チラシの裏の裏(TPk5R1h7Ng短編集)【パート1】

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 14:00:45.16 ID:7MbeWUzcO
このまんまだと即htmlだぞ
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 18:02:07.14 ID:2+d9Xb3v0
本編にも書いたけど、ダクスト面白かった!!
また長編やるなら宣伝ヨロ!
4 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/06(火) 21:08:21.54 ID:LqRP5HBxo
>2 指摘ありがとうございます!即死ルール…そんなのもあるのか!
>3 ありがとうございます!長編は、また電波が来たり好評な短編があればそこから拡張していくと思います!

では電波一発目、魔女っ子モノで『パラレルリリちゃん』
「癒し」をテーマにした、ほのぼのほんわこわストーリーです
5 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/06(火) 21:21:37.49 ID:LqRP5HBxo
タヌ太「僕の名前はタヌ太!上から読んでも下から読んでもタヌ太ポコ!」

リリ「うわっ、タヌキが喋った!?あ、でも…タヌキ……なの?」


タヌ太「突然だけど君には、望魔を退治して欲しいポコ」

リリ「望魔?何それ?」


タヌ太「望魔は、人に憑りついて皆を困らせるポコ。だから、キミに退治して欲しいポコ!」

リリ「うん!それで困ってる人を助けられるなら、私頑張る!」


タヌ太「おっと、さっそく望魔の反応ポコ!行くポコよ!」

リリ「わかった!でも、どうやって退治すれば良いの?」

タヌ太「その葉っぱ型ヘアピンを付けてから、呪文を唱えて変身するポコ」


リリ「えっと、これで良い?」

タヌ太「うん、OKポコ。じゃぁ自分がなりたい姿…そうポコね、今回は婦警さんになった姿を思い浮かべて、こう唱えるポコ―――」


リリ「パラレルルンルン パラレルルンルン 婦警さんにな〜ぁれ!」



   〜パラレルリリちゃん〜(前編)




………と言った感じで、正義のヒロインになったのが一か月くらい前の事。


そして今では―――


タヌ太「望魔の印が現れたポコよ!今がチャンスだポコ!」

リリ「よぉーーっしっ!!悪い子…出てけーーー!!」


あ、ちなみにこの杵みたいな道具は『封印スタンプ』


望魔に撮り付かれちゃった人の欲望を暴くと、望魔の印っていうのが浮かんで

その印をこの封印スタンプの裏側で叩くと、その人の中から望魔が飛び出して来て、更にそこから……


リリ「望魔ー…ふーいん!!」

お餅を突くみたいに、出て来た望魔を叩くと…封印スタンプの中に封印されて、退治完了。


こんな風に、一週間に一回くらい望魔退治で活躍しちゃってます☆


とまぁ、そんな感じの私な訳ですが…

最近ちょっと変な事がありました。
6 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/06(火) 21:32:53.10 ID:LqRP5HBxo
それが起きたのは…多分、放課後くらい。

いつも通り望魔を退治して、お家に帰る途中の事でした。


リリ「…………あれ?」


私は…玄関で目が覚めました。

いえ、目が覚めたと言うの正しいかどうかも判りません。

いつ眠ったのかさえもあやふやで…どこからどこまでが最後の記憶なのかもおぼつきません。


リリ「あれ……ちょっと頑張り過ぎて、疲れちゃってるのかな……?」


少しぼやけた頭のまま、台所に行くと…お母さんが、私を見て驚きました。

母「まぁ、どうしたの?どこか怪我でも…あら、違うわね…今日はお赤飯を炊かないと」


何故か上機嫌で喋るお母さん。

そして私は、今更ながらに…下腹部に走る痛みと違和感に気付いたのでした。



それから数か月…

前みたいに、血や膿が出て来る事は二度と無く……

そもそも、そんな事があった事さえも忘れていたある日の事です。


母「遅れてるのかしらね?最初の頃だから仕方ないわよねぇ」と言うお母さん。

私は、言われて初めて思い出しましたが…何が普通なのかもよく判らない事だったので、特に心配はしていませんでした。


ただ、ちょっと…違和感だけは残っていて、身体がだるいくらい。

そして、そんな出来事からさらにしばらくたった別のある日…


ある日…また望魔が現れました。


今回の望魔はお巡りさんに憑りついていて、ちょっと…ううん、すごく手ごわくて…私は大ピンチ。

タヌ太は、何かよく判らない横文字の職業になれって言ったけど、よく判らなかった私は、婦警さんに変身して望魔を退治しようとしました。


隙を見て望魔にとびかかる私。

浮かび上がった印を、封印スタンプの裏側で叩いたんだけれど…上手く当たられなくて、半分しか飛び出してない。


だけど、飛び出した部分に当てれば大丈夫。

後はこのまま、いつものように望魔を退治するだけの筈だったんだけど……


封印スタンプが望魔に当たったのと、同じくらいの時。

突然、鼓膜が破れそうなくらいに大きな破裂音がして……お腹の辺りに物凄い衝撃が走りました

物凄く熱くて…物凄く痛くて……体が上手く動かない。


私の意識はどんどんなくなって行って………


婦警リリ『…………誠一……さん……』

リリ「―――――――!!!?」


目が覚めると…そこは私の部屋でした。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/07(水) 18:33:21.94 ID:RiNjn78t0
誠死n……なんだ誠一か。でもロリを犯るのは普通にギルティだゾ
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/07(水) 20:28:46.28 ID:Oe6MJpiF0
既にパラレルとか書いてある時点で混乱は避けられそうにないなw
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 21:19:58.88 ID:3rq0Qhkbo
はいはい、ほのぼのほのぼの
10 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/07(水) 23:17:10.58 ID:GJUnEJgpo
リリ「え?何?私どうなったの?」


タヌ太「死んじゃったポコ。正確には『婦警の身体が』だけどポコね。だからちゃんと僕が言った通りに変身して欲しかったポコ…」

リリ「死んじゃったって…え?じゃぁ何?ここって天国なの?」

タヌ太「いや、だから。死んじゃったのは「婦警の身体」のリリで、君自身じゃ無いポコ」


リリ「ゴメン…どう言う事?私が生きてるなら…死んじゃった婦警の私って一体……何なの?」

タヌ太「まぁ、ザックリ言っちゃうとパラレルワールド…平行世界のリリって事ポコ。漫画やアニメなんかでよくあるポコ」

リリ「パラレルワールドは知ってるけど…それとどう関係あるの?」


タヌ太「だからポコ…リリの変身は、リリ自身を変化させてるんじゃなくて、パラレルワールドのリリの身体を借りてるってだけなんだポコ」


リリ「え?ちょっと待って?じゃぁ…死んじゃった婦警さんの私ってどうなったの?!」


タヌ太「死んじゃったんだからそのままポコ」

リリ「………え?」


タヌ太「ちゃんと、死んじゃったまま元の世界に戻ったって言ってるポコ」


リリ「…………………」


タヌ太の言っている事が判らなくて…

ううん…判るけど理解したくなくて……ぐらりぐらりと、目の前の景色が揺れました。


リリ「ねぇ、それじゃ…パラレルワールドの私は……私に身体を貸してくれてる間、どうなってるの?」

タヌ太「本人はその間の意識を失ってて、その世界からは居なくなってるポコ」


リリ「じゃぁ…お仕事中なんかだと、大変だよね」


タヌ太「何度も何度も呼び出されない限りは大丈夫じゃないポコ?君だって、婦警の身体になったのは2回だけだった筈ポコ」

リリ「……うん」

タヌ太「よっぽど…それこそ、持ち場を離れちゃいけない時に運悪く呼び出したりしない限りは良いんじゃないポコ?と言うかそもそも……婦警のリリ自身も、他のリリの力を借りてるんだからお互い様ポコ」


リリ「………え?他の世界の私も…別の私の力を借りてるの?」

タヌ太「そうポコよ?そのヘアピンの力を借りてポコ。まぁ、もちつもたれつの関係だから気兼ねせずに変身すれば良いと思うポコ。あ、でも…前回みたいに、死んじゃうのは困るから気を付けて欲しいポコよ?」


タヌ太の言葉が頭の中でぐるぐる回って……その意味が良く判りませんでした。

ただ、それでも…私は、その話を聞いておかなければいけない…そんな気がして、続きを聞く事にしました。
11 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/07(水) 23:32:36.03 ID:GJUnEJgpo
リリ「ねぇ…じゃぁ逆に、私も他の世界の私に身体を貸す事ってあるの?自分が知らないまま…死んじゃう事もあるの?」


タヌ太「前者は勿論だけど…死に直面しちゃうような場面に使われる事は、滅多に無いんじゃないかと思うポコ」

リリ「………そうなの?」


タヌ太「こう言うのもなんだけど…現時点の君には、特にこれと言った特徴も無いからポコ。身体面でも大人に劣る分、君の身体を借りるメリットはほとんど無い筈だから…変身を迫られる場面でも、まず別のリリを呼ぶ筈ポコ」


リリ「そっか………」


私はタヌ太の言葉に少し安心しました。

でも…安心した自分が、少しだけ嫌になりました。


リリ「あ、あと…夢かも知れないけど、目覚める前に婦警さんが、あのお巡りさんの名前を呼んでた気がする」

タヌ太「あぁ、それは多分…」

リリ「判るの?あれって何なの?婦警さんの意識じゃないの?」


タヌ太「それは、意識じゃなくて記憶ポコね」

リリ「記憶……?」


タヌ太「思い出して欲しいポコ。変身した時に持ってる道具の使い方とか、そういうのが最初から判っていた筈ポコ」

リリ「あ、うん…そう言えばそうだね」

タヌ太「あれって、変身の時にその道具を使っていた記憶なんかも一緒に借りてるからポコ。つまり…」


リリ「お巡りさんの名前を呼んでたのも…婦警さんだった私の記憶…って事?」

タヌ太「そう言う事だと思うポコ。あ、ついでに言っておくけど…変身の時に、意図して全部の記憶を借りようとしちゃダメポコよ?」

リリ「どうして?」


タヌ太「混ざり合うか、塗り潰されるか…どっちにしても、君が君でなくなっちゃう危険があるからポコ」

リリ「それは……ちょっと怖いね」

タヌ太「そうポコ。だから気を付けるポコ」


リリ「………うん」


色々納得出来ない事はあったけれど…どういう事なのか、判る事はできました。

その日の私は…もやもやした何かを胸の中に抱えたまま、眠りました。
12 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/07(水) 23:51:25.92 ID:GJUnEJgpo
………そしてまた、ある日の事。

ほんの少しだけ望魔が沢山出て来るようになって、忙しくなってきた頃の出来事です。


タヌ太「うーん…困ったポコォ…」

リリ「何…?どうしたの?」


タヌ太「ちょっとした手違いで…パラレルワールドとのトンネルが開いちゃったみたいなんポコ」

リリ「それって何?どう困るの?」


タヌ太「物凄く低い確率なんだけど…もしかすると、パラレルワールドのリリと出会ってしまうかも知れないんポコ」

リリ「それって困る事なの?」

タヌ太「うーん……絶対じゃないけど、多分ポコ。だから、もし別の世界の自分を見かけても絶対に声をかけないようにするポコよ?」

リリ「うん、わかった」


難しい話になりそうだから、あまり細かくは聞かないで…とりあえずは、注意するって覚えておく事にしてそのお話は終了です。

ですが、そんなやりとりがあってから数日後…その出来事は起こってしまいました。
13 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/07(水) 23:52:08.93 ID:GJUnEJgpo
女性「………お?おぉぉ?」


見ず知らずの女性に、私は絡まれました。

髪は長くてボサボサで…物凄く分厚いメガネ。肌は荒れててカサカサの、ジャージ姿の女の人。


勿論、見た事も会った事も無い人なのに…


女性「あぁ…こんな偶然てある物なんだねぇ。いやぁ、あの時は助かったよぉ」


どうしてでしょうか、女性の方は私を知っているようでした。


リリ「あの…人違いじゃありませんか?私、あなたに会った事なんて…」

女性「あーうん…だろうね。ま、立ち話も何だし、ちょっと食事でもしながら話そっか」


リリ「え?あ……ちょっっと…」

そして…その女性の有無を言わせない強引な誘いで、私は近くのレストランに連れて行かれる事になりました。


女性「じゃ、改めて……自己紹介は必要なんだけどうけど、わざわざ言う必要も無いわよね。ね?私」

リリ「私…って……え?じゃぁあなたはは…パラレルワールドの私なんですか!?」


女性「そゆ事ー。いやぁ、タヌ太から聞いてはいたけど、本当に出会う物なんだねぇ。って言うか何だよ、全然安全じゃない。驚かされ損?」

リリ「そうですね。あんな事言われた後だったか身構えちゃいましたけど、こうして話してみると…全然普通の人みたいで安心しました」


女性「だよねー…って、そう言えば話は変わるんだけど。私…って言うかキミは、他の私にも会った?」

リリ「いえ…私も貴女が初めてです」


女性「そかそかー。んじゃやっぱり、運命的な物を感じるねぇ。いやぁ…本当あの時は助かったよ」

リリ「助かったって……じゃぁやっぱり、そっちの世界でも望魔と戦ってるんですか?」


女性「うん、戦ってるよ?あ、でも…キミの身体を借りたのは、望魔との戦いじゃなくて……えっと、そうだね、接客みたいな感じ?物凄いクレーマーが居てさ…」


リリ「お仕事…ですか?やっぱり大人の人って大変なんですね…」


女性「ま、そんな所。で、これはその時のお礼だと思って遠慮なく食べてよ」

リリ「あ、はい…じゃぁ、そう言う事なら…頂きます」


最初は警戒して手を付けられなかったけれど…話して安心した私は、料理を食べ始めました。
14 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/08(木) 00:07:28.02 ID:YYRgMi0ro
女性「で……こっちの望魔はどのくらいの頻度で出て来るの?何か月くらいの暇があるの?」

リリ「えっと…少しずれたりはしますけど、1週間に1度…あ、最近はちょっと増えてるかなってくらいです」

女性「へぇ…そんなに出るんだ、大変だねぇ」

リリ「いえ…慣れましたから」

女性「んー…本来ここは年配者らしく、困った時はいつでも呼んでおくれー!って言いたい所なんだけど…何の取柄も無いニートな私だからね。力になれないイコール呼ばれる機会がないってのが悲しい所だわ」

リリ「もう、そんな冗談を」


落ち込む事ばかりで、沈みっぱなしだった私だけど…この出会いによって、ほんの少しだけど元気付けられた…そんな気がしました。


………そして


もう一人の私と別れた後…家まで帰る道の途中で、別れた時の事を思い出しました。


私は、この世界のタヌ太と会っていかない?って誘ってみたけど…

お母さんと鉢合わせてもまずいでしょ?と、もう一人の私はそれを断り、そのまま別れました。


私には気付かなった事も気付ける…大人な私。私を元気付けてくれた事も含めて、改めて感心しながら……



…家に入ろうとしたその瞬間。


辺りの景色が…ほんの少しだけ薄暗くなった気がしました。


そして…腕時計を見ると、時間は6時……別の世界の私と別れたのは4時で、家まで30分くらいだから………


リリ「嘘………90分……え?これって……」

そう…90分間、私の意識は消えていました。


つまり……


リリ「誰か…別の世界の私に呼ばれてた…って事……?」


説明出来ないような気持ちの悪さ…体中の痛みとだるさと、吐き気が私を襲いました。


私は急いで家に上がり…それらの全てを吐き出すように、お手洗いで吐きました。


そして………


思い出したようにまた時計を見てみると…今度は7時50分。


またです…また私は、別の世界の私に呼ばれて居たようなのです。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/08(木) 00:13:47.83 ID:gpenQ1nQ0
○んポコ(ボソ...
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/08(木) 02:25:11.89 ID:gpgEiE9do
ほのぼのとは一体
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/08(木) 06:39:49.38 ID:Z5ovHbjR0
ほのぼのじゃなくてぼのぼのだったんじゃないか?あれ、意外とエグいとこあるからな
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/08(木) 19:40:31.52 ID:tmjYcQ/M0
ぜってぇーロクな使われ方してねぇよロリリリ
気持ち悪さとか90分とかな……
19 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/09(金) 00:02:14.84 ID:iRcEMN0+o
寒気と共に冷や汗がどっとあふれ出して、真っ白なはずの頭の中にじゅくじゅくとどどめ色の膿が滲んでいきました。


もう一度…さっき吐き出して無くなった筈の胃の中身を、もう一度吐き出した後……汗まみれになった体を洗うために…そのままお風呂に入る事にしました。


リリ「体…重い…お腹…痛い……」

身に覚えのない疲れと痛み…それは、何かがあった事を私に教えてくれているようでした。


リリ「でも……生きてるんだ……」


不幸中の幸い……と言って良いのでしょうか。

見ず知らずの誰かに自分の身体を使われたにも関わらず、命だけは残っている…死んでは居ない…


死んでしまったら…あの婦警さんみたいに死んでしまったら……そう考えると怖くてたまらない。


リリ「でも………他の私もそうだったんだよね」

リリ「私が呼んで、身体を借りたら………」


死んでしまうかもしれない…そう考えてしまいました。


リリ「でも………私だけじゃぁ、望魔を倒せないよぉ………」

リリ「だったら……だったら、私が倒さなくても……」


そう思った時に限って、タヌ太の言葉を思い出してしまいます。


タヌ太『リリじゃなければ、望魔は倒せないポコ。リリが望魔を退治しなければ、きっと他の多くの人に迷惑をかける事になると思うポコ』


リリ「なら…他の私が死なないように…望魔を倒すしか無いんだよね…」


ムシの良い事を言ってる事は判っている…でも、そうするしかありません。

それに、いざとなれば…自分が身代わりになれば……そんな事を考えながら、私はお風呂から上がって……


汗まみれになった服を、洗濯機に入れる途中…それに気付きました。


『こんな事しか出来なくて悪いんだけど、これはせめてものお礼。

 何か美味しい物でも食べて元気出しなよ!

 追伸・こっちも上手くやったから、君も上手くやんなよ』


ポケットの中に…1万円札と5千円札と一緒に、折りたたまれて入っていた手紙。

多分…夕方に別れる前に、もう一人のの私が入れた物でしょう。


リリ「もう…私の馬鹿。こんな沢山のお金貰えないよ」


気が付けば…私は大粒の涙を流していました。



そして………
20 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/09(金) 00:17:37.53 ID:iRcEMN0+o
タヌ太「そっか…それで、何事も無かったポコ?」

リリ「うん…ちょっと格好はアレだったけど、気の良い感じの私だった」


お風呂から上がって…思いっきり泣きじゃくってスッキリした後、私は今日の経緯をタヌ太に話しました。


タヌ太「何か変な事とか言われなかったポコ?」

リリ「うぅん?お礼を言われただけ。あ、あと…その世界に比べると、こっちの世界の望魔は沢山出てるって言ってた」


タヌ太「そうポコね…この世界はどちらかと言えば多い方ではあるポコね。ちなみに、多い所だと毎日のように出現する所もあるポコけど…望魔の出現頻度に関しては、どうしようも無い事ポコ。まぁとにかく、無事で何よりポコ」


何だかんだで…今まで気遣いとか足りなかったり選ぶ言葉が悪かったりとかはあったけど、タヌ太は私を心配していてくれていました。

思い出してみれば…婦警さんの私を死なせてしまったのも、タヌ太の指示をちゃんと聞いていなかったのが原因でした。


そう…そう考えれば、これから先もきっと上手くやって行ける。そんな風に自信を持つ事が出来ました。



昨日まではずっと、不安で不安で仕方が無くて…この先ずっと、安心して眠る事は出来ないだろうと覚悟していました。

でも今日は…今日会った別の世界の私と、タヌ太…二人のおかげで、ほんの少しだけ安心して眠る事ができそう………


そんな事を考えながら、私は部屋の電気を消して…目を閉じて……


リリ「私も…今日会った私のお手伝いをしたいな。出来れば…望魔退治じゃなくて、お仕事の方で」

タヌ太「仕事ポコ……それで、今日会ったもう一人のリリの、職業は何だったポコ?」


リリ「えっと、確か――――――――」
21 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/09(金) 00:22:35.33 ID:iRcEMN0+o
――


――――


――――――



リリ「………パラレルルンルン パラレルルンルン―――」



―――――――――


――――――――――――



…………………………………………


リリ「――――――っ…………」

薄暗い浴室の中で…私は、周囲に飛び散った血を洗い流して居た。


リリ「ぅっ………えぐっ……ふっ………」

悲しくて…辛くて………どうしようもなくて………


バスタブや……包丁に付いた血痕を、この記憶ごと流し切ってしまいたい…そんな気持ちに苛まれながら、洗い流して居た。
22 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/09(金) 00:40:58.20 ID:iRcEMN0+o
<後編ハイライト(嘘)>


リリ「どうして…どうしてぇ……殺したのに…殺した筈なのに、何でまだ終わって無いのぉ………」

―――終わらない悲劇


中学生リリ「そう…貴女、何も知らないのね。間違って居るけれど…それで気が晴れるなら良いんじゃない?」

―――現れる、別のもう一人の「私」


タヌ太「僕だって…僕だって!リリに巻き込まれたせいでこんな目に遭わされてっ……もう…うんざりなんだよ!!」

―――語られる真実


中学生リリ「誠一さん…彼女の婚約者の事も、貴女は知らなかった」

―――突き付けられる事実


リリ「私……一体いつまで、こんな事を続けないといけないの?」

―――深まる謎と疑念と…


中学生リリ「思い出しなさい…貴女が犯した過ちを…罪を。そして、その罰を」

―――襲い掛かる理不尽な運命


タヌ太「………もう二か月ポコ。酷かも知れないけど…生かすか殺すかは君が決めるポコ」

―――迫られる選択


リリ「やっぱり……私…嫌だよ………お母さん…私もう…疲れたよぉ……」

―――苦しみと悲しみの先に待つ物は?



「パラレルルンルン パラレルルンルン……本当の私になぁれ……」



後編…近日公開予定無し
23 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/09(金) 00:48:56.76 ID:iRcEMN0+o
と言った感じで、電波一発目の『パラレルリリちゃん』終了です。
行間に詰め込み過ぎて、人によっては「え?何これ?何でそうなるの?」になりそうなのが怖い所…
次回以降はその点の改善もしつつ、引き続き電波を垂れ流して行きたいと思います。

>7 ナイスボート!
>8 混乱と混沌はパラレルのサガ…!
>9 >16-17 ほのぼのです…ファミレスで元気付けられた辺りが。逆にこれ以降は落ちて行くばかりですがっ!
>15 平成たぬき合戦ぼんポコですね、判ります。えぇ判ります。
>18 ポケットの中身でお察し下さい。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/09(金) 01:04:58.84 ID:m2rF9JkU0
怖いなぁ (パラレルゲート)戸締まりすとこ
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 01:53:05.61 ID:CxuLbu6eo
安定のえげつない展開
気付いたけど◆TPk5R1h7Ngの先頭3文字ってチンポだよね
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/09(金) 06:38:23.21 ID:KtLk818Q0
それを安定にしちゃうところが業深いよね
あと、それは気付かなくて良かったやつだ
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 08:12:20.08 ID:CxuLbu6eo
というかチンポじゃなくて正しくはチンポコ
つまりイッチはタヌ太だったのか
良く見たら近日公開じゃなくて公開の予定なしなのか…
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/09(金) 23:39:15.80 ID:hVvpH7iC0
ああ〜、パーフェクトヴァニティりてぇよな俺もな〜
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 09:33:29.54 ID:/xIAAn/e0
正直なところダークストーカーも半分くらいしかわからなかったし
これもよくわかってないけどまぁ問題ない
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 21:32:48.40 ID:45Jal70G0
勇者のもダクストも、TASさんだったらどうクリアされてたんだろう
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 08:05:35.07 ID:xMRYTp5d0
>>1の作る話でロボがメインのってあったっけ?
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/11(日) 11:17:31.50 ID:xDFSkQX30
電波かー。平沢師匠の曲とか聞いてると早めに来そうな気がするなー
俺はヤイヤイとか論理空軍とかルクトゥンとかマザーとかロータスとか他にも色々好きだなー

ところで横文字の良くわからない職業って何の事だったんだい?
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/11(日) 15:30:12.23 ID:gWjKhSu30
それにしてもダクストは一章だか一編だかが一つの物語であってもおかしくないような内容なんだよなー
ダクストとは、実はセルフクロスオーバーワールドなのでは……
34 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/11(日) 22:06:36.13 ID:h7cNfhG2o
>24 ダイジョウブダヨーコワイクナイヨー パラレル良いとこ一度はオイデー
>25-27 エゲツなくナイヨ!?現時点ではまだ全然エゲツな要素出てませんよ!?
 あと、チンポチンポ連呼しないでチンポ!不適切な表現でR-18スレになっちゃう!!
>29 ………楽しんで頂けたのであれば、結果オーライ!
>30 多分もっとスマートかつ効率的なやり方で、100レス以内にクリアされていたと思います。
>31 今の所まだありませんが、脳内ストックでは
  『悠久の中の一瞬の輝き』
   光速で動いているにも関わらず、超巨大なためパンチ1発放つのに100年かかるロボットのパイロット達の話。
  『エメト』
   自衛隊所属のパイロットがロボットに乗って、ゴーレムを操る魔法使い達と戦う話。
  『バハムートクロニクル』
   突如現れた神話上の怪物達手に、バハムートと名付けられた記憶喪失の人型機械が立ち向かう話。
  『オーバーギア』
   永遠に動き続ける歯車【ギア】このギアを用いる事で様々な武器や機械…そしてロボットを作り出した世界のお話。
  後は、タイトルはまだ決まってませんが…
  シャム双生児の切除した脳を再利用したロボットの話や、人間になるためにパーツを集めるロボットの話etc…
  と言った物が、腐りかけたまま眠っています。

>32 最近はアニメとかドラマの主題歌聞きながら書いてますが…機会があったらそちらの方も聞いてみようと思います!
   横文字の良く判らない職業は、略す前のOIPCとかFBIとかSOFとかの小学生リリには判り辛い系の物とお考え下さい。
>33 だいたいあってます
   形にしてないけど脳内で完結してる作品が幾つかあって、その中からゲストだったり中ボスの一部引っ張ってきたりして
   魔法少女ダークストーカーのバックグラウンドの一部になったり、逆に他の物語に繋がったりしています。

では電波二発目、退廃世界モノで『ヒトナシノヨ』
「生きる意味」をテーマにした、ぼの……冒険譚です
35 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/11(日) 22:11:21.37 ID:h7cNfhG2o
〜ヒトナシノヨ〜


  「あり……がと……う…………また………て………」


―――夢を見て居た

――――どこかで聞いた事がある声が、僕に向けて何かを言っていた

―――――だけど…その夢が長く続く事は無く……
36 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/11(日) 22:19:44.54 ID:h7cNfhG2o
「人間だ!人間が現れたぞ!!」

「女子供を優先して避難させろ!!」

「監視はどんな些細な変化も見落とすな!


離れた場所から響き渡る喧騒に…僕は叩き起こされた。


周囲に鳴り響くのは、警笛と忙しない足音。

心地良さとはかけ離れた不規則なリズムにより…

まるで業務用サーキュレーターでもかけたかのように半ば強制的に、頭の中を覆う霞が吹き飛ばされる。


僕「えぇと…何だっけ?人間が現れたとか言ってたよな」


まず、僕の居る場所は…木々に囲まれた部屋のような場所。中央に何か台座のような物があるけど、それが何かは判らない。

今まで聞こえて来た声は、この部屋の外からで…それこそ、四方から上がっているらしい。


ちなみに…既に目は完全に覚め、充分なまでに意識はハッキリとしている訳だが…

その上で尚、不可解な……その言葉の意味を、僕は考えた。


僕「人間……?」


人間を呼称する上での、あの内容……って事は当然、声の主は人間じゃぁ無い筈。

逆に言えば…声の主である、人間以外の存在が外に居ると言う事。

そして、そんな疑問を浮かべる僕自信は………


僕「うん……どこかだろう見ても人間だよな?」

鏡面になった台座の、側面を覗いて確認してみたけれど……うん、僕はまごう事無き人間だ。

つまり……外の声の主達の敵にあたる存在らしい。


僕「………………あれ?これって何かピンチ的な状況じゃね?」


改めて襲いかかる危機感に、寒気を覚える僕。

どうにかして…いや、どうすればこの状況を切り抜けられるのか考えるためにまず…僕は、木々の隙間から外の景色を覗き見た。
37 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/11(日) 22:30:32.36 ID:h7cNfhG2o
「人間の姿は見えたか!?」

「まだ報告は無い!それよりも避難を優先しろ!」


外に居る声の主たちは、耳の長い……指輪物語に出て来るエルフのような出で立ちの人々。

この周囲は集落らしく、木々の合間に小屋のような物が建てられ…そこから生活の跡を伺える。


となると………


僕「可能性その1…外の人たちが言っている人間とは僕の事で、僕を探している」

この場合…捕まってしまったら何をされるか判った物じゃぁ無い。


僕「可能性その2…僕以外の人間が、この村に襲撃をかけている…あるいはかけようとしている」

この場合も、捕まればただでは済まない。では、どう動くのが最善なのか…それを考えるが…


『ぐぅぅぅぎゅるるるる………』


……そもそも…選択肢なんて物自体が存在していないらしい。


まず…このままこの場所に籠城するなんて愚策は、餓死と言う名の自殺を行うに等しい行為…

となれば…どうにかして外に出るしか無い訳だ。



僕「かなり危ない橋になりそうだけど…これしか無いか」


まずは、近くに干してあったマントを手繰り寄せ……

マントの裾を破り…フードを深く被って、その上から破ったマントを巻いて固定する。


僕「変装完了…っと」


目以外は全て隠れるこの姿ならば、一目で人間とばれる事は無い。

見付かればアウトだが…外の騒ぎに乗じれば、多少の食料を拝借して退散する事も可能な筈。

僕は、外の人足が途切れるのを見計らい…木々を押しのけて外に出た。


幸いな事に、すぐ目の前に果物屋の屋台らしき物があり…皆が避難して行った道とは別方向に向かう横道もある。

このまま速やかに、この集落から立ち去る事が出来る…その光明を見つけて安堵した瞬間……


「おいお前、何をしている」

僕は後ろから肩を掴まれた。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 23:40:02.05 ID:xMRYTp5d0
ヒトナシノヨと言っているのに人が現れるのか……(困惑)
優しさ成分がかなりマイナス行ってるディストピア系なのかな?
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 17:15:46.04 ID:/4YfBT7G0
ヒト(デ)ナシ(ナ)ノヨ〜
40 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/12(月) 22:06:42.08 ID:/0j99grko
まずい…見付かった?!


衛兵「食い物なら避難所にもある。まずは移動を優先しろ」

いや、まだセーフだ。見付かりはしたが、ばれては居ない。

手を振り解いて逃げる事も出来なくは無いが…ここで下手に抵抗して騒ぎを起こすのは、どう考えても得策じゃぁ無い。


僕「は、はい。すみません!」

衛兵「この先まっすぐだ。寄り道なんてするなよ!」

今は大人しく従っておいて、隙を見て抜け出す…その考えの下、この衛兵らしき人物の指示にし従うのだが……


避難所に到着したら到着したで、これまた次の問題に追い詰められた。


避難所は完全に四方を塞がれ、逃げ道は入って来た入り口と奥の裏口のみ。

そのどちらにも門番が二人居て、気付かれずに脱出する事は不可能。


こんな状態で正体がばれてしまう事だけは避けたい所。

僕は改めてフードを深く被ろうと、手を伸ばし―――――


『どんっ』


僕「………え?」

後ろから誰かにぶつかられた。

そして、その拍子に僕は床に倒れ………


不味い……不味い不味いマズイマズイ!!!


フードが捲れ上がり、素顔を晒してしまった。
41 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/12(月) 22:24:17.63 ID:/0j99grko
集まる皆の視線………周囲から上がるざわめき。

この地において異質の存在である、人間…僕に向けて皆が注目し………


少女「アンタ、ここらじゃ見ない顔だね。他の集落から逃げて来たのかい?」

一人の少女が僕に声をかけると、皆はまた興味を失ったように視線を外に戻していった


僕「………え?あれ?」

見た目も殆ど同じ…使っている言語も同じ。

注意して見なければ、殆ど人間と区別も付かないような人たち。


セラ「アタシはセラ。アンタ名前は?」


だが…だからこそ沸き上がってしまう衝動に突き動かされ、俺はそれを口にしてしまった。

僕「いや、その……人間と…敵対してるんだよね?」

セラ「あぁ、そうだよ?何を当たり前の事を 言ってんだい?」


僕「僕の事見て、その反応っておかしくない?」

セラ「……は?」

僕「いや、だから。人間の姿を見たらその反応はおかしいじゃないかって」


セラ「いやお前、何言ってんだ?お前が人間?無い無い。頭でも打っておかしくなったか?」

僕「えっ…」

セラ「そーいやぁ、人間の幼体はアタシ達に似てるってホラ吹く行商人も居たりしたなぁ…って、そんな事ありえねぇけどな」


僕「ちょっ…ちょっと待ってくれるか?じゃぁ、君達が言ってる人間って何なんだ!?」

セラ「あぁん?あぁ…逃げては来た物の、肝心の姿は見た事無いってか?人間ってのは―――」


『ずしん…』


セラ「人間ってのは……あぁ、丁度良い。門の向こうに見えそうだから、行ってみようぜ」


『ずしん…』


僕「……え?」

僕は、その少女に手を取られ…門のすぐ近くにまで連れて行かれた。

そして、そこから見える景色の先に……


『ずしん…』


セラ「そら、あれが 人間 だ」



―――――――それは居た。
42 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/12(月) 22:32:01.16 ID:/0j99grko
―――――――――


屈強な男「いっやぁー、さすがに今回は危なかったな」

衛兵「あぁ…虎の子のゴーレムまでやられちまった時は焦ったが、何とかなって良かったぜ」


人間と呼ばれる存在との闘いの後……集落では、祝勝会が催されていた。


真っ黒な石板の前で、火を囲んでの宴。

手にしたコップの中からは…とりあえずアルコール臭はせず、甘い匂いだけが漂っていた。


屈強な男「どうした兄ちゃん。あれだけの大物を仕留めたってのに浮かない顔してんなぁ」

セラ「あぁコイツ、人間を直に見たのは初めてらしいんだ」

屈強な男「そっかそっか、だったら無理は無ぇな。まぁでも、一度見れば次回からは幾らか馴れんだろ」


僕とは別の、人間と呼ばれる存在を僕は見た。

けれど…あれを人間と言われても、正直しっくり来ない…と言うよりも、何故人間と呼ばれているのかすらも判らない。


あれが、何をもって人間と呼ばれているのか……僕は、襲撃当時の事を思い出す。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/13(火) 00:33:39.60 ID:uo3zOIcL0
出だしけもフレ一話で進撃……アニメ歴史を遡っていくのか?
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/13(火) 19:58:59.66 ID:KO6dDO0R0
聞いといてなんだけど、意外といっぱいあるのねロボもの企画。それぞれ楽しみだから簡単に感想を言わせてもらいます

 『悠久の中の一瞬の輝き』?
   ネタはネタでも、真面目にやってるネタは格好良い。ってやつかなこれは

 『エメト』?
   この中では一番一般受けしそう?
   
 『バハムートクロニクル』?
   ちうに スルメ味

 『オーバーギア』?
   縋るか?拒絶するか?解放を求めるか?

 『タイトル未定』
  シャム双生児の云々
   多分鬱系
  人間パーツ集め
   人工筋肉に始まり、刀匠の鍛えた骨とかシリコンの脳みたいにロボ的素材で似た働きしそうなモノを集めて、最後に原子変換装置で一発チャレンジ……って感じかな?
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/13(火) 20:01:42.01 ID:KO6dDO0R0
うん?『』の後に勝手に?が付いてるな。携帯でコピペしたのが原因だろうか?
46 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/13(火) 23:16:50.00 ID:hSpXKaiXo
僕「あれが……人間?」

セラに促された先に見えた物は…少なくとも、僕が知る人間とか似ても似つかない物だった。

例えるなら、山…砦………そんな物を彷彿とさせる、節足動物のような…そう……ヤドを被った巨大な昆虫のような物だった。


装甲とも外骨格とも見れる外殻を纏い、一歩…また一歩と歩みを進める巨大なそれ。

僕が呆気に取られながらその巨躯を見上げていると……


僕「あ…………」


そいつ……人間と目が合った。

正確には、まず始めに8つある目の内の一つと目が合い……残りの7つの目が、続けざまに僕の方へと向き直った。

そして更には、そいつの身体までもがこちあの方へと向かい始め……不揃いな大きさのハサミを振り上げて………


僕「やばっ………」

僕が叫び声を上げるか否か、僕の目の前に壁が現れた。


『ゴァァァァァァァ!!』


いや…壁じゃない。

壁と思われたそれは、巨大な両腕を振り上げ、人間の腕へと掴みかかった。


セラ「ゴーレムか…やっぱり今回は出す事になるよなぁ」


ゴーレムと呼ばれた物により…メキメキと音を立てながら、筋繊維のような物もろとも引き千切られる人間のハサミ。

しかし、人間も人間でやられたままでは居ない。もう片方のハサミで、ゴーレムの胴体を刺し貫く。

が…ゴーレムはそのハサミを掴んだまま離さない。


人間の武器は封じられ、その姿はまさに隙だらけ。

そして当然のようにその隙を突き…甲殻と甲殻の隙間に向けて、巨大な槍が突き刺さる。


槍を放ったのは恐らく…上空を飛び交う巨鳥と、それに跨るエルフ達。

更にそこから、止めとばかりに…遠方に備えられた投石器から雨あられと岩が降り注ぎ………


それが暫く続いた後、人間と呼ばれた化け物は微動だにしなくなった。
47 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/13(火) 23:25:31.09 ID:hSpXKaiXo
…………と言う事があった訳なんだけど…


一段落付いた今でも、一体何がどうなっているのか…何故あれが人間と呼ばれて居たのか。

……皆目見当が付かない。


当事者であるセラ達に、その理由を聞いても…

セラ「ん?理由も何も…人間は人間だから人間って呼んでるに決まってるだろ?」

と……彼女達にとっては至極当たり前の理由が返って来るだけだった。


何か…少しでも判断材料が無い物か。

幸いな事に、今ならば他者の目をあまり気にせず動く事が出来る。


僕「よし…まずは、あれを調べてみるか」

僕は祝勝会を抜け出して、人間の亡骸へと向かった。
48 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/13(火) 23:39:00.25 ID:hSpXKaiXo
僕「外殻は…さすがにキチン質とはいかないか。でも多分、チタンよりも固くて軽い材質だろうな」

装甲を見た限りでは、生物なのか否か…そもそも、有機物なのか無機物なのかさえ判別が難しい。


僕「となれば…」

次に探るべきは、先の戦闘で損傷した断面。

こちらは外殻とは打って変わり、明らかな生物の様相を呈している。


僕「うん…何ていう名前なのかは判らないけど、少なくとも僕の知って居る人間とは別の生き物だ」

散々探りまくった挙句、辿り着いた結論は最初と全く変わりの無い物。

どっと襲い掛かる徒労感から、肩を落とし……最後に、頭と思わしき部分に近付くと…


人間「…………とう へ……かえ れ………ひと なしの…よ………」

僕「……えっ?」

声が聞こえた気がした。


僕「今何て言った?もう一度言ってくれ!」


詰め寄り、更にそこから問い詰める。

だが、目の前の人間は喋るどころか微動だにせず……反応は無し。

空耳だったのだろか…と諦めた頃……
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/14(水) 05:41:47.62 ID:hsMniWIZ0
山が襲って……ヤマツカミが浮かぶわ
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/14(水) 06:56:23.16 ID:0d+EDINI0
乙!
東京へ帰れ とか言ってんのかな?主人公が東京出身かなんて分からないけど
あと、フジリューのワークワーク思い出した
51 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/14(水) 23:33:58.66 ID:qjY59wEyo
セラ「あ、居た居た!探したぞ!」

祝勝会場の方角から、セラが現れた。


僕「え?あ、そうだ…今の聞こえた?人間が、とうへ帰れって…」

セラ「塔?それってバベルの塔の事?」

僕「バベルの塔?」

それまたベタな…と思いつつも、それは声に出さずに聞き返す。


セラ「そう。一番近いのだと…ここからずっと南にあるけど、ここからじゃ見えないな。明日、見える所まで連れてってやろうか?」

僕「お願いしても良い?って言うか、何から何までお世話になっちゃって……」

セラ「良いって良いって、困った時はお互い様だからな。にしても…人間が喋ったってのは眉唾だけどな」

僕「まぁうん…言っておいて何だけど、僕自身も半信半疑なんだよね……っと、そう言えばさっき僕の事探してるとか言ってなかったっけ?」


セラ「あ、そうそう!住民登録はまだだろ?皆に紹介するついでに、そっちの方も済ませとこうと思うんだがどうだい?」

僕「住民登録?」

セラ「ん?前の集落ではやらなかったのか?ご神体に両手を合わせて名前を言う儀式さ」


僕「ごめん…ちょっと判らない。それって、やっておかないと何か不味いの?」

セラ「すぐ出てくってんなら無理強いはしないが…怪我とかした時に不便だぜ?」


僕「保険証…みたいな物かな?」

セラ「ホケンショー…?」

どうやら、僕とセラの間には致命的なまでの認識の食い違いがあるらしい。

お互いがお互いに頭の上にハテナマークを浮かべた後……


セラ「まぁとにかく、その気になったら戻って来いよ!」

僕「あぁ、うん。考えとく」

と言った結論が落とし所となり……セラは、祝勝会の会場の方に戻って行ったのだが……


その直後
52 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/14(水) 23:53:15.09 ID:qjY59wEyo
僕「………だ、誰だ!!?」

人間の脚の向こうの更に奥…茂みの中に気配を感じ、僕は声を上げた。


アリシア「ひわっ!?わわ、私はミニマの里のアリシアと言います」

僕「…ミニ…マム?」

アリシア「ここから北の集落に住んでいるミニマ族ですよ!って…そう言う貴方はハイラントじゃありませんね?」


僕「…ハイラント?」

アリシア「毛が生えてない耳が長い人達です。ここに集落があるって聞いて来たんですけど…」

僕「あぁ…うん。それならあの火の方に居るけど……何の用事?」


アリシア「ひわっ!そ、そうでした!!危険です、この集落に人間が迫ってるんです!!」

当然ながら、このアリシアという子の言っている人間と言うのは…僕の事では無く、この怪物の事だろう。


僕「って…こんなバカでかい化け物がまた来るって言うのか!?」

アリシア「あ、いえ。今迫っているのは甲殻種じゃなくて汚染種です!それも…物凄い量の!!」


僕「…………汚染種?」



一難去ってまた一難……次から次に襲い来る、不可解な物達。

………人間と呼ばれる化け物。

だけど……この先僕を待ち受けて居る出来事に比べれば…

それさえも、ほんの些細な事だったと言う事を…嫌と言う程思い知らされる事になるのだった。
53 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 00:01:20.39 ID:dLU2YWuKo
―――――――

―――僕はまた、夢を見た…


父さん「あれ?修学旅行って今日からじゃ無かったか?」

僕「違うよ、来週から」

父さん「あぁ、そうだったか」


母さん「それにしても…何て言ったっけ、アレ。大丈夫なの?」

僕「そもそも、大丈夫じゃなかったら実用化される訳無いだろ?」

父さん「そうそう。父さん達の時代には飛行機だって危ないって言われてたけれど、実際には車より安全だったろ?」


母さん「そうだけど―――――」


―――そして夢は、ここで途切れた。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 00:37:05.99 ID:uf5gf3410
まさか……次元転移技術か!(ガタッ
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 18:01:14.90 ID:H9qDU66V0
この世界で住民登録したら、自分の世界に帰れなくなりそうな気がする
56 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 19:23:53.81 ID:dLU2YWuKo
第一話「The Working Dead」


セラ「あー…っと、じゃぁ、話をまとめるぞ?」


集落の中央…一際大きな建物の中。

ここでは今、とある脅威に対しての作戦会議が開かれていた。


セラ「まず、アリシア…そこのミニマの住んでいた集落が、人間…汚染種に襲撃されたらしい」

「汚染種だって?」

「そんな…」


セラ「それで、本題はこれからだ。アリシアの話じゃぁ…ミニマの集落を襲った汚染種は、この集落に向かって来て居るらしい」

「おい…それじゃぁ…この集落を捨てなきゃいけないのか?」

「折角ここでの生活も安定してきたってのに…冗談だろ…?」


ざわめき立つ室内。皆が皆、各々の言葉を好き勝手に吐き、続くべき言葉を停滞させて行く。


僕「えっと…物凄く基本的な事を聞いて申し訳ないんだけど…何でセラが仕切ってるの?」

屈強な男「セラは長の娘だからな。長が遠征から戻って来るまでの代理なんだ」

僕「あぁ…成程」

そして僕もまた、喧騒の中で無駄話を交わし……それが終わった頃。


セラ「皆、静粛に!」

セラの一声により、室内は再び静まり返った。


セラ「皆の不安や不満は判るが…来てしまう物は仕方が無い。どう逃げるべきか…それをまず、偵察隊が戻るまでに考えよう」

僕「えっと…その。物凄く基本的な事を聞いて悪いんだけど……逃げる以外の選択肢は無いの?この前みたいに、戦って倒すとか…」


セラ「あー…そうだな、復習も兼ねて説明しとくか。まず汚染種の特徴の一つなんだが…倒したとしても、その地の土壌が汚染されてしまう」

僕「汚染種って言うくらいだから、それもそうか……じゃぁ、この集落に来られる前に倒すって言うのは?」

セラ「集落の設備無しで…いや、全て導入出来たとしても…奴等全部を倒し切るのは難しいだろうな」


ん?何か今気になる事を言わなかったか?
57 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 19:39:10.02 ID:dLU2YWuKo
僕「奴等って…複数って事?」

セラ「あぁ、そうだ。汚染種は、複数の個体により形成された人間だ。しかも今回は、集落のミニマも汚染種になっている可能性が高い」

僕「なってるって……え?まさか…汚染種に噛まれたら、噛まれた誰かも汚染種になるって事?」


セラ「何だ、知っていたのか?一応注意しておくが…汚染種に遭遇したら、近付いてはいけない。戦闘を行うにしても、接近戦は避けるんだ」

僕「噛まれたら汚染種になるし…汚染種は、リミッターが外れていて力が物凄い…って所か。あ、何か弱点とかは無いの?」


セラ「弱点と言えるかは判らないが…燃やせば動かなくなる。後は…極寒の地であれば活動出来ない」

僕「まぁうん、大抵の生物は弱点だしねそれ。あ、じゃぁ………森を焼いて、それに巻き込んだりとか出来ない?」


「………!?」

「なっ…!?」


何気なく立案したつもりのその言葉…そう…本当に軽い気持ちで発した言葉にも関わらず…

僕のその言葉で、周囲の空気は一変した。


「森を焼くだって!?そんな恐ろしい事を…!」

「ありえない…何て事を考えるんだ!!」

周囲の皆が…明らかな敵意を持った視線を僕へと向けて来る。

失言だった…が、今更撤回しようにももう遅い。僕は、皆の気迫に圧されてその場にへたり込み…


セラ「静粛に!!」

その場に溜まった空気を、セラの一言が吹き飛ばした。


セラ「森を尊ぶのはアタシ達の誇りだ!んでも…他種族がそれを理解しなかったからって、噛み付くような事じゃぁ無いだろ!」

「そりゃぁ……まぁ……」

「あぁ………ボウズ、すまねぇ」

僕「あ、いや…僕の方こそ……」

そして、セラの一声で場が収まった訳なんだが………


セラ「それに…いざとなったら、それも一つの手になるかも知れねぇ」


続けられた言葉により、一度収まった場が再びざわめき始めた。
58 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 19:52:39.37 ID:dLU2YWuKo
「いくら長代理だって言っても…」

セラ「皆まで言うな、言いたい事は判ってる。森を失うって事は、アタシ達の誇りを失うって事だ。それは重々承知してる。でもな……」

「………」

セラの言葉に、皆が固唾を呑む。


セラ「誇りを守ろうとして、誇りを汚されちまったら馬鹿みたいだろ?それに…ただ逃げるよりも、人間相手に一矢報いたいだろ!!」

「………」

「…………」

当然ながら、セラの言葉のすぐさま賛同できる物は少ない様子…。


だが……

「そう…だな…黙ってやられるくらいなら……」

「そうだよな…ここで俺らが逃げても、次は他の集落が襲われる事になるんだろうし…な」


徐々にその場の空気は翻り…セラの案に異論を唱える者は居なくなった。


セラ「で……具体的にはどうする?」

僕「え?」

セラ「え?じゃねぇよ。言い出しっぺなんだから、当然勝算あっての事なんだろ?」


僕「あ、いや………」

深く考えずにした発言…なんて事は、口が裂けても言い出せない雰囲気。

僕「まず…この辺りの地形を把握したいんだけど。何か地図とかある?」


実際どこまで出来るか判らないが…とりあえずは、出来る事をしてみようと…僕は思った。
59 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 20:06:06.33 ID:dLU2YWuKo
僕「この村がここで…ずっと北にある川沿いの集落が、ミニマの集落。左上の大きな…これは何?」

セラ「それは、エクリア火山だな」

僕「火山って…活火山?」


セラ「数週間前に噴火した火山で……周囲に火山灰こそ降り注いでいる物の、今は噴火はしていない」

僕「マグマは残ってる?出来るならそこに……」

セラ「いや…山頂までの道のりは険しいから、そこに誘い込むのは無理だ」


僕「えっと、それじゃぁ…エクリア火山と、この集落の間に走ってるこれは?」

セラ「それは…エクリアの谷だな。高さは人三人分程の小さな谷だ」


僕「この谷に落とす…ってのはどうかな?」

セラ「いや、それは無理だ」

僕「何で?」

セラ「谷の端はゆるやかな傾斜になっていて…更にその先は、この集落の近くに繋がっている。下手をすれば、ここに誘導する事になってしまう」


僕「成程…あ、そう言えば…エクリア火山の北から、ミニマの集落とここの間まで川が走ってるみたいだけど…ここに橋がかかってたりする?」

セラ「かかってはいるが…川はあまり深く無い。橋を外した態度じゃ、あまり足止めにはならないだろうな」

僕「そっか……」


……………と言った感じで地図とにらめっこをする事しばし。

悩みに悩み、考えも煮詰まった所で……ふと、ある事に気付いた

僕「ここって…実際に見に行く事が出来ないかな?」

セラ「大鷲を使えば出来なくは無いが…そんな所に何の用があるんだ?」


僕「もしかしたら……最小限の被害だけで、汚染種を一網打尽に出来るかも知れない」
60 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 20:21:33.14 ID:dLU2YWuKo
―――――

僕「良かった…条件は揃ってくれてるから、何とかなりそうだ」


周辺の状況を確認して…ちょっとした実験も成功。

後は手順さえ間違えなければ、どうにかなる……と言った感じ。

最初に大鷲に乗った時、失神してしまったという失態を除けば……概ね良好な流れだろう。


一通りの打ち合わせや伝達を終え…僕は束の間の休息を満喫していた。


僕「ところで…ミニマだっけ?アリシア達って、僕と何が違うの?」

セラ「あぁ、そう言えばアンタは他種族に疎いんだったな。教えたげよう」

僕「お願いします」


セラ「まず一目で判るのは、その身長。成人しても120cmくらいにしかならないのが一番の特徴だね」

僕「あぁ…じゃぁ僕は実はミニマって言うセンは消えたのか」

セラ「だなだな。で、ちょっと判り辛い特徴だと…後ろ髪の毛の生え際。耳の付け根より下は生えてないんだ」


僕「ほうほう…ちょっと見せてもらっても良い?」

アリシア「え?あ、は…はいです!」

そう言って僕は、アリシアのうなじの辺りを見せて貰った。


僕「お、本当だ」


セラ「あ、ちなみに…さっきの生え際より下は、成人でも体毛が一切生えてないぞ」

僕「…………ほうほうほうほう…」

セラ「いや、何か妙に食い付き良いねぇ…んじゃ、折角だから見せて貰ったら?」


アリシア「…はいっ!?」

僕「え゛っ!?」


セラ「って…何で驚くのさ。ミニマの場合、素っ裸の時の方が多いんじゃないの?」

僕「マヂですか!?」


アリシア「そ、それは…っ。あ、あれは水の中に居る時だけですっ!他の種族に会う時は、裸になったりしませんからっ!!」

僕「………そういう物なの?」

アリシア「そういう物なんですっ!!」

是非とも水辺でお会いしたい…そう心の中で願ったのはここだけの秘密だ。


………と言った感じの他愛のない雑談を交わした後、セラは全体の進行具合の確認に…僕とアリシアは、別所の作業へと移る事になった。
61 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 20:31:16.16 ID:dLU2YWuKo
アリシア「そう言えば…貴方は、セラさんとツガイなんですか?」

僕「え?」

アリシア「あ、いえ…私から見てそう見えただけなので、違って居たらごめんなさい!」

僕「えっと…ツガイって?」


アリシア「あ、その…ツガイって言うのは、将来を誓い合った男女の事を言うんです」

僕「あぁ、つがい…か」

イントネーションが微妙に違っていたので、最初は戸惑ったけれど…どうやら、そのままの意味だったらしい。


僕「ちなみに…どんな所がそう見えた?」

アリシア「お二人とも、息がピッタリ合ってますし…何て言うか、お似合いだなって」

僕「えーっと…そう言って貰えると嬉しいんだけど……そう言うのじゃぁ無いと思うな」


アリシア「そう…なんですか?」

僕「うん、残念ながら」

アリシア「じゃぁ………」


僕「ん?」

アリシア「私が立候補しても…良いですか?」

僕「………へっ?!」


アリシア「なーんて…冗談ですよ。あ、本気にしちゃいました?」

僕「な、なんだ…冗談か。ビックリさせないでよ」


アリシア「でも………」

僕「でも…何?」


アリシア「何でもありません。それじゃ、作業に戻りましょうか」

そう言ってアリシアは作業に戻り…気になる言葉を残したまま、話は切り上げられてしまった。
62 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 20:49:15.04 ID:dLU2YWuKo
――――

そして…作戦決行当日。


僕「あれが……汚染種か……」

ある程度、事前に想定はしていた物の…実際に見るそれは、正に圧巻と言う他は無かった。


生物としての知性や生気を失い…文字通り、生きる屍と化した生き物たちの群れ…

それが人間…汚染種の姿だった。


一言で言ってしまえば、僕の知識の中にあるゾンビに限りなく近いそれ。

あえて差異を挙げるとすれば…人型に限らず、動物の姿もちらほらと見て取れる事。

後は……


僕「やっぱり…ざっと見た感じじゃ判らないか…」


人間…そう呼ばれる由縁となるような、それこそ本当に人間の姿をしている個体が居ないかどうか見回してみるも…

結果は、先の発言通り。


所々が破損し、人間どころか他種族であったとしても区別が付き難い者ばかり。

ここで手掛かりを得るという試みは、あえなく失敗に終わってしまった。


人間と言う存在について幾つかは仮説が立つ物の…結局は、そのいずれも確信に至るだけの確証を得られない。

口惜しさを噛み締めながらも、僕は…僕なんかの些細な疑問よりも優先すべき、もっと大切な事…作戦の次の段階へと移る事となった。
63 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 20:58:28.51 ID:dLU2YWuKo
…………と言っても、僕はこの後何かする訳では無い。

邪魔にならない場所…汚染種の注意を引かない場所まで退くだけだった。


皆既にやるべき事は予め決まっていて、後は…不測の事態が無い限り、作戦の通りに行動するだけ。

ちなみに、どんな手順で作戦を進めるかと言うと………


その1

「何とか間に合ったぞ!火を放て!!」

予め木を切り倒しておいて、わざと最低限の山火事を起こし……汚染種達を灰の川へと誘導する。


その2

「ゴーレムはまだか!!」

「あと少し……よし!ギリギリ間に合った!!」

続けてエクリアの谷へ落とし、一か所にまとめた所で……集落に繋がる出口を、ゴーレムで封鎖。


その3

最後に……ここからがこの作戦の要。

「今だ!塞を外せ!!!」

近くの川から水を引き、エクリアの谷へと流し込む。


……と言っても、水攻めが目的では無い。


事前情報から、ひょっとして…と思って現地に行ってみたのだけれど、これがまた予想以上の結果だった。

エクリア火山から噴き出した火山灰は、案の定周囲に降り積もり…

中でもこの谷の中は、風に晒されなかったため大量の灰が溜まっていて……おまけに、少なくともここ数日は雨が降って居ない。


と、ここまで言えば察しが付くだろう。


「本当だ…どんどん固まって行く…」

「成程…火山の周囲にあった歪な岩は、こうやって出来たのか…」

後は中の汚染種達がもがいて動き回り、かくはん機代わりになって……


汚染種セメント詰め作戦は、大成功を収めた。
64 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 21:54:16.54 ID:dLU2YWuKo
セラ「アンタ本当にお手柄だよ!まさか汚染種を相手にして集落を守れるなんてなぁ!」

汚染種を封じ込め…催された祝勝会。

コップを片手に肩を組んで来るセラに、ふと…アリシアの言葉が蘇り、僕は赤くなった。


僕「いや、今回のは色々条件が揃ってたおかげだから…」

アリシア「だとしても…貴方が立案しなければ、他の誰でも思い付かなかったと思います」

衛兵「そうだそうだ!今回は素直に称賛されとけって」

僕「ははっ……」


褒めちぎられる事に慣れていなくて…気恥ずかしさばかりがどうしても溢れてしまう。

このままでは僕の羞恥心がもちそうにないので、話題を変えようと試みる。


僕「あ、そう言えば……汚染種に取り込まれた人達の中に、見た事の無い種族が結構居たみたいなんだけど…他には、どんな種族が居るの?」

セラ「他には…って、ハイラントとミニマ以外、本当に何も知らないんだな」

僕「めんぼくない」


セラ「この辺りに住んでいる種族なら…オルグ族にクピド族。後は…滅多に姿を現さない、オピオ族や………」

アリシア「ヨミミ族………ですね」


そして何故か……ヨミミ族…その名前が出た瞬間、周囲の空気が凍り付いたように静まり返った。


僕「…え?何?何か…仲が悪いとか?良く無い話なら無理には…」

セラ「仲が悪いとか…そう言う問題じゃ無い。これは重要な事だから、アンタも知っておくべきだ」

僕「あ…うん。判った」


セラ「ヨミミ族ってのはな…人間を崇拝するイカれた連中だ」

僕「…………」

アリシア「自分達は人間に作られた存在で…人間に使える事こそが本当の役割…彼女達は、そう信じているんです」


セラ「直接正面からぶつかり合う事こそ無い物の…奴ら、人間絡みの事とあればすぐ首を突っ込んて来やがる!アンタも…充分に気を付けるんだぞ?」

僕「判った。肝に銘じておくよ」

と…口ではそう言った物の、ここに来て初めて見付けた手掛かりらしき手掛かりを放置しておく訳にもいかない。


機会があれば、そのヨミミ族ともコンタクトを図ってみよう……そう決意した。
65 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/15(木) 22:24:07.77 ID:dLU2YWuKo
―――

……宴もたけなわ

セラは皆を労いに席を立ち…酔い潰れていびきをかき始める者も出始めた頃。


アリシア「あの……この後ちょっと、良いですか?」

不意に……ほんのり赤みがかった顔のアリシアが、僕に声をかけて来た。


僕「えっと…それってどう言う…」

アリシア「私達が最初に会った場所…覚えてますか?あそこで待っています」

問いに問いで返し…それまた問いに問いで返される。


文脈からすれば、全く会話が成り立って居ないのだが……

流石に、アリシアの言葉の意味が判らない僕でも無い。


ゴクリ…と固唾を呑み込み……アリシアが会場を去って、少ししてから僕もその場所へと向かった。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/16(金) 00:00:18.08 ID:piw1I7iC0
やはり知恵というのは偉大だな
67 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/16(金) 03:25:25.82 ID:FlwytLXdo
人間…甲殻種の遺体置き場。

外殻は集落の施設に使うために、殆どが剥がされ…ヤド以外は原型を保っていないそれの足元に、アリシアは居た。


アリシア「あ………」

僕に気付き…ゆっくりとした足取りで近付いて来るアリシア。

僕「えっと…その……」


僕とアリシアの距離は縮まり…熱を持った息が混ざり合う。

僕「……………」

言葉は不要…なんてキザな常套句を言うつもりはない。純粋に…この時この瞬間に発するべき言葉が見つからなかった。


アリシア「………」

僕「……………」


アリシアの唇が、僕の唇に近付き…心臓がバクバクと激しく脈打つ。

そして、アリシアの唇が触れた瞬間…僕は反射的に目を閉じ………


僕「ッ――――!?」

次の瞬間。唇から頬にかけて鋭い痛みが走った。
68 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/16(金) 03:39:53.42 ID:FlwytLXdo
僕「アリ……シア……?え?………何を?」

何が起こったのか一瞬判らず…僕は、間抜けな声で問いを向けた。

そして……僕の問いに対してアリシアは、スカートを捲り上げ…………


僕「――――――っ!?」

紫色に変色した…その太腿に巻かれた包帯を見た。


僕「え…?それって……え?え?え?え?え?」

僕は…全身から血の気が引くのを感じた。


アリシア「汚染種に襲われて…私の居た里は全滅したんですよ」

僕「何を…言ってるんだ?」

アリシア「エリシア…妹も噛まれて……でも、一人っきりじゃ寂しいだろうと思って…」


僕の言葉など意にも介さず…淡々と話し続けるアリシア。

その瞳には既に生気と言う物が感じられず…また、その事実が僕を更に追い詰めて行く。


僕は何に噛まれた?僕は一体何になってしまう?

体中の毛穴と言う毛穴から冷や汗が噴き出し、身体の芯まで冷え切るような感覚が襲い来る。


―――いや

そうなる前に…ここで死―――――

そんな考えが脳裏に浮かんだ瞬間………


アリシア「あ、そう言えば…貴方の名前、まだ―――」


どこからともなく放たれた矢が…アリシアの側頭部を貫いた。
69 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/16(金) 03:49:38.99 ID:FlwytLXdo
衛兵「くそっ!汚染種だ!!火を持って来い!」


視界が霞む……世界が揺れる……


「た、大変だ!!裏門から…裏門から大量の汚染種が!!」

セラ「なん……くそっ!撤退だ!村を捨てて逃げるぞ!!」


「カァール!!どこだ、カァール!!」

「お父さん!お父さんはどこなの!?」

「とにかく逃げろ!後で合流するんだ!!」


周囲から巻き起こる叫び声…そんな中………


アリシア「ぐぷ……げばぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぎゃらばが!!」

脳をやられ…奇声を上げるアリシアの背後から現れる……大きな…おぞましい肉の塊を見て………


それが…人間…汚染種だと理解した。


人間とは…人間と呼ばれるあの化け物達は一体何なのだろうか?

僕は…果たして何者なんだろうか?僕は…人間なのだろうか?あの化け物達の仲間なのだろうか?

そんな疑問が渦巻く中………


僕は………意識を失った。
70 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/16(金) 03:58:38.01 ID:FlwytLXdo
―――――――

―――夢……僕はまた夢を見た……


「皆様!この記念すべき日によくお越し下さいました!」

「遡る事100年前…始まりは――――――」


「―――――――――」


「これによりテラフォーミング計画は実用にこぎつき、今…人類は新たな大地を手に入れようとしているのです!」


―――そして夢は、ここでまた途切れた。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/16(金) 06:38:16.58 ID:RE9pQv0E0
乙!
特殊な抗体を持つか、そもそも受容体が違って何とかならないかなー?
72 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/17(土) 22:20:06.25 ID:u2tEVchgo
<嘘にならなくてネタバレにならない程度の次回予告>

第二話「APES OF THE PLANET」

揺れる馬車の中で目を覚ます僕。

………汚染種へと変貌してしまうまでの期限は3日間。

ワクチンを手に入れるために、遺跡と呼ばれる施設へと向かう僕達。


「W:1000011059151観察記録No.169」

「この現状が何者かに意図された物では無く、全て偶然の産物だと言うのなら…余りにも滑稽過ぎる」

「もし君が、この下らない世界からの脱却出来たのであれば…W:1000011058888の私を訪ねてくれ給え」


施設の最深部……

次々と汚染種と化して行く、集落の仲間達。


僕「あのさ……もし良かったらなんだけど……ここから生きて帰れたら、僕と――――」

セラ「…え?――――――――」


最後の希望を目の前にして……僕は…意識を失った。



第三話「Back to the Nature」

残された僅かな時間……

生き残った端末にアクセスを行い…そこから得られた、僅かな情報。


「我々は…このまま指を咥えて滅びを待つ訳にはいかない!」

「このアークオブゴフェルこそが、この地に遺された我等の最後の希望なのだ!」


手に入れた、最後のワクチン……最後の一本。

幕引きの末に現れたのは……ヨミミ族の少女達だった。



第四話「THE SALE」

地下鉄に乗り…ヨミミの集落へと向かう、僕とセラ…そして、ヨミミの少女達。


僕は、ヨミミの集落で予想外に手厚い歓迎を受け…そこで、彼女達の出生を知る。

そして、その真実は…僕の心を深く揺さぶった。


ミンチ「何か食べたい物はありませんか?」

僕「ここ最近レーションばっかりだったし…肉が食べたいかな」

ミンチ「かしこまりました。お任せ下さい!」


束の間の休息…

そして、ハイラント族の来訪。
73 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/17(土) 23:26:45.13 ID:u2tEVchgo
第五話「Day Hard」

ヨミミの集落を後にして、地下鉄でバベルの塔へと辿り着いた僕ら。

バベルの塔の地下深く…そこには、人間達の暮らす区画があり……

僕は………人間の少女、マリアと出会った。


マリア「私…明日大人になるの。もし良かったら、貴方にも参加して欲しいな」


そして僕は……彼女達が大人になると言う事の、意味を………

人間とは一体何なのかを……知った。



第六話「Broad Runner」

人間を管理する者…マザーコンピューターとファーザーコンピューター。

僕は…僕が信じる事…やるべき事を行い……

古びた通信室…そこで見付けた端末で、僕はテレサと言う少女に出会った。


テレサ「その端末の権限なら、遠隔操作でこっちの隔壁を開けられると思う。お願い、私をここから出して」

僕「えっと…ここの、隔壁解除って所で良いのかな?」


僕は…テレサを助けたい…そう思っただけだった。


テレサ「ありがとう。これで……やっと私、自由になれた」



第七話「Total Rewrite」

僕は………全てを思い出した。

そして………

何故…僕がここに居るのか…その訳を……


全てを………知った………
74 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/18(日) 00:00:01.44 ID:PaGzNxhZo
>39 それ…ラストが不評だった場合の、お気楽ハーレムなセルフパロで使おうと思ってたタイトル。
>43 とりあえず、古典的ではありますがこのテのジャンルの定番で開始してみました。
>44 この中の内幾つが形になるかは判りませんが、その際はまたお付き合い頂ければ幸いです。あと、パーツ集めは生パーツです。
>49 むしろ、シェンガオサイズのネルスキュラがヤド被ってる姿でおkです。
>50 ワークワークも、このテの退廃世界モノで。迷い込んだ人間が主人公でしたね。そう言う意味では近いと思います。
>55 この作品の技術水準は…ヒミツで!
>56 どこからどこまでが主人公の「世界」かにもよります。
>66 移住先が持って居ない知識で活躍するのは、この手の(以下略)
>71 残念ながら今回の主人公は、特殊能力も体質も無しの普通の人間です!

引き続き電波三発目、怪奇譚モノで『さわりおとし』
「因果応報」をテーマにした、オカルトストーリーです。
あと…『短編集』を謳いながらも『長編の序盤だけお披露目』になってしまっていたので
今回はちゃんと1話だけでも纏まるお話にしたいと思いますorz
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/18(日) 05:28:55.17 ID:K4aoeLuc0
乙!

『ヒトナシノヨ』 生き物にシビアな情勢の世界でしたねぇ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/18(日) 22:21:28.69 ID:BEmp5wVI0
ヒトデ(ry が何か知らない内に当たってたとはw
77 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/19(月) 22:22:27.60 ID:EHAA+31Go
この世には…まだまだ私達の知らない物が沢山あります。

それは時に現象で…それは時に仕組みで…それは時に人で…


そして、このお語は……

そんな未知の中の一つ…『さわり屋』の人達の物語です。
78 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/19(月) 22:50:37.19 ID:EHAA+31Go
アヤ「おっはは〜、マッキマキー」

マキ「わっ…ちょっ!アヤ?!どこ触ってるのよ!」


私の名前はマキ、16歳。高校一年生。

私に抱き着いているのは、友達のアヤ。同級生。


何て事無い、いつもの朝…何て事無い、いつものやりとり。

…少なくとも、私はそのつもりだったんだけど……


アヤ「あれ?何か顔色悪くない?」

気が付いた時には…何時の間にか、私の日常は少しずつずれ始めていたのでした。



  〜さわりおとし〜



マキ「そう言えば…何か身体が重くて、寒気がするかも」

アヤ「他には?何か無い?」

マキ「後は…あ、そうだ。何か最近…ツイてないってのも…」

アヤ「ついてないって…例えば?」


マキ「最近…痴漢によく遭うのよね」

アヤ「痴漢って…あぁでも、マキの事だもんね。他の人に迷惑かけたくないって、大人しくやられっ放しになってるんでしょ?」

マキ「うぐっ……まぁ、それはそうなんだけど……」


アヤ「そう言うヤツには、ガツンと一発くらわせてやらないとダメよ?黙ってても付け上がらせるだけなんだから」

マキ「うん……じゃぁ、次は頑張ってみる」


………と言ってはみたものの…多分、次も…そのまた次も、私は抵抗する事が出来ないと思う。

正直、あんな目に遭うのは嫌だけど…我慢すれば、他にの誰にも迷惑はかからない。

諦めと共にため息を一つ付いた時……


ほんの一瞬…こちらを見て居る女生徒の姿が見えた気がした。
79 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/19(月) 23:00:22.55 ID:EHAA+31Go
マキ「何だろう………」

夜…シャワーを浴びる私。


気のせいか、体中がだるくて…お湯を浴び続けて居るのに、どんどん身体が冷えて行くような感じがする。

そんな中…朝方にアヤと交わした会話を思い出した。


マキ「病院…予約しとこうかな。あんまり酷いようなら、明日は学校休んで行かないと……」
80 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/19(月) 23:15:05.31 ID:EHAA+31Go
がたんごとん…がたんごとん…と、電車が揺れる度に頭の中がぐらぐらと揺れる。


体調はすこぶる悪い…悪いけれども、ギリギリ授業を受けられなくも無いと言う微妙な所。

結局の所、私は病院に行かずに登校して…今こうして、電車に乗っている。


そして………


マキ「…………っ」

来た……

今日も来てしまった………


マキ「…………」

内股に始まり…腰回りへと滑る手。

ここ最近、私に手を出して来る…痴漢だ。


痴漢の手が触れた場所は、鳥肌が立つのと一緒に寒気が走り…

触られた場所が広がる度に、その寒気が全身に伝わって行く。


叫びたい…声を出して逃げ出したい。

でも………そんな事をすれば、きっと他の人達にも迷惑がかかる。

電車が止まって…駅員さんも出て来て……大きな騒ぎになるかも知れない。


そう考えると足がすくんで…

私という自我が、暗い底に沈み込んで行くのを感じた時……


  「この人!痴漢です!!」

聞き覚えのある声が私の背後から響き渡った。
81 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/19(月) 23:30:32.55 ID:EHAA+31Go
スーツ姿の男「え?ひぇっ!?」

続けて、私の斜め後ろから聞こえる男の人の声。

声の主である男の人は、おぼつかない足取りで後ろの車両へと逃げて行く。


そして……私は後ろを振り返り…


アヤ「まったく…だから言ったじゃない。ガツンと一発くらわせてやらないとダメって」

友達の…アヤの姿を見ました。


マキ「アヤ……アヤァ………」

アヤ「おー、よしよし。怖かったね、もう大丈夫だよ」

アヤに肩を抱かれ、泣きじゃくる私。


アヤの手がポンポンと私の頭を撫で……

カチリ……と、私の中で何かが動いたのを感じた。


ただ………


それが、正しい位置に戻ったのか…

それとも、更に間違った方向にずれてしまったのか…


当時の私には、それを知る由も無かったのです。
82 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/19(月) 23:50:48.41 ID:EHAA+31Go
アヤ「身体の方は大丈夫?」


マキ「うん……一人で帰れる程度には大丈夫」

アヤ「ゴメンね。アタシも一緒に行ってあげたいんだけど、どうしても外せない用事があって……」

マキ「うぅん、ありがと。その気持ちだけで嬉しいよ」


放課後……アヤと別れて下校する私。

身体は重たいけれど…それ以外は問題無い。

そう自分に言い聞かせながら、駅までの道を歩いていると……


ふと…トレンチコート姿の異様な男性とすれ違った。

そしてその男性は、私の方に振り向き………こう言ったのです。


「アンタ……さわられたね?」


マキ「………え?」

カチリ…カチリ…と私の中で動き続ける何か。


これが…私と『さわり屋』さんとの出会いでした。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/20(火) 05:18:32.18 ID:jczuZzIj0

さて、誰が何をどうしたからそうなったのやら
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/20(火) 07:03:26.66 ID:UsnMpIN90
鬼鮫「お体に触りますよ」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/20(火) 15:03:54.76 ID:UsnMpIN90
睨んでいた少女と痴漢野郎は関係あるんだろうかね?
86 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/20(火) 22:54:30.79 ID:gL8sesE4o
コートの男「って、ちょっと待って!?何で防犯ブザーに手をかけてんの!?ストップストップ!話を聞いて!!」

マキ「私…決めたんです。もう、やられっ放しじゃいないって…!」


コートの男「いやいやいや!何で俺が、成長の証を示すためのやられ悪役的な立ち位置なの前提で話が進んでんの!?」

マキ「だって、明らかに怪しいじゃないですか。こんな季節にコートなんて着た初対面の男の人がいきなり話しかけて来たんですよ?」

コートの男「ぐっ………いや、順を追って説明させてくれるか?とりあえず、人目があるからそのブザーは下ろして、な?」

マキ「だったら、話は聞きますけど…変な事をしたら叫びますよ」


………と言う事で、私は男の人の話を聞いてみる事にした。


コートの男「まずは自己紹介をしとこう。俺は…『さわり屋』をやっている………って、だからそのブザーを下ろして!?ねぇ!?」

マキ「『さわり屋』って…何なんですか、そのいかがわしさが満点通り越して振り切った名前」

さわり屋「オーケーオーケー…じゃぁそこから説明させて貰おう。この世には…『障り』と言う物が存在する」


マキ「『障り』……ですか?」


さわり屋「最近…体が妙に重かったり、寒気が走ったりしてないか?」

マキ「何でそれを……あ、顔に出てた?でも…多分風邪か何かだから、病院に行けば…」

さわり屋「病院に行っても治せやしない。気から来る病とでも診断されるのが関の山だろうな」


マキ「何でそんな事……」

さわり屋「それがさっき言った「障り」だからだ」

マキ「………え?」


さわり屋「で…そんな『障り』を『触って』落とす。それが『さわり屋』だ」

マキ「でも、そんな事…いきなり言われても、信じられる訳……」

さわり屋「……だろうな。だから、料金は落とし終えた後の成功報酬として貰う事にしてる。言質だけは先に貰うけどな」


マキ「あ、お金取るんですね」

さわり屋「そりゃぁ、慈善活動じゃないからな」


マキ「でも…今、2000円しか持って無いんですけど」

さわり屋「なっ……くっ、じゃ、じゃぁそれで良い。ったく……何で俺はいつっも貧乏クジばかり引くかなぁ」


こうして私は…半信半疑ながら、さわり屋さんのお世話になる事になった。

しかし今思うと…弱っていたとは言え、我ながら何とも不用心な行動でした。
87 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/20(火) 23:01:25.29 ID:gL8sesE4o
マキ「私の名前は赤神マキ、16歳です。高校一年生やってます。えっと、今日は……」


みるからに怪しい部屋の中…ベッドの上に座って、ビデオに向けて自己紹介する私。

何でも…さわりを落とした後に踏み倒す人が多いから、その予防策としての証拠撮りと、診断を兼ねているらしい。


マキ「2000円で…お触り…でしたっけ?今まで知らなかった世界?初めての体験をしちゃいます」

さわり屋「って、ちょぉっと待てぇぇぇ!!!??」

マキ「え?」


さわり屋「わざとか!?それわざとなの!?何だそのいかがわしいビデオのオープニングみたいな自己紹介!こんなん誰かに見られたら俺がお縄になるわ!!」

マキ「すみません、いかがわしいビデオとか詳しく無くて。さわり屋さんは詳しいんですか?」

さわり屋「…………」

さわり屋さんは押し黙り、そのまま固まってしまった。


さわり屋「いいから、こっちの言う内容に答えて貰えるかな?それじゃ撮り直すからな?」

あ、無かった事にして仕切り直したようだ。
88 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/20(火) 23:17:17.06 ID:gL8sesE4o
マキ「私の名前は赤神マキ16歳、解阪高校の一年生です。家族構成は、父・母・姉。交友関係は、友人が一人。あと―――」


さわり屋「最近何か変わった事は?特に、身体に触られるような事は無かったかい?」

マキ「それは…その……ここ最近、毎日のように痴漢に遭いましたが…何か関係あるんですか?」


さわり屋「『障り』と言う物は大抵『障り屋』が相手に触れる事で起こる物だ。だから多分……」

マキ「あの痴漢が…『障り屋』」


さわり屋「その痴漢の特徴とかは?」

マキ「すぐに逃げられてしまったので…スーツを着た男性という事以外は何も」

さわり屋「成程……ね。手掛かりは少ないが…後は実際におとしながら確認するとしよう」


そう言ってさわり屋さんは、包帯でぐるぐる巻きになった右手を私に向けた。

そして、右手からその包帯を解くと…


マキ「その手…」

包帯の下から現れた手は、赤黒く変色して…所々に、ひびのような亀裂が走っていた。


さわり屋「これかい?まぁ何て言うか…職人の手ってヤツかな。それはそうと…障りを落とすのに必要だから、血を一滴貰うぜ?」

マキ「え?あ…はい」

そう言ってさわり屋さんは私の手を取り…取り出した針を、私の親指に刺した。


マキ「っ…!」

そして今度は、血の付いた針を自分の右手に突き刺し……



  さわり屋「さぁ……さわりおとしの始まりだ」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/21(水) 10:35:46.10 ID:7Dh+wMax0
乙!
成功報酬ってんなら、今の手持ちからじゃなく後からちゃんと持ってこさせりゃ良いんじゃないのか?
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/21(水) 20:09:48.29 ID:Md6VZK0g0
触って落とす……トルコ風呂(意味深じゃない方)の垢すりとかもそんな感じすね
91 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/21(水) 23:30:35.99 ID:6dQRIxd6o
目を閉じ…ベッドの上に横になる私。


マキ「あの…私は何かしなくても良いんですか?」

さわり屋「あぁ、アンタはそのまま寝転がっててくれれば良い。あぁでも…」

マキ「でも…何ですか?」


さわり屋「アンタの場合…頭の天辺から膝まで、手広く触られてるみたいだからな。少し長く我慢して貰うかも知れねぇな」

マキ「我慢って…え?――――」


ビデオカメラから微かに聞こえて来る、さっきの録画の声。

さわり屋さんは、その映像を見ながら顔をしかめ……重苦しく声を絞り出した。


そして、さわり屋さんの手が私の頭に触れた…その瞬間………


マキ「ッ―――――!?」

触れられた場所を中心に…頭の中にまで響く電撃のような物が駆け抜けて行くのを感じた。


さわり屋「コイツは…思った以上に深くまで浸み込んでやがるな」

マキ「ァ……ツッ…………」


正座で痺れた足を掃除機で吸うような感覚……それを何十倍にもしたような物と表現でもすれば良いのだろうか?

頭の中がビリビリと痺れ、ズキズキと鈍い衝撃が駆け巡る。


そして、さわり屋さんの手が頭から首へと滑り……
92 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/21(水) 23:59:11.15 ID:6dQRIxd6o
マキ「ん……くっ………ふっ……」

首筋から指先まで…延髄を伝って全身に走る衝撃。

私は思わず声を上げ…それに伴ってか、さわり屋さんの手が止まる。


さわり屋「気休めか知れないが…一応の山場はここまでだ。アンタの場合、頭を最後に残しとくと危なかったからな」

と言って、今度はその手を肩に乗せるさわり屋さん。


マキ「っ…はぁっ……はぁっ……………んっ!!」

そこからさわり屋さんの手は、腕へ…肘へ…手へと滑り……

ピリピリと走る電気のような物が、身体の奥から正面へと這い出て行くような感覚を覚えた。


喉の奥から溢れた熱い息が、口の端から溢れ出る。

電気が走る度に、私の身体は小刻みに震え……

一際大き刺激が走った時、私の身体は大きく跳ねた。
93 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/22(木) 00:00:43.75 ID:O292AQ1no
さわり屋「さて…これで一丁上がり…と」

全身から力が抜け落ち…荒いだ息が零れ落ちる。


気が付けば私の全身は、噴き出た汗でぐっしょりと濡れ…

マキ「終わっ………て………あ…れ………?」


それまで感じて居た、不快な身体の重さと寒気は消え去り…

憑き物が落ちたような身体の軽さと、身体の奥から溢れ出る体温を実感する事が出来た。


さわり屋「どうだい?楽になったろ?」

そして、つい先程まで私の身体に触れて居たと思われる…さわり屋さんの手は……


マキ「その………手…」

手の平を中心に水泡が浮かび…袖の奥まで焼けただれたように赤く変色していた。


さわり屋「あぁ、これなら心配すんな。いつもの事だ」

マキ「いつもの事って…」

尋常ならざるその光景に、私はさわり屋さんの心配をせずには居られなかった。

けれど………


さわり屋「さぁこれで…タッチダウンだ」

マキ「タッチダウン……」

さわりおとしだから、タッチダウン…と言いたいのだろうけど………うん


つい先程までの心配など、どこ吹く風ぞ…

私はそこに触れるべきか否か迷った挙句、無言で生暖かい視線を送る事にした。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/22(木) 00:12:49.49 ID:q4Fo9EQI0
これ声だけ聞いたら間違いなく誤解される感じのアレやwww
95 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/22(木) 00:21:58.63 ID:O292AQ1no
さわり屋「ひぃ…ふぅ…よし、確かに。良かった……これで首の皮一枚何とか繋がったぁ…」


謝礼を支払い…それを確認するさわり屋さん。

さわり屋さんの安堵の表情から、余程困窮していた事が伺えるけれど…

金銭関係に首を突っ込むのも何なので、私はそれをスルーした。


さわり屋「そんじゃぁ後は……」

マキ「後って…まだ何かあるんですか?」


さわり屋「何かも何も…アンタを障ったヤツの事だ。解決してないだろ?」

マキ「あ、そう言えば……」


さわり屋「マッチポンプを疑われるのもアレだしな。アフターケアでその辺りも何とかしてやるって言ってんだ」

マキ「あ、ありがとうございます…」


さわり屋「で、例の痴漢だが……また手を出して来る可能性が高いか、ら囮作戦が有効だとは思うんだが……」

マキ「何か問題でも?」


さわり屋「いや、さすがに危ない橋を渡らせるのは―――」

マキ「いえ………私、やります。どうして私にあんな事をしたのか…知りたいです」


さわり屋「…………本当に良いんだな?」

マキ「………」


さわり屋「……判った、だったら明日から張り込むとしよう。アンタはいつも通りの時間に電車に乗って、またそこで落ち合おう」

マキ「………はい」


さわり屋「あ、そうだ。一つ確認しておきたいんだが―――――」


こうして……さわり屋さんは、原因究明へと向かってくれた。

けれど………


次の日、さわり屋さんが電車に現れる事はありませんでした。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 07:31:37.23 ID:D1iX6kAx0

どういった理由でだろうね?
97 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/24(土) 02:11:53.37 ID:fc0KoUQqo
無闇に人にさわる物じゃぁ無い…

そんな事は、子供だって知っている。


そして…それがさわり屋だとすれば、尚の事だ。


人にさわれば、人も自分の手に触れる。

それを忘れてさわり続ければ、いずれ自分もさわりに触れる。


そんな当たり前の事を忘れちまったのか…

あるいは……
98 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/24(土) 02:16:33.35 ID:fc0KoUQqo
さわり屋「成程…ね」

少し…ほんの少し、さわり程度の調べ物で、いとも簡単に真相へ辿り着く事が出来た。

しかしそれは、余りにも下らなく…余りにも馬鹿馬鹿しい。


何がこんな事を始め…何故こんな事になったのか…


いや、それは直接本人に聞くのが一番早いだろう。

俺は、マキの背後に居る…マキを障ろうとする障り屋に近付き……その手を掴んだ。


アヤ「……………」

さわり屋「………………」


その障り屋…マキの友人アヤは、ほんの一瞬驚き身じろぎするもすぐに諦め…そこから先は、言葉は不要。

お互いマキに気付かれぬよう、黙したまま車両を移り…人目に付かない手洗いの中へと場所を移した。
99 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2017/06/24(土) 02:30:00.62 ID:fc0KoUQqo
さわり屋「しっかし…よくもまぁ、今の今までばれなかった物だな。振り向かれでもしたら、それだけで一発アウトだろ」

アヤ「…マキの性格なら、振り向けやしないわよ。そのまま我慢し続けるのは判ってたから」

さわり屋「成程ね…そんだけマキちゃんの事を理解してる訳か」


アヤ「……そんな事より、今度は私の番。どうして…私が障り屋だって判ったの?」

さわり屋「頭の天辺が…な。髪フェチってセンも無い訳じゃぁ無いが、痴漢で頭を触るってのは考え難いからな」

アヤ「…………」


さわり屋「で、確認してみたんだが…案の定。誰がどこに触れたか、マキちゃんから貰った証言と照らし合わせた結果……な」

アヤ「あぁ…そう言う事……」


さわり屋「で、念のため調べてみたら…昨日以外もアンタはこの電車に乗っていた、と」

アヤ「そんなの別に…あぁでも、そこまで調べたんなら当然住所も知ってるわよね」

さわり屋「そう…アンタの住んでる所は逆方向。偶然乗り合わせる事なんてありえない。なのに…この電車に乗っていた。マキちゃんを障るためにな」

アヤ「そうよ…アンタの言う通り」


さわり屋「なぁアンタ…マキちゃんの友達なんだろ?何で障った?」

アヤ「そこまでは調べなかったんだ……でも、余計なお世話って言葉知ってる?って言うか、それを聞いてどうすんの?」

さわり屋「落とし所があれば、擦り合わせるって手もあるからな。どうしようも無い恨みがあるってんなら別だが…な」


アヤ「恨みなんて…別に無いわよ。全部、お金のため」

さわり屋「金のため…ねぇ。そいつは俺にはどうしようも無いが…その金は、友情よりも大切な物なのかい?」

アヤ「はん…何?同業者がそれを言うの?」


さわり屋「痛い所を突いて来る…と言ってやりたい所だが、俺はさわりおとし専門でね。障り専門のアンタと一緒にされたかぁ無いな」

アヤ「…アンタみたいな偽善者…死ぬ程反吐が出るわ。だったら良いわ、私が障り屋をやってる理由を教えてあげる。うちに来なさい」


こうして俺とアヤは、次の駅で電車を乗り換え……終始無言のまま、アヤの住むアパートへ向かった。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 06:33:15.67 ID:vbbNNLVu0
既に見つけてたからか〜
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/24(土) 07:21:19.49 ID:WhL8xgLC0
はてさて、どんなおぞましいものが待っているのやら
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