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魔王「リインカーネーション」
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144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/04(日) 21:53:11.72 ID:zg2KpDPrO
射手「……賊を刺激しない為。そう聞いた」
騎士団長「あくまで個人の考えだが、奴が姫様を殺すとは到底思えない」
射手「……奴は切れてる」
騎士団長「ああ、確かに異常だ。二日続けて王宮に侵入するなど正気の沙汰ではない」
騎士団長「だが対峙してみると、どうにもそのような狂人や異常者の類には見えなかった」
騎士団長「それに、あれだけの警備体制を行き当たりばったりで抜け出せるはずがない」
騎士団長「今朝、侵入手口と脱出手段を聞いた。聞けば聞くほど、良く練らたものだと思ったよ」
射手「……結局、何が言いたい」
騎士団長「奴は姫様を連れ出す為だけに忍び込んだのかもしれん。事実、金品の類は一切盗まれていない」
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/04(日) 22:19:10.75 ID:zg2KpDPrO
射手「……何故、姫様を」
騎士団長「分からん。ただ、輪転機がどうのと言っていたような気もする」
騎士団長「輪転機とは王が所持する転生の秘宝。王が不死である為の宝具」
騎士団長「噂の域を出ないが、姫様は輪転機の在処を知ったが為にあのような場所へ入れられたと聞く。もしかすると……」
射手「……情報を聞き出す。その為に攫った」
騎士団長「そうだ。ただの推測だが、私はそう考えている。或いは……」
騎士団長「受け継がれてきた王の系譜を絶つべく送り込まれた、ニンゲン側の刺客」
ーーー
ーー
ー
盗賊「俺は決めたけど、姫様は?」
王女「あっ、これ…いえ、こっちの方が…どれも美味しそうなので迷ってしまいますね」
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 00:03:38.33 ID:jAb96GMeO
盗賊「じゃあ、両方頼もうぜ?」
王女「えっ?」
盗賊「姫様は自分が食べる分を取る。残りは俺が食べる。そうすれば問題ないだろ?」
王女「……そうは言っても、運ばれている料理を見てみると結構な量ですよ?」
盗賊「ハラ減ってるから大丈夫だって」ウン
王女「いきなり食べると胃が痛くなりますから、ゆっくり食べて下さいね?」
盗賊「分かってるって。あ、注文お願いします!」
看板娘「あっ、は〜い」
盗賊「えっ〜と、これとこれ…あとこれも頼むわ。野菜多めで」
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 00:06:12.74 ID:jAb96GMeO
看板娘「………」
王女「(急に顔が険しくなった。まさか、またなのでしょうか? 嫌だなぁ……)」
盗賊「あの、聞いてます?」
看板娘「は〜い、勿論聞いますよ。盗賊さん」ニコニコ
盗賊「……あっ」
看板娘「やっと思い出しましたぁ?」
看板娘「以前、きみの尻尾はとってもステキだね。って言われて不覚にもキュンときたんですけどねぇ」
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 00:11:24.35 ID:jAb96GMeO
盗賊「あ〜、そんなこともあった。かもね……」
看板娘「へ〜、修道女さんですかぁ。本当に見境ないんですねぇ」
盗賊「そういうわけじゃーー」
看板娘「どうやらあたしにだけじゃなくて、色んな娘に言ってるみたいですねぇ」チラッ
王女「(笑顔が怖いっ!)」
王女「(けど、綺麗な人…狐のしっぽだ。あっ、ちょっと色が変わってる)」
看板娘「よくもまあ平気な顔して女連れて来られましたねぇ。バカにしてるんですかぁ?」ニコニコ
盗賊「いやいやいや? 詳しくは話せないけど彼女とは色々な事情があってーー」
看板娘「気にしてたしっぽを褒められて舞い上がったあたしの喜びを……返せっ!!」ブンッ
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 00:15:44.89 ID:jAb96GMeO
盗賊「危ねっ!」ヒョイッ
看板娘「避けんなっ!」
ガシッ…
看板娘「ちょっ…離してよ!」
盗賊「いいから聞けよ」グイッ
看板娘「あっ…」
盗賊「きみの尻尾が綺麗だって言ったのは本心だ。これっぽっちも馬鹿になんかしてないよ」
看板娘「じゃあ、その娘はなんなのさ。あたしのことをからかって楽しいわけ?」
盗賊「そんな悪趣味なことはしねえよ。俺は今、彼女の護衛をしてるんだ」
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 00:17:46.70 ID:jAb96GMeO
看板娘「……ほんと?」
盗賊「ああ。嘘だと思うなら思いっ切り叩いて構わないぜ? きみの気が済むならね」
看板娘「なら、遠慮なく」
コツンッ…
盗賊「いてっ…」
看板娘「な〜んてね。嘘じゃないのは分かるよ。あんた怪我してるしさ。また無茶したわけ?」
盗賊「あ〜、うん。まあ、それなりにね。本当に色々あったんだよ」
看板娘「…ハァ…ねえ、修道女さん」
王女「えっ、わたしですか!? な、何でしょう?」
看板娘「この人、酷いくらい優しいからら本気になっちゃダメだよ?」ボソッ
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 00:20:10.53 ID:jAb96GMeO
看板娘「……ほんと?」
盗賊「ああ。嘘だと思うなら思いっ切り叩いて構わないぜ? きみの気が済むならね」
看板娘「なら、遠慮なく」
コツンッ…
盗賊「いてっ…」
看板娘「な〜んてね。嘘じゃないのは分かるよ。あんた怪我してるしさ。また無茶したわけ?」
盗賊「あ〜、うん。まあ、それなりにね。本当に色々あったんだよ」
看板娘「…ハァ…ねえ、修道女さん」
王女「えっ、わたしですか!? な、何でしょう?」
看板娘「この人、酷いくらい優しいから本気になっちゃダメだよ?」ボソッ
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 00:59:28.10 ID:jAb96GMeO
王女「えっ?」
看板娘「それじゃ、少々お待ち下さ〜い」トコトコ
盗賊「はぁ、化かされたのはこっちじゃねえか。ったく、分かりにくい冗談は止めろよな」
王女「……あの」
盗賊「ん?」
王女「彼女とは何があったのですか? しっぽだけでああはならないでしょう?」
盗賊「ちょっとしたトラブルに巻き込まれてたから助けただけさ。それ以来、あんな感じ」
王女「(……嘘。それだけでニンゲンに対する不信感や敵対心が消えるとは思えない)」
王女「(それどころか、あの方は泥棒さんに好意を抱いている)」
王女「(それが恋愛的なものなのかは分からないけれど。何というか、信頼のような……)」
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 01:08:48.34 ID:jAb96GMeO
看板娘「はいお待ち」
盗賊「お〜、相変わらず美味そうだな」
看板娘「あんたさ、あんまり無茶しちゃダメだよ? 一人じゃないんだからさ」
盗賊「はいはい、分かったよ」
看板娘「ったくもう。じゃっ、ごゆっくり」トコトコ
王女「………」
盗賊「どうした? 早く食べようぜ」
王女「あ、はい。そうですね……」
盗賊「?」
王女「(彼を知りたいと思うのは好奇心から? それとも単純に、彼に好意を抱いているから?)」
王女「(何だか、ちょっとだけもやもやします。それに、他人に対してこんなにも干渉的になるなんて……)」
王女「(わたしって、こういう性格だったんだ。本当の本当に、自分のことを知らなかったんですね)」
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 01:27:12.21 ID:jAb96GMeO
盗賊「ほい」ヒョイッ
王女「んぅっ!?」モゴモゴ
盗賊「ははっ、悪りぃ悪りぃ。口開けっ放しだったからさ、どう?」
王女「…ゴクンッ…とっても美味しいです!」
盗賊「そっか、そりゃあ良かった」
王女「でも、もう止めて下さいね? 喉に詰まったりしたら大変ですから」ニコッ
盗賊「は、はい。分かりました」
王女「あ、そうでした。白馬さんは大丈夫でしょうか? 預けた先で何もなければ良いのですが……」
盗賊「性格とかは言っといたから余計なことをしなければ大丈夫だよ。今頃は彼女も大人しくメシ食ってるだろうさ」
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 01:44:56.45 ID:jAb96GMeO
王女「何を食べているんでしょうか?」
盗賊「干し草とか林檎とかじゃないか? 金は渡したし腹いっぱい食ってると思うよ」
王女「ずっと走っていましたからね。凄いですよねっ!白馬さんって!」キラキラ
盗賊「(尊敬してんのかな。いや、多分してんだろうなぁ……向こうはどうなんだろ?)」
ーーー
ーー
ー
白馬「(あの女、今頃は彼と一緒に…チッ、帰ったら一発お見舞いしてやろうかしら)」
白馬「(しかし、此処には碌な男がいないわね。まるでなっちゃいないわ)」
白馬「(彼、後で迎えに来るって言っていたけど早く来てくれないかしら。退屈……)」
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/05(月) 01:46:13.00 ID:jAb96GMeO
また明日
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/05(月) 02:29:09.16 ID:f91Kuai90
乙
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 19:40:20.53 ID:gVdzg8QYO
白馬「(……食べよ)」モグモグ
白馬「(ま、彼が選んだ厩舎だけはあるわ。ご飯の質は悪くない。78点くらいね)」ウン
白馬「(彼があの女と二人きりなのは気に入らないけど、食べてる姿を見られるのって好きじゃないし……)」
『馬を預けたいんだが空いてるかな?』
『ええ、大丈夫ですよ』
『そうか、助かるよ。ところで、あの馬は?』
『ああ、つい先ほどやって来たお客様のものですよ。よい牝馬です。ウチで育てたいくらいですな』
白馬「(フン、まっぴら御免だわ。というか食事中なんだから静かにしなさいよ)」モグモグ
ツカツカ…
『ふむ、まだ若い。これは成長が楽しみだな。競走馬にしたらさぞや人気が出るだろう』
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 19:42:16.69 ID:gVdzg8QYO
白馬「………」ギロッ
『あ、あまり近付かないで下さい。とても気性が荒いとのことなので……』
『この馬を預けたのはどんな男でした?』
『……何故、そのようなことを?』
『友人の馬によく似ているんだ。もしからしたら、と思ってね。どんな風貌だったかな?』
『申し訳ありませんが他のお客様のことはお話出来ません。トラブルの元ですので……』
『女性を連れていなかったか?』
『いえ、お一人でした。さあ、もうよろしいでしょう。手続きはこちらでお願いします』トコトコ
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 19:49:05.54 ID:gVdzg8QYO
『……怖いか?』
白馬「………」フンッ
『中々肝が据わってるな。普通なら逃げ出すか暴れ出すんだが……』
白馬「(こいつ…)」
『睨み返すとは良い度胸だな。ニンゲンに渡すには惜しい馬だ。まあ、今はいい。今は…』
『お客様?どうされました?』
『……ああ、これは済まない。あまりに美しいものだから見惚れてしまってね。今行くよ』
ツカツカ…
白馬「(っ、何なのあいつ……鼻が曲がりそう。何で誰も気付かないの?)」
白馬「(まるで汚濁そのものを煮詰めたような悪臭。こんなにも酷い臭いは嗅いだことがない)」
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 20:01:48.46 ID:gVdzg8QYO
白馬「(あれは何かが違う…)」
白馬「(あいつは『今は』と言っていた。それが本当なら、まだ時間はある)」
白馬「(彼とわたしを追ってきたのは間違いない。もしくは、あの女を狙っている)」
白馬「(伝えるにも苦労しそうだけど、彼が来たら何とかして伝えないと……)」
ーーー
ーー
ー
盗賊「はぁ〜、こちそうさまでした!」パンッ
王女「フフッ…ご馳走さまでした」
盗賊「ハラ減ってたのもあるけど、やっぱり美味かったなぁ。うん、満足」
王女「泥棒さん、本当に全部食べちゃいましたね……道行く方も見入ってましたよ?」
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 21:25:56.71 ID:gVdzg8QYO
盗賊「そうでなくちゃ困る」
王女「?」
盗賊「泥棒になりたい姫様に一つだけ教えよう。泥棒とは目立ちたがり屋でなくてはならない」
王女「えっ? 主に暗がりや路地裏などを移動するのではないのですか?」
盗賊「と、思って捜すだろ?」
王女「……あっ、なるほど。泥棒ではなく泥棒を追う立場になって考るということですね?」
王女「確かにこんな人通りの多い場所。まして屋外で食事しているだなんて想像もしないです」
盗賊「でも、確実に姿を消す方法はない。向こうだって泥棒の立場になって考えてるからね」
王女「へぇ〜、そういう駆け引きがあるんですか。色々考えているのですね」
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 21:31:03.25 ID:gVdzg8QYO
盗賊「そう、時には派手に大胆に」
盗賊「ある時は繊細且つ慎重に…ってね。状況によって変わるんだ。服装とか仕草とかもね」
王女「泥棒さんはどっちが好きですか? 派手か、慎重か」
盗賊「派手か慎重か?」
盗賊「そんなこと聞かれたのは初めてだな。そうだな、強いて言うなら……どっちも?」
王女「フフッ、両方ですか。欲張りなんですね」
盗賊「そりゃもう当たり前さ!」
盗賊「って言うか、欲張りで目立ちたがりじゃなきゃダメだ。そうじゃなきゃ面白くない」
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 21:33:35.49 ID:gVdzg8QYO
王女「質問があります」ハイ
盗賊「はい、どーぞ」
王女「それは盗むのが楽しいのですか? それとも盗むまでが楽しいのですか?」
盗賊「ん〜。そう聞かれるとどうなんだろうな? あんまり考えたことねえや」
王女「では、質問を変えます」ハイ
盗賊「ん。どーぞ、何でも聞きたまえ」
王女「色々な女性に気のあるような素振りや言動をしているというのは本当ですか?」
盗賊「……え〜っと。保留出来ます?」
王女「残念ながら出来ないようです」ニッコリ
盗賊「……別にそんなつもりはない。ってこともないんだけどさ。何て言うかなぁ…」
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 22:02:57.69 ID:gVdzg8QYO
王女「(何と答えるのでしょう?)」
盗賊「まず、男なら女の前で格好付けます。そういうもんです。多分」
盗賊「女だって美しくありたい綺麗に見られたいと思うだろ? それと同じさ」
王女「それは、そうかもしれませんけど……」
盗賊「だろ? で、男ってのは強がって粋がって死ぬまで走り続けるんだよ。本当に、死ぬ瞬間まで……」
王女「(顔を伏せた…声も少しだけ震えているような……)」
盗賊「いつかヘマして死んじまってもさ。あいつは格好の良い泥棒だった。そう言われたいんだ」
盗賊「って言うと子供っぽいかな?」
王女「い、いえっ! そんなことはないです。わたしには理解は出来ないですけど……」
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 22:48:17.62 ID:gVdzg8QYO
盗賊「はははっ!そうだよな。まあ、俺はそんな感じ」
王女「(……笑ってる。わたしの気のせいだったのでしょうか?)」
盗賊「お〜い、金はテーブルに置いとくからな〜!」チャリン
看板娘「は〜い!良かったらまた来てね!」
盗賊「おう、ごちそうさま!」
盗賊「さ〜て、そろそろ迎えに行くか。首長〜くして待ってるだろうからさ」
王女「ええ、そうですね」
盗賊「ふ〜、腹一杯食ったら眠くなってきた。早めに宿の予約しとくかぁ」
王女「(……自分から聞いておいて何ですが、何故話してくれたのでしょう?)」
王女「(先ほどのは本当は全部嘘で、はぐらかしただけなのでしょうか? それとも全部本当のことを話したのでしょうか?)」
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/05(月) 22:56:48.87 ID:gVdzg8QYO
盗賊「姫様?」
王女「いえ、何でもありません。行きましょう」
トコトコ…
王女「(考えが読めなくて不思議な人……でも、だからこそ知りたいと思う)」
王女「(本の続きが気になる感覚と似ている。早く知りたい。もっと見ていたい)」
王女「(でも、そう簡単には結末に辿り着けない。泥棒さん、それはわざと? それとも天然?)」
盗賊「蛇料理か。美味いのかな……」
王女「(フフッ、きっとあれが自然なんですね。表も裏もない、そのままの姿……)」
王女「(わたしは彼と居て楽しいと感じている。だったら難しく考える必要はない)」
王女「(わたしの結末は変わらないけれど、こうして外に出られただけでも幸せなのだから……)」
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 07:39:36.15 ID:VP+l2tcRO
ザワザワ…
盗賊「ん? 何だか騒がしいな」
王女「泥棒さん!あ、あそこを見て下さい!」
盗賊「……煙、ありゃあ厩舎のある辺りだな。こっからじゃ分からねえ。急ごう」
王女「は、白馬さんは大丈夫でしょうか?」
盗賊「姫様。今は彼女の心配より自分の心配をした方がいい。もしかすると追っ手が来たのかもしれない」
王女「だからってあんなことを…」
盗賊「まだそうと決まったわけじゃない。でも、もしそうなら。あれは狼煙かもな」
王女「複数で来たと? 王宮から騎士が来たのなら街が騒ぎになると思いますが……」
盗賊「騎士じゃねえのかもしれない。とにかく、行ってなけりゃ分からない」
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/06(火) 07:43:31.33 ID:VP+l2tcRO
また夜
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/06(火) 12:15:18.51 ID:CqMs2SY0O
白馬さん…
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 20:08:38.41 ID:Z6mKXuU6O
ザワザワ…
盗賊「ん? 何だか騒がしいな」
王女「人集りが出来ていますね。何があったのでしょ…ど、泥棒さん。あれ……」
盗賊「……煙? ありゃあ厩舎のある辺りだな。こっからじゃよく分からねえな。急ごう」
王女「は、白馬さんは大丈夫でしょうか?」
盗賊「姫様。今は彼女の心配より自分の心配をした方がいい。もしかすると追っ手が来たのかもしれない」
王女「だからって火を付けるなんて…延焼して大火になったら街の人がーー」
盗賊「そうと決まったわけじゃない。追っ手の連中が上げた狼煙の可能性もある」
王女「王宮から大勢の騎士が来たのなら街が騒ぎになると思いますが……」
盗賊「騎士じゃないのかもしれない。とにかく行こう。直接見なけりゃ分からない」
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 20:11:53.06 ID:Z6mKXuU6O
王女「そ、そうですよね……」
盗賊「(とは言ってみたものの…すっげー嫌な予感がする。妙な感覚だ。気持ち悪りぃ)」
王女「(……もしこれが追っ手の仕業なら、わたしが外に出たせいだ)」
王女「(外に出ても輪転器であることは変わらない。大人しくあの部屋にいるべきだったんだ)」
盗賊「姫様、背中に乗れ。俺が姫様をおぶって走った方が早い。はぐれる心配もないしな」
王女「でも、背中の傷がーー」
盗賊「いいから早く乗ってくれ。離れられちゃ困るんだ。姫様だって迷子になりたくないだろ?」
王女「……分かりました」ギュッ
盗賊「ッ…よし、行こうか。それから、あんまり考えるな。自分を責めたって何も変わらない」ダッ
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 20:14:37.07 ID:Z6mKXuU6O
王女「わたしは何も言ってません……」
盗賊「言わなくても顔見りゃ分かるよ。姫様は顔に出やすいから」
王女「…………」
盗賊「(落ち着いたら話してみるか。でも、今はこっち優先だ。追っ手の仕業かどうか確かめねえと)」
ーーー
ーー
ー
盗賊「はぁっ、はぁっ…厩舎は無事みたいだな」
王女「ええ、煙は既に収まっているようですね。火事ではなくて良かった……」
『なあ、何があったんだ?』
『ついさっき兵士の会話を聞いちまったんだが、厩舎の主が焼け死んでたって話だ……』
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 20:17:40.06 ID:Z6mKXuU6O
『ってことは、さっきの煙…おぇっ…』
『……そういうことだろうな。気の良い人だったのに…本当に残念だよ』
王女「えっ…そんな……」
盗賊「…………」
『し、焼身自殺ってやつか?』
『そこまでは分からんよ。ただ、壁に妙な落書きがあったとか何とか言ってたような……』
盗賊「……悪い。ちょっと通してくれ」ザッ
王女「ど、泥棒さん。わ、わたしっ……」
盗賊「さっきも言ったろ。まだ、そうと決まったわけじゃない」
盗賊「仮に追っ手の仕業だとして、騎士団の連中が無関係の奴を手に掛けるとは思えない」
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 20:23:30.87 ID:Z6mKXuU6O
王女「で、でもっ…」ガタガタ
盗賊「(駄目だ。完全に怯えちまってる。あんな話を聞いたんだ。落ち着けって方が無理か)」
警備兵「此処は今立ち入り禁止…お前、ニンゲンか?」
盗賊「ああ、見ての通りニンゲンだ。此処に馬を預けてたんだけど……」
警備兵「入れ。俺もお前に聞きたいことがある。背中にいる女性は?」
盗賊「連れの修道女さんだ。事情は聞かないでくれると助かる」
警備兵「……まあいいだろう。付いて来い」
盗賊「(妙だな。ニンゲン嫌いが滲み出てんのにすんなり現場に入れるなんて…)」
王女「泥棒さん、辛いでしょう? もう下ろしてください。自分で歩けますから……」
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 20:29:04.08 ID:Z6mKXuU6O
盗賊「……分かった」トサッ
盗賊「なあ姫様。かなり気分が悪いだろうけど、俺の傍から離れないでくれ」
王女「……はい。あのっ、腕に掴まっていてもよろしいでしょうか?」
盗賊「ああ。でも無理に見る必要はない。近くにさえいてくれればーー」
王女「いえ、行きます。わたしなら大丈夫です。大丈夫ですから……」キュッ
盗賊「……分かったよ。じゃあ、行こうか」
ザッ…ザッ…
王女「あれ、馬がいない。預けに来た時は沢山いたのに。白馬さんはーー」
警備兵「馬なら裏手の牧場にいる。この厩舎の主の焼死体と一緒にな」
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 21:29:08.20 ID:Z6mKXuU6O
盗賊「どういう意味だ」
警備兵「見て貰った方が早いんだがな。そちらの女性には刺激が強すぎるだろうから説明しよう」
盗賊「……助かるよ」
警備兵「主人は首を斬られて殺害。馬も同様の手口で殺害されていた。預けられていたものも含めてだ」
警備兵「何の理由があって馬を殺害したのかは分からないが、奇妙なのはここからだ」
盗賊「野次馬の話だと燃やされてたらしいな」
警備兵「それだけじゃない。主人の遺体は山積みされた首無し馬の上にあった」
警備兵「両手を頭上より高い位置まで伸ばし、自分の頭部を掲げるようにしてな」
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 21:31:26.08 ID:Z6mKXuU6O
王女「うっ…」フラッ
ガシッ…
盗賊「……大丈夫か?」
王女「ご、ごめんなさい。大丈夫です」
警備兵「ああ、これは済まない。火に当てられたせいか説明に熱が入りすぎたようだ」ニコリ
盗賊「随分と悪趣味な男だな」
警備兵「その台詞は是非とも犯人に言ってやってくれ。一番迷惑しているのはこっちなんだ」
盗賊「……で、俺みたいなニンゲンを現場に入れた理由は?」
警備兵「どうやら一頭が逃げ出したようなんだ。その馬は青ざめたような毛色だったらしい」
警備兵「門番の話によれば、その馬は門を抜けて街の外へと逃げ出したそうだ」
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 21:33:57.69 ID:Z6mKXuU6O
盗賊「それは俺が預けた馬だ」
警備兵「ほう、意外に正直だな。ニンゲンにしては」
盗賊「あんたは一言余計なんだよ。それで?」
警備兵「犯人は馬が怯えて逃げ出す前に殺害出来るような奴だ。首を一太刀で両断してる」
警備兵「手際が良いと言うか、そのままの意味で手が早いんだろう。凄まじくな」
警備兵「そんな奴が一頭だけ見逃したんだ。何か意味があると思うだろう?」
盗賊「ああ、俺もそう思うよ」
警備兵「気が合うな。それから、外壁には次のような殴り書きがあった。血文字でな」ニコリ
王女「………」カクンッ
盗賊「ッ、あんたには呆れたよ。余計なことは言わずにさっさと話してくれ」
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 22:12:11.40 ID:Z6mKXuU6O
警備兵「冠を戴くのは勝利者」
警備兵「我が王冠は貴様の手に在り。貴様の王冠は我が手に在る。さあ、戴冠の戦を始めよう」
盗賊「いや、まるで意味が分からねえ。思いっ切りイカレてんじゃねえか」
警備兵「追伸」
盗賊「は?」
警備兵「嘘吐きは嫌いだ。嘘を吐かせのは貴様だな。実に良い馬だ。生かしておこう」
盗賊「………」
警備兵「生きているのはお前の馬だけだ。これはお前に向けられたメッセージで間違いない」
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 23:39:04.14 ID:Z6mKXuU6O
警備兵「嘘を吐かせたというのは何だ?」
盗賊「馬を預けた時、誰に何を聞かれても一人だったと言ってくれって主人に頼んだ」
盗賊「嘘を吐かせたと言われて思い浮かぶのはそれだけだ。他に思い当たる節はない」
警備兵「何故そんなことを言った」
盗賊「さっきも言っただろ。理由は聞かないでくれると助かるってな」
警備兵「今、それが通用すると思うのか?」
盗賊「分かった分かった。怖い顔すんな、ちゃんと答えるよ」
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 23:41:03.58 ID:Z6mKXuU6O
警備兵「さっさと言え」
盗賊「道ならぬ恋ってやつさ。見ての通り彼女は修道女でね。一緒に逃げて来たんだ」
警備兵「修道女である前に、ニンゲンと恋に落ちる女がいるとは思えないがな」
盗賊「なんなら彼女に聞けばいい。あんたのせいで気を失っちまったけどな」
警備兵「…チッ…心当たりは?」
盗賊「こんなに素敵な女性をニンゲンが奪ったんだ。恨んでる男なんて山ほどいるだろうさ」
警備兵「……だろうな。彼女を抱えていなければ叩き斬ってるところだ」
盗賊「あんた、意外と素直なんだな。もっと冷静で嫌味な奴かと思ってたよ」
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/06(火) 23:45:53.47 ID:Z6mKXuU6O
警備兵「口の減らない奴だ」
盗賊「それはお互い様だろ?」
盗賊「それより、俺なんかに構ってる暇があるなら犯人を捜した方が良いと思うぜ?」
警備兵「………」
盗賊「……もう用がないなら行かせてもらうけど、いいかな?」
警備兵「……いいだろう。今のところは見逃してやる。ただ、犯人が見付かるまで街から出ることは許さない」
盗賊「……そんなつもりはねえさ」ボソッ
警備兵「何?」
盗賊「いや、何でもない。色々教えてくれて助かったよ。じゃあな」ザッ
警備兵「(狂人に狙われていると知っても冷静さを保っていられるとはな。奴は何者だ?)」
警備兵「(奴の正体はともかく、この事件に関わる重要人物であることは間違いない。監視を付けるか)」
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/07(水) 01:15:05.90 ID:KuT/zeXNO
トコトコ…
盗賊「(どう考えても普通じゃねえ)」
盗賊「(俺を狙うってんなら分かる。無関係の奴まで平気で殺すのがどうかしてる)」
盗賊「(あんなに残忍な方法で殺す意味が分からねえ。犯人の目的なんなんだ?)」
盗賊「(王冠ってのが姫様のことを指してんなら、やっぱり輪転器絡みだよな……)」
盗賊「(王宮から遣わされた奴か?)」
盗賊「(いや、王宮から遣わされた奴が殺しをする理由がねえ。狙うなら俺にするはずだ)」
盗賊「(ましてあの爺さんが指示したとは考えらんねえ。なら爺さんとは無関係の、独自で動いてる暗殺者?)」
盗賊「(……輪転器を暗殺せんとする者がいるとか言ってたけど、暗殺者にしては過激だ)」
盗賊「(恨みっつーか怨念めいたもんを感じる。あの爺さん、やっぱり何か隠してやがるな)」
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/07(水) 01:34:21.46 ID:KuT/zeXNO
盗賊「(……駄目だ。幾ら考えても分かりゃしねえ)」
盗賊「(ただ確かなことは、死人が出ちまったってことだ。気の優しいオッサンだったのに……)」
盗賊「…………」ギリッ
盗賊「(もし死人が出るとしても、それは俺だと思ってた。それが間違いだったんだ)」
盗賊「(俺の考えが甘かったせいでオッサンを巻き込んじまった。俺が死なせちまったんだ)」
王女「…んっ…うぅ…」
盗賊「(……魘されてるのか)」
盗賊「(姫様もかなり参ってる。目が覚めたら泣くだろう。きっと自分を責めるだろう)」
盗賊「(……くそっ!何が輪転器だ。何が魔王だ。何でこの娘じゃなきゃならねえんだよ)」
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/07(水) 01:38:51.71 ID:KuT/zeXNO
盗賊「(何で、こんな娘一人に押っ被せんだよ)」
盗賊「(普通の娘じゃねえか。自由になりてえと思って何が悪りぃんだよ)」
盗賊「(外を見たかっただけなんだぜ? ただそれだけなのに、何でこんなことになっちまうんだ)」
盗賊「(……姫様を守ると約束した。いや、今はもうそんなことはどうでもいい)」
盗賊「(約束がなくても絶対に守る。でもな、狙うなら俺を狙えよ糞野郎……)」
盗賊「(戴冠式だか何だか知らねえが、俺とお前の戦だろうが。他の奴に手を出すんじゃねえ)」
『あれが輪転器。ふむ、あれならば申し分ないだろう。あれこそ私に相応しい』
盗賊「…………」ピクッ
『勘の良い奴だ』
『少々手こずるかもしれないな。だが、それは必ずやこの私が貰い受ける』
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/07(水) 01:39:56.26 ID:KuT/zeXNO
また明日
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/07(水) 13:38:29.58 ID:QY4AFE940
乙
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/08(木) 21:31:10.22 ID:X9kGqpLKO
【詰所】
警備兵「……有り得ない」
警備兵「(犯人を目撃したという情報は数多く寄せられた。そこまでは順調だった)」
警備兵「(だが何故だ。あれだけの目撃情報がありながら何故見付からない……)」
警備兵「(白銀の甲冑を身に付けた騎士)」
警備兵「(そんな目立つ格好をした奴が、どうやったら姿を消せるというんだ)」
警備兵「(甲冑などそう簡単に脱ぎ捨てられるものではない。かといって持ち歩けるわけもない)」
警備兵「(派手な現場。多くの目撃情報。俺も含め警備隊の皆は早期解決すると思っていた)」
警備兵「(だが、一向に進展は見られない。一切の手掛かりも掴めていない)」
警備兵「(確かなことは、犯人はあのニンゲンに対して並々ならぬ感情を抱いているということだ)」
警備兵「(そこで、一度犯人から離れ、あのニンゲンについて調べてみることにした)」
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/08(木) 22:39:07.56 ID:X9kGqpLKO
警備兵「(だが、それも空振りに終わりそうだ)」
警備兵「(ニンゲンの犯罪者名簿。これを見始めてから何時間が経っただろうか……)」
警備兵「(幾らページをめくっても、出てくるのは人相書きに処刑済みの判が押されている者のみ)」
警備兵「(まあそうだろう。こちら側で犯罪を犯すということはそういうことだ)」
警備兵「(だからこそ、これは犯罪者名簿ではなく死亡者名簿と呼ばれている。故に、これを見る者などいない)」
警備兵「(ニンゲンの前科者など存在しない。何故なら既に処刑されているから。これが我々の常識になっている)」
警備兵「(しかし奴の落ち着きようから見て、まず真っ当な生き方はしていないだろうということは分かる)」
警備兵「(そう思ってリストを見てみたものの、やはり処刑済みの判で埋め尽くされている)」
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/08(木) 23:16:00.09 ID:X9kGqpLKO
警備兵「……ふ〜っ。もう、夜か…」
バサッ…
警備兵「チッ…事務員の奴め」ガタッ
スタスタ…
警備兵「(書類整理くらいしっかりしろ。茶を啜りに来るのが仕事だとでも思ってるのか。まったく……?)」
警備兵「これは中央から届いた犯罪者名簿? 届いたのは、今朝か……」ペラッ
警備兵「……!!?」
警備兵「(罪状は王宮への侵入。暗殺未遂。現行犯逮捕。特別独房行き。処刑確定……)」
警備兵「これは、これは一体どういうことだ?」
警備兵「(この人相書きは間違いなく奴だ。それはいい。問題は既に処刑済みの判が押されているということだ)」
警備兵「(こんな大罪人を生かす理由がない。が、奴は確かに生きている)」
警備兵「(まるで意味が分からない。死亡者扱いにしてまで生かしている理由は何だ?)」
警備兵「(……どうやら、もう一度話をする必要がありそうだな…)」
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 00:29:36.99 ID:qg9BFOksO
【宿屋】
王女「んっ…暗…」
盗賊「あ、起きたのか。おはよう姫様。よく眠れた?」
王女「あの、此処は……」
盗賊「あぁ、此処は宿屋だよ。姫様の部屋みたいに立派なもんじゃないけどね」ニコッ
王女「……ごめんなさい」
盗賊「?」
王女「昨晩からというもの、わたしは泥棒さんには迷惑ばかり掛けてしまっています」
王女「此処までも泥棒さんが運んでくれたのでしょう? 今更ですけど、何だか情けなくて……」
盗賊「そんなことねえよ。それに、姫様は軽いから運ぶのは楽だったしさ」ウン
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 01:03:27.21 ID:qg9BFOksO
王女「何故ですか…」
盗賊「何故って何が?」
王女「何故そんな風に出来るのですか? わたしと一緒にいても碌なことにならないのに……」
盗賊「何だよ急に。どうしたんだ?」
王女「人が殺されたんですよ!? わたしが外に出なければこんなことにはならなかった!!」
盗賊「…………」
王女「泥棒さんに傷を負わせたのも厩舎の主さんを死なせてしまったのも、元はと言えばわたしの我が儘のせいです」
王女「……あまりにも軽く考えていました。何処へ行こうと、わたしは輪転器なんです」
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 01:37:26.99 ID:qg9BFOksO
王女「………戻ります」
盗賊「それは駄目だ。俺がさせない」
王女「何故ですか!? だってこのままじゃ、また関係のない方がーー」
盗賊「姫様、少し落ち着いてくれ。それから、今から俺が話すことを良く聞いて欲しい」
王女「………はい」
盗賊「……俺は、きみを外へ連れ出すように頼まれた。きみの父親、魔王からね」
王女「えっ…」
盗賊「俺に依頼した理由は内部に輪転器を暗殺しようとする奴がいるからだと言ってた」
盗賊「だから、王の力が受け継がれるまできみを守って欲しい。そう依頼されたんだ」
盗賊「そして、俺はその依頼を受けた。きみを連れ出し、きみを守る為に」
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 02:11:15.86 ID:qg9BFOksO
王女「……そう…だったのですか……」
盗賊「それから、厩舎の主を殺害した犯人は俺にメッセージを残してた」
盗賊「どうやら俺と王冠を賭けた戦をしたいらしい。その王冠ってのは、おそらくきみだ」
王女「………」
盗賊「酷なことを言うけど、きみが王宮に戻ろうが外にいようが命を狙われることに変わりはない」
王女「……依頼されたから…ですか?」
盗賊「?」
王女「連れ出してくれた時の言葉も、高所で励ましてくれたことも……」
王女「これまでの優しい言葉や笑顔…」
王女「昨晩から今に至るまでの全ては、父に依頼されたからしたことなのですか?」
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 02:50:16.76 ID:qg9BFOksO
王女「泥棒さん。答えて下さい……」
王女「あなたがわたしに向けてくれたもの。あれらは全て偽りだったの?」
盗賊「違う」
王女「あなたがわたしに見せてくれたものは何? 何もかも依頼されたからやっていたことなの?」
盗賊「違う」
王女「あなたは何の為にわたしを連れ出したの? 報酬を得たいから?」
盗賊「……違うよ」
王女「なら何故です?」
王女「何故そこまでしてくれるのですか? わたしには、あなたが見えません」ポロポロ
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 03:09:23.09 ID:qg9BFOksO
盗賊「一目惚れしたから」
王女「えっ…」
盗賊「あの時、きみに一目惚れした。今まで見た何よりも綺麗で、誰よりも輝いて見えた」
王女「……それは…わたし?」ポロポロ
盗賊「そう、きみだよ。輪転器なんかじゃない。きみを盗みに行ったんだ」
王女「ほんとう?」
盗賊「本当さ。まあ、当初は輪転機を盗もうとしてたけどさ……」
盗賊「俺はきみを連れ出して、色々なものを見せたくなった。勿論、きみの同意を得てからね」ニコッ
王女「……グスッ…うぅ〜…」
盗賊「え〜っと…大丈夫?」
王女「ぜんぜん大丈夫じゃないです。泣きすぎて頭が痛いです。うれしくて、はずかしいです」
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 03:35:32.20 ID:zFPvQqIIO
盗賊「そっか。盗んで良かったよ」
王女「……わたしも、ぬすまれてよかったです」
盗賊「はははっ、やっぱり変わってんなぁ」
王女「泥棒さんはひどいです。ひとの気持ちをもてあそんで…グスッ…」
盗賊「……あのさ」
王女「はぃ?」
盗賊「守るから。きみを傷付けないように、傷付けるものから守るよ……」
王女「……泥棒さん…」
盗賊「だからさ、嬉しいなら笑ってくれよ。泣いてる顔は、あんまり見たくないんだ」
王女「……グスッ…いまは、むりです。それどころじゃないです。うれしすぎて…ダメです……」
盗賊「……そっか」
王女「(泥棒さん…ありがとう。わたしを見てくれて…そんな風に言ってくれて、ありがとうございます……)」
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/09(金) 11:37:50.44 ID:mq/ikPRzO
C
お姫から不穏なオーラを感じなくもないね
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/09(金) 14:18:40.02 ID:bhFvH77MO
なんだスイーツか
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/09(金) 19:41:38.63 ID:VveZrm8XO
スイーツってまだ使われてたんだ
久しぶりに見た気がする
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 23:57:18.98 ID:DnhtZz7aO
王女「…グスッ…」
盗賊「あんまり泣きすぎると枯れちまうぞ?」
王女「……大丈夫です。こんなに泣いたのは初めてなのでまだまだ泣けます。今までずっと泣き溜めしてましたから」
盗賊「寝溜め食い溜めは聞いたことあるけど、泣き溜めは初めて聞いたな……」
王女「わたしも初めて言いました。でも、泣くっていいですね。すっきりしました」
盗賊「落ち着いた?」
王女「……油断してるとまた泣きそうです」
盗賊「あ〜、それは困るな。そうだ、準備するから手伝ってくれないかな」
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/09(金) 23:59:41.57 ID:DnhtZz7aO
王女「準備ですか? 一体何の?」
盗賊「傷付けないとか言っといてなんだけどさ、犯人と戦うことになると思うんだ」
王女「戦うって…まさか犯人とですか!?そんなの危険過ぎますよ!!」
盗賊「分かってる。けど、そうするしかない。あんなことをする奴だ。避けることは出来ない」
盗賊「宿屋の周りには街の警備隊がいる。俺を監視してるんだ。だから、街から出ることも出来ない」
王女「そんなっ…まだ傷も癒えていないんですよ? そんな体で戦ったらどうなるかーー」
盗賊「ああ、どうなるか分からない」
盗賊「ただ、そうしなきゃ終わらないってことは確かだ。奴が諦めるとは到底思えない」
盗賊「俺の後を付けて背後から刺す。そんな奴ならまだマシだった。奴は違うんだよ」
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 00:03:01.61 ID:55cdPeiLO
王女「違う?」
盗賊「狙ってる奴に対して自分の存在を知らせるなんてことはしない。普通ならね」
盗賊「奴の執着心はそれだけ異常なんだよ。それを示す為に殺した可能性は充分にある」
盗賊「ただ、俺を狙っているのか姫様を狙っているのか。それが読めないんだ」
王女「……泥棒さんは先ほど王冠という表現をしていましたよね? あれも犯人の?」
盗賊「ああ。我が王冠は貴様の手に、貴様の王冠は我が手に在り。そんな文面だった」
盗賊「俺か姫様か。どっちが狙われてようと危険だってことは変わらない」
王女「……泥棒さんが考えている通り犯人の王冠がわたしを指しているとしたら…」
王女「泥棒さんの王冠とは何なのでしょう? 文面通りに捉えれば犯人が持っているんですよね?」
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 00:28:30.36 ID:55cdPeiLO
盗賊「何か、そうみたいだな」
盗賊「でも、どれだけ考えたって誰かに何かを預けた憶えはないんだ。混乱させるつもりなのかもしれない」
盗賊「そもそも白銀の甲冑を身に着けた騎士の知り合いなんていねえしさ」
王女「……白銀の騎士?」
盗賊「目撃者は口を揃えてそう言ってた。すぐに見付かりそうなもんだけどーー」
王女「泥棒さん。目撃者の方達は本当に白銀の騎士と言っていたんですか?」
盗賊「ああ、目撃者は大勢いるみたいなんだ。宿屋に来るまでに何度か耳にしたよ」
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 01:02:12.84 ID:55cdPeiLO
王女「白銀の騎士。白い騎士…」
王女「あのっ、壁に書かれていた文面のことをもう少し詳しく教えて下さいませんか?」
盗賊「え〜っと、王冠を戴くのは勝利者。戴冠の戦を始めよう。とかだったかな」
王女「!!」
盗賊「何か心当たりでもあるのか?」
王女「その…でもこれは…」
盗賊「些細なことでもいいんだ。知ってることがあるなら教えてくれないか」
王女「……全面戦争にはならなかったものの、我々とニンゲンは過去に三度の戦をしています」
盗賊「今の線引きが出来上がる前の時代だろ?最後の戦は三百年も前だっけ? それがどうかしたのか?」
王女「その戦の度に、歴史に名を残すような騎士が現れて戦を収束させているのです」
王女「一度目の戦に現れたのが白い騎士。攻め入ったニンゲンを退けた後、すかさず侵攻を開始」
王女「そこからは勝利に次ぐ勝利。当時の境界線を塗り替え領土を拡大したという話です」
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 01:26:24.77 ID:55cdPeiLO
盗賊「勝利に次ぐ勝利、ね」
王女「ええ。更にはその時代の王から王冠を力を受け継ぎました。つまりは戴冠です」
王女「ですが、幾ら活躍したとはいえ騎士が王になるなど余りに荒唐無稽な話……」
盗賊「まあ、確かにそうだな」
盗賊「その頃には既に輪転器はあるわけだし、次期王も決まってるはずだ」
王女「その通りです。だからこそ白い騎士には様々な憶測があります」
王女「わたしが読んだ文献の中では、白い騎士は自分が王となるべく王にさえも戦を挑んだ。とありました」
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 01:33:43.16 ID:55cdPeiLO
盗賊「勝利に次ぐ勝利、ね」
王女「ええ。更にはその時代の王から王冠と力を受け継ぎました。つまりは戴冠です」
王女「ですが、幾ら活躍したとはいえ騎士が王になるなど余りに荒唐無稽な話……」
盗賊「まあ、確かにそうだよな」
盗賊「その頃には既に輪転器はあるわけだし次期王も決まってるはずだ」
王女「その通りです。だからこそ白い騎士には様々な憶測があります」
王女「わたしが読んだ文献の中では、白い騎士は自分が王となるべく王にさえも戦を挑んだ。とありました」
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 08:57:56.69 ID:GbC1UfhZO
盗賊「戴冠の戦か……」
王女「はい。事実かどうか確かめる術はありませんが、似通った部分があると思ったのでお話ししました」
盗賊「……姫様。その白い騎士はどうなったんだ?」
王女「数多くの勝利を積み上げた彼も、死に勝利することだけは叶いませんでした」
王女「彼は共に戦を駆けた甲冑を身に着けたまま亡くなった。と記されていました」
盗賊「一応聞いておくけどさ、そいつは死んだんだよな?」
王女「勿論です。一度目の戦は千年近くも前ですから。でも、やっていることも似ているので何だか怖ろしくて……」
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 16:26:16.19 ID:XZo31lO7O
盗賊「似てる?」
王女「彼の逸話と事件の内容です」
王女「彼は積み上げた遺体の上に立つと、これこそが勝利の証であるとした。ともありました」
盗賊「勝利と功績か。そういったもんを誇示すんのが大好きな奴だったんだな」
王女「ええ。挿し絵では積み上げた屍の上に城を築く姿が描かれていましたから……」
盗賊「う〜ん。聞けば聞くほど似てるな。犯人はそいつを真似てんのかもな」
王女「わたしもそう思います」
王女「自分を他人だと思い込み、あたかも本人であるかのように振る舞う」
王女「度を超した憧れや崇拝が心蝕み。遂には塗り潰してしまう。それはとても怖ろしいことです」
盗賊「……もしかしたら、生まれ変わりたかったのかもしれないな」
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 16:28:17.27 ID:XZo31lO7O
王女「えっ…」
盗賊「自分に嫌気が指して、違う誰かになりたかったのかもしれない」
盗賊「まあ、本当のところは本人に聞いてみなきゃ分かんねえけどさ」
王女「(わたしもそうなってしまうのでしょうか。力を受け継いだ時、まったくの別人に…)」
盗賊「まっ、幾ら考えても仕方ねえか。でも勉強なったよ。ありがとう」
王女「いえ、そんな…でも、警備隊の方達は知らないのでしょうか?」
盗賊「何を?」
王女「白い騎士のお話です。捜査の役に立つかは別ですけれど……」
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 16:29:25.98 ID:XZo31lO7O
盗賊「有名な話なのか?」
王女「そう言われると…どうなのでしょうか。外ではあまり知られていないのかも……」
盗賊「(そうか。知識の一つを取っても比較する相手がいねえから分からねえんだ)」
盗賊「(姫様の世界と外の世界じゃ知識の常識ってやつが違うんだろうな……)」
王女「あっ、そうでした」
盗賊「?」
王女「準備を手伝って欲しいと言っていましたが、わたしは何をすればよろしいのですか?」
盗賊「あ、そういやそうだった。まあ、準備って言ってもこれを渡すだけだけどね」
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 16:32:06.57 ID:XZo31lO7O
盗賊「とりあえず、はい」スッ
王女「……これは、泥棒さんが投げていた煙玉ですよね?」
盗賊「煙玉っつーか目潰しみてえなもんだな。舞い上がった粉が目に入れば涙が止まらなくなる」
盗賊「何かあったら、それを相手の足下に投げて逃げるんだ。強風や雨の場合は使えないけどな」
王女「……なるほど。分かりました」
盗賊「ああ、これは革鞄ごと姫様にやるよ。腰に巻いといてくれ」
王女「えっ? それでは泥棒さんがーー」
盗賊「いいっていいって遠慮すんな。それに、姫様に渡せるものはそれくらいしかないんだよ」
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 22:16:47.43 ID:A3PWqiuHO
王女「?」
盗賊「だってさ、そういうもんならともかく爆弾なんか渡されても姫様は使わないだろ?」
王女「……はい。多分使えないと思います」
盗賊「だろ? だから、それはあくまでも護身用ってやつだ。それなら使えると思ってさ」
王女「泥棒さんはどうするのですか?」
盗賊「俺? 俺はまあ、手持ちの物を色々使って何とかするよ。でも、向いてねえんだよなぁ」
王女「向いていない?」
盗賊「うん。基本、盗む時って戦う必要はないんだ。見付かったら終わりだからな」
盗賊「この爆弾だって爆発音で見張りを追っ払ったりするのに使ってるんだ」
盗賊「服装だってこの通り。動き易いもん着てるだろ? だから真正面の戦いには向いてない」
王女「で、ではどうやって戦うのですか? 何か有効な策が?」
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 22:19:59.12 ID:A3PWqiuHO
盗賊「あ〜、出たとこ勝負?」
王女「出たとこ勝負ってそんな…自分のことなんですよ!?」
盗賊「そりゃあ分かってるさ」
盗賊「でも、どんな戦い方をしてくるかなんて分からないだろ? 臨機応変にやるしかない」
王女「……無茶ですよ。背中の傷だって全然治ってないのに……」
盗賊「大丈夫。自分で何とかするから」
王女「……っ、服を脱いで下さい。包帯を取り替えます」
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 22:21:49.94 ID:A3PWqiuHO
盗賊「え?」
王女「昨晩から取り替えてないですからね。どんな状態なのか確認しておきたいですし」
盗賊「そ、そう? じゃあ、お願いします」パサッ
王女「………」クルクル
盗賊「何か悪いな。嫌なもん見せちまってさ」
王女「そんなことないです。やはり、まだ出血がありますね。血止めの草を張っておきます」
盗賊「そんなの持ってたっけ?」
王女「昨晩、念の為に数枚採って泥棒さんの革鞄に入れておきました」
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 22:24:08.62 ID:A3PWqiuHO
盗賊「(凄えな姫様…)」
王女「ごめんなさい、ちょっと染みます。じっとしていて下さいね」プチッ
ポタポタッ…
盗賊「ッ、ビリッてきた。今のは?」
王女「今のは痛み止めです」
王女「小さな果実なんですが、潰して液体を傷口に垂らせば麻痺させる効果があります」
盗賊「へ〜、そんなのがあんのか……」
王女「それから血止めの草を張って」ペタッ
王女「後は包帯で固定すれば終わりです。矢傷の方も同様のやり方で……」クルクル
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 22:26:37.74 ID:A3PWqiuHO
盗賊「姫様って物知りなんだな」
王女「そんなことは…これら全ては本で得た知識。古い古い民間療法です」
王女「きっと今なら、こんなことをせずとも傷薬を買えば済むのでしょうね……」
盗賊「でも、森や草原に薬屋はいないからなぁ」
王女「?」
盗賊「姫様の言う通り、今の薬の方が効くかもな。でもさ、いざという時に役立つのはそういう知識だと思うんだ」
盗賊「もし姫様にそういった知識がなかったら、俺は昨日の晩にお星様になってた」
王女「………」クルクル
盗賊「だからさ、誇っていいと思うぜ? 今時そういうことを出来る人はいないだろうし」
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 22:53:33.74 ID:A3PWqiuHO
王女「そう…なのでしょうか……」
盗賊「うん。それに、普通は傷を縫ったり出来ない。多分逃げ出すんじゃないかな? 怖くてさ」
王女「怖い?」
盗賊「怖いっていうか嫌だろ? 血を流して死ぬ姿を見るなんて誰だって嫌なもんだよ」
王女「……わたしは死を見るより、あなたがいなくなることの方が怖かったです」
王女「もしかしたら、一人になることが怖かったのかもしれません。自分の為だったのかも…」
盗賊「それでもいいさ。生きてんだから」
王女「……生きて下さい。そして今度こそ、一緒に星を見ましょう」
盗賊「いつの夜なるか分かんねえけど、それでもいいなら……」
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 23:42:23.10 ID:A3PWqiuHO
王女「構いません。いつまでも待ちます」
盗賊「(こういうことをさらっと言うのがズルいんだよ。分かってなさそうだけど…)」
王女「(わたしに共に戦うことは出来ない。けれど少しくらい、あなたの役に立たせて下さい)」
クルクル…キュッ…
盗賊「………」
王女「終わりました。効果は短いでしょうが多少は痛みも和らぐと思います」
盗賊「ん、ありがとう」バサッ
王女「……お役に立てるか分かりませんが、白い騎士について思い出したことがあるのでお話しします」
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 23:44:04.54 ID:A3PWqiuHO
王女「彼は特殊な武器を扱っていたそうです」
王女「それは籠手と剣が一体化したようなもので、彼の技量も相まって凄まじい威力を誇ったとされています」
盗賊「籠手の先に短剣をくっ付けた。みたいな感じ?」
王女「いえ、刃は長剣です。近接ではなく中距離で戦うことになると思います」
王女「籠手も泥棒さんのものとは違い、拳から肘辺りまで完全に覆うものでした」
盗賊「(パタとかいうやつか? やりにくそうだな……)」
王女「もし犯人が白い騎士に成り切っているとしたら、同じ武器を扱っているかもしれません」
王女「それからもう一つ。その姿はあたかも舞うようであった。とのことです」
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/10(土) 23:58:02.56 ID:A3PWqiuHO
盗賊「(隙は無さそうだな……)」
盗賊「(つーか甲冑着ながら舞うんじゃねえよ。面倒くせえ奴だな)」
盗賊「(甲冑着てるってだけでも面倒なのに。でもまあ、近付けば何とかなるか)」
王女「……お役に立てましたか?」
盗賊「ああ、イメージは出来た。その武器なら腕の振りが早いのも頷ける」
盗賊「厩にいた馬を手早く捌けたのも、それがあったから出来たのかもな……」
王女「白馬さん、今頃何処にいるのでしょう。心配です」
盗賊「帰ったのかもな。幾ら肝が据わってても、そんな危ない奴がいたら逃げるに決まってる」
王女「……泥棒さんは、逃げようとは思わないのですか?」
盗賊「逃げられない。ってこともないけど、向こうが逃がしてくれそうにないからな」
盗賊「出来ることなら此処で終わらせたいんだ。追われるのって疲れるしさ」
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 00:09:28.73 ID:e+UqcoFdO
王女「……犯人。この街にいるんですよね」
盗賊「だろうな。何処に隠れてんのか見当も付かねえけどさ」
コンコンッ…
盗賊「盗み聞きにしちゃあ長かったな。厩にいた警備隊だろ? さっさと入れよ」
王女「えっ?」
ガチャッ…パタンッ…
警備兵「…………」
王女「(あっ、本当に昼間の警備隊の人だ。この人、苦手だなぁ…)」
警備兵「何だ、分かっていて話していたのか?」
盗賊「理解を深めて欲しくてね。俺のこと調べてたんだろ?」
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 00:49:58.55 ID:e+UqcoFdO
警備兵「その前に、何故俺だと分かった」
盗賊「歩き方。つーか、そんなことが聞きたくて来たのか?」
警備兵「気味の悪い奴だな。まあいい、早速本題に入ろうじゃないか」
王女「(嫌な予感しかしない。何だか蛇のような眼をしている。何を考えているのでしょう……)」
警備兵「王宮への侵入及び暗殺未遂。特別独房行き。これに間違いはないな」
盗賊「侵入は認めるけど目的は暗殺じゃない。盗みに入っただけだ」
盗賊「それ以外は大体合ってる。つーか特別独房だったのか。にしてはお喋りな看守だったな」
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 00:54:39.15 ID:e+UqcoFdO
警備兵「何を盗むつもりだった?」
盗賊「王の秘宝。輪廻転生機」
警備兵「……次の質問だ。何故、お前は生きている」
盗賊「何か難しい質問だな。哲学?」
警備兵「そのままの意味で、だ」
盗賊「心臓が動いてるからじゃねえの? そこに関しちゃ俺もあんたも変わらねえと思うけどな」
警備兵「はぐらかすな。此処には処刑済みの判が押されてある」ガサッ
盗賊「あ、本当だ。つーか人相書き下手だな。もっと上手く書いて欲しいもんだ」
警備兵「答えろッ!!」
王女「きゃっ…」ビクッ
盗賊「分かった分かった。話すから大きい声出すな。『姫様』が怖がってんじゃねえか」
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 01:04:03.56 ID:e+UqcoFdO
警備兵「……姫様だと」
盗賊「ああそうさ。偉大なる王の娘にして次の魔王。ついでに言うなら輪廻転生機の正体だ」
警備兵「何を馬鹿なーー」
盗賊「俺は王から直々に彼女を攫うよう依頼された。内部に暗殺者がいる可能性があるらしい」
盗賊「俺は依頼を受けて彼女を攫った。それに関しては彼女の同意も得てある」
警備兵「………」
盗賊「疑うなら王宮に手紙でも出せばいい。応答があるかは分かんねえけどな」
盗賊「とにかく、これが全てだ。用が済んだら帰ってくれ。あんまり関わるとあんたも殺されちまうぜ」
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 01:09:51.54 ID:e+UqcoFdO
警備兵「白い騎士にか?」
盗賊「聞いてたんなら分かるだろ?」
警備兵「お前が語ったこと全てが嘘なのか? それとも全てが本当なのか?」
盗賊「それはあんたが決めることだ」
盗賊「俺が何を言っても所詮はニンゲンの言うことだからな。どうせ信じやしないだろ?」
警備兵「……作り話にしては話が大きすぎる」
警備兵「それだけ口が回るなら、もっと控え目な嘘を吐くはずだ。納得の行く程度の嘘をな」
盗賊「だろうな。普通なら」
警備兵「信用されたい奴が吐くような嘘ではい。が、俄には信じ難い」
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 01:16:27.94 ID:e+UqcoFdO
盗賊「どうする?」
警備兵「………」チラッ
王女「全て本当のことです。彼は嘘など吐いていません。投獄するというなら、わたしも行きます」
警備兵「…チッ…どうにも面倒なことになったな」
盗賊「思いっ切り関わるか、この場で手を引くか。今の内に決めといた方がいい」
盗賊「俺と彼女が狙われてるのは事実なんだ。関われば確実に巻き添えを食う」
警備兵「……お前は一体何なんだ」
盗賊「俺か?」
盗賊「俺は監視がいると分かっていながら逃げもせずに彼女の寝顔を眺めてた間抜けな泥棒さんだよ」
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 02:20:35.37 ID:e+UqcoFdO
警備兵「……質問がある」
王女「はい。何でしょう」
警備兵「君は何故このニンゲンと共にいる。いや、何故共にいられる?」
王女「……わたしは長らく一つの部屋で生きてきました。彼は、わたしが会った初めてのニンゲンなのです」
警備兵「………」
王女「あらゆる文献を読みました。知識の中にあるニンゲンは狡猾で怖ろしい種族……」
王女「ですが、彼はそうではありません。わたしにとっては、そうではないのです」
警備兵「君にとってはそうかもしれないが、このニンゲンは犯罪者だ」
王女「ええ、分かっています。本来であれば怖れるべき人物なのでしょう」
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 02:22:54.54 ID:e+UqcoFdO
警備兵「なら何故?」
王女「彼のことは、不思議と怖ろしいとは思わないのです」
王女「彼は傷を負い、血を流しました。けれど、それでもわたしを王宮から連れ出してくれた」
王女「閉ざされていた世界の扉を開き、わたしに外の世界を見せてくれたのです」
警備兵「恩人というわけか」
王女「いえ、失いたくない人です」
警備兵「………分かった。二人共に詰め所に連行する」
王女「そんなっ、彼を裁くのですか!?」
警備兵「いや、死んだニンゲンは裁けない。そのニンゲンは世界から抹消された存在だ」
王女「ならば何故連行するのです!?」
警備兵「関わるか否か。その答えが出たからだ。これより君を保護する。宿屋よりは安全だ」
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 02:25:04.35 ID:e+UqcoFdO
盗賊「俺は?」
警備兵「勝手にしろ。逃げたければ逃げるがいい。彼女の傍にいないのなら、そうしろ」
盗賊「あ、そう。じゃあ、お言葉に甘えてご同行しまーー」
ガチャンッ…
盗賊「……おいおい、そりゃないだろ」
警備兵「黙れ。こうでもしないと示しが付かないんだよ。仲良しこよしで歩けるか」
盗賊「何だよ。素直じゃねえなぁ」ニヤニヤ
警備兵「お前には手錠より轡が必要のようだな。耳障りなことばかり口にする」
盗賊「舌の根が乾いたことがないのが自慢でね。罪にはならないだろ?」
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 02:27:13.74 ID:e+UqcoFdO
盗賊「俺は?」
警備兵「勝手にしろ。逃げたければ逃げるがいい。彼女の傍にいたいのなら、そうしろ」
盗賊「あ、そう。じゃあ、お言葉に甘えてご同行しまーー」
ガチャンッ…
盗賊「……おいおい、そりゃないだろ」
警備兵「黙れ。こうでもしないと示しが付かないんだよ。仲良しこよしで歩けるか」
盗賊「何だよ。素直じゃねえなぁ」ニヤニヤ
警備兵「お前には手錠より猿轡が必要だな。耳障りなことばかり口にする」
盗賊「舌の根が乾いたことがないのが自慢でね。罪にはならないだろ?」
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 02:33:34.43 ID:e+UqcoFdO
警備兵「行くぞ、猿」グイッ
盗賊「痛い!痛いから!」
警備兵「さあ、君も来るんだ。詰め所までは警備隊が護衛する」
王女「あ、ありがとうございます!」ペコッ
警備隊「………」ザッ
ガチャッ…パタンッ…
警備兵「ほら、歩け」グイッ
盗賊「んなことしなくても歩くって!! ったく、乱暴な男は嫌われるぜ?」
警備兵「お前に好かれるくらいなら舌を噛み切って死んだ方がマシだ」
トコトコ…
王女「本当にいいのですか? 狙われるかもしれないのですよ?」
警備兵「こう見えて仕事熱心なんだ。職務放棄はしたくない。それから、昼間は済まなかったな」ザッ
トコトコ…
王女「(何だか不思議。泥棒さんといると色んな人が変わっていくような気がする。わたしも変わったのかな……)」
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/11(日) 02:34:44.34 ID:e+UqcoFdO
また明日
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/11(日) 09:27:51.93 ID:oUPebYb80
乙
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/11(日) 16:08:59.00 ID:LZdsXNJDo
続きが愉しみ
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 22:18:46.17 ID:3SZ+PfozO
【詰所】
盗賊「男ばっかだな。きちんと掃除しろよ」
警備兵「少し黙ってろ」
盗賊「ハイハイ。分かったから睨むなよ」
警備兵「…チッ…着いて早々で悪いが、君は何故狙われているんだ?」
王女「……あの、今更言うのも何ですが兵士さんはわたしが王女であると信じるのですか?」
警備兵「信じたわけではない。ただ、君とそこにいる猿が狙われてることは確かだ」
警備兵「君が宿屋で話していた白い騎士とやらに関しても同様の見解だ」
警備兵「千年も前のことはともかくとして、犯人が白銀の甲冑を身に着けていたことは疑いようのない事実だからな」
王女「……なる程、あくまで事件解決の為ということですか」
警備兵「その通りだ。その為に、君が王女だと仮定して話を進めようというわけだ」
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 22:35:21.21 ID:3SZ+PfozO
盗賊「何だそりゃ?」
盗賊「そんなの信じてんのと変わんねえじゃねえか。あんたって本当に素直じゃないんだな」
警備兵「黙ってろ。次に口を開いたら自慢の二枚舌を三枚に下ろすからな」
盗賊「ハイ」
警備兵「……さて、お聞かせ願おうか」
王女「先ほど話した通り、わたしは長らく一つの部屋で生きてきました」
王女「ですので、王宮の内情については詳しくありません。それでもよろしければお話しします」
警備兵「それでも構わない。思い当たることがあれば話してくれ」
王女「……明確な意思を持って狙うとするなら、兄以外には考えられません」
王女「輪転器とは王の力を継ぐ器。本来であれば実子である兄が次期の王になるはずでした」
警備兵「実子である兄? ちょっと待ってくれ。ということは、君はまさか…」
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 23:03:24.93 ID:3SZ+PfozO
王女「ええ、お考えの通りです」
王女「魔王である父とわたしに血の繋がりなど一切ありません」
警備兵「……これはまた、とんでもない話だな」
盗賊「そうなのか?」
警備兵「王の血は途切れることなく今日に至る。純血であり神聖なる存在。それが常識だ」
警備兵「彼女の話が本当なら、俺はとんでもない秘密を聞いてしまったことになる……」
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 23:07:13.17 ID:3SZ+PfozO
盗賊「ビビってんのか?」ニヤニヤ
警備兵「お前はニンゲンだから笑っていられるだろうが、国を揺るがす事態に発展する可能性も十分に有り得る」
警備兵「民は王を神の如く崇め、唯一無二の存在としている。魔王とは、そういう存在なのだ」
盗賊「へ〜、そうなんだ。それよりさ、姫様って姫様になる前はどうしてたんだ?」
王女「遊牧民の子だったような気がするのですが、王宮に入る前後の記憶が曖昧なのであまり…」
盗賊「……そっか。あっ、悪い。続けてくれ」
警備兵「では、兄が暗殺者を差し向けていると? 白い騎士も彼が?」
王女「断言は出来ませんが、その可能性は高いと思います」
王女「他所から連れて来た見ず知らずの娘に力を継がせるなど許せないでしょう?」
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 00:03:16.36 ID:Xz0S6i1pO
警備兵「確かに…」
盗賊「で、どうすんだ?」ニヤニヤ
警備兵「…チッ…お前は王家の跡継ぎ問題を街の警備隊がどうにか出来ると思うのか?」
盗賊「出来ねえだろうな。おまけに犯人の目星も付いてねえ、正に八方塞がりってやつだ」ウン
警備兵「随分と能天気な奴だな。事の重大さを分かっての台詞なら尚更だ」
盗賊「まあまあ。跡継ぎ問題とかは置いといて、罪のないうら若き女性が狙われてるんだぜ?」
盗賊「だったら警備隊としてやるべきことは決まってるんじゃねえの?」
警備兵「守るしかない、か? 確かにその通りだ。だが、お前に言われると無償に腹が立つな」
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 00:04:36.94 ID:Xz0S6i1pO
盗賊「ニンゲンだから?」
警備兵「口の減らない小僧だからだよ」
盗賊「そうかい。ところで、俺と姫様の後に街に入った奴は調査したのか?」
警備兵「当たり前だ。既に調べてある」
盗賊「あ、そうなんだ。でも、その様子じゃ進展なしみたいだな」
警備兵「お前が厩に馬を預けた直後に入った男がいてな。そいつで確定かと思ったんだが証拠は出なかった」
盗賊「参考までに聞いとくけど、その男はどんな奴だった? 右手に火傷してなかったか?」
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 00:06:35.95 ID:Xz0S6i1pO
警備兵「何故それを…」
盗賊「決まりだな。そいつが犯人だ」
警備兵「何を言ってる? その男は甲冑はおろか武器の類も一切所持していなかったんだぞ?」
盗賊「白い騎士が使ってた武器の話は聞いてたか?」
警備兵「籠手と剣が一体化したようなもの。だったか? それがどかしたのか?」
盗賊「犯人は馬の死体と厩の主の死体を運ぶ時、その武器を外したんだ」
盗賊「パタってのは籠手の中に握りのある武器だ。籠手ごと外すしかない。つまりは素手」
盗賊「で、火を放った。その時に火傷したんじゃねえかと思ってさ」
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