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二宮飛鳥「ボクはアスカ、二宮飛鳥。バラガン陛下の忠実なる従属官(フラシオン)だ」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 13:37:16.86 ID:EVcRPonv0
虚(ホロウ)とは、堕ちた人間の魂を指す
虚は亡くした中心(こころ)を埋めるため、その魂の『渇き』を消し去るために人間の魂を喰らう
しかし、その魂の『渇き』が極端に強い虚は、人間ではなく同族である虚の魂を求めるようになる
同族を喰らい魂が溶け合うことにより、莫大な霊力を持つ下級大虚(ギリアン)が生まれる
その中でも特に超越した能力や自我を持つ下級大虚においては、更に他の下級大虚を喰らい中級大虚(アジューカス)へと進化する
中級大虚(アジューカス)は更に幾千幾万の虚を喰らい、最上大虚(ヴァストローデ)への進化を求めるとされている
こうした進化の理を辿ってか辿らずか、彼女は虚圏(ウェコムンド)にて“発生”した
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1499056636
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 17:02:52.97 ID:78itwG0x0
里美「甘さ(チョコラテ)は此処に置いて行け」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 17:46:48.25 ID:Xw99p771O
法子「孔に響くよ」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 17:48:16.70 ID:lp+5ucQVO
佐藤「心 か」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 19:11:53.87 ID:EVcRPonv0
・シリアスなし
・破面勢は優しさ5割増。でも甘くはない
・二宮飛鳥はBLEACH既読者。安全が確保された状況なら基本的にノリがいい。非力
※1〜4はヴァストローデ、5〜8と10がアジューカス、9がギリアン
※各十刃の加入時期はおおよそ2、8、9、10→旧3、5、7→3→6→4→1の順。1は原作よりも少し早く加入
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 20:40:17.37 ID:EVcRPonv0
「随分小せえなこの女。虚、いや人間か?」
「不正解。この女、仮面が割れた痕がある。数字持ちではなさそうだが破面(アランカル)と見ていいだろう」
「妙だな、虚夜宮(ラス・ノーチェス)からこのコロニーまではだいぶ距離がある。こんなトコに俺たち以外の破面がいるはずがねえ」
「ん〜…… だったらこのコが自力で破面化した、って線はないかしら?」
「崩玉の力なしでの破面化、か。先例は少ないが確か第1十刃も己の力で完全な破面化を遂げたと聞いたことがある。有り得ないことはない」
「身体の大きさからして、このコの階級は中級大虚か最上大虚かしら。最上大虚だったらもうけモノなんだけど」
「どっちにしろ死んでるなら意味ねえだろ。別の場所探そうぜ」
「はー、あんたの目は節穴なの? この子まだ息があるわよ。とりあえず虚夜宮に連れて帰りましょ」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 20:41:42.03 ID:EVcRPonv0
「連れて帰るって…… 藍染のトコにか?」
「バカね〜! ホントもうあんたどこまで鳥頭なのよ。ぜんっぜん美しくないわ」
「誰が鳥頭だコラ!」
「陛下とアタシたちの目的を忘れたの? せっかく見つけた戦力をみすみす藍染に引き渡すアホがどこにいるのよ」
「正解(エサクタ)。クールホーンの言う通りだ。この破面はバラガン陛下の従属官として我々の軍勢に引き入れる」
「ちっ…… 死に損ないが戦力になればいいけどな」
「とりあえず虚夜宮に戻ったらこのコの治療ね、このコを陛下に推薦するのはその後にしましょう」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 20:44:12.43 ID:EVcRPonv0
―虚夜宮・第2十刃の宮―
飛鳥「う……」
クールホーン「あら、目が覚めたみたいね」
飛鳥「ここは……?」
クールホーン「虚夜宮よ。外でぶっ倒れて死にかけてたあんたをここまで連れてきたの」
飛鳥「…………」
アビラマ「おいどうした、呆けた顔しやがって」
飛鳥「ああ、済まない。少し状況が飲み込めなくてね。とりあえず、ボクを助けてくれたことにお礼を言わせてもらうよ」
クールホーン(アタシの見立てどおり知能に関しては問題なさそうね。とりあえず下級大虚じゃなさそうで安心したわ)
飛鳥「そうだ、キミたちの名前を訊いてもいいかい?」
クールホーン「構わないわ。アタシの名前はシャルロッテ・クールホーン。後ろの頭悪そうなアホがアビラマよ」
アビラマ「ぶん殴るぞ」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 20:45:19.44 ID:TYip3/yCO
エサクタ狂おしいほど好き
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 20:46:42.38 ID:EVcRPonv0
飛鳥(なんだこれは、一体何がどうなってるんだ。わけがわからない)
飛鳥(いや、正確には全く状況が飲み込めてないわけじゃない。ある程度理解(わか)ってはいる)
飛鳥(ここはどう考えても普段ボクが愛読しているあの漫画の中のセカイと見て間違いない。恐らくは眠っているボクが見ている夢)
飛鳥(彼らが存命ということは時系列としては破面篇辺りだろうか)
飛鳥(全く奇怪なものだよ。夢の中とはいえ、どうやらボクはとんでもないセカイに入りこんでしまったみたいだ)
飛鳥(さながら秩序なきセカイに堕とされた異邦人ってとこかな。くくっ、傑作だ)
飛鳥(世間一般的には夢を夢と認識した時点で眠りから覚めるのが大半だと聞くけど、ボクの見ているこの夢はその世間一般とはズレているらしい)
飛鳥(まあ、“ズレている”というなら、ある意味ボクらしいとも言うべきか……)
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 20:50:01.53 ID:EVcRPonv0
クールホーン「それで、あんたの名前は何ていうのかしら」
飛鳥「ん、ああ、ボクはアスカ。二宮飛鳥。キミたちはボクの事を知らないだろうけど、ボクはキミたちのことを知っている」
アビラマ「?」
飛鳥「フッ、今のはボクの名乗り口上みたいなものさ、気にしないでくれ。なにせ痛いヤツなものでね」
クールホーン「それじゃアスカ。早速で悪いけどあんたには今からバラガン陛下とお会いしてもらうわ」
飛鳥「本当に早速だね。とはいえ、ボクがこの宮に招き入れられたと聞いた時から薄々は感づいていたよ」
飛鳥「キミたちに利がないのに素性が一切知れないヤツを虚夜宮に引き入れるのはリスキーだ」
飛鳥「真意はどうあれ、キミたちは少なくともボクに多少なりの利用価値があると評してくれたということだろう」
飛鳥「あくまでも推測にすぎないが、今からの謁見はボクがバラガンの下に就くに値するかどうかを見定めるオーディション、といったところかな」
アビラマ「チビのくせに生意気な野郎だ。あと陛下を呼び捨てにすんのはご法度だ」
クールホーン「ま、そこまで分かってるなら問題ないわね。くれぐれも陛下のご気分を害されることの無いように」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 20:55:05.82 ID:EVcRPonv0
アビラマ「陛下はこの扉を開けた先の玉座の間に御出でだ。ぜってえ無礼なマネするんじゃねえぞ」
飛鳥「肝に銘じておくよ」
クールホーン「アタシたちの案内はここまで。外からだけどあんたが陛下の御眼鏡にかなうことを祈ってるわ。せいぜい叩き殺されないようにね」
飛鳥「物騒なことを言うのはやめてくれないか」
飛鳥(…………)
飛鳥(平静を装ってはいるけど、正直いまにも膝から崩れ落ちそうなくらい震えている)
飛鳥(まだ扉の外だというのに、まるで心臓を鷲掴みにされているかのような重圧を感じる。これが十刃の放つ“霊圧”というものなんだろう)
飛鳥(夢の中とはいえ、恐怖を感じないわけじゃない。でもその恐怖と同じかそれ以上に、自分が昂揚しているのを感じる)
飛鳥(はたしてボクが押し開くトビラの先にあるのは、新しいセカイか、地獄への片道切符か、あるいは全く別の何かか)
飛鳥(第2十刃の破面としての物語。せっかくだから、せめてこの夢が覚めるまでは異端で心躍るこの新しいセカイを堪能してみるとしようか――)
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 20:56:45.47 ID:EVcRPonv0
BLEACH×Side Flying Bird in Palace of fantasia
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:03:26.37 ID:EVcRPonv0
―第2十刃の宮―
アビラマ「なに!? それじゃお前は虚閃(セロ)も虚弾(バラ)も撃てねえし響転(ソニード)も出来ないわ鋼皮(イエロ)もないわ挙句に帰刃(レスレクシオン)もできねえってのか!?」
飛鳥「ああ、大体キミの言ったとおりだ。ボクには破面が持ちうる能力の殆どが備わっていないということになるね」
アビラマ「そんなバカな話があるか! もう一回虚閃撃ってみろ!」
飛鳥「虚閃っ!」シーン
アビラマ「虚弾は!?」
飛鳥「虚弾っ!」シーン
アビラマ「響転は!?」
飛鳥「響転!」ハンプクヨコトビ
アビラマ「掛け声だけは一丁前だなっ! くそっ!」
※虚閃(セロ):虚や破面が戦闘手段として放つ閃光。個体によっては特殊な虚閃を放つ破面も存在する
※虚弾(バラ):虚閃より威力は劣るが速度が20倍になった霊圧の弾丸
※響転(ソニード):破面の持つ高速移動術。よく相手の背後に回りこむアレ。類似したものに死神の瞬歩、滅却師の飛廉脚、完現術者の完現光がある
※鋼皮(イエロ):鉄のように硬い破面の外皮。硬度には個体差がある
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:05:03.87 ID:EVcRPonv0
アビラマ「だが腐っても破面には違いねえ。さすがに多少の鋼皮くらいは備わってるだろう!」
クールホーン「ちくっ」ツン
飛鳥「いたっ! いきなり脇腹をつつくのはやめてくれないか」サスサス
アビラマ「ぐっ! そもそもお前斬魄刀はどこにあるんだ! 破面化した時に力を分割したはずだろ!」
飛鳥「斬魄刀は元から持っていないよ」
アビラマ「」
ニルゲ「斬魄刀も持ってねえのにどうして陛下の審査を通過できたんだろうな…?」
ジオ「そりゃ普通は陛下の前で帯刀なんてしないしな。さすがの陛下といえどそこにお気づきになられるのは難しかったんだろう」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:07:52.90 ID:EVcRPonv0
アビラマ「どうなってんだ! ホントにコイツは破面なのか!? これじゃあヤミーんトコの犬のほうがマシだぞ!」
フィンドール「だが霊圧は間違いなく破面だ。曲がりなりにも陛下の御眼鏡に適った以上、この小娘には何かがあると見るべきだ」
クールホーン「ま、新入りの育成もアタシたちの役目よ。カリカリせずに気長に行きましょうよ」
ジオ「だけど斬魄刀がないってのは困りものだな。鋼皮がないんじゃオレみたいに近接格闘主体で極めるわけにもいかないだろ?」
クールホーン「斬魄刀はそれっぽいのをザエルアポロにでも作ってもらいましょ。後でアタシのコスメと一緒に頼んでおくわ」
飛鳥「……」
アビラマ「どうしたよ」
飛鳥「いや、何だか申し訳なくてね…。ボクの能力の欠如に関しては決してキミたちを騙すとかそういう意図があったわけじゃないんだ」
クールホーン「そんなコトくらい言わなくても分かってるわよ。その代わりあんたにはこれからガッツリ修行を積んでもらうから覚悟しなさいよ」
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:13:44.23 ID:EVcRPonv0
―虚夜宮・玉座の間―
藍染「久しぶりだねバラガン。招集に応じてくれて嬉しいよ」
バラガン「……」
東仙「バラガン、藍染様がお前を呼び出したのは他でもない。昨夜無許可で虚夜宮に外部から虚を引き入れ、その虚を私兵として自らの従属官に加えた件についてだ」
東仙「藍染様がお前たちに命じたのは『最上大虚を探し出せ』ただそれだけだった筈だ。お前の私兵を肥やすためではない」
バラガン「東仙、何を思い違っておるのか知らぬが、儂はただボスの命令を忠実に実行しただけのこと」
バラガン「階級が高いと思わしき大虚を捕え、儂の目でその資質を見極めた。結果、捕えた虚はボスの目的にそぐわぬ中級大虚に過ぎなかったという訳だ」
東仙「ならば何故その報告を怠った! そもそも藍染様の許可を得ずして従属官を補填することは規律違反だと貴様も知っている筈だ!」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:18:50.44 ID:EVcRPonv0
バラガン「フン、だからこうして態々ボスの呼び出しに応じたのだ」
東仙「なに?」
バラガン「そもそも儂はあの虚を配下に加えてなどおらん」
バラガン「あの虚の処遇を如何なるものにするかボスの指令を仰ぐため元よりここに赴くつもりじゃった。今回はそれが招集と偶然重なっただけ」
バラガン「加えてもう一つ、儂は今ここで十刃による従属官の選任権を行使させてもらう」
バラガン「この権利によって例の虚はこれより儂の配下とする。いくらボスとて自ら律した規約を反故にするとは言わせんぞ」
東仙「バラガン! 貴様そのような勝手な言い分が通るとでも思っているのか! そもそも数字持ちでもない虚を従属官になど……」
藍染「よすんだ要、確かに十刃が従属官を選任できる権利を定めたのは私だ。彼の言うことにも理がある。選定を許可しよう」
バラガン「在り難き御言葉」
藍染「そうだバラガン、一つ訊いていいかな」
藍染「君が見定めたその“破面”は“我々の目的”を達成するための優秀な戦力に成り得そうかい?」
バラガン「……」
藍染「これからも私の忠実な配下として、第2十刃として、君の働きに期待しているよ、バラガン」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:22:38.10 ID:EVcRPonv0
―第2十刃の宮・修行場―
アビラマ「まさかたった数時間の修行でここまで力が伸びるとはな」
飛鳥「どうかな、少しは見直してくれたかい」
アビラマ「大したモンだぜ、陛下の従属官たる俺をここまで追い込むなんてそうそう出来ることじゃねえ」
飛鳥「ちなみに言っておくと、ボクはまだ本気を出していないよ」
アビラマ「なに!? まさかまだ力を残してるってのか!?」
飛鳥「その通りだよ。ボクの全力、もとい刀剣解放を見てくれるかい――」
飛鳥「記(しる)せ。『存在証明』――」
―――――
――――
――
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:24:25.84 ID:EVcRPonv0
―第2十刃の宮・修行場(現実)―
飛鳥「」ピクピク
クールホーン「このバカ! 最初なんだから手加減しろって言ったでしょーが!! なに開始3秒で昏倒させてんのよ!!」
アビラマ「思いっきり手加減しただろうが! この棒っきれで軽くアタマはたいただけだぞ!?」
クールホーン「このコには鋼皮がないから軽い打撃でも致命傷になんのよ! そもそも剣術の基礎も出来てない相手の頭をいきなり狙いに行くってどうなのよ!!」
アビラマ「うるせー! だったら最初からお前がやりゃあよかっただろうがこのくちびるオバケ!!」
クールホーン「あーっ! 言ったわね! 言っちゃいけないこと言ったわね! もう容赦しないわよ!!」
飛鳥「う、ううん……」
ジオ「あ、起きたか」
飛鳥「頭がクラクラする…… んんっ、あれ? 帰刃は? 存在証明は?」
ニルゲ「は? 何言ってんだ…?」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:27:48.56 ID:EVcRPonv0
飛鳥「なるほど、つまりボクはレッスン開始早々に頭をぶん殴られて気絶していたと」
ジオ「そういうことだな、でも誰でも最初はこんなモンだろうよ」
クールホーン「初めての修行だってのに全く手加減できないこの鳥頭が悪いんだから気にしちゃだめよ」ボロッ
アビラマ「その、なんだ、悪かったな。あと鳥頭じゃねえ」ボロッ
飛鳥「これについてはボクの力量不足が招いたことだ。謝らなければいけないのはこっちのほうだよ」
飛鳥「課題が多すぎてまずは何から手を付けるべきか見定めないとね。ボクなりに思うところもある。少し風に当たってくるよ」
フィンドール(気落ちしているな。当然といえば当然か)
クールホーン(伸びしろは全然ありそうだし今後に期待ね)
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:42:05.33 ID:EVcRPonv0
飛鳥(ふう……)
飛鳥(やっぱり何かがおかしい。夢の中で気絶したり、夢の中なのに痛みがあったり)
飛鳥(まさか、これが夢じゃないなんてことは)
飛鳥(いや、そんな筈がない。イレギュラーな状況に陥った時ほど焦らないことが大切だ。まずはボク自身の記憶の糸を辿っていこう)
飛鳥(ボクが眠りに落ちる前、昨日はいつ睡眠をとったんだっけか)
飛鳥(そう、昨日ボクは仕事を終えた――に会いにいくために、女子寮を出て、それから……)
飛鳥(それから……)
飛鳥(あれ…… 思い出せないな……)
飛鳥(ボクは寮を出て…… それからどうしたんだっけ……)
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:44:46.64 ID:EVcRPonv0
クールホーン「どう、アスカちゃん。少しは気分転換になったかしら」
飛鳥「ああ、心配はいらないよ。ほんの少しセカイの真理について思いふけっていただけさ」
クールホーン「相変わらず面白いこと言うコね」
クールホーン「ま、一人で悩んでも何も始まらないわ。くよくよした気持ちは汗と一緒に流しちゃいましょ」
クールホーン「ってことでひとっ風呂浴びに行くわよ」
飛鳥「えっ」
クールホーン「女同士ハダカの付き合いってヤツよ。男連中はいないから安心していいわ」
飛鳥「な、何を言ってるんだ! キミも男だろう!」
クールホーン「どっからどう見ても可憐な女のコよアタシは。さ、行くわよ」ガシッ
飛鳥「ちょっと待った! 離すんだクールホーン! だっ、誰か助けてくれーっ!!」ジタバタ
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:49:25.95 ID:EVcRPonv0
―虚夜宮・浴場―
飛鳥「ううっ…… 結局身ぐるみ剥がされてしまった……」
クールホーン「あら、タオルでカラダ隠してないでしっかり洗わなきゃダメよ。汚れはオトメの天敵なんだから」ゴシゴシ
飛鳥「キミはもう少し隠そうとする努力をしてくれないか! 特に前を!!」
クールホーン「善処するわ」ザバー
飛鳥「でも、まさか虚夜宮にも大衆浴場に似た施設があるなんて思わなかったよ」ザバー
クールホーン「そうね、虚夜宮に尸魂界(ソウル・ソサエティ)や現世の生活様式が取り入れられたのは最近のハナシだから新参のあんたが知らなくても無理ないわ」
ミラ・ローズ「おい、藍染じゃなくて藍染“様”、だろ? クールホーン」
クールホーン「んん? アンタたちもいたのね」
アパッチ「つーか何でテメーが女湯にいんだよ。ついてるモンついてんだから男湯行けよ」
クールホーン「フッ、心は乙女なのよ。ツいてようがツいてなかろうが関係ないわ」クルッ
アパッチ「こっち向くなっつーの!」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:51:50.65 ID:EVcRPonv0
スンスン「あら、貴女は? 見ない顔ですわね」
飛鳥「お初にお目にかかるね。ボクはアスカ。二宮飛鳥。キミたちはボクの事を知らないだろうけど、ボクはキミたちのコトを知っている」
飛鳥「ボクはまだ虚夜宮に来て日が浅くてね。若輩者ではあるけど、よろしく頼むよ」
スンスン「こちらこそよろしくお願いしますわ」
アパッチ「なかなか凝った自己紹介だな」
ミラ・ローズ「新入りなのに私たちのことを知ってるのか」
飛鳥「3獣神(トレス・ベスティア)。高潔と名高い第3十刃ティア・ハリベルの従属官とお見受けしているよ」
アパッチ「高潔だってよ! やっぱ傍から見りゃアタシたちもそう見えるってことだな」
ミラ・ローズ「高潔ってのはてめえじゃなくてハリベル様を指して言ったんだろ。そもそもメスゴリラに高潔なんて言葉は似合わねえ」
アパッチ「あァ!? どういう意味だコラァ!」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 21:53:04.22 ID:W6um6iLSO
飛鳥の入浴シーン盗撮プレイしたい
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 21:58:24.87 ID:EVcRPonv0
スンスン「そこのオカマと行動を共にしているということは、貴女もバラガンの従属官と見てよろしいですの?」
飛鳥「ああ、その認識で構わないよ」
クールホーン「さらっとアタシをオカマ呼ばわりするのはやめてもらえるかしら」
アパッチ「しっかしこんなちっこいのがバラガンの従属官かよ」
ミラ・ローズ「こんな言い方するのもアレだが、あんまり強そうには見えねえな」
クールホーン「あら、そのコを甘く見ちゃダメよ。こう見えても階級は最上大虚。あんたたちくらいなら指一本で殲滅できちゃうのよ」
アパッチ「なっ! ヴァストローデだと!?」
ミラ・ローズ「どういうことだ…? ヴァストローデならすぐにでも十刃に招集されてもおかしくないハズ…」
スンスン「十刃級の実力を持ちながら従属官に甘んじるなんてハナシ聞いたことありませんわ… いったいどのような理由があって…」
飛鳥「クールホーン。デタラメを吹聴するのはよしてくれないか」
クールホーン「こういうのはデカいこと言ったモン勝ちなのよ。牽制よ牽制」
クールホーン「さ、十分温まったし、そろそろ出るわよ」ザバッ
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 22:04:22.93 ID:EVcRPonv0
―虚夜宮・回廊―
飛鳥「しかし、この飾り気のない白装束にはなかなか慣れないね。気に入ってはいるんだけど、デザイン的にもうワンポイントほしいところかな」
クールホーン「あら、衣装の仕立て直しなら東仙要にでも頼んでみたらどうかしら。たぶん喜んで引き受けてくれるわよ」
飛鳥「東仙統括官か。そうだね、機会があったら一度彼を訪ねてみることにするよ」
クールホーン「ん? あいつは…」
ザエルアポロ「おや、そこにいるのはクールホーンと例の新入りかな」
クールホーン「ザエルアポロじゃない。こんなトコで何してんのよ」
ザエルアポロ「君に頼まれていた例の斬魄刀が完成したんだ。新しい被検体の観察を兼ねて君たちの宮まで足を運ぶ予定だったんだが、手間が省けたよ」
クールホーン「意外と早く完成したのね。出来栄えはどうなのかしら。このコにも使いこなせそう?」
ザエルアポロ「御しきることができるか否かは本人次第だ。ただこの斬魄刀は稀に見る怪作でね。所有者の色に染まってその性質が黒にも白にも変化する特異性がある」
ザエルアポロ「安定性という観点から覗えば完璧には程遠いが、ある意味では所有者自身の手で完璧を造りあげることができる稀有な代物といえる」
ザエルアポロ「例えるなら、死神の『浅打』に近いものと言えるだろう」
ザエルアポロ「さあ、受け取ってくれたまえ」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 22:08:03.22 ID:EVcRPonv0
クールホーン「アタシから頼んでおいてアレだけど、こうすんなり渡されると何か裏があるんじゃないかと勘ぐっちゃうわね」
飛鳥「実は監視のための録霊蟲が仕込んである、なんてオチだったりしてね」
ザエルアポロ「……」
ザエルアポロ「何のことやら」
クールホーン「ちょっといま変な間があったわよ! つーか録霊蟲ってなによ! アンタまさかアタシのコスメにもその変なモン混ぜ込んでるんじゃないしょうね!」
ザエルアポロ「耳元で喚かないでくれ。君の馬鹿が移る」
ザエルアポロ「それに幾ら僕といえど君の破壊力の高い顔面を進んで観察するほど悪趣味じゃあない。研究機材にも悪影響だ」
クールホーン「破壊力の高い顔面ってなによ失礼ね! 高いのは破壊力じゃなくて女・子・力!! 見なさいよこの圧倒的ビューティフルフェイスを!!」ズイッ
ザエルアポロ「やめろ! 僕にその顔を近づけるんじゃない! 衣装が汚れる!!」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 22:13:22.33 ID:EVcRPonv0
クールホーン「ったく、ホントにクソ陰湿なヤローねあんたは」
ザエルアポロ「君にだけは言われたくないんだが」
飛鳥「……」スッ
飛鳥(これがボクの斬魄刀か。刀身の色は白、形状はごく一般的な西洋剣ってところかな)
飛鳥(それに思っていたより軽い。これならボクの腕力でも十分扱えそうだ)
ザエルアポロ「気に入って貰えたかい?」
飛鳥「とても気に入ったよ、ボクの身には余るくらいだ。ありがとうザエルアポロ」
ザエルアポロ「感謝の意があるならばどうかな、見返りとして明日にでも君の身体を一度解剖させてもらいたいんだが。君の破面としての出自はなかなか特殊で少しソソられるものがある。ああ、解剖にあたっての苦痛は一瞬だから安心してくれ。麻酔などなくても脳髄を切り分けてしまえば痛みなどすぐに感じなくなる。どうかな、君にその気があるのなら是非僕の研究材料として――」ブツブツ
クールホーン「まーたコイツのクソ長い話が始まったわね。聞くだけ時間の無駄だからさっさと宮に戻るわよアスカちゃん」
飛鳥「あ、ああ……」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 22:18:07.05 ID:EVcRPonv0
―第5十刃の宮―
テスラ「ノイトラ様。例の噂、お聞きになりましたか」
ノイトラ「噂だァ?」
テスラ「はい、女の最上大虚が従属官として新しく登用されたという話です」
ノイトラ「馬鹿か、最上大虚なら従属官すっ飛ばしてとっとと十刃に抜擢される筈だろうが。そうなってねェってことはただの与太話だ。いちいち取沙汰すんじゃねェ」
テスラ「それが、どうもバラガンが藍染様に無理を押し通したらしく…… 最上大虚でありながら従属官としてバラガンの下に就いたと専らの噂になっているのです」
ノイトラ「くだらねェ。そんなことを一々報告しに来たのかよてめえは、下がれ」
テスラ「はっ、申し訳ありませんでした。ノイトラ様」
ノイトラ「……」
ノイトラ(最上大虚があのジジイの下に就いた、か。あながち有り得ねえ話だと切り捨てられるモンでもねェ)
ノイトラ(この話が本当だってんなら、そいつは十刃の座を蹴って自ら従属官の地位に留まったってことになる)
ノイトラ(気に入らねェな、どういうつもりだ? メスの分際でふざけた真似しやがって……)
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 22:22:02.34 ID:EVcRPonv0
―第2十刃の宮―
クールホーン「ぶえっくしょおおおおおおおおおおおおん!!!!!!」クシャミ
アビラマ「きったねえなオイ! 食事中だぞ!!」
クールホーン「あらごめんなさい。何だか寒気がしちゃってね」
飛鳥「へっくし!」クシャミ
アビラマ「んだよ、お前もかよ」
飛鳥「すまない、ボクもなんだか一瞬寒気を感じてね」
フィンドール「全く、陛下がこの場においでだったら二人とも食事の席からつまみ出されているところだ」
ジオ「そういえば陛下が食事の席をお外しになるなんて珍しいな。ポウ、お前は今日一日この宮内にいただろ? 何か知らないのか」
ポウ「ン…… たしか市丸ギンとチェスを指しにいく、と仰っていたようナ……」
ジオ「じゃあそれが長引いてるってことか」
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 22:24:06.99 ID:EVcRPonv0
クールホーン「さーて、食事も終えたし今日はもう休みましょうか。アスカちゃんの個室はあっちよ」
飛鳥「陛下の帰りを待たなくていいのかい?」
クールホーン「陛下のお戻りは結構遅くなりそうだし、その辺りはアタシたちに任せてもらっていいわ。アスカちゃんは明日改めて陛下に挨拶しましょう」
飛鳥「わかった、それじゃお言葉に甘えて先に休ませてもらうよ」
飛鳥「……」
飛鳥「そうだ、クールホーンさん、アビラマさん、それに他の皆さんも、聞いてくれるかい」
アビラマ「オイオイ、いきなり改まってどうしたんだ気味がワリぃな」
クールホーン「アタシたちは陛下の従属官として対等な立場なのよ? 敬称なんかいらないわ」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 22:26:28.38 ID:EVcRPonv0
飛鳥「今日過ごしたこの一日はとても楽しかった。ボクが視た新しいセカイの景色は、いつもボクが見ているソレとは全く異なるものだった」
飛鳥「こうしてキミたちと出会い過ごした時間は、一生ボクのキオクに残り続けるだろう」
飛鳥「このセカイが幻想だとしても、その在るべき一つのセカイのカケラとしてね」
飛鳥「ほんの短い間だったけど、キミたちと出会えてよかった」
飛鳥「今日は本当にありがとう。それじゃ、さようなら。お休みなさい」ペコリ
アビラマ「何だったんださっきのは」
クールホーン「やっぱ面白いわねあのコは。陛下がお選びになっただけのことはあるわ」
ジオ「おい、そろそろ陛下がお戻りになるはずだ。出迎えの仕度を始めたほうがいいんじゃないか」
フィンドール「正解。早急に準備を整えるとしよう」
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 22:29:01.84 ID:EVcRPonv0
―第2十刃の宮・寝室―
飛鳥(長いようで短い一日だった)
飛鳥(ここでボクが眠りについたら、恐らく次に目を覚ますのはここではなく元のセカイ。御伽話(ファンタジー)の定番だね)
飛鳥(従属官のみんなへの挨拶は済ませたけど、もっと色々見てみたいことや知ってみたいことがあっただけに、少し残念な気分だ)
飛鳥(明日からは普段通りの元のセカイに……)
飛鳥(……)
飛鳥(あれ、“元のセカイ”って、何だっけ……)
飛鳥(ボクは二宮飛鳥。ボクは、ボクは…… バラガン陛下の忠実なる従属官だ)
飛鳥(変だな、何か大切なことを忘れているような……)
飛鳥(思い違い、かな――)
――――――
――――
――
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 22:31:18.47 ID:EVcRPonv0
――――!
なんだろうこのノイズは
―死―――! ――ゃ―!!
誰か、ボクを呼んでいるのかい
―嫌――――! ――飛―――!!!
すまない、よく聴こえないんだ
――飛――ちゃん――!!
煩(うるさ)いな、早くこのノイズを消してくれないか
―――飛鳥ちゃん!!!
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/03(月) 22:32:03.59 ID:EVcRPonv0
ここまで
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 22:35:52.40 ID:UZXCNhKQo
……あっれぇ?まさかこれ本当に死……
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 22:36:37.75 ID:H83Ekcx0O
シリアス無し(シリアス無しとは言ってない)
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 22:38:11.65 ID:VAWtIRdd0
クールホーンの安心感よ
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 23:15:52.42 ID:Y5WvDd2D0
シリアス無しじゃなくてシリアスな死じゃないか(絶望)
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 23:40:10.19 ID:t6lx0s/S0
破面化した時の飛鳥はマッパだったのかどうか、
それが重要だ
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/04(火) 08:32:52.30 ID:kSjQcktko
尻飛鳥
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/04(火) 22:00:39.10 ID:rzHdvZZSO
十一番隊によしのんいそう
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 19:06:25.63 ID:fvmPv6d00
※鬼道:死神が用いる霊術の一つ。詠唱や術名を唱えることで発動する。攻撃用の鬼道である破道、防御や伝達用の鬼道である縛道、また回復用の鬼道である回道が存在する
※探査神経(ペスキス):対象の霊圧や霊力を探ってその所在や強さを測る破面固有の能力、探査回路とも呼ばれる。個体によって探査の範囲や精度は異なる
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 20:52:19.15 ID:fvmPv6d00
―第2十刃の宮・寝室―
飛鳥「……!」パチッ
飛鳥(なんだろう… 夢から覚めたはずなのに、妙な感覚だ……)
飛鳥(ここは… そうか、どうやら御伽話(ファンタジー)の終幕はまだ先の話になりそうだね)
飛鳥(夢から覚めた夢、か。フフッ、まるで胡蝶のなんとやらだ。今日もボクはこのセカイで一日を過ごすらしい)
飛鳥(さて、早く身支度を済ませてしまうとしようか)
クールホーン「おはようアスカちゃん」
飛鳥「ひゃっ!?」ビクッ
クールホーン「あら、そんなに驚かなくてもいいじゃないの」
飛鳥「ちょ、ちょっと待った! どうしてキミがボクの寝室にいるんだ! というかいつからそこで立っていたんだ!」
クールホーン「アスカちゃんが目を覚ましてドヤ顔で何か思いふけった後に身支度を始めようとしていた辺り、かしら」
飛鳥「っ〜〜! ほとんど最初からじゃないかっ!」
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 20:54:50.94 ID:fvmPv6d00
―第2十刃の宮―
アビラマ「おお、ようやく起きたか。おせえぞアスカ」
飛鳥「すまない、どうやら遅れてしまったみたいだね」
フィンドール「陛下の従属官としての自覚がまだまだ薄いようだな。クールホーンに見に行かせて正解だった」フラフラ
飛鳥「大丈夫かい? なんだか調子が悪そうだけど」
フィンドール「不正解。何の問題もない」フラフラ
ジオ「こいつ夜中の間ずっと霊圧張り巡らせて陛下のお戻りを待ってたんだよ。結局お戻りにはなられなかったけどな」
アビラマ「そういやニルゲのヤツはまだ帰ってこねえのか。市丸ギンのトコに向かってからもう大分時間が経つぜ」
ニルゲ「悪い、今戻った」
アビラマ「おせえぞ、陛下の動向について何か分かったのか?」
ニルゲ「ああ、詳しいことは教えて貰えなかったが、どうも陛下は藍染の命令で現世へとお向かいになられたらしい」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 20:58:30.74 ID:fvmPv6d00
アビラマ「現世だと?」
クールホーン「おかしいわね。現世での任務なんて大したモノじゃないのが殆どなのに、どうして十刃である陛下が選ばれたのかしら」
アビラマ「確かに妙だな。十刃を使うにしても現世での任務ならグリムジョー辺りを向かわせりゃいいのによ」
フィンドール「陛下の動向を憂慮するのはお前たちの自由だが、解を導きだせない問答に我々が思考を巡らせてもどうにもならないだろう」
フィンドール「我らが王である陛下だ。例えどのような命令であれど任務で遅れを取られるなど到底考えられまい。ましてや今回は現世での任務。我々ごときが陛下を憂慮するなど実に烏滸がましいことだ」
フィンドール「ならば陛下の従属官たる我々が成すべきことは陛下がお戻りになるまでの間この宮を護り抜くこと、違うか」
ジオ「確かにお前の言う通りかもな。新入りの前だからってカッコつけすぎな気もするけど」
フィンドール「む、不正解。俺は別に格好つけてなどいない、ただ陛下の従属官として……」フラッ
アビラマ「フラフラじゃねえか。そんなアーロニーロみてえなツラで陛下の前に出るつもりかよ、少し休んだらどうだ」
フィンドール「そうだな、ならば少し休息をもらうとしよう…」
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:02:11.64 ID:fvmPv6d00
ジオ「だけど陛下が任務でこの場に居られないとなると、特にすることがないな」
アビラマ「だったら俺とチェスでも指さねえか? いつまでも弱ぇままだと陛下を呆れさせちまう」
ジオ「いいな。俺でよければ相手するよ」
ニルゲ「俺はどうするかな… ポウのヤツは寝てるし… 今日は自室で休ませてもらうか…」
クールホーン「アタシはどうしようかしら、別にチェスって気分でもないのよねえ」
クールホーン「あ、そういえばアスカちゃん衣装の仕立て直しをしたいって言ってたわよね。よかったら一緒に東仙要のトコにでも行ってみる?」
飛鳥「いいのかい? 別に無理してボクに付き合ってくれなくても構わないよ」
クールホーン「アスカちゃんに虚夜宮を一人で歩かせるのはまだちょっと不安なのよね。アタシがエスコートしてあげるわ」
飛鳥「フッ、それじゃよろしくお願いしようかな」
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:06:14.17 ID:fvmPv6d00
―虚夜宮・調理室―
東仙「何故だ。現世にまで趣き、必要なものは全て揃えたはずだ!」
東仙「しかし何かが足りない。まだ何か不足しているのか」
東仙「この“正義のレシピ”の完成に必要な何かを見落としているとでもいうのか!」
クールホーン「随分荒れてるわね。おジャマしちゃマズかったかしら」
東仙「む、クールホーンか。それにそっちの娘は…… 先日バラガンが言っていた例の破面か」
飛鳥「ボクはアスカ、二宮飛鳥。どうぞよろしく東仙さん」
東仙「態々ここを訪ねてきたところを見るに、私に何か用があるのだろうが、あいにく今は手が離せそうにない。またの機会にしてもらえないか」
クールホーン「どうせまた料理のメニュー開発で頭悩ませてたんでしょ。考えが凝り固まってる時に同じことで悩んでても埒が明かないんじゃない?」
東仙(確かに、思い詰めるばかりでは正義のレシピの完成へは到底至りそうもない… クールホーンの言うことにも一理あるか…)
東仙「そうだな。レシピの開発はお前たちの用とやらを済ませてからでも遅くはないか」
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:09:48.20 ID:fvmPv6d00
東仙「では用件を聞こう」
クールホーン「今日はアスカちゃんの装束の仕立て直しをしてもらおうと……」
飛鳥「ボクが貴方の下を訪ねたのは他でもないよ、ボクに鬼道を教えてほしいんだ」ワクワク
クールホーン「あら?」
飛鳥「すまないクールホーン、空を舞う鳥というのは気まぐれなものでね、少し心変わりしてしまった。ボクの我儘を許してほしい」
クールホーン「それは全然構わないんだけど、そもそも破面に鬼道って扱えるのかしら」
東仙「鬼道か。破面が鬼道を習得したという先例は未だ報告も確認もされていないが…」
東仙(いや、記憶と経験を辿って死神の始解を扱うことを可としたアーロニーロのような例もある。そもそも破面は仮面を外し死神に類する力を手にした存在。虚の枠を超越した破面に鬼道を扱えないなどという道理はないか…)ブツブツ
東仙「恐らく修練を積めば鬼道を習得することも不可能ではないだろうが、座学すらまともに受けていない者が一朝一夕で扱えるようになるものでもない」
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:12:53.67 ID:fvmPv6d00
飛鳥「それなら心配いらないよ。破道、縛道ともに詠唱に関しては全て記憶済みだからね」
飛鳥「ボクの詩(うた)を聴いてくれるかい――」
飛鳥「『滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧きあがり 否定し 痺れ 瞬き 眠りを妨げる』」
東仙(これは、九十番台の鬼道詠唱…!? 何故破面が……)
飛鳥「『爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ』」
東仙「待て! こんなところで完全詠唱による九十番台の鬼道を放てば……!」
飛鳥「破道の九十『黒棺(くろひつぎ)』!」
東仙「……」
クールホーン「……」
飛鳥「……」
東仙「確かに、熱意だけは伝わった。まずは一番台の鬼道を学ぶところから始めよう」
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:16:50.30 ID:fvmPv6d00
飛鳥「破道の一、『衝(しょう)』!」シーン
東仙「駄目だ、霊圧が乱れている。霊力を一点に圧し固めるよう意識するんだ」
飛鳥「縛道の一、『塞(さい)』!」シーン
東仙(やはり一番台の鬼道といえど詠唱破棄は難易度が高いか。本人は何故か低級鬼道の完全詠唱を嫌っているようだが……)
飛鳥「破道の九十九!『五龍転滅(ごりゅうてんめつ)』!!」シーン
東仙「何をしている! 九十番台の鬼道を、それも破道の九十九番を詠唱破棄など千年早い!」
飛鳥「はぁっ…… はぁっ……」
東仙「やはりこの短時間では教えられることがあまりにも少ないな。よければこれを持っていくといい」
飛鳥「これは…?」
東仙「私がかつて真央霊術院で教鞭を執っていた頃の教本だ。鬼道の扱い方について記されている。少しは君の役に立つだろう」
飛鳥「いいのかい? ありがとう東仙さん」
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:24:48.81 ID:fvmPv6d00
―虚夜宮・回廊―
クールホーン「意外だったわ、まさかアスカちゃんが死神の扱う鬼道なんかに興味を持ってたなんてね」
飛鳥「おかしなヤツだと思うかい?」
クールホーン「フッ、あんたが変わったヤツだなんてことは最初から承知のうえよ。いまさら何をしようが別に驚きはしないわ」
飛鳥「ははっ、ボクを理解してくれてうれしいよ」
クールホーン「ま、アタシとしては鬼道よりも先に虚閃や響転を身に付けてほしいトコだけど」
飛鳥「うっ… そこを突かれるとなかなか言い返し辛いものがあるね」
クールホーン「……!」ピクッ
飛鳥「どうしたんだいクールホーン。急に足を止めて」
クールホーン(何かしらこの禍々しい霊圧。どう考えても凡百の破面が放つ霊圧じゃないわね)
クールホーン(どんどん近づいてくるわ。狙いはまさか、アタシたち?)
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:28:04.10 ID:fvmPv6d00
ノイトラ「よォ」
クールホーン(ノイトラ・ジルガ。今の霊圧は間違いなくコイツね、こんな威嚇するような真似して何のつもりかしら)
クールホーン「アンタに話しかけられるような覚えはないんだけど、アタシに何か用でもあるのかしら」
ノイトラ「てめえに用はねェよ。用があるのはてめえの後ろに付いて回ってるその女破面だ」
クールホーン(マズいことになったわね)
クールホーン(どうもコイツの狙いはアスカちゃん一人。理由を訊いてもまともな返答が返ってくるはずもないでしょうし)
クールホーン(相手は陛下より格下とはいえ第5十刃。アタシ一人だけならともかく、アスカちゃんを抱えながら逃げ切れるような相手じゃないわ)
クールホーン(…………)
クールホーン「アスカちゃん、もしもノイトラが少しでも敵意を見せたらすぐに逃げなさい。死にたくなかったらね」ボソッ
飛鳥「どういうことだい…!?」ヒソヒソ
クールホーン「アスカちゃんも感じるでしょコイツの霊圧。まず間違いなくあんたに何か仕掛けてくるつもりよ」ヒソヒソ
クールホーン(アタシとしたことが迂闊だったわね。探査神経(ペスキス)を張り巡らせておけばコイツと別の回廊を選ぶこともできたってのに)
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:30:51.36 ID:fvmPv6d00
ノイトラ「新しくバラガンの下に就いた女破面ってのはてめえだろ。名前は何てんだ」
飛鳥「ボクはアスカ、二宮飛鳥――」
ギィン!!!!
飛鳥「え?」
ノイトラ「ちっ、なに庇ってんだよ。斬り損ねただろうが」
クールホーン「やっぱり仕掛けてきたわね、アンタ霊圧がダダ漏れだからバレバレなのよ」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:33:22.11 ID:fvmPv6d00
飛鳥(今、何が起こったんだ、なにも見えなかった。ノイトラがボクを斬ろうとして、それをクールホーンが受け止めた……?)
飛鳥(……)ツー
飛鳥(頬から血……! やっぱりボクは斬られて… いやまさか、殺されるところだったのか……?)
飛鳥(うっ…… 痛っ……)ズキッ
飛鳥(おかしいな… 夢の中なのに、こうも鮮明に痛覚が感じ取れるなんて…… 今のは頬で済んだからよかったけど、こんなの、まともに斬られたら本当に死んじゃうんじゃ……)
クールホーン「アスカちゃん!!」
飛鳥「!!」ビクッ
クールホーン「なにボサっと突っ立ってんのよ! 早く逃げなさい!!」
飛鳥「だ、だけどクールホーン、キミを置いて……」
クールホーン「いいから逃げろっつってんのよ!! アタシの心配するヒマがあんなら自分の命の心配しなさい!! 行け!!!」
飛鳥「っ!」ダッ
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:35:22.85 ID:fvmPv6d00
クールホーン(アタシが少しでも時間を稼ぐ。できるだけ遠くに逃げなさいよ、アスカちゃん)
ノイトラ「雑魚に用はねェ。さっさと失せろ」
クールホーン「アタシがここを退いたらアンタはあのコを追うつもりでしょ。何が目的なのか知らないけど、アンタの好きにはさせないわ」
クールホーン「それに、陛下の従属官であるアタシが敵前逃亡なんてしたら陛下の顔に泥を塗ることになるじゃない」
ノイトラ「馬鹿が。てめえみてえなゴミが俺に勝てると思ってんのか」
クールホーン「そんなのやってみなきゃ分からないわ。乙女の意地を見せてあげるわよ」
クールホーン「煌(きらめ)け――」スッ
クールホーン「『宮廷薔薇園ノ女王(レイナ・デ・ロサス)』!!!!」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:37:59.38 ID:fvmPv6d00
飛鳥(クールホーン!)
飛鳥(ボクはどうすれば。そうだ、早く宮に戻って他の皆に助けを……!)
ガッ!!
飛鳥「!?」ムググ
テスラ「申し訳ありません。貴女を捕えよとのノイトラ様のご命令です」
飛鳥(テスラ・リンドクルツ…… ノイトラ・ジルガの従属官……!)
テスラ「抵抗しないでください。ノイトラ様は最上大虚である貴女をご所望しております」
テスラ「お願いします。どうかノイトラ様が参られるまでこのまま動かないでください」
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:40:12.16 ID:fvmPv6d00
ノイトラ「ハッ、本当に捕まってやがるじゃねェか」
飛鳥「……」
ノイトラ「どういうつもりだ。最上大虚のてめえなら例え捕まろうがテスラ程度すぐに殺せる筈だ。そもそも俺から逃げる必要もねェ」
飛鳥(どうするべきか。彼の性質上ボクがここで『ボクは最上大虚ではない』と言ったとしても、それを鵜呑みにすることはないだろう)
飛鳥(それどころか、ボクが本当に最上大虚ではないことを確かめるために襲い掛かってくる可能性もある)
飛鳥(かといって、『ボクは最上大虚だ』と言ったとしても、それで彼が臆して退くとは到底思えない)
飛鳥(それこそ、彼は彼にとって邪魔でしかない最上大虚のボクを斬るために動くだろう)
飛鳥(この状況だと、どちらの返答を選ぶにしろリスクが高すぎる)
飛鳥(それにクールホーンはどうなったんだろう。ノイトラがボクを追ってここまで来たということは、つまり)
飛鳥(……)
飛鳥(何とかこの場から脱出して、早くクールホーンを助けにいかないと)
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:43:11.63 ID:fvmPv6d00
飛鳥「キミに一つ、訊きたいことがある」
ノイトラ「あァ?」
飛鳥「ボクと一緒にいた破面、クールホーンが今どんな状況にあるのか教えてほしい」
ノイトラ「てめえの知ったことかよ」
飛鳥「じゃあもう一つ。キミはどうしてボクを追ってくるんだ。ボクはキミとは初対面の筈だけど…」
ノイトラ「決まってんだろうが、俺は十刃最強だ」
ノイトラ「わかるか、俺が最強であり続けるためには俺以外の最強が存在しちゃあいけねえ」
ノイトラ「イラつくんだよ、てめえみてえなメスを見てるとよ。どいつもこいつも俺より強ェと思ってやがる」
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:44:48.67 ID:fvmPv6d00
飛鳥「それならもう一つ、どうしてボクが――」
ガシッ!!
飛鳥「うぐっ!?」
ノイトラ「くどいんだよ最上大虚。どんな意図かしらねえが時間稼ぎでもしてるつもりか?」ギリギリ
ノイトラ「はっきり言ってやる、俺は最上大虚のてめえを殺しに来た。てめえに戦う気がねェならそれでもいい、さっさと死ね」ギリギリ
飛鳥「はっ…… ぐ……!」ジタバタ
ノイトラ「ふざけんな。どうして抵抗しねえ、その腰の斬魄刀は飾りかよ。このまま首の骨へし折られてェのか」ギギッ
飛鳥「かっ…… は……!」ジタバタ
「そこまでだ、手を離せノイトラ」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:48:03.50 ID:fvmPv6d00
ノイトラ「……」パッ
ドサッ
飛鳥「げほっ…! ごほっ…ごほっ…! ううっ……」
ノイトラ「ハリベルか、どうして俺を止めた。俺がこいつをどうしようがてめえには関係ねェことだろうが」
ハリベル「藍染様の部下として、私が破面同士による無益な争いを黙って見過ごすと思っているのか」
ノイトラ「相変わらず綺麗事をほざきやがる。ようやくあいつが消えたと思えば次の第3十刃はてめえだ」
ノイトラ「気に入らねえんだよ、てめえもあいつも。メスがオスの上に立ちやがって。いつまでも俺がてめえの下で甘んじてると思ってんじゃねえぞ」
ハリベル「……」
テスラ「ノイトラ様、ここはあまり事を荒げるべきではないかと……」
ノイトラ「ちっ、興醒めだ。命拾いしたなァ、最上大虚」
ハリベル「立てるか。手を貸そう」
飛鳥「ボクのことより、さっきクールホーンがノイトラに斬られて……」
ハリベル「分かっている。先程回廊に倒れているのを見つけ救護室へ搬送した、奴のことは心配しなくていい」
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:50:29.03 ID:fvmPv6d00
―虚夜宮・救護室―
クールホーン「アスカちゃん! だいじょうぶ!?」
飛鳥「大丈夫だよ。キミの方こそボクを庇ってケガをしたんじゃないのかい」
クールホーン「こんなものただの掠り傷よ、すぐに治るわ」
飛鳥「優しいんだねキミは。実は、と言っては何だけど恥を忍んでキミに一つ頼みたいことがあるんだ」
クールホーン「ん? なにかしら」
飛鳥「恥ずかしながら、さっきのいざこざでボクの頭と身体が少し悲鳴をあげていてね。本能的な恐怖を感じてしまった、と言うべきなのかな」
飛鳥「今回の顛末に関しては、ボクがヒトの構造をしている以上避けえなかった運命(さだめ)だったのかもしれない」
飛鳥「いざ空前絶後の絶望的な状況に陥れば、戦場を駆けた勇猛な戦士や偉大なる名君、はたまた文明を築き上げてきた賢者たちでさえも、その自制を保つことは困難なのかもしれないね」
飛鳥「だからね、つまりその、ええと……」
飛鳥「着替えを一着、用意してもらえないかな」
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:53:01.11 ID:fvmPv6d00
―第2十刃の宮―
アビラマ「で、あの部屋の隅で布切れ被って震えてるのは何だ」
飛鳥「」プルプル
ジオ「アスカだよ。クールホーンの話だと、どうもノイトラと小競り合いを起こして殺されかけたらしい」
ニルゲ「まァ… 実際には一方的に因縁吹っ掛けられたみたいだけどな」
アビラマ「マジかよ、ノイトラのやつ調子にのりがやって。こいつが陛下の従属官だってこと知っててやったのか?」
ジオ「さあな」
アビラマ「そうだ、クールホーンはどうした。あいつもやられたのか」
ジオ「ああ、さっきまでは普通にしてたんだが、アスカの傍から離れたらいきなり白目剥いてぶっ倒れてさ。やっぱ新入りの前ってことでやせ我慢してたんだろうな」
ジオ「結果的にハリベルにも借りを作ることになったし、陛下がお戻りになられてこの惨状を見たら何と仰られるか……」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:55:50.03 ID:fvmPv6d00
飛鳥(ヒトというのは無力なものだね。圧倒的な力の前にはどうすることもできない)
飛鳥(いや、今のボクは破面だったか。ははっ、まだ震えが止まらないよ)
飛鳥(頬の痛みも消えない。偶像(アイドル)の顔に傷がついたなんていったら、事務所からは大目玉を喰らうだろうね)
飛鳥(これが夢でよかったよ、これはあくまで夢の中の出来事なんだ)
飛鳥(……)
飛鳥(理解ってるさ)
飛鳥(理解ってるんだ。この状況下で、未(いま)だ目に映るセカイに対して反証を唱え続けるほどボクは楽観主義者(オプティミスト)じゃあない)
飛鳥(ボクにはもう、これが夢の中のセカイだと思い込むしかないんだ)
飛鳥(目が覚めれば今度こそ、元のセカイに戻ることができる)
飛鳥(そうだよね。――。)
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/06(木) 21:56:26.34 ID:fvmPv6d00
ここまで
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/06(木) 22:06:50.06 ID:Fw/35qcjO
想像した以上に甘くなかった(白目)
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/06(木) 22:16:41.44 ID:1j7g41puO
面白い 楽しみに見てるぞ
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/06(木) 23:47:24.05 ID:G6KHUkvDO
乙乙
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/07(金) 01:28:45.43 ID:qp/WEhBEo
俺だって漏らすわそんなん
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/07(金) 10:28:45.96 ID:Ni92HXsOO
> かつて真央霊術院で教鞭を執っていた頃の教本
東仙さんそれどうやって読んだんですか
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/07(金) 10:38:05.89 ID:aPAHrUOzO
>>72
点字だぞ
霊術院は盲者にも優しいんだぞ
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/07(金) 11:25:37.68 ID:ylgQ1Gy8O
東仙って全盲なのに原作とかアニメとかで普通に字とか映像見えてるっぽいのが不思議
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/15(土) 11:45:05.25 ID:O6AUaRZUo
インクの凹凸がわかるんでしょ
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/04(金) 11:38:27.55 ID:jAfjxkVT0
―第2十刃の宮・修行場―
飛鳥「だああああああああああっ!!」ブンッ
アビラマ「ふん」ポイッ
飛鳥「ぶへっ」
アビラマ「やみくもに突っ込んでくるだけじゃ敵に斬ってくれって言ってるようなモンだぞ!もっと相手の動きを見極めて戦え!」
飛鳥「手厳しい指導だね。でも、これくらいじゃないとボクは到底強くはなれない。そうだよね」
アビラマ「いい心掛けじゃねえか。わかってるなら上等だ、もう一回かかってこい!」
飛鳥「言われなくともッ!」
ニルゲ「すげえやる気だなアスカのやつ… 昨日とは別人みてえだ」
ジオ「ノイトラに叩きのめされてアイツの中で何かが変わったんだろ。正直、立ち直るのはもう少し先になると思ってたけどな」
フィンドール「だが、この程度の力量ではまだまだ陛下の従属官として戦闘の場に立つには程遠い」
ジオ「今はまだまだ半人前だけど、これからアスカはもっと強くなる。何となくだけどそんな気がするよ」
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/04(金) 12:36:37.98 ID:IznrBgJDO
おお…
正直もうだめと思ってた
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:13:40.18 ID:4ydfEmvH0
飛鳥(ヒトというのは立ちはだかる壁を乗り越えて成長する生き物だ。死の恐怖に打ち勝つこともその例外じゃない)
飛鳥(不老不死や死者蘇生。ヒトは死という概念を取り払い超越するために未だ果ての無い幻想を追い続けている)
飛鳥(だがそんなものはナンセンスだ。ヒトというのは限られた時を歩む流浪人にすぎない。決してセカイの理に抗うことなんてできやしないちっぽけな存在なのさ)
飛鳥(そう、戦うのは怖い。死ぬのは怖い。結局ボクは戦いに対する恐怖を、死に対する恐怖を克服することはできなかった)
飛鳥(あの時クールホーンがボクを護ってくれなかったら、それこそボクの命はなかった。思い出すだけでも身体が震えてくるよ)
飛鳥(でも、このまま臆して立ち止まっているわけにはいかないんだ)
飛鳥(ボクの本能に刻まれたこの恐怖を取り払うことができないなら、それを上回る強い心でボクを蝕む恐れを封じ込めるしかない)
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:14:53.68 ID:4ydfEmvH0
飛鳥(これはボクなりにこのセカイについて考えた結果の行動ということになる)
飛鳥(こういう御伽話(ファンタジー)モノはおおよそその世界での死が引き金(トリガー)となって物語の全容が明かされるというのも定番の一つだ)
飛鳥(ただ、その引き金を引いた結果、運命の天秤がどちらに傾くのかは誰にもわからない)
飛鳥(何の確証もないが、どうもボク自身の心が、このセカイの声が、その引き金を引いてはならないと警鐘を鳴らしている気がするんだ)
飛鳥(死をもって物語の終幕を迎えることができそうにないならば、この御伽話のセカイでやるべきことは一つ)
飛鳥(それは“このセカイがボクに望むボク自身の役割を果たすこと”だ)
飛鳥(恐らくその存在証明を完遂したその時にこそ、このセカイでの物語は幕を閉じる)
飛鳥(そのためには、ボクはこのセカイで死ぬわけにはいかない。死を回避するためには強くなる必要がある)
飛鳥(強くなって強くなって全てをやり遂げた後にようやく、この夢から覚めるんだ)
飛鳥(今のボクには、死の恐怖に怯えている時間なんてない)
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:16:57.74 ID:4ydfEmvH0
飛鳥「」チーン
アビラマ「今日はここまでだな、昨日の今日でアホみたいに修行の量を増やしたんだ。もう動けねえだろ」
飛鳥(ははっ、疲弊しすぎて意識が飛びそうだ。こんなに辛いレッスンは初めてだよ。吐きそう)
飛鳥(だけどこれが限界じゃない。まだ立ち上がる力もあるし、叫ぶこともできる)
飛鳥「フフッ、次の特訓メニューを教えてくれないか」フラッ
アビラマ「何だ、まだ続けるつもりか?」
飛鳥「もちろんだよ。まだまだこのくらいのレッスンで倒れるわけにはいかないんでね」
アビラマ「そうかよ、じゃあこっからは今までみたいに甘……」
飛鳥「うっぷ」
アビラマ「ん?」
飛鳥「先に謝っておくよアビラマ。どうやらレッスンを続けたいというボクの想いにボクの身体が追いつかないみたいだ おえっ」
飛鳥「もう限界だ、全てを吐きだすことを赦(ゆる)してほしい」
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:18:43.73 ID:4ydfEmvH0
―虚夜宮・玉座の間―
藍染「突然招集を掛けて済まなかったね。ウルキオラ、ヤミー」
藍染「君達への指令は一つだ。早急に現世へと赴きバラガンを連れ戻してもらいたい」
ウルキオラ「はい」
ヤミー「待ってくれよ藍染さん。バラガンを連れ戻すってどういうことだ、あいつ何かやらかしやがったのか」
ウルキオラ「藍染様の前だ。言葉を慎めヤミー」
藍染「構わないよ。私が言葉足らずだったようだ」
藍染「バラガンは先日、私の待機命令に背き独断で現世へと向かった。そして未だ虚夜宮への帰還を果たしていない」
藍染「そして向こうから黒腔(ガルガンタ)を開く様子もなく、緊急連絡や経過報告も届いていないんだ」
ウルキオラ「まさか――」
藍染「いや、離反ではないよ。彼は聡明な破面だ。大虚時代の部下やかつての居城を捨て私に反旗を翻すということはないだろう」
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:20:37.68 ID:4ydfEmvH0
藍染「彼にも彼なりの思惑があるのだろうが、先日の出来事から日も浅い」
藍染「第2十刃とはいえ、彼にばかり特例を赦していればいずれは虚夜宮全体の士気にも影響が及ぶだろう」
藍染「私としても、後に控える戦いを前にして統率に乱れが出るのは避けたくてね」
藍染「理解してもらえたかな。君達への任務は『手段の如何を問わずバラガンを虚夜宮へと送還すること』だ」
ヤミー「とにかくさっさとバラガンをとっ捕まえて帰ってこればいいんだろ? 任せてくれよ藍染さん」
ウルキオラ「……」
藍染「では早速実行に移ってくれ。ウルキオラ、ヤミー」
ウルキオラ「了解しました」
藍染「ああそうだ。この任務における人員の選定権はウルキオラ、君に預けることにしよう」
藍染「もし戦力の不足を感じるのなら、他の十刃を連れていっても構わないよ」
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:22:00.20 ID:4ydfEmvH0
―第6十刃の宮―
グリムジョー「ちっ、それで俺を数合わせに連れてくってことか」
ヤミー「あァン? 何だ文句あんのかグリムジョー」
グリムジョー「あるに決まってんだろうが。バラガン連れ戻すだけの微温ィ任務に何でわざわざ俺が行かなきゃならねえ」
ウルキオラ「“連れ戻すだけの任務”か、随分と甘い見通しだな」
グリムジョー「なに?」
ウルキオラ「相手がバラガンとはいえ、ただの送還任務に十刃が複数体も選定されるはずがないだろう」
ウルキオラ「さらに藍染様はこの任務の補充要員を十刃のみに限定していた。ならば今回の任務は少なくとも何かしらの戦闘を想定したものと見るべきだ」
グリムジョー「戦闘だァ? まさか俺とてめえらで徒党組んでバラガンと戦(や)りあえってんじゃねえだろうな」
ヤミー「さっきからごちゃごちゃうるせえな、ビビってんのか?」
グリムジョー「あァ!?」
ウルキオラ「不要な挑発はよせ、ヤミー」
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:24:46.31 ID:4ydfEmvH0
グリムジョー「ハッ、まあいい。藍染の命令なら仕方ねえ。バラガンだろうが誰だろうが俺がぶっ潰してやるよ」
ウルキオラ「逸っているところ悪いが、俺たちが奴と戦闘を行うことは無い」
グリムジョー「……オイ、さっきから戦うだの戦わねえだの何が言いてえんだ」
ウルキオラ「この任務の真に用心すべき箇所は別にあるということだ」
ウルキオラ「藍染様が本当にバラガンとの戦闘を想定しているならば、そもそもこの任務に俺と今のヤミーが選ばれることなどない」
ウルキオラ「第2十刃の強制送還を果たそうとすれば、序列がより1番に近い数字を持つ十刃の力が必要になるからだ」
ウルキオラ「奴を捜索し送還するという点から見れば、俺たちの役割はただの使者に過ぎん」
ウルキオラ「そして使者である俺たちと敵対することは即ち藍染様への叛逆とみなされる。それはバラガンにとっても本意ではないだろう」
ウルキオラ「だが、先にも言った通り例え対象が第2十刃であろうと捜索及び送還程度の任務に十刃を複数体向かわせるはずもない」
ウルキオラ「ならば今回の任務はバラガンではない“別の警戒すべき対象”がいると見るべきだ」
グリムジョー「てめえにしちゃえらく喋るじゃねえかよ」
ヤミー「おい、いつまで待たせんだ。早いトコ現世に向かおうぜ」
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:28:41.31 ID:4ydfEmvH0
―虚夜宮・浴場(男湯)―
飛鳥(どうしてボクが男湯に……)ムスッ
アビラマ「なに膨れっ面してんだよ、仕方ねえだろ今日はクールホーンがいねえんだからよ。そもそもいきなりゲロぶちまけたお前が悪い」
飛鳥「お風呂くらいボク一人で充分だよ」
アビラマ「馬鹿野郎、お前一人にして昨日みたいなことになってみろ。これ以上無様な醜態晒したらいよいよお前も俺達も陛下に合わせる顔がなくなっちまうぞ」
飛鳥「確かにそうかもしれないね。でもそれ以前にキミたち破面には恥じらいというものが不足している気がしてならないよ」
アビラマ「何言ってんだお前も破面だろうが。なに気にすることはねえ、この時間帯なら誰もここには来やしねえよ」
エドラド「オウ? なんだ、見ねえ顔がいるじゃねえか」
飛鳥「……」
アビラマ「……」
飛鳥「この時間帯なら誰もここに来ないんじゃなかったのかい?」
アビラマ「すまねえ」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:31:20.80 ID:4ydfEmvH0
エドラド「聞いてるぜ、お前が昨日ノイトラとやりあったっていう…… オウ、どうしてお前はさっきから目を閉じてるんだ」
飛鳥「フッ、ボクにも目に写すセカイを取捨選択する権利があるはずだろう?」
エドラド「?」
アビラマ「まあこの通り変わったヤツなんだよ、勘弁してやってくれ」
シャウロン「成程、出会いがしらにノイトラに斬りかかるほどの豪胆と聞いた。その立ち振る舞いも型破りという訳か」
飛鳥「どうも間違った情報が伝わってる気がするのはボクの勘違いかな」
アビラマ「お前がノイトラにビビって逃げた挙句に手も足も出ずにやられたなんて言えねえだろ。ちょっとばかし話を盛って広めといたぜ」
飛鳥「クールホーンもそうだけど、その見栄っ張りなところは君たち特有のものなのか破面全員に共通するものなのかが気になるよ」
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:32:23.31 ID:4ydfEmvH0
ディ・ロイ「お前アスカとか言ったっけか? せっかく優秀な従属官が入っても頭のバラガンがあんなことになっちゃ宝の持ち腐れってヤツだな」
アビラマ「なに? オイ、どういう意味だ。てめえ今なんつった」
ディ・ロイ「バラガンのやつ、藍染様を裏切ったんだろ? さっきグリムジョーと他の十刃のやつらが……」
シャウロン「よせディ・ロイ。不用意に内部情報を口にするな」
アビラマ「てめえら、陛下の動向について何か知ってやがるな」
アビラマ「どうにもおかしいとは思ってたんだ。たかが現世の任務で陛下のご帰還がここまで遅れるなんてことはありえねえ」
アビラマ「アスカ」
飛鳥「なんだい」
アビラマ「俺の斬魄刀を持ってこい。こいつら全員叩きのめして口を割らせてやる」
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:34:55.65 ID:4ydfEmvH0
エドラド「オウ、落ち着けよアビラマ。ここまで来ちまったらもう隠し通すつもりもねえ」
イールフォルト「ちっ、どこぞのカスが余計なことを口走ったおかげで面倒事が増えちまった」
シャウロン「とはいえ、私たちも詳細に事を理解しているわけではない」
シャウロン「バラガンが現世に無断侵攻を開始した、現世へ逃亡した、藍染様の下から離反した… このように情報が錯綜していて何が真実であるのか未だ解明できていない」
シャウロン「ただ、先程グリムジョー、ウルキオラ、ヤミーの十刃三体で構成された部隊が現世に滞在するバラガンの下へ向かったというのは事実だ」
シャウロン「三体もの十刃を動員した任務、やはり考えられるものとしては藍染様に対し裏切りの意思を示したバラガンの討伐。これが最も可能性が高い」
アビラマ(どうなってやがる。陛下は藍染の命令で現世での任務へとお向かいになられたハズだ。それがどうして無断侵攻だの離反だのワケ分からねえことになってんだ)
アビラマ(確かに陛下が藍染を討つ機会を狙ってるってのは事実だ。だが今はその時じゃねえ)
アビラマ(まさか藍染の野郎、俺たちの反逆の意思を見抜いて陛下を陥れやがったのか?)
アビラマ(長期滞在任務とか適当ぶっこいて現世に向かわせた後に帰還命令を出さずに反逆者として処理する。単純なやり方だがありえねえ話じゃねえ)
アビラマ(そうだ、そうに違いねえ。藍染の野郎、どこまで陛下を侮辱する気だ…!)
アビラマ「こうしちゃいられねえ、俺たちも宮に戻って現世に向かう態勢を整える! 行くぞアスカ!」グイッ
飛鳥「ぐえっ」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:36:46.50 ID:4ydfEmvH0
―虚夜宮・回廊―
アビラマ「くそッ、くそッ! ふざけやがってッ!」
飛鳥「待ってくれアビラマ、少し冷静に……」
アビラマ「冷静だよ俺は! ったくとんでもねえことになりやがった、まさか藍染の野郎がこんなに早く行動に移しやがるとはな」
飛鳥「アビラマ、ボクの話を聞いてくれ」
アビラマ「そんな時間はねえ。いくら陛下とはいえ十刃を三体同時に相手取るなんてことになれば万が一ってこともあり得る」
アビラマ「もしも陛下がやられたなんてことになったらもう取り返しがつかねえ、死人に口なしってヤツだ。陛下も俺たちもお前も反逆者として処刑されて終わりだ」
アビラマ「陛下さえ虚夜宮に戻れば裏切りじゃねえってことが証明できる。藍染も文句は言えねえハズだ」
アビラマ「俺たちはバラガン陛下の忠実なる従属官だ。一刻も早く現世に向かって陛下のご帰還を援護しなきゃならねえ」
飛鳥「やっぱり今のキミは冷静さを欠いているよ。その選択は悪手だ、新入りのボクにだって理解る」
アビラマ「なに?」
飛鳥「このままボクたちが現世に向かえば陛下は本当に藍染惣右介を裏切った逆賊として処刑されることになるだろうね」
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:42:58.73 ID:4ydfEmvH0
飛鳥「“バラガン陛下は藍染惣右介のでっち上げた虚構の任務によって現世に幽閉された”」
飛鳥「“現世から帰還することができない今の状況は陛下を反逆者に仕立て上げるのには好都合だ”」
飛鳥「“なぜなら現世から帰還しない行為それそのものが傍から見れば虚夜宮に対し反逆の意思を示したという既成事実となるからだ”」
飛鳥「キミはこんなふうに考えている、とボクは踏んだんだけど違うかい」
アビラマ「まあ、全部正しいってワケでもねえが間違ってはいねえ」
飛鳥「ボクもシャウロンの話を聞いた時は一瞬そう思ったよ。でも藍染惣右介が考案したにしてはこの謀略はあまりにも稚拙すぎる」
飛鳥「ボクの知る藍染惣右介ならば、ボクたち破面に見破ることができる程度の策を実行に移すはずがない。いつぞやの死神魂魄消失事件のような綿密な計画を立てるはずさ」
飛鳥「それに陛下が虚夜宮に戻らないといってもわずか数日のこと。その短期間で裏切りと決めつけて即座に討伐部隊を編成するのはいささか早計だとは思わないかい」
アビラマ「……」
飛鳥「他にも、この時期に十刃同士を衝突させて貴重な戦力を減らすようなことはしないと思うよ」
飛鳥「言い方は悪いけど、ボクが彼なら策に陥れる相手に明確な裏切りの意思を示させるために適当な破面を送り込んで衝突させる。それなら同胞を斬った裏切り者として懲罰を正当化できるからね」
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/10(木) 21:45:32.56 ID:4ydfEmvH0
アビラマ「小難しいがお前の言いたい事は大体わかった。だがどうして俺たちが現世に向かうと藍染を裏切ったってことになるんだ」
飛鳥「その場の状況がそのまま裏切りを証明することになってしまうからさ」
飛鳥「ボクたちが現世に向かえば“現世にバラガンとその部下が集結する”ことになる」
飛鳥「虚夜宮の側から見れば“バラガンが部下を引き連れ現世に離脱、藍染惣右介に対し離反の意思を示した”。真意は違えどそう捉えられてもおかしくない」
飛鳥「藍染惣右介と少なからず因縁のある陛下なら特にそうだ」
アビラマ「……」
飛鳥「理解してくれとはいわない。ただこれも一つの意見として受け止めてほしい」
アビラマ「確かにお前の言う事にも一理ある。だが俺も大虚の時代から陛下に仕えてきた一人だ、正直今すぐにでも陛下のもとに向かいてえ」
アビラマ「改めて訊くがお前はどう思う。俺たちはこのまま虚夜宮に留まるべきか、それとも現世に向かうべきか、陛下の従属官であるお前の意見を聞かせてくれ」
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