【ポケモン】しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」その2【クレしん】

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304 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 18:43:01.26 ID:AhocT7pU0
一方その頃、月輪の祭壇では……。

テッカグヤ「フー……」

アクジキング「グモォォォッ!!」ガツガツムシャムシャ

ハプウ「ぬぅ……なんとしぶといビーストじゃ! バンバドロといい勝負じゃな!」

バンバドロ「ヒヒウンッ……!」

ハウ「ガオガエン、まだ戦えるー?」

ガオガエン「ガォォッ……」

ハウ「グラジオー、ヌルはへいきー?」

グラジオ「……」

ヌル「オォォ……」ブルブルッ
305 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 18:47:08.68 ID:AhocT7pU0
ヌルは全身に大やけどを負って、弱々しくその場で横たわっていた。

マリエ庭園での戦いからアクジキングに警戒はしていたものの、アクジキングのタフさと威力にものを言わせた攻撃で、次第に弱っていき、さらにそこへテッカグヤの大文字を食らってしまい、体力は限界に近づいたのだ。

グラジオ「ヌル……すまない。オレが不甲斐ないばかりに、何度もオマエを傷つけてしまった」

ヌル「……」

リーリエがエーテルパラダイスに連れ去られた時の怒りを抱いたまましんのすけと戦った時、ヌルに余計な傷を追わせてしまった。マリエ庭園でも己の慢心のせいで、危うくヌルが食われてしまうところだった。

グラジオ「許しを請うわけじゃない……。だが、オレは――」

ヌル「オ……オオッ!」ユラッ

だが、ヌルは4つの足でしっかりと立ち上がり、緑色の瞳をグラジオに向けた。まるでグラジオに「しっかりしろ、オマエと俺は一心同体だ」と語りかけているように。

グラジオ「ヌル……またオレと供に戦ってくれるか?」

ヌル「オォォッ……!」

ピシピシッ!!
306 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 18:48:29.03 ID:AhocT7pU0
グラジオの言葉に応えるがごとく、ヌルの力を拘束していたカブトにヒビが入る。ヒビの内側から、光が漏れ出してくる。

ハウ「ヌルのカブトがー!」

グラジオ「オレを、信じてくれるか?」

ピシビキッ!

グラジオ「なら――今こそオレにチカラ、貸してくれ!」

ピシッ!

グラジオ「『 シ ル ヴ ァ デ ィ 』 ! ! 」

バキンッッ!!

シルヴァディ「ド ド ギ ュ ウ ウ ー ン ッ !」

タイプ:ヌルを制御していたカブトが外れ、その中から白い毛並みに覆われた、猛禽類のごとく勇ましい顔が現れて咆哮を上げた!

ハウ「ヌルが、進化したー!」

ハプウ「おおっ! なんと荘厳なポケモンじゃあ!」
307 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 18:50:37.30 ID:AhocT7pU0
グラジオは懐に手を伸ばすと、一枚のメモリを取り出した。

グラジオ(奴のタイプはあく・ドラゴン! ならばこのタイプだ!)

グラジオ「シルヴァディ、ARシステム起動!」

グラジオ「無垢なる力から、遍くを浄化する神聖なる力へ、その身の性質を変化しチカラ、振え!」スッ

グラジオはシルヴァディの頭部に向かってメモリを投げると、それをわかっているようにシルヴァディも飛び出し、メモリを頭部に受け止めた。すると、頭部や尻尾が白から鮮やかな桃色へと変色した!

シルヴァディ「……!」キラキラッ

グラジオ「シルヴァディ! ヤツにマルチアタックだ!」

シルヴァティ「オオオッ!!」ダッ!

ARシステムでフェアリータイプとなったシルヴァディは、一度力を溜めると飛び出し、アクジキングに両前足の爪で切り裂いた!

ザンッ!!

アクジキング「ズモッ! オォォォ……」

ズズンッ

一撃を喰らい、沈んでいくアクジキング。
シルヴァディはフェアリーメモリを頭部から飛び出すと、グラジオはそれをキャッチ。代わりにグラジオはエレクトロメモリを取り出すと、それをシルヴァディの頭部に投擲した!

グラジオ「遍くを浄化する神聖なる力から 万物を貫く雷霆の力へ、その身の性質を変化しチカラ、振え!」
308 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 18:51:37.89 ID:AhocT7pU0
するとシルヴァディの体色が黄色に変色し、電気を帯び始めた!

シルヴァディ「……!」バチバチッ!

ハプウ「ほにゃあ……その奇妙な機械を使って、タイプを変化させているのか!」

グラジオ「そう、これがビースト・キラーであるタイプ:ヌル……シルヴァディの真髄だ!」

グラジオ「シルヴァディ、その森羅万象の力を異界の敵にふり下ろせ! もう1匹のビーストにマルチアタックだ!」

シルヴァディ「オオォッ!!」

今度はでんきタイプになったシルヴァディは、雷鳴の如き疾さでテッカグヤに接近すると、顔から足に掛けて、電気を帯びた爪で唐竹に切り裂く!

ザンッ!

テッカグヤ「フー……!?」

アクジキングと同じように、テッカグヤも、でんきのマルチアタックで大きなダメージを負い、巨体が大きな音と振動を立てて倒れ伏した。

ハウ「ヌル、すごい……!」

シルヴァディは身を翻してグラジオのもとに戻ると、甘えるように顔をグラジオへ摺り寄せた。

シルヴァディ「オオオ……」スリスリ

グラジオ「フッ……これからも、頼む。シルヴァディ」
309 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:02:14.95 ID:AhocT7pU0
ウルトラスペース 奥

ルザミーネ「どこまでもどこまでも……しつこい人たちですわね!」ギロッ!

リーリエ「かあさまを元の世界に連れて帰るなら……追います! どこまでも!」

ルナアーラ「マヒナぺーア!!」

しんのすけ「やい、妖怪メノクラゲオババ! オラが来たからにはもう負けないゾ! 大人しく降参しろ!」

ルザミーネ「しんのすけ君――残念ですわ……大人しくわたくしの息子になっていればいいものを。そうすれば、ビーストちゃんと一緒に、新しい未来を切り拓けたかもしれないのに」

しんのすけ「オラのかーちゃんはみさえだもん! ルザミーネおねいさんの子供はリーリエちゃんとクジラくんでしょ!」

ルザミーネ「そんなこと、もうどうでもいいでしょう。……本当はこのまま、アローラもこの世界も、ビーストで満たすはずだったのに!」

ルザミーネ「こうなれば、わたくし自身があなたたちを直々に葬ってあげます。ビーストちゃんの力を得たわたくしに、伝説のポケモンなど取るに足りません!」グニャッ!

しんのすけ&リーリエ「……!」スッ

グズマ「……ちょっといいか」
310 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:05:12.02 ID:AhocT7pU0
しんのすけ「んもーなに? せっかく気合入れるところだったのに」

グズマ「一度、代表と話す時間をくれ。代表には世話になったからな……その筋を通してえんだ」

しんのすけ「魚の卵の……」

リーリエ「それは筋子です」

ルザミーネ「グズマ……ふらりと消えていったと思ったら、その子達についていたのね。だらしのないコ」

グズマ「……今まで俺たちを助けてくれて、カンシャしてるぜ。代表」

グズマ「最初に、代表と会ったときのこと、今でも覚えてる」

ルザミーネ「……」

グズマ「あんときゃスカル団もまだ名が知れてなかった頃だけどよぉ。ポータウンに代表が直々にやってきて援助をするって聞いたときはびっくりしたぜ」

グズマ「そしてなにより、生まれて初めてオレの力が必要だと言われたことが、胸ん中に刻まれてるんだ」

グズマ「嬉しかったぜ……。今まで、オレ様の気持ちを理解せず、期待ばかり押し付けて勝手に失望しやがった師匠や親どもと違っていたからな。俺にとって代表は、自分の力を認めてくれるだけじゃなく、本当の親のように思える時さえあった」

ルザミーネ「そう」
311 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:06:22.90 ID:AhocT7pU0
グズマ「……ブッ壊してもブッ壊しても手を緩めなくて嫌われているグズマさまだがよ、これだけは一つ言わせてもらうぜ」

グズマ「アローラをブッ壊してまで、代表がしたかったことが正しいとはオレは思わねぇ」

グズマ「ウルトラビーストに愛を注ぐのは代表の勝手だ。だが、アローラにはオレとあいつらの居場所があるんだ。代表の好き勝手にしていいもんじゃねぇだろうが」

ルザミーネ「破壊という言葉が人の形を成しているあなたが、それを言うのかしら?」

グズマ「ああ、歯向かうもんをブッ壊すのは好きだがよ、大事なもんまでブッ壊されるのは我慢なんねぇのがグズマ様だ」

ルザミーネ「じゃあ今度は、あなた自身が壊れる番よ」ブンッ!

グズマ「!」

ルザミーネが不意をつくようにグズマへ触手をふり下ろそうとした刹那、矢羽根が空を切り、触手を弾いた。
驚いたグズマが背後へ振り返ると、カザマが弓を構えていた。

グズマ「じゃがいも小僧……」

しんのすけ「おじさん無茶しちゃダメ。オラたちに任せなさい」

リーリエ「グズマさん……あなたがかあさまに向けた想い、わたしたちが代わりに伝えます!」

グズマ「……仕方ねぇ、好きにしな」

グズマ(やっぱりよぉ……結局オレは、代表にとっちゃ都合のいい道具だったのか。じゃがいも小僧たちに任せんのも癪だが、頼んだぜ。お前たちが代表に言葉と想いを届けてくれや)

グズマが身を引くと、しんのすけとリーリエ、ルザミーネが視線をぶつけ合う。
312 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:09:42.82 ID:AhocT7pU0
ルザミーネ「親に縋らないと生きることもできない子供の分際で、わたくしに逆らおうなどと、絶対に許しません! この力で、脆弱なあなたたちを消し去ってあげる!」

ルザミーネはたけりたちながら、触手を振り下ろすとネネが前に立って触手を受け止めた!

キテルグマ『消し去るですって? 上等じゃない!』ググッ

ネネは渾身の力で触手を押し返すと、ルザミーネがよろめく。その隙にあいが飛び出し、ルザミーネにとびひざげりを放つ!

フェローチェ『あいはしん様以外、誰のものにもなるつもりはありませんわ。あなたの愛なんて、受けたくありませんの』ドゴッ!

あいのとびひざげりを受けて、ルザミーネは岩壁にぶつかるとぎょろりと彼女を凝視した。反撃しようと触手をしならせて動き出した瞬間、マサオが口を膨らませ、ボーちゃんは垂れている鼻水の影を爪に変えて飛び出してきた。

ヨワシ『僕たち、ひとりひとりじゃ弱いかもしれないけれど』ブシューッ!

ミミッキュ『みんなで力を合わせれば、怖いものはない!』ジャキンッ!

ボーちゃんのシャドークローが触手を弾き、マサオのハイドロポンプでルザミーネを上空まで押し上げた!

ルザミーネ「このっ……!」バッ!

ルザミーネは煌く石を出現させると、パワージェムを放つ!

ジュナイパー『だから僕たちはしんのすけと歩んでいくって決めたんだ! みんなで強くなって、島巡りチャンピオンのポケモンになるって!』ドシュッ!!

ドゴォォンッ!!
313 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:10:56.99 ID:AhocT7pU0
カザマが放ったかげぬいの矢とパワージェムの光線がぶつかりあうと爆発して、そのまま打ち消された!

ルザミーネ「ヴアアアウッ!」ゴウッ!

怒りをそのまま放出するように、ルザミーネは次にすべての触手からパワージェムの光線を発射した!

リーリエ「ほしぐもちゃん!」

ルナアーラ「マヒナぺィーアッッ!!」カッ!

ルナアーラが雄叫びを上げると、透明の大きなバリアがしんのすけたちを覆い、ルザミーネのパワージェムを防いだ!

ルザミーネ「……なんなんですか」ワナワナ

ルザミーネが苛立ちを隠せないように全身を震わせて金色の眼差しをしんのすけ達に向ける。

ルザミーネ「なんなんですか、あなたたちは! 何の意味があってわたくしの邪魔をするのです!」

リーリエ「邪魔ではありません! 道を踏み外したかあさまを救いたいのです!」

しんのすけ「オラ、みんなと一緒にだいたい試練をクリアして、島巡りチャンピオンになって、おねいさんたちモテモテになりたい!」

しんのすけ「――だからっ、妖怪メノクラゲオババなんかに……オラたちの未来を、めちゃくちゃにされてたまるもんかーーーっ!」

カッッ!!
314 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:11:47.35 ID:AhocT7pU0
突然、しんのすけの強い想いに答えるかのように腕にはめているZリングが赤い光を発した。Zリングから解き放たれる赤い光を浴びたカザマたちも、赤いオーラをまとった!

ゴウッ!!

ジュナイパー『!』

リーリエ「しんちゃんのZリングが……!」

しんのすけ「んんっ、なんか熱い!」

グズマ「このオーラは――ぬしポケモンが纏うオーラと同じじゃねぇか!」

キテルグマ『なに……これ?』

ヨワシ『力が湧いてくる……!』

ミミッキュ『やっぱり……』

フェローチェ『どうなさったのですか?』

ミミッキュ『僕らはウルトラホールを通って、この世界にやってきた。今の僕らはぬしポケモンたちと同じ、Zパワーを宿してる』
315 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:13:08.64 ID:AhocT7pU0
ジュナイパー『以前……ボーちゃんは、ぬしポケモンはウルトラホールのエネルギーを浴びて力を増したって言ってたね』

ミミッキュ『うん、そして、しんちゃんのZリングもウルトラホールのエネルギーをまとって、僕らと心を通じ合わせた』

しんのすけ「ほーほー、つまりオラとカザマくんたちは今、心と心が絡み合ってる関係ということですな! いや〜ん」

ジュナイパー『間違ってないけど、気色悪い言い回しをするな!』

フェローチェ『それで、なにをすればよろしいのですか?』

ミミッキュ『みんなのZパワーと、しんちゃんの想いを重ねる!』

ミミッキュ『しんちゃんのZリングに、みんなに宿ったZパワーを! しんちゃんは、みんなのZパワーとひとつになる! そうすれば、何かが起きる!』

しんのすけ「よーし! アローラ防衛隊、ファイヤーーーーッ!!」ダッ!

カザマたち『フ ァ イ ヤ ー ー ー ー ッ ! !』ゴウッ!

しんのすけがジャンプしてZリングを掲げると、カザマたちは一斉にZパワーを放出した! 赤いオーラがしんのすけのZリングに集まっていき、しんのすけを覆っていく!

キィィィィン!

ルザミーネ「今度は何をしようって言うの……?」
316 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:13:49.35 ID:AhocT7pU0
ゴウゥッ!!

オーラが振り払われると、しんのすけは地面へと着地した。その場にいた全員が、しんのすけの左手には、Zパワーに包まれる前には持っていなかった、あるものを握っている事に気付いた。

しんのすけ「……!」

ルザミーネ「それは……っ!」

しんのすけの手に握られているのは、不思議な桃色に輝く球体のクリスタル。その内側には、アクション仮面のマークが刻まれていた。

ルザミーネ「――Zクリスタル?!」
317 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:14:40.11 ID:AhocT7pU0
しんのすけ「これがオラたちアローラ防衛隊のゼンリョク! 愛と正義と女子力とゆるゆるさの結晶! 『アクかめZ』だゾ!!」キランッ

ジュナイパー『女子力とゆるゆるさは余計だよ!』

グズマ「嘘だろ……。じゃがいも小僧のヤツ、Zクリスタルを創ったっていうのかよ!」

リーリエ「新しいZクリスタルを創っちゃうなんて、そんなの本にも……ううん、こんなこと……しんちゃんもポケモンさんも、すごいですっ! すごすぎです!!」

ミミッキュ『ボ! 人とポケモンの絆と想いに、ウルトラホールのエネルギーが加わることで、Zクリスタルは創られる! 僕の予想が、当たってた!』

ルザミーネ「Zクリスタル――そんなもので! このわたくしを倒せると思わないで!」

ジュナイパー『しんのすけ! Zワザ行くぞ!』バサッ!

しんのすけ「ブ・ラジャー!」

バッ! バッ!
A! B! B! A! A! B! →! →! ←!

グズマ「なんだァ? あの変わったポーズ?!」

ピカッ! ゴウッ!!

カザマは Zパワーを 身体に まとった!

カザマが 解き放つ
全力の Zワザ!

ア ク シ ョ ン ビ ー ム ガ ン !
318 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:17:57.98 ID:AhocT7pU0
カザマは片翼を上げると、赤と青と白色の光が集まってきた。そして空いたもう片方の翼を弓状に折り曲げた。光が虹色の矢の形になると、カザマは矢を翼につがえて引き絞った。

ルザミーネ「そんなものっ!」ゴウッ!

ルザミーネが触手を広げると、赤いオーラをまとい数え切れない程の煌く岩を出現させて、それを結集させた。巨大なパワージェムとなり、極大の光線を放つ!

ルザミーネ「ルァァァッ!!」カッ!

ドゥゥゥゥッ!

しんのすけ「カザマくん! ファイヤーーッ!」

ジュナイパー『ファイヤーーーッ!』バシュッ!

ゴウッ!!
キィィィィィン!!

カザマが手を離すと、光の矢が、先端にアクション仮面を象った赤いビームとなり、ルザミーネに向けて発射された!

ジュナイパー『うわあっ!』

反動でカザマが後方へ下がっていくが、しんのすけとマサオ、ネネ、ボーちゃん、そしてあいちゃんが抑える。

しんのすけ&ジュナイパー「ぬくくくっ……!」

ドドドドドドド!!!

ルザミーネ「ヴヴヴヴッ!!」

パワージェムとアクションビームがぶつかりあい、Zパワーによるワザ同士のつばぜり合いが始まる!
319 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:20:58.89 ID:AhocT7pU0
リーリエ「――ほしぐもちゃん! しんちゃんたちを助けてッ!」

ルナアーラ「マヒナペッ!」バサッ!

ルナアーラが飛び出すと、再び第三の目を開眼し、全身が真っ白に染まる。
フルムーンフェーズになったルナアーラは、アクションビームガンを補助するように、青い波動をビームガンに向けて放った!

ルナアーラ「マヒナぺーーーアッ!!」カッ!!

ブゥゥゥンッ!!

ルザミーネ「なにをっ!」

ルナアーラが力を貸すと、一気に威力が増大したアクションビームガンがパワージェムを押切り、ルザミーネの全身を貫く!

ゴ ウ ッ ! !

ルザミーネ「うああああーーーっ!!」

ルザミーネ「嫌っ! 嫌あああっ! この世界は……自分の愛する……美しいものでなければならないのに……!」ピシッ ピシッ
320 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:22:05.58 ID:AhocT7pU0
リーリエ「いいえ、世界はあなたの愛を満たすためのモノではありません!」

ルザミーネ「!」

ルザミーネを覆っているウツロイドが光を放ち、苦痛に悶える中、リーリエの声がルザミーネに響く。

リーリエ「興味を失ったらそれまでなんて、ひどすぎです!」

リーリエ「――ですけど、あなたはそれを分かっていたはずです! 本当のかあさまは、どんなポケモンも心の底から愛していました。わたしのことも、にいさまのことも愛していました!」

リーリエ「だから戻ってきてください、あの頃の――みんなを、人もポケモンも本当の意味で愛していた昔の優しいかあさまに!」

ルザミーネ「……ッ!」

パキンッ!
ドォォォォン!!

そして、ルザミーネを中心に大爆発が起きた。衝撃波がたちどころにしんのすけたちを襲い、吹っ飛ばされてしまう。

しんのすけ「おわわっ!」

ジュナイパー『うわぁぁっ!』

ゴゴゴゴゴ……

グズマ「ど、どうなっちまったんだよお……?」

しんのすけ「……あ!」
321 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:22:55.58 ID:AhocT7pU0
爆発が収まり、煙も空へ溶けるように消える。
空中には人間の姿に戻ったルザミーネと1匹のウツロイドが浮かんでいた。ウツロイドはボールへと戻るとその場に転がり、ルザミーネも同時に地面へ倒れた。

リーリエ「かあさまっ!」ダッ!

倒れて目を閉じるルザミーネに、リーリエが駆け寄る。
リーリエが顔を覗くと、うっすらと、ルザミーネも目を開けた。

リーリエ「かあさま……」

ルザミーネ「リーリエ……」

すると、ルザミーネは自分の右手を持ち上げて、傷と砂で汚れたリーリエの顔に、優しく触れた。リーリエも、ルザミーネの手をそっと握る。

ルザミーネ「……」

リーリエ「……」コクンッ

ルザミーネ「……ふふ」

先ほどの狂気に満ちたモノではなく、どこか満ち足りて安心したような微笑みを浮かべると、人差し指を、リーリエの唇に当てた。

ルザミーネ「あなた……少しは、きれいになったのね……」

それを最後に、右手が崩れ落ち、ルザミーネは意識を失った。
322 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:23:41.04 ID:AhocT7pU0
「しんのすけーっ!」

しんのすけ&リーリエ&グズマ「!」

振り返ると、マザービーストの姿から元に戻ったみさえとひろし、ひまわりとシロ、そしてぶりぶりざえもんとプルメリが駆け寄ってきた。

みさえ「2人とも大丈夫? みんな無事?」

しんのすけ「おわっ! 妖怪メノクラゲオババから醜い妖怪ケチケチオババに戻ってる!」

みさえ「もっかいメノクラゲオババに戻ってやろうか? あ?」

しんのすけ「い、今の美人のママでいいです」

ひろし「ルザミーネは?」

リーリエ「かあさまは……戻ってきました」

リーリエの笑みを見て、みさえも笑いかける。

みさえ「……そう、やったのね」

ズズンッ!!
323 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:24:46.29 ID:AhocT7pU0
全員「!」

突如、ウルトラスペース全体が揺れ始めた!

グズマ「なんだ? どうしたってんだよ!? いいところだってのによお!!」

――じぇるるっぷ……!

しんのすけたちの周囲に、再びウツロイドが出現した!

リーリエ「ウツロイドさんが、たくさん……!?」

プルメリ「こりゃ、穏やかじゃなさそうだね……!」

リーリエ「ほしぐもちゃん!」

ルナアーラ「マヒナぺーア!!」

ルナアーラは雄叫びを上げると、しんのすけたちが光に包まれていく。ウツロイドたちが襲いかかろうとした瞬間、ウルトラスペースから姿を消した。
324 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:41:32.71 ID:AhocT7pU0
月輪の祭壇

――マヒナぺーアッ!

ルナアーラの鳴き声で我に返ると、しんのすけたちは月輪の祭壇に戻っていた。

「!」

ハウ「あー! みんな戻ってきたー!」ピョンピョンッ

グラジオ「フッ……みんな取り戻せたようだな」

ハプウ「伝説のポケモンはおるわ、ウルトラホールは空いておるわで何事かと思ったが……まあなにはともあれ、みな無事で良かった」

ハウ「わーーしんのすけー! 無事だったんだねー! よかったよー!」ギュウウウッ

しんのすけ「ううっ、ハウくん気色悪っ!」

ハウ「気色悪くたっていいよー! しんのすけがいなくなっちゃうくらいならいくらでも気色悪くなるもんー!」スリスリ

ハプウ「しんのすけ、無事でなによりじゃ。よく戻ってきた」

リーリエ「にいさま! かあさまは?」

グラジオとハプウはルザミーネのそばに立って、脈を測り容態を確認する。

グラジオ「……衰弱しているが、意識を失っているだけだ」
325 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:44:30.85 ID:AhocT7pU0
ハプウ「そこのでかいの、ルザミーネをお連れしろ……弱っておられるが無事じゃ。はやく手当てせねばのう」

グズマ「え?」

グラジオ「……グズマ」

グズマ「……!」

グラジオ「母上を、頼む」

グズマ「……ああ、言われるまでもねえ」

プルメリ「あたいも手伝うよ」

グズマとプルメリは、バンバドロにルザミーネを乗せると、月輪の祭壇の階段を降りていった。このままエーテルパラダイスに連れて応急処置を受けるのだろう。

ハプウ「リーリエ……ハウとグラジオから話は聞いたぞ。しんのすけを助けるために、ポケモントレーナーになって、しんのすけのポケモンたちと力を合わせたそうじゃな」

リーリエ「は、はい!」

ハプウ「顔を見ればわかる。よく頑張った。おかげでお主の大切なもの、すべて取り戻せたようじゃな」
326 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:45:59.33 ID:AhocT7pU0
しんのすけ「えっ、カザマくんそうだったの?」

ジュナイパー『あぁ、一度リーリエさんの手持ちになったんだ。僕らも彼女も、お前を助けたいって気持ちがあったから、僕らも力を貸してあげたんだ』

キテルグマ『技の指示になれるの、大変だったんだから』

ヨワシ『でも、ぶっちゃけリーリエさんの方がこまめに世話をしてくれたし、頼りになったよ』

しんのすけ「」ガーーン!

しんのすけ「どーせオラなんてトレーナーに向いてないもん……」ズーン

ヨワシ『う、嘘だよしんちゃん!』

フェローチェ『ご心配なく、あいはいつでもしん様の味方ですわ!』

キテルグマ『ホントはみんな、しんちゃんと戦いたかったんだから!』

ジュナイパー『Zクリスタルを創っただけでも、充分ありがたいよ!』

ミミッキュ『よっ、色男』

しんのすけ「いやぁそこまで言われちゃあねぇ」ルンルン

ジュナイパーたち『はぁ……』

リーリエ「ルナアーラさん……あなたを元の世界に戻すはずだったのに……わたしが助けてもらってばかり」

リーリエ「……本当に……本当にありがとうね!」ニコッ
327 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:46:49.17 ID:AhocT7pU0
リーリエ「どう……したの?」

ルナアーラの顔を見ていると、どこか嬉しそうで、それでいて物足りないというふうに、リーリエは感じ取った。

リーリエ「……!」

リーリエ「あなたの考え……当ててみましょうか?」

リーリエ「あなた……わたしやしんちゃんと、まだまだ旅をしたいんでしょう?」

ルナアーラ「マヒナペ!」

リーリエ「当たり、でしょ!」

リーリエ「だって……だって、わたし、あなたとずっとそばにいた……言ってみれば家族だもの。あなたの想い、わかります」

リーリエ「わたしも同じ。アローラのいろんな島を巡り、多くの出会いがありました。ククイ博士とバーネット博士、しまキングのハラさんと孫のハウさん。それから、オニスズメから助けてくれたしんちゃんと、野原さんの方々……ほかにもほかにもたくさん……」

リーリエ「あなたの暮らしていた世界がどんな世界かわかりませんが、アローラの世界も知りたいよね!! ハラさんがおっしゃっていたでしょ? ポケモンや人に出会うことで人生がおもしろくなるって!」

ルナアーラ「マヒナペ!」
328 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:47:54.42 ID:AhocT7pU0
リーリエ「でもね、わたしではダメだから……。わたしには、あなたが望む冒険、ポケモン勝負はできないもの……」

リーリエ「それに……あなたに謝らなきゃいけません」

リーリエ「かあさまと戦う時……わたしは勝手にあなたを賭けてしまったんです。それしか、しんちゃんとかあさまを助ける道は無かったからです」

リーリエ「それでも……あなたの気持ちを無視したことに変わりはないです。あなたの家族として……いいえ、人として許されることではありません」

ルナアーラ「……」

みさえ「リーリエちゃん……」

リーリエはしんのすけと向きあった。

リーリエ「しんちゃん。このコと向き合って、連れて行ってくれますか? このコの想い……あなたと一緒に旅をしたい想いを叶えてほしいのです!」

しんのすけ「うーん……」

しんのすけはリーリエを、次にルナアーラを見ると、

しんのすけ「……めんどくさいからヤダ」

リーリエ「え?」キョトン
329 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:51:32.88 ID:AhocT7pU0
しんのすけ「オラ、カザマくんにマサオくんにネネちゃん、それからボーちゃんに新メンバーのあいちゃんがいるからいっぱいいっぱいだもん。そんなこと言わずに、リーリエちゃんが連れてけばいいじゃん」

しんのすけ「ねーほしぐもちゃん」

ルナアーラ「マヒナぺーア!」

リーリエ「で、でも……わたし、ルナアーラさんの気持ちを無視して……」

ハプウ「本当にそうかのお?」

ハプウは前に出ると、ルナアーラの様子を見た。

ハプウ「もしリーリエに裏切られたと思っておるのなら、とうの昔にお前のもとから去ってるじゃろうに。むしろこやつはしんのすけの答えに同意しておるように見える」

みさえ「リーリエちゃん。あなたはさっき言ってたわよね。ほしぐもちゃんと家族って。ほしぐもちゃんの想いが分かるって」

リーリエ「ええ……」

みさえ「なら、今のほしぐもちゃんの気持ちも、きっとわかるはずよ」

リーリエ「……」
330 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:52:18.40 ID:AhocT7pU0
グラジオ「オレも……最初からヌルと心を通じ合わせられたわけじゃない。何度もぶつかりあい、傷つけ合い、その果てにようやく互いを知り……絆を深められた」

グラジオ「リーリエ、ルナアーラと供に生きるんだ。前途多難だろうが、それがオマエとルナアーラにとっての幸せだ。オレでも、そのくらいは分かる」

ひろし「それにすごかったぞぉ、ビーストの世界でのリーリエちゃんの奮闘! 俺は間違いなくリーリエちゃんなら立派なトレーナーになれると見たぜ。ルナアーラも幸せもんだよ」

ハウ「リーリエもさー、ルナアーラと強くなりなよー。きっと、もっと楽しいことが待ってるからさー!おれ、ルナアーラと一緒にいるリーリエと戦ってみたいー!」

しんのすけ「うんうん、ほしぐもちゃんも『いっしょにいたい』って言ってるし」

リーリエ「本当なんですか……しんちゃん? ルナアーラさんの声、聞こえたんですか?」

しんのすけ「ちょっとだけねー」
331 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:55:31.00 ID:AhocT7pU0
リーリエはしんのすけを、そしてグラジオ、ハウ、ひろし、みさえ、ハプウを、最後にルナアーラへ目線を移した。
ルナアーラは静かにリーリエを見据えている……。

リーリエはルナアーラに歩み寄ると、

リーリエ「……いてくれるんですか?」

リーリエ「……本当に、わたしと一緒にいてくれるんですか?」

ルナアーラ「マヒナペ!!」

リーリエは両手をルナアーラに伸ばすと、ルナアーラはリーリエに近づいて、優しくカギ爪を使って彼女の華奢な体を持ち上げて、自身の顔のそばまで持っていった。
そしてリーリエはルナアーラに触れると、そっと額をくっつけた。

リーリエ「……ありがとう」

リーリエ「じゃあ……これからずっと、よろしくお願いしますね! ほしぐもちゃん!!」

ルナアーラ「マヒナぺーア!!」

ルナアーラが嬉しそうに声を上げる。リーリエにも笑顔が戻り、正真正銘自分のパートナーが出来たことを喜んだ。


332 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:56:22.55 ID:AhocT7pU0
ハウ「やったねーリーリエー!」

ハプウ「伝説のポケモンを友に、か。めでたいのう」

グラジオ「フッ……」

ひろし「君なら、しんのすけやハウくんに負けないくらい、立派なトレーナーになれるさ」

みさえ「これから先、楽しいことも苦しいことも待ってると思う。だけど、その子が力になってくれるわ。頑張ってね!」

リーリエ「はい!」

しんのすけ「またケツだけ星人見たければいつでも見せてあげるから、リーリエちゃんの言うこと、ちゃんと聞くんだゾ」

ルナアーラ「マヒナぺィーーアッッ!」ラジャッ!

リーリエ「ほしぐもちゃん……さっきよりずっと気合入った声になってませんか?」

ヨワシ『すごいなぁ、伝説のポケモンを仲間にするなんて』

ジュナイパー『……おい、しんのすけ、本当にルナアーラの声、聞こえてたのか?』

しんのすけ「聞くまでもないでしょ」
333 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 19:57:08.66 ID:AhocT7pU0
ジュナイパー『……ああ、そうだね』

フェローチェ『しん様……やっぱりお優しい方』ウットリ

キテルグマ『なによこいつ、しんちゃんにすっごく馴れ馴れしくない?』

ひろし「じゃあみんな、帰ろうぜ! 全部終わったこと、パラダイスにいるみんなに伝えなくちゃな!」

「おーーーっ!!」

しんのすけ「……」クラッ

ドサッ

フェローチェ『し、しん様!?』

しんのすけ「へぇぇ……」

みさえ「ど、どうしたの?」

しんのすけ「お腹すいたし、なんか全身から力が抜けてオラのカラダはドボドボだゾ……」

ジュナイパー『ボロボロ、だろ。でも本当に大丈夫か?』

リーリエ「しんちゃん……3回も連続してZワザ、使って頑張ってましたから。ずっと飲まず食わずであっちの世界にいましたし……」

ハウ「さ、3回も連続でZワザ使ったのー!?」

リーリエ「使ったというか、そのうち2回は使わされたというか……」
334 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 20:00:55.77 ID:AhocT7pU0
ハウ「Zワザってー、とっても体力を使うのにー……。3回もやっちゃったら死んじゃうって!」

ハプウ「ああ、よく生きてたのう……向こうでの戦いは壮絶なものだったようじゃな」

リーリエ「……」スッ

リーリエは、しんのすけを優しく抱き上げると、しんのすけの背中に手を回したまま階段を降り始めた。

しんのすけ「おー? いいの?」

みさえ「そんなことしなくても私がおぶっていけば――」

リーリエ「いいんです。今は……こうしていたいんです」
335 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 20:02:02.81 ID:AhocT7pU0
みさえ「……そう。じゃ、お願いね」ニコッ

しんのすけ「こりゃ楽でいいやー」

リーリエ「ふふっ……」

しんのすけは眠たげながらも満足した顔で、リーリエは取り戻せた大切な人の温もりを感じながら幸せそうな表情で、階段へと向かった。その後ろを、ルナアーラがついてくる。

ルナアーラ「マヒナぺーア!」

夜が明けて、空の彼方に現れる陽光を前に、しんのすけたちは長い階段を降りて月輪の祭壇を去った。

まだ、完全にアローラに蔓延っていた驚異がぬぐい去れたわけではない。ルザミーネによって解き放たれたウルトラビーストたちは、アローラの各地に多く残っている。
だけど、しんのすけたち活躍でアローラは大きな一歩を踏み出すことができた。そう遠くない未来で、彼らは、それを肌で感じることだろう。


★挿入歌 PURENESS★

【ウルトラスペース編 おしまい】
336 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 20:03:35.60 ID:AhocT7pU0
今日はここまで。いつもより短くてすみません!
次回の更新は明日の夜です。

じゃ、そゆことで〜
337 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 20:04:40.00 ID:AhocT7pU0
【おまけ】

しんのすけ「なんで? オラ別にこのまんまでもいいんだけど」

リーリエ「履 い て く だ さ い ! 常 識 で す っ !」シャーッ!

しんのすけ「ほいほい」ハキハキ

しんのすけ「じゃ、いってきまーす」

タッタッタッ

プルメリ「――よし、それじゃあたいもハウとグラジオのように、ここを守るとしようか」

エンニュート「どくどく〜!」

プルメリ「エンニュート、かえんほう――」

ひろし「今度は俺も戦ってやる! おいビーストども! この足の臭いに、勝てると思うなよっ! おりゃぁあああ!」

靴を両手にそれぞれ握ってウツロイドの群れへと突進するひろし!

プルメリ「あ、ちょっと! おっさん危ないって!」

ツーーーン

ウツロイド「じぇるるる!!」ウエエ

カミツルギ「か、カミィィィ!」グエエッ
338 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 20:05:17.44 ID:AhocT7pU0
プルメリ「く、靴のニオイで、ビーストを倒してるってのかい?」

ダッ!

フェローチェ「フェロォォッ!」グワッ!

アクジキング「モォォォォッ!」モグモグモグ

ひまわりとシロに向かって、フェローチェとアクジキングが襲いかかる!

プルメリ「危ないっ!」

ひまわり「たいっ! たたいやったい!」ビシッ

シロ「キャンッ!」ゴウッ

シロにまたがったひまわりが指示を送ると、シロの身体を中心にキラキラと輝く桃色の風が渦巻き始めた!
風を浴びたビーストたちが、その場で体勢を崩す!

フェローチェ「ロッ……?!」ググッ

アクジキング「ズモッ……!」ガクガクッ

プルメリ「これは――ようせいのかぜ?」
339 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 20:06:01.76 ID:AhocT7pU0
突然、プルメリのすぐそばで爆風と衝撃波が襲い来る!

プルメリ&エンニュート「!」サッ

ドッゴォォォォッ!

みさえ「ビーストが何よ! もっとかかって来なさいよオラァアア!!」ドカッバキッグシャッ

ウツロイド「じぇるるっ!?」

デンジュモク「デンデンッ!」

襲い来るウツロイドとデンジュモクを触手で薙ぎはらうと、今度はマッシブーンが「俺が相手だ!」と言わんばかりに飛び出してきた!

マッシブーン「ブンブーンッ!」グワッ!

しかし、みさえは臆せずマッシブーンに突進すると、触手のラッシュをかけた!
マッシブーンは両腕で触手をガードするが、みさえの怒涛の連撃の前に手も足も出せず、後退していくばかりだ。

みさえ「そんなでかい図体してるんなら私を止めて見せなさいよ!!」ドドドドド!!

マッシブーン「ブゥゥゥン!」ドッ!

マッシブーンが拳を振り上げ、みさえに右ストレートを繰り出す!
しかし、みさえはそれを躱すと、マッシブーンの下顎にアッパーを繰り出し、腹に抉るようなボディブローを放った! マッシブーンの身体が一直線に岩壁に叩きつけられる!

ドッゴォォォッ!!

みさえ「これでおしまいよっ!」
340 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 20:06:44.39 ID:AhocT7pU0
ゴウッ!
バチチチチッ!!

みさえは Zパワーを 身体に まとった!

みさえが 解き放つ
全力の Zワザ!

オ ー ジ リ ・ ヒ ッ プ ・ バ ー ン !

赤いオーラをまとったみさえは天高く飛翔すると、上空で一回転し、座るような姿勢になると、尻を地面に向けて急降下した!

みさえ「おりゃあああああああっ!!」

ドッゴォォォォッ!!
ビキビキビキッ!!

真紅の隕石と見紛うそれは破壊的な威力を持つヒップドロップとなり、地面に激突した瞬間、みさえを中心に地割れが起き、周囲にいた哀れなビーストを巻き込んだ大爆発が発生した!

プルメリ「うわっ!」

エンニュート「どくっ!?」

プルメリたちはなんとかその場にあった岩に掴んで飛ばされないようにするしかなかった。
341 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/18(日) 20:07:21.19 ID:AhocT7pU0
みさえ「はぁ……はぁ……」

マッシブーン「」

テッカグヤ「」

アクジキング「」

ウツロイド「じ、じぇるるっぷ……」フラフラ

爆発が収まると、瀕死になったビーストたちが横たわる死屍累々の光景と、身の危険を感じたウツロイドがみさえから離れて逃げ出していた。

プルメリ「」ポカン

プルメリ「……なんというか、しんのすけもそうだったけど、普通の家族じゃないよね」

エンニュート「どくどく……」

ロトム図鑑「ハッハッハッ、どうだビーストども、次は私の番だ! 食らえあくうせつだん!」ダッ

ブンブゥゥゥン!

ドカバキグシャ!

ギャアアアア!

プルメリ「……アンタはそーなると思ってたよ」
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/18(日) 20:15:29.94 ID:NsWyHzc/0

次はリーグ戦かな
しんのすけ達への後遺症は大丈夫そうだな
そもそもしんのすけのメンタルなら操られないと思うけど
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/18(日) 21:08:25.40 ID:NVcQEL4B0
ブタのヒヅメのEDもいいけど、俺の脳内では「夢のENDはいつも目覚まし!」が流れたゾ
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/18(日) 21:27:16.78 ID:oOLb01Sc0

差し当って今後の一番の課題と言えばリーリエショックぐらいなもんだけど
こればっかりはルザミーネの予後とあとはモーンさん次第かねぇ
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/19(月) 11:35:07.64 ID:LERRLYJSO
遅くなりましたが乙です。

スーパーマサラ人もびっくりなハイスペックですね……
346 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:35:34.73 ID:FDGs4cRn0
更新前に修正。

>>327
冒頭に以下の文追加
ルナアーラ「マヒナペーア!」

・あと、マザービーストの触手の数が8本だったり10本だったりになってますが頭の中で勝手に8本に置き換えてください。
347 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:37:31.30 ID:FDGs4cRn0
【大大試練編】

ウルトラビースト大量出現事件から1ヶ月後……。

ウルトラビーストの襲撃によって、荒涼とした街並みと化してしまったハウオリシティでは人々はポケモンと供に壊された建物や道路の修復といった地道な復興作業を行ったおかげで、以前の街並みを取り戻しつつあった。

ビーストも一部を除いてこの世界に順応してきたのか、ホールが開かれた当初と比べて獰猛さはなりを潜めていた。それでも、キャプテンやしまキングたちはビーストの動向に目を光らせている。

ハウ「じーちゃーん! 頼まれた角材持ってきたよー」

ハラ「うむ、ではそちらに積んでおいてくれますかな」

ハウ「うんーガオガエン、おねがいー」

ガオガエン「ガオッ」ドスンッ

グズマ「グソクムシャ! そこのガレキにアクアブレイクだ」

グソクムシャ「オオオッ!」ブンッ!

ドゴッ!!
パラパラパラ

ハラ「むおっ!?」

ハラ「これ、グズマ! 壊すにしても加減がありましょうぞ! 破片が周りに当たると危険ですぞ」
348 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:39:26.14 ID:FDGs4cRn0
グズマ「るせーよ! 手ぬるくブッ壊すのはオレさまの性に合わないんでな」

グズマ「そら、今度はそっちの柱、ブッ壊しな!」

グソクムシャ「ズモォォッ!」ブンッ!

ドゴッ!!

ハラ「こ、これっ……調子に乗っていると自分が痛い目に……」

ヒュウウウ……
ゴンッ!

グズマ「おおっ……! おおおおお!!」ジタバタジタバタ!

したっぱB「グズマさん! 大丈夫ッスカ!?」

ハラ「言わんこっちゃありませんな」

ドラコ「ああ、でかいコブが……」

スッチー「まぁ、大きいコブ。写真に撮ってPoketterに投稿しましょ、スカりん」

スカりん「そうだねスッチー。僕たちも写ろうよ!」

グズマ「オメーらイチャイチャしてねぇで手伝えや!」
349 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:40:09.67 ID:FDGs4cRn0
ロトム図鑑「ふん、ありきたりの展開だな」

しんのすけ「ほっほーい!」

グズマ「あ? じゃがいも小僧……」

ハウ「おーしんのすけー!」フリフリ

しんのすけ「よ、師匠!」

ドラコ「師匠じゃねぇって言ってるだろ!」

ハラ「しんのすけにみさえさん、体調はいかがですかな?」

みさえ「ええ、エーテル財団の方々のおかげでなんとか」

ハラ「それはなによりですな」

みさえ「差し入れ持ってきたので、よかったらどうぞ」つマラサダ

ハラ「おお! それはありがたいですな。ではハウ、グズマ、休憩にしますかな」

ハウ「わーい! いっしょに食べよーよー」

しんのすけ「やれやれ、付き合ってあげますか」

グズマ「フン……」
350 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:42:14.78 ID:FDGs4cRn0
ハウ「いやーひと仕事終えたあとのマラサダはサイコーだねー!」モグモグ

ガオガエン「ガオ〜」ムシャムシャ

グソクムシャ「ズモォ……」ムシャムシャグソクムシャ

ハラ「人とポケモンが力を合わせ、街を復興させる……。うむ、よき流れですな」

しんのすけ「てゆーか、なんでくさやのおじさんはハラのおじさんと一緒にいるの?」

グズマ「グズマだ! わざと言ってるだろ……」

ハラ「グズマはなにを隠そう、昔このハラの弟子でしてな」

ハウ「ふーん、元スカル団のボスがじーちゃんの弟子……」

ハウ「って、ええーっ! 初耳だよー!」

しんのすけ「なんで弟子やめちゃったの?」

ロトム図鑑「スケスケの下着ドロボーしたからだよ」

グズマ「んなわけねぇだろ! ブタ! 島巡りだとかキャプテンだとかくだらねぇ風習にいちいち拘るのが面倒だったからだよ」
351 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:42:59.63 ID:FDGs4cRn0
ハウ「なんでー? 島巡りしてたくさんの人とポケモンと出会うのって、楽しいと思うけどなー」

しんのすけ「人生損してますなぁ。人と出会うのは自分を高める経験になりますぞ」

みさえ「偉そうに……。あんたの場合、お姉さん目当てでしょ」

ハラ「グズマ! 相手の良さを認め、さらに上をいくようにせい! 人に!ポケモンにもまれ! 己の赤心みつめるのだ」

ハラ「さっきのガレキの破片がわかりやすいだろう。壊すことばかりに集中し、ガレキの破片がどこへ飛び散るかもわからないままだから、痛い目を見るのだ」

グズマ「なんと言われようと、ブッ壊すのがオレさまのやりかたよぉ!いまだに師匠のつもりかよ? オレ様があんたを見限ったんだ」

しんのすけ「うーん、そんなに壊すのが好きなら解体業でも始めたらいいのに」

みさえ「いいわねぇ。たくさん人に頼られるかもしれないわよ?」

グズマ「るせーよオバサン! 気安くオレさまに指図するんじゃねぇ!」

みさえ「誰がオバサンよ! あ゛あ゛? もういっぺん言うてみい!」グリグリグリ!!

グズマ「いだだだだ! やめろやめろ!!」
352 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:43:37.14 ID:FDGs4cRn0
ハラ「しんのすけよ、このばか……いやさこのおおばか、預からせてくれぬか」

ハラ「しまキングの名において、この街の復興を手伝わせ、一人前のトレーナーにする! それをもってスカル団の罪を償わせる証とさせてくれ」

しんのすけ「ふつつかものですが、どうぞ」ペコリ

グズマ「お前が勝手に決めてんじゃねーよ……」イテテ

ハラ「わはは。2人ともいろんなところに行くのですな! ポケモンや人に出会うことで、人生は面白くなりますぞ!」

グズマ「クッ……」

グズマ(――師匠)

ハラ「……それにしても、あれから1ヶ月も経つのですな」

みさえ「そうですね。なんだかあっという間な気がしますね。みんな大変な思いをしたというのに」

ハウ「ルザミーネさんの具合はどうなのー?」

みさえ「まだ、なんとも言えないわ……眠っているみたい」

ロトム図鑑「むしろあの毒を喰らって1ヶ月で復帰したしんのすけとお前が異質な気もするぞ」

みさえ「どーゆー意味よ! えっ?」

ハウ「リーリエも大変だろうなーおれも時間ができたら、ルザミーネさんのお見舞いに行こっかなー」
353 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:44:48.36 ID:FDGs4cRn0
1ヶ月前

エーテルパラダイス 医務室

リーリエ「ウツロイドさんの……毒ですか?」

ザオボー「はい、UB01……ウツロイドには、寄生能力があります。ですが、ウツロイドは寄生した対象を操るわけではありません」

ザオボー「対象の能力を極度に引き上げて、自分の身を守らせるのですよ。そのために、寄生する対象に神経毒を注入するのです」

ひろし「神経毒?」

ひまわり「たい?」

ザオボー「ウツロイドの毒には強力な覚醒作用があり、寄生された対象には、極度の興奮と自我の開放が発生――つまり、ウツロイドに寄生された対象は心身の能力を強制的に100パーセント引き出され、あるがままに、ありのままに振舞ってしまう……ということですよ」

グラジオ「母上がビーストに執着したのも、恐らくウルトラホールの実験中に偶然ウツロイドと出くわし、その時受けた毒が原因……とも考えられるな」

ひろし「……しんのすけを操ったのも、その毒と能力を代表が応用したってとこか。ウツロイドではなく、代表の身を守らせるためにしんのすけの自我を逆に抑えてたんだな」

リーリエ「……しんちゃんもみさえさんもウツロイドさんにとりつかれて……神経毒を注入されていましたが、なぜかあさまだけ意識を失ったのでしょう?」

ザオボー「代表が注入された毒の量は2人の比ではありませんからね。心身に影響が出てしまうのも明々白々でしょう」
354 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:45:50.96 ID:FDGs4cRn0
グラジオ「……母上はウルトラスペースで何度もウツロイドに寄生されてる可能性が高いな」

リーリエ「治療薬はないんですか?」

ザオボー「今のところはありません。ですが、代表がウツロイドをゲットしているおかげで、現在その個体から血清を精製中ですよ」

ひろし「血清はどのくらいで出来るんだ?」

ザオボー「わかりませんねえ。今はしぜんかいふくの特性を持つサニーゴやヒトデマンに、少量の毒を注入して抗体を作らせているのですが、個体によって抗体を作るスピードはまちまちですからね」

ザオボー「……ともかく、あなたのお子さんと奥さんについては、最低でも1ヶ月間ここに入院させて様子を見てみましょう」

グラジオ「オレもできる限り様々な方面へアプローチをかけるつもりだが、ザオボーも早めに頼む」

ザオボー「ええ、ええ、お任せを。必ずや、代表の意識を取り戻してみせましょう」

ザオボー(結局あの後ヒラに戻ってしまいましたが、イチからやり直してもう一度支部長に返り咲くチャンスです。アイシャルリターン、です)

ウィーン

ひろし「ビーストたちの残した爪あとはとてつもなく大きい、か」

リーリエ「かあさま……早く目を覚まして欲しいです」

グラジオ「今は血清が出来るのを待つしかないな……。一応、他にアテが無いとも言えないが……」

ひろし「本当か? どんな?」

グラジオ「それについてはいずれ話す。情報が不確かだからな……もう少し調べておきたいんだ」
355 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:47:14.01 ID:FDGs4cRn0
グラジオ「リーリエ、後でシークレットラボに来てくれないか。ククイ博士から大事な話があるそうだ」

リーリエ「博士から? わかりました」

ひろし「俺もしんのすけとみさえの見舞いに行くか。リーリエちゃんは代表のところへ行ったらどうだ?」

リーリエ「いえ、わたしもしんちゃんのお見舞いに……。ずっとかあさまに付きっきりでしたから、寂しがっているでしょうし」

ひろし「そっか、ありがとな」

リーリエ「いいえ、わたしも今までしんちゃんに助けてもらいましたから」

グラジオ「じゃ、オレが呼ぶまでの間、待っててくれ」

スタスタ

ひろし「よし、俺たちも行こうぜ」

リーリエ「はい。……でも、やっぱりしんちゃんもみさえさんも不安です。かあさまのように意識が失わないだけ、良い方なのは分かりますが……」
356 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:47:44.74 ID:FDGs4cRn0
ひろし「心配するなって。しんのすけもみさえも、普段から欲望丸出しだからな。もしもまた変になっちまったら、また靴のニオイを嗅がせてやるまでだ」

リーリエ「本当にあの時はびっくりしちゃいました。靴の臭いで記憶を取り戻して目を覚ますなんて、聞いたことありませんから……」

ひろし「世の中理屈だけじゃないってことさ。時に家族の絆は、不可能を可能にするんだ。リーリエちゃんにも、分かる時が来るって」

リーリエ「そう……ですね!」

ひまわり「たい!」

リーリエ(ただ、やっぱり臭いで解決ってなんだか不潔で釈然としませんが……)
357 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:49:13.02 ID:FDGs4cRn0
病室

ひろし「入るぜー!」コンコン

リーリエ「お邪魔します」

リーリエ(しんちゃん……容態はどうなのでしょうか……)

期待と不安が入り混じりながら、病室のドアを開ける2人。そこでひろしとリーリエが目撃したものとは……。







ビッケ「はい、しんのすけさん。あ〜ん」

しんのすけ「あ〜ん♪」パクッ

しんのすけ「ん〜おいちーい」デレー

ビッケ「うふふ、それはよかったです」ニコニコ

みさえ「……」ハア

ひろし「し、しんのすけ……」

ひまわり「ケッ!」

リーリエ「……」ビキッ
358 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:50:05.74 ID:FDGs4cRn0
ビッケ「あら、ひろしさんにリーリエ様……」

しんのすけ「なーに? オラ今忙しいんだけど」ジロッ

ひろし「どこが忙しいんだよ! ビッケさんにあーんしてもらって迷惑かけてんじゃねぇよ! 羨ましいけどさ」

みさえ「あ?」ギロッ

ビッケ「いえいえ、いいんですよ。しんのすけさんには、ビーストのことがありますし……私もこれくらいでよければお役に立てますから」

しんのすけ「そうそう」

ひろし「そうそうじゃないだろ!」

リーリエ「ビッケさん……」ゴゴゴゴ

ビッケ「は、はい?」ビクッ

リーリエ「しんちゃんの面倒を見ていただいてありがとうございます。後はわたしがやるので、どうぞ休んでください」

ビッケ「え? ですが……」

リーリエ「休んでください。後は、わたしが、やりますので」

ビッケ「は、はい!」テクテク

しんのすけ「あーん! ビッケおねいさーん!」
359 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:51:25.49 ID:FDGs4cRn0
しんのすけ「んもう! なんでビッケおねいさん出て行かせたの!」

リーリエ「出て行かせたの、じゃないです! ビッケさんにもお仕事があるんです! しんちゃんのものじゃありません!」ムスッ

リーリエ「まったくもうっ、しんちゃんはわたしがいなきゃダメなんですから!」

しんのすけ「それ……オラに対する当て馬?」

リーリエ「……当てつけって言いたいんですか? 」

しんのすけ「ふーんだ! だいたい、オラ1人でも妖怪メノクラゲオババとビーストなんてへっちゃらだし。今回はたまたま、お尻の調子が出なかっただけだもん!」

リーリエ「へぇ? そうなんですか。わたしとカザマさんたちがいないと、ずっとしんちゃんはかあさまとビーストさんの息子になっていたんですよ?」

しんのすけ「あーもう! あっち行ってよ!」プイッ

しんのすけ(…………)

しんのすけ「……オラをお助けしてくれてありがと」ボソッ

リーリエ「ふふっ、どういたしまして。わたし、しんちゃんを守るって約束したでしょ? これからも、わたしが守っていきますから――」ナデナデ

ひろし「みさえ、調子はどうだ?」

みさえ「えぇ、あなたとしんのすけのおかげですこぶる良くなったわ」

ひろし「わ、悪かったって……」
360 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:52:46.24 ID:FDGs4cRn0
みさえ「ところで、リーリエちゃん。ルザミーネさんの体調はどうなの?」

リーリエ「……ええ、まだかあさまは――屋敷でずっと、眠っています」

みさえ「そうなの……」

リーリエ「はい、ですがザオボーさんもビッケさんも、かあさまが捕まえたウツロイドさんの毒から血清を作るみたいで……それで治ると良いのですが」

みさえ「早く目覚めるといいわね」

リーリエ「みさえさんとしんちゃんは、ここに入院してからお身体の体調はいかがですか? なにかおかしなところとかありませんか?」

しんのすけ「オラ、ビッケさんを見ると胸がキュンってなってぇ。こりゃ入院が必要ですなぁ」

ひろし「健康そうでなによりだよ……!」

みさえ「そうね……私もなんともないわ。でも、そのウツロイドっていうポケモンの毒で、私もしんのすけもどうなるかわからないものね」

リーリエ「ひろしさんも、もし2人になにかあったら、すぐにビッケさんとザオボーさんを呼んでくださいね。すぐに対応しますから」

ひろし「おう、ありがとな」

しんのすけ「ま、かーちゃんはなんとなく妖怪メノクラゲオババになってからただでさえ強い凶暴性がもっと増した気がするけどね」

みさえ「なんですってえぇぇっ! どこが凶暴性が増したっていうのよ!」ガバッ!

しんのすけ「ひいいっ! 今まさにそうじゃーん!」ダッ
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/19(月) 20:53:37.79 ID:984qwYyoO
描いた夢は叶わないことの方が多い
優れた人を羨んでは自分が嫌になる
浅い眠りに押しつぶされそうな夜もある
優しい隣人が陰で牙を剥いていたり
362 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:53:53.47 ID:FDGs4cRn0
マチナサァァィ!!
ウワァァァ!!

ひろし「……こうして見ると、本当になにも変わってねぇんだけどなあ」

リーリエ「そうですね。それがかえって怖いのですけれども」

トントン
ウィーン

グラジオ「リーリエ、いるか?」

リーリエ「にいさま?」

しんのすけ「おおっクジラくん!」

グラジオ「すぐにシークレットラボへ来てくれ。ククイ博士が呼んでいる」

リーリエ「わかりました」コクン

リーリエ「じゃあしんちゃん、野原さん、またお見舞いに来ますね」

みさえ「うん、ありがとね」

しんのすけ「次はなんかお土産持ってきてねー」

ウィーン

みさえ「……」
363 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:54:54.65 ID:FDGs4cRn0
ひろし「どうしたんだ? みさえ」

みさえ「あなた……あのね」

ひろし「ああ」

みさえ「さっきはリーリエちゃんの前で強がっていたんだけれども、本当は……」

ひろし「変なところでもあるのか?」

みさえ「不思議な気分なの。……今はあなたやしんのすけ達がいるから落ち着いていられるけれど……」

みさえ「1人でいると、すぐしんのすけを探したり、あなたに連絡しようとしたり……これがウツロイドの毒なのかしら? 私、なんだか怖いの」

ひろし「……そうか」

――ウツロイドの毒には強力な覚醒作用があり、寄生された対象には、極度の興奮と自我の開放が発生――つまり、ウツロイドに寄生された対象は心身の能力を強制的に100パーセント引き出され、あるがままに、ありのままに振舞ってしまう

ひろし(……自我の開放って、こういうことを言うんだな)
364 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:55:26.05 ID:FDGs4cRn0
ひろし「みさえ、心配するな。今は俺もひまも、シロも、そしてしんのすけだっているんだ。俺も、できる限りお前のそばにいてやるからな」

みさえ「ありがとう、あなた……」ウルッ

ひろし「愛する妻のためなら、なんだってするさ。みさえ……」

しんのすけ「やれやれ、子供はお邪魔ですからどこか行ってますかな」

ひろし「意味知ってて言ってんのかよっ!」

しんのすけ「ぶりぶりざえもん、暇だからお散歩しに行こーよ」

ロトム図鑑「いいだろう。そろそろパズルゲーに飽きてきたしな」

みさえ「ちょっと、どこへ行くのよ?」

しんのすけ「ビッケおねいさんのとこー」

ひろし「おいおい、さっきリーリエちゃんに迷惑かけるなって言われたばかりだろうが」

しんのすけ「じゃ、そゆことでー」ウィーン

ひろし「お、おいっ、しんのすけ……」
365 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:56:51.12 ID:FDGs4cRn0
エーテルパラダイス シークレットラボ

グラジオ「連れてきたぞ」

ククイ博士「おぉ、来たね! リーリエ!」

リーリエ「博士。どうなさったのですか?」

ククイ博士「あぁ、実は2人の力を借りたいという人たちがいてね。もうそろそろ、ここにやってくるはずなんだ」

リーリエ「わたしとにいさまの力を……ですか?」

グラジオ「それはどんな人物なんだ……?」

ククイ博士「僕も詳しくは知らない。ただ、国際警察に所属する人物、とだけ聞かされているけれどもね」

リーリエ「こっ、国際警察ですか?!」

グラジオ「……まず間違いなく、ビーストの事に関わることだな」

リーリエ「どうして国際警察の方が、わたしたちの力を?」

ククイ博士「それは本人たちから直接聞くといいだろう。大丈夫、僕がついているから、ワイドガードを使った気分でいればいいよ!」

リーリエ「はぁ……」

コンコンッ!

グラジオ「……さっそく、来たようだな」
366 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 20:57:52.41 ID:FDGs4cRn0
???「ククイ博士、入室してもよろしいですか?」

ククイ博士「はい、どうぞ!」

ウィーン!

???「失礼します」

部屋の中に入ってきたのは、紫色の髪を結ったスーツ姿の女性と、くたびれたトレンチコートをスーツの上に羽織った男性だった。

???「……君がリーリエくんとグラジオくんだね? わたしの名は『ハンサム』。所謂、国際警察です。そしてこちらは私のボス……」

???「私は『リラ』と申します。国際警察特務機関「UB」対策本部部長です」

リーリエ「は、初めまして。リーリエです」

リーリエ(リラさん……綺麗な方です)

グラジオ「グラジオだ。今はエーテル財団の代表代理をしている。よろしく頼む」

ハンサム「自己紹介が互いに済んだところで早速だが質問だ、君たちがUB―Parasiteと接触したのは事実だろうか?」

グラジオ「Parasite……ウツロイドのことだな」

リーリエ「かあさまと融合したビーストさんのことをおっしゃっているのなら……」

ハンサム「……!」

リラ「……やはりそうですか」
367 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:00:50.48 ID:FDGs4cRn0
リラ「ルザミーネが今回引き起こしたUB大量出現事件……。その影響で、今もなお、アローラには多くのビーストが蔓延っています」

ハンサム「もともと望まずしてこの世界に落とされたビーストは、攻撃的になり……その結果、アローラに与えた被害は甚大だ。それは、君たちもよく知っているだろう?」

グラジオ「ああ」

ハンサム「それに加え、ウルトラビーストはこの世界の理を越えた存在。ゆえに通常のボールでは捕らえることはできない。最高の捕獲性能を持つマスターボールでも不可能だ」

リラ「……我々に課せられた任務は3つ」

リラ「1つ目は未知なるUBの生態の調査をすること」

リラ「2つ目はUBを警戒し、その危険から人々を守ること」

リラ「3つ目はUBを保護……もしくは殲滅すること」

リーリエ「殲滅……?」

ハンサム「もしUBがこの世界に仇なす害獣であれば、存在を消すよう上層部から命令を受けているのだ」
368 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:02:17.39 ID:FDGs4cRn0
リーリエ「そんな……ビーストさんを殺してしまうなんて、ひどいです!」

ククイ博士「僕も同感だね。ビーストも生きる世界が違うとは言え、れっきとしたポケモンだよ。人間の勝手で存在を消す真似をするのはやぶさかではないね」

リラ「もちろん、私もハンサムさんもそのようなことは望んでいない……」

リラ「UBであれ、ひとつの命。保護し、救いたいと考えています」

ハンサム「だがUBの保護……。言い換えると、捕獲は殲滅よりも手が掛かる。我らには戦力もない状態だ」

リラ「長くなってしまいましたし、単刀直入に申し上げます……」

リラ「この事件に深く関わり、UBの知識と対策法を研究しているあなた方に手を貸して欲しいのです」

グラジオ「待て……ならば代表代理のオレに言えばいい話だ。なぜリーリエを巻き込む必要がある」

リーリエ「ほしぐもちゃん……いえ、ルナアーラさんのことですね」

グラジオ&ククイ博士「!」
369 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:03:33.47 ID:FDGs4cRn0
リラ「……はい」

リラ「ウルトラホールを作り出す力を持つアローラの伝説のポケモン、ルナアーラをゲットしたトレーナーであるリーリエさん。あなたの力が必要不可欠なのです」

ククイ博士「そうか、ルナアーラの力を使ってウルトラホールを作り出し、ビーストをウルトラスペースに帰してやる……ということだね」

リラ「UBを捕獲するためのウルトラボールを量産するにも、コストと時間がかかってしまいます。そのあいだにも、ビーストによる被害が広がってしまいます。ですから、ルナアーラの力を用いて、UBを元の世界へ帰して頂きたいのです」

リーリエ「ほしぐもちゃんの……」

リーリエはウルトラボールを取り出して、中にいるルナアーラを案じるようにボールを見つめた。
ふと、ルザミーネに利用されたコスモッグの光景が蘇ってくる

――ケージの中のコスモッグをまるごと使えば、ウルトラホールもたくさん……。ふふっ、どれだけのビーストちゃんが来るのかしら?

――さぁ、おいでなさい! ビーストちゃん!

リーリエ「……」

リラ「どうかお願いします……。私たちはビーストを救いたい。そのためには、あなたの力が不可欠なのです」

しんのすけ「うんうん、話が弾んでおるようですな」

全員「!?」

ハンサム「ど、どこから声が?!」
370 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:04:28.13 ID:FDGs4cRn0
リラ「ハンサムさん、あなたの背中です」

ハンサム「ええっ?!」クルッ

ハンサムが後ろを向くと、しんのすけがハンサムの背中を掴んで貼り付いていた!

しんのすけ「よ!」

ククイ博士「しんのすけ……!」

リーリエ「しんちゃん!」

ハンサム「君は一体いつから私の背中に?」

しんのすけ「んっとねー、おじさんとおねいさんが外でアローラの美味しい飯どころの話ししながら部屋の中に入ってくるところからだゾ」

リラ「最初から聞いていた、ということですね……」ハァ

ハンサム(背中に子供がいたことに気がつかないまま話を進めていたとは。国際警察失格だ……)orz

リーリエ「勝手に入ってきたらダメですって!」

しんのすけ「いやぁビッケおねいさんのところへ遊びに行こうと思ったら、新しいおねいさんを見つけちゃいまして。5歳児としてほっとけないでしょ」

グラジオ「オマエのような5歳児がこの世に2人といるか……!」

しんのすけ「ねぇねぇおねいさん。警察なんでしょ? オラ恋泥棒だから逮捕してー」
371 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:05:15.95 ID:FDGs4cRn0
リラ「困りましたね……ビーストのことも機密情報なのですが」

ククイ博士「大丈夫、しんのすけも今回のビースト事件の中心人物なんだ。リーリエと供にルザミーネをウツロイドから開放し、ビーストの世界から連れ帰ってきたんだ。それに、この子はウルトラビーストの捕獲に成功している」

リラ「なるほど、この子がルザミーネに連れ去られた例の子……ですね」

しんのすけ「どう? オラとデートしたくなった?」

ハンサム「ボス、さすがにこんな小さな子をチームに入れるのはいかがなものかと思うぞ」

リラ「そうですね……腕の立つトレーナーという点では評価はできますけれども」

しんのすけ「うーん、おじさんの声ってなんかとーちゃんと似てるから頭が混乱するゾ」

ハンサム「そういう君も、以前カロスで出会った男と同じ語尾で話すものだからややこしいな」

ロトム図鑑「フッ……久しぶりだな。ハンサム、リラ」

ハンサム「キミは!」

リラ「BRX2……ですか?」

ロトム図鑑「そのコードネームで呼ぶな! 今の私はレオナルド・ロトブリオだ!」
372 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:06:27.40 ID:FDGs4cRn0
ククイ博士「し、知り合いなのかい?」

ロトム図鑑「当たり前だ。何度も言っただろ。私は国際警察元ハッカー兼サイバーテロ部隊所属だと」

グラジオ「そんなこと、誰が信じるか……」

ハンサム「そうか……アローラにいるという話は聞いていたが、この子のロトム図鑑になっていたとはな」

しんのすけ「図鑑らしいことはひとつもしてないけどもね」

ロトム図鑑「お前がポケモンを登録しないからだろうが!」

リラ「話が脱線しかかっているので元に戻しますね。……リーリエさん、どうか我々のチームに加わって欲しいのです」

リーリエ「……ごめんなさい。考える時間を頂けませんか?」

ハンサム「考える時間と言うと?」

リーリエ「……リラさん、ハンサムさん、あなた方がビーストさんを元の世界に戻したいという気持ちは伝わってきました。わたしも、出来ることなら力になりたいです」

リーリエ「ですがルナアーラさんは、わたしにとって最初に心を通わせたポケモンさんで……家族でもあるんです。トレーナーさん同士のポケモン勝負はともかく、ビーストさんと命がけで戦って、危ない目に遭わせたくないという気持ちもあります」

リーリエ「それに、かあさまのこともあります。今はまだ眠ったままですが……心配ですので、そばにいてあげたいのです」

リラ「家族――ですか」

ハンサム「なるほどな……」
373 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:07:27.11 ID:FDGs4cRn0
リラ「……わかりました。ではリーリエさん、1ヶ月の時間を与えます。そのあいだに、我々のチームに加わるか否か、じっくりと考えてください」

グラジオ「1ヶ月……。ずいぶん長い時間を与えるんだな」

ハンサム「1ヶ月ではどのみちアローラにいるすべてのビーストを保護するのは不可能だ。それに、リーリエくんがポケモンを家族と思う気持ちは、私もボスも分からんではないのだ。だからこそ、ルナアーラや母親と向き合って真剣に考えてもらいたいのだ」

リラ「そのあいだ、グラジオさん。あなたがその間我々のチームに加わってサポートしていただけませんか?」

グラジオ「ああ、オレもシルヴァディも、ビーストとは戦い慣れている。出来ることなら、ウルトラボールの量産化も検討してみるつもりだ」

リラ「ありがとうございます」ペコリ

リーリエ「ごめんなさい、ワガママを言ってしまって……」

ハンサム「いや、気にしなくていいさ。こういう事態も想定済みだ」

しんのすけ「ねぇオラは? オラ、リラおねいさんといた〜い」

ククイ博士「しんのすけ、君にはまだ大大試練が残っているじゃないか。そのためにも、今は安静にしてなきゃダメだろ?」
374 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:08:41.42 ID:FDGs4cRn0
リラ「そうですね。しんのすけさんが島巡りを終えて、我々の件もひと段落ついたら、改めて会いに行こうと思います」

ハンサム「UBの世界で、キミが体験したことやBRX2の活躍も聞いておきたいしな」

しんのすけ「ハッサムのおじさんは別に来なくていいけど」

ハンサム「むむっ、これは手痛いな……。それとハッサムではなくて、ハンサムだよ」

リラ「私たちは各地のモーテルを中心に行動するつもりです。連絡先を渡しておきますね。何かあれば、こちらから連絡します」

グラジオ「ああ」

しんのすけ「いいなぁ……」

リーリエ「さ、しんちゃん。戻りましょう」

ハンサム「しかしアローラでキミと出会うとは夢にも思わなかったよ。これもひとつの運命というべきか……」

ロトム図鑑「国際警察に戻るつもりはないぞ。あっちではいちいちネットするたびに口うるさく言われるからな」

ロトム図鑑「それに、国際警察のやり方は私のセンスに合わん。正直言ってダサいぜ」

ハンサム「ああ、私たちも戻って来いとは言わない。お前は国際警察とは無関係のポケモンになったんだ。好きに生きるといい」

ロトム図鑑「当たり前田のクラッカー」
375 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:10:19.70 ID:FDGs4cRn0
ルザミーネの屋敷

リラとハンサムの話を聞いたリーリエは、屋敷の一室で機械に繋がれてベッドに眠るルザミーネのそばにいた。
お見舞いに飾られていた花を取り替えながら、目を閉じて穏やかに眠っているルザミーネを見つめた。

リーリエ「かあさま……わたし、国際警察にチームに入らないかって誘われたんです」

リーリエ「でも、ほしぐもちゃんにビーストを戦わせるのが、わたし、どうしても不安で……迷ってしまって」

リーリエ「かあさまだったら、なんて言いますか?」

「ルザミン的にはー、まずはリラちゃんの携帯番号とメルアドの調査が大事かなーって」

リーリエ「え?」

「せっかく今世紀最強のトレーナーの野原しんのすけくんがいるのに、無視するなんて、ルザミン悲しいもん」

リーリエ「……そこでなにしているんですか? しんちゃん」

しんのすけ「あ、バレた」

リーリエ「はぁ、またついてきたんですね」

しんのすけ「ずっとこっちにいるから暇なもんで」

リーリエ「しんちゃん、ちょっと外で話しませんか?」

しんのすけ「オラ、これからカザマくんたちのトイレニングしなきゃいけないのに」

リーリエ「さっき暇って言ってましたよね?」
376 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:11:13.90 ID:FDGs4cRn0
しんのすけとリーリエは、屋敷前の広場へ出るとエーテルパラダイスの周りに広がる海の光景を眺めた。
最初に口を開いたのはリーリエだった。

リーリエ「……しんちゃんは、どう思いますか?」

しんのすけ「なにが? ハンサムっていう名前なのに大してハンサムじゃないおじさんのこと?」

リーリエ「そっちじゃないです! 失礼ですよ、もうっ」

リーリエ「国際警察の方と一緒に、アローラにいるビーストさんを元の世界に返すっていう作戦のことですよ」

しんのすけ「ほーほー」

リーリエ「リラさんのお話を聞いて、わたしもほしぐもちゃんも、力を合わせてアローラの人たちを助けることができるかもって思うと、なんだか嬉しかったんです」

リーリエ「……でも、一方でほしぐもちゃんがコスモッグだった頃のことを思い出して、そう思うと危ないことをさせたくないと言うか……複雑な気持ちなんです」

リーリエ「トレーナーとして、ほしぐもちゃんと戦えばいいのか、それとも守るべきか分からないです」

リーリエ「先輩のしんちゃんだったら、もしカザマさんたちとビーストさんを元の世界に帰すために手伝って欲しいとリラさんから頼まれたら、どうなさいますか?」

しんのすけ「オラだったら、まずはリラちゃんとおデートかなぁ、えへへー」

リーリエ「あ、あのですね……そういうことを聞いてるわけじゃないんです」
377 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:12:02.15 ID:FDGs4cRn0
しんのすけ「ま、ほしぐもちゃんに聞いてみたら?」

リーリエ「ほしぐもちゃんに……ですか?」

しんのすけ「そ、オラもカザマくんたちと遊ぶとき、なにして遊ぶかいつも相談してるし。ま、大体ネネちゃんが強制的にリアルおままごとにするけどね」

リーリエ「クスッ、しんちゃんのようにポケモンさんと話せるわけじゃないんです」

リーリエ「でも、話せなくても、ポケモンさんと心を通わせられるのなら……ほしぐもちゃんの気持ちも、きっとわかりますよね!」

しんのすけ(オラもリラおねいさんと心を通わせたい)

リーリエ「しんちゃん、わたしほしぐもちゃんの気持ちも聞いてみたいと思います。相談に乗ってくれて、ありがとう!」

しんのすけ「困ったらいつでもオラに聞きに来なさい。恋の悩みもナンパ術も不良に絡まれた時の対処法も受け付けますぞ」

リーリエ「はい、頑張ります!」グッ
378 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:12:53.18 ID:FDGs4cRn0
それから数週間後……。
エーテルパラダイスの職員用病室で野原一家とリーリエが他愛のない世間話をして過ごしていると、ビッケとザオボーが病室に入ってきた。

ビッケ「野原さん、朗報ですよ。ウツロイドの毒に対する血清が出来上がりました」

ひろし「本当か?!」ガタッ

ザオボー「ええ、ヒトデマンやサニーゴを中心に試したのですが、目論見通り抗体が採取できましたので思ったより早く出来上がりました。これを注射すれば、しんのすけさんとみさえさんの毒は綺麗さっぱり中和されるはずです」

しんのすけ「ちゅ、注射?」ビクッ

リーリエ「かあさまも、それで毒が治るのでしょうか?」

ビッケ「……一回での完治は難しいでしょうね。なにせ、ウツロイドの神経毒は、代表のカラダの隅々まで行き渡っていますから。……ですが、これは大きな一歩だと思いますよ」

リーリエ「そうですね……! この調子でいけば、いつかかあさまも元通りになります!」

ザオボー「では、最初に誰が注射を受けますか?」

しんのすけ「オ、オラ遠慮しときます」

みさえ「なに言ってるの。ちゃんと注射受けなさい!」

しんのすけ「かーちゃん先受けなよ。早くいつもの優しいママに戻って欲しいし」

みさえ「あら、嬉しいわ。でもね、ママは先にしんちゃんから治って欲しいなって思うの」

しんのすけ「ホントはかーちゃんが注射受けたくないだけのクセに」

みさえ「いいからさっさと受けんかい!」
379 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:14:13.04 ID:FDGs4cRn0
リーリエ「しんちゃん、注射が怖い気持ちはわたしもよーく分かります。でも、毒を治さなきゃこの先、大変なことになるかもしれないんですよ? ほら、そばにいてあげますから」ギュッ

しんのすけ「やだやだーっ! どうせ注射されるなら20代前半のナースにされたいのー!」ジタバタ

ザオボー「やれやれ、後がつかえているというのに。これだからお子様は面倒なのですよ」

リーリエ「はあ……どうしたらよいのでしょう?」

ひろし「ま、しゃあねえな。こうするっきゃないか――」

ひろし「あの、ビッケさん」ゴショゴショ

ビッケ「はい? ……ふふ、分かりました」

ビッケ「しんのすけさん」

しんのすけ「な、なに?」

ビッケ「もし注射受けてくださったら、高い高いしてあげますよ♪」ニコニコ

しんのすけ「まじ〜? いいの〜?」デレデレ

ビッケ「ザオボーさん、今です」ボソッ

ぷっす

――い や あ あ あ あ あ あ あ あ あ ん ! ! !
380 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:17:11.57 ID:FDGs4cRn0
そして時間は現在に戻って……。

しんのすけ「あー、あんときはホントに痛い目みたなー」

ハウ「注射ならしょうがないでしょー。ビッケさんに見とれて注射打たれるなんてしんのすけらしいけどー」

みさえ「でも、エーテル財団って本当にすごいわね。ウツロイドの毒の血清をすぐ作れちゃうなんて」

ハラ「アローラのポケモンと人間の力が成せる技……というところですかな」

テクテク

???「よう! しんのすけ! ハウ!」

しんのすけ&ハウ「その声、はかせー?」

ククイ博士「まずは、退院おめでとうだね! 調子はどうだい?」

しんのすけ「たまにおねいさんを見ると胸がキュンとなって、恋の病になっちゃったり」

ククイ博士「調子はばっちりって捉えておくよ。ハウもお疲れ様!」
381 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:20:13.30 ID:FDGs4cRn0
ハウ「あれからどこに行ってたのー? 研究所の立て直しとかどうするのー?」

ククイ博士「エーテルパラダイスでマーレインやバーネット博士と一緒にウルトラビーストについて話し合っていたのさ。研究所については、リリィタウンに簡易研究所を建てているよ」

ハラ「おお、ククイが帰ってきたということは、いよいよ始めるということですな!」

みさえ「なにをですか?」

しんのすけ「ナマコブシ投げ?」

ククイ博士「大大試練さ!」

しんのすけ&ハウ&グズマ&みさえ「大大試練!?」

ククイ博士「そう、しんのすけもハウも、4つの島の大試練を達成したからね。後はいよいよ、ラナキラマウンテンで総仕上げだ!」

しんのすけ「てゆうか、ハウくんポニ島の大試練たっせーしたの?」

ハウ「うんー! しんのすけが入院してる間に、ポニ島に行ってハプウさんと戦ったのー」

グズマ「オイオイ、こんな状況だっていうのに、大大試練なんてやるつもりかよ」

ククイ博士「こんな状況だからさ、グズマ君!」

ハラ「確かにアローラはウルトラビーストの襲撃で、甚大な被害を出してしまいました。アローラだけではない。そこにいる人々やポケモンの心に、大きな傷をいまだ負っています」

ククイ博士「だからこそ、君たち2人が大大試練を受けて、島巡りチャンピオンになる姿を見せることで、みんなに元気を与えてあげたいんだ!」

ククイ博士「それに、他の地方にもアローラ地方は元気であることをアピールしたい! だから、今回の大大試練は全国ネットでライブ中継も行うつもりだよ!」
382 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:21:11.46 ID:FDGs4cRn0
みさえ「ら、ライブ中継ですか!?」

ククイ博士「ええ、奥さん。しんのすけくんもハウくんも、全国に映るんですよ!」

しんのすけ「らいぶちゅーけーって? 新手のキス?」

ロトム図鑑「ライブ中継とは、簡単に言えば生放送だな。お前たち2人が、全国に映し出されるのだ」

しんのすけ「おおっ、オラたちテレビに出られるの?! 美人のアナウンサーとか来る?」

ハウ「わー、タレントになったみたいー!」

ククイ博士「テレビというより、ポケチューブによるライブ配信がメインになるかな。でも、インターネットだから世界中のトレーナーが君たちの活躍を見るってことなんだぜ!」

みさえ「すごいじゃない、2人とも!」

ハラ「このハラ、孫がネットに映ってハラハラしますぞ!」

グズマ「はっ、馬鹿らしい……」

みさえ「それで、いつ大大試練は行われるんですか?」

ククイ博士「明日の夕方! 後は君たち次第だよ!」

みさえ「えっ?!」

ハウ「明日ー! はやいー!」
383 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:22:48.53 ID:FDGs4cRn0
しんのすけ「やれやれ、気の早い人たちですな」

ハウ「うわー今からワクワクしてきたー! ねーガオガエンー!」ウキウキ

ガオガエン「ガオーッ!」ムキムキッ!

ジュナイパー(ボール)『大大試練……思えば長い道のりだったなぁ』

しんのすけ「どんな試練なの?」

ククイ博士「それは秘密さ。君自身の目で確かめて欲しい」

しんのすけ「おケチ!」

グズマ「秘密にするようなもんじゃねぇだろ。各島のしまキングとクィーンに勝ち抜く儀式じゃねぇか」

みさえ「他の地方のポケモンリーグみたいなシステムね」

ククイ博士「それはこれまでの話しさ。なにせ、ハラさんも他のしまキングたちも各々の島を復興するための指揮を取らなきゃいけないからね」

ククイ博士「そのためにこの1ヶ月間、しまキングたちと話し合いをして、今回だけ特別に、新たな試練を用意したんだ」
384 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:24:00.77 ID:FDGs4cRn0
ハラ「その試練こそ、受けてみてのお楽しみ、ということですな」

ハウ「そっかー。でも、たくさんの試練こなしてーたくさんのポケモンたちと戦ってきたもんねー! どんな試練でもしんのすけとおれの2人ならこなせるよー!」

しんのすけ「おうー頑張れよー」

ハウ「しんのすけもやるのー!」

ククイ博士「ハハハ、それじゃあ2人とも明日に備えて入念に準備を怠らず、ゆっくり休めよ」

しんのすけ「ほーい!」

ハウ「うんー!」
385 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:26:47.96 ID:FDGs4cRn0
その夜……
リリィタウン仮設住宅にて

ひろし(電話)『いよいよしんのすけとハウくんは大大試練を受けるんだな!』

みさえ「ええ、しかも明日なの」

ひろし『明日か……しんのすけとハウくんの活躍を見に行きてえなあ』

みさえ「それがね、ラナキラマウンテンは4つの島の大試練を受けた子としまキングたちに認められた人以外は入っちゃいけないんですって。普通の人が入るには危険って言うらしいから……」

ひろし『あー、そりゃ仕方ないか。だけど、みさえもスマホを使えば見れるだろ?』

みさえ「ええ、でもメレメレ島の人たちと一緒に、ハラさんの家に集まって2人を応援するらしいから、私そこに行こうと思うの」

ひろし『いいねぇ、俺もそうするかな。それで、しんのすけは今何してるんだ?』
386 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:28:08.11 ID:FDGs4cRn0
しんのすけ「ワッハッハッハッ! アクションキーック!」ドカッ

ロトム図鑑「ブキッ!」

みさえ「……ぶりぶりざえもん使って、アクション仮面の動画見てるみたい」

ひろし『……そ、そうか。まぁいつも通りで安心したというか、不安というか……』

みさえ「ここまで来たのならきっと大丈夫よ。しんのすけもあの子も、強くなったんだから」

ひろし『そうだな、しんのすけを信じよう』

みさえ「大大試練を達成したら、しんのすけアローラの有名人よ! 私も鼻が高くなるわぁ」

ひろし「……そうだな」

みさえ「どうしたの? なんだか急に声に張りが無くなったみたいだけど」

ひろし『いや、なんでもないんだ……それじゃ、もうすぐうちに着くから』

みさえ「うん、それじゃあね」ガチャッ
387 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:29:01.16 ID:FDGs4cRn0
ジュナイパー『みんな、明日はいよいよ大大試練だね。今まで島巡りで培ってきたことを、ゼンリョクで出し切ろう!』

ヨワシ『でも、大大試練ってなにをするのかな?』

キテルグマ『名前からして、普通の試練や大試練とは一味違うってことよね』

フェローチェ『みなさんからお聞きになった話をまとめると、誰かと戦うのではないでしょうか?』

ミミッキュ『でも、しまキングたちは来ないって博士は言ってたよね』

ヨワシ『戦うとは限らないんじゃないかな。カキさんやマオさんの試練のように、ものを探したり、間違いを見つけたりするのかも』

キテルグマ『マサオくん、もう少し頭を働かせなさいよ。そんな子供だましな試練を二回もすると思う? それに、全国に放送されるのよ?』

ヨワシ『ご、ごめん……』

しんのすけ「わかった! お笑いの審査!」

ロトム図鑑「あるいはババ抜き」

キテルグマ『あたしの話聞いてなかったのかよ、あんたらは!』

しんのすけ「お笑いならテレビ映えすると思って」

フェローチェ『さすがしん様! ちゃんと自分たちが映されることも考えて予想するなんて!』

キテルグマ『どこがじゃ!』

ジュナイパー『絶対違うと思う』
388 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:29:40.29 ID:FDGs4cRn0
ミミッキュ『大丈夫、みんな自信を持って』

しんのすけたち「!」

ミミッキュ『どんな試練が来ても、今までのように僕たちが力を合わせていこう。それで、みんなで島巡りチャンピオンになろう!』

ヨワシ『ボーちゃん……』

ミミッキュ『自分と仲間の力を信じれば、なれる!』スッ

ジュナイパー『そうだね! 今まで僕たちはそうやってたくさんの試練を達成してきたんだ。怖いものなんてないよ!』スッ

ボーちゃんの影の手の上に、カザマの翼が乗せられる。

ヨワシ『わかった、ボーちゃん! 僕やってみるよ!』スッ

キテルグマ『ここまで来たら、とことんやりましょ!』スッ

フェローチェ『あいも、しん様を勝利へ導けるのなら、みなさんに力をお貸ししますわ!』スッ

翼の上に次々と手やヒレが乗せられて、最後にしんのすけの手が乗っかる。

しんのすけ「よーし、いつもの奴行くゾ!」

ジュナイパー『アローラ防衛隊ッ!』

全員「『ファイヤーーッ!!』」
389 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:30:23.66 ID:FDGs4cRn0
その頃、ハウの家では

ハウ「みんな、明日がんばろーねー! ゼンリョク出そーね!」

ハウは寝室の自分のベッドの上で、自分のポケモンが入っているボールたちに向かって呼びかけた。
もちろん、反応はないものの、心なしかどのボールからも気合の入った反応が帰ってきた気がする。
その中でハウは、ひとつのボールを手に取って話しかけた。

ハウ「君も、明日が晴れ舞台だねー。ガオガエンたちと一緒にゼンリョク出し切ろー!」
390 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:31:16.68 ID:FDGs4cRn0
今日はここまで。
次回の更新は明日の夜です。

じゃ、そゆことで〜
391 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:33:52.20 ID:FDGs4cRn0
【おまけ】

〜もししんのすけがカヒリと出会ったら〜

しんのすけ「あーミクリに弟子入りしたいなー」

???「ちょっとよろしいですか?」

しんのすけ「お?」

カヒリ「初めまして。あたし、カヒリと言います」

しんのすけ「おおっ! きれいなおねいさん! オラ野原しんのすけ5歳、暇なときはいつも浜辺に打ち上げられたナマコブシごっこしてますぅ」

カヒリ「……失礼ながら、ライチさんの大試練、空から見ていました。ヨワシに群れをまとわせられるトレーナーは中々いないので、驚きましたね」

カヒリ「最初は5歳でカプに選ばれたという話を聞いてうさんくさいと思っていましたが……なるほど、あなたはまだ幼いですが、もっと経験を積めば、間違いなく世界に羽ばたける実力者になれると思います」

しんのすけ「えっ? オラ天狗みたいに羽が生えて宇宙に飛んでっちゃうの?」

カヒリ「そういう意味での羽ばたける、という意味ではありません! 才能があるということです!」

しんのすけ「おねいさんオラを見る目ありますなあ、オラに惚れた?」

カヒリ「はあ……なんか調子、狂いますね」
392 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:34:43.31 ID:FDGs4cRn0
しんのすけ「ところでカヒリのおねいさんってゴルフやってんの? 背中に5番アイアンしょってるけど」

カヒリ「5番アイアンとは違いますが……そうです。あたしはポケモンとゴルフを極めるため、世界中を巡っています。今はたまたま故郷のアローラに戻ってきたのです」

カヒリ「あなたの親がゴルフをなさっているのですか?」

しんのすけ「まあね、とーちゃんがいつも接待でゴルフやってんの。あとたまにかーちゃんがキャバクラから帰ってきたとーちゃんを5番アイアンでシバいてるの何度か見たから名前覚えちゃった」

カヒリ「そ、そうですか……」

カヒリ「……実はあたし、数年前にこのアローラの島巡りチャンピオンになりました。ですから、あなたの先輩ですね」

しんのすけ「いやぁオラ、おねいさんの後輩になれるなんてこーえーですなあ」

カヒリ「しんのすけくん、島巡り頑張ってください。あたし、次にあなたと会うときはゼンリョクで相手します!」

しんのすけ「オラはおねいさんとゼンリョクでおデートできればそれでぇ」

カヒリ(博士に呼ばれて来たのですが……ライチさんの大試練の時と同じ子とは思えませんね。この態度と気迫の変わり様はなんなのかしら)

カヒリ「では……失礼します」

しんのすけ「ほっほーい! またねー」
393 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:36:43.03 ID:FDGs4cRn0
【おまけ】

フェローチェ『しん様、お願いがあるのですが……』

しんのすけ「なに?」

フェローチェ『一度、あいの技を見て欲しいの。どれだけしん様のお役に立てられるか、キチンとアピールしたいのですわ』モジモジ

しんのすけ「えぇーめんどくさ」

フェローチェ『そうおっしゃらないで。きっとあいの魅力に気付けますから』ガシッ

キテルグマ『ケッ、よく言うわよ』

フェローチェ『なによ、あなた』キッ

キテルグマ『離してあげなさいよ、しんちゃんが嫌がってるじゃない!』ガシッ!

フェローチェ『あなたには関係なくってよ!』ググッ

ギチギチギチ

しんのすけ「あのオラ真っ二つになっちゃいそうなんですけど!」グググッ
394 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:38:33.17 ID:FDGs4cRn0
キテルグマ『えっらそうに! だいたい、あたしが先にしんちゃんにゲットされて旅してきたのよ』

フェローチェ『なにを言い出すのやら。ポケモンにとって大事なのはトレーナーに頼りにされるか、そうではなくって?』

キテルグマ『なによ! ちょっと触っただけでポッキリ折れそうな身体のクセに!』

フェローチェ『鈍重そうな身体。起き上がるのもさぞかし大変でしょうね』

キテルグマ『なんですってええ!!』

ジュナイパー『まぁまぁ2人とも』

ヨワシ『落ち着いてよ〜。ホントにしんちゃんが死んじゃうって』

キテルグマ&フェローチェ『ふんっ!』パッ

しんのすけ「あー、裂けるチーズみたいになるとこだった」

ジュナイパー『……あいちゃん、言っちゃあなんだけど、なんでしんのすけにあそこまでアピールするんだい?』

フェローチェ『しん様は、二度もあいの命を救ってくださったもの。一度はアーカラで、二度目はウルトラスペースで……』

フェローチェ『それに、しん様はわたくしに『あい』という名前を授けていただきました。これはしん様があいをあいたらしめさせてくれる証ですわ』

キテルグマ『あんた変よ』

キテルグマ『えっらそうに! だいたい、あたしが先にしんちゃんにゲットされて旅してきたのよ』

フェローチェ『なにを言い出すのやら。ポケモンにとって大事なのはトレーナーに頼りにされるか、そうではなくって?』

キテルグマ『なによ! ちょっと触っただけでポッキリ折れそうな身体のクセに!』

フェローチェ『鈍重そうな身体。起き上がるのもさぞかし大変でしょうね』

キテルグマ『なんですってええ!!』

ジュナイパー『まぁまぁ2人とも』

ヨワシ『落ち着いてよ〜。ホントにしんちゃんが死んじゃうって』

キテルグマ&フェローチェ『ふんっ!』パッ

しんのすけ「あー、裂けるチーズみたいになるとこだった」

ジュナイパー『……あいちゃん、言っちゃあなんだけど、なんでしんのすけにあそこまでアピールするんだい?』

フェローチェ『しん様は、二度もあいの命を救ってくださったもの。一度はアーカラで、二度目はウルトラスペースで……』

フェローチェ『それに、しん様はわたくしに『あい』という名前を授けていただきました。これはしん様があいをあいたらしめさせてくれる証ですわ』

キテルグマ『あんた変よ』

フェローチェ『こうなったら、どっちが好きか、どっちが頼りになるか、しん様に決めてもらいませんこと?』

キテルグマ『望むところよ! しんちゃん!』
395 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:39:18.91 ID:FDGs4cRn0
しんのすけ「も〜なーにー?」

キテルグマ『あたしのほうが好きよね? 頼りになるわよね?!』

しんのすけ「えー?」

フェローチェ『あいですよね?!』

キテルグマ『はっきりさせなさいよ!』

フェローチェ『あなたには答える義務があります!』

しんのすけ「……あのねえ」ジロッ

しんのすけ「オラ、ポケモンには興味ないの。邪魔だからあっち行くかボールに戻って」

フェローチェ『……ッ!』
396 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/19(月) 21:39:50.74 ID:FDGs4cRn0
キテルグマ『白けるなぁ。ああいうのがダメなのよ、しんちゃんは。でも、人間とポケモンじゃあ仕方ないか』

フェローチェ『……かっこいい///』ポッ

キテルグマ『えっ』

フェローチェ『やっぱりしん様は他の方とは違う何かを持っていますわ!ゼッタイにあいの方へ振り向かせてみせますわん!』デレデレ

キテルグマ『……アンタ絶対変よ』

フェローチェ『しん様〜!』

ジュナイパー『くそーなんであんな奴があいちゃんに……』

ヨワシ『あいちゃん……僕も助けたのに』ウルウル

ミミッキュ『女心は、難しい』
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/19(月) 21:51:01.53 ID:HGyeBvF10

百戦錬磨の野原一家に影響与えるとかウツロイドの毒恐るべし
ハンサムさんはSMLとか温泉Gメンとかとつながり会ってしんのすけ達の事知ってるかと思ってた
6匹目は入れない方向か?そういやシロがバトル止められてる理由って何だ?
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/19(月) 22:03:10.15 ID:LERRLYJSO
乙です。

>>397
飼い始めた当時はトレーナーじゃないからバトルしない約束してたとかじゃないですかね?

今は(コケコに認められて例外的に)島巡りもしているので6体目にしても大丈夫そうですが。

現在の面子が草霊・水・無格・霊妖・虫格……タイプが被っている割りにはバランス良いですよね(飛行にやや弱い気もしますが)
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/19(月) 22:11:12.60 ID:Q95sg9az0
カスカベのみんなが中継見てる様子とか書いて欲しい
400 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/20(火) 19:23:38.26 ID:Pr7L8+H70
翌日

ハウオリシティ 船着場

しんのすけとハウはそれぞれ大大試練の為の準備を終えて、港に集まっていると、ククイ博士とウラウラのしまキングクチナシ、そしてアセロラが待っていた。

アセロラ「しんちゃんお久しぶり! 元気そうでなによりだよ!」

しんのすけ「アセロラちゃんもお久しぶりぶりー」

ククイ博士「2人とも……いよいよだね」

ハウ「うんー。緊張して、いっぱいマラサダ食べてきちゃったー」

しんのすけ「なんでおじさんもいるの?」

クチナシ「博士から聞いているだろ? ウラウラ島はラナキラマウンテン、そこで大大試練をすることになってるんだ。カプの村への案内役だよ」

ハラ「ハウ、多くは言わん。ひたすらゼンリョクを出して大大試練に挑むのですぞ!」

みさえ「しんのすけも、頑張って! ママもパパも、みんな応援してるから!」

ハウ「うんー! おれー絶対に島巡りチャンピオンになるからねー!」

しんのすけ「いってきまーす」

クチナシ「じゃ、行こうか。旅は道連れってね」ニヤッ
401 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/20(火) 19:24:45.32 ID:Pr7L8+H70
ウラウラ島 カプの村 ラナキラマウンテン麓

クチナシ「ここがラナキラマウンテンの麓だよ」

しんのすけ「でけー」

アセロラ「あのリフトに乗って登っていくんだよー。でも、アローラでは珍しく寒いから気をつけてね!」

しんのすけ「アセロラちゃんも行ったことあんの?」

アセロラ「キャプテンになるとき、ちょっとね」

アセロラ「アセロラ、しんちゃんもハウくんもどっちも応援してるからねー。エーテルハウスで子供達と見てるから!」

クチナシ「ま……2人ともゼンリョク出していきなってことだ。大大試練でなにがあろうとね」

ハウ「ここまで案内してくれてありがとー!」

しんのすけ「寒いのかーやだなー」

ククイ博士「よーし、それじゃあリフトに乗るよ!」
402 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/20(火) 19:26:54.79 ID:Pr7L8+H70
ラナキラマウンテン 山頂

ハウ「う、うう寒いよー!」ブルブルッ

しんのすけ「やっぱりSSだからあっという間に着いたね」

ハウ「てゆうか、博士は寒くないのー?」

ククイ博士「平気さ! ぼくの心はブラストバーンよりも燃えている!」

しんのすけ「精神論って奴ですな」

ククイ博士「……それにしても、僕たちも随分遠くまで歩いて――ようやくここへ辿り着いたんだね」

そう言うと、ククイ博士はぐるりとラナキラマウンテンの山頂から大地を見下ろす。雪景色の中で、遠くにアローラの海が広がる。よく見れば、他の島やエーテルパラダイスが豆粒のように小さくだが見える。

ククイ博士「思い出さないかい? 君たちが最初にハラさんからポケモンをもらって、旅に出て……」

ククイ博士「4つの島をめぐり、試練と大試練を乗り越え……」

ククイ博士「スカル団と戦い、エーテル財団の闇に立ち向かい、ウルトラビーストにも負けなかった」

ククイ博士「たくさんの試練を経て、僕たちは今、ここにいるんだ!」
403 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/20(火) 19:28:42.00 ID:Pr7L8+H70
しんのすけ「あのっ、はかせのお話よーくわかりました! だから早く行こうよーオラ大大試練前に凍え死んじゃいそう!」ガタガタ

ハウ「お゛、お゛れ゛も゛や゛ばい゛がも゛―!」ガタガタ

しんのすけ「オ、オラもとんしょくになりそう……」

ククイ博士「それを言うなら、凍傷だろ」

ククイ博士「よーし、あそこに中に入れる場所があるんだ。そこで大大試練を行うんだよ」

しんのすけとハウ、続いてククイ博士が目の前にある洞窟の中へと入ると、あちらこちらに輝く鉱石が壁から生えている長い通路を歩いた。

そして、階段を登っていくと、頭上が透明のクリスタルで覆われた広間へとたどり着いた。周りには壁に沿うように放送用の機材が設置されており、クリスタルの向こう側には夕日が広がっている。

ハウ「ここが大大試練を行う場所なのー?」

ククイ博士「ああ、そうだよ!」

しんのすけ「ひろーい。野球とか出来そう。ひょっとして大大試練って野球なの?」

ククイ博士「まさか! それよりしんのすけ、君のぶりぶりざえもんを借りるよ!」

ロトム図鑑「なにをするつもりなのだ?」

ククイ博士「ライブ中継の手伝いだよ。機材と接続して、カメラを回したり、通信を安定させるようサポートして欲しいんだ」

ロトム図鑑「いいだろう。だが、後で収益の半分はよこせよ」
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