【ミリマス】白石紬「あなたはエッチなのですか?」

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82 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2017/07/20(木) 20:33:39.31 ID:m7NIKWsF0
===『エピローグ』

 本来予定されていた到着時間はとっくの昔に過ぎていた。

 水瀬伊織は玄関先、わざわざ食堂から持ち出して来た椅子に腰かけて、
 今か今かと待ち人が現れるのを待っていた。

 その後ろでは伊織の座る椅子の背もたれに肘をつき、
 北上麗花が退屈から来る欠伸をかみ殺している。

「……遅いっ!」

 愛用のスマホを睨みつけ、伊織は不機嫌さを隠さない。
 そんな彼女とは対照的に、のほほんとした顔の(単に眠たいだけかもしれないが)麗花が言う。

「カンカンだね、伊織ちゃん」

「当然でしょ! あのバカ、どこで道草食ってるのか知らないけど――」

「伊織ちゃん伊織ちゃん」

「なによ?」

「いくらプロデューサーさんだって、その辺の草は食べないと思うけど」

「んなワケないでしょ!? 話の腰を折るんじゃなーいっ!」

 今や苛立ちは最高潮。

 普段よりも遥かに喰い気味のツッコミを披露して、
 伊織が苦々し気に口を曲げる。
83 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2017/07/20(木) 20:34:49.34 ID:m7NIKWsF0

「ご丁寧に携帯の電源まで切っちゃって! そんなに連絡つけられるのが嫌だっての!?」

「充電が切れてるだけじゃないかな? 私もよくそれで怒られるし」

「とにかく! 紬のことが心配だわ……。一応事前注意はしておいたけど、
 アイツ、手の速さだけはいっちょ前――きゃあ!?」

 その時、背後から麗花にのしかかられた伊織が悲鳴を上げた。

 怒り爆発、勢いよく椅子から立ち上がると彼女は麗花に振り返る。

「ちょっと! まだ人が喋ってる途中でしょーが!?」

「あっ、ごめんね」

 言いながら、麗花がそんな伊織の首を無理やり前へ向け直した。「ふみゃ!?」と響く伊織の悲鳴。

 そうして捻った首をさする彼女が見つけたのは、もはや見飽きた間抜け面。

 紬と二人、並んでやって来たプロデューサーが伊織を見下ろして口を開く。

「お前らはホント仲良いな」

「そうなんです♪ 相性バッチリ、抱き心地だって抜群で――」

「これの、ドコが、仲良しかーっ!」

 麗花に羽交い絞めにされた伊織が手足をジタバタ抗議する。
 その様子を見守っていた紬が、遠慮がちに声かけた。

「すみません。約束の時間に遅れてしまい」

「紬、アンタそのことだけど……。大丈夫? このバカに変なことされなかった?」
84 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2017/07/20(木) 20:37:07.10 ID:m7NIKWsF0

 すると麗花に捕まったままで腕を組む伊織に、
 プロデューサーが心外だとばかりに反論する。

「おい伊織、失礼だぞ。まるで俺が歩く変態みたいな言い方は――」

「あれ? 紬ちゃんってば目が赤いよ?」

 しかし、紬の目が充血していることに気がついた麗花が
 男の言葉を遮ると、彼女を指さし問いかけた。

 伊織が男を険しく睨み、すぐさま紬との間に割って入る。

「もしかしてアンタ、プロデューサーに泣かされたんじゃ……!」

「……泣かされたと言えば、否定はできませんが」

「ご、誤解があるぞ! 大きな誤解がっ!」

「でも大丈夫です。少々欲(ピー)されただけですから」

「紬ぃっ!!?」

 朗らかに宣言する紬の隣で、男が伊織から「だと思った! この変態! ド変態!」と罵られる。

 数分後、彼女によるキツイお仕置きによってボロ雑巾のようになった男のことを、
 甲斐甲斐しく介抱する麗花の姿がそこにはあった。

「それじゃ、前の家から荷物は運んで来てるから」

 伊織が汚れを払うように手をはたき、ゴミを見る目で彼を見下ろす。
85 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2017/07/20(木) 20:38:51.02 ID:m7NIKWsF0

 そんな彼女に「この度は、本当に何から何までお世話になって」
 と紬が恭しい態度で頭を下げると、伊織はヒラヒラと片手を振って。

「いいのいいの。あんなボロ家に家賃をぼったくられる前に、こっちに移って来れたんだし」

「今日から紬ちゃんも、ウチの子だよ♪」

 満面の笑みを浮かべる麗花に、息も絶え絶え男が言う。

「麗花……正確には、寮の子だ……」

「伊織ちゃん大変、プロデューサーさんにまだ息が!」

「あっちゃダメかな!?」

「うるっさいわねぇ……。それだけ元気があるんなら、アンタも荷解き手伝いなさい」

 そうしてワイワイと始まる言い合いを、紬は一歩引いた位置から眺めていた。

 地元を出てここに来てからは、常に保っていた周りとの距離。

 だがしかし今は、今なら自分も……。

「あ、あの!」

 勇気を出して声をかけた。伊織たちの視線が自分に集まり、紬が思わず息を飲む。

 それでも彼女は落ち着くために一呼吸すると顎を引き、真っ直ぐに前を向いて言ったのだ。

「いくらプロデューサーとはいえ、女子寮に男の人が入っても?」
86 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2017/07/20(木) 20:39:41.67 ID:m7NIKWsF0

 ……しばしの沈黙。

 三人分の「何を言ってるんだ?」と言う視線を受けて、
 紬の顔が徐々に赤く染まって行く。

 ――もうダメだ、この静寂と視線には耐えられない! 

 そう彼女が叫び出しそうになった時、伊織が歯切れも悪く言ったのだ。

「あ〜……何か勘違いしてるみたいだけど」

「えっ?」

「紬ちゃん。事務所の寮は女子寮じゃないよ?」

「はい?」

「うん、まぁ……男女共用と言うべきか。男が俺だけって言うべきか」

 紬の視線が目の前に並ぶ三人から、背後に建っている建物の方へと移動する。

 まさか、そんな、冗談でしょう? と、
 疑問符と冷や汗を大量に顔に浮かべた彼女に向けて、伊織が気の毒そうに首を振った。

「だからメールも送ったでしょ? コイツはエッチでスケベで変態だから、警戒しなきゃダメよって」
87 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2017/07/20(木) 20:40:56.31 ID:m7NIKWsF0
===
 以上おしまい。
 この話は個人的な白石紬考察録になります。

 コミュや台詞を見ていると、紬は気難しいワケじゃなく、
 単に怖がり(臆病)なんじゃないかと思って書いた話です。
 昔書いた落ちこぼれ杏の話と同じノリですね。

 伊織と麗花の下りは、同じ世界線となる前作より
 
 麗花の一日誕生券
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1494932137

 では、お読みいただきありがとうございました。
88 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2017/07/20(木) 22:07:41.39 ID:iraqbfS10
なるほど、臆病もはいってたか
乙です

>>82
水瀬伊織(15) Vo/Fa
http://i.imgur.com/SrnAP8B.jpg
http://i.imgur.com/ryy0RgG.jpg

北上麗花(20) Da/An
http://i.imgur.com/FVZicNJ.jpg
http://i.imgur.com/s5rv5wf.jpg
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/20(木) 23:40:30.98 ID:DD2FZxMMo
おつむつむ
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 09:27:54.28 ID:0usi6ZZIO
つむつむあの四人で最年長か
志保や千早のが年上っぽい感じだわ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 00:26:40.30 ID:q5HWDvHJo
羨ましいなこの変態め、乙
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/25(火) 07:33:11.52 ID:yGOC3j6GO
おつむ
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