魔王「リインカーネーション」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:03:21.96 ID:ZMBRJL+YO

【独房】

盗賊「……」

看守「おい」

盗賊「…スー…スピー…」

看守「寝ている? こいつ、一体どんな神経をしているんだ。おい!起きろ!!」ガンッ

盗賊「ッ!びっくりしたぁ!! なに?もう処刑の時間?」

看守「違う。もうじき、ある御方が此処へ来る。くれぐれも失礼のないように」


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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:04:51.00 ID:ZMBRJL+YO

盗賊「あ、そう。どんな奴?」

看守「会えば分かる」

盗賊「女?」

看守「……会えば分かる」

盗賊「なんだ、男か……」ハァ

看守「お前は本当におかしな奴だな」

盗賊「どこが?」

看守「全てだよ。処刑を言い渡されたというのに何事もなかったかのように振る舞い。手枷足枷をされた状態で熟睡し。果ては性別で一喜一憂だ」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:05:54.04 ID:ZMBRJL+YO

盗賊「捕まるのは慣れてますから」ハイ

看守「盗賊が聞いて呆れるな。よくもまあ、今まで生きてこられたものだ」

盗賊「まあまあ。でもさ、あんただって厳つい男と見目麗しい女だったら後者の方が嬉しいだろ?」

看守「そんなザマで、こんな状況でもか?」

盗賊「こんなザマで、こんな状況だからさ」ニコニコ

看守「……長いこと看守をしているが、お前のような囚人は今まで見たことがない」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:06:41.59 ID:ZMBRJL+YO

盗賊「褒めてる?」

看守「ああ。感心する程に愚かで、呆れる程に前向きで向こう見ずな奴だ」

看守「順番待ちしていた悪党共を差し置いて真っ先に独房に入れられたのも頷ける」

盗賊「俺には全く理解出来ないね。昨日の晩から首かしげっぱなしで首が痛えよ」

看守「単に寝違えだけだろう」

盗賊「はははっ、そうかもな。でもやっぱり納得行かねえなぁ。何もしてないってのにさ」

看守「王家の宝を狙って王宮に忍び込んだのが罪にならないとでも思ったのか?」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:07:11.00 ID:ZMBRJL+YO

盗賊「未遂、未遂だから」

看守「未遂だろうが何だろうが、武器を携帯して王宮に不法侵入したんだ。暗殺の嫌疑を掛けられるのは当然だ」

盗賊「俺の眼を見てみろよ。殺しをするような奴がこんな純粋な眼をしてるはずないだろ?」

看守「純粋な奴は不法侵入などしない」

盗賊「純粋な気持ちで盗みに入ったから誠心誠意しっかり平謝りすれば不起訴で済むかも…」

看守「不起訴はあくまで不起訴であって無実にはならないからな?」

盗賊「そりゃそうだけど処刑はやりすぎだろ。見ただけで盗んだわけじゃないし、誰も傷付てないんだぜ?」

看守「はぁ…お前は極まった馬鹿なようだから分からないかもしれないが、処刑されるに足ることをしたんだ」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:07:40.80 ID:ZMBRJL+YO

盗賊「見ただけなのに?」

看守「お前も分からない奴だな。それが処刑される理由なんだ」

盗賊「(人目に触れることすら禁じられた秘宝か。でも、確かにあれはなぁ……)」

ーーーー
ーーー
ーー


盗賊『(宝物庫に見張りは無しか。大体の奴等は狙い通り、王のとこに行ったみたいだな)』

盗賊『(大方、暗殺者か何かだと勘違いしてんだろう。失礼な話だぜ。ま、いいけど)』

盗賊『さて、と。やりますか』スッ

カチャカチャ…ガチリ…

盗賊『(開いた…けど、何か妙な感じだな。多少複雑な構造だったけど、そこまでじゃない)』
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:08:45.40 ID:ZMBRJL+YO

盗賊『(何度も開けられた形跡がある)』

盗賊『(宝物庫なんて滅多に開ける機会はないはずだ。多少錆び付いててもいいようなもんだけど……)』

盗賊『(まあ、楽に済むならそれに越したことはないか。さて、ご対面と行こうか)』

ガチャッ…ギギィィ…

『……んっ…誰ですか?』

盗賊『……は?』

『……賊、ですか。外には物騒な輩がいると常々聞かされていましたが、どうやら本当だったようですね』

盗賊『(なんだこりゃ? 何で宝物庫に女がいるんだ? つーか寝巻き? 見るからに高そうなやつだな)』
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:12:19.80 ID:MXFnJz4+O

『……あなたは…ニンゲン…ですよね? わたしを殺しに来たのですか?』

盗賊『殺す? いや、王の輪転機を盗みに来たんだけど……きみは?』

『王の娘です。血縁関係はありませんが』

盗賊『(王の娘? 王女? もし本当なら、何の理由があって宝物庫に入れられてるんだ?)』

王女『どうします? 盗みますか?』

盗賊『盗むって言ってもなぁ。枕元の日記くらいしかなさそうだけど、人様の日記を盗むのはちょっと…』

王女『違います。わたしを、です』

盗賊『俺は人攫いに来たわけじゃないから止めとくよ。どうやら部屋を間違えたみたいだし』

王女『間違えてはいませんよ? わたしが王の輪転器ですから』
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:12:59.18 ID:MXFnJz4+O

盗賊『きみが宝具? どこからどう見ても寝巻きを着た女性にしか見えないけど……』

王女『宝具など最初から存在しません。必要なのは王の力を受け継ぐ器。それが、輪転器です』

盗賊『……うつわ。じゃあ、きみが次の…』

王女『ええ、そうなりますね。どうします?』

盗賊『……はぁ、こりゃあ参ったなぁ』ポリポリ

王女『(何だか変な人。わたしを見て怖れる風もない。扉が開いているのも変な感じです。でも、今なら……)』
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:14:44.04 ID:MXFnJz4+O

盗賊『……決めた』

王女『?』

盗賊『面倒なことになる前に帰る』ウン

王女『いいのですか? わたしを殺せば英雄になれますよ?』

盗賊『生憎、そういう類のものには一切興味がないんだ』

盗賊『それに、英雄になったら悪いこと出来ないだろ?』

王女『フフッ…ええ、そうですね』

盗賊『お休みのとこ邪魔して悪かったな。それじゃ』
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:15:33.78 ID:MXFnJz4+O

王女『あっ…』

盗賊『ん?』

王女『……いえ、何でもないです』

盗賊『……大丈夫、扉は開けたままにしておくよ。この部屋から出たいんだろ?』

王女『何で…』

盗賊『顔に書いてある…ってのは嘘だけど、俺が入ってきた時のきみは何だか嬉しそうな顔をしてた』

盗賊『何て言うか、牢屋の扉が開いた時の囚人みたいな。そんな感じ』
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:18:00.98 ID:MXFnJz4+O

王女『……囚人』

盗賊『何も知らないのに好き勝手言って悪い。俺がそう感じたってだけだから』

王女『……外は…楽しいですか?』

盗賊『う〜ん、そうでもないんじゃいか?』

盗賊『楽しいことより辛いことや苦しいことの方が多いし』

王女『……そう、ですか…』

盗賊『でも、俺がきみだったら……』

王女『?』

盗賊『退屈ってやつに殺される前に、外に出るよ』
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:24:59.31 ID:GBNVh6xqO

王女『!!』

盗賊『んじゃ、もう行くよ』

王女『あ、あの…』

盗賊『悪いけど連れて行くのは無理だ。その格好は目に毒だし。どうしてもって言うなら特別にーー』

王女『いえ、そうではなくて……その、後ろ…』

盗賊『…………』クルッ

ゾロゾロ…

盗賊『……もうちょっと早めに言って欲しかったなぁ』


『『『確保ォ!!!』』』


盗賊『うおっ!? ちょっと待っ…痛ッ! 痛い、痛いから!! 大人しく捕まるからやめろって!! 痛ッ!ちょっ…やめ……』
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:26:36.33 ID:GBNVh6xqO
ーーーー
ーーー
ーー


盗賊「(……あの子、今頃何してんのかな)」

看守「……そろそろか」ソワソワ

コツ…コツ…

看守「!!」ビクッ

盗賊「どんなお偉いさんが来るのか知らないけど看守が囚人の前でビビってどうすんだよ」

看守「うるさい。静かにしろ」ビクビク

盗賊「ハイハイ」

盗賊「(この怯え、極度の緊張。どうやら当たりを引いたみたいだな。さてと、ここからが本番だ……)」

コツ…コツ……

老人「………」

盗賊「………」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:28:41.53 ID:GBNVh6xqO

老人「……下がれ」

看守「し、承知致しました」サッ

老人「お主が盗賊か。思っていたより若いな」

盗賊「あんたが魔王だろ?待ってたぜ」

老人「……儂が来ると分かっていたのか?」

盗賊「いや、来る方に賭けただけさ。来なかったら逃げてたよ」

老人「盗賊よ、お主ーー」

盗賊「あ〜、ちょっと待った。話す前に枷を外させてくれ。こんなのぶら下げてちゃ集中出来ないから」

カチャカチャ…ガチッ…ガシャンッ

老人「……そう簡単に外せるものではないはずなのだが、やはりお主には意味を成さないようだな」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/28(日) 00:30:03.20 ID:GBNVh6xqO

盗賊「なんだ、俺のこと知ってんのか」

老人「標的に定めたものは必ず奪い盗る。それが物であれ、命であれ、如何なるものでも……」

盗賊「輝くものなら何でも盗むってだけさ。光り物には眼がないもんでね」ニッコリ

老人「成る程、鴉と揶揄されるだけはある。『あれ』はそれ程まで輝いて見えたか?」

盗賊「ん〜、そうだな。今まで見た何よりも輝いて見えた。瞼の裏が火傷するくらいに」

老人「フッ、中々に面白い男だ。盗賊よ、あれを殺さなかったのは何故だ?」

盗賊「あ〜、何か誤解してるみたいだから言っとくけど、俺は盗むつもりで入ったんだぜ?」
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