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高垣楓の晴飲雨飲 その2
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:19:50.73 ID:ZBpXUiuz0
コメがうれしくて書いちゃった
前回にならって五編書いたら依頼だす
前作
高垣楓の晴飲雨飲
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1499266010/
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1499775590
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:20:31.54 ID:ZBpXUiuz0
【サングリア】
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:21:09.62 ID:ZBpXUiuz0
高垣楓は、手慣れた様子でオレンジをカットする川島瑞樹の背中を見ていた。
本当は手伝いたかったのだが、
「私に出来ることがあれば何でも言ってください!」という申し出に対して、
「頑張ってじっとしていて頂戴」という答えが返ってきた。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:21:55.49 ID:ZBpXUiuz0
時はさかのぼって1週間ほど前。
デルスールの件で本格的に
安ワインを開拓してみようと決意した楓は、
ネット通販で10本ほど赤ワインを購入した。
価格はどれも1000円前後。
当たりはいくつかあった。
『イエローテイル シラーズ』。
『コノスル ピノ・ノワール レゼルバ』。
『イゲルエラ』。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:22:39.44 ID:ZBpXUiuz0
しかし安かろう悪かろうという格言も
あながち間違っている訳ではなく、
ハズレワインも何本かあった。
酒好きとは言えど不味いものを飲み続けるほど
楓は辛抱強くはないので、その有効利用について川島に助言を乞うた。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:24:14.11 ID:ZBpXUiuz0
「『サングリア』にしましょう」
サングリアとは、フルーツを漬け込むことによって風味づけされた
フレーバードワインのことである。
川島流の材料は、ワイン一本(720ml/750ml)に対して
オレンジとリンゴを1個ずつ。
さらにオレンジジュース200ml。
それからガムシロップ2つと、シナモンスティックを1本。
パンチが欲しければ黒胡椒を粒のまま小さじ1弱。
オレンジは一口サイズにカットして、りんごはイチョウ切りにして漬け込む。
難しいことは何もないのだが、
ある時キッチンの惨状を目にした川島は、最大限の安全策を取ることにした。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:25:13.21 ID:ZBpXUiuz0
「2日後くらいにできあがるから…また呼んで頂戴」
リンゴがワイン色に染まった時が飲み頃なのだという。
川島がいなくなった後、楓はさっと漬け込み用の瓶に近づいて、
味を確かめた。
現状ではまだ、水っぽくて酸っぱい何か。
これがどんな味になるんだろう。
楓はわくわくしながら、日が経つのを待った。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:25:40.97 ID:ZBpXUiuz0
キレの良すぎるギャグで番組を凍りつかせた後、
楓は意気揚々と自室に戻った。
収録は夕方に終わり、ちょうど今は晩ごはんの時間。
白かったリンゴは、鮮やかな紫色になっている。
部屋中をきょろきょろ見回し、ついでに廊下に誰もいないことを確認した後、
楓はコップにサングリアを注いだ。
ふわあっとシナモンが香った後、みずみずしいシトラスが鼻をくすぐった。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:26:40.50 ID:ZBpXUiuz0
ちょっぴり楓は不安になった。
フレーバーの強い酒は人を選ぶとよく聞く。
(“川島が1人で”)作ったサングリアの量はざっと3L。
酒が飲めるアイドルは多いが、消費しきれるかどうか…。
ええいままよと、楓は本日一杯目のサングリアを飲み干した。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:27:52.55 ID:ZBpXUiuz0
彼女はしばらく目をしばたかせた後、ジョッキグラスに氷を入れて、
二杯目をなみなみと注いだ。
今度はゆっくりと口に含む。
意外なことに、はじめに出会うのはリンゴ。
シナモンやオレンジに比べて弱々しいと思われた彼女が、
真っ先に舌先に躍り出る。
楓は知らぬことだったが、川島が選んだのは青森産の『紅玉』。
太陽の血を浴びたかのような、名前の通り真紅の品種である。
生食での評価では『ふじ』に一歩譲るが、パイやジャムなどの加工においては
並び立つものがない。
サングリアの中にあっても良い仕事をしている。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:28:33.53 ID:ZBpXUiuz0
間髪入れずに現れるのは、やはりオレンジ。
リンゴを押しのけようと、はちきれんばかりの主張をする。
だが不思議なことに、その自己表現は“甘み”となって口内をくすぐる。
「オレンジがアレンジ…ふふっ♪」
シナモンがやってきたのは、サングリアを飲み込む一歩手前。
香りをかいだ時の印象とは、まったくの逆さまだった。
けれども全体的に調和がとれていて、
そして、後味はさっぱりとしている。
飲みきれなかったワインは、何杯でも楽しめる美酒に化けた。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:29:04.59 ID:ZBpXUiuz0
サングリアに満足した楓は、川島に電話をかけた。
「美味しかったです!!」
『美味し“かった”…?』
「あっ…」
『わかってたわ』
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/11(火) 21:31:40.73 ID:ZBpXUiuz0
サングリア…
作中のレシピは作者の兄が考案したもの
「入れる材料少なくない?」と尋ねたら
「スペインで育ったものしか入れちゃいけない」と返された
ガムシロップとは一体
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/11(火) 21:51:37.38 ID:8/AS5PBWo
あれ、サングリアってセーフになったんだっけか?
……まあなんにしろバレなきゃ良いか。
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