【ミリマス】P「美奈子が料理を作れなくなった」

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45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/05(火) 00:33:15.00 ID:Zoys58Ayo
「あとはそうねえ、美奈子ちゃんってよく嘘が下手って言われない?表情とかにでやすいからかしら」

そういえば友達と受けた765プロのオーディションに私一人が受かった時も嘘が下手って言われた。

「さすがになんで悩んでるかまでは分からないけど。どう?お姉さんに話してみない?」

「······」

私より6つ年上のお姉さんは、諭すように私に言う。
いつも私が育ちゃんやひなたちゃんにしているのと同じように――。

「夢を···見たんです。私のせいで大切な人がいなくなる夢を。そのせいで私の大切なものがひとつ失くしてしまったんです」

スラスラと、遠回しにだけど私の悩みは言葉になって自然と口から出てきた。

「なるほどねえ」

それを聞いたこのみさんは少し驚いたような、でも何かに納得したように頷いた。

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/05(火) 00:34:19.93 ID:Zoys58Ayo
「大切な人って誰かしらねえ〜。プロデューサーかしら」

こんどは少しニヤニヤとしながらこのみさんは私に聞いてきた。

「っな···///いえ////····そんなのじゃないですよぅ///」

あまりにも突然過ぎて理解が追いつかなかった。

「その反応は図星ってところね。ホント、美奈子ちゃんはわかりやすいわね。うふふ」

「うぅ····///」

恥ずかしくて足に顔をうずめてしまう。

「まあそこは置いておいて、プロデューサーさんがいなくなってしまった夢を見て、美奈子ちゃんは大切なものを失ってしまったってことね」

「はい······」

「その事だけど····、お姉さんひとつ心当たりがあるわ」

「······はい。多分その通りだと思います」

「そうよねえ。美奈子ちゃん、最近プロデューサーに1度もお弁当作ってきてあげてなかったから」

見事に当たりを引かれた。
765プロ最年長のお姉さんは日頃から周りをよく見ているようです。

「合ってるなら話しは早いわ。美奈子ちゃん。あなたの悩み全て聞かせてくれないかしら」

「えっ···でも···」

あの夢の内容を語るのは少し気が引ける。なにしろトラウマの原因を作ったのは夢の中で出てきたみんなの声でもあるから。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/05(火) 00:35:07.87 ID:Zoys58Ayo
「若者の悩みを聞いて解決するのも最年長の務めよ。何でも聞いてあげるわ」

「·······」

私は視線を持っているペットボトルに戻した。

「····前にプロデューサーと飲みに行った時の話だけど『美奈子は自分を犠牲にしてでも他人を気遣うことのできるいい子なんです』って言ってたんだけどね」

唐突に、私が黙っているのを見てかこのみさんはそう切り出した。
プロデューサーさん、そんなふうに思っていてくれたんだ。

「けど美奈子ちゃん。時にはその自己犠牲が自分の身を締めるの」

ズキッと心が痛む。

「このユニットのリーダーは私なんだから、メンバーの一人の心配くらいさせて頂戴」

『全部のことを美奈子ができなくても大丈夫。美奈子の世話はちゃんと俺が焼くから』

「·······!」

このみさんの言葉で私は初めて公演のセンターを務めた時にプロデューサーさんに言われたことを思い出した。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/05(火) 00:37:07.78 ID:Zoys58Ayo
「美奈子ちゃん。辛かったわね」

「え?」

「今までずっと溜め込んできたのよね?自分のせいでみんなに迷惑をかけたくないって。だから言い出せなかったのよね?」

「·······はい」

「もうそんなこと考えなくていいわよ。お姉さんが全部聞いてあげるわ」

「·······はい」

私の両頬を冷たい何かが伝った。
気づくとそれは止まることを知らないかのように私の目元から溢れ出てくる。
なんとかそれを止めようと私は顔を抱えた体にうずめた。

別に誰かのお世話をすることが嫌いな訳ではない。むしろそれが生き甲斐と言っても過言ではなかった。
だからこそプロデューサーさんに言われたことも忘れてみんなに迷惑をかけるまいと黙っていたのだけど、心のどこかで私はだれかの助けを求めていたのかもしれない。

「どう?お姉さんに話す気になった?」

「····ぐす·····おねが、いします···」

「とりあえず今日のレッスンはここまでね。みんなー。ちょっと早いけど今日のレッスンはこれでおしまいにするわ」

向こうの方で「はーい!」という元気いっぱいな声が聞こえた。

「美奈子ちゃんは私もここにいてあげるから落ち着くまでそのままでいいわよ。落ち着いたら移動しましょう」

しばらく私はそのままの状態で涙を流し続けた。
手に持っていたキンキンに冷えたペットボトルはかなり温くなっていた。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/05(火) 00:38:04.87 ID:Zoys58Ayo
長いこと放置してすみませんでした
続きは1週間ほどお待ちください多分次の更新で完結します
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/05(火) 08:52:53.05 ID:bgKoXrw4o
おかえり!
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 00:28:26.38 ID:e1eYDptmo
少々遅くなりましたが今日の日中か夜には更新できる予定です
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 00:32:38.62 ID:rssyOma+o
わーい
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:51:39.65 ID:jldwPYN9o
あの後私はこのみさんに全てを打ち明けた。

プロデューサーさんが死んだ夢を見たこと。その原因が私だということ。夢の中でみんなに責め立てられたこと。そして私が料理を作れなくなったこと。

悩みは吐くだけでも楽になれるとは言うけどそれは本当だったみたいだ。依然として晴れないままだが、少し心が軽くなった気がした。

それに対してこのみさんが言った一言「プロデューサーがそんな事で死ぬわけないわよ。きっと舞台から転落しても死なないわよ」

たしかにその通りだと思わず笑ってしまった。いままで私は何に悩んでいたのだろうか。

――実際のところ、そこまですんなりとしたわけじゃなかったけど。

「私も夢は夢って何度もわりきろうとしたんです。だけどもし、本当にそうなってしまったらって考えてしまって…」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:52:12.11 ID:jldwPYN9o
「思ったより重症ねえ。」

うーんと唸るこのみさん。

「今度料理番組の収録があるんですけど…こんな状態ですし、それで余計に焦っちゃって」

「料理番組?ああ、プロデューサーがこの前言ってたやつね。結構気合入れて取ってきたみたいだったど」

あの番組は地上波のかなり有名な番組だったはずだ。私のせいでプロデューサーさんがせっかく取ってきたお仕事を…。

考えれば考えるほどネガティブな思考がでてきてしまう。

「そうねえ。美奈子ちゃんはどうして料理を作ってたの?」

「え?」

このみさんから突然投げられた問いを私は思わず聞き返した。

「料理をする時ってまあ、何かしら理由ってあるでしょ?美奈子ちゃんの場合それはなんなのかしらって?」

「私ですか。私は――」

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:52:44.40 ID:jldwPYN9o
プロデューサーさんに食べてもらうため――ちがう。

「あれ?」

プロデューサーさんを私好みの体型にして――ちがう。


みんなにたくさん食べてほしい――違う

「…!」

「わからない、みたいね」

「…はい」

「多分美奈子ちゃんが作れなくなった原因はそこにあると思うわ。美奈子ちゃん、もう1回よく考え直してみて」

「…このみさんはどうですか?」

「私?そうねえ。やっぱり私の魅力を教えることかしら。やっぱり料理ができるって大人じゃない?」

このみさんはそう言っておどけてみせた。…少なからず本心もはいっていると思う。

「まあ私に言える事はこれくらいかしら。ちょっとは参考になったかしら」

「はい。ありがとうございました」

「あ、あともう一つ。料理できるようになったらまずはプロデューサーに作ってあげるといいわ。最近美奈子ちゃんの差し入れがないこと気にしていたわよ」

そういってこのみさんは先にレッスンルームを出ていった。

やっぱりプロデューサーさんのことよく見てるなあ。ちょっと嫉妬してしまいそう。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:53:11.60 ID:jldwPYN9o
私もレッスンスタジオから戻ってきて、今は事務所のソファーに座っている。
プロデューサーさんは別の現場に行っているらしく、今はいない。

結局あれから考えてはいるものの、納得のいく答えはでてこない。

「はあ…」

一応このみさんに吐き出したからか以前よりも気持ちは楽になった。だからこれ一つに集中して考えることができているんだと思う。

「お疲れ様美奈子ちゃん。はい、コレ。ヨイショっと」

「あ、小鳥さんお疲れ様です!ところでコレ、何ですか?」

小鳥さんは少し大きめのダンボール箱を抱えて持って来て、私の座ってるソファーの前の机に置いた。

「あら。全部美奈子ちゃん宛のファンレターよ」

「わぁ!本当ですか?ありがとうございます!」

私もそこそこ売れてきているアイドル。こうやってファンレターもよく届くようになった。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:53:40.96 ID:jldwPYN9o
「お礼なんていいわよ。こういうのも私の仕事なんだから」

「ここで読んでいっていいんですか?」

「ええ、どうぞ。私は仕事に戻るかわ。あ、そうだ。劇場の美咲ちゃんに連絡しないと」

そう言って小鳥さんは自分の机に戻っていった。

ダンボール箱の中から一つ一つ手紙を取り出す。
南は沖縄から北は北海道まで、色々なところにいる私のファンが送ってくれた手紙を一つ一つ丁寧に読んでいく。

やっぱりこういったものはいつ届いても嬉しい。
中にはデビューしたてのころから応援してくれている人もいる。

「あれ?これだけ少し違う」

ダンボール箱に入った手紙を読み進めていくうちに、私はそれに目を留めた。

他のファンレターはみんな、便箋に入っていたが、それだけは巾着袋に入れられていて、マジックで『佐竹美奈子さんへ』と書かれていた。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:54:30.62 ID:jldwPYN9o
『他のと明らかに違うやつには気をつけろ。お前のファンにももちろん熱狂的でヤバいやつの一人や二人いる。そんなヤツらは何を仕込んでくるかわからないからな。一応こっちで害のないように仕分けはするけど万が一漏れる可能性あるからな』

以前プロデューサーさんにそんなことを言われたのを思い出す。
一応注意を払って中を覗いてみる。特に変なものは入ってないようなので中身を取り出してみた。

中に入っていたのは2枚の手紙とDVDケースだった。
DVDケースの中身を開けてみたが、タイトルは何も書かれていなかった。

ひとまずDVDはおいておいて手紙の方を読むことにする。
1枚は小学校に上がったくらいの子が書いたような時で、もう1枚は整った大人の字だった。
どうやら親子で手紙を送ってくれたようだ。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:55:29.28 ID:jldwPYN9o
さきに子どもが書いたと思う方を読んでいく。

『みなこちゃんへ』

さすがに漢字は難しかったのかな。ところどころ漢字で書けているものの、全体的にはひらがなの方が多い。

どうやら今年小学生になった女の子のようだ。
こんな小さな子も応援してくれていると思うと嬉しくなってくる。
字はぐちゃぐちゃで、使える言葉も少ないなか、一生懸命書いたことが伝わってくる手紙だった。

手紙の最後には多分私の似顔絵だと思う絵が描かれていた。
こっちも慣れない中、頑張ったようすが浮かぶようにわかる。

そしてもう1通。その子の親が書いたと思う手紙に目を通す。

こっちはその子のお母さんのようだった。

『こんにちは。以前、テレビで貴方が料理をしている姿を見て娘が料理に興味を持ち始めました。今では私と二人で毎週ご飯を作っています』

だいたいの内容としてはこんな感じだった。
私がきっかけで料理に興味を持ってもらえるなんて。
こんな嬉しいことはない。

『いつも二人で応援しています』か。わっほーい。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:55:55.76 ID:jldwPYN9o
残ったのはこのDVD。

『今回こうして送ったのは娘がどうしてもこのビデオをとって送りたいと言って聞かなかったからです。お時間があれば見ていただけると娘も喜ぶと思います』

お母さんの手紙にはこう書かれていた。
DVDの中身が気になった私はこの場で見ることにした。

「小鳥さん。ビデオデッキ使ってもいいですかー?」

「ええ、いいわよ。あら、もしかしてって思ったけどやっぱりそれだったのね」

小鳥さんは調べた時に確認したから中身を知っているようだ。

「やっぱりその年頃の子は可愛いわあ。それにしてもその子のお母さん、私と年がそんな変わらないような…はうっ」

今のは聞かなかったことにしておこう、小鳥さんのためにも。
私はデッキにDVDをセットして再生させる。

映し出された映像には女の子が一人映っていた。どうやらキッチンのようだった。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:56:22.51 ID:jldwPYN9o
『ほら、映ったわよ』

『ほんとー?』

『ほら、まずなにを言えばいいの?』

『あっ!みなこちゃんこんにちはー!』

親子の微笑ましいやりとりが始まった。ビデオとわかっていても思わず「こんにちは」と返してしまいそうになる。

『きょうはわたしとおかあさんで、おりょうりをしたいとおもいます!』

『美奈子ちゃんこんにちは』

カメラを三脚に固定したようで、横からエプロン姿のお母さんが出てきた。

『娘が私の料理を美奈子ちゃんにも見てもらいたいって』

なるほど。だからビデオで撮影して。私に送ってきたってことか。

『じゃあ早速始めちゃいますか。○○?今日はなにをつくろっか』

『はんばーぐ!』

女の子が元気に答える。

『決まりね。じゃあまずは手を洗ってきて』

『はーい!』

『ごめんなさい。少しの間だけ付き合ってくれないかしら。あ、旦那にカメラ任せないと』

カメラに向かってお母さんは言う。
もちろん。むしろ見れてよかったです!

キッチンに立つ二人。二人だけの料理番組が始まった
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:57:31.89 ID:jldwPYN9o
――――
―――
――

圧倒された。

流れているのは親子二人での料理の光景。

楽しそうに料理を作る女の子。

その横で微笑みながら娘を見守るお母さん。

ハンバーグ用の挽肉を二人でこねる様子。

何の変哲もない親子での料理の光景だけど、私にはとても眩しいものに思えた。

お母さんと一緒に作業をする女の子はとても幸せそうだった。

やがて料理ができて、皿に盛り付けられた料理を前に座る親子。
できたハンバーグは少し形はいびつなものの、画面越しでもおいしそうなのがわかる。

『〇〇、お料理は楽しい?』

『うん!』

「……!!」

『〇〇は何を思ってお料理していたの?』

『えーっとねえ。おいしくなーれ、おいしくなーれ、って思いながら!あと、おかあさんとおとうさんにたべてもらうからがんばらなくちゃって』

「……」

私ははっと息をのんだ。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:57:58.65 ID:jldwPYN9o
『料理は愛情なんです!』

私が昔プロデューサーさんに言った言葉。
お仕事で出演した時にもよく言ってるその言葉。

『美奈子ちゃん。貴女のおかげで娘は料理が大好きになって、私達はもっと幸せになれたわ。これからも応援しているから頑張ってね。じゃあ食べましょうか』

『みなこちゃん、ばいばーい!』

DVDはそこで終わった。
私が料理をする意味。答えはその言葉の中でもうでていた。

(誰かに喜んでもらいたい…私の作った料理で幸せになってほしい。それだけで十分だったんだ…!)

私の心が一気に晴れ上がった気がした。
今まで悩んでいたのが嘘みたいだ。

「……今度の番組の献立、考えないと。音無さん、お疲れ様でした!」

ビデオデッキからDVDを取り出してケースにしまう。
そして言うやいなや事務所を飛び出した。

私のやることは決まった。
プロデューサーさんが言うには今回のテーマは中華らしい。
中華料理なら私の十八番だ。
何を作ろうか頭の中で考えながら走り、私は家へと急いだ。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:58:25.10 ID:jldwPYN9o
家に着いた。
何を作るかはもう決めてある。
今回は中華料理だけど、メインはその中でも私の一番得意な回鍋肉でいこう。

家の厨房に立つ。
材料と道具は揃えた。後は調理するだけ。

「……」

最初に材料を切るために、私は包丁をにゆっくりと手を伸ばす。
もうあの幻聴は聞こえなかった。

恐る恐る包丁を掴む
けれどそれでも、包丁を持っても、あの幻覚を、プロデューサーさんの棺桶は見なかった。

そこからはスムーズに進めることができた。

「最新トキメキで真っすぐにアプローチ♪」

思わず私の歌の「スマイルいちばん」を口ずさむ中、厨房には私が包丁で切る音が小気味よく響く。

「エプロンもいいけど可愛いスカートで♪」

料理が楽しい。
誰かを思って、心を込めて作る料理が。

「スマイルいちばん君に届けたい♪」

これほど料理が楽しいと思ったのはいつぶりだろう。
今までの料理も楽しみながら作っていたけどここまで気分が昂ったことはなかった。
無意識のうちにこの当たり前のことを忘れていたみたいだ。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:58:52.64 ID:jldwPYN9o
――――
――


「ずっとっ一緒がいいな♪」

鼻歌が終わると同時に完成した回鍋肉。
もうあの夢は完全に吹き飛んで私の頭の中から消えていた。

私の頬を冷たい何かが伝う。
たぶんこのみさんと話した時のとは多分違うと思う。
だって今、私は何も悲しんでいない。とってもとっても嬉しいから。

その場にしゃがんで、嗚咽を響かせないようにする。
そういえば、初めて包丁を落としたあの日もこうやってしゃがみこんだっけ。

誰も居ないしもう少しこのままでもいいよね。

誰もいない厨房。料理ができた喜びと、溜まったプレッシャーから開放されたことによって押し寄せる涙を止める術を知らない私は、ただひたすらその場でそれを流し続けた。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:59:19.62 ID:jldwPYN9o
――次の日


「おはようございます!」

「美奈子か。おはよう、今日も元気だなあ」

「プロデューサーさん。おはようございます♪」

「そうだ、料理番組で作る献立。もう考えてきたのか?」

「バッチリですよ。今回は私の得意料理の回鍋肉を作っちゃいます」

「回鍋肉か。たしかに美奈子の回鍋肉は美味しかったな」

「いえいえ。それでなんですけど、試食も兼ねて今日はプロデューサーさんのお弁当作ってきちゃいました♪後で食べてください」

「お、久しぶりに美奈子の弁当を食べる気がするなあ。ありがとうな」

「わっほーい!久しぶりなんで、出血大サービスです!なんと、10倍盛りですよ!」

「は、ははは。じゃあ後で食べるから貰っておこうかな。…っと。あれ?いつもと変わらない…っていうか少なくなってないか?」

「プロデューサーさん。10倍盛りは量じゃないですよ」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 01:59:49.83 ID:jldwPYN9o



「愛情満点!10倍もりですから!」



おしまい
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 02:09:12.04 ID:jldwPYN9o
これで終わりです。
以前雑談スレに上がっていたネタを使わせていただきました。
私生活の方がかなり忙しく、2ヶ月以上放置してしまったりしてすいません。
いろいろとおかしい部分もあると思いますが、ここまでこお付き合いありがとうございました。
69 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2017/09/20(水) 03:49:14.15 ID:LLC08EDX0
立ち直れたみたいで良かった
乙です

>>43
中谷育(10)Vi/Pr
http://i.imgur.com/tcXof7S.jpg
http://i.imgur.com/CkhktZa.jpg

>>44
馬場このみ(24)Da/An
http://i.imgur.com/vczu8xc.jpg
http://i.imgur.com/TtkjCfI.jpg

>>64
「スマイルいちばん」
http://m.youtube.com/watch?v=tAe37bfyvqw
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 05:58:28.99 ID:bprturgzo
完走乙です
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/22(金) 11:29:46.94 ID:NOhnjblkO
笑顔がみたいから料理する
美奈子の本質ってすごく優しいよね
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