【俺ガイルss 由比ヶ浜結衣誕生日】二人の速度

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/16(金) 22:17:53.09 ID:NRLhzd33o
注意点

・地の文たくさんあります
・another→去年書いた「雨に咲く花」の延長線上の話ですが読んでなくても平気だと思います
・後半いちゃこら成分マシマシです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1497619072
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/16(金) 22:24:00.70 ID:NRLhzd33o

 くぁ、と出そうになる欠伸を噛み[ピーーー]と目尻から涙が滲んだ。

 教壇に立つ白髪混じりの教授の声がいつものごとく子守唄に聞こえる。この講義の受講もじきに二桁を数えようとしているが、初めて受けてからこれまで眠くならなかった試しがない。

 それは当然俺だけに限った話ではなく、首のマッサージを兼ねて右に目を向けると、うつらうつらしている数人の学生たちの姿が映った。声量に乏しく抑揚がなさすぎるのが原因だと思うが、なんとかしようとは思わないんだろうか。思わないんだろうな。だって聞かなくて損するのは俺たち学生だけだし。

 そう思いはするので損をしないように耳を傾けてはみるが、眠い。あまり興味がない内容の講義ということも眠気に拍車をかける。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:24:46.01 ID:NRLhzd33o
しまった……
やり直し
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:25:12.28 ID:NRLhzd33o

 くぁ、と出そうになる欠伸を噛み[ピーーー]と目尻から涙が滲んだ。

 教壇に立つ白髪混じりの教授の声がいつものごとく子守唄に聞こえる。この講義の受講もじきに二桁を数えようとしているが、初めて受けてからこれまで眠くならなかった試しがない。

 それは当然俺だけに限った話ではなく、首のマッサージを兼ねて右に目を向けると、うつらうつらしている数人の学生たちの姿が映った。声量に乏しく抑揚がなさすぎるのが原因だと思うが、なんとかしようとは思わないんだろうか。思わないんだろうな。だって聞かなくて損するのは俺たち学生だけだし。

 そう思いはするので損をしないように耳を傾けてはみるが、眠い。あまり興味がない内容の講義ということも眠気に拍車をかける。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:26:00.51 ID:NRLhzd33o
ウワワーまたおかしなことに!
>>5からすたーとです!
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:26:27.37 ID:NRLhzd33o
ちがう!
>>7から開始!
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:29:45.61 ID:NRLhzd33o

 くぁ、と出そうになる欠伸を噛み殺すと目尻から涙が滲んだ。

 教壇に立つ白髪混じりの教授の声がいつものごとく子守唄に聞こえる。この講義の受講もじきに二桁を数えようとしているが、初めて受けてからこれまで眠くならなかった試しがない。

 それは当然俺だけに限った話ではなく、首のマッサージを兼ねて右に目を向けると、うつらうつらしている数人の学生たちの姿が映った。声量に乏しく抑揚がなさすぎるのが原因だと思うが、なんとかしようとは思わないんだろうか。思わないんだろうな。だって聞かなくて損するのは俺たち学生だけだし。

 そう思いはするので損をしないように耳を傾けてはみるが、眠い。あまり興味がない内容の講義ということも眠気に拍車をかける。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:31:27.31 ID:NRLhzd33o
 なんとなく耳に入ってくるのは西洋古代哲学。あー、うん。知ってる知ってる。無知の知を知れとかでしょ。なんでもは知らないわよ、知ってることだけって名台詞を知らないのかよ。

 くだらない雑念を振り払い、教授の発した重要らしき固有名詞を手元のルーズリーフに書き込む。一部学生はタブレット端末やノートPCを駆使しているようだが、俺はアナログ派のままだった。

 特に不便とは思わない。俺は覚えるなら「書く」という行為が必要と考えているし、講義後に板書の写真を撮るならスマホで事足りるからだ。

 書き終えてから顔を上げようとしたところで、左側からにゅっと細い手が伸びてきた。その手は俺の手元にあるルーズリーフの隅に文字を書き込んでいく。

『ひまー、ねむくなるねー』
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:33:04.87 ID:NRLhzd33o
 丸っこくて柔らかい、女の子の文字。

 ぼっち時代からの習性で、座席の指定のない大学の講義においても俺は扉からほど近い前列を指定席としていた。そして、俺の左隣を指定席とする奇特な子が一人。

 もう見慣れた可愛い文字に返答をすべく、その文字の横にさっと書き込んだ。

『ちゃんと講義聴きなさいよ』

 うとうとしていた俺が言えたことではないが。

 こうした筆談はほとんどの講義で必ず行われていた。講義後、復習のために見直すと筆談のやりとりも必然目に入るため少しこそばゆくなる。

 次の返答は早かった。

『ヒッキーもねむそうだったじゃん。あくびみてたよー』
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:33:52.35 ID:NRLhzd33o
 顔に熱が込み上げた。隠そうとした欠伸がバレていたからではなく、彼女が講義中にも俺を見ていたということを意識したからだ。

『ちゃんと前向きなさい』

 身を捩りたくなるようなムズ痒さを堪え、そう書きなぐった。それから、目だけを動かして左にいる人物の顔を見た。

『はぁい』

 その返事は文字ではなく、口の動きで伝えられた。

 注意されたにも関わらずどこか嬉しそうな、由比ヶ浜結衣の笑顔とともに。



 この春、千葉に小さな奇跡が舞い降りた。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:36:39.21 ID:NRLhzd33o
 合格発表を見た瞬間は「奇跡だ」なんて思わなかった。ただ、実を結んだ、報われたのだと思った。俺は由比ヶ浜のしてきた努力を目の当たりにしていたから。

 目標ができるとここまで変わるものなのかと思うほど、彼女は素直に、誠実に、真面目に取り組み、一歩一歩着実に学力を上げていった。生来のものなのか朗らかな性格自体は変わりなかったが、知らなかった由比ヶ浜の新たな一面を見て、俺は彼女への好意をまた確かなものにした。

 ただそれでも時間が足りず、合格するかどうかは最後までまったくわからなかった。彼女のスタートラインは俺とは違っていた。自分のせいだからと愚痴を言うことなく受け入れ、気丈に振る舞ってはいたが、俺にできることは気休めの励ましだけだった。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:38:19.18 ID:NRLhzd33o
 そして試験を終え、不安な時をやり過ごし、二人で合格発表を見た。俺の番号がまず見つかり、感じたのは落ちたときのことを深く考えないようにしていたがゆえの安堵。

 続き、由比ヶ浜の番号を見つけた。無意識に拳を強く握っていた。自分のことよりも素直に喜びを感じ、先に見ていた自分の合格では微塵も感じなかった涙が溢れた。もちろん由比ヶ浜もくしゃくしゃなになって泣きじゃくっていたのでバレていないと思うが。

 だが今なら言える。由比ヶ浜がこの大学へ合格したのはやはり奇跡だったのだと。

 やればできる子だと信じて疑っていなかったし、事実その通りではあったのだが、試験までに学んだすべては入学後に失われてしまったようだ。あり得ねぇだろ。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:39:12.79 ID:NRLhzd33o
 これを要領が良いで片付けてしまっていいものかどうか非常に疑わしい。もはや記憶喪失を疑いたくなるレベル。

 今では俺の知る由比ヶ浜結衣の由比ヶ浜結衣らしさを存分に発揮している。要するにだいぶアホの子である。単位取らないと卒業できないんだぞわかってるのかお前と何度か言ってはいるが、不安だ。

 とまあ、とりあえずは順風満帆に見えないこともない新生活を送っているわけだが、環境や関係が変われば新たな立ち居振る舞いが必要となるわけで。それに伴う問題というか不安というか、俺のヘタレ加減によって新たな悩みを抱えてもいた。

 ただそれは昔に比べたらなんとも贅沢なもので、些事と言われればその通りかもしれない。だが俺にとっては割と切実な問題であり、されど初めて対面する問題の解決法を俺が知っているはずもなく、打開するきっかけを探し求めているのだった。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:40:17.95 ID:NRLhzd33o
 話は少し前に遡る。



 立ち止まったり後戻りしたり、長い時間と紆余曲折を経てようやく付き合うことになった、去年の由比ヶ浜の誕生日。

 そこで生まれた大学合格という目標のため、二人とも受験勉強に忙殺されることになった。互いに自制していたと言ってもいい。

 メールや電話でちょいちょいそれらしい雰囲気になったことはあれど、実際に会ってやったことと言えば一緒に勉強をしてたまに手が触れて恥ずかしがった程度。あとは合格発表時に勢い余って抱き合ったぐらいですかね……。ちなみに感触は何一つ覚えていない。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 22:41:26.75 ID:NRLhzd33o
 その間、由比ヶ浜は由比ヶ浜でスイッチが切り替わったように真面目に勉強に取り組んでいて、恋人らしい振る舞いや素振りはおくびにも出さなかった。

 それだけしないといけないほど切羽詰まった状態でのスタートだったので疑問には思わなかったが、今にして思えば見知った人間ばかりの総武高校で、俺たちとは切り離すことのできない奉仕部がまだあったというのも影響していたのかもしれない。

 とにかく、恋人となってから一般的な恋人付き合い、触れ合い的なものが何もないま季節を越えてきた。なんなら付き合う前のほうがまだ接触があったんじゃないかと思うほどに。

 その辺で悶々としたことがないと言えば嘘になるが、そこそこ満足してもいた。目を逸らすことは得意だし、二人で同じ目標に向けて並び歩けているという実感があったからだ。いくら不甲斐ない俺でも、いつかは自然と、という根拠のない楽観もあった。
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