【ミリマス】環「かおりとたまきとおやぶんと!」響「ちょっと、自分は!?」

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1 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/07/01(土) 02:37:43.29 ID:0ligPOBV0
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 休日、空ははろばろいい天気。ポカポカ陽気もちょいと添えて、今日は絶好の外遊び日和と言っていい。
 
 足を運んだ公園は、案の定沢山の子供たちで溢れていて……
 そんな子供の群れに混じって、元気に走る少女が一人。

「おやぶーん! こっちこっち〜!」

「おー、見てる見てる。あんまりはしゃぎ過ぎるなよー!」

 こっちに呼びかける環に手を振って、俺は隣にいる女性へと顔を向ける。

「歌織さん、荷物重たくないですか? もう少し俺が持ちましょうか」

「いいえ、平気です。……それよりもプロデューサーさん」

「はい?」

「今日は、晴れて良かったですね。環ちゃんたちも嬉しそうで……ふふっ♪」

 ああ、なんて人の心をほんわかとさせる笑顔なんだ。

 お弁当の入った鞄を手に持って、公園の中を走り回る環を見つめる歌織さんの横顔は美しい。

 今でも信じられないな、こんな綺麗な人を劇場に、アイドルにスカウトできたなんて。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1498844262
2 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/07/01(土) 02:39:36.17 ID:0ligPOBV0

「いやー、まったくツイてた」

「つい……てる? あの、私の顔に何か?」

「ああいえ! そういう意味じゃ……あはは」

 彼女の質問を笑って誤魔化すと、俺はさっきからしていたように、
 ピクニックシートを広げられる場所を探す作業へと戻った。

「あっ、あそこなんてどうですかね?」

 大きな木の下に、ちょうどいい具合の木陰を見つけて指をさす。

 歌織さんも覗き込むように指の先へと視線をやって、「そうですね、いいと思います」と頷いた。

 決定。二人並んで木陰までやって来ると、俺は手にしていた荷物を芝生に下ろす。


「ここまで歩き疲れたでしょう? 今すぐシートを広げますから、少し待って下さい」

「はい……あ、あの!」

 いざシートを敷こうとした途端に呼び止められて、俺は何事かと彼女の方に振り向いた。

「な、なんです?」

「いえ、その……急がなくても大丈夫と。……ご、ごめんなさい。それだけ言いたかったんです」
3 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/07/01(土) 02:41:14.26 ID:0ligPOBV0

 言って、歌織さんは恥ずかしそうにはにかんだ。

 それから俺の作業が終わるのを、優しく見守る歌織さんといったら無い! 

 ああ、いいなぁ……三歩下がって師の影踏まず。違うな、三歩下がってついて行く。

 この女性らしい奥ゆかしさとおしとやかさ、
 劇場にいる騒がしい連中も、少しは見習って欲しいものだ。

「おやぶんおやぶんおやぶーん!」

「プロデューサー、プロデューサー、プロデューサー!」

 なんてことを考えていたら、早速騒がしい二人が俺たちのところへと駆けて来る。

 一人はさっきまで他所の子達と走り回っていた環、そしてもう片方は――。

「バッタ! おやぶんバッタ捕まえた!」

「プロデューサ〜……いぬ美のやつ、リード外したら逃げちゃった!」

 見て見てと大きなバッタを見せて来る環の横で、
 今にも泣き出しそうな顔をするのは響だ。

 一緒に連れて来ていた愛犬、いぬ美がどこかに行ったらしいが……。
4 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/07/01(土) 02:43:32.03 ID:0ligPOBV0

「そりゃお前、リードを外したら逃げ出す……って言うか走りだすだろう。犬だし」

「あぅ、それはそうだけど……。待ってって言っても待たなくて」

「……いぬ美はお利口さんだからな。ホントに待てって言っただけか? 追いかけたりしなかったか?」

 すると響は「うっ」と言葉を詰まらせると、
 歌織さんにバッタを見せている環をチラリと一瞥し。

「……環と二人で、捕まえようと追いかけたぞ」

「じゃ、原因はそれだな。遊んでもらえると勘違いしたんだろ」

 それから俺は、泣きそうなまま顔をしかめる響の頭に手を置くと。

「おしとやかさをさ……持とうぜ、響」

「むかっ……。なんか引っかかる言い方だね」

 不機嫌に唸る彼女を「怒るな怒るな」となだめながら、
 俺はシートが風で飛ばないよう荷物や水筒を四隅に置いて行く。


「これが終わったら、俺も一緒に探してやるよ。ココは広いから、一人で探しちゃ骨が折れるぞ」

「うん……分かった」

 落ち着きとおしとやかさはともかくとして、響の素直さは彼女の美徳だ。

 シートを敷き終わった俺は、「それじゃあ、ちょっといぬ美を探しに行ってきます」と
 歌織さんたちに一声かけて、響と一緒にいぬ美探しに向かったんだ。
5 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/07/01(土) 02:45:25.97 ID:0ligPOBV0
===

 とはいえアイドルである環たちと、プロデューサーである俺が
 一緒に休日を過ごすことになった経緯について、少しは説明しておかなくちゃダメだろう。

 あれはそう、なんの変哲もない木曜日のことだ。

 歌織さんが765プロの一員となってからというもの、
 劇場ではしばしば音楽教室が開かれることになっていた。

 アイドルになる前は、ピアノと歌を人に教えていたという歌織さん。

 そんな彼女のことを、うちの向上心有り余る連中がただただ放っておくはずも無く……。


「先生! 今日も私に歌のレッスンを!」

「ちょっと可奈、今日は環たち年少組の番じゃない」

「うぅ、でも志保ちゃ〜ん。私もっともーっと、歌が上手になりたくて」

「あ、あの、私の方は構いませんよ。年少さんと言っても、
 環ちゃんに育ちゃん、それに桃子ちゃんの三人だけですし」

「歌織さん! そんな、可奈を甘やかすようなこと……」

「いいんですか! やった、やったぞ〜♪ 頼んでみ〜るみる、みるもんだ〜♪」

「ふふ、よければ志保ちゃんも一緒にどうかしら?」

「えっ、わ、私も? ……いいんですか?」
6 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/07/01(土) 02:46:58.74 ID:0ligPOBV0

 なんて、可奈や志保が話をしているところに、俺が千早を連れて顔を出したんだな。

「お疲れ様です歌織さん。少し、話をいいですか」

「お疲れ様です、大丈夫ですよ」

「実は千早が、お願いしたいことがあるそうで」

「は、はい」

 765プロの歌姫筆頭、千早が緊張した面持ちで歌織さんの前に立つ。
 それから彼女は歌織さんに、個人的な練習に付き合って欲しいという内容の相談事を持ちかけた。

 それを横で聞いていた俺に、レッスンルームで志保たちの話が終わるのを待っていた環が、
「おやぶんおやぶん」と声をかけて来たんだ。


「どうした環?」

「あのね、今度のお休みの約束覚えてる? たまきを公園に連れて行ってくれる話!」

「この前頑張ったご褒美だろ? もちろんちゃんと覚えてるさ。
 しっかり予定も空けてあるし、後はお天気次第だな」

「くふふっ♪ たまきね、すっごくす〜ごっく楽しみにしてるんだ〜」
7 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/07/01(土) 02:48:13.61 ID:0ligPOBV0

 笑顔ではしゃぐ環に、「俺も楽しみだよ」と答えてあげる。

 なにせこの予定を実現するために、律子や美咲ちゃんに甘えてるんだ。
 しっかりと環と遊んで帰って来なきゃ、罰が当たるってもんさ。

『アイドルのやる気を維持するのも、プロデューサーの大事な役目。
 仕事の方は私たちに任せて、しっかりお勤めを果たしてきてくださいよ』

 なんて、頼りになる同僚がいる俺は幸せ者だ。

 そんなことを思い出していると、千早の話も終わったようで、

「それでは、お願いします」と頭を下げた彼女の方へ振り返り、
 俺は「終わったのか?」と声をかけた。

「はい、オーケーを頂きました」

 すると千早に続くように、歌織さんも小さく頷いて。


「劇場の一員となった時に決めていたんです。
 私にお手伝いできることがあれば、なるべく応えるようにしようって」

「それはまた……立派な心掛けです!」

 その時だ、俺の頭にティンと来るものがあったのは。

 歌織さんの横に近づいて、俺は彼女にお願いする。
8 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/07/01(土) 02:51:29.16 ID:0ligPOBV0

「あの、何でも手伝うっていいましたよね」

「えっ? あ、いえ。なるべく、できることならと……」

「それって、俺の仕事のお手伝いでもいいですか? 実は聞こえてたかもしれませんけれど
 今度の週末、環を公園に連れて行く約束をしてまして」

「は、はぁ」

「ただ一点、見た目通りの元気娘ですから。万が一、俺が目を離すようなことがあったらと思うと――」

「それはつまり、私にも同行して欲しいとおっしゃられているのですか?」

「ズバリ、そうです。話が早くて助かりますよ!」


 歌織さんの柔らかな手をひょいと取ると、
 俺は熱のこもった眼差しを彼女に向けて言葉を続ける。


「もし、ご予定が空いていればの話ですけど。……いえ、貴女が当日オフであるのは知ってますけども」

「あ、あのプロデューサーさん? この手は一体……」

「いえね! 俺も一人じゃ不安だし、弁当なんかも用意できないし、響っていう姉貴分にも声はかけちゃあいたんですけどね。
 アイツもアイツで、ちょっと抜けたところがあるというか」

「響……ああ、存じてます。可愛らしいハムスターと一緒にいる子ですね」

「そうですその子! でも本当に可愛らしいのは歌織さん、貴女です!」

「きゃあ!?」
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