チラシの裏の裏(TPk5R1h7Ng短編集)【パート1】

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95 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/22(木) 00:21:58.63 ID:O292AQ1no
さわり屋「ひぃ…ふぅ…よし、確かに。良かった……これで首の皮一枚何とか繋がったぁ…」


謝礼を支払い…それを確認するさわり屋さん。

さわり屋さんの安堵の表情から、余程困窮していた事が伺えるけれど…

金銭関係に首を突っ込むのも何なので、私はそれをスルーした。


さわり屋「そんじゃぁ後は……」

マキ「後って…まだ何かあるんですか?」


さわり屋「何かも何も…アンタを障ったヤツの事だ。解決してないだろ?」

マキ「あ、そう言えば……」


さわり屋「マッチポンプを疑われるのもアレだしな。アフターケアでその辺りも何とかしてやるって言ってんだ」

マキ「あ、ありがとうございます…」


さわり屋「で、例の痴漢だが……また手を出して来る可能性が高いか、ら囮作戦が有効だとは思うんだが……」

マキ「何か問題でも?」


さわり屋「いや、さすがに危ない橋を渡らせるのは―――」

マキ「いえ………私、やります。どうして私にあんな事をしたのか…知りたいです」


さわり屋「…………本当に良いんだな?」

マキ「………」


さわり屋「……判った、だったら明日から張り込むとしよう。アンタはいつも通りの時間に電車に乗って、またそこで落ち合おう」

マキ「………はい」


さわり屋「あ、そうだ。一つ確認しておきたいんだが―――――」


こうして……さわり屋さんは、原因究明へと向かってくれた。

けれど………


次の日、さわり屋さんが電車に現れる事はありませんでした。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 07:31:37.23 ID:D1iX6kAx0

どういった理由でだろうね?
97 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/24(土) 02:11:53.37 ID:fc0KoUQqo
無闇に人にさわる物じゃぁ無い…

そんな事は、子供だって知っている。


そして…それがさわり屋だとすれば、尚の事だ。


人にさわれば、人も自分の手に触れる。

それを忘れてさわり続ければ、いずれ自分もさわりに触れる。


そんな当たり前の事を忘れちまったのか…

あるいは……
98 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/24(土) 02:16:33.35 ID:fc0KoUQqo
さわり屋「成程…ね」

少し…ほんの少し、さわり程度の調べ物で、いとも簡単に真相へ辿り着く事が出来た。

しかしそれは、余りにも下らなく…余りにも馬鹿馬鹿しい。


何がこんな事を始め…何故こんな事になったのか…


いや、それは直接本人に聞くのが一番早いだろう。

俺は、マキの背後に居る…マキを障ろうとする障り屋に近付き……その手を掴んだ。


アヤ「……………」

さわり屋「………………」


その障り屋…マキの友人アヤは、ほんの一瞬驚き身じろぎするもすぐに諦め…そこから先は、言葉は不要。

お互いマキに気付かれぬよう、黙したまま車両を移り…人目に付かない手洗いの中へと場所を移した。
99 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/24(土) 02:30:00.62 ID:fc0KoUQqo
さわり屋「しっかし…よくもまぁ、今の今までばれなかった物だな。振り向かれでもしたら、それだけで一発アウトだろ」

アヤ「…マキの性格なら、振り向けやしないわよ。そのまま我慢し続けるのは判ってたから」

さわり屋「成程ね…そんだけマキちゃんの事を理解してる訳か」


アヤ「……そんな事より、今度は私の番。どうして…私が障り屋だって判ったの?」

さわり屋「頭の天辺が…な。髪フェチってセンも無い訳じゃぁ無いが、痴漢で頭を触るってのは考え難いからな」

アヤ「…………」


さわり屋「で、確認してみたんだが…案の定。誰がどこに触れたか、マキちゃんから貰った証言と照らし合わせた結果……な」

アヤ「あぁ…そう言う事……」


さわり屋「で、念のため調べてみたら…昨日以外もアンタはこの電車に乗っていた、と」

アヤ「そんなの別に…あぁでも、そこまで調べたんなら当然住所も知ってるわよね」

さわり屋「そう…アンタの住んでる所は逆方向。偶然乗り合わせる事なんてありえない。なのに…この電車に乗っていた。マキちゃんを障るためにな」

アヤ「そうよ…アンタの言う通り」


さわり屋「なぁアンタ…マキちゃんの友達なんだろ?何で障った?」

アヤ「そこまでは調べなかったんだ……でも、余計なお世話って言葉知ってる?って言うか、それを聞いてどうすんの?」

さわり屋「落とし所があれば、擦り合わせるって手もあるからな。どうしようも無い恨みがあるってんなら別だが…な」


アヤ「恨みなんて…別に無いわよ。全部、お金のため」

さわり屋「金のため…ねぇ。そいつは俺にはどうしようも無いが…その金は、友情よりも大切な物なのかい?」

アヤ「はん…何?同業者がそれを言うの?」


さわり屋「痛い所を突いて来る…と言ってやりたい所だが、俺はさわりおとし専門でね。障り専門のアンタと一緒にされたかぁ無いな」

アヤ「…アンタみたいな偽善者…死ぬ程反吐が出るわ。だったら良いわ、私が障り屋をやってる理由を教えてあげる。うちに来なさい」


こうして俺とアヤは、次の駅で電車を乗り換え……終始無言のまま、アヤの住むアパートへ向かった。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 06:33:15.67 ID:vbbNNLVu0
既に見つけてたからか〜
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/24(土) 07:21:19.49 ID:WhL8xgLC0
はてさて、どんなおぞましいものが待っているのやら
102 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/26(月) 00:04:27.12 ID:uuI4bUyHo
さわり屋「コイツは………」

アヤ「外からでも判るでしょ?でも…直接見て貰うわよ」


部屋に入る前…いや、そもそも敷地内に入る前からでも判る程の、巨大な『障り』の気配。

俺は…尋常ならざる『障り』の存在を、肌のみならず全身で浴びながら…部屋の中へと足を進めた。


アヤ「この子の名前はエンジュ………私の妹よ」

さわり屋「…………っ……」


そこには…小学生くらいの幼い少女が居た。


そして………


そこには………『障り』の塊とでも言うべきか…途轍もなく巨大な『障り』があった。
103 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/26(月) 00:17:01.76 ID:uuI4bUyHo
アヤ「私が…未熟だった私が、うっかりエンジュを触ってしまって…そのせいで…!!」


エンジュ…そう呼ばれた少女は『障り』の渦巻く中で目を閉じ、身じろぎ一つしない。

微かながら生命の息吹を感じるも、その姿はまるで物言わぬ人形のようで………


さわり屋「もう長い事、目覚めていない…って所か」

アヤ「そうよ…これで判ったでしょ?だから私にはお金が必要なの!!」


さわり屋「確かに…これだけの障りをおとすとなれば、命を落とす恐れもある。少なく見積もっても、三千万……」

アヤ「前に他のさわり屋に見せた時は、五千万って言われたわ」

さわり屋「そうだな…そのくらいは当然ふっかけられるわなぁ…」


アヤ「お父さんとお母さんの遺産は親戚中に取られて…私みたいなのがそんな大金を稼ごうと思ったって、簡単には行かないの!」

さわり屋「まぁ当然そうなる…な」


アヤ「『障り屋』だけじゃ無い。他にもお金を稼ぐ手段があるなら、何だってやるわ!」

さわり屋「…………」

アヤ「それこそ、身体を売ってでも身体を切り売りしてでも…どんな事をしてでも、私はお金が欲しいの!」


さわり屋「と………熱くなられてる所を悪いんだが…」

アヤ「……何よっ!!」

さわり屋「このお嬢ちゃん…エンジュちゃんに付いてる『障り』…こいつは、アンタのじゃぁ無いぜ?」


アヤ「………え?」
104 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/26(月) 00:31:07.24 ID:uuI4bUyHo
さわり屋「あと…知ってるとは思うが、自分で自分を『障る』事は出来ないから、エンジュちゃんでも無い」

アヤ「ちょっと待って、話についてけない」


さわり屋「『障り屋』やってるだけだと、まず気付かないと思うが…『障り』にも、ちょっとした違いがあってな?」

アヤ「……は?」


さわり屋「細かい事は、実際に観てみなけりゃ判らねぇが…この『障り』は、明らかにアンタの物じゃぁ無ぇんだよ」

アヤ「な……何よそれ!そんな事いきなり言われて、信じるとでも思ってるの!?」

さわり屋「まぁ、どこからどこまで信じて貰えるかは判らねぇが…とりあえずの証明なら出来るぜ?」

アヤ「そんな事、どうやって――――」


アヤが戸惑い、問いかける中…

俺はコートの中からビデオカメラを取り出し、電源を入れる。そして……


ビデオカメラ「私の名前は赤神マキ――――」

後はまぁ、論より証拠。


このビデオカメラに使ってるレンズは、知り合いに作って貰った特注品で…『障り』を視覚化する事が出来る。

つまり…俺が見た『障り』を、アヤにも見せる事が出来ると言う逸品な訳だ。

そしてアヤの『障り』は、表面を撫でるように渦巻く『障り』である事が見て取れる訳だが……


さわり屋「マキちゃんの身体に纏わり付いてる黒いのが見えるだろ?これがアンタの『障り』だ」

アヤ「これが…アタシの?でも………これ、アンタが加工した訳じゃないって証拠も無いわよね?」

さわり屋「だから、その点だけは証明にならないかも知れないんだが…まぁ、この後……」


ビデオカメラ「2000円で…お触り…でしたっけ?今まで知らなかった世界?初めての体験をしちゃいます」

アヤ「…………………」

さわり屋「………違うぞ?これは、マキちゃんが言い間違えてるだけだからな?」
105 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/26(月) 00:48:18.87 ID:uuI4bUyHo
さて、脱線してしまったので話を戻そう。


俺は改めてアヤの妹…エンジュにビデオカメラを向け、その姿を画面に映す。

すると、画面には………


アヤ「………え?……何…これ………」

さわり屋「少なくとも…アンタ以外の二人の『障り屋』に障られてる…ってのが判る筈だ」


人間の骸骨と肋骨が百足のような形を成した『障り』と…

無数の棘が生えた薔薇の蔓のような『障り』。

全く異なる形の…それも、とびっきりに強力で凶悪で狂暴な『障り』の姿が映っている。


さわり屋「俺の言葉やコレが信じられないってんなら、あくまで『もしも』の話で聞いてくれ」

アヤ「………」


さわり屋「この子…エンジュちゃんを蝕んでる『障り』はアンタのモノじゃぁ無い。つまり…今のこの状態はアンタのせいじゃぁ無い」

アヤ「…………」


さわり屋「アンタの責任感は勘違いで、エンジュちゃんのためにアンタが犠牲になる必要は無い」

アヤ「……………」


さわり屋「それでも…アンタはエンジュちゃんのために金を稼ぐのか?『障り』を振り撒き、他人を傷付け…自分を追い込みまでして」


少々意地悪な物言いをする事になってしまったが……まぁ、これは仕方が無い。

何も知らず……間違った思い込みだけで、あんな事を続けるアヤの前で…それを伏せ続ける事が出来ないってのが……


俺の性分だからな。
106 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/26(月) 01:03:54.10 ID:uuI4bUyHo
アヤ「………っ…でもっ……」


さわり屋「ん?何だ?」

アヤ「それっ…でもっ!アタシはエンジュを助けたい!例え異母姉妹でも、たった一人の妹だから!何を犠牲にしても助けたい!」

さわり屋「……目覚める事が良い事とは限らねぇぜ?自分が目覚めるために、姉さんが何をしたか知ったら…」


アヤ「それでも!」

さわり屋「場合によっちゃぁ、このまま何も知らずに眠り続けてる方が幸せかも知れねぇ。全部投げ出したって、誰も文句は言わねぇだろ」


アヤ「それでもっ…私はエンジュに目覚めて欲しい!無理かも知れなくても、あの頃の笑顔を取り戻したい!!」

さわり屋「そもそも…状態が状態だ。最悪『障り』をおとしても、目が覚める保証は無いんだぞ?」

アヤ「それでも!何もしなかったら目覚める可能性が無いどころか…このままじゃ……」


さわり屋「十中八九死に至る。いつ『障られた』かによって多少の前後はあるが…もって、あと三から四ヶ月って所だろうな」

アヤ「……………」

さわり屋「まぁ普通に考えて…四ヶ月で五千万なんて大金を稼ぐのは無理だ。となると、ローンでも組んで長期返済くらいしか手は無い訳だが…」


アヤ「判ってるわよ……こんな理由でお金を貸してくれる人も居なければ、そんな条件で引き受ける『さわり屋』も居ない」

さわり屋「ま、常識的に考えて当たり前だよな。後はまぁ、よっぽどでかい仕事でもやらなけりゃぁ……」


アヤ「……機会さえあれば、やってやるわよ……エンジュのためなら、例え他の誰かの命を奪う事になっても!!」

さわり屋「あぁ……コイツはまた、とんでもなく重症だ。完全にタガが外れちまってらぁ」


アヤ「そんな事は百も承知よ!って言うか何なの!?アンタって結局、何が言いたいの?!」

さわり屋「言いたいって言うか…むしろ聞きたかっただけなんだよな。アンタの苦労話」

アヤ「アンタって………最っ…低ね!!」


さわり屋「まぁ所詮は偽善者だからなぁ……っと、そうそう。あと一つ……」

アヤ「…何よ」


さわり屋「アンタ……『障り』で人を殺した事はあるか?」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 05:32:49.71 ID:7wI4UUko0

あったとしても、まぁアヤに返ってくるのは3割くらいか?
7割は大元に返るだろ
108 :全知全能の神未来を知る金髪王子様の須賀京太郎様 :2017/06/26(月) 11:19:39.46 ID:jt/XC88V0
どせえもんかと思ったら悪禁厨イズルかよ

早よ国家代表戦出せよ

イギリス優秀中国非公開ドイツ中級フランス妾日本サディスト姉妹ロシアまぁまぁ
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 13:47:12.00 ID:TKqhc30zo
どこの誤爆だ
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 19:31:20.51 ID:ziXHYnsh0
しかし、そんなのもう障りってか化け物……妖怪じゃん
111 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/26(月) 22:28:23.98 ID:uuI4bUyHo
アヤ「………はぁ?」

さわり屋「良いから答えてくれ」


アヤ「……そんなでかい仕事をこなしてたら、今頃こんなに苦労してないわよ」

さわり屋「仕事以外でもか?怨恨や私怨で誰かを殺した事は?」

アヤ「少なくとも…アタシが知ってる範囲で、アタシの『障り』で誰かが死んだって事は無いと思う。でも、それが何だって言うのよ!」


さわり屋「妹のためだったら、何だって出来る…それこそ、越えちゃぁいけねぇ一線だって越えられるってのは判った」

アヤ「そうよ、それが何なの?」


さわり屋「んでも…今までそれを越えずに踏み止まってる、ってぇのも判った」

アヤ「だから何だって言うのよ!」


さわり屋「話を戻すが……俺は、常識とは無縁の…『さわり屋』の中でも異端児だ」

アヤ「………は?」


さわり屋「稼ぎは悪ぃし、仕事はいっつも決まって貧乏くじばかり……」

アヤ「……………」


さわり屋「あ、くどいようだが一応また言うぞ?俺はあくまで偽善者だ!頂く物はちゃんと頂くからな!」

アヤ「……え?ちょっと待って、それって」


さわり屋「とりあえず…暫くの間の衣食住の面ど…もとい、負担はして貰う!それから…本当は即金が良いんだが、社会人になったら残りも返済して貰うからな!」

アヤ「受けて…くれるって事?エンジュの……『障り』をおとしてくれるって事…?でもさっきは……」


さわり屋「だから言っただろ、常識とは無縁だって。それと……こういう貧乏くじを引くのは俺の役目だって…な」

アヤ「――――――――――」
112 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/26(月) 22:46:19.21 ID:uuI4bUyHo
さわり屋「―――って事で、さっき言った通りの質問に答えて貰えるか?」

アヤ「…はい。私の名前は、苦死刺 殺。解阪高校の一年生で、15歳」


さわり屋「じゃぁ次に、エンジュちゃんの方」

アヤ「名前は、苦死刺 怨呪。解阪中学の二年生で、13歳」


さわり屋「家族構成は?」

アヤ「私の両親とエンジュのお母さんは既に他界してて…私の父とエンジュのお母さんは『障り屋』だった」


さわり屋「それぞれの死因は?」

アヤ「エンジュのお母さんは…エンジュを産んですぐに『障り』で他界。私の両親は、交通事故」


さわり屋「確信は無くても良いから、エンジュちゃんを『障る』ような相手に心当たりは?」

アヤ「エンジュは元々身体が弱くて、殆ど家から出なかったから…家族以外と関わるような事さえ無かったと思う」


さわり屋「アンタ…いや、アヤちゃんが…アンジュちゃんを『障ってしまった』と思ったのは?」

アヤ「一年前…両親が交通事故で死んで、精神的に不安定になっちゃった時。制御がきかなくなってて、エンジュを『障った』と思ってたんだけど…」


さわり屋「それ以上の事は判らない………か」

アヤ「うん…ゴメン」


さわり屋「となると…『障り』の正体も相手も不明。毎度の事ながら…ぶっつけ本番でゴリ押しするしか無い訳か」

アヤ「毎度の事って……大丈夫なの!?」


さわり屋「エンジュちゃんへの負担は必要最低限にするし…報酬もあくまで成功した時だけだ。心配すんな」

アヤ「そうじゃなくって……あぁでも……あぁもう!!」


さわり屋「あ、そうそう…障りを落とすのに必要だから、エンジュちゃんの血を一滴貰うぜ?」

アヤ「………うん、分った」


姉であるアヤちゃんの許可を得た所で、俺は懐の薬袋から針を取り出し…それをエンジュちゃんの親指に軽く刺す。

そして今度は、エンジュちゃんの血が付いた針を自分の右手に刺し………


  さわり屋「さぁ……さわりおとしの始まりだ」


景気付けのセリフをキメて、さわりおとしを始めた。
113 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/26(月) 23:00:20.00 ID:uuI4bUyHo
さて………これは判って居た事なんだが……


痛ぇぇぇぇぇ!!

死ぬほど痛ぇぇぇ!!!

無茶苦茶痛ぇぇぇぇ!!!!


皮膚が焼けただれる痛みと、神経に直接響いて来る『障り』……

と言う所は今までと同じなんがだ…今回のそれは、前回の比じゃぁ無い。


歯にドリルで穴を空けて、そこにまたドリルを突っ込んで神経を無理矢理削り取るような痛み…が手の平全体から全身に駆け巡っている。

人一倍治りが早い事を自負している右手も、表面は完全に焼け焦げて筋肉にまでかなりのダメージが来ている事が判る。


安請け合いなんてするんじゃぁ無かったか?いやいや…今は少しでも実入りが無いと困る。

後悔しながらも…それでも自分の行動を肯定しなければ、とてもじゃなければやっていけない。


しかし…今回の『障り』は本気で不味い。気を失ってしまったら、多分そのまま『障り』に殺されてしまうかも知れない。

エンジュちゃんに余り負担はかけたく無いんだが…ここは、一気に引き剥がして落とす他は無いだろう。


エンジュちゃんの奥底にまで沈む……骸骨百足も茨もまとめて…右手で掴んで引き摺り出し…その『障り』をおとす。


エンジュ「――――ッ!!」

意志を持った言葉では無く…あくまで、反射として肺の奥から絞り出される、エンジュちゃんの声。

少々手荒にはなった物の、これでエンジュちゃんの「障り」は――――


さわり屋「…………え?」


そう…手順に間違いは無かった……手応えも確かにあった。

俺は確かに、エンジュちゃんの『障り』をおとした筈だった…その筈なのに………


さわり屋「おいおいおいおい…コイツは一体何の冗談だ?」


エンジュちゃんの身体には、骸骨百足の『障り』が絡み付いたまま残っていた。
114 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/26(月) 23:15:44.07 ID:uuI4bUyHo
おかしい………こんな事はありえない。


俺は確かにエンジュちゃんの血を使い…『障り』を誘き寄せてそのままおとした。

例え『障り』が一つでも…それこそ百の『障り』が付いていようとも、この方法でおとせない筈は無い。


なのに…何故この『障り』は残っている?


迷い…戸惑い、思考が迷走する。

この骸骨百足の『障り』は普通じゃない。

下手に関わり続ければ、それだけ命を持っていかれる可能性が上がってしまう。


ただでさえも不味い方向に追い詰められている……

ってのに、そんな俺に向けて追い打ちが襲い掛かって来る。


さわり屋「嘘……だろ?おいおいおいおいおいおいおい!!」

そこに残った骸骨百足だけでも、文字通り手を焼いているって言うのに…


少しずつではある物の……

さっき落としたばかりの筈の、茨の「障り」が…またじわじわと、エンジュちゃんの身体を這い回り始めた。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/27(火) 17:52:50.50 ID:HeSzVdU80

何かもはやFate/strange Fakeのペイルライダーみたいだな
116 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/27(火) 23:52:02.40 ID:5ImijBqDo
さわり屋「何なんだ…一体何なんだよコイツは。こんな『障り』見た事無いぞ」


アヤ「…………」

思わず零してしまった言葉に、アヤちゃんが不安そうな瞳をこちらに向けて来る。


あぁ…判ってる。報酬を貰う以上は、エンジュちゃんから『障り』をおとして見せる。だから、そんな目を向けないでくれ。

と……半ば自分に言い聞かせるように心の中で呟く。

だが、一体何をどうすれば良いのか……どうすればあの『障りを』おとす事が出来るのか…


幸いな事に、今すぐ落とさなければ死ぬと言う訳では無い。

時間が経てば経つだけ、容態が悪化してしまうが…ここは一旦退いて、体制を立て直すのが得策だろう。


となればせめて…手掛かりを得るためにも、この二つの『障り』の事を出来るだけ細かく記憶しておく必要がある。

それぞれの『障り』はどんな特徴を持って居るのか…どこからどこまでを、どんな形で『障られ』ているのか……

少々失敬して、服の下の肌を直接診る。


そして、そこで………


さわり屋「…………ん?」

とある…奇妙な事に気付いた。


骸骨百足の肋骨…足?は、茨を避けるようにエンジュちゃんの身体に張り付き…

逆に茨は、骸骨百足を避け…その合間を縫うように広がって行っているようだ。


今回とは別件で、複数の『障り』が付いていた事もあったが……

あの時は、両方の『障り』が重なっていた部位が陣地争いを繰り返していた。

しかし今回に関しては、示し合わせたように二つの『障り』が綺麗に区切られ…更に言えば、その境界線から新たに茨が広がっていく。


何故こんな奇妙な事が起きているのか………

何か…ほんの些細な事でも良いから、手掛かりが無いか…今ある情報を改めてかき集め……


さわり屋「…………いや…まさか………なぁ?」

ふと………とある仮定の下で生まれる、仮説がある事に気付く。
117 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/28(水) 00:20:04.22 ID:gU1LNahCo
『…はい。私の名前は、苦死刺 殺。解阪高校の一年生で、15歳』

『名前は、苦死刺 怨呪。解阪中学の二年生で、13歳』

『私の両親とエンジュのお母さんは既に他界してて…私の父とエンジュのお母さんは『障り屋』だった』

『エンジュのお母さんは…エンジュを産んですぐに『障り』で他界。私の両親は、交通事故』


頭の中で反復したのは、先のアヤちゃんの言葉。

よくよく考えるとおかしな部分があって……そこを深く考えた時点で、ピンと来た。


この場は一度退いて、裏付けと確認を取ってから再挑戦…という手も無いでは無いんだが……

さわり屋「そこでこれを聞いちまうのは…偽善者としての、俺の性分から外れちまうよなぁ」


となれば…残された道は一つしか無い。

さわり屋「これまたぶっつけ本番になっちまうが…やるしか無ぇよなぁ」


俺は左手の包帯を解き…

それを……骸骨百足が纏わり付く、エンジュちゃんの顔へと持って行く。

そして、親指を口の中へと突っ込み……


エンジュ「――――ッ!!」

再び姿を現した、茨の『障りを』もう一度おとす。

それと同時にエンジュちゃんの顎が締まり、歯が俺の指へと食い込んで……


   さわり屋「さぁ…改めて、さわりおとしの始まりだ!!」

今度はその左手を、骸骨百足の頭に添えた。
118 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/28(水) 00:37:11.08 ID:gU1LNahCo
右手と左手……両手の指先に始まり、脳天から足の指先に至るまで…全身を余す事無く襲う激痛。

ほんの少しでも気を緩めれば、意識と命をそのまま持って行かれてしまうのは目に見えている。

だが…苦しみを味わっているのは俺だけじゃぁ無い。


エンジュ「ッ……!!ぅぅっ…!!――――!!」

さっきみたいな機械的な呼吸とは全く別の…苦悶を含んだエンジュちゃんの声。


意志は無くとも、意識の片鱗がそこに見える…それはつまり…『障り』をおとした先に、僅かながらも期待が持てると言う事。

俺は、歯を食いしばって意志を失うの堪え……右手で茨の『障り』を…左手で骸骨百足の『障り』をおとしていった。


さわり屋「……………っ――――――!!」

アヤ「えっと……終わったの?やった…の?」

さわり屋「いや…わざわざやれてないフラグ立てるような発言しないでくれねぇか!?」


アヤ「え?そ…そうなの?」

くっ…これがジェネレーションギャップというヤツか。


まぁ良い…残念ながら、俺は常識から外れた、お約束を守らない男だ。

その点はぬかり無く、エンジュちゃんの『障り』は落とし切った……のだが…


さわり屋「一応、今エンジュちゃんについてた『障り』は全部おとし切った」

アヤ「じゃぁ……」

さわり屋「んでもな…今回の場合は、ちょっと複雑みたいでな。事はこれだけ終わらないらしい」


アヤ「………それって、一体どう言う…」

さわり屋「まぁ…そこん所も含めて、エンジュちゃんが起きたら話をしようと思う。そんなに時間はかからないだろうから、少し待ってくれ」


偽善者的には、その理由を口にするのははばかられる。

だが……それを語らずして解決は見込めない以上…結局はそれを突き付ける他は無い。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/28(水) 01:32:06.99 ID:QiNNtHB30
いや、障りを仮受け?みたいのしてるダメージは?休まなくて大丈夫なん
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/28(水) 02:54:31.27 ID:Ueq2uvbQ0
口の中には何が居たの〜?
121 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/28(水) 21:29:56.46 ID:gU1LNahCo
私は誰なのか…

私は何なのか……


…判らないのです。


私は……

私は………


多分…

何も知らない方が……


何も考えない方が……いいのです。
122 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/28(水) 21:45:11.96 ID:gU1LNahCo
マキ「ごめんね……私、アヤの事何にも知らなかった」

アヤ「そんなの…何で……アタシの方こそマキに酷い事したのに……」


どこからとも無く…声が聞こえて来る。


さわり屋「っと…仲直りしてる所を悪ぃが、エンジュちゃんが目ぇ覚ましそうだ。少し静かにしてやってくれ」

誰かが…私の名前を呼んでいる。お父さんとは違う…知らない男の人の声。


私は、重たい瞼をゆっくりと上げ………ぼやけた視界の中で声の主を探した。


エンジュ「………あれ…?」

アヤ「エンジュ!…エンジュ!エンジュ!!」

一人…二人…三人………ぼんやりと人影が見える。


一人はお姉ちゃん…一人はお姉ちゃんと同じくらい…最後の一人は、もっと背が高い。

私は…ぼやけた目を擦るために、手を上げようと思ったのだけど……

どうしてだろう、身体が上手く動かない。喉もガラガラになっていて、声が上手く出せない。


さわり屋「おっと、一年ぶりのお目覚めなんだ。無理はすんなよ?そうでなくても弱ってるんだからな」

エンジュ「一年………?」

この人は一体何を言っているのだろう?私は言っている事の意味がわからなくて、その人に聞き返した。


さわり屋「これから重要な話をする事になるんだが…あぁそうだ、先に自己紹介をしておこう。俺はさわり屋だ」

マキ「あ、私はアヤの親友のマキだよ。よろしくねっ!」

エンジュ「お姉ちゃんのお友達と…えっと……お父さんとお母さんの、仕事の同僚の人なのですか?」


さわり屋「直接面識は無かったが…まぁ、同業者って意味じゃぁそうだな」

エンジュ「そう…なのですか」


さわり屋「って事で…自己紹介が終わった所で本題に入らせて貰う」

そう言って男の人…さわり屋さんは私の横に座り直し…言葉を続けた。


さわり屋「率直に言わせて貰うが…エンジュちゃんには、少しでも早く『障り』を制御出来るようになって貰う。でなければ…遠くない内に命を落とす事になる」


エンジュ「……え?私が…『障り』を…なのです?」

さわり屋「あぁ、そうだ。エンジュちゃんは珍しい体質で…一つの器の中に二つの『障り』…いや、二つの身体が混ざり合っているんだ」


エンジュ「…………え?」
123 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/28(水) 21:56:05.23 ID:gU1LNahCo
さわり屋さんが何を言っているのか…私にはわからなかった。

エンジュ「すみません…言っている事が判らないです…」


さわり屋「言葉通りの意味だったんだが……まぁアレだ。漫画なんかでよくあるだろ?右と左で炎と氷みたいな…」


マキ「右拳と左拳を近付けて、サイクロンを生み出すみたいな?」

さわり屋「連載時に生れても居なかったよなぁ!?ってか、そんなマイナーな…」


アヤ「アタシは…炎の中に手を突っ込んで忠誠の証を取るのを…」

さわり屋「そっちも生れる前だよなぁ!?いや、ある程度メジャーだが…」


私は私で別のキャラクターを連想していだけれど…

話が進まなくなりそうなので、口を挟まないようにした。
124 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/28(水) 22:11:58.83 ID:gU1LNahCo
さわり屋「とまぁ、そんな訳で…エンジュちゃんは、異なる二つの『障り』が炎と氷みたいにぶつかり合ってお互いに『障り』合ってる訳だ」

エンジュ「それは判りましたですが…その…何で……」

さわり屋「お袋さんの腹ん中に居る時…本当は二人で生まれて来る筈だった命が、混ざり合って生まれて来ちまう事がある。で…エンジュちゃんがそれだ」


エンジュ「……………」

言いたい事は判る…理解出来る。でも……それが自分の事だと実感する事は出来なくて…どこか他人事のように聞こえてしまう。


さわり屋「あー…って言ってもだな。その事に付いて、意味を深く考えたり何を気負うような必要は無ぇ」

エンジュ「だったら…何故こんな事をです?」


さわり屋「至って冷徹に機械的に…仕組みだけ理解が必要だったからだ」


必要?何に?何をするために?『障り』を防ぐために?どうして?

そんな疑問が頭の中をぐるぐる回って…その回転の真ん中あたりに、ついさっき聞いた言葉が浮かんで来た。


エンジュ「一年ぶりって……その…じゃぁ私は…一年間、ずっと眠ってて………」

さわり屋「そうだ」


エンジュ「え?でもその間……」

さわり屋「お姉さん…アヤちゃんがずっと面倒を見てた」


エンジュ「何で…そう……私が…自分で自分を『障って』……?」

さわり屋「そうだ」


エンジュ「あれ?でも……『障り』って…相手を―――――ー」

そして、その言葉を出しかけた時……


私が気を失う少し前……一年前に何があったのかを思い出した。
125 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/28(水) 22:37:44.50 ID:gU1LNahCo
「ほら、あの子よ?実の母親に続いて、今の両親まで…」

「あらでも、先に生まれたお姉ちゃんの方が今の奥さんの子供なのよね?」

「嫌だわ…それって、不倫相手の子供を引き取ったって事?奥さんも不憫だったわね」

「それに……あその家って、何かいかがわしい仕事をしてたって聞いたわよ?」

「まぁ怖い」


「ふん…あんな事をしていたから罰が当たったんだろう。面汚しめ」

「あの親にしてあの子あり…と言った所よのぅ」

「それよりも、あの子達は誰が引き取るの?」

「知った事か。施設にでも預けておけば良いだろう」


「お姉ちゃん……」

「止めてよ!!アタシだって今、いっぱいいっぱいなんだから!これ以上手間をかけさせないで!!」

「……………お姉……ちゃん」


そう……思い出した………

私は全部思い出した。


エンジュ「そうだ…私は……いらない子……いちゃ…いけない子………」

アヤ「エンジュ!?」


私の心の奥底から…何か黒くて熱い物が込み上げて来る。

そしてそれが『障り』だと言う事はすぐに判った。

けれど…………


私はそれを抑えようとは思えなかった。
126 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/28(水) 22:59:33.86 ID:gU1LNahCo
さわり屋「コイツはまた……予想を飛び越えた『障り』じゃねぇか……」

マキ「そんな…さわり屋さん!どうにか出来ないんですか!?」


何か…声が聞こえる。

でも…どうでも良い。


アヤ「お願い!エンジュを助けて!!」

大丈夫だよ、お姉ちゃん…無理してそんな事を言わなくても済むようになるよ。


さわり屋「やれやれ、こっちはもう限界ギリギリだってーのに…無茶を言ってくれるねぇ」


身体も…心も…私の中から溢れ出す『障り』に飲み込まれて行く。

そう…これで良い。

こうするのが、一番良い。


私さえ居なくなれば、全部上手く行く…お姉ちゃんも楽になる……

私は『障り』の奥深くに目掛けて、心ごと飛び込んだ。


それなのに―――――


エンジュ「………え?」

私の心から…そして身体からも、いつの間にか『障り』が消え去りっていた。


さわり屋「よォ……どうした?よっぽど気に『障る』事があったみてぇだが…これで打ち止めかい?」

よくわからない…よくわからないけれど、この男の人が邪魔をしている。

そうだ…お父さんが言っていた『さわり屋』と言うのが、この人の事なのだろう。


さわり屋「残念だなぁ?こっから俺がもっともっと気に『障る』事を言ってやるってのによぉ!」

何言っているのか…何を言っているのか、本当にもう判らない。ただ判るのは…

この人は私の邪魔をしている……私に嫌な事をしようとしているという事だけ。


だったら私は………

もっともっと…もっと。この人が邪魔を出来なくなるくらいまで『障り』を溢れ出させるだけ。
127 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/28(水) 23:16:07.95 ID:gU1LNahCo
さわり屋「ぐっ……っっ。何だい何だい、この程度かぁ!?父親にも母親にも見放されて先立たれて、その悲しみがこの程度か?」

やっぱりだ…この人は私に嫌な事を言ってくる。


さわり屋「親戚中をたらい回しにされて…その挙句に、したくも無い世話を無理矢理アヤちゃんにさせて…そんな自分が許せねぇんだろ?」

それ以上言わないで…もう聞きたくない。これ以上何かを聞く前に、消えて無くなってしまいたい。

私は更に…更に奥底からドス黒い物を絞り出し……


アヤ「違う!!!」

エンジュ「………え?」

お姉ちゃんの言葉で…ほんの一瞬、それが止まってしまった。


アヤ「勝手な事言わないで!アタシは…アタシはエンジュの事をそんな風に思ってない!!」

さわり屋「おいおい、詭弁はよせよ!エンジュちゃんの面倒を見てたのは、アヤちゃんがエンジュちゃんを『障った』って思い込んでたからだろ?」


やめて……


アヤ「そうだった…そうだったけど、そうじゃない!!」

さわり屋「ほら言った!今はどうあれ、最初は責任感があったから面倒を見てたんだ!アヤちゃんこそ本当の偽善者じゃねぇか!」


やめて……それ以上……


アヤ「そんなの関係無い!偽善者だって良いもん!!アタシはただ、エンジュに元気で居て欲しいだけなの!!」

エンジュ「それ以上…お姉ちゃんを虐めないで!!!」


私の中から溢れ出した何かが……さわり屋さんの身体を、反対側の壁まで物凄い勢いで弾き飛ばした。


さわり屋「ぐげっ!!!?」

潰れたヒキガエルのような声と共に、壁にぶつかるさわり屋さん。


アヤ「………え?」

エンジュ「………え?」

お互いの言葉に…今起きた出来事に、目をパチクリさせる私とお姉ちゃん。


そして、うつぶせに倒れたさわり屋さんが、首だけをこちらに向けて……

さわり屋「そら……そうやって自分の意志で溢れ出せんなら……逆も何とか出来そうだろ?」


その言葉を聞いた時…私は初めて、さわり屋さんが何をしようとしたのかわかった。
128 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/28(水) 23:32:07.62 ID:gU1LNahCo
エンジュ「あの……一つだけ教えて貰えますか?」

さわり屋「ん…何だい?」


エンジュ「お母さんは…私を生んだお母さんは……私の『障り』のせいで死んでしまったのですか?」

さわり屋「さすがにそこまでは判らねぇなぁ」

エンジュ「そう…ですか」


さわり屋「エンジュちゃんの『障り』のせいで死んだのか…それとも、誰かの『障り』のせいで、エンジュちゃんがこうなったのか。それは神のみぞ知るってヤツだ」

エンジュ「………」


さわり屋「ただ、どちらにしても…一つだけ確かな事がある」

エンジュ「それは…一体何なのですか?」


さわり屋「『障り』の大本である胎児…エンジュちゃんを下ろせば、少なくとも母体の『障り』はおとす事が出来た筈だ」

エンジュ「…………じゃぁ、やっぱり…」

さわり屋「っと、人の話は最後まで聞く物だぜ?」

エンジュ「…え?」


さわり屋「でもな…エンジュちゃんのお袋さんはそれをしなかった」

エンジュ「ぁ………」


さわり屋「例え自分の命に代えてでも…エンジュちゃんに生まれて来て貰う事を選んだ。それだけは、俺に言えるたった一つの確かな事だ」

エンジュ「――――――――うぅ……ぅっ……」


私は…目頭の奥から溢れ出す涙を止める事が出来ず……

疲れ果てて眠りに落ちるまで泣きじゃくりました。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/29(木) 04:18:15.22 ID:vRZb7B7Y0
怨が茨で呪が骸骨かいね?
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/29(木) 11:38:02.09 ID:yoqWi4XC0
ノせるのが上手いねぇ、さわり屋
131 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/01(土) 00:05:13.58 ID:Ik42ok9Ho
全てを失ったアタシには……エンジュが全てだった。

エンジュ以外には何も無い………


お父さんやお母さんが残した家も何も……何もかも無くなった。


『障り屋』としての力は…所詮力で、守るべき物じゃ無い。

人を不幸にする事しか出来ない力…誇れるような物じゃ無い。


この力のせいで、エンジュが目覚めなくなってしまって……


でも…

この力でエンジュを守る事が出来るなら…

そう思って、今まで何人もの人を『障って』きた。


でも……

全部間違ってた。


だとしたら……

アタシがやってきた事は………
132 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/01(土) 00:24:33.97 ID:Ik42ok9Ho
マキ「エンジュちゃん…寝ちゃったね」

さわり屋「まぁ……目覚めてすぐにあんだけ激しく立ち回ったんだ、無理も無ぇだろ」


『さわり屋』の事は両親から聞いた事があったし…エンジュの件で、実際に会った事もその手管を見た事もあった。

でも、目の前のこの『さわり屋』は…そのどれとも違っていた。


アヤ「あのさ…さわり屋。さっきのって……」

さわり屋「あぁ…ぶっつけ本番だったが、中々上手くアドリブ出来てたじゃねぇか」

アヤ「って…え!?じゃぁ、あれって演技だったの!?」


さわり屋「……は?」


アヤ「…………」

さわり屋「…………」


だらしなくうつ伏せで倒れながら、額に汗するさわり屋……と、同じように汗するアタシ。


マキ「まぁうん……何とかなったんだから、結果オーライ?」

耐えられなくなった沈黙に、助け船を出してくれるマキ。

途中、色々とヒヤヒヤさせられる事態はあったけれど…


アヤ「でも、これで…エンジュは……助かったのよね」

さわり屋「あぁ、そうだ。ちょいとばかし、勢いに任せた荒療治になっちまったが…これでひとまずは大丈夫だろ」


エンジュが…………エンジュが戻って来てくれた。

泣き腫らしながらも安らかな寝顔を浮かべるエンジュを見下ろし…私はそれを実感した。

そして……私は思う存分…今まで貯め込んでいた分全てを流し切るように泣いた。


アヤ「ありがとう……ありがとう…ありがとう………」


さわり屋「これも仕事だからな。それに…アフターケアもまだ完全って訳じゃぁ無ぇし、まだまだ二人にも頑張って貰………ん?」


さわり屋は勿体を付けて言うが、私からしてみれば、今の時点でも十分過ぎる結果を出して貰っている。

もしも他の『さわり屋』に頼んでいたとしたら、絶対にここまでの事はして貰えない。

その事を口に出して伝えようとしたのだけれど……何故か、さわり屋は言葉を途中で止めた。


そして、視線を玄関の方へと向け…私もそれにつられるように視線を向けると………


そこには…開け放たれた扉と……その向こう側に、夕日を背にした人影があった。
133 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/01(土) 00:36:04.06 ID:Ik42ok9Ho
合羽の男「いち…にぃ……おまけが一つと…どうでも良いのが一つ…」


その人影を…目を凝らして見る。

全身を雨合羽で覆い、顔はマスクと潜水用ゴーグルでよく見えない。

左手には大き目のビニール袋を持ち……右手には………


コンバットナイフを握り締めていた。


アヤ「な………何なのよアンタ!!」

その様相もさる事ながら…口ずさむ言葉からも、これでもかと言う異様さが見て取れる。

アタシはエンジュを庇うように、合羽の男の前に立ちはだかる。


合羽の男「あーぁ…そうか……俺の事なんて覚えて無いと来たか。そうかそうか……一体何人の男を同じような目に遭わせて来たんだ?なぁ?」

男の口ぶりからして…アタシに対して恨みを持ってる事は何となく判った。

でも…肝心の顔が見れないから、ソイツが一体誰なのか判らない。


多分…アタシが今まで『障った』誰か。

その中の一体誰なのか……必死に思い出そうとした所で……


さわり屋「昨日の…電車で痴漢冤罪をかけられた奴だな?」

どこか確信を持った口調で…さわり屋がそれを呟いた。
134 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/01(土) 00:56:50.26 ID:Ik42ok9Ho
合羽の男「せぇいかぁい……ってか何だ?何でお前が答えてるんだよ!あぁ!?」

さわり屋「生憎と…この子はアンタ以外も多方から恨みを買うような事をやってたんでね。話を進めるために口を挟ませて貰うぜ」


合羽の男「………まぁ良い。どうせお前等この後すぐに死ぬんだ!いいや、すぐには殺さねぇ!なぶり殺しだ!!ひひっ…ひひひひっ!!」


マキ「な…何?何か、かなりイっちゃってるんだけど…」

アヤ「ゴメン……アタシにも、何が何だか……」


さわり屋「丁度良い機会だから教えとくが……『障り』ってーのは、身体に止まらず、心にまでに影響する事がある」

アヤ「何それどう言う事!?」


さわり屋「『触った』相手の気に『障って』そのままそいつの、気が『ふれ』て狂っちまったり…壊れちまったりするんだわ、これが」

アヤ「えっ………それって……エンジュが…」

さわり屋「そう…エンジュちゃんが自分にしたのがそれだ」


アヤ「じゃぁ…そこの男も?そんな…そんな事するつもりじゃ無かったのに!じゃぁ、どうすれば良いの?!」


さわり屋「意図せず相手の気に『障って』しまったんなら…その気が『ふれ』ちまう前に、それを抑える他は無ぇ」

アヤ「え…えっとだったら…あの合羽の男には…どうすれば………」

さわり屋「もしもの話は嫌いなんだが……まぁ、冤罪をかけちまった時点で、それを撤回して謝っとくべきだったんだろうな」


合羽の男「あぁあ、そうだなぁ!あの時そうしてれば、こんな事にはなってなかったよなぁ!!」

アヤ「っ………ご…ごめんなさい!!」


合羽の男「はぁぁぁん!?手前は馬鹿か!?今更謝ったって遅いんだよ!全部手遅れなんだよ!!」

アヤ「ヒ――ッ!?」


合羽の男はナイフの切っ先を私に向け、怒鳴り声を上げた。


合羽の男「お前の……お前のせいで俺はもうお終いだ!!」

さわり屋「………」


合羽の男「自称正義の味方の馬鹿な男達に追い回されて…電車に轢かれそうになって、動画も撮られて、拡散されて!!」

マキ「………」


合羽の男「あっと言う間に身元まで特定されて…やっとの思いで出社したと思ったら、弁明の機会も無しにいきなり解雇だぞ!?」

アヤ「そん……な……」


合羽の男「俺はもうお終いだ……だからせめて…恨みの一つも晴らさなけりゃぁ、やってられねぇんだよぉぉぉ!!!」
135 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/01(土) 01:11:11.22 ID:Ik42ok9Ho
さわり屋「成程…な。今の情報化社会じゃぁ、些細な事で根も葉もない噂が飛び交い生き辛くなる。確かにアンタには同情する」


その場に居る誰一人として動けない…合羽の男に対して、下手な言葉を向けられない。

そんな中で…さわり屋だけは男に対し、その意を汲むような言葉を向けるのだけど……


合羽の男「だったらそこで黙ってろ!茶々入れて邪魔すんじゃぁねぇよ!!」

さわり屋「…でもな?ちょいとばかし…俺の嫌いな、もしもの話をさせて貰うぜ?」

合羽の男「………はぁ!?」


さわり屋「その子が冤罪をかけなければ…こんな事にはならなかった。それは百も承知で、大前提だ。でもな?」

アヤ「………っ」

さわり屋「もしものその時、その場に残って身の潔白を証明していたら…もし次の日、マキちゃんを尾行なんてしなければ…」

マキ「えっ?私?…私、尾行されてたの…?」


さわり屋「そしてもしも……復讐なんて考えて、実行に移そうとしなければ……こんな事にはなって無かった。そうは思わねぇかい?」

合羽の男「ふっ……ふざけるな!!そんなお前等に都合の良い事ばっかり並べてんじゃねぇ!!」


さわり屋「あぁ…確かにそうだ。都合の良い事ばかり並べてる…が、そっちの方がマシだった筈だ。そして、アンタはそれを選ばなかった」

その言葉を語り終えた後、さわり屋はゆらりと立ち上がった。


合羽の男「ふざけるな!ふざけるなよ!そんな加害者に都合の良い理屈があるか!」

さわり屋「加害者も何も…起きちまった事は起きちまった事だ。どっちにも原因があって、どっちにも落ち度がある。だからな?俺はこういう時、こう考えるんだ」

合羽の男「……はぁ?」


さわり屋「そこに悪意があって、悪意が被害を生むってんなら…俺はそいつを阻んで、被害者の方を助けるってなぁ!」

合羽の男「ふっ…ざっ!けるなぁぁ!!!どっからどう見たって俺の方が被害者だろうが!だったら俺を助けてみせろよ!!」


さわり屋「そう……そこなんだよなぁ」

合羽の男「はぁっ?」


さわり屋「もしこれが、アヤちゃんが『障って』気が『ふれた』って事なら、力になれるんだが…」

もしも何も…今までの話を聞いて居る限りでは、間違いは無い筈。

私は、さわり屋が何を言っているのか判らず…今はただ、その言葉の続きを待った。


さわり屋「アンタ……気が『ふれ』て、狂ってる訳じゃぁ無ぇだろ」


アヤ「……は?」
136 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/01(土) 01:28:39.09 ID:Ik42ok9Ho
合羽の男「なっ…何を…さっきから何を訳の判らねぇ事を言ってやがる!」


さわり屋「まず第一に…気が『ふれ』ちまった奴にマトモな判断なんて出来やしねぇ。それこそ……」

そう言ってさわり屋は、合羽の男が持ったビニール袋を指さし…更に言葉を続ける。


さわり屋「相手を殺す時、返り血を浴びないための準備に…殺した後の隠蔽工作の準備なんて出来やしねぇ」

合羽の男「………っ」


アヤ「ど…どう言う事なの?だったら何でこんな…」

さわり屋「コイツは、アヤちゃんに『障られ』て気が『ふれ』たんじゃあ無い。他人のせいにして、狂ったフリをしてるだけだ!」


合羽の男「違う…違う違う!!俺は何も悪くない!全部そこの糞女が悪ぃんだよ!!だから…俺には復讐する権利があるんだ!」

さわり屋「そうだ…そうやって復讐を言い訳にして、手前ぇは自分の歪んだ願望を叶えようとしてるんだよ!!」


合羽の男「黙れ…黙れ黙れ黙れ!!」

さわり屋「被害者で収まっている事を捨てて、立場を振りかざす方に回った手前ぇはもう被害者じゃねぇ!」


合羽の男「黙れって言ってんだろぉがよぉぉぉ!!!」

さわり屋「でもな……目の前の『障り』をそのまま放ったらかしにするってぇのも俺の性分じゃぁ無ぇ」


合羽の男はナイフを構え…さわり屋に向けてそれを勢いよく突き出す。

そしてそのナイフが、さわり屋の腹部に突き刺さった…そう思ったのだけど……


さわり屋「その『障り』おとしてやるよ。ただし……気ぃ失う程キツいから覚悟しとけよ!!」

さわり屋はそのナイフを左手で握り締め……右手で、以前私が掴んだ合羽の男の右手首を掴んだ。


そして、それとほぼ同時に………


合羽の男「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

合羽の男の口から、この世の終わりのような悲痛な叫び声が絞り出された。
137 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/01(土) 01:37:48.60 ID:Ik42ok9Ho
恐らくは…『障り』を無理矢理に引き剥がしたのだろう。


あくまで、さわり屋…この男の今までの手順を見比べた上での憶測でしか無いけれど…

血や唾液といった物を手に取り込んで居たのは、あくまで疑似餌的な物で……

『障り』をおとす際に、対象にかかる負担を肩代わりしていた物だと言う事は目に見えて明らか。


だが今回に限っては、その手順を省略した事で……

さわり屋が肩代わりする筈だった苦痛は。全て合羽の男自身が味わう事になった…と言う所だろう。


アヤ「………」


悲鳴とともに合羽の男の意識はおとされ……

同時に…そのショックでか、頭頂の髪がはらはらと抜け落ち……膝を突いてうつ伏せに倒れ込んだ。


さわり屋「さぁ…これでタッチダウンだ」
138 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/01(土) 01:53:32.04 ID:Ik42ok9Ho
アヤ「…………それで…この後コイツどうするの?」


合羽の男は……自身が持って来た、ビニール袋のその中に入っていた拘束バンドで後ろ手に縛られ、身動き一つ出来ない。

もし万が一目覚めたとしても、私達に危害を加える事が出来る状態では無いのだけど……かと言って、このままここに置いておく訳にも行かない。


アタシ自身が撒いた種とは言え…エンジュに危険が降りかかる可能性放置する訳にはいけない。

何をするべきか…どう処分するべきか……そればかりが頭の中を駆け回る中…


マキ「事が事だし…あ、そうだ。二度と手出しが出来ないように、再起不能になるまでアヤが『障る』って言うのはどう?」

マキが、とんでもない事を口走った。


アヤ「怖っ!!」

さわり屋「マキちゃん…意外とエゲつねぇ事考えるなぁ…」

マキ「えぇー……そう?」


普段の…いや、以前のマキからは考えられないような、とても大胆で容赦の無い提案。

それに対して私は驚きを隠す事が出来ず、ついつい声を上げた。


アヤ「でもマジメな話…どうにかしないと、いけないのよね…」

さわり屋「まぁ…このまま逃がしちまったら、いずれまた仕返しに来るだろうし…かと言って『障った』としても、それをおとされたら意味が無ぇ」

マキ「……あれ?と言う事は、ドン詰まり?」


そう……こうなってしまうと、後は物理的にそんな事が出来ないようにするしか…考える事も出来ないようにするしか無い。

そして、その意味を考えて…ごくんと固唾を呑み込んだのだけど……


さわり屋「まぁ、その件に関しちゃぁ俺に考えがある。こいつもアフターケアの内だしなぁ」

さわり屋のその一言の後……事態は無事に収束を迎える事になった。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 06:07:25.42 ID:PRypqnq20
恨みは特定条件下で持続的なエネルギーを生み出すが、大抵は使われ方が間違っている
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 19:50:34.98 ID:GXKjV6QP0
障り系の仕事に斡旋……とか?
141 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/02(日) 01:27:47.18 ID:gog2TsLUo
こうして……私とさわり屋さんの出会いから始まった騒動は、一旦の収束を見せました。

ちなみに、その後はどうなかったと言うと……


マキ「警察…よく逮捕してくれましたね」

さわり屋「状況証拠に加えて…マキちゃん達の証言。あと、撮りっ放しにしてたビデオに一連のやり取りが音声で残ってたのが決め手になったからな」

マキ「刑期はどのくらいになりそうなんですか?」

さわり屋「俺達4人に対しての殺人未遂と…殺人予備にその他諸々。まぁ少なく見積もっても、エンジュちゃんが成人するまで顔を見る事は無いだろ」


マキ「…にしても『障り』のくだりとか…よく信じて貰えましたね」

さわり屋「いんや?信じて貰える訳無い無い」

マキ「…えっ?」


さわり屋「その辺りは、アヤちゃんのカウンセリングの一環として作った設定…って事にしてある」

マキ「設定って…と言うかカウンセリングって…カウンセラーでも無いのに、よく信じて貰えましたね」

さわり屋「いや俺、心理カウンセラー資格持ってるし」


マキ「……えっ!?」


さわり屋「そこまで驚く事か!?まぁあれだ…職業柄、持ってた方が色々便利だから取っとけって言われてそのまま取っだけなんだがな」

マキ「まぁ…確かに、今回みたいな時には便利ですよね」


と…あれやこれやと話している内に、アヤの住んでいるアパートの前。

あ、言い忘れてましたが…一緒に登校しようと、アヤを迎えに来た所です。
142 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/02(日) 01:37:24.54 ID:gog2TsLUo
マキ「あ、おっはは〜エンジュちゃん。今日からもう登校?ってかあれ?眼鏡かけてたの?」

エンジュ「あ、いえ…これは……『障り』を抑えるためにさわり屋さんがくれたのです」

マキー「へぇー」


先に出て来たエンジュちゃんに挨拶をして、ドアの隙間から部屋の中を覗き込む私。

少し遅れて出て来たアヤに向かい…すかさず抱き着く。


マキ「おっはっは〜アヤ!」

アヤ「うわっ?!って、マキ!?何してんのよ!」

マキ「いつものお返し〜っ」


ドッキリ作戦大成功。

見事にアヤを驚かせ、私は手を放す。


そしてアヤは一呼吸ついて……落ち着いてから、再び口を開く。
143 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/02(日) 01:51:01.43 ID:gog2TsLUo
アヤ「えっと…その………二人とも、昨日は……ありがとう」


マキ「いいっていいって、私達友達なんだからっ」

さわり屋「俺にしてみりゃぁ、あくまで仕事だからな」

………とは言っている物の、さわり屋さんが照れ隠しをしているのは周知の事実。

羞恥を煽らないよう、私は黙っておこうと思った。


アヤ「あ、ところで…一つ気になった事があったんだけど聞いても良い?」

そして不意に…アヤがさわり屋さんの方を向いて問うのだけど………


さわり屋「ん?何だ?」

アヤ「タッチダウンって………何?アメフトが何か関係あるの?」

アゥチ!それは大暴投だよ、アヤ……


さわり屋「それは…だな?そら、俺がやってるのって、さわりおとしだろ?」

そして更に…さわり屋さんはさわり屋さんで、解説まで始めてしまう始末。


いけない……それ以上はいけない。


アヤ「あー……でも、タッチダウンは無いわ」

さわり屋「えっ?」

止めてあげて!さわり屋さんのライフはもうゼロよ!!


アヤ「さわりおとしなら…タッチドロップ?タッチフォール?だよね?」

私があえて触れなかった部分に…アヤが触れてしまった。
144 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/02(日) 01:59:10.54 ID:gog2TsLUo
アヤ「まぁ確かに?タッチダウンの方が語呂は良いけど…意味は大分変っちゃうよね?」

マキ「えっと……アヤ?」


アヤ「あ、まさか……素で間違えてたってオチ?…は、さすがに無いわよね?」

さわり屋「…………」

あ、さわり屋さんが視線を逸らしてプルプルと震えている。不味い…これは多分図星なコースだ。


マキ「えっと…あんまり言っちゃうと、さわり屋さんの気に障っちゃうよ?ほら、気がふれたら困るよね?」

と……すかさずフォローを入れる私。


さわり屋「こ…このくらいでふれるか!!」

口元からこめかみ辺りまでのヒクヒクと痙攣させ…ちょっと裏返った声で答えるさわり屋さん。

そのダメージは計り知れない…けれども、まだまだ余裕は残っていそうだ。


マキ「………と言うか、障る方は否定しないんだ……と思ったけど、それは口にしないでおこう」

さわり屋「いや、してるからな!?」

マキ「心の琴線に触れる、ウィットなジョークです」

さわり屋「おまっ…………」


と言う訳で…ついつい私も便乗して、さわり屋さんをからかってしまった。
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/02(日) 08:56:56.86 ID:mkxDiJ+D0
障りおさえメガネ……死の点線見せない眼鏡みたいの?
146 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/03(月) 00:34:30.24 ID:roMEDo/Qo
さわり屋「……ってーかお前等。時間は良いのか?」


アヤ「あ、そうだ!ゴメン、マキ!」

マキ「ん?何?」


アヤ「来て貰って悪いんだけど…エンジュの復学にあたって、保護者がちょっと話を聞かないといけないみたいなの!だから、先に行ってて!」

マキ「判った。じゃぁ先生にも伝えておくね」


こうして私達は――――


さわり屋「って、ちょっと待て」

っと、さわり屋さんからまだ何かあるらしい。


マキ「どうしました?」

さわり屋「さわりおとし代の一部を支払う、って言われたから来たんだが?」

アヤ「あ、それね!ちょっと待ってて、今持って来るから」


と言って、再びアヤは部屋の奥へと戻って行った。
147 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/03(月) 00:50:42.15 ID:roMEDo/Qo
この場に残ったのは、私とさわり屋さんとエンジュちゃん。

そして、不意にエンジュちゃんが私達を見上げ………


エンジュ「あの…遅れてしまいましたが…私からも、ありがとうなのです」

マキ「私は別に何もしてないよ?」

さわり屋「さっきも言ったが、俺のは仕事だからな。これ以上感謝されたら、報酬の過払いになるから勘弁してくれ」


エンジュ「でも本当に…マキお姉ちゃんとさわり屋さんが居てくれなかったら…お姉ちゃんは、あんな風に笑えなくなっていたと思うのです。だから……」

マキ「おっと、そう言う事ならおあいこだよ?」

エンジュ「おあいこ…なのですか?」


マキ「そう!エンジュちゃんがこうして目覚めて『障り』?と向き合ってくれなかったら、マキは笑えてなかったと思う!」

エンジュ「………でも」


マキ「それに、さわり屋さんも絶対『アフターケアまで含めてのさわりおとしだからな。報酬のために二人に笑顔になって貰うだけだ』って言うしね」

さわり屋「おまっ…本人の前でそれを言うか!?ってかまず、人のセリフを取るんじゃねぇよ!!」

マキ「ほらね?」


エンジュ「…………プッ…」

と……ついには堪え切れなくなって噴き出すエンジュちゃん。


私はその様子を微笑ましく…さわり屋さんはやれやれと言った表情で見詰める中…


アヤ「お待たせ!いやぁ、変な所に入っちゃってて見つけるのに時間かかっちゃったわ!…って、ん?何の話してたの」

戻って来たアヤが…私達の様子を見るなり、不思議そうに首を傾げた。
148 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/03(月) 01:04:17.31 ID:roMEDo/Qo
さわり屋「んじゃぁ、話を戻すが……」

アヤ「報酬でしょ?はいこれ」


改めて…切り出したさわり屋さんと、それに向けて鍵を差し出すアヤ。

鍵を受け取ったさわり屋さんは、それをいぶかしげに眺め…


さわり屋「これは……」

アヤ「帰って来るのは7時くらいになると思うから…出かける時は忘れず鍵をかけてってね?」

さわり屋「…………は?」


アヤ「だから、この部屋の合鍵」

さわり屋「いやだから、何がどうなってこうなったんだって聞いてるんだよ!!」


アヤ「当面の衣食住…報酬の一部でしょ?」

さわり屋「いや、だからそれは―――」

アヤ「別々に用意したら2倍かかっちゃうし…この方が効率良いでしょ?」


あぁうん……さすがにこれには私もびっくり仰天だ。


さわり屋「だからって…おま……」

アヤ「それに…『障り屋』辞めて普通のバイト始めるから、色々厳しいのよね。まぁ、『障り屋』続けろって言うならそれでも良いんだけどー………」

さわり屋「―――ッ…………」


さわり屋「だっ…第一だな!素性の判らん男と同居なんて、親御さんが―――」

アヤ「もう知らない仲じゃないし、既に居ない両親は関係無いっ!」


さわり屋「ぐっ……そ、それに!もし万が一問題が起きたらどうするんだ!」

アヤ「そこはもう、成人のさわり屋さんの責任だし…責任取って貰えるなら、ローンも無くなるよね?」

そう言ったアヤの目は、獲物を見据える肉食獣の目をしていた。


………うん。

完全に言いくるめられてしまって、さわり屋さんに勝ち目は無い。それはもう誰の目から見ても明らかだった。
149 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/03(月) 01:37:39.93 ID:tcG+jXiKo
アヤはエンジュちゃんと一緒に中学校に向かい…

持て余した時間で駅まで歩いて向かう私……と、さわり屋さん。

そんな中…不意にさわり屋さんが口を開いた。


さわり屋「マキちゃん…アンタはこの後どうするんだ?」

マキ「黄巻マミ…多分アヤちゃんに依頼したその子と、話してみたいと思います」


さわり屋「もしかしたら…知りたくも無い事を知る事になるかも知れない。それでも良いのか?」

マキ「そうなるかも…いえ、多分そうなると思います」

さわり屋「だったら何で……」


マキ「因果応報…って言うんですか?今回の件で思い知っちゃって」

さわり屋「ん?」


マキ「何事にも理由があって…自分が何かしたら、自分に返って来る。だから…その子が私を恨んでるなら、それがどうしてか知りたいんです」

さわり屋「成程…ね」


マキ「それに……」

さわり屋「それに?」


マキ「わだかまりが晴れたら、友達になれるかも知れない…そう思ったら、俄然やる気が出て来ますからっ!」

さわり屋「………強いねぇ」


マキ「人は苦難を乗り越えて成長するものです」

そう言って私は、満面の笑みを浮かべた。
150 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/07/03(月) 02:22:24.95 ID:tcG+jXiKo
マキ「……っと、そうそう。聞きたい事があったんです」

さわり屋「俺に答えられる事なら良いんだが…何だ?」


マキ「今更何ですけど…さわり屋って何なんですか?どうしてこんな力を持った人達が居るんですか?」

さわり屋「あぁ、それか。まぁ、これはあくまで俺が聞かされた話なんだが……ちょっと長くなるぞ?」


マキ「どんな話ですか?構わないので聞かせて下さい」

さわり屋「昔々…遥か昔。まだ神様達が、普通に人間と一緒に暮らしてた頃。とある祟り神が、人間の女を襲って出来た子供…その末裔が俺達さわり屋らしい」


マキ「…………それで?」

さわり屋「以上」


マキ「って、全然長く無いじゃないですか!一行で終わりましたよね!?」

さわり屋「そこはまぁ、さっきのお返しって事で」

マキ「うわ…大人気無っ」

さわり屋「うっせぇ!」


そんなやりとりの中……不意に私の中の何かが…カチリと音を立てて動き……

あるべき物が、あるべき場所に戻った…そんな気がした。


と言った話をしている内に…目的地である駅が見えて来る。

さわり屋さんと話をしている時間はもうあまり無い。

私は最後に………気になった事を聞いてみる事にした。


マキ「ところでさわり屋さんは…今のお仕事、いつまで続けるつもりなんですか?」


さわり屋「この世から障りが無くなって…食い扶持が無くなるまで、かな」

マキ「あたりさわりのない答えですね」



   さわり屋「『さわりおとし』だからな」




             さわりおとし  完
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/03(月) 06:36:10.70 ID:L6/UnTI50
お疲れ様!
黄巻マミさんねぇ……きっと金髪縦ロールなんだろうな
それにしても祟り神の伝承を聞いて何か嵌った感じになるとは、マキちゃんはその辺りも何がしかあるのかねぇ?
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 10:55:12.82 ID:veFRkirh0
乙!
あーあー、実質奥さんみたいのゲットかよ羨ましいなー。しかもうら若きJKだぜ、良いよなー

ところで過ちからの責任取りだとかになったとしても、ローンがなくなるかどうかは話し合い次第でしょ
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 08:25:09.47 ID:Yuno3JOX0
今回のお話も面白かったですね!
本当よくこんなポンポン創れるもので、羨まです
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 01:01:20.80 ID:veGU58YP0
>>1の作品も、いつかはアニメ化されたりすんのかな?(異世界食堂見ての感想)
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/11(火) 05:35:24.59 ID:VA8OAvig0
ハーメルンの みとなっとうの大逆襲 ってやつ、珍妙なうえにシュールで面白かったよw
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/11(火) 15:05:00.99 ID:6eHxZ2+3o
それはいいがなぜここで
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/12(水) 19:22:10.62 ID:w7HRUtjy0
ティヒペロ☆(CV.悠木碧)
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/13(木) 14:18:27.91 ID:vxEpZWRM0
ケリ付いた感あって好きだけどな、タッチダウン
言うの今更過ぎだけどw
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/31(月) 14:37:38.44 ID:4suC0VY30
>>1が書く異世界チートものってどんな感じになりそうかなー?
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/01(火) 20:46:03.67 ID:8+BtVPKH0
ポピぱはやっぱりイカれカオスにユニークだな。オープニング曲も脳内で色あせないし
161 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:03:26.17 ID:8onQjztbo
さわりおとしを書き始めた時点で「想定の二倍くらいになりそうだなぁ」と思って居たら
終了した時には更にその二倍の分量になってしまったのはいつも事…
初盆終わったと思ったら夏バテでそのまま死んでいた1です。

>83 こんな流れのこんなオチでした!
>84 ボルトでもそのセリフありましたか
>85 実は無関係でした
>89 すぐにでもお金が必要な時があるもので…
>90 だいたいそんな感じです。いらない物を落としてリフレーッシュ!
>94 仕様です。未成年相手なので確実にアウトにされます。
>96 >100 来ていたけど、マキが気付いてないだけだったりしました。
>101 あんな感じのおぞましい物でした。
>107 何だかんだで勘違いだったので、返って来るような物もありませんでした!
>110 広い意味で言えば、『障り』を含めたらそれら全てに違いも境界も無いのかも知れません。
>115 すみません。ぐぐってみましたが、疫病の擬人化くらいの情報かしか出て来ませんでした!
>119 ダメージ思いっきり残っています。少し休めば回復しますが、無茶しすぎると死にます。
>120 JC2少女の口腔内の体液を拝借しました。
>129 YES!忌み名を付けて厄を払う風習!
>130 むしろ、くしざし姉妹がチョロイn(ry
>139 しかし本当にそれが正しいのか間違って居るのかは…本人のみぞ知る所。
>140 危なっかしい人を野に放てないので、大人しく塀の中に隔離しました。
>145 ただの伊達眼鏡です、プラシーボ。ちなみに、ビデオカメラのレンズを作った『メガネ屋』(24歳女)なる人物も居ますが、それはまた別のお話。
>151 そりゃぁもう名前の通りです。尚、マキの活躍や深い所の設定は、またの機会に!(あれば)
>152 尻に敷かれて、帳消しにならない「わけがない(断言)」
>153 ありがとうございます!キャラとか展開とか、酷い時は思い付いた単語から広がる感じで溢れて来る感じです。むしろ形にする速度が追い付かない…
>154 されたらいいなぁぁ!されたいなぁぁ!!でもそんな予兆は全くありません(異世界食堂まだ見てない)
>155-156 バイオリン弾きの続編が出たのかと思ってwktkしながらぐぐったら…そういう投稿サイトがあったのですね
>157 「とりあえず元気っ子系メインヒロインやらせとけ」な風潮は絶対に許さない!因みに脳内再生の時のイメージは
さわり屋(CV:藤原 啓治) アヤ(CV:斎藤 千和) エンジュ(CV:水瀬 いのり) 痴漢(CV:保志総一朗 ) マキ(CV:悠木碧)で
>158 何かしらの関連あれば良かったんですけどね…さわり屋がアメフト経験者とか………いや、無いわー
>159 異世界ネタのストックは結構な数ありますが…とりあえず、黒胡椒輸入するような話や、特典TUEEする系のありきたりなのは避けてくと思います。
>160 ポピーざパふぉーまー?

電波四発目は……箸休め的な感じで、定番の戦うヒロイン物『私たちはトリフォリウム・レーペンス』
「裏切り」をテーマにした「オヤクソクを守らないオヤクソクもの」です。

ストーリー自体は完結してなくても…エピソードが完結してれば良いデスヨネ?
162 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:06:41.10 ID:8onQjztbo

かつて……地球から遥か彼方の星系で、宇宙を二分する戦争があった。


数多の文明からなる宇宙連合軍と、ダイオーグ率いる宇宙帝国の戦い。

争いは熾烈を極め、最後に勝利したのは宇宙帝国だった。


だが…その戦争で力を使い果たしたダイオーグは、上位次元に意識のみを飛ばし休眠へと入ってしまった。


残された宇宙帝国は、ダイオーグを復活させるため…

知的生命体が発生させるマイナス感情のエネルギー…ネガティブエナジーを集め始めた。


そして宇宙帝国の魔の手は、辺境惑星地球にまで伸びるのだが……

それに立ち向かう者達が現れた。


地球の精霊、アニマの力を借りて戦う少女達。その名は、トリフォリウム・レーペンス!


これは…宇宙帝国とトリフォリウム・レーペンスの闘いを描いた物語である。
163 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:08:39.46 ID:8onQjztbo


    第一話『戦うニューヒロイン誕生!私達トリフォリウム・レーペンス!』




『この星に…危機が迫っています。世界の滅びを避けるため…今こそ目覚めるのです』


赤沢アカネは夢を見た。


見た事も無いような服を来た、見た事の無い女性。

そして背後には…見た事も無い景色。


更に気が付けば、右手には…これまた見た事の無い杖が握られ…

かと思えば、その杖はスゥ…と、手の平の中へと消えて行った。


アカネ「………何この夢」


目が覚めて尚、瞼の裏に鮮明に残る夢。

しかし…赤沢アカネは、後にこの夢を見たのが自分だけでは無い事を知る事となる。
164 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:09:37.83 ID:8onQjztbo
昼休み……屋上で昼食を取るのは、赤沢アカネとクラスメイト。

男勝りのショートカット少女…青山アオイ。

いかにもと言ったカールのかかった髪のお嬢様…黄金谷アカリ。


アオイ「えぇっ?アカネもあの夢見たのか!?」

アカリ「と言う事は…アオイさんもですか?」

アカネ「なになに?って事は、三人一緒に同じ夢を見たって事?」


三人は顔を突き合わせ、昨日見た夢を語り合っていた。


アカリ「もうこうなると、本当に何か…と言いたい所ですが、実の所は…」

アオイ「昨日やってたロードショーのせいだろうなぁ」

アカネ「にしては、妙に――――――」


しかしその語らいも長くは続かず……

耳をつんざくような爆音により、三人の会話は遮られた。
165 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:11:38.42 ID:8onQjztbo
ザイン「我が名は暗黒将軍ザインダーク!偉大なる宇宙大帝ダイオーグが帝国、デッドカルチャーの幹部である!」

爆音の後に続いたのは、どこからとも無く響き渡る男の声。

そして示し合わせたように皆が空を見上げると…そこには、声の主の姿が映し出されていた。


蟲か…はたまた機械か。

鋭い光を宿す甲殻の奥から、瞳とおぼしき赤が鈍い光を浮かべるその姿。

だが……そんな男の姿に、目を奪われている暇は無かった。


男の姿の更に奥…天高くから舞い降りる、無数の影。

やがてそれは人の形を…否、巨人の様相を呈して街へと降り注いだ。


ザイン「さぁ…恐れよ!嘆き悲しめ!己が運命を呪い、その恨みを燃やし憎しみのまま消え行くが良い!」


果たして一体何が起きたのか…何が始まろうとしているのか…

それを三人が理解するよりも早く、運命の歯車は忙しなく回り始めた。
166 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:12:29.52 ID:8onQjztbo
『今こそ…目覚めの時。奥底より湧き出る言葉を唱えるのです』


アカネ「え?何この声…」

アオイ「嘘だろ…?皆にも聞こえてるか?」

アカリ「言葉……呪文?」


アカネ「何だか判らないけど…やってみよう!」

アオイ「そうだな…アタシ達に出来る事があるんなら!」

アカリ「それでは、ご一緒しましょう!」


「「「トリフォリウム・ブルーミング!!!」」」

アカネ…アオイ…アカリ……三人がその言葉を唱えた瞬間…三人は眩い光に包まれ………
167 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:14:28.72 ID:8onQjztbo

ザイン「ネガティブエナジーはどうなっている?」

配下「予定値に届かない物の…順調に……いえ、これは……」

ザイン「…どうした?」


ザインダークの戦艦…その船橋。

作戦を進める最中のザインダークは、それに直面する事となる。


配下「収集率が急激に低下…そんな、まさか…」

ザイン「報告しろ」

配下「ネガート兵が撃墜されました」


ザイン「………何?」


配下「二体…三体……次々と撃墜されて行きます」

ザイン「現行のこの星の文明レベルで、ネガート兵にダメージを与える兵器が存在すると言うのか?」

配下「事前情報ではそのような……いえ、事前情報に無い個体です」

ザイン「個体…だと?」


配下「一体でネガート兵を上回る出力を持った個体が…三体」

ザイン「………ほぅ?」

配下「いかが致しますか!このままでは……」


ザイン「……ネガート兵を下がらせろ」

配下「それでは……ま、まさか!」


ザイン「…………俺が、出る!」
168 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:15:39.65 ID:8onQjztbo
レッド「凄い…凄い!何これ!身体が軽い!」

花弁のような形の赤い服に身を包んだ、赤沢アカネ…トリフォリウム・レッド。


ブルー「って言うか、軽いを通り越して飛んじゃってるんだけど!?」

同じく花弁のような形の…青い服に身を包んだ、青山アオイ…トリフォリウム・ブルー。


イエロー「それに、このパワー…体の奥から湧き出て来るみたいです!」

更に同じく…花弁のような形の黄色い服に身を包んだ、黄金谷アカリ…トリフォリウム・イエロー。


ネガート兵と呼ばれた巨人兵達は、三人の波状攻撃によりあえなく各個撃破され…その数を着実に減らされて行く。

だが……そのネガート兵達の動きに変化があった。


イエロー「妙…ですわね」

そして、それに最初に気付いたのはイエローだった。


レッド「敵の動きが…って言うか、これ…逃げてる?」

ブルー「いや、待て。奴らが逃げてる方から何か来るぞ!」

ブルーがそう叫ぶと、皆が続いてその方角を見る。


そして、その視線の先には………

禍々しい気配を放つ、異様な存在……先程空に映し出されていた、ザインダークの姿がそこにあった。
169 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:17:57.22 ID:8onQjztbo
ザイン「貴様等…一体何者だ?」


レッド「私達は…トリフォリウム・レーペンス!この地球を守る、正義の味方よ!」

レッドの口からその言葉は…正に、心の奥底から湧き出た言葉だった。

ブルー「って言うか、アンタこそ一体何者なんだ!」


ザイン「トリフォリウム・レーペンス…か。さて解せん、俺の事は先の通告で聞き及んだとばかり思っていたのだが?」

イエロー「そういう事を聞いて居るのではありませんわ!何故こんな事をするのかと聞いて居るのです」


ザイン「……よかろう、答えてやる。全ては、宇宙大帝ダイオーグ復活のため…ネガティブエナジーを集めるためだ!」

ブルー「ネガティブエナジー…?ダイオーグ?」

レッド「よく判らないけど…そいつが悪の親玉って事ね?」


イエロー「と言うよりもまず…貴方を倒せば、その計画も頓挫する筈ですわよね!」

ザイン「それはそちらも同じ事!我が計画のため…ここで消えて貰う!」


切り結ぶザインの剣と、トリフォリウム・レーペンスの杖。

互いに一歩も譲る事無く、一太刀毎に互いの命を削ぎ落として行く。

その戦いは拮抗し、果て無く続くかに見えた。


だが、しかし………
170 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:19:54.17 ID:8onQjztbo
ザイン「どうした!目に見えて動きが鈍くなったようだな!!」

レッド「くっ……力が……」

徐々にではある物の…トリフォリウム・レーペンスが圧され始めていた。


ザイン「成程…時間制限か、あるいはエネルギー切れか…どちらにせよ、余り長続きする力では無いようだな」


ブルー「ヤバいぞ!どうする!」

イエロー「こうなったら…出来る事は一つ!」

レッド「皆の力を…一つに合わせるっ!!」


ザイン「…ぬ…ッ!?」


ブルー「この星の平和は…」

イエロー「私達が守ります!」

レッド「悪い奴らなんかに…絶対負けない!!」


「「「トリフォリウム…サイクロン!!」」」


三人の様子…力の流れその物が多く変わった。

今までバラバラに働いていた力が一点に集約され………

いや、それだけでは説明が使い程の…かつてない程強力な力場を形勢し始めた。


そして、逸早くそれに気付いたザインは、直撃を避けるべく剣を構え…

「「「トリプル!フィナーレ!!」」」

ザイン「この力は…まさか!!」


現にその試みは功を奏した。

だが、直撃を避けた上で尚…流し切る事が出来なかった威力により、その外殻を砕き…貌の左半分に大きな傷痕を刻み込んだ。
171 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:20:54.17 ID:8onQjztbo
ザイン「そうか…そうか、そういう事か!クク……クハハハハ!!!」

イエロー「な…何ですの!?」

レッド「まさか…あれも効いて無いって言うの!?」


ザイン「トリフォリウム・レーペンス…その名、確かに刻んだぞ!!」

ブルー「ッ……」


ザイン「今日の所はこれで退こう。だが…いずれまた近い内に逢う事になるだろう!」

レッド「………え?」


一方的に言い放ち…そのまま姿を消すザインダーク。

残されたトリフォリウム・レーペンスは、事態すら飲み込めないまま立ち尽くす。

だが………


ブルー「とりあえず…とりあえずだけどさ。アタシ達、アイツらを追い返した…んだよね?」

レッド「そう…だね。うん!私達は勝ったんだよ!」

イエロー「でも…また来るって言ってましたわよね?」


レッド「うん…でも、その時はまた追い返す!それで良いよね!」

イエロー「それは……いえ、そうですわね。もしまた現れても、その時はまた追い返しましょう」

ブルー「だよな!!」



 こうして……彼女達トリフォリウム・レーペンスと宇宙帝国デッドカルチャーの戦いの火蓋が切って落とされた。
172 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/04(金) 02:22:02.79 ID:8onQjztbo

ザイン「クク…クククク……ハハハハハ!!」

配下「ザインダーク様!お怪我は…」

ザイン「見付けた…ついに見付けたぞ!!まさか、こんな辺境の星であの力を見付けるとはなぁ!!」

配下「ザインダーク…さま…?」


ザイン「全軍に伝達しろっ!!」

配下「はっ、はい!?内容は…」


ザイン「地球侵攻作戦を、大幅に変更。詳細は追って伝えるが、それまでは一切の侵攻を禁ずる!」

配下「他の地域への侵攻も…ですか?本当に宜しいのですか?」

ザイン「あぁ……そうだ」


配下「畏まりました。しかしその…ザインダーク様……」

ザイン「………何だ」


配下「何故……そのように嬉しそうな貌をされているのですか?」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/04(金) 18:49:34.05 ID:gN+pFOkQ0
久々に来て下さったんすね! 乙!

ダイオーグ……一体何ソクムシなんだ
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/05(土) 15:27:08.71 ID:50mZAiIF0
おつ
なぜかVIPRPGの奴らはバリキュア思い出したw
175 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/05(土) 23:51:09.65 ID:vQn9yfP0o
イエロー「ネガート兵を」

ブルー「アタシ達の偽物に変身させて」

レッド「悪事を働かせるなんて絶対に許せない!」


「「「トリプル!フィナーレ!!」」」


ブルー「…よし、これで一丁上がりっと」

イエロー「私達、大分戦いにも慣れてきましたわね」

レッド「そうだね。ネガート兵も…毎回毎回厄介なのが来るけど、一度に何体も出て来なくなったし」


イエロー「それだけ、向こうの戦力を削っているという事なのでしょうね」

ブルー「よーっし!勝利は目の前だな!」

レッド「って、コラコラはしゃがない。って言うか、こういう時だからこそもっと気を引き締めないと、ね?」


イエロー「そうですわね」

ブルー「はーい」
176 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/05(土) 23:54:32.99 ID:vQn9yfP0o
宙帝国デットカルチャー旗艦内部…長距離通信室の中。

ザインダークはその部屋の中央で跪き、通信を行ってた。


ケライ「貴殿よ…判って居るのだろうな?」

通信の相手の名は、ケライモン・グリューステッド。宇宙大帝ダイオーグ直属の部下であり、現状における最高指揮官である。


ケライ「宇宙大帝ダイオーグ様が、再びこの次元に現れるためには、生物の悪感情…ネガティブエナジーを集めなければならない」

ザイン「重々承知しております」


ケライ「だが貴殿は、ネガティブエナジーを集めるどころか目の前の小石にさえ躓く始末。もし此度の作戦にも失敗するようであれば…」


ザイン「ご心配には及びません。今回の作戦で…全てが我らの意のままになる事でしょう」

ケライ「ほぅ…その口ぶり、余程自身があるようだな?」


ザイン「はい…先の襲撃で全ての仕込みが終えた所です。必ずや、ダイオーグさまのご期待に添えられる結果になりましょう」

ケライ「大口を叩いておいて失敗すれば…どうなるか判っているだろうな?くれぐれも、貴殿の母星と同じ末路を辿らぬように…な?」


ザイン「…当然。全てが終われば、そのような杞憂は無用であったと笑い飛ばす事となるでしょう」
177 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/05(土) 23:58:08.14 ID:vQn9yfP0o

    第二話『大ピンチ!?人質に取られた幼稚園バス』




ザイン「よく来たな…トリフォリウム・レーペンス!」

レッド「ザインダーク!またアナタなの?もう何度も何度も、性懲りも無く…」

ブルー「しかも今度は幼稚園バスをジャックするなんて、絶対に赦せない!」

イエロー「今日と言う今日は、再起不能にして差し上げますわ!覚悟しなさい!」


ザイン「と、粋がっている所を悪いが…今日は、お前達と正面からやり合う気は無い。いや…金輪際無いと言うべきかな」

レッド「大人しく降参する気になった…って訳じゃ無さそうね」

ザイン「察しが悪いようなので説明してやろう。この園児たちの首を見るが良い」


ブルー「これは…首輪?」

イエロー「まさか……」

ザイン「そう、そのまさか…首輪型の爆弾だ」


レッド「何て酷い事を……」

ザイン「さて…言いたい事は判るな?」

ブルー「くそっ…何て卑怯な!!」


レッド「こうなったら……」

イエロー「レッド、何をする気ですの?!」

レッド「オーバードライブを使って…ボタンを押す前にあの起爆装置を奪って見せる!」

ブルー「馬鹿!今まで使いこなす事が出来なかったオーバードライブを、こんなぶっつけ本番でっ…」

レッド「でも……今ここでやらなきゃ!」


ザイン「いや、それ以前に丸聞こえだ」


一番前に居た園児の首輪から乾いた破裂音が響き……吹き飛ばされた頭部が、勢いよくイエローの顔にぶつかる。


イエロー「ヒィ―――――ッ!?」


レッド「な………な……な…なんて事を!!」

ザイン「おっと、動くなよ?それ以上動けばまた犠牲者が出るぞ?こんな風に……なっ!!」


そして今度は最後尾に居た園児の首が飛び…狭い車内を跳ねまわった。


レッド「ッッッッッ………!!!」


ザイン「さて……お前達に思い知って貰った所で、場所を移すとしようか。あの丘の上でどうだ?」

ブルー「そんなの…素直に従うと……」

ザイン「思っている。君達に選択権は無いのだからな?」

ブルー「ん…の…………っ!!」

イエロー「……ダメです。人質が居る以上、ここは堪えて」


ザインと三人は、丘の上へと飛んで行く。
178 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 00:02:15.79 ID:EMFksmBEo
ザイン「それでは再開させて貰うが…これとは比較にならない程の威力の爆弾を、この町のいたる所に仕掛けさせて貰った」


ブルー「……は?」


ザイン「全てを一度に爆破させれば、塵一つ残さず焦土と化すだけの熱量を発生させる事が出来るだろうな」

イエロー「そんな嘘…信じる筈が…」


ザイン「信じられないと言うなら、試しに幾つか爆発しても良いのだが?」

レッド「くっ……一体何が望みなの!」


ザイン「………スカウトだ。お前達には、今後我が組織のために戦って貰いたい」


ブルー「だ……誰がそんな事!」

イエロー「そうよ!そんな戯言に従うとでも思ってますの?」

ザイン「ふむ?思ったよりも頭が悪いようだな。それを断ればどうなるか、判らない訳では無いだろう?」


レッド「クッ…………判ったわ。あなたの命令に従う。何をすれば良いの?」

ザイン「そうだなぁ…それじゃぁまずは、他の二人の名前と学校…学年と、住所を答えて貰おうか」


その言葉を聞いた瞬間……イエローの顔が蒼白になった。
179 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 00:06:39.19 ID:EMFksmBEo
レッド「そ………そんな事、答えられる訳…」

ブルー「な、何だ今更そんな事!別に構わないだろ!」

ザイン「そうだそうだ、答えなければ町は火の海だ、住人…当然お前達の家族やクラスメイトも死んでしまうのだぞ?」


イエロー「そ、そうですわよ!人質が居る以上、今更そんな……」

ブルー「何言ってんだ!だったらアタシが自分で………」


ザイン「…あぁ、やっぱりそうか」

イエロー「……え?」


ザイン「レッドもブルーも…友達思いじゃあ無いか。知ってて庇うつもりだったんだな?」

レッド「ちょっと待って…え?どういう事?」

ブルー「何?何なんだ一体!?」


イエロー「そ…そうよ!何を言っているのか判らないわよ!?」


ザイン「あー…言ってしまって良いのか?まぁ、皆にとぼけられてたら話が進まない以上、言ってしまうか」

イエロー「待っ―――」


ザイン「イエローの家族は…今この町に居ないのだろう?」

イエロー「―――――――ッ」


レッド「………え?」

ブルー「いや、それって………」


ザイン「まさか正義のヒロインが、自分の家族だけ助けるために仲間の家族を犠牲にする筈が無い!二人してイエローを庇ったんだよなぁ?」

ブルー「そ…そうなのか?私が気付かなっただけでそうなんだよな?」

レッド「ちがっ…私も……」


ザイン「おやぁ?まさかまさか…バレないと思って自分だけ逃げようとした…と言う訳では無いよな?」
180 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 00:11:25.70 ID:EMFksmBEo
イエロー「ち…違う…私は…私は―――」

言うか否か、ザインに向けて斬りかかるイエロー。そしてそれをレッドが止める。


イエロー「何で!?何で止めますの!?」

レッド「判ってるでしょ!?コイツが死んだら、その瞬間に爆発するような仕掛けがしてあるに決まってる!」

イエロー「だからって!!ここで殺さないと、パパとママが!!」


ブルー「いや…待て…待てってば!自分の家族さえ助かればそれで良いって言うのか!?」

イエロー「誰も助からないよりはマシでしょう!!」


ザイン「いやいやいや…助かるぞ?助かるとも。ちゃんとお前達が帝国のために尽くしてくれるなら…な?」


レッド「くっ……この…クズ…」

ザイン「そらそら、無駄口を叩いてないで早く教えてるんだ。特定出来れば、無駄な人質を取らなくても良くなるんだからな」


レッド「っ………ブルーの…本名は……小石川ミサキ。イエローは……小鳥遊サヤカ。学校は―――――」



ザイン「よしよし、素直で宜しい。今の内容で間違い無いな?」

レッド「間違い無い……だから………」


ザイン「お前の事は聞かないで欲しい…と、命乞いをするフリでもするつもりか?レッド…いや、赤沢アカネ」

レッド「なっ……何で私の名前を!?」

ザイン「お前の事だけでは無い。ブルー…青山アオイと、イエロー…黄金谷アカリの事も知っている。学校も住所もデタラメという事もな」


ブルー「ど…どうしてだよ!変身中は、私達が誰だか判らなくなってる筈だろ!?」

イエロー「そうですわよ……何でばれて…違う、そうじゃ…いえ…じゃぁ……何でわざわざあんな事を……?」


ザイン「まず特定方法だが…これは簡単だ。お前達が到着するまでの時間からある程度の居住地域を割り出して、その範囲の学校にスパイを潜入させて貰った」

レッド「隣のクラスの転校生って…じゃぁ…」

ザイン「で…後は簡単だ。お前達の出現時に居なくなった生徒を探せば…この通りだ」


イエロー「え?ちょっと待って?じゃぁ……つまり……」

ザイン「当然、お前の両親のにも爆弾は仕掛けさせて貰った」


イエロー「―――――――ッッッ……」
181 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 00:12:59.87 ID:EMFksmBEo
イエロー「……っ!!………―――ッ!!」

ザイン「敵を前にして嘔吐とは…戦士の風上に置けぬ程に脆弱だな」


レッド「っ…それで………私達はまず何をすれば良いの?どうすれば皆の家族を…町の皆を開放してくれるの?」

ザイン「いや、勘違いしているようだが…開放するつもりは無い、その必要も無い」

ブルー「………は?何言ってるんだ!?」


ザイン「要は…この町の皆は、これまで通り…普段通りだと言っているのだ」

イエロー「…………え?」


レッド「そういう………事っ…」

ブルー「いや、どういう事なんだよ!」


ザイン「判らないか?現時点でこの町の住民は、何も知らない…お前達が原因でいつ死んでもおかしく無いと言う事さえ知らない。そう…日常を送っているのだ」

ブルー「ちょっと待て?それって裏を返せば……」

ザイン「だから言っているだろう?開放するつもりは無いし、その必要も無い。お前達には…ずっと組織に従って貰う」

レッド「………………!!」


ザイン「それで…して貰う事と言えば…とりあえずは、このセンサーを首と両手首に付けて貰おうか」

レッド「これ自体も爆弾になってて…気が変わって反逆した時は、私達もドカンって事よね」


ザイン「ご名答。あぁちなみに…組織の中には、お前達に恨みを持ってる者も少なくは無いのだが…仲良くやるのだぞ?」


こうして…彼女達の地獄の日々がまくをあけた。
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 00:41:26.80 ID:foV6oOFh0
地獄の日々、か……こういった支配はされたくないもんだ
183 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 00:43:08.21 ID:EMFksmBEo
エグみを省いた各話ダイジェスト(書くのが面倒になったわけじゃないよ)



第三話『誰か助けて!とらわれた私たち!』


ネガート兵「ったく、しぶてぇなぁオイ。なぁ、教えろよ…地球人のメスってのは、一体どんな事をされるのが嫌なんだ?」

ブルー「そんなっ…事………教える筈……」

ネガート兵「言えば…お前にはそれをしねぇって約束してやるよ」


ブルー「そん……………」



ザイン「さて、お前達には…ダーク・トリフォリュウムとして活動して貰う」

レッド「黒い…スーツ?何でこんな物をわざわざ…」

ザイン「おや…トリフォリュウムの姿のまま、我らが手先として動く方が良かったか?」

ブルー「……くそっ!くそっ!!」


ブルー「やだ…もうやだ…こんなのもうやだ!!殺せ!いっそ殺せば良いだろう!?」

イエロー「止めて下さいブルー!あなたが勝手な事をすれば、皆に迷惑がかかりますのよ!」

ブルー「迷惑?迷惑って何さ!!今更どの面下げてそんな事を言ってるのさ!」


レッド「私達が街の皆にした事……もう取り返しの付かない事ばっかりなんだよね…」

イエロー「っ………」


レッド「ねぇ……私たちいつまで…いつまでこんな事続けなくちゃいけないのかな?」

イエロー「…………」


ネガート兵「おっと、いたいた。おいそこの…イエローで良い、ちょっと来い」

イエロー「……え?何ですの?え?何で私が――――」


ブルー「………………」

レッド「…どうしたのブルー?」


ブルー「………ごめん」


レッド「え?やだなぁ…どうしてブルーが謝るの?」
184 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 00:43:52.58 ID:EMFksmBEo
第四話『新たな仲間!?トリフォリュウム・グリーン登場!』


グリーン「私の名前は、トリフォリュウム・グリーン!」

ザイン「おや…また新しいのが出て来たようだな。どうすれば良いのか…判るだろう?」

イエロー「……………」

ザイン「引き込めるようであれば良いが…出来ない時は………消せ。お前達の立場なら難しくは無い筈だ」



ザイン「イエロー…貴様は本当にどうしようも無い女だな。本気でこの俺を出し抜けるとでも思ったのか?」

イエロー「っ…………」


ザイン「仕方が無い…罰を与えるとするか」

イエロー「えっ………ちょっ、ちょっと待って!何をする気なの!?」

ザイン「俺が罰を下すのでは無い。レッド…お前がイエローの父親を殺せ」

レッド「……………え?」


ザイン「どんな方法でも構わん、イエローの父親を殺せ。出来なければ、お前とブルーの父親を殺す」

ブルー「……はぁっ!?な、何で私の父さんまで!?」

ザイン「連帯責任だ。イエローを止められなかったお前達にも責はある」


ブルー「そんな…そんなの……っ……イエロー!何て馬鹿な事をしてくれたんだ!」

イエロー「何よ!ブルーだって知ってて止めなかったじゃない!あわよくば便乗しようと思ってたんでしょ!?」

ブルー「なっ………」

イエロー「貴方っていつもそうよ!自分の手は汚そうとしないくせに!自分可愛さで何もしないくせに!!」


ザイン「ふむ……ならブルー、お前がやるか?」

イエロー「………え?」

ザイン「このまま言われっ放しで終わるのも癪だろう?レッドの代わりにお前が行けば良い」

ブルー「私が…私が?私が…私がイエローのお父さんを…?私がやらなきゃ…お父さんが……」

イエロー「待って…嘘よね?嘘よね?ねぇ?冗談よね?」


レッド「っ…………」

ザイン「どうした?」

レッド「私が……私がやるっ………」

ザイン「声が小さいぞ!!」


レッド「私がやる!私がイエローのお父さんを殺して来る!!」

ザイン「そうだ…それで良い。最初からそう言っておけば良かったのだ」
185 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 00:44:34.32 ID:EMFksmBEo
第五話『束の間の安らぎ!ただいま私たちの街』


アカネ「……え?何言ってるの?私だよ私、出席番号一番の赤沢アカネ」

クラスメートA「えっと………」

クラスメートB「あの…」


アカネ「何何?思い出してくれた?」

クラスメートB「私、出席番号一番の井伊谷イマリって言います。その…アカネさんは、クラスを間違えているのでは?」

アカネ「嫌だなぁイマリちゃん。そんな、冗談………え?」



アカリ「どうして!どうして誰も思い出してくれませんの!?お父様もお母さまもコウタも!!」

母親「思い出すも何も…私がお腹を痛めて産んだ子は、コウタだけです!」


アカリ「止めて下さいませ…そんな事……言わないで」

母親「お願いです……出て行って下さい!私は何をされても良い、だからコウタには手を出さないで!!」



ブルー「…………」

ザイン「どうした?戻りたがって居たのはお前達の方だろう?」


ブルー「……いや、もう良い。言いたかった事も全部引っ込んだ」

ザイン「そうか…では戻るぞ。他の仲間達にも伝えておけ」


ブルー「…………殺してやる」
186 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 00:47:20.40 ID:EMFksmBEo
第六話『敵?それとも味方?宇宙連合軍からの使者』


スパーク「私は宇宙連合軍所属のテンペウス星人、名前をスパークと言います。もう大丈夫、私は貴女達を助けに来ました」

ブルー「助…け?じゃぁ、やっと…やっと解放されるの……?」

スパーク「はい、もう大丈夫です。貴女達の家族ももう心配いりません、後は貴女達の爆弾を取り除くだけです」


イエロー「…え?ちょっと待って下さいませ」

ブルー「何だよ…横槍入れるなよ……っ」


イエロー「テンペウス星人って…30年前に地球を侵略しようとして、アルティメット・ワンに撃退された宇宙人ではありませんか!」

ブルー「…………え?」

テンペウス星人「……………」



配下「ザイン様、緊急事態です」

ザイン「何事だ」

配下「艦内に侵入者です。痕跡から見るに…恐らく、テンペウス星人かと」

ザイン「テンペウス星人か…宇宙連合軍め、よりにもよってこの星に奴らを送り込んで来たか」


ザイン「人質…トリフォリウム達の家族はどうなっている?」

配下「それが、既に……」

ザイン「ふむ……」


配下「いかが致しますか?」

ザイン「今の所はまだ泳がせておけ」

配下「その…よろしいのですか?」


ザイン「構わん。テンペウス星人と奴等の出会いがどう転ぶか…見ものでは無いか」
187 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 00:49:38.60 ID:EMFksmBEo
第七話『明かされる秘密!ダイオーグの正体?』


スパーク「と言った事があり…我々は、アルティメット・ワンの下で日々宇宙の平和に尽力しているのです」


イエロー「事情は分かりました。でも…貴方を簡単に信用する訳には行きませんわ」

ブルー「そう…だよな……次から次へと…敵の正体も判らないって言うのに、もう何が何だか」


スパーク「おや…貴方達はダイオーグの正体も知らずに彼の者達と戦っていたのですか?」

レッド「だって…そんな事考える余裕も無かったから…」

スパーク「でしたら、私が説明して差し上げましょう。彼の者達の目的…復活させようとしているダイオーグとは何者なのか―――」


イエロー「そんな……人間の悪感情を糧に姿を現して、宇宙の平和を乱す化け物って…」

ブルー「止めてくれよ…そんなのを相手に、アタシ達にどう立ち向かえって言うんだよ」


スパーク「諦めてはいけません。貴方達は敢然と立ち向かうのです!ダイオーグの復活さえ阻止してしまえば――――」

ザイン「……そこまでだ。お前の役目はもう終わった」

レッド「スパークさん!!」


ザイン「無駄だ、もう死んでいる」

レッド「くっ…………」


ザイン「それよりも…全容は既にこのテンペウス星人から聞いたのだろう?もうすぐダイオーグ復活だ、お前達も立ち会わせてやろう」
188 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 00:50:50.97 ID:EMFksmBEo
第八話『最終決戦!!取り戻せ私達の未来!!』


―――うん…私全部判った。


――――私が……私達がやらなくちゃいけない事。


―――――だから………私達は立ち上がるんだ。



「「「トリフォリウム・ブルーミング!!!」」」

189 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/08/06(日) 01:08:23.97 ID:EMFksmBEo
と言った感じで駄文を垂れ流し、お目汚し失礼しました。

>173 乙ありです! フルネームは『ダイオーグ・ソームシーク1999世』です
>174 ぐぐっても本編にはたどり着けませんでしたが…既に似たような物があったのですね、無念…
>182 されたくなくても、されないと話が進みませんからね…(遠い目)

五発目は…ちょっと初心に戻りつつ、王道な異世界ファンタジー『D/RtoAnoBeginning』
どこかで見たようなキャラ達が登場します。

………一話完結?例によって長編作品の序盤だけお披露目ですが何か?(開き直り)
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/06(日) 07:32:25.25 ID:9NbxsJIm0
素早い完結ですな!w
最終的に倒させる為の支配だったか。でも色々と無償労働させられて宇宙の中の生命を救ったとしても、彼女らには何も褒賞とか無いんだろうなぁ。割に合わない話だ

ところで、似た様なやつがあったのかって言うけど、もはや昨今のメディア作品で、過去の作品と掠りもしないなんてものは無いと言える状況だと思うけどw

ちな、バリキュアの件はニコ動でバリキュアで検索すれば普通に出ましたよ
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 11:23:01.27 ID:kVj5pmyG0
ケライモンってのはカライモンさんのパチモンか何かなんですかね?ww
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 13:52:49.96 ID:Tijfcng40
うん。こいつは深夜アニメだな。ちょいとお子ちゃまには見せられませんわ

ところで次の新作の読みだけど 「で、あると、あの、ビギニング」 て、感じで良いのか?
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/11(金) 09:28:09.62 ID:k+vqpnUd0
次はどんな世界なのかな
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/25(金) 16:57:48.90 ID:YSkdnNwv0
バリキュア、大して似てないな
ってか、バリキュアはプリキュアのパクリだし
プリキュアは魔法少女系統の派生(もしくは女の子向け(?)戦隊モノ)だし
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