【デレミリSS】紗代子「スロー?」杏「ライフ」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆uYNNmHkuwIgM :2017/06/30(金) 22:54:15.72 ID:qv/3Hhrn0

ミリP「はい、はい.....そうですか...」

電話を受けたプロデューサーの顔がだんだん曇っていく、きっと電話の相手は私が前にオーディションを受けたところの人だと思う。

私はひとつため息をつく。あぁ、まただ。きっとまたダメだったんだ...。

ミリP「ありがとうございました...はい、またの機会に、よろしくお願いします」

スマホの電源を切って、ブランと脱力するプロデューサー。じっと見つめる私と目があうと、悲しそうな顔で首を数回横に振った。

私はシアターアイドルの予定が書かれてあるホワイトボードに向かって、自分の予定をひとつ消す。悔しいなぁ。ここ一ヶ月、こんなことを繰り返している。予定を埋めて、それを消して。

ソファーに座って、置いておいた鞄から手帳を取り出して、カレンダーの予定をひとつ黒く塗りつぶす。ところどころ真っ黒に塗りつぶされた跡だけが残るカレンダーは、そっくり私の心の中みたいだった。


 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1498830855
2 : ◆uYNNmHkuwIgM :2017/06/30(金) 22:56:20.51 ID:qv/3Hhrn0


カレンダーが黒く塗りつぶされるたび、私はレッスンの時間を増やしていった。きっとオーディションに受からないのは、努力が足りないからだ。

努力だけではどうにもならない。そんなことは知っている。でも、そんなことが言えるのは才能に溢れた人だけだって思う。

私にはそんな才能はない。そんな私がそれを持つ人たちに追いつくには、努力すること以外に道はないんだと思う。



才能がある人が辿り着ける場所まで行くのに、私はその倍の時間がかかる。そうならば、倍の時間レッスンすればいい。単純だ。

オーディションに受からないのは、きっと私の歩幅を私がまだよくわかってないからだ。私の歩幅はまだまだ小さい。でもレッスンの時間を増やせば、いつかきっと追いつけるようになるはず。

1日のスケジュールを確認する。すでにもう、たくさんの時間をレッスンに費やしている。でも足りないんだ。

何度も何度も頭の中で1日の流れをシミュレーションして、何度も何度も隙間の時間を見直して、なんとかレッスン時間を増やすことに成功した。

 
3 : ◆uYNNmHkuwIgM :2017/06/30(金) 22:57:04.63 ID:qv/3Hhrn0

そうと決まればのんびりしてはいられない。自主レッスンに向かおうと準備していると、大きな手がポンポンと私の肩を叩いた。振り向くと、プロデューサーの顔があった。

ミリP「どうした?そんなに急いで?」

プロデューサーは眉をひそめて、少し優しい目をしていた。きっと、私の考えていることはお見通しなのだろうけれど、言葉にして聞かれたので言葉にして返す。

紗代子「...レッスンに行ってきます...」

私の答えを聞いて、ひとつため息をつくプロデューサー。肩に手を置いたまま、我儘を言う子供をなだめるように言う。

ミリP「今日はもう帰って休め。ただでさえ最近はずっとオーバーワーク気味なんだ。暗い気持ちでレッスンしても、身につかないよ」

 
4 : ◆uYNNmHkuwIgM :2017/06/30(金) 22:58:29.12 ID:qv/3Hhrn0

プロデューサーの言葉がズシンと私の心にのしかかる。そんなことはもうとうに気がついている。こんがらがった頭のまま歌を歌っても、ダンスをしても、喉も体もぐちゃぐちゃとこんがらがっていくだけだって、毎日毎日身に染みて分かっている。

でも、立ち止まるわけにはいかない。立ち止まると、前を走ってる子たちの足音が否応なしに耳に響く。どんどん背中が見えなくなって行くのを感じて恐くなる。だから、ぐちゃぐちゃのままでも大袈裟に足音を立てて走るしかない。自分の足音で、他の子の足音を消すしかない。



私は上半身を大きく動かして肩に置かれているプロデューサー手を払いのける。実はこれも何度も繰り返してきたことだ。私が強く拒むと、プロデューサーは諦めて肩から手を離してくれる。

でも、今日は違った。私の動きを抑えるようにプロデューサーの手に力がこもる。

ミリP「まぁ、落ち着けって。もう一回言う、今日はもう帰って休め」

真顔でじっと私を見つめるプロデューサー。今日の今日は意地でも私をレッスンに行かせる気がないのだと思う。

でもこっちだって意地がある。アイドルとして一人前になるために、私は頑張らないといけない。プロデューサーを睨みつけて、抗議の言葉を口にしようとした時、プロデューサーの言葉がそれを遮った。

ミリP「明日から特別レッスンだ。ツテを頼って、346プロのアイドルと合同レッスンをしてもらえることになった。1週間、そこでたっぷりレッスンしてこい」

 
5 : ◆uYNNmHkuwIgM :2017/06/30(金) 23:00:38.21 ID:qv/3Hhrn0

####################

翌日、私は346プロにやって来た。今最も勢いのあるアイドル事務所の一つだけあって、建物はとても大きくて入る前から迫力に圧倒されてしまいそうになる。

受付の人に用件を伝えると、レッスンルームに通された。中にはすごいアイドルの人やトレーナーさんがいるのだろう。ちょっと気後れしてしまうけど、始まる前から負けてしまってはダメだと自分を奮い立たす。

コンコンコンコンとノックをする。返事はない。あれ?指定された時間は間違ってないと思うけど。

聞こえなかったのかもしれないと思い、もう一度ノックをする。やっぱり返事はない。

このまま立往生してしまうと、指定の時間をオーバーしそうだったので、ソローっと重い扉を開ける。

目の前には綺麗に整備されたレッスンルームが広がる。でも、中には誰もいない。あれ?でも、隅っこに何かモゾモゾと動くものがある気がする。

じーっと目を凝らして見てみると、ダラーっとだらしなく小さなお尻をこっちに向けて寝ている女の子の姿があった。


 
18.25 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)