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魔王「リインカーネーション」
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302 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 20:56:50.38 ID:yQJdRAdIO
盗賊「ッ、詰め所に…戻らねえとな……」フラッ
盗賊「(くそっ、意識を保つのがやっとだ。気を抜いて倒れたらそのまま逝っちまう)」
ガシャッ…
白騎士「…ゴボッ…ガフッ…」
盗賊「(おいおい冗談だろ。首吹っ飛んでんのにまだ生きてんのかよ。頭が胸元まで垂れ下がって……)」
白騎士「……右肩を狙わせたのは武器を封じる為か。利き手を失ったのは私の方だったと言うわけだ」ザッ
盗賊「(有り得ねえ。今に分かったことじゃねえが、あいつは本物のバケモノだ)」
白騎士「ゴフッ…鞭を使ったのは先を取る為ではなく、初めからこれを狙ってのこと……」
白騎士「全ては確実に仕留める為の布石。堪え忍び、息を殺し、この時を待っていた。そうであろう?」
盗賊「(もう、声も出ねえな。ここまで来ると笑えてくるぜ)」
白騎士「見事、実に見事。褒めて遣わす。それでこそ私の輪転器に相応しい」
303 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 22:44:29.67 ID:yQJdRAdIO
盗賊「(何? 今、何て言った?)」
白騎士「私は終わらん。私に死は訪れない。新たな血と肉を得て、私は再び歩き出す」ダッ
盗賊「(……ざけやがって、あんなのどうしろってんだよ。もう策は尽きた。避けようにも体が耳を貸さねえ)」
白騎士「ハハハッ! 体が歓喜に震える。久しい、久しいぞ。そうだ、そうであった」グオッ
盗賊「イカレ野郎が……」
ガシッッ!
盗賊「ぐッ…ゲホッ…」
白騎士「求めるものは苦難の果てにある。それこそが勝利。私の求めるもの」
ダッダッダッ…ドサッ!
盗賊「(ぐっ…この場所は遺体があったとこか? 何だ、さっきより光が……)」
304 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 23:59:23.58 ID:yQJdRAdIO
白騎士「これで準備は整った」
盗賊「(まさか男に覆い被さられる時が来るなんてな。これが美女なら諦めも付いたのに……)」
ゴシャッ! ズルリ…
盗賊「(今の音は何だ? 垂れ下がった頭が邪魔で何も見えねえ)」
白騎士「今こそ、転生の時……」
ゾブッ…
盗賊「(ッ、何だ。腹ん中に何かが入ってくる。くそっ、すっげえ痛え…力が抜けてく……)」
盗賊「(寒くて冷たくて眠い。今目を閉じたら、さぞや気持ち良く眠れるんだろうな)」
305 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 00:25:52.20 ID:U0wfq6ijO
白騎士「貴様の死が、私の新たな始まりだ」
盗賊「(……ああそうか、これが死ってやつか。何か、妙に落ち着くな。悪くねえ気分だ)」
盗賊「(死ぬのはいい。どうせいつかは死ぬんだ。でも、こんな奴に殺されんのは御免だ)」
白騎士「さあ眠れ。私の器として生まれたことを光栄に思うがいい」
盗賊「……そんなに死ぬのが怖いのか。あんた、案外臆病な奴なんだな」
白騎士「まだ減らず口を叩けるとはな。だが、もうじき終わる」
盗賊「……口さえ動けば上等さ。口さえ動けば、喉元に齧り付けるからな」
ガブッッ! ブチブチッ!
白騎士「がッ!?」
盗賊「(これで死ぬかどうか分かんねえ。ただ、やれることはやる。死ぬまで諦めねえ)」
306 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 01:28:35.59 ID:U0wfq6ijO
白騎士「…ゴブッ…よ…ぜ…やめろ」
盗賊「………」ギチッ
白騎士「やめろォォォッッ!!」
盗賊「………」グイッ
ブチブチッッ! ゴロンッ…
白騎士「」ドサッ
盗賊「……どんな奴でも死ぬときゃ死ぬんだよ。憶えとけ」
ガシャンッ…
盗賊「?」チラッ
盗賊「(兜が外れたのか。つーか、あの顔……まあいいや。何かもう、色々疲れた……)」
307 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 01:33:10.41 ID:U0wfq6ijO
また明日
308 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 05:31:57.08 ID:ZRDtCuwJo
乙
309 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/24(土) 00:28:28.78 ID:/HbUbsMAO
【これまでのあらすじ】
王の秘宝、輪廻転生機。通称『輪転機』
輪転機を狙って王宮に忍び入った盗賊だったが、宝物庫で目にしたのは寝間着の女性であった。
状況を飲み込めずにいる盗賊に対し、彼女は自分が王女であること、探し求める輪転機が自分であることを告げる。
輪転機とは輪転器。王の力は器を変えて代々受け継がれているのだという。
「わたしを盗みますか?」
盗賊は面倒事になるからとその場を立ち去ろうとするが、駆け付けた騎士に取り抑えられてしまう。
暗殺未遂で処刑を言い渡された盗賊は独房へと入れられたが、さして気にすることもなく看守と談笑していた。
そこへ老人(魔王)が現れる。老人は看守に下がるように言い、盗賊に語り始めた。
「儂の体は長くは保たない」
王位継承の時は刻々と迫っており、この時期になると輪転器暗殺を企む輩が現れる。
何故にそんな話をするのかと問う盗賊に、今や王宮内部の者達は信用出来ないのだと言う。
310 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/24(土) 00:30:23.78 ID:/HbUbsMAO
「儂の娘を、輪転器を盗んでくれ」
王の力が輪転器へと渡るまで彼女を守って欲しい。それが、魔王の依頼であった。
盗賊はその依頼を引き受けると夜に脱獄。再度王宮へと忍び込み、宝物庫にて王女と再会する。
まさかの再会に驚く王女。
彼女は輪転器であることを受け入れながらも、外界への憧れを捨てきれずにいた。
「今から外に出て星を眺めようと思ってるんだけど、良ければ一緒にどうかな?」
盗賊の言葉に大きく心を動かされる王女だったが、自分の我が儘で混乱を招くことを恐れ、決断を下すことが出来ない。
いっそ何も言わず連れ去ってくれたなら。そんなことを考えている間に騎士達の足音が迫っていた。
それでも王女の答えを待つ盗賊。曰く、無理矢理に攫うような真似は好きではないらしい。
「きみは輪転器なんて無機質なモノじゃない。きみは、生きてる」
この言葉により、王女は王宮を出ることを決意する。
「……今からでも、間に合いますか?」
盗賊は王女の願いを叶える為、傷を負いながらも王宮から脱出するのであった。
311 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/24(土) 00:33:44.81 ID:/HbUbsMAO
逃亡中、失血により盗賊が落馬してしまう。
王女の手当てによって傷は塞がったものの盗賊に意識はなく、失血と寒さに身を震わせていた。
「迷う必要なんてない。この人を死なせはしない」
文字通り命を賭して王宮から連れ出してくれた盗賊を救う為、王女は服を脱ぎ、冷え切った体に寄り添った。
一夜が明け、添い寝の甲斐あってか盗賊は意識を取り戻す。
「行くって、何処へ……」
「姫様の自分探しに決まってるだろ?」
こうして、二人は街を目指した。
盗賊は追っ手が来ないことを不審に思いながらも馬を走らせ、街に到着。
王女は門番によるニンゲンへの差別を目の当たりにし、これが世の常識なのだと実感する。
一触即発と思われたが、賄賂によって門を潜り抜け、二人は街に足を踏み入れた。
「な、何だか目が回りそうです」
王宮とは全く違う景色に驚く王女。街の人々はそれぞれがそれぞれの生活をしていた。
312 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/24(土) 00:38:06.17 ID:/HbUbsMAO
変装用の服を買い。遅めの朝食。
朝食を終え、預けていた白馬を迎えに行こうとするも、何やら騒ぎが起きていた。
見れば厩の辺りに煙が上がっており、急いで駆け付けると野次馬の会話が耳に入る。
『ついさっき兵士の会話を聞いちまったんだが、厩舎の主が焼け死んでたって話だ……』
厩へ近付くと警備兵に呼び止められ、二人は厩の中へと案内される。
警備兵によると盗賊の馬のみが逃げ、他の馬は全て斬殺されたと言う。
そして、壁には盗賊に向けた殴り書きがあった。
「我が王冠は貴様の手に在り。貴様の王冠は我が手に在る。さあ、戴冠の戦を始めよう」
盗賊はその意味が分からぬまま、気を失った王女を背負い宿屋へと向かったのであった。
313 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/06/24(土) 00:52:53.17 ID:/HbUbsMAO
目覚めた王女は、外へ出たことを悔いていた。
「泥棒さんに傷を負わせたのも、厩舎の主さんを死なせてしまったのも、わたしの我が儘が原因です」
これ以上迷惑を掛けるわけにはいかない。王宮に戻る。そう言い出した王女に、盗賊は全てを打ち明けた。
王の依頼内容。輪転器暗殺を企てている存在。何処へ行こうとも君は命を狙われるのだと。
それを聞いた王女は、これまでの行いは全て依頼の為だったのかと涙ながらに問い質す。
「あの時、きみに一目惚れしたんだ。今まで見た何よりも綺麗で、誰よりも輝いて見えた」
更に泣き出す王女であったが、徐々に落ち着きを取り戻し、事件のあらましについて盗賊に訊ねた。
話を聞く内に、王女はある人物を思い出す。それは千年も前に没した白い騎士。
犯人と戦うことを決意した盗賊。その助けになればと思い、王女は語り出した。
王女が白い騎士について話し終えると、盗賊は部屋の前にいた警備兵を招き入れた。
警備兵は王女の言葉を信じ、宿屋よりは安全だと言い、二人を詰め所へと案内する。
314 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/24(土) 02:02:22.81 ID:/HbUbsMAO
詰め所へ到着した後、盗賊は犯人について警備兵に訊ねたが進展はなかったという。
特に怪しいのは盗賊が馬を預けた直後にやって来た男。盗賊の言うように右手に火傷はあったが何も所持していなかったとのこと。
盗賊がその男に会いに行こうとした時、突如王宮騎士団長が現れる。何故此処が分かったのかと問う王女に、馬の導きだと答える騎士団長。
騎士団長の背後から現れたのは白馬。白馬は逃げ出したのではなく、盗賊の危機を報せる為に走ったのだった。
盗賊は二人に王女を任せ、詰め所を後にする。宿屋に到着し足を踏み入れると、中は血の海であった。
宿泊客全員が殺害されたかと思ったが、犯人と思しき男のみが生きていた。
男は何かに怯えるように小刻みに震えている。盗賊が近付こうすると、男の絶叫と共に何かが現れた。
男の体を突き破って現れたのは白い騎士。白銀の甲冑を着た男が犯人かと思われたが、甲冑が人を着ていたのだ。
315 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/24(土) 02:11:01.38 ID:/HbUbsMAO
長い戦いが始まった。
一度距離を取ろうとするが追い付かれ、接近戦を余儀なくされる。
石畳ごと地面を穿つ圧倒的な力に戦慄しながらも間一髪で避け、鞭による奇襲を仕掛ける。
攻撃を掻い潜り鎧通しで刺し貫き、更には心臓を貫くが白い騎士の動きは止まらない。
白い騎士は動揺する盗賊の首を掴み、盗賊を盾に家屋を次々と突き破り、屋根を蹴り跳んだ。
盗賊は内肘を突き刺し空中で拘束を解き、牧場に落下。藁の山に救われる。
焼け跡が淡く光っていることに疑問を持つ盗賊だったが、直後に白い騎士が牧場に降り立ち再び戦いが始まる。
先程とは打って変わり舞うように斬り付けてくる攻撃に付いて行けず、袈裟に斬られてしまう。
身を捩って体勢を立て直したものの白い騎士の猛攻は収まらず、遂には右肩をも貫かれる。
膝を突き敗北したかに見えたが鞭に仕掛けていた爆弾を誘爆させ、首を吹き飛ばすことに成功。
しかしそれでも白い騎士を倒すことは叶わず、遺体現場に組み伏せられてしまう。
盗賊は死を覚悟したが、垂れ下がった首の繊維に齧り付き、白い騎士の頭部を引き千切ろうと試みる。
やめろと叫ぶ白い騎士の声が届くことはなく、頭部を引き千切られ完全に沈黙。
死闘の末に勝利したものの、盗賊は深い微睡みに落ちたのだった。
316 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/24(土) 02:21:06.13 ID:/HbUbsMAO
普通に続き書けば良かった。また明日。
317 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/24(土) 17:06:25.49 ID:paZgWt6xO
あらすじとか必要ないから本編書いてくれよ
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/24(土) 19:19:14.57 ID:sMx/A2h3o
投下おつ
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/25(日) 00:04:27.76 ID:vxyR53DYO
【詰所】
コンコンッ…
警備兵「誰だ?」
『事件現場の見張りを担当している者です。報告があります』
警備兵「その場で話してくれ」
『裏手の牧場にて白い騎士とニンゲンが交戦。両者共に死亡したかと思われます』
王女「そんなっ!! あなた達は一体何をしてーー」
警備兵「黙っていろ」
王女「!!」ビクッ
『何か問題でも?』
警備兵「いや、何も問題ない。それより死亡したと思われるとは何だ? 生存確認は?」
『いえ、しておりません。その必要はないと判断しました』
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/06/25(日) 00:09:42.97 ID:vxyR53DYO
【詰所】
コンコンッ…
警備兵「誰だ?」
『事件現場の見張りを担当している者です。報告があります』
警備兵「その場で話してくれ」
『裏手の牧場にて白い騎士とニンゲンが交戦。両者共に死亡したかと思われます』
王女「そんなっ!! あなた達は一体何をしてーー」
警備兵「黙っていろ」
王女「!!」ビクッ
『何か問題でも?』
警備兵「いや、何も問題ない。それより死亡したと思われるとは何だ? 死亡確認は?」
『いえ、しておりません。その必要はないと判断しました』
321 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/06/25(日) 00:42:24.95 ID:vxyR53DYO
警備兵「……今から行く。医者を手配しておけ」
『その必要はないかと思いますが』
警備兵「念の為だ。死亡していた場合は医者の診断書が必要になる」
警備兵「後になって報告書に時間を取られると面倒だ。早い内に済ませたい」
『それもそうですね。了解しました』ザッ
タッタッタッ…
警備兵「申し訳ない。お聞きの通り急用が出来たので少しばかり外します」
騎士団長「ああ、了解した」
王女「…………」
警備兵「では、失礼」ザッ
ガチャ…パタンッ…
王女「……これも、外では当たり前のことなのですか?」
322 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/25(日) 01:26:38.04 ID:vxyR53DYO
騎士団長「姫様、聞いて下さい」
王女「彼等は警備隊なのでしょう!? 警備隊とは守る立場にある方々ではないのですか!?」
王女「先ほど報告に来た方は現場にいたと言っていました!彼等なら助けられたかもしれない!!」
騎士団長「(姫様……)」
王女「……助けることは出来なくともお医者様は呼べたはずです。なのに放って置くなんて、わたしには理解出来ません」
王女「それも、あんなにも平然としていられるなんて……何故ですか? 彼がニンゲンだからですか?」
騎士団長「……そうです。ニンゲンとは我々にとって『その程度』の存在なのです」
323 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/06/25(日) 10:16:53.48 ID:OvgkZgD8O
王女「っ、何故そこまで…」
騎士団長「守る立場だからこそです。我々のような者にとって、ニンゲンとは犯罪者でしかない」
王女「全てがそうと言うわけではないでしょう?中には善良なニンゲンもいるはずです」
騎士団長「確かにそうでしょうな。全てのニンゲンが悪であるとは思いません。民間人の中には親しくしている者もいるかもしれません」
騎士団長「しかしながら、私のような立場にある者は犯罪を犯すニンゲンしか知らない」
王女「知らない?」
騎士団長「知らないと言うより、仕事上悪党を相手にすることが圧倒的に多いのです」
騎士団長「その為、私や警備隊の彼等にとってニンゲンとは悪であるという考えが根付いた」
王女「……余りにも偏った考えです。そこに救うべき者がいるのなら種族など関係ないはずです」
騎士団長「そうでしょうな。私もそうあるべきだと思います。しかし、世に平等などない」
324 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/25(日) 10:41:01.77 ID:OvgkZgD8O
騎士団長「この際、はっきりと言っておきます。姫様が仰っていることは綺麗事です」
王女「!!」
騎士団長「差別もあれば偏見もある。それはニンゲンに限ったことではありません。此方側でも起きていることなのです」
騎士団長「耳や尻尾を持つ者を獣だと迫害する者もいれば、私のように角がある者を野蛮だと罵る者もいる」
王女「………」
騎士団長「……ニンゲンによる殺人事件が起きた場合、そのご家族は誰を憎むと思いますか?」
王女「いきなり何をーー」
騎士団長「彼等は犯人ではなく、ニンゲンという種族そのものを憎みます」
王女「…………」
騎士団長「同族による殺人事件ならば犯人を憎むでしょう。しかし、種族が違えば種族を憎む」
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/25(日) 11:09:19.00 ID:OvgkZgD8O
王女「……わたしには、分かりません」
騎士団長「そうでしょうな。姫様には書物で得た知識しかない。彼等が与えられた痛みを見たことがないのですから」
王女「……っ」キュッ
騎士団長「彼等警備隊はその痛みを知っている。何度も何度も見てきたことでしょう」
騎士団長「そして、一度根付いたものは消えることはない。種族の違いとはそれ程までに大きい。姫様、これが現実なのです」
王女「だからニンゲンである彼を見殺しに? ニンゲンならば見殺しにしても構わないと?」
騎士団長「………」
王女「……被害者の家族は犯人ではなくニンゲンそのものを憎む。そう言いましたね」
326 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/25(日) 14:30:44.28 ID:OvgkZgD8O
王女「そのお言葉を返すようですが」
王女「わたしはニンゲンという種族に救われたのではありません。わたしは彼というニンゲンに救われたのです」
王女「彼は彼です。自由で優しい、温かい心を持った…わたしの……」ポロポロ
騎士団長「………」
王女「……彼は境界線を飛び越えて、種族を飛び越えて、わたしをわたしとして連れ出してくれた」
王女「まだ二日と経っていないけれど、彼は短い間に沢山のものを見せてくれたのです……」フラフラ
ガシッ…
王女「離して下さい。彼に会いに行きます……」
騎士団長「なりません。姫様を守ると約束しました。これは奴の頼みでもあります」
王女「…っ…うぅ…わたしは、まだ彼に何も……与えられてばかりで…何も……」ポロポロ
327 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/06/25(日) 23:17:08.89 ID:BGtx0UxZO
王女「お言葉を返すようですが」
王女「わたしはニンゲンという種族に救われたのではありません。わたしは彼というニンゲンに救われたのです」
王女「彼は彼です。自由で優しい、温かい心を持っています。彼は…彼はわたしの……」ポロポロ
騎士団長「………」
王女「……彼は境界線を飛び越えて、種族を飛び越えて、わたしをわたしとして連れ出してくれた」
王女「まだ二日と経っていないけれど、彼は短い間に沢山のものを見せてくれたのです……」フラフラ
ガシッ…
王女「離して下さい。彼に会いに行きます……」
騎士団長「なりません。姫様を守ると約束しました。これは奴の頼みでもあります」
王女「…っ…うぅ…わたしは、まだ彼に何も……与えられてばかりで…何も……」
328 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/26(月) 00:47:45.00 ID:b2rVHaqQO
騎士団長「姫様、落ち着いて下さい。まだ奴が死んだと決まったわけではありません」
騎士団長「此処を出る前に警備兵が医者を手配させたのを憶えていますか?」
王女「……ええ、死亡診断書とやらを書いて貰う為でしょう?」
騎士団長「いえ、私はそうではないと思います。彼は奴に助力するつもりでしたからな」
王女「えっ…」
騎士団長「おそらく、報告書や診断書云々は医者を呼ばせる為の方便」
騎士団長「どうにかしてあのニンゲンを助けたい……」
騎士団長「などと言った所で聞く耳を持たなかったでしょう。あのように言うしかなかったのです」
329 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/26(月) 01:00:42.58 ID:b2rVHaqQO
王女「では、兵士さんは泥棒さんを……」
騎士団長「ええ、助けるつもりです。死亡確認していないのであれば、まだ分かりません」
騎士団長「ですが、先程の報告者は確認するまでもない言っていました。となれば相当の深傷を負っていると見て間違いないでしょう」
王女「……助かる可能性はあるのですね?」
騎士団長「可能性はありますが助かるか否かは分かりません。そればかりは運としか……」
王女「……なら、待ちます。あのっ、先程は取り乱してしまって申し訳ありません」ペコッ
騎士団長「そ、そんなっ、姫様が謝ることなどありません!! 謝らなければならないのは私です。姫様に対してあのような過ぎた口をーー」
王女「お気になさらないで下さい」
王女「あれは警備隊の方々や此方側が抱えている様々な問題。それらを教える為に言って下さったのでしょう?」
330 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/26(月) 01:30:13.97 ID:b2rVHaqQO
騎士団長「………」
王女「現実。そう言われた時は頭をがつんと殴られたような気がしました」
王女「差別について納得は出来ませんが、現実に起きていることとして受け入れようと思います」
王女「ですから、謝ることなどありません。いつまでも無知なままでは駄目ですから」
騎士団長「姫様……」
王女「外は美しい世界だとばかり思っていました。これからは気を付けなければなりませんね」
騎士団長「これから? それは一体どういう……」
王女「泥棒さんが帰って来たら、また旅に出ることになると思いますから」
331 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/26(月) 01:45:03.02 ID:b2rVHaqQO
騎士団長「ですが、生きているかーー」
王女「ええ、生きているかどうかなど分かりません。だからこそ、信じて待ちます」
王女「泥棒さんはすぐに帰ってくると言っていました。だから、きっと大丈夫。きっと……」
騎士団長「(姫様のこんなお姿は見たことがない。たった一日で随分とお変わりになられた)」
騎士団長「(……いや、姫様が変わったのではない。私が姫様のことを何一つ知らなかったのだ)」
騎士団長「(私にとって、姫様があの部屋にいるのは当たり前だった。姫様が苦しんでいることなど知る由もなかった)」
騎士団長「(……違うな。もっと言うなら、私は知ろうとすらしていなかった)」
332 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/26(月) 01:54:56.19 ID:b2rVHaqQO
王女「……どうか、彼をお救い下さい」
騎士団長「(内向的で読書が好きな少女。勝手にそう思い込んでいたが、どうやら違っていたようだな)」
騎士団長「(おそらく、これこそが本来の姫様なのだろう)」
騎士団長「(泣きもすれば笑いもする。感情を露わにするのは変化ではない。当たり前のことだ)」
騎士団長「(しかし、また旅に出たいなどと言い出すとは。出来ることなら一刻も早く王宮へ戻って欲しいが……)」チラッ
王女「……お願いします。彼をお救い下さい」
騎士団長「(奴が生きて帰ったらどうするべきか……今の内にどちらを選ぶか決めておいた方が良さそうだな)」
333 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/26(月) 01:55:43.99 ID:b2rVHaqQO
また明日
334 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/26(月) 18:48:26.80 ID:kq6tQuAQO
姫がいくら盗賊庇おうが犯罪者だしな城に侵入する建物破壊する兵士を傷つける……
うん、ゴミ野郎だな盗賊
335 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/26(月) 20:11:22.65 ID:4ZwKmF14O
ついでに言えば姫様誘拐してるし白馬盗んでるし門番に賄賂渡してるし白騎士のことなんて殺しちゃってるしな
とんでもない極悪人だよ
336 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/27(火) 06:56:58.50 ID:Hhk4OGsIO
極悪人だな盗賊に稼ぎ頭の夫(兵士)が傷つけられて路頭に迷う家庭もあったりするんやろな
337 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/27(火) 07:45:00.80 ID:6mn+ZYD/O
そんな描写ないけど
>>336
には何が見えてるの?
338 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/27(火) 07:50:15.27 ID:NTKWR3S9o
誰一人傷付けてない上に城を破壊して雇用を生み出す有能盗賊。
なお白馬は、厩舎が爆破された際に見捨てられたところを、盗賊が回収しただけの模様。
339 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 19:46:34.50 ID:ojhQIDIBO
【厩舎】
『おい、これ見ろよ』ジャラッ
『こ、こいつは凄え。それ全部金貨かよ。このニンゲンは一体何者だ?大した身なりじゃないが……』
『そんなことはどうだっていい。それよりどうだい? 二人で山分けにしないか?』
『おいおい。死人から剥ぎ取る気か?』
『人聞きの悪いこと言うなよ。どうせ使い道がないんだ。このままじゃ金が泣いちまうだろ?』
『……まあ、それもそうだな。今なら誰にもバレやしない。今のうちに頂いちまおう』
『へへっ、現場の見張りなんて退屈で仕方なかったが、まかさこんなご馳走にありつけるとはな』
『ああ、これで当分は遊んで暮らせる。いっそ警備隊なんぞ辞めてーー』
ザッ…
『『!!?』』
警備兵「厩の前に姿がないから何をしているかと思えば二人揃って死体漁りか」
340 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 20:38:40.39 ID:ojhQIDIBO
『何だよ。文句あんのか?』
警備兵「いや? 別に文句はない。ただ、考えていた筋書きと異なる展開なので少々困っている」
『筋書き?』
『まさか独り占めにする気じゃねえだろうな?』
警備兵「……勇敢な警備隊員が殺人鬼に襲われていたニンゲンを助け、殺人鬼を打ち倒した」
警備兵「忌むべきニンゲンをも救おうと奮闘した警備隊員は街の英雄となり、更には莫大な報奨金を手に入れる」
警備兵「事件は解決。警備隊全体の評価も上がる。とまあ、こう考えていた」
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 20:41:16.51 ID:ojhQIDIBO
『ちなみに、その勇敢な警備隊員ってのは?』
警備兵「お前達以外に誰がいる?」
『……いまいち信用ならないな。あんたは何をしに来た』
警備兵「そこの白い騎士に警備隊が使っている剣を刺しておこうと思ってな」
『何でだよ?』
警備兵「そこのニンゲンに手柄を横取りされては警備隊の面子が潰れるだろう?」
『誰もニンゲンがやったなんて思わねえだろ』
警備兵「甲冑を見てみろ。見る奴が見れば誰がやったか分かる。そのニンゲンが使ったのは特殊な武器のようだしな」
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 20:44:42.18 ID:ojhQIDIBO
『た、確かにそうかもしれねえな』
警備兵「そこで、警備隊が殺したという確固たる証拠が必要になるわけだ」
警備兵「だが、『今のところ』そんな証拠は何処にもない。さて、どうする」
『なる程、読めたぜ。なければ作れば良いってわけだな?』
『そういうことなら俺達の剣を使ってくれ』ザクッ
警備兵「そうか、それは助かる。二本ともしっかり刺しておこう。報告書にもそう書いておく」
『裏切ったらただじゃおかねえぞ』
警備兵「そんな馬鹿な真似はしない。そんなことをすれば俺も終わるからな」
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 21:00:25.78 ID:ojhQIDIBO
『共犯ってわけだな。後は頼むぞ』
警備兵「ああ、そうだ。ちょっと待て」
『『?』』
警備兵「名誉の負傷だ。受け取れ」
ヒュッヒュッ…ブシュッッ…
『いぎゃあああ!!』
『ひ、ひぃぃっ!! 腕、腕が!!』
警備兵「傷がなければ不審がられる。それも必要な証拠だ。さっさと医者に行け。血相を変えてな」
『か、肩を貸してくれ』
『ッ、早くしろ。行くぞ』
タッタッタッ…
警備兵「富と名誉の為なら斬られても文句一つ言わないか。欲深い奴らだ」
警備兵「……しかし、奴等が英雄か。あの傷が癒えたら、酒場あたりで女相手に得意気に語るのだろうな」
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 21:04:10.97 ID:ojhQIDIBO
『共犯ってわけだな。後は頼むぞ』
警備兵「ちょっと待て」
『『?』』
警備兵「名誉の負傷だ。受け取れ」
ヒュッヒュッ…ブシュッッ…
『いぎゃあああ!!』
『ひ、ひぃぃっ!! 腕、腕が!!』
警備兵「傷がなければ不審がられる。それも必要な証拠だ。さっさと医者に行け。血相を変えてな」
『か、肩を貸してくれ』
『ッ、早くしろ。行くぞ』
タッタッタッ…
警備兵「富と名声の為なら斬られても文句一つ言わないか。欲深い奴らだ」
警備兵「……しかし、奴等が英雄か。あの傷が癒えたら、酒場あたりで女相手に得意気に語るのだろうな」
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 22:13:11.39 ID:ojhQIDIBO
警備兵「…チッ…まあいい。おい、人払いは済んだ。もう出て来ていいぞ」
ガサガサッ…
医師「………」
警備兵「何をしてる。さっさと始めろ」
医師「あんたも警備隊だろ? 何でそこまでしてニンゲンをーー」
警備兵「いいからさっさとしろ。それから、来る途中にも言ったはずだ。お前に拒否権はない」
医師「……例の件、本当に見逃してくれるんだろうな」
警備兵「ああ、助けることが出来たらな」
医師「っ、畜生。何でニンゲンなんか治療しなけりゃならないんだ……」ブツブツ
カチャカチャ…ヂョキヂョキ…
医師「……酷いな。脈はあるが助かるかどうか分からんぞ。適切な処置をしても見込み薄だ」
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 22:28:15.00 ID:ojhQIDIBO
警備兵「…………」
医師「も、勿論全力は尽くす。けどな、助からなくても文句は言うなよ」
警備兵「文句は言わないが口が滑るかもしれないな。怪しげな薬を売り捌いて違法に利益をーー」
医師「分かった!分かったよ!! やれば良いんだろ!!」
キュポンッ…バシャバシャ…
警備兵「今の液体は?」
医師「消毒と止血剤だ。微量の麻痺毒も混ぜてある。体が跳ねるかもしれないから抑えててくれ」
警備兵「分かった」ガシッ
医師「しっかし、この傷で生きてるのが不思議なくらいだ。普通ならとっくに……ん?」
警備兵「どうした?」
医師「臍の辺りに何かが刺さってる。何かの破片のようだが……まずはこっちだな」
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 23:00:51.59 ID:ojhQIDIBO
ジクジク…
医師「……なあ、やっぱり聞かせてくれないか」
医師「何でニンゲンを助ける? あんたは今まで何人ものニンゲンを取っ捕まえてきた」
医師「殺したことだってあるはずだ。それなのに何故だ? どうにも理解出来ない」
警備兵「お喋りな医者だな。まずは自分の口を縫ったらどうだ」
医師「真面目に聞いてるんだ。答えくれ」
警備兵「……偽りの名声を得る為に斬られる奴。誰かの為に命を張る奴。お前ならどっちを取る」
医師「それは後者だろうよ。ニンゲンじゃなければな」
警備兵「そうだな、ニンゲンじゃなければ隠れて助ける必要もなかった。あんな奴等に手柄をくれてやることも……」
医師「……あんたがそこまでして助けるなんて今でも信じられない。そんなに良い奴なのか?」
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 23:06:09.07 ID:ojhQIDIBO
警備兵「いいや、悪党だ。王宮に侵入して王の秘宝を盗もうとして捕まった」
医師「そんな馬鹿な……冗談だろ? そんなことしたってんなら既に処刑されてるはずだ」
警備兵「…………」
医師「……マジなのか?」
警備兵「ああ、これ以上詳しくは言えないがな」
医師「だったら尚更だ。何で助ける?」
警備兵「馬鹿だからだ」
医師「は?」
警備兵「このニンゲンは此方側の女の為に命を張って戦った。たった一人で、助けを求める素振りも見せずにな」
警備兵「まるで種族なんぞ関係ないように振る舞って、当然のように一人で戦いに行ったんだ」
医師「それでこのザマってわけか。正しく馬鹿で愚か者だな。満足げな顔しやがって……」
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/27(火) 23:37:58.77 ID:ojhQIDIBO
警備兵「気に入らないだろ?」
医師「気に入らないな。この顔を見てると腹が立ってくる。いけ好かない奴だ」
ビクンッ!
医師「っ、始まったか。しっかり抑えててくれよ」
警備兵「ああ、分かっている」ガシッ
医師「……その女ってのはさぞかしイイ女なんだろうな。男を馬鹿にさせるくらいに」
警備兵「そんな魔性ではない。確かに美しいが世を知らぬ箱入り娘だ。純粋で疑うことを知らない」
医師「そういう女の方がそそるのかね。まあ、分からんでもないな。守りたくなるってやつか?」
警備兵「かもしれないな。俺は御免被るが」
医師「何でだい?」
警備兵「彼女と共にいれば命が幾つあっても足りないからだ。傍にいれば『こうなる』」
医師「何でまた、そんな厄介な女に……」
警備兵「言っただろう。馬鹿なんだよ、こいつは……だから何としても助けたい。そして、俺が捕まえる」
医師「……そうか、なら協力しないとな。こんな凶悪犯をあの世に逃がすわけにはいかない」
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/28(水) 00:13:48.96 ID:uSRogMXUO
ジクジク…ヌリヌリ…
医師「……よし。後は破片だけだな」
警備兵「これは?」
医師「白銀のように見えるな。しかし妙だ。出血が全くない。刺さっていると言うより、めり込んでいるような……」
医師「とにかく引き抜いてみるしかない。金属片というのは厄介だからな。これで挟んで……」カチッ
ズズ…ズルリ…
警備兵「……長いな。こんなものが腹に入っていたのか」
医師「まるで結晶柱のようだ。綺麗に磨き上げられてる。それより見てくれ、引き抜いた箇所には傷一つない」
警備兵「こんなことが有り得るのか? 傷を負わせずに杭を打ち込むようなものだぞ?」
医師「……何かは分からないが、下手に触らなくて正解だった。小瓶に入れておこう」
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/28(水) 00:16:58.82 ID:uSRogMXUO
医師「(しかし気味が悪いな)」
医師「(微かに脈があるような気がする。まるで生きているようだ……)」
カチャカチャ…カランッ…キュッ…
医師「ふ〜っ、これで終わりだ。最善は尽くした」
警備兵「いや、まだ終わっていない。運ぶのを手伝え」
医師「…ハァ…ああ、分かったよ。しかし当てはあるのか?」
警備兵「ある。そこの荷車に乗せて運ぶぞ。急げ」
医師「まったく、本当に人使いの荒いお人だな。俺は医師だぞ? 走るのは馬の仕事だ」
警備兵「さっさとしろ。準備は良いな?行くぞ」
医師「準備もなにも拒否権は無いんだろ? 分かってるよ」ハァ
ガラガラガラ…
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/28(水) 00:58:13.61 ID:uSRogMXUO
ーーー
ーー
ー
『気でも狂ったか白騎士よ』
『私は正気だ。ただ、仕える人物を間違えた。私が仕えるべきは貴様ではない』
『呑まれたか。哀れな男だ……』
『哀れ? 哀れだと? 貴様に私を哀れむ資格など微塵もない。貴様も所詮は王の傀儡だ』
『……我が国の英雄の最期がこれか。やはり渡すべきではなかったな』
『何とでも言うがいい。私が仕えると決めたのは生涯ただ一人。彼女だけだ』
『聞け、白騎士。彼女はもういないのだ。正気を取り戻せ、それに呑まれるな』
『ならば待つまでだ。百年だろうと千年だろうと待ち続けよう。彼女は必ずや蘇る』
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/28(水) 01:40:31.20 ID:uSRogMXUO
『……最早何を言っても無駄なようだな』
『私が勝利を捧げるべきは彼女のみ。勝利は我が手に在り。いざ、参る』
盗賊「ッ!!」ガバッ
ゴツンッ!
盗賊「(ッ、いってえ!! 体中が痛え!!)」
盗賊「(あ〜痛え。ていうか暗いし狭いな。これは蓋か? 足で押してみるか)」ググッ
ギギィッ…ガコンッ……
盗賊「(開いた…けど薄暗いな。此処はどこだ? つーかこれ棺桶じゃねえか。死んだと思われたのかな)」
盗賊「(でも、毛布が掛けてあるってことは生きてるの分かってて棺桶に入れたってことだよな)」
盗賊「(……端っこに机と椅子がある。机の上にあんのは姫様の日記か?)」
盗賊「(ってことは姫様は無事なのか。でも何だってこんなとこにーー)」
コツコツ…ガチャッ…
王女「泥棒さん、林檎と葡萄の絞り汁を持って来ました。少しでも栄養を取らなーー」ポトッ
盗賊「………えっ〜と、お帰りなさい。いや、ただいま?」
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/28(水) 01:42:03.36 ID:uSRogMXUO
また明日
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/28(水) 01:48:09.76 ID:uSRogMXUO
『……最早何を言っても無駄なようだな』
『私が勝利を捧げるべきは彼女のみ。勝利は我が手に在り。いざ、参る』
盗賊「ッ!!」ガバッ
ゴツンッ!
盗賊「(ッ、いってえ!! 体中が痛え!!)」
盗賊「(あ〜痛え。ていうか暗いし狭いな。蓋でもされてんのかな? 足で押してみるか)」ググッ
ギギィッ…ガコンッ……
盗賊「(おっ、開いた…けど薄暗いな。此処はどこだ? つーかこれ棺桶じゃねえか。死んだと思われたのかな)」
盗賊「(でも、毛布が掛けてあるってことは生きてるの分かってて棺桶に入れたってことだよな)」
盗賊「(……端っこに机と椅子がある。机の上にあんのは姫様の日記か?)」
盗賊「(ってことは姫様は無事なのか。でも何だってこんなとこにーー)」
コツコツ…ガチャッ…
王女「泥棒さん、林檎と葡萄の絞り汁を持って来ましたよ。少しでも栄養を取らなーー」ポトッ
盗賊「………え〜っと、お帰りなさい? いや、ただいま?」
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/28(水) 01:49:13.69 ID:uSRogMXUO
また明日
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/28(水) 02:06:07.16 ID:GTF8G2J50
乙
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/28(水) 20:09:32.91 ID:C1mbaYfEo
凄い引き込まれるな
一気に読んで追いついた
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/29(木) 00:28:09.35 ID:Qgswn/tEO
王女「泥棒さん…グスッ…よかった……」ペタン
盗賊「お、おいっ…」
王女「お医者様に意識が戻らないかもしれないって言われて、傷も酷いし体はとっても冷たくって……」ポロポロ
盗賊「……そうだったのか」
王女「わたしを連れ出してくれたあの日から泥棒さんは傷を負ってばかりです。本当に、本当にごめんないっ」
盗賊「この傷は姫様に負わされたものじゃない。姫様が謝ることはないよ」
王女「でもっ、わたしは何もしてあげられない。あなたに与えられてばかりで何も……」
盗賊「姫様、自分のことをそんな風に思ってたのか。そんなことないのに」
王女「へっ?」
盗賊「俺は姫様に色んなものを貰ってる。だからさ、そんな悲しい顔しないでくれ」
360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/29(木) 01:18:49.55 ID:Qgswn/tEO
王女「…グスッ…何をです?」
盗賊「えっ? 何って何が?」
王女「わたしに貰っていると言いました。わたしは泥棒さんに何かを与えているのですか?」
盗賊「何って言われると上手く言えないけど、傍にいてくれりゃあそれでいいよ」
王女「……あ、ありがとうございますっ」カァァァ
盗賊「よっと」スタッ
王女「あっ、急に動いては体に障ります。まだ横になっていないと……」
盗賊「んなこと言われてもな。さっきから腰を抜かして立てないんだろ? ほら」スッ
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/29(木) 01:54:11.40 ID:DEEXV1bcO
王女「(左手。やっぱり右手はまだ……)」
盗賊「どうした?」
王女「い、いえっ。何でもありません……」スッ
ギュッ…グイッ…
盗賊「そういや、さっき何か落としたみたいだけど。あぁ、これか?」ヒョイ
王女「あ、それは軟膏です。右肩の刺し傷と胸の切り傷、それから背中にも塗るようにとお医者に渡されました」
盗賊「へ〜、そりゃありがたいな」
王女「後はこれを頂きました。葡萄や林檎をすり潰して作った飲み物です」
盗賊「美味そうだな、早速飲んでもいいか?」
王女「ええ、どうぞ。ゆっくりと飲んで下さいね?」スッ
盗賊「ん、分かった。んっ…ゲホッゲホッ…」
王女「だ、大丈夫ですか!?」
盗賊「ゲホッ…悪い。気を付けて飲んだつもりだったんだけどな……」
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/30(金) 00:38:09.00 ID:J4JnjP9PO
王女「っ、泥棒さん」
盗賊「けほっ…けほっ…ん?」
王女「ちょっとずつ。口に含んでからゆっくりと飲んでみて下さい」
盗賊「そうするよ……んっ…お〜、めちゃくちゃ美味いなこれ。じわってくる」
王女「……よかった。さっきは口に含んだ量が多かったので体が驚いたんだと思います」
盗賊「胃とか弱ってんのかな。腹は減ってんだけど、この調子じゃ食うのは無理そう…ッ」クラッ
王女「!!」
ギュッ…
盗賊「っと……悪い、ちょっとふらついた。もう大丈夫だ。一人で立てる」
王女「……無理はしないで下さい。立っているだけでも負担は掛かります。横になりましょう?」
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/30(金) 01:14:47.02 ID:J4JnjP9PO
盗賊「えっ、せっかく棺桶から這い出たのに永眠しろとーー」
王女「泥棒さん、掴まって下さい。それから永眠とか言わないで下さい。そういう冗談は嫌いです」
盗賊「ハイ、ゴメンナサイ」
王女「んっしょ…」ギュッ
トコ…トコ…トサッ…
王女「ふぅ…大丈夫ですか?」
盗賊「あ、うん。つーか姫様に運ばれるのはこれで二回目だな。ありがとう」
王女「………」キュッ
盗賊「?」
王女「……こんな聞き方は狡いですけれど、泥棒さんは後悔していませんか?」
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/30(金) 02:20:47.37 ID:J4JnjP9PO
盗賊「人生に?」
王女「………」
盗賊「冗談、冗談だから。で、何に後悔してるって?」
王女「それはその……『こうなって』しまったことに。です」
盗賊「ない。これっぽっちもない。そもそも俺が攫ったんだ。後悔なんてするわけない」
盗賊「姫様は後悔してんのか? あの時、外に出たいなんて言わなかったら良かったってさ」
王女「外に出たことに後悔はありません。けれど、それによって巻き込まれ命を奪われた人がいます」
王女「あの時、泥棒さんはわたしの人生だと言ってくれました。その時、わたしは自由に触れたいと思ったのです。自分の思うように生きてみたいと……」
王女「でも、自由とは無関係の方々まで巻き込んで手にするものなのでしょうか……」
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/30(金) 18:14:17.61 ID:RlZ2n5szO
盗賊「人生に?」
王女「………」
盗賊「冗談、冗談だから。で、何に後悔してるって?」
王女「それはその……『こうなって』しまったことに。です」
盗賊「ないよ。これっぽっちもね」
盗賊「姫様は後悔してんのか? あの時、外に出たいなんて言わなかったら良かったってさ」
王女「……外に出たことに後悔はありません。けれど、それによって命を奪われた方がいます」
王女「泥棒さんはわたしの人生だと言ってくれました。そう言われた時、わたしは自由に触れてみたいと思いました。自分の思うように生きてみたいと」
王女「でも、それは無関係の方々の命を奪ってまで欲するべきものなのでしょうか……」
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/30(金) 18:16:46.04 ID:RlZ2n5szO
盗賊「かなり思い悩んでるみたいだけど、姫様が自分を責める必要は全くないぜ?」
盗賊「殺しの動機は分かんねえけど、命を奪ったのは紛れもなく白い騎士の仕業なんだ」
王女「でも、犯人はわたしを狙ってこの街にーー」
盗賊「その前提から間違ってる。奴は姫様を狙ってこの街に来たんじゃない。俺を狙って来たんだ」
王女「……えっ」
盗賊「俺も最初は姫様を狙って来たもんだと思ってたよ。でも違ったんだ」
王女「あの、何故そう言い切れるのですか?」
盗賊「奴は俺のことを輪転器だと言った」
王女「!?」
盗賊「びっくりだろ? 奴は初めから俺を狙ってたんだ。実際、姫様のとこに向かう素振りは一切見せなかったしな」
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/30(金) 21:10:32.16 ID:RlZ2n5szO
王女「い、意味が分かりません。何で泥棒さんを輪転器だなんて言ったのでしょう?」
盗賊「さあね、俺にもさっぱりだ。でも、奴は確かに輪転器と言った」
盗賊「私の器として生まれたことを光栄に思え。今こそ転生する。そう言ってたよ」
王女「ですが、輪転器とは王のみが所持するものなのですよ?」
盗賊「ああ知ってる。だからこそ秘宝って呼ばれてるわけだしな。でも、それだけじゃない」
王女「?」
盗賊「奴にとどめを刺した時、あるものを見たんだ」
盗賊「血を流し過ぎて頭がおかしくなったのか幻覚を見たのかもしれない。それを踏まえた上で聞いてくれ」
王女「えっ…は、はい。分かりました」
盗賊「意識を失う直前、奴の顔を見た」
盗賊「……俺と同じ顔。まるで水面に映したみたいにそっくりだった」
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/30(金) 22:49:24.35 ID:RlZ2n5szO
王女「冗談…ではないのですね」
盗賊「ああ、朦朧としてたけどはっきりと憶えてる。兜が外れたと思ったら俺の顔が出てきたんだ」
盗賊「……まあ、だから何だって話なんだけどさ。でも同じ顔なんて気味が悪いだろ? 輪転器だとか言われるしさ」
王女「……今のお話を疑うつもりはないですが、顔や白騎士について確かめる術はありません」
盗賊「確かめる術がない? 遺体が消えてたとか?」
王女「い、いえ、そうではありません」
王女「王宮関係者である騎士団長さんも立ち会って身元を確認したらしいのですが、判別不能だったと言っていました」
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/30(金) 23:12:43.97 ID:RlZ2n5szO
盗賊「えっ、何で?」
王女「……遺体が枯れ果てていたらしいのです。まるで血の一滴まで吸い取られたように」
盗賊「んな馬鹿な!! あんなに元気に飛び跳ねてたってのに中身は干涸らびてたってのかよ」
王女「兵士さんや騎士団長さん。警備隊の皆さんも同じ反応をしていました。あり得ない…と」
盗賊「ってことは白騎士については何も掴めなかったのか。益々わけが分からなくなったな」
王女「……そうですね。様々な思惑が蠢いているような気がします」
盗賊「(あの爺さんが嘘吐いてんのか? それとも将軍が裏で何かやってんのか?)」
王女「………」キュッ
盗賊「(……家族に命を狙われてるかもしれないんだ。血の繋がりがなくても、そう考えるだけで辛いだろうな)」
盗賊「(姫様は巻き込んだって言ってたけど、巻き込まれたのは俺達の方なんじゃねえか? 何かもっと、大きなものに……)」
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/02(日) 01:56:05.18 ID:If7cuYzZO
飽きた?
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/03(月) 23:32:06.85 ID:uwchgiKz0
まってる
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/08(土) 18:07:10.88 ID:/nEX0JHPO
盗賊「………」ウーン
王女「泥棒さん? どうしました?」
盗賊「あ〜。いや、何でもない。さっきのやつまだ残ってるかな。喋り過ぎて喉が渇いてきた」
王女「あっ、はい。まだありますよ」スッ
盗賊「ありがとう。んっ…あ〜、美味い。ところで姫様、俺はどのくらい寝てた?」
王女「丸二日です。あの夜、兵士さんとお医者様がこの教会跡地に運んでくれたのですよ?」
盗賊「……そっか。じゃあ後で礼を言わねえと。姫様にも面倒掛けちゃったな」
王女「いえ、そんなことはありません。わたしにはこれくらいしか出来ませんから……」
盗賊「そんな風に言うなよ。俺はその『これくらい』ってやつに助けられたんだからさ」ニコッ
王女「……泥棒さん…」
盗賊「それに、長いこと此処に居て様子を見ててくれたんだろ? そこの机に日記あるし」
373 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/08(土) 18:15:41.22 ID:/nEX0JHPO
王女「それはその、色々ありまして……」
盗賊「色々って?」
王女「……街のお医者様がニンゲンに付きっきりで看病することは出来ないと仰ったのです。今にも息絶えようとしているのにですよ?」
盗賊「そ、そうなの?」
王女「はい。それでわたし、恥ずかしながら怒鳴ってしまいまして……泥棒さんの命を救って下さった恩人に対して何て失礼な真似を……」
盗賊「ま、まあそれは仕方ねえさ」
王女「……仕方がない?仕方がないとは何が仕方ないのですか? 死んでいたかもしれないのですよ?」
盗賊「(怖っ!!) い、いや、俺みたいなニンゲンを看病したら気が触れてると思われちまうだろ?」
盗賊「死にかけのニンゲンを助けようとしてくれただけでもありがたいもんだよ。軟膏とかもくれたしさ」
374 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/08(土) 19:09:41.02 ID:/nEX0JHPO
王女「……泥棒さんは傷付いたりはしないのですか?」
盗賊「ニンゲンの扱いに?」
王女「ニンゲンの扱いではありません。ニンゲンに対する接し方に。です」
盗賊「接し方…ね。こっち側じゃあ随分と変わった言い方だな。初めて聞いたかもしんねえ」
王女「っ、やはり酷いのですか?」
盗賊「別に酷いとは思わない。こっちにはこっちの常識ってもんがある。だろ?」
王女「……わたしには…あなたを殺してしまう常識など必要ありません」
盗賊「姫様?」
王女「ニンゲンだから助けない。ニンゲンだから一人で戦わせる。ニンゲンだから死んでも構わない。ニンゲンだからっ……」キュッ
375 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/08(土) 19:38:02.65 ID:bUPlqLnM0
きた!
376 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/08(土) 20:46:11.91 ID:/nEX0JHPO
盗賊「そう言ってたの?」
王女「……はい。差別や偏見はニンゲンに限ったことではない。それはこちら側でも起きていることなのだと言われました」
王女「泥棒さんにはこちら側に思うところはないのですか? そういったものに対して……」
盗賊「ん〜、何だか難しい話だなぁ。あのさ、これって俺個人の考えでいいんだろ? ニンゲンとして。とかじゃなくてさ」
王女「はい。泥棒さんの考えを聞かせて下さい」
盗賊「俺はこっちも向こうも変わりないと思うよ? 良い奴はいるけど悪い奴はもっといる」
盗賊「確かに風当たりは強いけど、初めて会った奴といきなり仲良くなんて出来ない」
盗賊「姫様だって初対面の奴に『同族なのでお友達になりましょう』なんて言われたら戸惑うだろ?」
王女「そう…かもしれませんね」
盗賊「なっ? だから種族なんて関係ないのさ。そんなのは性格の不一致ってやつだよ」
377 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/08(土) 21:06:45.13 ID:/nEX0JHPO
王女「……性格だけではないと思います」
盗賊「そりゃあ根付いた差別なんかが邪魔するかもしれないけど、良い奴は良い奴さ」
盗賊「ツノがあっても尻尾があっても牙や爪があっても、そこは絶対に変わらない」
王女「そうなのでしょうか……」
盗賊「そうさ。だって実際に助けてくれたのはニンゲンじゃないだろ?」
王女「それは…そうですけれど……」
盗賊「姫様は難しく考え過ぎだよ。種族は違っても男は男。女は女」
盗賊「どのくらいの種族がいるのか知らねえけど性別は二つしかない。必要なのは愛だよ、愛」ウン
378 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/08(土) 21:44:21.42 ID:/nEX0JHPO
王女「あ、愛!?」
盗賊「だってそうだろ? 種族が違っても綺麗な女性は綺麗な女性なんだ」
盗賊「ツノが生えていようが尻尾が生えていようが綺麗な女性だという事実に変わりはない」
盗賊「男は女性を守るべきだし女性は男を優しく包み込む存在であるべきだ。と私は思うわけだよ」
盗賊「そう考えれば種族間の問題なんて些細なもんさ。そう思うだろ?」
王女「……何だか、やけに饒舌ですね。言い慣れているように思えます」
盗賊「……これは種族の垣根を越えて仲良くなる為の必要技能なんだ」
王女「綺麗な女性と。ですか?」ニコッ
盗賊「いやいやいや? 俺は別にーー」
王女「泥棒さんが眠っている間、あのお店の看板娘さんから色々な話を伺いました。先日お見舞いに来てくれたんですよ?」ニコッ
379 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/08(土) 22:16:07.03 ID:/nEX0JHPO
盗賊「へ〜、そうなんだ。それは嬉しい限りですね」
王女「ええ、わたしも嬉しかったです。ニンゲンとしてではなく本質を見ている方でした。あのような方がもっといれば良いのにと心から思います」
王女「ところで、とってもお上手なようですね。女性を口説くのが」
盗賊「姫様、それは違う。あれは行き違いというか擦れ違いというかアレがアレなんだよ」
王女「フフッ、何がですか?」
盗賊「……え〜っと。ほら、アレだよ。気になる女性に微笑みかけられると俺に惚れてるんじゃないかと思ったりするやつだ」
盗賊「あのキツネ娘は俺が助けた時に掛けた何気ない言葉をそのように捉えたのだと思います」ハイ
王女「勘違いさせるような言葉を言ったのではないのですか? 例えば……」
王女「俺はきみの尻尾は綺麗だと思うぜ? 他の奴等が何を言ってるか知らないけどさ。とか」
王女「尻尾にその模様がなかったら俺ときみがこうして出会うこともなかった。とか」
王女「きみが特別だから尻尾も特別なんだよ。きっと天が二物を与えたのさ。とか」
盗賊「(……あのキツネ、都合のいいとこだけ切り取って姫様に話しやがったな)」
380 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/08(土) 23:25:00.85 ID:/nEX0JHPO
王女「……本当に色々なことを聞きました」
盗賊「?」
王女「思い立ったらすぐに動く。何かあれば所構わず飛び込む。無茶ばかりしていると」
王女「根付いた差別や偏見などどこ吹く風、種族も境界線も飛び越えて何処までも自由に……」
盗賊「そんなに考えてねえよ。やりたいことをやってるだけさ」
王女「……大凡の者はそのようには出来ません。何故です? 何故そのように生きられるのですか?」
盗賊「単純な話さ。こういう奴なんだよ、俺はね」
王女「……それでは答えになってませんよ。ずるいです」
盗賊「でもさ、そんなもんだよ。行きたい場所へ行って、見たいものを見る」
盗賊「俺がやってるのはそれだけさ。余計な荷物は肩に載せないようにしてるんだ」
381 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/08(土) 23:33:23.52 ID:/nEX0JHPO
王女「余計な荷物?」
盗賊「差別だとかそういうもんだよ。そんなもんベタベタくっつけてたら身動き取れなくなる」
王女「………」
盗賊「くぁ…ごめん。急に眠たくなってきたから寝るよ」ゴソゴソ
王女「あっ、はい。申し訳ありません。傷が痛むのに長話に付き合わせてしまって……」
盗賊「そんなことないよ。多分さっきの飲み物に何か入ってたんだと思う。姫様も疲れてるだろ? 早めに休んだ方がいいぜ」
王女「……はい、そうします。ゆっくり休んで下さい」
盗賊「ん、お休み……」
王女「あ、ちょっと待って下さい。包帯の取り替えと軟膏を塗らないと」
盗賊「あ〜、そっか。じゃあ、お願いします」ムクッ
スルッ…パサッ…
王女「(酷い傷。何度も見たけれど、見るたびにそう思う。治るまでにどれだけの時間が……あれ?)」
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/09(日) 00:12:19.83 ID:LVRUYPaNO
盗賊「…スー…スー…」カクンッ
王女「あっ…」
ポフッ…
王女「ふぅ、危なかった。無理をさせてしまいましたね。後は任せてゆっくりと休んで下さい」
スルスル…ヌリヌリ…
王女「(右肩と胸の傷は勿論、背中の傷にもまだ熱がある。触れていると火傷しそう)」
王女「(聞きたいことは沢山あったけれど、こうして生きているのならそれだけで……)」
盗賊「…ん…」ビクッ
王女「(やはり痛むのでしょうか。泥棒さん、ごめんなさい。もう少しで終わりますから)」
盗賊「…くす…ぐったい…」
王女「(ふふっ、くすぐったかったんですね。何だか赤ん坊みたい……)」
383 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/09(日) 00:28:35.82 ID:LVRUYPaNO
盗賊「…ん〜……」
王女「(そう言えば看板娘さんが言っていましたね。こんな無防備な姿はそうそう見られるものじゃないって)」
盗賊「…スー…スー…」
王女「………」スッ
プニプニ…
王女「(体は引き締まっているけれど頬は柔らかい。黒髪、おでこ、瞼、鼻筋、唇……)」
王女「(顎から首をなぞって鎖骨から胸板に……)」
盗賊「……寒…い……」
王女「(っ、わたしは何を……早く終わらせて服を着せないと……でも、何だかおかしい)」
王女「(早く傷が癒えて元気になって欲しいのに、ずっとこのままでいられたらなどと考えてしまう……そんなこと駄目なのに)」
ズキッ!
王女「っ、違う。わたしは何も間違っていない。ずっと二人きり。そう、この人はわたしのーー」
384 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/09(日) 17:44:47.80 ID:zCyzYusgO
面白いですね、乙ー
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/11(火) 12:14:12.29 ID:axYEm/xEO
【玉座の間】
老人「首尾はどうだ。順調か」
将軍「それは父上が一番良く分かっているでしょう。私が改めて報告せずとも感じているはずです」
老人「ああ分かっている。分かっているからこそ、お前の口から聞きたいのだ」
将軍「……全ては父上の目論み通りですよ。奴は白騎士に勝利しました。辛勝ではありますが」
老人「納得出来ないと言った顔だな。まだ信じられぬか?」
将軍「いえ。白騎士に期限が迫っていたとは言え、奴は最後まで一人で戦い抜き勝利した。その戦術と技量は認めざるを得ません」
将軍「加えて意志の強さ。抗い難い死の誘惑をも撥ね除ける力を持っている。相応しい器だとは思います」
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/11(火) 12:17:08.65 ID:axYEm/xEO
老人「ふむ。ならばその顔の陰りは何だ?」
将軍「認めざるを得ない男ではあります。しかし、奴はニンゲン。器として保つのか否か。そこが気掛かりでなりません」
老人「白騎士に勝利したのが何よりの証明だと思うがな。現に呑まれてはいまい?」
将軍「それは三騎士の全てに通じることです。その結果、彼等は呑まれている」
老人「呑まれたのは彼女を求めたからに他ならない。だが此度は違う」
老人「長い長い時を経て、遂に二つの輪転器は揃ったのだ。求めるものが傍らにあるのなら呑まれはせんだろう」
将軍「輪転器が輪転器の狂いを抑えると? 不確定なものに縋るのは如何かと思いますが」
387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/11(火) 12:19:34.38 ID:axYEm/xEO
老人「フッ、抑える。か」
将軍「……何か可笑しいことでも?」
老人「お前は誰かを愛したことがあるか?」
将軍「質問の意味が分かりません。それとこれと何の関係がーー」
老人「良く聞け。もう二度と会うことは叶わぬと悲観に暮れていた。その最中に思い人と再会出来たらどうする?」
将軍「……戸惑うでしょうね。もう二度と会えぬはずだったのですから」
老人「悲観に暮れていた時が千年ならばどうだ? いや、もっと長い時ならばどうする?」
将軍「……想像も出来ません。父上、この問いの意図は何です?」
老人「結論から言えば抑えることなど出来はしないと言うことだ。何せ千年以上も煮詰めた愛だ。止める術などありはせんよ」
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/11(火) 12:43:04.47 ID:axYEm/xEO
将軍「あの二人を引き合わせたのは、その狂いを抑える為だったのでは?」
老人「それもある。が、儂の目的は王の力からの解放。あの二人を引き合わせたのもその為だ」
将軍「……今のは父上自身の言葉ですか?」
老人「ああ、これは紛うことなく儂の言葉。彼女の愛を垣間見た、王の声だ」
将軍「千年以上も愛し続けるなど常軌を逸している。そんなものを見続けるなど苦痛でしかないと思いますが」
老人「……王の力を継承をした者の宿命だ。だが、直に解放される。このまま何の邪魔も入らなければな」
将軍「………」
老人「その様子だと上手く行っていないようだな。早めに手を打つものと思っていたが」
将軍「時を計っているだけです。輪転器の破壊はより一層慎重にすべきだということが今の会話で分かりました」
老人「計っている間にも時は回る。頭の中で策を巡らすだけでは何も得られぬぞ」
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/11(火) 12:44:43.86 ID:axYEm/xEO
将軍「急かしているようにしか聞こえませんね」
老人「助言しているだけだ。父としてな」
将軍「父の言葉といえども助けにならぬものを助言として受け取るわけには行きません」
老人「フッ、そうか。ならば好きにするがよい」
将軍「元よりそのつもりです。では……」ザッ
ギギィ…パタンッ…
将軍「(奴は負傷している。父上が次の騎士を動かす前に一度仕掛けてみるのも手だ。騎士団長のお陰で口実は出来ている)」
将軍「(こういった場合は挑発に乗った方が面白い。如何なる状況だろうと楽しむ。苦境など苦境と思わなければいい)」
将軍「(明らかに不利な戦であろうと常に有利であるような心持ちで動く。心に余裕があれば戦術の幅も広がる)」
将軍「………そうですよね、父上…」ポツリ
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/16(日) 00:15:00.68 ID:M5pIqeUiO
【詰め所】
警備兵「……ハァ」コトッ
警備兵「(報告書を書こうにも何と書けば良いのか分からない。この二日で何枚無駄にしただろうか)」
警備兵「(事実は事実。起きた事をそのまま書けば良いのだろうが、問題はその事実というやつだ)」
警備兵「(干涸らびた遺体が殺人を犯したなど誰が信じる? これではまるで作り話。創作だ)」
警備兵「…チッ…もう面倒だ。やはりそれらしく現実的に書いた方がーー」
ガチャッ…バタンッ…
騎士団長「……はぁ」
警備兵「お疲れのようですね。団長殿」
騎士団長「それは君もだ。隈が酷いぞ」
警備兵「創作のような事件をさも現実の事件のように創作するのに四苦八苦していましてね」
391 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/16(日) 14:44:16.94 ID:luxEjUDrO
乙ー
392 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/17(月) 00:55:23.55 ID:1R/q2gQOO
騎士団長「報告書か。こんな街の警備兵にしておくには勿体ない程に勤勉だな」
警備兵「お褒め頂き光栄です。団長殿は彼女の付き添いを?」
騎士団長「うむ。あのような輩と二人きりにするわけにはいかんからな。今ならば問題ないだろうが」
警備兵「ということは、奴はまだ?」
騎士団長「ああ、未だ目覚めてはいない。姫様もいつになく思い悩んだ顔をしておられた」
警備兵「……そうですか。ところで彼女は何処に?」
騎士団長「医師の所へ送り届けた。今頃は奴の経過などを話していることだろう」
警備兵「一人で置いてきたのですか。この二日間、片時も離れずに護衛していたというのに」
騎士団長「今日もそのつもりではいたのだが、私が傍らにいると姫様の気が休まらないと思ってな……」
393 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/17(月) 01:12:13.63 ID:1R/q2gQOO
警備兵「まあ、そうでしょう」
騎士団長「?」
警備兵「いや、湯浴みにさえ付いて来られればそうなるでしょう? 流石にあれは度が過ぎていますよ」
騎士団長「ぐっ…し、しかしだな……」
警備兵「ご心配なさるお気持ちは分かりますが彼女の素性は知られていません。もう少し楽にしたらどうです?」
騎士団長「それは自分でも思う。しかし敢えて手を抜くだとか肩の力を抜くだとか、そういう類のことは昔から苦手なのだ」
騎士団長「戦闘や訓練ならば出来ないこともないのだが、こういった任務だと中々な……」
警備兵「(厳密には任務ではない。それを任務と捉えて行動するあたりが正に堅物だ。良く言えば勤勉。悪く言えば融通が利かない)」
警備兵「(ただ、部下に好かれる男だということは分かる。思いやりがすぎる嫌いはあるが……)」
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/17(月) 01:39:52.03 ID:1R/q2gQOO
騎士団長「同じく隊を率いる君に聞きたい」
警備兵「は、はぁ。何でしょう?(こんな街の警備隊と王宮騎士団を一緒にしていいのか……)」
騎士団長「君はいつもどうしている? 癖のある連中をまとめるのは疲れるだろう」
警備兵「まとめてなどいませんよ。事件が起きた時は私が勝手に推理して勝手に解決しているだけです」
騎士団長「何? では、これまで起きた事件の全てを一人で?」
警備兵「ええ、大体は。私ような奴に付いてくる者はいません。ここでは変わり者ですから」
騎士団長「うぅむ、街の平和の為に尽力する者を変わり者扱いか。まるでなっとらんな」
警備兵「……警備隊とは言っても自警団に毛が生えた程度ですからね。仕方がないですよ」
警備兵「隊長はかなり高齢の方で腰痛を理由に長らく休んでいますしね」
騎士団長「高齢ならば若い者が代わればいいではないか。彼は次期隊長を指名しなかったのか?」
警備兵「……実のところ何度も頼まれてはいるんですがね。独断専行の自分には隊長など務まらないと固辞しています」
395 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/17(月) 02:10:30.43 ID:5HwslOvro
乙ー
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/17(月) 02:17:42.74 ID:1R/q2gQOO
騎士団長「いかんな」
警備兵「?」
騎士団長「如何なる集団だろうと長は必要だ。頼るとも頼らざるとも部下の自由だが、長がいれば個々が締まる」
騎士団長「警備隊の面々を見たが、俺がやらずとも誰かがやるだろうという雰囲気に満ちている。その『誰か』というのが君だ」
警備兵「………」
騎士団長「有能が故に同僚と馴染めないのなら、才を活かして上に立つべきだ」
警備兵「親身になって頂いて恐縮ですが、私は人を束ねるような器ではないので……」
騎士団長「束ねずともいい」
警備兵「どういうことです?」
騎士団長「上に立つ者が成果をあげれば勝手に付いてくる。君の場合、同じ立場だからいかんのだ」
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/17(月) 02:24:38.98 ID:1R/q2gQOO
警備兵「はぁ、そうなんですかね」
騎士団長「ああ、断言出来る。君と似た奴が王宮で隊長をやっているからな」
警備兵「(意外と懐が深いんだな。輪を乱す者は許さない徹底した規律を持つ集団かと思っていたんだが……)」
騎士団長「そいつは腕は良いが口数が少なくてな……」
騎士団長「誰よりも献身的なのだが人目に付かないようにしていたものだから誰もそれに気付かなかった」
警備兵「では、どうやって隊長に?」
騎士団長「周りが放っておかなかった」
警備兵「?」
騎士団長「倒れたのだ。何もかも自分で出来るものだから無理が祟ったのだろう。それをきっかけに皆が気付いた」
騎士団長「訓練用の武器の手入れや管理。それらを知らぬ間に片付けていた存在にな」
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/17(月) 02:28:11.86 ID:1R/q2gQOO
警備兵「………」
騎士団長「何でも出来るが頼ることを知らん。口数も少ない。ならば皆で支えよう……という運びになったようだ」
警備兵「そうなるとは限りませんよ。私と彼では環境が違う」
騎士団長「うむ、そうだな。しかし、このままでは機能しなくなるぞ」
警備兵「まあ、考えてはみますよ。それより、そろそろ迎えに行った方が良いのではないですか?」
騎士団長「そ、そうであった!! 早く行かなくては……では、失礼!!」ザッ
ガチャッ…バタンッ!
警備兵「慌ただしい人だ。しかし、あんな風に話したのは初めてだな。あれも彼の人柄の為せる業か……」
警備兵「……俺にああいったことは出来ない。そもそも上に立つなど柄じゃない。やはり一人の方が性に合ってーー」
ガサッ…バサバサッ…
警備兵「……いや、やはり事務員くらいは欲しいな。あまりお茶を飲まなくて綺麗好きでうんと真面目な奴がいい」
399 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/17(月) 02:36:23.61 ID:1R/q2gQOO
今日はここまで
400 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/17(月) 13:53:28.51 ID:5HwslOvro
乙ー
401 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/19(水) 18:28:13.70 ID:LEa1hsVBO
ーーー
ーー
ー
医師「……何でまたそんなことを」
王女「深い理由などありません。ただ、あの人にはもう少しだけ休んでいて欲しいのです」
王女「あの日からというもの傷を負ってばかり。ゆっくりと眠る間も、傷を癒やす間もありませんでしたから……」
医師「だから嘘を? まだ二日しか経っていないから今はそれで凌げるかもしれないが長くは続かないぞ?」
王女「ええ、分かっています。でも、せめて人の手を借りてでも動けるようになるまでは休んで欲しいのです。だから協力をーー」
医師「悪いが無理だ。俺の立場も危ういんだ。警備兵の旦那には何かあったらすぐに報告しろと言われてる」
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