紬「玻璃色鉢と青文魚」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 22:45:08.09 ID:tLs23THS0
「アイドルマスターミリオンライブ シアターデイズ」内キャラクターの「白石紬」のSSとなります。
地の文が存在します。苦手な方はご遠慮ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1499262307
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 22:46:32.11 ID:tLs23THS0
時々、確かめるようにビー玉を覗いてしまう事がある。
少女が「綺麗だ」と呟く視線のその先は、どこまでも見え透いている。
忘れてしまいたいわけではない、もう一度戻りたいわけでもない。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 22:47:55.45 ID:tLs23THS0
考えてしまうのだ。見え透いた日々を続けていた私は、どうなっていたのか。
あるがままの日常を受け入れた私は、誰と出会い、何をしていたのか。そこに、今この場所で感じているような、充足感はあったのか。
もしかして、明瞭な未来がある分、今よりも幸せだったのではないかと。

それでも、と踏み出した不透明な記憶の始まりは、街中のグレーに木々の緑が溶け込んだ早夏に遡る。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 22:49:17.08 ID:tLs23THS0
 
嫌な湿り気を含んだ風がじっとりと肌を撫でた。息苦しさに身をよじれば、途端に世界が水の底へと沈んだ。
硝子の鉢越しに見渡した部屋の中には、いつもと変わらぬ鉄紺の風景が広がっていた。燻銀の尾を棚引いて、一匹の青文魚が息苦しそうに私の前を横切った。

ゆっくりと詰まった息を吐き出せば、泡は輪を形作って天井へと昇りつめていく。

「起きなければ」思えば思うほど、体は水圧によって押しつけられる。それに逆らうようにして、重い体を水床から起こした。
 
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