【モバマス×龍虎の拳外伝】不破・茜「うおおおおおおおおお!!」

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336 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 07:28:02.16 ID:q4IL0fG90
夜中

リョウ「……ん」
パチ

リョウ(なんか目が覚めちまった……小便でも行くか)
ノソノソ

リョウ「……ん?」

リョウ「……!」

リョウ(雲が消えて、星満開じゃねえか)

リョウ(あいつらは……もう寝ちまってるか。まあしょうがないか)
337 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 07:32:46.81 ID:q4IL0fG90
リョウ(ん?あそこに立ってんのは……)

リョウ「アーニャ」

アナスタシア「アー、ドーブルイ ヴェーチル、こんばんわ、ですね、リョウプロデューサー」

リョウ「どうしたんだこんな時間に……って星を見てたんだよな」


アナスタシア「ダー、ズヴェズダ……星が見えないかと思って、ずっと空見てました。そうしたら、さっき、見えてきましたね」
338 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 07:36:41.35 ID:q4IL0fG90
リョウ「ああ、夕食後に星が見えてたら全員で天体観測でもやろうと思ってたんだが……曇ってたからな。それにしても思ってたよりずっと星がきれいだな。ここにして正解だったか」

アナスタシア「……はい、こっちにきて、こんなにたくさんのズヴェズダ、初めて見ました」

リョウ「……やっぱり故郷が恋しいか?」

アナスタシア「……ふるさと、パパもママもいます。さみしくなることも、あります」

アナスタシア「でも、事務所のみんなはとても優しくて、温かいです」
339 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 07:48:47.93 ID:q4IL0fG90
アナスタシア「……星を見てたら、昔の事を思い出しました。ヴァスパミナーミエ……孤独だった頃のこと」

アナスタシア「プロデューサー、スカウトの時に、小さい頃のお話、してくれましたね?」

リョウ「ああ」

アナスタシア「私の一番古い記憶……小さい、日本にいた頃は……銀髪だから、お人形みたいって言われました」

リョウ「……」
340 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 07:51:29.06 ID:q4IL0fG90
アナスタシア「それからロシアに住んだ頃には……イポンカ……日本人って、呼ばれたかな」

アナスタシア「そしてロシアから帰ってきたときは、ロシアの子。いつも、どこでも、私は違う何かでしたね、ずっと……」

リョウ「……」

アナスタシア「日本では、よく冷たそうな人って、言われてました。だから、なるべくほほえむようにしていました」

リョウ(そうか。……この娘がほほ笑むのは、他者に受け入れてもらうための手段だった。しかし、同時に他者との間に引いた境界線が、あの笑み)
341 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 07:52:51.29 ID:q4IL0fG90
リョウ「……君は、諦めたのか?他者に自分を理解してもらうことを」

アナスタシア「……そうだったかも、しれません。寂しい、と思う顔をすると、私きっと怖い顔になってました」

アナスタシア「自分の、本当の気持ちを出すと、人が離れていく……そう思っていました」

アナスタシア「……でもここのみんなは違います。ありのままのアーニャを、受け入れてくれる気がします」
342 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 07:54:58.31 ID:q4IL0fG90
アナスタシア「リョウプロデューサー、今日の料理、はじめからボルシシを作らせる気で、いましたね?」

リョウ「……!なんのことだ?」

アナスタシア「材料の、ビーツ……日本ではあまり馴染みありません。なかなか売ってなくて……探すの、大変だったと思います」

アナスタシア「それに、ボルシシの作り方なにもしゃべってないのに、必要な道具の使い方、すぐ教えてくれました」
343 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 07:57:32.83 ID:q4IL0fG90
リョウ「……美波と相談してた。そもそも今回のキャンプもそうだが……」

アナスタシア「……ふふ、プロデューサーはニィウクリュージェ……不器用、ですね」

リョウ「む……」

アナスタシア「だけど、優しい……あったかい、です」




アナスタシア「プロデューサー……私もこんなズヴェズダ……星に、なれますか?」

リョウ「……君は自分を変えるための一歩を、勇気を持って踏み出せたんだ」

リョウ「変わる事を、変化を恐れない限り、何にだってなれるさ。星にだって、太陽にだってな」

アナスタシア「ダー……私、もっと色んなモノを見たい……色んな景色が見たい、です」
344 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 08:00:59.39 ID:q4IL0fG90





ロバート「おう、リョウ、最近のアーニャちゃん表情が豊かになったな」

リョウ「ああ、キャンプで大分打ち解けたな。ああいう風に表情を顔に出すのが本来の彼女なのかもしれない」

ロバート「いや〜、最初に来たときはミステリアスクールビューティー路線で行こうと思ってたけど、あんだけ色んな表情が出せるなら方向性にも幅が出るな」

リョウ「まだまだ、これからだ。本人次第でどんな方向にだって彼女は歩き出せるさ」
345 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 08:02:36.68 ID:q4IL0fG90
リョウ(彼女の心は雪のように真っ白だ。それは彼女の純粋さ故か、それとも今までの人生で心を染める機会がなかった故か)


リョウ(だから、これからだ。彼女が心を、自らをどんな色に染めていくのか。人は、心次第で何にでもなれる。龍にも、虎にも、そして悪魔にも)


リョウ(だから俺たちはその行く末を、見守る。見届ける義務がある)





外伝
北の大地から来た少女

346 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/05(水) 08:03:18.65 ID:q4IL0fG90
今日はここまで
あと短編ひとつで終わりの予定です。
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 08:26:21.47 ID:3g1+g70x0
アーニャの星の光りのように静かな話
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 21:37:47.48 ID:5cSdoe6A0
極限流で山という話題が出るとどうしてもリョウが巨大熊を倒すような話が連想してしまう。
そういやMOWで熊も門下生になってる臭いんだよなー
349 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:10:18.03 ID:H++MdoGr0
外伝
烈風の行く先


都内 カフェ

茄子「皆さん!お元気でしたか〜?」

つかさ「もちろんだろ。てかこのメンツ全員で集まるのも久しぶりじゃね?」

真奈美「そうだな。解散が発表された時以来だから……半年ぶりくらいか」

志希「あたしと真奈美さんはいっつも顔合わせてるけどね〜♪」
350 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:17:49.43 ID:H++MdoGr0
レナ「ああ、真奈美ちゃんと志希ちゃんはあの後美城に移ったんだっけ?どう?美城は?」

真奈美「業界最大手だけあってアイドルの数も含めて規模が大きいな。スタッフの数も多いし、アイドル活動だけに専念出来る環境がある」

つかさ「……まっ、アイドルやりつつ秘書やれだの衣装作れだのボイトレやれだのって方が異常なんだけどな」

志希「そう言うつかさちゃんは今もっと無茶してるって聞いてるよ?なんでも事務所立ち上げようとしてるんだってにゃ?」

つかさ「……まぁな。けどやっぱイチからはなかなか難しいよ」
351 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:21:58.84 ID:H++MdoGr0
つかさ「アタシが先に始めてる事業から拡張する感じで進めようとしてるんだけど、やっぱりなかなか人が集まらない。そうなると必然的にアタシがやらなきゃいけない事が増えるんだけど……やっぱり限界があるわ」

真奈美「……そう考えると、ギース・ハワード……あの男は人間性はともかく、やはりその能力は認める他ないな……」

つかさ「……確かにアイツは頭にくるけど天才だった。んで、アタシは天才じゃない。だからあがくんだよ。あがいて、もがいて……」

つかさ「……それでも……アタシは絶対やって見せる。でかい事務所作って、アタシら以上の……Reppu以上のアイドル育てて、目に見せてやるよ。アイツにさ」
352 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:25:51.77 ID:H++MdoGr0
茄子「……そうですね、つかさちゃんならきっと出来ますよ!」

つかさ「ていうかさ、そう言う自分とレナさんは今何してんだよ?ヨソに移ったって話も聞かないけどさ」

レナ「う〜ん、私は今自分探し中、かな……Reppuでの約1年が今までの人生でも濃すぎてね……」

茄子「え、え〜っと……わ、私も充電中です♪」

つかさ「ふ〜ん……まっ、どこかに移るにしても何か始めるにしても早い方が良いぞ?時間は小休憩も大事だけど、時間は待ってくれないからな?」

茄子「そ、そうですね……あはは」

レナ「……」
353 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:31:33.14 ID:H++MdoGr0
志希「それよりさ、つかさちゃん前会った時と違う香りがする〜♪香水変えた?」
ハスハス

つかさ「前会った時の香り覚えてんのかよ……けど、解かる?実はコレアタシがプロデュースしたフレグランスでさ……」

茄子「……」




夕方

つかさ「……っと、もうこんな時間か……そろそろ帰って仕事しないとな」

真奈美「そうだな、今日はこの辺りでお開きとしよう。とても有意義な時間が過ごせたよ」

志希「また集まろーね♪みんなの匂い嗅ぎたいし!」

レナ「そうね。次に会う時は何か報告出来る事を作っておくわ」

茄子「皆さん、今日はありがとうございました♪」
354 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:35:47.01 ID:H++MdoGr0


茄子「……」
スタスタ

レナ「茄子ちゃん……ちょっと待って」

茄子「あっ、レナさん。どうしました?」

レナ「いえ、もし良かったらウチの家で少し飲んでいかない?すぐ近くなんだけど、さっきは未成年もいたしね」

茄子「そうなんですね……けど私はお酒はそんなに……」
355 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:37:57.30 ID:H++MdoGr0
レナ「今無職なのは私と貴女だけだし、良いでしょ?もちろんお酒じゃなくてもいいし、無理にとは言わないけどね」

茄子「……そうですね、それでしたらお言葉に甘えさせてもらいます」


レナ宅

茄子「お邪魔します……わあ、大人っぽい素敵なお部屋ですね!」

レナ「ありがと。とりあえず居間に座ってて、何かつまめるものと飲み物出すから」


茄子「はい」

356 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:42:06.02 ID:H++MdoGr0
茄子「……」
キョロキョロ

茄子(あっ、Reppuのみんなで撮った写真……ハワードさんは……そっぽ向いてる)


レナ「お待たせ……ん?写真見てるの?」

茄子「あ、ごめんなさい、勝手に」

レナ「いいのよ。この写真撮る時……あの人、大概目立ちたがりのくせに写真には写りたがらなかったわね」
シュポン
357 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:46:13.87 ID:H++MdoGr0
茄子「そうですね……でも、最後は嫌々でしたけどちゃんと写真に入ってくれました」

レナ「……ねぇ茄子ちゃん。貴女さっきのカフェで……充電中って言ってたわよね。……はい、茄子ちゃんの分。けっこう良いワインよ」
スッ

茄子「ありがとうございます。……はい、そう言いました」

レナ「でも、その充電はちゃんと電源が入ってるかしら?コンセント抜けてるんじゃない?」

茄子「えっ?」
358 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:48:59.64 ID:H++MdoGr0
レナ「乾杯♪」
スッ
茄子「あっ、か、乾杯♪」
チン

レナ「……うん、いい味。茄子ちゃんは普段飲まないんだっけ?」

茄子「……はい。お正月の甘酒とかは好きなんですけどね」

レナ「あら、それなら日本酒とか用意しておけば良かったかしらね」
359 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 19:54:03.68 ID:H++MdoGr0
茄子「いえいえ、そんなお構いなく……それに、このワインも美味しいです。初めて飲みましたけど」

レナ「そう、それなら良かったわ」

レナ「……実は、私もなのよね」

茄子「えっ?」

レナ「自分探しなんて言ったけど、どこを探したって見つかるわけない。だって、答はもうわかってるんだもの」

レナ「あの人の事が気にかかって仕方ないのよね」

茄子「……!……はい」
360 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:00:22.84 ID:H++MdoGr0
レナ「私もそう……別にあの人が好きな訳じゃない。けど、曲がりなりにも一緒に仕事をして、結果も出して……その結末があの別れじゃあ、踏ん切りつけて新しいことも始められない」

茄子「……はい。私、あの人の本心の言葉が聞きたいです。最後に言っていた言葉……あれが本心だったとは思えないし……思いたくないです」

レナ「……茄子ちゃんはあの人の事どこまで知ってる?」

茄子「え?……海外から来た、青年実業家……だけど、それだけじゃない何かを持っている人……ですか」

レナ「まぁ概ねそれで合ってるんだけど、問題はその何かって部分よ。……まぁこれは私がアメリカにいた時聞いた噂だし真奈美ちゃんから聞いた話も混じるけど……」
361 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:06:49.68 ID:H++MdoGr0
茄子「……サウスタウン?」

レナ「そう。あの人はそこにある大きな裏組織に身を置いている……そして表に出せないような悪事にも手を染めている……という噂よ」

茄子「……確かにそう聞いてもあまり不思議はないですけど……でも……」

レナ「そう。私も実際にあの人と一緒に仕事をしてみて……噂ほど彼を悪い人だとは感じなかった。性格は意地悪だったし偉そうだし最悪だったけどね」

茄子「ちょ、ちょっと言い過ぎですよ……」
362 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:13:41.70 ID:H++MdoGr0
レナ「でも、だからこそ納得が行かないのよ。これが評判通りの男だったらさっさと忘れられるんだけど、そうじゃなかった。あなたもそうじゃない?茄子ちゃん」

茄子「……はい」

レナ「だからこそ、確かめる必要がある。じゃないと、私はいつまでたっても前に進めない」

茄子「……レナさん、もしかして……」

レナ「ええ。私はサウスタウンに飛ぶつもりよ。それであの人に会って……納得できる言葉をもらうか、ビンタの一発でもお見舞いしてあげる」
363 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:16:16.15 ID:H++MdoGr0
茄子「……レナさん。私も……一緒に行きます」

レナ「……こんな話をしておいてなんだけど、サウスタウンは危険な街よ?今は大分落ち着いているらしいけど、ギャング同士が抗争しているような街だもの」

茄子「……それでも、私はあの人に会いたい。でないと、私も一歩を踏み出せないから……」

レナ「……そう。だったら、準備が出来たらまた連絡を頂戴。準備って言うのは、言わなくても解かると思うけど……身辺整理とか、そういうものよ」

茄子「……はい」
364 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:18:03.92 ID:H++MdoGr0
空港

レナ「あ、来た来た。茄子ちゃん、こっちよ」

茄子「レナさん!お待たせしました」

レナ「一応確認しておくけど、ここに来たってことは……覚悟は出来てるということよね?」
365 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:20:16.97 ID:H++MdoGr0
茄子「はい。しっかり神社でお願いしてきました♪」

レナ「……まぁいいわ。行きましょう」

レナ「目指すは北アメリカ大陸の南東にある街……サウスタウンよ」



真奈美「……あれは?」
366 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:25:12.89 ID:H++MdoGr0
セントラルシティ
サウスタウンエアポート

レナ「……やっと着いたわね」

茄子「ここが……サウスタウン」

茄子(……あの人が、いる街)

レナ「ここは繁華街に近いみたい。そっちにまずは行ってみましょう」
367 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:30:53.12 ID:H++MdoGr0
繁華街

茄子「けっこう広い街なんですね」

レナ「サウスタウンはいくつかにエリアが別れているみたい」
ガサ

レナ「えっと……ここがサウスタウンの中心街のセントラルシティね」

レナ「で、港の方がサウスタウン・ベイ。治安もいいみたいで、閑静な住宅街が続いてる」

茄子「……すごく治安が悪いイメージでしたけど、静かな住宅街もあるんですね」
368 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:36:23.30 ID:H++MdoGr0
レナ「そうね。私も詳しいわけじゃないけど、このサウスタウンの南東にある人工島……イーストアイランドには観光出来るところがたくさんあるみたいだから、世間的には観光地としてのイメージが強いみたい」

レナ「けど、情報収集はこの繁華街が良さそうね。ちょっとこの辺りで人に聞いてみましょう」


レナ「Excuse me?」

通行人「……No」
スタスタ
369 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:38:58.13 ID:H++MdoGr0
茄子「……あまり人が相手にしてくれませんね……さっき応じてくれた人はハワードさんの名前を出したら慌てて走って行っちゃいましたし……」

レナ「……この街に住んでいる人はあの人の真の顔を知っている……という事なのかしらね」

茄子「……」


男「……なぁ、そこの姉ちゃんたち」
370 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:42:35.57 ID:H++MdoGr0
レナ「……!何か用かしら?」
サッ

男「お、おいおい、いきなり警戒するなよ。まぁ仕方ないか……」

茄子「あの、貴方は……?」

男「ああ、さっき姉ちゃんたちがギース・ハワードの名前を出していたのが気になってな」

レナ「……それが何か?あなた何か知ってるの?」
371 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:45:14.96 ID:H++MdoGr0
男「ああ、この街にいる奴は誰でも知ってる……だがな、この繁華街ではその名前を迂闊に出さない方がいい」

茄子「……何故ですか?」

男「……知らねえようだから教えてやるが……ギースってのはこの街の覇権を狙う組織の大幹部なんだ。で……この繁華街には同じく街の覇権を争ってるチャイナタウンの勢力の連中が多くいる……連中の本拠はこのセントラルシティにあるからな」

男「連中にとってはギースはその命を狙う今一番のターゲットなんだ。そいつらにギースの事を嗅ぎまわってるなんて知れたら、とっ捕まって、何されるかわかったもんじゃねえよ」
372 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:50:49.23 ID:H++MdoGr0
レナ「……なるほどね。筋は通ってるわ」

茄子(……やっぱり、あの人は)

レナ「ありがとう、忠告をくれて……情報収集は他でやるわ」

男「……あんたたち、見たところ日本人だろ?ここまで聞いてギース捜しを続けるのか?危険なんだぜ」

レナ「……ええ」

茄子「……あの人に聞かなきゃいけないことがあるんです」
373 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:57:31.13 ID:H++MdoGr0
男「ワケありって事か……」

男「……もし姉ちゃんたちが良ければ……俺がギースのところに途中まで案内しても良いぜ」

レナ「……!あなた、あの人の居場所を知ってるの!?」

男「ああ……今あの男は……ポートタウンにいる」

茄子「ポートタウン?」
374 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 20:59:55.57 ID:H++MdoGr0
男「ああ、サウスタウン南西にある貿易港なんだが……軍港でもあってな。そこで大量の武器を仕入れてるって話だ」

レナ「……武器……」

男「ああ、解かると思うが……治安はサウスタウンでも最悪だ。日常的に抗争や喧嘩が起こってる無法地帯……この街の闇の部分だよ」

男「……どうだ?ここまで聞いてまだあの男を追う気はあるかい」
375 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:04:36.69 ID:H++MdoGr0
茄子「……レナさん」

レナ(茄子ちゃん……私が止めるって言っても一人で行きそうな目しちゃって……)

レナ「……追うわ。けど、貴方は何者なの?どうしてそこまで手を焼いてくれるのかしら」

男「ああ、姉ちゃんたち何か事情があるみたいだし……俺もギースに世話になったことがあってな」

レナ「……」
376 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:07:14.43 ID:H++MdoGr0
ポートタウン

レナ「ここが……ポートタウン」

茄子「……これは、まるで……」

男「スラム街さ。観光で栄えたサウスタウンの影の部分を一手に引き受ける……」

男「奴は今夜ここの廃工場に取引で現れるって噂だ」

茄子「……」

レナ「……」
377 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:15:10.23 ID:H++MdoGr0
レナ「……もう1時間くらい待ってるわよ。さっきの話、本当なの?」

男「ああ……準備が出来たようだぜ」

茄子「え?」

男「全員出てこい!この女たちだ!」

ザザザ

男「へへ……」

レナ「……!大人数の男たちが……!やっぱり騙したのね……!?」
378 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:22:30.81 ID:H++MdoGr0
茄子「……!」

男「ふっ……俺が喋った内容で嘘だったのはギースがポートタウンにいるって話だけさ……あとは全て本当の話だ」

男「ここであんたたちを捕らえて、未だ帰らぬ我らが頭、Mr.BIG様の組織内復権のための対ギースの切り札にする……あんたらはヤツの愛人か何かなんだろう?」

レナ「誰が愛人よ!いい加減な事言わないでくれる!?」
クワッ

男「おお怖い……だが、お前らがなんであれ、奴にとって無視できない存在であれば俺はそれでいい」
379 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:28:04.96 ID:H++MdoGr0
レナ(くっ……迂闊だった……!)

茄子「……っ」

男「へっ、早速この女たちを……」

グワ!ギャア!

男「なんだ!どうした!」

???「……BIGならもう帰ってはこないよ。ヤツは日本で行方不明だからね」
スタ

男「……!?マントに、道化の面!?誰だ!」
380 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:33:15.78 ID:H++MdoGr0
???「あんたと元同僚だよ。まっ、私は不本意だったけどね」

レナ「……!」

男「ちっ……貴様、キングか!」

キング「ふっ、それにしてもBIGの部下は働き者だね。奴の何がそんなに良いんだか」
バサッ

男「抜かせ!組織の裏切り者め……行け!全員でかかれ!」

男たち「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」
ドドドドド
381 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:36:23.01 ID:H++MdoGr0
男たち「……」

男「ば、馬鹿な……素人だったとはいえあれだけの人数を……」

キング「……はん、数だけ揃えても私に勝てやしないよ」

キング「あの男に忠誠を誓うのは勝手だけど……彼女たちは私の飲み友達なんだ。手を出そうとした報いを受けてもらうよ」
ザッザッサッ

男「く、くそおおおおお!」
ダダダダダ
382 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:41:01.85 ID:H++MdoGr0
キング「……やれやれ、上司に似て逃げ足だけは早いね」

レナ「……キングちゃん……ありがとう、助かったわ……でもどうして」

キング「……日本のマナミから連絡を貰っててね。空港であんた達を見かけたから、もしかしたらサウスタウンに来てるかもしれないって」

茄子「真奈美さん……」

キング「それでエアポートのところで待ってたら、怪しい男にホイホイ付いて行ってるし……ちょっと警戒心が無さすぎるんじゃないかい。ここは安全な日本じゃない……欲望と暴力の街、サウスタウンだよ」

383 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:45:46.76 ID:H++MdoGr0
レナ「……返す言葉もないわ」

茄子「……あの、キング、さん?」

キング「ん、あんたはReppuにいた娘だね」

茄子「はい、鷹富士茄子といいます」

キング「カコ……ああ、あんたがリョウが言ってた娘ね。あんたの事は楽屋裏からしか見たことなかったけど、会えてうれしいよ」
384 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:49:19.57 ID:H++MdoGr0
レナ「キングちゃんは真奈美ちゃんの友人で、一時期6810プロの……極限drea娘のダンストレーナーをやってたの。だから私たちの事を知ってるの」

茄子「そうなんですね……やっぱり縁って大事です。こうして助けて頂いて」
ペコ

キング「……ちょっと独特の間合いの娘だね」

キング「……話を戻すけど、ここは危険な街なんだ。あんたたちが居るような場所じゃないよ」

レナ「……キングちゃん。助けてもらっておいて言うのも気が引けるけど……私たち、ハワードさんに会いに来たの」
385 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:54:51.96 ID:H++MdoGr0
キング「……ギースにかい?だったら尚更さ。あいつが日本でプロデューサーをやっていた時、どんな感じだったかは知らないけど……」

キング「本当のあいつはアイドルのプロデューサーなんてやる男じゃない。あの若さで組織の幹部になってるような男だよ。もうあんたたちはあの男に関わるべきじゃない」

レナ「……あのね、キングちゃん……」

茄子「……キングさん」

キング「……なんだい」
386 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 21:58:59.26 ID:H++MdoGr0
茄子「確かにキングさんが仰ってることは正しいと思います。現に今私たちは危険な目に遭いましたし、街の人達を見てもあの人は畏れられてるようです」

茄子「だけど……だけど、ハワードさんが私たちに見せた表情は……必ずしもそれだけじゃなかったと思うんです。……だから、私たちはあの人の本当の言葉が聞きたい」

茄子「あの人は本当にただの悪人なのか、それともそうじゃないのか……あの人の本当の気持ちはどこにあるのか。そうじゃないと、私たち……前に進めないんです」

レナ「茄子ちゃん……」

キング「……」
ジッ

茄子「……」
キッ
387 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:02:11.30 ID:H++MdoGr0
キング「……やれやれ、本気ってことだね」

茄子「……はい」

キング「……だったらいいよ。あんた達がギースに会うまで、私がボディーガードをしてやるよ」

レナ「……本当!?キングちゃん!」

茄子「良いんですか!?」

キング「……本当は良くないけどね。けど、本気の眼をした人間てのは止めても行っちまうもんさ」

キング(そう……あの事件の時のリョウと同じようにね)
388 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:05:25.44 ID:H++MdoGr0
キング「だったら私が守ってやらなきゃならない。マナミにも頼まれてるしね」

レナ「キングちゃん……ありがとう」

茄子「この御恩は……忘れません」

キング「礼なら日本に帰ってマナミにしな。……ギースが居るのは恐らくイーストアイランドだよ」

レナ「イーストアイランド?観光で人気の?」
389 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:08:17.04 ID:H++MdoGr0
キング「ああ。確かに世間ではビーチもあって有数の観光地だけど……あそこにはギースタワーがある」

レナ「ギ、ギースタワーって……」

キング「まぁ通称だけどね。あの男が建てた高い高層ビル……普段あの男がいるとされてる」

茄子「そこに、あの人が?」

キング「ああ……だから今からイーストアイランドに移動……」

ギャアアアアアアアアアア
390 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:12:15.74 ID:H++MdoGr0
茄子「……悲鳴!?」

キング「……このポートタウンでは悲鳴くらい珍しくないけど……この声は」

レナ「さっきの男じゃない……!?」





男「……」
ピクピク

レナ「……!」

茄子「……っ」
サッ
391 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:17:03.83 ID:H++MdoGr0
キング「……これは、あんたがやったのかい?」


少年「……そいつよ、あんまり金持ってなかったんだ」


レナ「うそ……まだ十代くらいでしょ……?」

茄子「そんな……」

キング「……その血まみれの鉄パイプを捨てな」

少年「全然、足りねーんだよ……これっぽちじゃ……」
392 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:20:22.12 ID:H++MdoGr0
少年「あんたたち、旅行者だろ……?だったら金はたくさん持ってるよなぁ」

キング「やめな……私には勝てないよ」

少年「関係ねーよ……俺が……金持って帰れねーと……」

少年「妹に、パンを食わせてやれねえだろうがァァァァァ!!」
グワッ

茄子「……!」
393 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:23:16.26 ID:H++MdoGr0
キング「……!はっ!」
ブオン

ドカッ

少年「ぐはっ」
ドシャ

レナ「っ……キングちゃん……!」

キング「……安心しな、ちょっと眠ってもらっただけ……!」

少年「くそ……クソが……」
フラフラ
394 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:27:59.79 ID:H++MdoGr0
茄子「……!」

少年「……ちくしょうが……!さっきのヤツみてえに……潰れたジャガイモになりやがれェェェェ!!」
ガバッ

少年「イヤアアアアアアアアアアオオオオオ!!!」
ブンブンブン

キング「……!ベノムストライク!」
ゴッ

ズドン
395 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:31:09.87 ID:H++MdoGr0
少年「―――――」
ドサッ
カランカラン

レナ「……キング、ちゃん」

茄子「……」
タッ

茄子「この子の、手当をしないと……」

キング「……これが、この街の本当の姿だよ。大人も子供も関係ない。みんな餓えて餓えて……食べるものが無いから生きる為に他人を喰いちぎろうとしてる」
396 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:35:03.66 ID:H++MdoGr0
キング「そういう街に、ギースは帰ってきたんだ。……その意味をあんたたちも考えることだね」

レナ「……」

茄子「……」

キング(……けど、妹の為、か……)

キング(私も、リョウも……一つ道を違えばこの少年と同じようになってたのかもしれないね……)
397 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/08(土) 22:36:49.39 ID:H++MdoGr0
今日はここまで
次回更新で完結予定です
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 00:58:45.41 ID:veGU58YP0

完結予定に、乾杯
399 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:03:01.81 ID:RQqOxXj80
イーストアイランド

キング「……見えてきたよ。あの高層ビル……」

茄子「あれが……ギースタワー」

レナ「どれだけ目立ちたがりなのよ……一番高いビルじゃない」

キング「このビルは……わざわざ観光地として賑わってるイーストアイランドに建てられてる」
400 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:08:31.43 ID:RQqOxXj80
キング「それはつまり、あの男がサウスタウンを表も裏も両面で支配してるっていう強烈なアピールなんだよ」

茄子「……」

茄子「……ここは、本当に人で賑わってますね。みんな幸せそうな顔をして……」

レナ「……まぁ観光地だしね」

茄子(ほんの少し外れたところにはあんなスラム街があるのに……まるで天国と地獄……)

茄子(ハワードさん、貴方はこの街で何をしてるんです?)
401 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:11:25.25 ID:RQqOxXj80
ギース・タワー


ギース「チャイナタウンの連中か?」

リッパー「はい。我々の直属の部下ではありませんが、『組織』の人間がここ数日だけで4件、襲撃を受けています」

ギース「場所はどこが多い」

リッパー「奴らの庭先のセントラルシティで3件、このイーストアイランドで1件です」

ギース「セントラルシティだけならともかく……イーストアイランドでも事が起こっているのは見過ごせんな。人の家の庭先で勝手に花火を上げられるのは不快だ」
402 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:14:33.69 ID:RQqOxXj80
リッパー「……では」

ギース「ああ、近々チャイナタウンを襲撃する。兵たちには準備をさせておけ」

リッパー「はい」

ガチャ
ホッパー「……ギース様」

リッパー「ホッパー、どうした?」

ホッパー「はい。……女が3人、ギース様に面会を申し出てきています」
403 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:17:46.54 ID:RQqOxXj80
ギース「女が3人?」

リッパー「何者だ?素性がわからんならお引き取り願え」

ホッパー「……それが、その内の1人は……キングという女です」

リッパー「キング?あの第1回キング・オブ・ザ・ファイターズの出場者のか?」

ギース「ほう……あのムエタイ使いか」

ギース(そういえばあの女も日本に来ていたな……)
404 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:20:54.89 ID:RQqOxXj80
ギース「それで、後の2名は?その女の仲間か?」

ホッパー「組織のデータには無い人間です。……2人とも日本人のようです」

ギース「……なに?」

リッパー「日本人……?」

ホッパー「名前は……レナ・ヒョウドウとカコ・タカフジと名乗っています」

405 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:27:10.01 ID:RQqOxXj80
受付「ですから、アポイントメントが無い方はちょっと……」

キング「だから、身分を明かしてるだろ?さっさと上に話を通しなよ」

プルルルル
受付「……失礼します、内線です」
ガチャ

受付「はい、受付です……え?でも……はい、わかりました」
ガチャ

受付「……OKが出ました。そちらのエレベーターから上にお上がりください」

406 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:28:08.82 ID:RQqOxXj80
レナ「……OKを出したのは、社長?」

受付「さあ……私にはわかりかねます」

茄子「……」


ゴオオオオオ
キング「……さて、いよいよご対面だよ。あいつがどういう対応をしてくるかわからないから、いざという時はすぐに逃げ出せるようにしときなよ」

レナ「……まぁその前に平手打ちを一発お見舞いしてあげなきゃね」

茄子「ハワードさん……」


チーン
407 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:31:15.05 ID:RQqOxXj80
リッパー「……」

ホッパー「……」

ギース「……」


レナ「……ハワードさん」

茄子「……お元気そうですね。少し安心しました」

ギース「……」
408 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:34:21.57 ID:RQqOxXj80
キング「……ちょっと、ギース・ハワード。何とか言ったらどうなんだい」

ギース「……ようこそ、ミス・キング。お会いできて光栄だ」

レナ「……」

茄子「……あの」

キング「私にじゃないよ。この娘たちにだよ。あんたに会うために遥々日本からやってきたんだよ。危険を承知でね」



ギース「……知らんな」
409 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:38:26.69 ID:RQqOxXj80
茄子「……え?」

ギース「私はお前たちなど知らん。誰だお前たちは」

茄子「――――!」

レナ「……!!」

レナ「知らない!?ほんの半年前の事をもう忘れちゃった!?だったら思い出させてあげるわよ!!」
ズイ

レナ「私たちは!日本に来ていた貴方からスカウトを受けたアイドルで!貴方がプロデュースしたユニットReppuのメンバーよ!そして貴方が一方的に解散を宣言した理由を、聞きに来たの!!どう!?解かったかしら!?」
ダン
410 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:43:15.08 ID:RQqOxXj80
リッパー(……アイドル?Reppu?)

ホッパー「……」
ゴソ

ギース「良い。ホッパー」

ホッパー「……」
スッ

ギース「重ねて言うが、知らんな。私が日本に行っていたのは事実だが、それは武技の修行の為だ。貴様たちなど知らん」

レナ「……!!~~~!……」
スッ
411 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:47:50.62 ID:RQqOxXj80
レナ「……ここに来るまでは平手打ちをお見舞いしてやろうと思ってたけど……もうその気も失せたわ。帰る」
スッ

キング「レナ……」

茄子「……貴方は、本当に変わってしまったんですか?私たちに見せてくれた……あの楽しそうな表情は、嘘だったんですか?」

ギース「……一体何を言っているのかわからんな。私は何一つ変わってはいない。常に在るのは、闇の帝王としての私だけだ」

茄子「……」
ジッ

ギース「……」
412 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:52:08.25 ID:RQqOxXj80
茄子「……失礼します。お体を大事にしてくださいね」
ペコ
タタッ

バタン




ギース「……フン」

リッパー「……ギース様」

ギース「あの女たちが日本に帰るまで見張りをつけろ。何かあったらすぐに私に知らせろ」

ホッパー「……!はい」

リッパー(……では、あの娘たちは本当に……)
413 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 10:56:38.89 ID:RQqOxXj80
レナ「……っとに信じられない、あの男……いや、性格が最悪なのは知っていたけど!」

キング「レ、レナ……落ち着きなよ」

レナ「これが落ち着いてられますかって話よ!ほんとに無駄足……いや!あの男が本当にどうしようもない男ってわかっただけ無駄足じゃなかったかもね!ある意味せいせいしたわ!!」

レナ「ちょっとキングちゃん!貴女確かサウスタウンにお店持ってるんでしょう!?行きましょう!今から!!」

キング「それは構わないけど……ほどほどにしときなよ……」
414 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:01:31.65 ID:RQqOxXj80
茄子「……」

レナ「ちょっと茄子ちゃん!あなたも当然付き合って……どうしたの?」

茄子「……なんだか……街の雰囲気が……」

パーン
キング「……銃声!?こんな街中で!?」







部下「ギ、ギース様!報告します!!」
ドタドタ
415 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:06:10.26 ID:RQqOxXj80
リッパー「落ち着いて話せ」

部下「は、はい……!またチャイナタウンの連中の襲撃です!!し、しかも今度はイーストアイランドの真ん中で!!」

ギース「……奴らめ、見境が無くなって来たな」

部下「い、いかがいたしましょう!ギース様……!」

ギース「リッパー、兵の武装はどうなっている」

リッパー「……はい、まだ動員ができる数は少ないようです。こんなに矢継ぎ早にイーストアイランドを狙ってくるとは」
416 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:10:45.91 ID:RQqOxXj80
ギース「良い。動ける者から出していけ。私の兵は一騎当千、数で劣ろうともチャイニーズマフィア如きに遅れは取らん」

ホッパー「……ギース様。もう一件、報告が来ました」

ギース「……なんだ?」

ホッパー「その襲撃現場に、先ほどの女たちも居合わせているようです」

ギース「……リッパー、ホッパー、車を出せ。大至急だ」

リッパー「……はい」

ホッパー(……ギース様、自ら……!?)
417 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:14:30.59 ID:RQqOxXj80
ドカーン
パパパパパ

キング「……クソ、奴ら銃だけでなく爆弾まで……!ここは市街地だってのに……!」

キング「二人とも!無事かい!?」

レナ「ええ、ケガはないわ……けど……」

茄子「まるで……戦場……!」

キング「……ここに居続けるのは危険だね。なんとか脱出しないと……」
418 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:18:25.21 ID:RQqOxXj80
キキキキキ
バタン

ギース「随分好きにやってくれたようだな、ドブネズミども」

チャイニーズマフィア「見ろ!ギース・ハワードだ!やっと出てきやがった!」

チャイニーズマフィア2「奴の庭先まで来て暴れた甲斐があったぜ!確実ここでヤツを始末するんだ!!」

ギース「……やはり最近の襲撃は私をおびき寄せるための罠か」
419 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:21:38.63 ID:RQqOxXj80
リッパー「ギース様!お車にお戻りください!危険です!」

ギース(時間を稼がねばならん……奴らが脱出できる程度……)

ギース「リッパーよ、行け。『あちら』の指揮を取れ」

リッパー「……しかし」

ギース「私の命令が聞けんか?フン、案ずるな。私はここで死ぬ気は毛頭ない」
420 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:25:14.94 ID:RQqOxXj80
リッパー「……了解しました。ホッパー、出せ!」

ホッパー「……!」
ブルルルルルル

ギース「……行ったか。さて、貴様たちに私の命を獲れるかな?」

チャイニーズマフィア「撃てーーーーー!!」
パパパパパパパ
421 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:29:28.52 ID:RQqOxXj80
キング「……銃撃が別方向に集中している……?脱出は今しかないよ!」

茄子「……?」

茄子「……!」

茄子「あれは……ハワードさん……!?危ない!」
ダッ

キング「あっ、カコ!ダメだ!」

レナ「茄子ちゃん!待ちなさい!」
ダッ
422 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:32:34.78 ID:RQqOxXj80
チャイニーズマフィア「ば、馬鹿な……」

ギース「ふっ……当たらんな。貴様らのような雑魚の弾が私に当たるわけがない……ん?」

茄子「ハワードさん!大丈夫ですか!?」
タッタッタ

ギース「……なんだと!?」

レナ「ちょっと!待ちなさい、茄子ちゃん!」
タッタッタ
423 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:35:58.64 ID:RQqOxXj80
ギース「……馬鹿か貴様たちは。何故私の元に来る。何のために私がわざわざ時間を稼いでやったと思っているのだ」

茄子「……やっぱり、私たちのことを守ってくれたんですね」

レナ「……」

ギース「……死にたがりの女たちめ」




チャイニーズマフィア「なんだ……?ギースの傍に女が二人いるぞ……」

チャイニーズマフィア2「構うな!今がギースを殺れる最大のチャンスなんだ!」
424 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:39:21.18 ID:RQqOxXj80
チャイニーズマフィア「だ、だが銃が当たらないぞ!」

チャイニーズマフィア2「だったらコレを投げつけてやれ!銃は躱せても、爆風と破片は躱せん!」



ギース「馬鹿の相手をしている暇はないのだ。早々に日本に帰れ」

レナ「なによ、その言い草は!大体貴方が説明もなしに急に解散なんてするからこんな事に……」

茄子「……!お二人とも!何か飛んできます!」

ギース「……!手りゅう弾だ!」

レナ「!!」

ギース(気で、防御を……駄目だ!二人までは守り切れん!―――――)
ガバ

茄子「―――――――!」
425 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:41:52.81 ID:RQqOxXj80
シーン
チャイニーズマフィア「……不発?」

チャイニーズマフィア2「そんなはずはない!もうひとつ投げろ!」
ブン

コンコン

ギース「……」

レナ「……」

茄子「―――――」

シーン
426 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:45:49.69 ID:RQqOxXj80
チャイニーズマフィア「こ、これも不発!?」

チャイニーズマフィア2「ば、馬鹿な!あ、ありえん!!ヤツは、ギースには幸運の女神(フォーチュン)が味方に付いているとでも言うのか!」

ギース「……私は運など信じていなかったが、或いはそうなのかもしれんな……」

チャイニーズマフィア2「ええい、ならば白兵戦だ!全員ナイフを持て!直接この手で……」
ドカーン



チャイニーズマフィア「こ、後方で爆発です!あ、あれは……」

リッパー「行け!一人たりとも逃がすな!ギース・ハワードの兵であるという誇りをもって戦え!」

兵たち「はっ!」
パパパパパパ



チャイニーズマフィア2「逆に包囲されてるだと……馬鹿な……」
ガクッ
427 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:47:59.01 ID:RQqOxXj80
レナ「な、なんだか知らないけど、助かったの……?」

ギース「……フン、命拾いしたな」

ギース「……だが、これで分かっただろう。この街は血で塗れている。お前たちのいるべき場所ではない」

茄子「……それは、貴方も同じです、ハワードさん。またプロデューサーをやってくださいとは言いません。また日本に来てくださいとは言いません。こんな危険な事は、やめてください……!」
428 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:50:08.56 ID:RQqOxXj80
ギース「……聞けんな。この街が血に塗れているように、私の手も血に染まっているのだ。もはや引き返すことは出来ん」

茄子「それでも……いつかは、きっといつかは……」

ギース「……私が日本を発つ直前……ある男にも同じような事を言われたな」

ギース「だが、これは私が望んで決めた道なのだ。勘違いしてもらっては困る、この街の覇権を握り、来るべき強大な敵を討つ……それが私の人生であり、宿命だ」

レナ「……」
429 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:53:23.56 ID:RQqOxXj80
ギース「……日本へ、帰れ。お前たちの戦場は、生きる場所はステージの上だ。それと同じで、ここが私にとってのステージなのだ」

茄子「……ハワード、さん……」
ポロ

ギース「……レナ。カコを、頼むぞ」

レナ「……ええ。……もう、会う事は出来ないの?」

ギース「そうだ。今、私とお前たちのステージは完全に別たれた。生きて会うことはもうあるまい」

茄子「……うっ……」
ポロポロ

レナ「……行きましょう、茄子ちゃん」
430 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 11:57:24.95 ID:RQqOxXj80
ギース「……ああ、それと最後に言い忘れていた」

ギース「……お前たちと過ごした時間は……良いものだった。私も少しは『縁』とやらを信じてみる気になったぞ……さらばだ」
ザッザッザッザッ

レナ「……なによ、それ。最後まで……どれだけ上から目線なのよ……」
ポロッ

茄子「ハワード、さん」
ポロポロポロ


茄子「ああ―――――……」
431 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 12:00:43.33 ID:RQqOxXj80
茄子(その後の事は、正直あまり覚えていません。キングさんに凄く怒られたって事と、その日の内にもう日本行の飛行機に乗った事くらいです、覚えているのは)





後日
日本


プルルルル
茄子「はい、鷹富士です♪」

レナ『茄子ちゃん?さっきなんだけど、つかさちゃんから連絡があったわ。相談したい事があるって』

茄子「?なんでしょう?」
432 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 12:02:55.55 ID:RQqOxXj80
都内
カフェ

茄子「……私たちが」

レナ「つかさちゃんの事務所のアイドルに?」

つかさ「……ああ。正直まだアイドル事務所としての体も成してない状態だから心苦しいんだけどさ」

つかさ「ホントはスタートはアタシが社長兼アイドルでやってくつもりだったんだけど……ちょっとキャパが足りそうもない。だから最初はアタシは社長に専念して……で、最初のアイドルは、二人に頼みたいんだわ」
433 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 12:05:33.38 ID:RQqOxXj80
つかさ「他の二人はもう美城に移っちゃってて……正直、アイツのプロデュースしたReppuの元メンバーの手を借りるのは負けたみたいな気がして、悩んだんだけど」

つかさ「けど、今は負けてても、必ずやっていくうちにアイツを追い越して見せる!だから……手を貸してくれ!この通り!」

レナ「……つかさちゃん、顔を上げて」

茄子「良いじゃないですか。私たちで、ハワードさんを追い越しましょう?」

つかさ「……い、良いのか?」
434 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 12:06:49.50 ID:RQqOxXj80
レナ「そうね。どこの事務所だろうと、関係ない。ステージの上が私たちの生きる場所なんだもの」

茄子「まずは目指すはReppu越え!ですね♪」

つかさ「……もちろんだっての!よし、すげー気合い入った。絶対業界1番の事務所にして見せるからな!」

茄子(……そうですハワードさん。きっと、海を越えてあなたに届くくらいに、ステージで輝いてみせますから――――――)
435 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/09(日) 12:09:52.13 ID:RQqOxXj80


彼女たちが新たな一歩を踏み出した、奇しくも同日……サウスタウンで、一人の男が殺害された。

男の名を――――――ジェフ・ボガード。
殺害したのは―――――――ギース・ハワード。

この日ギースはサウスタウン完全掌握の為の大きな、あまりにも大きな一歩を踏み出した。

これ以降組織は、街は、完全に彼の手中に収まっていくことになる。

そして同時に、その一歩は彼の破滅への一歩でもあった。
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