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【ガルパン】まほ「今度、見合いをするんだ」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:12:18.43 ID:qCabD4Js0
大学選抜戦後、秋ぐらいの想定、ファイナルは想定外
暇になったまほチョビが遊んでいるところから話が始まる
こういうこともあるんじゃねえかなあと書きたくて書いた、真面目に書いたが人を選ぶかも
いろんな漫画とかからセリフやら頂いている
最近頭が動かないので書き直しをしてない、ガバガバと捏造設定なのは許して
原作にはいないチョビ子の担任が登場、全体の5〜4分の1くらいチョビ子について喋る
それでもよければ読んでくれ
――――――――――
まほ「あぁ〜……、これはいい……」フカフカ
チョビ「だろぉ〜……」フカフカ
チョビ「ここのケーキバイキングは、ケーキもさることながら、この特大雲形ソファが人気なんだ……」フカフカ
まほ「池袋のプラネタリウムのやつに似ている……。あ〜これは……いいなぁ……」フカァ…
チョビ「寝たければ寝てもいいぞ……。店員さんが起こしに来てくれる……」
まほ「それはいい……、だが……それではもったいないな……」
チョビ「だな、今日はケーキ食べに来たんだからな……」
まほ「ああ……、ああ……」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1500088338
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:14:19.84 ID:qCabD4Js0
チョビ「それでお前……、進路はどうするんだ」
まほ「ああ……、私は黒森峰の大学部に推薦が決まっている……」
まほ「私より、お前はどうするんだ……」
チョビ「うん……まだ決めかねていてな……」
まほ「聞いているぞ……、すでに5つの大学がお前をスカウトしに来ているのだろう……」ウトウト
チョビ「……それ個人情報だろ、何で知ってるんだ」
まほ「……にしずみりゅう……」
チョビ「……よくわからんが……、まあお前のお母さんて関係者だもんな」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:15:06.46 ID:qCabD4Js0
まほ「それで……どこ行くんだ……」
チョビ「う〜ん……、まあ正直どこでもいいんだがなあ……」
まほ「じゃあくろもりみねだ……」
チョビ「え〜……?」
まほ「くろもりみねにこい……くろもりみね……くろもりみね……」
チョビ「黒森峰はなあ〜……。だってお前も言ってたろ。強豪校に入っちゃうとどうしてもこう……、こういう言い方はなんだが、勝って当然というか、結果が見える試合が多くなっちゃいそうでなあ……」
チョビ「それにお前と同じ大学に入ったら、もしかして、お前を倒す機会が二度と巡って来ないかもしれんし……」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:15:49.60 ID:qCabD4Js0
チョビ「……むしろお前こそ、黒森峰以外に行けばいいじゃないか。いい加減飽きたろ」
まほ「わたしは……おかあさまがいるから……」
チョビ「お母さん?」
まほ「いもうとはいえをでてしまった……。それはそれでもういいんだが……」
まほ「そうするとおかあさまの……きぼうをかなえてあげられるのは……、わたしだけだ……」
チョビ「しかし……」
まほ「いまのわたしがあるのは、おかあさまのおかげだ……。できるだけのことはしてあげたい……」
チョビ「西住……」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:16:49.40 ID:qCabD4Js0
チョビ「お前……、西住流とか戦車とかとは関係なく、自分がやりたいこととかないのか……?」
まほ「ああ……?」
チョビ「やりたいことだよ、将来の夢とか……、もっと小さいことでもいいけど」
まほ「……ああ、……そうだな……、ああ……」
まほ「……ああ……」
まほ「……もうすこし……こうしてたいな……」
チョビ「あぁ〜はいはい、とりあえず延長の注文しよう……」ポチッ
まほ「……ずっと……こうしていたい……」フカフカ
まほ「……それだけだ……」フカア…
チョビ「欲のない奴だなあ……、あるいは意外となまけものなのか……」
まほ「……そう……かな……」
チョビ「…………」
チョビ「…………」
チョビ「……本当に寝た」
チョビ「……よほど気持ちいいんだな……」
チョビ「…………」
チョビ「…………」ヨシヨシ
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:18:20.58 ID:qCabD4Js0
チョビ(大学選抜からこっち、お互い高校戦車道を引退した身だ)
チョビ(受験勉強があるとはいえ、ガクッと暇ができてしまった)
チョビ(結果、以前はせいぜい年に5、6回であった会合が、今ではほとんど週1ペースとなっている)
チョビ(今までは隊長同士の情報交換会ということで経費で落とせた交通費やら交際費やらが、今では全額自腹となっている。回数が激増したのもあって、かなり懐が寒い)
チョビ(財布事情はさておき、私としては、実は素直に嬉しいのだが、西住の方の事情を知ると何とも言えない)
チョビ(こいつは西住の後継者だから、スケジュールが空いたとみるや、ここぞとばかりに研修やら座学やら挨拶周りやら色々詰め込まれていて、 結局忙しさ自体はあまり変わっていないらしいのだ)
チョビ(それは疲れることだろう。話題のケーキバイキングに来ておいて、ケーキよりもフカフカのソファに感激して寝てしまうこともあるだろう)
チョビ(それでもキッチリ付き合ってくれるし、私が気を遣ってこいつを誘わなかったり誘いを断ったりすると、逆にこちらを気遣って、何かあったのか体調が悪いのか悩み事でもあるのかとわりとしつこく聞いてくる)
チョビ(掛け値のない友達だ)
チョビ(…………)
チョビ(……いや、他に友達がいないのかもしれない)
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:19:33.52 ID:qCabD4Js0
チョビ(西住との付き合いはわりと長い)
チョビ(中学2年の時に出会ったから、もう4年か5年になる)
チョビ(先輩が病欠して、繰り上がりで車長として出場した大会で、初めてこいつとやり合った)
チョビ(やり合ったと言っても出会って1秒だか半秒だかリタイアさせられたのだが)
チョビ(位置取りが良かったのだ。もしも私があのままその陣地を保持し続けられたなら、戦局はもう少し変わっていたに違いない。それがわかっていたこそ、西住は単騎でまっすぐ私の車両を排除しに来たのだろう)
チョビ(試合終了後、西住は自分がボロ勝ちした学校の陣地まで、当時既に副隊長でありながら供周りも連れずに、一人でのこのこやって来た)
チョビ(最初に応対した先輩によると、そいつは半秒でやっつけた私のメルアドを聞くためだけに、わざわざ撤収準備の忙しい時間に来たのだと言う)
チョビ(妹の方もどこか抜けているようだが、こいつもこいつで大概だった。わざわざ自分を好ましく思わないであろう集団に、一人で乗り込んできたのだ)
チョビ(当時の先輩たちは西住の行動に呆れながら、しかし面白いからと必死で隠れていた私を引っ張り出して、連絡先を直接交換させた)
チョビ(まるでナンパしに来た男子に冗談半分に突き出される女子みたいで、それはそれは恥ずかしい思いをした)
チョビ(西住は全く気にしていないようで、目的を果たして満足げに去っていった)
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:20:48.47 ID:qCabD4Js0
チョビ(お互い、特に私が慣れるまでしばらくあったが、それから以来、たびたび二人で会って、何事か話したり遊んだりする仲になった)
チョビ(初めは同じ戦車道を志す同世代としての付き合いだったから、戦術や装備と人員の運用などに関する勉強会が続いた)
チョビ(その後、私も西住も中学の隊長になったから、毎度、話題は予算のやりくりや後援会との微妙な関係、全国の有望な新人の発掘にまで広がり、大いに盛り上がった)
チョビ(その頃に、西住の妹が話題に上った)
中二チョビ『妹を副隊長に据えたのか、思い切ったな』
中二まほ『うん。来年、中二になる』
中二チョビ『どのくらい頼れるんだ』
中二まほ『申し分ない。実戦では、ほとんどいつでも私の代わりを任せられる指揮・作戦能力がある。準備すれば、日常でも統率力を発揮できるはずだ。なにより、中・近距離での格闘戦ではほとんど無敵だ。多分大学生や社会人チームにも負けない』
中二チョビ『それはなんとも……まるで化け物だな』
中二まほ『うん。あの実力があれば誰も口答えはするまい。あれがいる限り、うちに勝つ学校は無いだろう』
中二チョビ『まあ……、そうでなくては面白くない』
チョビ(その時の想像とは違ったが、案の定、私の高校最後の夏を終わらせたのはその妹だった)
チョビ(そこからお互いの家族の話になり、過去のこと、学校での他愛もない話をするようになって)
チョビ(やがては特別用事もないのに、やれ有名な喫茶店に行こうとか、やれ話題の映画を見ようとか、戦車道のせの字も出ない会合が増えていった)
チョビ(私は毎度口では何事か文句を垂れていたが、内心西住と会うのが楽しくて、嬉しかった)
チョビ(こいつも本当はそう感じているのではないかなと思う)
チョビ(そうだといいなと思う)
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:21:31.01 ID:qCabD4Js0
チョビ(いろいろ思い出していたらだいぶ時間が経った。日も傾き、店内の客もまばらになってきた)
チョビ(西住はまだよく寝ている)
チョビ(…………)
チョビ(……もし私の本性を知ればこうも気を許すことはあるまい)
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:22:10.16 ID:qCabD4Js0
チョビ(はあ)
チョビ(きれいな顔だ)
チョビ(漫画や小説なら、ここでキスしたりいろいろするに違いない)
チョビ(でも実際はその瞬間になにもかも失うので)
チョビ(しない)
チョビ(大丈夫、私は慣れている)
チョビ(なめてもらっては困る、だてにこの業界で生きていない。我慢と片想いは一生ついて回るのだ)
チョビ(大丈夫、私は我慢できる)
チョビ(大丈夫。大丈夫)
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:22:44.84 ID:qCabD4Js0
チョビ(ごく少数にしか知らせていないが、私はいわゆる本物の同性愛者だ)
チョビ(初恋もファーストキスも初体験も全て女性が相手だった)
チョビ(そして、実はもう3年もこの西住という女に惚れている)
チョビ(これを西住に知られるわけにはいかない)
チョビ(まず同性愛者であると知られてはならない。一頃に比べ世の中は変わり、今では法律で同性婚さえ許されている。だが、人の目や感情はまだ大きな変化を遂げるには至らない)
チョビ(西住は、週一で共に出掛ける友達が性的少数派だからと言って、蔑むことはしないだろうという、確信がある。だが、根拠は無い。それに、表面上そうしなかったからと言って、彼女が腹の底で何を考えているのかまでは分からない)
チョビ(そして、私がこいつを好いていることもばらせない。これは男女の仲でも同じことだ、当たって砕け散った後のことを考えれば当然のことだ)
チョビ(それなら距離をおけばいいのだが、しかし、こうして頻繁に顔を合わせられる状況は、私にとって幸福なのだ)
チョビ(我ながらなんとも、度し難いと思う。しかしまあ、年相応の悩みを持てて、それなりによい日々だろうとも思っている)
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:23:50.24 ID:qCabD4Js0
まほ「…………」
まほ「…………」
まほ「…………?」
まほ「……ああ……、おはよう」
チョビ「おはよう、自力で起きたな。でももうじき時間だぞ、最後に何か食べるか?」
まほ「…………」
まほ「……最後か……」
まほ「…………」
まほ「……いや……、寝起きにケーキは……いい……」
チョビ「そうか。まあ、それも贅沢のうちだ。うとうとしてろよ」
まほ「うん……、…………」
まほ「…………」
まほ「……安斎」
チョビ「何だ?」
まほ「……黒森峰、本気で考えてみてくれ……」
チョビ「ああ? ああ、う〜ん……、黒森峰からはスカウト来てないしなあ……」
まほ「……そうなのか?」
チョビ「そうだよ」
チョビ「うちの実家はそんなに金があるわけじゃないからさ。特待生にしてくれるところが別にあれば、そこに行かないわけにはいかないよ」
チョビ「お前にそんなに言ってもらえるのは嬉しいけどな」
まほ「そうか……、今、どんな待遇が来てるんだ」
チョビ「そうだなあ、今のところサンダース大がすごいな。全特と入学費免除と寮費免除と戦車道の経費免除と就職斡旋で一番待遇がいい。佐世保に引っ越さにゃならんのが面倒だし金がかかるが、まあ他がタダならそれくらいは何とかなるよ」
まほ「……そうか……」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:25:06.48 ID:qCabD4Js0
チョビ「お゛お゛〜……」
チョビ「まだ早いはずなんだが、日が短くなってきたなあ。夕日が金色だぞ……」
まほ「ああ……」
まほ「……雲や空がきれいだと思うようになったのは、本当に最近だな……」
チョビ「そうなのか。なら、わかるようになって良かったな。私は練習や試合の合間に空を見ては、ああきれいだなあと思っていたよ。後輩連中と空を眺めることも、二度や三度ではなかった」
まほ「そうか。それは惜しいことをした。私も私の後輩たちと、そういう時間を持てればよかった」
チョビ「これからいくらでも眺めればいいじゃないか。私で良ければ、いつでも付き合うぞ」
まほ「本当か?」
チョビ「ああ、佐世保から駆けつけてやろう」
まほ「佐世保か……」
まほ「佐世保は遠いな……」
まほ「……佐世保には行くな、お前はここにいろ」
チョビ「まだ言ってるな」ハハハ
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:26:44.25 ID:qCabD4Js0
チョビ「寒くないか?」
まほ「ああ。安斎はどうだ」
チョビ「大丈夫だよ」
まほ「もう少しこうしていたいな……」
チョビ「そうだなあ……、このまま時間が止まればいいのになあ」
まほ「……安斎もそう思うか」
チョビ「うん」
チョビ「そうすればずっと高校生でいられる。受験も必要ないし、アンツィオで戦車道を続けられる」
まほ「それは、留年すればいいんじゃないのか」
チョビ「そんな金あるわけないだろ……」
まほ「たしか安斎は特待生だったな。全特か?」
チョビ「ああ、そうだが……、そういうの、私以外に聞くなよ」
まほ「ダメなのか?」
チョビ「そうだなあ、バイト代やお小遣いの額を聞くのに似ているな。家庭の事情に絡むから、良くない」
まほ「そういうものか。覚えておこう。悪かった」
チョビ「うん」
まほ「……でも、それなら学費は一円も払ってないのだろう。1年分くらい払ってもいいじゃないか」
チョビ「無茶を言うなよ、全特でなければあんな私立の学園艦に私が入るわけないだろ、生活費だけでも大変なんだぞ」オイオイ
まほ「そうか。もし安斎が私の娘か何かで、私が西住の財産を好きに使っていい立場なら、いくらでも留年させてやるのにな」
チョビ「ハハハ、できてもせんわバカ!」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:27:17.72 ID:qCabD4Js0
まほ「……私が言ったのは、今このとき、この瞬間、時間が止まればいいということだよ」
チョビ「ああ……でもそしたらお前、家に帰れないぞ」
まほ「こうしていられるなら別にいい……」
チョビ「…………、お前、家で何かあったのか?」
まほ「何かって……、…………、まあ、最近は忙しいからな……」
まほ「疲れたのかもしれないな……」
チョビ「そうか。西住の虎も疲れるか」
まほ「そうだ……。腹も減るし、眠くもなる……」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:28:20.07 ID:qCabD4Js0
まほ「……ああ、こんな風景を、このまま、お前とずっと眺めていたいな……」
チョビ「ああー……、それはいいな……」
まほ「……だろ……」
チョビ「…………」
まほ「…………」
チョビ「…………」
まほ「…………」
チョビ「……でも、ま、二人だけなんて、そんなの寂しいだろ」
まほ「…………」
まほ「……そうだな」
チョビ「…………」
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:28:51.73 ID:qCabD4Js0
まほ「…………」
まほ「…………」
まほ「…………」
まほ「実はな、安斎」
チョビ「うん」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:29:23.39 ID:qCabD4Js0
まほ「……今度、見合いをするんだ」
チョビ「…………」
チョビ「…………」
チョビ「は?」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:30:07.30 ID:qCabD4Js0
まほ「……男の人と付き合うのは初めてだから、少し緊張している……」
チョビ「いや、いやいやいや」
まほ「どうした」
チョビ「……まずお前、お見合いと言ったか……」
まほ「そうだ」
チョビ「いつ……?」
まほ「次の日曜日だ」
チョビ「そ、それで、男と付き合うだって……?」
まほ「ああ。まだ写真でしか見たことは無いが、普通に会話できるようならとりあえず付き合ってみるつもりだ。もちろん相手が応じればだが……」
チョビ「おい!!」
まほ「なんだ、突然」
チョビ「おかしいのはお前だろ!」
まほ「そんなにおかしいか? 戦車道一本だったから、恋愛には疎くてな……」
チョビ「違う! どうしていきなり付き合うつもりなんだ!? そんなに顔がいいのか」
まほ「いや、どうかな……、下駄のような顔……、かな」
チョビ「下駄ってなんだ!」
まほ「どうしたんだ安斎、少し落ち着いてくれ」
チョビ「ちょっと無理だなあ!?」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:30:48.96 ID:qCabD4Js0
チョビ「……普通は、好きになった人と付き合うんじゃないのか?」
まほ「ああ……、まあ、そうなんじゃないか?」
チョビ「普通は、お見合いのように出会いを強制されるのは嫌なんじゃないか?」
まほ「いや、それは人それぞれというか……、安斎も少し偏見が入っていないか?」
まほ「お見合いは強制というものではない。嫌なら断っていいんだし」
チョビ「ま、まあ確かにそうかもしれないが……」
チョビ「い、いや、お前んとこのお見合いはどうせ強制みたいなもんだろ!」
まほ「それについては何とも言えないな」
チョビ「どうして好きでもない相手と付き合うことについて前向きなんだ?」
まほ「それはお前、家柄がなあ」
チョビ「イエガラ! お前は良家のお嬢様か!」アイエエエエ
まほ「実はそうなんだ……」
チョビ「そうだったなあ!」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:31:56.48 ID:qCabD4Js0
チョビ「だってお前……、お前は既に戦車道で名を成しているし、正直、見目も美しいじゃないか」
チョビ「性格も真面目で優しい」
チョビ「お前、より取り見取りなんだぞ。道行く人誰だって、お前みたいなお嬢さんと付き合いたがってるんだ」
チョビ「それをお前、どこの馬の骨ともわからん下駄男とだな」
まほ「安斎、まるで父親のようだな」フフッ
チョビ「……いや、笑っているがな、本当に、どうしてだ。本当はお前にだって、おかしいのはわかってるだろう」
まほ「お前の言うことは分からなくもないが……、おかしい……、というほどでもないよ」
チョビ「いや、おかしいだろ」
まほ「……本当は今まで無理を言って、見合いは断り続けてきたんだ。戦車道に集中したかったからからな……」
まほ「でも今は引退して余裕がある。もうわがままも言っていられない」
チョビ「だってお前、戦車道の練習やら試合やらが終わっても、家のあれこれがあるから結局忙しいんじゃないのか」
まほ「結婚は公式の行事だからな。結婚周りの話は、大抵の用事に優先してしまうんだ。むしろこの話が続く限りは、ずるずると後回しになっているものもある」
まほ「また大学で戦車道を始める前に、とりあえず今のうちに会ってみて、可能なら婚約まで進めたいんだよ」
チョビ「……つまり家のために、誰でもいいから結婚するっていうのか」
まほ「誰でもとはいかない。それなりの相手だ」
チョビ「おんなじことだ!!」
チョビ「だってお前が選んだ相手じゃないんだろう? お前が好きになった相手じゃないんだろう!?」
まほ「何人かに絞られた中から私が選ぶんだ。これなら私が選んでいることになるだろう?」
チョビ「…………」
まほ「安斎」
チョビ「…………」
まほ「安斎……、どうして泣くんだ」
チョビ「うぅ〜〜〜……。笑うなよ……、だって……おかしいだろ……」グスッ
まほ「安斎。私は結婚した後に、その人のことをちゃんと好きになる自信がある」
まほ「だから私はちゃんと自分で幸せになれる。安斎は私のことより自分のことを心配していろよ」
まほ「私は安斎には、いい大学やいい職場で、いつか素敵な恋愛をして、幸せになって欲しいと思っているよ」
チョビ「うぅ〜〜〜〜……、ふぐううぅ〜〜〜〜〜……」
まほ「ありがとう、安斎……」
まほ「……安斎はかわいいな……」イイコイイコ
チョビ「やめろよぉ……」
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:32:39.96 ID:qCabD4Js0
まほ「……落ち着いたか?」
チョビ「うん……。あ゛〜……。顔がめちゃくちゃなんじゃないか……」
まほ「どこか入ろう」
チョビ「うん……。いや……、今日はもういい……疲れた……」
まほ「そうか……、何だかすまないな」
チョビ「……いや、別にお前が悪いわけじゃない……」
チョビ「ちょっとカルチャーショックを受けただけだ……」
チョビ「私も好き放題言い過ぎたかもしれない……」
まほ「どうかな」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:33:08.52 ID:qCabD4Js0
チョビ「……でも西住。これだけは言わせてもらいたいんだがな」
まほ「うん」
チョビ「……おまえと結婚したいやつなんて、世の中にごまんといるんだ……。本当だぞ……」
チョビ「だから家のために妥協なんかしないで、好きに選べよ……。一生のパートナーだろ……」
まほ「…………。ありがとう……。安斎は優しいな……」
まほ「…………」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:33:35.71 ID:qCabD4Js0
まほ「でもそれはできない。できないんだよ、安斎」
まほ「私は西住の長女だ。結婚して、なるべく多く、健康で優秀な子を成す義務がある」
まほ「そのために、なるべく早く、健康でそれなりの相手と結婚しなくてはならない」
まほ「……そういう風に準備してきたんだよ。ずっと、ずっと前から」
まほ「私の身体はそのためにあるんだ」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:34:33.54 ID:qCabD4Js0
チョビ(その後なにごとかしばらく自分でも信じられない勢いで叫んだ後、速足で寮に戻ろうとしたのだが、)
チョビ(結局寮に辿り着く前に激しい吐き気に見舞われて、近所のコンビニのトイレで一時間ちょい嘔吐した)
チョビ(よく行くコンビニだったのでとても恥ずかしかったが、それどころではなく本気でゲェゲェ喉が鳴った)
チョビ(不思議な色の吐しゃ物が便器に飛び出たのにゾッとしたけど、今思うとあれは消化される前のケーキとかパフェだったのだろう)
チョビ(暑さと寒さが交互にやってきて、嘔吐と一緒に体力をガンガン削って私を動けなくした)
チョビ(店員らに心配されて様子を見に来られたのがとても恥ずかしかった、行きつけなのにもう行けない……)
チョビ(翌日体重計に乗ると見事に痩せていた)
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:35:07.15 ID:qCabD4Js0
チョビ「というわけでな」
電話「ははあ、それは何とも……、大変でしたね」
チョビ「それからというもの数日間、脱力した日々が続いて、今日ようやく起きれたんだが、そういえば余計なことやら失礼なことやらたくさん言ってしまったような気がして、いま自己嫌悪がすごいところだ……」
電話「アハハ……」
チョビ「いやまあ、家庭の事情というのはそれぞれで、私が自分の物差しで物事を考えすぎていたということなんだが……」
チョビ「いやしかしだな、『私の身体はそのためにあるんだ』とか言いながら下っ腹をさするのは、あれはどうかと思うぞ。かなり応えたぞ」
電話「それはまあ、確かに強烈ですね」
チョビ「だろう!? いや安心したぞ、やっぱりショックだよな? 普通じゃないよな?」
電話「まあ、ショックというか、確かにあの人にしては何と言うか表現が露骨かなあと」
チョビ「いやまあ、あいつはもともと直裁なやつだと思うけど」
電話「確かにそうなんですが、でもデリカシーはありますから」
チョビ「やはり普段とは違うのか?」
電話「どうでしょうか……今はそばにいないから確信は持てませんけど、あの人のことですから、無意識というより、何か理由があってわざとやっているような気がします」
チョビ「それは、やはり、私があんまりしつこく言ったから、黙らせるつもりでやったんだろうか」
電話「それはどうでしょうか……」
チョビ「もしそうなら大成功だ、胃の中のもの全部出たからな……」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:36:01.02 ID:qCabD4Js0
電話「ていうか、アンチョビさんそこまでダメージ受けたんですね」
チョビ「うん……」
電話「よっぽど好きなんですねえ……」
チョビ「うん……」
チョビ「…………」
チョビ「……いや、ちが、違わないが、うん……」テレテレ
電話「それにしても困りましたね。こうなるともしかしなくても手詰まりですよ」
チョビ「……そうじゃないか!? おい、話と違うじゃないか、お前大丈夫ですイケますよって言ってたじゃないか!」
電話「あっれぇ〜? おっかしいなぁ〜」
チョビ「おっかしいなぁ〜じゃないぞ! ていうか家の情報くらい回って来ないのか!?」
電話「いやそれが、もう跡継ぎにならないのはほぼほぼ確定しているので実際的な話はそんなに頻繁には……」
チョビ「そういえばお前、家を出たって聞いたけど、それはつまり寮に入ってるとかそういう話じゃなくて、もしかして」
電話「いやあ〜実は卒業後に婚約して、大学卒業してから籍入れることになりまして」エヘヘ
チョビ「はあ〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
チョビ「い〜〜〜〜〜〜〜なぁ〜〜〜〜……」
チョビ「…………」
チョビ「……いや、うん。おめでとう、よかったな」
電話「はい、ありがとうございます」
チョビ「あ〜、それで家の方にも了解とったのか」
電話「ええ、大学選抜戦の時に一度実家に付き合ってもらいまして、その後そういう段取りになりまして」
チョビ「ははあ〜、よくもまあ、」
チョビ「あー、うん、」
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:36:50.50 ID:qCabD4Js0
チョビ「しかしせいぜい半年の恋愛でよく婚約まで話が進んだなあ」
電話「いや〜まあそれもあって、籍を入れるのは大学卒業後なんですけども」
チョビ「でもおおかた大学では同棲するんだろ?」
電話「ええ、実は」
チョビ「お前はなぁ〜……」
チョビ「…………」
チョビ「…………」
チョビ「……うん、とにかく、おめでとう」
電話「ありがとうございます」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:38:13.97 ID:qCabD4Js0
電話「アンチョビさん」
チョビ「うん?」
電話「既に気づいてると思いますが、私と彼女のことは、母にいいように使われてしまったかもしれません」
チョビ「……というと?」
電話「私が子供を自然には望めない家族を作ろうとしていて、それを母が早々と認めてしまったせいで、姉はそうではない家族を作ることを求められてしまった」
電話「西住家に寄せられていた縁談がすべて姉に向かうことになり、姉は高校戦車道を引退したこの隙に誰かを選ぶことを暗黙の裡に強いられることになってしまった」
電話「……ということです。……多分」
チョビ「……うん」
電話「すみません、アンチョビさん。私のせいです」
チョビ「いや、そんな……」
電話「いいえ、アンチョビさんは怒っていると思いますし、怒っていいと思います」
チョビ「…………」
電話「でもそのうえで、私はアンチョビさんに幸せになってもらいたいと思います。それは姉ではない誰かを新たに見つけて欲しいということではありません」
電話「そして誰より、私は姉に幸せになってほしいと思います。それができるのは多分アンチョビさんをおいてほかにいないと思います」
チョビ「お前はいつもそう言ってくれるが、いったい何の根拠があるんだ」
電話「……私はアンチョビさんを応援したくていつもお電話させてもらってますが、私の口からは、知っていることの全部は言えません……」
チョビ「…………」
チョビ「…………」
チョビ「そうは言うがな。西住は見合いを望んでいるし、仮に私にチャンスがあったとしても、そもそも、西住が同性愛者の私を受け入れてくれる可能性は高いはずが無いんだ」
チョビ「いつも世話になってる友達のお前のことを恨んだり怒ったりすることは決して無いが、……でも現状、望みはほとんどないよ」
電話「……私に言えた義理ではありませんが、姉が西住をもう少し蔑ろにしてくれればと思います。……家と人生とを天秤にかけることなんてしなくてもいいのに……」
チョビ「…………、でもそれが西住なんだ……」
電話「…………」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:38:42.59 ID:qCabD4Js0
チョビ(そう、西住は西住流の女で、西住流のために生きているんだ……)
チョビ(あの女にはあの女の正義があって、それを横からおかしいと言っても仕方がない……)
チョビ(法に触れるわけでも、人に迷惑をかけるわけでもない……)
チョビ(自覚のある人間が、自分で納得して行う行動に文句をつけるもんじゃない……)
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:39:08.19 ID:qCabD4Js0
チョビ(…………)
チョビ(…………)
チョビ(……大丈夫……大丈夫だ……)
チョビ(私は大丈夫……ちゃんと納得できる……ちゃんと……)
チョビ(大丈夫……)
チョビ(……大丈夫……)
チョビ(…………)
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/15(土) 12:40:00.18 ID:qCabD4Js0
チョビ(…………)
チョビ(……ああ……二度寝してしまったのか……)
チョビ(まあ……受験期だから、ちょっとやそっと休んだくらいで何も変わらない……)
チョビ(…………)
チョビ(携帯が鳴ってるぞ……出たくないなあ)
チョビ(…………)
チョビ(…………)
チョビ(…………)
チョビ(知らない番号だ……)
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