百合子「仲良しショッピングデート」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 22:34:05.11 ID:mht4CVJf0
​ぽちぽち、かちかち。
私はボタンをリズミカルに弾いていく。それに応じて液晶内のキャラクターは滑らかに動く……はずだった。
しかし、現実は厳しいもの。思い通り動くはずの私のキャラクターは、隣人の手によって操作されるキャラクターの猛攻を受けてなすがままにされてしまう。

「むむむ。……だけど、こんなものが私の全力だと思わないでね! 追い詰められた私の秘めたる力を見せてあげ――――」
「うん。そうすると、思った……。確殺コンボ入れるね…………?」

ズガガッ、ドドッ、ドバーンッ!
一発逆転を狙う、私の大ぶりでスタイリッシュな一撃は無駄のないタイミングで回避され、そして生まれた隙に迅速なコマンド操作による精錬された猛攻を叩き込まれてしまった。
快音とともに私のキャラクターは画面外に飛び出していった。無念……。
くはーっ、よくわからない声が口から洩れてしまう。

「杏奈ちゃん、やっぱり強いよー。全然かなわないや」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1498397644
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 22:34:51.27 ID:mht4CVJf0
同じソファに背を預ける隣人改め、杏奈ちゃんにそう話しかける。
私の言葉に、杏奈ちゃんはいつもの桃色のウサギパーカーを深くかぶってしまった。だけどそれは私と目を合わせようとしていないのではなく、照れているんだと思う。可愛い……、と口にしないで個々のの中で思った。

「百合子さんは…………自分のしたいコマンドだけじゃなくて、相手のコマンドも警戒したほうがいいと思う……よ?」
「うう、耳が痛い」

私もゲームの腕にはある程度自信があったけれど、杏奈ちゃんにはなかなか敵わない。
やっぱり、愛の差なのかもしれない。
私はゲームももちろん好きだけど、本を読むことも好き。だけど杏奈ちゃんの趣味はゲーム一筋って感じがする。その差なのかも。
あい、アイ、愛。
カーライトを五回点滅させたらなんとやら、

「ねえ、百合子さん……」
「んんっ? 何かな杏奈ちゃん」

明後日の方向へそれていった思考を、杏奈ちゃんが断ち切った。そんな彼女に向き合うとすっごい眠そうな顔を浮かべていた。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 22:35:22.81 ID:mht4CVJf0
「杏奈ちゃん、めちゃくちゃ眠そうだね」
「うん……。実は、夜更かしして……練習してた…………」

うつらうつら、そんな表現がこれ以上にないほど、杏奈ちゃんの表情にはあうようだ。

「練習って、今レッスンで習ってるダンス? そうそう、私もあれ苦手でね」
「ううん。杏奈、あのダンスはできるから……」

上げて落とされたような、そんな気分。
うう……勝手に自爆してしまった。ダンス、もっと上手くならないとね。
そんな私を尻目に杏奈ちゃんは、少し頬を赤らめながら言う。

「そうじゃなくて、このゲームの練習…………。百合子さんといっしょにやるの、楽しみだったから……」
「杏奈ちゃん……!」

杏奈ちゃん可愛い! 声に出さないけど、すごく言いたい!
その代わりに私は目の前の世界一可愛い女の子を抱きしめます。女の子特有の、いやそれ以上のふわふわでやわらかい感触。ずっと抱きしめていたいような杏奈ちゃん。
ぎゅーっと。
ぎゅーっと。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 22:35:56.79 ID:mht4CVJf0
………………あれ?
いつもなら杏奈ちゃんが何も言ってこない。いつもだったら「暑苦しい…………」とか「どきどきするから……駄目…………」とか言ってくるのに。
どうしたんだろう杏奈ちゃん。

抱きついたままなので杏奈ちゃんの表情はうかがえない。耳元に、ささやくように声を出す……なにか、卑猥な気配がする文字列だ、なんて思わなくもない。

「おーい。杏奈ちゃん」
「……………………ぐぅ」
「ね、寝てる!?」

なんということでしょう。杏奈ちゃんは、抱きつく体制のまま眠りに落ちてしまったようです。
いやいや……杏奈ちゃん、器用すぎるでしょ。というかのび太君並みに寝るの早いね。

「よほど眠かったんだね……よほど、楽しみにしてくれたのかな? なんて」
「むにゃ…………ぐう……」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 22:36:22.39 ID:mht4CVJf0
当たり前だけど、返答はない。
だけど、そうだったら嬉しいな。
答えは杏奈ちゃんのみぞ知る、ってね。
ともかく私は体勢のきつそうな杏奈ちゃんを起こさないようにそっと動かして、自分の膝の上に寝かせることにした。所謂膝枕である。ソファの上にそのまま寝かすと首を痛めそうだもんね、他意はないよ。
そして、手持無沙汰な手でなんとなく杏奈ちゃんのうさ耳の目立つ頭を撫でてみる。

「…………可愛い」

杏奈ちゃんにに聞こえてないなら声に出しても恥ずかしくない。
杏奈ちゃんは可愛い。
もちもち、ぷにぷに、ふかふかしてて小動物みたいな女の子。
自分の魅力に無自覚そうなところも一層可愛さを引き立ててる。
そんな娘が妹みたいに私に懐いてくれるなんて……ふへへ。

「可愛い。杏奈ちゃん、可愛いよっ」
「ぐう…………」

なんて、杏奈ちゃんに夢中になっている私だけど、きっと側から見たら亜利沙さんみたいに見えてるよね。
いや、亜利沙さんと同じにしないで欲しいなっ。私は杏奈ちゃん一筋だから! …………ちょっと恥ずかしいこと考えてちゃったかも。
なでなでと手を止めずに、少し反省。

「亜利沙さんと言えば……確か」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 22:36:49.72 ID:mht4CVJf0
ちょっと前のことだ。
亜利沙さんが私に頼んできたことがあったのだ。

『百合子ちゃん! あなたを杏奈ちゃんの親友と見込んでお願いがあります!』

私が事務所で暇を持て余していると、亜利沙さんがそんなことを言ってきた。
それにしても、杏奈ちゃんの親友……一番大切な人、なんて……照れちゃうなぁ。

『うへへ……。って、亜利沙さん。お願いってなんですか?』
『それはですねー』

そう言うと亜利沙さんはガサゴソと自分の鞄を漁り始める。なんとなく目線をその中に向けてみた。カメラ、カメラ、盗撮っぽいアングルの写真、カメラ、お菓子、三脚…………。
そうこうしてると亜利沙さんは一つのものをとりだした。

『コレです!』
『ええっと……。枕、ですか?』

亜利沙さんが取り出したのは新品の枕。枕カバーも付いていて、桃色の背景に可愛らしい兎さんたちがくつろいでいる。
なんとなく、杏奈ちゃんが好きそうだな、と思った。
しかし、それがどうしたのか。
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