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右京「聲の形?」
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102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/21(水) 22:46:28.15 ID:X69pLcrbo
長すぎ。推敲すれば半分に出来る
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 04:27:22.71 ID:TAWwNkCTo
専ブラで消せば0に出来る
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/06/22(木) 13:53:33.40 ID:tKl/6AzaO
>>101
よく長文書けたねwwえらいえらいww
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 17:51:53.18 ID:5BVgz3rk0
「西宮…?」
それは偶然だった。
一人で廊下を歩いていた石田が階段を駆け上がろうとする硝子を見かけた。
その硝子は目から大粒の涙を零しながら階段を上がって屋上へと向かっていた。
何故西宮が屋上へ?
そのことが気になった石田はすぐさま跡をつけた。
それから屋上へとやってきた硝子はフェンスを超えようとする。
そこで石田もようやく硝子が何をしようとしているのかがわかった。
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 17:53:06.43 ID:5BVgz3rk0
「オイッ!西宮!?」
急いで硝子に声を掛けようとする石田。
だが難聴の硝子にその声は決して届かない。
だから自分も急いでフェンスを超えて硝子の近くまで駆け寄った。
早く…急がないと…
その思いが石田を突き動かしていた。
「やめろ西宮!お前何やってんだよ!?」
硝子の手を掴んでその行動を静止する石田。
その足元はあと5cmでも離れれば地面へと真っ逆さまな危険な場所だ。
ここは4階の屋上、この高さから落ちれば命はない。
そんな場所に硝子がやってきた理由などひとつしかないはずだ。
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 17:54:25.59 ID:5BVgz3rk0
「お前…まさか死ぬ気なのか…?」
思わずそんなことを聞き出そうとする石田。
しかし難聴である硝子に石田の声など届くはずもない。
そんな硝子だがその声が通じたのか石田に対して手話であることを訴えた。
『 死 に た い 』
手話の出来ない石田にはその意味がなんなのかわからなかった。
だが硝子は涙を流しながら何かを必死に訴えていることはわかる。
硝子は限界だった。
先ほどの母と右京の話し合いは
耳の聞こえない硝子には二人が何を話していたのかわからなかった。
だが自分の障害について話し合っていたことだけは肌身で感じ取ることができた。。
それにクラスで起きたこともすべては自分のせいだということがわかっていた。
だからこれはそのために行う。
自分が命を絶つことですべてが解決出来る。
家族の問題も学校での問題も…
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 17:55:30.06 ID:5BVgz3rk0
「やめろ西宮…ちがう…そうじゃない…」
「お前は何も悪くない…」
「本当に悪いのは…」
それはまさに懺悔だった。
硝子をここまで追い詰めたのは石田が行ったイジメが原因。
だからこそ本当に悪いのは自分であると告げようとした。
しかし耳の聞こえない硝子に石田の声は届かない。
こんなにも近しい距離にいるのに二人はお互いの声が届かずにいた。
「キャァァァッ!?」
だが悩んでいる暇はなかった。
硝子は足元を滑らして屋上から落っこちてしまう。
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 17:57:42.63 ID:5BVgz3rk0
「西宮――――――――ッ!!」
そんな硝子を石田は腕を掴んで危機一髪の状況で救ってみせた。
だが所詮は小学生の腕力。
いくら女子とはいえこんな不安定な場所で硝子の身体を支え続けることなど出来ない。
「西宮…しっかりしろ…絶対離すな…」
「う゛…うぅ…」
さらに厄介なことに硝子は自殺を行おうとしていた。
いざとなれば硝子自身がその手を離してしまう可能性すらある。
石田はそれをなんとしても止めたいと思っている。
だがそれは無理だ。
この状況で耳の聞こえない硝子に自分の意思を伝えることなど出来ないからだ。
「頼む…誰でもいい…助けてくれ…」
石田はこの自分たちしかいない屋上で思わず救いを求めた。
だがそんな救いなど都合よく現れるはずがない。
何故なら事の発端は自分にあるからだ。
先日のクラス会で誰もが自分に西宮イジメの責任を擦り付けた。
さらに先ほどLHRで
これから緊急の保護者会を開いて改めて補聴器の損害について話し合いが行われる。
そんな大事な時に他人の心配などしている余裕などあるわけがないのだが…
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 17:59:15.34 ID:5BVgz3rk0
「石田くん…何してるの…?」
そこへ一人女子が現れた。それは同じクラスの川井だ。
どううやら自分と同じく様子のおかしい硝子の跡をつけてきたようだ。
「本当だ。石田お前何してんだよ。」
「オイ見ろよ!西宮が…」
そんな川井と一緒に現れたのは同じくクラスメイトの島田に広瀬も…
さらにはクラスの児童たちが挙ってこの場所へ集まっていた。
よかった。これでなんとかなる。
安堵した石田はすぐさまみんなに助けを求めた。
「頼む助けてくれ!西宮が落ちそうなんだ!」
もう石田の腕力は限界だった。
これ以上自分一人だけで硝子の身体を支えることなど無理だ。
だから早く手伝ってくれと訴えるのだが…
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:01:04.66 ID:5BVgz3rk0
「嫌よ…」
「川井…お前…どうしたんだ…」
「だって西宮さんのせいだよ。
西宮さんのせいで親が来るんだよ。そしたらどうなるかわかってるの!?」
この切羽詰まった状況下で川井はそんなことで喚いていた。
他人から見れば何を下らないことを言っているのかと思うだろう。
だが川井にとってこの問題は死活問題だった。
これまで川井は自他共に認める優等生として過ごしてきた。
それこそ誰もが川井のことをいい子だとそう言ってくれている。
それなのに今回の西宮のイジメでなんと自分にまでその疑いが向けられてしまった。
杉下という刑事が乗り込んできて補聴器を調べるといってきた。
もしあれを調べられたら厄介だ。
あの補聴器には間違いなく自分の指紋が付着している。
石田たちが硝子イジメを行っていた際に悪戯半分で川井も補聴器に触ったからだ。
だから確実に自分も疑われる。そうなればどうなるか?
確実に親から叱責を受ける。それに周りの大人たちからも失望されるはず。
そうなればこれまで優等生でいた自分に耐えられるはずがない。だから…
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:02:10.06 ID:5BVgz3rk0
「ねえ…西宮さん…死んでよ…」
川井は必死に硝子の身体を支えている石田の腕を掴みその手を強引に離そうとしていた。
いきなりの川井の行動に戸惑う石田。
普段は心優しい川井がまさかこんな行動に出るとはあまりにも予想外の出来事だった。
「おい…川井…何してんだ…やめろよ!」
「いいからその手を離してよ!西宮さんが死んでくれたら全部解決するんだから!」
「ふざけんな!そんなこと出来るわけないだろ!?」
「ダメなの!西宮さんが死ななきゃ…私が怒られる…お願い!その手を離してよ!」
いくら女子の腕力とはいえ
こんな態勢の悪い状態では川井でも充分に石田の手を離すことができる。
そんな川井になんとか抵抗してみせる石田だが…
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:04:30.17 ID:5BVgz3rk0
「そうだ…西宮が死んでくれたら…」
「親にバレないはずだよ。」
「元々西宮が転校してきたのが悪いんだよな。」
「それなら…」
そんな川井を見て他のクラスメイトたちも挙って硝子を落とそうとしてきた。
元はといえば西宮が転校してきたことが始まりだった。
川井の言うように
西宮さえいなくなれば自分たちがイジメを行っていたことなどバレるはずがない。
親から叱られることを恐れた子供たちは愚かにもそんなことを信じてしまうようになった。
「石田!早く西宮を離せ!」
「そうよ!石田くんが一番西宮さんのことイジメてたじゃない!」
「今更いい子ぶっても意味ねえだろ!」
川井たちの言う通りだ。
元々硝子へのイジメはこの石田から始まったもの。
他の子供たちはそれに便乗したにしか過ぎない。
だが川井たちも硝子のことを疎ましく思っていたのは事実だ。
クラスの足を引っ張ってばかりの硝子を排除したい。
それが石田のイジメに便乗した子供たちの心情だった。
そして石田もまた後悔した。
こうなった原因はすべて自分の愚かさが招いたことにあるのだと…
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:05:48.77 ID:5BVgz3rk0
「あ゛…は゛…な゛…じ…で…」
そんなみんなの心情を察したのか
未だ危機の状況にある硝子が石田にその手を離せと告げた。
もういい。自分なんていなくなった方がいいんだと…
今の川井たちを見れば硝子がそう思うのも無理はない。
だがそれでも石田は決してその手を離さなかった。
「ダメだ…絶対離さないからな…」
「お前は…悪くなんてない…」
「本当に悪いのは俺なんだよ。」
「俺がお前をイジメなければ…こんなことにはならなかったんだ…」
それは石田の懺悔でもあるかのような罪の告白。
硝子がクラスから疎遠されたのは石田のイジメが原因だ。
それをこの状況になりようやく痛感することが出来た。
自分がイジメなんて行わなければ硝子が自殺に及ぶことはなかった。
それにこのクラスメイトたちもこんな凶行に及ぶこともなかったはずだ。
だからこれはすべて自分のせいだと…
「そうだよ!全部石田くんが悪いんだよ!」
「もういい!石田ごと西宮を落とせ!」
遂に子供たちが強硬手段に出た。
その手を決して離さない石田ごと突き落とそうとしてきた。
この状況だと石田は抵抗すら出来ない。
もうダメかと覚悟を決めた。
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 18:05:58.75 ID:TAWwNkCTo
善悪が分からない子供は危険で怖い
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:06:42.28 ID:5BVgz3rk0
「石田くん!大丈夫ですか!」
「その手を絶対に離さないで!!」
だが間一髪のところで助けが入った。
この事態を察知した右京たちが遮る児童たちを押しのけて
転落寸前だった石田と硝子を引き上げてくれた。
助け出されたことでようやく安堵する石田…
だがこれで終わったわけではない。
他の児童たちは酷く動揺しながら右京たちに怯えていた。
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:08:44.96 ID:5BVgz3rk0
「キミたち、自分が何をしたのかわかりますか。」
「だって…西宮さんが…それに石田くんも…」
「確かに発端は彼らにあった。
だからといってキミたちの行いは許されるべきではありませんよ。
さらに悪質なのはあの二人を始末することで自分たちの行いをなかったことにする。
そんなことは決して許されませんよ!」
右京からの叱責を受けて
ようやく冷静になった子供たちは我に返り自分たちの行動を振り返った。
先ほど自分たちは二人の人間を殺そうとした。
それは未遂で防がれたものの既にその行いは明らかにされた。
もう自分たちもタダで済まされない。
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:09:29.11 ID:5BVgz3rk0
「お前たち!なんてことをしてくれたんだ!」
「そんな…あなたたち…どうして…」
そこへ遅れて駆けつけたのは担任の竹内にそれと喜多だ。
竹内はこの光景を目の当たりにして目を疑った。
まさか自分のクラスで殺人未遂まで発展するとは…
「どうしてお前たちはここまで馬鹿揃いなんだ!
石田は勿論だがお前らまでこんなことしてもうタダじゃ済まされんぞ!」
「そうよ…あなたたち…クラスメイトをこんな危険な目に合わせるなんて…」
駆けつけた二人はすぐさま児童たちの愚行を責めた。
何でこんなことをしたのだと…
こうなればもうタダ事では済まされない。
隠し通すなんて不可能だ。既に右京と神戸の警察の人間に知られてしまった。
この学校のすべての人間が糾弾に晒される。
そうなれば自分たちの責任問題だって生じる。
特に竹内はこの愚行を犯した6年2組の担任教師だ。
どう言い訳したところで責任逃れなど出来るはずもない。
「お前たちはどうしようもない愚か者だ!」
打ちひしがれる子供たちの前で思わず竹内が叫んだこの言葉。
どうしようもない愚か者。
確かに今の子供たちはその通りかもしれないが…
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:12:07.97 ID:5BVgz3rk0
「確かに子供たちの行動は愚かでした。しかしこうなった原因は先生方にありますよ。」
「ふざけないでくれ!いくら教師とはいえここまで責任を負えるものか!」
「そんなことはありませんよ。
竹内先生が最初から硝子さんの問題を無碍にしなければこうはならなかったはずです。」
確かにこの事件の背景にあったのは竹内による硝子への放任主義が原因だ。
児童たちに障害のある硝子の世話を押し付けてしまったこと。
またそれに対する適切な対応を教えなかったことにあるのだと右京は指摘した。
「それに喜多先生もこの件に関して無関係とは言わせません。」
「そんな…私がどうして…」
「あなたも合唱コンクールなどで度々硝子さんを後押ししていた。
確かに硝子さんを想う気持ちはわかります。
ですが他の児童に理解をしてもらう対応が疎かだった。」
喜多はこれまで幾度となく硝子と他の児童たちへのコミュニケーションを図るために
手話を教えようとしたり硝子を合唱コンクールに参加させようと促した。
だがその結果はどうだったろうか?
手話を教え込もうとすれば児童たちは何故そんなことをしなければならないのだと拒絶。
また合唱コンクールも硝子が参加したせいで結果は散々だった。
そうなった原因は何か?
「喜多先生、あなたの対応もまた中途半端だったからですよ。」
「でも…私は…」
「ええ、硝子さんを想っての行動だったのはわかります。
しかしそれにはまず児童への理解を得なければならなかった。
あなたがどんなに張り切ったところでそこに児童たちの理解がなければ無意味なこと。
硝子さんを思う余り、他の児童への配慮が欠けてしまった。
だからこのようなことが起きてしまったのですよ。」
所詮喜多は指導する側の人間。
当事者となるのは6年2組の児童たちでしかない。
その児童たちの理解を得られなければ喜多がどんなに張り切ろうとそれは無駄な努力。
つまりこうなった原因はこの学校の教師たちにも責任があることは免れないものだ。
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:13:34.69 ID:5BVgz3rk0
「そうよ…先生が悪いのよ…私たちは悪くないもの…」
そんな時、先ほど強硬手段に出た川井がそんなことを呟いた。
悪いのは教師であり自分たちはそうではないと…
それは自らの過ちを認めようとはしない責任転換でしかない。
先ほどのLHRでもそうだったが川井は自らの過ちから目を背けていた。
「確かに先生方にも問題はあります。
だからといってあなたに問題がないわけじゃありませんよ。」
「そんな…だって私は…」
「あなたが普段どんな人間なのか僕にはわかりません。
ですがこれはあなたたちが行った罪です。
疎ましく思ったクラスメイトの子たちを殺そうとした。
自殺幇助、むしろこれは殺人未遂の行いが成立しますね。」
殺人未遂。そのことを告げられて川井の顔は醜く歪んだ。
いや、川井だけではない。この行いに同乗した島田たちも同じ反応だ。
子供たちは思った。もしこれが親に知れ渡ったらどうなるのかと?
そうなれば先ほどの西宮イジメ以上の叱責を受ける。
自分たちは未成年だから少年院に行くことはない。
だが既にこの行いは校内に広まってしまうはずだ。
そうなれば学校だけでなくこの地区全体にこの事実が広まってしまう。
そんなことになればこの街で生きていくことなど不可能だ。
そんな不安を抱いた子供たちは右京たちに詰め寄ってこう訴えた。
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:14:49.71 ID:5BVgz3rk0
「悪いのは西宮さんにイジメを行った石田くんです!」
「先生たちだってこのことを知らないフリしていました!」
「それに…西宮さんだって…」
「そもそも西宮さんに障害がなければこんなことにはならなかった!!」
最早形振り構っている余裕はない。
誰でもいいからこの責任を擦り付けなければならない。
それは石田でも教師たちでもそれに硝子でも誰だっていい。
とにかく自分たちが無事であればそれでいいと川井たちは誰もがそう願った。
「確かに発端は石田くんのイジメによるものでした。
ですがキミたちもその石田くんのイジメに便乗していた。
イジメ問題が発覚すると誰もがその責任を石田くんに押し付けた。
それこそ自分の責任を追及されたくないと必死に…」
「だって…悪いのは…石田くんたちで私たちじゃ…」
「イジメに便乗していた時点でキミたちも同罪です。
そして今度はあろうことか
その罪を帳消しにしようと硝子さんと石田くんを殺害しようと及んだ。
先ほどの竹内先生の言葉を借りるならあなた方はどうしようもない愚か者ですよッ!」
教師だけでなく右京にまで愚か者と蔑まれる川井たち。
自らの罪を認めることが出来ない人間など愚か者でしかない。
涙ぐみながら誰もが自分たちの行いを後悔した。
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:15:22.01 ID:5BVgz3rk0
「硝子ォッ!」
「石田ァッ!」
「将ちゃん!」
川井たちが自らの行いに後悔しているところへ母親の八重子と美也子、植野が駆けつけた。
先ほど落下寸前だった石田と硝子に駆け寄る二人。
石田と硝子は殺されそうになったショックからか未だに呆然としていた。
そんな二人だが先ほどから手を握り締めたままだった。
「石田…もう大丈夫だからね…」
「将ちゃん…頑張ったわね…」
呆然としている石田を慰めるかのように抱きしめる植野と美也子。
それは大切な息子でありそれに友達を心配してのことだ。
だが…八重子はちがった…
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:15:59.26 ID:5BVgz3rk0
「硝子、立ちなさい。」
「さっさとこんな学校から出て行くわよ。」
「それで新しい学校へ行きましょう。」
「次の学校ならきっとあなたを受け入れてくれるはずよ。」
「あなたは普通の子なのよ。だから…」
そうブツブツと呟きながら未だ打ちひしがれる硝子の手を乱暴に掴む八重子。
その様は最早狂気に駆られていると言っても過言ではない。
この学校がダメなら次の学校へ行けばいい。今度こそ硝子を受け入れてくれるはず。
自分の娘は普通の子だからとまるでその言葉を自分に言い聞かせるように唱えていた。
だがしかし…
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:16:36.16 ID:5BVgz3rk0
「 「う゛ぎぃっ!?」 」
硝子は掴んできた母の手を思い切り突き放した。
それから未だに手を繋ぐ石田に肩を寄せていた。それは明らかな拒絶。
何で…?どうして…?
これまでなら決してあり得なかった硝子の行動に
八重子の心は亀裂が入ったかのようなショックを受けた。
「もう無理だと…硝子さんはそう言っています…」
そんな硝子の心の声を代弁するかのように右京がそう告げた。
それから硝子は泣きじゃくりながら手話で必死に訴えた。
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:17:54.15 ID:5BVgz3rk0
『お母さんごめんなさい』
『頑張ったけど…もう無理…』
『私は…普通の子になれない…』
それが硝子の手話による訴えだった。
今の出来事で硝子の心は完全に傷ついてしまった。
先ほどの右京と八重子の話し合いで自分が母の重荷であることを知った。
そのために屋上へ昇ってこれ以上みんなの迷惑にならないように自殺を決行した。
だがまさか自分がクラスの子たちから殺されるまで恨まれていたことを知り絶望した。
これ以上この学校には居られない。それでもまた普通の学校に行くことなど出来ない。
行けば必ず同じ繰り返しが起きる。
それは自分がこの障害を抱えている限り一生付き纏うものだと改めて思い知らされた。
だからもう無理だ…自分は普通の子たちとやっていくことなど出来ない…
それが硝子の出した結論だった。
「西宮さん、これが娘さんの意思です。これ以上無理をさせれば今度こそこの子は…」
「そんな…どうしてよ…娘を普通の子として育てるのがどうしていけないことなのよ…」
「娘さんを普通の子として育てたい気持ちはわかります。
ですがそれはあなたの願望であり硝子さんが望んだことではなかった。
唯それだけのことなんですよ。」
八重子がどれだけ硝子に普通を求めようとしても
難聴である硝子と周囲の子供たちはそれに理解を示さなければ無意味だ。
こんな事態になってそのことがようやく理解できた八重子。
そんな中、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
右京の指示を受けて神戸が岐阜県警の応援を要請していた。
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:18:58.33 ID:5BVgz3rk0
「これでもうあなた方は逃げることなど出来ませんよ。」
「今回の件は決して石田くんだけが悪かったわけではありません。」
「硝子さんの障害に関して無関心であった担任教師の竹内先生。」
「また理解を示しておきながら中途半端な対応であった喜多先生。」
「それに硝子さんの障害により被害を被ったとはいえイジメを起こした児童たち。」
「そして障害を患う娘に普通を求めてしまった母親の西宮さん。」
「みんなが硝子さんを傷つけてしまった。」
「このような愚かな結末を迎えてしまったことをどうか反省してください。」
それからパトカーから降りてきた警官たちが続々と校舎の中へと入っていった。
恐らく屋上に居る自分たちのところへ来るのだろう。
もう逃げることなど出来ない。
これで誰もが自分の罪と向き合わなければならない。
この場にいる全員が後悔した。こんなことならもっと他にやり方があったはずだと…
だがもう手遅れだ。
先ほどから鳴り響くパトカーのサイレン。
子供たちにはそれがまるで破滅の序曲のように聞こえていた…
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:20:26.64 ID:5BVgz3rk0
とりあえずここまで
今日中にもう一度更新出来たらいいなと思っています。
>>100
相棒は全話視聴済みなので勿論見てますよ
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 18:22:12.43 ID:tXLuTFbz0
乙
クラスメイトクズ過ぎて笑えない……どう考えても結論で悪いのはお前らだろ……
この小学校、廃校にはならないけど休校は間違いなしだな……
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 18:33:37.12 ID:TAWwNkCTo
事態は一応の決着に至ったが…これから先が大変
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 18:37:47.49 ID:tXLuTFbz0
母親→担当→クライメイトと連鎖的に原因作っているよな。読んだら
こいつら、もし石田と硝子が死んでも何年かしたら完全に忘れてそう。いたとしても植野が夢で石田を思い出してうなされるぐらいか
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 18:48:09.84 ID:uDTqz8FDO
いい加減にしなさーいっ!!!って右京さんが叫ぶかと楽しみにしてたけど案外冷静だったな
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 19:02:20.14 ID:ayemAAmoo
そもそも全国大会とかならともかくたかが校内のコンクールでボロ負けしたくらいで
クラス全体でイジメだもんな…有り得ないレベルのクズですわ。だけど小学生って本当に
クソガキだから似たような状況が現実にあったら殺しはしないまでも確実に見捨てると思う
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 19:06:10.02 ID:tXLuTFbz0
>>132
クソガキにもレベルがひどいけどな。1人も援護しない時点でこのクラスの腐ってる
大人になってもロクな大人にならない。いじめられた一人を抜きにしても原作の石田の方がまだまとも(高校生以降を考えると)
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 19:10:15.43 ID:TAWwNkCTo
叫んで怒らなかったけど、ドラマみたいに台詞の最後辺りで
早口で若干怒気を放つ感じで脳内再生できた
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 19:18:00.51 ID:ayemAAmoo
>>133
まあ現実なら直接イジメに加担するのは二割くらいで一割は口ではやめた方がいいとは言うが
直接動かず残りの七割は静観してると思うよ。で、この状況で助けてくれそうなのは
その一割だけでイジメっ子と静観してた残りの九割は見殺しにすると思う
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 21:26:37.42 ID:tXLuTFbz0
最初の始まりは母親かもしれないけど、担当の対応が悪いからここまでひどくなった
右京さんが言ったことをすれば最悪の事態は避けられたんじゃないか?石田みたいないじめっこは止められないとしても
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 00:50:06.14 ID:XXidcOc60
善意も悪意も関係なく全てが硝子を追い詰めたのかな。
それこそ第三者の右京さんが口を挟まなければならないほどに
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 01:44:01.99 ID:SJGG/USR0
公式的な「正解」を言えば、この件のメイン戦犯は学校サイドで、授業進度に就いては担任から校長、教育委員会に報告を上げて
教育委員会レベルで加配を行うなり保護者に情報開示して通級、転校を打診するなりの対応をすべきだった
八重子が病的に反発する(あえてあの言葉は使わない)
のは目に見えてるにしても、衝突を恐れて実情を伝えず立場の弱い無知な児童に負担を押し付けたのなら論外
実際八重子は右京の話に動揺してたぐらいだから、すぐに解決しなくても直接関わる学校から八重子に伝えるべきだった
あの性格だとそう言われると硝子に無理押ししかねないし
西宮家は八重子中心にハイリスク家庭だから、展開次第では児相に精神的含む虐待通告して母子分離する奇手も考えられた
問題は何処で情報が止まっていたかだけど、聾唖の転校生を普通学級に受け容れておいて無関心ならその事自体が校長失格
判例上は教育委員会側に最終決定権があるから、逆に言うと受け容れたからには責任持てと言う事にもなる
当たり前だけど統合教育の「教育的意義」として児童に補助を指示するなら負担を調整するのは教師の責任
担任教師がクラスの児童にストレスフルな負担を押し付けて特定の児童、それも障害児にヘイト集めている以上、
それがいじめの煽動ではない、それ以前に感情に気が付かないと言うのなら教師以前に失格
学習を保障できず、その事を伝えず、いじめを煽動して、事ここに至れば竹内は良くて辞職勧告付の停職、校長も懲戒処分付の更迭
クラスの児童は中身に応じて殺人未遂、自殺幇助、芋蔓で器物損壊つけて警察から児童相談所送致
大概は指導レベルだけど、クラスぐるみの障害児いじめの上の殺人未遂って反響も考えると家裁から児童自立支援施設に強制措置もあり得る状況
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 01:49:03.45 ID:SJGG/USR0
>>138
訂正
「公式的な「正解」を言えば」と「この件のメイン戦犯は学校サイドで」
の順序逆だった。只でさえ長すぎて申し訳ないが、
訂正しない順序だと言い過ぎだった、すいません。
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 01:57:59.33 ID:Oh+Xz+sco
だからなげーっての
言いたいこと全部書くから長くなる。削れ
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 08:35:41.76 ID:25+Y9HFUO
そう無下にするなよ
童貞ニートさんがチンコ握りながら必死にそれっぽい長文をシコったんだぞ、それだけで面白いじゃないか
面白コンテンツを提供してくれる人にそんなこと言っちゃ申し訳ないだろう?
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:13:47.24 ID:3ai9I0vk0
その後、警察の介入より事態は大事へと発展した。
当初は硝子の補聴器の件で集められるはずだった保護者会は
6年2組の児童たちによる殺人未遂の犯行が明らかとされた内容へと変わった。
集められた保護者たちはこの事実を知らされて愕然とした。
ある親は子供を叱りつけ、またある親は何故こんな事態になったのかと学校側を責めた。
当初は石田のみが責任を取らされる補聴器の件がここまで大事を迎えてしまった。
この事態に誰もが困惑せずにはいられなかった。
「それでは石田さん、西宮さんと硝子さんのことをお願いします。」
「わかりました。西宮さん、硝子ちゃん、行きましょう。」
それから数時間後…
いち早く事情聴取を終えた石田家と西宮家は早々に解放されて帰路に着くことになった。
だが娘の硝子は未だに動揺しており
母親の八重子もまた一連の騒動による疲労困憊で自力での帰宅は困難だった。
そこで石田の母である美也子は自分たちが西宮親子を送っていくことを約束してくれた。
こうして右京と神戸に見送られて学校を去ろうとするのだが…
去り際に右京は石田に対してこんな質問をした。
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:14:20.22 ID:3ai9I0vk0
「待ってもらえますか。
石田くんに聞きたいことがあります。何故キミは硝子さんにイジメを行ったのですか?」
それはこのイジメ問題のきっかけとなった原因。
石田が硝子をイジメた理由。それは何なのか?
これを明らかにしない限り今回のイジメ問題は解決することは出来ない。
そのために石田からそのことを直接聞く必要があった。
押し黙ること数分、石田は重い口を開いてこう呟いた。
「俺…寂しかったんだ…」
寂しかった。そう語る石田。
それから硝子へのイジメを行うきっかけを話し出した。
事の発端は以前まで仲の良かった島田と広瀬たち。
その二人が塾に通いだしたのがきっかけとのことだ。
普段は仲のいい友達が自分から離れだした。
硝子が転校してくる前、石田はクラスの人気者だった。
だが段々それが思うようにいかなくなった。
小学6年生ともなれば塾通いや中学受験の準備などを始めていく。
そうなれば次第にクラスメイトたちもバカ騒ぎをやっている暇もなくなり
そのリーダー的存在であった石田になど構う余裕すらなくなった。
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:15:38.26 ID:3ai9I0vk0
「そんな時に西宮をからかってみた。
最初はウケ狙いのつもりだった。けどそれをみんなが面白がって…」
恐らくクラスメイトたちが面白がった理由は
普段はクラスの足を引っ張る硝子に対するストレスの発散によるものだろう。
そのことでクラスメイトから賛同を受けた石田はさらに調子に乗った。
だがいつしか歯止めが効かなくなり遂には補聴器を壊すまでに至った。
これが硝子のイジメが本格化したきっかけだった。
「あなた…そんな下らない理由で硝子を…ふざけないでよ!」
そんなイジメの理由を淡々と語る石田の襟首を掴み問い詰める八重子。
どんな理由であれ自分の娘がイジメられたことに何の変わりもない。
イジメを行った石田を許せないのは母親としては当然のこと。
そんな八重子を神戸と美也子がなんとか宥めようとする。
それから美也子が母親として八重子に謝ろうとするのだが…
だがそんな三人を押しのけて右京が石田の前に立ちはだかり予想もしない行動に出た。
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:16:45.91 ID:3ai9I0vk0
パン――――――ッ!
一瞬、石田は自分の身に何が起きたのかわからなかった。
だが赤く染まった頬に鋭い痛みが走りそれでようやく理解した。
自分は目の前にいるこの右京に叩かれたのだと…
「何で将ちゃんをぶつんですか!」
「失礼、ですがこれは誰かが石田くんにやらなければならなかったことです。」
目の前で我が子をぶった右京に怒鳴る美也子。
だがこれは右京が言うように誰かがやらなければならないことだった。
それは本来ならこの母親である美也子や担任である竹内がやらなければならないこと。
だが母の美也子はそこまで石田を怒ることが出来ず担任の竹内は未だ警察で事情聴取の身。
そのため、本来なら彼らがやらなければならいことを右京がやってみせた。
そうでなければ今回のことがすべて無駄になってしまうからだ。
「今回、硝子さんに行われたイジメは
恐らくキミがやるまでもなくいずれは起きることでした。
クラスでは既に硝子さんへの不満が高まっていた。
ですがそれでも硝子さんに対するイジメが始まったのはキミのせいです。
キミの身勝手で幼稚な行いがそうさせてしまったのですから。」
自らの行いを幼稚と蔑む右京。
確かに小学6年生ともなれば善悪の分別はつくはず。
それなのに石田は自らの人気取りのために硝子へのイジメを行い続けた。
その行いがクラスに何をもたらすのかわかっていたはずなのに…
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:19:16.26 ID:3ai9I0vk0
「今回キミの愚行が何をもたらしたのか?それはクラスの学級崩壊ですよ。」
「学級崩壊って…そんな…」
「今回は担任教師である竹内先生が既にその責務を放棄していた。
さらにこんな事態にまで陥ったのだから当然その責任を取らされる。
恐らく近日中に彼は担任を解任させられるでしょう。」
「植野さん以外の6年2組の児童たちも同様です。
彼らは硝子さんとキミに殺人未遂を行った。これはもう子供の悪戯の限度を超えた犯罪。
しかし彼らは14歳未満の子供であり実刑が与えられることはない。
ですがここまで大事になったのです。
既に周囲の人間にはこの事実は伝わってしまっているはず。
近隣の人々にこの愚行が伝わればこの街で生きていけますか?
きっとこの街を出て行かざるを得ない子もいますよ。」
「それに硝子さんもです。
恐らくですが彼女も近日中に学校を転校しなければならないはず。
この子には何の非もないのにそうなった原因はなんですか?
キミがくだらないイジメを行ったからじゃありませんか。」
右京からの説明で石田は自分の悪戯が何をもたらしたのかようやく理解できた。
まさかここまで大事になるなんて…
最初は些細な理由だった。いつもみんなの足を引っ張るだけの硝子を懲らしめようとした。
それが思いの外みんなにウケたので調子に乗ってしまった。
だがこんなことになるなんて思いもしなかった。
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:20:36.05 ID:3ai9I0vk0
「確かに竹内先生や6年2組の児童たちにも問題はありました。
ですがそんな彼らの負の感情に火をつけたのは誰ですか?
それは石田くん、キミですよ。
キミのイジメがここまで事態を混乱に貶めてしまったのですよ。」
「勘違いしてほしくないことですが今回僕たちはキミを助けたわけではありません。
本来ならキミだけが責任を取らされてこの件は終わるはずだった。
その方がキミにとってはまだマシだったはずです。
何故ならここまで被害が及んだのですから…
これからキミは
6年2組のクラスメイトたちや担任の竹内先生に恨まれることを覚悟してください。」
右京にそんなことを言われて石田の心にズシリと罪悪感が伸し掛った。
これはある意味、石田に課せられた罰であり明日になればきっと学校で騒がれるだろう。
それで自分はどうなるのだろうか?当然このまま何事もなく済まされるはずもない。
きっと誰もが自分にこの責任を取れと訴えるはずだ。
だが…そんなこと…出来るはずがない…
自分は単なる小学生。何の責任も取れないガキだ。
足元が震えて覚束無い。胃から何かがこみ上げて吐き気がする。
これならまだ島田たちのイジメを受けていた方がマシだとそう思えた。
そんな石田だがふとある疑問が過ぎった。
「………だったら何でなの?」
「はぃ?」
「何で俺を助けたの?」
そう、今朝の公園でイジメられていた石田を助けたのはこの右京と神戸だ。
こんなことになるのなら何で助けた?そう尋ねた。
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:24:21.82 ID:3ai9I0vk0
「先程も言ったように僕たちはキミを助けてはいません。助けたのは硝子さんですよ。」
石田を助けたのは未だに自分の手を引かれながら泣き続けている硝子だと伝える右京。
そこで石田はようやく隣にいる硝子に振り向いた。
自分のせいでイジメを受けた西宮がまさか助けてくれたなんて…
「思えばキミと硝子さんには共通点があった。二人とも父親がいないことです。」
子供たちに父親がいないこと。
それを言われて母親である八重子と美也子は思わずお互い目を背けた。
こればかりはさすがに大人の問題であり子供には関係のことだ。
「キミと硝子さんのちがいなんて障害があるかどうかです。
本来ならキミこそが硝子さんの理解者になれたはずだった。
キミが硝子さんを受け入れればクラスの子たちともうまくやっていけたかもしれない。
こんな醜い事態に陥ることなど決してなかったはずです。」
そのことを聞かされて石田はかつて植野に言われたことを思い出した。
名前が似ていると…
将也(しょうや)と硝子(しょうこ)
その時は少し名前の読みが似ている程度だろと聞き捨てていた。
だが実際は自分たちの境遇が似ていたことに石田は少しだけ驚いた。
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:25:27.34 ID:3ai9I0vk0
「最後にひとつだけ言っておかなればならないことがあります。
石田くん、それに八重子さん。お二人は硝子さんが声を出せない。
何も伝えることが出来ないと思っていますね。」
「だって西宮は耳が…」
「そうよ。そのせいで硝子は声が出せないのよ。」
「そんなことはありませんよ。
彼女は正しい声を出せませんが我々と異なる声を出せることが出来ます。
それが手話でした。」
石田は硝子と出会ってから彼女がずっと手話で語りかけていたことを思い出した。
確かに硝子は手話を用いて自分たちとコミュニケーションを取ろうとした。
だが…自分たちはそれを拒絶した…
理由なんて単純だ。面倒くさかったからでしかない。
硝子一人のためにそこまでやりたくないと自分を含めた6年2組のみんなが思った。
けれど声が伝わらない硝子はそれ以外に何かを伝えることなど出来なかった。
硝子のつらさを知っていれば決してそんなことは思わなかったはずなのに…
「硝子…」
そんな後悔に打ちひしがれる石田と同じく
母親の八重子もまた手話を覚えなかったことに後悔した。
ずっとこの子のためを思って頑張ってきた。
自分の意思を伝えられない哀れな子だと思って…
けどそうじゃなかった。
硝子にもちゃんと意思がありそれを伝えることは出来たはず。
それが伝わらなかったのか…自分が娘の障害に目を背けていたから…
夫と別れる原因となった硝子の障害をずっと疎ましく思っていた。だから…
今頃になってそのことを悔やむ八重子と石田。
そんな時、硝子が石田の前で手話を用いてこう語りかけてきた。
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:26:44.09 ID:3ai9I0vk0
『石田くん、さっきはあなたのおかげで助かった』
『私を助けてくれてありがとう』
『それと…迷惑をかけてごめんなさい…』
手話のわからない石田に右京がそのことを伝えてあげた。
その意味を知って石田はこの場で号泣した。
「ちがう…そうじゃない…」
「俺はお前を助けたんじゃない…お前が俺を助けてくれたんだ…」
「それなのに俺は…お前を傷つけてばかりだった…」
「お前は何も悪くないのに…痛い思いをして…」
「ごめんなさい…西宮…本当に…ごめんなさい…」
それから石田は何度も硝子の前で何度も謝り続けた。
それはきっと遅すぎる後悔なのかもしれない。
石田はこの先ずっと今回のことを引きずって生きていくはずだ。
しかしそれでも石田は硝子に謝ってみせた。
その光景を目の当たりにしてこれまで静観していた神戸が右京にこう問いかけた。
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:28:34.93 ID:3ai9I0vk0
「杉下さん、本当にこれでよかったんですか。
正直僕たちが介入しなかった方がまだマシな結末を迎えたかもしれませんよ。」
「確かにそうかもしれません。
しかしこれは彼らが向き合わなければならない罪であり罰であった。」
「つまり真実に目を背くことは許されないってことですね。」
「そういうことです。
もしも僕たちが関わらなければ
竹内先生や他の児童たちは今回のことを近いうちに忘れ去るだけになる。」
「けどいずれ子供たちも成長して今回のことを振り返り反省するはずですよ。」
「確かにキミの言う通りになるでしょう。
いつか成長した子供たちが過去に硝子さんをイジメたことを悔やむ時がくるかもしれない。
ですがそれでは遅いのです。反省するのはいつかの未来ではなく今でなければならない。
彼らは今というこの時に反省しなければいけない。それが大事なんですよ。」
大事なのはいつかではなく今この時に反省すべきことだと右京は語った。
確かに今回右京たち特命係が関わらなければどうなっていただろうか?
子供たちは近いうちに
硝子や石田をイジメたことを忘れてこの出来事は風化していたかもしれない。
子供たちはこの先も自分の罪を認めることが出来ず、その行いに目を背ける。
そうなればまた同じ過ちが何度も繰り返される。
また今回のように立場の弱い誰かに責任を押し付け
最後には硝子や石田のようにイジメで被害に遭う人間が現れる。
そうなってからでは遅い。
だからこそ特命係は今回の件に関わった。
自分たち大人が
子供に教えることがあるとするのならそれは自らの行いに目を背けないことだ。
今回、特命係が6年2組のイジメ問題に関わる際に
神戸は当初からクラスの学級崩壊や西宮家の家庭崩壊を危惧していた。
その神戸の予想通り事態は最悪な展開を迎えた。
だがそれでもこの事実を明らかにしなければならなかった。
今回の件に関わる際、右京はこう言った。
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:29:22.61 ID:3ai9I0vk0
『心を鬼にする』
その言葉通り、特命係は心を鬼にして今回の事態に当たった。
これは必ずしも円満な解決方法などではない。誰もが傷つき涙を流した。
それでも突き止めなければならない真実がある。
たとえそれが残酷な真実であったとしても…
――――
―――
――
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 17:30:15.33 ID:3ai9I0vk0
これで本編は終わりです。あとはエピローグを残すだけになります。
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 19:12:38.66 ID:ft894qivo
弁護士のくずでもあったがいじめは大人が介入しいじめられる生徒の安全を確保したうえで
きちんとした話し合いが無ければ防げないんだよな
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 20:34:09.33 ID:SJGG/USR0
乙、だけど、
ほぼ直感の感想だと、いや、いやいや、明らかにバランスおかしいだろ。
確かに石田はかなり重大で責任はとるべきだけど、だからこそどう見ても石田のやった事以上、
神輿にされたガキ相手に、止める側の馬鹿担任や勝手にノッて石田って尻尾切った他のクズ共の自爆分まで持って来られてもなあと。
まあ、実際に逆恨みされるから心構えもあるんだろうし
>>1
の意図も分かるけど
バランスがどっかおかしく見えたりキミを助けたのではないとか古畑じゃあるまいにぶん殴ったりとか
この杉下右京、何様だ。
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:26:02.34 ID:3ai9I0vk0
2016年夏―――
「それでこの近くに美味しいナポリタンのお店があるんですよ。」
「そうですか。ナポリタンといえばキミの大好物ですからねぇ。」
あれから5年の歳月が過ぎた。
その日、右京は既に特命係を移動した神戸に昼食を誘われて街へと出ていた。
「ところで今度特命係に入ってきた新人くんはどうしたんですか?」
「冠城亘くんのことですか。警察学校で扱かれて大変だと泣き喚いていましたよ。」
「法務省のエリート役人が警視庁の一警察官に転職ですからね。前代未聞ですよ。」
「なんでもメガネの教官が特に厳しいとか…」
「ああ、鑑識の米沢さんが今年から警察学校に転任になりましたよね。」
彼らの話のタネになっているのは去年から特命係に在籍している冠城亘のことだ。
特命係にやってきた新人ということで冠城に興味津々な神戸だが…
さて、そんな話はさておいて神戸はあることを語りだした。
それは今から5年前に起きたとある事件のことだ。
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:28:47.39 ID:3ai9I0vk0
「ところで杉下さん、5年前の岐阜県大垣市での事件を覚えていますか。」
「あの事件ですか。覚えていますとも…」
5年前、水門小学校で起きた
西宮硝子のイジメ問題により児童たちの殺人未遂まで発展したあの事件。
その後の顛末は以下のモノだった。
担任の竹内は一連の騒動が原因で退職へと追い込まれた。
硝子の補聴器損害を黙認していたことと自らもまたそれを破損させた行い。
さらに児童たちが起こした殺人未遂の責任を取らされての処分だ。
6年2組の児童たちは14歳以下の未成年であったためどうにか逮捕は免れた。
それでも子供たちは各家庭で容赦ない叱責を浴びせられた。
そして硝子の補聴器の損害金170万円についてだが…
当初のようにやはり石田が主犯であるという事実に変わりはない。
そのため石田一家が100万円を負担。
残り70万円を他の児童たちの親と竹内が折半という形で支払うことになった。
その際、植野に関しては八重子が負傷させたこともありその支払いは相殺。
当初はこの支払いに渋った様子を見せる家庭もあったが
自分たちの子供が
殺人未遂を行ったこともありどこの家庭も大人しく損害金の支払いに応じた。
ちなみに右京たちが出向いた西宮八重子の夫が犯した宗教詐欺についてだが
八重子の供述通りであったため、夫の証言が嘘であることが判明した。
それにより夫と義両親にはさらに偽証罪が課せられることになった。
まさに因果応報の報いとでも言うべきだろうか。
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:30:13.26 ID:3ai9I0vk0
「あれから岐阜県警にいる知人に聞いたんですけど
杉下さんの予想通り6年2組の児童たちは何人かが転校していったらしいですね。
主に石田くんと一緒に硝子さんをイジメていた島田くんと広瀬くん。
それに殺人未遂の件で主犯扱いされた川井さんもその中に含まれています。」
「やはりそうなりましたか。
わかってはいましたがそれもまた仕方のないことかもしれませんねぇ。」
その後の詳細を聞かされて納得した様子を見せる右京。
右京自身これでよかったなどとは思ってはいない。
あの子たちも自分が犯した過ちを認めてしっかりと歩んでくれることを望むだけだ。
さて、そんな物思いにふける右京だがやはり気になるのはあの二人のこと…
「そういえば石田くんと硝子さんはあれからどうなったのですか?」
「実はそのことなんですけど…」
どうやら神戸が右京を珍しく食事に誘ったのはこれが本題らしい。
それから神戸は胸元のポケットから携帯を取り出して誰かと連絡を取ろうとしていた。
それから連絡先の主と繋がった時だった。
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:31:29.11 ID:3ai9I0vk0
「あの…ひょっとして…神戸さんと…杉下さん…ですか…?」
その時、右京たちはうしろから誰かに呼び止められた。
ふと見回してみるとそこには一人の少年がいた。
ボサボサ頭で高校の制服を着た18歳くらいの少年だ。
右京自身、一瞬誰なのかわからなかった。
そんな右京に構わず神戸がその少年に声を掛けた。
「やあ、久しぶりだね。石田くん。」
「石田くんとは…あの…石田将也くんのことですか…?」
「そうですよ。実は彼から連絡があって今日東京に来てくれたんですよ。」
「お久しぶりです。石田将也です。」
神戸からこの目の前に居る少年があの石田が成長した姿だと聞かされて右京は驚かされた。
これがあの石田かと…
かつて自分たちが遭遇した石田は
傷つきボロボロでそれに自らの行いを認められずにいた弄れた少年だった。
それがまさか今ではこんなに成長した姿で現れるとは…
そんな石田のうしろには一人の少女が隠れていた。
茶髪のロングヘアをなびかせた容姿の整った石田と同い年くらいの美少女。
よく見ると耳には小型の補聴器を付けていた。まさかこの少女は…
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:32:25.28 ID:3ai9I0vk0
「西宮、覚えてるだろ。杉下さんに神戸さんだよ。」
石田に促されてようやく自分たちの前にひょっこり姿を現したのはあの西宮硝子だ。
まさかこの二人が見違える程…成長を遂げるとは…
さて、再会を果たした彼らだが石田はなにやら手話を用いて硝子と会話を行っている。
それにしても石田の手話だがどうにも手馴れた動作だ。
まるで何年も掛けて覚え込んだモノに思えるが…
「石田くん、キミは手話を覚えたのですか?」
「はい。あれから色々とありましたから…」
色々とあった。たった一言の返事だがその言葉には重みがあった。
あの後、石田にもつらいことが多々起きたはずだ。
自らが招いてしまった愚行とはいえ散々な日々だったはず…
「それでも西宮が居たからここまでやってこれました。
西宮がいなかったらきっと俺は今でも腐っていたはず…だから…」
隣で心配そうに見つめる硝子に大丈夫だと手話で語る石田。
その様はまるで仲の良い恋人同士のように見えた。
そんな幸せそうな石田に右京はあることを問いかけた。
それは5年前に聞きそびれたある質問だ。
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:32:52.64 ID:3ai9I0vk0
「実は聞きたかったことがあります。
5年前、公園の水場でキミたちと初めて出会った時のことです。
あの時キミは硝子さんの筆談用のノートを堅く握り締めていた。
当時のキミにしてみればあのノートは忌まわしいモノだったはず。
それを何故大切そうに持っていたのですか?」
それが右京からの質問だった。
確かに当時あのノートは6年2組の児童たちの悪質な落書きに塗れたもので
本来の用途であるクラスの子たちと仲良くするための役割を果たせていなかった。
それを何故石田はあの時大切そうに握り締めていたのかがどうしても引っ掛かっていた。
「それは…あのノートが…水場に捨てられていたからです…」
「捨てられていたというと…つまり…島田くんたちが故意に捨てたのですか?」
「いや、そうじゃなくて…捨てたのは西宮自身でした…」
5年前のあの日、石田が右京たちと出会う直前のことだった。
一人で寂しく学校へ登校しようとした石田は
硝子が筆談用ノートを公園の水場に捨てているところを見かけた。
ずぶ濡れになりボロボロと化していた筆談用ノート。
それを石田は水場から引き揚げようとした。
それを同じく登校中だった島田たちに見つかりイジメられていたのが事の真相だった。
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:33:56.46 ID:3ai9I0vk0
「硝子さん、何故自分からノートを捨てたのですか?」
右京の問いに硝子は手話を用いてこう答えた。
当時の硝子は母親の期待に応えるため、
また自身も友達が欲しくて
筆談用のノートを使ってクラスの子たちとコミュニケーションを取ろうとした。
だがその結果は右京たちも知るように散々なものだった。
ノートには当時の石田をはじめクラスメイトから悪質な落書きをされるだけで終わった。
それでわかった。自分には友達を作ることなど決して出来ない。
当時、母が自分に望んでいた『普通』を手に入れることなど無理だ。
だからノートを捨てた。そのことを諦めてしまったから…
「俺は…西宮がノートを捨てるのを偶然見ていた…」
「あの頃の俺は自業自得だけど西宮と同じくイジメを受けていました。」
「でもノートが捨てられるのがなんとなく嫌だった。だからノートを拾ったんです。」
それは単なる偶然だったのかもしれない。
もしも硝子のイジメが
微々たるもので終わっていたら石田が筆談用のノートを手に取ることはなかった。
つまり硝子が諦めていたノートによって築かれるはずだった誰かとの繋がりは
同じくイジメを受けていた石田の目に止まったことで拾えてもらえた。
皮肉なことかもしれないがあのノートは硝子が誰かと繋がりを得る役割を果たせていた。
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:34:46.36 ID:3ai9I0vk0
「あの後…何度も落ち込むことがありました…
勿論その理由の大半は俺がガキの頃にバカやらかしたのが原因です…」
「昔は過去に戻れるならあの頃の俺を殺してでも止めたいと何度も思った。」
「けどそれでも俺は西宮に出会えた。」
「西宮と出会っていなければ今でも頭の悪いクソガキで終わっていたかもしれない。」
「だからあのノートは今でも俺たちの大切な宝物です。」
「あのノートのおかげで俺は本当の西宮と出会えたから…」
それが石田とそれに硝子の言葉だ。
かつて二人はイジメの被害者と加害者。障害者と健常者であり相容れない関係だった。
それが今では互いを思いやる存在へと変わった。これは素晴らしいことだ。
二人に芽生えた絆を思えば
どうやら当時は行きがかりであったとはいえ
特命係が硝子と石田のイジメに関わったことは無駄ではなかったようだ。
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:36:26.57 ID:3ai9I0vk0
「石田ー!早く来なさいよ!」
「そうだぞー!姉ちゃんも!モタモタしてると置いてっちゃうぞ!」
そんな時、誰かが二人に声を掛けてきた。
振り返ってみるとそこには
石田たちと同い年くらいの黒髪の少女と中学生くらいのボーイッシュな少女。
それに…
「こんな都会ではぐれたら大変でしょ。」
もう一人は硝子の母親である八重子だ。
当時と比べて些か老け込んだように見える八重子。
話を聞くと先月に祖母が亡くなりそのことで塞ぎ込んでいたとか…
しかし石田たちが協力してくれたおかげで今では立ち直ることができた。
もしも石田が動いてくれなかったら八重子はまだ塞ぎ込んでいたはず。
それほどまでに今の石田は西宮一家に影響をもたらしていた。
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:39:02.70 ID:3ai9I0vk0
「それではあちらのショートカットのお嬢さんは妹の結弦さんですね。」
「もう一人は確か…植野さんだね。」
かつては不登校であった妹の結弦は活発な少女へと変貌を遂げていた。
しかも5年前は石田に対して憎たらしげに睨みつけていたのがどうだろうか。
今では彼を義兄だというかのような扱いになっている。
それに植野も当時と比べると口調が柔らかくなった。
どうやら石田と同じくこの二人も5年間で色々と変わったようだ。
「ところでみなさん今日はどういった用事で東京を訪れたのですか?」
「実は西宮と植野が地元を離れてこっちに上京することになったんですよ。」
石田に事情を説明してもらったが
硝子は来年からこの東京の美容師の専門学校に、
植野もまたこの東京にある服飾の専門学校へ通うことが決まった。
今日は硝子と植野が一人暮らしする部屋を家族と一緒に探しに来たとのことだ。
どうやら硝子と植野は地元を離れて都内で一人暮らしを始めるらしい。
この子たちはもう子供ではない。来年から19歳になり独り立ちする時期だ。
石田は地元に残るようでそんな二人をどうにも寂しそうに見つめているのだが…
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:41:00.33 ID:3ai9I0vk0
「何を言ってるの?石田くんもこっちで暮らすのよ。」
「え?おばさん…でも…俺は…」
「諦めろよ石田!
もう石田のおばさんが姉ちゃんと同じ学校にお前の願書送ったんだぜ。観念しろ!」
「いや…俺は…」
「こっちで硝子に変な虫が付いたら大変でしょ。だからこっちでも支えなさい。いいわね。」
「石田!こっちでもよろしくね!」
どうやら石田自身も知らないうちにこちらの専門学校へ願書を出されていたらしい。
そのことを今になって知らされたわけだが…
そんな石田たちを微笑ましそうに見つめる右京たち。
その光景は彼らの記憶にあった5年前とは余りにも異なるものだった。
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:41:55.13 ID:3ai9I0vk0
「もうあの子たちのことを心配する必要はなさそうですね。」
「そうですね。石田くんと硝子さんはお互いが通じ合っているみたいですから。」
「そう、あの二人には互いの心が通じ合える『聲』がある。
確かに硝子さんの耳に普通の声は届かない。それでも硝子さんにも発せられる聲がある。
それは人とはまったく『異なる聲』の形があるのですから。」
硝子の耳が聞こえないのは不幸な出来事だった。
それでも硝子には支えてくれる人たちが、理解してくれる人たちがいた。
母の八重子であり妹の結弦でありそしてこの石田でもあった。
彼らは硝子の聲をわかってくれた。
恐らくここまで来るのに右京たちには知ることのない物語があったはず…
それは果てしない苦労と挫折の連続だったのかもしれない。
それでも諦めずに彼らは今の繋がりを築くことが出来た。
去り際、石田と硝子が立ち去るのを見送りながら右京は石田に向かってこう伝えた。
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:42:23.25 ID:3ai9I0vk0
石田くん、キミは立派になりましたよ――――。
end
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:43:52.13 ID:3ai9I0vk0
これでこのssは終わりです。
最後は駆け足で終えましたがとりあえずやるべきことはすべてやりきったのでご容赦ください。
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 22:47:10.84 ID:QZuQkjrs0
乙!
面白かった
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 22:49:16.36 ID:3ai9I0vk0
>>155
まあ今回のssに関しては読んでくださった方の賛否両論はあると思います。
ちなみに私の結論から言わせるとこのssは別に石田の救済を行ったわけではなく
原作では石田だけが悪いということをみんなが悪いという結果に変えただけです
だから原作通り石田が悪いことはなんら変わりありません。
私も右京さんがよその子相手にビンタやったのはやりすぎかなと思いましたが…
けど原作だと補聴器騒動で石田は親や教師から怒鳴られはしたけどちゃんと叱られてはいないんですよね。
だからビンタくらいはやっておくべきかなと思ったまでで…
実際石田が行った補聴器騒動はどうあっても擁護出来る点が一個もないしね
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 22:53:05.65 ID:ft894qivo
乙
いいラストだった
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 23:10:24.63 ID:SJGG/USR0
乙でした、楽しませてもらいました
その上で、最後にまとめて書かせてもらうと
個人的な感じ方「相棒」観が多分に入ってると思うけど、自分が違和感覚えたのはこういう事だと思う
起きた事は満遍なくで中心人物と「相棒」コンビを中心に見せた結果、具体的には八重子と石田に変に辛く見える作りになってて、
理屈で言うと「責任」と「原因」の区別ついてるか? って印象を与えてる
もう一度言うけど、起きてる事を満遍なく杉下右京が触った結果、右京自身も言ってる通りの総懺悔状態になって
根本的に、より以上に悪化させた連中も均等になる分、メイン人物の罪が理屈よりも一段重く見える形になってる訳
自殺未遂から殺人未遂って問答無用の破局が無ければ天秤が八重子にガクンと、
その後は石田に無駄に悪化した分までごっそりとってのがドラマチックな形で
「聲の形」は主役がいて現実の延長で普通の人達がこうなる、っ、むしろ理屈が通じないのも現実の内ってドラマを見る作品だけど
杉下右京と言う論理的な「賢者」の裁定としてはどこかバランスがおかしく見える
その辺り、「聲の形」に引っ張られ過ぎたか、極端に言えばガワと言うか作者のアイコンって言う印象が強くなる
それから、もちろん杉下右京が例え悪人相手でも、まして子どもに手を上げるのは普通には見かけない
単に作中でやらないと言うだけじゃなくて、憤怒辛辣哀れみの表現の方が余程痛いし怖い
加えて、むしろ君であっても助けなければならないと言う事と君は責任を取らなければならないと言うのが警察官であり矛盾しない
特に子ども相手なら、現実は現実としながらも本人がやっただけの責任を論理的に釘を刺す方が杉下の流儀だし十分厳しいものに思える
自分でも何処まで正しいか分からない感想垂れ流したけど、全体としては見ごたえのある面白いssをありがとう
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 23:18:49.37 ID:SfA2ZMjCo
乙!面白かった。久しぶりに読みごたえのあるSSだった
うざい自己主張垂れ流し長文レスがなきゃもっと良かったわ
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 23:32:33.92 ID:nWnaPEnEo
事件が終わり、時は流れて人の関係も変わっていく
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 23:43:16.04 ID:iOuMoMIDO
乙です
色々あるけど一言だけ『面白かった』
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/24(土) 03:27:33.41 ID:d5W2u7Mw0
>>1
の解釈の仕方がわかって面白かった
またなんか書いてな
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/24(土) 11:03:45.07 ID:jkcT+JDs0
>>1
のうざい自己主張垂れ流し長文レスがなきゃもっと良かったわ
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/06/24(土) 12:40:22.17 ID:5NVECd0u0
良く考えたら
この猛毒馬鹿ッ母が教えなければ偽善良い子主人公はいったい誰に手話教わったのかと
祖母か?コイツも役に立たなそうだし
原作がこうだとしたらかなりご都合的に作られたというのが良く分かる髄所のアラの多さが垣間見えてくる
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/24(土) 23:38:34.20 ID:buIEL4ni0
考証的な粗探しも入るし申し訳ないけど、整理出来たから書かせてもらうわ
官房長から見たら歪んでるかも知れないけど、杉下右京は何よりも警察官であろうとする、そういうキャラクターな訳
その杉下右京なら、補聴器事件の真相が明らかになった時点で
あの推理ショーはやったとしてもその後はイタミンならぬ県警の少年課に引き継いで児童相談所に送致する様に対処する
後から割り込んで警部どのぉーな事はしても、その順序は弁えてる
通りすがりだから穏便にやるなら校長から通報する様に強く進言する
現実的に見て少年課や児童相談所に杉下右京ほどの洞察力は無いかも知れないけど、
あんな全方位糾弾やるんなら、大混乱の渦中で場も分も弁えずに教育的には大きく問題でも犯罪者でもない八重子に説教垂れて
植野事件から自殺・殺人未遂事件まで連鎖爆発引き起こして無駄に犯罪者増やした
杉下右京こそ何様だ。なんだよ
2011年時点でも、その後なら特に、いじめ対策でやるべき事として
仮に単独犯の認識でも小学校も高学年で補聴器破壊の規模、悪質さなら、警察入れて児童相談所や家庭裁判所「ぐるみ」で対応すべき内容とされてるし
そうやって関わる関係者、フォローを多角化していればもう少しマシに推移する目はあった
無能な隠蔽校長は実際にもいるから「聲の形」ならそれでいいんだけど、杉下右京までその世界観に合わせて事態悪化させてどうすんだと
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/25(日) 12:14:53.99 ID:IQ/0JOWGO
チラシの裏にでも書いてろ
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/25(日) 13:24:52.48 ID:r/rCCoYJo
そのフレーズかなり久々に聞いたな
そしてこの上なく的確な使い方だ
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/26(月) 00:25:41.45 ID:dQbFmAkG0
乙でした
すげえ面白かった
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/26(月) 00:26:20.99 ID:dQbFmAkG0
すみません、上げてしまいました
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/26(月) 08:44:52.38 ID:fSeh3Pv6O
書き物なんだからなんか現実的じゃないのは仕方がないだろうよ
現実的な落とし所とか書いても山もオチも出来なくて書き物にならんよ
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/30(金) 01:23:38.98 ID:93Jcstdj0
この作者の作品を他にも読んだことあれば、こんな細かいアラなんざ探したって無駄だってことがよくわかるのにな。老人な時代劇をみる目で楽しむもんなんだよ。それができないならそっ閉じしてろ
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/30(金) 21:04:15.73 ID:AMNfy5N/o
でもお前童貞だろ
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/04(日) 19:02:26.24 ID:sk8rFKpAO
アイドルマスターシリーズを汚すのが大好きな八幡豚達
八幡xしぶりんは至高
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ライト
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たまかが
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葦村
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