魔王「リインカーネーション」

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68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 00:49:50.40 ID:WrFUAt64O

王女「……いましたね」

盗賊「……ありゃあ何人か殺ってるな」

王女「逞しい白馬ですね。ちょっと青白いですけれど……あれは雄でしょうか?」

盗賊「いや、あれは雌だな」

王女「見ただけで分かるのですか?」

盗賊「つぶらな瞳してるからな」ウン

王女「えっ?そんな理由で判断するんですか?」

盗賊「今のは冗談。でもあれは確かに牝馬だ。きっと男性社会でストレス溜まってるのさ」

盗賊「牝馬ってのは若い頃は粗暴なもんなんだ。さっきみたいな扱いするから男性不信になるんだよ」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 01:19:41.99 ID:WrFUAt64O

王女「……あれに乗る気ですか?」

盗賊「そうだね。どうやら一番肝が据わってるのは彼女みたいだから」

王女「だ、大丈夫でしょうか?」

盗賊「大丈夫だって、俺の後ろにいてくれ」

スタスタ…

白馬「……」ギロッ

盗賊「夜更けにごめん。きみと話がしたいんだけど…ちょっといいかな?」

王女「(凄い、暴れ馬に話しかけてる。でも動物と会話だなんて出来るのでしょうか?)」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 01:21:33.38 ID:WrFUAt64O

白馬「……」

王女「(あ、何か満更でもない感じ。やっぱり女性だったんですね……)」

盗賊「ありがとう。実は、この王宮から出たいんだ。きみが力を貸してくれれば出られる」

盗賊「その後……きみが良ければだけど、丘の上で星空を眺めながら干し草でもどうかな?」

白馬「……」フイッ

王女「(あぁっ…)」

盗賊「そっか、残念だよ。邪魔して悪かったね。それじゃ…さようなら」クルッ
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 01:24:36.60 ID:WrFUAt64O

王女「(あっさり引き下がった? あれ、馬の様子が……)」

白馬「……」グイッ

盗賊「どうしたの?」

白馬「……」グイグイ

盗賊「離してくれ、僕には時間はないんだ。本当はきみが良かったけど、きみが嫌なら仕方ない」

盗賊「女性に無理強いするようなことはしたくないんだ。さあ、離してくれ」

白馬「……」コテン

王女「(甘えた感じで彼の肩に頭を乗せた!? あれは乗せてもいいということなのでしょうか?)」

盗賊「ありがとう、僕なんかの為に……悪いけど、彼女のことも乗せてやってくれないかな?」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 01:27:19.58 ID:WrFUAt64O

白馬「………」チラッ

王女「こ、こんばんは」

白馬「…フーッ…フーッ…」

王女「(もしかして嫉妬!? 馬って凄い!!)」

王女「わ、わたしは別にそんなつもりはないです。どうか乗せて下さい。お願いします」ペコッ

白馬「………」フンッ

王女「(は、鼻で笑われた。何だかよく分からないけど悔しい……)」

盗賊「さあ、行こうか」スッ

王女「わたしが前なんですか?」

盗賊「後ろで俺に掴まってたら変に見られるだろ? きみはあくまで俺に攫われるんだから」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 01:50:15.18 ID:WrFUAt64O

王女「……そうでしたね。分かりました」

盗賊「じゃあ、行こうか」

ガガッ…ガガッ…

王女「(うわぁ、景色が凄い速さで変わっていく。馬ってこんなに速かったんだ!!)」

盗賊「(大門の前には槍兵と騎兵の壁か……)」

盗賊「(あの爺さん、何がなんでも俺を討ち取れって言ったんだろうな)」

盗賊「(依頼がバレないように警備を増やせとは言ったけど、ここまでやれとは言ってないぜ)」

盗賊「(槍兵は騎兵を崩せば何とかなる。戦う必要もない。隊列さえ崩せればそれでいい)」

ガガッ…ガガッ…

盗賊「どっちの馬が優れてるのか」ジュッ

盗賊「度胸試ししようじゃねえか」ブンッ

ドガンッ!ドガンッ! ブワァッ…

王女「土煙で前が!」

盗賊「そりゃあ向こうも同じさ。このまま突っ切る!!」

ガガッ…ガガッ…

盗賊「良しッ、隊列は乱れた!! 跳べッッ!!」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 02:07:24.84 ID:WrFUAt64O

王女「(月が目の前に…本当に飛んでる)」

盗賊「越えた!このまま突っ走るぞ!!」

ヒュッ…ドッッ…

盗賊「ぐっ…」クルッ


射手「……………」


盗賊「(見張り塔? あんなとこから当てやがったのかよ。バケモンかアイツは)」

王女「どうかしましたか?」

盗賊「ッ、いや、何でもない。前見てろ。このまま行けるとこまで行くぞ」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 02:08:58.98 ID:WrFUAt64O

王女「は、はいっ!」

ガガッ…ガガッ…

盗賊「(やっぱり報酬は貰おう。何がなんでも貰おう。これじゃ流石に割に合わねえ)」ボタボタッ

ガガッ…ガガッ

王女「かなり遠くまで来ましたけど、これからどうしますか?」

盗賊「……まだだ。もう少し…走る…」

王女「もう無理はしないで下さい。早く傷の手当てをしないと……」クルッ

盗賊「…………」

王女「あのっ、聞いてま…!!?」

盗賊「…………」グラッ

ドサッ…ゴロゴロ…
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 02:11:16.78 ID:WrFUAt64O
また明日
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 04:20:32.00 ID:TvKBxbBaO

面白いよ
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 17:35:24.56 ID:gZZNvJr/0
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:19:22.76 ID:vgh55vgsO

盗賊「(あれ、何で寝転んでんだ?)」

盗賊「(……あぁ、そっか。馬から落ちたのか。あちこち痛え。矢傷に刺し傷。それから打撲)」

盗賊「(まあ、あんだけのことやったんだ。命があるだけマシだと思わねえとな)」

ガガッ…ガガッ……

盗賊「(あ〜あ、戻ってきちまった)」

盗賊「(ったく、そのまま逃げりゃあいいのに。今にも追っ手が来るかもしれないんだぜ?)」

盗賊「(…って言っても無駄なんだろうな。つーか少しは疑え。こんな奴を簡単に信じちゃ駄目だ)」

王女「泥棒さん!!」

盗賊「(何だよ泥棒さんって…まあ、間違っちゃいないけどさ。にしても間抜けな響きだな)」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:23:05.18 ID:vgh55vgsO

王女「今行きます!んっしょ…きゃっ!」ズルッ

盗賊「(あっ、落ちた。馬に乗ったのも初めてなんだろ? あんまり無理すんなって……)」

王女「いたた…っ…泥棒さん!!」タッ

盗賊「(もう泥棒さんでいいから落ち着けって。そんなに走ると転んじまう)」

王女「はぁっ、はぁっ…泥棒さん!しっかりして下さい!!」

盗賊「(悪い。声が出せないんだ)」

王女「わたしの声が聞こえているなら瞬きを二回して下さい!!」

盗賊「(へ〜、凄いな。そんなのどこで覚えたんだ? そういや部屋には本が沢山あったな。読書家?)」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:35:08.56 ID:vgh55vgsO

王女「良かった。意識はあるみたい」

王女「っ、酷い傷…失血も酷い。早く手当てをしないと……」

王女「(でも、こんな所で手当てしていたらすぐに見つかってしまう。そうなったら彼は……)」

盗賊「?」

王女「(っ、そんなのは絶対に嫌。わたしが何とかしなければ彼は死んでしまう)」

王女「(わたしが助けるんだ。他の誰でもない、自分自身の手で。もう、人任せにはしない)」

王女「(とにかく、何処か身を隠せる場所に移動しなければ。手当てをするにもそれからだ)」

王女「(ここに来るまで通ってきた道にそれらしい場所は……!!)」

王女「(少し戻ってしまうけれど、先ほど通った橋の袂の坂を下って川辺に行けば…)」

王女「(でも、戻って見つかったりしたら……)」

盗賊「…ハァッ…ハァッ……」

王女「(っ、今更怖じ気付くな臆病者。見つかったら、その時に考えればいい)」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:49:12.73 ID:vgh55vgsO

盗賊「(なに考えてんだ?)」

王女「泥棒さん、今から運びます。もう少しだけ頑張って下さいね?」

盗賊「(馬に乗せる気なのか? 止めとけ、姫様には無理だって)」

王女「んっ…おもいっ…」

盗賊「(おいおい…無茶すんなよ)」

王女「わたしが助けるんだ。絶対、絶対に助ける。わたししか、いないんだから……」

盗賊「………」

王女「…はぁっ…はぁっ…ん〜っっ!!」

ドサッ…

盗賊「(……本当に乗せやがった。以外と根性あるんだな)」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:52:50.75 ID:vgh55vgsO

王女「…はぁっ…はぁっ…」

王女「白馬さん、もう一度だけ背に乗せて下さい。彼を橋の袂まで運びます」ヨジヨジ

白馬「……ブルルッ…」

ガガッ…ガガッ…

王女「あのっ、ありがとうございます!」

白馬「………」フンッ

盗賊「(律儀か。馬相手に何してんだよ)」

王女「すぐに着きますから待ってて下さいね。きっと…ううん、絶対大丈夫ですから」

ガガッ…ガガッ……

盗賊「(……なあ、姫様。俺を変わり者だって言ったけどさ、きみも十分変わってるよ)」

ガガッ…ガガッ…

王女「あ、あの橋です! あそこから下りて下さい!!」

盗賊「(あ〜あ、こんな娘が魔王になんのかよ。今のままでいいのに、勿体ねえなぁ……)」

ガガッ…ガガッ…ガガッ…
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 21:39:38.34 ID:J6McHLMVO

ド根性お姫さま
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/01(木) 00:01:15.66 ID:yC23JsdKO

【玉座の間】

老人「そうか、捕り逃がしたか」

騎士団長「陛下、誠に申し訳ありません。全ては不覚を取った私の責任でございます」

老人「済んだことだ。もうよい、頭を上げよ」

騎士団長「ですが姫様を…」

老人「よいと言っている。して、彼奴はどうであった」

騎士団長「?」

老人「直接対峙したのはお主のみ。彼奴が強者であったのかと聞いておるのだ」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/01(木) 00:04:12.80 ID:yC23JsdKO

騎士団長「強者であります。紛うことなく」

騎士団長「刃は交えておりませんが、戦の最中であって沈着冷静。機転も利く男です」

老人「……ふむ。そうか…」

騎士団長「しかし陛下、何故にそのようなことをお聞きになるのですか?」

老人「……初代王の傍らには、常に一人の騎士がいた」

老人「闇夜にあって幾千の敵を討ち。屍から屍へと渡り歩くその姿はあたかも鴉のようであったという」

老人「彼の者は畏敬の念と共に死の騎士と呼ばれ。多くの騎士に崇められていたそうだ」

老人「王は彼の者を半身の如く信頼し、深く愛していた。添い遂げることは叶わなかったがな」

騎士団長「……そのような話は初めて聞きました。如何なる文献でも見かけたことはありません」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/01(木) 00:19:20.33 ID:yC23JsdKO

老人「そうであろうな……」

老人「これは輪廻する力に宿る王の記憶。いや、王ではなく一人の女の記憶やもしれん」

老人「幾度もの輪廻。長らく探し求めていた相応しき器。あれを得た時の歓喜たるや…フッ…フフッ…」

騎士団長「へ、陛下?」

老人「そう怪訝な顔をするな。安心しろ、呆けたわけではない。これは事実なのだ」

老人「そして、偶然か必然か。或いは輪廻か……我が娘を奪い去った男は鴉と呼ばれている」

騎士団長「……何故にそのような話を私に?」

老人「お主は期待を裏切らぬ男だからだ。これまでも、現在もな」

騎士団長「は、はぁ…」

老人「……もう下がってよいぞ」

騎士団長「姫様の捜索は…」

老人「追う必要はない。何もせずとも、あれは近々帰って来る。必ず、必ずな……」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/01(木) 01:28:43.19 ID:yC23JsdKO

【川辺】

盗賊「………」

王女「(革鞄には消毒薬と包帯、針と糸が入っていた。それに、体には数え切れない傷痕……)」

王女「(刺し傷に切り傷。それから火傷。命に関わるようなものも数多くあった)」

王女「……はぁ」

王女「(矢も抜いて傷口も縫って…本で見た薬草を傷口に貼って止血も出来た。後は目覚めを待つだけだ)」

盗賊「…スー…スー…」

王女「泥棒さん。あなたはいつもこんな怪我をしているんですか?」

王女「そんなに沢山の傷を負ってまで手にしたい物って何ですか?」

王女「男の人だからですか? ニンゲンだからですか? わたしには、そこまでする意味が分からないです……」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/01(木) 01:34:15.87 ID:yC23JsdKO

盗賊「…ッ…ぅぅ…」

王女「(震えてる。先ほどよりも冷えてきているし、何より血を流し過ぎたから)」

王女「(わたしが羽織っていたものを被せたけど、これだけでは足りない……)」

王女「(でも、どうしよう。彼の服は血塗れだったから洗ってしまったし……)」

盗賊「…ハァッ…ぅぅ…」

王女「…………」パサッ

ギュゥゥ…

王女「(迷う必要なんてない。こうすれば温められる。この人を死なせはしない)」

王女「(あなたはあの場所からわたしを連れ出してくれた。傷を負い、血を流してまで……)」

盗賊「………」

王女「泥棒さん。わたし、まだ星を見ていないんです」

王女「一緒に星を見よう。そう言ったのはあなたでしょう?」

王女「……生きて下さい。お星様になんかなっちゃ駄目ですよ…」ギュッ
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/01(木) 01:35:33.97 ID:yC23JsdKO
また明日
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 18:07:56.69 ID:do/w+HRCo
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 21:49:50.85 ID:8I1ke8g50
盗賊と姫様の見た目気になるな
盗賊は軽装だけど、鞭やら手甲やら爆弾やら結構色々仕込んだ装備?
姫様は寝間着にケープか何か羽織っただけで持ち物特に無しかな
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/01(木) 23:49:30.16 ID:zp8uLoG+O

盗賊「(ここは…つーか姫様…)」

ムギュゥ…

盗賊「!?」ビクッ

王女「…スー…スー…」

盗賊「(……通りで温けえわけだ。ったく、臆病なのにやることは大胆だな)」

盗賊「(包帯…手当てまでしてくれたのか。嫌なもん見せちまったな……)」

王女「…っ…ん〜っ…」

盗賊「………」

王女「…スー…スー…」

盗賊「………起きるか。え〜っと…服はあそこか」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/02(金) 00:26:58.63 ID:oNb79cG2O

盗賊「危ねっ…」フラッ

ボフッ…

白馬「…ブルルッ…」

盗賊「そっか、きみも一晩中傍に居てくれたんだね。ありがとう。助かったよ」

白馬「……」コテン

盗賊「昨日は無理させて悪かったね。怪我してなくて良かったよ」

白馬「……」スリスリ

盗賊「…っくし! ごめん。もう少しこうしていたいけど早く服着ないと…」ザッ

盗賊「(濡れてる。汚れもねえ。姫様、服まで洗ってくれたのか……)」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/02(金) 00:53:45.01 ID:oNb79cG2O

盗賊「(コートだけ羽織っとこ)」バサッ

王女「…スー…スー…」

盗賊「(まさか攫った相手の世話になるなんて思いもしなかったな……)」

盗賊「っくし! 寒っ…枯れ枝集めて火でも起こすか。早いとこ服も乾かさねえとな」

ーーー
ーー


パチッ…パチパチッ…

王女「…んっ。あれっ…泥棒さん?」

盗賊「お〜、こっちこっち」

王女「(良かった。いなくなってしまったのかと…)」

盗賊「どうした?早くこっちに来て一緒に火に当たろう。服着てからな」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/02(金) 01:22:50.42 ID:oNb79cG2O

王女「えっ……あっ!!」イソイソ

トコトコ…トスン…

王女「えっと…おはようこざいます」

盗賊「うん、おはよう。傷の手当てから洗濯まで、何から何までありがとう」

王女「いえっ、そんな…」

盗賊「……きみがいなかったら、こうして朝日を拝むことなんて出来なかったと思う」

盗賊「あっ、こういう場合は朝日なんかより姫様を拝むべきなのかもな」ウン

王女「クスッ…泥棒さんが生きてて良かったです。体はどうです? ふらついたりとかは…」

盗賊「血ぃ流し過ぎたからなぁ。たらふくメシ食って寝ればその内に治るさ」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/02(金) 02:10:33.19 ID:oNb79cG2O

王女「………」

盗賊「いや、本当に大丈夫だから!そんな顔すんなって!!」

王女「でも、傷を負ったはわたしのーー」

盗賊「傷を負った俺が間抜けだからさ。きみのせいじゃない。この話はこれで終わり」

王女「………」

盗賊「さて、と。服も乾いたしそろそろ行こうか」ザッ

王女「えっ? 行くって何処へ……」

盗賊「何処へって、姫様の自分探しに決まってるだろ?」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/02(金) 02:13:06.84 ID:oNb79cG2O

王女「………」

盗賊「いや、本当に大丈夫だから!そんな顔すんなって!!」

王女「でも、傷を負ったはわたしのーー」

盗賊「傷を負ったのは俺が間抜けだからさ。きみのせいじゃない。はい、この話はこれで終わり」

王女「………」

盗賊「さて、と。服も乾いたしそろそろ行こうか」ザッ

王女「えっ? 行くって何処へ……」

盗賊「何処へって、姫様の自分探しに決まってるだろ?」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/02(金) 02:28:45.31 ID:oNb79cG2O

王女「(彼は本当に何なのだろう?)」

王女「(あんなにも酷い傷を負っているのに、わたしの何倍も疲弊しているはずなのに……)」

王女「(何故こんなにも、瞳をきらきらと輝かせていられるのでしょう?)」

盗賊「まずは姫様の服を買って、それからメシも食わねえとな」ウン

王女「(まるで昨夜のことなどなかったかのよう。はしゃいでいる子供のような、そんな笑顔…)」

盗賊「姫様も腹減ってるだろ?」

王女「えっ? は、はい…」

盗賊「じゃあ行こうか。俺が外を案内するよ」ニコッ

王女「(彼といれば、わたしもこんな風になれるのでしょうか? 彼のように、自由に……)」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/02(金) 02:49:06.77 ID:oNb79cG2O
>>92
盗賊は軽装備で複数のウエストポーチ?のようなものに色んな道具を入れています。
所持しているのは鞭と爆弾と催涙玉。それから縄に鉤爪の付いてるやつ。他の武器などは後から出てくると思います。

姫様は寝巻きの上に白熊みたいな、もふもふしてるやつを羽織ってるだけです。

また明日。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 03:15:56.70 ID:+s1RSyp0O

もふもふお姫さま
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/02(金) 21:09:29.73 ID:zq6/qIcJO

【街道】

ガガッ…ガガッ…

王女「わぁ…凄いなぁ…」

王女「(どんどん景色が変わっていく。わたし、本当に外に出たんだ)」

王女「(青空には先ほどより輝きを増した太陽が。ふわふわとした雲は泳いでいるようにも見える)」

王女「(白馬さんが地面を蹴って体が浮くたび、わたしも空を飛んでいるような…そんな気分になる)」

ガガッ…ガガッ…

王女「(ほのかに香る土の匂い。風に揺られる草花。それから挿絵とは全く違う、本物の緑……)」

王女「(何処を見ても何を聴いても心地良い。此処には…外には全てが詰まってるんだ)」

盗賊「姫様、気分はどうだい?」

王女「とっても楽しいです! でも、まだ信じられません。何だか、ちょっとだけ怖いんです」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/02(金) 21:50:18.16 ID:zq6/qIcJO

盗賊「怖いって何が?」

王女「……昨日までとは違いすぎるからです。望みが叶うなんて思いもしませんでしたから」

王女「それから、こうも思うのです。もしかしたら、これら全ては夢なのではないか…と」

盗賊「人なんて夢遊病者みたいなもんさ。寝てる奴も起きてる奴も、みーんな夢を見てる」

王女「……誰もが、夢を見る…」

盗賊「そ。でも大丈夫、姫様は起きてるよ。流石の俺も人様の夢にまでは入れない」

盗賊「万が一これが夢でも、姫様の夢は誰にも盗めないよ。これは、きみだけの夢だからね」

王女「……もし、もしですよ? 二人一緒に同じ夢を見ていたらどうします?」

王女「これは夢で、現実では牢に入れられてたりしたら? そう考えると、わたし……」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/02(金) 21:55:28.43 ID:zq6/qIcJO

盗賊「ははっ、面白いこと考えるなぁ」

王女「わ、笑わないで下さい。これでも真剣に考えてるんですから……」

盗賊「分かった分かった。そんなに不安な声出すなよ。旅立ちの朝なんだぜ?」

王女「だって…何だか怖くて……」

盗賊「……もし夢だったら、だっけ?」

王女「は、はい。泥棒さんならどうしますか?」

盗賊「う〜ん。そうだなぁ…夢の終わりまで一緒にいればいいんじゃないの?」

王女「どうしてです?」

盗賊「夢の中で一緒なら、目が覚めた時も傍にいるかもしれない。そしたら、またすぐに連れ出せるから」

王女「じ、じゃあ! もし別々の場所で目が覚めてしまったらどうしますか?」

盗賊「その時はきみを捜して連れ出すよ。そんで、夢の続きを見る。一緒にね」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 00:04:51.98 ID:jI8nlcmOO

王女「(一緒に、夢の続きを…)」カァァ

盗賊「少しは落ち着いた?」

王女「えっ、ええ。安心とは少しばかり違うかもしれませんが、もう大丈夫です」

盗賊「?」

王女「(随分と前に読んだものだから題名は思い出せないけれど、似たような台詞があった)」

王女「(確か…身分の違いから引き離され、それでも互いを愛し続けた男女の物語……)」

王女「(彼女は思い人に会えぬ辛さから心を病み、自害。遠い地にいた彼は、ある日彼女が自害したことを知る)」

王女「(彼女の死を知った彼は嘆き、絶望し、世を憎んだ。何より、強引にでも彼女を連れ去らなかったことを後悔した)」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 00:10:17.59 ID:jI8nlcmOO

盗賊「おっ、見えてきた」

王女「(彼も遂には毒薬を飲んで自害してしまう。そんな、悲劇的な物語)」

王女「(もう眠ろう。わたしは夢を見るのだ。何度でも何度でも。あの日に夢見た、彼女との夢の続きを……)」

王女「(毒薬を飲む直前の台詞だけれど…いえ、だからでしょうか。今でも心に残っている)」

盗賊「そろそろ着くか。あ〜、ハラ減ったなぁ」

王女「…………」

ギュッ…

盗賊「どうかした? まだ怖い?」

王女「いえ、そうではありません。少しばかり体が冷えてしまいました」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 00:16:30.73 ID:jI8nlcmOO

盗賊「寒いのか? こんなに日が照ってんのに?」

王女「いえ、寒くはありません。熱いくらいです」

盗賊「あ〜、昨日はかなり無理してたからな。もしかしたら熱があんのかも……」

王女「……熱、ですか…」

盗賊「もう少しで街に着く。それまでは何とか我慢してくれ」

王女「あっ、急がなくても大丈夫です。こうしていれば、すぐに良くなりますから……」

盗賊「えっ? よく分かんねえけど本当に大丈夫なんだな?」

王女「ええ。心配させてしまうようなことを言って申し訳ありませんでした」

盗賊「何かあったら正直に言ってくれよ? 無理して倒れたら元も子もねえからさ」

王女「(自分は傷を負っても何も言わなかったのに…もっと自分を大事にしないと駄目ですよ……)」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 00:25:37.90 ID:jI8nlcmOO

盗賊「姫様?」

ギュゥゥ…

盗賊「痛い痛い痛い!! 何!?どうした!?」クルッ

王女「……いえ、別に。何でもないです」プイッ

盗賊「はぁ!?」

王女「何でもないですよ?」ニッコリ

盗賊「そっ、そうですか。ならいいですけども……」

王女「前を見ないと危ないですよ? もし落馬してしまったら傷が開いてしまいますからね」

王女「また縫って欲しいのなら構いませんけれど、怪我はして欲しくないので早く前を見て下さい」

盗賊「そ、そうします(笑顔こわっ! 何かしたっけ? まるで分かんねえ)」

王女「(きっと、何を言っても聞いてはくれないでしょうね。あなたは、優しい人だから……)」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 01:20:31.60 ID:jI8nlcmOO

王女「………」

盗賊「(急に黙っちまった。にしても、追っ手が来ねえのは妙だ)」

盗賊「(王宮ではあんだけ警備固めて俺を取っ捕まえようとしてたってのに……)」

盗賊「(あの爺さんなら、俺との関与を少しでも疑われないように大勢使って追わせるはずだ)」

盗賊「(……やっぱり、あの爺さんにも何か裏がありそうだな)」

盗賊「(儂が死んで力の印刷が済むまでとか何とか言ってたけど、それだけじゃねえような気がする)」

盗賊「(……王の輪転器か)」

盗賊「(もう少し調べてみた方が良さそうだな。姫様にも知らされてねえ事実がありそうだし)」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 01:29:08.00 ID:jI8nlcmOO

王女「泥棒さん?どうしました?」

盗賊「いや、何でもねえ。それよりさ、街に着いたら服買うけどどんなのがいい?」

王女「服ですか? 特にこだわりはないので、どんなものでも構いません」

王女「あっ、これからは移動することが多くなると思いますので、動き易いものが良いすよね?」

盗賊「あ〜、そうだな。じゃあ旅人みたいな格好にするか」

王女「でも、よろしいのですか?」

盗賊「何が?」

王女「……わたしはお金品など一切持っていないので、泥棒さんに負担が掛かるでしょう?」

盗賊「そんなの気にすんな。高い物は買わねえしさ。でも、服で誤魔化せっかなぁ」

王女「?」

盗賊「何て言うか…気品?みたいのが邪魔しそうなんだよ。仕草とか口調とか」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 01:31:36.37 ID:jI8nlcmOO

王女「泥棒さん?どうしました?」

盗賊「いや、何でもねえ。それよりさ、街に着いたら服買うんだけどどんなのがいい?」

王女「服ですか? 特にこだわりはないので、どんなものでも構いません」

王女「あっ、これからは移動することが多くなると思いますので動き易いものが良いですよね?」

盗賊「あ〜、そうだな。じゃあ旅人みたいな格好にするか」

王女「でも、よろしいのですか?」

盗賊「何が?」

王女「……わたしは金品など一切持っていないので、泥棒さんに負担が掛かるでしょう?」

盗賊「そんなの気にすんな。高い物は買わねえしさ。でも、服で誤魔化せっかなぁ」

王女「?」

盗賊「何て言うか…気品?みたいのが邪魔しそうなんだよ。仕草とか口調とか」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 01:34:35.48 ID:jI8nlcmOO

王女「では、教えて下さいませんか」

盗賊「教えるって何を?」

王女「泥棒の仕草です。泥棒さんのようになるにはどうすればよいのでしょう?」

盗賊「っ、あははっ! 姫様にゃ無理だって、なれっこねえよ」

王女「な、何故ですか?」

盗賊「そういうところだよ。真面目だし高所恐怖症だしさ」

王女「……なら、泥棒以外で…」

盗賊「いや、そう言われてもなぁ……まあ、街に入ったら一緒に考えようぜ?」

王女「分かり…ました……」

盗賊「(何で落ち込んでんだろ。また何か考えてんのかな。夢とか何とか言ってたし…)」

王女「(本気だったのに、あんなに笑わなくたっていいじゃないですか……)」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 01:35:21.48 ID:jI8nlcmOO
また明日
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 01:57:38.99 ID:AvIYN9lto
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 06:02:52.85 ID:FggD4TT2O
盗賊が鈍感キャラなのは違和感あるな
牝馬はコマしてるのにw
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 07:44:13.28 ID:gg6fNRybO
盗賊が鈍感なわけではなく互いに考えてることが擦れ違ってる
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 12:40:52.64 ID:FvJOLbsjO
REDSTONEのシーフで再生される
C
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 20:30:45.91 ID:JZOH/8mGO

盗賊「見ろよ姫様。あれが街の正門だ」

王女「あ、あれが正門ですか? それにしては飾りっ気もなくて小さいような気が……」

盗賊「はははっ!そっか、小さいかぁ」

盗賊「でもまあ、王宮の大門を見ちまった後じゃそう思うのも仕方ねえかもな」

盗賊「でもさ、あの街の中には王宮にはないものが沢山詰まってる。絢爛豪華とは程遠い街だけどさ」

王女「入ったことがあるのですか?」

盗賊「ん〜、何度かね。他にも候補があったんだけど、見知った顔もいるから此処にしたんだ」

王女「(……見知った顔? というか、泥棒さんは何で『こちら側』に来たのでしょうか?)」

王女「(王の秘宝。宝具を求めてやって来たと言っていたけれど、ニンゲンである彼が何故…)」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 20:34:26.89 ID:JZOH/8mGO

盗賊「あっ…」

王女「?」

盗賊「街に入る時に検査みてえなのがあるんだ。姫様は普通にしといてくれ」

王女「えっ!? あのっ、普通と言われましても一体どのようにしたら良いのでしょうか?」ワタワタ

盗賊「そんなに慌てなくても大丈夫さ。そのままでいいってことだから」

王女「は、はぁ…」

盗賊「但し!」

王女「はいっ! 何でしょう?」

盗賊「何があっても馬から下りないように。何があっても俺が何とかするから」

王女「……分かりました。無茶はしないで下さいね?」

盗賊「心配しなくても大丈夫さ。簡単に通れるさ、簡単にね」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 22:25:53.24 ID:JZOH/8mGO

王女「(そう簡単に行くでしょうか……)」

王女「(こちら側の者はニンゲンに対して敵対的。とは言わないまでも友好的とは言い難い)」

王女「(国家で認定されているような商人ならば問題はないでしょうが、彼のようなニンゲンには風当たりは強いはず……)」

王女「(……けれど、これら全ては本で得た知識でしかない。実際に目の当たりにしたわけではないから何とも言えない)」

門番「はい、そこで止まって下さ…何だ、ツノ無しか……」

王女「(あぁっ、露骨に嫌そうな顔してる。やっぱりこれが普通の反応なんだ……)」

盗賊「角が立たないようにしてるんだ。何事も丸く収まるようにね」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 22:36:57.91 ID:JZOH/8mGO

王女「(な、何で挑発するようなことを…)」

門番「そうか。だが残念だったな。たった今、お前の不用意な発言で角が立った」

門番「さあ、今すぐに馬を下りろ。ニンゲンに見下ろされるのは大嫌いなんだ」

盗賊「はいはい」ザッ

門番「……連れがいたのか。女、お前も下りろ」

王女「(ど、どうしよう。下りなきゃ何をされるか分からない。でも泥棒さんは下りるなって…)」

門番「聞いているのか!さっさとしろ!!」

盗賊「まあまあ落ち着けよ。今なら円満に解決出来るぜ?」ポンッ
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 22:38:16.53 ID:JZOH/8mGO

門番「気安く触るな」バシッ

盗賊「やれやれ、一方的に嫌われてちゃ会話もままならねえな。今なら円満に解決出来るのに」

門番「お前はもう黙ってろ。次に口を開いたら牢にぶち込むからな」ジャキッ

盗賊「………」

王女「(つ、剣を抜いた!もう耐えられない。早く下りないと…)」

門番「………」ツカツカ

王女「(き、来た! ど、どうしよう……)」オロオロ

門番「ん?何だこの馬? まるで青ざめたような毛色だな。気色の悪い」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 22:41:06.49 ID:JZOH/8mGO

白馬「………」ピキッ

盗賊・王女「あっ…」

門番「あ?」

ドガッ!

門番「ぐぇッ!?」

盗賊「そうやって外見で判断すっからそうなるんだよ。色だのツノだの尻尾だの耳だの…挙げればキリがねえ」

門番「こ、この野郎……」

盗賊「おいおい、何怒ってんだよ。蹴られたのはあんたが彼女を侮辱したからだろ?」

盗賊「これからは気を付けた方がいいぜ? 女性ってのは繊細なんだからさ」

門番「言われんでも分かるわ!こちとら妻子持ちじゃボケ!!」ダッ

盗賊「あ、そうなんだ。じゃあ、これで美味いもんでも食わせてやれよ」ピンッ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 22:43:54.08 ID:JZOH/8mGO

門番「あだっ!? これは…き、金貨!?」

盗賊「言ったろ、円満に解決出来るって。ニンゲン嫌いでも金貨は好きだろ?」

門番「………」

盗賊「で、通ってもいい?」

門番「……とっとと行け。気が変わらんうちにな」

盗賊「あんたが話の分かる人で助かったよ。さて、行こうか」

白馬「……ブルルッ…」

盗賊「大丈夫さ、気色悪くなんかない。彼にはきみの魅力が分からないんだよ」

王女「(まったく動じてない。わたしなんて、まだ脚が震えてるのに……)」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 22:45:40.49 ID:JZOH/8mGO

盗賊「よっ…じゃあ行こう」

門番「………」

盗賊「あ、そうだ。ご家族によろしく」ニコッ

門番「……うるさい。さっさと行け」

盗賊「分かった分かった。でも、そんなに怖い顔してると子供に嫌われるぜ?」

カカッ…カカッ…

門番「(金貨三枚。家族分ってわけか。もう一枚足りないんだが、まあいい……)」

門番「(しかし妙な奴だったな。口の減らない奴だったが、怒る気も失せてしまった)」

門番「……帰りにせがまれてたおもちゃでも買って行くか。それから、嫁にも…」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 23:20:07.48 ID:JZOH/8mGO

ガヤガヤ…

王女「うわっ、人が沢山いますね」

盗賊「賑やかだろ?王宮の連中は時計仕掛けで決まった動きしかしないけど、此処の連中は違う」

盗賊「いや、この街に限ったことじゃない。それぞれがそれぞれの生活をしてるんだ」

王女「な、何だか目が回りそうです」

盗賊「はははっ、慣れるには時間が掛かるだろうな。さて、服を買いに行くか」

カカッ…カカッ…

王女「(皆さん、とっても活き活きとしている。王宮の静けさとはまるで真逆……)」

王女「(それぞれがそれぞれの生き方をして、行きたい場所へ向かって歩いている)」

王女「(わたしと泥棒さんも、周りから見ればそのように見えているのでしょうか?)」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/03(土) 23:59:50.88 ID:JZOH/8mGO

カカッ…ピタッ…

盗賊「はい、此処が服屋」

王女「何だか怪しげな場所ですね。あまり人気もないですし、お店も暗そうな感じで……」

盗賊「ここらの店は大体こんなもんさ。実際怪しげなもの売ってるしな。骸骨とか」

王女「骸骨!? 何に使うのですか?」

盗賊「さあ?飾ったりすんじゃねえの? 此処はそういう物好きが来る場所なんだ」

王女「……あの、この店は大丈夫なのですか?」

盗賊「う〜ん。割と普通、なのかな?」

王女「割と…普通……」

盗賊「大丈夫大丈夫。俺も此処で服買ったことあるから。変装用のやつ」スタッ
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 00:02:15.23 ID:cunM1KS2O

王女「変装?」

盗賊「まあ、入ってみりゃ分かるさ。さ、掴まって」スッ

王女「あ、申し訳ありません。まだ一人では下りられなくて……」ギュッ

盗賊「昨日今日で出来るようになるのは無理だ。少しずつ覚えていけばいい。よっ…」

スタッ…

王女「(少しずつ、かぁ……)」

盗賊「さ、入ろうぜ」

王女「白馬さんはどうするんです? 置いていくのですか?」

盗賊「ちょっとだけ待っててもらう。あんまり待たせないようにささっと済ませよう」

王女「そうですね。一人は危ないですし……白馬さん、ちょっとだけ待ってて下さいね?」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 00:03:12.28 ID:cunM1KS2O

盗賊「ほら、行こうぜ」

王女「は、はいっ。白馬さん、ちょっと行って来ます」ペコッ

白馬「………」イラッ

ゴツンッ…

王女「あうっ…す、すぐに来ますから」

ゴツンッ…

王女「あうっ…な、何で頭突き…」

ゴツンッ…

王女「あたっ…」

盗賊「(何やってんだ。つーか、やっぱ変わってんなぁ……)」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 01:04:10.93 ID:cunM1KS2O
ーーー
ーー


王女「どうでしょう?」

盗賊「う〜ん。似合わないわけじゃないけど、やっぱり違和感があるな」

王女「そうですか……」

王女「出来れば泥棒さんのような服装が良かったのですが、駄目でしょうか?」

盗賊「いや、駄目ってわけじゃないんだ。何て言うか、隠せてないんだよ」

王女「隠せていない? 何をです?」

盗賊「街に来る途中にも言ったけど、気品っていうか姫様の感じが隠せてない」

盗賊「これから追っ手が来るって考えたら、違和感なく見付かりにくい服装が良いだろ?」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 01:06:02.29 ID:cunM1KS2O

王女「確かにそうですよね……」

盗賊「う〜ん……あ、これとかどうかな?」スッ

王女「それは、修道服…ですか」

盗賊「俺みたいなもんと一緒にいるのは違和感あるだろうけど、姫様単体で見た時は違和感ないと思うんだ」

盗賊「言葉遣いや仕草もこれ着てれば自然に見えるはずだ。いい案だろ?」

王女「そうですね……ただ、人の眼を欺く為に修道服を着るのはどうなのでしょうか?」

盗賊「……まあ、そのくらいなら神様も目を瞑ってくれるさ。神には誓えないけどね」

王女「フフッ…分かりました。それにしましょう。あまり時間を掛けたら白馬さんに悪いですし」

盗賊「じゃあ決まりだな。一応こっちも買っとくか。姫様が気に入ったやつ」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 01:10:18.89 ID:cunM1KS2O

王女「そんなっ、一着で十分です」

盗賊「せっかく来たんだ。買わなきゃ損だろ? 着るかどうかは別としてさ」

王女「買わなきゃ、損?」

盗賊「だってそうだろ? 外に出てから初めての買い物だし記念みたいなもんだと思えばいい」

盗賊「それに、あって困るもんでもないだろ? 姫様が泥棒になれるかは別としてさ」ニコッ

王女「い、いつか似合うようになります!」

盗賊「ははっ、そっかそっか。じゃっ、楽しみにしとくよ。気長にね」

王女「(意地悪……)」

盗賊「そんじゃ、会計済ませて早くメシ食いに行こうぜ。腹減り過ぎてくらくらしてきた」ザッ

王女「(……何故だろう。薄暗くて変な場所だけれど、とっても楽しくて胸の奥が騒がしい)」

王女「(わたしはお買い物が好きなのでしょうか? それとも服選びが好きなのでしょうか?)」

王女「(どうなんでしょう。もしかしたら、どちらも好きなのかもしれない……)」

王女「(うん、きっとそうだ。いつかまた、こんな風にお買い物が出来たらいいなぁ……)」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 01:11:38.89 ID:cunM1KS2O
また明日
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 02:09:52.70 ID:k/kZxvatO
頭突き可愛いなww
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 02:23:16.24 ID:NxtN5HVm0
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 07:42:58.52 ID:cQbeti0Jo
牝馬かぁ馬のマ◯コ めちゃくちゃ綺麗なんだよなぁ……
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 21:07:56.02 ID:zg2KpDPrO

【訓練場】

騎士団長「う〜む……」ウロウロ


『今朝からずっとあの調子だ。いつもなら稽古を付けて下さるのに……』

『姫様の安否を考えているのだろう。賊を捕り逃がしたのは自分の責任だとも言っていたよ』

『……そうか。出来ることならば、いつもの溌剌とした団長に戻って欲しいものだ』

『そうだな。あのような姿を見るていると俺まで沈んでしまうよ……』


騎士団長「(追わなくともよい、か。陛下は何を考えておられるのだろうか? 分からん……)」

騎士団長「(何やらお考えがあるようだが、単に我々騎士団ではなく隠密隊に任せたとも考えられる)」

騎士団長「(何より不可解なのは、何故にあのような話を私にしたのか。ということだ)」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 21:09:28.31 ID:zg2KpDPrO

【訓練場】

騎士団長「う〜む…」ウロウロ

『団長は今朝からずっとあの調子だな。いつもなら稽古を付けて下さるのに……』

『姫様の安否を考えているのだろう。賊を捕り逃がしたのは自分の責任だとも言っていたよ』

『……そうか。出来ることならば、いつもの溌剌とした団長に戻って欲しいものだ』

『そうだな。あのような姿を見ていると俺まで沈んでしまうよ……』

騎士団長「(追わなくともよい、か。陛下は何を考えておられるのだろうか? 分からん……)」

騎士団長「(何やらお考えがあるようだったが、単に我々騎士団ではなく隠密隊に任せたとも考えられる)」

騎士団長「(何より不可解なのは、何故にあのような話を私にしたのか。ということだ)」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 21:11:08.42 ID:zg2KpDPrO

騎士団長「(初代王と鴉の騎士……)」

騎士団長「(いや、死の騎士だったか。調べてはみたものの、これと言った成果はなし)」

騎士団長「(それ程の人物であれば騎士団創設の記録に残っているはずなのだが、そのような記述は見当たらなかった)」

騎士団長「(まあ、それはいい。何より気掛かりなのは姫様の安否。しかし、姫様はあの時……ん?)」

射手「………」

騎士団長「どうした? 貴様にも弓兵隊の指導があるだろう?」

射手「……もう昼だ。休憩中」

騎士団長「む、もう昼時か。それは気付かなかったな……ところで、何の用があって此処へ?」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 21:12:51.58 ID:zg2KpDPrO

射手「……当てたが、逃がした。私のせいだ」

騎士団長「そんなことはない!! 私がしっかりしていれば姫様は攫われずに済んだのだ!!」

騎士団長「何よりも姫様を優先すべきだった。なのに、あろうことか戦いに熱くなって……」

射手「……あまり、気に病むな。お前が気落ちすると団の志気が下がる。これ食え」

騎士団長「弁当。貴様が作ったのか?」

射手「……料理すると雑念が消える。それ食って元気出せ」

騎士団長「っ、済まない。気を遣わせてしまったようだな。心遣い、感謝する」ペコッ
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 21:16:49.91 ID:zg2KpDPrO

射手「……別にいい。いいから食え」

騎士団長「うむ。ありがたく頂こう」パカッ

射手「……美味いか?」

騎士団長「ああ、美味い。しかし意外だな、貴様に料理が出来るとは微塵も思わなかったぞ」モグモグ

射手「……練習したから」

騎士団長「ん?」

射手「……別に何でもない。たくさん食え」

『団長はいつになったら気付くのだろう。手作り弁当だぞ?』

『さあな。射手さんは口下手だし、うちの団長は煩悩を捨てろとか言う人だし』

『……俺達も食堂で昼飯食おうか。婆さんのしょっぱい手料理だけどな……』

『……そうだな。お二人の邪魔しても悪いし、そうするか』
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 21:38:11.51 ID:zg2KpDPrO


騎士団長「………」モグモグ

射手「……何か、あったのか」

騎士団長「ああ。俺の聞き間違いかもしれんが、姫様はあの時……」

射手「……どうした。らしくない」

騎士団長「始めに言っておくが、この話は他言無用で頼む。まだ誰にも話していないことだ」

射手「……分かった。約束する」

騎士団長「あの夜…鞭で脚を取られ転倒した時、朧気ながらに二人の会話を耳にしたのだ」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 21:39:52.68 ID:zg2KpDPrO

射手「……二人とは?」

騎士団長「奴と姫様だ。奴は姫様に一緒に星を見ようなどと言葉巧みに誘ったが、姫様はそれを拒否した」

騎士団長「しかし、君は無機質なモノではない。生きている。そう言われると姫様は……」

射手「……なんだ。言ってくれ」

騎士団長「ッ、此処から連れ出して欲しいと、そう言ったのだ。そこで私は気を失ってしまった」

射手「……姫様は、自ら望んで?」

騎士団長「いや、先ほども言ったが私の聞き間違いかもしれん。そう決めるにはまだ早い」

騎士団長「それに加え、気になることがもう一つある。陛下が追っ手を出さなかったことだ」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 21:53:11.72 ID:zg2KpDPrO

射手「……賊を刺激しない為。そう聞いた」

騎士団長「あくまで個人の考えだが、奴が姫様を殺すとは到底思えない」

射手「……奴は切れてる」

騎士団長「ああ、確かに異常だ。二日続けて王宮に侵入するなど正気の沙汰ではない」

騎士団長「だが対峙してみると、どうにもそのような狂人や異常者の類には見えなかった」

騎士団長「それに、あれだけの警備体制を行き当たりばったりで抜け出せるはずがない」

騎士団長「今朝、侵入手口と脱出手段を聞いた。聞けば聞くほど、良く練らたものだと思ったよ」

射手「……結局、何が言いたい」

騎士団長「奴は姫様を連れ出す為だけに忍び込んだのかもしれん。事実、金品の類は一切盗まれていない」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 22:19:10.75 ID:zg2KpDPrO

射手「……何故、姫様を」

騎士団長「分からん。ただ、輪転機がどうのと言っていたような気もする」

騎士団長「輪転機とは王が所持する転生の秘宝。王が不死である為の宝具」

騎士団長「噂の域を出ないが、姫様は輪転機の在処を知ったが為にあのような場所へ入れられたと聞く。もしかすると……」

射手「……情報を聞き出す。その為に攫った」

騎士団長「そうだ。ただの推測だが、私はそう考えている。或いは……」

騎士団長「受け継がれてきた王の系譜を絶つべく送り込まれた、ニンゲン側の刺客」

ーーー
ーー


盗賊「俺は決めたけど、姫様は?」

王女「あっ、これ…いえ、こっちの方が…どれも美味しそうなので迷ってしまいますね」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 00:03:38.33 ID:jAb96GMeO

盗賊「じゃあ、両方頼もうぜ?」

王女「えっ?」

盗賊「姫様は自分が食べる分を取る。残りは俺が食べる。そうすれば問題ないだろ?」

王女「……そうは言っても、運ばれている料理を見てみると結構な量ですよ?」

盗賊「ハラ減ってるから大丈夫だって」ウン

王女「いきなり食べると胃が痛くなりますから、ゆっくり食べて下さいね?」

盗賊「分かってるって。あ、注文お願いします!」

看板娘「あっ、は〜い」

盗賊「えっ〜と、これとこれ…あとこれも頼むわ。野菜多めで」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 00:06:12.74 ID:jAb96GMeO

看板娘「………」

王女「(急に顔が険しくなった。まさか、またなのでしょうか? 嫌だなぁ……)」

盗賊「あの、聞いてます?」

看板娘「は〜い、勿論聞いますよ。盗賊さん」ニコニコ

盗賊「……あっ」

看板娘「やっと思い出しましたぁ?」

看板娘「以前、きみの尻尾はとってもステキだね。って言われて不覚にもキュンときたんですけどねぇ」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 00:11:24.35 ID:jAb96GMeO

盗賊「あ〜、そんなこともあった。かもね……」

看板娘「へ〜、修道女さんですかぁ。本当に見境ないんですねぇ」

盗賊「そういうわけじゃーー」

看板娘「どうやらあたしにだけじゃなくて、色んな娘に言ってるみたいですねぇ」チラッ

王女「(笑顔が怖いっ!)」

王女「(けど、綺麗な人…狐のしっぽだ。あっ、ちょっと色が変わってる)」

看板娘「よくもまあ平気な顔して女連れて来られましたねぇ。バカにしてるんですかぁ?」ニコニコ

盗賊「いやいやいや? 詳しくは話せないけど彼女とは色々な事情があってーー」

看板娘「気にしてたしっぽを褒められて舞い上がったあたしの喜びを……返せっ!!」ブンッ
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 00:15:44.89 ID:jAb96GMeO

盗賊「危ねっ!」ヒョイッ

看板娘「避けんなっ!」

ガシッ…

看板娘「ちょっ…離してよ!」

盗賊「いいから聞けよ」グイッ

看板娘「あっ…」

盗賊「きみの尻尾が綺麗だって言ったのは本心だ。これっぽっちも馬鹿になんかしてないよ」

看板娘「じゃあ、その娘はなんなのさ。あたしのことをからかって楽しいわけ?」

盗賊「そんな悪趣味なことはしねえよ。俺は今、彼女の護衛をしてるんだ」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 00:17:46.70 ID:jAb96GMeO

看板娘「……ほんと?」

盗賊「ああ。嘘だと思うなら思いっ切り叩いて構わないぜ? きみの気が済むならね」

看板娘「なら、遠慮なく」

コツンッ…

盗賊「いてっ…」

看板娘「な〜んてね。嘘じゃないのは分かるよ。あんた怪我してるしさ。また無茶したわけ?」

盗賊「あ〜、うん。まあ、それなりにね。本当に色々あったんだよ」

看板娘「…ハァ…ねえ、修道女さん」

王女「えっ、わたしですか!? な、何でしょう?」

看板娘「この人、酷いくらい優しいからら本気になっちゃダメだよ?」ボソッ
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 00:20:10.53 ID:jAb96GMeO

看板娘「……ほんと?」

盗賊「ああ。嘘だと思うなら思いっ切り叩いて構わないぜ? きみの気が済むならね」

看板娘「なら、遠慮なく」

コツンッ…

盗賊「いてっ…」

看板娘「な〜んてね。嘘じゃないのは分かるよ。あんた怪我してるしさ。また無茶したわけ?」

盗賊「あ〜、うん。まあ、それなりにね。本当に色々あったんだよ」

看板娘「…ハァ…ねえ、修道女さん」

王女「えっ、わたしですか!? な、何でしょう?」

看板娘「この人、酷いくらい優しいから本気になっちゃダメだよ?」ボソッ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 00:59:28.10 ID:jAb96GMeO

王女「えっ?」

看板娘「それじゃ、少々お待ち下さ〜い」トコトコ

盗賊「はぁ、化かされたのはこっちじゃねえか。ったく、分かりにくい冗談は止めろよな」

王女「……あの」

盗賊「ん?」

王女「彼女とは何があったのですか? しっぽだけでああはならないでしょう?」

盗賊「ちょっとしたトラブルに巻き込まれてたから助けただけさ。それ以来、あんな感じ」

王女「(……嘘。それだけでニンゲンに対する不信感や敵対心が消えるとは思えない)」

王女「(それどころか、あの方は泥棒さんに好意を抱いている)」

王女「(それが恋愛的なものなのかは分からないけれど。何というか、信頼のような……)」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 01:08:48.34 ID:jAb96GMeO

看板娘「はいお待ち」

盗賊「お〜、相変わらず美味そうだな」

看板娘「あんたさ、あんまり無茶しちゃダメだよ? 一人じゃないんだからさ」

盗賊「はいはい、分かったよ」

看板娘「ったくもう。じゃっ、ごゆっくり」トコトコ

王女「………」

盗賊「どうした? 早く食べようぜ」

王女「あ、はい。そうですね……」

盗賊「?」

王女「(彼を知りたいと思うのは好奇心から? それとも単純に、彼に好意を抱いているから?)」

王女「(何だか、ちょっとだけもやもやします。それに、他人に対してこんなにも干渉的になるなんて……)」

王女「(わたしって、こういう性格だったんだ。本当の本当に、自分のことを知らなかったんですね)」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 01:27:12.21 ID:jAb96GMeO

盗賊「ほい」ヒョイッ

王女「んぅっ!?」モゴモゴ

盗賊「ははっ、悪りぃ悪りぃ。口開けっ放しだったからさ、どう?」

王女「…ゴクンッ…とっても美味しいです!」

盗賊「そっか、そりゃあ良かった」

王女「でも、もう止めて下さいね? 喉に詰まったりしたら大変ですから」ニコッ

盗賊「は、はい。分かりました」

王女「あ、そうでした。白馬さんは大丈夫でしょうか? 預けた先で何もなければ良いのですが……」

盗賊「性格とかは言っといたから余計なことをしなければ大丈夫だよ。今頃は彼女も大人しくメシ食ってるだろうさ」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 01:44:56.45 ID:jAb96GMeO

王女「何を食べているんでしょうか?」

盗賊「干し草とか林檎とかじゃないか? 金は渡したし腹いっぱい食ってると思うよ」

王女「ずっと走っていましたからね。凄いですよねっ!白馬さんって!」キラキラ

盗賊「(尊敬してんのかな。いや、多分してんだろうなぁ……向こうはどうなんだろ?)」

ーーー
ーー


白馬「(あの女、今頃は彼と一緒に…チッ、帰ったら一発お見舞いしてやろうかしら)」

白馬「(しかし、此処には碌な男がいないわね。まるでなっちゃいないわ)」

白馬「(彼、後で迎えに来るって言っていたけど早く来てくれないかしら。退屈……)」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 01:46:13.00 ID:jAb96GMeO
また明日
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 02:29:09.16 ID:f91Kuai90
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 19:40:20.53 ID:gVdzg8QYO

白馬「(……食べよ)」モグモグ

白馬「(ま、彼が選んだ厩舎だけはあるわ。ご飯の質は悪くない。78点くらいね)」ウン

白馬「(彼があの女と二人きりなのは気に入らないけど、食べてる姿を見られるのって好きじゃないし……)」

『馬を預けたいんだが空いてるかな?』

『ええ、大丈夫ですよ』

『そうか、助かるよ。ところで、あの馬は?』

『ああ、つい先ほどやって来たお客様のものですよ。よい牝馬です。ウチで育てたいくらいですな』

白馬「(フン、まっぴら御免だわ。というか食事中なんだから静かにしなさいよ)」モグモグ

ツカツカ…

『ふむ、まだ若い。これは成長が楽しみだな。競走馬にしたらさぞや人気が出るだろう』
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 19:42:16.69 ID:gVdzg8QYO

白馬「………」ギロッ

『あ、あまり近付かないで下さい。とても気性が荒いとのことなので……』

『この馬を預けたのはどんな男でした?』

『……何故、そのようなことを?』

『友人の馬によく似ているんだ。もしからしたら、と思ってね。どんな風貌だったかな?』

『申し訳ありませんが他のお客様のことはお話出来ません。トラブルの元ですので……』

『女性を連れていなかったか?』

『いえ、お一人でした。さあ、もうよろしいでしょう。手続きはこちらでお願いします』トコトコ
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 19:49:05.54 ID:gVdzg8QYO

『……怖いか?』

白馬「………」フンッ

『中々肝が据わってるな。普通なら逃げ出すか暴れ出すんだが……』

白馬「(こいつ…)」

『睨み返すとは良い度胸だな。ニンゲンに渡すには惜しい馬だ。まあ、今はいい。今は…』

『お客様?どうされました?』

『……ああ、これは済まない。あまりに美しいものだから見惚れてしまってね。今行くよ』

ツカツカ…

白馬「(っ、何なのあいつ……鼻が曲がりそう。何で誰も気付かないの?)」

白馬「(まるで汚濁そのものを煮詰めたような悪臭。こんなにも酷い臭いは嗅いだことがない)」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 20:01:48.46 ID:gVdzg8QYO

白馬「(あれは何かが違う…)」

白馬「(あいつは『今は』と言っていた。それが本当なら、まだ時間はある)」

白馬「(彼とわたしを追ってきたのは間違いない。もしくは、あの女を狙っている)」

白馬「(伝えるにも苦労しそうだけど、彼が来たら何とかして伝えないと……)」

ーーー
ーー


盗賊「はぁ〜、こちそうさまでした!」パンッ

王女「フフッ…ご馳走さまでした」

盗賊「ハラ減ってたのもあるけど、やっぱり美味かったなぁ。うん、満足」

王女「泥棒さん、本当に全部食べちゃいましたね……道行く方も見入ってましたよ?」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 21:25:56.71 ID:gVdzg8QYO

盗賊「そうでなくちゃ困る」

王女「?」

盗賊「泥棒になりたい姫様に一つだけ教えよう。泥棒とは目立ちたがり屋でなくてはならない」

王女「えっ? 主に暗がりや路地裏などを移動するのではないのですか?」

盗賊「と、思って捜すだろ?」

王女「……あっ、なるほど。泥棒ではなく泥棒を追う立場になって考るということですね?」

王女「確かにこんな人通りの多い場所。まして屋外で食事しているだなんて想像もしないです」

盗賊「でも、確実に姿を消す方法はない。向こうだって泥棒の立場になって考えてるからね」

王女「へぇ〜、そういう駆け引きがあるんですか。色々考えているのですね」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 21:31:03.25 ID:gVdzg8QYO

盗賊「そう、時には派手に大胆に」

盗賊「ある時は繊細且つ慎重に…ってね。状況によって変わるんだ。服装とか仕草とかもね」

王女「泥棒さんはどっちが好きですか? 派手か、慎重か」

盗賊「派手か慎重か?」

盗賊「そんなこと聞かれたのは初めてだな。そうだな、強いて言うなら……どっちも?」

王女「フフッ、両方ですか。欲張りなんですね」

盗賊「そりゃもう当たり前さ!」

盗賊「って言うか、欲張りで目立ちたがりじゃなきゃダメだ。そうじゃなきゃ面白くない」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 21:33:35.49 ID:gVdzg8QYO

王女「質問があります」ハイ

盗賊「はい、どーぞ」

王女「それは盗むのが楽しいのですか? それとも盗むまでが楽しいのですか?」

盗賊「ん〜。そう聞かれるとどうなんだろうな? あんまり考えたことねえや」

王女「では、質問を変えます」ハイ

盗賊「ん。どーぞ、何でも聞きたまえ」

王女「色々な女性に気のあるような素振りや言動をしているというのは本当ですか?」

盗賊「……え〜っと。保留出来ます?」

王女「残念ながら出来ないようです」ニッコリ

盗賊「……別にそんなつもりはない。ってこともないんだけどさ。何て言うかなぁ…」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 22:02:57.69 ID:gVdzg8QYO

王女「(何と答えるのでしょう?)」

盗賊「まず、男なら女の前で格好付けます。そういうもんです。多分」

盗賊「女だって美しくありたい綺麗に見られたいと思うだろ? それと同じさ」

王女「それは、そうかもしれませんけど……」

盗賊「だろ? で、男ってのは強がって粋がって死ぬまで走り続けるんだよ。本当に、死ぬ瞬間まで……」

王女「(顔を伏せた…声も少しだけ震えているような……)」

盗賊「いつかヘマして死んじまってもさ。あいつは格好の良い泥棒だった。そう言われたいんだ」

盗賊「って言うと子供っぽいかな?」

王女「い、いえっ! そんなことはないです。わたしには理解は出来ないですけど……」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 22:48:17.62 ID:gVdzg8QYO

盗賊「はははっ!そうだよな。まあ、俺はそんな感じ」

王女「(……笑ってる。わたしの気のせいだったのでしょうか?)」

盗賊「お〜い、金はテーブルに置いとくからな〜!」チャリン

看板娘「は〜い!良かったらまた来てね!」

盗賊「おう、ごちそうさま!」

盗賊「さ〜て、そろそろ迎えに行くか。首長〜くして待ってるだろうからさ」

王女「ええ、そうですね」

盗賊「ふ〜、腹一杯食ったら眠くなってきた。早めに宿の予約しとくかぁ」

王女「(……自分から聞いておいて何ですが、何故話してくれたのでしょう?)」

王女「(先ほどのは本当は全部嘘で、はぐらかしただけなのでしょうか? それとも全部本当のことを話したのでしょうか?)」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/05(月) 22:56:48.87 ID:gVdzg8QYO

盗賊「姫様?」

王女「いえ、何でもありません。行きましょう」

トコトコ…

王女「(考えが読めなくて不思議な人……でも、だからこそ知りたいと思う)」

王女「(本の続きが気になる感覚と似ている。早く知りたい。もっと見ていたい)」

王女「(でも、そう簡単には結末に辿り着けない。泥棒さん、それはわざと? それとも天然?)」

盗賊「蛇料理か。美味いのかな……」

王女「(フフッ、きっとあれが自然なんですね。表も裏もない、そのままの姿……)」

王女「(わたしは彼と居て楽しいと感じている。だったら難しく考える必要はない)」

王女「(わたしの結末は変わらないけれど、こうして外に出られただけでも幸せなのだから……)」
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