【ガンダムSEED DESTINY】シン「フリーダムは敵じゃない」

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85 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:05:28.52 ID:0mYK1JlO0
シン「議長!アスランは議長にお話したいことがあるみたいで…」

デュランダル「私に?」

シン「自分は一足先に、新しい機体の慣熟訓練に入るであります!」

デュランダル「そうか…許可する。頼りにしているよ、シン」

シン「は!失礼するであります!」

アスラン(シンのやつ…気をつかってくれたのか…)

シンが立ち去ったのを確認すると、デュランダルはアスランの方へ向き直った。

デュランダル「で、話というのは…?」
86 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:09:45.34 ID:0mYK1JlO0
シン「本当に凄い…!デスティニーの反応速度、信じられないレベルだ!」

シン「この機動性…インパルスどころか、フリーダムよりも上じゃないのか!?」

シュミレーターの中で夢中に機体を操るシンを、
けたたましく鳴り響く警告音が現実に引き戻した。

シン「なんだ!?」

レイ「シン、デスティニーを出せ!」

シン「レイ!一体なにが…」

今日受領したばかりの機体をいきなり発進させろとは、どういう事態なのだ?
面食らうシンに、レイが告げる。

レイ「敵の工作員が新型…レジェンドを奪って逃走した!」

シン「なんだって!?…アスランは!?」
87 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:11:39.27 ID:0mYK1JlO0
レイ「敵はそのアスラン・ザラだ!!」

シン「え…!?」

一瞬、レイがなにを言っているのか理解できずに動きを止める。
しかし、レイがこんなタチの悪い冗談を言うような男ではないことを、
士官学校時代からの友人であるシンが一番理解していた。

シン「なにか…理由があるはずだ!」

確かめなければならない。
アスラン・ザラになにがあったのかを、そしてその真意を。
88 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:13:35.13 ID:0mYK1JlO0
レジェンドのレーダーに友軍機の接近を確認。
モニターに映し出されるのはデスティニーと、それに追随するフォースインパルスの姿。

アスラン「デスティニー…シンか!インパルスには…?」

シン「アスラン!なにをやってんだよ、アンタは!?」

アスラン「済まないと思っている!だが、お前に相談しているだけの猶予はなかった!」

アスラン「俺は議長に用済みと判断され、消される寸前だった!」

シン「なっ…!?」

アスラン「不要になったものは排除する…それが彼の本性だ!"都合の悪い映像を消す"ように俺を!」

レイ「真に受けるな!裏切り者の戯言だ!」

アスラン(インパルスに乗っているのは…レイか!)
89 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:15:50.77 ID:0mYK1JlO0
アスラン「聞けシン!議長の言葉は正しく、心地よく聞こえるかもしれない!」

アスラン「だが彼の言葉は"手段"だ!そこに誠意や信頼は無い!」

アスラン「彼の思い描く"平和な世界"は、俺たちが望むそれとはかけ離れたものだ!」

シン「え…?」

レイ「シン、聞くな!」

アスラン「人の適正ごとに役割が割り振られ、歯車として機能する世界!
人が人でなくなる世界…それが議長の作り出そうとしているものの正体だ!」

レイ「ええい、黙れッ!」

背中のビームサーベルを引き抜き、レジェンドに斬りかかるインパルス。

アスラン「レイ、やめろ!君を討ちたくなどない!」

迎え撃つレジェンドのビームジャベリンが、インパルスの右腕をサーベルごと斬り飛ばした。

レイ「速い…!ちぃっ!マシンポテンシャルが違いすぎるか…!」
90 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:18:08.56 ID:0mYK1JlO0
シン「役割…歯車…?」

シン「そんなの…ステラに兵士の役割を押し付けた、ロゴスのやつらと同じじゃないか!」

レイ「シン、それは違う!議長は!」

アスラン「シン、お前も一緒に来るんだ!」

レイ「アスランは既に少し錯乱している!まともに言うことを聞くな!」

アスラン「俺は錯乱などしていない!シン、議長に踊らされては駄目だ!
お前のその力を、意思を、利用されるな!」

レイ「シンを惑わすな!裏切り者が…!」

左腕でライフルを構え、その引き金に指をかけるインパルス。
91 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:20:08.41 ID:0mYK1JlO0
シン「レイ…ごめん、俺は…!」

レジェンドを庇うように、デスティニーが立ちふさがる。

レイ「シン…!?」

アスランの言葉にはなんの根拠もなかった。
だがシンにとって、それがアスランの言葉であるということだけで、信じるに値するものだった。

レイ「議長よりも…俺よりも、アスランを信じるというのか!お前はっ!!」

シン「そうじゃないよレイ…!俺は…!」

レイ「…くっ!」

構えていたライフルを降ろす。
インパルスでは、デスティニーとレジェンドの二機を押さえることなど到底不可能だと、レイは理解していた。
92 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:23:28.16 ID:0mYK1JlO0
レイ「どこへなりとも行くがいい…」

シン「レイ…」

レイ「シン…俺はお前を許さない。絶対に…!」

恐ろしいほどに冷ややかな声が、デスティニーのコクピットにこだまする。

シン「っ…!」

その声の鋭さに、シンは背筋が凍るような感覚を覚える。
そしてそれ以上に、友人から発せられた明確な憎悪に、どうしようもない悲しみが込み上げてくる。

シン「ごめん…でも、俺は…」
93 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:24:33.19 ID:0mYK1JlO0
飛び去って行くレジェンドとデスティニー。
その背中を、レイはモニター越しに睨み続けた。

レイ「…ミネルバに通達。シン・アスカ、アスラン・ザラの両名は…」

レイ「ザフトを…裏切った」
94 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:26:25.30 ID:0mYK1JlO0
シン「アークエンジェルの元へ向かうんですか?」

アスラン「ああ」

シン「…向こうへ着いたら、詳しいことを説明してくださいよ」

アスラン「…すまん。お前にも、裏切り者の汚名を着せることになった」

アスラン「だが、これ以上…俺たちが議長に利用されるなんてことは、あっちゃいけない」

シン「…選んだのは俺自身です。あなたが謝ることじゃない」

シン「ただ…ルナ、ヨウラン、ヴィーノ…あいつらには、いつか謝る機会があるといいけど…」

シン「…レイにも」
95 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:28:23.10 ID:0mYK1JlO0
デュランダルへの報告を済ませたレイは、基地内に用意された部屋ではなく、
ミネルバ艦内の私室へと戻ってきていた。
シンと共同で使用していた部屋。
まだシンの私物は撤去されていない。
ふと、デスクの上にピンク色の端末があるのに気が付いた。

レイ「これは…」

以前、妹の形見だと話していた、小さくて丸みを帯びた携帯電話。
アカデミー時代、シンはよくこれを他の生徒からかわれて、そのたびに喧嘩に発展していた。

レイ「あの馬鹿、こんな大事なものを…」

レイ「……」

いや、当然だ。
彼は、また此処に戻ってくるつもりで出撃したのだから。
96 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:30:06.39 ID:0mYK1JlO0
レイ「なぜだ…」

『そんなの…ステラに兵士の役割を押し付けた、ロゴスのやつらと同じじゃないか!』

シンの悲痛な叫びが、脳裏に焼き付いて離れない。

レイ「違う…ギルの世界は…俺やステラのような人間が生み出されない世界なのに…」

レイ「戦争の無い世界…それはシン、お前が他の誰より望んでいたものじゃないのか…」

固く握りしめたその拳を、何処に振り下ろせばいいのか。
それすらもわからないまま、レイは立ち尽くすしかなかった。
97 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/01(木) 18:33:53.16 ID:0mYK1JlO0
今日はここまでです。
シンとアスランのエース二人に加えて新型二機も失った議長のライフはとっくに0よ。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 19:06:19.81 ID:xpEGw3xno
議長はただでは死なないだろう
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 19:40:10.61 ID:olP11Vqc0
Lは議長にも救いがあるというオマケまで付いてたよね
さりげなく自画自賛してたのは笑ったけど
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 20:39:59.67 ID:DSYV1cK0o
何だかんだでスパロボで美味しい役目を持ってる議長
Zのフロスト兄弟との確執とか
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 23:58:14.03 ID:QpLoKJfx0
アスラン「ジャスティスくれなかったのが一番の不満でした」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 05:31:20.09 ID:iroAslVbo
どこまで知ってたかはわからんが、親父を影で操って暴走させた奴の機体の後継機はあんまり嬉しくないよな
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 10:01:15.79 ID:+PZ5HHCA0
隠者は誰が乗るんだろ。
てかアスランにドラグーン使えるのかな
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 10:39:01.00 ID:/+I8ZU/mo
あの議長がアスラン用にって用意したんだから適性はあるんだろう
でも本人はもっと接近戦がしたかった
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 10:39:16.62 ID:FgRB/5Z1o
伝説誰が乗るんや・・・?
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 11:12:33.36 ID:tRb3IFV70
ステラじゃね
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 12:18:09.94 ID:SA0YHpaEO
むしろステラが隠者に乗る可能性
接近戦はガイアで慣れてそうだし
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 13:40:04.78 ID:XyTEDbWwO
アスラン隠者おっさんレジェンドでいいんやないの。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 16:18:38.51 ID:2nX9U6Ylo
まだおっさん連合にいるし
110 : ◆BRRGNconG6 [sage]:2017/06/02(金) 18:31:44.72 ID:4yWaJ1jA0
>>84でレジェンドの色に触れてますが、電源落ちてるのにVPSの色がわかるわけないですね。
他にもいろいろミスってたら申し訳ない。
今日中に次の投下ができるかは怪しいです。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 20:36:25.67 ID:XyTEDbWwO
>>109
でもアスラン専用の隠者蹴ってまでレジェンドに乗る必要はなくね?戦闘スタイル的にもさ。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 20:45:37.76 ID:+ZSZhFqGO
やかましい
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 22:30:55.65 ID:lPclVS48O
読者様は自分の思いどおりにならないと気がすまないのか
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 00:02:10.15 ID:ckq6xKWA0
むしろ戦闘スタイルだけならキラの方がよっぽど近接機体向きな気が
115 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 01:41:28.84 ID:3oNNK+Zx0
再開します。
116 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 01:43:01.68 ID:3oNNK+Zx0
連絡をとり、無事にアークエンジェルと合流したシンとアスラン。
シンとアークエンジェルクルーは互いに軽い自己紹介を済ませ、
現在の状況を確認する。

マルキオという名の人物が地球連合軍の技術に詳しく、
彼が持つ医療施設にステラは預けられたということ。
彼女の容態が回復次第、連絡をとることも可能ということ。

アスランの口から語られる脱走に至るまでの経緯。
シンが格納庫を去ったあと、デュランダルとの会話の中で、
ラクス・クラインの暗殺が彼の手引きであったことを確信したこと。

以前アスランがアークエンジェルクルーと密会していたときの写真を隠し撮りされており、
それを理由に罪状をでっちあげられて処分されるはずだったところを、
ミーア・キャンベルという少女のおかげで事前に危機を察知し、脱出できたこと。

自分が不要な駒として切り捨てられたことで、
彼の語った"平和な世界"に対する違和感の正体に気づいたこと。

腑に落ちた、といった表情のキラに対し、シンはショックを隠し切れずにいた。
117 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 01:45:13.75 ID:3oNNK+Zx0
シン「議長が…アスランを殺そうとしたなんて…」

シン「あんなに優しくて、穏やかな人が…そんな…」

デュランダルの裏の顔。
いや、邪魔者は容赦なく排除するその冷徹さこそが、彼の本性なのかもしれない。
シンは空恐ろしい感覚に身を震わせた。
118 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 01:46:37.80 ID:3oNNK+Zx0
アスラン「俺も、信じたかった…俺と父が道を誤ったザフトで、
再び名を呼んでくれたあの人を」

アスラン「だが…あの人が必要としたのは俺という人間じゃない。
その力だけだった」

カガリ「アスラン…」

アスラン「仮面をつけているんだ、議長は」

アスラン「人を信用させ、自分にとって都合のいい駒に仕立て上げるためのな」

アスラン「俺もまんまと騙されていた…彼の志は、自分と同じだと錯覚していた」

キラ「僕はあんなことがあったから、最初から疑っていたけどね」

シン「……」
119 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 01:48:12.92 ID:3oNNK+Zx0
キラ「…あ、ステラさんのことだけど、順調に回復に向かっているみたいだよ」

シン「良かった…でも、連合の技術を知ってるって…マルキオって人、何者なんです?」

キラ「うーん、とにかく物知りなんだよね。僕もときどき驚かされるんだけど…
まあ、マルキオ導師は信用できる人だから、安心してくれていいよ」

シン「キラさんがそういうなら…」

カガリがこっそりとキラに耳うちする。

カガリ「お前、ずいぶん信頼されてるんだな…」

キラ「そうかな?」
120 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 01:51:47.01 ID:3oNNK+Zx0
カガリ「いや、そうだろ…」

シン「なにコソコソ話してるんだよ、カガリは」

カガリ「なっ!?お、お前!キラはさん付けなのになぜ私は呼び捨てなんだ!?」

シン「別にいいじゃんか。年も同じぐらいだろ?」

カガリ「私はキラのお姉さんなんだぞ!」

シン「えっ」

カガリ「えっ」

口は半開きのまま、シンはキラに視線を向ける。

キラ「僕たち双子なんだよ。姉っていうのは、カガリの自称だけどね」

カガリ「私が姉といったら姉だ!」

キラ「あ、うん。僕もそれでいいよ」

カガリ「よし」

シン(キラさんの方が大人だ…)
121 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 01:55:10.71 ID:3oNNK+Zx0
アスラン「それで、俺たちはこれからどう動く?」

カガリ「ああ…私は、これからオーブ政府に戻るつもりだ」

カガリ「ロゴス幹部の中に、セイランと関わりのあるものがいたんだ。
ロゴスが世界の敵として認識された今、これを無視するわけにはいかない」

シン「ロゴスと!?」

カガリ「ああ。もう二度と、オーブを間違った道に進ませるわけにはいかない」

カガリ「そしてそれは、私たちも同じだ。アスラン、お前にも言われたけど、
あんなやり方で戦闘を止めようとするのは、無謀だったと思う」

アスラン「カガリ…」

カガリ「犠牲も多く出た。彼らに報いるためにも、私は戻らなきゃ」

アスラン「…そうだな。それがいい」
122 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 01:58:14.37 ID:3oNNK+Zx0
シン「変わったな、アンタは。もちろん、いい意味で」

カガリ「シン、お前…」

シン「俺の力が必要なら遠慮なく言ってくれ」

シン「なにかあったら、俺が絶対、アンタを守るから!」

カガリ「!?」

キラ「へえ…」

アスラン「む…」

シン「?」
123 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:00:06.10 ID:3oNNK+Zx0
カガリ「た、頼りにさせてもらう。…が、そういう台詞は一番大切な人に"だけ"言うべきだな!」

だけ、の部分を強調してカガリが言う。
シンは、そこでようやく自分の失言に気づき、顔を赤らめた。

キラ「そうそう。それにカガリを守るのは、アスランの役目だよね」

アスラン「お、おい…からかうなよ」

シン「え?二人ってそういう関係?ラクス・クラインと婚約してるんじゃ…」
124 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:02:00.60 ID:3oNNK+Zx0
アスラン「まあ…色々あってな。ラクスのことは、俺よりキラの方がよくわかってるよ」

キラ「僕たちはべつにそういう関係じゃないよ?」

カガリ「え?だって一緒に住んでたろ?」

キラ「僕はカガリとも一緒に住めるけど?それと一緒だよ」

カガリ「お前ってやつは…ラクスは苦労しそうだな…」

シン「あれ?でもラクス・クラインって今、議長と一緒にジブラルタル基地に…」

アスラン「彼女はラクスじゃない。ミーア・キャンベルだ」

アスラン「俺の…命の恩人だよ」

アスラン「本当は、彼女も此処に連れてきたかったんだが…」
125 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:03:30.52 ID:3oNNK+Zx0
シン「ええと…ラクスがミーアで…んん?」

アスラン「そういえば、ラクスは?姿が見えないが…」

キラ「本物のラクスなら、今宇宙にいるよ」

アスラン「なにしに宇宙へ?」

キラ「それは議長の−−」
126 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:04:26.41 ID:3oNNK+Zx0
ミリアリア「ファクトリーより緊急通信!」

マリュー「繋いで!」

モニターに映し出されたのは、額から血を流した隻眼の男だった。

キラ「バルトフェルドさん!?一体なにが…!」

バルトフェルド『謎の部隊に襲撃を受けた…ラクスとエターナルは死守したが、
少し不味いことになってな…』
127 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:06:25.45 ID:3oNNK+Zx0
ファクトリーが正体不明の部隊に襲撃を受けてから数日後。
遂に、ザフト軍とロゴスから離反した地球連合の義勇軍からなる、
対ロゴス連合軍によるロゴス掃滅作戦『ラグナロク』が決行。
対するロゴス側は、ザフトからの降伏勧告を無視、奇襲をかける。
ロゴスの先制攻撃によって、戦いの火蓋は切って落とされたのだった。

先制攻撃を受け、対ロゴス連合軍は混乱。降下部隊による増援も全滅。
そしてよりにもよってロゴス側には、
ベルリンの街を蹂躙した悪夢の巨大兵器、デストロイの姿があった。

既に後方の地球連合軍は後退を始めている。
タリアは悟った。これはもう、事実上の敗北だと。
128 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:08:54.35 ID:3oNNK+Zx0
タリア「議長、一度撤退を!」

レイ『必要ありません』

タリア「レイ!?」

ブリッジに通信が入る、モニターに映し出されたレイの表情は、
いつもとなんら変わりない、冷静そのものだった。

レイ『艦長、発進許可を。すぐに終わらせます』

タリア「待って、今は!」

デュランダル「頼む」

耳を疑い、タリアは艦長席のデュランダルへ振り返る。

この混乱の中にあって、艦内にいる人間の中でただ一人、
デュランダルだけが落ち着き払い、
その顔にはうっすらと笑みすら浮かべているようにも見えた。
129 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:09:28.40 ID:3oNNK+Zx0
デュランダル「タリア、レイの言うとおりに」

表情こそ穏やかだが、その言葉には有無を言わせぬ力があった。

タリア「…了解、発進準備を!」

タリア(大丈夫なの、レイ…シンがいなくなって、
一番ショックを受けていたのはあなたなのに…)
130 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:12:16.31 ID:3oNNK+Zx0
レイ「レイ・ザ・バレル…発進するッ!」

ミネルバから飛び出したMS。その機体色は雪白に染め上がり、煌びやかな黄金色のフレームを輝かせる。

モニターに映る敵機の姿を確認し、ネオは驚愕した。

ネオ「あの機体は…!?アークエンジェルが、ザフトと組んだってのか!?」

まるで、審判を下す天使と錯覚するほどの冷厳さを放つその機体は、
巨大な翼を広げ、ロゴスのMS群に向けて飛翔した。
131 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:14:33.02 ID:3oNNK+Zx0
両腕に携えたビームライフルの銃口の先で、敵機が次々と爆炎に包まれる。
コクピットを的確に撃ちぬいていくレイ。
その射撃の正確さは、もはやスナイパーの狙撃の域にあった。

だが、ロゴスの物量は圧倒的。一機倒せば入れ替わるように、また別の機体が立ち塞がる。

レイ「数ばかり揃えたところで…この機体の前では無意味だ!」

レイの操る機体の腹部に、光が収束していく。

レイ「貴様らは議長の慈悲を踏みにじった…その罪、命で贖え!」

収束した光が弾け、巨大な熱の嵐となって眼前の敵を灼き尽くす。
それは遠方のデストロイまで届く程の、長大な一撃。

その射線上にあったものは、全てが消滅していた。
陽電子リフレクターを展開していたデストロイと、
その後ろに退避していたネオの機体を除いては。

スティング「おいおい…なんつー火力だよ」

スティング「けどなぁ…俺のかわいい"バケモノ"には通じねえよ!!」

ウィンダムの群れは掠っただけで火花を散らせ、爆散するほどの圧倒的火力。
それを物ともしない、愛機の堅牢さを誇るスティング。
132 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:17:33.01 ID:3oNNK+Zx0
レイ「ふん…」

しかし、それも想定通りだと言わんばかりに、レイは落ち着き払っていた。

レイ「ミネルバ、ソードシルエットの射出を。あの巨体には対艦刀が有効だ」

連結させたエクスカリバーを右手に、フラッシュエッジを左手に握り、
デストロイ目掛けて、一直線に突撃をかける。

スティング「流石のスピードじゃねえか、天使様よォ!ネオ、援護しろ!」

ネオ「くっ…!皆、俺に続け!あれを堕とすぞ!」

ネオの指揮の下、ウィンダム部隊が襲いかかる。

レイ「諦めの悪い…」

フラッシュエッジをウィンダムの群れに向けて解き放つ。数機がそのままビームの刃に切り刻まれて四散する。
避けた機体もエクスカリバーの間合いに誘い込まれ、瞬く間に両断された。

ネオ「ちぃっ!やってくれるな!」

レイ「残るは隊長機のみ…撃破する!」
133 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:19:28.41 ID:3oNNK+Zx0
ネオ「奪うだけ奪い、守るべきものも守れず、約束も破った!」

ネオ「それでもまだ俺は生きている!生き残っちまってる!」

ネオ「なら、せめてスティングだけは…守ってみせる!」

レイ「このプレッシャーは…不愉快だッ!」

距離を離そうとするレイ機を、ネオのウィンダムが猛追する。

ネオ「逃がさんッ!」

レイ「ええいっ…!」
134 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:21:00.87 ID:3oNNK+Zx0
ネオ「スティング!俺諸共でいい!撃てぇッ!!」

レイ「くっ…!?」

ネオ(あれ…前にもこんなこと、なかったか…?)

スティング「うおぉらぁぁぁぁッ!!」

強化され、その理性すら崩壊しかけているスティングは、
なんの躊躇いもなく引き金を引いた。

ムウ(そうだ…俺は…ネオ・ロアノークなんかじゃ…)
135 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:23:19.72 ID:3oNNK+Zx0
巨大な爆発が起き、スティングの瞳はその煌きに見惚れていた。

スティング「ヒャハハハハ!最高だ!俺のデストロイこそが最強なんだ!!」

炎を映し出していたモニターに一瞬白い光が差し込んだ。直後、映像がブツリと途切れる。
自分の体が、なにか巨大なものに引き裂かれていることに気が付くと同時に、
スティングは絶命していた。

レイ「今の俺にできるのは…君を眠らせてやることだけだ」

レイ「だが、必ず実現してみせる。俺や君のような存在が、二度と生み出されない世界を…」

レイ「許せ」

エクスカリバーをデストロイからゆっくりと引き抜き、機体を離脱させる。
三十メートルを超える漆黒の巨躯はゆっくりと崩れ落ち、
高々と炎を噴き上げ、基地施設を巻き込みながら爆散した。
136 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:28:39.04 ID:3oNNK+Zx0
それから戦闘終了までは、呆気ないものだった。
敵の巨大兵器は五機、その全てがレイの手によって葬られた。
それによって、対ロゴス連合は士気を取り戻し、逆にロゴスの部隊は戦意を喪失。
残されたウィンダムやユークリッドの部隊も、散り散りになり後退していった。

メイリン「入電です!敵軍司令部より白旗を確認、戦闘続行の意思無き模様!」

デュランダル「フッ…確認を急いでくれ!」

タリア「……嘘でしょう?」

タリアは、目の前で起きた事態が信じられずに、呆然としていた。
裏で戦争を操り、世界を混迷に陥れる死の商人『ロゴス』
その存在に終止符を打ったのは、たった一機のMSと一人の少年。

アーサー「あの状況を一人でひっくり返すなんて!これは凄いですよレイ!彼は英雄だ!!」

ザフト軍の手によってファクトリーから強奪された最新鋭MS、ストライクフリーダム。
その恐るべき性能は、レイ・ザ・バレルというパイロットによって最大限に発揮されたのだった。
137 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/03(土) 02:29:46.62 ID:3oNNK+Zx0
今回はここまでになります。
レイくん頑張った。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 02:40:36.48 ID:nnMAp1aQ0
キラ君ヤバいじゃんと思ったけどストフリなんて量産型フリーダムの強化型ってだけだし原型フリーダムもピンピンしてるし割と大丈夫か
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 02:45:56.75 ID:7UgiuAK90
本来ストフリって量産される予定だったんだよなぁ...
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 02:55:16.10 ID:93nL1Nhz0
その量産型フリーダムを強化した結果がフリーダムの数倍の性能なんですが…
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 06:52:33.67 ID:D5wvvA1cO
ストフリが敵に回る展開、種死とアムドライバーのクロスSSを思い出した
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 10:36:30.27 ID:YJsb6GzAo
量産型フリーダムをキラ用に徹底的に改造した結果がストフリだったっけ?
フリーダムはこの時代だと既に型落ちで量産機ならともかく最新鋭機にはさすがにきついって設定だっけか
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 10:38:44.09 ID:hsQWOlV0o
ちゃっかりメイリンがミネルバに残ったままだ・・・


これムゥ死亡?
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 13:15:50.86 ID:RoXyIFsRO
ムゥは周りがどうなろうと醜く生きるよ
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 17:56:22.84 ID:AwAZDobC0
クルーゼもGジェネでフリーダム乗ってきてたな
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 16:44:49.75 ID:HwUcXWz4o
>>145
俺も思い出したわ、あれは楽しめた良作だった
147 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:32:56.56 ID:B8pEosju0
短いですが投下します。
148 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:35:40.31 ID:B8pEosju0
ミネルバへとストライクフリーダムを着艦させ、コクピットから降りるレイ。
英雄の凱旋を出迎えたのは、僚友たちの拍手と歓声だった。

メイリン「おかえりなさい!大活躍だったね!」

ヴィーノ「すげえ!すげえよレイ!」

ヨウラン「よっ!ミネルバのスーパーエース!」

レイ「ああ、ありがとう」

レイ「…ルナマリアの姿がないようだが?」

メイリン「あ、うん…またいつもの場所だと思う」

レイ「そうか…」

メイリン「お姉ちゃん、あの日からずっとあの調子で…心配になっちゃう」

レイ「少し様子を見てこよう」
149 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:38:31.65 ID:B8pEosju0
艦内のシュミレータールームへと向かう。
ドアを開くと、バトルシュミレーターにかじりつくルナマリアの姿があった。

レイ「フッ…メイリンの言った通りだな」

ルナマリア「レイ…お疲れ様。討ったのね、ロゴスを」

レイ「ああ、呆気ないものだった。お前が出るまでもなかったな」

ルナマリア「ロゴスを討った。でも…」

レイ「ああ、まだ終わってはいない」

レイ「シンとアスランは、議長の理想を否定してザフトを抜けた。
そして、彼らが向かったのは間違いなく…」

ルナマリア「アークエンジェル…!」

レイ「そうだ。奴らとは、必ずぶつかることになる」
150 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:40:31.03 ID:B8pEosju0
ルナマリア「…それまでに、新しい私の機体、必ずものにしてみせるわ」

ルナマリア「それで、あいつを…シンを一発ぶん殴って、
目を覚まさせて、連れて帰るのよ。ミネルバに」

レイ「ルナマリア…」

シンに裏切られたあの日、レイは絶望し、彼を許さないと誓った。
だが、目の前の彼女は言うのだ。彼を諦めないと。
自分達の正しさを示し、彼を取り戻すのだと。

レイ「フ…その意気だ、ルナマリア」

レイは、バトルシュミレーターの座席に腰を下ろし、
操縦桿を握る。

ルナマリア「レイ…?」

レイ「訓練、まだ続けるなら付き合おう。データが相手では歯ごたえがないだろう」

ルナマリア「え?でもさっき出撃したばかりじゃない。無理しないで休んで」

レイ「心配するな。言ったろう?呆気ないものだった、とな」

ルナマリア「もう…手加減なしだからね!」

レイ「当然だ。簡単にやられてくれるなよ?」

ルナマリア「その余裕、いつまでもつかしらっ!」
151 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:44:14.55 ID:B8pEosju0
ミネルバに着任してすぐの頃、レイはデュランダルに、ある質問をした。

デュランダル『着任おめでとう、レイ。これで君も一人前のパイロットだな』

レイ『ギル…ひとつお聞きしてもよろしいですか?』

デュランダル『なんだね?』

レイ『なぜ、彼に…』

デュランダル『ああ…インパルスのことか』

デュランダル『彼の資質を見込んでの決定だよ』

デュランダル『真の平和を実現するためには、いずれ彼の力が必要となるはずだからね』

レイ(ギルの言うことは正しかった。再び起きた戦乱の中で、
シンは目覚ましい活躍を見せ、幾度もミネルバの窮地を救った)

レイ(芽生えた嫉妬心は、日に日に薄らいでいった。
あいつなら、世界を変えてくれる。本気でそう思った)
152 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:46:14.26 ID:B8pEosju0
ルナマリア「あーっ!負けたー!もう一回お願い!」

レイ「ああ、気が済むまで付き合おう」

レイ(シン…俺はお前を許さない。そのことに変わりはない)

レイ(だが、お前にも見せてやりたいんだ。議長の下に築かれる、
平和な世界、戦争の無い世界、誰もが幸せを享受できる世界)

レイ(だから、シン。俺たちで、お前を取り戻す…!)

新たな決意と共に、レイは再び操縦桿を握りしめた。
153 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:48:45.65 ID:B8pEosju0
オーブへと戻ったカガリとアークエンジェル。
ロゴスとの繋がりが明るみに出たセイラン家は、
五大氏族から追放、国家反逆罪で拘束され、
カガリは再び国家元首の座に就くこととなった。
その後、正式にオーブ所属艦となったアークエンジェルは、
カガリから黄金のMS"アカツキ"を託され、
宇宙へと上がり、エターナルと合流したのだった。

キラ「ラクス、バルトフェルドさん、無事でよかった…」

バルトフェルド「だが、虎の子の新型を奪われちまった」

ラクス「仕方ありませんわ…エターナルが守れただけでもよしといたしましょう」

シン(この人が本物のラクス・クライン…議長と一緒にいた人とは、随分雰囲気が違うな…)
154 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:50:33.94 ID:B8pEosju0
ラクス「キラ、そちらの方は…?」

キラ「紹介するよ、僕たちの新しい仲間」

シン「シン・アスカです」

ラクス「ラクス・クラインですわ」

バルトフェルド「アンドリュー・バルトフェルドだ」

バルトフェルド「その制服、ザフトレッドか…なにか縁を感じるねえ」

シン「縁…?」

バルトフェルド「いやなに、こちらの話さ」

バルトフェルド(元地球連合の艦に、こうもザフトにいた人間が集まってくるというのは、
なんとも奇妙で、面白くもある…)

バルトフェルド「新しい仲間に、歓迎の一杯でも淹れてやりたいんだがね。
まずは状況を確認したい」
155 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:54:23.05 ID:B8pEosju0
バルトフェルド「ファクトリーを襲撃した奴らの正体だが…
ザフト、或いはそれと繋がりのある組織の可能性が高い」

シン「え…」

バルトフェルド「ヘブンズベースで行われたロゴス討伐作戦、
偵察していたキサカから届いた映像で確認したが…」

バルトフェルド「ミネルバから発進したMS、あれは奪われた新型に間違いない」

キラ「やっぱり、議長…」

バルトフェルド「ニュースはもうひとつだ。
奪われたものは大きいが、収穫もあってな」

バルトフェルド「デュランダルの計画…その尻尾、ようやく掴めた」
156 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:57:20.05 ID:B8pEosju0
シン「メンデルを調査していたんですよね?」

バルトフェルド「デュランダルは遺伝子研究のエキスパート。
ならば、メンデルとも関わりがあると考えたわけよ」

アスラン「コロニーメンデル…そこに一体なにが?」

ラクス「わたくしたちがメンデルで見つけたものは、この一冊のノートです」

ラクス「議長の、かつての同僚が記していたものと思われます」

アスランはノートを受け取り、ページをめくっていく。

アスラン「デスティニー・プラン…?」
157 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:01:11.06 ID:B8pEosju0
ラクス「アスラン、なにか思い当たることは?」

アスラン「…ある。これは、議長は言っていたことと一致する内容だ」

アスラン「彼は言っていた…人間は自らの能力を知り、
その役割を果たして生きることこそが幸福なのだと」

アスラン「そんな世界なら、戦争は起こらないと」

マリュー「能力を知るというのは、やっぱり彼の専門分野である、
遺伝子で、ということかしら?」

アスラン「ええ、恐らくは」

アスラン「このデスティニー・プランが、そんな世界を実現する手段だということか…」
158 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:03:38.09 ID:B8pEosju0
キラ「…できるから、その能力があるから、そう生きる」

キラ「それって、本当に幸せなのかな…?」

アスラン「俺はそうは思わない。だが…」

『私はラクスなの!ラクスがいい!』

ミーアの言葉が脳裏をよぎる。

アスラン「そう思う人間も、いるのかもしれない…」

シン「アスラン…?」

バルトフェルド「ヘブンズベースの陥落、ジブリールの拘束により、
ロゴスは事実上の解体…デュランダルの言う"世界の敵"はもういない」

バルトフェルド「奴め…これからどう動く?」

それから数日後、デュランダルはデスティニー・プランの導入実行を宣言。
その傍らには、ミーア・キャンベルの姿もあった。
159 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:05:59.30 ID:B8pEosju0
シン「デスティニー・プラン…突然こんなこと言われたって、世界は困惑するだけなんじゃ…」

マリュー「いいえ、シンくん。それがそうとも限らないのよ」

シン「どういうことです?」

マリュー「地球の各国は、戦争とロゴス狩りの混乱による傷も癒えていない。
誰もが平穏な生活を渇望している…そんな中で、ロゴスを討ち、
今や世界のリーダーとなった議長が提唱する、平和のためのプラン…抗い難いでしょうね」

バルトフェルド「加えてラクス・クラインというカリスマにそれを支持させる…この上なく有効な戦略だ」

キラ「こっちが本物のラクスです、って名乗り上げれば早いんだろうけどね」

ラクス「それはできませんわ…今わたくしが表に出ては、
きっとミーアさんを傷つけることになってしまいます」

アスラン「ああ。そして議長は、そんなラクスの考えまで織り込み済みで、
臆面もなく彼女を表舞台に立たせているんだ…」

バルトフェルド「ふむ、やはりあの男…世界のリーダーを気取るには、
悪辣な手段をとりすぎる」

アスラン「ミーアのこと…無理矢理にでも連れてくるべきだった…」

アスラン「議長の元にいたのでは、いいように利用されるだけだ!」
160 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:07:45.80 ID:B8pEosju0
シン「議長と直接、話ができればいいんですけどね…」

キラ「カガリが何度も会談の要請をしてるんだけど、拒否されてるみたい」

シン「そんな…話し合いの余地はないってことですか…?」

キラ「プランの導入、もし力押しでこられたら…」

シン「…戦闘になるかもしれないってことですよね。覚悟はできてます」

キラ「シン、無理に戦う必要はないよ。向こうには、君の知ってる人もたくさんいるんだろ?」

キラ「友達と戦う辛さは、僕にはよくわかるんだ、だから…」
161 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:09:12.31 ID:B8pEosju0
シン「大丈夫ですよ。殺し合いをするんじゃない…」

シン「止めるための戦いです」

キラ「それは…」

シン「そうでしょ?キラさんの受け売りですけどね」

キラ「シン…」

アスラン「キラ、シンなら大丈夫さ」

アスラン「それに、ミネルバは強い。シンとデスティニーを欠いては、
止めることはできないかもしれない」

キラ「…そうだね。わかった」

キラ「頼りにさせてもらうよ、シン!」

シン「ええ、お互いに!」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 18:10:28.47 ID:one98i5A0
ストフリにキラが乗らなくて敵なのが凄く受け入れられないほどの違和感が…
163 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:17:51.19 ID:B8pEosju0
今回はここまでです。
エンジェルダウン作戦もオーブ侵攻作戦も無いのであっという間に最終決戦目前です。
164 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:20:27.21 ID:B8pEosju0
現時点でのキャラクターの状況まとめ

・シン
ステラが生存し、アスランとメイリンを討ってないので、精神的に安定。
レイやルナマリアに対して後ろめたさを感じてはいるが、彼らを止めるための戦いを決意。

・レイ
このSSではストライクフリーダムのパイロットに。
シンとアスランの脱走後に猛特訓し、パイロットとして大幅なレベルアップを遂げ、
ストライクフリーダムの性能を最大限にまで発揮させている。

・ルナマリア
シンのことは信じているものの、アスランに対しては、
彼がAAクルーと密会していたところを直接見ていたため、
最初からそのつもりだったのでは、と考えている。
レイと同様、猛特訓でメキメキと実力を伸ばしている。

・メイリン
アスランの脱走には関与せず、ミネルバに残留。
暇さえあればシュミレーターに向かうルナマリアを心配している。

・ムウ
描写ないですが生存。機体の爆発で海に投げ出され、そのまま泳いで戦闘区域から脱出。
ネオ・ロアノーク時代にしたことの贖罪を求め、徘徊中。

・アビー
原作ではメイリンの抜けた穴を埋めたが、
このSSで出番があるかは未定。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 18:27:11.07 ID:/VT9X14eo
異能生存体ムウ
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 18:47:03.66 ID:npcE9IW/O
キラがレジェンドに乗ってレイと機体交換というW的展開……はないか
サイの件考えると個人認証ありそうやし
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 20:34:28.53 ID:xC1sf5/q0
ほんっといつまでたってもガンダムのセキュリティの甘さ変わらんな
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 21:02:55.66 ID:cmMy3s2Mo
ナチュラルがストライクフリーダムを最大限にまで……!
スーパーコーディネーター(笑)
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 21:14:25.25 ID:ErkvBqsJ0
スレタイのフリーダムは敵じゃないってそういう意味か
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 21:18:07.31 ID:L6UWQuCqo
>>168
ナチュラルがコーディネイターを上回る話はノイマンが良い例だな
彼の腕無くしてアークエンジェルは生き残れなかった
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 22:47:47.09 ID:zZhvmJICo
ド、ドラグーンはムウ一族のが適性高いし……
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 03:24:54.65 ID:SBZckyhto
ノイマンって誰だっけ?
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 07:07:07.94 ID:hSTaMyvko
大気圏内でアークエンジェルをバレルロールさせたり
回避って言われてから回避行動してホントに回避する化け物操舵手やぞ
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 10:57:55.48 ID:SBZckyhto
はい!・・・いいえぇ!!!の人か思い出した
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 11:35:54.36 ID:EwHRsQCeo
マリュー「回避ィ!」ノイマン「もうやってます!」とかもある
176 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:27:02.30 ID:RehrFbjw0
投下します。
177 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:29:07.04 ID:RehrFbjw0
デスティニー・プランの発表から程なくして、
オーブとスカンジナビア王国はこれを明確に拒否。
それに呼応し、地球連合軍のアルザッヘル基地が軍事行動に出る。
対するザフト側は、宇宙要塞メサイアを起動させ迎撃。
メサイアから放たれたネオ・ジェネシスの一撃によって、アルザッヘル基地は壊滅。
ネオ・ジェネシスの存在を放置できないと考えたオーブは、
これを排除すべく、アークエンジェルとエターナルを向かわせるのだった。

デュランダル「オーブめ…この期に及んでまだ争うことを止めぬとは」

デュランダル「私は言ったはずだがな。これは人類存亡を懸けた、最後の防衛策だと」

デュランダル「なのに敵対するというのなら、それは"世界の敵"ということだ…!」
178 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:31:19.70 ID:RehrFbjw0
キラ「ねえ、アスラン」

格納庫、フリーダムの機体調整を見直しつつ、
キラはアスランに向けて問いかける。

キラ「アスランの乗っていたあの機体って…」

アスラン「ああ、レジェンドのことか。あれが気になるのか?」

キラ「…うん。ヤキンの戦いで、ラウ・ル・クルーゼが乗っていた機体にそっくりだ」
179 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:33:23.91 ID:RehrFbjw0
アスラン「隊長…いや、クルーゼが…」

キラ「人は、滅ぶべくして滅ぶ…そう言った彼に、僕はこう返したんだ」

キラ「それでも、守りたい世界があるんだ…って」

アスラン「……」

キラ「でも僕は、フレイを失った悲しみの大きさに耐えられなくて、立ち止まってしまった」

アスラン「キラ…」

キラ「ラクスも、僕のために表舞台から姿を消して、傍にいてくれた。
それを、議長に利用されたんだ」

キラ「そしてラクスが殺されそうになって、僕はまたMSに乗った」

キラ「カガリが望まない相手と結婚させられそうになって、
そんなのは僕も嫌だって、カガリを連れて逃げて」

キラ「前の戦争のあと、僕はカガリのためになにもしてあげられていなかった。
だから、彼女のためにできることはないかって…僕は焦ったんだ」

キラ「そして、やり方を間違えた」
180 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:34:51.57 ID:RehrFbjw0
アスラン「……」

キラ「まだ、ちゃんと謝ってなかったよね。あのときのこと」

キラ「必死に止めようとしてくれていた君を、僕は…」

アスラン「…焦って、間違えたのは、俺も同じさ」

アスラン「オーブにいても、自分にできることは何もないんだと、
勝手に思い込んで、カガリにロクに相談もせずにプラントに行って…」

アスラン「あいつを…カガリを誰より追い詰めていたのは、きっと俺だ…」

キラ「アスラン…」
181 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:37:19.37 ID:RehrFbjw0
アスラン「キラ…俺たちは、これからも間違えると思う。
人間である以上、それは避けられないことだ」

キラ「うん…」

アスラン「それでも…恐れずに選ぶんだ。自分の道を。
きっとその先に、答えはある」

キラ「うん。もう立ち止まるわけにはいかない」

キラ「…議長も、僕たちと同じなのかもしれないね」

アスラン「彼もまた、焦っているのか…争い続ける世界に」

アスラン「ジェネシスを…あんな悪夢の兵器を、再び持ち出さなければならないほどに…」

キラ「…話そう、議長と。そして伝えよう、僕たちの思いを!」

アスラン「ああ!」
182 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:40:16.82 ID:RehrFbjw0
バルトフェルド「パーッと歓迎会でも催してやりたいところだが、状況が状況だからな。
代わりといってはなんだが、自慢のブレンドを振舞ってやる。来たまえ」

バルトフェルドの私室へ招かれたシンは、彼の淹れたコーヒーの芳香に、
戦いによって擦り減った心が安らいでいくのを感じていた。

バルトフェルド「さあ、飲んでみたまえ」

シン「それじゃあ、いただきます」

シン「…美味い!」

バルトフェルド「フッ…気に入ってもらえて、なによりだ」
183 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:41:36.20 ID:RehrFbjw0
バルトフェルド「少しばかり、肩に力が入りすぎているように見えたんでね。
この一杯でリラックスしてもらえればと思ったのさ」

シン「それは…ありがとうございます」

バルトフェルド「なに…目的の半分は、新調合のブレンドの実験がしたかっただけだ。礼には及ばんよ」

シン「実験!?」

バルトフェルド「はっはっは!」

面食らうシンを見て、バルトフェルドは楽しそうに笑った。
184 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:43:31.51 ID:RehrFbjw0
シン「まあ、こんなに美味いコーヒーが飲めるんなら、いくらでも付き合いますけどね」

バルトフェルド「ほう…嬉しいことを言ってくれるじゃないの」

バルトフェルド「この戦いが無事に終われば、実験抜きに好きなだけ淹れてやるさ」

シン「そういえば…バルトフェルドさんは、例の金色に乗るんですよね?」

バルトフェルド「うむ。だが、オーブの守護神たるアカツキ…
あの機体、乗り込むのが俺では、役者不足に思えるがねえ」
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