3FF+BK0
「そう簡単に言うけどなあこっちも我慢したんだからな!」
「そんなの私だってそうですよ!」


北上「…いてっ」

谷風「ん?」

北上「あーいや、ちょっと鍵を強く握っちゃって」

谷風「なにやってんのさ…」

北上「ははは…さてお風呂行っちゃいましょーかねー」

谷風「鍵はいいのかい」

北上「今入ったら確実に巻き込まれるもん」

谷風「それもそうだね」
960 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:46:13.35 ID:9A3FF+BK0
谷風「お風呂上がりのドライヤーは任せておきなっ」

北上「何故自信満々に」

谷風「浦風や磯風にやったげてんのさ。君の専属スタイリスト程じゃないだろうけど得意ではあるんだ」

専属スタイリストて…いや大井っちはそれくらいやっているか。

北上「ならお言葉に甘えちゃおっかな」

谷風「おうよ」

北上「谷風ってお風呂好きなの?」

谷風「そりゃもう。暇さえありゃ朝風呂に入ってるよ」

北上「そんなにか」

江戸っ子?おっさんっぽいとも言える。
961 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:46:45.29 ID:9A3FF+BK0
谷風「最近は風呂が気持ちよくなってきたしね」

北上「それもそうだね」

谷風「湯冷めには気をつけなよ」

北上「大井っちにもう言われたよ」

谷風「流石だね」

北上「私は別にお風呂は好きでも嫌いでもないしね」

谷風「ほーん。嫌いでもないのかい、猫なのに」

北上「そっちこそ、鳥なのに」

お互いにニヤリと笑う。

秘密の友達との秘密の会話。

特別感というか背徳感というか、妙にこそばゆくて心地よい。

季節は、秋に差し掛かっていた。
962 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/02/24(土) 03:49:14.40 ID:9A3FF+BK0
瑞 鳳 改 二

キリがいいので次スレへ、でいいのでしょうかね。
何分初めてなもので
963 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/24(土) 14:54:29.03 ID:tP7R3ooT0
乙様です
次スレで問題ないと思います
次スレもお待ちしております
後、もしよろしければ次スレへ誘導も張っておいたほうがいいかと……
964 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/25(日) 02:20:37.79 ID:6vYarKaho
おっつ追いついた
965 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/02(金) 00:26:37.74 ID:SzOswvCR0
舞ってる
966 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2018/03/17(土) 04:14:12.16 ID:4BxzDs7d0
北上「我々は猫である」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521225718/

お待たせです。本当に。

大体ル級×6のせい
967 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 15:01:03.72 ID:tZNGqewq0
あー徹子の部屋かー
支援が渋いと辛いなあそこ
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