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タプリス「天真先輩を更生させるんですっ!」ガヴリール「いやいや無駄だから」
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102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 16:48:35.99 ID:9+RUOKgI0
やばいです。はやく、この家から逃げないと。
わたしの脳内危険度レーダーが危険度SS+の警報を鳴らし始めました。
タプリス「か、帰ります!きょ、今日のところは失礼して…!」
ガヴ「ふうん、わたしの貸してあげたパツパツのTシャツ着た恥ずかしいカッコで帰れるの?
それにまだ、乾かしてる状態の制服や下着、おいて帰れるのかなあ?」にちゃあ…
タプリス「か、確信犯ですね!自宅に招いて、お風呂を貸してくれた裏にこんな思惑があっただなんて!
こ、こうやって私の退路を断つ気だったんですね、最悪です!…って、ひ、ひい!」
ハンマーをもち、邪悪な笑みを浮かべた天真先輩が私にゆっくりとつめよってきます。
ガヴ「おら…いい加減、観念しろよタプちゃんよお…」
タプリス「て、てて天真先輩…、い、言っておきますけど、そ、そのハンマーは、扱い方がすごくデリケートなんです!
い、イフリートの子どものにゃんぱんちがわかってないと無理です!だ、だからやめてください!」
ガヴ「はあ?何わけわかんないこと言ってんの…?
ほら、とっとと観念しろ!おらああ!!逃げんなくそ!!」
タプリス「ちょ、て、てんま先輩、や、ちょ、やめてください!!!」
ガヴ「おりゃあああ!!」
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 16:50:00.88 ID:9+RUOKgI0
ばちこーん!!
…天真先輩の激しいリベンジ。必死の逃亡もむなしく、それをモロに喰らってしまいました。
頭を叩かれた瞬間、現実からものすごい勢いで遠ざかっていくのを感じました。
それから、記憶があいまいになっていって……あ、あれ…いしき…が…
もう…、…たたきすぎ…ですよ…てん、ま先輩…。
………
………
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 16:52:13.60 ID:9+RUOKgI0
………
【その数十分後】
ヴィーネ「…突然、うちに来いとかいうから来てみたら…何やってんのよ、ガヴ」
ガヴ「あ、…あー…ええっと」
タプリス「ふえ…ふえええええん!ふええええ!!」
【床に寝転がり、大泣きしているタプリス】
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 16:54:30.04 ID:9+RUOKgI0
サターニャ「なによこれ…、それにそこの床に落ちてるハンマー…、ガヴリール…まさかアンタ…」
ラフィ「あらあら〜、タプちゃんも今日のガヴちゃんみたく、”赤タプちゃん”になっちゃった、ってことですかねえ…」
ガヴ「うんまあ、タプリスを初等部くらいの腕っぷしで勝てるくらいの精神年齢にして、
めっちゃイジメようかと思ったのに…、なんか思いっきり叩いたら、年齢戻しすぎたわ…」
ヴィーネ「いやホント、何しようとしてんだお前っ!?」
ガヴ「それで、全然泣き止まなくなってうるさいから、ヴィーネママにあやしてもらおうと思って!」
ヴィーネ「いやだから、それ誰のことなのよっ!!なんかすっごいむかつくんだけどっ!」
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 17:06:22.72 ID:7wabC/Jk0
………
………
タプリス「すう…すう…」
ガヴ「いやあ、ようやく静かになった。やっぱ偉大だねヴィーネママは。ったく、世話がやける後輩だわ」
ヴィーネ「いや、アンタ、その言いかたなんかむかつくからいい加減にしなさいよ…
それに、アンタも、タプちゃんにイタズラしようとしといてその言い方はないでしょうが。まったく…」
ラフィ「うふふ…すやすや眠っています。タプちゃん、かわいいですね」
サターニャ「いや、流石に高校生の外見であそこまで大泣きされると違和感ありありだったけどね…ん?」
【頭から煙がではじめるタプリス】
ガヴ「…?なんだ?」
ヴィーネ「今日の学校でのガヴリールと同じ現象だわ。きっと、ハンマーの効果が切れて、精神が戻りはじめているんだわ」
ガヴ「………ああ」
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 17:12:58.68 ID:7wabC/Jk0
ガヴ「…………」
【煙を出しながら眠っているタプリスのあたまに、優しく右手を当てるガヴ】
サターニャ「……?ガヴリール、何やってんのよ?」
ガヴ「……、ん、ハンマーの影響からもとに戻ろうとしてる今は、ちょうど一番記憶がごっちゃになっちゃってて、
どうせ目が覚めたらほとんど記憶には残らないだろうし。………まあ、どらくさにまぎれて、今ならいいかなって」
ヴィーネ「……??なんのこと?」
ガヴ「…まあ、少しくらい願いをかなえてやらないとな」ぼそ
ガヴ「……」
【そのまま静かに目をつむるガヴリール】
ヴィーネ「ねえ、ラフィ…ガヴ、何やってるの?」
ラフィ「さあ…?天使の術のようですけど…わたしも知らない術みたいで、よくわかりませんね…」
ヴィーネ「…どうしたのかしら…?これ以上、タプちゃんに変なイタズラしてないといいけど……」
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:22:43.29 ID:7wabC/Jk0
…………
…………
…………
ざあーーーーー…
タプリス「…あれ?ここは…」
わたしはある小屋の前に立っていました。
空を見上げると、うす暗い空からは、降り続ける無数の雨粒が降り注いでいます。
ドヨドヨ空模様。気づけば、私は小屋の前に立ち、雨宿りをしているところでした。
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:24:08.08 ID:7wabC/Jk0
タプリス「………」
この静かに降り続く雨、この小屋。この光景には覚えがあります。
そう、天真先輩と初めて会った日の、過去の記憶…その光景、そのものでした。
タプリス「…なんで、わたしこんなとこにいるんでしょう…、あ、そうです、確か、天真先輩に、
思いっきりハンマーでたたかれて…記憶があいまいになって…」
ということは…私が今、この過去の場所にいるのはハンマーで精神年齢が退行した影響なのでしょうか。
……いえ、あのハンマー自体は、叩いた相手の精神を退行させるのであって、時間そのものを戻すわけではありません。
下界にいた私が、今、この天界の思い出の場所にいるのはやっぱり、変ですよね。
…それに、今の私は、ちゃんと下界での記憶を保持していますし…
ハンマーで精神が退行しているわけでもない。
いえ…しかし、ふと自分の恰好をみてみると、昔の天使学校の制服を身にまとっている…?
やっぱり過去に戻ってる…? いえ…しかし…記憶は今のまんま?
過去に戻っているようで、現在にいるような。なんでしょう…時間軸があいまいで…
……つじつまがあいません。
それってつまり…。
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:25:10.41 ID:7wabC/Jk0
タプリス「夢…ですか…」
思い立った結論をポツリとつぶやいたとき、声をかけられました。
「もしかして、傘を忘れたのですか?」
タプリス「…、」
声のした方を振り向くと、そこには、シトシトと降り続く雨のなか、傘を差した一人の女の子が立っていました。
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:27:40.38 ID:7wabC/Jk0
もったいぶらなくても、それが誰なのか、お分かりですよね。
………、今回は夢とはいえ、同じセリフで声をかけられたのはこれで”3度目”の話。
さすがに、ちょっぴり恥ずかしい気持ちもありましたが、初対面の方ではありませんから、人見知りすることはありません。
なので今回は素直に返事をしました。
タプリス「ええ…実は…忘れてしまいました、何度もすみません…天真先輩」
そう答えると、傘を片手にもつ声をかけてくれた少女が優しく微笑み、やっぱり、こう返してくれました。
ガヴ「よかったら、私の傘にはいりませんか?」
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:30:14.13 ID:7wabC/Jk0
ざあーーーー…
しとしと静かな鳴らしながら降り続ける雨の音。
そんな中、相合傘をしながら天真先輩と帰る、なだらかな丘に続く帰り道。
何もかも、記憶する思い出の情景そのままでした。
ただ、私と先輩が織りなす会話は、過去の記憶のそれとは違うものでした。
…………
タプリス「わたしったら……、今日もさっきまで傘にいれてもらっていたというのに……、何度も迷惑をかけてすみません…天真先輩…。
けど今度は、こうして、思い出のこの道をまた一緒に帰ることができて、うれしいです」
ガヴ「迷惑だなんて…、可愛い後輩のためですから。傘をさして一緒に帰ることくらい、何回だってかまいません。
それにわたしこそ、タプリスとこうしてまた、この帰り道をおしゃべりしながら歩くことができてうれしいです」
タプリス「そう言ってもらえてホントにうれしいです…天真先輩…
ですが、今日のことは、ホントにすみませんでした…、魔界の通販で買ったハンマーで先輩をたたくだなんて…」
ガヴ「もういいんですよタプリス。わたしも、あのあと、アナタに同じハンマーで仕返しをしてしまったのですから。おあいこです」
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:32:57.55 ID:7wabC/Jk0
過去も現在もまぜこぜになっちゃって…、時間軸があいまいとなっている空間の中。
私と天真先輩の会話も、かつての思い出の会話をなぞらえたものではなく…時間軸がマッチしてません。
思い出の1シーンの中で天真先輩と今日あった出来事の話をしている。そんな奇妙な会話。
つじつまがあわない。そう、だからこれは夢です。
きっと、この天真先輩も、わたしの記憶が作り上げた、勝手なイメージなのでしょう。
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:33:58.01 ID:7wabC/Jk0
そんなことを考えていると、ふと、天真先輩がこんなことをわたしに言いました。
ガヴ「…本当に謝らなきゃいけないのは私のほうですね、タプリス…下界での今のダメダメなぐーたらな私をみて、
ひどく失望しているようでしたから」
タプリス「え?」
ガヴ「タプリスは…現実で私と会うことができないで…やはり悲しいでしょうか…」
天真先輩が少し寂しそうな表情でそう問いかけます。
タプリス「……先輩」
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:35:18.43 ID:7wabC/Jk0
そんな天真先輩に私は、あまり間をおかず、笑顔でこう返しました。
タプリス「…いいえ、天真先輩、悲しくなんてありませんよ」
ガヴ「え?」
タプリス「…わたし、ようやく今日、気づいちゃいましたから。
天界のころのまじめで優等生だった先輩も…、下界で駄天してぶっきらぼうな今の先輩も…
別人なんかじゃなく…全部、ホントの天真先輩ってことが…」
ガヴ「タプリス…?」
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:41:00.95 ID:7wabC/Jk0
そう。
未熟者のわたしは、駄天した天真先輩のことを、ずっと、言葉使いやふるまいだけをみて、天界での天真先輩と比較し、
どこか別人のような目でみてきました。
けど、それが間違っていることに今日、やっと気づいたのです。
タプリス「……確かに外面がちょっぴり変わってやさぐれて、ぶっきらぼうになっちゃいましたけど…、それ以外は何も変わっていません。
今の天真先輩の中にも、ちゃんと私との大事な思い出の数々を覚えていてくれています…!
そして、わたしが一番、尊敬してやまない天真先輩の優しい心…、そう、人をぽかぽか温かくさせる先輩の優しさは、今も昔も変わらないままです」
タプリス「だから天真先輩…もう悲しくなんてありません…今も昔も、天真先輩は1人だけです!
下界に来た今も、私がずっと慕っている天真先輩は私のそばにいるんだってことがわかりましたから!」
タプリス「だから、天真先輩…!これからもよろしくお願いしますねっ!」
ガヴ「タプリス…、………ありがとう…」
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:43:03.32 ID:7wabC/Jk0
天真先輩は、少し潤んだ瞳を向けて、いつもの優しい笑顔で微笑むと、こう続けました。
ガヴ「わたしこそ、これからもよろしくお願いします。わたしにとっても、……、タプリスは、一番の後輩です」
タプリス「先輩…!そ、そんな…、あ、ありがとうございます、おお、世辞でもうれしいですっ」
ガヴ「いえいえ、ほんとのことですよ」
これは…きっと、お世辞でしょうね…。まあ、夢の中ですからね。けど天真先輩にそういわれると、たとえ夢の中でも顔が赤くなってしまいます。
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:45:04.14 ID:7wabC/Jk0
タプリス「…下界に来てからの話といえば…、先輩、わたしのほうはどうですか?わたし…、天界にいたころより、少しは成長しましたかね」
ガヴ「そうですね…ずいぶん成長したと思いますよ。はじめてこうして一緒に会った時は、
なんだかビクビクしてて、あまりキチンと話してくれなかったというのに、今ではこうしておしゃべりも長く続けてくれますし…」
タプリス「だあ、そ、そんなところですか!?」
ガヴ「あの時、正直、嫌われてるのかと…」
タプリス「い、いえ違います!あ、あの時はその…ちょっと緊張してて…、け、けど、
今日の帰り道では、私より先輩のほうがキチンと話してくれなかったじゃないですか、せっかく先輩と思い出話をしたかったのに…」
ガヴ「ふふ…そういえばそうですね。ごめんなさい、けど、思い出話をするだなんて、今の駄天した姿だと、なんだか照れくさくて…」
タプリス「じゃ、じゃあ、今だったらどうですか先輩、わたし、ずっと先輩に聞きたかったことがありまして、
ほら、あの2人で湖に遊びに行ったときの話なんですけど、あのとき…」
ガヴ「ああ、そういえばありましたね…あのときは楽しかったですね…あのときは…」
………
………
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:50:09.36 ID:7wabC/Jk0
……いつしか、私と天真先輩との語らいは、天界での昔話に話題が移り始めました。
しとしとと降り続ける雨の中。
私と天真先輩は、素敵な思い出話に花を咲かせました。
初めて会った時の思い出の1場面を拝借した、天真先輩との思い出話の語らい。
今度は、どちらか片方が緊張してうまく会話しなかったり、照れくさがって会話に応じてくれないこともありません。
わたしの願望を具現化したような、どこまでも都合のいい夢の中の出来事でした。
けど、なんででしょう。
ともに語り合う天真先輩は、とても夢の存在とも思えないほど心の温かさを感じられ、
私にとっては現実での体験と、そう遜色がない感覚すらあったのです。
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:54:41.26 ID:7wabC/Jk0
…こうして先輩と楽しい語らいをつづけるうち、少しずつ、雨足が弱まり、目の前が明るくなっていくのに気づきました。
それとともに、天真先輩の声が、なんだか聞こえづらくなっていきます。
雨が完全に止めば、きっとそれは夢の終わりの合図。夢から目が覚めるときが近づいているのだと、そんなふうに思いました。
夢の内容って、たいがいよく覚えてなくて、すぐ忘れちゃうものですよね。
だから、わたしは今日一日の出来事を、この夢の中の不思議な体験も含めて、新しい思い出の1ページとして、しっかりと記憶に書き記すことに決めました。
忘れないようにしっかりと。いまのうちにきっちり加筆しておきます。
わたしと天真先輩の新しい思い出の1ページ…。
この日も、雨でした。
おしまい
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:56:53.89 ID:7wabC/Jk0
タプリスを主役したSSでした。タプリスのちょっと、子供っぽいっ感じの語り口調を表現できてたらうれしい
見てくれてる人少なそうだけど感想お待ちしてます。
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 18:57:44.56 ID:g8h4g7tA0
おつ!
素晴らし過ぎる
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 19:49:13.10 ID:eeCbF75xo
めっちゃ雰囲気いいSSだった
読みやすいしすごく好きだわ
乙
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/09(日) 08:11:44.27 ID:/kQBX9h5O
乙乙
きれいでいい話だ
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/09(日) 20:35:06.59 ID:s1SbxmeMo
良かった
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