フロック「悪魔の眷属」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/24(土) 19:34:11.14 ID:T21yc21Y0

フロック (体格。顔。性格。――全てにおいて、平凡。
      訓練成績、真ん中ぐらい。統率力もなけりゃ、作戦立案もできない)

フロック (一人で一兵士分の実力。巨人になれるわけでも、巨人を操れるわけでもない)

フロック (壁内人類存亡の危機という舞台で、絶対に主役たりえない人間。
      それが、俺だ)


◆◆◆◆


フロック (……の、はずが)

フロック (どうして俺は、この人と出会ってしまったのか)


ヒュゥゥ…

エルヴィン「……う……」ビクッ

フロック 「!……生き、てる……のか?」

てっきり死んでいると思った団長が、人の近づく気配に身じろいだ。

フロック 「……」スッ…

エルヴィン「……ィ……」ピクッ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1498300450
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/24(土) 19:34:39.91 ID:T21yc21Y0
フロック 「団長?」

エルヴィン「マリー……」ツーッ

呟かれた名前に、俺はゆっくりとブレードを下ろした。
とどめを刺してやるのは、やめだ。それは団長にとっての救いにはならない。

フロック 「エルヴィンにはまだ、地獄が必要だ」

フロック 「巨人を滅ぼすことができるのは、悪魔だ」

死臭のたちこめる、血で汚れた果てしない荒野。

生きているのは俺と団長だけ。

フロック 「悪魔を再び蘇らせるのが、生き残った自分の使命だ」

俺はブレードをしまって、団長を担ぎ上げようとした。

フロック 「……」ハッ

フロック 「そうだ、止血……こんな汚い布しかないけど」スルッ

左のわき腹がひどくえぐれている。しっかり止血すると、団長の表情が少しだけ楽そうになった。
団長はがっしりしていて、大きい。担ぐのも一苦労だ。
それでも落ちないように固定して、俺は一歩踏み出した。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 19:35:12.99 ID:T21yc21Y0
◆◆◆◆

ヒュゥゥ…

エルヴィン(……暗い)

エルヴィン(何も見えない。ここからは、何も……)

体から、少しずつ体温がなくなっていく。指先がずっしりと重い。

エルヴィン(このままだと、死ぬな……)

まるで他人事のように考える。そんなに恐ろしくはない。死にたくないとは思うのだが、
同時に「しかたがない」と思えてしまうのが不思議だ。

ザリッ…

エルヴィン(……ん?)

砂利のこすれる音。まだ生き残った兵士がいたのか。

エルヴィン「……うっ……」ピクッ

フロック 「!……生き、てる……のか?」

その声は聞き覚えがあった。獣の巨人への特攻作戦を告げた時、涙を浮かべていた彼だ。
ああ、君はあの猛攻撃を生き残ったのか。偉いぞ。せめて頭でも撫でてやりたいが、手が動かない。

スッ…

ブレードが引き抜かれる音。そうか、とどめを刺してくれるのか。
私は覚悟を決めて、うっすら開けていたまぶたを閉じる。

エルヴィン(……いい人生だった)

閉じたまぶたの裏に、次々に顔が浮かんでは消える。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 19:35:38.49 ID:T21yc21Y0
『……エルヴィン』

ふと、懐かしい声がした。私が生涯でただ一人、愛した女。

マリー  『いいのよ、もう。あなたは十分戦った。そろそろ羽を休めたって、許してもらえるわ』

エルヴィン(……そうか?)

マリー  『ええ。私はちゃんと知っているから』

光の中から差し伸べられた手。分かっているよ。君は今ごろマリアの家で子供たちと眠っているんだろう。
夫の友人でしかない私のことなんか、思い出すこともないはずだ。
なのに、最期に見る幻の君は、こんなにも優しい。

エルヴィン(ああ……結局、想いは告げられなかったが)

エルヴィン(俺は君を……)

エルヴィン「マリー……」ツーッ

「エルヴィンにはまだ、地獄が必要だ」

エルヴィン「!」

瞬間、幻のマリーも、神々しい光も消え失せる。首筋に当たっていたブレードが離れた。

フロック 「巨人を滅ぼすことができるのは、悪魔だ」

フロック 「悪魔を再び蘇らせるのが、生き残った自分の使命だ」

彼の手が、私の腹のあたりをまさぐっている。傷口に布が巻かれて、呼吸が少しだけ楽になった。

エルヴィン(……あたたかい)

顔を押しつけた背中はまだやわらかいが、たるんではいない。駐屯兵団からの補充兵だな。
私の命を繋ぎ止めているのは、この背中だ。

エルヴィン「……みの、なま……」

フロック 「フロックです。苗字はいいでしょう、別に」

とぎれとぎれの発語を、彼――フロックはしっかり聞きとった。

エルヴィン「そ、か……?」

フロック 「不満だったら、団長が思い浮かんだ苗字ってことでいいですよ」

エルヴィン「み、……こ、に……れて、く」

フロック 「あなたが、生き返る場所です」

ぎりっと奥歯を食いしばって、フロックは歩く。
私が首に回した手は、拒まれなかった。

◆◆◆◆
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 19:36:15.59 ID:T21yc21Y0
やっと辿りついたそこでは、一本の注射器を巡って争っていた。

エレンは海だの夢だの、そんなん知るかってことをほざいてやがるし。
ミカサは論外だ。なんで巨人殺しの武器を人間に向けてんだ。
兵長も兵長だ。いつもの即断即決はどこへ行ったんだ。

アルミン.アルレルト。

バカみたいな名前で、主席と死に急ぎ野郎の幼なじみで、卒業戦闘模擬試験も
運よく合格したような奴。あいつの褒められる所なんて、座学と根性ぐらいしかないと思う。

俺のこの評価は、団長を犠牲にした時点で決して覆らないことが決まった。

ふざけんじゃねえぞ、エレン。

お前なんて、エルヴィン団長がいなけりゃ憲兵団にバラされてただろ。お前も、ミカサも、
団長に受けた恩も、ベルトルトと暮らした日々も、綺麗さっぱり忘れてやがる。

なあ、お前ら。

アルミンが、ベルトルトを食ってでも生きたかったと、本気で思ってんのか。

幼なじみを悪魔にしても、自分たちのエゴの方が大事なのか。

エルヴィン団長なしでこれから、どうやっていくつもりなんだよ?

フロック 「……いてえな」

トリガーを握っていた手のひらの皮が剥けていた。

背中にはまだ、団長の温もりが残っている。

俺はこれから一生、この体温を背負って生きていく。

あの悪魔の、最後の侍従として。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 19:36:41.10 ID:T21yc21Y0
今日はここまで

もうちょっとだけ続きます
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/24(土) 19:47:25.42 ID:1HEolGpL0
ミス

マリアの家→ローゼの家

ナイルさんなんてとこ住んでんだ
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