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【ミリマス】ライアー・ルージュ
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1 :
◆SESAXlhwuI
[saga]:2017/06/16(金) 19:07:42.88 ID:yFIcZ1s10
皆さんこんばんわ
先に予告しておきます、いつもより読みづらいです
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1497607662
2 :
◆SESAXlhwuI
[saga]:2017/06/16(金) 19:08:35.13 ID:yFIcZ1s10
――あの人の視線を、思い出せない。
学校がお休みの土曜日、私は決まって早めに事務所に行く。朝早いせいか、町も眠ったようにしんとしている。我ながら早く出過ぎたかな、と思わないでもなかったけれど……それでも、早めに行くことをやめようとは思わなかった。
「途中で引き返すのも面倒だし」
そんな風に自分に言い訳しつつ、先を急ぐ。言い訳するような事を自覚すると、心なしか足が速くなった気がした。
しばらく町を行くと、ようやくお目当ての場所に着く。765プロ事務所。劇場と併設されたとはいえ、まだまだ小さいと思うのだが……これは、私たちの頑張りが足りないせいだろうか。少しばかり申し訳ない気持ちを感じつつ、その中に入った。
いつもの喧騒が嘘のような静けさ。まだ明かりも全部ついているわけじゃない通路を進む。カツンと音を立てる靴が、何故かシンデレラが履いているガラスの靴のように思えた――この年にもなって、絵本の中のお姫様に憧れてるのって、おかしいのかな。
呆れるような自分の思考にため息を漏らしつつ、目当ての部屋の前までやってきた。
――胸が苦しい。何故だろう。
鼓動を抑えつけるために、一度大きく深呼吸して、ノックする。
「失礼します」
返事を待たないままに、私は静かにドアを開けた。
3 :
◆SESAXlhwuI
[saga]:2017/06/16(金) 19:09:24.45 ID:yFIcZ1s10
―――――
「おはよう、志保。今日も相変わらずだな」
「愛想がないとでも言いたいんですか」
「まさか。だが、そう思うなら改善してみるのも手じゃないか?例えばほら、この前の小学生メイドとかみたいに――」
「お断りします」
内心を隠して、そっけなく応対する。応対された当人は、諦めたように手を開いて天を仰いでいた。少し、強く言い過ぎただろうか。少し謝罪の気持ちも込めて話に乗ってみる事にする。
「……プロデューサーさんは、小学生メイドの演技が好きだったんですか?」
「勿論」
即答だった。唇を噛んで、顔がにやけてしまいそうになるのを抑える。どうしてだろうか、私はこんなに演技が下手ではなかったはずなのに。ここまで表情を隠すのがつらいとは思わなかった。
4 :
◆SESAXlhwuI
[saga]:2017/06/16(金) 19:10:05.09 ID:yFIcZ1s10
対して、プロデューサーはといえば回答し終えたといわんばかりに、机に向き直っていた。カタカタとキーボードを叩いている。まだ始業の時間ではないはずなのに、何をしているのだろう。何故だか、ふつふつと興味が沸いてきた。
「何してるんですか、プロデューサーさん」
「ああ、これか?アイドル皆のデータベース……的な奴かな」
「……亜利沙さんの真似でも始めたんですか?」
「なんで微妙に刺々しいんだよ……お前たちの長所とか短所とかのデータまとめてるだけだよ。大事なんだぞ?これが外に漏れてみろ、オーディションとか勝てなくなってもおかしくないんだからな」
少し拗ねたように吐き捨てるプロデューサー。子供っぽく唇を尖らせながらも、手を休める事はない。何かをひたすらに打ち込んでいく。そんな彼の表情は、カッコイイ社会人……ではなく。秘密基地を見せびらかしたけれどあまり驚いてもらえなくて拗ねる子供の表情だった。
――いつもはカッコいいのに、どうしてたまに子供っぽくなるんだろう。
クスリ、と笑ったのが、目の前に彼にばれていなかったと信じたい。
5 :
◆SESAXlhwuI
[saga]:2017/06/16(金) 19:11:19.33 ID:yFIcZ1s10
「おはようございまーす!」
隔絶された私達だけの空間が、切り替わる。物音がした方を見ると、リボン姿がよく似合う大先輩がトコトコと歩いてくるところだった。
「おはよー、志保ちゃん!」
「おはようございます、春香さん」
春香さんはにこやかに笑う。不思議だ。この人の笑顔は、どうしてこんなにも人を引き付けるのだろう。私にも少しくらい、そんな才能が有ってくれればよかったのに。
「お、春香!おはよう、今日は一番乗りじゃなかったな!」
「志保ちゃんが早かったんですよぅ……プロデューサーさん、おはようございます!」
元気な挨拶を受けて、彼は満足そうに微笑んでおはようと返した。にこやかに笑い合う二人。それを見ていると、私の中で何かが凍った。胸の中で嫌なものが蠢いてるような感覚。そんな違和感に嫌悪感を覚える。
6 :
◆SESAXlhwuI
[saga]:2017/06/16(金) 19:11:55.95 ID:yFIcZ1s10
でも、絶対に悟られたくない。だから、なるべく自然な笑顔を装って――
「……ん?どうした志保」
――そう思っていても、彼は見抜いてしまうらしい。
「別に、何でもないですよ。まったく、プロデューサーさんが心配しすぎなんじゃないですか」
「そうか?困ったことがあったらきちんと俺に頼るんだぞ?」
「はい、ありがとうございます。プロデューサーさん」
勿論、こんな程度では彼をごまかす事なんて出来ないだろう。けれど、私には、そう返すのがやっとだった。
悶々と思考をしていると、
「ハニー!おはよーなのー!」
扉が勢いよく開く音共に、黄色い何かが彼へと突っ込んでいった。彼は、それをかわすような仕草をするでもなく、ただ受け止めるように両手を広げる。それを分かっていたかのように、彼女は勢いよく彼に飛びついた。
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