美渡「こらー!バカチカー!!」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:42:04.84 ID:N8Hh+kzsO

千歌ママ「みんな…話があるから付いてきて」

美渡「う、うん…」

千歌「?」


そう言って私たち姉妹は
病院の屋上に連れてこられた。
屋上に上るエレベーターでの無言が
ひどく苦痛だったのを覚えている。
父さんが喋らなくなったのは
トイレで倒れた時のショックでらしい…。
屋上のベンチに腰掛けてそれを聞き…
しばらくしてから…母さんは重い口を開いた。


千歌ママ「あのね…お父さん。癌なの…」

志満「え?」

美渡「癌?癌って…」

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:42:54.61 ID:N8Hh+kzsO

学校の保健の授業で習った言葉。
最悪の病気って先生が言ってた。
父さんが…癌。
志満は聞いて涙を流し、
千歌は悲しいことだと察したのか
声を出して泣き始めた。

その時、私は思い出していた。
あの日の『約束』を…。

千歌パパ『これからはお前が止めてやれ、俺じゃなくて…お前が』


美渡「そういう事かよ…バカ親父…」グスッ

美渡「ぐっ!」フキフキ


私は立ち上がりみんなに向かって
意地を張ってこう言った。

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:43:22.54 ID:N8Hh+kzsO

美渡「例え、父さんがそうなっても!父さんはいなくならねぇ!ずっと…ずっと一緒にいる!いるんだよ!」

志満「美渡ちゃん…」

美渡「私はもう本当に悔しいこと以外では泣かない!絶対!絶対に!父さんが悲しくならないように!」

千歌ママ「美渡…」ギュー

美渡「だから…だ…から……うぅ…」グスッ

美渡「泣くのは…今日だけ……だからぁ…」グスッ

千歌「うわぁぁぁぁぁん!!!」ボロボロ


4人の泣き声が屋上に響く。
少し染まった夕焼け空が
もの悲しく私たちを包み込む。
次の日から母さんは胸のつっかえが
無くなったせいか前よりは笑うようになった。
覚悟を決めたんだろうな。
苦しかっただろうな…大変だっただろうな。
やっぱ母さんはすげーや。

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:43:54.35 ID:N8Hh+kzsO

それから私たちは毎日毎日
病院へお見舞いに行った。
学校→病院→家→学校のルーティンが
何回も繰り返されていく。

父さんは喋られず、歩けず、食事もできず
ついにベッドに寝たきりになる。
何本も管が繋がれ、点滴や痰を取る管と
なんとも言えない匂いが病室に広がっていた。
でも、もうそんなの気にしなかった。
父さんは私たちが手を握ると笑顔を見せ
私たち姉妹が話すくだらない話を
親身になって聞いてくれていた。

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:44:23.94 ID:N8Hh+kzsO

繰り返していく毎日は新年を越えた。
余命も聞かされていた私たちは
もしかしたら助かるんじゃないかと
わずかな希望にすがろうとしていた。

そんなことは起こることもなく
運命の日がやってきた。

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:47:29.48 ID:N8Hh+kzsO

ガララッ

美渡「ただい…」

志満「美渡ちゃん!急いで!お父さんの容態が急変したって!」

美渡「わ、分かった!」


志満と急いで母さんと千歌が待つ車に向かう。
向かう途中…


千歌ママ「あなた…あなた…!」

志満「大丈夫…大丈夫だから…」

美渡「…」

千歌「おとうさんどうなるの?」ウルウル

美渡「…大丈夫」ナデナデ

千歌「う、うん…」ウルウル

108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:48:03.18 ID:N8Hh+kzsO

そして、病室へ着き…

千歌ママ「あなた!」

美渡「父さん!」

志満「お父さん!」

千歌「お父さ〜ん!」

医師「高海さん!ご家族が来ましたよ!分かりますか!」

千歌パパ「…」パチッ

美渡「父さん…!」ギュッ

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:48:36.49 ID:N8Hh+kzsO

千歌パパ「…ぁ」ジッ

千歌ママ「あなた…」

千歌パパ「……ぁ」ジッ

志満「お、お父さん…」グスッ

千歌パパ「………ぁ」ジッ

千歌「やだ〜!やだ〜!」ボロボロ

千歌パパ「…」ギュッ

美渡「父さん…」

千歌パパ「…ぁぁあああ!!」

美渡「と、とうさ…………あ」

千歌パパ「…」

美渡「と、父さん?父さん!ねえ!」

千歌パパ「…」

医師「…」

医師「………ご臨終です」

110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:49:19.18 ID:N8Hh+kzsO

医師「高海さん、よく頑張りました」ペコッ

千歌ママ「あなた…」サワッ

千歌ママ「苦しかったね?痛かったね?」グスッ

千歌ママ「いっぱい…いっぱい頑張ったね?」

千歌ママ「お休みなさい…」ニコッ

志満「お父さん…おとうさん…」グスッ

千歌「なんでそれとるのー!それないとおとうさんいきできないのー!やめてー!」ボロボロ

看護士「ごめんね…ごめんぬ……」ウルッ

美渡「…」

美渡「バカおやじぃ…なんで今日なんだよ…」

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:49:54.30 ID:N8Hh+kzsO

その日、父さんは気を失っていたのに
私たちが来て目を覚まし
一人一人と目を合わせたあと
唸り声をあげて、息を引き取った…。

『1』月『17』日

『17』羽の折り鶴を纏めた『1』本の糸は
ウチに帰ったら切れていた。
ほんとに逝ってしまったんだと実感した。
そして、私はこの夜経験した
不思議な出来事を…
もう10年近くも経ってるのに覚えている
『夢』の話を二人に話した。

112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:52:08.69 ID:N8Hh+kzsO

和室

美渡「…」

千歌パパ「…」

美渡「寝てるみたいなのにな…」

美渡「…」ゴロン

美渡「『約束』守るから…。絶対に…」

美渡「さすがにここじゃさみーから自分の部屋で寝るな?お休みなさい、父さん…」


そう言って父さんを寝かせてある部屋を
後にして私は自分の部屋に戻り目を閉じた。
それから、私はその『夢』を見る…。

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:52:35.07 ID:N8Hh+kzsO

─────

美渡『ん?』ギュー

千歌パパ『…』ニッ

美渡『父さん!』ニッ


そこは周りがユリの花で囲まれた
長い長い一本の道。
私たちは手を繋いでしゃべらずに
歩き続けていた。
私はずっと笑顔で父さんも笑ってた。

どれくらい歩き続けていただろう。
急に父さんが止まった。


千歌パパ『…』ピタッ

美渡『父さん?』

千歌パパ『ここまでで良いよ、ありがとう』

美渡『え?』

「美渡〜?」

美渡『母さん?』クルッ

美渡『あれ?』


母さんの声に振り返り
また前を見た時、もう父さんはいなくなり…

────────
────
──

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:53:06.00 ID:N8Hh+kzsO

美渡「わっ!?」ガバッ

千歌ママ「起きた!何回も呼んだのに…」

美渡「あれ?あれ?」キョロキョロ

千歌ママ「親戚の皆さん来たからご挨拶してきて?懐かしい人たちいっぱいだけど恥ずかしがらずにね?」

美渡「う、うん。分かった…」

美渡「…」ジッ

美渡「えへへ♪やっぱいたんだ…」ニッ

115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:53:37.70 ID:N8Hh+kzsO

さっきまで繋いでいた右手を見て
思わず笑ってしまって
悲しいということを感じなくなった。
お別れは『笑顔』で…。
そう決めた。
だから、その後の葬儀や納骨も泣かなかった。
強いねって言われた。
違う。父さんはいる。いるんだ。
今も強く思ってる。
だから、私は今強くいられる。

116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:55:28.55 ID:N8Hh+kzsO

ーーーーー

ザザーン…

千歌ママ「そうだったんだ…」ニコッ

志満「今まで秘密にしてたなんて…ズルい!」

美渡「まあ要するに父さんは一番私を信じてくれてたってことだよ!」ニカッ

千歌ママ「むーっ!だったら私だってその時…」

志満「私も…!」

美渡「まあまあ…!とにかくやっぱ母さんや父さんは…親ってすげーやって思ってさ!」

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:56:07.52 ID:N8Hh+kzsO

志満「千歌ちゃんの敵になったのは父さんの代わり?」

美渡「それもあるけど…えと」チラッ

千歌ママ「ん?」

美渡「母さんのため…。もういっぱい苦しんだんだ。私が親になれなくても千歌の反抗する対象にはなれるしさ」

千歌ママ「嬉しいこと言ってくれちゃって!」

美渡「言う気はなかったんだけどなぁ…//」

千歌ママ「ありがとね、美渡」ニコッ

美渡「う、うん…」

志満「これからもお父さんと一緒に頑張ろう?」

美渡「ああ!」ニッ

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:56:34.95 ID:N8Hh+kzsO

成長した私が決めたのは
千歌を守ること。
なら味方になるべきって思われるだろうけど
あの子は弱い。強くならなきゃならない。
千歌自体、父さんが亡くなったことに対し
どう思っているかは分からないが
小さい時に訳も分からずに
父さんがいなくなったって現実を
突きつけられた。
父さんがいないことを理由に
いじめられもした。

119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:57:41.15 ID:N8Hh+kzsO

千歌『どうしてお父さんいなくなっちゃったの?』

言われた時は何も言えず
抱き締めることしか出来なかった。
それからだ。
父さんという意識を減らすために
私が敵になったのは。
辛く当たるくらいしか出来なかった。
けど父さんは私に対して
向き合おうとしてたのに私は目を背けた。
そんな父さんがしてきた苦労に
比べればどうってことない。
私は、だから千歌の敵であり続けるんだ。

120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/21(水) 23:58:15.90 ID:N8Hh+kzsO

母さんや志満と色んな昔話をして
改めて千歌のために演じようと
気を引き締めた。

次の日、いつも通りに千歌は
私を睨み付けて学校に行く。
しばらくしたら、また喧嘩する。
それを繰り返していくのだ。

そして、明日はAqoursのミニライブ。
ちょっとは応援してやろうかな?
にしし。

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:02:03.74 ID:THmcfD2JO

Aqoursミニライブ会場

千歌「はぁ…はぁ…」

曜「千歌ちゃん大丈夫?」

千歌「うん、大丈夫…。後はアンコールだけだもん。やり遂げるよ、最後まで」

果南「千歌…」

千歌「(それに今日は美渡姉もいた。私がやれば出来るって証明しなきゃ。ちゃんと私だって成長してるんだって)」

千歌「さあみんな!精一杯輝こう!」

千歌「Aqours!」

全員「サーンシャイン!」

122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:03:42.51 ID:THmcfD2JO
〜♪

千歌『光になろう〜未来を照らしたい〜♪』

千歌『今はもう〜迷わない〜♪』



志満「なんか千歌ちゃん気合い入ってるね!」

美渡「あ、ああ…」

美渡「(なんだろう、千歌のヤツ無理してないか?)」




美渡「なっ!?」

志満「千歌ちゃん!?」

123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:04:35.01 ID:THmcfD2JO
>>122ミス
貼り直します。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:05:30.43 ID:THmcfD2JO
〜♪

千歌『光になろう〜未来を照らしたい〜♪』

千歌『今はもう〜迷わない〜♪』



志満「なんか千歌ちゃん気合い入ってるね!」

美渡「あ、ああ…」

美渡「(なんだろう、千歌のヤツ無理してないか?)」



千歌「(後はみんなの所に戻ってラスサビで終わり…)」

千歌「(あれ?なんかおかしいな?足に力はいらない…あれ?意識が…)」グラッ




美渡「なっ!?」

志満「千歌ちゃん!?」

125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:06:11.61 ID:THmcfD2JO

曜「ふ〜ねが…千歌ちゃん!?」ビクッ

果南「やば…間に合え!」ダッ




千歌「(この高さを頭から落ちたら…)」ガクッ

千歌「(ダメだ、力入んない…)」フワッ

126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:07:30.45 ID:THmcfD2JO

美渡「千歌ぁ!」

志満「ダメぇ…!」

美渡「(千歌は私が守らなきゃいけないのに!私が…私が!)」


『じゃ、貸し1つだ。美渡』ニッ


美渡「えっ…」

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:08:23.02 ID:THmcfD2JO

千歌「(無理しなきゃ良かったな…ごめん美渡姉。ごめん、みんな。リーダー失格だよ)」


『またでかくなったな?千歌!』ニッ


千歌「(ふぇ?)」

ドサッ!

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:09:09.05 ID:THmcfD2JO

きゃあああああ!おいおい!千歌ちゃん!?

果南「う、嘘だ…」ガクッ

曜「千歌ちゃん!」ダッ

ダイヤ「わたくしたちも!」タッ



志満「どうしよう…どうしよう!」アセアセ

美渡「………父さん?」ボソッ

志満「え?」

美渡「まあ今はいいや!とりあえず…」スゥ

美渡「どけええええええええええ!!!」クワッ

ザワザワ…

美渡「よし!行くぞ、志満!」

志満「う、うん…!」

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:12:13.61 ID:THmcfD2JO

曜「千歌ちゃん!千歌ちゃん!!」ユサユサ

梨子「曜ちゃん!落ち着いて!頭を打ってるかもしれないから安静に…」

曜「でも…でもぉ……!」グスッ

果南「千歌!分かる?千歌!!」

美渡「曜!どけ!」

曜「美渡さん…」

美渡「千歌…!千歌…!」ギュッ

志満「千歌ちゃん…!」

美渡「(父さん…!)」

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:12:39.19 ID:THmcfD2JO


「………ぇ」

美渡「あ…」


131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:13:18.83 ID:THmcfD2JO

千歌「……とね…」

美渡「千歌ぁ…」ギュー

千歌「ごめ…みと……ねぇ」ウルッ

千歌「わた…し………わ……たし」ウルウルッ

美渡「『バカ』千歌…バカちかぁ…」グスッ

志満「良かった…良かった…!」グスッ

132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:14:17.95 ID:THmcfD2JO

ダイヤ「ふぅ…。皆さん!ライブは中止させます!救急車を!」

「もう、呼んだぞ〜!」「千歌ちゃ〜ん!」

花丸「みんな…」ウルッ

ルビィ「ありがと…」ウルッ

善子「よし…!さ!ここは曜と果南に任せてリトルデーモンたちを誘導するわよ!」

ルビまる「うん…!」

133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:18:06.84 ID:THmcfD2JO

鞠莉「善子!私たちは南口へ誘導するから、そっちは北をお願い!ダイヤ、梨子!行くわよ!」

ダイヤ「分かりました!曜さん、果南さん!美渡さん!志満さん!千歌さんを宜しくお願いします!」

果南「任せるね…!」

梨子「曜ちゃん!行ってくるよ!」

曜「ぐすっ…うん、任せて!」フキフキ

134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:18:42.95 ID:THmcfD2JO

千歌「あは…ライブ……だいなし…だ」

美渡「千歌、どっか痛いとこないか?」

千歌「今は…からだが痺れて……わかんない」

美渡「そうか…んしょっと、こっちのが楽か?」

千歌「あ…膝枕……えへ…久しぶりだ」

美渡「心配させやがって…」ウルッ

果南「あ!救急車来たみたい!」

曜「私、場所知らせに行く!」タッ

志満「ごめんね、曜ちゃん!」

135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:19:44.38 ID:THmcfD2JO

千歌「美渡…姉?」

美渡「なんだ?」

千歌「落ちる……瞬間ね…懐かしい声が………聞こえた気が…したの。優しい…大好きだった……声が」ニッ

美渡「…!」

千歌「助けて……くれたのかな?」ソラミアゲ

美渡「…そうかもな!」ソラミアゲ

美渡「ったく、貸しがでかすぎるよ、バカ親父…」

曜「連れてきたよ〜!」

136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:20:24.14 ID:THmcfD2JO

その後救急車で病室に運ばれ
検査を受けた千歌だったが
腰の打撲だけでそれ以外に目立った怪我はなく
脳にも異常は一切なかった。
状況を説明すると医師は
「その高さから落ちてこの外傷はあり得ない」
と答えた。
実際2m前後から頭側から落ちていたが
気付いた時には千歌は倒れていた。
曜たちも言っていたが
それだけで済む音ではなかったらしい。
骨を打ち付けたはずなのに
骨折はおろかヒビすらいってなかった。
まさに『奇跡』としか言いようがない。

137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:21:03.05 ID:THmcfD2JO

だが、『奇跡』ではないのかもしれない。
千歌も聞いていたようだ。
あの懐かしい声を。
話を聞いて駆けつけた母さんに言うと
間違いなく父さんが助けたんだと
笑顔で答えた。

そして、千歌は検査入院をして
すぐに退院した。

138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:21:41.64 ID:THmcfD2JO

帰って来てすぐにたくさん怒った。
これでもかってくらい。
でも、千歌は私の言葉にちゃんと耳を傾け
最後に…


千歌「美渡姉…。ほんとにごめんなさい」ペコッ
 

しっかりと謝ってきた。
私はなぜか涙が出てきた。
理由は分からない。
でも目の前に妹が確かにいるということに
とてつもなく嬉しかったんだと思う。
たぶん、あの日屋上で母さんが
話した後に胸のつっかえが取れた感覚。
千歌への想いが急に溢れ出した。

139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:25:13.00 ID:THmcfD2JO

美渡「バカ…バカ千歌…」ガクッ

千歌「美渡姉!?」タタッ

美渡「ごめん…ごめんよ……千歌に辛く当たってばっかで嫌な姉ちゃんで…。千歌に強くなって欲しくて…勝手に決めて勝手に千歌を苦しめた…」グスッ

美渡「結果があの様だ…。リーダー失格とか、千歌をそう追い詰めたのは間違いなく…私のせいだ。ごめん…ごめん…」

美渡「別に許さなくていい…嫌ってもいい…。千歌を散々苦しめたんだ…。千歌に任せるよ…」

千歌「…」

千歌「………知ってたよ?」ニコッ

美渡「え…?」

140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:25:44.32 ID:THmcfD2JO

千歌「知ってたよ。美渡姉が私のために怒ってくれてたこと。志満姉よりお母さんより私を見てくれてたこと」

千歌「私が初めてスクールアイドルやるって言った時も、ファーストライブの時も…。真っ向からできない!って否定してさ…」

千歌「でも、あのライブの時、美渡姉はなんだかんだ言って私のために行動してくれてたって志満姉に聞いたんだ」

美渡「あいつ…」

千歌「美渡姉にはいっぱい泣かされた。いっぱい悩まされた。でも、その度に見返してやろうって努力した。今回のはダメダメだったけどさ…」

千歌「私は美渡姉が大好き。どれだけ美渡姉に嫌われていたとしても、絶対に嫌いになんかなってやるもんかって変な対抗心燃やしてさ」ニッ

美渡「なんだよ…それ…」

141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:26:18.89 ID:THmcfD2JO

千歌「えへへ♪」

美渡「はは…ほんとのバカは………」

美渡「私だったって事か…」

千歌「美渡姉!」ギュー

美渡「千歌!?」ビクッ

千歌「今までそしてこれからもありがとう!」

美渡「…!」

千歌「大好き!」ニコッ

美渡「バーカ…」グスッ

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:26:49.93 ID:THmcfD2JO

その夜、千歌は私の部屋に来て
一緒に寝ようって枕を持って来た。
二人で一緒にベッドに入って。
何年ぶりだろうな…照れ臭かった。
千歌と最近の話をした後、
懐かしい声は誰なのかという話になった。
ははっ。父さん?千歌はどうやら
父さんのことちゃんと覚えてないみたいだぜ?
寂しいって?心配するなよ!
借りは今から返すからさ!
なんたって今日は…。


美渡「ちょっと昔話をするか!寝んなよ!」

千歌「え?なになに?」ワクワク

143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:27:21.07 ID:THmcfD2JO

今日は『父の日』。
1年に1回、父親に感謝する日。

私は大好きで大嫌いだった親父の話を
千歌に聞かせてやった。

棚の上に置いてある家族写真。
父さんはいつもより笑ってるように見えた。

144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:27:51.29 ID:THmcfD2JO
おしまい
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/22(木) 00:29:47.12 ID:duJyZcu/0
乙です!
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 00:30:48.61 ID:nIM5GTZE0
凄く面白かった!
更新が待ちきれなくてずっと連打してたよ
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 00:33:19.13 ID:THmcfD2JO
過去作です。

梨子「歩こう、一緒に」
http://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1497106366/

ダイヤ「エロ本入ったかばんを誤って貸したらそのまま修学旅行行った」
http://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1496149071/

読んでくれた方ありがとうございました。
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 00:34:00.72 ID:4PwGaXeo0
ぶっちゃけオリジナルでやれば良かったと思うよ
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 00:34:32.68 ID:Zau3qZSO0
微妙
過去作からしてつまらなそう
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 00:56:55.95 ID:xox1NrXLo
おつなり
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 06:22:31.32 ID:eXqSBnfSO
>>27
ツンデレワロタ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/06/10(水) 00:04:54.61 ID:wi/fKEgT0
71.19 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)